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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】噴霧熱分解装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20240911BHJP
   C01B 13/18 20060101ALI20240911BHJP
   F27D 7/02 20060101ALI20240911BHJP
   B01J 19/26 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
B01J19/00 301D
C01B13/18
F27D7/02 A
B01J19/26
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021026304
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022128016
(43)【公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三崎 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】館山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】増田 賢太
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-025385(JP,A)
【文献】特開2019-126804(JP,A)
【文献】特開2013-202603(JP,A)
【文献】特開2016-204718(JP,A)
【文献】特開昭48-030674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00
C01B 13/18
F27D 7/02
B01J 19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直管からなる炉本体と、
前記炉本体の外周面に接続された少なくとも一つの燃焼管と、
前記燃焼管の前記炉本体とは反対側の端部に配置され、前記炉本体に向かって燃焼ガスを吐出する燃焼バーナーと、
前記炉本体の底部の管軸上に配置され、上向きに水溶液を噴霧する噴霧ノズルと、を備え、
前記炉本体、前記燃焼管、又は前記燃焼管と前記炉本体の接続部に、前記燃焼バーナーから吐出された前記燃焼ガスの流れの一部を遮る遮蔽部材を有し、
前記遮蔽部材は、前記燃焼バーナーの軸心方向から見て、前記燃焼管の内部のうち、前記燃焼バーナーの軸心よりも左右方向の何れか一方側に配置される、噴霧熱分解装置。
【請求項2】
前記遮蔽部材は、前記燃焼ガスの流れに対向する板面を有する板状部材である、請求項1に記載の噴霧熱分解装置。
【請求項3】
前記板面の面積は、前記燃焼管の吐出口の断面積の1/4~3倍である、請求項2に記載の噴霧熱分解装置。
【請求項4】
前記遮蔽部材は、複数備えられており、
複数の前記遮蔽部材の板面の面積の合計は、前記燃焼管の吐出口の断面積の1/4~5倍である、請求項2に記載の噴霧熱分解装置。
【請求項5】
前記板面の中心は、前記燃焼バーナーの軸心方向から見て、前記燃焼バーナーの軸心を中心として前記燃焼管の内径の円の範囲内に位置する、請求項2に記載の噴霧熱分解装置。
【請求項6】
前記板面は、前記燃焼バーナーの軸心に対して、水平方向に10~170°、且つ鉛直方向に10~170°傾斜する、請求項2に記載の噴霧熱分解装置。
【請求項7】
