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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】結合六角ベルトおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16G 5/20 20060101AFI20240911BHJP
   F16G 5/06 20060101ALI20240911BHJP
   B29D 29/00 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
F16G5/20 C
F16G5/06 A
F16G5/06 D
B29D29/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022118553
(22)【出願日】2022-07-26
(65)【公開番号】P2023021013
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2021124702
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】木村 武志
(72)【発明者】
【氏名】福永 雄大
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-526954(JP,A)
【文献】特開2020-180693(JP,A)
【文献】特開2009-250263(JP,A)
【文献】特開平03-033536(JP,A)
【文献】特開2018-059626(JP,A)
【文献】米国特許第04579548(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 5/20
F16G 5/06
B29D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が六角形状である複数本の六角ベルト部がベルト幅方向に並ぶ結合六角ベルトであって、
前記六角ベルト部が、芯体層と、前記芯体層の内周面側に積層され、かつ断面台形状の内側ゴム層と、前記内側ゴム層を被覆し、かつ内側外被布帛を含む内側外被材と、前記芯体層の外周面側に積層され、かつ断面台形状の外側ゴム層と、前記外側ゴム層を被覆し、かつ外側外被布帛を含む外側外被材とを含み、
隣接する前記六角ベルト部同士が連結部を介して連結され、かつ
隣接する内側外被布帛が連続した内側布帛で形成され、かつ隣接する外側外被布帛が連続した外側布帛で形成されている結合六角ベルト。
【請求項2】
前記連結部が、ベルト内周面を形成する内側連結材と、ベルト外周面を形成する外側連結材とを含み、
前記内側連結材が内側連結布帛を含み、かつ前記外側連結材が外側連結布帛を含むとともに、
前記内側布帛が、前記内側連結布帛と前記内側外被布帛とが連続した布帛であり、かつ前記外側布帛が、前記外側連結布帛と前記外側外被布帛とが連続した布帛である請求項1記載の結合六角ベルト。
【請求項3】
前記連結部が、架橋ゴム組成物をさらに含む請求項2記載の結合六角ベルト。
【請求項4】
前記内側外被材と前記内側ゴム層との間に内側補強材が介在し、かつ前記外側外被材と前記外側ゴム層との間に外側補強材が介在する請求項1~3のいずれか一項に記載の結合六角ベルト。
【請求項5】
前記内側ゴム層が、芯体層側に積層された第1内側ゴム層と、この第1内側ゴム層よりもゴム硬度が低く、かつベルト内周側に積層された第2内側ゴム層とを含む請求項1~3のいずれか一項に記載の結合六角ベルト。
【請求項6】
プレス用モールド内に配設した結合六角ベルト前駆体を加熱および加圧して架橋成形する架橋成形工程を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の結合六角ベルトの製造方法。
【請求項7】
連結部が架橋ゴム組成物を含み、かつ前記架橋成形工程において、六角ベルト部の架橋成形と連結部の架橋成形とを同時に行う請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
前記プレス用モールドが、結合六角ベルトの内側形状に対応した内側溝部を有する内側プレス用モールドと、結合六角ベルトの外側形状に対応した外側溝部を有する外側プレス用モールドとの組み合わせであり、
前記結合六角ベルト前駆体が、内側布帛を形成するための内側布帛前駆体と、外側布帛を形成するための外側布帛前駆体と、未架橋ゴム組成物を含む六角ベルト部前駆体とを含み、
前記架橋成形工程において、前記内側布帛前駆体を前記内側溝部に沿わせて配設し、前記内側布帛前駆体に前記六角ベルト部前駆体を積層し、前記六角ベルト部前駆体に沿わせて前記外側布帛前駆体を配設した後、前記外側溝部を前記外側布帛前駆体と接触させ、前記内側プレス用モールドと前記外側プレス用モールドとで前記結合六角ベルト前駆体を挟持する請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
内側補強材および外側補強材を含む結合六角ベルトの製造方法であって、前記六角ベルト部前駆体が、内側六角ベルト部前駆体と外側六角ベルト部前駆体との組み合わせであり、前記架橋成形工程において、前記内側布帛前駆体に前記内側六角ベルト部前駆体を積層した後、前記外側六角ベルト部前駆体を積層する請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
前記架橋成形工程の前工程として、六角ベルト部前駆体作製工程をさらに含み、
前記六角ベルト部前駆体作製工程が、内側六角ベルト部前駆体の作製工程および外側六角ベルト部の作製工程を含み、
前記内側六角ベルト部前駆体の作製工程が、外側ゴム層の一部を形成するための薄肉外側ゴム層前駆体に、芯体層を形成するための芯体層前駆体を積層し、前記芯体層前駆体に、内側ゴム層を形成するための内側ゴム層前駆体を積層した後、前記内側ゴム層前駆体の側面を切削加工する工程であり、
前記外側六角ベルト部前駆体の作製工程が、外側ゴム層の残部を形成するための厚肉外側ゴム層前駆体の側面を切削加工する工程である請求項9記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面伝達が可能な複数のVベルトが幅方向に連結した結合六角ベルトおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動力を伝達する伝動用ベルトとして、Vベルト、Vリブドベルト、平ベルトなどの摩擦伝動ベルトが知られている。Vベルトには、摩擦伝動面が露出したゴム層であるローエッジ(Raw-Edge)タイプ(ローエッジVベルト)と、摩擦伝動面(V字状側面)が外被布で覆われたラップド(Wrapped)タイプ(ラップドVベルト)とがある。これらのVベルトは、一般産業用機械、農業機械に広く一般的に用いられている。
【0003】
Vベルトは、単体で動力の伝達が可能な用途の場合は1本のみで用いられる。例えば、欧米などの大規模な農場で使用される大型の農業機械など、多軸で正回転と逆回転とを繰り返しながら、莫大な動力伝達を必要とする高負荷な動作環境では、複数のVベルトを同時に用いる必要が生じる。即ち、ベルト伝動機構のプーリに対して複数のVベルトを並列させた状態で巻き掛け(多本掛けして)、回転走行させる必要がある。
【0004】
しかし、多本掛けした場合には、並列した複数のVベルト間において張力差が生じ、安定した動力伝達が損なわれる虞がある。更には、隣り合うVベルト同士の接触により、ベルトの内周側と外周側とが反転して逆構造となる現象である転覆が生じる虞がある。また、欧米などの大型の農業機械でのベルト伝動機構の走行レイアウトは、Vベルトを巻き掛けるプーリとプーリとの軸間距離が非常に長いため、走行においてVベルトが大きく振れやすく、さらに複数のベルト長さが不揃いである場合は、加振される虞もある。
【0005】
そのため、複数のVベルトを並列して走行させる環境では、Vベルトと同様の構成、あるいはVベルトに対応した構成を有する環状のVベルト部が、ベルト幅方向に複数連結されて構成された結合ベルト(結合Vベルト)が用いられる。この結合ベルトは、上記のベルト部が複数並列に並んだ状態でその複数のベルト部がタイバンド(布帛等の結合部材)で連結されて結合されたVベルトとして構成される。
【0006】
結合されたVベルトについては、例えば、特開平10-274290号公報(特許文献1)の図1および2ならびに特開2001-241513号公報(特許文献2)の図2ではローエッジ結合Vベルトが開示されており、特開平04-351350号公報(特許文献3)の図1および特開2020-3061号公報(特許文献4)の図1ではラップド結合Vベルトが開示されている。これらの結合Vベルトによれば、Vベルトをプーリに多本掛けした場合に生じうる上述のような問題を解消しつつ、複数のV状突部によって大きな動力を伝達することができる。
【0007】
その一方で、このような結合Vベルトを用いた多軸伝動が必要とされるベルト伝動機構において、ベルトの内周面だけでなくベルトの外周面(背面)によっても動力が伝達される場合がある。その伝動機構では、外周面(背面)での伝達性能を向上させるためには、外周面側にもVプーリと接触可能なV字状側面を有するVベルト部を有するのが好ましい。すなわち、内周側の面と外周側の面との両面において、Vプーリと接触可能なV字状側面を有し、断面が略六角形状となる無端状のベルトとして構成されると、高性能に両面伝達が可能な結合Vベルトとなる。
【0008】
なお、両面伝達が可能なVベルト(double-V belt、通称;六角ベルト)については、(複数連結していない)単体のベルトは、例えば、特開2018-059626号公報(特許文献5)や特開2019-032078号公報(特許文献6)などに開示されている。この六角ベルトは、内周側の面と外周側の面との両面において、Vプーリと接触可能なV字状側面を有し、六角形状の断面を有する無端状のVベルトとして構成される。また、六角ベルトにおける径方向内側のゴム層の部分と径方向外側のゴム層の部分との間には、芯体が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平10-274290号公報
【文献】特開2001-241513号公報
【文献】特開平04-351350号公報
【文献】特開2020-3061号公報
【文献】特開2018-059626号公報
【文献】特開2019-032078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、六角ベルトを幅方向に複数連結するには、製造上の難易度が高く、実用化はされていない。
【0011】
従って、本発明の目的は、高性能に両面伝達が可能で、かつ高容量の伝達が可能となる連結タイプの六角ベルトおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ベルト幅方向に並ぶ断面六角形状の六角ベルト部を複数本含む結合六角ベルトにおいて、架橋ゴム組成物を含んでいてもよい布帛によって、ベルト内周面および外周面をそれぞれ被覆するとともに、隣接する前記六角ベルト部同士を連続した前記布帛で連結することにより、高性能に両面伝達が可能で、かつ高容量の伝達が可能となる連結タイプの六角ベルトを提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の態様[1]としての結合六角ベルトは、
断面が六角形状である複数本の六角ベルト部がベルト幅方向に並ぶ結合六角ベルトであって、
前記六角ベルト部が、芯体層と、前記芯体層の内周面側に積層され、かつ断面台形状の内側ゴム層と、前記内側ゴム層を被覆し、かつ内側外被布帛を含む内側外被材と、前記芯体層の外周面側に積層され、かつ断面台形状の外側ゴム層と、前記外側ゴム層を被覆し、かつ外側外被布帛を含む外側外被材とを含み、
隣接する前記六角ベルト部同士が連結部を介して連結され、かつ
隣接する内側外被布帛が連続した内側布帛で形成され、かつ隣接する外側外被布帛が連続した外側布帛で形成されている。
【0014】
本発明の態様[2]は、前記態様[1]において、前記連結部が、ベルト内周面を形成する内側連結材と、ベルト外周面を形成する外側連結材とを含み、前記内側連結材が内側連結布帛を含み、かつ前記外側連結材が外側連結布帛を含むとともに、前記内側布帛は、前記内側連結布帛と前記内側外被布帛とが連続した布帛であり、かつ前記外側布帛が、前記外側連結布帛と前記外側外被布帛とが連続した布帛である態様である。
【0015】
本発明の態様[3]は、前記態様[2]において、前記連結部が、架橋ゴム組成物をさらに含む態様である。
【0016】
本発明の態様[4]は、前記態様[1]~[3]のいずれかの態様において、前記内側外被材と前記内側ゴム層との間に内側補強材が介在し、かつ前記外側外被材と前記外側ゴム層との間に外側補強材が介在する態様である。
【0017】
本発明の態様[5]は、前記態様[1]~[4]のいずれかの態様において、前記内側ゴム層が、芯体層側に積層された第1内側ゴム層と、この第1内側ゴム層よりもゴム硬度が低く、かつベルト内周側に積層された第2内側ゴム層とを含む態様である。
【0018】
本発明には、態様[6]として、プレス用モールド内に配設した結合六角ベルト前駆体を加熱および加圧して架橋成形する架橋成形工程を含む、前記態様[1]~[5]のいずれかの態様の結合六角ベルトの製造方法も含まれる。
【0019】
本発明の態様[7]は、前記態様[6]の製造方法において、連結部が架橋ゴム組成物を含み、かつ前記架橋成形工程において、六角ベルト部の架橋成形と連結部の架橋成形とを同時に行う態様である。
【0020】
