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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】排気装置を有する空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/0041 20190101AFI20240911BHJP
   F24F 1/0038 20190101ALI20240911BHJP
   F24F 1/02 20190101ALI20240911BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20240911BHJP
   F24F 11/72 20180101ALI20240911BHJP
【FI】
F24F1/0041
F24F1/0038
F24F1/02 391
F24F7/007 B
F24F11/72
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021104107
(22)【出願日】2021-06-23
(65)【公開番号】P2023003126
(43)【公開日】2023-01-11
【審査請求日】2022-07-01
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 裕記
【合議体】
【審判長】水野 治彦
【審判官】村山 美保
【審判官】間中 耕治
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-291997(JP,A)
【文献】特開2006-234249(JP,A)
【文献】国際公開第2021/019761(WO,A1)
【文献】特開2013-204852(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230201(WO,A1)
【文献】特開2012-98009(JP,A)
【文献】特開2001-263743(JP,A)
【文献】特開2002-286260(JP,A)
【文献】特開2004-36919(JP,A)
【文献】特開2003-329289(JP,A)
【文献】特開2021-38868(JP,A)
【文献】特開平10-274425(JP,A)
【文献】特開2004-116951(JP,A)
【文献】特開2021-89098(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1931750(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F1/0041-F24F11/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調運転を行うことによって室内空間(SI)の空気調和を行う空気調和装置(100)であって、
圧縮機(11)と、
室内空気(AI)と熱交換を行う熱交換器(25)と、
熱交換された前記室内空気を前記室内空間に供給する室内ファン(26)と、
排気ファンを有し、前記室内空間から室外空間(SO)へ前記室内空気を移動させる排気装置(18)と、
前記空調運転の開始時において、前記室内空間の熱負荷(L)に応じて前記排気装置を動作させる制御部(19、29)と、
を備え
前記室内空間の前記熱負荷が小さくなることで前記圧縮機が停止した直後の、前記空調運転の開始時には、前記制御部は前記排気装置を動作させない、
空気調和装置(100)
【請求項2】
空調運転を行うことによって室内空間(SI)の空気調和を行う空気調和装置(100)であって、
圧縮機(11)と、
室内空気(AI)と熱交換を行う熱交換器(25)と、
熱交換された前記室内空気を前記室内空間に供給する室内ファン(26)と、
排気ファンを有し、前記室内空間から室外空間(SO)へ前記室内空気を移動させる排気装置(18)と、
前記空調運転の開始時において、前記室内空間の熱負荷(L)に応じて前記排気装置を動作させる制御部(19、29)と、
を備え、
前記制御部は、前記熱負荷が第1値(V1)を上回るときに前記排気装置を動作させるとともに、前記熱負荷が前記第1値よりも小さな第2値(V2)を下回るときに前記排気装置を停止させる、
空気調和装置(100)。
【請求項3】
前記熱負荷は、前記室内空気の温度(Ti)、及び前記室内空気の湿度(Hi)、の少なくとも1つによって決定される、
