(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】葉酸受容体1の検出用の抗体及びアッセイ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/574 20060101AFI20240911BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20240911BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
G01N33/574 D
C12Q1/04 ZNA
G01N33/574 A
G01N33/53 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022210118
(22)【出願日】2022-12-27
(62)【分割の表示】P 2020185082の分割
【原出願日】2014-08-29
【審査請求日】2022-12-27
(32)【優先日】2013-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512186793
【氏名又は名称】イミュノジェン, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オルガ アブ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル タバレス
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアント セティアーディー
(72)【発明者】
【氏名】シャロン ラド
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ エヌ. キャリガン
(72)【発明者】
【氏名】リンギュン ルイ
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/135675(WO,A1)
【文献】特表2013-524773(JP,A)
【文献】Maria Ines Nunez et al.,High expression of folate receptor alpha in lung cancer corelates with adenocarcinoma histology and mutation.,journal of Thoracic Oncology,2012年05月31日,vol.7 No.5,833-840
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00-33/98
C12Q 1/04
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者から得た癌性試料における葉酸受容体1(FOLR1)発現の検出からFOLR1発現スコアを決定する方法であって、該検出が、FOLR1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を用いて行われ、該抗体またはその抗原結合断片が、以下:
(i)それぞれ、配列番号3~8;
(ii)それぞれ、配列番号9~14;および
(iii)それぞれ、配列番号15~20
からなる群より選択されるVH CDR1~3とVL CDR1~3のポリペプチド配列を含む、方法。
【請求項2】
前記検出が免疫組織化学法(IHC)を用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞の25%以上における少なくとも2の
強度を有するFOLR1発現スコアは、前記癌を前記活性作用物質に応答する可能性があるものとして特定する、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞の25%以上における少なくとも3の
強度を有するFOLR1発現スコアは、前記癌を前記活性作用物質に応答する可能性があるものとして特定する、請求項
2に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞の75%超における少なくとも2の
強度を有するFOLR1発現スコアは、前記癌を前記活性作用物質に応答する可能性があるものとして特定する、請求項
2に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞の75%超における少なくとも3の
強度を有するFOLR1発現スコアは、前記癌を前記活性作用物質に応答する可能性があるものとして特定する、請求項
2に記載の方法。
【請求項7】
前記癌が、卵巣癌、脳腫瘍、乳癌、子宮癌、子宮内膜癌、膵臓癌、腎臓癌、肺癌および腹膜の癌からなる群から選択される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記癌が、卵巣癌および腹膜の癌からなる群から選択される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記卵巣癌が上皮性卵巣癌である、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記癌が、白金耐性、再発性または難治性である、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記活性作用物質の抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片が、配列番号45のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号47のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、請求項3~1
0のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記活性作用物質が、リンカーを介して前記活性作用物質の抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片に連結した細胞毒性物質を含む、請求項3~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記リンカーが、N-スクシンイミジル 4-(2-ピリジルジチオ)-2-スルホブタノエート(スルホ-SPDB)である、請求項1
