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特許7554212レーザ加工装置及び対応するレーザ加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及び対応するレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/21 20140101AFI20240911BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20240911BHJP
   B23K 26/34 20140101ALI20240911BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240911BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240911BHJP
【FI】
B23K26/21 Z
B23K26/064 K
B23K26/34
B33Y30/00
B33Y10/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021575463
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 IB2020055648
(87)【国際公開番号】W WO2020254982
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】102019000009366
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】521170213
【氏名又は名称】プリマ インドゥストリー ソシエタ ぺル アチオニ
【氏名又は名称原語表記】PRIMA INDUSTRIE Spa
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】カレファティ,パオロ
(72)【発明者】
【氏名】パトリミア,ガエターノ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルジッリート,ジュゼッペ
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0229332(US,A1)
【文献】特許第5627760(JP,B2)
【文献】特開2015-196164(JP,A)
【文献】特開2017-209689(JP,A)
【文献】特開平06-190582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/21
B23K 26/064
B23K 26/34
B33Y 30/00
B33Y 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工装置(10)であって、
少なくとも2つのレーザ光源(12,14)であって、互いに異なる波長を有するそれぞれのレーザビームを供給するように構成された少なくとも2つのレーザ光源(12,14)と、
レーザヘッド(20)であって、1組のレーザ加工動作のタイプから選択可能である少なくとも1つのレーザ加工動作のタイプを実行するように構成可能であるレーザ工作機械(90)のエンドツールとして動作可能であるレーザヘッド(20)と、
前記少なくとも2つのレーザ光源(12,14)の1つのレーザ光源によって供給されるレーザビームを指向させるために1組の選択可能な光学経路を提供する1組の配向可能な光学部品(16)と、
前記少なくとも2つのレーザ光源(12,14)、前記1組の配向可能な光学部品(16)、及び前記レーザヘッド(20)に連結されるとともに、前記1組のレーザ加工動作のタイプから選択されたレーザ加工動作のタイプに従って、ワーク表面(110)の領域にそれぞれの加工動作のタイプに関連するレーザビームを供給して指向させるように、選択されたレーザ加工動作のタイプを実行するように、前記少なくとも2つのレーザ光源(12,14)、前記1組の配向可能な光学部品(16)、及び前記レーザヘッド(20)を制御するように構成された制御ユニット(30)と、を有する前記レーザ加工装置(10)において、
前記レーザヘッド(20)は、少なくとも1つの加工材料をワーク表面(110)の前記領域に指向させるように構成された1組のノズル(40,42,44,46)を有し、前記1組のノズル(40,42,44,46)は、少なくとも1つの材料の粉末、好ましくは金属粉末の噴射を指向させるように構成される少なくとも1つのノズル(40)を有するとともに、
a)ワーク表面の前記領域に金属ワイヤ、好ましくはレーザ溶接用の金属ワイヤを指向させるように構成された第1のノズル(42)と、
b)ワーク表面の前記領域にアシストガス、好ましくはレーザ溶接用のアシストガスを指向させるように構成された第2のノズル(46)と、
の少なくとも1つを有し、
前記少なくとも1つの制御ユニット(30)は、前記1組のノズル(40,42,44,46)に連結されるとともに、ワーク表面の前記領域に選択されたレーザ加工動作のタイプに関連した前記レーザビーム(L)の指向と同時に、ノズルがワーク表面(110)の前記領域にそれぞれの加工材料を指向させるように前記少なくとも1つのノズルを制御するように、前記1組のレーザ加工動作のタイプのうち関連して選択されたレーザ加工動作のタイプに従って、前記1組のノズル(40,42,44,46)の少なくとも1つのノズルを制御するように構成される、
レーザ加工装置(10)。
【請求項2】
前記1組の選択可能である光学経路は、第1のレーザ光源(12)から前記レーザヘッド(20)に第1のレーザビーム(L1)を供給するための少なくとも2つの光学経路(120,122)を有する、及び/又は、
前記1組のレーザ加工動作のタイプにおける少なくとも2つの加工動作、好ましくは2つの非同時加工動作は、前記1組のノズル(40,42,44,46)の少なくとも1つのそれぞれのノズルに関連付けられる、
請求項1に記載のレーザ加工装置(10)。
【請求項3】
前記第1のレーザ光源(12)から前記レーザヘッド(20)に前記第1のレーザビーム(L1)を供給するための前記少なくとも2つの光学経路(120,122)の少なくとも1つの少なくとも一部分(120)は、一続きのマルチクラッド光ファイバ(120)を有し、一続きのマルチクラッド光ファイバは、導光コア(12)の周りに導光クラッド(120b)の少なくとも1つの更なる層によって囲まれる導光コア(120a)を有し、前記第1のレーザ光源(12)から前記レーザヘッド(20)に前記第1のレーザビーム(L1)を供給するための前記少なくとも2つの光学経路(120,122)の前記少なくとも1つは、前記第1のレーザビーム(L1)を、前記マルチクラッド光ファイバ(120)の前記コア(120a)に又は前記導光クラッド(120b)の少なくとも1つの更なる層に選択的に指向させるように構成される光スイッチ(128)を有する、
請求項2に記載のレーザ加工装置(10)。
【請求項4】
レーザビーム(L)のモードを変化させるように構成された、すなわちワーク表面の前記領域に指向されたレーザビームのパワー分布を選択的に変化させるように構成された少なくとも1つのビーム成形回折レンズ(24)を有する、
請求項1に記載のレーザ加工装置(10)。
【請求項5】
互いに異なる前記少なくとも2つのレーザ光源(12,14)は、
1070nmの第1の波長を有する第1のレーザビーム(L1)を供給するように構成された第1のレーザ光源(12)と、
532nmの第2の波長を有する第2のレーザビームを供給するように構成された第2のレーザ光源(14)とを有する、
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のレーザ加工装置(10)。
【請求項6】
前記レーザヘッド(20)の前記1組のノズル(40,42,44,46)の少なくとも1つのノズルは、突出位置と後退位置との間で移動可能であり、
前記レーザヘッド(20)は、
i)前記ノズルを前記後退位置に収容するように構成された前記ノズル(40,42,44,46)用の窪んだキャビティ(50a)と、
ii)前記1組のノズル(40,42,44,46)に連結された1組のアクチュエータ(470,472,474,476)とを有し、
前記制御ユニット(30)は、前記1組のアクチュエータ(470,472,474,476)に連結されるとともに、選択可能である1組のレーザ加工動作のタイプから選択されたレーザ加工動作のタイプに従って、前記ノズルを前記突出位置と前記後退位置との間で移動させるために前記1組のアクチュエータ(470,472,474,476)を制御するように構成される、
請求項1に記載のレーザ加工装置(10)。
【請求項7】
前記1組のノズル(40,42,44,46)は、それ自体の関節ジョイント(41)の周りに関節連結可能である少なくとも1つのノズル(40)と、それ自体の前記関節ジョイント(41)と前記制御ユニット(30)とに連結された電気ケーブルとを有し、前記制御ユニット(30)は、前記少なくとも1つの関節連結されたノズル(40)に、前記ノズル(40)が前記突出位置にあるときに第1の配向(β)をとるように、又は前記ノズル(40)が前記後退位置にあるときに第2の配向をとるようにコマンドを発するように構成され、
