IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本製鋼所の特許一覧

特許7554158シャットオフノズル、シャットオフノズル調整用の治具、およびニードル弁の位置調整方法
<>
  • 特許-シャットオフノズル、シャットオフノズル調整用の治具、およびニードル弁の位置調整方法 図1
  • 特許-シャットオフノズル、シャットオフノズル調整用の治具、およびニードル弁の位置調整方法 図2
  • 特許-シャットオフノズル、シャットオフノズル調整用の治具、およびニードル弁の位置調整方法 図3
  • 特許-シャットオフノズル、シャットオフノズル調整用の治具、およびニードル弁の位置調整方法 図4
  • 特許-シャットオフノズル、シャットオフノズル調整用の治具、およびニードル弁の位置調整方法 図5A
  • 特許-シャットオフノズル、シャットオフノズル調整用の治具、およびニードル弁の位置調整方法 図5B
  • 特許-シャットオフノズル、シャットオフノズル調整用の治具、およびニードル弁の位置調整方法 図5C
  • 特許-シャットオフノズル、シャットオフノズル調整用の治具、およびニードル弁の位置調整方法 図5D
  • 特許-シャットオフノズル、シャットオフノズル調整用の治具、およびニードル弁の位置調整方法 図6
  • 特許-シャットオフノズル、シャットオフノズル調整用の治具、およびニードル弁の位置調整方法 図7
  • 特許-シャットオフノズル、シャットオフノズル調整用の治具、およびニードル弁の位置調整方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】シャットオフノズル、シャットオフノズル調整用の治具、およびニードル弁の位置調整方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/23 20060101AFI20240911BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20240911BHJP
   B22D 17/20 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
B29C45/23
B29C45/76
B22D17/20 M
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021084452
(22)【出願日】2021-05-19
(65)【公開番号】P2022177985
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】中山 清貴
(72)【発明者】
【氏名】竹中 正彦
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-109429(JP,A)
【文献】特開平1-176533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/23
B29C 45/76
B22D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出材料を流す射出流路が軸方向に形成されているノズル部と、
前記ノズル部において前記ノズル部の外周面から前記射出流路に達している前記軸方向に対して斜めのニードル孔に進退自在に挿入されて前記射出流路を開閉するニードル弁と、
前記ニードル弁を進退方向に駆動するニードル弁駆動手段と、
前記ニードル弁駆動手段を支持する支持構造と、を備え、
前記支持構造は、前記ノズル部に対して前記ニードル弁駆動手段を前記軸方向にスライドして前記ニードル弁の前記軸方向における位置を調整する軸方向位置調整手段を備えている、シャットオフノズル。
【請求項2】
前記支持構造は、前記ノズル部が設けられる射出装置に対して固定されている固定ブラケットと、
前記固定ブラケットに対して前記軸方向にスライド自在に設けられていると共に前記ニードル弁駆動手段を支持している連結ブラケットと、を備え、
前記軸方向位置調整手段は、前記連結ブラケットの前記固定ブラケットに対する前記軸方向における位置を調整する調整ボルトからなる、請求項1に記載のシャットオフノズル。
【請求項3】
前記ニードル弁駆動手段は、前記連結ブラケットに対してピンにより、回転自在に支持されている、請求項2に記載のシャットオフノズル。
【請求項4】
前記ニードル弁駆動手段はピストンシリンダユニットからなる、請求項2または請求項3に記載のシャットオフノズル。
