IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本プラスト株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-エアバッグ装置 図1
  • 特許-エアバッグ装置 図2
  • 特許-エアバッグ装置 図3
  • 特許-エアバッグ装置 図4
  • 特許-エアバッグ装置 図5
  • 特許-エアバッグ装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/231 20110101AFI20240911BHJP
【FI】
B60R21/231
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021071769
(22)【出願日】2021-04-21
(65)【公開番号】P2022166510
(43)【公開日】2022-11-02
【審査請求日】2024-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】前嶋 秀旭
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-086731(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0080890(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016120368(DE,A1)
【文献】特開2002-225664(JP,A)
【文献】特開2017-087996(JP,A)
【文献】特開2013-071567(JP,A)
【文献】特開2009-051471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれた状態からガスの流入により膨張するエアバッグ本体部と、
前記エアバッグ本体部の内部に前記ガスを流入させるインフレータと、を備え、
前記エアバッグ本体部は、内部から外部に前記インフレータの本体の一部を挿通させる第1挿通穴を有し、
前記第1挿通穴では、前記エアバッグ本体部の内側に近い部分の開口は、前記エアバッグ本体部の外側に近い部分の前記開口よりも大きい、エアバッグ装置。
【請求項2】
前記第1挿通穴は、前記エアバッグ本体部を構成する複数の基布が重ね合わされた部位を貫通し、
前記第1挿通穴での前記開口の大きさは、前記基布ごとに異なる、請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記第1挿通穴での最小の前記開口は、前記第1挿通穴に挿通される前記インフレータの前記本体の一部の横断面よりも小さい、請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記インフレータは、前記エアバッグ本体部への取り付けに用いられるボルトを備え、
前記エアバッグ本体部は、前記ボルトを挿通させる第2挿通穴を有し、
前記第1挿通穴では、前記第2挿通穴からの距離は、前記エアバッグ本体部の内側に近い部分の前記開口の方が、前記エアバッグ本体部の外側に近い部分の前記開口よりも短い、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に設けられ、車両が衝突した際の衝撃から乗員を保護するエアバッグ装置がある。特許文献1は、エアバッグ本体部の内部にガスを流入させるインフレータを備え、エアバッグ本体部には内部から外部にインフレータの一部を挿通させるスリットが設けられているエアバッグ装置に関する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-81248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているエアバッグ装置では、エアバッグ本体部の内部から外部に向かってスリットにインフレータの一部を挿通させる作業は、基本的には作業者による手探りで行われる。したがって、組み立て時に同様の作業を要するエアバッグ装置では、作業者がより効率的に作業を行えるような改善が望まれる。
【0005】