2に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞毒性物質が、メイタンシノイドである、請求項1
2または1
3に記載の方法。
【請求項15】
前記メイタンシノイドが、N(2’)-デアセチル-N(2’)-(4-メルカプト-4-メチル-1-オキソペンチル)-メイタンシン(DM4)である、請求項1
4に記載の方法。
【請求項16】
前記活性作用物質が、N-スクシンイミジル 4-(2-ピリジルジチオ)-2-スルホブタノエート(スルホ-SPDB)リンカーを介して前記活性作用物質の抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片に連結したN(2’)-デアセチル-N2’-(4-メルカプト-4-メチル-1-オキソペンチル)-メイタンシン(DM4)を含む、抗体メイタンシノイド複合体であり、ここで、前記活性作用物質の抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片が、配列番号45のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号47のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項3~1
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体またはその抗原結合断片が、以下:
(i)それぞれ、配列番号27~28;
(ii)それぞれ、配列番号29~30;および
(iii)それぞれ、配列番号31~32
からなる群より選択される配列を含む可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)ポリペプチドを含む、請求項1~1
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
試料におけるFOLR1を検出する方法であって、前記方法は、前記試料を、以下:
(i)それぞれ、配列番号3~8;
(ii)それぞれ、配列番号9~14;および
(iii)それぞれ、配列番号15~20
からなる群より選択されるVH CDR1~3とVL CDR1~3のポリペプチド配列を含む抗体またはその抗原結合断片を接触させるステップを包含する、方法。
【請求項19】
前記試料が癌性試料である、請求項1
8に記載の方法。
【請求項20】
抗葉酸受容体1(FOLR1)活性作用物質を用いる治療に感受性である癌を特定する方法であって、前記方法は、以下:
(i)それぞれ、配列番号3~8;
(ii)それぞれ、配列番号9~14;および
(iii)それぞれ、配列番号15~20
からなる群より選択されるVH CDR1~3とVL CDR1~3のポリペプチド配列を含む抗体またはその抗原結合断片を用いる免疫組織化学法(IHC)を用いて、前記癌に由来する細胞を含む生物学的試料におけるFOLR1発現を検出するステップを包含し、ここで、前記試料における前記FOLR1の検出は、前記癌が前記活性作用物質に対して感受性であることの指標である、方法。
【請求項21】
前記細胞の25%以上における少なくとも2の強度を有するFOLR1発現スコアは、前記癌を前記活性作用物質に応答する可能性があるものとして特定する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞の25%以上における少なくとも3の強度を有するFOLR1発現スコアは、前記癌を前記活性作用物質に応答する可能性があるものとして特定する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞の75%超における少なくとも2の強度を有するFOLR1発現スコアは、前記癌を前記活性作用物質に応答する可能性があるものとして特定する、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞の75%超における少なくとも3の強度を有するFOLR1発現スコアは、前記癌を前記活性作用物質に応答する可能性があるものとして特定する、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記癌が、卵巣癌、脳腫瘍、乳癌、子宮癌、子宮内膜癌、膵臓癌、腎臓癌、肺癌および腹膜の癌からなる群から選択される、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記癌が、卵巣癌および腹膜の癌からなる群から選択される、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記卵巣癌が上皮性卵巣癌である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記癌が、白金耐性、再発性または難治性である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記活性作用物質の抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片が、配列番号45のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号47のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、請求項21~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記活性作用物質が、リンカーを介して前記活性作用物質の抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片に連結した細胞毒性物質を含む、請求項21~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記リンカーが、N-スクシンイミジル 4-(2-ピリジルジチオ)-2-スルホブタノエート(スルホ-SPDB)である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記細胞毒性物質が、メイタンシノイドである、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記メイタンシノイドが、N(2’)-デアセチル-N(2’)-(4-メルカプト-4-メチル-1-オキソペンチル)-メイタンシン(DM4)である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記活性作用物質が、N-スクシンイミジル 