前記燃焼管は、前記燃焼バーナーの軸心方向が前記炉本体の管軸と交差しないように配置され、前記遮蔽部材は、前記燃焼バーナーの軸心方向から見て、前記炉本体の管軸寄りに配置されている、請求項1に記載の噴霧熱分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧熱分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中空粒子の製造装置として噴霧熱分解法を活用した製造装置が使用されている(例えば特許文献1~3)。この製法に用いる内燃式の噴霧熱分解装置は、垂直管からなる炉本体を有する。炉本体の外周面のいずれかの部位に燃焼管が接続され、その燃焼管に、燃焼ガスを生成するための燃焼バーナーが設置される。炉本体には、水溶液を噴霧するための噴霧装置(噴霧ノズル)が設置される。ここで用いるノズルは2流体、3流体ないし4流体ノズルと呼ばれるものであり、水溶液を圧縮空気と同時に先端から噴出してミスト化し、微小粒子を形成する。この微小粒子が炉本体内で乾燥され、製品となる。目標の比重や粒度を得るため、処理条件として、一定以上の処理時間と処理温度が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-292223号公報
【文献】特開2007-84355号公報
【文献】特開2001-137699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、燃焼バーナーと噴霧ノズルを用いた噴霧熱分解装置において、燃焼バーナーから吐出された燃焼ガスは直進性が強いため、ミストを炉本体内に噴霧した場合、ミストが燃焼ガスに煽られて、凝集および不定形の粒子を生じることや、燃焼バーナー対面の炉壁温度が著しく高くなり、炉内温度に不均一性を生じるため、中空粒子の品質にばらつきを生じるといった課題があった。
【0005】
よって、本発明の目的は、炉内や粒子の温度を均一にし、品質の安定した中空粒子を製造できる噴霧熱分解装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の噴霧熱分解装置は、垂直管からなる炉本体と、
前記炉本体の外周面に接続された少なくとも一つの燃焼管と、
前記燃焼管の前記炉本体とは反対側の端部に配置され、前記炉本体に向かって燃焼ガスを吐出する燃焼バーナーと、
前記炉本体の底部の管軸上に配置され、上向きに水溶液を噴霧する噴霧ノズルと、を備え、
前記炉本体、前記燃焼管、又は前記燃焼管と前記炉本体の接続部に、前記燃焼バーナーから吐出された前記燃焼ガスの流れの一部を遮る遮蔽部材を有する。
【0007】
本発明によれば、炉本体、燃焼管、又は燃焼管と炉本体の接続部に遮蔽部材を設けることで、燃焼ガスを遮蔽部材の背圧で乱流にすること、及び、遮蔽部材によるガイド効果で燃焼ガスの流れ方向を制御することができる。これにより、炉本体の中心に向かう燃焼ガスの流れを生じさせて、これに噴霧ノズルから噴霧されたミストや粒子を巻き込むことで、燃焼ガスとミストや粒子とを強く攪拌することができるため、炉内や粒子(被焼成物)の温度が均一になり、ばらつきの少ない品質の安定した粒子が得られる。
【0008】
また、本発明の噴霧熱分解装置において、前記遮蔽部材は、前記燃焼ガスの流れに対向する板面を有する板状部材である、という構成でもよい。この構成によれば、燃焼管や炉本体に容易に遮蔽部材を設置することができる。
【0009】
また、本発明の噴霧熱分解装置において、前記板面の面積は、前記燃焼管の吐出口の断面積の1/4~3倍である、という構成でもよい。本明細書において、燃焼管の吐出口とは、燃焼管と炉本体の接続部での燃焼管の開口を指す。また、吐出口の断面積とは、燃焼管と炉本体の接続部での燃焼管の開口部の面積を指す。
【0010】
また、本発明の噴霧熱分解装置において、前記遮蔽部材は、複数備えられており、
複数の前記遮蔽部材の板面の面積の合計は、前記燃焼管の吐出口の断面積の1/4~5倍である、という構成でもよい。
【0011】
また、本発明の噴霧熱分解装置において、前記板面の中心は、前記燃焼バーナーの軸心方向から見て、前記燃焼バーナーの軸心を中心として前記燃焼管の内径の円の範囲内に位置する、という構成でもよい。
【0012】
また、本発明の噴霧熱分解装置において、前記板面は、前記燃焼バーナーの軸心に対して、水平方向に10~170°、且つ鉛直方向に10~170°傾斜する、という構成でもよい。
【0013】