前記第1の配向(β)では、前記ノズル(40)は、前記レーザビームがワーク表面(110)の前記領域に向かって指向される光軸(AO)とある角度を形成し、
前記第2の配向では、前記ノズル(40)は、前記光軸(AO)に対して平行である、
請求項6に記載のレーザ加工装置(10)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの関節連結されたノズル(40)は、前記関節ジョイント(41)に形状記憶材料を有し、前記形状記憶材料は、前記電気ケーブルを介して前記関節ジョイントに適用される電流に応じて、第1の形状(β)又は第2の形状を選択的にとるように構成される、
請求項7に記載のレーザ加工装置(10)。
【請求項9】
前記1組のノズル(40,42,44,46)は、少なくとも1つの材料の粉末、好ましくは金属粉末の噴射を指向させるように構成された少なくとも2つのノズル(40,44)を有し、前記少なくとも2つのノズルは、互いに対向して設定され、少なくとも1つの加工材料を、均一分布を有するようにワーク表面(110)の前記領域に指向させるように前記制御ユニット(30)によって協働して制御される、
請求項1に記載のレーザ加工装置(10)。
【請求項10】
前記第1のノズル(42)、前記第2のノズル(46)、及び前記少なくとも2つのノズル(40,44)は、互いに対向して設定され、前記レーザヘッド(20)を出るレーザビーム(LS)の経路を妨害することなく、前記1組のノズル(40,42,44,46)のノズルの空間における妨害を低減するように、レーザビーム(LS)の出力穴(70)に対応する中心を有する正菱形の頂点を形成するように、レーザヘッド(20)の支持構造(50)に組み立てられる、
請求項9に記載のレーザ加工装置(10)。
【請求項11】
アシストガス、好ましくはレーザ切断用のアシストガスを供給する装置を有し、前記供給装置は、前記アシストガスが前記レーザビーム(LS)の出力穴(70)から出てくるように前記レーザヘッド(20)の端末部分(50b)に連結され、前記出力穴(70)は、前記レーザヘッド(20)の前記端末部分(50b)に配置され、
前記少なくとも1つの制御ユニット(30)は、前記アシストガスを供給するように構成された前記供給装置に連結され、前記制御ユニット(30)は、前記1組のレーザ加工動作のタイプのうち関連して選択されたレーザ加工動作のタイプに従って前記供給装置を制御するように構成される、
請求項1から請求項10の何れか1項に記載のレーザ加工装置(10)。
【請求項12】
前記1組のレーザ加工動作のタイプは、少なくとも2つのレーザ加工動作のタイプ、好ましくは2つの非同時加工動作のタイプを有し、粉末の形をした第1の加工材料のタイプを用いた直接堆積付加製造と、以下の少なくとも1つ、すなわち、
直接堆積付加製造であって、第1の加工材料のタイプとは異なる粉末の形をした第2の加工材料のタイプを使用する直接堆積付加製造、
アブレーション、
ワイヤ溶接、
被覆加工、
熱処理、及び
レーザ切断の少なくとも1つとを有する、
請求項1から請求項11の何れか1項に記載のレーザ加工装置(10)。
【請求項13】
共通の一続きの前記選択可能な光学経路(16)に沿って設定される二色性光学素子(180)及び光センサ(182)、好ましくはカメラをさらに有し、
i)前記二色性光学素子(180)は、前記共通の一続きの前記選択可能な光学経路(16)内を伝搬する前記レーザビーム(L)の一部分を前記光センサ(182)に向かって偏向するように構成され、
ii)前記光センサ(182)は、前記二色性光学素子(180)によって偏向されたレーザビームの前記部分を検出するように、且つ前記レーザビームの前記部分のパラメータの測定値を表す信号(V)を前記制御ユニット(30)に供給するように構成され、
iii)前記制御ユニット(30)は、前記光センサ(182)に連結されるとともに、前記光センサ(182)によって供給される前記測定値の信号(V)に応じて前記レーザ光源及び/又は前記配向可能な光学部品(16)を制御するように構成される、
請求項1から請求項12の何れか1項に記載のレーザ加工装置(10)。
【請求項14】
少なくとも1つの材料の粉末の噴射を指向させるように構成された少なくとも1つのノズル(40)は、
回転リングに枢着された1組のブレードを有する虹彩絞り(480)と、
前記回転リングに連結され、前記虹彩絞り(480)の前記リングのナットを回転させるように構成された電動アクチュエータと、を備え、
前記制御ユニット(30)は、前記回転リングに次に連結される前記電動アクチュエータに連結され、前記粉末の噴射の放射方向に直交する方向における前記少なくとも1つのノズル(40)の開口断面の領域を変化させて前記粉末の噴射の流量を変化させるように前記電動アクチュエータを制御するように構成される、
請求項1から請求項13の何れか1項に記載のレーザ加工装置(10)。
【請求項15】
レーザ加工方法であって、
請求項1から請求項14の何れか1項に記載のレーザ加工装置(10)を準備し、
前記1組のノズル(40,42,44,46)は、少なくとも1つの加工材料をワーク表面(110)の前記領域に指向させるように前記1組のノズル(40,42,44,46)を制御し、ワーク表面の前記領域に選択されたレーザ加工動作のタイプに関連付けられた前記レーザビーム(L)の指向と同時に、ワーク表面(110)の前記領域にそれぞれの加工材料を指向させるために、前記制御ユニット(30)によって、前記1組のレーザ加工動作のタイプのうち関連して選択されたレーザ加工動作のタイプに従って、前記1組のノズル(40,42,44,46)の少なくとも1つのノズルを選択する、
レーザ加工方法。
【請求項16】
前記制御ユニット(30)に、前記1組のレーザ加工動作のタイプから選択可能である各レーザ加工動作のタイプに1組のパラメータを関連付ける参照テーブルを提供し、前記1組のパラメータは、
前記少なくとも2つのレーザ光源(12,14)であって、互いに異なる波長を有するそれぞれのレーザビームを供給するように構成された前記少なくとも2つのレーザ光源(12,14)の少なくとも1つのレーザ光源のパワー供給状態と、
前記1組の配向可能な光学部品(16)の少なくとも1つの配向可能な光学部品の配向と、
前記1組のノズル(40,42,44,46)の少なくとも1つのノズルの放射を作動するためのパラメータとを有する、
請求項15に記載のレーザ加工方法。
【請求項17】
前記制御ユニット(30)に、前記1組のレーザ加工動作のタイプから選択可能である各レーザ加工動作のタイプに少なくとも1つの更なるパラメータを関連付ける参照テーブルを提供し、前記更なるパラメータは、
前記1組のノズル(40,42,44,46)の1つ又は複数のノズルの格納と突出との間の位置と、
前記1組のノズル(40,42,44,46)の1つ又は複数のノズルの配向(β)とである、
請求項15又は請求項16に記載のレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、レーザ加工装置に関し、レーザ加工装置は、互いに異なる波長を有するそれぞれのレーザビームを提供するように構成された互いに異なる1組の少なくとも2つのレーザ光源と、1組のレーザ加工動作のタイプから選択可能である少なくとも1つのレーザ加工動作のタイプを実行するように構成可能であるレーザ工作機械のエンドツールとして動作可能であるレーザヘッドであって、前記1組の少なくとも2つのレーザ光源のそれぞれのレーザ光源によって供給されるレーザビームを指向させるために1組の選択可能な光学経路を提供するように1組の配向可能な光学部品を有する前記レーザヘッドと、前記1組の少なくとも2つのレーザ光源、前記1組の配向可能な光学部品、及び前記レーザヘッドに連結される制御ユニットであって、前記レーザヘッドが、1組のレーザ加工動作のタイプから選択可能である少なくとも1つのレーザ加工動作のタイプを実行するように構成可能である制御ユニットとを有し、前記制御ユニットは、前記1組のレーザ加工動作のタイプから選択されたレーザ加工動作のタイプに従って、選択されたレーザ加工動作のタイプを実行するように、すなわちワーク表面の領域にそれぞれの加工動作のタイプに関連する前記レーザビームを供給して指向させるように、前記少なくとも2つのレーザ光源、前記1組の配向可能な光学部品、及び前記レーザヘッドを制御するように構成される。
【0002】
1つ又は複数の実施形態は、前記レーザ加工装置を制御するための方法、及び、例えば工作機械又は擬人化ロボットに関連した、前記装置の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
レーザ加工の分野では、電磁放射を伝達するための複合システムが存在し、複合システムは、「レーザヘッド」と呼ばれてレーザ工作機械のエンドツールとして動作可能であり、各ヘッドは、同時に限られた数、通常は1つ又は2つのレーザ加工動作のタイプを実行するように特化されている。1つの同じレーザ工作機械を用いて異なる加工動作のタイプを行うことは、ある加工動作のタイプに特化されたレーザヘッドを、実行される異なる加工動作のタイプに特化された別のレーザヘッドと毎回交換することによって可能である。しかしながら、この交換は、生産の中断を犠牲にして行われ、潜在的に生産休止時間の間隔が非常に長くなることを引き起こす。実際、1つのタイプの加工動作用のヘッドを異なるタイプの加工動作用の別のヘッドと交換するたびに、ヘッドのセンサコーンも交換し、新しいツールが設置された状態で適切に動作するように前記機械を再調整することが必要になることがある。