請求項1又は請求項2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記熱負荷は、前記空気調和装置が設置される部屋を構成する躯体の温度(Tb)、によって決定される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の空気調和装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記室内空気の温度(Ti)と、室外空気の温度(To)との比較結果に応じて前記排気装置を動作させる、
請求項1又は請求項2に記載の空気調和装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記室内空気の湿度(Hi)と、室外空気の湿度(Ho)との比較結果に応じて前記排気装置を動作させる、
請求項1又は請求項2に記載の空気調和装置。
【請求項7】
前記室内空間にいる人を検知する人検知装置(66)、
をさらに備え、
前記制御部は、前記人検知装置が前記人を検知したときに、前記排気装置を動作させる、
請求項1から6のいずれか1項に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
排気装置を有する空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2007-032855号公報)に開示される空気調和装置は、排気装置を備える。排気装置は、室内の臭い成分を空気とともに室外へ排出するためのものである。排気装置の動作は、臭いの水準によって決定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の文献の構成においては、空気調和装置が消費するエネルギーを低減させることは特段考慮されていない。したがって、排気装置の利用によって空気調和対象の熱負荷を軽減させ、それによって空気調和装置の消費エネルギーを低減させることについては改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の空気調和装置は、空調運転を行うことによって室内空間の空気調和を行う。空気調和装置は、圧縮機と、熱交換器と、ファンと、排気装置と、制御部と、を備える。熱交換器は、室内空気と熱交換を行う。ファンは、熱交換された室内空気を室内空間に供給する。排気装置は、室内空間から室外空間へ室内空気を移動させる。制御部は、空調運転の開始時において、室内空間の熱負荷に応じて排気装置を動作させる。
【0005】
この構成によれば、室内空気から取り除くべき熱負荷の一部が、空調運転によってだけでなく、排気装置の動作によっても取り除かれる。したがって、空気調和装置によって消費されるエネルギーを抑制することができる。
【0006】
第2観点の空気調和装置は、第1観点の空気調和装置において、熱負荷が、室内空気の温度、及び室内空気の湿度、の少なくとも1つによって決定される。
【0007】
この構成によれば、熱負荷は室内温度又は室内湿度に依存する。したがって、排気動作の条件として、室内温度又は室内湿度が考慮される。
【0008】
第3観点の空気調和装置は、第1観点又は第2観点の空気調和装置において、熱負荷が、空気調和装置が設置される部屋を構成する躯体の温度、によって決定される。
【0009】
この構成によれば、熱負荷は躯体温度に依存する。したがって、排気動作の条件として、躯体温度が考慮される。
【0010】
第4観点の空気調和装置は、第1観点から第3観点のいずれか1つ空気調和装置において、制御部が、室内空気の温度と、室外空気の温度との比較結果に応じて排気装置を動作させる。
【0011】
この構成によれば、排気の開始条件に、室内温度のみならず室外温度が含まれる。したがって、室内温度及び室外温度を考慮した排気の開始条件を設定することができる。
【0012】
第5観点の空気調和装置は、第1観点から第3観点のいずれか1つ空気調和装置において、制御部は、室内空気の湿度と、室外空気の湿度との比較結果に応じて排気装置を動作させる。
【0013】
この構成によれば、排気の開始条件に、室内湿度のみならず室外湿度が含まれる。したがって、室内湿度及び室外湿度を考慮した排気の開始条件を設定することができる。
【0014】
第6観点の空気調和装置は、第1観点から第5観点のいずれか1つ空気調和装置において、室内空間の熱負荷が小さくなることで圧縮機が停止した直後の、空調運転の開始時には、制御部は排気装置を動作させない。
