(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】建設機械の下部走行体
(51)【国際特許分類】
E02F 9/02 20060101AFI20240911BHJP
B62D 55/088 20060101ALI20240911BHJP
B62D 25/18 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
E02F9/02 B
B62D55/088
B62D25/18 A
(21)【出願番号】P 2021050483
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細谷 晋平
(72)【発明者】
【氏名】中村 道則
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-027466(JP,U)
【文献】特開2016-222162(JP,A)
【文献】特開2002-308160(JP,A)
【文献】実開平07-035271(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0025122(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/02
B62D 55/088
B62D 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の中央に位置するセンタフレームと、
前記センタフレームの左右両側に前後方向に延びて設けられたサイドフレームと、
前記サイドフレームの長さ方向の一端に設けられた駆動輪と、
前記サイドフレームの長さ方向の他端に設けられた遊動輪と、
前記駆動輪と前記遊動輪とに亘って巻回された履帯と、
前記サイドフレームの上側に設けられ、前記履帯を下側から支持する上ローラと、
を備えてなる建設機械の下部走行体において、
前記サイドフレームの上側には、前記サイドフレーム上に堆積する土砂を部分的に避ける土砂避け部材が脱着可能に設けられ
、
前記土砂避け部材は、前記サイドフレームから取外すときの移動方向となる基端側で断面積が大きく、基端側と反対側の先端側で断面積が小さくなるテーパ構造体として形成されていることを特徴とする建設機械の下部走行体。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の下部走行体において、
前記土砂避け部材は、前記上ローラに隣接した位置に配置されていることを特徴とする建設機械の下部走行体。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械の下部走行体において、
前記サイドフレームの上側には、前記土砂避け部材を脱着可能に取付けるためのボルトが螺着されるねじ座が設けられていることを特徴とする建設機械の下部走行体。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械の下部走行体において、
前記土砂避け部材は、脱着するときに掴む把手を有していることを特徴とする建設機械の下部走行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履帯を周回動作させることによって走行する建設機械の下部走行体に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の代表例としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、上部旋回体の前部に回動可能に設けられた作業装置と、を備えている。
【0003】
下部走行体は、当該下部走行体の中央に位置するセンタフレームと、センタフレームの左右両側に前後方向に延びて設けられたサイドフレームと、サイドフレームの長さ方向の一端に設けられた駆動輪と、サイドフレームの長さ方向の他端に設けられた遊動輪と、駆動輪と遊動輪とに亘って巻回された履帯と、サイドフレームの上側に設けられ、履帯を下側から支持する上ローラと、を備えている。
【0004】
油圧ショベルが作業を行う現場では、下部走行体のサイドフレームの上面に土砂が堆積する。堆積した土砂は、履帯の周回動作や上ローラの回転動作を妨げてしまう。このために、油圧ショベルでは、サイドフレーム上に堆積した土砂を定期的に排除する必要がある。この場合、サイドフレーム上に堆積した土砂が乾燥している場合には、比較的容易に土砂を排除することができる。しかし、水分を含んだ土砂が堆積した後に乾燥した場合には、土砂が密着した状態で固まるから、土砂の排除作業に手間を要してしまう。
