(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】前加水分解反応器へ木材チップを供給する方法
(51)【国際特許分類】
D21C 3/02 20060101AFI20240911BHJP
D21C 1/06 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
D21C3/02
D21C1/06
(21)【出願番号】P 2021518525
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(86)【国際出願番号】 FI2019050706
(87)【国際公開番号】W WO2020070389
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-07-20
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】520102646
【氏名又は名称】アンドリッツ オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドラーデ、マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ゲイガー、ロニー
(72)【発明者】
【氏名】カイパイネン、ベサ
(72)【発明者】
【氏名】ケットゥネン、アウボ
(72)【発明者】
【氏名】タルヤブオリ、ペトリ
(72)【発明者】
【氏名】ビアンナ、ビリディアネ
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-323757(JP,A)
【文献】特表2013-512350(JP,A)
【文献】特表2000-508721(JP,A)
【文献】特開2001-316992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00-D21J7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解パルプの生産において、チップと液体とのスラリーを前加水分解反応器へ供給する方法であって、前記スラリーは少なくとも1つのポンプを使用して前記反応器へ送り込まれる、方法において、前記スラリーのpHを7~10の範囲に調節するためにアルカリが前記少なくとも1つのポンプの中に供給されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
アルカリがポンプのケーシングとポンプのインペラとの間に供給されることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポンプがライナーを備えたスクリュー遠心ポンプであり、アルカリが前記インペラと前記ライナーとの間の間隙又は通路に導入されることを特徴とする、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記pHの範囲が8~9.5であることを特徴とする、請求項1から
3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アルカリが、導管及び前記ポンプのケーシングの壁の開口部を介して、前記ポンプヘ導かれることを特徴とする、請求項1から
4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記インペラが開放されているか、又は閉鎖されていることを特徴とする、請求項
2又は
3に記載の方法。
【請求項7】
前記アルカリが白液又は酸化白液であることを特徴とする、請求項1から
6までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース系繊維材料、好ましくは木材チップの加水分解処理及び蒸煮(cooking)のための方法に関する。特に、本発明は、チップと液体とのスラリーを前加水分解段階へ供給する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシステムでは、木材チップ(又は他のセルロース系材料又は繊維材料)は、第2の槽、例えば、蒸解釜に導入する前に、第1の反応槽において加水分解を受ける。そのような1つのシステムは、米国特許出願公開第20080302492号に記載されている。木材チップは、チップ供給アセンブリから前加水分解反応槽の上部入口に導入され、この前加水分解反応槽で、チップは、圧力及び熱エネルギーを槽に加えることにより、反応槽の上部領域において加水分解される。加水分解産物は、第1の反応槽内の上部領域の下にある抽出スクリーンを通って、セルロース系材料から抽出される。第1の反応槽の下部領域には洗液が導入され、洗液は下部領域においてセルロース系材料の加水分解を抑止する。洗液は、セルロース系材料を通って上方に向かって抽出スクリーンへ流れる。処理された材料は、反応槽の下部出口から放出され、材料を蒸解してパルプを生成するために蒸解釜に導入される。