これらの構成によれば、遮蔽部材は、燃焼ガスの流れの一部を遮るとともに、残りの燃焼ガスを炉本体内に導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る噴霧熱分解装置の一例を示す断面概略図
図2】第1実施形態に係る噴霧熱分解装置を水平方向に切断した断面図
図3図2に示す噴霧熱分解装置のIII-III断面図
図4】燃焼管と噴霧ノズルの位置関係を示す断面概略図
図4A】燃焼バーナーの軸心と遮蔽部材の板面とのなす角度を説明するための図
図4B】燃焼バーナーの軸心と遮蔽部材の板面とのなす角度を説明するための図
図5】第2実施形態に係る噴霧熱分解装置を水平方向に切断した断面図
図6】他の実施形態に係る噴霧熱分解装置の断面図
図7】他の実施形態に係る噴霧熱分解装置の断面図
図8】他の実施形態に係る噴霧熱分解装置の平面図
図9】複数の燃焼管と噴霧ノズルの位置関係を示す断面概略図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、噴霧熱分解装置における一実施形態について、図1図4Bを参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0016】
図1は、本発明に係る噴霧熱分解装置の一例を示す断面概略図である。本実施形態の噴霧熱分解装置100は、内燃式であり、垂直管からなる炉本体1と、炉本体1の外周面に接続された少なくとも一つの燃焼管2と、を備える。
【0017】
炉本体1及び燃焼管2の外壁の材質は、耐熱性のある金属、例えば鉄、ステンレス、インコネル、ハステロイ、チタン等であるのが好ましい。炉本体1及び燃焼管2は、略円筒形であるのが、フランジによる連結が行える点、炉本体1内の断面方向の温度ムラ、炉本体1及び燃焼管2からの、断面方向の放散熱ムラが抑えられる点で好ましい。
【0018】
また、炉本体1及び燃焼管2の内壁の材質は、必要な耐熱性を有する材質であれば良く、セラミックス、金属、レンガ、不定形耐火物などを用いることができる。
【0019】
炉本体1は、鉛直方向に延びる垂直管からなる。燃焼管2は、鉛直下向きを0°とし、炉本体1に対し、5~90°の角度で接続されるのが好ましい。この角度が5°以上であると、旋回流の速度が十分に高くなり、炉本体1内に不均一な乱流の発生が防止でき、得られる粒子特性のばらつきを抑制することができる。前記角度が90°以下であると、熱風の排出が促進され熱のこもりを抑制できる。
【0020】
燃焼管2の炉本体1とは反対側の端部2aには、炉本体1に向かって火炎を生じさせる燃焼バーナー3が配置されている。燃焼バーナー3に用いる燃料としては、液体燃料及び気体燃料のいずれも用いることができる。具体的には、LPG、都市ガス、気化した有機物などの気体燃料や灯油、軽油、重油、再生油などの液体燃料を用いることができる。
【0021】
燃焼管2の長さは、燃焼バーナー3から生じた火炎が直接噴霧ミストに接触しない長さとするのが好ましい。ただし、燃焼バーナー3から生じた火炎と噴霧ミストとの距離が長すぎると熱効率が十分でなくなる。
【0022】
炉本体1の底部には、上向きに水溶液を噴霧する噴霧ノズル4が配置されている。噴霧ノズル4は、炉本体1の管軸1c上に配置される。噴霧ノズル4は2~4流体ノズルであるのが好ましく、また、キャリアーエアとして、圧縮空気を用いて、噴霧ミストの周辺に空気のシールドが形成されるように噴霧ノズル4を二重にして、水溶液を噴霧しても良い。また、噴霧ノズル4は、耐熱性を考慮し、必要に応じて断熱材等で保護しても良い。
【0023】
<第1実施形態>
図2は、第1実施形態に係る噴霧熱分解装置を水平方向に切断した断面図である。図3は、図2に示す噴霧熱分解装置のIII-III断面図である。
【0024】
燃焼管2の端部2bには、遮蔽部材5が配置されている。遮蔽部材5は、燃焼管2の内壁に固定されている。本実施形態の遮蔽部材5は、略半円状の板状部材である。遮蔽部材5の板厚は5cm以上が好ましい。遮蔽部材5は、燃焼バーナー3から吐出された燃焼ガスの流れの一部を遮るように配置される。具体的には、遮蔽部材5の板面51が燃焼バーナー3から吐出された燃焼ガスに対向するように配置される。
