(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】アルミナおよびその製造法
(51)【国際特許分類】
C01F 7/021 20220101AFI20240911BHJP
【FI】
C01F7/021
(21)【出願番号】P 2021518650
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(86)【国際出願番号】 US2019054244
(87)【国際公開番号】W WO2020072607
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-08-10
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516380050
【氏名又は名称】サソール(ユーエスエイ)コーポレーシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピープルズ,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,アリソン
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/193000(WO,A1)
【文献】特開2007-031259(JP,A)
【文献】特開2007-290943(JP,A)
【文献】特開2016-044114(JP,A)
【文献】特開2007-126633(JP,A)
【文献】特開2008-056556(JP,A)
【文献】特開2013-177313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 1/00-17/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i
)オキシ水酸化アルミニウ
ムを準備し;そして
ii)100℃から200℃の間の温度で0.5から4時間の間の期間水熱処理することにより
水酸化アルミニウムを熟成させ、120面で測定して35から450Åの結晶子サイズを有す
るアルミナを形成し、そして
iii
)アルミナに基づき10重量%未満の量で、ホスホノ基含有改質剤
をアルミナに加えて、表面改質アルミナを製造する
工程を含む改質アルミナの製造法。
【請求項2】
表面改質アルミナを水熱処理することにより表面改質アルミナを熟成させて熟成した表面改質アルミナを形成する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
表面改質アルミナまたは熟成した表面改質アルミナを乾燥することを含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ホスホノ
基含有改質剤が、有機リン化合
物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
有機リン化合物が、少なくとも1つのカルボキシル(COOH)基を含み、且つ少なくとも1つのホスホノ部分を持つ、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ホスホノ
基含有改質剤が、第1ホスホノ-アルキルカルボン酸、第2ホスホノ-アルキルカルボン酸、第1ジカルボン酸、第2アルキルジカルボン酸、第1ホスホノ-アルキルトリカルボン酸、ホスフィンアルカンカルボン酸またはそれらの混合物を含む請求項4に記載の方法。
【請求項7】
ホスホノ基含有改質剤が、アルミナに基づき3重量%から10重量%の間の量で加えられる、請求項1、4または
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ホスホノ基含有改質剤が、アルミナに基づき3重量%から8重量%の間の量で加えられる、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
表面改質アルミナを95℃から125℃の間の温度で0.5から2時間の間の期間熟成させる請求項2に記載の方法。
【請求項10】
乾燥を85℃から250℃の間の温度で行う請求項3に記載の方法。
【請求項11】
ホスホノ基含有改質剤により改質されたアルミナであって、改質されたアルミナが、pH8以上での分散後に、少なくとも1つの以下の特徴:
i)4未満のpHでの等電点;
ii)塩基性溶液中に5,10または20%の負荷量で分散された時に、90%より高い分散性;
iii)塩基性溶液中に5,10または20%の負荷量で分散された時に、250nm未満のD50を有する粒径分布;および/または
iv)500s-1で50cP未満の粘度