【請求項5】
前記支持構造は、前記ニードル弁をその軸部において摺動可能に支持するガイド機構を備えている、請求項1~4のいずれかの項に記載のシャットオフノズル。
【請求項6】
前記ガイド機構は真鍮から形成されている、請求項5に記載のシャットオフノズル。
【請求項7】
前記ガイド機構にはブッシュが設けられ前記軸部が通されている、請求項5または請求項6に記載のシャットオフノズル。
【請求項8】
射出材料を流す射出流路が軸方向に形成されているノズル部と、
前記ノズル部において前記ノズル部の外周面から前記射出流路に達している前記軸方向に対して斜めのニードル孔に進退自在に挿入されて前記射出流路を開閉するニードル弁と、
前記ニードル弁を進退方向に駆動するニードル弁駆動手段と、
前記ニードル弁駆動手段を支持する支持構造と、を備えたシャットオフノズルにおいて、
前記ニードル弁の前記軸方向における位置を調整する治具であって、
前記治具は、前記ニードル孔の径よりわずかに小径の疑似ニードルを備え、前記疑似ニードルは、その後端部において前記疑似ニードルと同軸に位置確認凹部が形成されており、
前記位置確認凹部は、前記疑似ニードルが前記ニードル孔に収納された状態で、駆動された前記ニードル弁の先端部が収納されると前記ニードル弁の前記軸方向における位置が適正になるように前記後端部に形成されている、シャットオフノズル調整用の治具。
【請求項9】
前記治具は位置合わせ部、を備え、
前記位置合わせ部は、前記疑似ニードルが前記ニードル孔に収納された状態で、前記軸方向にスライドされた前記ニードル弁の軸部が押し当てられると前記ニードル弁の位置が合うように構成されている、請求項8に記載のシャットオフノズル調整用の治具。
【請求項10】
前記治具はノズル接触部を備え、
前記ノズル接触部は、前記疑似ニードルが前記ニードル孔に収納された状態で前記ノズル部の外周面に接触するように構成されている、請求項8または請求項9に記載のシャットオフノズル調整用の治具。
【請求項11】
加熱シリンダと、
前記加熱シリンダに入れられたスクリュと、
前記加熱シリンダに設けられているシャットオフノズルと、を備えた射出装置であって、
前記シャットオフノズルは、射出材料を流す射出流路が軸方向に形成されているノズル部と、
前記ノズル部において前記ノズル部の外周面から前記射出流路に達している前記軸方向に対して斜めのニードル孔に進退自在に挿入されて前記射出流路を開閉するニードル弁と、
前記ニードル弁を進退方向に駆動するニードル弁駆動手段と、
前記ニードル弁駆動手段を支持する支持構造と、を備え、
前記支持構造は、前記ノズル部に対して前記ニードル弁駆動手段を前記軸方向にスライドして前記ニードル弁の前記軸方向における位置を調整する軸方向位置調整手段を備えている、射出装置。
【請求項12】
前記支持構造は、前記ノズル部が設けられる射出装置に対して固定されている固定ブラケットと、
前記固定ブラケットに対して前記軸方向にスライド自在に設けられていると共に前記ニードル弁駆動手段を支持している連結ブラケットと、を備え、
前記軸方向位置調整手段は、前記連結ブラケットの前記固定ブラケットに対する前記軸方向における位置を調整する調整ボルトからなる、請求項11に記載の射出装置。
【請求項13】
前記ニードル弁駆動手段は、前記連結ブラケットに対してピンにより、回転自在に支持されている、請求項12に記載の射出装置。
【請求項14】
射出材料を射出する射出装置と、
金型を型締めする型締装置と、を備えた射出成形機であって、
前記射出装置は、加熱シリンダと、
前記加熱シリンダに入れられたスクリュと、
前記加熱シリンダに設けられているシャットオフノズルと、を備え、
前記シャットオフノズルは、射出材料を流す射出流路が軸方向に形成されているノズル部と、
前記ノズル部において前記ノズル部の外周面から前記射出流路に達している前記軸方向に対して斜めのニードル孔に進退自在に挿入されて前記射出流路を開閉するニードル弁と、
前記ニードル弁を進退方向に駆動するニードル弁駆動手段と、
前記ニードル弁駆動手段を支持する支持構造と、を備え、
前記支持構造は、前記ノズル部に対して前記ニードル弁駆動手段を前記軸方向にスライドして前記ニードル弁の前記軸方向における位置を調整する軸方向位置調整手段を備えている、射出成形機。
【請求項15】
前記支持構造は、前記ノズル部が設けられる射出装置に対して固定されている固定ブラケットと、
前記固定ブラケットに対して前記軸方向にスライド自在に設けられていると共に前記ニードル弁駆動手段を支持している連結ブラケットと、を備え、