本発明の態様[8]は、前記態様[7]の製造方法において、前記プレス用モールドが、結合六角ベルトの内側形状に対応した内側溝部を有する内側プレス用モールドと、結合六角ベルトの外側形状に対応した外側溝部を有する外側プレス用モールドとの組み合わせであり、
前記結合六角ベルト前駆体が、内側布帛を形成するための内側布帛前駆体と、外側布帛を形成するための外側布帛前駆体と、未架橋ゴム組成物を含む六角ベルト部前駆体とを含み、
前記架橋成形工程において、前記内側布帛前駆体を前記内側溝部に沿わせて配設し、前記内側布帛前駆体に前記六角ベルト部前駆体を積層し、前記六角ベルト部前駆体に沿わせて前記外側布帛前駆体を配設した後、前記外側溝部を前記外側布帛前駆体と接触させ、前記内側プレス用モールドと前記外側プレス用モールドとで前記結合六角ベルト前駆体を挟持する態様である。
【0021】
本発明の態様[9]は、前記態様[8]の製造方法が、内側補強材および外側補強材を含む結合六角ベルトの製造方法であって、前記六角ベルト部前駆体が、内側六角ベルト部前駆体と外側六角ベルト部前駆体との組み合わせであり、前記架橋成形工程において、前記内側布帛前駆体に前記内側六角ベルト部前駆体を積層した後、前記外側六角ベルト部前駆体を積層している態様である。
【0022】
本発明の態様[10]は、前記態様[9]の製造方法において、前記架橋成形工程の前工程として、六角ベルト部前駆体作製工程をさらに含み、
前記六角ベルト部前駆体作製工程が、内側六角ベルト部前駆体の作製工程および外側六角ベルト部の作製工程を含み、
前記内側六角ベルト部前駆体の作製工程が、外側ゴム層の一部を形成するための薄肉外側ゴム層前駆体に、芯体層を形成するための芯体層前駆体を積層し、前記芯体層前駆体に、内側ゴム層を形成するための内側ゴム層前駆体を積層した後、前記内側ゴム層前駆体の側面を切削加工する工程であり、
前記外側六角ベルト部前駆体の作製工程が、外側ゴム層の残部を形成するための厚肉外側ゴム層前駆体の側面を切削加工する工程である態様である。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、ベルト幅方向に並ぶ断面六角形状の六角ベルト部を複数本含む結合六角ベルトにおいて、架橋ゴム組成物を含んでいてもよい布帛によって、ベルト内周面および外周面がそれぞれ被覆されるとともに、隣接する前記六角ベルト部同士が連続した前記布帛で連結されているため、高性能に両面伝達が可能で、かつ高容量の伝達が可能となる連結タイプの六角ベルトを提供できる。さらに、六角ベルトを幅方向に複数本連結するには、製造上の難易度が高かったが、特定の製造方法によって、前記特性を有する結合六角ベルトを簡便に製造できることにも成功した。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本開示の結合六角ベルトの一例を示す概略部分断面斜視図である。
図2図2は、図1において、六角ベルト部と連結部とを説明するための概略断面図である。
図3図3は、本開示の結合六角ベルトの他の例を示す概略部分断面斜視図である。
図4図4は、本開示の結合六角ベルトの一例を示す概略断面図および前記断面図における連結部の拡大図である。
図5図5は、図1の結合六角ベルトにおける六角ベルト部の断面図である。
図6図6は、図5の六角ベルト部において、内側ゴム層および外側ゴム層が二層構造である六角ベルト部の断面図である。
図7図7は、図3の結合六角ベルトにおける六角ベルト部の断面図である。
図8図8は、図7の六角ベルト部において、内側ゴム層および外側ゴム層が二層構造である六角ベルト部の断面図である。
図9図9は、六角ベルト部前駆体を輪切りする切断工程を示す概略図である。
図10図10は、輪切りした六角ベルト部前駆体をV字形状に切削加工するスカイブ工程を示す概略図である。
図11図11は、内側六角ベルト部前駆体を輪切りする切断工程を示す概略図である。
図12図12は、補強材を有する内側六角ベルト部前駆体の作製工程を示す概略図である。
図13図13は、補強材を有する外側六角ベルト部前駆体の作製工程を示す概略図である。
図14図14は、六角ベルト部前駆体の連結および架橋成形工程を示す概略全体図である。
図15図15は、図14のA-B線断面図である。
図16図16は、図15の内側プレス用モールドの突起部をCからDに向かう方向に見た概略斜視図である。
図17図17は、内側プレス用モールドの内側溝部に内側布帛前駆体を沿わせた後、前記内側布帛前駆体を沿わせた前記内側溝部に六角ベルト部前駆体の一部を嵌合する工程を示す概略図である。
図18図18は、内側プレス用モールドの内側溝部に内側布帛前駆体を介して六角ベルト部前駆体を嵌合した状態を示す断面図である。
図19図19は、図18の六角ベルト部前駆体の上に、治具を用いて、外側布帛前駆体を沿わせて配設した状態を示す断面図である。
図20図20は、図19の外側布帛前駆体に外側プレス用モールドの外側溝部を接触させ、内側プレス用モールドと前記外側プレス用モールドとで前記結合六角ベルト前駆体を挟持した状態を示す断面図である。
図21図21は、内側プレス用モールドの内側溝部に内側布帛前駆体を介して六角ベルト部前駆体の一部を嵌合した状態を示す断面図である。
図22図22は、図21の六角ベルト部前駆体の一部の上に、六角ベルト部前駆体の残部を積層した状態を示す断面図である。
図23図23は、図22の六角ベルト部前駆体の上に、治具を用いて、外側布帛前駆体を沿わせて配設した状態を示す断面図である。
図24図24は、図23の外側布帛前駆体に外側プレス用モールドの外側溝部を接触させ、内側プレス用モールドと前記外側プレス用モールドとで前記結合六角ベルト前駆体を挟持した状態を示す断面図である。
図25図25は、プレス用モールドを取り外して得られた架橋結合六角ベルト前駆体を切断する状態を示す断面図である。
図26図26は、実施例のベルト走行試験の配置である多軸レイアウトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〈結合六角ベルト〉
本発明の結合六角ベルトは、外周側と内周側との両面で動力が伝達可能な摩擦伝動ベルトであり、例えば、長手方向を平行に揃えて並べた複数本の六角ベルト(ベルト幅方向に揃えて並べた複数本の六角ベルト部)の表面を被覆する布帛が、外周側と内周側とに分かれ、それぞれがタイバンド(結合部材)の役割も兼ねて幅方向に繋がっている。すなわち、前記布帛は、六角ベルト部表面を被覆する機能と、隣接する六角ベルト部を連結する機能とを有しており、前記布帛がこのような構造を有することにより、頑強な結合六角ベルトを提供することに成功し、高性能に両面伝達できるとともに、高容量の伝達が可能となった。
【0026】
以下に、必要により添付図面を参照しつつ、本発明の結合六角ベルトを詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一のまたは機能が共通する要素(または部材)には同じ符号を付す場合がある。
【0027】
本発明の結合六角ベルトの一例を図1および2に示す。図1および2に示すように、この結合六角ベルト1は、ベルト幅方向に間隔をおいて、頂部を対向させて平行に並んだ2本の六角ベルト部を備えており、この2本の六角ベルト部の外周(表面)は、内側外被材4および外側外被材6で被覆されている。前記内側外被材4および前記外側外被材6は、架橋ゴム組成物を含む布帛で形成されている。
【0028】
前記結合六角ベルト1において、隣接する六角ベルト部は、内側連結材7および外側連結材8を含む連結部によって連結されている。前記内側連結材7および前記外側連結材8も、架橋ゴム組成物を含む布帛で形成されている。前記内側連結材7の布帛は、前記内側外被材4の布帛と連続しており、ベルト内周面において一体化した内側布帛を形成している。また、前記外側連結材8の布帛も、前記外側外被材6の布帛と連続しており、ベルト外周面において一体化した外側布帛を形成している。さらに、内側連結材7および外側連結材8は、前記布帛に加えて、予め布帛に浸透していた架橋ゴム組成物や六角ベルト部から流入して架橋した架橋ゴム組成物を含んでおり、内側連結材7と外側連結材8との間に存在する架橋ゴム組成物とともに、前記布帛と複合一体化している。そのため、連結部は、布帛と架橋ゴム組成物とが一体化した強固な複合体である。
【0029】
内側外被材4および外側外被材6で被覆されている六角ベルト部の内部は、ベルト内周側から順に、内側ゴム層3、心線2aを含む芯体層2、外側ゴム層5が積層した構造を有している。
【0030】
図3で示す結合六角ベルト10は、内側外被材および外側外被材と内側ゴム層および外側ゴム層との間に補強材が介在することを除いて、図1の結合六角ベルトと同一態様の結合六角ベルトである。すなわち、この結合六角ベルトでは、内側ゴム層13、心線12aを含む芯体層12および外側ゴム層15の表面が補強材11で被覆されており、この補強材11に、内側外被材14および外側外被材16が積層されており、前記内側外被材14および前記外側外被材16の布帛は、それぞれ内側連結材17の布帛および外側連結材18の布帛と連続している。結合六角ベルト10は、補強材11を介在させることにより、摩擦伝動面が補強されて耐久性(耐摩耗性)が向上する。
【0031】
図4を用いて、本開示の結合六角ベルトの構造およびサイズをさらに詳細に説明する。図4の結合六角ベルト1は、図1と同様に、補強材が介在しない結合六角ベルトの概略断面図であるが、図中のHは、六角ベルト部の厚み(ベルト厚み方向の高さ)を示し、図中のWは、六角ベルト部の幅を示し、図中のPはピッチ(隣接する六角ベルト部の中央部間の距離)を示す。さらに、連結部の拡大図において、図中のdは連結部の厚み(最小厚み)を示し、図中のeは連結部の幅(隣接する六角ベルト部の間隔)を示す。これらのサイズについて、結合六角ベルトの代表例であるAA型、BB型、CC型の寸法を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
本発明の結合六角ベルトにおいて、六角ベルト部(結合六角ベルト)の厚みH(平均厚み)は、例えば5~30mm、好ましくは7~20mm、さらに好ましくは10~18mmである。
【0034】
前記六角ベルト部の幅W(平均幅)は、例えば7~40mm、好ましくは10~30mm、さらに好ましくは12~25mmである。
【0035】
前記六角ベルト部のピッチP(平均距離)は、例えば5~50mm、好ましくは8~40mm、さらに好ましくは10~30mmである。
【0036】
本発明の結合六角ベルトは、複数本の六角ベルト部が幅方向に平行に揃って並んでいればよく、図1~4に示されるように、間隔をおいて並べる態様に限定されず、間隔をあけずに並べる態様であってもよい。間隔をあけずに六角ベルト部が並んだ態様では、連結部は、隣接する内側外被材同士の境界および隣接する外側外被材同士の境界が連結部となる。これらのうち、生産性などの点から、隣接する各結合六角ベルト部は、間隔をおいて並べるのが好ましい。
【0037】
前記連結部の厚みd(平均厚み)は、例えば0.5~5mm、好ましくは0.8~4mm、さらに好ましくは1~3mmである。連結部の厚みdが薄すぎると、耐久性が低下する虞があり、逆に厚すぎると、動力の伝達性が低下する虞がある。
【0038】
間隔をあけて六角ベルト部を並べる場合、前記連結部の幅eは、0.5mm以上であってもよく、例えば0.5~8mm、好ましくは1~5mm、さらに好ましくは1.5~4mmである。連結部の幅eが小さすぎると、生産性が低下する虞がある。
【0039】
この例では、連結部を形成する内側連結材と外側連結材との間には、架橋ゴム組成物で形成された層が存在している。内側連結材および外側連結材は、図1および2のように、架橋ゴム組成物を含む布帛、すなわち内部の繊維間に架橋ゴム組成物が浸透した布帛に限定されず、架橋ゴム組成物を含まない布帛であってもよいが、連結材の機械的特性を向上できる点から、架橋ゴム組成物を含む布帛が好ましい。図4に示されるように、連結部では、通常、内側連結材と外側連結材との間には、架橋ゴム組成物で形成された層が存在する。架橋ゴム組成物で形成された層は、図4に示すように、一体型の構造であってもよく、連結部の中央部で内側連結材と外側連結材とが接触することによって分断された構造であってもよい。
【0040】
六角ベルト部の本数は、図1~4に示す2~3本に限定されず、複数本であればよいが、例えば2~10本、好ましくは2~8本、さらに好ましくは2~6本である。
【0041】
[六角ベルト部]
六角ベルト部の形状(外部形状)は、慣用の六角ベルトの形状と同様の形状であればよく、すなわち、無端状であり、かつベルト長手方向に垂直な断面形状が略六角形状であれば、特に限定されない。六角ベルト部の構造(内部構造)も、慣用の六角ベルトの構造と同様の構造であればよく、芯体を含む芯体層(接着ゴム層)と、この芯体層のベルト外周側に積層された外側ゴム層と、前記芯体層のベルト内周側に積層された内側ゴム層とを含み、かつ摩擦伝動面を含めてベルト全面を全周に亘って外被布(カバー布)で覆ったラップドVベルト部に準じた構造であれば、特に限定されない。このような六角ベルト部において、芯体層に対して対向するV字状断面の左右両側面(断面台形状の両側面)が摩擦伝動面を形成する。六角ベルト部の構造としては、例えば、図5~8に示す構造などが挙げられる。
【0042】
図5は、図1の結合六角ベルトにおける六角ベルト部の断面図である。図5に示す六角ベルト部は、芯体(心線)2aを含む接着ゴム2bで形成された芯体層2と、前記芯体層2の内周面側に積層され、かつ断面台形状の内側ゴム層3と、前記内側ゴム層3を被覆し、かつ内側外被布帛を含む内側外被材4と、前記芯体層2の外周面側に積層され、かつ断面台形状の外側ゴム層5と、前記外側ゴム層5を被覆し、かつ外側外被布帛を含む外側外被材6とで形成されている。すなわち、ベルト内周側から、内側ゴム層3、芯体層2、外側ゴム層5が順次積層された無端状のベルト本体と、このベルト本体の周囲をベルト周方向の全長に亘って被覆している内側外被材4および外側外被材6とで形成されており、芯体層2、内側ゴム層3および内側外被材4は内側六角ベルト部を形成し、外側ゴム層5および外側外被材は外側六角ベルト部を形成する。
