(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】隣接線路間防護柵
(51)【国際特許分類】
E01F 1/00 20060101AFI20240911BHJP
E04G 21/32 20060101ALN20240911BHJP
【FI】
E01F1/00
E04G21/32 C
(21)【出願番号】P 2022154368
(22)【出願日】2022-09-28
【審査請求日】2024-04-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和4年9月15日に「工期短縮や作業環境の改善に向けた昼間作業の実施について 報道公開のご案内」をときわクラブ、丸の内記者クラブ及びJR記者クラブに配布して発表。 (2)令和4年9月28日に我孫子駅第3乗降場にて株式会社交通新聞社、株式会社共同通信社、JCOM株式会社及び株式会社日本経済新聞社等から取材を受けて発表。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591075641
【氏名又は名称】東鉄工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有馬 広明
(72)【発明者】
【氏名】松塚 弘典
(72)【発明者】
【氏名】笹川 透
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-071229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 1/00
E01B 1/00-37/00
B61B 1/00-15/00
E04G 21/24-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホーム工事中に隣接する線路の一方の線路に設置される隣接線路間防護柵であって、
線路上を移動可能なトロ台車の幅及び長さより長い幅及び長さの矩形枠を有する基礎枠と、
前記基礎枠の両側の長さ方向枠の一方に畳み込み可能に連結され、所定の網目及び空隙率の網を有する垂直柵と、
前記基礎枠に略垂直に立てられた状態で前記垂直柵を前記基礎枠に固定する垂直保持部材と、
トロ台車に載荷された前記基礎枠と共に前記トロ台車を挟み込んで前記基礎枠を前記トロ台車に固定する桁部材とを有する、隣接線路間防護柵。
【請求項2】
前記所定の網目及び空隙率は、前記ホーム工事で使用される単管パイプの直径より小さい網目であり、前記隣接する線路の他方の線路を走行する列車による風圧に対し前記一方の線路に設置された前記トロ台車に固定された隣接線路間防護柵が転倒及び破損しない程度の空隙率である、請求項1に記載の隣接線路間防護柵。
【請求項3】
前記桁部材が導電性の金属で形成され、
更に、前記桁部材を線路のレールに固定し、前記レールと前記桁部材との間を電気的に非導通にする桁固定部材を有する、請求項1に記載の隣接線路間防護柵。
【請求項4】
前記線路上の前後2台のトロ台車のうち前方のトロ台車を、前記基礎枠が有する前方挟み込み部材と
前方の第1の桁部材で挟み込み、後方のトロ台車を、前記基礎枠が有する後方挟み込み部材と
後方の第2の桁部材で挟み込む、請求項1に記載の隣接線路間防護柵。
【請求項5】
第1及び第2の隣接線路間防護柵が連結されるとき、
前記線路上の前方に位置する前記第1の隣接線路間防護柵の前記基礎枠と
前記第1及び第2の桁部材が、前記線路上の第1のトロ台車と前記第1のトロ台車より後ろの第2のトロ台車をそれぞれ挟み込み、
前記線路上の前記第1の隣接線路間防護柵の後方に位置する第2の隣接線路間防護柵の前記基礎枠と
前記第1及び
第2の桁部材が、前記線路上の前記第2のトロ台車と前記第2のトロ台車より後ろの第3のトロ台車をそれぞれ挟み込み、
前記第2のトロ台車の前方を、前記第1の隣接線路間防護柵の基礎枠の後方挟み込み部材と前記第2の桁部材が挟み込み、
前記第2のトロ台車の後方を、前記第2の隣接線路間防護柵の基礎枠の前方挟み込み部材と前記
第1の桁部材が挟み込む、請求項4に記載の隣接線路間防護柵。
【請求項6】
