IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニチコン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電解コンデンサの製造方法 図1
  • 特許-電解コンデンサの製造方法 図2
  • 特許-電解コンデンサの製造方法 図3
  • 特許-電解コンデンサの製造方法 図4
  • 特許-電解コンデンサの製造方法 図5
  • 特許-電解コンデンサの製造方法 図6
  • 特許-電解コンデンサの製造方法 図7
  • 特許-電解コンデンサの製造方法 図8
  • 特許-電解コンデンサの製造方法 図9
  • 特許-電解コンデンサの製造方法 図10
  • 特許-電解コンデンサの製造方法 図11
  • 特許-電解コンデンサの製造方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】電解コンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/00 20060101AFI20240911BHJP
   H01G 9/008 20060101ALI20240911BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20240911BHJP
【FI】
H01G9/00 290D
H01G9/008 303
H01G9/00 290Z
H01G13/00 307F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021105341
(22)【出願日】2021-06-25
(65)【公開番号】P2023003943
(43)【公開日】2023-01-17
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 吉峻
(72)【発明者】
【氏名】米田 満
【審査官】多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-222517(JP,A)
【文献】特開2007-103527(JP,A)
【文献】特公昭46-004504(JP,B1)
【文献】特開2000-082640(JP,A)
【文献】特開2008-016701(JP,A)
【文献】特開2014-007196(JP,A)
【文献】特開2006-100561(JP,A)
【文献】特開2004-079769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00
H01G 9/008
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化皮膜を有するエッチング層を表裏両面に備えた電極箔の表面側に引出端子を接続し、前記電極箔を、セパレータを介して巻回する電解コンデンサの製造方法であって、
前記電極箔の前記表面側における前記引出端子の接続部位および前記電極箔の裏面側における前記引出端子接続部位に対応する部位にそれぞれ超音波ヘッドを当接して超音波発振させることにより、前記表面側エッチング層の厚さの70%が残存するように除去すると共に、前記裏面側エッチング層の厚さの70~90%が残存するように除去する工程と、
前記引出端子の接続部位に前記引出端子を当接させた前記電極箔に対して、前記電極箔の裏面側の前記エッチング層が除去された部位および前記引出端子にそれぞれ電極を当接して通電することにより、前記電極箔と前記引出端子とを抵抗溶接する工程と、
を備えることを特徴とする電解コンデンサの製造方法。
【請求項2】
前記抵抗溶接により前記引出端子に生じる溶接痕に対する、前記抵抗溶接により前記電極箔の裏面側の前記エッチング層が除去された部位に生じる溶接痕の面積比率が20~30%である
ことを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサおよびその製造方法に関し、電極箔および引出端子の接合に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば巻回型の電解コンデンサを製造する際には、表面に酸化皮膜を有するエッチング層を備えた電極箔に、引出端子を接続し、電極箔の間にセパレータを介して巻回することによりコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子のセパレータに電解質を保持させるとともに、外装ケースに収納して電解コンデンサを製造している。