【0025】
遮蔽部材5は、燃焼管2の内部の片側寄りに配置されている。これにより、燃焼バーナー3から吐出された燃焼ガスは、遮蔽部材5の横を通過し、炉本体1の内周壁に沿って流れる。
【0026】
図2において、炉本体1及び燃焼管2の内部での燃焼ガスの流れが破線で示されている。燃焼バーナー3から吐出された燃焼ガスは、一部が遮蔽部材5によって遮られ、残りが遮蔽部材5の横を通って炉本体1へ導入される。炉本体1へ導入された燃焼ガスは、炉本体1の内周壁に沿って流れ、旋回流を生じさせる。また、遮蔽部材5の背面では、背圧による乱流で燃焼ガスの巻き込みが発生している。また、旋回する燃焼ガスは、遮蔽部材5によるガイド効果によって炉本体1の中心部にスライドする。これにより、炉本体1の中心に向かう燃焼ガスの流れを生じさせて、これに噴霧ノズル4から噴霧したミストや粒子を巻き込むことで、燃焼ガスとミストや粒子とを強く攪拌することができるため、炉本体1内や粒子の温度が均一となり、ばらつきの少ない品質の安定した中空粒子が得られる。
【0027】
遮蔽部材5は、必要な耐熱性を有する部材であれば良く、セラミックス、金属、レンガ、不定形耐火物などを用いることができる。
【0028】
遮蔽部材5の板面51の面積は、燃焼管2の吐出口2cの断面積の1/4~3倍であるのが好ましく、1/2~1.5倍であるのが特に好ましい。本実施形態では、板面51の面積は、燃焼管2の吐出口2cの断面積の約1/2である。
【0029】
遮蔽部材5の板面51の中心51cは、燃焼バーナー3の軸心方向から見て、燃焼バーナー3の軸心3cを中心として燃焼管2の内径d2の円の範囲内に位置するのが好ましく、燃焼管2の内径d2の1/2を内径とした円の範囲内に位置するのがより好ましく、燃焼管2の内径d2の1/3を内径とした円の範囲内に位置するのが特に好ましい。なお、板面51の中心51cは、板面51の重心である。
【0030】
遮蔽部材5の板面51は、図4Aに示すように、燃焼バーナー3の軸心3cに対して、水平方向に10~170°傾斜するのが好ましく、水平方向に30~150°傾斜するのがより好ましい。言い換えると、鉛直方向に見て、燃焼バーナー3の軸心3cを基準としたときの遮蔽部材5の板面51のなす角度αは、10~170°が好ましく、30~150°がより好ましい。また、遮蔽部材5の板面51は、図4Bに示すように、燃焼バーナー3の軸心3cに対して、鉛直方向に10~170°傾斜するのが好ましく、鉛直方向に30~150°傾斜するのがより好ましい。言い換えると、水平方向に見て、燃焼バーナー3の軸心3cを基準としたときの遮蔽部材5の板面51のなす角度βは、10~170°が好ましく、30~150°がより好ましい。本実施形態では、板面51は、燃焼バーナー3の軸心3cに対して、水平方向に90°、且つ鉛直方向に90°傾斜している。すなわち、板面51は、燃焼バーナー3の軸心3cに垂直である。
【0031】
図4は、燃焼管2と噴霧ノズル4の位置関係を示す断面概略図である。図4では、燃焼管2を一つのみ示しているが、燃焼管2は同じ高さに複数設けられてもよい。以後、同じ高さに設けられた複数の燃焼管は第〇の燃焼管群と表記する。なお、同じ高さに燃焼管を一つのみ設けた場合にも「群」と称する。燃焼バーナー3の軸心3cに垂直な方向且つ水平方向、具体的には図4の紙面に垂直な方向から見たとき、軸心3cと炉本体1の管軸1cとの交点Bが、噴霧ノズル4の先端Aに対して、炉本体1の内径d1の1/2倍下方を下限とし、且つ炉本体1の内径d1の3倍上方を上限として位置する。交点Bを先端Aに対して内径d1の1/2倍下方よりも下に配置すると、ノズル先端部(ミスト吐出後の周囲部)の温度が低くなり、ミストの乾燥速度が遅くなるため、ミストの炉壁への衝突やミスト同士が干渉し、粒子の品質が低下する。ノズル先端部の温度を上げるため、バーナーの出力を増加させると、炉の温度が高くなり過ぎて、粒子の品質が低下する。また、交点Bを先端Aに対して内径d1の3倍上方よりも上に配置すると、噴霧ノズル4から噴霧されたミストや粒子を旋回流によって十分に分散させることができない。