第1及び第2の隣接線路間防護柵が連結されるとき、前記第1の隣接線路間防護柵の垂直柵の上端と前記第2の隣接線路間防護柵の垂直柵の上端とを連結する垂直柵連結部材を有する、請求項4に記載の隣接線路間防護柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線路上を移動可能な隣接線路間防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、駅の改良工事やホームドア工事でホーム工事が頻繁に行われている。ホーム工事においては、列車の営業運転が停止中の深夜に行われるか、または昼間のラッシュアワーを除く時間帯で列車の営業運転が停止される間に行われている。
【0003】
後者の場合、昼間であるためホーム工事の当該線に隣接する隣接線列車は営業運転している。そのため、工事中は、ホーム工事の当該線閉鎖手続を行うとともに、隣接する隣接線列車への防護体制が必要となる。従来は、ホーム工事の当該線とその隣接線との間に、複数のピン柵を線路間地面に打ち込みトラロープをそれらピン柵に渡すことで工事担当者に注意を喚起している。更に、工事の位置を移動するときは、ピン柵とトラロープを移動し移動先で新たにピン柵とトラロープを設営することが行われる。
【0004】
ここで、ホーム工事の当該線とは工事が行われるホームの線路を意味する。当該線に隣接する隣接線とは、工事が行われるホームの線路の隣の線路を意味する。以下、隣接線路と称する場合がある。
【0005】
以下の特許文献には台車兼安全柵が記載されているが、コークス炉で使用される安全柵であり、ホーム工事での隣接線路間の防護柵ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、第1にホームドア等の施工工事では、ホーム下に単管パイプを組み合わせる等の作業が行われ、単管パイプがピン柵とトラロープの防護柵から隣接線路にはみ出して隣接線路の運転に支障をきたすことが想定される。第2にホームドア等の施工工事では、ホームの施工場所を移動することがあり、ピン柵とトラロープの防護柵では極めて非効率である。また、第3に特急列車等が工事の隣接線路を通過することがあり、そのような列車の通過は施工工事従事者に不安感を与える。
【0008】
そこで、本実施の形態の第1の側面の目的は、上記の課題を解決しホーム工事の安全性を高め工事の効率を向上する隣接線路間防護柵を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施の形態の第1の側面は、ホーム工事中に隣接する線路の一方の線路に設置される隣接線路間防護柵であって、線路上を移動可能なトロ台車の幅及び長さより長い幅及び長さの矩形枠を有する基礎枠と、前記基礎枠の両側の長さ方向枠の一方に畳み込み可能に連結され、所定の網目及び空隙率の網を有する垂直柵と、前記基礎枠に略垂直に立てられた状態で前記垂直柵を前記基礎枠に固定する垂直保持部材と、トロ台車に載荷された前記基礎枠と共に前記トロ台車を挟み込んで前記基礎枠を前記トロ台車に固定する桁部材とを有する、隣接線路間防護柵である。
【発明の効果】
【0010】
第1の側面によれば、ホーム工事の安全性を高め工事の効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態における隣接線路間防護柵と駅のホームとを示す断面図である。
【
図2】本実施の形態における隣接線路間防護柵の斜視図である。
【
図4】本実施の形態における防護柵をトロ台車に載荷した状態の構成を示す図である。
【
図5】本実施の形態における防護柵をトロ台車に載荷した状態の構成を示す図である。
【
図7】防護柵40をトロ台車に載荷して固定する手順を示す図である。
【
図8】本実施の形態の防護柵40を複数連結した場合の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施の形態における隣接線路間防護柵と駅のホームとを示す断面図である。
図1は、列車の営業運転停止中、つまり工事中のホーム18と防護柵40が設置される線路19を示す。ホームにホームドアを設置する工事中は、ホーム先端の地面10に盛り付けられた盛土11が擁壁13で保護される。そして、ホーム側の表面にアスファルト舗装12が設けられ、ホームの線路側には、地面に打ち込まれた鋼管杭14と擁壁13で支えられた覆工桁20の上に覆工板P1、P2、P3が線路に沿って並列に施設される。ホーム先端の覆工板P1には線路側にホーム先端を表示するCPラインの塗装が施され、ホーム側に配置される覆工板P3の表面の蓋板には警告ブロックの線状突起及び点状突起16が形成される。
【0013】