【0003】
このような従来の電解コンデンサの製造方法において、電極箔と引出端子との間の接続方法として、電極箔のエッチング層を完全に除去して接続する方法(特許文献1参照)、レーザーを用いて接続する方法(特許文献2参照)、電極箔の引出端子を接続する側の面のみ、レーザーを用いてエッチング層の一部を除去した後に引出端子を接続する方法(特許文献3参照)、電極箔と引出端子を重ね合わせ、針穴を開けて全体をプレスすることにより接続する方法(特許文献4参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭54-164451号公報
【文献】特開2006-100559号公報
【文献】特開2007-103527号公報
【文献】特開2010-147336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、エッチング層を完全に除去した後に抵抗溶接を行うため、エッチング層が存在しない分、溶接時に十分なジュール熱を発生させることができず強固な接合を行うことが困難になる問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載の方法では、レーザーを用いる分、製造コストが高くなる問題があった。また、レーザー光を照射した部位を溶融させて接合するため、溶融した金属が飛散して凸状となって固まることにより、セパレータを貫通してショート不良が発生するおそれがあった。
【0007】
また、特許文献3に記載の方法では、電極箔の一方の面のみエッチング層を除去するため、引出端子の溶接時に溶接不良が発生する問題があった。
【0008】
また、特許文献4の方法では、電極箔に対して引出端子を機械的にプレスすることにより、電極箔が破損してコンデンサ素子のショート発生、漏れ電流(LC)の上昇、接合強度の低下が発生する問題があった。
【0009】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、電極箔と引出端子との間の接続信頼度を向上し得る電解コンデンサおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電解コンデンサの製造方法は、酸化皮膜を有するエッチング層を表裏両面に備えた電極箔の表面側に引出端子を接続し、前記電極箔を、セパレータを介して巻回する電解コンデンサの製造方法であって、前記電極箔の前記表面側における前記引出端子の接続部位および前記電極箔の裏面側における前記引出端子接続部位に対応する部位にそれぞれ超音波ヘッドを当接して超音波発振させることにより、前記表面側エッチング層の厚さの20~70%が残存するように除去すると共に、前記裏面側エッチング層の厚さの70~90%が残存するように除去する工程と、前記引出端子の接続部位に前記引出端子を当接させた前記電極箔に対して、前記電極箔の裏面側の前記エッチング層が除去された部位および前記引出端子にそれぞれ電極を当接して通電することにより、前記電極箔と前記引出端子とを抵抗溶接する工程と、を備える。
【0011】
この製造方法によれば、特性劣化を抑制しつつ電極箔への引出端子の接続信頼度を向上させた電解コンデンサを製造することができる。
【0012】
また、本発明の電解コンデンサの製造方法は、上記製造方法において、前記抵抗溶接により前記引出端子に生じる溶接痕に対する、前記抵抗溶接により前記電極箔の裏面側の前記エッチング層が除去された部位に生じる溶接痕の面積比率が20~30%であることを特徴とする。
【0013】
この製造方法によれば、電極箔と引出端子との間の接合を強固にすることができる。
【0014】
本発明の電解コンデンサは、酸化皮膜を有するエッチング層を表裏両面に備えた電極箔の表面側に引出端子を接続し、前記電極箔を、セパレータを介して巻回する電解コンデンサであって、前記電極箔の前記表面側では前記引出端子の接続部位における前記エッチング層の厚さが前記エッチング層の他の部位に対して20~70%の厚さであり、前記電極箔の裏面側では前記引出端子接続部位に対応する部位における前記エッチング層の厚さが前記エッチング層の他の部位に対して70~90%の厚さであることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、電解コンデンサの特性劣化を抑制しつつ電極箔への引出端子の接続信頼度を向上させることができる。
【0016】
