(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】クッションの製造方法及びクッション
(51)【国際特許分類】
A47C 27/00 20060101AFI20240911BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20240911BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20240911BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20240911BHJP
A47C 27/15 20060101ALI20240911BHJP
A61G 5/12 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
A47C27/00 A
B29C43/34
B29C44/00 C
B29C44/36
A47C27/15 A
A61G5/12 701
(21)【出願番号】P 2021552241
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2020055661
(87)【国際公開番号】W WO2020178318
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】102019105425.7
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521391737
【氏名又は名称】オットー・ボック・モビリティ・ソリューションズ・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】OTTO BOCK MOBILITY SOLUTIONS GMBH
【住所又は居所原語表記】Lindenstrasse 13,07426 Koenigsee-Rottenbach,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】クリンゲビール、フランク・シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】マッカービル、サラ
(72)【発明者】
【氏名】ホーザン、アルネ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー、ヨハン-クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ペルク、ハインリッヒ
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-279063(JP,A)
【文献】特表2008-528123(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0166524(US,A1)
【文献】特開昭63-297039(JP,A)
【文献】特開2010-029312(JP,A)
【文献】特開2004-188173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/00
B29C 43/34
B29C 44/00
B29C 44/36
A47C 27/15
A61G 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
整形外科技術的装置用の、流体を充填した少なくとも1つの容積を有するクッションの製造方法において、前記製造方法が以下の段階、
a)主として弾性の少なくとも1つの第1材料から成る3次元の第1クッション部を、内型枠と外型枠を有する型枠において圧縮成形することと、
b)前記流体を充填した容積が形成されるように、前記第1クッション部を少なくとも1つの第2クッション部と結合することと
を有し、
前記段階a)が以下の段階、
a1)原料を前記型枠に充填することと、
a2)内型枠と外型枠の間で前記原料を圧縮することと、
a3)前記第1クッション部を形成するように、内型枠と外型枠の間で前記原料の硬化又は加硫を行うことと、
を含む、クッションの製造方法。
【請求項2】
前記第1クッション部と前記第2クッション部が互いに一体に形成されていて、前記圧縮成形時に前記段階a)において製造されることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2クッション部が前記第1クッション部とは別の部材であることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1クッション部及び/又は前記第2クッション部が複数の異なる材料で製造され、これらが主として前記各クッション部の製造時に材料結合的に互いに結合され
、共に加硫されることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記流体を充填した容積