そこで、本開示は、エアバッグ本体部の内部から外部にインフレータの本体の一部を導出させる際の作業性を改善させるエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエアバッグ装置は、折り畳まれた状態からガスの流入により膨張するエアバッグ本体部と、エアバッグ本体部の内部にガスを流入させるインフレータと、を備え、エアバッグ本体部は、内部から外部にインフレータの本体の一部を挿通させる第1挿通穴を有し、第1挿通穴では、エアバッグ本体部の内側に近い部分の開口は、エアバッグ本体部の外側に近い部分の開口よりも大きい。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、エアバッグ本体部の内部から外部にインフレータの本体の一部を導出させる際の作業性を改善させるエアバッグ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るエアバッグ装置の設置前の側面図である。
図2】一実施形態におけるエアバッグ本体部の縫い合わせ前の内面図である。
図3】一実施形態における第1挿通穴の形状を示す図である。
図4】エアバッグ装置に採用されるインフレータの斜視図である。
図5】第1挿通穴へのインフレータの挿通作業を説明する図である。
図6】第1挿通穴の他の形状を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、実質的に同一の機能及び構成を有する要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略し、本開示に直接関係のない要素については、図示を省略する。
【0010】
図1は、一実施形態に係るエアバッグ装置1の側面図である。エアバッグ装置1は、自動車等の車両に設置され、車両が衝突した際の衝撃から乗員を保護する。本実施形態では、エアバッグ装置1は、自動車の座席のドア側の側部に設置される、いわゆるサイドエアバッグ装置である。エアバッグ装置1は、エアバッグ本体部10と、インフレータ20とを備える。
【0011】
エアバッグ本体部10は、通常時には座席の側部に折り畳まれた状態で収納されている袋体である。例えば、自動車が側方から大きな衝撃を受けた際には、エアバッグ本体部10がガスの流入により膨張して展開することで、座席に座している乗員を衝撃から保護する。なお、図1では、座席に設置される前のエアバッグ装置1が示されており、エアバッグ本体部10は、未だ折り畳まれていない。また、図1中のエアバッグ本体部10の端部10dは、以下で詳説する第1挿通穴10aに隣接する一部を示し、第1挿通穴10aへのインフレータ20の本体の一部の挿通に伴って、エアバッグ本体部10の奥側に隠れた状態を示している。
【0012】
図2は、エアバッグ本体部10の縫い合わせ前の内面図である。エアバッグ本体部10の縫い合わせ前の外形は、中央線CLを基準としておおよそ対称となる形状である。そして、エアバッグ本体部10は、図2に示す状態から中央線CLを折り目として折り畳まれた後に、外周端部が図1に示す第1縫い目17で縫い合わされることで、全体として袋体となる。なお、エアバッグ本体部10は、このように縫製により作製されるものに限定されず、例えば、接着や溶着などを組み合わせて作製される場合もある。
【0013】
エアバッグ本体部10は、複数の基布により形成される。本実施形態では、エアバッグ本体部10は、例えば4つの基布として、メインパネル11と、第1保護パッチ12と、第2保護パッチ13と、第3保護パッチ14とを有する。メインパネル11は、エアバッグ本体部10の外形をなす基布である。第1保護パッチ12、第2保護パッチ13及び第3保護パッチ14は、それぞれ、インフレータ20の設置位置に合わせてメインパネル11に重ね合わされ、インフレータ20から放出されるガスや熱からメインパネル11を保護する基布である。本実施形態では、第1保護パッチ12と第2保護パッチ13との形状は、互いに同一であるものとする。第3保護パッチ14は、第1保護パッチ12及び第2保護パッチ13と重ね合わされる部分のほかに、インフレータ20の近傍に位置するメインパネル11の外周端部の一部の領域に重ね合わされる部分を含む。
【0014】