【0032】
噴霧熱分解装置100の上部には、生成した中空粒子を回収するためのバグフィルターを設置することができる。また、このバグフィルターの前段に、バグフィルターの負荷低減、粗粒や異物回収のため、サイクロンを配置しても良く、この他に、熱交換器を配置すると余熱利用や排ガス量の低減ができるため好ましい。また、バグフィルターの後段に、必要に応じて、スクラバーなどの除塵、浄化設備を配置しても良い。
【0033】
本実施形態の噴霧熱分解装置100を用いれば、噴霧されたミストや粒子が旋回流に乗って長時間反応炉中で反応するので、安定して微小中空粒子を効率良く得ることができる。無機酸化物の原料となる原料液を用いて噴霧熱分解する場合、原料液滴が直接火炎に接触しなければ、まず乾燥反応が進行し、ミストは中空粒子状になる。続いて熱分解反応が進行すれば、無機酸化物中空粒子が得られる。ここで、無機酸化物としては、例えば金属酸化物、アルミナ、シリカ、カルシア、マグネシア、アルミニウムおよびケイ素からなる酸化物等が挙げられ、より具体的には、アルミナ、シリカ、アルミニウムおよびケイ素からなる酸化物、チタン酸化物、マグネシウム酸化物、カルシウム酸化物、ナトリウム酸化物、カリウム酸化物、リチウム酸化物、ホウ素酸化物、リン酸化物、ジルコニウム酸化物、バリウム酸化物、セリウム酸化物、イットリウム酸化物等が挙げられ、これら酸化物を組みあわせた複合酸化物も挙げられる。
【0034】
これらの酸化物を構成する元素の原料を溶解あるいは分散する溶媒としては、水及び有機溶媒が挙げられるが、環境への影響、製造コストの点から水が好ましく、溶液のpH調整剤として、酸やアルカリを添加しても良い。酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、有機酸などを用いることができ、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸
化カリウムなどを用いても良い。
【0035】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係る噴霧熱分解装置を水平方向に切断した断面図である。燃焼管2は、図5に示すように、燃焼バーナー3の軸心方向(燃焼管2からの燃焼ガスの吐出方向)が炉本体1の管軸1cと交差しないように配置されている。このように燃焼バーナー3の軸心方向と炉本体1の管軸1cをずらすことで、燃焼バーナー3から吐出された燃焼ガスが炉本体1を通過する際、真上に上昇するのではなく、旋回流を生じて上昇することとなる。炉本体1に噴霧されたミストや粒子は、この旋回流に乗って炉本体1内を上昇し、十分な反応時間(処理時間)を確保できる。なお、燃焼バーナー3の軸心方向は、炉本体1の内周面の接線方向と平行であるのが好ましい。これにより、燃焼ガスによって旋回流を効率的に発生させることができる。
【0036】
遮蔽部材5は、燃焼管2と炉本体1の接続部のうち、炉本体1の管軸1c寄りに配置されている。これにより、燃焼バーナー3から吐出された燃焼ガスの大部分は、炉本体1の内周壁に沿って流れる。
【0037】
図5において、炉本体1及び燃焼管2の内部での燃焼ガスの流れが破線で示されている。燃焼バーナー3から吐出された燃焼ガスは、一部が遮蔽部材5によって遮られ、残りが遮蔽部材5の横を通って炉本体1へ導入される。第2実施形態では、遮蔽部材5の両側に隙間を設けているため、炉本体1へ導入される燃焼ガスは、主流(図5において遮蔽部材5の右側の流れ)と支流(図5において遮蔽部材5の左側の流れ)に分かれている。炉本体1へ導入された主流の燃焼ガスは、炉本体1の内周壁に沿って流れ、旋回流を生じさせる。また、遮蔽部材5の背面では、背圧による乱流で燃焼ガスの巻き込みが発生している。また、旋回する主流の燃焼ガスは、遮蔽部材5によるガイド効果と支流の燃焼ガスによって炉本体1の中心部にスライドする。これにより、炉本体1の中心に向かう燃焼ガスの流れを生じさせて、これに噴霧ノズル4から噴霧したミストや粒子を巻き込むことで、燃焼ガスとミストや粒子とを強く攪拌することができるため、炉本体1内や粒子の温度が均一となり、ばらつきの少ない品質の安定した中空粒子が得られる。
