IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニアの特許一覧 ▶ エクソンモービル テクノロジー アンド エンジニアリング カンパニーの特許一覧

特許7554184金属有機構造体相および結晶子形状の制御
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】金属有機構造体相および結晶子形状の制御
(51)【国際特許分類】
   C07C 65/03 20060101AFI20240911BHJP
   C07F 3/06 20060101ALN20240911BHJP
   C07F 15/06 20060101ALN20240911BHJP
   C07F 15/02 20060101ALN20240911BHJP
【FI】
C07C65/03 Z
C07F3/06
C07F15/06
C07F15/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021517287
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 US2019052977
(87)【国際公開番号】W WO2020068996
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】62/738,880
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(73)【特許権者】
【識別番号】523025539
【氏名又は名称】エクソンモービル テクノロジー アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ウェストン,サイモン,シー.
(72)【発明者】
【氏名】ロング,ジェフリー,アール.
(72)【発明者】
【氏名】ファルコフスキー,ジョセフ,エム.
(72)【発明者】
【氏名】コルウェル,クリステン
(72)【発明者】
【氏名】トーレス,ロドルフォ
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-518169(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0173368(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0341055(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0178558(US,A1)
【文献】特開2008-208110(JP,A)
【文献】国際公開第2017/207424(WO,A1)
【文献】特開2017-014146(JP,A)
【文献】Nature Chemistry,2016年05月09日,Vol.8,p718-724,doi:10.1038/nchem.2515
【文献】Journal of the American Chemical Society,2014年08月18日,Vol.136, No.34,p12119-12129,doi:10.1021/ja506230r
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカチオンおよび複数のポリトピック有機リンカーを含む結晶性金属有機構造体を合成する方法であって、前記複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーが、前記複数のカチオンの2つ以上のカチオンに接続され、前記方法が、
前記複数のポリトピック有機リンカーを、トリフルオロスルホン酸コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、ヨウ化コバルト(II)、臭化コバルト(II)、塩化コバルト(II)、硝酸コバルト(II)、トリフルオロ酢酸コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、蟻酸コバルト(II)、クロロ酢酸コバルト(II)、トリクロロ酢酸コバルト(II)又はトリフルオロ酢酸鉄(II)の1つ以上と反応させることを含み、
前記反応させることが、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)バッファの存在下にあり、それによって、1つ以上の結晶学的方向に沿ってまたはそれらの線形結合に沿って、前記金属有機構造体の結晶成長の量を制御し、
前記複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーが、2,5-ジオキシド-1,4-ベンゼンジカルボキシレート(dobdc 4- )である、
方法。
【請求項2】
前記反応させることが、油浴を使用して、非シラン化ガラス容器で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応させることが、官能化ガラス容器において行われ、それによって、前記結晶性金属有機構造体の相または形態を制御する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
反応させることが、プラスチック又は鋼の表面の存在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記反応させることが、シラン化剤でシラン化されたガラス容器において行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記シラン化剤が、クロロトリメチルシラン、トリクロロヘキシルシラン、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、またはそれらの混合物を含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応させることが、1:1のエタノール:H2O溶媒中で起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記反応させることが、25℃を超える温度で少なくとも1時間起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記反応させることが、25℃を超える温度で少なくとも8時間起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記結晶性金属有機構造体の1つ以上の結晶学的方向に沿った、または前記結晶性金属有機構造体のそれらの線形結合に沿った前記金属有機構造体の結晶成長の量が、前記結晶性金属有機構造体が、平均長さの幅に対するアスペクト比が5未満を有する結晶の形態であるように、前記反応させることによって制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記結晶性金属有機構造体の1つ以上の結晶学的方向に沿った、または前記結晶性金属有機構造体のそれらの線形結合に沿った前記金属有機構造体の結晶成長の量が、前記結晶性金属有機構造体が、平均長さの幅に対するアスペクト比が2未満を有する結晶の形態であるように、制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記結晶性金属有機構造体の1つ以上の結晶学的方向に沿った、または前記結晶性金属有機構造体のそれらの線形結合に沿った前記金属有機構造体の結晶成長の量が、前記結晶性金属有機構造体が、平均長さの幅に対するアスペクト比が1.3未満を有する結晶の形態であるように、制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記結晶性金属有機構造体が、500ナノメートル~1ミリメートルの長さを有する結晶を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年9月28日に出願された「金属有機構造体相および結晶子形状の制御」という名称の米国仮特許出願第62/738,880号に対する優先権を主張するものであり、当該米国仮特許出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、かかる金属有機構造体(MOF)の材料相および結晶子サイズならびに形状に影響を与え、それによって、かかる材料の吸着性能を改善する条件下での金属有機構造体の合成に関する。
【背景技術】
【0003】
多孔質材料は、化学分離、エネルギー貯蔵、および触媒作用などの広範な技術における吸着剤および触媒としての適応性を有する。特定のクラスの多孔質材料、金属有機構造体の潜在的な産業用途としては、メタン変換、炭化水素の分離および触媒作用、希ガス分離、および煙道ガスからの二酸化炭素の捕捉が挙げられる。例えば、Li et al.,2011、「Metal-Organic Frameworks for Separations」、Chem.Rev.112、869、Sumida et al.,2012、「Carbon Dioxide Capture in Metal-Organic Frameworks」、Chem.Rev.112、724、McDonald et al,2015、「Cooperative Insertion of C0 in Diamine-Appended Metal-Organic Frameworks」、Nature 519、303、Milner et al.,2018、「Overcoming double-step CO adsorption and minimizing water co-adsorption in bulky diamine-appended variants of Mg(dobpdc)」、Chem.Sci.9、160、およびBachman et al.,2016、「Enhanced ethylene separation and plasticization resistance in polymer membranes incorporating metal-organic framework nanocrystals」、Nature Mater.15、845を参照されたい。
【0004】
このような化学分離に関連するプロセスは、現在、世界のエネルギー使用量の10~15%を占めている。2005、Oak Ridge National Laboratory。Materials for Separation Technologies:Energy and Emission Reduction Opportunities、およびHumphrey and Keller、1997、Separation Process Technology、McGraw-Hillを参照されたい。充填層用途などの分離性能は、結晶子のサイズおよび形状に大きく依存する可能性があり、それらは、金属有機構造体などの多孔質材料の表面積対体積比および物質移動抵抗を一括して制御する。Rousseau、1987、「Handbook of Separation Process Technology」、John Wiley and Sons、pp.669-671を参照されたい。金属有機構造体などの不均一触媒の触媒性能は、材料相および物質移動抵抗を含むファクターから導き出すことができ、後者は結晶子のサイズおよび形状の関数であり得る。Fogler、2016、Elements of Chemical Reaction Engineering、Fifth Ed.,Prentice Hallを参照されたい。
【0005】
熱電発電所での化石燃料の燃焼から生成された二酸化炭素(CO)は、おそらく地球規模の気候変動の主な一因である。Pachauri and Meyer、Climate Change 2014:Synthesis Report。Contribution of Working Groups I,II and III to the Fifth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change、International Government Panel on Climate Change、Geneva、Switzerland、2014を参照されたい。大気中のCOレベルの増加に対処するために、現在、地球規模のCO排出の約20%を占める、天然ガス火力発電所などの点源からのCO排出を削減させる新たな戦略が必要である。Quadrelli and Peterson、2007、Energy Policy 35、p.5938を参照されたい。経済的要因が化石燃料源として石炭から天然ガスへの移行を支持しているため、この占有率は、近い将来、増加するであろう。2018年9月26日にアクセスされたcdn.exxonmobil.com/~/media/global/files/outlook-for-energy/20l8/2018-outlook-for-energy.pdfでインターネット上にあるExxonMobil,「Outlook for Energy:A View to 2040」を参照されたい。天然ガスの燃焼は、40~60℃で約4~10%のCOを含有する総圧力1バールのストリームを生成し、ストリームの残部は、HO(飽和)、O(4~12%)、およびN(残部)からなる。Vaccarelli et al.,2014、Energy Procedia 45、p.1165を参照されたい。したがって、最も困難なケースでは、天然ガスの煙道ガスから≧90%のCOを除去するには、≦0.4%(4mbar)のCOを含有する湿潤ガス流からの選択的吸着が必要であり、これは非常に困難な分離である。加えて、吸着剤は、温度スイング吸着(TSA)プロセスにおける用途のための湿度サイクルおよび吸着/脱着サイクルの両方に対して長期の安定性を有しなければならない。
