(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/12 20060101AFI20240911BHJP
F16N 31/00 20060101ALI20240911BHJP
F16C 19/16 20060101ALI20240911BHJP
F16C 33/66 20060101ALI20240911BHJP
F16N 29/02 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
E02F9/12 Z
F16N31/00 C
F16C19/16
F16C33/66 Z
F16N29/02
(21)【出願番号】P 2021050574
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 昂太
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 克広
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-121665(JP,U)
【文献】特開平09-053256(JP,A)
【文献】実開平03-073798(JP,U)
【文献】実開昭59-102655(JP,U)
【文献】特開2015-048701(JP,A)
【文献】特開平10-205613(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03081703(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 1/00- 9/28
F16N 1/00-99/00
F16C 19/00-33/66
B66C 19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な下部走行体と、
前記下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、
前記下部走行体と前記上部旋回体との間に設けられ、内周側に全周にわたって内歯車が形成された旋回軸受と、
前記上部旋回体に設けられ、前記旋回軸受の前記内歯車に噛合するピニオンギヤを有する旋回装置と、
前記内歯車の下側に全周にわたって設けられ、前記内歯車と前記ピニオンギヤとの噛合部を潤滑するグリースを収容する環状のグリースバスと、
前記グリースバスと前記内歯車とにより区画されるグリース収容空間内に位置して前記上部旋回体に設けられ、前記グリース収容空間内のグリースを案内するグリース案内部材と、を備えた建設機械において、
前記グリース案内部材は、上側に進む程前記ピニオンギヤに近付く方向に傾斜した第1案内面
と、前記第1案内面の上側に設けられ前記第1案内面と上下方向に重なる方向に延びる第2案内面と、を有していることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記第1案内面は、凹状の曲面であることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
走行可能な下部走行体と、
前記下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、
前記下部走行体と前記上部旋回体との間に設けられ、内周側に全周にわたって内歯車が形成された旋回軸受と、
前記上部旋回体に設けられ、前記旋回軸受の前記内歯車に噛合するピニオンギヤを有する旋回装置と、
前記内歯車の下側に全周にわたって設けられ、前記内歯車と前記ピニオンギヤとの噛合部を潤滑するグリースを収容する環状のグリースバスと、
前記グリースバスと前記内歯車とにより区画されるグリース収容空間内に位置して前記上部旋回体に設けられ、前記グリース収容空間内のグリースを案内するグリース案内部材と、を備えた建設機械において、
前記グリース案内部材は、上側に進む程前記ピニオンギヤに近付く方向に傾斜した第1案内面を有し、
前記第1案内面は、前記旋回軸受の径方向の外側に位置する部位が内側に位置する部位よりも前記ピニオンギヤに近くなるように、前記旋回軸受の径方向に対して斜めに配置されていることを特徴とす
る建設機械。
【請求項4】
前記第2案内面は、前記グリースバスの底面と上下方向に間隔を開けて向かい合った平面であることを特徴とする請求項
1に記載の建設機械。
【請求項5】
前記グリース収容空間には、前記ピニオンギヤを周方向に挟む2個所位置に前記グリース案内部材がそれぞれ配置されており、
前記各グリース案内部材は、前記第1案内面の傾斜方向が前記ピニオンギヤを挟んで互いに反対向きになっていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項6】
前記ピニオンギヤおよび2個の前記グリース案内部材は、前記グリース収容空間の周方向に関して120°以下の範囲内に配置されていることを特徴とする請求項
5に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、土木、解体、地下工事等の各種の作業現場で用いられる建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、建設機械の代表例となる油圧ショベルは、運転席を有し作業装置(フロント装置)が取付けられた上部旋回体と、走行用の油圧モータおよび履帯を有する下部走行体とを備えている。上部旋回体と下部走行体は、例えば転がり軸受により構成される旋回軸受(旋回輪)を介して旋回可能に連結されている。上部旋回体は、上部旋回体側に設けられた旋回用の油圧モータを駆動することにより、下部走行体に対して旋回(回転)する。