【0015】
この構成によれば、圧縮機が停止した直後の空調運転の開始時、すなわちサーモオフからの復帰時において、排気装置は動作しない。したがって、圧縮機が大きなエネルギーを必要とする際に、圧縮機が十分な量のエネルギーを確保できる。
【0016】
第7観点の空気調和装置は、第1観点から第6観点のいずれか1つ空気調和装置において、人検知装置をさらに備える。人検知装置は、空気調和装置が設置される部屋の内部にいる人を検知する。制御部は、人検知装置が人を検知したときに、排気装置を動作させる。
【0017】
この構成によれば、部屋の有人状態において排気装置が動作する。したがって、無人状態において排気装置が動作しないので、空気調和装置の消費エネルギーがさらに抑制される。
【0018】
第8観点の空気調和装置は、第1観点から第7観点のいずれか1つ空気調和装置において、制御部が、熱負荷が第1値を上回るときに排気装置を動作させるとともに、熱負荷が第1値よりも小さな第2値を下回るときに排気装置を停止させる。
【0019】
この構成によれば、熱負荷に応じた排気制御にヒステリシス特性が適用される。したがって、排気装置の制御回路がチャタリングを起こすことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】基本実施形態に係る空気調和装置100を示す模式図である。
図2】熱負荷Lを説明するための模式図である。
図3】排気装置18の制御のフローチャートである。
図4】熱負荷Lと、排気装置18の状態の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<基本実施形態>
(1)全体構成
図1に示す空気調和装置100は、室外ユニット10、室内ユニット20、連絡配管30、排気ホース40を有する。空気調和装置100が設置される空間は、建物Bの壁Wによって隔てられる室外空間SO及び室内空間SIの両方にわたっている。室外ユニット10は室外空間SOに設置される。室内ユニット20は室内空間SIに設置される。壁Wは、室内ユニット20が設置される部屋Rの一部を構成する。連絡配管30及び排気ホース40の両方は、壁Wを貫通し、室外ユニット10及び室内ユニット20を接続している。
【0022】
空気調和装置100は冷媒回路90を有する。冷媒回路90は、冷房運転のときに冷媒を図中の矢印Cの方向に循環させる。冷媒回路90は、暖房運転のときに冷媒を図中の矢印Hの方向に循環させる。
【0023】
(2)詳細構成
(2-1)室外ユニット10
室外ユニット10は、熱源として機能する。室外ユニット10は、冷媒回路90を構成する部品として、圧縮機11、四路切換弁12、室外熱交換器13、室外ファン14、室外膨張弁15、液閉鎖弁16、及び、ガス閉鎖弁17を有する。さらに、室外ユニット10は、室外ケーシング10a、排気装置18、室外制御部19、室外温度センサ53、室外湿度センサ54を有する。
【0024】
(2-1-1)室外ケーシング10a
室外ケーシング10aは、室外ユニット10の構成部品を収容する。室外ケーシング10aは、室外吸込口51、及び室外吹出口52を有する。図1は、室外ユニット10の構成を模式的に示すものに過ぎず、どの構成部品が室外吸込口51の近くに配置されるとともに、別のどの構成部品が室外吹出口52の近くに配置されるかを示すものではない。
【0025】
(2-1-2)圧縮機11
圧縮機11は、低圧ガス冷媒を圧縮することによって、高圧ガス冷媒を作り出す。
【0026】
(2-1-3)四路切換弁12
四路切換弁12は、冷房運転のときに図1の実線で示す接続を実現させる。四路切換弁12は、暖房運転のときに図1の破線で示す接続を実現させる。
【0027】
(2-1-4)室外熱交換器13
室外熱交換器13は、冷媒と室外空気AOの間で熱交換を行う。室外熱交換器13は、冷房運転のときに凝縮器として機能する。室外熱交換器13は、暖房運転のときに蒸発器として機能する。
【0028】
(2-1-5)室外ファン14
室外ファン14は、室外熱交換器13の熱交換を促進する。室外ファン14は、室外空気AOを室外吸込口51から取り込み、室外熱交換器13へ供給する。室外ファン14は、室外熱交換器13が熱交換を終えた空気を室外吹出口52から排出する。
【0029】
(2-1-6)室外膨張弁15
室外膨張弁15は、冷媒を減圧させる。室外膨張弁15は、冷媒の循環量を調節する。