【0006】
吸着剤、例えば、M(dobdc)(M=Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Cd、dobdc4-=2,5-ジオキシド-1,4-ベンゼンジカルボキシレート、図1)、および材料M(dobpdc)の関連拡張ファミリー(M=Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、dobpdc4-=4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3-ジカルボキシレート、図2)(McDonald et al.,2015、Nature 519、p.303、Siegelman、2017、J.Am.Chem.Soc.,139、p.10526)は、分離、触媒用途、およびガス貯蔵で使用するための多孔質固体吸着剤材料として興味深いものである。かかる金属有機構造体は、細孔に沿って配位的に不飽和の金属サイトを特徴とする構造のために、興味深いものである。Rosi et al.,2005、J.Am.Chem.Soc.127(5)、1504、Rowsell et al.,2006、Am.Chem.Soc.128、p.1304、Caskey et al.,2008、J.Am.Chem.Soc.130、p.10870、McDonald et al.,2012、J.Am.Chem.Soc.134、p.7056、および2013年4月25日に出願された「複合ガス分離のためのアルキルアミン官能化金属有機構造体(Alkylamine functionalized metal-organic frameworks for composite gas separations)」という名称のLong et al.,による国際公開第WO2013/059527(A1)号を参照されたい。
【0007】
これらの材料に関する1つの欠点は、従来の合成スキームでは、典型的には、異方性成長が延長された結晶性金属有機構造体が生じ、棒状の結晶性生成物が生じる点である。金属有機構造体の合成には、金属イオンまたはクラスターの供給源と、部分的から完全に脱プロトン化された配位子が必要である。一般に、これは高温において、かつ溶液中で行われ、溶媒分解による塩基の形成を介して脱プロトン化が起こる。溶媒は、しばしば、N,N-ジメチルホルムアミドなどの有毒および/または高価な溶媒である。
【0008】
サイズおよび形状などの金属有機構造体のマクロスケールの結晶特性は、吸着剤性能に有意な影響を与えるため、従来の金属有機構造体スキームから生じるそのような異方性結晶構造は、しばしば、ab面の方向への有意な拡散を妨げる。したがって、高アスペクト比の結晶子のための結晶子外面のほとんどは、ガス拡散にアクセスできないと予想される。
【0009】
そのため、MOF合成における1つの目標は、有機リンカーを分解せずに結晶性金属有機構造体へと導く合成条件を確立することである。同時に、結晶化の動力学は、核形成および所望の相の成長が起こることを可能にするために適切であるべきである。これらの複雑な関係により、好適なサイズと形状のMOF結晶子を生成するMOFのための合成反応条件を決定することは難しい。
【0010】
金属有機構造体結晶子の特定のサイズまたは形状に影響を及ぼすために文献で使用されている1つの戦略は、配位モジュレーターと称される、確立された合成による添加剤を使用することである。Stock and Biswas、2012、Chem.Rev.112、933、Hermes et al.,2007 J.Am.Chem.Soc.129,5324、Cho et al.,2008、J.Am.Chem.Soc.130、16943、Diring et al.,2010、Chem.Mater.22、4531、およびPachfule et al.,2016、Nature Chem.8,718を参照されたい。これらの添加剤のほとんどは、有機リンカーと同じまたは類似の官能基を持っており、成長中に競合的に結合すると推定される。ただし、これらの添加剤はすべて酸または塩基でもあり、配位平衡に加えて、成長中にpH平衡に関与することができる。M(dobdc)制御の唯一の例は、モジュレーターとしてサリチル酸を使用するが、酸/塩基平衡へのその関与については触れていない。Pachfule et al.,2016、Nature Chem.8、718を参照されたい。M(dobdc)またはM(dobpdc)の他の公開された合成は、結晶子の単分散サンプルを形成せず、高アスペクト比であるか、または多結晶塊を形成する。Rosi et al.,2005、J.Am.Chem.Soc.127(5)、1504、Rowsell and Yaghi、2006、Am.Chem.Soc.128、1304、およびCaskey et al.,2008、J.Am.Chem.Soc.130、10870を参照されたい。
【0011】
溶液のpHと、配位剤の添加の両方が、金属有機構造体の成長に影響を与えることが知られており、結晶子のサイズおよび形状を制御する過去の試みは、それらに別々に焦点を合わせており、これらの変数を独立に制御する試みではなかった。
【0012】
したがって、当技術分野で必要とされるのは、制御された結晶子寸法を有する結晶性生成物をもたらす改善された金属有機構造体合成スキームである。
【発明の概要】
【0013】
非配位性アニオンおよび/または薬剤の妥当な選択を通じて、およびそのような金属有機構造体の合成中のpHの制御を通じて、金属有機構造体(MOF)の形状およびアスペクト比を制御するための合成スキームを本明細書に開示する。MOFは、しばしば、結晶学的方向に沿って走る細孔チャネル、または異方性寸法を有する結晶を形成するそれらの線形結合を有し、しばしば、その細孔チャネルは、分子拡散とその後の吸着および触媒作用に影響を与え得るより長い結晶子寸法のうちの1つに沿って走っている。
【0014】
いくつかの実施形態では、金属有機構造体を合成中のpHは、非配位性の剤またはバッファを使用して制御される。いくつかの実施形態では、配位官能基および/または結合強度は、電子置換基効果によって変更され、それにより、M(dobdc)およびM(dobpdc)に関する結晶子の長さおよび形状の正確な単分散制御が可能になる。これらの異方性の高い金属有機構造体用の低アスペクト比結晶子を作り出すためのこれらの新規な合成スキームの使用を、実証する。さらに、反応容器の表面官能性を変更すると、結晶子のサイズおよび形状の分散度がどのように改善されるかを実証し、それは、異なる構造体組成で実証され、同一の反応混合物から金属有機構造体のどの相が形成されるかを選択するための基礎として使用することができる。プラスチックまたは鋼などの良性材料も、結晶子のサイズおよび形状の分散性を改善させ得る。いくつかの実施形態では、官能化された表面は、結晶子サイズを導く。有利なことに、開示される金属有機構造体合成スキームのいくつかの実施形態は、経済的で環境的に安全な溶媒を使用する。
【0015】
本開示の一態様は、複数の金属カチオンと、複数のポリトピック有機リンカーとを含む結晶性金属有機構造体を合成する方法を提供する。複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーは、複数の金属カチオン中の2つ以上の金属カチオンに接続される。結晶性金属有機構造体は、c方向の細孔チャネルによって特徴付けられる。
【0016】
本方法では、複数のポリトピック有機リンカーを、式Mの化合物と反応させ、式中、Mは、カチオン性Be、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Cd、またはHfであり、Xは、塩基性アニオンであり、nは、正の整数(例えば、1以上)であり、mは、正の整数(例えば、1以上)である。いくつかの実施形態では、反応させることは、塩基性アニオンのpKa値が、閾値未満、例えば、3.5未満であるとき、金属配位官能基を欠くバッファの存在下にあり、塩基性アニオンのpKa値が、閾値を超える、例えば、3.5を超えるとき、反応させることは、任意選択的に、金属配位官能基を欠くバッファの存在下にはなく、それにより、(例えば、1つ以上の結晶学的方向またはそれらの線形結合において)金属有機構造体の結晶成長の量を制御する。
【0017】
いくつかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーは、以下の式を有し、
【化1】

式中、RおよびRは、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、またはハロゲン置換メチルから選択される。いくつかの実施形態では、RおよびRは、各々、水素である。
【0018】
いくつかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーは、以下の式を有し、
【化2】

式中、RおよびRは、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、またはハロゲン置換メチルから選択される。いくつかの実施形態では、RおよびRは、各々、水素である。
【0019】
いくつかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーは、以下の式を有し、
【化3】
式中、R、R、R、R、RおよびRは、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、またはハロゲン置換メチルから選択される。いくつかの実施形態では、R、R、R、R、R、およびRは、各々、水素である。
【0020】
いくつかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーは、以下の式を有し、
【化4】

式中、R、R、R、R、RおよびRは、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、またはハロゲン置換メチルから選択される。いくつかの実施形態では、R、R、R、R、R、およびRは、各々、水素である。
【0021】
いくつかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーは、4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3’-ジカルボキシレート(dobpdc4-)、4,4’‘-ジオキシド-[1,1’,4’,1’’-テルフェニル]-3,3’’-ジカルボキシレート(dotpdc4-)、ジオキシドビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート(パラ-カルボキシレート-dobpdc4-、pc-dobpdc4-とも称される)、2,5-ジオキシドベンゼン-1,4-ジカルボキシレート(dobdc4-)、4,6-ジオキシド-1,3-ベンゼンジカルボキシレート(m-dobdc4-)、1,3,5-ベンゼントリステトラゾレート(BTT)、1,3,5-ベンゼントリストリアゾレート(BTTri)、1,3,5-ベンゼントリスピラゾレート(BTP)、または1,3,5-ベンゼントリスカルボキシレート(BTC)である。
【0022】
いくつかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーは、2,5-ジオキシド-1,4-ベンゼンジカルボキシレート(dobdc4-)である。
【0023】
いくつかの実施形態では、式Mの化合物は、マグネシウム(II)金属塩、マンガン(II)金属塩、鉄(II)金属塩、コバルト(II)金属塩、ニッケル(II)金属塩、亜鉛(II)金属塩、またはカドミウム(II)金属塩である。
【0024】
いくつかの実施形態では、式Mの化合物は、硝酸コバルト(II)、塩化コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、ヨウ化コバルト(II)、臭化コバルト(II)、トリフルオロスルホン酸コバルト(II)、テトラフルオロホウ酸コバルト(II)、アセチルアセトン酸コバルト(II)、蟻酸コバルト(II)、過塩素酸コバルト(II)、またはそれらのハロゲン化誘導体である。
【0025】
いくつかの実施形態では、塩基性アニオンは、蟻酸塩または酢酸塩であり、反応させることは、金属配位官能基を欠くバッファの存在下では行われない。
【0026】
いくつかの実施形態では、塩基性アニオンは、スルフェート、臭化物、ヨウ化物、ペルクロレート、またはトリフルオロスルホネートであり、反応させることは、金属配位官能基を欠くバッファの存在下にある。
【0027】
いくつかの実施形態では、反応させることは、油浴を使用して、非シラン化ガラス容器で行われる。
【0028】
いくつかの実施形態では、反応させることは、シラン化剤でシラン化されたガラス容器で行われる。いくつかの実施形態では、シラン化剤は、クロロトリメチルシラン、トリクロロヘキシルシラン、またはそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、反応させることは、1:1のエタノール:HO溶媒中で起こる。いくつかの実施形態では、反応させることは、少なくとも8時間、60℃を超える温度で起こる。いくつかの実施形態では、反応させることは、少なくとも5分間、25℃を超える温度で起こる。
【0029】