また、本発明の電解コンデンサは、上記構成において、前記引出端子の溶接痕に対する、前記電極箔の裏面側の前記エッチング層が除去された部位に生じる溶接痕の面積比率が20~30%であることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、電極箔と引出端子との間の接合を強固にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、電極箔と引出端子との間の接続信頼度を向上し得る電解コンデンサおよびその製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る電解コンデンサを示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るコンデンサ素子を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る電極箔の構成を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態に係るエッチング層の概略を示す略線的断面図である。
図5】本発明の実施形態に係るエッチングピットを形成した電極箔を示す断面図である。
図6】本発明の実施形態に係るエッチング層の除去方法の説明に供する断面図である。
図7】本発明の実施形態に係るエッチング層の除去方法の説明に供する断面図である。
図8】本発明の実施形態に係るエッチング層の除去方法の説明に供する断面図である。
図9】本発明の実施形態に係るリードタブの接合工程の説明に供する断面図である。
図10】本発明の実施形態に係るリードタブの接合工程の説明に供する断面図である。
図11】本発明の実施形態に係るリードタブの接合状態を示す断面図である。
図12】本発明の実施形態に係る溶接痕を示す平面図および底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、添付図面に基づき詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態における電解コンデンサの製造方法により製造される巻回型の電解コンデンサ1は、主として、コンデンサ素子2と、外装ケース12と、封口体11とから構成される。
【0021】
図2に示すように、コンデンサ素子2は、エッチング処理および酸化皮膜形成処理が施された陽極箔3aと陰極箔3bとがセパレータ(電解紙)4を介して巻回され、素子止めテープ9(図1)で固定される。
【0022】
このコンデンサ素子2は、駆動用電解液および/または固体電解質が含浸された後、有底筒状の外装ケース12(図1)に収納される。
【0023】
外装ケース12の開口部には樹脂やゴム等で形成された封口体11が装着され、該開口部は絞り加工により密閉された構造を有する。
【0024】
コンデンサ素子2から引き出されるリードタブ(引出端子)5にはリード線6が溶接され、封口体11を介して外部に引き出されている。外装ケース12は、スリーブ13によって被覆される。
【0025】
コンデンサ素子2において、陽極箔3aは、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属で構成されている。陽極箔3aの表面は、エッチング処理により粗面化されるとともに、陽極酸化(化成)による陽極酸化皮膜が形成されている。
【0026】
また、陰極箔3bも、陽極箔3aと同様にアルミニウムなどで形成され、その表面は粗面化されるとともに自然酸化皮膜が形成されている。なお、陰極箔3bは、粗面化後、化成により陽極酸化皮膜を形成された箔、粗面化処理を施さないプレーン箔を使用してもよい。さらに、前記粗面化箔またはプレーン箔の表面に、チタン、ニッケル、チタン炭化物、ニッケル炭化物、チタン窒化物、ニッケル窒化物、チタン炭窒化物およびニッケル炭窒化物からなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む金属薄膜またはカーボン薄膜が形成されたコーティング箔を使用してもよい。
【0027】
また、セパレータ4には、有機溶媒を主体とする溶媒と、有機酸塩、無機酸塩からなる溶質と、リン化合物等の添加物を含む電解液が含浸されている。これにより、陽極箔3aと陰極箔3bとの間に液体の電解質層が形成される。さらに、他の電解質として、固体の導電性高分子を陽極箔3aと陰極箔3bとの間に形成したものも用いることができる。
なお、セパレータ4には、電気絶縁性を有する絶縁紙が用いられる。
【0028】