【0003】
より詳しくは、転がり軸受(玉軸受)により構成される旋回軸受の外輪は、上部旋回体に固定され、旋回軸受の内輪は、下部走行体に固定される。下部走行体側となる内輪の内側(内周側)には、内歯車が設けられている。旋回用の油圧モータによって駆動されるピニオンギヤは、下部走行体側の内輪の内歯車と噛合している。従って、旋回用の油圧モータの駆動に基づいてピニオンギヤを回転させることにより、上部旋回体を下部走行体に対して旋回させることができる。
【0004】
ここで、旋回軸受の内歯車とピニオンギヤとの噛み合いを円滑にするために、内輪の内側(内歯車)には、グリースが充填されている。また、内輪の内側には、グリースが下部に落ちたときの受け皿として、グリースバスが設けられている。グリースは、内歯車からグリースバスにこぼれ落ちると、旋回動作によってグリースバスの底面(下面)に押し延ばされてしまい、潤滑剤として機能しにくくなるおそれがある。一方、特許文献1には、ピニオンギヤに隣接してスクレーパを設けた作業機械が記載されている。このスクレーパは、上部旋回体の旋回に伴って、グリースバスの底面に留まったグリースをグリースバスの内径側から径方向の外側に案内する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、グリースは、内歯車の歯面の全体(軸方向の全体)に塗布されている状態が望ましい。しかし、特許文献1のスクレーパは、グリースバスの底面に押し延ばされたグリースをグリースバスの径方向の中央に集めることしかできない形状になっている。このため、例えば、グリースバスに残存しているグリース量が少ない場合、特許文献1のスクレーパでは、グリースが内歯車の歯面の下部に塗布されるだけにとどまる可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、グリースバスの底面のグリースを旋回軸受の内歯車の歯面全体に安定して塗布することができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の建設機械は、走行可能な下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、前記下部走行体と前記上部旋回体との間に設けられ、内周側に全周にわたって内歯車が形成された旋回軸受と、前記上部旋回体に設けられ、前記旋回軸受の前記内歯車に噛合するピニオンギヤを有する旋回装置と、前記内歯車の下側に全周にわたって設けられ、前記内歯車と前記ピニオンギヤとの噛合部を潤滑するグリースを収容する環状のグリースバスと、前記グリースバスと前記内歯車とにより区画されるグリース収容空間内に位置して前記上部旋回体に設けられ、前記グリース収容空間内のグリースを案内するグリース案内部材と、を備えた建設機械において、前記グリース案内部材は、上側に進む程前記ピニオンギヤに近付く方向に傾斜した第1案内面と、前記第1案内面の上側に設けられ前記第1案内面と上下方向に重なる方向に延びる第2案内面と、を有している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、グリースバスの底面のグリースを旋回軸受の内歯車の歯面全体に安定して塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態による油圧ショベル(建設機械)を示す左側面図である。
【
図2】下部走行体のトラックフレーム、旋回軸受、上部旋回体の旋回フレーム、旋回装置等を示す左側面図である。
【
図3】旋回フレーム、旋回軸受、旋回装置、グリースバス等を
図6中のIII-III方向から見た縦断面図である。
【
図4】旋回フレーム、旋回軸受、旋回装置、グリースバス、スクレーパ(グリース案内部材)等を
図5中のIV-IV方向から見た拡大断面図である。
【
図5】旋回フレームを省略して旋回装置、旋回軸受、グリースバス、スクレーパ等を示す斜視図である。
【
図6】旋回軸受、旋回装置のピニオンギヤ、グリースバス、スクレーパ等を示す平面図である。
【
図7】旋回軸受、グリースバス、スクレーパ等を
図6中のVII-VII方向から見た拡大断面図である。
【
図9】変形例によるスクレーパを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を、建設機械を代表する油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
なお、以下の説明では、油圧ショベル1の前後方向は、前側を作業装置5側とし、後側を作業装置5とは反対側となるカウンタウエイト18側とする。また、油圧ショベル1の左右方向は、前後方向と直交する方向とする。例えば、
図1では、紙面の左右方向が油圧ショベル1の前後方向(X方向)に対応し、紙面の表裏方向が油圧ショベル1の左右方向(Y方向)に対応し、紙面の上下方向が油圧ショベル1の上下方向(Z方向)に対応する。
【0013】
図1ないし