前記軸方向位置調整手段は、前記連結ブラケットの前記固定ブラケットに対する前記軸方向における位置を調整する調整ボルトからなる、請求項14に記載の射出成形機。
【請求項16】
前記ニードル弁駆動手段は、前記連結ブラケットに対してピンにより、回転自在に支持されている、請求項15に記載の射出成形機。
【請求項17】
加熱シリンダと、
前記加熱シリンダに入れられたスクリュと、
前記加熱シリンダに設けられているシャットオフノズルと、を備えた射出装置であって、
前記シャットオフノズルは、射出材料を流す射出流路が軸方向に形成されているノズル部と、
前記ノズル部において前記ノズル部の外周面から前記射出流路に達している前記軸方向に対して斜めのニードル孔に進退自在に挿入されて前記射出流路を開閉するニードル弁と、
前記ニードル弁を進退方向に駆動するニードル弁駆動手段と、
前記ニードル弁駆動手段を支持する支持構造と、を備え、
前記支持構造は、前記ノズル部に対して前記ニードル弁駆動手段を前記軸方向にスライドして前記ニードル弁の前記軸方向における位置を調整する軸方向位置調整手段を備えている、前記射出装置において、前記ニードル弁の位置の調整方法であって、
前記加熱シリンダと前記ノズル部とを成形サイクル可能な温度に昇温し、
前記軸方向位置調整手段により前記ニードル弁の軸方向の位置を調整して前記ニードル孔に対して同軸になるように調整する、ニードル弁の位置調整方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に設けられるシャットオフノズル、およびシャットオフノズル調整用の治具、ならびにシャットオフノズルが設けられている射出成形機に関するものである。そして、シャットオフノズルに設けられているニードル弁の位置調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機の射出装置に設けられるシャットオフノズルは、射出ノズルの射出材料が流れる流路を開閉していわゆるハナタレを防止することができるようになっている。シャットオフノズルには色々なタイプがあり、例えば特許文献1に記載されているように、ノズル部と、このノズル部に対して斜めに設けられたニードル弁とからなるシャットオフノズルがある。このようなタイプのシャットオフノズルは、ノズルの外周面からノズル内の射出流路に達する斜めの孔、つまりニードル孔が開けられている。このニードル孔にニードル弁が進退自在に挿入されている。ニードル弁を前進させると射出流路が閉鎖され、後退させると射出流路が開くようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-274125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シャットオフノズルにおいて、ニードル弁の取り付け時に、ニードル孔に対してニードル弁が概ね同軸になるようにしている。つまりニードル弁がニードル孔に対して金属接触し難くなるように取り付けら、ニードル弁が滑らかにスライドできるようにしている。しかしながら、実際には射出成形機の運転を継続するとニードル弁とニードル孔とが摩耗して、早期に交換しなければならないという問題がある。
【0005】
本開示において、ニードル弁とニードル孔とが摩耗し難いシャットオフノズル、ニードル弁とニードル孔とを摩耗し難くするシャットオフノズル調整用の治具、および射出成形機、ならびにニードル弁の位置調整方法を提供する。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、ノズル部と、ニードル弁と、ニードル弁を駆動するニードル弁駆動手段と、を備えたシャットオフノズルを対象としている。ノズル部は、射出材料を流す射出流路が軸方向に形成されていると共に、ノズル部の外周面から射出流路に達する軸方向に対して斜めのニードル孔が形成されている。ニードル弁はこのニードル孔に入れられて、ニードル弁駆動手段によって駆動され、射出流路を開閉するようになっている。本開示は、ニードル弁駆動手段を支持する支持構造に、軸方向位置調整手段を設ける。軸方向位置調整手段は、ノズル部に対してニードル弁駆動手段を軸方向にスライドして、ニードル弁の軸方向における位置を調整するようになっている。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、射出成形機の運転中において、ニードル孔に対するニードル弁の位置を同軸にすることができ、ニードル孔とニードル弁の摩耗を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る射出成形機を示す正面図である。
