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  • 特許-伸縮フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】伸縮フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/08 20060101AFI20240911BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240911BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20240911BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20240911BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
B32B25/08
B32B27/32 Z
C08K3/26
C08L23/16
C08L53/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021524896
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2020022079
(87)【国際公開番号】W WO2020246536
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2019106404
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】平野 達也
(72)【発明者】
【氏名】前田 崇暁
(72)【発明者】
【氏名】田中 昭裕
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/013577(WO,A1)
【文献】特開2018-103439(JP,A)
【文献】特開2013-014127(JP,A)
【文献】特開2013-119583(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103781(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー層と、前記エラストマー層の第1の面及び第2の面のいずれか一方又は両方に設けられた表面層と、を有し、
前記表面層は、エチレンとの共重合体であるブロックポリプロピレン、及びエチレンとの共重合体であるランダムポリプロピレンからなる群から選ばれる1種以上のポリプロピレン系樹脂と、炭酸カルシウムとを含み、
前記表面層中の前記炭酸カルシウムの含有量が、前記表面層の総質量に対して10~75質量%であり、
前記エラストマー層の厚みが20~55μmであり、
前記表面層の厚みが0.4~5.0μmであり、
前記ポリプロピレン系樹脂の融点が135℃以上160℃未満である、伸縮フィルム。
【請求項2】
前記表面層が、前記表面層の総質量に対して、30~70質量%の前記ポリプロピレン系樹脂と、30~70質量%の前記炭酸カルシウムとを含む、請求項1に記載の伸縮フィルム。
【請求項3】
前記エラストマー層が、オレフィン系エラストマーを含む、請求項1又は請求項2に記載の伸縮フィルム。
【請求項4】
前記オレフィン系エラストマーが、プロピレン系エラストマーを含む、請求項3に記載の伸縮フィルム。
【請求項5】
前記オレフィン系エラストマーが、プロピレン―エチレン共重合体を含む、請求項4に記載の伸縮フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮フィルムに関する。
本願は、2019年6月6日に、日本国に出願された特願2019-106404号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
伸縮フィルムは、衛生用品、スポーツ用品、医療用品等の広い分野において、取扱い性、着用感(フィット感)等を改善するために使用されている。例えば、下着等の衣服、紙おむつのウエストバンド、サイドパネル、レッグギャザー、失禁用品、生理用ナプキン、包帯、外科的ドレープ、締め付け用バンド、帽子、水泳パンツ、スポーツ用サポーター、医療品サポーター等に用いられている。
【0003】
伸縮フィルムには、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、エチレンコポリマー等のエラストマーが用いられる。エラストマーを用いた伸縮フィルムは、ブロッキングの問題がある。そこで、ブロッキングを抑制するため、エラストマー層の表面にオレフィン層等の表面層を設けた伸縮フィルムが提案されている。特許文献1には、高密度ポリエチレン(HDPE)又はホモポリプロピレン(H-PP)を含むオレフィン層をエラストマー層の表面に設けた伸縮フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2016-112878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、表面層にHDPE等のポリエチレンを用いた伸縮フィルムは、耐熱性が不充分であるため、例えばホットメルト接着剤を用いてバックフィルムや不織布等と接着する際に、変形が生じたり、穴空きが生じたりしやすい。また、表面層にH-PPを用いた伸縮フィルムは、充分な伸縮性が得られにくい。エラストマー層を厚くすれば伸縮性は改善されるが、剛性が高くなりすぎるため、伸ばす際に強い力が必要になる。