線路19には、図示されるとおり2本の線路が敷設される。線路19の左側の線路が工事中のホームの当該線に該当し、右側の隣接線路が当該線の隣接線に該当する。各線路は、地面10の上の道床22と、道床の上に配置される枕木24と、枕木の上に配置される1対のレール26を有する。
【0014】
2本の線路のうち左側の線路は、昼間のラッシュアワーを除く時間帯において列車の営業運転が停止される。営業運転停止中に、ホーム先端の覆工板P1~P3を撤去してホームドア設置に必要なホームの工事が行われる。但し、右側の線路は昼間であるため列車の営業運転中であり、列車70が停止または通過する。
【0015】
ホーム工事の作業者は、営業運転停止中の左側の線路内に立ち入りホームの工事を行うことができる。しかし、右側の線路には営業運転中の列車が通過するので、左側の線路に隣接線路間防護柵40が設置される。防護柵40を設置することで、工事中に取り扱いされる単管パイプ等が右側の線路に侵入することを防止し、列車の通過に対する不安感を緩和する。防護柵40は、矢印49の折り畳み方向に垂直柵44を折り畳むことができ、防護柵40を基礎枠42上に折り畳んだ状態でトロ台車30が線路上をホーム工事位置まで移動してくる。
【0016】
図2は、本実施の形態における隣接線路間防護柵の斜視図である。
図1と
図2を参照して、隣接線路間防護柵の構成について説明する。
図1には防護柵40の断面図が示され、
図2には、4つの防護柵40が連結された構成の斜視図が示される。
【0017】
防護柵40はトロ台車30に載荷され線路上を移動することができる。防護柵40は、基礎矩形枠42Lを有する基礎枠42と、基礎枠42に丁番(図示せず)を介して取り付けられた垂直柵44を有する。
図2に示すとおり、基礎枠42は、線路方向の長さ方向枠54と線路に垂直方向の幅方向枠55を有する。垂直柵44は基礎枠42の長さ方向枠54の片側に丁番で取り付けられる。これにより、
図1に示されるとおり、防護柵40の垂直枠44よりもホーム側の領域でホーム工事の作業者が作業を行うことができる。
【0018】
垂直柵44は垂直矩形枠44Lと、複数(2本)の縦枠47を有し、垂直矩形枠44Lと縦枠47で形成された矩形領域に金網45(
図2では網目は図示せず)が装着される。防護柵40を載荷するトロ台車30を工事現場まで移動するときは、垂直柵44が矢印49の方向に折り畳まれて基礎枠42に重ねられる。一方、トロ台車30を工事現場に停車させてホーム工事が行われるときは、垂直柵44が垂直に立てられ、垂直保持部材46によりその垂直状態が保持される。
【0019】
防護柵40をトロ台車30に載荷し固定するためには、基礎枠42と桁部材48でトロ台車30の載荷台を挟み込み、基礎枠42と桁部材48との間を固定ボルト50と固定ナット52で締め付ける。この構造については後で詳述する。また、トロ台車30が工事現場に停車中は、桁部材48が桁固定部材59によりレール26の上部フランジに固定される。この構造についても後述する。
【0020】
図2に示すとおり、複数の防護柵40を連結することができ、連結部では前後の防護柵の基礎枠42とそれぞれの桁部材48とにより共通のトロ台車30を挟み込むことでトロ台車に固定される。
図2のように線路が直線の場合、前後の基礎枠42は直線状に隣接し、一方、線路が曲線の場合は、前後の基礎枠42は曲線に対応した角度で隣接する。基礎枠42と桁部材48でトロ台車30を挟み込んで防護柵をトロ台車に固定することで、線路の形状に対応した角度で柔軟に防護柵を連結することができる。また、
図2の例では、4つの防護柵40を連結する場合、4+1台のトロ台車で載荷することができる。
【0021】
基礎枠42は、
図2に示すとおり、線路方向の長さ方向枠54と、線路方向と垂直方向の幅方向枠55を有する基礎矩形枠42Lを有する。基礎矩形枠42Lの前方の1対の幅方向枠55間に前方挟み込み部材56と、基礎矩形枠42Lの後方の1対の幅方向枠55間に後方挟み込み部材57とが設けられる。
【0022】
以下、防護柵の詳細な構造について順に説明する。
【0023】
図3は、隣接線路間防護柵の構成を示す図である。
図3には、防護柵40の(1)正面図、(2)右側面図、(3)平面図、(4)垂直枠連結部材拡大図、(5)桁固定部材拡大図が示される。
【0024】