【0030】
(2-1-7)液閉鎖弁16、ガス閉鎖弁17
液閉鎖弁16及びガス閉鎖弁17は、冷媒回路90のうち室外ユニット10の外部にある部分と、室外ユニット10の内部にある部分とを、互いに接続又は切断するためのものである。液閉鎖弁16及びガス閉鎖弁17は、冷媒回路90を閉鎖することができる。
【0031】
(2-1-8)排気装置18
排気装置18は、室内空間SIから室内空気AIを取り出し、室外空間SOへ排気する。
【0032】
(2-1-9)室外制御部19
室外制御部19は、センサの情報の取得、アクチュエータの制御、及び様々な演算を行うコンピュータである。
【0033】
(2-1-10)室外温度センサ53、室外湿度センサ54
室外温度センサ53は、室外空気AOの温度を取得する。室外湿度センサ54は、室外空気AOの湿度を取得する。
【0034】
(2-2)室内ユニット20
室内ユニット20は、室内空間SIに滞在するユーザに調和済みの室内空気AIを提供する。室内ユニット20は、冷媒回路90を構成する部品として、室内熱交換器25、及び、室内ファン26を有する。さらに、室内ユニット20は、室内ケーシング20a、室内制御部29、室内温度センサ63、室内湿度センサ64、躯体温度センサ65、人検知装置66を有する。
【0035】
(2-2-1)室内ケーシング20a
室内ケーシング20aは、室内ユニット20の構成部品を収容する。室内ケーシング20aは、室内吸込口61、及び室内吹出口62を有する。図1は室内ユニット20の構成を模式的に示すものに過ぎず、どの構成部品が室内吸込口61の近くに配置されるとともに、別のどの構成部品が室内吹出口62の近くに配置されるかを示すものではない。
【0036】
(2-2-2)室内熱交換器25
室内熱交換器25は、冷媒と室内空気AIの間で熱交換を行う。室内熱交換器25は、冷房運転のときに蒸発器として機能する。室内熱交換器25は、暖房運転のときに凝縮器として機能する。
【0037】
(2-2-3)室内ファン26
室内ファン26は、室内熱交換器25の熱交換を促進する。室内ファン26は、室内空気AIを室内吸込口61から取り込み、室内熱交換器25へ供給する。室内ファン26は、室内熱交換器25が熱交換を終えた空気を室内吹出口62から排出する。
【0038】
(2-2-4)室内制御部29
室内制御部29は、センサの情報の取得、アクチュエータの制御、及び様々な演算を行うコンピュータである。さらに、室内制御部29は、図示しない通信線を用いて室外制御部19と通信を行い、室外制御部19と情報を授受する。
【0039】
(2-2-5)室内温度センサ63、室内湿度センサ64、躯体温度センサ65
室内温度センサ63は、室内空気AIの温度を取得する。室内湿度センサ64は、室内空気AIの湿度を取得する。躯体温度センサ65は、壁Wを含む建物Bの躯体の温度を取得する。
【0040】
(2-2-6)人検知装置66
人検知装置66は、室内空間SIにいる人を検知する。人検知装置66は、例えば人感センサであってよい。
【0041】
(2-3)連絡配管30
連絡配管30もまた、冷媒回路90を構成する。連絡配管30は、液冷媒配管31、及び、ガス冷媒配管32を有する。液冷媒配管31は、液閉鎖弁16と室内熱交換器25を接続する。ガス冷媒配管32は、ガス閉鎖弁17と室内熱交換器25を接続する。
【0042】
(2-4)排気ホース40
排気ホース40は、室外空間SOと室内空間SIを連通させる。排気装置18が動作するとき、室内空間SIの室内空気AIが、排気ホース40を通過する排気流Vとして室外空間SOへ排気される。
【0043】
(3)室内空間SIの熱負荷L
図2は、熱負荷Lを説明するための模式図である。ここには、部屋Rによって規定される空調対象の室内空間SIが示されている。
【0044】
室内空間SIは、熱負荷Lを有する。空気調和装置100が冷房運転をする場合、熱負荷Lは、室内温度Tiを目標温度Ttに到達させるために、空気調和装置100が室内空気AIから取り除く必要のある熱量である。
【0045】
熱負荷Lには、外部負荷Loと内部負荷Liが含まれる。外部負荷Loは、室外温度Toに起因する。内部負荷Liは、室内空間SIに存在する、家電製品、電子機器、または人間などの熱源80に起因する。室内空間SIの熱負荷Lを低減さるため、空気調和装置100は空調能力Qを生み出す。
【0046】
室外制御部19及び室内制御部29は、適切な空調能力Qの発生にあたり、室内空間SIの熱負荷Lを算出する。ここで算出される熱負荷Lは、厳密な意味での熱負荷ではなく、熱負荷に関連する量であってもよい。