4-(2-ピリジルジチオ)-2-スルホブタノエート(スルホ-SPDB)リンカーを介して前記活性作用物質の抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片に連結したN(2’)-デアセチル-N2’-(4-メルカプト-4-メチル-1-オキソペンチル)-メイタンシン(DM4)を含む、抗体メイタンシノイド複合体であり、ここで、前記活性作用物質の抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片が、配列番号45のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号47のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項21~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記抗体またはその抗原結合断片が、以下:
(i)それぞれ、配列番号27~28;
(ii)それぞれ、配列番号29~30;および
(iii)それぞれ、配列番号31~32
からなる群より選択される配列を含む可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)ポリペプチドを含む、請求項20~34のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に葉酸受容体1に基づく治療法のための診断アッセイ及びキット並びにヒト葉酸受容体1に結合する抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、先進国での死亡の主要な原因の1つであり、米国だけでも年間100万人を超える人々が癌と診断され、500,000人が死亡している。概して、3人に1人を超える人が生涯で何らかの形態の癌を発症すると推定されている。200を超える様々な種類の癌があり、そのうちの4つ-乳癌、肺癌、結腸直腸癌及び前立腺癌が新しい症例すべての過半数を占めている(Jemalら,2003,Cancer J.Clin.53:5-26)。
【0003】
葉酸受容体αまたは葉酸結合タンパク質としても知られる葉酸受容体1(FOLR1)は細胞の原形質膜上に発現されるN-グリコシル化タンパク質である。FOLR1は葉酸及び幾つかの還元された葉酸誘導体に対して高い親和性を有する。FOLR1は生理的な葉酸である5-メチルテトラヒドロ葉酸の細胞内部への送達に介在する。
【0004】
FOLR1は、卵巣癌の大半で、同様に多数の子宮癌、子宮内膜癌、膵臓癌、腎臓癌、肺癌及び乳癌で過剰発現している一方で、正常組織におけるFOLR1の発現は腎臓の近位尿細管、肺の肺胞肺細胞、膀胱、精巣、脈絡叢及び甲状腺における上皮細胞の頂端膜に限定されている(Weitman,SDら,Cancer Res.52:3396-3401(1992);Antony,AC,Annu.Rev.Nutr.16:501-521(1996);Kalli,KRら.Gynecol.Oncol.108:619-626(2008))。FOLR1のこの発現パターンによってFOLR1を標的とする癌治療法にとってそれが望ましい標的となっている。
【0005】
卵巣癌は進行した段階まで通常無症候性なので、遅い段階で診断されることが多く、現在利用できる処置、通常、外科的減量術の後、化学療法剤によって治療される場合、予後不良である(von Gruenigen,Vら,Cancer,112:2221-2227(2008);Ayhan,Aら,Am.J.Obstet.Gynecol.196:81,e81-86(2007);Harry,VNら,Obstet.Gynecol.Surv.64:548-560(2009))。従って、卵巣癌のさらに効果的な診断に対する明らかな満たされない医学的なニーズがある。
脱落したFOLR1を検出するのに使用される幾つかの以前のアッセイはFOLR1に対して十分に特異的であるわけではない。たとえば、一部のアッセイは、FOLR1と他の受容体ファミリーメンバー(FOLR2、3及び4)との間を区別せず、総FBP(葉酸結合タンパク質)についての値を報告もしない。さらに、一部のアッセイは、ヒトの試料(たとえば、血漿)を軽い酸洗浄ステップで予備処理して葉酸を受容体から解離することを必要とする。一部のアッセイ結果は、抗体療法と診断用抗体の間での競合効果のために不正確さも有し得る。さらに、多数の市販のキットは従来、その試薬及びロット間の安定性の双方で頼りにならない。これらのキットの評価は非常に入り交じった結果を生じており、研究用途のみを対象としている。多数が、「マトリクス効果」による疑陽性の機会を減らすように分析の前にヒト試料を予備希釈することを求めている。従って、FOLR1に基づく治療法のための比較としてFOLR1の臨床的に関連するダイナミック・レンジを検出することができる感度の高い且つ正確な診断用アッセイに対する明らかなニーズがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Jemalら,2003,Cancer J.Clin.53:5-26
【文献】Weitman,SDら,Cancer Res.52:3396-3401(1992)
【文献】Antony,AC,Annu.Rev.Nutr.16:501-521(1996)
【文献】Kalli,KRら.Gynecol.Oncol.108:619-626(2008)
【文献】von Gruenigen,Vら,Cancer,112:2221-2227(2008)
【文献】Ayhan,Aら,Am.J.Obstet.Gynecol.196:81,e81-86(2007)
【文献】Harry,VNら,Obstet.Gynecol.Surv.64:548-560(2009)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
抗FOLR1抗体及びその抗原結合断片ならびにFOLR1を検出する方法、FOLR1が介在する疾患及び障害(たとえば、癌)を診断する方法、抗FOLR1療法の有効性をモニターする方法、抗FOLR1療法を最適化する方法、及び患者を階層化する方法がすべて本明細書で提供される。