【0003】
輸送装置における高い圧力により、典型的には、チップを前加水分解反応器の頂部にあるトップ・セパレータまで移動させ、実質的に大気圧を上回るように供給材料の圧力を増大させる力が提供される。輸送装置は、Andritz Groupによって販売されているTurbofeed(登録商標)におけるように、直列に配列された1つ以上の遠心ポンプとすることができる。供給材料及び液体は、ポンプから前加水分解反応槽の上部領域にあるトップ・セパレータに移動する。
【0004】
連続前加水分解クラフト蒸解(continuous prehydrolysis kraft cooking)プロセスでは、通常は、水のみがチップ供給システムに供給されて、チップを、反転トップ・セパレータ(inverted top separator)を越えて前加水分解槽内に成功裡に搬送するのに充分な液体を提供する。チップはチップ・ビン内でのスチーミング後には弱酸性であるため、供給循環内におけるpHレベルは、典型的には約5である。前加水分解に関して、アルカリ源は酸性の自動加水分解反応を遅くするため、供給システムにおいてアルカリ源を避けることは重要である。弱酸性のpHがチップ・ポンプ動作に対して負の効果を有していることが判明している。酸性条件下では、ピン・チップがチップ・ポンプのインペラとライナーとの間に蓄積し、ピン・チップは、クラフト蒸解システムでのような強アルカリ性(pH 12~14)条件下と同じようには軟化しない。硬質の蓄積したピン・チップは、インペラ及びライナーにおいて摩擦及び摩耗を生じさせ始め、これはポンプ・モーターの負荷の増大によって示される。チップ・ポンプ摩耗速度は、酸性の前加水分解クラフト蒸解システムでは、アルカリ性のクラフト蒸解供給システムにおけるよりも、典型的には、5~10倍速かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第20080302492号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、チップ・ポンプの摩耗速度を低減することができる方法及びシステムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、チップ・ポンプの摩耗を防止するために、白液又は他のアルカリを追加することによって、前加水分解クラフト蒸解供給システムにおけるpHレベルが、7~10、好ましくは8~9.5の範囲に高められる。アルカリは、1つ又は複数のチップ・ポンプに好ましくは直接追加される。
【0008】
驚いたことに、非常に弱いアルカリ性条件であっても、ポンプ摩耗の観点から状況を改善することが判明した。既に8~9.5のpHレベルで、チップ・ポンプの摩耗は遥かに少なくなる。同時に、供給システムのpHを前述のレベルに増大するために必要なアルカリは非常に少量であり、自動加水分解に対する負の効果は非常に小さい。従って、少量のアルカリ剤を供給システムに追加することによって、供給循環のpHを7~10、好ましくは8~9.5のレベルに維持することにより、前加水分解段階を著しく妨げることなく、チップ・ポンプ摩耗速度を著しく低減することができる。
【0009】
基本的に、pH制御には任意のアルカリ剤が使用され得るが、白液又は酸化白液が最も好ましい。これは、これらの薬品が(前加水分解)クラフト・パルプ工場において既に利用可能であるためである。アルカリは、供給システムに送給された水で希釈することができる。
【0010】
アルカリは、チップ・スラリーが流れているポンプの内部に追加される。好ましくは、アルカリは、ポンプのケーシングとポンプのインペラとの間に追加される。ポンプのケーシングには、ポンプにアルカリを導入するための導管及び開口部が設けられている。ポンプは、典型的には、円錐形の吸込ケーシング部及び渦巻ケーシング部を含むケーシングと、入口開口部と、出口開口部とを有するスクリュー遠心ポンプである。インペラは開放されていてもよいし、閉鎖されていてもよい。クローズド・インペラには、スクリュー・ブレードの外周に固定された円錐形の側板が設けられている。ポンプには、吸込ケーシングとインペラとの間にライナーがさらに設けられ得る。
【0011】
ポンプにライナーが設けられている場合には、アルカリ性液体を供給するのに好ましい地点は、ポンプのインペラとライナーとの間の間隙又は通路である。その場合、ポンプの重要部分が最も高いアルカリ濃度に遭遇する。これは、摩耗の低減に対して最良の効果を与える。