【0005】
そこで、油圧ショベルには、サイドフレームの上面を傾斜させることにより、土砂が堆積し難くしたものがある。また、油圧ショベルには、サイドフレーム上を土砂が付着しにくいプラスチック製の泥よけ板で覆うことにより、土砂の堆積を防止する構成としたものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、油圧ショベルのうち、大型と呼ばれる油圧ショベルは、センタフレームに対するサイドフレームの取付位置を幅方向で移動できるようにしている。具体的には、左右のサイドフレームを接近して配置することで、下部走行体をトレーラに積載して輸送するときの幅制限以内に収まる狭幅形態にすることができる。一方、左右のサイドフレームの間隔を広げて配置した場合には、作業時の安定性が向上する広幅形態にすることができる。
【0008】
このように、センタフレームに対してサイドフレームの取付位置を移動する構成では、センタフレームに対してサイドフレームを幅方向にスライドさせ、ボルトを用いてセンタフレームにサイドフレームを固定している。このために、サイドフレームの上面は、上述した狭幅形態のボルト締結面と広幅形態のボルト締結面とを同一面とする必要があり、サイドフレームの上面には、平坦面が形成されている。
【0009】
従って、特許文献1のように、サイドフレームの上面を泥よけ板で覆う構成としても、平坦な泥よけ板上に堆積した土砂は、ボルト等の突起、段差、上ローラ等に絡んだ状態で固まるから、土砂の排除作業に手間を要してしまうという問題がある。
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、サイドフレーム上で土砂が堆積して固まっても、固まった土砂を容易に排除できるようにした建設機械の下部走行体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、車体の中央に位置するセンタフレームと、前記センタフレームの左右両側に前後方向に延びて設けられたサイドフレームと、前記サイドフレームの長さ方向の一端に設けられた駆動輪と、前記サイドフレームの長さ方向の他端に設けられた遊動輪と、前記駆動輪と前記遊動輪とに亘って巻回された履帯と、前記サイドフレームの上側に設けられ、前記履帯を下側から支持する上ローラと、を備えてなる建設機械の下部走行体において、前記サイドフレームの上側には、前記サイドフレーム上に堆積する土砂を部分的に避ける土砂避け部材が脱着可能に設けられ、前記土砂避け部材は、前記サイドフレームから取外すときの移動方向となる基端側で断面積が大きく、基端側と反対側の先端側で断面積が小さくなるテーパ構造体として形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サイドフレーム上で土砂が堆積して固まっても、固まった土砂を容易に排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に適用される油圧ショベルを示す左側面図である。
【
図3】履帯を省略した下部走行体を示す平面図である。
【
図4】下部走行体の遊動輪側を示す左側面図である。
【
図6】
図5中の下部走行体から第1土砂避け部材と第2土砂避け部材を取外した状態を示す斜視図である。
【
図7】
図5中の第1土砂避け部材を単体で示す斜視図である。
【
図8】
図5中の第2土砂避け部材を単体で示す斜視図である。
【
図9】下部走行体の遊動輪側を上ローラの周囲に土砂が堆積した状態で示す左側面図である。
【
図10】
図9に示す下部走行体から第1土砂避け部材を取外して破壊空間を形成した状態を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る建設機械の下部走行体の代表例として、油圧ショベルの下部走行体を例に挙げ、
図1ないし
図10に従って詳細に説明する。なお、下部走行体の前側と後側は、上部旋回体の旋回位置によって変わるが、本実施形態では、遊動輪が設けられる側を前側とし、駆動輪が設けられる側を後側として説明する。
【0015】