【0008】
本明細書で提供される抗FOLR1抗体は診断の役割を有することができる。たとえば、腫瘍と非腫瘍細胞または非腫瘍組織の間を区別する、または腫瘍の型、亜型または等級を特定する抗FOLR1抗体が本明細書で提供される。一実施形態では、本明細書で提供される抗FOLR1抗体及び/または本明細書で提供されるFOLR1検出アッセイを用いて本明細書で記載されるような腺癌及び扁平上皮細胞癌を含む非小細胞肺癌(NSCLC)の亜型間を区別することができる。別の実施形態では、本明細書で提供される抗FOLR1抗体及び/または本明細書で提供されるFOLR1検出アッセイを用いて癌の種類、たとえば、肉腫を除外する(たとえば、細胞または組織が癌の一種ではないことを決定する)ことができる。
【0009】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片はFOLR1のエピトープに特異的に結合することができ、その際、該エピトープは少なくとも1つ、少なくとも2つまたは3つのN-グリコシル化アミノ酸を含む。グリコシル化は膜の局在に決定的に重要であり得る。たとえば、Yanら,J.Am.Soc.Nephol.13:1385-1389(2002)を参照のこと。有利なことに、本明細書の抗体及び抗原結合断片は細胞膜上でのFOLR1の発現を検出することができ、且つFOLR1の臨床的に関連するダイナミック・レンジを検出することができる。本明細書で提供される抗体及び抗原結合断片によって得られるさらに慎重な染色によって、異なるFOLR1エピトープに結合し、十分な特異性を欠き、十分な感度を欠く抗体を用いて高い発現レベル(3のスコアを持つ)としてすべて一緒にグループ化された試料間での識別が可能になる。
【0010】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号27のポリペプチドと配列番号28のポリペプチドを含む抗体;(b)配列番号29のポリペプチドと配列番号30のポリペプチドを含む抗体;(c)配列番号31のポリペプチドと配列番号32のポリペプチドを含む抗体;(d)配列番号62のポリペプチドと配列番号63または配列番号64のポリペプチドを含む抗体;及び(e)配列番号65のポリペプチドと配列番号66または配列番号67のポリペプチドを含む抗体から成る群から選択される抗体と同一のFOLR1エピトープに特異的に結合することができる。一部の実施形態では、エピトープはN-グリコシル化アミノ酸を含む。
【0011】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片はFOLR1に特異的に結合することができ、その際、前記抗体またはその断片は、(a)配列番号27のポリペプチドと配列番号28のポリペプチドを含む抗体;(b)配列番号29のポリペプチドと配列番号30のポリペプチドを含む抗体;(c)配列番号31のポリペプチドと配列番号32のポリペプチドを含む抗体;(d)配列番号62のポリペプチドと配列番号63または配列番号64のポリペプチドを含む抗体;及び(e)配列番号65のポリペプチドと配列番号66または配列番号67のポリペプチドを含む抗体から成る群から選択される抗体のFOLR1への結合を競合して阻害する。
【0012】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、(a)それぞれ配列番号3~8;(b)それぞれ配列番号9~14;(c)それぞれ配列番号15~20;(d)それぞれ配列番号21~26;(e)それぞれ配列番号3~5と配列番号59、7及び8;(f)それぞれ配列番号3、60及び5と配列番号6~8;(g)それぞれ配列番号3、61及び5と配列番号6~8;(h)それぞれ配列番号3、60及び5と配列番号59、7及び8;並びに(i)それぞれ配列番号3、61及び5と配列番号59、7及び8から成る群から選択されるVHのCDR1~3とVLのCDR1~3のポリペプチド配列を含む。
【0013】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、FOLR1に特異的に結合することができ、その際、抗体またはその断片は、(a)それぞれ配列番号3~8;(b)それぞれ配列番号9~14;(c)それぞれ配列番号15~20;(d)それぞれ配列番号21~26;(e)それぞれ配列番号3~5と配列番号59、7、及び8;(f)それぞれ配列番号:3、60、及び5と配列番号6~8;(g)それぞれ配列番号:3、61及び5と配列番号6~8;(h)それぞれ配列番号3、60及び5と配列番号59、7及び8;(i)それぞれ配列番号3、61及び5と配列番号59、7、及び8;並びに(j)1、2、3、または4の保存的アミノ酸置換を含む(a)~(i)の変異体から成る群から選択されるVHのCDR1~3とVLのCDR1~3のポリペプチド配列を含む。
【0014】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号27と配列番号28;(b)配列番号29と配列番号30;(c)配列番号31と配列番号32;(d)配列番号62と配列番号63または配列番号64;(e)配列番号65と配列番号66または配列番号67;(f)配列番号68と配列番号69から成る群から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%同一であるポリペプチド配列を含む。一部の実施形態では、ポリペプチド配列は(a)配列番号27と配列番号28;(b)配列番号29と配列番号30;(c)配列番号31と配列番号32;(d)配列番号62と配列番号63または配列番号64;(e)配列番号:65と配列番号66または配列番号67;(f)配列番号68と配列番号69から成る群から選択される配列のアミノ酸を含む、アミノ酸から本質的に成る、またはアミノ酸から成る。
【0015】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片はFOLR1に特異的に結合することができ、その際、抗体またはその断片はそれぞれ配列番号51、配列番号52または53、及び配列番号54のアミノ酸を含むCDR1、CDR2及びCDR3領域を含むヒト化重鎖可変領域と、それぞれ配列番号48、配列番号49、及び配列番号50のアミノ酸を含むCDR1、CDR2及びCDR3領域を含むヒト化軽鎖可変領域と、マウス定常領域とを含む。一部の実施形態では、ヒト化重鎖可変領域は配列番号45のアミノ酸を含み、ヒト化軽鎖可変領域は配列番号47のアミノ酸を含む。