【0012】
チップ供給システムは、チップを供給するための1つ以上のポンプを備え得る。2台以上のポンプが直列又は並列に接続されていてもよい。アルカリは、典型的には、チップ流れ方向において第1のポンプに追加される。アルカリはまた、第1のポンプの後の他のポンプに追加されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明が適用され得る、チップ供給物、加水分解反応器、及び連続蒸解反応器を有する連続パルプ化システムの概略図である。
【
図2】チップを圧送するためのスクリュー遠心ポンプの側面図である。
【
図3a】スクリュー遠心ポンプの部分断面図である。
【
図3b】スクリュー遠心ポンプの部分断面図である。
【
図3c】スクリュー遠心ポンプの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
二反応槽システムにおいて、スチームは、加熱を目的とした槽及び加圧を目的とした槽の双方の頂部へ導入される。加水分解は第1の反応槽で行われる。第1の槽の頂部に導入された木材チップが槽を通って、その槽の下部抽出口に進むにつれて、第1の反応槽内の抽出スクリーンが加水分解産物を除去する。
【0015】
第2の反応槽は、蒸気又はスチーム相蒸解釜などの連続蒸解槽である。第1の反応槽及び第2の反応槽はほぼ垂直であり、少なくとも30メートル、例えば、50~70メートルの高さと、槽の上部区域における入口及び槽の底部に近接した放出部(discharge)とを有し得る。反応槽に追加される熱エネルギーは、大気圧以上の加圧スチームとすることができる。
【0016】
図1は、チップ供給システム24、第1の反応槽10(加水分解反応器)及び連続パルプ蒸解釜12を有する例示的なチップ供給及びパルプ処理システムの概略図である。第1の反応槽は、チップ供給ライン26を介して、従来のチップ供給アセンブリ24からセルロース系材料と液体とのスラリーを受容する反転トップ・セパレータ14を備える。
【0017】
チップはチップ供給ライン11を通って輸送され、スクリュー・コンベヤー13によってチップ・ビン16に供給される。チップ・ビン16は、Andritz Groupによって提供されるDiamondback(登録商標)チップ・ビンなどの従来のチップ・ビンとすることができる。チップ・ビン内におけるチップの温度及び圧力を制御することができるように、チップ・ビンには、スチーム・ラインを介して、低圧スチームが加えられ得る。
【0018】
チップ・ビン16は、ダブル・スクリュー・チップ・メーター18及びチップ・シュート20に接続されている。温・熱水が管28及び30を介してチップ・シュート20内のチップに加えられて、チップのスラリーを形成する。
【0019】
トップ・セパレータ14から放出され、管30に抽出された、分離された液体が、温・熱水と混合され得る。混合物は管30を通ってチップ・チューブ20へ流れる。トップ・セパレータ14から放出された液体と温・熱水28との混合物は、チップの通常の加水分解温度、例えば、好ましくは170℃よりも低い温度となるように制御される。トップ・セパレータから放出された水及び液体の温度は、好ましくは100℃~120℃の範囲にある。
【0020】
チップを第1の反応槽に供給するために、セルロース系材料のスラリーは、1つ又は複数のポンプ22(Andritz Groupによって販売されているTurboFeed(商標)システムなど)によって、第1の反応器のトップ・セパレータに送り込まれる。
【0021】
第1の反応槽10は、槽内の圧力及び温度のいずれか、又は双方に基づいて制御され得る。圧力制御は、スチーム管32を介したスチームの制御された流れ、又は、加えて第1の反応槽に添加される不活性ガスを用いることによって行われ得る。第1の反応槽内におけるガス状の上部領域は、チップ柱の上部レベルの上方にある。
【0022】
ライン32内のスチームは、通常の加水分解温度、例えば170℃よりも高い温度で提供されて、第1の反応槽内のセルロース系スラリー中で加水分解が行われることを可能にする。スチームは、第1の反応槽内における加水分解を少なくともある程度促進する制御された方法で加えられる。スチームは、ライン32を介して、槽の蒸気相などの、第1の反応槽の頂部又は頂部付近に加えられる。第1の反応槽に導入されたスチームは、セルロース系スラリーの温度を通常の加水分解温度以上に、例えば150℃よりも高くまで上昇させる。
【0023】