(1)正面図に示すとおり、防護柵40は、基礎枠42及び垂直柵44と、桁部材48を有する。基礎枠42の基礎矩形枠42Lを構成する長さ方向枠54の左側に、垂直柵44の垂直矩形枠44Lが丁番53を介して折り畳み可能に連結される。垂直柵44の垂直に立てた状態が垂直保持部材46で保持される。そして、基礎枠42に固定ボルト50と固定ナット52により桁部材48が取り付けられる。桁部材48には桁部材をレールの上部フランジに固定するための桁固定部材59がボルトなどで取り付けられる。基礎枠42の幅と垂直柵44の高さはほぼ同じ長さである。
【0025】
(3)平面図に示すとおり、基礎枠42は矩形状の基礎矩形枠42Lを有し、基礎矩形枠42Lは、2本の長さ方向枠54と、長さ方向枠54の間の幅方向に設けられた3本の幅方向枠55を有する。基礎枠42の基礎矩形枠42Lは例えば幅1500mm、長さ3000mmであり、アルミ材料の50×50mmの軽量角パイプで構成される。
【0026】
そして、基礎矩形枠42Lの前方と後方(
図3中左側と右側)の幅方向枠55と基礎矩形枠42との間に1対の前方挟み込み部材56と1対の後方挟み込み部材57がそれぞれ設けられる。1対の前方挟み込み部材56には、固定ボルト50と固定ナット52により前方の桁部材48が取り付けられる。同様に、1対の後方挟み込み部材57にも、固定ボルト50と固定ナット52により後方の桁部材48が取り付けられる。(5)桁固定部材拡大図にも基礎枠42(及び基礎枠42の背後に隠れた挟み込み部材56、57)と桁部材48と固定ボルト50及び固定ナット52の状態が示される。
【0027】
(2)右側面図に示すとおり、垂直柵44は矩形状の垂直矩形枠44Lを有し、垂直矩形枠44Lの縦方向の2本の縦枠47を中央に有する。垂直矩形枠44Lは例えば高さ1450mm、長さ3000mmで、アルミ材料の50×50mmの軽量角パイプで構成される。垂直矩形枠44Lと縦枠47で区画された箇所に、金網枠45L内に金属製又は樹脂製の網が設けられた金網45が取り付けられる。垂直矩形枠44Lの上端右端には、垂直柵44を連結するための垂直柵連結部材58が設けられる。
【0028】
金網45の網は、例えばクリンプ金網であり、その網目は、ホーム工事でハンドリングされる単管パイプが透過できない程度の小さいサイズ以下である。また、隣接線路を通過する列車による風荷重に対して、防護柵が転倒せず、金網が破壊されない程度の剛性を有し、また、垂直柵44を人が垂直に立てることができる程度の重量以下になる条件を満たすよう、金網45の隙間率が選択される。具体例としては、クリンプ金網、直径1.5mm、網目20mm、空隙率85~86%である。
【0029】
(4)垂直枠連結部材拡大図に示すとおり、垂直枠連結部材58は、回転軸58Xで垂直矩形枠44Lに回転可能に取り付けられ、その断面は横向きのコの字型である。垂直枠連結部材58のコの字型内に連結される垂直枠の垂直矩形枠44Lが挿入される。
【0030】
図4及び
図5は、本実施の形態における防護柵をトロ台車に載荷した状態の構成を示す図である。
図4には、トロ台車に載荷された防護柵の(1)正面断面図、(2)右側面図、(3)平面図が示される。
図5には、トロ台車に載荷された防護柵の(1)正面断面図、(2)右側面図、(4)底面図が示される。(1)正面断面図は、(2)右側面図内の一点鎖線A-Aに沿った断面図である。(1)正面断面図、(2)右側面図は
図4及び5で重複して示される。
【0031】
図3と異なり、
図4、
図5では、トロ台車30が防護柵40の基礎矩形枠42Lと桁部材48とで挟み込まれて、トロ台車30に防護柵40が載荷され固定されている。(1)正面断面図及び(2)右側面図に示すとおり、トロ台車30の載荷台上に防護柵40の基礎矩形枠42Lが載せられ、桁部材48がトロ台車30の載荷台の下側(レール側)に挿入されている。そして、固定ボルト50が、桁部材48と、基礎矩形枠42Lの前方挟み込み部材56及び後方挟み込み部材57((3)平面図参照)を貫通し、固定ボルト50が固定ナット52により締め付けられる。これにより、基礎矩形枠42Lと桁部材48がトロ台車30に固定される。更に、桁部材48が桁固定部材59によりレール26の上部フランジに固定される。これにより、トロ台車30はレール26に固定される。
【0032】
図4の(3)平面図に示すとおり、桁部材48はトロ台車30の裏側に隠れている。また、基礎矩形枠42Lに取り付けられている前方挟み込み部材56及び後方挟み込み部材57と、前後1対の桁部材48との交差位置に、固定ナット52が固定ボルト50に締め付けられているのが見て取れる。