【0016】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、組換えで作出される。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、マウス、非ヒト、ヒト化、キメラ、表面再構成またはヒト抗体である。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、ヒトFOLR1に結合し、FOLR2またはFOLR3には結合しない。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は完全長の抗体である。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、抗原結合断片である。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、単鎖Fv若しくはscFv、ジスルフィド結合Fv、V-NARドメイン、IgNar、細胞内発現抗体、IgGΔCH2、ミニ抗体、F(ab’)3、四価抗体、三価抗体、二重特異性抗体、単ドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb2、(scFv)2、またはscFv-Fcを含む、それらから本質的に成る、またはそれらから成る。
【0017】
一部の実施形態では、本明細書で提供されるポリペプチドはFOLR1に特異的に結合することができ、その際、ポリペプチドは、(a)それぞれ配列番号3~8;(b)それぞれ配列番号9~14;(c)それぞれ配列番号15~20;(d)それぞれ配列番号21~26;(e)それぞれ配列番号3~5と配列番号59、7、及び8;(f)それぞれ配列番号:3、60、及び5と配列番号6~8;(g)それぞれ配列番号:3、61及び5と配列番号6~8;(h)それぞれ配列番号3、60及び5と配列番号59、7及び8;(i)それぞれ配列番号3、61及び5と配列番号59、7、及び8;並びに(j)1、2、3、または4の保存的アミノ酸置換を含む(a)~(i)の変異体から成る群から選択される配列を含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、(a)配列番号27と配列番号28;(b)配列番号29と配列番号30;(c)配列番号31と配列番号32;(d)配列番号62と配列番号63または配列番号64;(e)配列番号65と配列番号66または配列番号67;及び(f)配列番号68と配列番号69から成る群から選択される配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%同一である配列を含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、(a)配列番号27と配列番号28;(b)配列番号29と配列番号30;(c)配列番号31と配列番号32;(d)配列番号62と配列番号63または配列番号64;(e)配列番号65と配列番号66または配列番号67;または(f)配列番号68と配列番号69のアミノ酸を含む。
【0018】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片、またはポリペプチドは、約0.5~約10nMのKdでFOLR1に結合する。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片、またはポリペプチドは、約1.0nMまたはそれより良好なKdでFOLR1に結合する。一部の実施形態では、結合親和性はフローサイトメトリー、Biacore、ELISAまたは放射性免疫アッセイによって測定される。
【0019】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片、またはポリペプチドは、N-グリコシル化アミノ酸を含むFOLR1のエピトープに結合する。
【0020】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片、またはポリペプチドは検出可能に標識される。
【0021】
一部の実施形態では、本明細書で提供される細胞は抗体またはその抗原結合断片、またはポリペプチドを産生する。一部の実施形態では、細胞は単離される。
【0022】
抗体、その抗原結合断片、またはポリペプチドを作製する方法も提供される。該方法は、(a)本明細書で提供される細胞を培養することと、(b)培養した細胞から抗体、その抗原結合断片、またはポリペプチドを単離することとを含む。
【0023】
抗体、その抗原結合断片、またはポリペプチドを含む組成物も提供される。一部の実施形態では、組成物は、抗体、その抗原結合断片、またはポリペプチドと、FACS緩衝液、IHC緩衝液、及びELISA緩衝液から成る群から選択される緩衝液とを含む。
【0024】
抗体、その抗原結合断片、またはポリペプチドを使用する方法も提供される。
【0025】
一部の実施形態では、試料にてFOLR1の発現を検出する方法は試料を本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物に接触させることを含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は検出可能に標識される。一部の実施形態では、標識は、免疫蛍光標識、化学発光標識、リン光性標識、酵素標識、放射性標識、アビジン/ビオチン、コロイド状金粒子、着色粒子及び磁気粒子から成る群から選択される。一部の実施形態では、FOLR1の発現は放射性免疫アッセイ、ウエスタンブロットアッセイ、サイトメトリー、免疫蛍光アッセイ、酵素免疫アッセイ、免疫沈降アッセイ、化学発光アッセイまたは免疫組織化学アッセイによって測定される。一部の実施形態では、サイトメトリーはフローサイトメトリーである、一部の実施形態では、FOLR1の発現はIHCによって測定される。
【0026】
一部の実施形態では、抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による癌治療法の有効性を高める方法は、癌を有する対象に該活性作用物質を投与することを含み、その際、FOLR1の増加した発現は、本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて対象に由来する癌性試料にて検出されている。