【0038】
なお、噴霧熱分解装置100は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、噴霧熱分解装置100は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記した複数の実施形態の各構成や各方法等を任意に採用して組み合わせてもよく、さらに、下記する各種の変形例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0039】
(1)前述の第1及び第2実施形態では、遮蔽部材5が燃焼管2の内部や燃焼管2と炉本体1の接続部に配置されている例を示したが、これに限定されない。また、前述の第1実施形態では、遮蔽部材5の板面51が燃焼バーナー3の軸心3cに垂直である例を示したが、これに限定されない。また、遮蔽部材5は、燃焼管2や炉本体1と異なる部材で構成されてもよく、燃焼管2や炉本体1の内壁が一部突出して構成されてもよい。
【0040】
図6(a)に示す例では、遮蔽部材5は燃焼管2の内部に配置され、板面51は燃焼バーナー3の軸心3cに対して水平方向に90°以外の角度で傾斜している。遮蔽部材5は、略半楕円状の板状部材である。
【0041】
図6(b)に示す例では、遮蔽部材5は燃焼管2と炉本体1の接続部に配置され、板面51は燃焼バーナー3の軸心3cに対して水平方向に90°以外の角度で傾斜している。遮蔽部材5は、矩形状の板状部材である。矩形状の板状部材であれば、容易に入手可能である。
【0042】
図6(c)に示す例では、遮蔽部材5は炉本体1の内部に配置され、板面51は燃焼バーナー3の軸心3cに対して水平方向に90°以外の角度で傾斜している。遮蔽部材5は、矩形状の板状部材である。
【0043】
図6(d)に示す例では、図6(a)と同じ形状の遮蔽部材5が燃焼管2の周方向に回転するように配置されている。これにより、燃焼バーナー3から吐出された燃焼ガスは、図6(a)に示す例に比べ、上昇が抑えられ、炉本体1の内周壁の下部に導入され易くなる。
【0044】
図6(e)に示す例では、遮蔽部材5は折り曲げられた板状部材である。また、遮蔽部材5は、図6(a)に示す例よりも広範囲に設けられ、燃焼バーナー3の軸心方向に見て、炉本体1の外周側の下部以外を遮蔽している。これにより、燃焼バーナー3から吐出された燃焼ガスは、図6(a)に示す例に比べ、上昇が抑えられ、炉本体1の内周壁の下部に導入され易くなる。
【0045】
図7(a)に示す例では、遮蔽部材5は、炉本体1の管軸1c寄りに配置されている。これにより、燃焼ガスが噴霧ノズル4の先端に接触するのを抑制できる。
【0046】
図7(b)に示す例では、遮蔽部材5は、燃焼バーナー3の正面に配置されている。これにより、燃焼ガスを噴霧ノズル4の先端に接触するのを抑制できる。
【0047】
図7(c)に示す例では、遮蔽部材5の板面51は、燃焼バーナー3の軸心3cに対して、図7(a)及び(b)に示す例とは反対側に傾斜している。
【0048】
図7(d)に示す例では、遮蔽部材5の板面51は、燃焼バーナー3の軸心3cに対して、図7(b)に示す例と異なる角度で傾斜している。これにより、燃焼ガスをより炉本体1の外周部に送り込むことができる。
【0049】
図7(e)に示す例では、二つの遮蔽部材5が設けられている。これにより、燃焼ガスは3系統に分かれて炉本体1へ送り込まれる。
【0050】
(2)燃焼管2は、端部2bで炉本体1に接続されている。この燃焼管2の端部2bに、図8に示すような絞り21が設けられてもよい。絞り21の形状は、例えばテーパ状となっており、内径が炉本体1へ向かって徐々に小さくなっている構造が考えられるが、燃焼管2の吐出口2cの断面積を小さくする構造であれば良い。絞り21を設けることで、燃焼管2から吐出される燃焼ガスの流速を上げることができる。絞り21の吐出口21aの内径は、炉本体1の内径d1の1/2以下とするのが好ましい。
【0051】