は、流体接続部を通して互いに接続されている複数のチャンバを
有することを特徴とする、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1クッション部及び/又は前記少なくとも1つの第2クッション部が肉厚の異なる領域、並びに/又は構造及び/若しくは粗さが異なる領域を備えた表面を有することを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記内型枠及び/又は前記外型枠が、前記圧縮成形時に前記第1クッション部に移動される被覆を備えていて、その際、前記被覆が主として前記型枠内に挿入、並びに/又は前記内型枠及び/若しくは前記外型枠上に塗布されていることを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1材料が発泡材料であることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1クッション部の前記圧縮成形時に少なくとも1つのセンサ及び/又は少なくとも1つのアクチュエータ及び/又は少なくとも1つの機能要素が、前記第1クッション部内に装入及び/又は前記第1クッション部表面に装着されることを特徴とする、請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記圧縮成形時に導電性材料から成る要素
が少なくとも1つの第1弾性材料に装入される、又は前記少なくとも1つの第1弾性材料が導電性を有することを特徴とする、請求項1か
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から1
0のいずれか一項に記載の方法に従って製造された、又は製造可能な、整形外科技術的装置用のクッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整形外科技術的装置用の、流体を充填した少なくとも1つの容積を有するクッションの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な整形外科技術的装置において、例えば整形外科技術的装置に支持される身体部分を保護し緩衝支持する目的で、クッションが装備されている。例えばこれは、例えば車椅子用のシートクッション、背もたれ、ヘッドレスト、アブダクタウェッジ及びその他のクッション、整形外科用ベッド及び病院用ベッド用のマットレスと枕、並びに例えば装具に支持された身体部分を保護しつつ支持するために装具に配置されるようなクッションに関する。本明細書においてクッションと理解されるのは、主として、少なくとも1つの身体部分の支持及び/又は配置に使用される、流体を充填したあらゆる要素である。
【0003】
多数の上記のクッションが先行技術から知られていて、流体を充填した容積、例えばエアクッションを装備している。流体は例えば気体、ゲル、特に粘弾性ゲル又は液体である。流体で満たされている容積は、主として弾性材料で製造された部材によって形成され、従来の方法で少なくとも2つのクッション部内に確立される。3次元の第1クッション部は例えばカップ又はドーム形状に形成されていて、少なくとも1つの面が開放された空隙を有し、第2クッション部は主として同様に弾性材料から成り、これが第1クッション部と結合され得ることによって、該容積が閉じられる。
【0004】
その際、3次元の第1クッション部はクッションの使用目的に応じて形成しておくことができる。そうした第1クッション部は通常浸漬法で製造され、その場合、製造するべき3次元の第1クッション部の内輪郭を形成する型が、液体材料又は少なくとも軟化した材料の入った槽に浸漬される。型が再び該材料から取り出された後に、該材料の層が型に付着して残って硬化する。所望の肉厚に応じて上記の工程段階が複数回繰り返される。
【0005】
しかし不利であるのは、この方法では、例えばクッションの異なる領域において異なる厚さの肉厚、特に精密に定められた肉厚が要求される場合に、最適な形状のクッションを製造することが不可能なことである。更に、先行技術から知られている浸漬法による製造では、製造された3次元の第1クッション部が比較的高い割合で欠陥を有し、その結果、一度硬化した第1クッション部が粗悪品としかみなされず、これをクッションの生産に使用することができない。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明にはそうしたクッションの製造方法を改善するという課題がある。
【0007】
本発明は上記の課題を、上述の方式の、以下の段階を有する方法によって解決する。
【0008】
a)主として弾性の少なくとも1つの第1材料から成る3次元の第1クッション部を、内型枠と外型枠を有する型枠において圧縮成形すること、
b)流体を充填した容積が形成されるように、第1クッション部を少なくとも1つの第2クッション部と結合すること。