【0027】
一部の実施形態では、抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性がある癌を特定する方法は、(a)癌に由来する細胞を含む生体試料を本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物に接触させることと;(b)(a)の生体試料にて抗体、その抗原結合断片、またはポリペプチドのFOLR1への結合を検出することと;(c)ステップ(b)の結合にスコアを割り当て、その際、スコアは1以上の参照試料との比較に基づいて割り当てられることと、(d)ステップ(c)におけるスコアを参照組織または細胞のスコアと比較することとを含み、その際、正常な若しくは低いFOLR1を発現する参照試料のスコアより大きい癌のFOLR1レベルについてのスコア、または高いFOLR1を発現する参照試料のスコアに等しいまたはそれよりも高い癌のFOLR1レベルについてのスコアが、癌が抗FOLR1抗体に応答する可能性があることを特定する。
【0028】
一部の実施形態では、癌を有する患者を治療する方法は、(a)患者から得た癌性試料におけるFOLR1発現の検出からFOLR1発現のスコアを決定することであって、その際、検出は本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて行われる、決定することと、(b)スコアが患者は活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示すのであれば、抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質を患者に投与することとを含む。
【0029】
一部の実施形態では、癌を有する患者を治療する方法は、(a)患者から得た癌性試料におけるFOLR1発現の検出からFOLR1発現のスコアを決定することであって、その際、検出は本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて行われる、決定することと、(b)スコアが患者は活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示すのであれば、抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質を患者に投与するようにヘルスケア提供者を指導することとを含む。
【0030】
一部の実施形態では、癌を有する患者を治療する方法は、(a)本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いたFOLR1発現の検出からFOLR1発現のスコアを決定するために癌を有する患者から採取した癌性試料を提出することと、(b)スコアが患者は活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示すのであれば、抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質を患者に投与することとを含む。
【0031】
一部の実施形態では、癌を有する患者を治療する方法は、(a)患者から得た癌性試料にてFOLR1の発現を検出することであって、その際、検出は本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて行われる、検出することと、(b)癌性試料についてFOLR1の発現スコアを決定することと、(c)スコアが患者は活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示すのであれば、抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質を患者に投与することとを含む。
【0032】
一部の実施形態では、癌を有する患者を治療する方法は、(a)抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の固定用量を患者に投与することと、(b)参照試料におけるFOLR1のレベルと比べた患者のFOLR1のレベルを検出することであって、その際、検出は本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて行われる、検出することと、(c)患者のFOLR1のレベルが上昇しているのであれば、その後の固定用量の量または回数を増やすこととを含む。
【0033】
一部の実施形態では、癌を有する対象のために抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療計画を最適化する方法は、(a)対象におけるFOLR1の増加した発現が本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて検出されている癌を有する対象に高い用量の抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質を投与することと、(b)対象におけるFOLR1の低い発現が検出されている癌を有する対象に低下させた用量の活性作用物質を投与することとを含む。
【0034】
一部の実施形態では、癌を有する対象のために抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療計画を最適化する方法は、(a)本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて対象に由来する癌性試料にてFOLR1発現のレベルを検出することと、(b)癌性試料についてFOLR1発現のスコアを決定することと、(c)スコアが低いのであれば、高い用量の抗FOLR1抗体またはその抗原結合を含む活性作用物質を投与すること、またはスコアが高いのであれば、低下させた用量の活性作用物質を投与することとを含む。
【0035】