エアバッグ本体部10がこれらのような4つの基布を含む場合、メインパネル11が最も外側に位置する。メインパネル11には、第1保護パッチ12が重ね合わされる。第1保護パッチ12には、第2保護パッチ13が重ね合わされる。そして、第2保護パッチ13の一部には、第3保護パッチ14の一部が重ね合わされる。すなわち、すべての基布が重ね合わされる部分では、第3保護パッチ14が最も内側に位置する。
【0015】
また、4つの基布は、例えば、以下の二種の縫い目によりメインパネル11に対して縫い合わされる。第2縫い目15は、第1保護パッチ12、第2保護パッチ13及び第3保護パッチ14を互いに重ね合わせながらメインパネル11に縫い付ける縫い目である。また、第2縫い目15は、後述する第1挿通穴10a及び2つの第2挿通穴の周囲の補強も兼ねる。一方、第3縫い目16は、第3保護パッチ14におけるメインパネル11の外周端部の一部の領域に重ね合わされる部分をメインパネル11に縫い付ける縫い目である。
【0016】
なお、上記説明したエアバッグ本体部10を形成する基布の形状や枚数は一例である。特に、エアバッグ本体部10を形成する基布の枚数は、2枚以上あればよい。
【0017】
また、エアバッグ本体部10は、第1挿通穴10aと、第2挿通穴としての第1ボルト穴10b及び第2ボルト穴10cとを有する。
【0018】
図3は、第1挿通穴10aの形状を示す図である。図3(a)は、第1挿通穴10aをエアバッグ本体部10の内側から見た平面図である。図3(b)は、図3(a)中のIIIB-IIIB断面に対応した、第1挿通穴10aの断面図である。IIIB-IIIB断面の切断方向は、図2に示す中央線CLに沿っている。
【0019】
第1挿通穴10aは、エアバッグ本体部10の内部から外部にインフレータ20の本体の一部を挿通させる貫通穴である。本実施形態では、第1挿通穴10aは、中央線CL上で、かつ、エアバッグ本体部10の外周端部に近接した位置に設けられる。第1挿通穴10aは、エアバッグ本体部10のうち、エアバッグ本体部10を構成する複数の基布、すなわち、メインパネル11、第1保護パッチ12、第2保護パッチ13及び第3保護パッチ14が互いに重ね合わされた部位を貫通する。つまり、第1挿通穴10aは、各々の基布に予め形成されている開口の組み合わせである。本実施形態では、メインパネル11に形成されており、第1挿通穴10aの一部となる開口は、第1開口11aである。同様に、第1保護パッチ12に形成されており、第1挿通穴10aの一部となる開口は、第2開口12aである。第2保護パッチ13に形成されており、第1挿通穴10aの一部となる開口は、第3開口13aである。また、第3保護パッチ14に形成されており、第1挿通穴10aの一部となる開口は、第4開口14aである。
【0020】
ここで、図3に示す第1挿通穴10aの例では、第1開口11a、第2開口12a、第3開口13a及び第4開口14aの各々の大きさは、互いに異なる。また、第1挿通穴10aでは、エアバッグ本体部10の内側に近い部分の開口は、エアバッグ本体部10の外側に近い部分の開口よりも大きい。
【0021】
具体的には、まず、第1開口11a、第2開口12a、第3開口13a及び第4開口14aは、それぞれ、基布の平面上で中央線CLとは垂直となる方向を長手方向とした長穴である。各々の開口の長手方向の寸法は、おおよそ同一である。一方、基布の平面上で中央線CLの延伸方向に沿った各々の開口の短手方向の寸法は、互いに異なる。ここで、図3(b)に示すように、第1開口11aの短手方向の寸法をW1とし、第2開口12aの短手方向の寸法をW2とし、第3開口13aの短手方向の寸法をW3とし、第4開口14aの短手方向の寸法をW4とする。この場合、図3に示す第1挿通穴10aの例では、W1<W2<W3<W4の関係が成り立つ。つまり、第2開口12aは、第1開口11aよりも大きい。第3開口13aは、第2開口12aよりも大きい。第4開口14aは、第3開口13aよりも大きい。すなわち、いずれの開口についても、エアバッグ本体部10の内側に近い部分の開口がエアバッグ本体部10の外側に近い部分の開口よりも大きいという条件を満たす。
【0022】