いくつかの実施形態では、反応させることは、金属配位官能基を欠くバッファの存在下にあり、金属配位官能基を欠くバッファは、PIPES(ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸))、PIPPS(1,4-ピペラジンジプロパンスルホン酸)、PIPBS(1,4-ピペラジンジブタンスルホン酸)、DEPP(ジエチルピペラジン)、DESPEN(1-プロパンスルホン酸、3,3’-[1,2-エタンジイルビス(エチリミノ)]ビス-(9CI))、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、TEEN(N,N,N’,N’-テトラエチルエチルエンジアミン)、PIPES(ピペラジン-N,Nrabis(2-エタンスルホン酸))、MOBS(4-(N-モルホリノ)ブタンスルホン酸)、またはTEMN(N,N,N’,N’-テトラエチルメチレンジアミン)である。
【0030】
いくつかの実施形態では、反応させることは、金属配位官能基を欠くバッファの存在下にあり、金属配位官能基を欠くバッファは、モルホリン、ピペラジン、エチレンジアミン、もしくはメチレンジアミンのアルキルまたはアルキルスルホネート誘導体である。
【0031】
いくつかの実施形態では、金属有機構造体の結晶成長の量(例えば、1つ以上の結晶学的方向またはそれらの線形結合に沿った)は、結晶性金属有機構造体が平均長さの幅に対するアスペクト比が5未満を有する結晶の形態であるように、制御される。複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーは、複数の金属カチオン中の2つの金属カチオンに接続される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】従来技術に従って、二価金属カチオンと、配位子Hdobdcとからなる、金属有機構造体M(dobdc)の構造を示している。
図2】従来技術に従って、二価金属カチオンと、配位子Hdobpdcとからなる、金属有機構造体M(dobpdc)の構造を示している。
図3】本開示の第1の反応スキームの実施形態に従って、非配位性酸3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸の存在下で、酢酸コバルト(II)を用いて合成されたCo(dobdc)の倍率950倍での例示的な画像を示している。
図4A】本開示の第1の反応スキームの実施形態に従って、非配位性酸3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸の存在下で、トリフルオロスルホン酸コバルト(II)を用いて合成されたCo(dobdc)の倍率3700倍での例示的な画像を示している。
図4B】本開示の第1の反応スキームの実施形態に従って、非配位性酸3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸の存在下で、トリフルオロスルホン酸コバルト(II)を用いて合成されたCo(dobdc)の倍率700倍での別の例示的な画像を示している。
図5A】本開示の第1の反応スキームの実施形態に従って、非配位性酸3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸の存在下で、硫酸コバルト(II)を用いて合成されたCo(dobdc)の倍率700倍での例示的な画像を示している。
図5B】本開示の第1の反応スキームの実施形態に従って、非配位性酸3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸の存在下で、硫酸コバルト(II)を用いて合成されたCo(dobdc)の倍率1600倍での別の例示的な画像を示している。
図6A】本開示の第1の反応スキームの実施形態に従って、非配位性酸3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸の存在下で、ヨウ化コバルト(II)を用いて合成されたCo(dobdc)の倍率2300倍での例示的な画像を示している。
図6B】本開示の第1の反応スキームの実施形態に従って、非配位性酸3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸の存在下で、臭化コバルト(II)を用いて合成されたCo(dobdc)の倍率4500倍での例示的な画像を示している。
図7A】本開示の第1の反応スキームの実施形態に従って、非配位性酸3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸の存在下で、塩化コバルト(II)を用いて合成されたCo(dobdc)の倍率900倍での例示的な画像を示している。
図7B】本開示の第1の反応スキームの実施形態に従って、非配位性酸3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸の存在下で、硝酸コバルト(II)を用いて合成されたCo(dobdc)の倍率700倍での例示的な画像を示している。
図7C】本開示の第1の反応スキームの実施形態に従って、非配位性酸3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸の存在下で、トリフルオロ酢酸コバルト(II)を用いて合成されたCo(dobdc)の倍率160倍での例示的な画像を示している。
図8】本開示の第1の反応スキームの実施形態に従って、酢酸コバルト(II)を使用して、非配位性バッファを用いずに合成されたCo(dobdc)の倍率1500倍での例示的な画像を示している。
図9A】本開示の第1の反応スキームの実施形態に従って、非配位性酸3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸の存在下で、酢酸コバルト(II)を用いて合成されたCo(dobdc)の例示的な画像を示している。
図9B】本開示の第1の反応スキームの実施形態に従って、非配位性酸3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸の存在下で、蟻酸コバルト(II)を用いて合成されたCo(dobdc)の例示的な画像を示している。
図9C】本開示の第1の反応スキームの実施形態に従って、非配位性酸3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸の存在下で、クロロ酢酸コバルト(II)を用いて合成されたCo(dobdc)の例示的な画像を示している。
図9D】本開示の第1の反応スキームの実施形態に従って、非配位性酸3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸の存在下で、トリクロロ酢酸コバルト(II)を用いて合成されたCo(dobdc)の例示的な画像を示している。
図10】本開示の実施形態に従って、非配位性バッファの存在下で、官能化酢酸アニオンを用いて合成されたCo(dobdc)結晶子のアスペクト比が、共役酸の文献pK値とどのように逆相関しているかを示している。
図11】本開示の第1の反応スキームの実施形態に従って、非配位性バッファの存在下で合成されたCo(dobdc)結晶子の粉末X線回折(pXRD)パターンを示している。
図12A】本開示の第1の反応スキームの実施形態に従って、オーブン中で、非配位性バッファを用いずに合成されたCo(dobdc)結晶子の倍率700倍での例を示している。
図12B】本開示の第1の反応スキームの実施形態に従って、油浴中で、非配位性バッファを用いずに合成されたCo(dobdc)結晶子の倍率700倍での例を示している。
図13A】本開示の第1の反応スキームの実施形態に従って、シラン化ガラス容器を用いて、油浴中で、非配位性バッファを用いずに合成されたCo(dobdc)結晶子の倍率1200倍での例を示している。
図13B】本開示の第2の反応スキームの実施形態に従って、オーブン中で、非配位性バッファを用いずに合成されたCo(dobdc)結晶子の倍率1000倍での例を示している。
図14】四面体の二価亜鉛イオンと二重脱プロトン化配位子とからなる一次元鎖であるZn(Hdobdc)・2HOの分子構造を示している。
図15】本開示の実施形態に従う、金属配位官能基を欠くバッファ(例えば、7.09の室温pK値を有する3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)を用いる、M(dobdc)などの結晶性金属有機構造体を合成するための第1の反応スキームの例を示している。
図16】本開示の一実施形態に従って、塩基性アニオンのpK値が配位子分子の最低pKを超えているとき、例えば、塩基性アニオンがアセテート(pK4.76)であり、配位子がdobdc4-である場合、金属配位官能基を欠くバッファを用いずに、M(dobdc)などの結晶性金属有機構造体を合成するための第2の反応スキームの例を示している。
図17】本開示の一実施形態に従って、生成物およびサイズがガラス容器の表面官能性に依存する反応を示しており、シラン化ガラス容器で行われた反応は、Zn(dobdc)を導き、非シラン化ガラス容器で行われた反応は、場合によっては、Zn(dobdc)とZn(Hdobdc)・2H0との組み合わせを導き、さらに、Zn(dobdc)結晶子サイズは、シラン化ガラス容器で合成された場合は5~20ミクロンであり、非シラン化ガラス容器で合成された場合は50~400ミクロンである。
図18A】本開示における第3の反応スキームの実施形態に従って、サイズがガラス容器の表面官能性に依存する非シラン化ガラス容器で合成された、倍率50倍でのZn(dobpdc)結晶子の例示的な画像を示している。
図18B】本開示における第3の反応スキームの実施形態に従って、シラン化剤クロロトリメチルシランを使用して、シラン化ガラス容器で合成された、サイズがガラス容器の表面官能性に依存する、倍率50倍でのZn(dobpdc)結晶子の例示的な画像を示している。
図19】本開示の第2の反応スキームの実施形態に従って、良性(例えば、プラスチックまたは鋼)の反応容器で合成された、倍率3500倍でのCo(dobdc)結晶子の例示的な画像を示している。
図20】本開示における第1の反応スキームの実施形態に従って、非配位性酸3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸の存在下で、トリフルオロ酢酸鉄(II)を用いて合成されたFe(dobdc)結晶子の倍率2300倍での例示的な画像を示している。
図21】本開示の一実施形態に従って、塩基性アニオンのpK値が配位子分子の最低pKを超えているとき、例えば、塩基性アニオンが、リンカーdobpdc4-に対してアセテート(pK4.76)である場合金属配位官能基を欠くバッファを用いずに、M(dobpdc)などの結晶性金属有機構造体を合成する第3の反応スキームの例を示している。
図22】本開示の第3の反応スキームの実施形態において、非シラン化ガラス容器において形成された新規のZn(Hdobpdc)・2HO結晶子の粉末X線回折(pXRD)パターンを示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
I.導入
本開示は、結晶性金属有機構造体(MOF)の合成を提供する。これらのMOFは、ポリトピック有機リンカーと金属カチオンを含み、各ポリトピック有機リンカーは、金属カチオンのうちの2つ以上に接続される。開示される方法では、リンカーを、式Mの化合物と反応させ、式中、Mは、カチオン性Be、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Cd、またはHfであり、Xは、塩基性アニオンであり、nは、正の整数(例えば、1、2など)であり、mは、正の整数(例えば、1、2など)である。いくつかの実施形態では、反応させることは、塩基性アニオンのpKaがリンカーの最低pKa値を下回るとき、金属配位官能基を欠くバッファ(例えば、モルホリン、ピペラジン、エチレンジアミン、もしくはメチレンジアミンのアルキルまたはアルキルスルホネート誘導体)の存在下にある。いくつかの実施形態では、塩基性アニオンのpKaがリンカーの最低pKa値を超えるとき、反応させることは、任意選択的に、このバッファの存在下にある。このようにして、少なくとも1つの結晶学的方向またはそれらの線形結合における結晶成長の量が制御される。
【0034】
いくつかの実施形態では、塩基性アニオンのpKaが、リンカーの最低pKa値と関連のある(例えば、相当する、等しい)閾値未満であるとき、反応させることは、金属配位官能基を欠くバッファ(例えば、モルホリン、ピペラジン、エチレンジアミン、もしくはメチレンジアミンのアルキルまたはアルキルスルホネート誘導体)の存在下にある。いくつかの実施形態では、塩基性アニオンのpKaがこの閾値を超えているとき、反応させることは、任意選択的に、このバッファの存在下にはない。
【0035】