一部の実施形態では、癌患者にてFOLR1を発現する癌細胞を減らす方法は、(a)本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて、参照試料におけるFOLR1のレベルに比べた患者から採取した癌性試料にてFOLR1のレベルを検出することと、(b)参照試料に比べて患者のFOLR1のレベルが上昇しているのであれば、抗FOLR1抗体またはその抗原結合を含む、固定用量の活性作用物質を患者に投与することとを含み、その際、活性作用物質の投与は患者にてFOLR1を発現する細胞の数を減らす。一部の実施形態では、患者にて癌を治療する方法は、(a)本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて、参照試料におけるFOLR1のレベルに比べた患者から採取した癌性試料にてFOLR1のレベルを検出することと、(b)参照試料に比べて患者のFOLR1のレベルが上昇しているのであれば、抗FOLR1抗体またはその抗原結合を含む、固定用量の活性作用物質を患者に投与することとを含み、その際、活性作用物質の投与はFOLR1を発現する腫瘍のサイズを減らし、またはCA125のレベルを低下させる。
【0036】
一部の実施形態では、癌患者にてFOLR1を発現する癌細胞を減らす方法は、(a)癌を有する患者に抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む、固定用量の活性作用物質を投与することと、(b)本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて、参照試料におけるFOLR1のレベルに比べた患者のFOLR1のレベルを検出することと、(c)参照試料に比べて患者のFOLR1のレベルが上昇しているのであれば、その後の固定用量の量または回数を増やすこととを含み、その際、活性作用物質の投与は患者にてFOLR1を発現する癌細胞の数を減らす。一部の実施形態では、患者にて癌を治療する方法は、(a)癌を有する患者に抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む、固定用量の活性作用物質を投与することと、(b)本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて、参照試料におけるFOLR1のレベルに比べた患者のFOLR1のレベルを検出することと、(c)参照試料に比べて患者のFOLR1のレベルが上昇しているのであれば、その後の固定用量の量または回数を増やすこととを含み、その際、活性作用物質の投与はFOLR1を発現する腫瘍のサイズを減らす、またはCA125のレベルを低下させる。
【0037】
一部の実施形態では、患者において抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む、固定用量の活性作用物質の治療上の有効性をモニターする方法は、(a)癌を有する患者に由来する生体試料にて本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて第1のFOLR1のレベルを検出することと、(b)抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む、固定用量の活性作用物質を患者に投与することと、(c)活性作用物質投与の後の患者に由来する生体試料にて第2のFOLR1のレベルを検出し、検出は本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて行われることと、(d)第1のFOLR1のレベルと第2のFOLR1のレベルを比較することとを含み、第1のFOLR1のレベルと第2のFOLR1のレベルとの間での低下は治療上の有効性を示す。
【0038】
一部の実施形態では、低用量の抗FOLR1治療計画に応答する可能性がある癌を有する対象を特定する方法は、(a)癌に由来する細胞を含む生体試料を本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物に接触させることと、(b)(a)の生体試料への抗体、抗原結合断片、またはポリペプチドの結合を検出することと、(c)ステップ(b)の結合にスコアを割り当て、その際、スコアは1以上の参照試料との比較に基づいて割り当てられることと、(d)ステップ(c)におけるスコアを参照組織または参照細胞のスコアと比較することとを含み、その際、正常な若しくは低いFOLR1を発現する参照試料のスコアよりも大きい癌のFOLR1レベルについてのスコア、または高いFOLR1を発現する参照試料のスコアと同等である若しくはそれより大きい癌のFOLR1レベルについてのスコアは、癌が低用量の抗FOLR1治療に応答する可能性があることを特定する。
【0039】
一部の実施形態では、癌が抗FOLR1活性作用物質による治療に感受性であることを特定する方法は、(a)本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて、癌に由来する癌性試料にてFOLR1発現のレベルを検出することであって、その際、検出は1以上の参照試料における染色強度または染色均一性と比べてFOLR1を発現する癌性試料にて染色強度または染色均一性を区別する方法の使用を含む、検出することと、(b)癌性試料についてFOLR1の染色強度または染色均一性のスコアを決定することと、(c)少なくとも1つの参照試料におけるFOLR1タンパク質の発現を測定することによって決定される相対値とステップ(b)で決定されたFOLR1の染色強度または染色均一性のスコアを比較することとを含み、その際、少なくとも1つの参照試料は、抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性ではない組織、細胞または細胞ペレット試料であり、相対値より高い、ステップ(b)で決定された癌性試料についてのFOLR1の染色強度スコアは、癌が活性作用物質による治療に感受性であることを特定する。
【0040】
一部の実施形態では、癌が抗FOLR1活性作用物質による治療に感受性であることを特定する方法は、(a)本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて、癌に由来する癌性試料にてFOLR1発現のレベルを検出することであって、その際、検出は、1以上の参照試料における膜FOLR1に比べてFOLR1を発現する癌性試料にて膜FOLR1を特異的に染色する方法の使用を含む、検出することと、(b)癌性試料についてFOLR1のスコアを決定することと、(c)少なくとも1つの参照試料にてFOLR1を測定することによって決定された相対値に対してステップ(b)にて決定されたFOLR1のスコアを比較することとを含み、その際、少なくとも1つの参照試料は、抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性ではない組織、細胞または細胞ペレット試料であり、相対値よりも高いステップ(b)で決定された癌性試料についてのFOLR1スコアは癌が活性作用物質による治療に感受性であることを特定する。