図2】本実施の形態に係るシャットオフノズルと射出装置の一部を示す正面断面図である。
図3】本実施の形態に係るシャットオフノズルの一部を示す正面断面図である。
図4】本実施の形態に係るシャットオフノズル調整用の治具を示す正面断面図である。
図5A】本実施の形態に係るシャットオフノズルの一部と、本実施の形態に係るシャットオフノズル調整用の治具を示す正面断面図である。
図5B】本実施の形態に係るシャットオフノズルの一部と、本実施の形態に係るシャットオフノズル調整用の治具を示す正面断面図である。
図5C】本実施の形態に係るシャットオフノズルの一部と、本実施の形態に係るシャットオフノズル調整用の治具を示す正面断面図である。
図5D】本実施の形態に係るシャットオフノズルの一部と、本実施の形態に係るシャットオフノズル調整用の治具を示す正面断面図である。
図6】本実施の形態に係るシャットオフノズルの一部を示す正面断面図である。
図7図6において本実施の形態に係るシャットオフノズルをX-X断面で示す、ニードル孔近傍のノズル部と、ニードル弁の断面図である。
図8】従来のシャットオフノズルにおける、ニードル孔近傍のノズル部とニードル弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0011】
本実施の形態を説明する。
<射出成形機>
本実施の形態に係る射出成形機1は、図1に示されているように、トグル式の型締装置2と、射出装置3と、を備えている。本実施の形態に係る射出装置3には本実施の形態に係るシャットオフノズル5が設けられているが、詳しくは後で説明する。
【0012】
<型締装置>
型締装置2は、ベッドBに固定されている固定盤7と、ベッドB上をスライド自在に設けられている可動盤8と、型締ハウジング9と、を備えている。固定盤7と型締ハウジング9は複数本のタイバー11、11、…により連結されており、可動盤8は固定盤7と型締ハウジング9の間でスライド自在になっている。型締ハウジング9と可動盤8の間には型締機構が、すなわち本実施の形態においてはトグル機構13が設けられている。固定盤7と可動盤8には、それぞれ固定側金型15、可動側金型16が設けられている。従って、トグル機構13を駆動すると金型15、16が型開閉される。
【0013】
<射出装置>
射出装置3は、加熱シリンダ19と、加熱シリンダ19内に設けられているスクリュ20と、スクリュ駆動装置22と、を備えている。加熱シリンダ19はスクリュ駆動装置22に支持されており、スクリュ20はスクリュ駆動装置22によって回転方向と軸方向とに駆動されるようになっている。加熱シリンダ19にはホッパ23と、次に説明する本実施の形態に係るシャットオフノズル5が設けられている。加熱シリンダ19には、図2に示されているようにヒータ24が設けられている。ヒータ24により加熱シリンダ19を加熱して
図1に示されているホッパ23から射出材料を供給してスクリュ20を回転すると、射出材料が溶融し、計量される。スクリュ駆動装置22によりスクリュ20を軸方向に駆動すると射出材料を金型15、16に射出することができる。
【0014】
<本実施の形態に係るシャットオフノズル>
本実施の形態に係るシャットオフノズル5は、図2に示されているように、構成されている。すなわち、ノズル部25と、ニードル弁26と、ニードル弁26を駆動するニードル弁駆動手段28と、ニードル弁駆動手段28を支持する支持構造30と、ニードル弁26をガイドするガイド機構31と、を備えている。ノズル部25は加熱シリンダ19に対して、アダプタ32を介して設けられている。
【0015】
ノズル部25には、内部に射出材料が流れる流路すなわち射出流路34が形成されている。射出流路34はノズル部25の軸心に形成されている。本明細書において軸方向とは、ノズル部25の軸の方向を意味するものとする。つまり射出流路34はノズル部25の内部に軸方向に形成されている。ノズル部25には、その外周面から射出流路34に達する孔、つまりニードル孔36も形成されている。ニードル孔36は軸方向に対して斜めになっている。このニードル孔36にニードル弁26が進退自在に挿入されている。
【0016】
本実施の形態において、ニードル弁26は軸径が大きい大径軸部38と、大径軸部38の先端に設けられている軸径が小さい小径軸部39と、小径軸部39の先端に形成されている半球状の頭部40とから形成されている。ニードル孔36には小径軸部39の一部と頭部40とが入れられている。ニードル弁26を駆動するニードル弁駆動手段28は後で詳しく説明する支持構造30によって支持されている。つまりニードル弁26は間接的に支持構造30によって支持されていることになる。そしてニードル弁26はその大径軸部38において、同様に後で詳しく説明するガイド機構31によってガイドされるようになっている。