陽極箔3aおよび陰極箔3bには、それぞれリードタブ5が接続されている。リードタブ5は、コンデンサ素子2の端面から突出する丸棒部5aと、この丸棒部5aの一端に連結されており、電極箔3(陽極箔3a、陰極箔3b)が接続される偏平部5bとから構成されている。
【0029】
リードタブ5は、アルミニウムからなる丸棒状の部材の一端部を、所定長さだけプレスして偏平部5bを形成し、残りの部分を丸棒部5aとすることによって形成されている。
【0030】
図3図12に基づき、本発明の巻回型電解コンデンサの製造方法を説明する。本実施形態においては、超音波発振器を用いて、陽極箔3aおよび陰極箔3bのエッチング層(エッチング処理を施された弁作用金属層)をその厚さ方向に一部を残存させつつ除去するエッチング層除去工程と、エッチング層の一部が除去された部分にリードタブ5の扁平部5bを抵抗溶接法により溶接する抵抗溶接工程とを有する。
【0031】
まず、陽極箔3aとしてアルミニウムなどの弁作用金属からなる金属箔(芯金部19)に、酸化皮膜を有するエッチング層18を形成する。具体的には、図3に示すように、陽極箔3aの表面をエッチング処理することにより粗面化したエッチング層18を形成するとともに、化成液中において陽極酸化することにより、その表面に電気絶縁性のある誘電体皮膜(酸化皮膜)を形成する。この結果、図4に示すように、陽極箔3aには、表面に酸化皮膜51を有するエッチング層18が形成される。なお、図4は、エッチング層18を概略的に示す図であり、例えば、エッチング層18として円柱形状のエッチングピットや立方体形状のエッチングピットを数珠つなぎに形成した電極箔を用いる場合、図5に示すように、複数のエッチングピットPが形成された状態となる。
【0032】
続いて、エッチング層18の一部領域について、その厚さ方向に所定の割合だけ当該エッチング層18を超音波発振器を用いて除去する。具体的には、図6に示すように、エッチング層18に対して、円柱形状の超音波ヘッド31、32を当接させて超音波発振器(図示せず)を発振させ超音波振動を付与することで、エッチング層18の表面を研磨除去する。本実施形態の場合、超音波ヘッド31、32としてセラミック砥石を用いるが、これに限らず、例えば、ダイヤモンド砥石などを用いることができる。セラミック砥石は、電極箔等の強度の低い材質に対しても対象を破断させることなく、その表面のみを研磨可能である。
【0033】
超音波発振によるエッチング層18の除去方法として、具体的には、円柱形状の一対の超音波ヘッド31、32間に、陽極箔3aを挟んで押圧する。この状態において、超音波発振器により超音波ヘッドを17~31kHzの周波数で振動させることにより、エッチング層18の表面を研磨除去する。周波数が17kHz未満の場合、作業時間の長時間化または研磨困難となるおそれがあり、また、周波数が31kHzを超過すると、研磨対象(エッチング層18を有する陽極箔3a)が発熱し破断するおそれがあるためである。なお、エッチング層18の除去は、片面ずつ実施してもよい。
【0034】
このエッチング層18の除去工程においては、図4に示すように、エッチング層18の表面から除去厚さD1を除去し、残存厚さD2を残存させる。本実施形態の場合、後述するリードタブ5(扁平部5b)を抵抗溶接により接続するエッチング層18の表面側の領域AR1(図4図6図12)については、後述する抵抗溶接工程においてリードタブ5と芯金部19との間を通電させることを目的として、エッチング層18の厚さ(D1+D2)に対して、除去厚さD1の比率を80~30%、残存厚さD2の比率を20~70%とする。残存厚さD2の比率が20%未満では、陽極箔3aの強度が不十分となるおそれがあり、70%を超過すると、後述するリードタブ5(扁平部5b)を陽極箔3aに抵抗溶接することが困難になるおそれがあるからである。なお、エッチング層18の厚みは、電極箔の断面を金属顕微鏡等で観察し、電極箔の表面から芯金部までの厚さが最も厚い箇所と最も薄い箇所の厚みを平均して求めることができる。
【0035】
また、後述するリードタブ5(扁平部5b)を抵抗溶接により接続する工程において溶接端子(電極42(図10))と接するエッチング層18の裏面側の領域AR2(図4図6図12)については、エッチング層18の厚さ(D1+D2)に対して、除去厚さD1の比率を30~10%、残存厚さD2の比率を70~90%とする。残存厚さD2の比率が70%未満では、陽極箔3aの引張強度が不十分となり、漏れ電流(LC)が上昇傾向となるためである。また、残存厚さD2の比率が90%を超過すると、後述するリードタブ5(扁平部5b)を陽極箔3aに抵抗溶接することが困難になるおそれがあるからである。
