(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】工具マガジン装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/157 20060101AFI20240911BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
B23Q3/157 F
B23Q17/00 D
(21)【出願番号】P 2022201148
(22)【出願日】2022-12-16
(62)【分割の表示】P 2020096599の分割
【原出願日】2020-06-03
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【氏名又は名称】村上 智司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 靖隆
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特公昭63-019298(JP,B2)
【文献】特開2002-166335(JP,A)
【文献】特開平08-115113(JP,A)
【文献】特開2017-064822(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0240227(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1850760(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155、3/157
B23Q 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を保持する複数の工具保持部、及び該複数の工具保持部から選択される工具保持部を着脱位置に移送する移送機構を備えた工具マガジンと、
各工具保持部の前記工具マガジン内における位置情報、及び前記各工具保持部に保持される工具の性状、状態を認識することができる情報を記憶した工具情報記憶部と、
前記移送機構の作動を制御するマガジン制御部と、
前記工具マガジン内の所定の表示領域に表示される、前記工具情報記憶部に記憶した前記工具の性状、状態を認識することができる情報の表示を制御する表示制御部と、を備え、
前記表示領域に表示される前記工具の性状、状態を認識することができる情報には、工具径、工具長、工具重量、工具寿命及び工具の写真の内の少なくとも一の情報が含まれていることを特徴とする工具マガジン装置。
【請求項2】
前記表示領域は、少なくとも前記着脱位置にある工具保持部に対してその近傍に設定されている
ことを特徴とする請求項1記載の工具マガジン装置。
【請求項3】
前記工具情報記憶部は、更に、各工具保持部に保持可能な工具の工具径の情報を記憶するように構成され、
前記表示制御部は、前記工具マガジン内の少なくとも前記着脱位置にある前記工具保持部に対応してその近傍に設定された表示領域に、該工具保持部に保持される工具の性状、状態を認識することができる情報、又は該工具保持部に保持可能な工具の工具径の情報を表示させるように構成され、
前記表示制御部は、前記工具情報記憶部に記憶した情報を参照して、前記表示領域に対応した位置に在る工具保持部に工具が保持されている場合には、保持される工具の性状、状態を認識することができる情報を認識し、該工具保持部に工具が保持されていない場合には、該工具保持部に保持可能な工具の工具径の情報を認識し、認識した情報を前記表示領域に表示させるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の工具マガジン装置。
【請求項4】
請求項1記載の工具マガジン装置と、
前記工具マガジン装置に保持される工具と、装着されている工具とが交換される主軸と、を少なくとも備えた工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を保持する複数の工具保持部、及びこの複数の工具保持部から選択される一の工具保持部を着脱位置に移送する移送機構を具備した工具マガジンなどから構成される工具マガジン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述した工具マガジン装置は、主に、工具主軸を備えた工作機械に付設されており、前記工具保持部に保持された複数の工具から選択される一の工具が工具交換位置に移送され、この後、当該工具交換位置に移送された工具と、工具主軸に装着された工具とが、適宜工具交換機構によって交換されるようになっている。
【0003】