【0006】
本発明は、剛性が低く、耐ブロッキング性、耐熱性及び伸縮性に優れた伸縮フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を有する。
【0008】
[1]エラストマー層と、前記エラストマー層の第1の面及び第2の面のいずれか一方又は両方に設けられた表面層と、を有し、前記表面層は、エチレンとの共重合体であるブロックポリプロピレン、及びエチレンとの共重合体であるランダムポリプロピレンからなる群から選ばれる1種以上のポリプロピレン系樹脂と、炭酸カルシウムとを含み、前記表面層中の前記炭酸カルシウムの含有量が、前記表面層の総質量に対して10~75質量%であり、前記エラストマー層の厚みが20~55μmであり、前記表面層の厚みが0.4~5.0μmである、伸縮フィルム。
【0009】
[2]前記表面層が、前記表面層の総質量に対して、30~70質量%の前記ポリプロピレン系樹脂と、30~70質量%の前記炭酸カルシウムとを含む、[1]に記載の伸縮フィルム。
【0010】
[3]前記ポリプロピレン系樹脂の融点が160℃未満である、[1]又は[2]に記載の伸縮フィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、剛性が低く、耐ブロッキング性、耐熱性及び伸縮性に優れた伸縮フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の伸縮フィルムの一例を示した断面図である。
図2】本発明の伸縮フィルムの一例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
流れ方向(MD)は、帯状の樹脂フィルムの押出方向(長手方向)である。また、幅方向(TD)は、樹脂フィルム面に沿って流れ方向(MD)に対して垂直方向である。
【0014】
本発明の伸縮フィルムは、エラストマー層と、エラストマー層の第1の面及び第2の面のいずれか一方又は両方に設けられた表面層と、を有する。
【0015】
本発明の伸縮フィルムの実施態様としては、例えば、図1及び図2に例示した伸縮フィルム1,2が挙げられる。伸縮フィルム1は、図1に示すように、エラストマー層10と、エラストマー層10の第1の面10aに設けられた第1表面層20とを備えている。伸縮フィルム2は、図2に示すように、エラストマー層10と、エラストマー層10の第1の面10aに設けられた第1表面層20と、エラストマー層10の第2の面10bに設けられた第2表面層22とを備えている。
なお、図1及び図2の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、請求項に定義される本発明の範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0016】
エラストマー層は、エラストマーを含む層である。
エラストマーとは、ガラス転移温度以上でゴム弾性を有するポリマーを指す。したがって、エラストマーは一般に常温(23℃)以下のガラス転移温度を持つ。エラストマーとしては、具体的には、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等が挙げられる。これらの中でも、強度及び復元性の点から、オレフィン系エラストマーが好ましい。また、フィルム搬送時の寸法安定性が高いという点から、スチレン系エラストマーが好ましい。エラストマー層に含まれるエラストマーは、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0017】
スチレン系エラストマーとしては、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SISエラストマー)、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体)等が挙げられる。これらの中でも、強度及び復元性がより高いことから、SISエラストマーが好ましい。
【0018】
SISエラストマーのスチレン単位含有率は、14~48質量%が好ましい。SISエラストマーのスチレン単位含有率が前記下限値以上であれば、成形性が向上する。SISエラストマーのスチレン単位含有率が前記上限値以下であれば、充分に高い伸縮性を得ることができる。
【0019】
SISエラストマーとしては、市販品を使用することができる。