図8は、実施の形態を示している。建設機械としての油圧ショベル1は、土木、林業、解体、地下工事等の作業現場で広く用いられる。実施の形態の油圧ショベル1は、例えば、街路地等の狭い作業現場での作業に適した小型(例えば、機械重量が1~6トン程度)の油圧ショベル(ミニショベル、小型油圧ショベル)として構成されている。即ち、実施の形態の油圧ショベル1は、後方超小旋回型油圧ショベルまたは後方小旋回型油圧ショベルに対応する。実施の形態の油圧ショベル1は、キャブ仕様の油圧ショベル1として構成されている。
【0014】
油圧ショベル1は、走行可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に設けられた旋回軸受3と、下部走行体2上に旋回軸受3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、上部旋回体4に設けられた作業装置5とを備えている。下部走行体2および上部旋回体4は、油圧ショベル1の車体を構成している。車体は、自走可能であり、かつ、旋回可能である。上部旋回体4の前側には、スイング式の作業装置5が揺動可能に取付けられている。油圧ショベル1は、作業装置5を用いて土砂の掘削作業等を行う。
【0015】
フロント装置とも呼ばれる作業装置5は、スイングポスト5Aと、ブーム5Bと、アーム5Cと、作業具としてのバケット5Dと、を備えている。スイングポスト5Aは、上部旋回体4(より具体的には、旋回フレーム14)の前側に、左右方向に揺動可能に設けられている。スイングポスト5Aには、ブーム5Bが回動可能に取付けられている。ブーム5Bの先端には、アーム5Cが回動可能に取付けられている。アーム5Cの先端には、バケット5Dが回動可能に取付けられている。また、作業装置5は、スイングポスト5Aを揺動させるスイングシリンダ(図示せず)と、ブーム5Bを回動させるブームシリンダ5Eと、アーム5Cを回動させるアームシリンダ5Fと、バケット5Dを回動させる作業具シリンダとしてのバケットシリンダ5Gとを備えている。
【0016】
下部走行体2は、ベースとなるトラックフレーム6を有している。トラックフレーム6は、センタフレーム7と、センタフレーム7を挟んで左右方向の両側に設けられ、前後方向に延びる左右のサイドフレーム8(左側のみ図示)とを備えている。サイドフレーム8の長さ方向の一端側(例えば、前後方向の前側)には遊動輪9が設けられており、他端側(例えば、前後方向の後側)には駆動輪10が設けられている。履帯11は、遊動輪9と駆動輪10とにわたって巻回されている。駆動輪10は、図示しない走行用油圧モータにより駆動される。走行用油圧モータは、駆動輪10を介して履帯11を周回駆動させることにより、油圧ショベル1を走行(自走)させる。
【0017】
下部走行体2と上部旋回体4との間には、旋回輪とも呼ばれる旋回軸受3が設けられている。このために、
図2ないし
図4に示すように、下部走行体2のセンタフレーム7は、上下方向を軸線とする円筒状のサークル12が設けられている。サークル12の上端面12Aは、旋回軸受3の内輪3Aが取付けられる。この場合、上端面12Aには、周方向に間隔をもって複数個の雌ねじ穴(図示せず)が設けられている。即ち、サークル12には、内輪3Aのボルト挿通孔3A1(
図5ないし
図7参照)に対応した複数個所に雌ねじ穴が設けられている。各雌ねじ穴には、内輪3Aをサークル12に固定するための内輪取付ボルト13(
図3および
図4参照)がそれぞれ螺着される。
【0018】
上部旋回体4は、支持構造体(ベースフレーム)となる旋回フレーム14を備えている。旋回フレーム14は、当該旋回フレーム14の中央部分を前後方向に延びた厚肉な鋼板からなる底板14A(
図3および
図4参照)を有している。底板14Aの下面には、旋回軸受3の外輪3Bが取付けられる。このために、底板14Aには、外輪3Bのボルト挿通孔3B1(
図5ないし
図7参照)に対応した複数個所に雌ねじ孔(図示せず)が設けられている。各雌ねじ孔には、外輪3Bを旋回フレーム14(底板14A)に固定するための外輪取付ボルト15(
図2ないし
図4参照)がそれぞれ螺着される。
【0019】
上部旋回体4は、旋回装置16の旋回用油圧モータ16Aを駆動することにより、下部走行体2上で旋回する。このために、旋回フレーム14には、旋回装置16が設けられている。また、旋回フレーム14には、キャブ17、カウンタウエイト18、エンジン19、油圧ポンプ(図示せず)、コントロールバルブ装置(図示せず)等が搭載されている。この場合、旋回フレーム14の前側に作業装置5が取付けられており、旋回フレーム14の後側にカウンタウエイト18が取付けられている。
【0020】
キャブ17は、旋回フレーム14の左側に配置されている。キャブ17は、ボックス状に形成され、内部がオペレータの運転室となっている。キャブ17内には、オペレータが座る運転席、油圧ショベル1を操作するための走行用レバー・ペダルおよび作業用レバーが設けられている。オペレータは、走行用レバー・ペダルおよび作業用レバーを操作することにより、下部走行体2による走行、上部旋回体4の旋回、作業装置5による掘削等を行うことができる。
【0021】
カウンタウエイト18は、作業装置5との重量バランスをとるために、キャブ17の後側に位置して旋回フレーム14の後端に設けられている。カウンタウエイト18は、左右方向に延びつつ、左右方向の中央が後方に突出した円弧状の重量物として形成されている。これにより、カウンタウエイト18の後面は、上部旋回体4が旋回したときに一定の旋回半径の仮想円内に収まる円弧面として形成されている。
【0022】