を含む、アルミナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面改質アルミナ(surface modified alumina)の製造法(1もしくは複数)に関する。特に本発明は、pH8以上で分散性であり、そしてpH8以上で低い粘性を有する表面改質アルミナの製造法に関する。本発明は本発明の方法に従い製造される改質アルミナ、および特有の特徴を有する改質アルミナにも及ぶ。
【背景技術】
【0002】
クエン酸で改質されたアルミナは、8以上のpHで分散性の改質アルミナを生成することが周知である。しかしこれらのクエン酸改質アルミナの問題は、8以上のpHでこれら
材料の処理が困難になるまでこれらの材料の粘度が急激に上昇することである。
【0003】
この問題に取り組むため、第二のカルボン酸、例えばマロン酸が必要になる。マロン酸の添加でクエン酸改質アルミナの粘度は8以上のpHで下がる。
【0004】
この解決法は効果的であるが、第二の改質剤の使用を要し、そして加える改質剤の量が実質的に増える。これは例えばセラミックで、追加の改質剤が製造の形成およびバーンアウト段階中に複雑さを生じる可能性、および系の他の成分との望ましくない相互作用を導入する可能性を生じ得るような幾つかの応用に対して有害となる恐れがある。
【0005】
本発明の目的は、本発明の技術分野で知られていることにより示される欠点を克服することである。
【0006】
本発明者は、驚くことに8以上のpHで分散性であり、そして8以上のpHで低い粘性を有し、ならびに低い負荷量(loading)の改質剤を有する改質アルミナを製造するために、アルミナの表面を改質する新規方法を見い出した。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様によれば;
i)アルミナを準備し;そして
ii)ホスホノ基含有改質剤をアルミナに加えて、表面改質アルミナ製造する
工程を含む改質アルミナの製造法が提供される。
【0008】
本発明はホスホノ基含有改質剤の添加後に、表面改質アルミナを乾燥させる工程をさらに含むことができる。
【0009】
また本発明は:
a)ホスホノ基含有改質剤の添加前にアルミナを熟成させて、35から450Å(120面で測定した時)の結晶子サイズ(crystallite size)を有する熟成アルミナを形成するさらなる工程;または
b)表面改質アルミナを熟成させて熟成表面改質アルミナを形成するさらなる工程;または
c)前記a)およびb)
を含むことができる。
【0010】
本発明は前記(a)またはb)のいずれか)のような熟成工程、および乾燥工程、または前記c)の熟成工程および乾燥工程の両方を含むことができる。
【0011】
したがって:
本発明の第一態様の第一の選択は:
i)アルミナを準備し;
ii)アルミナを、アルミナが35から450Å(120面で測定した時)の結晶子サイズを有するまで水熱処理により熟成させて、熟成アルミナを形成し;
iii)ホスホノ基含有改質剤を熟成アルミナに加えて、表面改質アルミナ製造し;そして
iv)場合により表面改質アルミナを乾燥して改質アルミナを製造する;
工程を含む改質アルミナの製造法である。
【0012】
本発明の第一態様の第二の選択は:
i)アルミナを準備し;
ii)ホスホノ基含有改質剤をアルミナに加えて、表面改質アルミナ製造し;
iii)表面改質アルミナを熱処理することにより(好ましくは自己圧力(autogenous pressure)下での高温で)表面改質アルミナを熟成させて、熟成表面改質アルミナを形成し;そして
iv)場合により熟成表面改質アルミナを乾燥して改質アルミナを製造する;
工程を含む改質アルミナの製造法である。
【0013】
本発明の第一態様の第三の選択は:
i)アルミナを準備し;
ii)アルミナを、アルミナが35から450Å(120面で測定した時)の結晶子サイズを有するまで水熱熟成により熟成させて、熟成アルミナを形成し;
iii)ホスホノ基含有改質剤をアルミナに加えて、表面改質アルミナ製造し;
iv)表面改質アルミナを熱処理することにより(好ましくは自己圧力下での高温で)表面改質アルミナを熟成させて、熟成表面改質アルミナを形成し;そして
v)場合により熟成表面改質アルミナを乾燥して改質アルミナを製造する;
工程を含む改質アルミナの製造法である。
【0014】
本発明の第一の態様の全ての選択には、乾燥工程を含めることが好ましい。
【0015】
本発明の第二の態様に従い、本発明により製造される改質アルミナが提供される。
【0016】
本発明の第三の態様に従い、8以上のpHで分散後に少なくとも1つ、好ましくは1より多く、最も好ましくは以下の全ての特徴を含む改質アルミナが提供される:
i)4未満のpHでの等電点;
ii)塩基性溶液中に5,10または20重量%の負荷量で分散された時、90%より高い分散性;
iii)塩基性溶液中に5,10または20重量%の負荷量で分散された時、250nm未満のD50を有する粒径分布;および、または
iv)500s-1で50cP未満の粘度。
【0017】