【0036】
なお、陽極箔3aの両面(リードタブ5を抵抗溶接する側とその裏面側)ともにエッチング層18を除去し過ぎると陽極箔3aの持つ抵抗が下がり、リードタブ5(扁平部5b)を抵抗溶接する際の発熱が少なくなって接合強度が低下する傾向となり、また、陽極箔3aにショートが発生するリスクも高くなる。そのため、リードタブ5(扁平部5b)の接合不良が発生しない限りにおいて、エッチング層18の残存厚さD2を大きくすることが望ましい。
【0037】
このような条件によって、超音波発振器により超音波ヘッド31、32を振動させることにより、エッチング層18を除去厚さD1だけ研磨除去する(図4図8)。除去厚さD1は、振動周波数と研磨除去時間を調整することで所望の厚さとすることができる。なお、超音波ヘッド31を所定の周波数および時間だけ振動させることにより陽極箔3aの表面側の領域AR1を所望の厚さまで研磨除去することができ、超音波ヘッド32を所定の周波数および時間だけ振動させることにより陽極箔3aの裏面側の領域AR2を所望の厚さまで研磨除去することができる。
【0038】
陽極箔3aの両面の領域AR1、AR2について、エッチング層18を所定厚さD1だけ除去した後、領域AR1に対してリードタブ5(扁平部5b)を抵抗溶接法により接続する。
【0039】
具体的には、図9に示すように、領域AR1、AR2について、エッチング層18を所定厚さD1だけ除去した陽極箔3aに対して、領域AR1にリードタブ5(扁平部5b)を載せ、さらに、図10(a)、(b)に示すように、陽極箔3aの領域AR1に載せられたリードタブ5(扁平部5b)および陽極箔3aの領域AR2を電極41、42によって挟圧しつつ通電することにより、リードタブ5(扁平部5b)と陽極箔3a(領域AR1)との間を抵抗溶接する。なお、リードタブ5を接合する領域AR1と、当該領域AR1の裏面側の領域AR2(電極42が当接する領域)における除去厚さD1は上述した残存厚さ比率を満たす限り同じ厚さであってもよいし、異なる厚さであってもよい。
【0040】
抵抗溶接法を用いることにより、接続時の箔割れやクラックの発生を抑制することができる。そのため、本実施形態の製造方法により製造された電解コンデンサ1は、他の接続方法(例えば、冷間圧接方法、針穴加締方法、超音波溶接方法)を用いて製造された電解コンデンサよりもショートの発生を抑制することができ、漏れ電流(LC)や等価直列抵抗(ESR)を低減することができ、電気的接続性に優れ、リードタブと電極箔との間の接合強度が安定した電解コンデンサ1の提供が可能となる。
【0041】
図10(c)、図11および図12(a)に示すように、この抵抗溶接工程の溶接時には、電極41が接したリードタブ5(扁平部5b)には直径X1の窪み5cが溶接痕として形成される。また、図12(b)に示すように、陽極箔3a裏面側の電極42が接した領域AR2には、溶接時(通電時)に直径X2の溶接痕Mが残る。
【0042】
リードタブ5に溶接痕として形成された窪み5cに対する陽極箔3aの裏面側に形成された溶接痕Mの面積比は20~30%となり、強固に溶接されていることが分かる。因みに、超音波発振器を用いてエッチング層18を研磨除去する方法以外の除去方法(例えば、レーザー光による除去)では、当該面積比が8%程度となり、リードタブと電極箔との間の接合強度が劣る。
【0043】
また、陰極箔3bについても、陽極箔3aと同様にして、超音波発振によるエッチング層18の除去および抵抗溶接によるリードタブ5(扁平部5b)の溶接を行う。
【実施例
【0044】
エッチング層18および酸化皮膜51が形成された耐電圧578Vの高圧用陽極アルミニウム箔および陰極アルミニウム箔に対して超音波発振器を用いてエッチング層18の除去を行った後、抵抗溶接法によりリードタブ5を接合する。そして、セパレータ4を介して陽極アルミニウム箔(陽極箔3a)と陰極アルミニウム箔(陰極箔3b)を重ね合わせ、巻回したアルミニウム電解コンデンサ素子2に電解液を含浸する。そして、アルミニウム電解コンデンサ素子2から引き出されている陽極側のリードタブ5および陰極側のリードタブ5の丸棒部5aをそれぞれ封口体11の挿通孔から挿通させた後、アルミニウム電解コンデンサ素子を封口体11とともに外装ケース12内に挿入する。次に、外装ケースの開口部をカーリング加工するとともに外周面に絞り加工を施し封止する。