【0043】
図6は、図5の六角ベルト部において、内側ゴム層および外側ゴム層が二層構造である六角ベルト部の断面図である。すなわち、図5の六角ベルト部では、内側ゴム層および外側ゴム層が単層構造であったのに対して、図6の六角ベルト部では、内側ゴム層が、芯体層2の内周面側に積層され、かつ断面台形状の第1内側ゴム層3aと、この内側ゴム層3aに積層され、かつ断面台形状の第2内側ゴム層3bとの二層構造であり、外側ゴム層が、芯体層2の外周面側に積層され、かつ断面台形状の第1外側ゴム層5aと、この外側ゴム層5aに積層され、かつ断面台形状の第2外側ゴム層5bとの二層構造である以外は、図5の六角ベルト部と同一である。内側ゴム層および外側ゴム層を、ゴム硬度の異なる二層構造に調整することにより、ベルトの耐側圧性を向上できる。
【0044】
図7は、図3の結合六角ベルトにおける六角ベルト部の断面図である。図7に示す六角ベルト部は、芯体(心線)12aを含む接着ゴム12bで形成された芯体層12と、この芯体層12の側面を被覆する補強材11aと、前記芯体層12の内周面側に積層され、かつ断面台形状の内側ゴム層13と、前記内側ゴム層13を被覆する内側補強材11bと、この内側補強材11bを被覆し、かつ内側外被布帛を含む内側外被材14と、前記芯体層12の外周面側に積層され、かつ断面台形状の外側ゴム層15と、前記外側ゴム層15を被覆する外側補強材11cと、この外側補強材11cを被覆し、かつ外側外被布帛を含む外側外被材16とで形成されている。すなわち、ベルト内周側から、内側補強材11bによって被覆された内側ゴム層13、芯体12aが接着ゴム12b中に埋設された芯体層12、外側補強材11cによって被覆された外側ゴム層15が順次積層された無端状のベルト本体と、このベルト本体の周囲をベルト周方向の全長に亘って被覆している内側外被材14および外側外被材16とで形成されている。
【0045】
図8は、図7の六角ベルト部において、内側ゴム層および外側ゴム層が二層構造である六角ベルト部の断面図である。すなわち、図7の六角ベルト部では、内側ゴム層および外側ゴム層が単層構造であったのに対して、図8の六角ベルト部では、内側ゴム層が、芯体層12の内周面側に積層され、かつ断面台形状の第1内側ゴム層13aと、この内側ゴム層13aに積層され、かつ断面台形状の第2内側ゴム層13bとの二層構造であり、外側ゴム層が、芯体層12の外周面側に積層され、かつ断面台形状の第1外側ゴム層15aと、この外側ゴム層15aに積層され、かつ断面台形状の第2外側ゴム層15bとの二層構造である以外は、図7の六角ベルト部と同一である。
【0046】
これらの例では、芯体は、ベルト幅方向に所定の間隔で配列した心線(撚りコード)である。また、芯体層は、芯体が埋設された架橋ゴム組成物(接着ゴム層)で形成されているが、芯体層は、内側ゴム層と外側ゴム層との界面に配設された芯体のみで形成されていてもよい。本願では、芯体層が芯体のみで形成されている場合、ベルト本体中で間隔をおいて配設された芯体を芯体層と称し、このような芯体層は、芯体が内側ゴム層と外側ゴム層との界面に配設された形態だけでなく、内側ゴム層と外側ゴム層との界面に配設された芯体の一部または全部が製造の過程で内側ゴム層または外側ゴム層中に埋設された形態も含む。
【0047】
(内側ゴム層および外側ゴム層)
内側ゴム層は、環状の六角ベルト部における芯体層よりも径方向内周側(ベルト内周側)に配設されるゴム層であり、外側ゴム層は、芯体層よりも径方向外周側(ベルト外周側)に配設されるゴム層である。内側ゴム層および外側ゴム層は、それぞれ周方向に沿って延在しており(六角ベルト部と同一の長さを有しており)、ベルト長手方向に垂直な断面の形状が略台形状である。
【0048】
各六角ベルト部を構成する外側ゴム層および内側ゴム層は、図5および7に示すような単層(一層)であってもよく、図6および8に示すような2種類のゴム層を含む積層構造を有し、かつ各層のゴム硬度や強度が調整されたゴム層であってもよい。
【0049】
これらのうち、耐側圧性と屈曲性とを両立させる点からは、六角ベルト部は、内側ゴム層が、芯体層側に積層された第1内側ゴム層と、この第1内側ゴム層よりもゴム硬度が低く、かつベルト内周側に積層された第2内側ゴム層とを含む二層以上の積層構造を有する態様が好ましい。また、六角ベルト部は、外側ゴム層が、芯体層側に積層された第1外側ゴム層と、この第1外側ゴム層よりもゴム硬度が低く、かつベルト外周側に積層された第2外側ゴム層とを含む二層以上の積層構造を有する態様も好ましい。なお、積層構造に関しては、内側ゴム層と外側ゴム層とは、同一の態様にする必要はなく、これらの態様から必要に応じて組み合わせればよい。
【0050】
耐側圧性と生産性とのバランスを考慮すると、内側ゴム層は二層構造(第1内側ゴム層と第2内側ゴム層)であり、かつ外側ゴム層は単層構造または二層構造(第1外側ゴム層と第2外側ゴム層)であるのが特に好ましい。
【0051】
単層構造の場合、内側ゴム層および外側ゴム層のゴム硬度Hsは、それぞれ、例えば60~90°程度の範囲から選択でき、好ましくは72~80°、より好ましくは73~78°、さらに好ましくは74~78°、最も好ましくは75~77°である。ゴム硬度が小さすぎると、耐側圧性が低下する虞があり、逆に大きすぎると、屈曲性が低下する虞がある。
【0052】
なお、本願において、各ゴム層のゴム硬度は、JIS K6253(2012)(加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム-硬さの求め方-)に規定されているスプリング式デュロメータ硬さ試験に準拠して、タイプAデュロメータを用いて測定された値Hs(タイプA)を示し、単にゴム硬度と記載する場合がある。詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0053】
内側ゴム層および外側ゴム層の引張強度は、ベルト幅方向において、それぞれ、例えば12~20MPa、好ましくは13~18MPa、さらに好ましくは14~17MPaである。引張強度が小さすぎると、耐側圧性が低下する虞があり、逆に大きすぎると、屈曲性が低下する虞がある。
【0054】
なお、本願において、各ゴム層の引張強度は、JIS K6251(2017)に準拠した方法で測定できる各ゴム層の引張強さTの値を引張強度の指標値として用いる。詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0055】
耐側圧性を向上させるために、二層構造とする場合は、芯体層側に配置される第1内側ゴム層と第1外側ゴム層とを高硬度のゴム層とするのが好ましい。第1内側ゴム層および第1外側ゴム層のゴム硬度Hsは、それぞれ、例えば80~100°程度の範囲から選択でき、好ましくは85~95°、より好ましくは87~94°、さらに好ましくは90~93°、最も好ましくは92~93°である。ゴム硬度が小さすぎると、耐側圧性が低下する虞があり、逆に大きすぎると、プーリ溝とのフィット性や屈曲性が低下する虞がある。
【0056】
一方、第2内側ゴム層および第2外側ゴム層のゴム硬度Hsは、それぞれ、前述の単層構造の場合で示したゴム硬度Hsと同程度であればよい。
【0057】
さらに、第1内側ゴム層と第2内側ゴム層とのゴム硬度Hsの差(第1内側ゴム層のゴム硬度-第2内側ゴム層のゴム硬度)は、例えば1°以上(特に5°以上)であればよく、好ましくは5~30°(例えば7~27°)、より好ましくは10~25°(例えば12~20°)、さらに好ましくは14~20°(例えば15~19°)、最も好ましくは14~17°(特に15~17°)である。第2内側ゴム層と第1内側ゴム層とのゴム硬度の差が小さすぎると、屈曲性が低下する虞がある。
【0058】
なお、第1外側ゴム層と第2外側ゴム層とのゴム硬度Hsの差も、好ましい範囲も含めて、第1内側ゴム層と第2内側ゴムとのゴム硬度Hsの差と同様の範囲から選択できる。
【0059】
第1内側ゴム層の引張強度は、ベルト幅方向において、例えば25~50MPa、好ましくは25~40MPa、さらに好ましくは26~35MPa、最も好ましくは28~32MPaである。引張強度が小さすぎると、耐側圧性が低下する虞があり、逆に大きすぎると、屈曲性が低下する虞がある。第2内側ゴム層の引張強度は、前述の単層構造の場合で示した引張強度と同程度であればよい。
【0060】
なお、第1外側ゴム層および第2外側ゴム層の引張強度も、好ましい範囲も含めて、第1内側ゴム層および第2内側ゴム層の引張強度とそれぞれ対応して同様の範囲から選択できる。
【0061】
内側ゴム層全体の平均厚みおよび外側ゴム層全体の平均厚みは、それぞれ、例えば1~12mm、好ましくは2~10mm、さらに好ましくは2.5~9mm、より好ましくは3~8mmである。
【0062】
第1内側ゴム層の平均厚みは、内側ゴム層全体の平均厚みに対して、例えば95~30%程度の範囲から選択でき、好ましくは90~50%、さらに好ましくは85~55%、より好ましくは80~60%、最も好ましくは75~70%である。この比率は、内側ゴム層が第1内側ゴム層および第2内側ゴム層のみからなる場合(二層構造の場合)の比率であってもよい。第1内側ゴム層の厚み比率が小さすぎると、耐側圧性が低下する虞があり、逆に大きすぎると、屈曲性が低下する虞がある。
【0063】
なお、外側ゴム層全体の平均厚みに対する第1外側ゴム層の比率も、好ましい範囲も含めて、内側ゴム層全体の平均厚みに対する第1内側ゴム層の比率と同様の範囲から選択できる。
【0064】
内側ゴム層は、第1内側ゴム層および第2内側ゴム層に加えて、ゴム硬度の異なる他のゴム層をさらに含んでいてもよい。他のゴム層は、単層であってもよく、複数の層であってもよい。また、他のゴム層は、第1内側ゴム層の上下面、第2内側ゴム層の下面のいずれの面に積層されていてもよい。他のゴム層の平均厚みは、内側ゴム層全体の平均厚みに対して、例えば30%以下であってもよく、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下であってもよい。すなわち、内側ゴム層は、第1内側ゴム層および第2内側ゴム層を主要な層として含むのが好ましく、第1内側ゴム層と第2内側ゴム層との合計の平均厚みは、内側ゴム層全体の平均厚みに対して、例えば70%以上であってもよく、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上であり、内側ゴム層が第1内側ゴム層および第2内側ゴム層のみからなるのが特に好ましい。
【0065】
外側ゴム層も、第1外側ゴム層および第2外側ゴム層に加えて、ゴム硬度の異なる他のゴム層をさらに含んでいてもよい。他のゴム層は、単層であってもよく、複数の層であってもよい。また、他のゴム層は、第1外側ゴム層の上下面、第2外側ゴム層の下面のいずれの面に積層されていてもよい。他のゴム層の平均厚みは、外側ゴム層全体の平均厚みに対して、例えば30%以下であってもよく、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下であってもよい。すなわち、外側ゴム層は、第1外側ゴム層単独を主要な層として含むか、第1外側ゴム層および第2外側ゴム層の組み合わせを主要な層として含むのが好ましく、第1外側ゴム層と第2外側ゴム層との合計の平均厚みは、外側ゴム層全体の平均厚みに対して、例えば70%以上であってもよく、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上であり、外側ゴム層が第1外ゴム層単独のみ、または第1内側ゴム層および第2内側ゴム層の組み合わせのみからなるのが特に好ましい。
【0066】
内側ゴム層および外側ゴム層は、それぞれ、六角ベルトのゴム組成物として慣用的に利用されている架橋ゴム組成物で形成されていてもよい。架橋ゴム組成物は、ゴム成分を含む架橋ゴム組成物であってもよく、組成物の組成を適宜調整することにより、内側ゴム層および外側ゴム層をそれぞれ構成する各層、特に、第1内側ゴム層および第2内側ゴム層のゴム硬度、第1外側ゴム層および第2外側ゴム層のゴム硬度などを調整できる。ゴム硬度などの調整方法としては、特に限定されず、組成物を構成する成分の組成および/または種類を変えて調整してもよく、簡便性などの点から、短繊維やフィラーの割合および/または種類を変えて調整するのが好ましい。
【0067】
(A)ゴム成分
内側ゴム層および外側ゴム層の架橋ゴム組成物に含まれるゴム成分としては、公知の加硫または架橋可能なゴムおよび/またはエラストマーから選択でき、例えば、ジエン系ゴム[天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム(CR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム);水素化ニトリルゴム(水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマーを含む)などの前記ジエン系ゴムの水添物など]、オレフィン系ゴム[例えば、エチレン-α-オレフィン系ゴム(エチレン-α-オレフィンエラストマー)、ポリオクテニレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴムなど]、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが例示できる。これらのゴム成分は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0068】
