(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240911BHJP
H01L 23/467 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H01L23/46 C
(21)【出願番号】P 2021162052
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】濱埜 晃嗣
(72)【発明者】
【氏名】広田 雅之
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0373761(US,A1)
【文献】特開2006-013296(JP,A)
【文献】特開2019-125700(JP,A)
【文献】特開平05-275874(JP,A)
【文献】特開2021-108350(JP,A)
【文献】特開2019-029203(JP,A)
【文献】特開平11-204701(JP,A)
【文献】特開2006-114688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H01L 23/46
H01L 23/36
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の半導体素子と、
前記
複数個の半導体素子を冷却するためのヒートシンクとを有し、
前記ヒートシンクは、
前記
複数個の半導体素子の上方に、前記複数個の半導体素子を固定する第1のベースと、
前記複数個の半導体素子各々の直下に、各々の半導体素子を支持するように設けられた円柱状、もしくは多角形柱状の熱電導体と、
前記第1のベースと対向する第2のベースと、
前記第1のベースおよび前記第2のベースと接続する複数の
フィンとを有する電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置において、高効率化は電機系分野のみならず、機械系分野でも重要な開発要素の一つである。そこで冷却についての高効率を実現するにあたって、交流電流を直流に整流するダイオード部や、直流を再び交流に変換するインバータ部などのパワー半導体の冷却部(ヒートシンク)の性能を上げることが重要であり、それらの半導体の配置方法や冷却部(ヒートシンク)の形状などに工夫がされている。
【0003】
例えば特許文献1においては、発熱体に対接される伝熱プレートに三角形の支柱を突出させ、その支柱の側面にピン状のフィンを設け、発熱体からの熱拡散効果を高める点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力変換装置のパワー半導体は、冷却のためにヒートシンクを設けており、このヒートシンクに如何にして効率よくパワー半導体の熱を逃がし、冷却ファンによって外気に放出するかが冷却の肝である。
【0006】
しかしながら、実際にはヒートシンクのベースだけに於いても熱の拡散具合は期待よりも良くなく、発熱体の近傍は熱くなってはいるものの、ヒートシンクの端では外気温とほとんど変わらないような温度であったりする。
【0007】
また、ヒートシンクのフィンに於いてもベースと同様なことが起きており、パワー半導体近くのベース面に近いフィンの根本付近は熱くなってはいるものの末端のほうまでは熱くなってない。また、発熱体から離れれば離れるほど外気温に近く、当たり前の状況ではあるものの効率よく冷却効果を果たせているとは言えない状況であった。
【0008】
本発明の目的は、ヒートシンクの占有空間体積を変えないで、冷却効率を上げる電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一例としては、半導体素子と、前記半導体素子を冷却するためのヒートシンクとを有し、
前記ヒートシンクは、
前記半導体素子を固定する第1のベースと、
前記第1のベースと対向する第2のベースと、
前記第1のベースおよび前記第2のベースと接続する複数のフィンと、
前記第1のベースおよび前記第2のベースと接続するとともに、前記フィンより厚い熱電導体とを有する電力変換装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヒートシンクの占有空間体積を変えないで、冷却効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】比較例としての電力変換装置のヒートシンクを左側面より見た概略斜視図である。
【
図2】実施例1における電力変換装置のヒートシンクを左側面より見た概略斜視図である。
【
図3】実施例2における電力変換装置のヒートシンクを左側面より見た概略斜視図である。
【
図4】実施例3における電力変換装置のヒートシンクを左側面より見た概略斜視図である。
【
図5】実施例3における電力変換装置のヒートシンクを見やすくするためにフィン部分を透過し左側面より見た概略斜視図である。
【
図6】比較例としての電力変換装置のヒートシンクの熱伝導具合を示した図である。