エンジン19は、カウンタウエイト18の前側に位置して旋回フレーム14の後部側に設けられている。エンジン19は、旋回フレーム14上に左右方向に延びる横置き状態で搭載されている。エンジン19は、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関によって構成されている。エンジン19の出力側には、油圧ポンプが取付けられている。エンジン19は、油圧ポンプを駆動する。なお、油圧ポンプを駆動するための駆動源(動力源)は、内燃機関となるエンジン19単体で構成できる他、例えば、エンジンと電動モータ、または、電動モータ単体で構成してもよい。
【0023】
油圧ポンプは、エンジン19によって回転駆動されることにより、作動油タンク(図示せず)に貯溜された作動油を圧油として油圧アクチュエータ(左右の走行用油圧モータ、旋回用油圧モータ16A、スイングシリンダ、ブームシリンダ5E、アームシリンダ5F、バケットシリンダ5G)に供給する。この場合、油圧ポンプの圧油は、コントロールバルブ装置を介して油圧アクチュエータに供給される。コントロールバルブ装置は、複数の方向制御弁からなる制御弁群である。コントロールバルブ装置は、油圧ポンプから吐出された圧油を、走行用レバー・ペダルおよび作業用レバーの操作に応じて油圧アクチュエータに分配する。これにより、油圧ショベル1は、走行、旋回、掘削等を行うことができる。
【0024】
次に、油圧ショベル1の旋回に関する構成について説明する。
【0025】
油圧ショベル1は、旋回軸受3と、旋回装置16と、グリースバス20とを備えている。旋回軸受3は、下部走行体2と上部旋回体4との間に設けられている。この場合、旋回軸受3は、下部走行体2のサークル12の上側に、サークル12と同軸に設けられている。旋回軸受3は、旋回フレーム14の底板14Aに設けられた旋回装置16によって水平方向で回転される。
【0026】
図3ないし
図7に示すように、旋回軸受3は、下部走行体2のサークル12上に取付けられた環状の内輪3Aと、内輪3Aの径方向の外側に同心円上に設けられた環状の外輪3Bと、内輪3Aの外周側に設けられた内輪軌道3Cと、外輪3Bの内周側に設けられた外輪軌道3Dと、内輪軌道3Cと外輪軌道3Dとの間に転動可能に配置され、内輪3Aと外輪3Bとを相対回転可能に支持する複数個の転動体3E(以下、玉3Eともいう)を備えている。
【0027】
内輪3Aは、サークル12の上端面12Aに複数本の内輪取付ボルト13を用いて一体的に取付けられている。内輪3Aは、例えば四角形状の断面をもって環状に形成され、その外周面には、半円状の凹溝からなる内輪軌道3Cが形成されている。一方、内輪3Aの内周側には、旋回装置16のピニオンギヤ16Bが噛合する内歯車3Fが形成されている。これにより、旋回軸受3には、内周側に全周にわたって内歯車3Fが形成されている。
【0028】
内輪3Aには、上下方向に延びつつ周方向に所定の間隔をもって複数のボルト挿通孔3A1が貫通孔として形成されている。各ボルト挿通孔3A1には、上側から下側に向けて内輪取付ボルト13が挿通される。即ち、内輪3Aは、サークル12の上端面12Aに載置した状態で、各ボルト挿通孔3A1に挿通した内輪取付ボルト13をサークル12の雌ねじ穴にそれぞれ螺着することにより、サークル12上に一体的に取付けられる。
【0029】
外輪3Bは、例えば四角形状の断面をもって内輪3Aよりも一回り大径な環状に形成されている。外輪3Bの内周面には、内輪3Aの内輪軌道3Cと対向する位置に半円状の凹溝からなる外輪軌道3Dが形成されている。ここで、外輪3Bは、内輪3Aに対して上側にオフセットした状態で設けられている。これにより、内輪3A(より具体的には、内輪取付ボルト13)と旋回フレーム14の底板14Aとの干渉を防いでいる。
【0030】
外輪3Bは、上下方向に延びつつ周方向に所定の間隔をもって複数本のボルト挿通孔3B1が貫通孔として形成されている。各ボルト挿通孔3B1には、下側から上側に向けて外輪取付ボルト15が挿通される。外輪取付ボルト15は、上部旋回体4の旋回フレーム14の底板14Aに設けた雌ねじ孔に螺着する。これにより、外輪3Bは、旋回フレーム14の底板14Aの下面に一体的に取付けられる。
【0031】
旋回装置16は、上部旋回体4に設けられている。より具体的には、旋回装置16は、旋回フレーム14の底板14Aに載置されている。旋回装置16は、旋回用油圧モータ16Aと、旋回軸受3の内歯車3Fに噛合するピニオンギヤ16Bと、旋回用油圧モータ16Aの回転を減速してピニオンギヤ16Bに伝達する減速機16Cと、を有している。旋回装置16は、旋回用油圧モータ16Aの回転に基づいて、旋回軸受3の内歯車3Fに噛合するピニオンギヤ16Bを回転させる。これにより、外輪3Bが内輪3Aに対して相対回転し、上部旋回体4が下部走行体2に対して旋回する。
【0032】
グリースバス20は、下部走行体2に設けられている。例えば、グリースバス20は、トラックフレーム6のサークル12の内周側に取付けられている。グリースバス20は、内輪3Aの内歯車3Fと旋回装置16のピニオンギヤ16Bとの噛合部に供給すためのグリース51(
図3)を貯えている。即ち、グリースバス20は、旋回軸受3の内歯車3Fの下側に全周にわたって設けられている。グリースバス20は、内歯車3Fとピニオンギヤ16Bとの噛合部を潤滑するグリース51を収容する環状のグリース収容部材である。
【0033】