そして、従来、上記のような工具マガジン装置及び工具交換機構を備えた工具交換装置として、特開平8-318443号公報(下記特許文献1)に開示された工具交換装置が知られている。この工具交換装置は、同公報に開示されるように、工具が保持される複数の工具保持部を有する工具マガジンと、この工具マガジンを駆動して、各工具保持部を工具交換位置に移送するマガジン駆動機構(移送機構)と、主軸に装着された工具と工具交換位置に位置決めされた工具とを交換する工具交換機構と、マガジン駆動機構及び工具交換機構の作動を制御する工具交換制御部とから構成される。
【0004】
ところで、このような工具交換装置において、前記工具保持部への工具の装着、及び当該工具保持部からの工具の取り出しといった段取り作業は、従来一般的に、オペレータの手作業によって行われている。そして、多数の工具保持部を備えた工具マガジンの場合には、オペレータが工具を着脱するための着脱位置が設定されており、この場合には、一般的に、前記工具交換制御部による制御の下で、手動操作によって前記着脱作業を行うことができるように、前記複数の工具保持部の中から所望の工具保持部を前記着脱位置に移動させるための操作信号を、前記工具交換制御部に入力する手動操作器が設けられている。
【0005】
斯くして、このような工具交換装置では、オペレータが、前記手動操作器によって、作業対象の工具保持部を指定することで、指定された工具保持部を前記着脱位置に移動させるための操作信号が、当該手動操作器から前記工具交換制御部に送信され、この工具交換制御部による制御の下で、前記マガジン駆動機構が駆動され、指定された工具保持部が着脱位置に移送される。そして、このような手動操作器の操作によって、オペレータは意図した任意の工具保持部を着脱位置に呼び出すことができ、当該工具保持部への工具の装着や、当該工具保持部からの工具の取り出しを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した工具保持部への工具の取り付けや、当該工具保持部からの工具の取り出しの際に、工具の種類によっては、その取扱いに注意を要するものがある。例えば、取り外す工具の重量が、オペレータが認識している重量よりも重い場合には、オペレータが工具保持部から工具を取り外す際に、誤って当該工具を落下させる虞がある。
【0008】
また、取り扱う工具の工具径が細径である場合や、工具の材質がセラミックやCBNといった靭性が低いものである場合には、この工具を誤って周囲の構造物に接触させると、当該工具が欠損する虞がある。
【0009】
したがって、オペレータの取り扱う工具が何らかの注意を要する工具である場合には、取り扱いに注意を要する工具である旨を、オペレータに対して注意喚起することができれば、オペレータは、これに応じて工具の取り扱いを慎重に行うことができるため、上述した問題が生じるのを未然に防止することができて有益である。一方で、注意を要することなく安全に取り扱うことができる工具の場合には、オペレータがこれを視覚的に容易に認識することができれば、オペレータは安心して当該工具を取り扱うことができる。
【0010】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、工具マガジン内の工具をオペレータが手作業によって着脱等する際に、当該工具が取り扱いに注意を要する工具である場合には、その旨をオペレータに対して認識させることができる工具マガジン装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明は、
工具を保持する複数の工具保持部、及び該複数の工具保持部から選択される工具保持部を着脱位置に移送する移送機構を備えた工具マガジンと、
前記各工具保持部の前記工具マガジン内における位置、及び前記各工具保持部に保持される工具に関する情報を記憶した工具情報記憶部と、
前記移送機構の作動を制御するマガジン制御部と、
前記工具マガジン内の所定の表示領域に、前記工具に係る情報を表示する投影機と、
前記投影機による表示を制御する表示制御部とを備えて構成された工具マガジン装置に係る。
【0012】
そして、この態様(第1の態様)において、前記投影機は、前記工具マガジン内の少なくとも一の前記工具保持部に対応してその近傍に設定された表示領域に、前記工具に係る情報を表示するように構成され、
前記表示制御部は、前記工具情報記憶部に格納された情報を参照して、前記表示領域に対応した位置に在る工具保持部に保持された工具の情報を認識し、認識した情報を前記投影機により前記表示領域に表示させるように構成された態様を採ることができる。
【0013】
この態様(第2の態様)の工具マガジン装置によれば、オペレータは、表示領域に表示された工具情報を確認することで、当該表示領域に対応した工具保持部に保持された工具に関する情報を認識することができる。尚、表示領域は、例えば、前記着脱位置に在る工具保持部に対応させて、その近傍に設定することができる。このようにすれば、オペレータは着脱位置の工具保持部に保持された工具の情報から当該工具の性状、状態等を認識することができるため、当該工具の取扱を適切に行うことができる。