図1において、油圧ショベル1は、後述の下部走行体11と、下部走行体11上に旋回可能に搭載された上部旋回体2と、上部旋回体2の前部に回動可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置3と、を備えている。上部旋回体2の左前側には、オペレータが搭乗するキャブ4が設けられている。本実施形態の油圧ショベル1は、例えば、上部旋回体2の幅寸法がトレーラに積載して輸送するときの幅制限以内に収まる最大限の寸法となる大型機種となっている。
【0016】
次に、油圧ショベル1の下部走行体11の構成について詳細に説明する。
【0017】
クローラ式の下部走行体11は、上部旋回体2や作業装置3を安定的に支持できるように、上部旋回体2の幅寸法よりも大きな幅寸法を有している。しかし、下部走行体11の幅寸法を上部旋回体2の幅寸法よりも大きく形成した場合、下部走行体11の幅寸法が輸送時の幅制限を越えてしまう。そこで、下部走行体11は、後述するセンタフレーム12に対するサイドフレーム15の取付位置を幅方向に移動できるようにしている。具体的には、左右のサイドフレーム15を接近して配置することで、下部走行体11の幅寸法を小さくし、輸送時の幅制限以内に収める構成としている。
【0018】
下部走行体11は、不整地、泥濘地等を走行するためのものである。
図2に示すように、下部走行体11は、後述のセンタフレーム12、左右のサイドフレーム15、駆動輪17、遊動輪18、履帯19、上ローラ20、下ローラ21、前脚カバー22、後脚カバー23、第1土砂避け部材24、第2土砂避け部材27を含んで構成されている。
【0019】
図3に示すように、センタフレーム12は、下部走行体11の中央に位置して設けられている。センタフレーム12は、複数枚の鋼板を溶接することにより全体が略H型状の製缶構造体として形成されている。センタフレーム12の上側には、上部旋回体2が旋回可能に取付けられている。センタフレーム12は、前側に位置して左右方向に延びた前脚13と、後側に位置して左右方向に延びた後脚14とを有している。
【0020】
前脚13は、後述するサイドフレーム15の上面15Eに対面するフランジ部13Aを有し、このフランジ部13Aには、上下方向に貫通して複数個のボルト挿通孔(図示せず)が設けられている。前脚13と同様に、後脚14は、フランジ部14Aと複数個のボルト挿通孔(図示せず)を有している。
【0021】
サイドフレーム15は、センタフレーム12の左右両側に前後方向に延びて設けられている。サイドフレーム15は、センタフレーム12の左右両側に対称形状をなすように配置されている。サイドフレーム15は、前後方向に延びた上板15A、下板15B、外板15Cおよび内板15Dによって角筒状に形成されている。上板15Aの表面は、前脚13、後脚14が取付けられる部分を含む広範囲が平坦な上面15Eとなっている。上板15A、下板15B、外板15Cおよび内板15Dの前部には、遊動輪ブラケット15Fが設けられ、上板15A、下板15B、外板15Cおよび内板15Dの後部には、駆動輪ブラケット15Gが設けられている。
【0022】
サイドフレーム15の上板15Aには、前脚13のフランジ部13A、後脚14のフランジ部14Aが対面する位置に、フランジ部13A、14Aのボルト挿通孔と連通可能な複数個のボルト挿通孔(図示せず)が設けられている。
【0023】
このように構成されたサイドフレーム15は、その上面15Eをセンタフレーム12の前脚13のフランジ部13Aと後脚14のフランジ部14Aとに当接させ、フランジ部13A,14Aに設けられたボルト挿通孔と上板15Aに設けられたボルト挿通孔に挿通したボルト16にナット(図示せず)を締着する。これにより、センタフレーム12の前脚13、後脚14にサイドフレーム15を取付けることができる。
【0024】
また、サイドフレーム15は、前脚13、後脚14に対して左右方向に位置をずらし、異なるボルト挿通孔にボルト16を挿通して締着することで、サイドフレーム15の位置を左右方向の外側または内側に移動して取付けることができる。即ち、サイドフレーム15を左右方向の内側に配置した場合には、左右のサイドフレーム15を接近させて下部走行体11の幅寸法を小さくできる。一方、サイドフレーム15を左右方向の外側に配置した場合には、左右のサイドフレーム15の間隔を広げて下部走行体11の幅寸法を大きくできる。
【0025】
駆動輪17は、サイドフレーム15の長さ方向の一端となる後端に位置する駆動輪ブラケット15Gに設けられている。駆動輪17は、油圧モータを動力源として回転駆動される。また、遊動輪18は、サイドフレーム15の長さ方向の他端となる前端に位置する遊動輪ブラケット15Fに設けられている。さらに、履帯19は、駆動輪17と遊動輪18とに亘って巻回されている。