【0009】
先行技術から知られているクッション用の流体を充填した容積を確立する方法に対する、本発明による方法の主たる相違点は、3次元の第1クッション部が圧縮成形法で製造されることにある。その目的で内型枠と外型枠を有する型枠が使用される。内型枠と外型枠の間で第1クッション部が製造され、その際、第1クッション部を製造する第1材料が内型枠と外型枠の間の間隙全体を埋める。この方法で、適切な内型枠と適切な外型枠を選択することによって、輪郭、材料の厚さ及び表面仕上げを定め、それぞれの要求に適合させて製造することが可能な、3次元の第1クッション部を製造することができる。それにより、粗悪品つまり更なる生産に使用することができないクッション部の生産が、大いに減少している。更なる利点は、内型枠及び/又は外型枠の選択と形状によって、輪郭及び/又は表面構造及び/又は肉厚の設定が、先行技術による方法において可能であるより精密に行われる可能性と、非常に優れた再現性である。1つの好ましい実施態様において、該少なくとも1つの第2クッション部も、上述の圧縮成形法によって製造される。特に好ましくは、該第1クッション部と該少なくとも1つの第2クッション部は唯一の型枠において同時に製造される。
【0010】
第1及び/又は第2材料は主として、シリコーン、ポリウレタン又はポリクロロプレンである。その際、例えば所望の気密性を達成するために、各材料が少なくとも1つの更なる加工段階を必要とする可能性がかなり高く、これは特にシリコーンの場合にしばしば必要である。
【0011】
1つの好ましい実施態様において、圧縮成形の工程段階a)には、以下の段階が含まれる。
【0012】
a1)原料を型枠に充填すること、
a2)内型枠と外型枠の間で原料を圧縮すること、
a3)内型枠と外型枠の間で原料の硬化又は加硫を行うことによって、第1クッション部を形成すること。
【0013】
上記部分段階の第1において、例えば被加工材の形状、ペレット、顆粒、圧延されたプレート又は粉末、又は他の半製品の形状の原料が、型枠に充填される。該原料は型枠に充填される1種以上の液体の形状でも存在し得る。該原料の対象となり得るのは第1材料であるが、必ずしも第1材料である必要はない。主として、充填された原料は型枠内部で加熱されることにより、溶解するか、又は少なくとも成形可能な程度に軟化する。これは例えば140℃~180℃の温度で行われる。室温で既に成形可能である原料が使用される場合、該加熱段階は不要である。
【0014】
好ましくは、原料は例えば上方に開放された容器である外型枠に充填され、その中で加熱される。その後に初めて、上記の好ましい実施態様においては内型枠が外型枠の中に挿入され、それによって所望の、第1弾性材料で埋めるべき間隙が形成される。これは工程段階a2)において行われ、その際、原料が加熱後に内型枠と外型枠の間で圧縮される。最後に、上記の内型枠と外型枠の位置において原料の硬化又は加硫が行われ、その結果、第1弾性材料が形成される。その代替として、型枠は原料の硬化又は加硫が完了する前に開かれ得る。そのためには当然、型枠によって定められた、製造するべきクッション部の形状が失われないように、材料が既に十分な剛性を有する必要がある。この硬化又は加硫が未だ完全には行われていない状態において、更なる効果を達成するために更なる添加剤を追加することができる。したがって、例えば、各部材の発泡部を製造するために発泡性添加剤が使用され得る。
【0015】
一定の材料に対しては、例えば原料の反応相手といった追加的要素を原料と共に型枠に入れることが必要、又は少なくとも有利である。その場合加熱時に例えば化学反応が起こり、それによって原料から第1弾性材料が形成される。
【0016】
先行技術による方法とは異なり、本明細書に記載の好ましい方法の実施態様においては、第1クッション部が完全に型枠の内部で形成され、型枠の内部で硬化又は加硫も行われることから、硬化又は加硫の間に、製造するべき第1クッション部の外形、材料組成又は他の特性に憂慮するべき影響が及び得る、あるいは損害が発生し得ることが、この方法で特に容易に回避され得る。
【0017】
本方法の1つの好ましい実施態様においては、圧縮成形によって製造された第1クッション部と第2クッション部の完全な硬化及び/又は加硫が行われている。両クッション部を結合するために両クッション部の間に原料が配置され、その後主として温度及び/又は圧力を上げた状態で、その硬化又は加硫が行われる。その際、既に予め硬化又は加硫が行われている両クッション部が、該原料によって互いに結合される。その際、結合に使用された原料は、クッション部も製造された同じ原料であり得るが、加硫及び/又は硬化可能な他の原料も使用され得る。
【0018】