本発明をより詳細に説明する前に、本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態に限定されるものではなく、かかる実施形態は変化し得ることを理解すべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解すべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されよう。他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じである。値の範囲が提供される場合、文脈が別途明確に指示しない限り下限値の単位の10分の1までの、その範囲の上限値から下限値の間の各介在値と、その指定範囲の任意の他の指定値または介在値とは、本発明に包含される、ことが理解される。これらのより小さい範囲の上限値および下限値は独立して、そのより小さい範囲に含まれ得、また、本発明に包含され、指定範囲内の任意の具体的に除外された制限値に従う。指定範囲が制限値の一方または両方を含む場合、それらの含まれた制限値のいずれかまたは両方を除外する範囲も本発明に含まれる。特定の範囲は、「約」という用語が先行する数値で本明細書に示される。「約」という用語は、その後に続く正確な数字およびその用語の後に続く数字に近いか、またはほぼその数字である数字を文字通り支持するために本明細書で使用される。ある数字が、具体的に引用されている数字に近いか、またはほぼその数字であるかを決定する際に、その近いかまたはほぼ引用されていない数字は、提示されている文脈において、具体的に引用されている数字と実質的に等価を提供する数字であり得る。本明細書で引用されたすべての刊行物、特許、および特許出願は、個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示されるのと同程度に参照により本明細書に組み込まれる。さらに、引用された各刊行物、特許、または特許出願は、刊行物が引用されたものに関連する主題を開示および説明するために参照により本明細書に組み込まれる。いかなる刊行物の引用も、出願日より前のその開示のためのものであり、本明細書に記載の発明が、先行発明のためにかかる刊行物に先行する権利が与えられていない、ことを認めるものと解釈するべきではない。さらに、提示される公開日は、実際の公開日とは異なる場合があり、別個に確認する必要があり得る。
【0036】
請求項はいかなる選択的な要素も除外するように作成することができることに留意されたい。そのため、この記載は、請求項要素の列挙、または「否定的な」制限の使用に関連して、「だけ」、「のみ」などの排他的な用語の使用に対して先の記載として役立つことを意図している。本開示を読めば当業者には明らかであろうが、本明細書に記載され、例示されている個々の実施形態は、それぞれ、別個の構成要素および特徴を有しており、この構成要素および特徴は、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離されてもよく、またはそのような特徴と組み合わせてもよい。あらゆる列挙された方法は、列挙されたイベントの順序、または論理的に可能な他の順序で実行してよい。本明細書に記載されたものと類似または同等の任意の方法および材料も本発明の実施または試験に使用してもよいが、代表的な例示的な方法および材料をここに記載する。
【0037】
本発明を説明する際には、以下の用語が、使用され、以下に示されるように、定義される。
【0038】
II.定義
置換基が、左から右に書かれたそれらの従来の化学式によって明記される場合、その構造は、任意選択的に、右から左へ構造を書くことによって生じることになる化学的に同一の置換基も包含し、例えば、-CHO-は、任意選択的に-OCH-とも列挙することが意図される。
【0039】
「アルキル」という用語は、それ自体または別の置換基の一部として、特に明記しない限り、完全飽和、一価不飽和、または多価不飽和であってもよく、指定された炭素原子数を有する(すなわち、C~C10は1~10個の炭素を意味する)、二価、三価、および多価ラジカルを含み得る、直鎖、分枝鎖もしくは環状炭化水素ラジカル、またはそれらの組み合わせを意味する。飽和炭化水素ラジカルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロプロピルメチルなどの基、例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどの同族体および異性体が挙げられるが、それらに限定されない。不飽和アルキル基は、1つ以上の二重結合または三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例には、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プロピニル、3-ブチニル、ならびに高級同族体および異性体が挙げられるが、それらに限定されない。「アルキル」という用語はまた、特に注記しない限り、任意選択的に、「ヘテロアルキル」などの、以下でより詳細に定義されるアルキルの誘導体を含むことも意味する。炭化水素基に限定されるアルキル基は、「ホモアルキル」と称される。例示的なアルキル基としては、モノ不飽和C9~10、オレオイル鎖または二不飽和C9~1012~13リノエイル鎖が挙げられる。
【0040】
「アルキレン」という用語は、それ自体または別の置換基の一部として、-CHCHCHCH-によって例示されるがこれに限定されないアルカンから誘導される二価ラジカルを意味し、さらに「ヘテロアルキレン」として以下に記載される基を含む。典型的には、アルキル(またはアルキレン)基は、1~24個の炭素原子を有し、本発明では10個以下の炭素原子を有する基が好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、一般に8個以下の炭素原子を有する、より短い鎖のアルキルまたはアルキレン基である。
【0041】
「アルコキシ」、「アルキルアミノ」、および「アルキルチオ」(またはチオアルコキシ)という用語は、それらの従来の意味で使用され、それぞれ、酸素原子、アミノ基、または硫黄原子を介して分子の残部に結合したアルキル基を指す。
【0042】
「アリールオキシ」および「ヘテロアリールオキシ」という用語は、それらの従来の意味で使用され、酸素原子を介して分子の残部に結合されたそれらのアリールまたはヘテロアリール基を指す。
【0043】
「ヘテロアルキル」という用語は、それ自体で、または別の用語と組み合わせて、特に明記しない限り、記載の数の炭素原子と、O、N、Si、およびSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とからなる安定な直鎖、分枝鎖、もしくは環状炭化水素ラジカル、またはそれらの組み合わせを意味し、窒素および硫黄原子は、任意選択的に酸化されてもよく、窒素ヘテロ原子は、任意選択的に四級化されてもよい。ヘテロ原子(複数可)O、N、S、およびSiは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置に、またはアルキル基が分子の残部に結合されている位置に、配置され得る。例としては、-CH-CH-O-CH、-CH-CH-NH-CH、-CH-CH-N(CH)-CH、-CH-S-CH-CH、-S(O)-CH、-CH-CH-S(O)-CH、-CH=CH-O-CH、-Si(CH、-CH-CH=N-OCH、および-CH=CH-N(CH)-CHが挙げられるが、それらに限定されない。例えば、-CH-NH-OCHおよび-CH-O-Si(CHなどの最大2個のヘテロ原子が連続していてもよい。同様に、「ヘテロアルキレン」という用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、ヘテロアルキルから誘導された二価のラジカルを意味し、-CH-CH-S-CH-CH-および-CH-S-CH-CH-NH-CH-が例示されるが、それらに限定されない。ヘテロアルキレン基について、ヘテロ原子は、鎖末端のいずれかまたは両方を占有することもできる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。またさらに、アルキレンおよびヘテロアルキレン連結基の場合、連結基の配向は、連結基の式が書かれている方向によって暗示されない。例えば、式-COR’-は、-C(O)OR’および-OC(O)R’の両方を表す。
【0044】
「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」という用語は、それ自体で、または他の用語と組み合わせて、特に明記しない限り、それぞれ、「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環式バージョンを表す。加えて、ヘテロシクロアルキルの場合、ヘテロ原子は、複素環が分子の残部に結合している位置を占めることができる。シクロアルキルの例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられるが、それらに限定されない。さらに例示的なシクロアルキル基としては、ステロイド、例えばコレステロールおよびその誘導体が挙げられる。ヘテロシクロアルキルの例としては、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニルなどが挙げられるが、それらに限定されない。
【0045】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、それら自体または別の置換基の一部として、特に明記しない限り、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味する。加えて、「ハロアルキル」などの用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことを意味する。例えば、「ハロ(C~C)アルキル」という用語は、トリフルオロメチル、2、2、2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどを非限定的に含むことを意味する。
【0046】
「アリール」という用語は、特に明記しない限り、一緒に縮合しているかまたは共有結合している単環または多環(好ましくは、1~3環)であり得る多価不飽和芳香族置換基を意味する。「ヘテロアリール」という用語は、N、O、S、Si、およびBから選択される1~4個のヘテロ原子を含有するアリール置換基(または環)を指し、窒素および硫黄原子は、任意選択的に酸化され、窒素原子(複数可)は、任意選択的に四級化される。例示的なヘテロアリール基は、6員アジン、例えば、ピリジニル、ジアジニル、およびトリアジニルである。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の残部に結合することができる。アリールおよびヘテロアリール基の非限定的な例には、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル、および6-キノリルが挙げられる。上述のアリールおよびヘテロアリール環系の各々の置換基は、下記の許容される置換基の群から選択される。
【0047】
簡潔にするために、「アリール」という用語は、他の用語(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)と組み合わせて使用するとき、上で定義したようにアリール環、ヘテロアリール環、およびヘテロアレーン環を含む。したがって、「アリールアルキル」という用語は、アリール基がアルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)に結合しているラジカルを含むことを意味し、これらのアルキル基には、炭素原子(例えば、メチレン基)が、例えば、酸素原子(例えば、フェノキシメチル、2-ピリジルオキシメチル、3-(1-ナフチルオキシ)プロピルなど)で置き換えられているアルキル基が含まれる。
【0048】
上記の用語(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」、および「ヘテロアリール」)の各々は、任意選択的に、示された種の置換形態および非置換形態の両方を含むことを意味する。これらの種の例示的な置換基を以下に示す。
【0049】
アルキルおよびヘテロアルキルラジカル(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルとしばしば称されるそれらの基を含む)のための置換基は、一般に「アルキル基置換基」と称され、それらは、0~(2m’1)(式中、m’は、かかるラジカル中の炭素原子の総数である)の範囲の数で、H、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、-OR’、=O、=NR’、=N-OR’、-NR’R”、-SR’、halogen、-SiR’R”R’’’、OC(O)R’、-C(O)R’、-COR’、-CONR’R”、-OC(O)NR’R”、-NR”C(O)R’、NR’C(O)NR”R’’’、-NR’’C(O)2R’、-NR-C(NR’R’‘R’’’)=NR’’’’、-NRC(NR’R”)=NR’’’、-S(O)R’,-S(O)2R’、-S(O)2NR’R”、NRSO2R’、-CN、および-NOから選択されるが、それらに限定されない様々な基のうちの1つ以上であることができる。R’、R”、R’’’、およびR’’’’は各々好ましくは独立して、水素、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換アリール、例えば、1~3個のハロゲンで置換されたアリール、置換もしくは非置換アルキル基、アルコキシ基、もしくはチオアルコキシ基、またはアリールアルキル基を指す。本発明の化合物が1つを超えるR基を含むとき、例えば、これらの基のうちの1つを超える基が存在するとき、R基の各々は独立して、各R’、R”、R’’’、およびR’’’’基であるように選択される。R’およびR”が同じ窒素原子に結合されるとき、それらは、窒素原子と組み合わさって、5、6、または7員環を形成することができる。例えば、-NR’R”は、1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルを非限定的に含むことを意味する。置換基の上記の考察から、当業者は、「アルキル」という用語は、ハロアルキル(例えば、-CFおよび-CHCF)およびアシル(例えば、-C(O)CH、-C(O)CF、-C(O)CHOCHなど)などの水素基以外の基に結合された炭素原子を含む基を含むことを意味していることが理解されよう。これらの用語は、例示的な「置換アルキル」および「置換ヘテロアルキル」部分の成分である例示的な「アルキル基置換基」と考えられる基を包含する。