【0047】
算出すべき熱負荷Lは、一例を挙げれば、目標温度Tt、室内温度Ti、及び、室外温度Toの関数によって求められる。
【0048】
(4)排気装置18の制御
図3及び図4を参照しながら、排気装置18の制御について説明する。図3は、排気装置18の制御フローを示す。この制御フローに従って制御を行う主体は、室外制御部19及び室内制御部29(以下、「空調制御部」と言う)の一部によって実現される排気装置18の制御系統である。図4は、室内空間SIの熱負荷Lと、排気装置18の状態の関係を示す。ここで算出すべき熱負荷Lは、室内温度Ti、及び、室外温度Toの関数によって求められるものとして説明する。
【0049】
図3のステップSSの処理開始の起点から処理が開始される。
【0050】
ステップS0において、排気装置18の制御系統は、空調運転が開始されたか否かを調べる。当該空調運転は、冷媒回路90の制御系統によって実行される。冷媒回路90の制御系統は、空調制御部における、排気装置18の制御系統を構成する部分とは別の一部によって実現される。
【0051】
ステップS0において「空調運転の開始」として扱われる具体的な事象としては、様々なものが挙げられる。以下に列挙する例1~例3は、空調運転の開始の例である。
【0052】
(例1)空気調和装置100に運転を指示するキーが、ユーザによって押下される事象の発生。
【0053】
(例2)空気調和装置100に設定された予約運転の時刻に到達する事象の発生。
【0054】
(例3)上記例1又は例2の事象の後の、冷媒回路90の制御系統が圧縮機11を運転させる事象の発生。
【0055】
排気装置18の制御系統は、空調運転が開始されている場合には処理をS1へ移し、空調運転が開始されていない場合には処理をS0へ戻す。
【0056】
ステップS1において、空調制御部は、自身が管理している変数である熱負荷閾値Lthに、第1値V1をセットする。
【0057】
ステップS2において、空調制御部は、室内温度センサ63によって室内温度Tiを取得する。
【0058】
ステップS3において、空調制御部は、室外温度センサ53によって室外温度Toを取得する。
【0059】
ステップS4において、空調制御部は、室内温度Ti及び室外温度Toに基づいて、室内空間SIの熱負荷Lを算出する。例えば、空調制御部は、室外温度Toと室内温度Tiを比較し、両者の差分ΔTに応じて熱負荷Lを算出する。
【0060】
ステップS5において、空調制御部は、熱負荷Lを、自身が格納している熱負荷閾値Lthと比較する。熱負荷Lが熱負荷閾値Lthを上回るときはステップS6に進み、熱負荷Lが熱負荷閾値Lthと等しいか下回るときはステップS8に進む。
【0061】
ステップS6において、空調制御部は、排気装置18を動作させる。
【0062】
ステップS7において、空調制御部は、熱負荷閾値Lthに、第2値V2をセットする。第2値V2は、第1値V1よりも小さな値である。その後、空調制御部は、処理をステップS2に戻す。
【0063】
ステップS8において、空調制御部は、排気装置18を停止させる。
【0064】
ステップS9において、空調制御部は、熱負荷閾値Lthに、第1値V1をセットする。その後、空調制御部は、処理をステップS2に戻す。
【0065】
このように、熱負荷閾値Lthを第1値V1及び第2値V2の一方に交互に切り替ることにより、図4に示すように、熱負荷Lと排気装置18の状態の関係を示すグラフはヒステリシス特性を示す。
【0066】
(5)特徴
(5-1)
空調運転の開始時において、室内空気AIから取り除くべき熱負荷Lの一部が、空調運転によってだけでなく、排気装置18の動作によっても取り除かれる。したがって、空調運転の開始時に、空気調和装置100によって消費されるエネルギーを抑制することができる。
【0067】
(5-2)
排気の開始条件に、室内温度Tiのみならず室外温度Toが含まれる。したがって、室内温度Ti及び室外温度Toを考慮した排気の開始条件を設定することができる。
【0068】
(5-3)
熱負荷閾値Lthが第1値V1及び第2値V2の一方に交互に切り替えられる。これにより、熱負荷Lに応じた排気制御にヒステリシス特性が適用される。したがって、排気装置18の制御回路がチャタリングを起こすことを抑制できる。
【0069】
<基本実施形態の変形例>
(6)変形例
以下に、基本実施形態の変形例について説明する。これらの複数の変形例を組み合わせてもよい。