これらのうち、架橋剤および架橋促進剤が拡散し易い点から、エチレン-α-オレフィンエラストマー[エチレン-プロピレン共重合体(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)などのエチレン-α-オレフィン系ゴム]、クロロプレンゴムが汎用され、特に、高負荷環境で用いる場合、機械的強度、耐候性、耐熱性、耐寒性、耐油性、接着性などのバランスに優れる点から、クロロプレンゴム、EPDMが好ましい。さらに、前記特性に加えて、耐摩耗性にも優れる点から、クロロプレンゴムが特に好ましい。クロロプレンゴムは、硫黄変性タイプであってもよく、非硫黄変性タイプであってもよい。
【0069】
ゴム成分がクロロプレンゴムを含む場合、ゴム成分中のクロロプレンゴムの割合は、例えば50質量%以上(特に80~100質量%程度)であってもよく、100質量%(クロロプレンゴムのみ)が特に好ましい。
【0070】
(B)短繊維
前記架橋ゴム組成物は、前記ゴム成分に加えて短繊維をさらに含んでいてもよい。短繊維としては、例えば、ポリオレフィン系繊維(例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)、ポリアミド繊維(例えば、ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維、ポリアミド46繊維、アラミド繊維など)、ポリアルキレンアリレート系繊維[例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などのC2-4アルキレンC8-14アリレート系繊維など]、ビニロン繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維などの合成繊維;綿、麻、羊毛などの天然繊維;炭素繊維などの無機繊維などが挙げられる。これらの短繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0071】
これらの短繊維のうち、合成繊維や天然繊維、特に、エチレンテレフタレート、エチレン-2,6-ナフタレートなどのC2-4アルキレンC8-14アリレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維)、ポリアミド繊維(アラミド繊維など)などの合成繊維、炭素繊維などの無機繊維などが汎用され、中でも剛直で高い強度およびモジュラスの繊維、例えば、ポリエステル繊維(特に、ポリエチレンテレフタレート系繊維、ポリエチレンナフタレート系繊維)、ポリアミド繊維(特に、アラミド繊維)が好ましい。アラミド繊維は、高い耐摩耗性をも有している。そのため、短繊維は、少なくともアラミド繊維などの全芳香族ポリアミド繊維を含むのが好ましい。アラミド繊維は、商品名「コーネックス」、「ノーメックス」、「ケブラー」、「テクノーラ」、「トワロン(登録商標)」などの市販品であってもよい。
【0072】
短繊維の平均繊維径は、例えば2μm以上、好ましくは2~100μm、さらに好ましくは3~50μm(例えば5~50μm)、より好ましくは7~40μm、最も好ましくは10~30μmである。短繊維の平均長さは、例えば1~20mm、好ましくは1.5~10mm、さらに好ましくは2~5mm、より好ましくは2.5~4mmである。
【0073】
前記架橋ゴム組成物中の短繊維の分散性や接着性の観点から、短繊維は、慣用の方法で接着処理(または表面処理)されていてもよい。表面処理の方法としては、慣用の表面処理剤を含む処理液などで処理する方法などが挙げられる。表面処理剤としては、例えば、レゾルシン(R)とホルムアルデヒド(F)とゴムまたはラテックス(L)とを含むRFL液[例えば、レゾルシン(R)とホルムアルデヒド(F)とが縮合物(RF縮合物)を形成し、前記ゴムまたはラテックスとして、例えば、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むRFL液]、エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、シランカップリング剤、架橋ゴム組成物(例えば、表面シラノール基を含み、ゴムとの化学的結合力を高めるのに有利な含水珪酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンなどを含む架橋ゴム組成物など)などが挙げられる。これらの表面処理剤は、単独でまたは二種以上組み合わせてもよく、短繊維を同一または異なる表面処理剤で複数回に亘り処理してもよい。
【0074】
短繊維は、プーリからの押圧に対するベルトの圧縮変形を抑制するため、ベルト幅方向に配向して内側ゴム層および外側ゴム層中に埋設されていてもよい。
【0075】
短繊維の割合は、ゴム成分100質量部に対して50質量部以下程度の範囲から選択でき、例えば30質量部以下、好ましくは10~30質量部である。短繊維の割合が少なすぎると、内側ゴム層および外側ゴム層のゴム硬度が低下する虞があり、逆に多すぎると、ゴム硬度が高すぎて屈曲性が低下する虞がある。
【0076】
外側ゴム層および内側ゴム層が二層構造である場合、第1内側ゴム層および第1外側ゴム層において、短繊維の割合は、それぞれ、ゴム成分(第1のゴム成分)100質量部に対して、例えば5~50質量部、好ましくは10~30質量部、さらに好ましくは15~25質量部、より好ましくは18~22質量部である。第2内側ゴム層および第2外側ゴム層において、短繊維の割合は、それぞれ、ゴム成分(第2のゴム成分)100質量部に対して、例えば30質量部以下、好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0077】
(C)フィラー
前記架橋ゴム組成物は、前記ゴム成分に加えてフィラーをさらに含んでいてもよい。フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカなどが挙げられる。フィラーは、補強性フィラーを含む場合が多く、このような補強性フィラーは、カーボンブラック、補強性シリカなどであってもよい。なお、通常、シリカの補強性は、カーボンブラックの補強性よりも小さい。これらのフィラーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。本開示では、耐側圧性を向上させるため、補強性フィラーを含むのが好ましく、カーボンブラックを含むのが特に好ましい。
【0078】
カーボンブラックの平均粒径(個数平均一次粒径)は、例えば5~200nm、好ましくは10~150nm、さらに好ましくは15~100nmであり、補強効果が高い点から、小粒径であってもよく、例えば5~38nm、好ましくは10~35nm、さらに好ましくは15~30nmである。小粒径のカーボンブラックとしては、例えば、SAF、ISAF-HM、ISAF-LM、HAF-LS、HAF、HAF-HSなどが例示できる。これらのカーボンブラックは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0079】
フィラー(特に、カーボンブラック)の割合は、ゴム成分100質量部に対して、例えば10~100質量部、好ましくは12~80質量部、さらに好ましくは15~70質量部、より好ましくは20~60質量部である。
【0080】
外側ゴム層および内側ゴム層が二層構造である場合、第1内側ゴム層および第1外側ゴム層において、フィラー(特に、カーボンブラック)の割合は、それぞれ、ゴム成分(第1のゴム成分)100質量部に対して、例えば10~100質量部、好ましくは20~80質量部、さらに好ましくは30~70質量部、より好ましくは40~60質量部である。第2内側ゴム層および第2外側ゴム層において、フィラー(特に、カーボンブラック)の割合は、それぞれ、ゴム成分(第2のゴム成分)100質量部に対して、例えば5~80質量部、好ましくは10~60質量部、さらに好ましくは15~50質量部、より好ましくは20~40質量部である。
【0081】
カーボンブラックの割合は、フィラー全体に対して例えば50質量%以上であってもよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。フィラー全体に対するカーボンブラックの割合が少なすぎると、内側ゴム層および外側ゴム層のゴム硬度が低下する虞がある。
【0082】
(D)他の添加剤
前記架橋ゴム組成物は、必要に応じて、架橋剤(または加硫剤)、共架橋剤(架橋助剤)、架橋促進剤、架橋遅延剤、金属酸化物(酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、軟化剤(パラフィンオイル、ナフテン系オイルなどのオイル類など)、加工剤または加工助剤(例えば、ステアリン酸などの脂肪酸、ステアリン酸金属塩などの脂肪酸金属塩、ステアリン酸アマイドなどの脂肪酸アマイド、ワックス、パラフィンなど)、接着性改善剤[例えば、レゾルシン-ホルムアルデヒド共縮合物(RF縮合物)、アミノ樹脂(窒素含有環状化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、例えば、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサアルコキシメチルメラミン(ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミンなど)などのメラミン樹脂、メチロール尿素などの尿素樹脂、メチロールベンゾグアナミン樹脂などのベンゾグアナミン樹脂など)、これらの共縮合物(レゾルシン-メラミン-ホルムアルデヒド共縮合物など)など]、老化防止剤(酸化防止剤、熱老化防止剤、屈曲き裂防止剤、オゾン劣化防止剤など)、可塑剤[脂肪族カルボン酸系可塑剤(アジピン酸エステル系可塑剤、セバシン酸エステル系可塑剤など)、芳香族カルボン酸エステル系可塑剤(フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤など)、オキシカルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、エーテル系可塑剤、エーテルエステル系可塑剤など]、着色剤、粘着付与剤、滑剤、カップリング剤(シランカップリング剤など)、安定剤(紫外線吸収剤、熱安定剤など)、難燃剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。なお、金属酸化物は、架橋剤として作用してもよい。また、接着性改善剤において、レゾルシン-ホルムアルデヒド共縮合物およびアミノ樹脂は、レゾルシンおよび/または窒素含有環状化合物(メラミンなど)とホルムアルデヒドとの初期縮合物(プレポリマー)であってもよい。
【0083】
架橋剤としては、ゴム成分の種類に応じて慣用の成分が使用でき、例えば、金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛など)、有機過酸化物(ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイドなど)、硫黄系架橋剤などが例示できる。硫黄系架橋剤としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、塩化硫黄(一塩化硫黄、二塩化硫黄など)などが挙げられる。これらの架橋剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。ゴム成分がクロロプレンゴムである場合、架橋剤として金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化亜鉛など)を使用してもよい。なお、金属酸化物は、他の架橋剤(硫黄系架橋剤など)と組み合せて使用してもよく、金属酸化物および/または硫黄系架橋剤は、単独でまたは架橋促進剤と組み合わせて使用してもよい。
【0084】
架橋剤の割合は、架橋剤およびゴム成分の種類に応じて、固形分換算で、ゴム成分100質量部に対して例えば1~20質量部程度の範囲から選択できる。例えば、架橋剤としての金属酸化物の割合は、ゴム成分100質量部に対して、例えば1~20質量部、好ましくは3~17質量部、さらに好ましくは5~15質量部、より好ましくは7~13質量部である。架橋剤としての金属酸化物と硫黄系架橋剤とを組み合わせる場合、硫黄系架橋剤の割合は、金属酸化物100質量部に対して、例えば0.1~50質量部、好ましくは1~30質量部、さらに好ましくは3~10質量部程度である。有機過酸化物の割合は、ゴム成分100質量部に対して例えば1~8質量部、好ましくは1.5~5質量部、さらに好ましくは2~4.5質量部である。
【0085】