【0004】
レーザヘッドに備えられるツールがレーザビームのみである場合、第1の放射光源、特にレーザ光源によって加工ビームの形をして生成される第1の加工ツールと、異なる性質又は異なる起源、特に第1の加工ツールの放射光源とは異なる放射光源の少なくとも1つの他の加工ツールとを備えた装置であって、異なる加工ツールが材料を加工するように被加工物に接触して配置され、被加工物の機械加工が各時点においてただ1つの加工ツールを介して実行することができる装置が知られている。前記のようなタイプのレーザ加工装置は、米国特許出願公開第2005/0205537A1号文献に記載されている。
【0005】
ある視点から類似する解決策は、米国特許第9180551B2号文献から知られており、前記文献は、レーザアブレーションを介してレーザ加工を行うためのレーザ工作機械を記載し、レーザ工作機械は、レーザビームの放射用に予め配置されたデュアル(dual)可動レーザヘッドを有し、前記デュアルレーザヘッドは、各レーザ光源が異なるタイプのレーザビームを放射する2つ又はそれ以上のレーザ光源を組み込み、前記デュアルレーザヘッドに組み込まれた2つ又はそれ以上のレーザ光源は、被加工物の同時加工を実行することができない。
【0006】
しかしながら、前記解決策は、加工を実行するためのレーザビームのみを使用するレーザ加工動作の場合にのみ、生産休止時間の低減を促進することができる。幾つかの例を挙げるためだけの指向性エネルギ堆積(direct-energy-deposition)(DED)付加製造(additive manufacturing)、被覆加工(cladding)、又は(ワイヤ又は粉末)溶接など、ある特定のレーザ加工動作では、ノズルは更に、レーザビームと共にワーク表面に指向される材料、例えば付加製造の場合におけるワイヤ又は粉末溶接の場合の糸状金属材料を供給するために使用される。
【0007】
従って、レーザビームだけでなく他のツール、特に材料をワーク表面に指向させるためのノズルの使用を含む1組の加工動作を有するレーザ加工装置を提供するという問題が存在する。
【0008】
DED付加製造タイプのレーザ加工装置の分野では、互いに交換して又は並行に動作し、各ヘッドがノズルとそれに対応するレーザとを備えた2つのヘッドを使用する解決策が存在し、それは、特性を変化させたDEDタイプの加工動作を促進することができる。しかしながら、この解決策は、得られる物が並んで互いに重ねて配置されて異なる厚さを有する痕跡を提示するという欠点が存在し、それは、多孔性が得られる物の隙間に、例えば異なる厚さの間の差によって与えられる大きさの隙間に残りやすいので、製造される物の多孔性の増加を引き起こす。
【0009】
さらに、複数のレーザヘッドの使用はまた、生産ラインに必要な投資における結果として生じる増加を伴ってコストを増加させ、結果的に物の製造コストを増加させる。
【0010】
さらに、異なる特性及び異なるパワーを有するレーザビームがレーザ加工ツールとして使用される場合、良好な光学性能を維持するという問題が生じる。例えば1070nmの波長用のコーティングを備えた光学システムが、異なる波長のレーザを使用して加工中に使用される場合、加工品質が要求に適合しないかもしれない。
【0011】
また、従来の付加製造装置は、ノズルが設けられたフレームを使用する場合があり、ワーク表面にレーザビームを指向させるためのヘッドの操作の自由を制限する場合がある。さらに、このタイプの移動の自由の制限は、例えばフレームの妨害のため、一部の部品のさらに問題のある製造を引き起こし得る。
【0012】
例えば前に記載された種々の文献によって見られるように、この分野における広大な活動にもかかわらず、更なる改善された解決策が望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本明細書に記載される実施形態の目的は、前に説明したように、従来技術による装置及び方法を改善することである。
【0014】
特に、本発明の目的は、以下のようなレーザ加工装置及びその装置自体の制御方法を提案することであり、レーザ加工装置及び制御方法は、
高い生産性を促進するように1つの加工動作と別の加工動作との間の休止時間が低減される、例えば加法及び減法の加工動作を有する、単一多機能ワークセンタの生成を促進し、
例えば各加工動作に対して同一のままであるセンサコーンを交換するために、休止時間が存在することなく、例えば1つの同じ一続きにおいて、1つ又は複数のレーザ加工動作のタイプを柔軟に実行するレーザヘッドを提供し、
生産要求に基づいて柔軟に変更可能である1組のモジュールを有するモジュールによる解決策を提供し、
粉末の堆積用のノズルにおいて絞りの開口断面を増加させる、あるいはまた、前記目的が被加工物の高解像度を達成することである場合には精度を向上させ、絞りの断面を低減させることができるため、製造プロセス、特に大量部品の製造の場合の製造プロセスを加速させる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1つ又は複数の実施形態の目的は、このような改善された解決策を提供することに貢献することである。
【0016】
種々の実施形態は、後に続く特許請求の範囲において想起される特徴を有するレーザ加工装置及び対応する方法のおかげで、前記目的の1つ又は複数を達成する。特許請求の範囲は、本発明に関連して本明細書に提供される技術的教示の不可欠な一部を形成する。
【0017】
特に、本発明の目的は、本明細書の冒頭に言及される特徴を有し、さらに以下のこと、すなわち、
前記レーザヘッドは、少なくとも1つの加工材料をワーク表面の前記領域に指向させるように制御されるように構成された1組のノズルを有し、前記1組のノズルは、少なくとも1つの材料の粉末、好ましくは金属粉末の噴射を制御された方法で指向させるように構成される少なくとも1つのノズルを有するとともに、
a)ワーク表面の前記領域に金属ワイヤ、好ましくはレーザ溶接用の金属ワイヤを制御された方法で指向させるように構成された第1のノズルと、
b)ワーク表面の前記領域にアシストガス、好ましくは溶接用のアシストガスを制御された方法で指向させるように構成された第2のノズルと、の少なくとも1つを有し、
前記少なくとも1つの制御ユニットは、前記1組のノズルに連結されるとともに、ワーク表面の前記領域に選択されたレーザ加工動作のタイプに関連した前記レーザビームの指向と同時に、ノズルがワーク表面の前記領域にそれぞれの加工材料を指向させるように前記ノズルを制御するように、前記1組のレーザ加工動作のタイプから関連して選択されたレーザ加工動作のタイプに従って、前記1組のノズルの少なくとも1つのノズルを制御するように構成される、ことを特徴とする装置である。
【0018】
このようにして、1つの同じレーザヘッドを使用して種々の種類の加工動作(例えば溶接、被覆加工、付加製造、切断、及びアブレーション)を実行し、DED付加製造などの加法タイプのレーザ加工及びレーザ切断などの減法タイプのレーザ加工、並びにアブレーションなどの他のタイプのレーザ加工をともに実行することができる。特に、これは、選ばれた動作を実行するために最も便利である光源の起動及び/又はツールの起動を毎回選択することができることによって促進される。例えば、付加製造の分野では、高反射率を有する材料(例えば、銅、黄銅、アルミニウム)を処理するように構成された第1の波長を有する第1の光源と、低反射率を有する材料(例えば、鉄、鋼)のために構成された第2の波長を有する第2の光源とを、特に選択して必ずしも同時でない方法で、使用することができ、従って、望ましくない反射による損傷から装置の光学部品の特性を保護するのに好都合である。
【0019】
1つ又は複数の実施形態は、対応する方法に関するものでもよい。本明細書による装置を制御するための方法は、そのような方法の一例であり得る。
【0020】
種々の実施形態において、前記1組の選択可能である光学経路は、第1のレーザ光源から前記レーザヘッドに第1のレーザビームを供給するための少なくとも2つの光学経路を有する、及び/又は、前記1組のレーザ加工動作のタイプの少なくとも2つのレーザ加工動作のタイプは、前記ヘッドの使用を異なる情況において柔軟にするように前記1組のノズルの少なくとも1つのそれぞれのノズルに関連付けられる。
【0021】
特に、2つの光学経路の少なくとも1つの少なくとも一部分は、少なくとも1つの内側コアと1つの外側コアとを有するデュアルコア光ファイバを用いて得られ、第1のレーザ光源から前記レーザヘッドに第1のレーザビームを供給するように構成された前記少なくとも2つの光学経路の前記少なくとも1つは、前記第1のレーザビームを前記デュアルコア光ファイバの内側コア又は外側コアに選択的に指向させるように構成される光スイッチを有する。
【0022】
この解決策は、レーザビームの(共振)モードを選択することができ、結果としてガウス型又はドーナツ型であり得るレーザビームのパワー分布を選択することができ、後者は特に、例えば異なる大きさのジョイント間又はより良い表面仕上げを備えた切断間の溶接中に、特定の加工動作を実行することができる。