【0026】
上ローラ20は、サイドフレーム15の上側に設けられている。上ローラ20は、履帯19を下側から支持するものである。上ローラ20は、例えば、センタフレーム12の前脚13、後脚14を挟んだ3箇所に設置されている。なお、3箇所の上ローラ20は、同様の構成を有しているため、前側に位置する上ローラ20について説明し、他の上ローラ20の説明は省略するものとする。
【0027】
図5、
図6に示すように、上ローラ20は、サイドフレーム15の上面15Eに取付けられた支持部材20Aと、上面15Eから上側に離れた位置で支持部材20Aに回転可能に支持されたローラ本体20Bと、を備えている。また、支持部材20Aの前面側の下部には、ねじ座20Cが設けられている。このねじ座20Cには、1個または複数個、例えば左右方向に間隔をもって2個のねじ穴(図示せず)が設けられている。この2個のねじ穴には、後述する前脚カバー22や第2土砂避け部材27を取付けるためのボルト28が螺着される。
【0028】
下ローラ21は、サイドフレーム15の下板15Bに設けられている。下ローラ21は、履帯19を上側から地面に押付けるものである。下ローラ21は、例えば、前後方向に間隔をもって複数個、例えば9個設けられている。
【0029】
前脚カバー22は、センタフレーム12の前脚13と前側に位置する上ローラ20の支持部材20Aとを覆うように、サイドフレーム15上に設けられている。前脚カバー22は、前脚13および複数個のボルト16を覆う大型な箱型形状の大箱部22Aと、大箱部22Aの前面の下側部分から前側に延びて支持部材20Aの下側部分を覆った上下方向に扁平な薄箱状の薄箱部22Bと、を有している。
【0030】
前脚カバー22は、大箱部22Aが図示しないボルトを用いて前脚13またはサイドフレーム15に取付けられている。また、薄箱部22Bは、上ローラ20のねじ座20Cに螺着されるボルト28によって第2土砂避け部材27のブラケット27Aと共締めされている。
【0031】
ここで、前脚カバー22には、1個または複数個、例えば2個のねじ座22Cが設けられている。2個のねじ座22Cは、サイドフレーム15の上側となる大箱部22Aの前側かつ左右方向の外側位置と薄箱部22Bの後側かつ左右方向の外側位置とに配置されている。この2個のねじ座22Cの位置は、大箱部22Aと薄箱部22Bと上ローラ20のローラ本体20Bとによって囲まれた空間の出口側となっている。2個のねじ座22Cには、ねじ穴が設けられ、第1土砂避け部材24のボルト挿通孔24Dに挿通されたボルト25が螺着される。
【0032】
また、薄箱部22Bには、上ローラ20のねじ座20Cの前側に重なる位置に、ねじ穴に対応して2個のボルト挿通孔22Dが設けられている。これにより、薄箱部22Bの前側部分は、後述するボルト28を第2土砂避け部材27のボルト挿通孔27Dとボルト挿通孔22Dに挿通してねじ座20Cに螺着することにより、上ローラ20の支持部材20Aに取付けられている。
【0033】
図1、
図2に示すように、後脚カバー23は、センタフレーム12の後脚14と後側に位置する上ローラ20の支持部材20Aとを覆うように、サイドフレーム15上に設けられている。後脚カバー23は、前脚カバー22と前後方向で対称形状をなすように形成されているから、その説明を省略する。
【0034】
次に、本実施形態の特徴部分となる土砂避け部材としての第1土砂避け部材24と第2土砂避け部材27の構成および機能について詳しく説明する。
【0035】
第1土砂避け部材24は、サイドフレーム15の上側に脱着可能に設けられている。第1土砂避け部材24は、前側の上ローラ20に隣接した位置に配置されている。第1土砂避け部材24は、サイドフレーム15上に堆積する土砂Sを部分的に避けるものである。
【0036】
詳しくは、第1土砂避け部材24は、前脚カバー22の大箱部22Aと薄箱部22Bと上ローラ20のローラ本体20Bとによって囲まれた空間に土砂Sが堆積するときに、この場所に予め存在することにより、堆積する土砂Sを部分的に避けることができる。換言すると、前脚カバー22の大箱部22Aと薄箱部22Bと上ローラ20のローラ本体20Bとによって囲まれた空間に土砂Sが堆積した後に、第1土砂避け部材24を取外すことにより、土砂Sの塊の中に後述の破壊空間26を形成することができる。