それによって本方法が更に簡素化される。主として圧縮成形によって製造された第1クッション部は、硬化又は加硫の後に、型枠を開いた後にも型枠の中、主として外型枠の中にそのまま置かれる。それによって該クッション部は、取り出されて他の装置に移される、あるいは他の方法で加工又は処理される必要がない。この状態で第2クッション部が第1クッション部の表面において、両クッション部が互いに結合されるべき位置と方向に配置される。原料は好ましくは第1クッション部に配置され、例えば、第1クッション部が第2クッション部と結合されるべき結合位置上に置かれる。原料が展着可能な状態であれば、第1クッション部及び/又は第2クッション部上に塗布することもできる。その目的で原料は展着可能になるまで、主として液状になるまで、主として加熱される。
【0019】
両クッション部が間に原料が配置された状態で密着配置された後、これらは主として高温状態に置かれる、つまり加熱される。特に好ましくは圧力が両クッション部に加えられる。これは例えば、加熱された、又は加熱可能な押し型を両クッション部の上に押圧する、特にその上に降下させることで行われ得る。この状態で原料の硬化又は加硫が行われ、その結果、原料によって両クッション部が結合される。
【0020】
1つの好ましい実施態様において、第1クッション部と第2クッション部は互いに一体に形成されている、つまり唯一の部材に属する。これは特に好ましくは圧縮成形時に工程段階a)において製造される。両クッション部は例えばフィルムヒンジ、つまりフィルムヒンジの周囲の肉厚と比べて肉厚が薄くなっている領域を介して、互いに結合しておくことができる。第1クッション部と第2クッション部は互いに対して移動可能、例えば傾転可能に配置、形成されていて、工程段階b)において両クッション部を結合するために、必要とされる位置及び/又は方向に移動される。両クッション部が属する該部材は、両クッション部を、互いに結合される位置及び/又は方向に互いに向かって移動するために、例えば曲げられ、折り曲げられ、又は折り畳まれ得る。
【0021】
その代替として、該少なくとも1つの第2クッション部が該第1クッション部とは別の部材であれば有利であり得る。これは特に、該第2クッション部が単純な幾何学的形状と輪郭を有する場合、例えばプレート状に形成されている場合に有利である。
【0022】
有利に、第1クッション部及び/又は第2クッション部は複数の異なる材料で製造され、これらは主として各クッション部の製造時に材料結合的に互いに結合され、好ましくは共に加硫される。主として、材料の少なくとも1つは弾性材料、特に好ましくは全ての材料が弾性材料である。
【0023】
そうしたクッション部を製造する目的で、例えば、加硫又は硬化時に異なる材料に至る複数の原料が、圧縮成形のために共に型枠に装入され得る。これが均一に分散されて行われるのではなく、例えば空間的に分離されて行われれば、この方法で、第1材料が主に又は完全に第1素材であるセクションを第1クッション部に形成することができる一方で、第1材料が完全に又は主に第2素材である他の領域を製造することができる。当然、複数の異なる素材と材料を組み合わせることも可能である。材料が例えば化学的に相互作用する、架橋結合する、発泡する、又は加硫されることによって、材料が製造の間に、特に圧縮成形の間に材料結合的に互いに結合されることから、複数のクッション部を複雑に、したがって時間と費用をかけて互いに結合させる必要がなく、予め正確に決められた機械的特性、特に弾性特性を有する一体型の3次元の第1クッション部が形成される。第1クッション部と第2クッション部が両方とも圧縮成形法によって、特に一体に製造される場合、第2クッション部も、第1クッション部に関して本明細書に記載した利点を有し得る。
【0024】
クッションは3つ以上のクッション部で製造することもでき、その一部又は全てが本明細書に記載の圧縮成形法の1つによって製造される。複数又は全ての上記クッション部は同じ圧縮成形法によって製造され得る、あるいは各クッション部に対して別々の圧縮成形法が使用される。追加として、当然、圧縮成形法によって製造されない更なるクッション部が使用され得る。
【0025】
主として流体を充填した容積には、流体接続部を通して互いに接続されている複数のチャンバが含まれる。その代替又は追加として、該容積には他のチャンバと流体技術的に接続されていないチャンバが含まれる。これらの複数のチャンバは、予め例えば複数の形、凹部又は空洞の形状で第1クッション部に形成することができ、この場合は単にその開放面が第2クッション部によって閉じられる。当然、第2クッション部は3次元形状も有し得る。これはプレート状に形成されていてもよいが、プレート状に形成されている必要はない。特に、該少なくとも1つの第2クッション部も、本明細書に記載の方式の圧縮成形法によって製造される場合、輪郭、肉厚、材料組成、並びに/又は表面仕上げ及び/若しくは表面構造はほぼ自由に設定可能である。流体接続部は有利に各チャンバより横断面が小さい。この方法で、例えば、特別な弾性特性、したがって緩衝及び減衰特性を有するクッションが形成され得る。特に、流体接続部を通して互いに接続された複数のチャンバが該容積に含まれる場合には、チャンバの容積に対して流体接続部の横断面がより小さいことによって生じる流れ抵抗がチャンバ間の流体交換を妨害し困難にすることから、減衰効果が生じる。それによって、クッションの支持効果の向上が達成される。