【0050】
アルキルラジカルについて記載される置換基と同様に、アリールヘテロアリールおよびヘテロアレーン基の置換基は、一般に、「アリール基置換基」と称される。置換基は、例えば、炭素またはヘテロ原子(例えば、P、N、O、S、Si、またはB)を通してヘテロアリールまたはヘテロアレーン核に結合した基から選択され、限定されないが、ゼロから芳香環系上の非限定的な価数の総数の範囲の数の、置換または非置換アルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、OR’、=O、=NR’、=N-OR’、-NR’R”、-SR’、-ハロゲン、-SiR’R”R”’、OC(O)R’、-C(O)R’、CO2R’、-CONR’R”、-OC(O)NR’R”、-NR”C(O)R’、NR’C(O)NR”R’’’、-NR”C(O)2R’、NR-C(NR’R”R’’’)=NR’’’’、NR C(NR’R”)=NR’‘‘、-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R”、NRSO2R’、-CNおよび-NO、-R’、-N、-CH(Ph)、フルオロ(C-C)アルコキシ、ならびにフルオロ(C-C)アルキルが挙げられる。上記の基の各々は、ヘテロアレーンまたはヘテロアリール核に直接またはヘテロ原子(例えば、P、N、O、S、Si、またはB)を介して結合され、R’、R”、R’’’、およびR’’’’は好ましくは独立して、水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、および置換または非置換ヘテロアリールから選択される。本発明の化合物が1つを超えるR基を含むとき、例えば、これらの基のうちの1つを超える基が存在するとき、R基の各々は独立して、各R’、R”、R’’’、およびR’’’’基であるように選択される。
【0051】
アリール環、ヘテロアレーン環、またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは、任意選択的に、式-T-C(O)-(CRR’)-U-の置換基で置き換えてもよく、式中、TおよびUは独立して、-NR-、-O-、-CRR’-、または単結合であり、qは、0~3の整数である。あるいは、アリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは、任意選択的に、式-A-(CH-B-の置換基で置き換えてもよく、式中、AおよびBは独立して、-CRR’-、-O-、-NR-、-S-、-S(O)-、-S(O)-、-S(O)NR’-、または単結合であり、rは、1~4の整数である。そのようにして形成された新しい環の単結合のうちの1つは、任意選択的に、二重結合で置き換えられてもよい。あるいは、アリール環、ヘテロアレーン環、またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは、任意選択的に、式<-(CRR’)-X-(CR”R’”)-の置換基で置き換えてもよく、式中、sおよびdは独立して、0~3の整数であり、Xは、-O-、-NR’-、-S-、-S(O)-、-S(O)-、または-S(O)NR’-である。置換基R、R´、R´´、およびR´´´は、好ましくは独立して、水素または置換もしくは非置換(C~C)アルキルから選択される。これらの用語は、例示的な「アリール基置換基」と考えられる基を包含し、それは、例示的な「置換アリール」「置換ヘテロアレーン」および「置換ヘテロアリール」部分の成分である。
【0052】
本明細書で使用されるとき、「アシル」という用語は、カルボニル残基、C(O)Rを含有する置換基を表している。Rの例示的な種としては、H、ハロゲン、置換または非置換アルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換ヘテロシクロアルキルが挙げられる。
【0053】
本明細書で使用されるとき、「縮合環系」という用語は、少なくとも2つの環を意味し、各環は、別の環と共通の少なくとも2個の原子を有する。「縮合環系」は、芳香環ならびに非芳香環を含み得る。「縮合環系」の例は、ナフタレン、インドール、キノリン、クロメンなどである。
【0054】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロ原子」という用語には、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)およびケイ素(Si)、ホウ素(B)およびリン(P)が含まれる。
【0055】
記号「R」は、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換ヘテロシクロアルキル基から選択される置換基を表す一般的な略語である。
【0056】
本明細書に開示される化合物はまた、かかる化合物を構成する原子のうちの1つ以上において、不自然な割合の原子同位体を含有することもできる。例えば、化合物は、例えば、トリチウム(H)、ヨウ素-125(125I)、または炭素-14(14C)などの放射性同位体で放射性標識することができる。本発明の化合物のすべての同位体変種は、放射性であろうとなかろうと、本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0057】
「塩(複数可)」という用語には、本明細書に記載の化合物に見出される特定の配位子または置換基に応じて、酸または塩基の中和によって調製された化合物の塩が含まれる。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含有するとき、塩基付加塩は、かかる化合物の中性形態を、純粋なまたは好適な不活性溶媒中の十分な量の所望の塩基と接触させることによって、得ることができる。塩基付加塩の例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、またはマグネシウム塩、または同様の塩が挙げられる。酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸一水素酸、リン酸、リン酸一水素酸、リン酸二水素酸、硫酸、硫酸一水素酸、ヨウ化水素酸、または亜リン酸などの無機酸から誘導される酸付加塩、ならびに、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの比較的無毒性の有機酸から誘導される塩、が挙げられる。本発明のある特定の化合物は、化合物を塩基付加塩または酸付加塩のいずれかに変換させることを可能にする塩基官能基および酸官能基の両方を含有する。塩の水和物も含まれる。
【0058】
「-COOH」は、この用語が使用される場合、-C(O)Oおよび-C(O)Oを任意選択的に含むことを意味しており、式中、Xはカチオン性対イオンである。同様に、式-N(R)(R)を有する置換基は、-NH(R)(R)および-NH(R)(R)Yを任意選択的に含むことを意味しており、式中、Yはアニオン性対イオンを表している。発明の例示的なポリマーは、プロトン化カルボキシル部分(COOH)を含む。発明の例示的なポリマーは、脱プロトン化カルボキシル部分(COO)を含む。発明の様々なポリマーは、プロトン化カルボキシル部分および脱プロトン化カルボキシル部分の両方を含む。
【0059】
1つ以上のキラル中心を有する本明細書に記載の任意の化合物において、絶対立体化学が明示的に示されない場合、各中心は独立して、R配置またはS配置またはそれらの混合物であり得ることが理解される。したがって、本明細書で提供される化合物は、鏡像異性的に純粋であっても、立体異性体混合物であってもよい。さらに、EまたはZとして定義することができる幾何異性体を生成する1つ以上の二重結合を有する本明細書に記載の任意の化合物において、各二重結合は独立して、EまたはZであってもよく、それらの混合物であってもよい、ことが理解される。同様に、記載した任意の化合物において、全ての互変異性形態も含まれることが意図されていることが理解される。
【0060】
以下は、本開示の特定の実施形態の実施例である。実施例は、例示目的のみのために提供されており、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0061】
III.組成物
本開示の一態様は、結晶性材料を提供する。結晶性材料は、複数の金属イオンと複数のポリトピック有機リンカーとを含む金属有機構造体を含む。複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーは、複数の金属イオンの少なくとも2つの金属イオンに接続される。いくつかの実施形態では、吸着材料は、複数の配位子をさらに含む。いくつかのそのような実施形態では、複数の配位子の各それぞれの配位子は、金属有機構造体の複数の金属イオンの金属イオンに付加される。
【0062】
いくつかの実施形態では、ポリトピック有機リンカーは、2,5-ジオキシド-1,4-ベンゼンジカルボキシレート(dobdc4-)、4,6-ジオキシド-1,3-ベンゼンカルボキシレート(m-dobdc4-)、4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3’-ジカルボキシレート(dobpdc4-)、4,4’’-ジオキシド-[1,1’:4’,1’’-テルフェニル]-3,3’’-ジカルボキシレート(dotpdc4-)、またはジオキシドビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート(パラ-カルボキシレート-dobpdc4-はpc-dobpdc4-とも称される)である。
【0063】
いくつかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーは、以下の式を有し、
【化5】

式中、RおよびRは、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、またはハロゲン置換メチルか選択される。いくつかの実施形態では、RおよびRは、各々、水素である。
【0064】
いくつかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーは、以下の式を有し、
【化6】

式中、RおよびRは、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、またはハロゲン置換メチルから選択される。いくつかの実施形態では、RおよびRは、各々、水素である。
【0065】
いくつかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーは、以下の式を有し、
【化7】

式中、R、R、R、R、R、およびRは、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、またはハロゲン置換メチルから選択される。いくつかの実施形態では、R、R、R、R、R、およびRは、各々、水素である。
【0066】
いくつかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーは、以下の式を有し、
【化8】
式中、R、R、R、R、R、およびRは、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、またはハロゲン置換メチルから選択される。いくつかの実施形態では、R、R、R、R、R、およびRは、各々、水素である。
【0067】
いくつかの実施形態では、ポリトピック有機リンカーは、2,5-ジオキシド-1,4-ベンゼンジカルボキシレート(dobdc4-)、4,6-ジオキシド-1,3-ベンゼンジカルボキシレート(m-dobdc4-)、4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3’-ジカルボキシレート(dobpdc4-)、4,4’’-ジオキシド-[1,1’,4’,1’’-テルフェニル]-3,3’’-ジカルボキシレート(dotpdc4-)、ジオキシドビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート(パラ-カルボキシレート-dobpdc4-、pc-dobpdc4-とも称される)、2,5-ジオキシドベンゼン-1,4-ジカルボキシレート(dobdc4-)、1,3,5-ベンゼントリステトラゾレート(BTT)、1,3,5-ベンゼントリストリアゾレート(BTTri)、1,3,5-ベンゼントリスピラゾレート(BTP)、または1,3,5-ベンゼントリスカルボキシレート(BTC)である。
【0068】