また、図3に示す第1挿通穴10aの例では、短手方向の一方では、第1開口11a、第2開口12a、第3開口13a及び第4開口14aのそれぞれの一辺の位置は、重ね合わせ方向で揃っている。そのため、短手方向の他方では、第1開口11a、第2開口12a、第3開口13a及び第4開口14aのそれぞれの一辺の位置は、重ね合わせ方向で、段階的に異なっている。なお、短手方向において、各々の開口のそれぞれの一辺が段階的に異なる側がどのように設定されるかについては、以下、インフレータ20の説明と併せて説明する。
【0023】
第2挿通穴は、インフレータ20をエアバッグ本体部10に取り付けるために用いられる貫通穴である。本実施形態では、以下で詳説するが、インフレータ20は、取り付け用のボルトとして、第1スタッドボルト24及び第2スタッドボルト25を備える。この場合、第2挿通穴は、第1スタッドボルト24を挿通させるための第1ボルト穴10b、及び、第2スタッドボルト25を挿通させるための第2ボルト穴10cである。本実施形態では、2つの第2挿通穴は、それぞれ、中央線CL上で、かつ、第1挿通穴10aよりもエアバッグ本体部10の外周端部から遠い位置に設けられる。また、第2挿通穴は、第1挿通穴10aと同様に、エアバッグ本体部10のうち、メインパネル11、第1保護パッチ12、第2保護パッチ13及び第3保護パッチ14が互いに重ね合わされた部位を貫通する。
【0024】
図4は、エアバッグ装置1に採用され得る一例としてのインフレータ20の斜視図である。インフレータ20は、いわゆるシリンダ型であり、エアバッグ本体部10の内部にガス(膨張ガス)を導入する装置である。例えば、インフレータ20は、点火器やガス発生剤等を備える。この場合、インフレータ20は、不図示の電子制御ユニットが自動車の衝突などを検知又は予測したときに発する電気信号をコネクタ部23から受信する。そして、受信した電気信号に基づいて点火器がガス発生剤を燃焼させることで、エアバッグ本体部10の内部に向けて、ガス噴出口21から急速にガスが導入される。以下、インフレータ20において、ガス噴出口21が設けられている側を先端部とすると、反対側に相当するコネクタ部23が設けられている側を後端部22と表記する。
【0025】
また、インフレータ20は、上記のとおり、第1スタッドボルト24及び第2スタッドボルト25を備える。第1スタッドボルト24と第2スタッドボルト25とは、インフレータ20の延伸方向で互いに離間する。第1スタッドボルト24は、ガス噴出口21に近い側に設けられる。第2スタッドボルト25は、後端部22に近い側に設けられる。また、第1スタッドボルト24と第2スタッドボルト25とは、インフレータ20の側面から同方向に向かって突出する。
【0026】
ここで、第1挿通穴10aにおいて、短手方向の一方では、各々の開口のそれぞれの一辺の位置が重ね合わせ方向で揃い、短手方向の他方では、各々の開口のそれぞれの一辺の位置が重ね合わせ方向で段階的に異なる。この場合、短手方向において、各々の開口のそれぞれの一辺の位置が段階的に異なる側は、一方の揃う側よりも、第2挿通穴である第1ボルト穴10b及び第2ボルト穴10cに近い。つまり、第1挿通穴10aにおける各々の開口の大きさの差を考慮すると、第2挿通穴(例えば第2ボルト穴10c)からの距離L(図5参照)は、エアバッグ本体部10の内側に近い部分の開口の方が、外側に近い部分の開口よりも短いことになる。例えば、第2ボルト穴10cから第4開口14aまでの距離Lは、第2ボルト穴10cから第3開口13aまでの距離Lよりも短い。したがって、第1挿通穴10aの一部は、エアバッグ本体部10の内側に最も近い第4開口14aからエアバッグ本体部10の外側に最も近い第1開口11aに向かう間では、第2挿通穴から段階的に離れる方向に傾斜しているとみなされる。
【0027】
次に、エアバッグ装置1の作用について説明する。
【0028】
図5は、第1挿通穴10aへのインフレータ20の挿通作業を説明する図である。図5では、図3(b)に対応した第1挿通穴10aの断面が描画されているとともに、挿通方向の基準として、第2挿通穴である第2ボルト穴10cの断面が描画されている。また、図5では、インフレータ20の挿通方向を白抜きの矢印で示している。
【0029】