グリースバス20は、旋回フレーム14の底板14Aの下面に対面して水平方向に延びる底部20Aと、底部20Aの内周縁から全周にわたって上下方向に立ち上がった円筒壁部20Bとを備えている。グリースバス20の底部20A(より具体的には、底面20A1)および円筒壁部20B(壁面20B1)と旋回軸受3の内歯車3Fとにより囲まれた環状の空間は、内部にグリース51が収容されるグリース収容空間21となっている。
【0034】
ところで、グリース51は、旋回装置16のピニオンギヤ16Bと噛合する内歯車3Fの歯面の全体(軸方向の全体)に塗布されている状態が望ましい。これに対して、前述の特許文献1には、グリースバスの底面に留まったグリースを径方向外側に案内するスクレーパをピニオンギヤの近傍に設けた構成が記載されている。しかし、特許文献1のスクレーパは、例えば、グリースバスに残存しているグリースの量が少ない場合に、内歯車の歯面全体にグリースを塗布できない可能性がある。
【0035】
そこで、実施の形態では、スクレーパ22は、グリースバス20の底面20A1に堆積したグリース51を旋回軸受3の内歯車3Fに向けて集めつつ掬い上げることができる形状となっている。このために、スクレーパ22は、グリース51を集めつつ掬い上げる傾斜面、より具体的には、旋回軸受3の半径方向を軸にする曲面状で、かつ、グリース51を半径方向外側(内歯車3F側)へ押し出す面を有している。
【0036】
これにより、実施の形態では、グリースバス20に少量しかグリース51がなくても、グリース51を内歯車3Fの上部まで誘導することができる。これにより、内歯車3Fの歯面全体にグリース51を効率よく塗布することができる。即ち、グリースバス20に落ちたグリース51を、内歯車3Fの歯面およびピニオンギヤ16Bの歯面の上部にまで効率的に塗布することができ、グリースバス20内のグリース51を効率的に利用することができる。
【0037】
以下、グリース案内部材としてのスクレーパ22の構成について、詳しく説明する。
【0038】
スクレーパ22は、グリースバス20と旋回軸受3の内歯車3Fとにより区画されるグリース収容空間21内に位置している。スクレーパ22は、グリース収容空間21内のグリース51を案内する。スクレーパ22は、上部旋回体4に設けられている。この場合、スクレーパ22は、旋回フレーム14の底板14Aに取付けボルト25(
図4参照)を用いて固定されている。
【0039】
即ち、
図4に示すように、旋回フレーム14の底板14Aには、スクレーパ22の取付け位置に対応してボルト挿通孔14A1が設けられている。ボルト挿通孔14A1には、上側から下側に向けて取付けボルト25が挿通される。一方、
図7および
図8に示すように、スクレーパ22には、取付けボルト25が螺合される雌ねじ孔22Cが設けられている。
【0040】
スクレーパ22は、旋回フレーム14のボルト挿通孔14A1に挿通された取付けボルト25が雌ねじ孔22Cに螺合することにより、旋回フレーム14の底板14Aに取付けられる。スクレーパ22は、旋回フレーム14の旋回に伴って、旋回装置16のピニオンギヤ16Bと共に、旋回中心軸線O(
図6参照)を中心に環状のグリース収容空間21内を周方向に移動する。
【0041】
スクレーパ22は、例えば、合成樹脂製またはゴム製のブロック体として形成されている。
図8に示すように、スクレーパ22は、くさび状の本体部22Aと、本体部22Aの上端側に設けられた略板状の覆い部22Bとを備えている。覆い部22Bには、上下方向に延びる一対の雌ねじ孔22Cが設けられている。雌ねじ孔22Cには、それぞれ取付けボルト25が螺合される。
【0042】
スクレーパ22は、第1案内面23を有している。これに加えてスクレーパ22は、第2案内面24を有している。第1案内面23は、くさび状の本体部22Aの傾斜面に対応する。第1案内面23は、上側に進む程、旋回装置16のピニオンギヤ16Bに近付く方向に傾斜している。これにより、第1案内面23の下端(即ち、本体部22Aの先端)は、上部旋回体4の旋回に伴ってグリースバス20の底面20A1に沿って周方向に進むことにより、底面20A1上のグリース51を上側に掬うことができる。
【0043】
第2案内面24は、覆い部22Bの下面に対応する。第2案内面24は、第1案内面23の上側に設けられており、第1案内面23と上下方向に重なる方向に延びている。第2案内面24は、グリースバス20の底面20A1と上下方向に間隔を開けて向かい合った平面である。第2案内面24は、第1案内面23によってグリースバス20の底面20A1から掬い上げられたグリース51がこれ以上上側に進まないように堰き止めることにより、上側に進むグリース51を径方向に案内する。
【0044】
この場合、第2案内面24の一端側、即ち、旋回軸受3の径方向に関して内径側は、グリースバス20の円筒壁部20Bに対面している。このため、第2案内面24にまで掬い上げられたグリース51は、内径側が円筒壁部20Bによって堰き止められることにより、径方向の外側(内歯車3F側)に押し出される。これにより、グリースバス20の底面20A1のグリース51を効率よく内歯車3Fに供給することができる。
【0045】
ここで、第1案内面23は、凹状の曲面となっている。即ち、第1案内面23は、下側に凹むように湾曲した湾曲面となっている。
図6および