【0023】
種々の実施形態において、レーザヘッドの1組のノズルは、突出位置と後退位置との間で移動可能であり、さらにレーザヘッドは、
ノズルを受け入れるためのキャビティであって、ノズルを前記後退位置に収容するように構成されたキャビティと、
前記1組のノズルに連結された1組のアクチュエータとを有し、
前記制御ユニットは、前記1組のアクチュエータに連結されるとともに、選択可能である1組のレーザ加工動作のタイプから選択されたレーザ加工動作のタイプに従って、前記ノズルを突出位置と後退位置との間で移動させるために前記1組のアクチュエータを制御するように構成される。
【0024】
前記解決策は、必ずしも前記ノズルを必要としない加工動作タイプ中に、例えばレーザ切断中に、被加工物とノズルとの干渉の低減を促進する。さらに、有利に、使用されないときにキャビティ内に後退可能である可動ノズルの提供は、使用されない加工中にノズルが余熱にさらされることを防止する。
【0025】
特に、実行可能である1組のレーザ加工動作のタイプは、粉末の形をした第1のタイプの加工材料を用いる直接堆積付加製造と、第1のタイプとは異なる粉末の形をした第2のタイプの加工材料を使用する直接堆積付加製造、アブレーション、ワイヤ溶接、被覆加工、熱処理、及びレーザ切断のうち少なくとも1つとを含む少なくとも2つのレーザ加工動作のタイプを有する。
【0026】
種々の実施形態において、前記装置の1組のノズルは、それ自体の関節ジョイントについて関節連結可能である少なくとも1つのノズルと、前記関節ジョイントに対してノズルを配向するように構成される電動アクチュエータとを備え、さらに制御ユニットは、前記少なくとも1つの関節連結されたノズルを第1の突出位置又は第2の後退位置をとるように導くために電動アクチュエータにコマンドを発するように構成される。
【0027】
前記解決策は、特に、関節連結されたノズルが関節ジョイントに近接して又は対応する位置に形状記憶材料を有し、形状記憶材料が、ケーブルを介して関節ジョイントに適用される電流の値に応じて選択的にノズルを第1の配向と第2の配向との間の1つにするように構成される場合、ヘッドの妨害全体の低減を促進する。特に、前記第1の配向は、ノズルを前記ワーク表面の前記領域に向かってレーザビームの方向の光軸に対してある角度、例えば鈍角βに形成させる一方、第2の配向は、ノズルを前記光軸に平行にさせる。
【0028】
さらに、前記制御ユニットによって駆動される更なる電動アクチュエータ、例えば回転並進アクチュエータを介して、加工領域におけるノズルの妨害は、非常に効果的に低減又は排除される。
【0029】
レーザヘッドとの起こり得る干渉を低減するようにノズルの妨害を低減又は排除するために、種々の実施形態において、第1のノズル、第2のノズル、及び粉末材料、好ましくは金属粉末の噴射を指向させるように構成され、前記1組のノズルにおいて互いに対向して設定される少なくとも2つのノズルは、前記ノズルの妨害を低減するように、前記ヘッドから前記レーザビームの出力穴に近接して又は対応する位置に中心を有する正菱形の頂点を形成するように、レーザヘッドの支持構造に組み立てられる。
【0030】
前記装置の種々の実施形態において、粉末材料の噴射を指向させるための少なくとも1つのノズルは、回転リングに枢着(pivoted)された1組のブレードによって形成された虹彩絞り(iris diaphragm)と、前記回転リングに連結され、前記粉末の噴射の放射方向に直交する方向における前記ノズルの開口断面の領域を変化させるように前記リングを回転させ、結果として前記粉末の噴射の流量を変化させるように構成される電動アクチュエータとを有してもよい。前記アクチュエータは、例えば、前記制御ユニットによって駆動されてもよい。
【0031】
粉末の噴射を指向させるための少なくとも1つのノズルの開口断面を変化させるという前記機構は、それぞれの被加工物の解像度及び精度の要求に基づいて加工プロセスを柔軟にさせる。例えば、この解決策は、ただ1つのレーザヘッドを使用して、
部品が高解像度で、すなわちノズルの開口断面を低減することによって被加工物の特性を繊細な方法で制御する可能性を備えて得ることができる場合、付加製造プロセスの精度を向上させることと、
大量部品を生産する場合、単に前記絞りの開口断面を増加させることによって高い生産速度を維持することと、を有利に促進する。
【0032】
本発明の目的はまた、本明細書による装置を制御するための対応する方法であり、前記方法は、以下の動作、すなわち、
前記制御ユニットに、前記1組のレーザ加工動作のタイプから選択可能である各レーザ加工動作のタイプに1組のパラメータを関連付ける参照テーブルを提供し、前記1組のパラメータは、例えば、前記少なくとも2つのレーザ光源であって、互いに異なるとともに、互いに異なる波長を有するそれぞれのレーザビームを供給するように構成された前記少なくとも2つのレーザ光源の少なくとも1つのレーザ光源のパワー供給状態と、前記1組の選択可能な光学経路における少なくとも1つの配向可能な光学部品の配向と、前記1組のノズルの少なくとも1つのノズルの作動のパラメータとを有する。
【0033】
前記方法はさらに、前記制御ユニットに、前記1組のレーザ加工動作のタイプから選択可能である各レーザ加工動作のタイプに、前記1組のノズルの1つ又は複数のノズルの位置と前記1組のノズルの1つ又は複数のノズルの配向との間の少なくとも1つのパラメータをさらに有する1組を関連付ける参照テーブルを提供することを想定してもよい。
【0034】
前記方法は、生産要求に応じた個別の方法で前記装置を制御する可能性を提供し、従って前記装置の動作の高い柔軟性を維持する。
【0035】
以下、1つ又は複数の実施形態を純粋に例示として添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本明細書によるレーザ加工装置を例示する図である。
図2図1の図の一部を示す図である。
図3】アクチュエータの制御を管理する数値制御ユニットの構成を例示する図である。
図3A】本明細書による装置で使用可能であるレーザビームの可能なパワー分布を例示する図である。
図3B】本明細書による装置で使用可能であるレーザビームの可能なパワー分布を例示する図である。
図4】レーザヘッドの種々の図を表す図であり、前記レーザヘッドは、本明細書による1組のレーザ加工動作のタイプから選択可能である少なくとも1つのレーザ加工動作のタイプを実行するように構成可能であるレーザ工作機械のエンドツールとして動作可能である。
図4A】a)部及びb)部を有してレーザヘッドの種々の図を表す図であり、前記レーザヘッドは、本明細書による1組のレーザ加工動作のタイプから選択可能である少なくとも1つのレーザ加工動作のタイプを実行するように構成可能であるレーザ工作機械のエンドツールとして動作可能である。
図5】レーザヘッドの一部の種々の斜視図であり、前記レーザヘッドは、本明細書による1組のレーザ加工動作のタイプから選択可能である少なくとも1つのレーザ加工動作のタイプを実行するように構成可能であるレーザ工作機械のエンドツールとして動作可能である。
図5A】レーザヘッドの一部の種々の斜視図であり、前記レーザヘッドは、本明細書による1組のレーザ加工動作のタイプから選択可能である少なくとも1つのレーザ加工動作のタイプを実行するように構成可能であるレーザ工作機械のエンドツールとして動作可能である。
図6】レーザヘッドの一部の種々の斜視図であり、前記レーザヘッドは、本明細書による1組のレーザ加工動作のタイプから選択可能である少なくとも1つのレーザ加工動作のタイプを実行するように構成可能であるレーザ工作機械のエンドツールとして動作可能である。
図7】本明細書による装置を使用することができる工作機械を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
続く説明では、本開示の実施形態の例を深く理解できるように、1つ又は複数の具体的な詳細が例示される。実施形態は、1つ又は複数の具体的な詳細がなくても、又は他の方法、構成要素、材料などを用いて、得られてもよい。他の場合では、実施形態の特定の態様が不明瞭にならないように、既知の操作、材料、又は構造が図示又は詳細に説明されていない。
【0038】
本明細書の枠組みにおいて、「一実施形態」又は「1つの実施形態」への言及は、その実施形態に関連して説明される特定の構成、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施形態において構成されることを示すことを意図している。従って、本明細書の1つ又は複数の箇所に存在し得る「一実施形態では」又は「1つの実施形態では」などの表現は、必ずしも1つの同じ実施形態に正確に言及するものではない。
【0039】
さらに、特定の形態、構造、又は特性は、1つ又は複数の実施形態においてあらゆる適切な方法で組み合わせられ得る。
【0040】
本明細書において使用される符号は、単なる便宜のため提供されるものであり、従って、保護の領域又は実施形態の範囲を規定するものではない。
【0041】
図1には、レーザ加工装置10の図が表され、レーザ加工装置は、レーザヘッド20を有する。レーザヘッド20は、レーザ工作機械、例えばレーザヘッド20を移動するように構成された移動構造であって、図7に例示されるように片持ち梁タイプ90、又は擬人化ロボットアームタイプあるいは他のタイプであり得る移動構造を備えた工作機械のエンドツールとして動作可能である。