等電点は、10のpHから始まり、そして酸で滴定するゼータ電位測定法により測定する。
【0018】
分散性は、生じる懸濁液のpHが材料の等電点(IEP)より高く維持されるように測定される。
【0019】
粒径分布は、Horiba950および適切な希釈を含む光散乱測定装置を使用して測定される。
【0020】
分散性および粒径分布を測定するための塩基性溶液とは、9以上のpHを有する溶液を
意味する。好適な塩基性溶液は、水酸化アンモニウム溶液である。
【0021】
粘度は、懸濁液のアリコートを、25℃に維持したTA装置DHR2レオメータの同心円筒型ジオメトリに移すことにより測定する。剪断スイープは0.1から3600s-1で作動する。
【0022】
本発明の第三の態様で定められる改質アルミナの特徴は、本発明の第二態様の改質アルミナに適用する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
好適な態様の詳細な説明
本発明は、アルミナの表面をホスホノ基含有改質剤の添加により改質することによる改質アルミナの製造法を対象とする。場合によりにより本発明は、ホスホノ基含有改質剤を加えて、アルミナの表面を、または水熱熟成アルミナを改質することにより改質アルミナを製造することを対象とする。したがって本発明は、1もしくは複数の熟成工程を含むことができる。本発明は好ましくは乾燥工程を含む。本発明の第一態様の様々な選択は、本発明の第一態様に対する選択の中に概略されている。さらに本発明は、本発明の方法に従い製造される改質アルミナ、および特有な特徴を有する改質アルミナを象とする。
【0024】
本発明の要素を以下に記載する。
【0025】
アルミナ
アルミナにはオキシ水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、またはそれらの混合物を含んでなる。アルミナは好ましくはオキシ水酸化アルミニウムである。オキシ水酸化アルミニウムは、好ましくはベーマイトまたは擬ベーマイトを含み、そして最も好ましくはベーマイトである。
【0026】
アルミナは乾燥粒子の状態、水性スラリーに含まれた状態、酸性化アルミナ組成物またはそれらの混合物の状態でよい。本発明の好適な態様では、アルミナは水性スラリーに含まれている。水性スラリーは、アルミナ、好ましくはベーマイトを少なくとも水に加えることにより調製される。
【0027】
本方法により使用されることになるアルミナは、制御された結晶子サイズを有する。
【0028】
これに関して本発明のアルミナは、120面でのX線回折により測定した場合に30~500Å、好ましくは40~400Å、最も好ましくは80~200Åの平均結晶子サイズを有する粒子を含むことができる。アルミナの結晶子サイズは、熟成工程(熱水熟成)を含むことにより改変することができる。この工程には、アルミナを100から200℃の間の温度で、0.5から4時間の期間、アルミナの結晶子サイズが40から450Åの
間になるまで加熱することを含む。
【0029】
さらにアルミナは、80~300m2/gのBET表面積、好ましくは120~250
m2/gのBET表面積を有することができる。
【0030】
ホスホノ基含有改質剤
本発明のホスホノ基含有改質剤は、有機リン化合物、好ましくは1から20の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐アルキル基、を含む。またホスホノ基含有改質剤は、好ましくは少なくとも1つのカルボキシル(COOH)基を含み、そして少なくとも1つのホスホノ部分を持つ。ホスホノ部分は、第1ホスホノ-アルキルカルボン酸、第2ホスホノ-アルキルカルボン酸、第1ジカルボン酸、第2アルキルジカルボン酸、第1ホスホノ-アルキルトリカルボン酸、ホスフィンアルカンカルボン酸またはそれらの混合物を含む。ホスホノ部分は、より好ましくは、第1-アルキルカルボン酸、第2ホスホノアルキルカルボン酸、第1ジカルボン酸、第2アルキルジカルボン酸、第1ホスホノ-アルキルトリカル
ボン酸またはそれらの混合物である。最も好適なホスホノ基含有改質剤は、2-ホスホノブタン-1、2,4-トリカルボン酸である。
【0031】
ホスホノ基含有改質剤は、アルミナ表面上に分布するようにアルミナと混合される。
【0032】
ホスホノ基含有改質剤は、好ましくはアルミナ水性スラリーに、または熟成アルミナ水性スラリーに加えられる。
【0033】
ホスホノ基含有改質剤は、アルミナに基づき10重量%未満の量で、好ましくはアルミナに基づき3重量%から10重量%の間の量で、より好ましくはアルミナに基づき8重量%未満の量で、そして最も好ましくはアルミナに基づき3重量%から8重量%の間の量で
加えられる。この割合は好ましくは水和粉末状態のアルミナに基づく。
【0034】
熟成
本発明の分野では周知であるように、熟成とは水熱熟成を称する。
【0035】