図7に示すように、旋回軸受3の旋回中心Oを通り径方向に延びる仮想線を「A-A」とし、第1案内面23の下端縁と平行な仮想線を「B-B」とする。第1案内面23は、第1案内面23の下端縁23Aに対応する仮想線B-Bを移動させることにより形成される面となっている。即ち、第1案内面23は、仮想線B-Bを下端縁23Aに対して平行に、かつ、下端縁23Aから上側に進む程ピニオンギヤ16B側に近付けるように移動させることにより形成される凹状の曲面となっている。なお、第1案内面23は、平坦の傾斜面としてもよい。
【0046】
第1案内面23は、旋回軸受3の径方向の外側(内歯車3F側)に位置する部位(外側部位23B)が内側に位置する部位(内側部位23C)よりもピニオンギヤ16Bに近くなるように、旋回軸受3の径方向に対して斜めに配置されている。即ち、第1案内面23は、旋回軸受3の径方向の延びる仮想線A-Aに対して全体にわたって斜めに配置されている。これにより、第1案内面23は、旋回軸受3の径方向の延びる仮想線A-Aに対して傾斜角α(
図7)を有している。即ち、旋回軸受3の径方向の延びる仮想線A-Aと第1案内面23に対応する仮想線B-Bは角度αで交差している。また、第1案内面23の下端縁23A、即ち、本体部22Aの先端は、グリースバス20の底面20A1に接触させている。
【0047】
図5および
図6に示すように、グリース収容空間21には、ピニオンギヤ16Bを周方向に挟む2個所位置に、スクレーパ22がそれぞれ配置されている。この場合、各スクレーパ22は、第1案内面23の傾斜方向がピニオンギヤ16Bを挟んで互いに反対向きになっている。即ち、各スクレーパ22は、いずれも、第1案内面23がピニオンギヤ16Bに向けて上り坂となるように配置されている。ピニオンギヤ16Bおよび2個のスクレーパ22は、グリース収容空間21の周方向に関して120°以下の範囲内(より好ましくは、90°以下の範囲内、さらに好ましくは、60°以下の範囲内)に配置されている。即ち、ピニオンギヤ16Bおよび2個のスクレーパ22は、グリース収容空間21を周方向に3等分またはこれよりも多く等分(例えば、4等分、6等分)したうちの1の空間の範囲内に配置されている。これにより、2個のスクレーパ22をピニオンギヤ16Bに近付けて配置している。
【0048】
実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0049】
例えば、オペレータは、キャブ17内の運転席に座り、エンジン19を起動させる。エンジン19が起動すると、エンジン19によって油圧ポンプが駆動される。油圧ポンプから吐出した圧油は、運転席の周囲に設けられた走行用レバー・ペダルおよび作業用レバーの操作に応じて、走行用油圧モータ、旋回用油圧モータ16A、スイングシリンダ、ブームシリンダ5E、アームシリンダ5F、バケットシリンダ5G等に向けて吐出される。これにより、油圧ショベル1は、下部走行体2による走行、上部旋回体4の旋回、作業装置5による掘削等を行うことができる。
【0050】
ここで、旋回軸受3の内歯車3Fの歯面と旋回装置16のピニオンギヤ16Bの歯面とに塗布されたグリース51は、例えば、旋回動作や自重によって、それぞれの歯面から零れ落ち、グリースバス20の底面20A1に堆積する。これに対して、上部旋回体4の旋回フレーム14に取付けられたスクレーパ22は、上部旋回体4の旋回に伴ってグリース収容空間21内を周方向に移動する。
【0051】
このとき、
図7中にグリース51の流れを矢印F1および矢印F2で示すように、スクレーパ22は、グリースバス20の底面20A1に堆積したグリース51を、旋回軸受3の内歯車3Fの歯面に向けて掬い上げつつ径方向の外側(内歯車3F側)に誘導する。これにより、グリースバス20の底面20A1に堆積したグリース51を、旋回軸受3の内歯車3Fの歯面に再塗布することができる。即ち、グリースバス20の底面20A1に堆積したグリース51を、潤滑剤として再循環させることができる。
【0052】
この結果、油圧ショベル1のライフサイクルにおけるグリース51の使用量、および、グリース51を補充するためのメンテナンス作業の回数を低減することができる。併せて、スクレーパ22は、グリースバス20の底面20A1に堆積したグリース51を、内歯車3Fの歯面およびピニオンギヤ16Bの歯面の上部にまで塗布することができる。このため、内歯車3Fおよびピニオンギヤ16Bの耐久性を向上できる。
【0053】
以上のように、実施の形態によれば、グリース案内部材としてのスクレーパ22は、掬い上げ面となる第1案内面23を有している。これに加えて、スクレーパ22は、径方向誘導面となる第2案内面24を有している。このため、上部旋回体4の旋回に伴ってスクレーパ22がグリースバス20および内歯車3Fに対して相対回転すると、グリースバス20の底面20A1のグリース51は、第1案内面23によって底面20A1から掬い上げられる。また、第1案内面23によって底面20A1から掬い上げられたグリース51は、第2案内面24によって堰き止められることにより、径方向に押し出される。
【0054】
これにより、グリースバス20の底面20A1に堆積したグリース51を、内歯車3Fの歯面全体に効率よく安定して塗布することができる。この結果、グリースバス20の底面20A1に落ちたグリース51を内歯車3Fとピニオンギヤ16Bとの噛合部に安定して誘導することができ、グリース収容空間21内のグリース51を効率的に利用することができる。
【0055】