共架橋剤(架橋助剤または共加硫剤co-agent)としては、公知の架橋助剤、例えば、多官能(イソ)シアヌレート[例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)など]、ポリジエン(例えば、1,2-ポリブタジエンなど)、不飽和カルボン酸の金属塩[例えば、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸マグネシウムなどの(メタ)アクリル酸多価金属塩]、オキシム類(例えば、キノンジオキシムなど)、グアニジン類(例えば、ジフェニルグアニジンなど)、多官能(メタ)アクリレート[例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート]、ビスマレイミド類(脂肪族ビスマレイミド、例えば、N,N’-1,2-エチレンジマレイミド、N,N′-ヘキサメチレンビスマレイミド、1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)シクロヘキサンなどのアルキレンビスマレイミド;アレーンビスマレイミドまたは芳香族ビスマレイミド、例えば、N,N’-m-フェニレンジマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレジマレイミド、4,4’-ジフェニルメタンジマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-ジフェニルエーテルジマレイミド、4,4’-ジフェニルスルフォンジマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼンなど)などが挙げられる。これらの架橋助剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの架橋助剤のうち、多官能(イソ)シアヌレート、多官能(メタ)アクリレート、ビスマレイミド類(N,N’-m-フェニレンジマレイミドなどのアレーンビスマレイミドまたは芳香族ビスマレイミド)が好ましく、ビスマレイミド類を用いる場合が多い。架橋助剤(例えば、ビスマレイミド類)の添加により架橋度を高め、粘着摩耗などを防止できる。
【0086】
ビスマレイミド類などの共架橋剤(架橋助剤)の割合は、固形分換算で、ゴム成分100質量部に対して、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.5~8質量部、さらに好ましくは1~5質量部、より好ましくは2~4質量部である。
【0087】
架橋促進剤(加硫促進剤)としては、例えば、チウラム系促進剤[例えば、テトラメチルチウラム・モノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラム・ジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラム・ジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラム・ジスルフィド(TBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、N,N’-ジメチル-N,N’-ジフェニルチウラム・ジスルフィドなど]、チアゾ-ル系促進剤[例えば、2-メルカプトベンゾチアゾ-ル、2-メルカプトベンゾチアゾ-ルの亜鉛塩、2-メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなど]、スルフェンアミド系促進剤[例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N,N’-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドなど]、グアニジン類(ジフェニルグアニジン、ジo-トリルグアニジンなど)、ウレア系またはチオウレア系促進剤(例えば、エチレンチオウレアなど)、ジチオカルバミン酸塩類、キサントゲン酸塩類などが挙げられる。これらの架橋促進剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの架橋促進剤のうち、TMTD、DPTT、CBSなどが汎用される。
【0088】
架橋促進剤の割合は、固形分換算で、ゴム成分100質量部に対して15質量部以下(例えば0~15質量部)であってもよく、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.2~5質量部、さらに好ましくは0.3~3質量部、より好ましくは0.5~1.5質量部である。
【0089】
軟化剤(ナフテン系オイルなどのオイル類)の割合は、固形分換算で、ゴム成分100質量部に対して30質量部以下(例えば0~30質量部)であってもよく、例えば1~30質量部、好ましくは3~20質量部、さらに好ましくは3~10質量部である。
【0090】
外側ゴム層および内側ゴム層が二層構造である場合、第1内側ゴム層および第1外側ゴム層において、軟化剤の割合は、それぞれ、ゴム成分(第1のゴム成分)100質量部に対して、例えば1~30質量部、好ましくは3~20質量部、さらに好ましくは3~10質量部である。第2内側ゴム層および第2外側ゴム層において、軟化剤の割合は、それぞれ、ゴム成分(第2のゴム成分)100質量部に対して、例えば20質量部以下、好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0091】
加工剤または加工助剤(ステアリン酸など)の割合は、固形分換算で、ゴム成分100質量部に対して10質量部以下(例えば0~10質量部)であってもよく、例えば0.1~5質量部、好ましくは0.5~3質量部、さらに好ましくは1~3質量部である。
【0092】
老化防止剤の割合は、固形分換算で、ゴム成分100質量部に対して、例えば0.5~15質量部、好ましくは1~10質量部、さらに好ましくは2.5~7.5質量部、より好ましくは3~7質量部である。
【0093】
可塑剤の割合は、固形分換算で、ゴム成分100質量部に対して30質量部以下(例えば0~30質量部)であってもよく、例えば0.5~20質量部、好ましくは1~10質量部、さらに好ましくは3~7質量部である。
【0094】
外側ゴム層および内側ゴム層が二層構造である場合、第1内側ゴム層および第1外側ゴム層において、可塑剤の割合は、それぞれ、ゴム成分(第1のゴム成分)100質量部に対して、例えば20質量部以下、好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。第2内側ゴム層および第2外側ゴム層において、可塑剤の割合は、それぞれ、ゴム成分(第2のゴム成分)100質量部に対して、例えば1~30質量部、好ましくは3~20質量部、さらに好ましくは3~10質量部である。
【0095】
(芯体層)
芯体層は、芯体を含んでいればよく、前述のように、芯体のみで形成された芯体層であってもよいが、層間の剥離を抑制し、ベルト耐久性を向上できる点から、芯体が埋設された架橋ゴム組成物で形成された芯体層(接着ゴム層)であるのが好ましい。芯体が埋設された架橋ゴム組成物で形成された芯体層は、通常、接着ゴム層と称され、ゴム成分を含む架橋ゴム組成物で形成された層内に、芯体が埋設されていてもよい接着ゴム層は、内側ゴム層と外側ゴム層との間に介在して内側ゴム層と外側ゴム層とを接着するとともに、接着ゴム層には芯体が埋設されているのが好ましい。
【0096】
芯体層(特に、接着ゴム層)の平均厚みは、例えば0.2~5mm、好ましくは0.3~4mm、さらに好ましくは0.5~3.5mm、より好ましくは0.8~3mm、最も好ましくは1~2.5mmである。
【0097】
(A)架橋ゴム組成物
芯体層(特に、接着ゴム層)を形成する架橋ゴム組成物のゴム硬度Hsは、例えば72~80°、好ましくは73~78°、さらに好ましくは75~77°である。ゴム硬度が小さすぎると、耐側圧性が低下する虞があり、逆に大きすぎると、芯体の周囲の架橋ゴム組成物が剛直となって芯体が屈曲し難くなり、芯体層の発熱劣化(亀裂)、芯体の屈曲疲労などが生じて、芯体が剥離する虞がある。
【0098】
芯体層(特に、接着ゴム層)を形成する架橋ゴム組成物の引張強度は、ベルト幅方向において、例えば12~20MPa、好ましくは13~18MPa、さらに好ましくは14~17MPaである。引張強度が小さすぎると、耐側圧性が低下する虞があり、逆に大きすぎると、屈曲性が低下する虞がある。
【0099】
芯体層を形成する架橋ゴム組成物を構成するゴム成分(A1)としては、内側ゴム層および外側ゴム層のゴム成分(A)として例示されたゴム成分を利用でき、好ましい態様も前記ゴム成分(A)における好ましい態様から選択できる。
【0100】
芯体層の架橋ゴム組成物は、前記ゴム成分(A1)に加えて、フィラー(A2)をさらに含んでいてもよい。フィラー(A2)としては、内側ゴム層および外側ゴム層のフィラー(C)として例示されたフィラーを利用できる。前記フィラーのうち、カーボンブラック、補強性シリカが好ましく、カーボンブラックと補強性シリカとの組み合わせが特に好ましい。
【0101】
芯体層において、フィラー(A2)の割合は、ゴム成分(A1)100質量部に対して、例えば1~100質量部、好ましくは10~80質量部、さらに好ましくは30~70質量部、より好ましくは40~60質量部である。カーボンブラックと補強性シリカとを組み合わせる場合、補強性シリカの割合は、カーボンブラック100質量部に対して、例えば10~200質量部、好ましくは30~100質量部、さらに好ましくは50~80質量部である。
【0102】
芯体層の架橋ゴム組成物は、前記ゴム成分(A1)に加えて、他の添加剤(A3)をさらに含んでいてもよい。他の添加剤(A3)としては、内側ゴム層および外側ゴム層の他の添加剤(D)として例示された添加剤を利用でき、架橋剤、架橋促進剤、加工剤または加工助剤、可塑剤、老化防止剤などを好ましく利用できる。他の添加剤(A3)の割合は、好ましい範囲も含めて内側ゴム層および外側ゴム層の添加剤(D)と同様の範囲から選択できる。
【0103】
(B)芯体
芯体層に含まれる芯体は、特に限定されないが、通常、ベルト幅方向に所定の間隔で配列した心線(撚りコード)である。心線は、ベルトの長手方向に延びて配設され、ベルトの長手方向に平行に所定のピッチで並列的に延びて配設されていてもよいが、生産性の点から、通常、ベルト長手方向に略平行に、所定のピッチで並列的に延びて螺旋状に配設されている。螺旋状に配設する場合、ベルト長手方向に対する心線の角度は、例えば5°以下であってもよく、ベルト走行性の点から、0°に近いほど好ましい。また、隣接する芯体の中心間の距離であるピッチまたは間隔(特に、心線のスピンニングピッチ)は、1.0~3.6mmの範囲に設定されることが好ましく、1.2~3mmの範囲に設定されることがさらに好ましく、1.4~2.4mmの範囲に設定されることがより好ましい。
【0104】
芯体は、芯体層を構成する接着ゴム中に埋設される場合、その一部が接着ゴムに埋設されていればよく、耐久性を向上できる点から、芯体層の表面に芯体が露出していない形態(芯体の全体が接着ゴム中に完全に埋設された形態)が好ましい。芯体としては、心線が好ましい。
【0105】
心線を構成する繊維としては、例えば、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)、ポリアミド繊維[ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維、ポリアミド46繊維などの脂肪族ポリアミド繊維(ナイロン繊維)、アラミド繊維など]、ポリエステル繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維)[ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などのポリC2-4アルキレン-C8-14アリレート系繊維など]、ビニロン繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維などの合成繊維;綿、麻、羊毛などの天然繊維;炭素繊維などの無機繊維などが汎用される。これらの繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0106】
これらの繊維のうち、高モジュラスの点から、エチレンテレフタレート、エチレン-2,6-ナフタレートなどのC2-4アルキレン-C8-14アリレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維)、ポリアミド繊維(アラミド繊維など)などの合成繊維、炭素繊維などの無機繊維などが汎用され、ポリエステル繊維(特に、ポリエチレンテレフタレート系繊維、ポリエチレンナフタレート系繊維)、ポリアミド繊維(特に、アラミド繊維)が好ましい。
【0107】
繊維はマルチフィラメント糸の形態であってもよい。マルチフィラメント糸の繊度は、例えば2000~10000デニール(特に4000~8000デニール)であってもよい。マルチフィラメント糸は、例えば100~5000本程度のフィラメントを含んでいてもよく、好ましくは500~4000本、さらに好ましくは1000~3000本のフィラメントを含んでいてもよい。
【0108】
心線としては、通常、マルチフィラメント糸を使用した撚りコード(例えば、諸撚り、片撚り、ラング撚りなど)を使用できる。心線の平均線径(撚りコードの繊維径)は、例えば0.5~3mmであってもよく、好ましくは0.6~2.5mm、さらに好ましくは0.7~2mm、より好ましくは1.1~2mmである。
【0109】
心線は、接着ゴム中に埋設させる場合、前記接着ゴムを形成する架橋ゴム組成物との接着性を向上させるため、表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、前記内側ゴム層および外側ゴム層の短繊維(B)の表面処理剤として例示された表面処理剤などが挙げられる。前記表面処理剤は、単独でまたは二種以上組み合わせてもよく、同一または異なる表面処理剤で複数回に亘り順次に処理してもよい。心線は、少なくともRFL液で接着処理するのが好ましい。
【0110】
(内側外被材および外側外被材)