エアバッグ装置1の組み立てでは、インフレータ20全体をエアバッグ本体部10の内部に収容させた後に、インフレータ20の本体の一部である後端部22のみを第1挿通穴10aに挿通させて、エアバッグ本体部10の外部に導出させる挿通作業がある。このとき、当初の段階では、インフレータ20全体がエアバッグ本体部10の内部にあることから、作業者は、手探りで後端部22を第1挿通穴10aに挿通させる必要がある。
【0030】
ここで、本実施形態では、第1挿通穴10aの開口形状は、一律ではなく、エアバッグ本体部10の内側に近い部分の開口の方が、エアバッグ本体部10の外側に近い部分の開口よりも大きく設定されている。そのため、作業者は、まず、インフレータ20の後端部22を、エアバッグ本体部10の内側に最も近い第4開口14aに位置決めしやすい。次に、作業者がインフレータ20をエアバッグ本体部10の外側に向かって押し込むと、後端部22は、図5に示すように、第1挿通穴10aに段階的に形成されている傾斜にガイドされながら進む。最終的に、後端部22は、エアバッグ本体部10の外側に最も近く、かつ、最小の開口である第1開口11aから導出される。
【0031】
参考として、第1挿通穴10aの開口形状が一律であり、かつ、第1挿通穴10aの開口が比較的大きく設定されていると仮定する。この場合、作業者は、インフレータ20の後端部22を第4開口14aに位置決めしやすい。ところが、エアバッグ本体部10の外側に最も近い第1開口11aまでもが大きく設定されているので、エアバッグ本体部10がガスの流入により膨張して展開するときには、第1挿通穴10aからのガス漏れが多くなるおそれがある。
【0032】
更に参考として、第1挿通穴10aの開口形状が一律であり、かつ、第1挿通穴10aの開口が比較的小さく設定されていると仮定する。この場合、エアバッグ本体部10がガスの流入により膨張して展開するときには、第1挿通穴10aからのガス漏れを抑えることができる。ところが、エアバッグ装置1の組み立てでは、作業者は、インフレータ20の後端部22を第4開口14aに位置決めしづらく、かつ、第1挿通穴10aへの挿通もさせづらい。
【0033】
これらの参考と比較すると、本実施形態によれば、第1挿通穴10aを形成する各々の開口のうち大きく設定される開口により、後端部22の第1挿通穴10aへの位置決めや挿通のしやすさが実現される。加えて、本実施形態によれば、第1挿通穴10aを形成する各々の開口のうち小さく設定される開口により、ガス漏れの抑止が実現され得る。つまり、本実施形態によれば、作業者の作業性を向上させることと、エアバッグ本体部10の展開時のガス漏れを抑止することとが両立される。
【0034】
更に、作業者によってインフレータ20の後端部22が第1挿通穴10aから導出された後、引き続き、インフレータ20の第1スタッドボルト24と第2スタッドボルト25とが、第2挿通穴である第1ボルト穴10b又は第2ボルト穴10cに挿通される。ここで、第1挿通穴10aでは、段階的に形成されている傾斜は、第2挿通穴に近い側に設けられ、かつ、第4開口14aから第1開口11aに向かう間では第2挿通穴から離れる方向に傾斜している。つまり、エアバッグ本体部10の内部に収容されたままであるインフレータ20の本体の大部分は、第2挿通穴に近づくような姿勢で傾くことになるので、作業者は、第2挿通穴に対してインフレータ20の姿勢を合わせやすい。
【0035】
次に、第1挿通穴10aの他の形状について説明する。図6は、図3(b)又は図5の描画に準じた、第1挿通穴10aの他の形状を示す断面図である。以下、図3に示す上記説明した第1挿通穴10aを第1例とし、例示番号を付す。なお、図6に示すすべての例において、第1挿通穴10aを形成する第1開口11a、第2開口12a、第3開口13a及び第4開口14aは、第1例と同様に長穴である。
【0036】
図6(a)は、第1挿通穴10aの第2例を示す図である。第2例では、第1例と同様に、いずれの開口についても、エアバッグ本体部10の内側に近い部分の開口がエアバッグ本体部10の外側に近い部分の開口よりも大きい。しかし、第2例では、第1例とは異なり、各々の開口は、それぞれ、基布の重ね合わせ方向に沿った中心軸AXを重心位置として配置される。第2例が採用された場合、インフレータ20の挿通方向は、基本、中心軸AXに沿った方向となる。このような第2例によれば、第2挿通穴に対してインフレータ20の姿勢を合わせることは難しいが、作業者の作業性を向上させることと、エアバッグ本体部10の展開時のガス漏れを抑止することとは、第1例と同様に両立される。