実施の形態によれば、第1案内面23は、凹状の曲面である。このため、グリースバス20の底面20A1に堆積したグリース51を底面20A1から円滑に掬い上げることができる。これと共に、第1案内面23上にグリース51を多く保持することができる。これにより、この面からも、グリース51を内歯車3Fの歯面全体に効率よく安定して塗布することができる。
【0056】
実施の形態によれば、第1案内面23は、旋回軸受3の径方向に対して斜めに配置されている。このため、グリースバス20の底面20A1のグリース51を、第1案内面23によって掬い上げつつ径方向外側(内歯車3F側)に案内することができる。即ち、第1案内面23は、旋回に伴って、旋回軸受3の径方向の内側(内歯車3Fとは反対側)に位置する部位(内側部位23C)が外側に位置する部位(外側部位23B)よりも先行してグリース収容空間21内を進む。
【0057】
これにより、グリース収容空間21内の内径側のグリース51は、第1案内面23によって外径側に案内される。即ち、第1案内面23は、旋回に伴って、グリースバス20の底面20A1のグリース51を掬い上げることに加えて、径方向外側にも案内することができる。これにより、この面からも、グリース51を内歯車3Fの歯面全体に効率よく安定して塗布することができる。
【0058】
実施の形態によれば、第2案内面24は、グリースバス20の底面20A1と上下方向に間隔を開けて向かい合った平面である。このため、第1案内面23によってグリースバス20の底面20A1から掬い上げられたグリース51は、グリースバス20の底面20A1と向かい合った第2案内面24によって堰き止められることにより、径方向に押し出される。このため、第1案内面23によってグリースバス20の底面20A1から掬い上げられたグリース51を、第2案内面24によって径方向に円滑に案内することができる。
【0059】
実施の形態によれば、グリース収容空間21には、ピニオンギヤ16Bを周方向に挟む2個所位置にスクレーパ22がそれぞれ配置されている。この場合、各スクレーパ22は、第1案内面23の傾斜方向がピニオンギヤ16Bを挟んで互いに反対向きになっている。このため、上部旋回体4が時計方向に旋回した場合には、一方のスクレーパ22によってグリースバス20の底面20A1に堆積したグリース51を内歯車3Fに案内することができる。これに対して、上部旋回体4が反時計方向に旋回した場合には、他方のスクレーパ22によってグリースバス20の底面20A1に堆積したグリース51を内歯車3Fに案内することができる。即ち、上部旋回体4がいずれの方向に旋回した場合でも、いずれかのスクレーパ22によってグリース51を内歯車3Fに安定して案内することができる。
【0060】
実施の形態によれば、ピニオンギヤ16Bおよび2個のスクレーパ22は、グリース収容空間21の周方向に関して120°以下の範囲内に配置されている。即ち、ピニオンギヤ16Bおよび2個のスクレーパ22は、グリース収容空間21を周方向に3等分したうちの1の空間の範囲内に配置されている。このため、ピニオンギヤ16Bの近傍でグリースバス20の底面20A1に堆積したグリース51を内歯車3Fに案内することができる。換言すれば、2個のスクレーパ22をピニオンギヤ16Bに近付けることができる。これにより、より確実に内歯車3Fとピニオンギヤ16Bとの噛合部をグリース51で満たすことができる。
【0061】
なお、実施の形態では、スクレーパ22を合成樹脂製またはゴム製のブロック体により構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、
図9に示す変形例のように、スクレーパ31を板体により構成してもよい。このスクレーパ31は、例えば、金属板等の板材を折り曲げ加工する等により形成されている。変形例のスクレーパ31も、実施の形態のスクレーパ22と同様に、掬い上げ面となる第1案内面32、および、径方向誘導面となる第2案内面33を有している。このため、グリースバス20の底面20A1のグリース51を旋回軸受3の内歯車3Fの歯面全体に安定して塗布することができる。
【0062】
なお、変形例のスクレーパ31は、合成樹脂またはゴム材料(例えば、合成ゴム)により形成してもよいし、実施の形態のスクレーパ22は、金属材料により形成してもよい。例えば、スクレーパ(グリース案内部材)を合成樹脂、ゴム材料等の柔軟な材料(弾性材料)で形成した場合には、第1案内面の下端縁、即ち、スクレーパの先端(掬い上げ部)をグリースバスの底面に接触させることができる。
【0063】
実施の形態では、スクレーパ22は、第1案内面23と第2案内面24との両方を有する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、スクレーパ(グリース案内部材)を、第1案内面のみ有する構成としてもよい。より具体的には、例えば、スクレーパを、くさび状の本体部のみにより構成されたブロック体とし、略板状の覆い部を設けない構成としてもよい。この場合、旋回フレームの底板の下面が、上方に進むグリースを堰き止める第2案内面として機能する。このことは、変形例についても同様である。
図9に示す変形例では、例えば、第1案内面32を有する本体部34に対し、取付孔35が設けられた覆い部36を、第1案内面32側(本体部34側)に折り返すのではなく、第1案内面32とは反対側に延びるように設ける構成とすることができる。
【0064】