SISエラストマーの市販品としては、例えば、Quintac3390(SISブロック共重合体、ガラス転移温度:-53℃、スチレン単位含有率:48質量%、日本ゼオン社製)、Quintac3620(SISブロック共重合体、ガラス転移温度:-50℃、スチレン単位含有率:14質量%、日本ゼオン社製)等が挙げられる。
【0020】
オレフィン系エラストマーとしては、炭素数3以上のオレフィンを主成分とした共重合体又は単独重合体、並びにエチレンを主成分とした炭素数3以上のオレフィンとの共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、立体規則性が低いプロピレン単独重合体や1-ブテン単独重合体等のα-オレフィン単独重合体;プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、1-ブテン-エチレン共重合体、1-ブテン-プロピレン共重合体、4-メチルペンテン-1-プロピレン共重合体、4-メチルペンテン-1-1-ブテン共重合体、4-メチルペンテン-1-プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体等のα-オレフィン共重合体;エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン-プロピレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-イソプレン共重合体等のエチレン-α-オレフィン-ジエン三元共重合体;等が挙げられる。また、結晶性ポリオレフィンのマトリクスに上記エラストマーが分散したエラストマーとしてもよい。オレフィン系エラストマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
オレフィン系エラストマーとしては、強度及び復元性の点から、プロピレンを主成分とした共重合体又は単独重合体であるプロピレン系エラストマー(プロピレン-エチレン共重合体等、以下「PP系エラストマー」ともいう。)、エチレンを主成分とした共重合体又は単独重合体であるエチレン-オクテンエラストマー(エチレン-オクテン共重合体等)が好ましい。
【0022】
PP系エラストマーの全単位に対するプロピレン単位含有率は、70~95質量%が好ましく、80~90質量%がより好ましい。PP系エラストマーのプロピレン含有率が下限値以上であれば、成形性が向上する。PP系エラストマーのプロピレン含有率が上限値以下であれば、高い伸縮性が得られやすい。
【0023】
オレフィン系エラストマーとしては、市販品を使用することができる。
オレフィン系エラストマーの市販品としては、例えば、商品名「VISTAMAXX6102」(プロピレン-エチレン共重合体、エチレン単位含有率:16質量%、ExxonMobil社製)、商品名「Infuse9007」(エチレン-オクテン共重合体、Dow Chemical社製)等が挙げられる。
【0024】
エラストマーとしては、強度及び復元性の点から、PP系エラストマー及びエチレン-オクテンエラストマーからなる群から選ばれる1種が好ましい。しかしながら、2種以上のエラストマーを混合して使用してもよい。
また、エラストマーとしては、フィルム搬送時の寸法安定性が高いという点から、スチレン系エラストマーが好ましい。しかしながら、2種以上のスチレン系エラストマーを混合して使用してもよい。
【0025】
エラストマー層は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、熱可塑性エラストマー以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、金属石鹸、ワックス、防かび剤、抗菌剤、造核剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、変色防止剤、顔料、染料、充填剤等の添加物が挙げられる。
【0026】
エラストマー層の厚みは、20~55μmであり、25~53μmが好ましく、30~50μmがより好ましい。エラストマー層の厚みが前記範囲の下限値以上であれば、伸縮性に優れる。エラストマー層の厚みが前記範囲の上限値以下であれば、剛性が低くなる。
エラストマー層は、単層であってもよく、複層であってもよい。エラストマー層が複層である場合は、エラストマー層の合計の厚みが前記範囲とされる。
また、エラストマー層が複層である場合、異なるエラストマー層の成分は同一であっても良く、異なっていても良い。
【0027】
表面層は、エチレンとの共重合体であるブロックポリプロピレン(以下、「B-PP」とも記す。)、及びエチレンとの共重合体であるランダムポリプロピレン(以下、「R-PP」とも記す。)からなる群から選ばれる1種以上のポリプロピレン系樹脂(以下、「ポリプロピレン系樹脂(B)」とも記す。)と、炭酸カルシウムとを含む層である。エラストマー層の表面に表面層が設けられることで、優れた耐ブロッキング性が得られる。
表面層に含まれるポリプロピレン系樹脂(B)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