【0042】
述べてきたように、レーザヘッド20は、以下で説明するように、1組のレーザ加工動作のタイプから選択可能である少なくとも1つのレーザ加工動作のタイプを実行するように構成され得る。
【0043】
特に、図1に例示される装置10は、以下で説明するように、1組のレーザ加工動作を柔軟に実行するように予め配置されてもよく、特に、溶接、被覆加工、指向性エネルギ堆積(DED)付加製造、及びアブレーション(ablation)などが挙げられる。
【0044】
1つ又は複数のレーザ加工動作を毎回行うために一種の「ワークセンタ」を得るようにユーザによって選択可能な方法で前記加工動作を実行することを可能にするために、前記装置は、1組の少なくとも2つのレーザ光源12、14、特に互いに異なる(例えば波長とパワーとに関して共に)とともに、互いに異なる波長を有するそれぞれのレーザビームを供給するように構成された光源を有する。例えば、1組の少なくとも2つのレーザ光源12,14は、波長とパワーとに関して共に互いに異なる光源を有してもよく、例えば、
第1のレーザ光源12は、例えば1070nmである第1の波長と5kW(1kW=1キロワット=10ワット)であるパワーとを有する第1のレーザビームを供給するように構成されてもよく、特に、溶接、被覆加工、DED付加製造、及びレーザ切断の動作のために使用することができ、
第2のレーザ光源14は、例えば532nmである第2の波長と500Wであるパワーとを有する第2のレーザビームを供給するように構成されてもよく、特に、DED付加製造及びアブレーションの動作のために使用することができる。
【0045】
特に、第2のレーザ光源14は、処理される材料が高反射材料、例えば銅、黄銅、又はアルミニウムである動作(DED付加製造、切断、及び溶接など)に使用され得る。
【0046】
「高反射材料」とは、材料に入射する特定の波長を有する電磁放射を入射光の50%よりはるかに高い割合で反射する傾向を有する材料を意味する。
【0047】
前記の可能なレーザ加工動作のリストと前記の光源のための動作の組合せとは、純粋に例示として提示され、前記装置が柔軟に動作するために予め配置され得るレーザ加工のタイプを限定するものではないことに留意すべきである。
【0048】
図1及び図2に例示されるように、図2図1の図の一部を示し、1組のレーザ光源12,14は、レーザ光源に連結された制御ユニット30を介して制御することができる。
【0049】
例えば、制御ユニット30は、結果としてそれぞれのレーザビームの放射を有するスイッチオン、又は1つ又は複数の光源のスイッチオフを引き起こすコマンドを伝達することができ、あるいは第1の出力又は第2の出力に向かってレーザビームを送るために第1の光源内部の光スイッチを駆動することができる。それぞれの光源12,14によって放射されるレーザビームは次に、レーザヘッド20に供給され、レーザヘッド20は、少なくとも1つのレーザ加工動作を実行するためのレーザ工作機械90,80のエンドツールとして動作することができる。
【0050】
特に、図1及び図2に例示されるように、
第1のレーザ光源12は、光ファイバ124とコリメーション(collimation)レンズ126とで作られる伝達システムと、光スイッチ128、例えば配向可能なミラーとを有し、前記光スイッチは、レーザビームL1を、第1の一続き(stretch)の光ファイバ120、以下で説明するように、特にマルチクラッド(multi-clad)光ファイバに連結された第1の集束レンズ127に向かって、あるいは別の方向に、従ってただ1つのコア122(ガウスモードを有する、又は例えばトップハット(top-hat)モードを有するレーザビームを放射するように構成され得る)を有する一続きのファイバに連結された別の集束レンズに向かって、選択的に指向させるように構成されてもよく、
第2のレーザ光源14は、レーザビームを、第3の一続きの光ファイバ140、例えば「標準」光ファイバに供給するように構成されたただ1つの出力を提示してもよい。
【0051】
述べてきたように、種々の実施形態において、第1のレーザ光源12からレーザヘッド20に第1のレーザビームL1を供給するための前記少なくとも2つの光学経路120,122の少なくとも1つの少なくとも一部分120が、一続きのマルチクラッド光ファイバ120を有し、前記マルチクラッド光ファイバは、導光コア120の周りに導光クラッド120bの少なくとも1つの更なる層によって囲まれる導光コア120aを含み、第1のレーザ光源からレーザヘッド20に第1のレーザビームを供給するための少なくとも2つの光学経路の少なくとも1つは、第1のレーザビームL1を、前記マルチクラッド光ファイバ120のコア120a内に、又は更なる導光クラッド層120b内に、選択的に指向させるように構成された光スイッチを有する。
【0052】
種々の実施形態において、第1のレーザ光源12と特に一続きの前記マルチクラッドファイバとは、本出願人の名前で出願されたイタリア特許出願第102018000021538号に説明されたタイプのシステムを有してもよい。このようなシステム又は装置は、マルチクラッドファイバであって、前記導光コアの周りの少なくとも1つの更なる導光クラッド層によって囲まれる導光コアを含むマルチクラッドファイバと、入力インタフェースであって、少なくとも1つの第1の光ファイバを受け入れるように構成された前記コアへの入力用の第1の組のチャネルと、少なくとも1つの第2の光ファイバを受け入れるように構成された前記少なくとも1つの導光クラッド層への入力用の第2の組のチャネルとを有する入力インタフェースとを有してもよい。前記装置は更に、入力ポート、第1の出力ポート及び第2の出力ポート、前記入力ポートと前記第1の出力ポートを介して前記コアへの入力用の前記第1の組のチャネルの前記第1の入力チャネルとの間の第1の光学経路、並びに、前記入力ポートと前記第2の出力ポートを介して前記少なくとも1つの導光クラッド層への入力用の前記第2の組のチャネルの第2の入力チャネルとの間の少なくとも1つの第2の光学経路を有する光スイッチモジュールであって、前記第1の光学経路及び前記第2の光学経路間の切り替えを制御可能である光スイッチモジュールと、少なくとも1つの第1のレーザモジュール及び少なくとも1つの第2のレーザモジュールを有する1組のレーザモジュールであって、前記レーザモジュールがそれぞれオン状態にあるときにそれぞれのレーザビームを放射するように構成され、前記少なくとも1つの第1のレーザモジュールが前記少なくとも1つの第1の光ファイバを介して前記第1の組の入力チャネルの入力チャネルに連結され、前記少なくとも1つの第2のレーザモジュールが前記光スイッチモジュールに連結される1組のレーザモジュールとを有してもよい。
【0053】
随意に、光スイッチ128は、レーザ光源124によって放射されたレーザビームL1を第1の出力に向かって「繊細な」方法で導くために、多数の位置をとるように、例えば5度のステップで0度から45度の間で変化可能である傾斜をとるように、例えば制御ユニット30によって送られる信号を用いて、制御することが可能である。前記解決策は、述べてきたように、レーザビームが伝搬する(共振)モードを柔軟にするのに役立ち、例えばレーザビームのドーナツ形プロファイル又はレーザビームのガウス形プロファイルの形成を促進する。
【0054】
図1に例示されるような一実施形態では、1組の光源12,14は、1組のモジュール、すなわち、
光選択モジュール16であって、選択された加工動作のタイプに適した(例えば1つのレーザビームのモードを備えた)光学特性を有するレーザヘッド20に毎回ただ1つのレーザビームLが供給されるように、1組の選択可能な光学経路から選択される1つの光学経路に1組の光源12,14によって放射されるレーザビームのうち1つのレーザビームLを選択的に導くように構成された光選択モジュール16と、
診断モジュール18であって、ヘッド20に供給されるレーザビームLの特性を監視するように、また前記特性を示す信号V、例えばレーザスポットの画像を制御ユニット30に供給するように構成された診断モジュール18とを介して、ヘッド20に連結される。
【0055】
図1及び図2に例示されるように、光選択モジュール16は、例えば、
第1の光スイッチ164に続く第1のコリメーションレンズ162であって、例えば2つの位置の間で配向可能であるミラーであり、第2の一続きの光ファイバ122からの出力時にビームを平行にして導くように構成された第1のコリメーションレンズ162と、
第2の光スイッチ168に続く第2のコリメーションレンズ166であって、例えば2つの位置の間で配向可能であるミラーであり、第2の一続きの光ファイバ140からの出力時にレーザビームを平行にして導くように構成された第2のコリメーションレンズ166と、
第3のコリメーションレンズ160であって、第3の一続きの光ファイバ120からの出力時にレーザ出力ビームを平行にするように構成された第3のコリメーションレンズ160とを有する。
【0056】
選択モジュール16の前記光スイッチ168,164と第1の光源12の光スイッチ128とは、
光スイッチが光ファイバからレーザビームが出ていくことを遮る第1の閉位置と、