いくつかの実施形態では、式Mの化合物は、マグネシウム(II)金属塩、マンガン(II)金属塩、鉄(II)金属塩、コバルト(II)金属塩、ニッケル(II)金属塩、亜鉛(II)金属塩、またはカドミウム(II)金属塩である。いくつかの実施形態では、金属塩は、硝酸コバルト(II)、塩化コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、ヨウ化コバルト(II)、臭化コバルト(II)、トリフルオロスルホン酸コバルト(II)、テトラフルオロホウ酸コバルト(II)、アセチルアセトン酸コバルト(II)、蟻酸コバルト(II)、過塩素酸コバルト(II)、またはそれらのハロゲン化誘導体である。いくつかの実施形態では、塩基性アニオンは、ホルメートまたはアセテートである。いくつかの実施形態では、塩基性アニオンは、スルフェート、臭化物、ヨウ化物、またはトリフルオロスルホネートであり、反応させることは、金属配位官能基を欠くバッファの存在下にある。
【0069】
IV.例示的な合成スキーム
本開示では、複数の金属カチオンと、複数のポリトピック有機リンカーとを含む結晶性金属有機構造体が合成され、複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーが、複数の金属カチオンの2つ以上の金属カチオンに接続され、結晶性金属有機構造体は、1つ以上の細孔チャネルによって特徴付けられる。いくつかのそのような実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーを、式Mの化合物と反応させ、式中、Mは、カチオン性Be、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Cd、またはHfであり、Xは、塩基性アニオンであり、nは、正の整数(例えば、1、2など)であり、mは、正の整数(例えば、1、2など)である。いくつかの実施形態では、nは1または2であり、mは1または2である。反応させることは、塩基性アニオンのpKaがリンカーの最低pKa値に相当する閾値未満であるとき(例えば、少なくとも1つのpKa値がこの閾値を下回る場合、例えば、3.5)、反応させることは、金属配位官能基を欠くバッファの存在下にある。塩基性アニオンのpKaが、その閾値を超えているとき、反応させることは、任意選択的に、このバッファの存在下にはない。このようにして、(例えば、1つ以上の結晶学的方向またはそれらの線形結合において)金属有機構造体の結晶成長の量を制御する。例えば、いくつかの実施形態では、c方向における金属有機構造体の結晶成長は、それらが5未満、2未満、または1.3未満の平均長さの幅に対するアスペクト比を有する結晶の形態である。
【0070】
開示の非配位性バッファは、Good et al.,1966、Biochem.5(2)、467の研究にそれらの起源があり、Kandegedara and Rorabacher、1999、Anal.Chem.71、3140によってさらに開発された。それらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。ただし、そのようなバッファは、金属有機構造体の合成中にpHを制御するためにこれまで使用されてこなかった。いくつかの実施形態では、金属配位官能基を欠くバッファは、PIPES、PIPPS、PIPBS、DEPP、DESPEN、MES、TEEN、PIPES、MOBS、DESPEN、またはTEMNである。Kandegedara and Rorabacher,、999、Anal.Chem.71、3140を参照されたい。いくつかの実施形態では、金属配位官能基を欠くバッファは、モルホリン、ピペラジン、エチレンジアミン、もしくはメチレンジアミンのアルキルまたはアルキルスルホネート誘導体である。
【0071】
表面またはエピタキシャル成長した金属有機構造体に関する報告がある。参照により本明細書に組み込まれるHeinke et al.,2016、SURMOFs:Liquid-Phase Epitaxy of Metal-Organic Frameworks on Surfaces,、in The Chemistry of Metal-Organic Frameworks:Synthesis、Characterization、and Applications(ed S.Kaskel)、Wiley-VCH Verlag GmbH&Co.KGaA、Weinheim、Germany.doi:10.1002/9783527693078、ch17を参照されたい。一般に、表面またはエピタキシャル成長した金属有機構造体のための合成手順は、表面を官能化し、一般に逐次積層によって表面上に直接に核生成を引き起こすことを目的としている。この戦略は、通常は、ソルボサーマル合成または水熱合成とは対照的であり、生成物は溶液中において高温で形成される。エピタキシャル成長させた金属有機構造体では表面は明らかな関心事であるが、ソルボサーマル反応および水熱反応においては表面の役割にはほとんど注意が払われていない。シラン化のプロセスは、ガラス容器の表面に官能性または疎水性を付与するための十分に確立された技術である。Seed、2001、「Silanizing Glassware」、Current Protocols in Cell Biology 8:3E:A.3E.1-A.3E.2およびPlueddemann,、1991、「Chemistry of Silane Coupling Agents」、In:Silane Coupling Agents、Springer、Boston、MAを参照されたい。各文献は、参照により組み込まれる。ただし、金属有機構造体のソルボサーマル合成または熱水合成中に異なる疎水性表面を使用することの効果は、相選択または形態制御のために研究されてこなかった。
【0072】
劇的に異なる合成方法は、異なる金属有機構造体の形態を導くことが見出されている。例えば、マイクロ波加熱は、ソルボサーマル成長とは異なる結晶子サイズをもたらすことが見出されている。参照により本明細書に組み込まれるStock and Biswas、2012、Chem.Rev.112、933を参照されたい。ただし、水熱合成では、油浴加熱対オーブン加熱の効果は、構造体UiO-66およびIn-MIL-68に関する限られた条件でのみ研究されており、構造体M(dobdc)またはM(dobpdc)の合成に関しては全く研究されていない。参照により本明細書に組み込まれるLee et al.,2017、Cryst.Eng.Comm、19、426を参照されたい。
【0073】
本開示の一態様は、制御された加熱および/または反応容器の官能化と共に、非配位性バッファまたは非配位性塩基の存在下での金属有機構造体の合成を提供する。非配位性のバッファ、酸、または塩基を用いる戦略により、特定の結晶形態をもたらすために望まれる配位平衡に干渉することなく、広範囲のpH値で配位子の制御された脱プロトン化が可能になる。これらのツールを使用すると、成長中の溶媒/配位子/対イオンの配位とは独立してpHを設定することができる。さらに、溶媒分解に依存することなくpHを制御することによって、溶液中でどのような配位剤を利用可能にするかに関する正確な制御が提供される。添加剤または金属対イオンを賢明に選択することにより、成長中にいくつかの結晶ファセットへの優先的な配位が可能になり、その方向における成長を遅延させる。配位は、粒子のサイズおよび安定性に影響を及ぼすことが知られているが、結晶構造の一端への選択的付着は明らかになっていない。より強力な配位剤を使用すると、細孔チャネルの方向に沿う成長が選択的に遅くなる(図1)。
【0074】
最初の反応スキーム。一例として、Co(dobdc)合成中のコバルト(II)金属塩の変化による配位環境は、第1の反応スキームに従って制御されており、その例を図15に示す。
【0075】
第1の反応スキームでは、複数の金属カチオンと、複数のポリトピック有機リンカーとを含む結晶性金属有機構造体が形成され、複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーは、複数の金属カチオンの2つ以上の金属カチオンに接続される。結晶性金属有機構造体は、c方向の細孔チャネルによって特徴付けられる。
【0076】
第1の反応スキームにおいて、複数のポリトピック有機リンカー(例えば、5mMの濃度)は、式M(例えば、17.5mMの濃度)の化合物と反応され、式中、Mは、カチオンBe、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Cd、またはHfであり、Xは、塩基性陰イオンであり、nは、正(例えば、1、2、3など)であり、およびmは、正の整数(例えば、1、2、3など)であり、反応させることは、金属配位官能基を欠くバッファ(例えば、0.2M)の存在下である。いくつかのそのような実施形態では、nは1、2、3、または4であり、mは1、2、3、または4である。
【0077】
第1の反応スキームに従ういくつかの実施形態では、Mは、カチオン性のFe、CoまたはZnである。第1の反応スキームに従ういくつかの実施形態では、nは2、3、または4である。第1の反応スキームに従ういくつかの実施形態では、nは2である。第1の反応スキームに従ういくつかの実施形態では、nは5または6である。
【0078】
第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、塩基性アニオンのpKa値は3.5未満である。第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、塩基性アニオンのpKa値は3.5を超える。
【0079】
第1の反応スキームに従って、c方向における金属有機構造体の結晶成長の量を制御する。一例として、結晶性MOF材料Co(dobdc)は、第1の反応スキームに従って、硝酸コバルト(II)、塩化コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、ヨウ化コバルト(II)、臭化コバルト(II)、トリフルオロスルホン酸コバルト(II)、テトラフルオロホウ酸コバルト(II)、アセチルアセトン酸コバルト(II)、蟻酸コバルト(II)、過塩素酸コバルト(II)、およびそれらのハロゲン化誘導体を含む、様々なコバルト(II)の塩から形成され得る。アセテート、スルフェート、ヨウ化物、臭化物、トリフルオロスルホネート、スルフェート、およびホルメート、を含む対イオンが十分に配位しているとき、第1の反応スキームの得られる結晶子は低分散度である(図3~6)。塩化コバルト(II)、硝酸コバルト(II)、テトラフルオロホウ酸コバルト(II)、およびトリフルオロ酢酸コバルト(II)を含有する合成を含む、非配位性または弱配位性アニオンが使用されるとき、金属有機構造体は、依然として形成されるが、形態学的制御は失われ、制御された成長は、配位効果に基づく可能性があることを示している(図7)。
【0080】
第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーは、1mM~1Mの間の濃度、3mM~0.5Mの濃度、または4mM~250mMの濃度である。
【0081】
第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーは、以下の式を有し、
【化9】

式中、RおよびRは、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、またはハロゲン置換メチルから選択される。第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、RおよびRは、各々、水素である。
【0082】
いくつかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーは、以下の式を有し、
【化10】

式中、RおよびRは、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、またはハロゲン置換メチルから選択される。いくつかの実施形態では、RおよびRは、各々、水素である。
【0083】
第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーは、以下の式を有し、
【化11】

式中、R、R、R、R、R、およびRは、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、またはハロゲン置換メチルから選択される。第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、R、R、R、R、R、およびRは、各々、水素である。
【0084】
第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーは、以下の式を有し、
【化12】

式中、R、R、R、R、R、およびRは、各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、またはハロゲン置換メチルから選択される。第1の反応スキームのいくつかのそのような実施形態では、R、R、R、R、R、およびRは、各々、水素である。
【0085】
第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーは、2,5-ジオキシド-1,4-ベンゼンジカルボキシレート(dobdc4-)、4,6-ジオキシド-1,3-ベンゼンジカルボキシレート(m-dobdc4-)、4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3’-ジカルボキシレート(dobpdc4-)、4,4’’-ジオキシド-[1,1’,4’,1’’-テルフェニル]-3,3’’-ジカルボキシレート(dotpdc4-)、ジオキシドビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート(パラ-カルボキシレート-dobpdc4-、pc-dobpdc4-とも称される)、2,5-ジオキシドベンゼン-1,4-ジカルボキシレート(dobdc4-)、1,3,5-ベンゼントリステトラゾレート(BTT)、1,3,5-ベンゼントリストリアゾレート(BTTri)、1,3,5-ベンゼントリスピラゾレート(BTP)、または1,3,5-ベンゼントリスカルボキシレート(BTC)である。