エラストマー層の両面に第1表面層と第2表面層を設ける場合、第1表面層に含まれるポリプロピレン系樹脂(B)と第2表面層に含まれるポリプロピレン系樹脂(B)は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0028】
H-PPはプロピレンの単独重合体であり、タクシティーが高いため、結晶化度が大きい。そのため、H-PPを用いたフィルムは、剛性が大きく、柔軟性に欠ける傾向がある。これに対し、R-PPはプロピレンにエチレンを共重合しているため、H-PPに比べてタクシティーが低下し、結晶化度が下がるため、柔軟性に優れ、耐熱性も有する。B-PPは、ポリプロピレンの海部分とエチレンの島部分とで構成される海島構造を形成しており、H-PPと同等の耐熱性を保有しつつ、海島の境界線部にEPR相を形成することで、柔軟性も有している。
【0029】
ポリプロピレン系樹脂(B)の融点は、160℃未満が好ましく、135℃以上、160℃未満がより好ましい。ポリプロピレン系樹脂(B)の融点が160℃未満であれば、ポリプロピレン系樹脂(B)が必要なエチレン樹脂を含有しており、ポリプロピレン系樹脂(B)の柔軟性に優れるため、伸縮フィルムの伸縮性に優れる。ポリプロピレン系樹脂(B)の融点が135℃以上であれば、ポリプロピレン系樹脂(B)が必要なプロピレン樹脂を含有しており、耐熱性に優れる。
なお、融点は、示差走査熱量測定(DSC)法によって測定されるピーク温度である。
【0030】
表面層中のポリプロピレン系樹脂(B)の含有量は、前記表面層の総質量に対して、25~90質量%が好ましく、27~80質量%がより好ましく、30~70質量%がさらに好ましい。ポリプロピレン系樹脂(B)の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、耐熱性に優れる。ポリプロピレン系樹脂(B)の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、剛性が低くなり、伸縮性に優れる。
【0031】
表面層中の炭酸カルシウムの含有量は、前記表面層の総質量に対して、10~75質量%であり、20~73質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましい。炭酸カルシウムの含有量が前記範囲の下限値以上であれば、剛性が低くなり、伸縮性に優れる。炭酸カルシウムの含有量が前記範囲の上限値以下であれば、伸縮フィルムの製造が安定になる。
【0032】
表面層は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、ポリプロピレン系樹脂(B)及び炭酸カルシウム以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、エラストマー層で挙げた添加物が挙げられる。また、ゼオライト、シリカ等の炭酸カルシウム以外の無機フィラーを含んでもよい。ホモポリプロピレン(H-PP)、ポリエチレン(PE)等のポリプロピレン系樹脂(B)以外の樹脂を含んでもよい。
【0033】
表面層の厚みは、0.4~5.0μmであり、0.5~4.5μmが好ましく、1~4.0μmがより好ましい。表面層の厚みが前記範囲の下限値以上であれば、伸縮フィルムの製造がより安定になる。表面層の厚みが前記範囲の上限値以下であれば、伸縮フィルムを薄肉化でき、特にエラストマーに比べて剛性が高いポリプロピレン系樹脂(B)で形成される表面層が薄肉化することで、表面層の剛性が伸縮フィルムに与える影響が小さくなる。そのため、伸縮フィルムの剛性が低くなり、伸縮性に優れる。
エラストマー層の両面に第1表面層と第2表面層を設ける場合、それら第1表面層の厚みと第2表面層の厚みがそれぞれ前記範囲とされる。
なお、第1表面層の厚みと、第2表面層の厚みは、等しくても良く、異なっていても良い。
【0034】
伸縮フィルムの総厚みは、20~60μmが好ましく、25~55μmがより好ましく、30~50μmがさらに好ましい。伸縮フィルムの総厚みが前記範囲の下限値以上であれば、伸縮性に優れる。伸縮フィルムの総厚みが前記範囲の上限値以下であれば、伸縮フィルムを薄肉化でき、剛性が低くなり、伸縮性に優れる。
【0035】
伸縮フィルムの製造方法は、特に限定されず、例えば、インフレーション法、キャストフィルムプロセス法等が挙げられる。なかでも、生産性の点から、キャストフィルムプロセス法が好ましい。
【0036】
本発明の伸縮フィルムの用途は、特に限定されず、衛生用品、スポーツ用品、医療用品等に使用できる。例えば、下着等の衣服、紙おむつのウエストバンド、サイドパネル、レッグギャザー、失禁用品、生理用ナプキン、包帯、外科的ドレープ、締め付け用バンド、帽子、水泳パンツ、スポーツ用サポーター、医療品サポーター等に使用できる。
【0037】
以上説明したように、本発明の伸縮フィルムは、エラストマー層の第1の面及び第2の面のいずれか一方又は両方に、ポリプロピレン系樹脂(B)と特定の比率の炭酸カルシウムとを含む表面層を設け、かつエラストマー層及び表面層の厚みを特定の範囲に制御している。このような表面層を設けることで、優れた耐ブロッキング性が得られるうえ、剛性が低く、優れた耐熱性及び伸縮性も得られる。