【0037】
図7に示すように、第1土砂避け部材24は、平板状のブラケット24Aと、ブラケット24Aの一方の面から延びた突起部24Bと、ブラケット24Aの他の面に設けられた把手24Cとにより構成されている。ブラケット24Aには、前脚カバー22に設けられた2個のねじ座22Cに対応して2個のボルト挿通孔24Dが設けられている。
【0038】
ブラケット24Aは、第1土砂避け部材24をサイドフレーム15の上側に取付けた状態では、傾斜して配置されている。これにより、ブラケット24A上には、土砂Sが堆積し難くなっている。
【0039】
ここで、突起部24Bは、サイドフレーム15から取外すときの移動方向、即ち、左右方向の外側となるブラケット24A側(基端側)で断面積が大きく、ブラケット24Aと反対側の先端側で断面積が小さくなるテーパ構造体として形成されている。
【0040】
第1土砂避け部材24は、突起部24Bを前脚カバー22の大箱部22Aの前面と薄箱部22Bの上面との角部に左右方向に延びて配置すると共に、ブラケット24Aをねじ座22Cに対面させる。この状態で、ボルト挿通孔24Dに挿通したボルト25をねじ座22Cに螺着する。これにより、第1土砂避け部材24は、土砂Sが堆積したときに排除作業が必要になる上ローラ20の近傍、即ち、前脚カバー22の大箱部22Aと薄箱部22Bと上ローラ20のローラ本体20Bとによって囲まれた空間に予め突起部24Bを設置することができる。
【0041】
そして、
図9に示すように、前脚カバー22の大箱部22Aと薄箱部22Bと上ローラ20のローラ本体20Bとによって囲まれた空間等に土砂Sが堆積した場合には、ボルト25を取外した後、把手24Cを掴んで左右方向の外側に引き抜く。これにより、
図10に示すように、土砂Sには、突起部24Bが抜かれた部分に破壊空間26が形成される。この第1土砂避け部材24の引き抜き作業では、把手24Cを設けている上に、突起部24Bがテーパ構造体として形成されているから、容易に引き抜くことができる。
【0042】
しかも、第1土砂避け部材24は、先端側で断面積が小さく、即ち、先端側が尖っている。これにより、第1土砂避け部材24の先端側を土砂Sに突き刺すことにより、固化した土砂Sを突き崩すための道具として用いることができる。また、第1土砂避け部材24を用いて土砂Sを突き崩すときには、把手24Cを掴むことで第1土砂避け部材24を容易に取扱うことができる。
【0043】
第2土砂避け部材27は、サイドフレーム15の上側に脱着可能に設けられている。第2土砂避け部材27は、前側の上ローラ20に隣接した位置に配置されている。第2土砂避け部材27は、サイドフレーム15上に堆積する土砂Sを部分的に避けるものである。
【0044】
詳しくは、第2土砂避け部材27は、前脚カバー22の薄箱部22Bと上ローラ20のローラ本体20Bとの間の空間に土砂Sが堆積するときに、この場所に予め存在することにより、堆積する土砂Sを部分的に避けることができる。換言すると、前脚カバー22の薄箱部22Bと上ローラ20のローラ本体20Bとの間の空間に土砂Sが堆積した後に、第2土砂避け部材27を取外すことにより、土砂Sの塊の中に前述した破壊空間26と同様の他の破壊空間を形成することができる。
【0045】
図8に示すように、第2土砂避け部材27は、平板状のブラケット27Aと、ブラケット27Aの一方の面から延びた突起部27Bと、ブラケット27Aの他の面に設けられた把手27Cとにより構成されている。ブラケット27Aには、上ローラ20のねじ座20Cに設けられた2個のねじ穴に対応して2個のボルト挿通孔27Dが設けられている。
【0046】
ブラケット27Aは、第2土砂避け部材27をサイドフレーム15の上側に取付けた状態では、上下方向に延びて配置されている。これにより、ブラケット27A上には、土砂Sが堆積し難くなっている。
【0047】
ここで、突起部27Bは、サイドフレーム15から取外すときの移動方向、即ち、前側となるブラケット27A側(基端側)で断面積が大きく、ブラケット27Aと反対側の先端側で断面積が小さくなるテーパ構造体として形成されている。
【0048】
第2土砂避け部材27は、突起部27Bを上ローラ20の支持部材20Aと薄箱部22Bの上面との角部に前後方向に延びて配置すると共に、薄箱部22Bを挟んでブラケット27Aを上ローラ20のねじ座20Cに対面させる。この状態で、ボルト挿通孔27Dに挿通したボルト28をねじ座20Cに螺着する。これにより、第2土砂避け部材27は、土砂Sが堆積したときに排除作業が必要になる上ローラ20の近傍、即ち、前脚カバー22の薄箱部22Bと上ローラ20のローラ本体20Bとの間の空間に予め突起部27Bを設置することができる。