これにより、直径φ12.5mm×長さ13.5mmのアルミニウム電解コンデンサを製作し、カテゴリ上限温度を超える115℃の環境下にて信頼性試験を行った後のリードタブ5の引張強度と、アルミニウム電解コンデンサの静電容量(Cap)、損失(tanδ)、漏れ電流(LC)を測定した結果を、抵抗溶接工程において溶接端子(電極42)が当接された側(領域AR2)のエッチング層18の残存率(90%、70%、50%、30%、0%)ごとに表1に示す。本アルミニウム電解コンデンサにおいては、リードタブ5が接続される側の領域AR1のエッチング層18の残存率は70%とした。なお、超音波発信器によるエッチング層18の除去を行わずに抵抗溶接法によるリードタブ5の接合を試みたが、陽極アルミニウム箔にリードタブ5を接合することができなかったため、アルミニウム電解コンデンサを製作することができなかった。
【0045】
【表1】
【0046】
表1から以下のことが分かる。
抵抗溶接時に電極42が当接される側(領域AR2)におけるエッチング層の残存率(エッチング層における残存厚さD2の比率)が30%、50%、70%、90%である場合には、残存率が0%である場合に比べて、リードタブの引張強度が高く、損失(tanδ)が小さく、漏れ電流(LC)が少ない結果となった。すなわち、電解コンデンサ1の特性劣化が小さい結果となった。特に、エッチング層の残存率が70%および90%である場合に引張強度が高く漏れ電流(LC)が少なく機械的および電気的特性の両方において良好な結果が得られた。すなわち、エッチング層の除去率(エッチング層における除去厚さD1の比率)が高いほど(エッチング層の残存率が低いほど)電解コンデンサ1の特性劣化が大きくなる傾向があることが分かった。なお、リードタブ5が接続される側の領域AR1のエッチング層18の残存率が20%以上70%未満の場合も同様な傾向を有する。
【0047】
また、上記結果から、本実施形態による超音波発振器を用いたエッチング層18の除去工程および抵抗溶接によるリードタブ5の接続工程を有する電解コンデンサの製造方法においては、エッチング層18を浅く除去するだけで電解コンデンサ1の特性劣化を抑制しつつリードタブ5の引張強度を高くすることができる。これにより、特性劣化を抑制しつつ電極箔のダメージやショート発生といったリスクを軽減することができる。
【0048】
なお、上記結果から、エッチング層18の残存率が高いほど、リードタブ5の引張強度が高いことが分かる。これは、エッチング層18を完全に除去しないことにより、電気抵抗の大きな酸化膜51(図4)が残る分、リードタブ5を抵抗溶接する際に高いジュール熱を発生させることができ、より強固な溶接を行うことが可能となるためである。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る電解コンデンサの製造方法によれば、超音波発振器を用いたエッチング層除去工程(エッチング層の一部を残存させる除去工程)およびそれに続く抵抗溶接工程を有することにより、電極箔3にクラックや割れを発生させずにエッチング層18の一部を残して除去することができ、さらに、エッチング層18の一部が残ることで、続く抵抗溶接工程において、高いジュール熱を発生させることができるため、強固な溶接を行うことが可能となる。すなわち、当該エッチング層18の除去厚さD1を浅くし、エッチング層18を残存させることで、電極箔3(陽極箔3a、陰極箔3b)のダメージ等の発生を低減することができると共に、抵抗溶接時に高いジュール熱による強固な溶接が可能となる。
【0050】
この製造方法により製造された電解コンデンサ1においては、リードタブ5(扁平部5b)に形成された窪み5cと、電極箔3の電極42が接した領域AR2に残る溶接痕Mとの面積比は20~30%となり、強固に溶接されていることが分かる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について実施例に基づいて説明したが、本発明の範囲は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明に限られることなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1 電解コンデンサ
2 コンデンサ素子
3 電極箔
3a 陽極箔
3b 陰極箔
4 セパレータ
5 リートタブ
5b 扁平部
5c 窪み
18 エッチング層
31、32 超音波ヘッド
41、42 電極
51 酸化皮膜
M 溶接痕
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12