【0014】
また、上記第1の態様において、前記工具情報記憶部は、更に、各工具保持部に保持可能な工具に関する情報を記憶するように構成され、
前記投影機は、前記工具マガジン内の少なくとも一の前記工具保持部に対応してその近傍に設定された表示領域に、前記工具に係る情報を表示するように構成され、
前記表示制御部は、前記工具情報記憶部に格納された情報を参照して、前記表示領域に対応した位置に在る工具保持部に保持可能な工具の情報を認識し、認識した情報を前記投影機により前記表示領域に表示させるように構成された態様を採ることができる。
【0015】
この態様(第3の態様)の工具マガジン装置によれば、オペレータは、表示領域に表示された工具情報を確認することで、当該表示領域に対応した工具保持部に保持可能な工具の性状等を認識することができる。尚、この態様においても、前記表示領域は、例えば、前記着脱位置に在る工具保持部に対応させて、その近傍に設定することができる。このようにすれば、オペレータは着脱位置の工具保持部に工具が保持されていない場合に、当該工具保持部に保持可能な工具の性状等を認識することができるので、例えば、自身が装着しようとしている工具が適切なものかどうかを容易に認識することができる。
【0016】
また、本発明において、前記工具の情報には、工具保持部の識別番号、工具の識別番号、工具径、工具長、工具重量、工具寿命及び工具の写真の内の少なくとも一の情報が含まれるが、これに限定されるものではない。工具の重量が通常取り扱う重量よりも重い工具、工具径が細径で剛性が低い工具や、材質が低靭性の工具である場合には、その取扱いに注意を要し、また、摩耗が進んでいる工具の場合には、当該工具を交換する必要があるため、これらの情報が表示領域に表示されれば、オペレータは、これらの情報を容易に認識することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る工具マガジン装置によれば、オペレータは、表示領域に表示された工具情報を確認することで、当該表示領域に対応した工具保持部に保持された工具に関する情報を認識することができる。そして、オペレータは認識された情報に応じて、当該工具を取り扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械を示した正面図である。
【
図3】本実施形態に係る工作機械の概略構成を示したブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る工具情報記憶部の詳細構成を示したブロック図である。
【
図5】本実施形態に係る工具画像記憶部に格納される画像データの記憶態様を示した説明図である。
【
図6】本実施形態に係る工具画像記憶部に格納される画像の一例を示した説明図である。
【
図7】本実施形態に係る保持可能工具データ記憶部に格納される情報を示したデータテーブルである。
【
図8】本実施形態に係る工具データ記憶部に格納される工具情報を示したデータテーブルである。
【
図9】本実施形態に係る表示領域について説明するための説明図である。
【
図10】本実施形態の表示領域における表示例を示した説明図である。
【
図11】本実施形態の表示領域における表示例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1及び
図2に示すように、本例の工作機械1は立形のマシニングセンタであり、ベッド2と、このベッド2上に立設されたコラム3と、このコラム3に支持され、上下方向(Z軸方向)に移動可能となった主軸頭4と、この主軸頭4によって、その軸中心に回転自在に支持された主軸5と、この主軸5の下方のベッド2上に配設されたテーブル6と、主軸頭4の側方に配設された工具マガジン35と、この工具マガジン35の下端部に設けられ、主軸5に取り付けられた工具Tと工具マガジン35の工具ポット36に格納された工具Tとを交換する工具交換機構10と、工具マガジン35に設けられた投影機45と、これら各部の作動を制御する制御装置20と、工作機械1を操作する操作信号を入力するためのNC操作盤30と、工具マガジン35を操作する操作信号を入力するための手動操作器であるマガジン操作器40などから構成される。
【0021】
前記テーブル6は水平な直交2軸方向であるX軸-Y軸方向に移動可能に構成され、また、前記主軸頭4はX軸及びY軸と直交する鉛直方向であるZ軸方向に移動可能になっており、適宜送り装置7によって、前記テーブル6がX軸及びY軸方向に駆動され、また、前記主軸頭4がZ軸方向に駆動される。また、前記主軸5は、主軸モータ8によってその軸中心に回転される。
【0022】