【0049】
そして、前脚カバー22の薄箱部22Bと上ローラ20のローラ本体20Bとの間の空間等に土砂Sが堆積した場合には、ボルト28を取外した後、把手27Cを掴んで前側に引き抜く。これにより、土砂Sには、突起部27Bが抜かれた部分に他の破壊空間が形成される。この第2土砂避け部材27の引き抜き作業では、把手27Cを設けている上に、突起部27Bがテーパ構造体として形成されているから、第1土砂避け部材24と同様に、容易に引き抜くことができる。
【0050】
しかも、第2土砂避け部材27は、第1土砂避け部材24の突起部24Bと同様に、先端側が尖っている。これにより、第2土砂避け部材27の先端側を土砂Sに突き刺すことにより、固化した土砂Sを突き崩すための道具として用いることができる。また、第2土砂避け部材27を用いて土砂Sを突き崩すときには、把手27Cを掴むことで第2土砂避け部材27を容易に取扱うことができる。
【0051】
なお、第2土砂避け部材27は、奥まった位置に配置されているから、
図9に示すように、土砂Sが堆積すると埋もれてしまうことがある。このような場合には、第1土砂避け部材24を取外して土砂Sの一部を排除して第2土砂避け部材27のブラケット27Aを露出させた後に、第2土砂避け部材27を取外す。
【0052】
本実施形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0053】
オペレータは、キャブ4に搭乗し、運転席に座ってエンジンを始動し、走行用のレバー・ペダル装置を操作することにより、下部走行体11を走行させることができる。一方、オペレータは、作業用の操作レバー装置(いずれも図示せず)を操作することにより、上部旋回体2の旋回動作、作業装置3による土砂の掘削作業等を行うことができる。油圧ショベル1の走行時、作業時には、
図9に示すように、サイドフレーム15等に土砂Sが堆積することがある。
【0054】
そこで、堆積した土砂Sの排除作業について、サイドフレーム15の上側のうち、前側に位置する上ローラ20の周囲に堆積した土砂Sを排除する作業の一例について説明する。
【0055】
まず、作業者は、ボルト25を取外した後に、把手24Cを掴んで左右方向の外側に引き抜く。これにより、
図10に示すように、堆積した土砂Sに破壊空間26を形成する。第1土砂避け部材24を引き抜いて土砂Sに破壊空間26を形成したら、引き抜いた第1土砂避け部材24やバール等の他の工具を土砂Sに突き刺して土砂Sを破壊する。この場合、破壊空間26は、土砂Sを上側から突き崩したときに、土砂Sが下側に崩れるのを許すことができる。また、破壊空間26には、バールを挿入することができ、このバールを上側等に移動することでテコを利用して土砂Sを崩すことができる。このように、第1土砂避け部材24を引き抜いて破壊空間26を形成したことにより、固化した土砂Sを容易に崩すことができる。
【0056】
土砂Sの一部を排除して第2土砂避け部材27のブラケット27Aを露出させたら、ボルト28を取外した後、把手27Cを掴んで第2土砂避け部材27を前側に引き抜く。堆積した土砂Sに他の破壊空間を形成したら、例えば、バールを土砂Sに突き刺して土砂Sを破壊する。または、ボルト28を取外した第2土砂避け部材27を、把手27Cを持って左右方向の外側に引張り、土砂Sを破壊する。このように、堆積した土砂Sを破壊したら、サイドフレーム15の上側から細かな土砂を排除する。
【0057】
かくして、本実施の形態によれば、下部走行体11のサイドフレーム15の上側には、サイドフレーム15上に堆積する土砂Sを部分的に避ける第1土砂避け部材24と第2土砂避け部材27とが脱着可能に設けられている。従って、サイドフレーム15上に土砂Sが堆積した後に、第1土砂避け部材24を取外すことにより、堆積した土砂Sに破壊空間26を形成することができる。また、第2土砂避け部材27を取外すことにより、堆積した土砂Sに他の破壊空間を形成することができる。
【0058】
これにより、サイドフレーム15の上側に土砂Sが堆積して固化した場合でも、破壊空間26と他の破壊空間を起点として土砂Sを破壊することができる。この結果、サイドフレーム15上で土砂Sが堆積して固まっても、固まった土砂Sを容易に排除でき、作業性を向上することができる。