第1の反応槽内の反転トップ・セパレータ14に供給されるセルロース系材料スラリーは、輸送管26を通る流れを容易にするために過剰量の液体を有し得る。槽内に入ると、過剰な液体は、スラリーがトップ・セパレータ14を通過するにつれて除去される。セパレータから除去された過剰な液体は、管30を介してチップ供給システムに、例えば、チップ・チューブ20に戻され、スラリーに再導入されて、セルロース系材料を第1の槽の頂部へ輸送する。
【0024】
トップ・セパレータ14は、チップ又は他の固体セルロース系材料を第1の反応槽の(上部チップ柱の下の)液相に放出する。トップ・セパレータは、材料を反転セパレータ14の頂部から気相中に押し込む。押し出された材料は、槽内の気相を通って、第1の反応槽に収容されているチップ及び液体の上部チップ柱に落下し得る。気相(そのような相がある場合)内及び第1の反応槽10内の温度は、通常の加水分解温度以上であり、例えば170℃以上である。セルロース系材料のスラリーは、第1の反応槽を通って徐々に下へ流れる。材料が槽を通って進むにつれて、新たなセルロース系材料及び液体がトップ・セパレータから上面に加えられる。
【0025】
加水分解は、温度が通常の加水分解温度以上に維持されている第1の反応槽10で行われる。加水分解は、酸の追加によって、より低い温度、例えば150℃未満で行われるであろうが、好ましくは、加水分解は、水及び第1の反応槽のトップ・セパレータからの再循環された液体のみを使用して、150℃超~170℃の高温で行われる。加水分解産物は、抽出スクリーン36又は複数の高さにある抽出スクリーン36の組(a set of multiple elevations of extraction screens)を通って除去される。抽出スクリーン(図示せず)は反応器10の底部領域に位置することができ、加水分解は、実質的にスクリーンの上方で行われる。
図1では、あまり処理されていない加水分解産物が反応器から除去されるように、抽出スクリーン36は反応器の上部に配置されている。抽出前の加水分解段階における滞留時間は、典型的には60~80分であるが、
図1では、スクリーン36は、既に10~40分、好ましくは20~30分の滞留後の位置にある。加水分解反応はスクリーン36の下で完了する。加水分解産物を除去するためにスクリーン36の下に付加的なスクリーンが存在してもよい。
【0026】
加水分解産物は、加水分解の生成物である。加水分解産物は抽出スクリーン36によって除去され、管38に供給される。加水分解産物又はその一部は、従来の加水分解産物回収システムによって回収され得る。
【0027】
チップ・シュート20においてチップ・スラリーに加えられる液体の量は、チップ・スラリーのpHに対する過度の変化を避けるように制御されて、例えば、スラリーを過度にアルカリ性又は過度に酸性にするのを避けることができる。チップ・チューブ20におけるセルロース系材料への液体の添加は、チップ・ポンプ22によって、チップ・スラリー材料をチップ・シュート20と第1の反応槽10のトップ・セパレータ14との間に延在するチップ・スラリー管26を介して搬送するのを支援する。
【0028】
処理されたチップは、前加水分解反応槽10の底部34を通って放出され、チップ輸送管40を介して、連続蒸解釜などの蒸解槽12のトップ・セパレータ42、例えば反転トップ・セパレータに送られる。
【0029】
管48から付加的な液体が第1の反応槽の底部に加えられ得る。付加的な液体は、第2の反応槽12のトップ・セパレータ42から抽出され得る。付加的な液体は、第1の槽の底部36に(ポンプ50によって)送り込むことにより、第1の槽からのチップの放出の支援に使用される液体の一部として再循環され得る。白液は、ライン44及び46を介して管48に、さらに第1の反応器の底部に加えられる。
【0030】
スチームは管52を介して蒸解釜12の頂部に加えられ得る。
【0031】
蒸煮薬品、例えば白液44は、第2の反応槽12の頂部、例えば、反転トップ・セパレータ42に加えられる。これらの蒸煮薬品の一部は、トップ・セパレータ42から液(liquor)を抽出して、液を第1の反応槽の底部に加える循環ライン48に導入され得る。白液が第2の反応槽12のトップ・セパレータに加えられて、セパレータにおける液とセルロース系材料との混合を促進した後に、材料と液との混合物がセパレータから第2の反応槽に放出される。
【0032】
蒸煮槽12内の温度は、中圧スチーム52と、場合により空気又は不活性ガスとの添加によって上昇され、制御される。蒸煮槽は、前加水分解反応槽14内の圧力と釣り合った圧力で稼働される蒸気相又は液圧相(hydraulic phase)の槽とすることができる。前加水分解反応槽の底部における圧力は、槽14内における中圧スチーム圧と、チップ及び液体の柱の液圧との組み合わせである。この組み合わさった圧力は、中圧スチーム52の圧力であり得る蒸煮槽の頂部での圧力よりも大きい。前加水分解反応槽の底部と蒸煮槽の頂部との間の圧力差は、ライン40を通る供給材料を移動させる。さらに、液圧式蒸解釜の蒸煮槽(hydraulic digester cooking vessel)が使用される場合、加熱循環を用いて供給材料を所望の蒸煮温度に加熱してもよい。