【
図7】実施例1における電力変換装置のヒートシンクの熱伝導具合を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例につき、図面を用いて説明する。
【0013】
まず、はじめに、本実施例の前提となる、比較例としての電力変換装置の冷却部(ヒートシンク)について説明する。
図1は、比較例としての電力変換装置の冷却部(ヒートシンク)を左側面より見た概略斜視図である。
【0014】
図1に於いて、電力変換装置は、入力された交流電力を直流電力に整流し、整流された直流電力を再び交流電力に変換するパワー半導体1と、パワー半導体1の発熱を冷却するヒートシンク3と、ここでは省略するがパワー半導体1を駆動する回路を有する主回路基板(図示省略)とを有し、これらの部品は筐体(図示省略)で周囲を覆われている。
【0015】
ここで、ヒートシンク3について述べる。ヒートシンク3は、アルミ等の放熱効果の高い材料からなる第1のベース2と、複数のフィン4から構成されている。冷却について述べると、ヒートシンク3を冷却するための冷却風は、ヒートシンク上部に設けられた冷却ファン5によって、ヒートシンク3の下部から吸入され、ヒートシンク3に設けられた複数のフィン4の間を通過することでパワー半導体1が冷却される。
【0016】
近年、電力変換装置において、パワー半導体1の進歩によりパッケージの小型化が進んでいる。しかしパワー半導体1からの発熱量自体は極端に減ることはないため以前よりも熱が集中する結果となってしまい、集中した熱の拡散が大きな課題となっている。
【0017】
そこで、これらの課題を解決するために、パワー半導体1の集中した熱を従来と変わらない冷却のための占有空間体積で如何にして効率よく放熱するかということに着目する。
【実施例1】
【0018】
実施例1について
図2を用いて説明する。実施例1ではパワー半導体1の冷却のためのヒートシンク3を有し、ヒートシンク3は、パワー半導体1を固定し、熱を拡散するための第1のベース2と、第1のベース2と対向し第1のベース2の面とほぼ平行な面を有する第2のベース6と、第1のベース2で拡散された熱を放熱するための複数のフィン4と、複数のフィン4よりも板厚の厚くなった熱電導体7aを有する。第1のベース2で拡散できなかった熱がフィン4よりも板厚の厚くなった熱電導体7aによって拡散される。
【0019】
複数のフィン4は、第1のベース2および第2のベース6とは熱を直接に伝導できるように接続した構成である。また、フィン4より厚い熱電導体7aは、第1のベース2および第2のベース6と熱を直接に伝導できるようにした構成である。つまり、第1のベース2と第2のベース6は、複数のフィン4と、複数のフィン4よりも厚みのある熱電導体7aと熱のやり取りができるように繋がっている。第1のベース2および第2のベース6と、複数のフィン4とは直接に接続されてなくとも、第1のベース2とフィン4、もしくは第2のベース6とフィン4との間に、両者からの熱が拡散できるように熱伝導体を介するように接続してもよい。
【0020】
フィン4は、第1のベース2の面および第2のベース6の面に略直交する方向に伸びており、さらに、パワー半導体1の近傍である第1のベース2および第2のベース6の中心部からパワー半導体1から離れた第1のベース2および第2のベース6の端部に向かって、複数個のフィン4が、互いに略平行に、配置される。
【0021】
本実施例の構成によれば、第1のベース2で拡散できなかった熱はフィン4よりも板厚の厚くなった熱電導体7aで拡散し、それでも拡散できなかった熱は第2のベース6で再び拡散され、第2のベース6に繋がっているフィン4で再び放熱できる構成とした。
【0022】
ここでヒートシンク3の熱の伝わり方について図を用いて説明する。
図6は、比較例としての電力変換装置のヒートシンク3の熱伝導の具合を図示したものである。
図7は、本実施例における電力変換装置のヒートシンク3の熱伝導の具合を図示したものである。
【0023】
図6において、パワー半導体1の発熱は第1のベース2である程度拡散され、フィン4によって放熱される。しかし、熱は発熱体から放射状に広がるため、この場合、パワー半導体1の近傍はフィン4の末端まで放熱に寄与しているが、パワー半導体1から距離の離れたフィン4では末端まで熱が伝わらない。
【0024】
要するに破線で囲った部分は期待しているほど、冷却に寄与していない部分となる。
【0025】
一方、本実施例によれば、
図7に示すように発熱体(この場合パワー半導体1)から発せられた熱は第1のベース面によってまずは拡散される。次にフィン4によって放熱される。本実施例では、発熱体の下にフィン4よりも板厚の厚い熱電導体7aを設けることによって、第1のベース2で拡散しきれなかった熱はその板厚の厚い熱電導体7aを伝わり、第2のベース6にて再び拡散され、再度フィン4にて放熱される。
【0026】
以上によって、
図6の破線で囲った面積よりも、本実施例における
図7の破線で囲った面積のほうが小さくなっている分、効率よくヒートシンクが使えているということになる。