【0059】
また、堆積した土砂Sには、第1土砂避け部材24と第2土砂避け部材27とによって破壊空間26と他の破壊空間との2つを形成できる。これにより、作業者は、固化した土砂Sをより簡単に破壊することができ、排除作業の作業性を向上することができる。
【0060】
一方、第1土砂避け部材24と第2土砂避け部材27は、上ローラ20に隣接した位置に配置されている。従って、上ローラ20の周囲に形成される複雑な空間に堆積した土砂Sを容易に排除することができる。しかも、第1土砂避け部材24は、左右方向に延びるように設け、第2土砂避け部材27は、前後方向に延びるように設けている。これにより、上ローラ20の周囲に形成される複雑な空間に対して第1土砂避け部材24と第2土砂避け部材27とを効率よく配置することができ、この点でも土砂Sの排除作業の作業性を向上することができる。
【0061】
サイドフレーム15の上側に位置する前脚カバー22には、第1土砂避け部材24を脱着可能に取付けるためのボルト25が螺着されるねじ座22Cが設けられている。また、サイドフレーム15の上側に位置する上ローラ20の支持部材20Aには、第2土砂避け部材27を脱着可能に取付けるためのボルト28が螺着されるねじ座20Cが設けられている。これにより、第1土砂避け部材24と第2土砂避け部材27を容易に脱着することができ、土砂Sの排除作業を効率よく行うことができる。
【0062】
第1土砂避け部材24の突起部24Bと第2土砂避け部材27の突起部27Bとは、サイドフレーム15から取外すときの移動方向となる基端側で断面積が大きく、基端側と反対側の先端側で断面積が小さくなるテーパ構造体として形成されている。従って、第1土砂避け部材24と第2土砂避け部材27とは、土砂Sとの間に摩擦抵抗を生じることなく、容易に引き抜くことができる。しかも、突起部24Bと突起部27Bは、先端部が尖っているから、土砂Sを突き崩すための工具として第1土砂避け部材24と第2土砂避け部材27とを利用することができる。
【0063】
第1土砂避け部材24は、脱着するときに掴む把手24Cを有している。これにより、把手24Cを掴むことで第1土砂避け部材24を容易かつ確実に取り扱うことができる。また、第2土砂避け部材27は、脱着するときに掴む把手27Cを有している。これにより、把手27Cを掴むことで第2土砂避け部材27を容易かつ確実に取り扱うことができる。
【0064】
なお、実施形態では、上ローラ20に隣接して第1土砂避け部材24と第2土砂避け部材27とを設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、土砂避け部材は、土砂が堆積する虞がある場所であれば、上ローラから離れた場所に設ける構成としてもよい。
【0065】
実施形態では、第1土砂避け部材24を取付けるためのねじ座22Cを前脚カバー22に設け、第2土砂避け部材27を取付けるためのねじ座20Cを上ローラ20に設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、前脚カバーを廃止した場合には、第1土砂避け部材を取付けるためのねじ座をサイドフレーム等の他の部材に設ける構成としてもよい。同様に、第2土砂避け部材を取付けるためのねじ座をサイドフレーム等の他の部材に設ける構成としてもよい。
【0066】
また、実施形態では、下部走行体11は、センタフレーム12に対するサイドフレーム15の取付位置を幅方向に移動できるように構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、サイドフレームをセンタフレームに対して移動不可能に取付ける構成としてもよい。
【0067】
さらに、実施形態では、建設機械の下部走行体として油圧ショベル1の下部走行体11を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばブルドーザ等の履帯を備えた他の建設機械の下部走行体にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 上部旋回体(車体)
11 下部走行体(車体)
12 センタフレーム
15 サイドフレーム
17 駆動輪
18 遊動輪
19 履帯
20上ローラ
20C,22C ねじ座
24 第1土砂避け部材(土砂避け部材)
24C,27C 把手
27 第2土砂避け部材(土砂避け部材)
25,28 ボルト
S 土砂