光スイッチが光ファイバからレーザビームが出ていくことを促進し、空気中のレーザビームの伝搬方向を決定する第2の開位置と、
をとるように制御ユニット30によって駆動することができる。
【0057】
制御ユニットは、ユーザによって選択された加工動作のパラメータに応じてそれぞれの開/閉位置をとるように前記スイッチ128,168,164を駆動することができる。
【0058】
例えば、溶接動作が実行される場合、制御ユニットは、ビームL1を第1の出力127に向かって送るようにスイッチ128を駆動し、ビームをマルチクラッド光ファイバ120からの出力時にレーザヘッド20に供給するように光スイッチ168,164が共に閉状態になるように光スイッチ168,164を駆動する。
【0059】
別の例では、選択された加工動作がレーザ切断である場合、制御ユニット30は次に、ビームL1を第2の出力129に向かって指向させるようにスイッチ128を駆動し、第1のスイッチ164が開くように第1のスイッチ164を駆動し、一方、ビームを単純な光ファイバ122からの出力時にレーザヘッド20に供給するように第2のスイッチ168が閉じるように第2のスイッチ168を駆動する。
【0060】
別の例では、選択された加工動作がレーザアブレーションである場合、制御ユニット30は次に、スイッチ128及びスイッチ164が閉じるようにスイッチ128及びスイッチ164を駆動し、ビームを第3の光ファイバ140からの出力時にレーザヘッド20に供給するようにスイッチ168が開くようにスイッチ168を駆動する。
【0061】
以下の表1は、図1及び図2に例示される実施形態に関して、前記に述べたものを概括する。
【0062】
【表1】

【0063】
1つ又は複数の実施形態では、1組の少なくとも2つの光源からのレーザビームを指向させるための前述した方法の使用は、2つのレーザの一方のために選択可能な光学経路を提供するという事実のおかげで、有利に、レーザビームを供給するために毎回一方又は他方の光源をスイッチをオフにしたりオンにしたりする必要性を回避し、従って処理休止時間を低減し、連続オンオフシーケンスによって損傷し得る光源性能の低下を低減することができる。一般に、1つ又は複数の実施形態は、単一システムに多数のレーザ光源を統合したおかげで、技術的プロセスの汎用性を改善するのに有利である。
【0064】
図1及び図2に例示されるように、診断モジュール18は、二色性(dichroic)光学素子180、すなわち透過光の波長が反射光の波長と異なるものと、選択モジュール16の下流にレーザビームLの光学経路に沿って配置された光センサ182、好ましくはカメラとを有し得る。具体的には、二色性光学素子120は、伝搬するレーザビームLの一部分Ldを、選択された光学経路に沿って、すなわちセンサ182に向かって偏向するように構成され、その結果、センサ182は、偏向されたレーザビームの前記部分Ldを検出し、レーザビームの前記部分Ldの特性の測定値を示す信号Vを制御ユニットに供給する。
【0065】
制御ユニット30は、前記光センサ182に連結され、検出された測定値信号Vに応じてレーザ光源12,14及び/又は選択モジュール16の光スイッチを駆動するように構成することができる。
【0066】
図1に例示されるように、診断モジュール18の下流において、レーザビームLは次に、レーザヘッド20に供給される。
【0067】
前記のレーザヘッド20は、移動構造TSを介して軸X、Y、Zに沿って移動している間にワーク表面110にレーザビームLを指向させるように、配向可能である(すなわち移動可能である)1組の光学部品(又はモジュール)22,24,26を介してレーザビームLを伝達するように構成されている。前記支持構造は、図9に例示されるように、片持ち梁支持構造であってもよく、又は図10に例示されるように、擬人化ロボットであってもよい。
【0068】
前記1組の光学部品22,24,26は、例えば、
ヘッド20によって放射されたレーザビームLに少なくとも1つの振動ωの動的移動を与えるように構成されたレーザビーム配向モジュール22、
レーザビームLの(共振)モードを変化させるための、すなわちワーク表面の領域に指向されたレーザビームのパワー分布を選択的に変化させるように構成されたビーム成形光学24、例えば回折レンズ、及び、
レーザビームLをワーク表面110の領域に指向させ、レーザビームの集束スポットLSを前記領域に形成するように構成された集束レンズ26、
を有する。
【0069】
前記1組の光学部品22,24,26は、純粋に非限定的な例示として提示されていることに留意すべきであるが、一方で、種々の実施形態において、前記要素22,24,26の1つ又は複数がユーザの要求に応じて異なる又は存在しないかもしれないことが理解されるべきである。実際、有利に、前記1組22に光学部品として挿入される、それぞれのアクチュエータに連結された光学部品を有する可変量及び可変タイプの配向可能な光学モジュールを予め配置することが可能である。これは、ユーザがレーザヘッド20を用いて実行することができることを望む加工動作のタイプの要求に基づいて、前記装置を予め配置する可能性を含む。
【0070】
一般に、「ワーク表面」とは、加工が実行されるレベルにある表面、特に表面が支持体の表面であろうと要素の表面であろうと、加工が実行される表面を意味する。
【0071】
レーザビーム配向モジュール22は、配向可能なミラー220、特に、ミラーが連結される1つ又は複数のアクチュエータ222,224、例えば、光スキャナを介して少なくともミラーの傾斜角度を、例えばアクチュエータ22aを駆動することによって変化させるように構成されたガルバノメトリックアクチュエータを介して配向可能であるミラーを備えていてもよく、あるいは、例えばミラーの反射面に対して垂直な軸とレーザビームLの伝搬方向との間の少なくとも1つの角度αを変動周波数ωで変化させることによって、レーザビームLに動的移動を与えるためのプロセスを備えていてもよい。
【0072】
種々の実施形態において、特に選択された加工動作のタイプの1つがDED付加製造である場合、例えばアクチュエータ222は、本出願人の名前で出願されたイタリア特許出願第102019000004681号に記載されたもののように、「揺動」プロセスに従って制御することができる。このようなプロセスは、付加製造プロセスを有してもよく、1つ又は複数の粉末、特に金属粉末の噴射をワーク表面の領域に指向させるように、同時にレーザビームを前記領域に指向させて前記領域にレーザビームの集束スポットを形成するように構成された付加製造ヘッドが備えられ、前記粉末の噴射及び前記レーザビームの指向中に、前記付加製造ヘッドは、前記集束スポットによって前記粉末に伝達されるパワーの結果として前記粉末を溶融させることによって得られる痕跡(最大電力点(MPP))を生じさせるように、前記レーザビームの方向に対して横方向に同時に移動される。前記横方向における付加製造ヘッドの移動(V)の間、レーザビームに与えられた動的移動は、ヘッドによって発せられ、前記移動は、レーザビームの集束スポットの大きさに依存せず、痕跡の幅に実質的に対応する幅を有する見掛けのスポットによって作られるものと同等である痕跡の幅を得るように、またレーザビームによって痕跡に伝達されるパワーの分布が痕跡の幅方向に変化するように構成される。
【0073】
種々の実施形態において、例えば、アクチュエータ224は、それ自体既知の光スキャナを模範としたプロセスに従って制御することができる。
【0074】
1つ又は複数の実施形態では、例えば、ビーム成形レンズ24は、図3Aに例示されるように、ガウス分布を有するビーム、又は、例えばトップハット型又はドーナツ型分布のような他の分布を得るように、レーザビームLのパワー分布を変化させることが可能である。
【0075】
特に、種々の実施形態において、ビーム成形レンズ24は、
レーザビームLのパワー分布の所望の形状を得るように、入射するレーザビームを準ランダム方向に分離させるように構成された回折ディフューザ、及び/又は、
回折アキシコン(DA)、すなわちレーザビームを(例えばベッセル強度プロファイルを有する)リング形状に変形させる1つのタイプの回折光学素子を有してもよい。
【0076】
例えば、トップハット型分布のようなパワー分布は、「丸い」光学タイプの回折光学を有するビーム成形レンズ24を使用して得ることができる。
【0077】
種々の実施形態において、前記のビーム成形光学は、図3Bに例示されるように、レーザビームのドーナツ形プロファイルの形成も促進することができる。特に、このプロファイルは、「負」タイプの回折光学を有するビーム成形レンズ24の使用の結果であってもよい。
【0078】
述べてきたように、種々の実施形態において、例えばビーム成形光学の使用に対する代替手段として、光スイッチ128の位置は、レーザ124によって放射された放射線がマルチクラッドファイバ120の外側コア120bに伝達され、図3Bに例示されるように、レーザビームのドーナツ型プロファイルの形成を促進するように変化させることができる。
【0079】
前記光学部品はヘッド内に備えられるとして説明されているが、種々の実施形態において、前記光学部品が存在しない、あるいはヘッドの外側に備えることができ、特にレーザビーム配向モジュールは、ヘッドの入力部に配置されるが、そこから機械的に切り離すことができることに留意すべきである。
【0080】