【0027】
熱電導体7aは、パワー半導体1の直下に配置されることで、パワー半導体1からの熱を冷却する冷却性能を高めることができる。
【0028】
また、第2のベース6の厚さを、第1のベース2の厚さと略同じ厚さとすることで、第1のベース2で拡散しきれなかった熱は熱電導体7aを伝わり、第2のベース6にて再び拡散された熱が、より放熱されるので冷却効率を高くできる。
【0029】
図2では、フィン4がプレート形状である場合を示したが、ピン形状であってもよい。
【0030】
また、
図2では、ヒートシンク上部である第1のベース2の上側に配置された冷却ファン5によって、ヒートシンク3を冷却するための冷却風は、ヒートシンク3の下部から吸入され、ヒートシンク3に設けられた複数のフィン4の間を通過することでパワー半導体1が冷却される例を示した。それに限らず、ヒートシンク下部である第1のベース2の下側に冷却ファン5を配置してもよい。また、冷却ファン5に吸入するように冷却風を流すのではなく、冷却ファン5からヒートシンク3に冷却風を吐出するようにしてパワー半導体1を冷却するようにしてもよい。
【0031】
熱電導体7aは、フィン4よりも厚くすることで、パワー半導体1の発熱を拡散して冷却効果を高めることができるが、冷却風の流れをよくするために熱電導体7aの幅は、パワー半導体1の幅以下の幅とするのが望ましい。
【0032】
実施例1によれば、パワー半導体1の集中した熱を冷却のための占有空間体積を変えないで効率よく放熱できる。
【実施例2】
【0033】
本実施例では、実施例1よりもさらに効率の良いヒートシンクについて説明する。
図3は、実施例2における電力変換装置の冷却部(ヒートシンク)を、左側面より見た概略斜視図である。
図3において、基本的な構成は実施例1と同じである。実施例1と同じ事項については説明を省略する。
【0034】
図2の実施例1と異なる点は、第1のベース2の面および第2のベース6の面に対して略平行な方向に、板厚の厚い熱電導体7aから第2のフィン8が伸びる構成となっている点である。熱電導体7aと第2のフィン8は一体の構成であってもよいし、別々の部品から構成されていてもよい。熱電導体7aと第2のフィン8が別体である場合には、熱電導体7aからの熱が第2のフィン8に拡散されて放熱されるように熱電導体7aと第2のフィン8が接続されることが必要である。
【0035】
実施例1でも述べたように第1のベース2で拡散できなかった熱は板厚の厚い熱電導体7aで拡散される。一方、実施例2では、その拡散途中で同時に放熱させるために第2のフィン8を設けてある。
【0036】
実施例1に記載の板厚の厚い熱電導体7aに比べて、実施例2によれば、第2のフィン8があることで表面積が増加するため、放熱効果が良くなる。
【実施例3】
【0037】
本実施例では、複数個のパワー半導体1が搭載される電力変換装置の冷却について
図4、および
図5を用いて説明する。
【0038】
図4は、実施例3における電力変換装置のヒートシンクを左側面より見た概略斜視図である。
図5は、実施例3における電力変換装置のヒートシンクを見やすくするためにフィン部分を透過し左側面より見た概略斜視図である。実施例1と同じ事項については説明を省略する。
【0039】
実施例1と実施例2では製造上の作りやすさを考慮し、熱を拡散するための熱電導体7aをフィン4の板厚を厚くするような形状とした。
【0040】
本実施例では、複数個のパワー半導体1の直下に円柱状の熱電導体7bを配置する構成である。
図4および
図5では、第1のベース2および第2のベース6と繋がる円柱状の熱電導体7bが4個の例を示している。
【0041】
本実施例のような構成とすることで、実施例1のように第1のベース2および第2のベース6の1辺とほぼ同じ長さに伸びる構成の熱電導体7aに比べて、熱電導体7bは軽くできる。
【0042】
そのために、本実施例では、複数個のパワー半導体1の直下に、それぞれのパワー半導体1を支持する熱電導体7bを配置する構成であるが、不必要な重量増加(コストアップ)を避け、効率よく熱の拡散ができる構成となる。
【0043】
また、本実施例では熱を拡散するための熱電導体を円柱状の熱電導体7bとしたが、円柱状の形状に限定するものではなく、四角柱や六角柱など、熱を十分に移送できるような断面積があれば形状は問わない。
【0044】
図4や
図5では、実施例1の熱電導体の構成に基づいて説明したが、実施例2の第2のフィンと熱電導体との構造を本実施例に適用することができる。その場合には実施例2と実施例3の両方の効果を得ることができる。
【0045】
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0046】
1:パワー半導体
2:ヒートシンクにおける第1のベース
3:ヒートシンク
4:ヒートシンクにおけるフィン
5:冷却(空冷)ファン
6:ヒートシンクにおける第2のベース
7a:フィンよりも板厚の厚い熱電導体
7b:熱伝導可能な断面積のある熱電導体