内側外被材および外側外被材は、それぞれ内側外被布帛および外側外被布帛を含む。内側外被布帛および外側外被布帛(カバー布)は、それぞれ慣用の布帛(A)で形成されている。布帛(A)としては、例えば、織布、編布(緯編布、経編布)、不織布などの布材などが挙げられる。これらのうち、平織、綾織、朱子織などの形態で製織した織布、経糸と緯糸との交差角が90°を超え120°以下程度の広角度で製織した織布、編布などが好ましく、一般産業用や農業機械用の伝動ベルトのカバー布として汎用されている織布[経糸と緯糸との交差角が直角である平織布、経糸と緯糸との交差角が90°を超え120°以下程度の広角度である平織布(広角度帆布)]が特に好ましい。さらに、耐久性が要求される用途では、広角度帆布であってもよい。
【0111】
布帛(A)を構成する繊維としては、例えば、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)、ポリアミド系繊維(ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維、ポリアミド46繊維、アラミド繊維など)、ポリエステル系繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維など)、ビニルアルコール系繊維(ポリビニルアルコール繊維、エチレン-ビニルアルコール共重合体繊維、ビニロン繊維など)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維などの合成繊維;セルロース系繊維(セルロース繊維、セルロース誘導体の繊維など)、羊毛などの天然繊維;炭素繊維などの無機繊維が汎用される。これらの繊維は、単独で使用した単独糸であってもよく、二種以上を組み合わせた混紡糸であってもよい。
【0112】
これらの繊維のうち、機械的特性および経済性に優れる点から、ポリエステル系繊維とセルロース系繊維との混紡糸が好ましい。
【0113】
ポリエステル系繊維は、ポリアルキレンアリレート系繊維であってもよい。ポリアルキレンアリレート系繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などのポリC2-4アルキレン-C8-14アリレート系繊維などが挙げられる。
【0114】
セルロース系繊維には、セルロース繊維(植物、動物またはバクテリアなどに由来するセルロース繊維)、セルロース誘導体の繊維が含まれる。セルロース繊維としては、例えば、木材パルプ(針葉樹、広葉樹パルプなど)、竹繊維、サトウキビ繊維、種子毛繊維(綿繊維(コットンリンター)、カポックなど)、ジン皮繊維(麻、コウゾ、ミツマタなど)、葉繊維(マニラ麻、ニュージーランド麻など)などの天然植物由来のセルロース繊維(パルプ繊維);ホヤセルロースなどの動物由来のセルロース繊維;バクテリアセルロース繊維;藻類のセルロースなどが例示できる。セルロース誘導体の繊維としては、例えば、セルロースエステル繊維;再生セルロース繊維(レーヨン、キュプラ、リヨセルなど)などが挙げられる。
【0115】
ポリエステル系繊維とセルロース系繊維との質量割合は、例えば前者/後者=90/10~10/90、好ましくは80/20~20/80、さらに好ましくは70/30~30/70、より好ましくは60/40~40/60である。
【0116】
布帛(A)を構成する繊維の平均繊度は、例えば5~30番手、好ましくは10~25番手、さらに好ましくは10~20番手である。
【0117】
布帛(原料布帛)(A)の目付量は、例えば100~500g/m、好ましくは200~400g/m、さらに好ましくは250~350g/mである。
【0118】
布帛(原料布帛)(A)が織布の場合、布帛の糸密度(経糸および緯糸の密度)は、例えば60~100本/50mm、好ましくは70~90本/50mm、さらに好ましくは75~85本/50mmである。
【0119】
内側外被布帛および外側外被布帛は、それぞれ単層であってもよく、多層(例えば2~5層、好ましくは2~4層、さらに好ましくは2~3層程度)であってもよいが、生産性などの点から、単層(1プライ)または2層(2プライ)が好ましい。
【0120】
内側外被材および外側外被材は、ベルト本体(内側ゴム層および外側ゴム層)または後述する補強材との接着性を向上させるために、それぞれ内側外被布帛および外側外被布帛に加えて、ゴム成分として架橋ゴム組成物をさらに含んでいてもよい。ゴム成分は、内側外被材および外側外被材に浸透していてもよく、表面付近に浸透していてもよく、表面に付着していてもよい。架橋ゴム組成物を含む内側外被材および外側外被材の製造方法としては、例えば、ゴム組成物を溶剤に溶かしたゴム糊で内側外被布帛および外側外被布帛をソーキング(浸漬)する方法、内側外被布帛および外側外被布帛に固形状のゴム組成物をフリクション(擦り込み)する方法などが挙げられる。ゴム成分は、内側外被布帛および外側外被布帛の少なくとも一方の面に、ゴム成分を付着させればよく、少なくともベルト本体と接触する面に付着させるのが好ましい。
【0121】
内側外被材および外側外被材にそれぞれ含まれる架橋ゴム組成物(以下「外被材の架橋ゴム組成物」と称する)を構成するゴム成分(a)としては、内側ゴム層および外側ゴム層のゴム成分(A)として例示されたゴム成分を利用でき、好ましい態様も前記ゴム成分(A)における好ましい態様から選択できる。
【0122】
外被材の架橋ゴム組成物は、前記ゴム成分(a)に加えて、フィラー(b)をさらに含んでいてもよい。フィラー(b)としては、内側ゴム層および外側ゴム層のフィラー(C)として例示されたフィラーを利用でき、好ましい態様およびフィラー中のカーボンブラックの割合も前記フィラー(C)における態様および割合から選択できる。
【0123】
外被材の架橋ゴム組成物において、フィラー(b)(特に、カーボンブラック)の割合は、ゴム成分(a)100質量部に対して、例えば5~80質量部、好ましくは10~75質量部、さらに好ましくは30~70質量部、より好ましくは40~60質量部である。
【0124】
外被材の架橋ゴム組成物は、前記ゴム成分(a)に加えて、可塑剤(c)をさらに含んでいてもよい。可塑剤(c)としては、内側ゴム層および外側ゴム層の可塑剤として例示された可塑剤を利用できる。前記可塑剤のうち、エーテルエステル系可塑剤が好ましい。可塑剤(c)の割合は、ゴム成分(a)100質量部に対して、例えば3~50質量部、好ましくは5~40質量部、さらに好ましくは10~30質量部、より好ましくは15~25質量部である。
【0125】
外被材の架橋ゴム組成物は、前記ゴム成分(a)に加えて、他の添加剤(d)をさらに含んでいてもよい。他の添加剤(d)としては、内側ゴム層および外側ゴム層の他の添加剤(D)として例示された添加剤を利用でき、架橋剤、架橋促進剤、加工剤または加工助剤、老化防止剤などを好ましく利用できる。他の添加剤(d)の割合は、好ましい範囲も含めて内側ゴム層および外側ゴム層の添加剤(D)と同様の範囲から選択できる。
【0126】
内側外被材において、架橋ゴム組成物の割合は、内側外被布帛100質量部に対して、例えば10~200質量部、好ましくは50~100質量部、さらに好ましくは70~90質量部である。外側外被材における架橋ゴム組成物の割合も、好ましい範囲も含めて、内側外被材における割合から選択できる。
【0127】
内側外被材および外側外被材の平均厚み(多層の場合、各層の平均厚み)は、それぞれ、例えば0.4~2mm、好ましくは0.5~1.4mm、さらに好ましくは0.6~1.2mmである。外被布の厚みが薄すぎると、耐摩耗性が低下する虞があり、厚すぎると、ベルトの耐屈曲性が低下する虞がある。
【0128】
(内側補強材および外側補強材)
内側補強材および外側補強材は、それぞれ内側補強布帛および外側補強布帛を含む。内側補強布帛および外側補強布帛は、それぞれ慣用の布帛(A1)で形成されている。布帛(A1)としては、内側外被材および外側外被材の布帛(A)として例示された布帛を利用でき、好ましい態様も含めて、前記布帛(A)と同様の態様から選択できる。
【0129】
内側補強材は、内側ゴム層および内側外被材との接着性を向上させるために、内側補強布帛に加えて、架橋ゴム組成物をさらに含んでいてもよく、外側補強材は、外側ゴム層および外側外被材との接着性を向上させるために、架橋ゴム組成物をさらに含んでいてもよい。
【0130】
内側補強材および外側補強材にそれぞれ含まれる架橋ゴム組成物としては、外被材の架橋ゴム組成物を利用でき、好ましい態様も外被材の架橋ゴム組成物の好ましい態様から選択できる。
【0131】
内側補強材および外側補強材の平均厚み(多層の場合、各層の平均厚み)は、それぞれ、例えば0.4~2mm、好ましくは0.5~1.4mm、さらに好ましくは0.6~1.2mmである。補強布の厚みが薄すぎると、摩擦伝動面の補強効果が低下する虞があり、厚すぎると、ベルトの耐屈曲性が低下する虞がある。
【0132】
内側補強材および外側補強材の一方は、芯体層の側面を被覆してもよく、内側補強材が芯体層の側面を被覆するのが好ましい。
【0133】
[連結部]
連結部は、隣接する六角ベルト部同士を連結している。間隔をあけずに六角ベルト部が並んだ態様では、連結部は、隣接する内側外被材同士の境界および外側外被材同士の境界である。一方、間隔をあけて六角ベルト部が並ぶ態様では、連結部は、ベルト内周面を形成する内側連結材と、ベルト外周面を形成する外側連結材とを含む。
【0134】
内側連結材および外側連結材は、それぞれ内側連結布帛および外側連結布帛を含む。内側連結布帛および外側連結布帛は、それぞれ慣用の布帛(A2)で形成されている。布帛(A2)としては、内側外被材および外側外被材の布帛(A)として例示された布帛を利用でき、好ましい態様も含めて、前記布帛(A)の態様から選択できる。
【0135】
内側連結材および外側連結材は、それぞれ架橋ゴム組成物との接着性を向上させるために、内側連結布帛および外側連結布帛に加えて、架橋ゴム組成物をさらに含んでいてもよい。内側連結材および外側連結材にそれぞれ含まれる架橋ゴム組成物としては、外被材の架橋ゴム組成物を利用でき、好ましい態様も外被材の架橋ゴム組成物の好ましい態様から選択できる。
【0136】
内側連結材および外側連結材の平均厚み(多層の場合、各層の平均厚み)は、それぞれ、例えば0.4~2mm、好ましくは0.5~1.4mm、さらに好ましくは0.6~1.2mmである。連結材の厚みが薄すぎると、連結効果が低下する虞があり、厚すぎると、ベルトの耐屈曲性が低下する虞がある。
【0137】
連結部は、前記内側連結材と前記外側連結材との間に、架橋ゴム組成物で形成されたゴム層を含んでいてもよい。ゴム層を形成する架橋ゴム組成物は、内側ゴム層、芯体層および外側ゴム層を形成するためのゴム組成物(特に、芯体層のゴム組成物)の一部が流出した架橋ゴム組成物であってもよい。そのため、ゴム層の架橋ゴム組成物は、芯体層の架橋ゴム組成物と同一であってもよい。
【0138】
〈結合六角ベルトの製造方法〉
本開示の結合六角ベルトは、プレス用モールド内に配設した結合六角ベルト前駆体を加熱および加圧して架橋成形する架橋成形工程を含む製造方法によって得られる。本開示の製造方法は、前記架橋成形工程を経ることによって結合六角ベルトを製造でき、個々の六角ベルトを予め架橋成形した後に連結する必要がない。そのため、本開示の製造方法では、製造が困難である結合六角ベルトを高い生産効率で簡便に製造できる。詳しくは、本開示の製造方法では、プレス用モールド内に配設した結合六角ベルト前駆体を加熱および加圧することにより、前記結合六角ベルト前駆体に含まれる未架橋ゴム成分の架橋反応が進行して、結合六角ベルト前駆体の構成材料が一体化(接着)されると同時に、目的の形状に成形される。特に、連結部が架橋ゴム組成物を含む場合、架橋成形工程において、六角ベルト部の架橋成形と連結部の架橋成形とを同時に行うことができる。すなわち、本開示の製造方法では、架橋成形工程において、下記の3つの工程1~3を同時に行うことにより、個々の六角ベルト部の架橋成形と、複数の六角ベルト部の連結とを1つの工程で完結できる。
【0139】
結合六角ベルト前駆体に含まれる未架橋ゴム成分を架橋させる工程1
(各材料に含まれる未架橋ゴム成分の架橋反応によって)結合六角ベルト前駆体を構成する各材料を接着して一体化させる工程2
(所定の連結部の構造が形成されることも含めて)結合六角ベルトの外観を所定形状に成形する工程3。
【0140】
前記プレス用モールドは、結合六角ベルトの内側形状に対応した内側溝部を有する内側プレス用モールドと、結合六角ベルトの外側形状に対応した外側溝部を有する外側プレス用モールドとを組み合わせたプレス用モールドであるのが好ましい。
【0141】
前記結合六角ベルト前駆体は、内側布帛を形成するための内側布帛前駆体と、外側布帛を形成するための外側布帛前駆体と、未架橋ゴム組成物を含む六角ベルト部前駆体とを含むのが好ましい。
【0142】
本開示の結合六角ベルトの製造方法は、前記結合六角ベルト前駆体が前記六角ベルト部前駆体を含む場合、前記架橋成形工程の前工程として、六角ベルト部前駆体作製工程をさらに有していてもよい。
【0143】
[六角ベルト部前駆体作製工程]
六角ベルト部前駆体作製工程において、前記六角ベルト部前駆体(未架橋六角ベルト部)は、ラップドVベルトなどの製造で用いられる慣用の方法に準じた方法で作製してもよい。六角ベルト部前駆体の作製方法としては、例えば、WO2015/104778に記載のVベルトの製造方法などに準じた方法などが挙げられる。
【0144】
特に、本開示の製造方法では、六角ベルト部を作製する方法は、内側ゴム層を形成するための内側ゴム層前駆体(内側ゴム層用シート)と、芯体層を形成するための芯体層前駆体と、外側ゴム層を形成するための外側ゴム層前駆体(外側ゴム層用シート)との積層体である六角ベルト部全体の前駆体を作製する方法(一体化型の製造方法)であってもよく、六角ベルト部を分割した前駆体を作製する方法(分割型の製造方法)、すなわち内側六角ベルト部前駆体および外側六角ベルト部前駆体をそれぞれ別個に作製する方法であってもよい。これらのうち、補強材を含まない態様では、簡便性などの点から、一体化型の製造方法が好ましく、補強材を含む態様では、強固な連結部を容易に形成できる点から、分割型の製造方法が好ましい。