【0017】
本実施の形態においてニードル弁駆動手段28はピストンシリンダユニットからなる。ニードル弁駆動手段28つまりピストンシリンダユニットの後端部は、次に説明する支持構造30に対して、ピン42によって回転可能に支持されている。
【0018】
本実施の形態において支持構造30は、加熱シリンダ19に対して固定されている固定ブラケット44と、この固定ブラケット44に対して設けられている連結ブラケット45とを備えている。連結ブラケット45にはフランジ部46が形成されており、固定ブラケット44に対して、このフランジ部46において取り付けられている。詳しく説明すると、フランジ部46には長穴48、48が開けられている。この長穴48、48に取付ボルト49、49を入れて、固定ブラケット44、44に締め付けている。従って、取付ボルト49、49を緩めると、長穴48、48の隙間の分だけ連結ブラケット45が固定ブラケット44に対してスライドが許容される。つまり軸方向にスライドさせることができる。
【0019】
ところで連結ブラケット45を固定ブラケット44に対してスライドさせると、ニードル弁駆動手段28を軸方向にスライドさせることになる。つまり、後で説明するようにニードル孔36に対するニードル弁26の軸方向における位置を変化させてニードル孔36とニードル弁26とが同軸になるように調整することができる。しかしながら、ニードル弁26の軸方向における位置を微調整することは困難である。つまり、連結ブラケット45を固定ブラケット44に対して精度良くスライドさせることは困難である。そこで本実施の形態においては固定ブラケット44に、軸方向位置調整手段51が設けられている。
【0020】
<軸方向位置調整手段>
軸方向位置調整手段51は、本実施の形態においては調整ボルト52から構成されている。固定ブラケット44には突起部53が形成されており、突起部53には雌ねじが形成されている。調整ボルト52はこの雌ねじに螺合している。調整ボルト52の先端は連結ブラケット45に接触している。従って調整ボルト52を回転すると連結ブラケット45の位置を精度良くスライドさせることができる。
【0021】
具体的には、調整ボルト52を雌ねじに対して締め付ける方向に回転するとき、調整ボルト52によって連結ブラケット45が押されてスライドする。つまり図2において左方向にスライドする。これによって位置を精度良く調整できる。一方、調整ボルト52を緩める方向に回転するとき、調整ボルト52の先端と連結ブラケット45は離間する。この場合、連結ブラケット45を手動で右方向にスライドさせる。連結ブラケット45が調整ボルト52の先端に接触するとそれ以上のスライドが規制される。すなわち位置を精度良く調整できる。
【0022】
<ガイド機構>
本実施の形態において、ニードル弁26は大径軸部38においてガイド機構31にガイドされている。本実施の形態に係るガイド機構31が図3に示されている。ガイド機構31はガイド部材55と、固定ブラケット44に対してこのガイド部材55を取り付けている取付ピン56と、ガイド部材55に設けられているブッシュ57とから構成されている。ガイド部材55にはフランジ部59が形成され、このフランジ部59には長穴60が開けられている。この長穴60に取付ピン56が入れられ、取付ピン56によってガイド部材55が固定ブラケット44に取り付けられている。従って、長穴60の隙間の分だけガイド部材55は軸方向にスライドが許容されている。
【0023】
ガイド部材55には斜めの貫通孔61が開けられており、この貫通孔61にブッシュ57が入れられている。ニードル弁26の大径軸部38はこのブッシュ57に挿入されている。なお、本実施の形態においてガイド部材55は比較的硬度の小さい真鍮から形成されている。ブッシュ57が摩耗により破損することがあっても、貫通孔61に対してニードル弁26が摺動するとき、ニードル弁26はほとんど摩耗しない。
【0024】
<シャットオフノズル調整用の治具>
図2に示されている本実施の形態に係るシャットオフノズル5は、軸方向位置調整手段51、つまり調整ボルト52によって連結ブラケット45とニードル弁駆動手段28とを精度良く軸方向にスライドさせることができる。すなわちニードル弁26を軸方向に精度良くスライドすることができる。これによってニードル孔36に対してニードル弁26を同軸に調整できる。このようなニードル弁26の軸方向位置の調整を効率的に実施できるよう、図4に示されているように、本実施の形態に係るシャットオフノズル調整用の治具65が用意されている。