【0037】
図6(b)は、第1挿通穴10aの第3例を示す図である。第3例では、第2例と同様に、各々の開口は、それぞれ、中心軸AXを重心位置として配置される。一方、第3例では、第1開口11aと第2開口12aとが同一形状であり、かつ、第3開口13aと第4開口14aとが同一形状である。この場合、第1開口11aと第2開口12aとの組み合わせを1つの開口とみなすことができる。同様に、第3開口13aと第4開口14aとの組み合わせを1つの開口とみなすことができる。そして、第3開口13aと第4開口14aとを組み合わせた開口は、第1開口11aと第2開口12aとを組み合わせた開口よりも大きい。つまり、第3例であっても、エアバッグ本体部10の内側に近い部分の開口がエアバッグ本体部10の外側に近い部分の開口よりも大きいという条件を満足する。したがって、このような第1挿通穴10aによれば、第2挿通穴に対してインフレータ20の姿勢を合わせることは難しいが、作業者の作業性を向上させることと、エアバッグ本体部10の展開時のガス漏れを抑止することとは、第2例と同様に両立される。
【0038】
図6(c)は、第1挿通穴10aの第4例を示す図である。第4例では、第1例と同様に、いずれの開口についても、エアバッグ本体部10の内側に近い部分の開口がエアバッグ本体部10の外側に近い部分の開口よりも大きい。しかし、第4例では、第1例とは異なり、第1挿通穴10aに段階的に形成されている傾斜は、短手方向において、第2挿通穴に近い側だけでなく、第2挿通穴から遠い側にも設けられている。また、双方の傾斜は、それぞれ、第4開口14aから第1開口11aに向かう間では第2挿通穴から離れる方向に傾斜している。このような第4例によれば、作業者の作業性を向上させることと、エアバッグ本体部10の展開時のガス漏れを抑止することとを両立させつつ、インフレータ20の挿通方向が、より厳密に設定される。したがって、第2挿通穴に対してインフレータ20の姿勢を合わせることについては、第1例よりも有利である。
【0039】
なお、上記説明では、第1挿通穴10aの形状を規定する、第1開口11a、第2開口12a、第3開口13a及び第4開口14aが、それぞれ、基布の平面上で中央線CLとは垂直となる方向を長手方向とした長穴であるものとした。しかし、上記条件を満たすような、インフレータ20の挿通方向に対して段階的に開口が小さくなる形状であれば、第1挿通穴10aの開口形状は、長穴状に限定されない。
【0040】
次に、エアバッグ装置1の効果について説明する。
【0041】
本実施形態に係るエアバッグ装置1は、折り畳まれた状態からガスの流入により膨張するエアバッグ本体部10と、エアバッグ本体部10の内部にガスを流入させるインフレータ20とを備える。エアバッグ本体部10は、内部から外部にインフレータ20の本体の一部を挿通させる第1挿通穴10aを有する。第1挿通穴10aでは、エアバッグ本体部10の内側に近い部分の開口は、エアバッグ本体部10の外側に近い部分の開口よりも大きい。
【0042】
ここで、第1挿通穴10aに挿通されるインフレータ20の本体の一部は、上記例示では、後端部22に相当する。
【0043】
このエアバッグ装置1によれば、第1挿通穴10aへのインフレータ20の挿通作業の際、第1挿通穴10aの開口形状がインフレータ20の挿通方向に対して段階的に小さくなる形状となる。したがって、作業者がインフレータ20を第1挿通穴10aに挿通させるときには、第1挿通穴10a自体が挿通を導くガイドとして作用するので、作業者の作業性を向上させることができる。また、第1挿通穴10aが挿通方向に対して小さくなるのは段階的であるため、第1挿通穴10aのどの位置からインフレータ20の本体の一部の挿通が開始されても、第1挿通穴10aをガイドとして作用させることができる。すなわち、挿通作業の容易さを増し、作業性を向上させることができる。
【0044】
このように、本実施形態によれば、エアバッグ本体部10の内部から外部にインフレータ20の本体の一部を導出させる際の作業性を改善させるエアバッグ装置1を提供することができる。
【0045】