前記工具マガジン35は、工具Tが保持される複数の工具ポット(工具保持部)36と、この複数の工具ポット36を、外周部に一定間隔で保持した円板状の保持プレート37と、透明な板材から形成され、工具ポット36と保持プレート37とを取り囲むように配設されるとともに、下部に開口部38aが形成されたカバー体38とから構成される。前記保持プレート37は、移送機構としてのマガジン駆動機構39によって中心軸周りに回転駆動されるようになっており、このマガジン駆動機構39により保持プレート37を回転させることによって、保持プレート37に保持された工具ポット36の中から所望の工具ポット36を、前記カバー体38の開口部38aに移送することができるようになっている。尚、前記開口部38aが形成された位置を、以下、「着脱位置」という。また、詳しくは後述する
図3では、図示の便宜上、工具ポット36の配置形状を円形では無く楕円形としている。
【0023】
前記着脱位置に割り出された工具ポット36は、適宜旋回機構(図示せず)によって、垂直面内で旋回され、主軸5に対して平行な姿勢となる待機位置に移動するようになっており、この待機位置に移動した工具ポット36は、前記旋回機構により、再度、垂直面内で旋回されることによって、前記着脱位置に復帰するようになっている。
【0024】
前記工具交換機構10は、前記主軸5と前記待機位置に移送された工具ポット36との中間位置に、その軸線が主軸5の軸線と平行となるように配設され回転軸11と、カム機構12を介して回転軸11を軸中心に回転させる駆動モータ13と、工具Tを把持する把持部が両端に形成され、前記回転軸11の下端部に固設された交換アーム14などから構成される。
【0025】
そして、前記回転軸11は、駆動モータ13からカム機構12に回転動力が伝達されることにより、その軸中心に回転するとともに、その軸方向に昇降するようになっており、交換アーム14は回転軸11とともに動作して、回転動作と昇降動作とを実行することにより、主軸5に装着された工具Tと、待機位置の工具ポット36に保持された工具Tとを交換する。
【0026】
前記投影機45は、
図2に示すように、前記開口部38aの上方のカバー体38の内面に設けられるもので、
図9に示すように、前記保持プレート37上に設定された表示領域46に所定の映像を表示する。そして、この表示領域46に表示された映像が、透明なカバー体38を通して外部から視認される。尚、同
図9に示すように、本例では、前記着脱位置(後述のステーションS
1)に在る工具ポット36に対応した表示領域46a、その左隣(ステーションS
2)の工具ポット36に対応した表示領域46b、及び着脱位置の右隣(ステーションS
18)の工具ポット36に対応した表示領域46cの3つの表示領域46が設定されており、前記投影機45は、これら各表示領域46a,46b及び46cに映像を表示可能に構成されている。そして、投影機45は、対応する工具ポット36に保持された工具Tの情報に係る映像を各表示領域46a,46b及び46cに表示する。
【0027】
図3に示すように、前記制御装置20は、NCプログラム記憶部21、NCプログラム実行部22、送り制御部23、主軸制御部24、工具情報記憶部25、加工時間算出部26、工具交換制御部27及び表示制御部28などから構成され、これらのうち、前記NCプログラム記憶部21、NCプログラム実行部22、送り制御部23及び主軸制御部24が数値制御部を構成する。また、この制御装置20には、前記NC操作盤30及びマガジン操作器40がそれぞれ接続されている。尚、これら制御装置20、NC操作盤30及びマガジン操作器40は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成されている。
【0028】
前記NC操作盤30は、入力部31及び表示部32を備えており、入力部31を介して、前記NCプログラム記憶部21にNCプログラムを格納する処理、前記工具情報記憶部25に工具情報等を格納する処理、並びに前記NCプログラム実行部22,送り制御部23及び主軸制御部24にそれぞれ制御信号を入力する処理を行うことができるようになっている。また、表示部32には、NCプログラム記憶部21に格納されたNCプログラムや、NCプログラム実行部22における実行状況、送り装置7及び主軸モータ8の動作状況などが表示されるようになっている。
【0029】
前記送り制御部23は、前記送り装置7の作動を制御する機能部であり、前記主軸制御部24は、前記主軸モータ8の作動を制御する機能部である。また、NCプログラム記憶部21には、1以上のNCプログラムが格納され、NCプログラム実行部22は、前記NC操作盤30の入力部31から入力された指令に従い、指定されたNCプログラムを前記NCプログラム記憶部21から読み出して、当該NCプログラムを実行し、前記送り制御部23、主軸制御部24及び工具交換制御部27にそれぞれ制御信号を送信する。尚、NCプログラム実行部22は、MDI操作として前記NC操作盤30の入力部31からNCコードが入力される場合には、このNCコードも実行し、当該NCコードに係る制御信号を前記送り制御部23、主軸制御部24及び工具交換制御部27に送信する。