【0086】
第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、複数のポリトピック有機リンカーの各ポリトピック有機リンカーは、2,5-ジオキシド-1,4-ベンゼンジカルボキシレート(dobdc4-)である。
【0087】
第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、反応させることは、30℃未満の温度で2~3日間、40℃未満の温度で1日または2日未満、45℃未満の温度で10~25時間、50℃未満の温度で少なくとも11時間、60℃未満の温度で少なくとも8時間、70℃未満の温度で少なくとも2時間、80℃未満の温度で少なくとも30分間、90℃未満の温度で少なくとも10分間、起こる。
【0088】
第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、反応させることは、30℃~50℃の温度で2~3日間、35℃~55℃の温度で1日~3日間、40℃~60℃の温度で10~25時間、45℃~70℃の温度で少なくとも11時間、45℃~70℃の温度で少なくとも8時間、60℃~80℃の温度で少なくとも2時間、70℃~90℃の温度で少なくとも30分間、または80℃~100℃の温度で少なくとも10分間、起こる。
【0089】
第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、反応させることは、60℃を超える温度で少なくとも8時間、60℃を超える温度で少なくとも9時間、60℃を超える温度で少なくとも10時間、60℃を超える温度で少なくとも11時間、60℃を超える温度で少なくとも12時間、60℃を超える温度で少なくとも13時間、60℃を超える温度で少なくとも14時間、または60℃を超える温度で少なくとも15時間、起こる。
【0090】
第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、反応させることは、62℃を超える温度で少なくとも8時間、62℃を超える温度で少なくとも9時間、62℃を超える温度で少なくとも10時間、62℃を超える温度で少なくとも11時間、62℃を超える温度で少なくとも12時間、62℃を超える温度で少なくとも13時間、62℃を超える温度で少なくとも14時間、または62℃を超える温度で少なくとも15時間、起こる。
【0091】
第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、反応させることは、64℃を超える温度で少なくとも8時間、64℃を超える温度で少なくとも9時間、64℃を超える温度で少なくとも10時間、64℃を超える温度で少なくとも11時間、64℃を超える温度で少なくとも12時間、64℃を超える温度で少なくとも13時間、64℃を超える温度で少なくとも14時間、または64℃を超える温度で少なくとも15時間、起こる。
【0092】
第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、反応させることは、66℃を超える温度で少なくとも8時間、66℃を超える温度で少なくとも9時間、66℃を超える温度で少なくとも10時間、66℃を超える温度で少なくとも11時間、66℃を超える温度で少なくとも12時間、66℃を超える温度で少なくとも13時間、66℃を超える温度で少なくとも14時間、または66℃を超える温度で少なくとも20時間、起こる。
【0093】
第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、反応させることは、68℃を超える温度で少なくとも8時間、68℃を超える温度で少なくとも9時間、68℃を超える温度で少なくとも10時間、68℃を超える温度で少なくとも11時間、68℃を超える温度で少なくとも12時間、68℃を超える温度で少なくとも13時間、68℃を超える温度で少なくとも14時間、または68℃を超える温度で少なくとも20時間、起こる。
【0094】
第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、反応させることは、70℃を超える温度で少なくとも8時間、70℃を超える温度で少なくとも9時間、70℃を超える温度で少なくとも10時間、70℃を超える温度で少なくとも11時間、70℃を超える温度で少なくとも12時間、70℃を超える温度で少なくとも13時間、70℃を超える温度で少なくとも14時間、または70℃を超える温度で少なくとも20時間、起こる。
【0095】
第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、反応させることは、72℃を超える温度で少なくとも8時間、72℃を超える温度で少なくとも9時間、72℃を超える温度で少なくとも10時間、72℃を超える温度で少なくとも11時間、72℃を超える温度で少なくとも12時間、72℃を超える温度で少なくとも13時間、72℃を超える温度で少なくとも14時間、または72℃を超える温度で少なくとも20時間、起こる。
【0096】
第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、反応させることは、74℃を超える温度で少なくとも8時間、74℃を超える温度で少なくとも9時間、74℃を超える温度で少なくとも10時間、74℃を超える温度で少なくとも11時間、74℃を超える温度で少なくとも12時間、74℃を超える温度で少なくとも13時間、74℃を超える温度で少なくとも14時間、または74℃を超える温度で少なくとも20時間、起こる。
【0097】
第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、式Mの化合物は、5mM~1M、10mM~0.5M、または15mM~250mMの濃度である。
【0098】
第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、金属配位官能基を欠くバッファは、PIPES、PIPPS、PIPBS、DEPP、DESPEN、MES、TEEN、PIPES、MOBS、DESPEN、またはTEMNである。第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、金属配位官能基を欠くバッファは、モルホリン、ピペラジン、エチレンジアミン、もしくはメチレンジアミンのアルキルまたはアルキルスルホネート誘導体である。参照により本明細書に組み込まれるKandegedara and Rorabacher、1999、Anal.Chem.71、3140を参照されたい。
【0099】
第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、金属配位官能基を欠くバッファを観照させて、反応において、0.05M~0.5M、0.10M~0.4M、0.15M~0.30M、または0.18M~0.22Mの濃度に緩衝される。いくつかの実施形態では、金属配位官能基を欠くバッファは、5.0未満、5.0~6.0、6.0~7.0、7.0~8.0の間、または8.0を超えるpHに緩衝される。
【0100】
第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、金属配位官能基を欠くバッファは、結晶性金属有機構造体の金属カチオンと測定可能に反応したり、または金属カチオンにライゲートしたりしない。
【0101】
第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、反応させることは、極性プロトン性溶媒中または極性プロトン性溶媒の混合物中で起こる。第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、反応させることは、エタノール:水溶媒混合物中で起こる。第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、反応させることは、エタノールと水とのx:y混合物中で起こり、xおよびyは独立した別個の正の整数である。第1の反応スキームのいくつかの実施形態では、反応させることは、t-ブタノール、n-プロパノール、エタノール、メタノール、酢酸、水、またはそれらの混合物中で起こる。
【0102】
第2の反応スキームルイス塩基性が十分に高い塩基性アニオン(ホルメートおよびアセテートを含む)を含有する合成は、金属配位官能基を欠くバッファの有無にかかわらず使用することができる。例えば、図16、および高い単分散性の得られる結晶子(図8)を参照されたい。第2の反応スキームは、使用できる溶媒、使用できる反応時間範囲、および使用できる反応温度範囲に関して、第1の反応スキームと同一である。第2の反応スキームと第1の反応スキームとの違いは、第2の反応スキームは、金属配位官能基を欠くバッファを含まない。
【0103】
塩基性の低い基本的なアニオン(例えば、4未満のpK)は、反応を進行させ、第1の反応スキームの使用を必要とするために、バッファのpH制御が必要である。ただし、これらの塩基性の低いアニオン(スルフェート、臭化物、ヨウ化物、トリフルオロスルホネートなど)でも、制御された結晶子を依然としてもたらす。したがって、非配位性pH制御を使用すると、これらの塩基性の低いアニオンにまで配位性制御を拡張することができる。
【0104】
さらに、制御された成長は、塩基性アニオンの官能基と結晶子の表面との間の相互作用から生じるため、官能基の電子工学を調整して、より高いまたはより低い配位強度をもたらすことができる。フルオロ基、クロロ基、またはブロモ基を含む電子吸引基、もしくはメチル基を含む電子供与基を使用して、配位官能基上でより低いまたはより高い電子密度を有するようにアニオンを調整することができる。そのとき、得られる結晶子の長さは、アニオンの強度と逆相関である。一連のハロゲン化アセテートを、次の文献の手順に従って合成し(Marchetti et al.,2007、Inorg.Chem.2007、46,3378、Paul et al.,1970、J.Inorg.Nucl.Chem、32,3694、および Lever and Ogden、1967、Chem.Soc.(A)2041を参照されたい。それらの各々は参照により本明細書に組み込まれる)、それらを置換して緩衝合成とした。官能基の電子密度を調整することによって、式Mの化合物に使用される塩基性アニオンの配位強度は、正確に制御され、Co(dobdc)結晶子の長さを調整するために使用される(図9)。カルボキシレートの電子密度が高くなると、アニオンが金属ヘリックスの末端で配位子と競合し、得られる結晶子は短くなる。実際、これらのpK値(表1、Lide、2003、CRC Handbook of Chemistry and Physics、84th Edition、CRC Pressの値を使用)は、得られたアスペクト比と強い逆相関を有する(図10)。
【0105】
表1.MOF合成に使用されるアニオンの共役酸のpK値の例示リスト
【表1】
【0106】
粉末X線回折(pXRD)パターンは、上で考察した特定のMOF合成が、相純粋Co(dobdc)サンプルをもたらすことを示している(図11)。この経路を使用すると、Co(dobdc)結晶子は、1ミクロン~20ミクロンの長さの範囲および1.2:1~10:1の長さ対幅のアスペクト比の範囲で形成され得る。
【0107】
本開示のいくつかの実施形態は、アニオントリフルオロアセテートを使用して第1の反応スキームに従って形成されたFe(dobdc)などの経路の他の金属を一般化し、円錐結晶サイズおよび顕著な結晶ファセットを表示している(図20)。
【0108】
加熱装置。水熱合成中、同一の合成反応に熱を供給する方法は、金属有機構造体サンプルのサイズ、形態、および分散度に影響を及ぼす。Co(dobdc)結晶の分散度およびサイズは、油浴、オーブン、または金属ビーズ浴などの加熱装置を変更することによって制御することができる(図12)。他の点では同一の合成条件の場合、油浴は、非シラン化ガラス容器で行われる合成のために結晶子分散度を改善することが見出されている。金属ビーズ浴の例は、容量14LのLab Armor 74300-714 Waterless Bead Bathを含むLab Armor(Cornelius、Oregon)の金属ビーズ浴製品ラインである。使用される熱源が、結晶子の分散度に影響を及ぼすという発見を考慮して、本開示のいくつかの実施形態は、第1の反応スキームまたは第2の反応スキームが、以下に開示される特定の形態または熱源を使用して行われることをさらに明示する。
【0109】