【0026】
1つの好ましい実施態様において、流体を充填した容積に含まれる複数のチャンバは、その全てが互いに流体技術的に接続されているわけではない。その代わりに、該複数のチャンバは複数の、例えば2つの互いに分離した部分容積を形成し、この部分容積はそれぞれ複数の互いに接続されたチャンバから成る。該部分容積は互いに流体技術的に接続されてはいない。
【0027】
主として、該第1クッション部及び/又は該少なくとも1つの第2クッション部は肉厚の異なる領域、並びに/又は構造及び/若しくは粗さが異なる領域を備えた表面を有する。使用された、本明細書に記載の方式の圧縮成形法によって、上記のパラメータは基準値を満たすためにより精密に作成され得る。
【0028】
クッションの対象となるのが例えば車椅子用シートクッションである場合は、車椅子利用者の使用時に大抵着座されるクッションの中央領域の肉厚が、縁領域においてより肉厚が薄ければ有利である。例えばクッションに着座している車椅子利用者は、例えばテーブルからグラスを取るために側方に体を曲げる場合、体重を側方に移動させる。この場合、例えば車椅子利用者を安定させて支えるための方法として、第1弾性材料の肉厚が中央領域より側面領域においてより厚ければ有利である。更に、肉厚がより厚くされたことによってクッションの耐久性が向上し得る。したがって、主としてより強く荷重がかけられている領域において肉厚がより厚くされている。肉厚は単に内型枠と外型枠の間の間隔に依存することから、内型枠と外型枠の巧みな選択によって自由に選択され、調整され得る。例えば、クッションの対象となるのが整形外科用ベッド又は病院用ベッド用のマットレス又は枕である場合、同じ原理が適用される。この場合においても、マットレス又はベッドに横たわる利用者を安定させて、例えばベッドから転がり出ることを防ぐために、肉厚のより厚い領域を備えることが有利である。肉厚をより厚くしておくことは例えば、マットレスを移動、例えば回転させるために握られるマットレスの領域においても、有意義である。その際、非常に小さい領域において発生する引張力がそのように簡単に考慮され得る。
【0029】
粗さの異なる外表面は同様に有利であり得る。更に、流体を充填した容積は、視覚的に魅了する全体像を提供し、利用者に対する境界面を形成するために、カバーで覆っておくことができる。これは、例えば洗浄、剪断力の伝達、及びクッションと流体を充填した容積への荷重伝達に関わる。流体を充填した容積の外側に配置されるべき、例えば金属被覆といった他の被覆も、表面がこの領域において一定の粗さを有する場合は、より容易に配置され、蒸着され得る。外型枠の内輪郭を相応に処理することで、外側の粗さに影響を及ぼすことができる。
【0030】
有利に、内型枠及び/又は外型枠は、圧縮成形時に第1部材に移動される被覆を備え、その際、該被覆は主として型枠内に挿入、並びに/又は内型枠及び/若しくは外型枠上に塗布されている。該被覆は例えば噴霧又は刷毛塗りされ得る、あるいは各型枠に被覆材料が塗り付けられる。この方法で、流体を充填した容積が、その第1クッション部に既に被覆が備わっている状態で確立され得る。完成したクッション部又は流体を充填した容積の後からの被覆は、それによって不必要になる。この方法で、製造にかかる労力を減らし、同時に製造費用を削減することができる。特に、該少なくとも1つの第2クッション部も本明細書に記載の圧縮成形法によって製造される場合は、その代替又は追加として該少なくとも1つの第2クッション部にも被覆が備わっている。
【0031】
1つの好ましい実施態様において、該少なくとも1つの第1材料の対象となるのは発泡材料である。異なる材料が第1弾性材料として使用される場合、これらは全て発泡材料であり得、その際、異なる発泡材料も使用され得る。当然、発泡材料を非発泡材料と組み合わせることもできる。この方法で、異なる位置における機械的安定性、弾性、密度、したがって流体を充填した容積の重量を、正確に調整することができ、それによって、例えば所望の、そして選択された使用に対して理想的な機械的特性が生み出され得る。
【0032】
本方法の1つの好ましい実施態様において、第1クッション部の圧縮成形時に少なくとも1つのセンサ及び/又は少なくとも1つのアクチュエータ及び/又は少なくとも1つの機能要素が、該第1クッション部内に装入及び/又は該第1クッション部表面に装着される。その際、機能要素とは例えば、バルブ、電気伝導体、固定要素又は形状結合要素である。該対象物は、クッション部内に装入される場合、圧縮成形時に内型枠と外型枠の間に配置される。これは、原料が型枠に充填された後、又は既にその前に行われ得る。センサ又はアクチュエータは、単に第1クッション部表面に装着される場合には、例えば内型枠及び/又は外型枠の凹部に挿入されることによって、圧縮成形の際に、第1クッション部を形成する第1材料が、硬化又は加硫時に相応の要素、つまりセンサ及び/又はアクチュエータと結合される。該少なくとも1つの第2クッション部も本明細書に記載の圧縮成形法によって製造される場合は、該少なくとも1つの第2クッション部も少なくとも1つのセンサ、少なくとも1つのアクチュエータ及び/又は少なくとも1つの機能要素を、特に容易に装備することができる。当然、これらの対象物は他の方法でも第1クッション部及び/又は第2クッション部の中、及び/又は表面に配置され得る。