【0033】
図5の(4)底面図に示すとおり、桁部材48がトロ台車30の底面側に位置する。また、前後の桁部材48と、基礎矩形枠42Lの前方挟み込み部材56及び後方挟み込み部材57との交差位置に、固定ボルト50が見て取れる。トロ台車30は台車枠30Lを有し、台車枠30Lの幅方向に2本の台車幅枠32が設けられ、前後に牽引フック33が設けられる。底面図では、1本の台車幅枠が桁部材48に隠れている。台車枠30Lと台車幅枠32の上に載荷台の板(図示せず)が取り付けられる。また、トロ台車30は車輪31を有し、レール26上を移動可能である。
【0034】
図6は、桁固定部材の拡大図である。
図6には(1)正面断面拡大図と(2)右側面拡大図と(3)右側面図が示される。正面断面拡大図は、(3)右側面図に示した一点鎖線A-Aの断面図である。両拡大図に示すとおり、桁固定部材59は、トロ台車30に固定された桁部材48をレール26に固定する。桁固定部材59は、桁固定部材59に固定される三角部材60と、レール26の上部フランジに固定するL字部材64とを有する。
【0035】
(1)正面断面拡大図右側に示すとおり、三角部材60には水平方向に長い水平調整孔61が設けられ、第1ボルト63を水平調整孔61の最適な位置で締めることで桁部材48に三角部材60が固定される。レール26の上部フランジの水平方向の形状とL字部材64の形状のばらつきが、水平調整孔61で吸収される。
【0036】
L字部材64は、(1)正面断面拡大図左側に示す三角部材60に溶接された逆さL字片62に形成された垂直方向に長い垂直調整孔(図示せず)に第2ボルト65を挿入し最適な位置で締めることで、三角部材60に固定される。それと共に、L字部材64の先端がレール26の上部フランジに固定される。これにより、桁部材48がレール26に固定される。レールの上部フランジの垂直方向の形状とL字部材64の形状のばらつきが、逆さL字片62の垂直調整孔で吸収される。逆さL字片62は、(2)右側面拡大図の第1ボルト63と第2ボルト65との間にも見て取れる。
【0037】
上記の通り、防護柵40の基礎枠42と桁部材48とでトロ台車を挟み込んで防護柵40をトロ台車に固定し、桁部材48を桁固定部材59でレール26の上部フランジに固定する。更に、トロ台車には、ブレーキハンドルから手を離すと自動でブレーキがかかる機構と、ブレーキハンドルに1対の手歯止めを固定し当該1対の手歯止めでトロ台車30の車輪31をレール26上で挟む手歯止めブレーキとが備えられる。これらのブレーキと、前述の桁固定部材59によるレールへの固定とにより、防護柵を載荷したトロ台車の逸走事故を確実に防止することができる。
【0038】
L字部材64の先端部分のレール26に当接する部分には、樹脂やゴムなどの絶縁性膜66が形成される。これにより、アルミ等の金属製の桁部材48と桁固定部材59を介して、1対のレール26の間の電気的導通が防止される。
【0039】
また、(3)右側面図には、2つの防護柵40が連結された状態が示され、垂直柵の上端で垂直枠連結部材58により2つの防護柵40が連結される。
図3の(4)垂直枠連結部材拡大図に示した垂直枠連結部材58のコの字型に連結される垂直柵の垂直矩形枠44Lが挿入されて連結が固定される。線路の形状が曲線で連結される防護柵の基礎枠が所定の角度で連結された場合に連結される垂直矩形枠44Lが当該所定の角度だけ曲がるが、垂直枠連結部材58の長さが短いので問題はない。
【0040】
図7は、防護柵40をトロ台車に載荷して固定する手順を示す図である。固定は4つの手順で行われる。
図7の例は、一つの防護柵40を前後2台のトロ台車に載荷して固定する手順である。
【0041】
手順1で、防護柵40に取り付けられている固定ナット52を固定ボルト50から外して、防護柵40から桁部材48を外す。手順2で、前後2台のトロ台車30の上に防護柵40の本体である基礎枠と垂直柵を載せる。基礎矩形枠42Lの前方(左側)と前方の幅方向枠55を、左側のトロ台車30の後部に載せ、基礎矩形枠42Lの後方(右側)と後方の幅方向枠55を、右側のトロ台車30の前部に載せる。
【0042】