また、エアバッグ装置1では、第1挿通穴10aは、エアバッグ本体部10を構成する複数の基布が重ね合わされた部位を貫通してもよい。第1挿通穴10aでの開口の大きさは、基布ごとに異なってもよい。
【0046】
ここで、エアバッグ本体部10を構成する複数の基布は、上記例示では、メインパネル11、第1保護パッチ12、第2保護パッチ13及び第3保護パッチ14に相当する。また、それぞれの基布に形成されている開口は、上記例示では、第1開口11a、第2開口12a、第3開口13a及び第4開口14aである。
【0047】
このエアバッグ装置1によれば、段階的に開口形状が変化する第1挿通穴10aを形成する際に、個々の基布に形成する開口の形状をそれぞれ異ならせればよいので、エアバッグ本体部10に対して容易に第1挿通穴10aを設けることができる。
【0048】
また、上記例示では、第1挿通穴10aが形成される部分の基布の枚数を4枚としたが、更に多くの枚数の基布でエアバッグ本体部10が形成される場合も想定される。このように複数の基布が重ね合わされた部位に第1挿通穴10aを形成するエアバッグ装置1によれば、第1挿通穴10aが形成される部分の基布の枚数が更に増加したとしても、挿通作業の作業性を低下させづらい。
【0049】
また、エアバッグ装置1では、第1挿通穴10aでの最小の開口は、第1挿通穴10aに挿通されるインフレータ20の本体の一部の横断面よりも小さくてもよい。
【0050】
ここで、インフレータ20の本体の一部の横断面は、図4の例示を参照すると、後端部22の直径Dで規定される横断面を示す。
【0051】
このエアバッグ装置1によれば、第1挿通穴10aでの最小の開口、例えば、上記例示でいう第1開口11aが、後端部22の横断面よりも小さく設定されるので、後端部22は、最終的には第1挿通穴10aを押し広げながら外部に導出されることになる。したがって、第1挿通穴10aと、挿通後のインフレータ20の本体の一部との間の隙間が極力小さくなるので、エアバッグ本体部10がガスの流入により膨張して展開するときに、第1挿通穴10aからのガス漏れを最小限とすることができる。
【0052】
更に、エアバッグ装置1では、インフレータ20は、エアバッグ本体部10への取り付けに用いられるボルトを備えてもよい。エアバッグ本体部10は、ボルトを挿通させる第2挿通穴を有してもよい。この場合、第1挿通穴10aでは、第2挿通穴からの距離は、エアバッグ本体部10の内側に近い部分の開口の方が、エアバッグ本体部10の外側に近い部分の開口よりも短くてもよい。
【0053】
ここで、インフレータ20に備えられるボルトは、上記例示では、第1スタッドボルト24及び第2スタッドボルト25に相当する。また、第2挿通穴は、上記例示では、第1ボルト穴10b及び第2ボルト穴10cに相当する。
【0054】
このエアバッグ装置1によれば、エアバッグ本体部10の内部に収容されたままとなるインフレータ20の本体の大部分は、第2挿通穴に近づくような姿勢で傾くことになるので、作業者は、第2挿通穴に対してインフレータ20の姿勢を合わせやすい。つまり、第1挿通穴10aへのインフレータ20の挿通作業のみならず、エアバッグ本体部10へのインフレータ20の取り付け作業全体としても、作業者の作業性を向上させることができる。
【0055】
なお、本実施形態に係るエアバッグ装置1は、自動車の座席の側部に設置されるサイドエアバッグ装置であるものとして説明したが、座席の側部に設置されるものに限定されず、車内のあらゆる部位に設置されるエアバッグ装置として適用可能である。
【0056】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正又は変形をすることが可能である。また、上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 エアバッグ装置
10 エアバッグ本体部
10a 第1挿通穴
10b 第1ボルト穴
10c 第2ボルト穴
11 メインパネル
11a 第1開口
12 第1保護パッチ
12a 第2開口
13 第2保護パッチ
13a 第3開口
14 第3保護パッチ
14a 第4開口
20 インフレータ
22 後端部
24 第1スタッドボルト
25 第2スタッドボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6