【0030】
前記工具情報記憶部25は、
図4に示すように、工具データ記憶部25a、工具画像記憶部25b及び保持可能工具データ記憶部25cから構成される。そして、前記工具データ記憶部25aは、
図8に示すような工具情報を記憶する。
図8に例示した工具情報は、前記工具マガジン35内で設定されたステーション(ST)番号(位置情報)(
図2参照)、各ステーションに現在位置している各工具ポット36の番号、各工具ポット36に保持された工具Tの工具番号、その名称、寸法(径と長さ)、重量、材質、現在の加工累積時間及び限界加工時間である。
【0031】
尚、前記限界加工時間は、各工具Tの摩耗限界とみなされる加工累積時間であり、例えば、経験的に設定される。また、工具Tには、切削作用部としての実工具と、この実工具を保持する工具ホルダとが含まれる。また、位置情報であるところの各ステーション(S1~S18)は固定であり、本例では、ステーションS1が前記着脱位置となっている。そして、前記保持プレート37が回転することによって、保持プレート37に保持された工具ポット36が順次各ステーション(S1~S18)に位置決めされる。
【0032】
また、前記工具画像記憶部25bは、工具番号と当該工具番号に対応する工具の画像(例えば写真)とを関連付けて記憶する機能部であり、例えば、
図5に示すような態様で、画像データを記憶する。尚、
図6には、記憶される工具Tの画像の一例として、エンドミルの画像を示している。
【0033】
また、保持可能工具データ記憶部25cは、各工具ポット36に保持可能な工具Tの径及び長さを記憶する機能部であり、
図7に示すような態様でデータを記憶している。各工具ポット36に保持可能な工具径は、両隣の工具ポット36に保持されている工具Tの径によって異なり、本例では、両サイドの工具ポット36に保持される工具Tの径がいずれも200mm未満である場合には、対象の工具ポット36に、最大200mmの径の工具を装着できるものとする。また、両サイドのいずれか一方の工具径が200mm以上である場合には、対象の工具ポット36には、最大100mmの径の工具Tを装着でき、両サイドの工具ポット36に工具が保持されていない場合には、最大400mmの径の工具Tを装着できるものとする。また、本例では、各工具ポット36に保持可能な工具の長さは一律であり、最長で400mmとする。
【0034】
前記加工時間算出部26は、前記NCプログラム実行部22の動作状況を監視して、当該NCプログラム実行部22で実行される加工を認識し、当該加工で使用される各工具Tについての加工時間を算出し、算出された加工時間を、前記工具データ記憶部25aに格納された各工具Tに係る加工累積時間に加算することによって、当該加工累積時間を更新する処理を行う。
【0035】
前記工具交換制御部27は、前記NCプログラム実行部22又は前記NC操作盤30の入力部31から送信される制御信号を受信して、受信した制御信号に応じて前記工具交換機構10及びマガジン駆動機構39の作動を制御する。例えば、NCプログラム実行部22又は前記入力部31から次工具Tを前記待機位置に呼び出す制御信号を受信すると、工具交換制御部27は、マガジン駆動機構部39を駆動,制御して、当該制御信号に係る工具Tを保持したポット36を待機位置に移動させ、NCプログラム実行部22又は前記入力部31から工具交換指令を受信すると、工具交換機構10を駆動,制御して、当該工具交換機構10に工具交換動作を実行させる。
【0036】
また、工具交換制御部27は、前記マガジン操作器40から入力される操作信号、即ち、特定のポット36を着脱位置に移動させる操作信号を受信すると、まず、前記NCプログラム実行部22がNCプログラムを実行中であるか否かを確認し、NCプログラムを実行していない待機中である場合には、前記マガジン駆動機構39を駆動,制御して、操作信号に係るポット36を着脱位置に移動させる。
【0037】
前記マガジン操作器40は、入力と表示を行うためのタッチパネル41を備えており、
図2に示すように、前記工具マガジン35のカバー体38に形成された開口部38a、即ち、前記着脱位置の近傍に配設されている。そして、前記タッチパネル41から入力される信号が、前記工具交換制御部27に送信され、また、前記工具情報記憶部25に格納された工具情報がタッチパネル41に表示される。
【0038】
前記表示制御部28は、前記工具データ記憶部25a、工具画像記憶部25b及び保持可能工具データ記憶部25cに格納された情報を参照して、ステーションS1(着脱位置)、ステーションS2及びステーションS18に在る工具ポット36に保持された工具Tの情報を認識し、認識された情報に係る映像を、前記投影機45から、対応する表示領域46a、46b及び46cに表示する処理を行う。
【0039】