実施の形態では、スクレーパ22の第1案内面23を凹状の曲面(下側に凹む湾曲面)とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、第1案内面を平坦な傾斜面としてもよい。また、第1案内面を凸状の曲面(上側に凸となる湾曲面)としてもよい。さらに、第1案内面に、グリースを内歯車に向けて案内するための溝または突条を設けてもよい。この場合、溝または突条は、例えば、上側に進む程内歯車に近付く方向に傾斜させることができる。また、第1案内面にグリースを保持するための小径の凹部または凸部を複数設けてもよい。
【0065】
また、第1案内面は、例えば、グリースを掬い上げつつ径方向外側(内歯車側)に案内できるように、複合湾曲面、即ち、湾曲の程度が異なる複数の湾曲面を滑らかに連続させた複合湾曲面としてもよい。いずれにしても、第1案内面の傾斜の大きさ、傾斜の方向、湾曲の程度、湾曲させる方向、第1案内面を1つの面とするか複数の面(複合面)とするかは、例えば、グリースを掬い上げつつ径方向外側に案内できるように、グリース収容空間の径方向の幅、直径、グリースの量、粘度等に応じて設定することができる。このことは、変形例についても同様である。
【0066】
実施の形態では、スクレーパ22の第1案内面23を旋回軸受3の径方向に対して斜めに配置した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、第1案内面を旋回軸受の径方向に対して一致させてもよい。即ち、第1案内面に対応する仮想線(例えば、
図6および
図7のB-B)と旋回軸受の旋回中心を通り径方向に延びる仮想線(例えば、
図6および
図7のA-A)とが一致するように、スクレーパの形状を設定してもよい。第1案内面に対応する仮想線と旋回軸受の旋回中心を通り径方向に延びる仮想線との傾斜角度は、例えば、グリースを掬い上げつつ径方向外側に案内できるように、グリース収容空間の径方向の幅、直径、グリースの量、粘度等に応じて設定することができる。このことは、変形例についても同様である。
【0067】
実施の形態では、スクレーパ22の第2案内面24を平坦面とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、第2案内面を凹状の曲面(上側に凹む湾曲面)、または、凸状の曲面(下側に凸となる湾曲面)としてもよい。さらに、第2案内面に、溝、突条、凹部、凸部を設けてもよい。このことは、変形例についても同様である。
【0068】
実施の形態では、ピニオンギヤ16Bおよび2個のスクレーパ22をグリース収容空間21の周方向に関して120°以下の範囲内に配置した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、ピニオンギヤおよび2個のスクレーパ(グリース案内部材)を、例えば、グリース収容空間の周方向に関して90°以下の範囲内、または、60°以下の範囲内に配置してもよい。このことは、変形例についても同様である。
【0069】
実施の形態では、グリース収容空間21に2個のスクレーパ22を配置した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、グリース収容空間に配置するスクレーパ(グリース案内部材)の個数を、3個としてもよいし、1個としてもよい。スクレーパ(グリース案内部材)の個数および配置は、例えば、グリースバスの底面のグリースを旋回軸受の内歯車の歯面全体に安定して塗布することができるように、グリース収容空間の径方向の幅、直径、グリースの量、粘度等に応じて設定することができる。このことは、変形例についても同様である。
【0070】
実施の形態および変形例では、スイング式の作業装置5を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、モノブーム式の作業装置を備えた油圧ショベル、オフセット式の作業装置を備えた油圧ショベル等、他の型式の作業装置(フロント装置)を備えた油圧ショベルにも適用することができる。また、作業装置5の作業具をバケット5Dとした場合を例に挙げて説明したが、例えば、圧砕機等の他の作業具を備えた作業装置を用いてもよい。
【0071】
実施の形態および変形例では、キャブ17を備えたキャブ仕様の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、キャノピ仕様の油圧ショベルを用いてもよい。また、実施の形態および変形例では、小型の油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、例えば、中型以上の油圧ショベルに適用してもよい。さらに、実施の形態および変形例では、クローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、ホイール式の油圧ショベル、油圧クレーン等、他の形式の建設機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 旋回軸受
3F 内歯車
4 上部旋回体
5 作業装置
16 旋回装置
16B ピニオンギヤ
20 グリースバス
20A1 底面
21 グリース収容空間
22,31 スクレーパ
23,32 第1案内面
23B 外側部位(旋回輪の径方向の外側に位置する部位)
23C 内側部位(旋回輪の径方向の内側に位置する部位)
24,33 第2案内面
51 グリース
A-A 仮想線(旋回中心を通り径方向に延びる仮想線)
B-B 仮想線(第1案内面に対応する仮想線)