種々の実施形態において、制御ユニット30は、アクチュエータ、すなわち軸X、Y、Zを移動させる移動構造90,80のモータなどのモータ、レーザビーム配向モジュール22を移動させるモータ、すなわちミラー220のガルバノメトリックアクチュエータ222,224、並びに、特にヘッド20のノズルに関連して以下に説明するように、さらなる電動アクチュエータなどのアクチュエータの制御を管理するための数値制御ユニット60の構造の原理図を表す図3に例示されるように、数値制御ユニット60を有し得る。前記ユニット60は、2つのパーソナルコンピュータ61、62を有する。パーソナルコンピュータ61は、第2のパーソナルコンピュータ62に命令及びコマンドを送るためにユーザインタフェースとして動作し、パーソナルコンピュータ62は好ましくは、機械の管理用のリアルタイムタイプの拡張62bに関連したオペレーティングシステム62aを有する。オペレーティングシステムは、例えば、Linuxタイプ、WinCEタイプのタイプであってもよく、独自のソリューションを介して得られてもよい。パーソナルコンピュータ62は従って、アクチュエータの制御のためにDSPとPCIのタイプのサーボ制御カード63に、従われるべき経路を供給する。
【0081】
パーソナルコンピュータ62及びサーボ制御カード63において実行されるのは、以下に説明するように、装置10を駆動するための手順である。
【0082】
幾つかのレーザ加工動作は、レーザビームの使用に加えて、加工を実行するための材料の提供も必要である。特に、図4に例示されるように、
DED付加製造の場合、少なくとも1つのノズル40,44が、少なくとも1つの材料の粉末、好ましくは金属粉末の噴射を指向させるために使用され、
溶接の場合、第1のノズル42が、制御された方法で、ワーク表面の前記領域に金属ワイヤ、好ましくはレーザ溶接用の金属ワイヤ(その一部422がノズル42から突出して表されている)を指向させる、すなわち導く又はほどくように構成されて使用され、随意に、第2のノズル46が、制御された方法で、ワーク表面の前記領域にアシストガス、好ましくは溶接用のアシストガスを指向させるように構成されて使用され、
レーザ切断の場合、助燃ガスがレーザビームの出力用の穴と同じ穴70から又は出力用の穴と同軸に出てくるようにヘッドの端末部分に導入可能である助燃ガスを供給するためのダクトが使用されてもよい。
【0083】
複数の加工動作を柔軟に実行するために、レーザヘッド20は従って、前記の加工動作を実行するための1組のノズル40,42,44,46を備えていてもよい。
【0084】
図4は、例示としてレーザヘッド20の斜視図を示す。
【0085】
例えば、レーザヘッド20は、
カプラ202であって、ヘッド20を移動構造、例えば擬人化ロボットのロボットアームに機械的に連結するように、また例えば診断モジュール18又はレーザビーム配向モジュール22の下流において、レーザビームLを受けるように構成された管状ダクトを有するカプラ202と、
支持構造50であって、中央本体50aと端末部分50bとを有して前記端末部分がレーザビームLの出力用の穴70を有し、例えば端末部分50bが、図に例示されるように、コーンの先端部に配置された出力穴70を有する逆さになったコーンの形状(そこから「センサコーン」という用語)を有し得る支持構造50と、
1組のノズルキャリアアーム450,452,454,456であって、1組のノズル40,43,44,46のそれぞれのノズルが連結されるとともに、それぞれのアクチュエータ470,472,474,476、例えば回転並進リニアアクチュエータによってそれぞれのガイド460,462,464,466を通じて平行移動可能である剛体部分及び関節部分41を有する1組のノズルキャリアアーム450,452,454,456とを含む。
【0086】
随意に、DED付加製造のために使用可能である、粉末の噴射の放射用の2つのノズル40,44は有利に、より正確且つ改善された加工を達成するようにワーク表面に粉末の対称な堆積を促進するように、中央穴70を通過する部分の端部に配置される2つのポイントに近接して又は対応する領域に粉末のそれぞれの噴射を放射するように互いに対向するように設定され得る。
【0087】
図4Aは、レーザヘッドの側面斜視図で表されるa)部と、下から上を見た図、すなわちワーク表面110に対して固定された観察者が上を見たときの図で表されるb)部とを有する。
【0088】
種々の実施形態では、図4Aのb)部に例示されるように、例えば、第1のノズル42、第2のノズル46、支持体50の末端部分50bに設定された出力穴70、及び、粉末材料の噴射を指向させる、すなわち放射するように構成された少なくとも2つのノズル40,44は、レーザヘッド20の穴70からの出力時にレーザビームLの光学経路を妨害することなく、1組のノズル40,42,44,46の妨害を低減するように、出力穴70を中心とする正菱形の頂点に配置されるように組み立てられる。
【0089】
図5は、レーザヘッド20の更なる斜視図であり、図5Aは、図5の斜視図の軸V-Vに沿った断面図である。
【0090】
図5Aに例示されるように、管状ダクト202の第2の部分202bの中心軸は、レーザビームLの伝搬の光軸AOを共有することができる。
【0091】
図5Aに例示されるように、カプラ202は、例えば、エルボが90度の角度を形成する円形断面を備えたエルボ管の形状を有し、エルボの上流の第1の部分202aとエルボの下流の第2の部分202bとを有することができる。第1部分202aは、第2の部分202bの縦延在部、すなわち横延在部に直交する方向の延在部、より小さい横延在部を有することができ、前記縦延在部は、支持構造50の末端部分50bまで中央本体50a内に延在する。
【0092】
エルボに、すなわちダクト202の第1の部分202aと第2の部分202bとの間の交点に、ミラー204が存在してもよく、ミラーは、レーザビーム配向モジュール22に関して前述したように、固定ミラー又は配向可能なミラーのいずれであってよい。ミラー204は、ダクト202の第1の部分202aと第2の部分202bとの間の接続点を結合する軸Rに対して直角、すなわち90度の角度を形成するようにダクト202に連結することができる。
【0093】
エルボの下流の前記部分202bはさらに、更なる光学部品、例えばビーム成形光学24を収容する。特に、ビーム成形光学24は、支持構造50の中央本体50a内に延在するエルボ202bの下流部分の末端要素として配置することができる。
【0094】
カプラ202の外径と中央本体50aの内径とは、例えば円筒管202の第2の部分202bを囲むリングのような形をしたスペーサ206によって分離することができる。
【0095】
本明細書で説明される方法に従って加工動作を実行するために、ヘッド20は、例えば、ヘッドから離間して設定されたレーザ放射源の1つによって放射された放射線を伝達するための、例えば光ファイバによって構成されたケーブル配線を備えてもよい。
【0096】
前記の配線は、場合によって、溶接、切断、又は付加製造の加工を援助する助燃ガス(supporting gas)、すなわちアルゴン又は窒素などのアシストガスも供給するためのダクトに関連していてもよい。前記の配線は、前記のそれぞれのダクト、及び/又は、ヘッド20から離間して配置されたそれぞれの供給装置によって供給される付加製造用の粉末材料を供給するためのダクトを有するカテナリを含んでいてもよい。更に、前記のカテナリは、駆動及び制御電気ケーブルと可能な冷却供給管とを有していてもよい。種々の実施形態において、前記のダクト(例えば、ガス用のダクト、粉末のみ用のダクト、光ファイバケーブル及び電気ケーブル)は、1つの同じカテナリ内にあってもよく、どのような場合でも互いに絶縁されたままである(すなわち、ガス用のダクトは粉末を搬送することができずに粉末用のダクトから絶縁され、同じことはカテナリ内の全てのダクトに適用される)。
【0097】
種々の実施形態において、特に、レーザ切断用の助燃ガスを供給するための装置は、前記の助燃ガスが一旦放出されると、助燃ガスがレーザヘッド20の前記の末端部分50bに配置されるレーザビームの出力用の穴70から、例えばレーザビームに対して同軸に出てくるように、それぞれのダクトを介してレーザヘッド20の末端部分50bに連結することができる。制御装置は、前記供給装置に連結され、レーザ切断の動作が選択される場合にヘッドの末端部分50bを通じてレーザ切断用のアシストガスの放出を調節するように構成することが可能である。レーザヘッド20は更に、前記のノズルの少なくとも1つ又は好ましくはそれらの全てが移動可能又は格納可能であるように、すなわちヘッド20の支持構造500の中央本体50aに対して突出した位置にヘッド20の外側に配置されるときにレーザ加工動作を実行するために使用され、加工を実行するために使用されないときに中央本体50a内の意図的に設けられた空洞に受け入れられる後退(recessed)位置に戻すことができるように突出位置と後退位置との間で連続的又は離散ステップで移動可能であるように、1組のノズル40,42,44,46の少なくとも1つのノズル、例えばガス用のノズル46に連結された1組のアクチュエータ及びガイド400を有する。有利に、これは結果として、前記のノズルの機械的特性への損傷を防止し、さもなければ、ノズルが移動可能又は格納可能でない場合にはノズルが直接使用されない動作中にレーザビームの反射にぶつけられることによって損傷を受ける危険にさらす。更に、これらのノズルが移動可能又は格納可能でない場合、それらはまた、加工動作の性能に影響を及ぼすような妨害を引き起こし得る。