アルミナの水熱熟成は、ホスホノ基含有改質剤を添加する前に、0.5から4時間の間の期間、100から200℃の間の温度で行うことができる。
【0036】
あるいは、またはそれに加えて、熟成はホスホノ基含有改質剤を添加した後、0.5から2時間の間の期間、95℃から125℃の間の温度で行うことができる。
【0037】
ホスホノ基含有改質剤を添加した後、0.5から2時間の間の期間、95℃から125℃の間の温度で熟成を行うことが好適である。
【0038】
乾燥工程
当業者に周知であるように、アルミナの一般的製造法は乾燥工程を含む。
【0039】
乾燥工程は直接または間接加熱法によることができる。これらの方法はスプレードライ、コンタクトドライ、パンドライまたは他の乾燥技術を含むことができる。好適な方法では、乾燥はスプレードライヤーで行う。
【0040】
乾燥工程は不活性な雰囲気中、例えば窒素、または空気中で行うことができ、そしてどの乾燥法が選択されるかに依存して、乾燥は85℃から250℃の間、好ましくは100℃から約250℃の間、最も好ましくは105℃から120℃の間の温度で行うことができる。さらに選択した乾燥技術に依存して、本発明の当業者は、どのくらい長く乾燥すべきかを知ることになり、したがってその時間は数秒から2から6時間の間で変動することになる。
【0041】
例えば、乾燥がスプレードライヤーを使用して行われるならば、乾燥工程は出口温度、好ましくは約100℃~約120℃で、そして数秒から数分までの滞留時間で行われる。コンタクトドライヤーが使用される場合は装置を、外装の内側を循環するオイルで外側から、目的温度、好ましくは200℃~250℃の範囲の温度に、わずか数分から数時間の滞留時間、加熱することができる。
【0042】
本発明の説明的方法
本発明の第一態様では、本発明のホスホノ基含有改質剤が適度な温度および圧条件下でアルミナ水性スラリーと混合される。乾燥工程が続いてもよい。
【0043】
任意の選択として、アルミナスラリーは最初に所望の結晶子サイズまで水熱熟成されて熟成アルミナスラリーを形成し、そして次にホスホノ基含有改質剤が熟成アルミナスラリーに加えられることができる。乾燥工程が続いてもよい。
【0044】
さらなる任意選択として、アルミナスラリーは最初に所望の結晶子サイズまで水熱熟成されて熟成アルミナスラリーを形成し、そして次にホスホノ基含有改質剤が熟成アルミナスラリーに加えられることができる。次いでさらなる熟成工程が、ホスホノ基含有改質剤の添加後に、例えば自己圧力下で操作される閉鎖反応槽中で95から125℃の間の温度で十分な時間、好ましくは1~4時間、加熱することにより続く。乾燥工程が続いてもよい。
【0045】
乾燥はいかなる中間の濾過または洗浄工程も必要とせずに行われて、改質アルミナを形成する。乾燥が行われることが好ましい。
【0046】
これから本発明を以下の実施例および図面を参照にして例として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図面:
【
図1】図
1は、他の高pH分散性材料と比較された、改質アルミナ材料の時間依存的粘度の結果を示す。
【
図2】
図2は、他の高pH分散性材料と比較された、改質アルミナ材料の時間依存的粘度の結果を示す。
【
図3】
図3は、他の高pH分散性材料と比較された、改質アルミナ材料の時間依存的粘度の結果を示す。
【0048】
分析法
本発明の生成物の固有の特性は、以下の分析技術を使用して測定した。
【0049】
アルミナはX線分析を使用して同定する。サンプルは、1”直径の開口部を含むX線回折用の2”プラスチックディスクに配置する。XDRデータはBruker AXS D4-ENDEAVOR装置を使用して得る。ベーマイトおよび擬ベーマイト、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムまたは混合物は、A.S.T.M.X線回折指数に記載されているようにX線回折により同定する。ベーマイトの単一粒子の結晶子サイズは、X線回折のピークによりデバイ方程式を使用してX線回折技術により得る。結晶サイズは回折ピーク120ピークについて得た長さにより表す。120でのX線粉末回折ピークのピーク幅分析は、結晶子サイズに関して一般に報告された値を与える。
【0050】
120結晶サイズを測定したX線回折によるベーマイト結晶子サイズは、120面に対して法線方90°である。このピーク(結晶面)はベーマイトのX線回折パターンで最もよく得られ、そしてアルミナの特性決定に使用されてきた。
【0051】
分散したアルミナの粒子サイズはHoriba装置を使用して測定する。
【0052】
表面積値はN2吸着により測定する。データは550℃で3時間の加熱処理サンプルに
ついて集める。次いでサンプルは窒素流下、300℃で0.5時間、脱気される。データはQuantachrome Apparatusで集める。表面積(m2/g)はB.