【0070】
(6-1)第1変形例
基本実施形態では、算出すべき熱負荷Lは、室内温度Ti、及び、室外温度Toの両方の関数として求められる。これに代えて、熱負荷Lは、室外温度Toを用いず、室内温度Tiのみの関数として求めてもよい。
【0071】
この構成によれば、排気装置18が動作する条件は、室外温度Toとは無関係であり、室内温度Tiのみによって決定される。したがって、室外制御部19及び室内制御部29が行う演算が簡単である。
【0072】
(6-2)第2変形例
基本実施形態では、熱負荷Lは各種温度によって決定される。これに代えて、熱負荷Lは、各種温度に代えて又は各種温度と共に、各種湿度を用いて決定してもよい。例えば、熱負荷Lを、室内湿度Hi及び室外湿度Hoによって決定してもよい。室内湿度Hiは、室内湿度センサ64によって取得できる。室外湿度Hoは、室外湿度センサ54によって取得できる。
【0073】
この構成によれば、排気の開始条件として、室内湿度Hiと室外湿度Hoを利用することができる。
【0074】
(6-3)第3変形例
さらには、熱負荷Lは、室外湿度Hoを用いず、室内湿度Hiのみの関数として求めてもよい。
【0075】
この構成によれば、排気装置18が動作する条件は、室外湿度Hoとは無関係であり、室内湿度Hiのみによって決定される。したがって、室外制御部19及び室内制御部29が行う演算が簡単である。
【0076】
(6-4)第4変形例
あるいは、熱負荷Lは、室内ユニット20が設置される部屋Rを構成する躯体の温度である躯体温度Tbによって決定されてもよい。躯体温度Tbは、躯体温度センサ65によって取得できる。熱負荷Lの算出においては、室外制御部19及び室内制御部29は、躯体温度Tbのみならず、各種温度、各種湿度、又はその両方を併せて使用してもよい。
【0077】
この構成によれば、熱負荷Lは躯体温度Tbに依存する。したがって、排気動作の条件として、躯体温度Tbが考慮される。
【0078】
(6-5)第5変形例
室内空間SIの熱負荷Lが小さくなり、室内温度Tiが目標温度Ttに近づくと、室外制御部19及び室内制御部29によって実現される冷媒回路90の制御系統は、圧縮機11を停止させる。この状態はサーモオフと呼ばれる。
【0079】
サーモオフが一定時間継続した後、室内温度Tiが再び目標温度Ttから乖離すると、冷媒回路90の制御系統は、サーモオフから復帰すべく再び圧縮機11を動作させる。このような、サーモオフからの復帰直後に該当する場合には、室外制御部19及び室内制御部29は、排気装置18を動作させず、停止させたままとしてもよい。
【0080】
この構成によれば、サーモオフからの復帰時において、排気装置18は動作しない。したがって、圧縮機11が大きなエネルギーを必要とするサーモオフからの復帰動作おいて、圧縮機11が十分な量のエネルギーを確保できる。
【0081】
(6-6)第6変形例
室外制御部19及び室内制御部29が排気装置18を動作させる際に、人検知装置66が室内空間SIの中に人の存在を検知することを条件にしてもよい。
【0082】
この構成によれば、部屋Rの有人状態において排気装置18が動作する。したがって、無人状態において排気装置18が動作しないので、空気調和装置100の消費エネルギーがさらに抑制される。
【0083】
<むすび>
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0084】
10 :室外ユニット
11 :圧縮機
13 :室外熱交換器
14 :室外ファン
18 :排気装置
19 :室外制御部(制御部)
20 :室内ユニット
25 :室内熱交換器(熱交換器)
26 :室内ファン(ファン)
29 :室内制御部(制御部)
30 :連絡配管
40 :排気ホース
51 :室外吸込口
52 :室外吹出口
61 :室内吸込口
62 :室内吹出口
66 :人検知装置
100 :空気調和装置
AI :室内空気
AO :室外空気
B :建物
Hi :室内湿度(室内空気の湿度)
Ho :室外湿度(室外空気の湿度)
L :熱負荷
Lth :熱負荷閾値
R :部屋
SI :室内空間
SO :室外空間
Tb :躯体温度(躯体の温度)
Ti :室内温度(室内空気の温度)
To :室外温度(室外空気の温度)
V :排気流
V1 :第1値
V2 :第2値
W :壁
【先行技術文献】
【特許文献】
【0085】
【文献】特開2007-032855号公報
図1
図2
図3
図4