(実施例)
【0038】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0039】
[測定方法、評価方法]
(各層の厚み)
伸縮フィルムにおけるエラストマー層及び表面層の厚みは、マイクロスコープによる断面観察によって求めた。
【0040】
(耐熱性)
伸縮フィルムに135℃のホットメルトを塗布し、1分間放置した後、フィルムの形状を目視により観察し、下記基準で耐熱性を評価した。
〇(良好):フィルムの変形又はフィルムの破断が見られず、耐熱性に優れていた。
×(不良):フィルムの変形又はフィルムの破断が見られ、耐熱性が不充分であった。
【0041】
(伸縮フィルムの永久ひずみ)
伸縮フィルムから、フィルムの延伸方向に100mm、延伸方向に対して垂直方向に25mmの短冊状試験片を切り取った。試験片を精密万能試験機(島津製作所社製、オートグラフ、材料試験オペレーションソフトウエア:TRAPEZIUM2)のつかみ具につかみ具間距離が25mmとなるように固定した。試験片を長手方向に速度254mm/分にて下記式(I)で算出される伸びが100%となるように伸長した後、直ちに試験片を同速度にて収縮させた。下記式(II)から永久ひずみを算出した。試験は、23℃±2℃で行った。
伸び=(L1-L0)/L0×100 (I)
永久ひずみ=(L2-L0)/L0×100 (II)
ただし、L0は、伸長する前のつかみ具間距離(mm)である。L1は、伸長した後のつかみ具間距離(mm)である。L2は、収縮させる際に試験片の荷重(N/25mm)が0になるときのつかみ具間距離(mm)である。
フィルムの延伸方向は、オレフィン系エラストマーを用いる場合はMDであり、スチレン系エラストマーを用いる場合はTDである。
【0042】
(剛性)
伸縮フィルムの剛性について、永久ひずみ試験で測定された応力-ひずみ曲線(S-Sカーブ)から下記基準で評価した。
〇(良好):伸長時の伸びが50%の時点の試験力が4N以下。
×(不良):伸長時の伸びが50%の時点の試験力が4N超。
【0043】
(伸縮性)
伸縮フィルムの伸縮性について、永久ひずみ試験で測定された応力-ひずみ曲線(S-Sカーブ)から下記基準で評価した。
〇(良好):永久ひずみが20%以下。
×(不良):永久ひずみが20%超。
【0044】
[原料]
本実施例で使用した原料を以下に示す。
(エラストマー)
エラストマー(A-1):エチレン-オクテンエラストマー(Infuse9007、ダウケミカル社製)
エラストマー(A-2):PP系エラストマー(Vistamaxx6102FL、エクソン社製)
エラストマー(A-3):SISエラストマー(Quintac3390、スチレン含有率48質量%、日本ゼオン社製)
エラストマー(A-4):SISエラストマー(Quintac3620、スチレン含有率14質量%、日本ゼオン社製)
【0045】
(ポリプロピレン系樹脂(B))
樹脂(B-1):R-PP(F227、融点152℃、プライムポリマー社製)
樹脂(B-2):B-PP(MFX3、融点157℃、WAYMAX社製)
【0046】
(無機フィラー)
炭酸カルシウム(ライトンS、備北粉化工業社製)
【0047】
(比較対象樹脂)
樹脂(X-1):ホモポリプロピレン(H-PP、D101、融点163℃、ノーブレン社製)
樹脂(X-2):ポリエチレン(PE、CE3506、融点117℃、スミカセン社製)
【0048】
[実施例1~8、比較例1~7]
表面層を形成する各成分を表1及び表2に示す配合でタンブラーミキサーにより混合して樹脂混合物を得た。次いで、キャストフィルムプロセス法により、エラストマー層と、エラストマー層の両面側に前記樹脂混合物で形成された第1表面層及び第2表面層を有する伸縮フィルムを製造した。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
表1に示すように、ポリプロピレン系樹脂(B)を含み、かつ炭酸カルシウムを特定の比率で含む表面層を有する実施例1~8の伸縮フィルムは、剛性が低く、耐熱性及び伸縮性に優れていた。
一方、ポリプロピレン系樹脂(B)の代わりにH-PPを用いた比較例1のフィルムは、剛性が高かった。表面層にポリプロピレン系樹脂(B)の代わりにPEを用いた比較例2のフィルムは、耐熱性が不充分であった。表面層が炭酸カルシウムを含まない比較例3、エラストマー層が薄すぎる比較例4のフィルムは、伸縮性が不充分であった。エラストマー層が厚すぎる比較例5、表面層が厚すぎる比較例6のフィルムは、剛性が高く、伸縮性が不充分であった。表面層を形成する樹脂混合物中の炭酸カルシウムの含有量が高すぎる比較例7では、フィルムを製造できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、剛性が低く、耐ブロッキング性、耐熱性及び伸縮性に優れた伸縮フィルムを提供できる。
【符号の説明】
【0053】
1,2…伸縮フィルム、10…エラストマー層、10a…第1の面、10b…第2の面、20…第1表面層、22…第2表面層
図1
図2