例えば、前記表示制御部28は、まず、前記工具データ記憶部25aを参照してステーションS1に在る工具ポット36及びこの工具ポット36に保持された工具Tの情報、即ち、ポット番号「3」、工具番号「00010003」、工具名称「End Mill」、工具径「20mm」、工具長「70mm」、重量「9kg」、工具材質「超硬/コーティング」、加工累積時間「55時間」及び限界加工時間「100時間」を認識する。そして、工具画像記憶部25bに格納されたデータを参照して、当該工具番号「00010003」の画像データを認識する。
【0040】
次に、表示制御部28は、得られた工具情報を基に、
図10に示すような映像を表示領域46aに表示する。
図10に示した例では、認識されたポット番号「3」、工具番号「00010003」、工具名称「End Mill」、工具径「20mm」、工具長「70mm」、重量「9kg」及び工具材質「超硬/コーティング」に係る文字情報、寿命までの残時間及びゲージ表示(限界加工時間と加工累積時間とを棒グラフで表したもの)、並びに当該工具の画像が映像化され、投影機45から表示領域46aに表示される。
【0041】
同様にして、表示制御部28は、前記工具データ記憶部25aを参照してステーションS
2に在る工具ポット36及びこの工具ポット36に保持された工具Tの情報を認識する。
図8に示した例では、ステーションS
2に在る工具ポット36のポット番号は「4」であるが、この工具ポット36には、工具Tが保持されていない。この場合、表示制御部28は、両サイドの工具ポット36に保持された工具Tの工具径を参照するとともに、前記保持可能工具データ記憶部25cに格納された情報を参照して、当該工具ポット「4」に保持可能な工具情報を表示領域46bに表示する。
【0042】
具体的には、表示制御部28は、まず、前記工具データ記憶部25aを参照して、ステーションS1及びS3の工具ポット36に保持された工具Tの径を認識する。本例では、ステーションS1の工具ポット36に保持された工具Tの径は「20mm」、ステーションS3の工具ポット36に保持された工具Tの径は「120mm」であり、いずれの工具Tの径も200mm未満である。
【0043】
次に、表示制御部28は、前記保持可能工具データ記憶部25cに格納された情報を参照して、ポット番号「4」の工具ポット36に装着可能な工具Tの径を認識する。本例では、ステーションS
1及びS
3の工具径はいずれも200mm未満であるので、当該工具ポット36に装着可能な工具Tの最大径は200mmとなる。そこで、表示制御部28は、
図11に示すような映像を生成して、生成した映像を投影機45から表示領域46bに表示させる。尚、上述したように、各工具ポット36に保持可能な工具Tの長さは一律であり、最長で400mmである。
【0044】
一方、ステーションS
18の工具ポット36には、工具Tが保持されているので、表示制御部28は、前記工具データ記憶部25aを参照して及びこの工具ポット36に保持された工具Tの情報、即ち、ポット番号「2」、工具番号「00010035」、工具名称「Face Mill」、工具径「100mm」、工具長「60mm」、重量「15kg」、工具材質「超硬/コーティング」、加工累積時間「121.2時間」及び限界加工時間「300時間」を認識するとともに、工具画像記憶部25bに格納されたデータを参照して、当該工具番号「00010035」の画像データを認識し、
図10に示した映像と同様の映像を生成して、投影機45から表示領域46cに表示させる。
【0045】
尚、本例では、前記工具マガジン35、マガジン駆動機構39、マガジン制御部として機能する工具交換制御部27、工具情報記憶部25、マガジン操作器40、投影機45及び表示制御部28が工具マガジン装置を構成する。
【0046】
次に、前記マガジン操作器40を用いた工具マガジン35の手動操作について説明する。
【0047】
この手動操作は、オペレータが、マガジン操作器40を介して、工具マガジン35内の所望の任意のポット36を前記着脱位置に呼び出す操作であり、オペレータは、前記着脱位置に呼び出したポット36からの工具Tの取り外しや、呼び出したポット36への工具Tの取り付けを行う。
【0048】
この手動操作において、オペレータは、まず、前記着脱位置(ステーションS1)に呼び出すべき工具ポット36をタッチパネル41から入力する。例えば、オペレータが、ポット番号が「3」の工具ポット36を着脱位置に移送するように入力すると、入力制御部42により、このポット番号「3」に係る情報、及び呼出指令(操作信号)が前記工具交換制御部27に送信される。
【0049】