【0098】
図5Aの透視図に見ることができるノズルは、粉末の噴射40、44を放射するように構成され、従って、以下では簡単にするために後者に言及されるが、他方では特に特定されない限り、前記のノズルの移動システムに関連して説明したことは、幾つかの他のタイプの他のノズル、例えばノズル42、46にも適用することができることが理解されるべきである。
【0099】
図5Aに例示されるように、円筒状本体50aは、
移動可能又は格納可能であるノズルのそれぞれのアームのアクチュエータ470,474、及び
それぞれのノズル40,44に連結されたそれぞれの関節ジョイント41,45を有するそれぞれのノズルのアーム、例えば450,454
を収容するための空洞を内部に含む。
【0100】
図5Aの図では、この機能も説明するために、突出位置にあるノズルが実線で表され、格納位置にあるノズルが破線で表されている。
【0101】
種々の実施形態において、制御ユニット30は、アクチュエータが、1組のレーザ加工動作のタイプから選択可能であるレーザ加工動作のタイプに従って、少なくとも1つのノズル40,42,44,46を突出位置と後退位置との間で移動するように、1組のアクチュエータ400を駆動するように構成されている。
【0102】
述べてきたように、制御ユニットは、図3に例示されるように、数値制御ユニット60を有してもよく、数値制御ユニットは、それ自体既知の手順に従って、加速度及び速度の所定の仕様を有する「仮想」機械のための、いわゆるパートプログラムに相当する命令列Pを生成する。前記命令列Pは、機械の経路及び移動をオフラインで設定するために、パーソナルコンピュータ61から来て、意図的に提供されたプログラムに由来する。補間機能が、それに適用され、補間機能は、命令列Pに基づいて工作機械の経路の生成を実行する。この工作機械の経路は、レーザヘッド20が連結することができる工作機械のポイント、例えばジョイント又は末端、あるいはTCP(工具中心点)の運動を時間的に記述する運動学的座標に対応する。この補間は、命令列P内に送られる準備コード、すなわちGコードに応じて動作する。補間の動作は、パーソナルコンピュータ62内のソフトウェアを介して実行される。
【0103】
本明細書に記載される解決策において、ユニット60はさらに、例えば溶融される粉末の噴射の流量、助燃ガスの流量、レーザ放射の特性(パワー、連続モード/パルスモード/その他のモード、可能な周波数及びデューティサイクル、ガウス型、トップハット型又はその他のいずれかである放射のプロファイル形状)、及びレーザビームの特性(直径、集束など)に関する更なるコマンドを送るように構成されることに留意すべきである。前記コマンドは、ヘッドが連結される支持構造によって移動されている間、ヘッドの経路によって規定される所定のポイント及び所定の瞬間に生じるように、命令列Pに関連付けることができる。
【0104】
レーザ放射の特性及びレーザビームの特性に関するコマンドは、温度プロファイルを調整するために、例えば一続きの加工経路におけるレーザスポットのパワー及び/又は直径及び/又は集束を変化させることによって、制御することができる。
【0105】
表2は、異なる加工動作にノズルの異なる位置をどのように関連付け可能であるかについて例示を統合して以下に表す。制御ユニット30は、例えば以下に現れる表に従って、突出位置と後退位置との間の位置をとるようにアクチュエータを駆動することができる。
【0106】
加工タイプとノズル位置との間の関連性について前記のリストは、純粋に例示として提供されていることに留意すべきであるが、一方で、加工及びノズルの他のタイプが種々の実施形態において使用されてもよいことが理解されるべきである。
【0107】
【表2】

【0108】
種々の実施形態において、図5及び5Aに例示されるように、1組のノズルは、それ自体の関節ジョイント41,45について関節接合された少なくとも1つのノズルを有する。更に、前記の関節ジョイントは、特に関節ジョイントに接続されてノズル、例えばノズル44をそれ自体の前記の関節ジョイント45に関して配向するように構成された電気ケーブルを用いて、前記関節ジョイントに適用される電流などの電気信号を介して制御することができ、例えば制御ユニット30を介して制御することができる。
【0109】
例えば、制御ユニット30は、関節ノズル40に、ノズル40が前記の突出位置にあるときに第1の配向、例えばレーザビームの放射の方向AOに対して角度β、例えば図に例示されるように鈍角を形成するように傾斜した第1の配向をとるように、又は前記のノズルが後退位置にあるときに第2の配向、例えばダクト202の第2の部分202bにおいてレーザビームの一続きの光軸AOに平行である第2の配向をとるように電流を適用することによって、前記の形状記憶の関節ジョイントを制御することができる。
【0110】
特に、関節ジョイント45は、前記の制御ユニットによって駆動される電気ケーブルに適用される電流に応じて形状をとるように構成された形状記憶材料から作られてもよい。チャンバの入口ポイントの直前に配置されるガイドは、関節ジョイントを機械的に変形させることによってノズルの座部への再突入を可能にするようにノズルを垂直位置に戻すという目的を有する。このようにして、有利に、関節ジョイントの存在のためにアクチュエータの妨害を低減し、ノズルの機械的アームの再突入のための開口部を、それぞれのノズルのアームと同じ断面を有する単純な円形の穴として提供することが可能である。
【0111】
フレーム50の末端部分50bは、ある直径、例えば僅かなテーパを備えて終端するダクト202の内径にほぼ等しいある直径を有する円形の凹部を有し、凹部は、ダクト202の最大内径より小さい直径を有し得る集束レンズ26が連結された光学的に透明である底壁を有する。
【0112】
図6は、フレーム50の端末部分50bの拡大図であり、DED付加製造用のアーム及びノズル40,44の断面も示す。図6に例示されるように、前記のアームは、粉末、好ましくは金属粉末の流れをノズルに向かって案内するように中空とすることができる。更に、粉末材料の噴射を指向させるための少なくとも1つのノズル40は、例えばそれ自体の関節ジョイント41と粉末の出口用の穴との間に設定されたそれ自体の末端部分に、例えば回転リングに枢着された1組のブレードによって形成された虹彩絞り480と、前記回転リングに連結されて前記リングを回転するように構成された電動アクチュエータとを有することができる。
【0113】
前記アクチュエータは、粉末の噴射の放射方向に直交する方向における前記ノズル40の開口断面の領域を変化させるように制御ユニットを介して駆動され得る。前記開口断面の変化は、出力時における粉末噴射の流量の変化を促進し、再度、正確であるとともに繊細な方法で、従って改善された方法で制御することができる加工特性を備えたDED付加製造の生産プロセスを得ることができる。
【0114】
図7は、全体として参照番号90で示されるレーザ工作機械の一実施形態の概略透視図であり、レーザ工作機械は、複数の軸に沿って、具体的には3つのデカルト軸X、Y、Zに沿って移動要素92に連結されたレーザヘッド20に対して固定して関連付けられた支持体91dを移動させるように設計された移動構造91を有する。例えば、図7に例示される門型構造90を有する工作機械は、ガイド構造91aを有してもよく、ガイド構造91aは、ベース91mとその上部に水平軸Xに沿って延在するレール91hとを有し、これらのレール91h上に軸Xの方向にスライド可能であるスライド91cが配置され、軸Xに直交して軸Yに沿って水平方向に延在する梁91bの一端部がスライド92c上に置かれる。この梁91bの端部は、片持ち梁であり、スライド91cに対して軸Yに沿ってスライド可能に関連付けられ、スライド91c上に前記梁が置かれる。梁91bの他方の自由端は、垂直ガイド91jがスライドする支持体91kを有し、移動要素92を運ぶ支持体91dが、軸Zに沿って、従って平面XYに直交する垂直軸に沿ってモータ91fによって駆動される。
【0115】
スライド91cに対する梁11bの運動、及びガイド構造11aに対するスライド11cの運動はまた、モータによって駆動されるが、図7では見られない。
【0116】
図7に示すように、前記の構成の結果として、移動要素92の移動が、可動範囲100内に、基本的に水平軸X及びY並びに垂直軸Zに沿った移動要素92の運動によってその寸法が規定される平行六面体内に生じる。図7は更に、ワーク表面110を示し、ワーク表面は、例えば可動範囲100の底面に相当する。
【0117】
図7の移動構造に関連して説明してきたことは、純粋に例示として提供されていること留意すべきである。既に述べてきたように、種々の実施形態において、工作機械の移動構造は、例えばロボットアーム、擬人化ロボット、門型構造などの異なるタイプであってもよい。
【0118】
基本原理を損なうことなく、詳細及び実施形態は、添付の特許請求の範囲で規定されるような保護範囲から逸脱することなく、純粋に例示として本明細書に記述されたものに対して変化してもよく、その変化は著しいものであってもよい。
図1
図2
図3
図3A
図3B
図4
図4A
図5
図5A
図6
図7