【0025】
シャットオフノズル調整用の治具65は、疑似ニードル67と、位置合わせ部68と、ノズル接触部70とから構成されている。疑似ニードル67はその径がニードル孔36(図2参照)の径よりわずかに小さい。つまり疑似ニードル67をニードル孔36に挿入するとき、実質的に隙間がない状態で滑らかに挿入されるようになっている。位置合わせ部68は、疑似ニードル67の軸心72と平行に設けられた板状の部材からなり、ニードル弁26(図2参照)の軸方向位置を調整するときニードル弁26が押し当てられるようになっている。ノズル接触部70は、疑似ニードル67に対して斜めに形成された部材からなり、疑似ニードル67がニードル孔36に挿入されるとき、ノズル部25の外周面に接するようになっている。接することによって、シャットオフノズル調整用の治具65は、位置決めされて安定することになる。
【0026】
本実施の形態に係るシャットオフノズル調整用の治具65には、ニードル孔36(図2参照)とニードル弁26とが同軸になっているか否かを検出するために、位置確認凹部73(図4参照)が形成されている。位置確認凹部73は、ニードル弁26の頭部40(図2参照)が接するための凹部になっており、疑似ニードル67の後端部において、疑似ニードル67の軸心72の延長上に形成されている。つまり位置確認凹部73は疑似ニードル67と同軸に形成されている。
【0027】
<ニードル弁の位置調整方法>
本実施の形態に係るシャットオフノズル調整用の治具65を使って、本実施の形態に係るシャットオフノズル5(図2参照)において、ニードル弁26の軸方向の位置を調整する方法を説明する。射出成形機1(図1参照)が停止した状態では、加熱シリンダ19、ノズル部25(図2参照)は低温になっている。最初に取付ボルト49、49(図2参照)を緩め、連結ブラケット45が固定ブラケット44に対してスライドが許容されるようにする。つまりニードル弁26の軸方向へのスライドが許容される状態にする。
【0028】
次いで、図5Aに示されているように、ノズル部25に本実施の形態に係るシャットオフノズル調整用の治具65を装着する。つまり、疑似ニードル67をニードル孔36に挿入する。疑似ニードル67が完全にニードル孔36に挿入されたら、図5Bに示されているように、ノズル接触部70がノズル部25の外周面に接触する。なお、ノズル部25にはノズルヒータ75が設けられているが、ノズル接触部70が接触する部分だけノズル部25の外周面が露出している。この露出した部分に接触することになる。このとき本実施の形態に係るシャットオフノズル調整用の治具65は、位置決めされて安定する。
【0029】
本実施の形態に係るシャットオフノズル5において、調整ボルト52(図2参照)を回転してニードル弁26を軸方向にスライドさせ、図5Bに示されているように、小径軸部39をシャットオフノズル調整用の治具65の位置合わせ部68に接触させる。このとき、ニードル弁26の軸方向における位置は、概ね適正な位置になっている。
【0030】
ヒータ24(図2参照)、ノズルヒータ75(図5B参照)により、加熱シリンダ19(図2参照)とノズル部25(図2参照)とを加熱し、成形サイクルを実施するときの温度にする。加熱シリンダ19とノズル部25は熱膨張する。一方、本実施の形態に係るシャットオフノズル5(図2参照)は温度上昇が小さいのでほとんど熱膨張しない。従って、図5Cに示されているように、ノズル部25に装着されているシャットオフノズル調整用の治具65の位置合わせ部68と、ニードル弁26の小径軸部39は、わずかに離間する。
【0031】
ニードル弁駆動手段28(図2参照)を駆動してニードル弁26をわずかに前進させる。図5Dに示されているように、ニードル弁26の頭部40が位置確認凹部73に収納される。頭部40が位置確認凹部73に完全に収納される場合は、ニードル孔36とニードル弁26とが同軸になっていると判断する。一方、完全に収納されない場合には軸心がずれていると判断する。軸方向位置調整手段51(図2参照)つまり調整ボルト52を回転して、ニードル弁26の頭部40が位置確認凹部73に完全に収納される状態にする。ニードル孔36とニードル弁26とが同軸に調整される。
【0032】