E.T方程式を使用して評価する。
【0053】
等電点の値は、Malverm Zetasizerを使用して測定する。材料の分散は、約1重量%固体および10のpHで作成する。アリコートをキャピラリーセルに注入し、そしてゼータ電位測定をこの装置で行う。溶液のpHは3のpHに達する時まで、一度に0.5pH下げながら滴定する。等電点はゼータ電位がX軸と交差するpHである。
【0054】
アルミナ形成分散物の分散性は、示した負荷重量およびpH(例えばpH10で5重量%)でスラリーを作成し、そして30分間撹拌することにより評価する。次いでスラリーを1600rpmで20分間、遠心する。
【0055】
分散物の粘度は、示した濃度で、分散物のアリコートを25℃に維持したTA装置DHR2レオメータの同心円筒型ジオメトリに移すことにより測定する。剪断スイープは0.1から3600s-1で作動する。
【0056】
本発明をより完全に説明するために、以下の非限定的実施例を与える。
【実施例】
【0057】
実施例1
ベーマイトアルミナを、自己圧力下で2.5時間、140℃にて熟成させて114Åの所望する結晶子サイズにした。スラリーを反応槽から取り出し、そして同一バッチを作成するように分けた。
【0058】
ホスホノ基含有改質剤、商標名Cublen P50は脱イオン水を使用して10%活性に希釈し、そしてアルミナスラリーに加えながら、Al2O3基準で5重量%で撹拌した。スラリーを30分間撹拌し、そしてBuchi290スプレードライヤーで乾燥した。
【0059】
実施例2
実施例1のように調製したアルミナスラリーを、7重量%のCublen P50を使用して改質し、そしてBuchi B290ドライヤーを使用して乾燥した。
【0060】
実施例3
実施例1のよう調製したアルミナスラリーを、5重量%のCublen P50を使用して改質し、そして再び反応槽に入れ、ここで105℃で1時間熟成し、そしてBuch
i B290ドライヤーで乾燥した。
【0061】
比較例1
実施例1のように調製したアルミナスラリーを、Al2O3基準で5重量%クエン酸を使用して改質し、105℃で1時間熟成し、そしてスプレードライした。
【0062】
比較例2
実施例1のように調製したアルミナスラリーを、Al2O3基準で5重量%クエン酸を使用して改質し、105℃で1時間熟成し、そしスプレードライした。次いでマロン酸を従
来技術通りに加えた。
【0063】
比較例3
実施例1のように調製したアルミナスラリーを、Al2O3基準で1.5重量%硝酸にドープし、そしてスプレードライした。
【0064】
比較例4
対照として非改質アルミナを使用した。
【0065】
本発明の改質アルミナおよび比較例の分散性を表1に示し、粘度は
図1-3に示す。
【0066】
【0067】
見れば分かるように、本発明の改質したアルミナ(1もしくは複数)は、適度に低負荷量のホスホノ基含有改質剤を用いてpH10で高度に分散性であった。本発明の改質したアルミナの分散性は、クエン酸改質材料の分散性と同様であるが、5,10および20重量%で分散した時の材料の粘度は実質的に異なる(
図1-3)。非改質および酸改質剤材料は、高pH条件下で分散性ではなく、効果的ではない。