【0033】
可能なセンサは例えば圧力センサ又は湿度センサであり、これが、例えば荷重状態においてクッションに関する測定値を収集し、評価装置に伝達する。その目的で、信号伝達用の電気伝導体を同様に各クッション部に埋設しておくことができる。その代替又は追加として、各クッション部にはめ込まれたセンサと電子式評価装置との間の無線通信も可能である。アクチュエータは例えばポンプ及び/又は能動制御バルブであり得、これは特に、流体を充填した容積に複数のチャンバが含まれ、そこに流体を注入、又はそこから注出し得る場合に有利である。この方法で例えば、例えば上に載っている利用者の移動を、そのために看護職員又は補助職員を必要とせずに行うことができるマットレス又はクッションが製造され得る。
【0034】
主として、圧縮成形時に導電性材料から成る要素、例えばグリッドを、該少なくとも1つの弾性材料に装入する、又は該少なくとも1つの第1弾性材料に導電性を付与する。その代替又は追加として該第1弾性材料の対象を予め導電性材料とする。
【0035】
更に、本発明は上記の課題を、本明細書に記載の方法に従って製造された、又は製造可能な整形外科技術的装置用のクッションによって、及び少なくとも1つのこのようなクッションを備えた整形外科技術的装置によって解決する。
【0036】
以下に、添付の図面を用いて本発明のいくつかの実施例がより詳細に解説される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】クッションの上面及び断面を示す3次元概略図である。
【
図4】更なるクッションの断面図とその部分拡大図である。
【
図5】圧縮成形時の工程段階の1つを示す図である。
【
図6】圧縮成形時の工程段階の1つを示す図である。
【
図7】圧縮成形時の工程段階の1つを示す図である。
【
図8】一体型クッション部の場合の段階の1つを示す図である。
【
図9】一体型クッション部の場合の段階の1つを示す図である。
【
図10】一体型クッション部の場合の段階の1つを示す図である。
【
図11】発泡材料の場合の段階の1つを示す図である。
【
図12】発泡材料の場合の段階の1つを示す図である。
【
図13】本発明の異なる実施例によるクッションの1つの断面図である。
【
図14】本発明の異なる実施例によるクッションの1つの断面図である。
【
図15】本発明の異なる実施例によるクッションの1つの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は本発明の1つの実施例による方法に従って製造されたクッション1を示す。
図1の左側には3次元図、右側にはX‐X線に沿った断面図が示されている。
【0039】
複数の隆起部4を備え、導管6を有する第1クッション部2が認識される。
図1の右側の断面図において、第1クッション部2に含まれる隆起部4が、
図1においては下方に開放されていて、そこで第2クッション部8によって閉鎖されることが認識され得る。第1クッション部2は、隆起部4の内部空間が流体、例えば気体又は液体で満たされた容積を形成するように、第2クッション部8と結合されている。導管6は、例えば流体を該容積内へ注入すること、あるいは該容積から排出することによって、該容積内部の流体量の調整を可能にする。
【0040】
図1の3次元図において、個々の隆起部4の間に流体接続部10が存在し、これを通して個々の隆起部4とその下に含まれる容積が互いに流体技術的に接続されていることが認識され得る。
図1に示されたクッションが例えば車椅子用シートクッションとして使用される場合、クッションに着座する利用者の体重によってかけられる荷重の大きさは、全ての隆起部4に対して等しいわけではない。その場合、流体は流体接続部10を通して、かかっている荷重がより大きい隆起部4から荷重がより僅かな隆起部へと移動され得る。
【0041】
図2は、第1クッション部2を備えたクッション1の他の実施態様を示し、該クッション部は2つの隆起部4を有し、その下面は第2クッション部8で閉鎖されている。導管6はこの場合、特に
図2のクッション1の断面を示す
図3から看取され得るように、第2クッション部8に組み込まれている。
【0042】
図3は、下面が第2クッション部8によって閉鎖されている、上記の両隆起部4を示す。第2クッション部8に組み込まれた状態で、一方には導管6が位置し、他方には、両隆起部4とその下に含まれる容積を互いに接続する流体接続部10が位置する。したがって、両者が共同で流体を充填した容積を形成し、その流体の充填には、導管6を介して影響を及ぼすことができる。