【0033】
蒸煮槽12は並流及び向流の複数のゾーンを有し得る。上部蒸煮ゾーン54は、供給材料と液との並流を有し得る。黒液の一部は、上部蒸煮ゾーンの底部にあるスクリーン62を通って抽出される。抽出された黒液はライン68を通って流れて、リボイラ70に熱エネルギーを提供する。リボイラにおいて発生した清浄な低圧スチームは、ライン72を介して流れて、チップ・ビン16に熱エネルギーを提供する。黒液はリボイラから黒液フィルタ74に流れる。ろ過された液は、黒液蒸発システムでのさらなる処理のために弱黒液タンクに流れる。フラッシュ・タンク及び熱交換器などの、熱黒液から熱を回収する他の熱回収システムが、リボイラ70と共に、又はリボイラ70の代わりに、使用されてもよい。
【0034】
中間蒸煮ゾーン56では、供給材料は下降し続け、黒液の向流はゾーン56を通って上方に流れる。付加的な液はスクリーン64を通って管68’に抽出される。黒液の流れに白液44が加えられ得る。黒液と白液とを組み合わせた流れは、中央管82を介して蒸煮槽に再循環され、中央管82は組み合わせた流体をスクリーン64又はスクリーン64の下に加える。
【0035】
組み合わせた流れが中央管82を通って加えられる速度、及び液がスクリーン62及び64を通って抽出される速度は、液が中間蒸煮ゾーンを通って上方に向かって流れ、下部蒸煮ゾーン58を通って下向きに流れるように調節される。下部蒸煮ゾーンは、蒸解槽16の垂直方向の長さの3分の1、2分の1、又はそれ以上の長さを有し得る。
【0036】
蒸煮槽の底部における洗浄ゾーン60は、供給材料を洗浄して黒液を抽出する。洗浄液84は、洗浄ラインを通って洗浄ゾーンの下部領域へ流れ、中央管82を通って洗浄ゾーンへ流れる。洗浄液が洗浄ゾーンを通って上方に流れるにつれ、黒液及び供給材料中の他の薬品が引っ張られて上方に向かって流れ、スクリーン66を通って抽出される。
【0037】
底部排出アセンブリ78は、洗浄された供給材料を蒸煮槽からライン80を介してブロー・タンク(図示せず)に放出する。供給材料の圧力はブロー・タンクにおいて解放される。ブロー・タンクの放出部から、この時点では溶解パルプである供給材料が、かっ色紙料ワッシャ(図示せず)などのさらなる処理に送り込まれる。
【0038】
図2は、チップを送り込むための典型的なスクリュー遠心ポンプの側面図を示している。ポンプは、ケーシング202及びスクリュー・インペラ208、並びにチップと液体とのスラリーのための入口開口部204及び出口開口部206を有する。インペラは開放されていてもよいし、閉鎖されていてもよい。クローズド・インペラには、スクリュー・ブレードの外周に固定された円錐形の側板210が設けられている。ポンプには、吸込ケーシングとインペラとの間にライナーがさらに設けられていてもよい(
図3)。
【0039】
図3a、
図3b、及び
図3cは、スクリュー遠心ポンプの部分断面図を示している。
【0040】
図3aにおいて、ポンプ300は、吸込ケーシング部302、摩耗リング304、クローズド・スクリュー・インペラ306、及び吸込ケーシングとインペラとの間のライナー308を有する。ポンプは、チップ・スラリーの流れのための入口320及び出口322をさらに有する。吸込ケーシングには、ポンプにアルカリ314を導入するために、開口部310及び導管312が配置されている。インペラとライナー308との間の間隙316にアルカリが導かれ、その間隙でアルカリとチップ・スラリーとが接触して、スラリーのpHが高められることになる。このように、ポンプ摩耗速度が低減され得る。
【0041】
図3bでは、吸込ケーシング302bとクローズド・インペラ318との間にライナーが存在しない。この場合、アルカリ314は、インペラ318と吸込ケーシング302bとの間の間隙316bに導入される。
【0042】
図3cでは、インペラ320は開放されている。アルカリ314は、インペラ320とライナー308cとの間に導かれる。
【0043】
本発明は、現在最も実用的で好ましい実施例であると考えられるものに関して記載されているが、本発明は開示された実施例に限定されるべきではなく、むしろ、添付された特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に含まれる様々な改変及び均等な構成に及ぶように意図されることが理解されるべきである。