油浴の使用。本開示の一実施形態では、結晶性金属有機構造体は、第1の極性プロトン性溶媒にポリトピック有機リンカーを可溶化することにより、第1の反応スキームに従って形成される。別々に、式Mの化合物を、金属配位官能基を欠くバッファの存在下で緩衝された第2の極性プロトン性溶媒中に溶解する。いくつかの実施形態では、第1の極性プロトン性溶媒および第2の極性プロトン性溶媒は同じである。いくつかの実施形態では、第1の極性プロトン性溶媒と第2の極性プロトン性溶媒は異なる。いくつかの代替の実施形態では、ポリトピック有機リンカー溶液は、M溶液ではなく、金属配位官能基を欠くバッファで緩衝される。さらなる代替の実施形態では、ポリトピック有機リンカー溶液およびM溶液の両方が、金属配位官能基を欠くバッファで緩衝される。反応は、例えば、15℃のDimrothコンデンサーを備えている250mLの3つ口丸底フラスコにおいて2つの溶液を混合して開始する。いくつかの実施形態では、その混合溶液を、撹拌しながら(例えば、300rpm)、しばらくの時間(例えば、10時間を超える)、高温(例えば、60℃を超える)の油浴に置かれる丸底フラスコ内で還流させる。反応時間の終わりに、(例えば、油浴から取り出すことによって、または油浴を冷却することによって)その溶液を室温まで冷却する。
【0110】
本開示の別の実施形態において、結晶性金属有機構造体は、ポリトピック有機リンカーを第1の極性プロトン性溶媒に可溶化することにより、第2の反応スキームに従って形成される。別々に、式Mの化合物を、第2の極性プロトン性溶媒に溶解する。いくつかの実施形態では、第1の極性プロトン性溶媒および第2の極性プロトン性溶媒は同じである。いくつかの実施形態では、第1の極性プロトン性溶媒と第2の極性プロトン性溶媒は異なる。反応は、例えば、15℃のDimrothコンデンサーを備えている250mLの3つ口丸底フラスコにおいて2つの溶液を即時混合して開始する。いくつかの実施形態では、その混合溶液を、撹拌しながら(例えば、300rpm)、しばらくの時間(例えば、10時間を超える)、高温(例えば、60℃を超える)の油浴に置かれる丸底フラスコ内で還流させる。反応時間の終わりに、(例えば、油浴から取り出すことによって、または油浴を冷却することによって)その溶液を室温まで冷却する。
【0111】
オーブンの使用。本開示の一実施形態では、結晶性金属有機構造体は、第1の極性プロトン性溶媒にポリトピック有機リンカーを可溶化することにより、第1の反応スキームに従って形成される。別々に、式Mの化合物を、金属配位官能基を欠くバッファの存在下で緩衝された第2の極性プロトン性溶媒中に溶解する。いくつかの実施形態では、第1の極性プロトン性溶媒および第2の極性プロトン性溶媒は同じである。いくつかの実施形態では、第1の極性プロトン性溶媒と第2の極性プロトン性溶媒は異なる。いくつかの代替の実施形態では、ポリトピック有機リンカー溶液は、M溶液ではなく、金属配位官能基を欠くバッファで緩衝される。さらなる代替の実施形態では、ポリトピック有機リンカー溶液およびM溶液の両方が、金属配位官能基を欠くバッファで緩衝される。2つの溶液は、例えば、室温のオーブンで、撹拌しない気密密閉されたオートクレーブ(例えば、200mLサイズのテフロンカップオートクレーブ)において一緒に混合する。反応は、この密閉されたオートクレーブにおいて、予熱された状態(例えば、60℃を超える温度)で、しばらくの間(例えば、10時間を超える)静置することによって、進行させる。反応時間の終わりに、(例えば、オーブンから取り出すことによって、またはオーブンを周囲から冷却することによって)オートクレーブを室温まで冷却する。
【0112】
本開示の別の実施形態では、結晶性金属有機構造体は、ポリトピック有機リンカーを第1の極性プロトン性溶媒に可溶化することによって、第1の反応スキームに従って形成される。別々に、式Mの化合物を第2の極性プロトン性溶媒に溶解する。いくつかの実施形態では、第1の極性プロトン性溶媒および第2の極性プロトン性溶媒は同じである。いくつかの実施形態では、第1の極性プロトン性溶媒と第2の極性プロトン性溶媒は異なる。2つの溶液は、例えば、室温で、撹拌しない気密密閉されたオートクレーブ(例えば、200mLサイズのテフロンカップオートクレーブ)において一緒に混合する。反応は、この密閉されたオートクレーブにおいて、予熱された(例えば、60℃を超える温度の)オーブンで、しばらくの間(例えば、10時間を超える)静置することによって、進行させる。反応時間の終わりに、オートクレーブはオーブンと共に室温に冷却する。
【0113】
シラン化。反応容器の異なる表面官能性もまた、得られる結晶のサイズおよび分散度を制御することができる。ホウケイ酸ガラス容器で文献のシラン化手順を使用すると、表面に疎水性が付与される。Seed、2001、「Silanizing Glassware」、Current Protocols in Cell Biology.8:3E:A.3E.1-A.3E.2、およびPlueddemann、1992、「Chemistry of Silane Coupling Agents」、In:Silane Coupling Agents、Springer、Boston、MAを参照されたい。各文献は、参照により組み込まれる。これらのシラン化ガラス容器で行われる水性エタノール合成は、結晶の多分散度が有意に低くなる。さらに、シラン化ガラス容器は、加熱の様々なモードに起因する形態の違いを取り除き、加熱の変動に起因する合成の不整合を緩和するために使用できることを示している(図13)。いくつかの実施形態において形態学的制御を改善するシラン化剤は、クロロトリメチルシラン、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミドおよびトリクロロヘキシルシランである。いくつかの実施形態では、使用されるシラン化剤は、(3-アミノプロピル)-トリエトキシシラン、(3-アミノプロピル)-ジエトキシ-メチルシラン、(3-アミノプロピル)-ジメチル-エトキシシラン、(3-アミノプロピル)-トリメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)-ジメチル-エトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)-トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)-メチル-ジメトキシシラン、またはそれらの混合物である。いくつかの実施形態では、使用されるシラン化剤は、オクタデシルトリクロロシラン、ドデシルトリクロロシラン、またはそれらの混合物などの長い炭化水素鎖を含むものである。いくつかの実施形態では、表面は、より疎水性ではなく、より親水性であるように官能化される。いくつかのそのような実施形態において、シラン化剤は、表面に特定の官能基を付与する。いくつかの実施形態では、これは、ペルフルオロアルカン、または他のアルカン官能基化(alkane functionalization)、例えば、アルコール、カルボン酸、アミド、アミン、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0114】
さらに、プラスチックまたは鋼などの良性表面を使用すると、分散度の低い結晶を導くこともできる。例えば、図19を参照すると、これらの良性表面で行われる水性エタノール合成は、例えば、第2の反応スキームに従って形成されたCo(dobdc)の結晶子などのように、非シラン化表面に比べて、結晶の多分散度が有意により低い。
【0115】
さらに、異なる表面官能基を使用することで、相の選択を決めることができる。例えば、図17を参照すると、反応容器の表面官能基に応じて、同一の反応条件が、2つの異なる生成物を生じさせ得る。図17の反応のための非シラン化ガラス容器により、Zn(dobdc)とZn(Hdobdc)・2HOとの混合物が形成され、後者は、四面体の二価亜鉛イオンと二重脱プロトン化配位子からなる一次元鎖である(図14)。これは、プラスチックおよび鋼などの良性表面を使用して達成することもできる。したがって、表面官能基は、合成中、シラン化、非シラン化、または他の材料であるため、場合によっては、この材料のための相を選択する。シラン化ガラス容器により、もっぱらまたは主にZn(dobdc)が形成される。ガラス容器上で異なる官能基を使用することにより、例えば、シラン化または非シラン化表面により、第3の反応スキームに従って形成された新しい相の発見、例えば、Zn(dobpdc)・2HOの発見がもたらされ得る。
【0116】
さらに、様々な表面官能基を使用して、結晶子のサイズを決めることができる。例えば、図18を参照すると、反応容器の表面官能基に応じて、同一の反応条件が、2つの異なる結晶子サイズ範囲をもたらすことができる。非シラン化ガラス容器は、長さ40~100ミクロンおよび幅5~20ミクロンを有するZn(dobdc)の形成をもたらし(図18A)、シラン化ガラス容器は、長さ300~1000ミクロンおよび幅20~80ミクロンのZn(dobdc)の形成をもたらす(図18B)。
【0117】
V.技術用途
本開示の一態様では、開示された吸着材料に関するいくつかの技術用途を提供する。
【0118】
1つのそのような用途は、石炭煙道ガスまたは天然ガス煙道ガスからの炭素回収である。地球規模の気候変動の一因となっている二酸化炭素(CO)の大気レベルでの増加は、発電所などの点源からのCO排出を削減するための新しい戦略の根拠となっている。特に、石炭火力発電所は世界のCO排出量の30~40%を占めている。参照により本明細書に組み込まれるQuadrelli et al.,2007、「The energy-climate challenge:Recent trends in CO emissions from fuel combustion「、Energy Policy 35、pp.5938-5952を参照されたい。したがって、石炭煙道ガスから、すなわち、周囲圧力および40℃において、CO(15~16%)、O(3~4%)、HO(5~7%)、N(70~75%)、および微量不純物(例えば、SO、NO)からなるガスストリームから、炭素を回収するための新しい吸着剤の開発に関しては依然として継続したニーズが存在する。参照により本明細書に組み込まれる、Planas et al.,2013、「The Mechanism of Carbon Dioxide Adsorption in an Alkylamine-Functionalized Metal-organic Framework」、J.Am.Chem.Soc.135、pp.7402-7405を参照されたい。同様に、燃料源としての天然ガスの使用の増加は、天然ガス火力発電所の煙道ガスからCOを回収することができる吸着剤に対するニーズを必然的に伴う。天然ガスの燃焼によって生成された煙道ガスは、より低いCO濃度、約4~10%のCOを含み、ストリームの残部は、HO(飽和)、O(4~12%)、およびN(残り)からなる。特に、温度スイング吸着プロセスの場合、吸着剤は、次の特性を有しているべきである:(a)再生エネルギーコストを最小化するために、最小の温度スイングで高い作業容量、(b)石炭煙道ガスの他の成分を超えるCOに関する高い選択性、(c)煙道ガス条件下でのCOの90%回収、(d)湿潤条件下で、効果的な性能、および(d)湿潤条件下で、吸着/脱着サイクルに対する長期安定性。
【0119】
別のかかる用途は、粗バイオガスからの炭素回収である。有機物の分解によって生成されるCO/CH混合物であるバイオガスは、従来の化石燃料源に取って代わる可能性のある再生可能な燃料源である。粗バイオガス混合物からのCOの除去は、この有望な燃料源をパイプライン品質のメタンにアップグレードする最も困難な態様の1つである。したがって、吸着剤を使用して、高い作業容量および最小の再生エネルギーによってCO/CH混合物からCOを選択的に除去することは、エネルギーセクターにおける用途のために天然ガスの代わりにバイオガスを使用するコストを大幅に削減する可能性がある。
【0120】
開示される組成物(吸着材料)を使用して、COに富むガスストリームから大部分のCOをストリッピングすることができ、COに富む吸着材料は、温度スイング吸着方法、圧力スイング吸着法、真空スイング吸着法、濃度スイング吸着法、またはそれらの組み合わせを使用して、COを取り除くことができる。例示的な温度スイング吸着法および真空スイング吸着法は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2013/059527(A1)号に開示されている。
【0121】
いくつかの実施形態では、開示の組成物(吸着材料)は、炭化水素混合物、例えば、とりわけ、エタン/エチレン、プロパン/プロピレン、およびCアルカン混合物を分離するために使用される。これらの炭化水素の工業生産は、オレフィン/パラフィンタイプまたは他の異性体の混合物を生産するが、それらは市場の需要に適合しないため、分離する必要がある。現在の技術のいくつかは、蒸留などの非常にエネルギー集約的なプロセスであり、いくつかは結晶化または吸着ベースである。より優れた吸着系材料を実装することで、工業用分離のエネルギーコストを大幅に削減できる可能性がある。
【0122】
いくつかの実施形態では、開示の組成物は、メタンの変換を含む他のプロセスの中でも、軽質アルカンを付加価値のある化学物質に変換するための不均一触媒として使用される。最近の世界的な天然ガス埋蔵量の増加を考えると、このプロセスは経済的および環境的に多大な影響を及ぼす。したがって、メタンを高級炭化水素に変換するための材料および経路が強く望まれている。
【0123】
結論
本明細書に記載した実施例および実施形態は、単に例示を目的とし、それを踏まえた様々な修正または変更が当業者に示唆され、本出願の趣旨および権限ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれることが理解される。本明細書で引用したすべての刊行物、特許、および特許出願は、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20
図21
図22