【0043】
更に
図3において、隆起部4の壁12の肉厚が一定ではなく、隆起部4の半分の高さの領域の辺りにおいて特に肉厚の厚いことが認識される。先行技術の従来の方法では達成不能な、又は所望の精密さでは達成不能な上記の肉厚の変化が、圧縮成形法において使用された型枠の内型枠と外型枠の巧みな選択によって達成され得る。
【0044】
図4はクッション1の更なる実施態様の断面を示す。その際、
図4の右側の図には
図4の左側の図の右側部分の部分拡大図が示されている。
【0045】
図4においてもクッション1は2つの隆起部4を有し、その壁12の肉厚が変化する。上記の両隆起部4を有する第1クッション部2の下面は、第2クッション部8によって閉鎖されている。その中に再び導管6、及び両隆起部の下方に含まれる両容積を互いに流体技術的に接続する流体接続部10が位置する。ここで追加として、第2クッション部8はその上面に被覆14を備え、これは例えば予め圧縮成形工程時に製造され得る。被覆14の対象となるのは例えば金属薄片又はネットであり、これは圧縮成形工程時に使用された型枠の内型枠及び/又は外型枠内に挿入され、この方法で材料結合的に第2クッション部8の第2材料と結合される。
【0046】
更に、
図4の左の図において、左に示された隆起部4の内部に補強要素16が存在することを認識することができ、これも同様に予め圧縮成形工程の間に隆起部4の第1材料に固定された。図示された実施例において取り扱われるのは、機械的耐荷重性を向上させる補強要素である。代替実施態様は例えばセンサ、バルブ、供給又は排出管、及び他の機能要素であり得る。
【0047】
図5は圧縮成形時の第1の工程段階を示す。内型枠18と外型枠20が認識される。外型枠20は4つの凹部22を有し、この中に、圧縮されるべき原料24がそれぞれ位置する。内型枠18は、凹部22に対応するように形成されている4つの凸部26を有し、これらは、内型枠18が外型枠20に挿入されると、凹部22に入り込む。
【0048】
この状況は
図6に示されている。完全に外型枠20の中に入っている内型枠18が認識される。
【0049】
図7は内型枠18が外型枠20から取り出された後の状況を示す。第1クッション部2が圧縮成形時に内型枠18と外型枠20の間で製造された。
【0050】
図8は第1クッション部2と第2クッション部8が互いに一体に形成されている部材を示す。両クッション部が圧縮成形の間に形成された。図示された部材はそれぞれ4つの凹部22を備えた列を2つ有し、その内、それぞれ左の2つの凹部22は第2クッション部8に、それぞれ右の2つの凹部22は第1クッション部2に属する。
【0051】
図9においては、第1クッション部2と第2クッション部4の間にフィルムヒンジ28が配置されていることによって、第1クッション部2と第2クッション部4が互いに対して傾転され得ることが示されている。
【0052】
図10においては、第1クッション部2が第2クッション部4に対して傾転されたことによって、両クッション部が上下に重なり合い、互いに結合され得る状態に至っている。この方法で、流体を充填した容積が形成される。
【0053】
図11と
図12は圧縮成形工程時の2つの異なる段階を示す断面図である。両図において、ここに示された図においては上から外型枠20に挿入された内型枠18が認識される。その間に、
図11においては原料24が位置する。型枠は閉じられていて、つまり
図6に示された状態になっている。
【0054】
原料24は、ここに示した図においては発泡材料であり、したがって、製造するべき第1クッション部2の材料が占める容積は、原料の容積と比べて明確に増大する。圧縮成形工程の間の発泡の進行を制御されて再現性のあるものにするために、内型枠18と外型枠20は、
図11に示されている、型枠内に自由容積が全く、又は非常に僅かにしか存在しない位置に配置される。
図12において、原料24が発泡して第1クッション部2の完成した材料になる間に、内型枠18が矢印32に沿って移動されることが示されている。それによって、容積増大の速度、適用圧力、及び最終容積が調整され得る。
【0055】
図13と
図14は3つのクッション部で組み立てられたクッションの断面を示す。第1クッション部2は、既述の、下面が第2クッション部8によって仕切られる隆起部4を示している。
図13においては、この第2クッション部8も同様にドーム状に形成されていて、第1クッション部2の隆起部4の中に突出する。
図13と
図14において、それぞれ第2クッション部8の下方に第3クッション部30が配置されている。それによって、第1クッション部2と第2クッション部8の間のチャンバの他に、更なるチャンバが第2クッション部8と第3クッション部30の間に形成される。両方のチャンバが
図13においては隆起部4内に配置されている。この実施態様は、第1クッション部2が損傷して、もはや含有流体に対して流体密でない場合に、特に有利である。この場合は、第2クッション部8と第3クッション部30の間のチャンバが該機能を、少なくとも機能が弱まった状態で、又は部分的に引き受ける。