【0145】
(補強材を含まない態様)
補強材を含まない態様では、六角ベルト部全体の前駆体を作製する方法(作製工程)は、外側ゴム層を形成するための外側ゴム層前駆体に、芯体層を形成するための芯体層前駆体を積層し、前記芯体層前駆体に、内側ゴム層を形成するための内側ゴム層前駆体を積層した後、前記内側ゴム層前駆体および前記外側ゴム層前駆体の側面を切削加工する方法(工程)であってもよい。
【0146】
具体的な作製工程について、図面を参照して説明する。補強材を含まない態様では、図9に示すように、圧延処理して得られた未架橋の外側ゴム層用シート25をマントルにセッティングし、未架橋の接着ゴム層用シート22bを外側ゴム層用シート25の外周に巻き付けた後、巻き付けた接着ゴム層用シート22bの外周に芯体22aを巻き付け、さらに巻き付けた芯体22aの外周に未架橋の接着ゴム層用シート22b、および内側ゴム層用シート23を順に巻き付ける巻付け工程、得られた環状の積層体(未架橋スリーブ)20をマントル外周に配置した状態で切断(輪切り)する切断工程、切断した環状積層体20aを一対のプーリに架け渡し、図10に示すように、回転させながらV形状に切削加工するスカイブ工程(内側ゴム層用シート23の余剰部23aおよび外側ゴム層用シートの余剰部25aを除去する工程)を経て、六角ベルト部前駆体(未架橋の六角ベルト部)を得ることができる。
【0147】
(補強材を含む態様)
補強材を含む態様では、前記内側六角ベルト部前駆体を作製する方法(作製工程)は、外側ゴム層の一部を形成するための薄肉外側ゴム層前駆体に、芯体層を形成するための芯体層前駆体を積層し、前記芯体層前駆体に、内側ゴム層を形成するための内側ゴム層前駆体を積層した後、前記内側ゴム層前駆体の側面を切削加工する方法(工程)であってもよい。
【0148】
前記外側六角ベルト部前駆体を作製する方法(作製工程)は、外側ゴム層の残部を形成するための厚肉外側ゴム層前駆体の側面を切削加工する工程であってもよい。
【0149】
具体的な作製工程について、図面を参照して説明する。補強材を含まないむ態様では、図11に示すように、剥離シート(ナイロンフィルムなど)36aをマントルにセッティングし、その外周に未架橋の薄肉外側ゴム層用シート(外側ゴム層の一部を形成する薄いシート)35a、および未架橋の接着ゴム層用シート32bを順に巻き付けた後、巻き付けた接着ゴム層用シート32bの外周に芯体32aを巻き付け、さらに巻き付けた芯体32aの外周に未架橋の接着ゴム層用シート32b、および内側ゴム層用シート33を順に巻き付ける巻付け工程、得られた環状の積層体(未架橋スリーブ)30をマントル外周に配置した状態で切断(輪切り)する切断工程を経て環状積層体30aを得る。
【0150】
図12に示すように、切断した環状積層体30aを一対のプーリに架け渡し、回転させながらV形状に切削加工するスカイブ工程(余剰部33aを除去する工程)を経て、スカイブされた環状積層体を得る。この時点では、得られた環状積層体は、剥離シート36aを含んでいる。
【0151】
次に、スカイブされた環状積層体に対して、全面を全長に亘って被覆するように、補強材前駆体31aをカバーリングする。補強材前駆体31aをカバーリングする方法としては、特開平10-323915号公報、特開2016-87885号公報などに記載の公知の方法を利用できる。カバーリングを行う補強材前駆体の枚数は必要に応じて選択できる。
【0152】
さらに、補強材前駆体31aでカバーリングされた環状積層体に対して、前駆体背面側の補強材前駆体の剥離(除去)を行う。この方法に制限はないが、生産性の観点では、背面側の両端でトリムカット(逆スカイブ)を行い(剥離シートを除去するために端部37aを除去し)、補強材前駆体と剥離シートとの積層体37bを剥離(上部補強材剥離)することにより、剥離シートと共に補強材前駆体を剥離する方法が好ましい。この処理によって、内側六角ベルト部前駆体(未架橋の内側六角ベルト部)が得られる。
【0153】
また、外側六角ベルト部前駆体(未架橋の外側六角ベルト部)は、図13に示すように、マントルに剥離用シート(ナイロンフィルムなど)36b、および未架橋の厚肉外側ゴム層用シート35bを順に巻き付ける巻付け工程、得られた環状の積層体をマントル上で切断(輪切り)する切断工程、切断した環状積層体を一対のプーリに架け渡し、回転させながらV形状に切削加工するスカイブ工程(余剰部35cを除去する工程)、スカイブされた環状積層体に対して、全面を全長に亘って被覆するように、補強材前駆体31bをカバーリングするカバーリング工程、背面側の両端でトリムカット(逆スカイブ)する逆スカイブ工程(余剰部38aを除去する工程)、補強材前駆体と剥離シートとの積層体38bを剥離(上部補強材剥離)することにより、剥離シートと共に補強材前駆体を剥離する剥離工程を経て得ることができる。
【0154】
補強材を含む態様では、六角ベルト部を作製する方法を分割型の製造方法とすることにより、後述する架橋成形工程において、補強材前駆体(内側補強材前駆体)31aと補強材前駆体(外側補強材前駆体)31bとの隙間から、内側ゴム層、芯体層および外側ゴム層を形成するためのゴム組成物(特に、芯体層のゴム組成物)の一部が連結部に流出することにより、連結部において、連結布帛とゴム組成物とが一体化して強固な連結部を形成できる。
【0155】
薄肉外側ゴム層用シートの平均厚みは、外側ゴム層用シート全体の平均厚み(第1の外側ゴム層用シートおよび第2の外側ゴム層用シートの合計厚み)に対して、例えば10~50%、好ましくは20~40%、さらに好ましくは25~35%である。
【0156】
なお、内側ゴム層または外側ゴム層を2層以上の積層構造にする場合は、上記の未架橋の外側ゴム層用シートや内側ゴム層シートを、必要に応じて複数の種類のシートを積層させて配置すればよい。
【0157】
[架橋成形工程]
得られた六角ベルト部前駆体を含む結合六角ベルト前駆体は、プレス用モールド内に配設されて架橋成形工程に供される。架橋成形工程では、プレス用モールドが内側プレス用モールドと外側プレス用モールドとの組み合わせである場合、前記内側布帛前駆体を前記内側溝部に沿わせて配設し、前記内側布帛前駆体の上に前記六角ベルト部前駆体を積層した後、前記六角ベルト部前駆体に沿わせて前記外側布帛前駆体を配設した後、前記外側溝部を前記外側前駆体と接触させ、前記内側プレス用モールドと前記外側プレス用モールドとで前記結合六角ベルト前駆体を挟持してもよい。以下に図面を参照して架橋成形工程について説明する。
【0158】
図14において、架橋成形するための装置40を用いて、結合六角ベルト前駆体が架橋成形される全体図を示す。一対のプーリ44a,44bに巻き掛けられた状態で保持された複数の未架橋の環状体(内側布帛前駆体、六角ベルト部前駆体および外側布帛前駆体)41が、一対のプーリ44a,44b間において、2台のプレス用モールドによって挟持されている。
【0159】
前記2台のプレス用モールドは、図15および16に示されるように、それぞれ内部が結合六角ベルトの形状に対応した構造を有しており、第1のプレス用モールドは、断面台形状の内側溝部を有する内側プレス用モールド42aと断面台形状の外側溝部を有する外側プレス用モールド42bとの組み合わせであり、第2のプレス用モールドは、断面台形状の内側溝部を有する内側プレス用モールド43aと、断面台形状の外側溝部を有する外側プレス用モールド43bとの組み合わせである。前記内側プレス用モールド42a,43aと、前記外側プレス用モールド42b,43bとをそれぞれ組み合わせると、プレス用モールドの内部に六角ベルト部の形状に対応した断面六角形状の空洞部が形成されている。第1のプレス用モールドの内側プレス用モールド42aと、第2のプレス用モールドの内側プレス用モールド43aとの間には、熱盤45が配設されており、両プレス用モールドを加熱することができる。そのため、前記空洞部に結合六角ベルト前駆体を配設(嵌合)して加熱することにより、前記環状体41の一部を結合六角ベルトの形状に成形して架橋することができる。そして、一対のプーリ44a,44bを回転させることにより、環状体41を順次に周回移動させることができ、環状体41を全周に亘って順に架橋成形されると、結合六角ベルトが完成する。
【0160】
この装置を用いた架橋成形工程の詳細について以下に説明する。まず、図17に示されるように、内側プレス用モールド42aに形成された複数の断面逆台形状の溝部に、溝部に対応した形状を有する治具46aを用いて、内側布帛前駆体41aが嵌め込まれる。前記内側布帛前駆体41aは未架橋ゴム組成物を含んでいてもよい。
【0161】
次に、補強材を含まない態様では、図18に示されるように、内側布帛前駆体41aが嵌め込まれた各溝部に、前記六角ベルト部前駆体47が嵌め込まれた後、図19に示されるように、幅方向に並べられた各溝部に六角ベルト部前駆体が配列された状態で、その上(外周側)に、外側布帛前駆体41bが被せられ、治具46bによって前記外側布帛前駆体41bが六角ベルト部前駆体の輪郭に沿わせられる。前記外側布帛前駆体41bも未架橋ゴム組成物を含んでいてもよい。
【0162】
図20に示されるように、内側プレス用モールド42aにセットされた結合六角ベルト前駆体の外周面には、外側プレス用モールド42bが配設され、内側プレス用モールド42aと外側プレス用モールド42bとの間に結合六角ベルト前駆体が挟まれた状態で加圧されながら加熱される架橋成形工程に供される。
【0163】
一方、補強材を含む態様では、図21に示されるように、内側布帛前駆体41aが嵌め込まれた各溝部に、前記内側六角ベルト部前駆体48が嵌め込まれた後、図22に示されるように、前記内側六角ベルト部前駆体48の上(外周面)に前記外側六角ベルト部前駆体49が積層されることで、六角ベルト部前駆体が形成される。
【0164】
さらに、図23に示されるように、幅方向に並べられた各溝部に六角ベルト部前駆体が配列された状態で、その上(外周側)に、外側布帛前駆体41bが被せられ、治具46bによって前記外側布帛前駆体41bが六角ベルト部前駆体の輪郭に沿わせられる。前記外側布帛前駆体41bも未架橋ゴム組成物を含んでいてもよい。
【0165】
図24に示されるように、内側プレス用モールド42aにセットされた結合六角ベルト前駆体の上(外周面)には、外側プレス用モールド42bが配設され、内側プレス用モールド42aと外側プレス用モールド42bとの間に結合六角ベルト前駆体が挟まれた状態で加圧されながら加熱される架橋成形工程に供される。
【0166】
この架橋成形工程により、プレス用モールドの型枠形状に成形された状態で、ゴム成分の架橋反応により各前駆体が接合して一体的に架橋されると、複数の六角ベルト部が幅方向に連結して結合した架橋スリーブが形成される。この工程において、連結部は、内側布帛の一部である内側連結材および外側布帛の一部である外側連結材の他、前記内側連結材と外側連結材との間に六角ベルト部前駆体のゴム層から流出してきたゴム組成物とが一体的に架橋した複合体が形成される。すなわち、連結部は、内側連結材、架橋ゴム組成物、外側連結材の3成分で構成される複合体として形成される。
【0167】
なお、外被材および連結材を形成するための内側布帛前駆体および外側布帛前駆体は、未架橋ゴム組成物で処理(接着処理)することにより、内側布帛前駆体および外側布帛前駆体に付着した接着成分によって、各六角ベルト部前駆体(未架橋の六角ベルト部)と強固に結合できる。例えば、内側布帛前駆体および外側布帛前駆体として、固形状のゴム組成物をフリクション(擦り込み)する処理を施した織布(ゴム付き織布)を用いる場合は、フリクションゴム組成物の架橋反応により互いに結合される。すなわち、内側布帛前駆体および外側布帛前駆体を六角ベルト部前駆体に対してセットする工程には、内側布帛前駆体および外側布帛前駆体を介して複数の六角ベルト部前駆体を互いに結合する未架橋ベルト結合工程が含まれる。
【0168】
架橋成形工程において、加熱温度は、ゴム成分の種類に応じて選択でき、例えば120~200℃、好ましくは150~180℃である。圧力は、ゴム成分の種類に応じて選択でき、例えば0.1~10MPa、好ましくは0.5~3MPa、さらに好ましくは0.9~1.5MPaである。なお、本願において、前記圧力は、プレス面圧に換算した数値である。また、短繊維を含む各ゴム層用シートは、カレンダーロール等で圧延処理する方法などによって、短繊維を圧延方向に配列(配向)させることができる。
【0169】
このようにして形成された架橋スリーブが、図25に示されるように、所定幅に切断されることにより、所定本数(図25では6本)の六角ベルト部を有する結合六角ベルトが形成される。なお、図25は、補強材を含まない態様における結合六角ベルトの例である。
【実施例
【0170】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、ゴム組成物の使用原料、ゴム組成物の調製方法、使用した繊維材料、各物性の測定方法または評価方法を示す。
【0171】
[ゴム組成物の原材料]
クロロプレンゴム:DENKA(株)製「PM-40」
酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製「キョーワマグ30」
ステアリン酸:日油(株)製「ステアリン酸つばき」
老化防止剤:精工化学(株)製「ノンフレックスOD-3」
カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
シリカ:エボニックジャパン(株)製、「ULTRASIL(登録商標)VN3」、BET比表面積175m/g