次に、工具交換制御部27は、この操作信号を受信すると、前記NCプログラム実行部22がNCプログラムを実行中であるか否かを確認し、NCプログラム実行部22がNCプログラムを実行していない場合には、マガジン駆動機構39を駆動,制御して、操作信号に係るポット番号「3」の工具ポット36を着脱位置(ステーションS1)に移動させ、NCプログラム実行部22がNCプログラムを実行中である場合には、実行中であることを示す信号をマガジン操作器40に送信する。また、工具交換制御部27は、工具ポット36を移動させた後、これに応じて工具情報記憶部25に格納された情報を更新する。そして、マガジン操作器40の表示制御部43は、例えば、呼出不可であることを、タッチパネル41に表示する。
【0050】
一方、表示制御部28は、選択されたポット番号「3」の工具T、及びその両隣のポット番号「4」及び「2」の工具Tについて、上記のようにして、対応する表示領域46a,46b,46cに、その情報に係る映像を投影機45から表示し、工具が保持されていない場合には、当該工具ポット36に装着可能な工具情報に係る映像を、投影機45から対応する表示領域46a,46b,46cに表示する。
【0051】
斯くして、オペレータは、各表示領域46a,46b,46cに表示された工具情報を確認することで、当該表示領域に対応した工具保持部36に保持された工具Tに関する情報を認識することができる。特に、着脱位置(ステーションS1)に対応した表示領域46aに、当該着脱位置にある工具ポット36に保持された工具Tの情報が表示されるので、当該工具Tの性状、状態等を認識することができ、当該工具Tの着脱などに際して、当該工具Tの取扱を適切に行うことができる。重量が通常取り扱う重量よりも重い工具T、工具径が細径で剛性が低い工具Tや、材質が低靭性の工具Tである場合には、その取扱いに注意を要し、また、摩耗が進んでいる工具Tの場合には、当該工具Tを交換する必要があるため、これらの情報が表示領域46aに表示されれば、オペレータは、これらの情報を容易に認識することができ、その取扱いを適切に行うことができる。
【0052】
また、各表示領域46a,46b,46cには、当該工具ポット36に保持されるべき工具Tの画像が表示されるので、表示された画像と実際に装着された工具Tとを比較することで、オペレータは、工具Tの誤装着を容易に発見することができ、この結果、誤った工具を用いた加工が実行されるのを未然に防止することができる。
【0053】
また、各表示領域46a,46b,46cに対応した工具ポット36に工具が装着されていない場合には、当該工具ポット36に装着可能な工具情報が表示されるので、例えば、着脱位置の工具ポット36に対して、新たに工具を装着する際に、装着しようとしている工具が妥当なものであるか否かを、容易に認識することができる。
【0054】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は、何ら、上例のものに限定されるものではない。
【0055】
例えば、上例では、着脱位置(ステーションS1)を含むその両隣のステーションS2,S18に対応して設定された表示領域46a,46b,46cに工具情報を表示するようにしたこれに限られるものではなく、着脱位置のステーションS1に対して設定された表示領域46aにのみ、工具情報を表示するようにしても良い。
【0056】
或いは、他のステーション、更には全てのステーションに対応した表示領域46を設定して、各表示領域46に対応した工具Tの情報を表示するようにしても良い。
【0057】
また、上例では、前記工具Tの情報として、工具ポット36の番号、工具Tの番号、工具径、工具長、工具重量、工具材質、工具寿命及び工具の写真を表示するようにしたが、これに限られるものではなく、これらに他の情報を加えて表示するようにしも良く、或いは、これらから選択される一以上の情報を表示するようにしても良い。
【0058】
また、前記工具Tには、加工を行う本来的な工具のみならず、工具ポット36に保持されて、前記工作機械1で使用可能なタッチセンサ(プローブ)やカメラなどの各種センサ類が含まれる。
【0059】
また、当然のことながら、前記工作機械1は立形のマシニングセンタには限定されない。工作機械には、工具マガジン35が設けられる各種態様の工作機械が含まれる。
【0060】
また、前記表示制御部28は前記制御装置20とは別のコンピュータに設けられていても良い。
【0061】
繰り返しになるが、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1 工作機械
2 ベッド
3 コラム
4 主軸頭
5 主軸
6 テーブル
7 送り装置
8 主軸モータ
10 工具交換機構
14 交換アーム
20 制御装置
21 NCプログラム記憶部
22 NCプログラム実行部
23 送り制御部
24 主軸制御部
25 工具情報記憶部
25a 工具データ記憶部
25b 工具画像記憶部
25c 保持可能工具データ記憶部
26 加工時間算出部
27 工具交換制御部
28 表示制御部
30 NC操作盤
35 工具マガジン
36 工具ポット(工具保持部)
39 マガジン駆動機構
40 マガジン操作器
41 タッチパネル
45 投影機
46 表示領域