取付ボルト49、49(図2参照)を締め付ける。つまりニードル弁26の軸方向における位置を固定する。ニードル弁駆動手段28(図2参照)を駆動してニードル弁26を後退させ、シャットオフノズル調整用の治具65(図5D参照)をノズル部25から取り外す。ニードル弁26を前進させて、図6に示されているように、小径軸部39をニードル孔36に挿入する。ニードル弁26の位置の調整を完了する。
【0033】
<位置調整後のニードル孔とニードル弁の関係>
図7には、図6においてX-X断面で切断した、ニードル孔36近傍のノズル部25とニードル弁26の小径軸部39の断面が示されている。成形サイクルを実施しているとき、つまり加熱シリンダ19(図2参照)とノズル部25とが高温になっているとき、図7に示されているように、ニードル孔36とニードル弁26の小径軸部39は同軸に配置されている。従って、ニードル弁駆動手段28(図2参照)によってニードル弁26を前後進させても金属接触は生じず、摩耗は防止される。
【0034】
一方、成形サイクルを停止して、加熱シリンダ19(図2参照)とノズル部25を冷却すると、熱収縮により加熱シリンダ19とノズル部25の長さが短くなる。そうすると、図7において符号80で示されているように、ニードル孔36における小径軸部39の位置がずれる。つまり、運転停止中においてニードル孔36とニードル弁26の軸心がずれた状態になる。しかしながら、成形サイクルを開始して加熱シリンダ19とノズル部25の温度が上昇すると、ニードル孔36に対してニードル弁26が同軸になり、ニードル弁26を駆動しても金属接触が防止されることになる。
【0035】
<従来の位置調整方法により調整したニードル弁>
ニードル弁26を、従来の位置調整方法により調整したときの、ニードル孔36とニードル弁26との関係が図8に示されている。従来の位置調整方法では、加熱シリンダ19(図2参照)とノズル部25とが冷却された状態で実施する。従って加熱シリンダ19とノズル部25とが冷却されている状態では、図8においれ符号81で示されているように、ニードル弁26の小径軸部39はニードル孔36に対して同軸に配置されている。しかしながら、成形サイクルを開始して加熱シリンダ19とノズル部25とが高温になり熱膨張すると、実線で示されているように、小径軸部39の一部が符号83で示されているように、ニードル孔36に片当たりする。ニードル弁26を駆動すると符号83で示されている部分が早期に摩耗することになる。
【0036】
<本実施の形態の変形例>
本実施の形態は色々な変形が可能である。例えば、軸方向位置調整手段51(図2参照)を変形することができる。調整ボルト52は突起部53に形成されている雌ねじに螺合していると共に先端が連結ブラケット45に接しているように説明した。しかしながら、突起部53に雌ねじを設けずに、調整ボルト52を回転については許容しつ軸方向の移動は規制した状態にするようにしてもよい。この場合、連結ブラケット45に雌ねじを形成して、調整ボルト52の先端をこの雌ねじに螺合させる。このようにしても調整ボルト52を回転すると連結ブラケット45を軸方向にスライドさせることができる。
【0037】
ガイド機構31(図3)についても変形が可能である。ガイド機構31においてガイド部材55にはブッシュ57が設けられているように説明した。しかしながらブッシュ57は必須ではない。貫通孔61に対して直接ニードル弁26の大径軸部38を摺動させるようにしてもよい。
【0038】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0039】
1 射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 5 シャットオフノズル
7 固定盤 8 可動盤
9 型締ハウジング 11 タイバー
13 トグル機構 15 固定側金型
16 可動側金型 19 加熱シリンダ
20 スクリュ 22 スクリュ駆動装置
23 ホッパ 24 ヒータ
25 ノズル部 26 ニードル弁
28 ニードル弁駆動手段 30 支持構造
31 ガイド機構 32 アダプタ
34 射出流路 36 ニードル孔
38 大径軸部 39 小径軸部
40 頭部 42 ピン
44 固定ブラケット 45 連結ブラケット
46 フランジ部 48 長穴
49 取付ボルト 51 軸方向位置調整手段
52 調整ボルト 53 突起部
55 ガイド部材 56 取付ピン
57 ブッシュ 59 フランジ部
60 長穴 61 貫通孔
65 シャットオフノズル調整用の治具
67 疑似ニードル 68 位置合わせ部
70 ノズル接触部 72 軸心
73 位置確認凹部 75 ノズルヒータ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8