手順3で、桁部材48をトロ台車30の下に通す。具体的には、第1の桁部材48を前方のトロ台車30の下に通し、第2の桁部材48を後方のトロ台車30の下に通す。そして、手順4で、左側の第1の桁部材48と基礎矩形枠42Lの前方挟み込み部材56とに第1の固定ボルト50を通し、第1の固定ナット52を第1の固定ボルト50に締め付ける。同時に、右側の第2の桁部材48と基礎矩形枠42Lの後方挟み込み部材57とに第2の固定ボルト50を通し、第2の固定ナット52を第2の固定ボルト50に締め付ける。これにより、前方のトロ台車30が基礎矩形枠42Lの前方と前方の第1の桁部材48とに挟まれて固定される。一方、後方のトロ台車30が基礎矩形枠42Lの後方と後方の第2の桁部材48とに挟み込まれて固定される。
【0043】
図8は、本実施の形態の防護柵40を複数連結した場合の構成を示す図である。
図8には(2)右側面図と、(3)平面図が示される。
図2でも説明したとおり、本実施の形態では、防護柵40の後方の基礎矩形枠42Lはトロ台車の前方に載荷され、一方、前方の基礎矩形枠42Lはトロ台車30の後方に載荷される。このため、複数の防護柵40を連結する場合、連結部では連結される前方の防護柵の基礎矩形枠42Lと後方の防護柵の基礎矩形枠42Lとを、共通のトロ台車30に載荷することができる。
【0044】
図8の例で示すと、防護柵40_1と40_2が共通のトロ台車30_2に載荷される。他の連結される前後の防護柵も同様に共通のトロ台車に載荷される。これにより、トロ台数の数を少なくすることができる。また、共通のトロ台車に前後の防護柵の基礎矩形枠42Lとそれぞれの桁部材48で挟み込んで固定するので、線路の形に対応して前後の防護柵の角度を調整できる。トロ台車に防護柵に対応した固定構造を設ける必要がないので、廉価な移動式防護柵を構成できる。
【0045】
以上説明したとおり、本実施の形態におけるホーム工事用の防護柵によれば、
(1)隣接線路との間に防護柵の垂直柵を垂直に固定することで、工事対象線路上でハンドリングされる単管パイプなどが隣接線路内に侵入することが防止できる。また、垂直柵の金網の網目を最適化して単管パイプが透過できないようにし、金網の空隙率を最適化して隣接線路を通過する列車による風荷重によっても防護柵が転倒せず、金網が破損しないようにした。
【0046】
(2)防護柵の基礎枠に垂直柵を畳み込みできるようにしたので、防護柵の組み立て、解体、工事現場からの搬出作業を効率化できる。
【0047】
(3)防護柵の基礎枠をトロ台車に固定する手順と桁部材をレールに固定する手順では、固定ナットを手動で回転させるため工具が不要になり、ホーム工事現場での防護柵の固定作業を効率化できる。
【0048】
(4)基礎枠の基礎矩形枠と桁部材でトロ台車を挟み込むことで防護柵をトロ台車に固定するので、特別な構成を有するトロ台車を必要とせず、また、線路の形状に対応して複数の防護柵をトロ台車に載荷できる。
【0049】
(5)桁部材を桁固定部材でレールの上部フランジに固定することと、トロ台車のブレーキ機能(手歯止め、手動ブレーキ)を利用してレールに固定することとで、防護柵を載荷したトロ台車の逸走をより確実に防止することができる。
【0050】
(6)桁固定部材のレールの上部フランジに固定する箇所に絶縁性膜を形成することで、線路間の桁部材を介しての電気導通状態を回避することができる。
【0051】
(7)連結される2つの防護柵を共通のトロ台車に載荷できるので、連結防護柵を搬送するトロ台車数を節約できる。
【0052】
(8)ホーム工事現場に設置させた防護柵のトロ台車上に列車見張り員を添乗させることで、列車からの見張員の認識が容易になり、安全性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0053】
10:地面 11:盛土
12:アスファルト舗装 13:擁壁 14:鋼管杭
P1、P2、P3:覆工板 16:線状・点状突起
18:ホーム 19:線路
20:覆工桁 22:道床
24:枕木 26:レール
30:トロ台車 31:車輪
30L:台車枠 32:台車幅枠 33:牽引フック
40:隣接線間防護柵、防護柵
42:基礎枠 42L:基礎矩形枠
44:垂直柵 44L:垂直矩形枠
45:金網 45L:金網枠
46:垂直保持部材 47:縦枠
48:桁部材 49:折り畳み方向
50:固定ボルト 52:固定ナット
53:丁番
54:長さ方向枠 55:幅方向枠
56:前方挟み込み部材 57:後方挟み込み部材
58:垂直柵連結部材 59:桁固定部材
60:三角部材 61:水平調整孔
62:逆さL字片 63:第1ボルト
64:L字部材 65:第2ボルト
66:絶縁性膜 70:車両