なお、燃焼管2は、絞り21を必ずしも有する必要はない。絞り21を設けない場合、燃焼管2の内径が炉本体1の内径d1の1/2以下であるのがより好ましい。
【0052】
絞り21は、燃焼管2の端部2b側に設けられればよく、絞り21の吐出口21aの位置は、燃焼管2の吐出口2c、燃焼管2の内部、及び炉本体1の内部の何れでもよい。絞り21の材質は、耐熱煉瓦、耐火煉瓦や不定形耐火物、セラミックス、金属等が使用でき、使用温度や使用環境等から適宜選定される。
【0053】
絞り21の勾配θは、特に限定されないが、燃焼バーナー3から発生した燃焼ガスの流れ易さ(絞り21による抵抗)や燃焼管2内の蓄熱(勾配θが大きいと、燃焼ガスの抵抗が大きくなり燃焼管2内に熱が籠る)を考慮し、5~75°が好ましい。
【0054】
(3)前述の実施形態では、燃焼管2は一つのみであるが、燃焼管2は複数設けられてもよい。複数の燃焼管2から吐出される燃焼ガスを互いに連動させることで、炉本体1内に十分な旋回流を生じさせることができる。また、複数の燃焼管2を設けることで、炉本体1の放散熱分の熱量を付与することができ、中空粒子の合成に必要な温度と保持時間を再現性よく、安定して確保できる。
【0055】
図9は、第1の燃焼管2Aと第2の燃焼管2Bの二つの燃焼管を異なる高さに設けた例を示す。第1の燃焼管群に属する第1の燃焼管2Aは、第2の燃焼管群に属する第2の燃焼管2Bよりも噴霧ノズル4の近くに配置され、すなわち第1の燃焼管群は噴霧ノズル4に鉛直方向において最も近接して配置される。第1の燃焼管2Aの燃焼バーナー3の軸心3cに垂直な方向且つ水平方向から見たとき、第1の燃焼管2Aの燃焼バーナー3の軸心3cと炉本体1の管軸1cとの交点B1が、噴霧ノズル4の先端Aに対して、炉本体1の内径d1の1/2倍下方を下限とし、且つ炉本体1の内径d1の1/2倍上方を上限として位置する。
【0056】
また、第2の燃焼管群に属する第2の燃焼管2Bは、第1の燃焼管群に属する第1の燃焼管2Aよりも上方に配置される。第2の燃焼管2Bの燃焼バーナー3の軸心3cに垂直な方向且つ水平方向から見たとき、第2の燃焼管2Bの燃焼バーナー3の軸心3cと炉本体1の管軸1cとの交点B2が、噴霧ノズル4の先端Aに対して、炉本体1の内径d1の3倍上方を上限として位置する。
【0057】
なお、三つ以上の燃焼管群を設ける場合、第3以降の燃焼管群は、第2の燃焼管群よりも上方に配置される。また、例えば、第3の燃焼管群に属する燃焼管からの燃焼ガスの吐出方向を第3の吐出方向とすると、第3の吐出方向に垂直な方向且つ水平方向から見たとき、第3の吐出方向と炉本体1の管軸1cとの交点は、交点B2に対して、炉本体1の内径d1の3倍上方を上限として位置する。第4以降の燃焼管群についても第3の燃焼管群と同様である。すなわち、nを3以上の整数とすると、第(n)の吐出方向と炉本体1の管軸1cとの交点B(n)は、第(n-1)の吐出方向と炉本体1の管軸1cとの交点B(n-1)に対して、炉本体1の内径d1の3倍上方を上限として位置する。
【0058】
前述の実施形態(図9)では、第1の燃焼管2Aと第2の燃焼管2Bの二つの燃焼管を異なる高さに、それぞれ一つずつ設けられているが、これに限定されない。複数の燃焼管を設ける場合、異なる高さに設けてもよく、同じ高さに設けてもよい。例えば、第1の燃焼管2Aは、同じ高さに複数設けられてもよい。同様に、第2の燃焼管2Bは、同じ高さに複数設けられてもよい。同じ高さに複数の燃焼管を設ける場合には、複数の燃焼管は炉本体1の周方向に間隔を空けて設けられる。
【符号の説明】
【0059】
100 :噴霧熱分解装置
1 :炉本体
1c :炉本体の管軸
2 :燃焼管
2A :第1の燃焼管
2B :第2の燃焼管
2a :燃焼管の端部
2b :燃焼管の端部
2c :燃焼管の吐出口
d2 :燃焼管の内径
3 :燃焼バーナー
3c :燃焼バーナーの軸心
4 :噴霧ノズル
5 :遮蔽部材
51 :板面
51c :板面の中心
A :噴霧ノズルの先端
d1 :炉本体の内径
図1
図2
図3
図4
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9