可塑剤:ADEKA(株)製「アデカサイザーRS-700」
架橋促進剤:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーTT」
酸化亜鉛:正同化学工業(株)製「酸化亜鉛3種」
ナフテン系オイル:出光興産(株)製「NS-900」
N,N’-m-フェニレンジマレイミド:大内新興化学工業(株)製「バルノックPM」
アラミド短繊維:帝人(株)製「コーネックス短繊維」(平均繊維長3mm、平均繊維径14μm)を、RFL液(レゾルシン2.6質量部、37%ホルマリン1.4質量部、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス(日本ゼオン(株)製)17.2質量部、水78.8質量部)で接着処理した固形分の付着率6質量%の短繊維。
【0172】
[心線]
アラミド繊維の撚りコード、平均線径1.190mm。
【0173】
[接着ゴム層およびフリクションゴム用ゴム組成物]
表2に示す配合のゴム組成物Aをバンバリーミキサーで混練りし、この練りゴムをカレンダーロールに通して所定厚みの圧延ゴムシートとして、接着ゴム層用未架橋ゴムシートを作製した。また、表2に示すゴム組成物Bをバンバリーミキサーでゴム練りし、フリクション用の塊状未架橋ゴム組成物を調製した。さらに、それぞれのゴム組成物の架橋物(架橋ゴム)の硬度および引張強度を測定した結果も表2に示す。
【0174】
【表2】
【0175】
[内側ゴム層および外側ゴム層用ゴム組成物]
表3に示す配合のゴム組成物C~Dをバンバリーミキサーで混練りし、この練りゴムをカレンダーロールに通して所定厚みの圧延ゴムシートとして、内側ゴム層用未架橋ゴムシートおよび外側ゴム層用未架橋ゴムシートをそれぞれ作製した。さらに、それぞれのゴム組成物の架橋物(架橋ゴム)の硬度および引張強度を測定した結果も表3に示す。
【0176】
【表3】
【0177】
[架橋ゴムのゴム硬度Hs]
各ゴム層用未架橋ゴムシートを温度160℃、時間30分でプレス加熱し、架橋ゴムシート(100mm×100mm×2mm厚み)を作製した。架橋ゴムシートを3枚重ね合わせた積層物を試料とし、JIS K6253(2012)に規定されているスプリング式デュロメータ硬さ試験に準拠して、タイプAデュロメータを用いて架橋ゴムシートの硬度を測定した。なお、フリクション用の塊状未架橋ゴム組成物Bは、塊状ゴムから試験体をサンプリングし、カレンダーロールに通して所定厚みの未架橋圧延ゴムシートを調製した。
【0178】
[架橋ゴムの引張強度]
架橋ゴムのゴム硬度Hs測定のために作製した架橋ゴムシートを試料とし、JIS K6251(2017)に準じ、ダンベル状(5号形)に打ち抜いた試験片を作製した。短繊維を含む試料においては、短繊維の配列方向(列理平行方向)が引張方向となるようにダンベル状試験片を採取した。そして、試験片の両端をチャック(掴み具)で掴み、試験片を500mm/minの速度で切断するまで引っ張ったときに記録される最大引張力を試験片の初期断面積で除した値(引張強さT)を引張強度とした。
【0179】
[外被材、連結材および補強材]
ポリエステル繊維と綿との混紡糸(ポリエステル繊維/綿=50/50質量比)の織布(120°広角織り、繊度は20番手の経糸と20番手の緯糸、経糸および緯糸の糸密度75本/50mm、目付量280g/m)を、表2のゴム組成物Bを用いて、カレンダーロールの表面速度の異なるロール間にゴム組成物Bと織布とを同時に通過させ、織布の織り目の間にまでゴム組成物Bを擦り込む方法でフリクション処理(織布表裏に対して各1回行う)して補強材前駆体(ゴム付き織布)、外被材および連結材を形成するための内側および外側布帛前駆体(ゴム付き織布)を調製した。
【0180】
[結合六角ベルトの調製]
実施例1(内側ゴム層/外側ゴム層が単層で、補強材で被覆される態様)
外側ゴム層用シートおよび内側ゴム層用シートとしては、表3のゴム組成物Dを用いた。マントルの外周面に、剥離シート(ナイロンフィルム)、外側ゴム層用シート(厚み0.5mm)、接着ゴム層用シートを順に巻き付け、その外周面に心線を螺旋状にスピニングし、さらに、接着ゴム層用シート、内側ゴム層用シートを順に巻き付けて、未架橋の環状積層体(未架橋スリーブ)を形成した。得られた環状積層体がマントル外周に配置された状態で、所定の幅で周方向に切断(輪切り)し、複数の環状積層体を形成した。
【0181】
次に、切断した環状積層体をマントルから取り外し、一対のプーリに架け渡して回転させながら、環状積層体の両側面を所定の角度で切削(スカイブ)し、環状積層体の断面形状を、V字状に形成した。次に、スカイブされた環状積層体に対して、その全周囲を全長に亘って、補強材前駆体(ゴム付き織布)で覆うカバー巻き処理(カバーリング)を施した後、背面側の両端でトリムカット(逆スカイブ)を行い、剥離シートと共に補強材前駆体を剥離して除去することで、内側六角ベルト部前駆体を形成した。
【0182】
外側六角ベルト部前駆体については、マントルの外周面に剥離シート(ナイロンフィルム)、未架橋の外側ゴム層用シートを順に巻き付けて、未架橋の環状積層体(未架橋スリーブ)を形成する工程以外は、内側六角ベルト部前駆体と同様の手順で処理を施して形成した。
【0183】
そして、実施の形態に記載した方法で、内側布帛前駆体(ゴム付き織布)と、得られた6本の内側六角ベルト部前駆体および外側六角ベルト部前駆体と、外側布帛前駆体(ゴム付き織布)とを、プレス用モールドにセットし、1.2MPaまで加圧して、温度160℃で加熱して、6本の六角ベルト部(ARPM AA形、断面寸法:幅13mm×厚み8.510.2mm、ベルト長さ122インチ)が連結して結合した架橋スリーブを得た。得られた架橋スリーブを切断し、2本の六角ベルト部(図7に示す構造を有する六角ベルト部)を有する結合六角ベルトを形成した。
【0184】
実施例2(内側ゴム層が2層、外側ゴム層が単層で、補強材で被覆される態様)
外側ゴム層用シートおよび第2内側ゴム層用シートとしては、表3のゴム組成物Dを用い、第1内側ゴム層用シートとしては、硬度が高いゴム組成物Cを用いた。
【0185】
内側六角ベルト部前駆体の製造工程において、未架橋の環状積層体(未架橋スリーブ)を形成する工程で、心線を螺旋状にスピニングした後、接着ゴム層用シート、第1内側ゴム層用シート、第2内側ゴム層用シートの順に巻き付けることを除いては、実施例1と同様の方法で、2本の六角ベルト部を有する結合六角ベルトを形成した。なお、短繊維を含む第1内側ゴム層用シートは、短繊維をベルト幅方向に配列させた。
【0186】
実施例3(内側ゴム層/外側ゴム層がそれぞれ2層、補強布で被覆される態様)
第2外側ゴム層用シートおよび第2内側ゴム層用シートとしては、表3のゴム組成物Dを用い、第1外側ゴム層用シートおよび第1内側ゴム層用シートとしては、硬度が高いゴム組成物Cを用いた。
【0187】
内側六角ベルト部前駆体の製造工程において、未架橋の環状積層体(未架橋スリーブ)を形成する工程で、厚み0.5mmの外側ゴム層用シートとして、第1外側ゴム層用シートを用いるとともに、外側六角ベルト部前駆体の製造工程において、未架橋の環状積層体(未架橋スリーブ)を形成する工程で、マントルの外周面に剥離シート(ナイロンフィルム)、第1外側ゴム層用シート、第2外側ゴム層用シートを順に巻き付けることを除いては、実施例2と同様の方法で、2本の六角ベルト部(図8に示す構造を有する六角ベルト部)を有する結合六角ベルトを形成した。なお、短繊維を含む第1外側ゴム層用シートおよび第1内側ゴム層用シートは、短繊維をベルト幅方向に配列させた。
【0188】
実施例4(内側ゴム層が2層、外側ゴム層が単層で、補強材で被覆されない態様)
外側ゴム層用シートおよび第2内側ゴム層用シートとしては、表3のゴム組成物Dを用い、第1内側ゴム層用シートとしては、硬度が高いゴム組成物Cを用いた。
【0189】
実施形態で説明した補強材を含まない態様での製造方法で、2本の六角ベルト部を有する結合六角ベルトを形成した。
【0190】
比較例1
特開2020-3061号公報(特許文献4)の実施例5のラップド結合Vベルトを形成した。
【0191】
[ベルト走行試験(耐久性能)]
実施例で得られた結合六角ベルト、および比較例で得られたラップド結合Vベルトを用いて、表4に示す駆動プーリ(Dr1)、従動プーリ(Dn2およびDn3)、テンションプーリ(Ten4)、およびアイドラープーリ(ID5)からなるレイアウトのプーリを、図26に示すように、駆動プーリ(Dr1)51、テンションプーリ(Ten4)54、従動プーリ(Dn3)53、従動プーリ(Dn2)52、アイドラープーリ(ID5)55の順で配置した多軸レイアウトの試験機を用い、表5に示す条件でベルトを走行し、ベルトが破損するまでの時間を以下の基準で評価した。なお、走行中の負荷については、表6に示すように、従動プーリ(背面従動プーリ)Dn2に9.5kW、従動プーリDn3に23.0kW、合計32.5kWの負荷がかかる状態で行った。なお、実施例においてはDr1、Dn2、Dn3にVプーリを用い、Ten4、ID5には平プーリを用いた。比較例においてはDr1、Dn3にVプーリを用い、Dn2、Ten4、ID5には平プーリを用いた。
【0192】
(判定基準)
◎:240Hr完走し、亀裂や剥離などの異常が見られなかった
〇:240Hr完走し、若干の亀裂や剥離が見られた(性能に支障はない程度)
×:性能に支障が出るほどの異常(亀裂や剥離)が生じた。
【0193】
【表4】
【0194】
【表5】
【0195】
【表6】
【0196】
[ベルト走行試験(伝達性能)]
高性能に両面伝達ができるか否かは、ベルト外周面(背面)が平坦状に形成されているラップド結合Vベルト(比較例1)と比べて、ベルト外周側(背面側)での伝達性能がどれほど向上したかという観点で判断できる。ベルト外周側(背面側)での伝達性能は、ベルト外周側の摩擦伝動面と背面従動プーリDn2との間のスリップ率の値を指標とし、スリップ率の値が小さいほど、ベルト外周側(背面側)での伝達性能に優れ、高性能に両面伝達が可能と判定した。
【0197】
具体的には、実施例1~4、および比較例1について、前記の耐久性能試験と同様の多軸レイアウトの試験機を用い、耐久性能(表5の条件)を評価する走行の前後に、表6に示す負荷(従動プーリDn2に9.5kW、従動プーリDn3に23.0kW、合計32.5kW)がかかる状態でベルトを走行し、従動プーリ(背面従動プーリ)Dn2の回転数(rpm)を計測することにより、下記式に従ってスリップ率を算出した。なお、この計測における無負荷時の駆動プーリDr1、従動プーリDn2の回転数、および負荷時の駆動プーリDr1の回転数を表7に示した。
【0198】
走行後(240Hr完走後)のスリップ率の値(%)が1%未満の場合は、ベルト外周側(背面側)での伝達性能に優れ、高性能に両面伝達が可能と評価し、a判定とした。
走行後(240Hr完走後)のスリップ率の値(%)が1%以上の場合は、ベルト外周側(背面側)での伝達性能が劣り、高性能に両面伝達ができないと評価し、b判定とした。
本用途での実使用に対する適正の観点から、a判定のベルトを合格レベルとした。
【0199】
スリップ率(%)=[(K2-K1)/K1]×100
[式中、K1=R1/N1、K2=R2/N2であり、R1は無負荷運転時の駆動プーリの回転数(rpm)、N1は無負荷運転時の従動プーリの回転数(rpm)、R2は負荷運転時の駆動プーリの回転数(rpm)、N2は負荷運転時の従動プーリの回転数(rpm)を示す]
【0200】
【表7】
【0201】
得られた結合六角ベルトを走行評価した結果を表8に示す。
【0202】
【表8】
【0203】
表8の結果から、実施例の各結合六角ベルトは240Hr打ち切り時間までに顕著な異常が見られず、完走した。実施例2~4のように、内側(外側)ゴム層において、芯体層側に高硬度のゴム層を設ける態様が耐久性に効果を及ぼすことが判る。
【0204】
一方、比較例1のラップド結合Vベルトも、240Hr打ち切り時間までに顕著な異常が見られず、完走した。伝達性能(スリップ率)は、耐久走行前は1.00%(b判定)であり、耐久走行後は1.30%(b判定)であった。
【0205】
それに対し、実施例1~4の結合六角ベルトの伝達性能(スリップ率)は、いずれの例も耐久走行前は0.70%(a判定)であり、耐久走行後は0.90%(a判定)であった。すなわち、結合六角ベルトは、ラップド結合Vベルトに比べて、ベルト外周側(背面側)でのスリップ率が抑制され、伝達性能が向上したと云える。従って、内周面側に加えて、外周面側にもVプーリと接触可能なV字状側面(摩擦伝動面)を有する結合六角ベルトは、高性能に両面伝達が可能であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0206】
本開示の結合六角ベルトは、両面駆動が要求される各種の摩擦伝動ベルトとして利用でき、例えば、コンプレッサー、発電機、ポンプなどの一般産業用機械;紡糸機、紡績機、織機、編機、染色仕上機などの繊維機械;耕耘機、田植え機、野菜移植機、トランスプランタ、バインダー、コンバイン、ビーンカッター、とうもろこし破砕機、馬鈴薯収穫機、ビート収穫機、野菜収穫機、草刈り機、脱穀機、籾すり機、精米機などの農業機械などに利用できる。なかでも、欧米などで利用される高負荷で大型の農業機械、例えば、耕耘機、バインダー、コンバイン、野菜収穫機、脱穀機、ビーンカッター、とうもろこし破砕機、馬鈴薯収穫機、ビート収穫機などに好適である。
【符号の説明】
【0207】
1…結合六角ベルト
2…芯体層
2a…心線
3…内側ゴム層
4…内側外被材
5…外側ゴム層
6…外側外被材
7…内側連結材
8…外側連結材
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