【0056】
主として、第1クッション部2と第2クッション部8の間のチャンバは互いに流体技術的に接続されていて、1つの部分容積を形成する。第2クッション部8と第3クッション部30の間のチャンバも流体技術的に接続されていて、更なる1つの部分容積を形成する。しかし好ましくは、そのように形成された両部分容積の間に流体接続は存在しない。
【0057】
図14において断面が示されているクッションの実施形態と、
図13に示された実施形態との相違は、単に、第2クッション部8と第3クッション部30の間のチャンバが隆起部4の内部ではなく、その下に配置されているという点のみである。
【0058】
図15は第3クッション部のない実施態様を示す。第1クッション部2の個々の隆起部4の間に、第1クッション部2と第2クッション部8の間に形成される更なるチャンバが位置する。これらは互いの間で接続、及び/又は隆起部4の下方のチャンバと接続しておくことができる。
【符号の説明】
【0059】
1 クッション
2 第1クッション部
4 隆起部
6 導管
8 第2クッション部
10 流体接続部
12 壁
14 被覆
16 補強要素
18 内型枠
20 外型枠
22 凹部
24 原料
26 凸部
28 フィルムヒンジ
30 第3クッション部
32 矢印
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 整形外科技術的装置用の、流体を充填した少なくとも1つの容積を有するクッションの製造方法において、前記製造方法が以下の段階、
a)主として弾性の少なくとも1つの第1材料から成る3次元の第1クッション部を、内型枠と外型枠を有する型枠において圧縮成形することと、
b)前記流体を充填した容積が形成されるように、前記第1クッション部を少なくとも1つの第2クッション部と結合することと
を有する、クッションの製造方法。
[2] 前記段階a)が以下の段階、
a1)原料を前記型枠に充填することと、
a2)内型枠と外型枠の間で前記原料を圧縮することと、
a3)内型枠と外型枠の間で前記原料の硬化又は加硫を行うことによって、前記第1クッション部を形成することと
を含むことを特徴とする、[1]に記載の方法。
[3] 前記第1クッション部と前記第2クッション部が互いに一体に形成されていて、前記圧縮成形時に前記段階a)において製造されることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記第2クッション部が前記第1クッション部とは別の部材であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の方法。
[5] 前記第1クッション部及び/又は前記第2クッション部が複数の異なる材料で製造され、これらが主として前記各クッション部の製造時に材料結合的に互いに結合され、特に好ましくは共に加硫されることを特徴とする、[1]から[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6] 前記流体を充填した容積に、流体接続部を通して互いに接続されている複数のチャンバが含まれることを特徴とする、[1]から[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7] 前記第1クッション部及び/又は前記少なくとも1つの第2クッション部が肉厚の異なる領域、並びに/又は構造及び/若しくは粗さが異なる領域を備えた表面を有することを特徴とする、[1]から[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8] 前記内型枠及び/又は前記外型枠が、前記圧縮成形時に前記第1クッション部に移動される被覆を備えていて、その際、前記被覆が主として前記型枠内に挿入、並びに/又は前記内型枠及び/若しくは前記外型枠上に塗布されていることを特徴とする、[1]から[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9] 前記少なくとも1つの第1材料が発泡材料であることを特徴とする、[1]から[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10] 前記第1クッション部の前記圧縮成形時に少なくとも1つのセンサ及び/又は少なくとも1つのアクチュエータ及び/又は少なくとも1つの機能要素が、前記第1クッション部内に装入及び/又は前記第1クッション部表面に装着されることを特徴とする、[1]から[9]のいずれか一項に記載の方法。
[11] 前記圧縮成形時に導電性材料から成る要素が前記少なくとも1つの第1弾性材料に装入される、又は前記少なくとも1つの第1弾性材料が導電性を有することを特徴とする、[1]から[10]のいずれか一項に記載の方法。
[12] [1]から[11]のいずれか一項に記載の方法に従って製造された、又は製造可能な、整形外科技術的装置用のクッション。