【0041】
一部の実施形態では、癌が抗FOLR1活性作用物質による治療に感受性であることを特定する方法は、(a)本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて、癌に由来する癌性試料にてFOLR1発現のレベルを検出することであって、その際、検出は1以上の参照試料における染色強度または染色均一性と比べてFOLR1を発現する癌性試料にて染色強度または染色均一性を区別する方法の使用を含む、検出することと、(b)癌性試料についてFOLR1の染色強度または染色均一性のスコアを決定することと、(c)少なくとも1つの参照試料におけるFOLR1タンパク質の発現を測定することによって決定される相対値とステップ(b)で決定されたFOLR1の染色強度または染色均一性のスコアを比較することとを含み、その際、少なくとも1つの参照試料は、抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性である組織、細胞または細胞ペレット試料であり、相対値より高いまたはそれに等しいステップ(b)で決定された癌性試料についてのFOLR1の染色強度スコアは癌が活性作用物質による治療に感受性であることを特定する。
【0042】
一部の実施形態では、癌が抗FOLR1活性作用物質による治療に感受性であることを特定する方法は、(a)本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて、癌に由来する癌性試料にてFOLR1発現のレベルを検出することであって、その際、検出は、1以上の参照試料における膜FOLR1に比べてFOLR1を発現する癌性試料にて膜FOLR1を特異的に染色する方法の使用を含む、検出することと、(b)癌性試料についてFOLR1のスコアを決定することと、(c)少なくとも1つの参照試料にてFOLR1を測定することによって決定された相対値に対してステップ(b)にて決定されたFOLR1のスコアを比較することとを含み、その際、少なくとも1つの参照試料は、抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性である組織、細胞または細胞ペレット試料であり、相対値よりも高いまたはそれに等しいステップ(b)で決定された癌性試料についてのFOLR1スコアは癌が活性作用物質による治療に感受性であることを特定する。
【0043】
一部の実施形態では、方法はさらに、癌性試料または生体試料が得られた対象に、抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質を投与することとを含む。
【0044】
一部の実施形態では、患者のFOLR1のレベルは患者から得られる癌性試料または生体試料にて検出される。一部の実施形態では、癌性試料または生体試料は体液、細胞または組織の試料である。一部の実施形態では、細胞は循環している腫瘍細胞である。一部の実施形態では、体液は血液、腹水、尿、血漿、血清または末梢血である。
【0045】
一部の実施形態では、FOLR1は膜に局在するFOLR1である。
【0046】
一部の実施形態では、FOLR1は脱落したFOLR1である。
【0047】
一部の実施形態では、検出は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)による。
【0048】
一部の実施形態では、検出は免疫組織化学法(IHC)による。一部の実施形態では、IHCはFOLR1発現の異なるレベルを区別することができる較正されたIHCである。一部の実施形態では、IHCは、FOLR1の低い細胞表面発現、FOLR1の中程度の細胞表面発現またはFOLR1の高い細胞表面発現を有する試料について様々な染色強度を生じる。一部の実施形態では、IHCは、参照試料と比べてFOLR1を発現する癌性試料または生体試料における染色強度と染色均一性の間を区別する。一部の実施形態では、IHCは膜FOLR1を検出する。一部の実施形態では、IHCは手動で実施される。一部の実施形態では、IHCは自動化システムを用いて実施される。
【0049】
一部の実施形態では、FOLR1のスコアはIHCから決定される。
【0050】
一部の実施形態では、少なくとも1のスコアはFOLR1の増加した発現を示し、癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性があることを特定する。
【0051】
一部の実施形態では、少なくとも2、少なくとも2ホモ(75%超の均一性)または少なくとも2ヘテロ(25~75%の均一性)のスコアは、癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性があることを特定する。一部の実施形態では、癌は肺癌または子宮内膜癌である。一部の実施形態では、少なくとも3、少なくとも3ホモ(75%超の均一性)または少なくとも3ヘテロ(25~75%の均一性)のスコアは、癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性があることを特定する。一部の実施形態では、癌は肺癌、子宮内膜癌、または卵巣癌である。
【0052】
一部の実施形態では、少なくとも50のHスコアは癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性があることを特定する。一部の実施形態では、少なくとも75のHスコアは卵巣癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性があることを特定する。一部の実施形態では、少なくとも50のHスコアはNSCLCが抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性があることを特定する。一部の実施形態では、少なくとも50のHスコアは子宮内膜癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性があることを特定する。一実施形態では、HスコアはFOLR1-2.1抗体を用いて決定される。
【0053】
一部の実施形態では、少なくとも3の強度を伴う卵巣腫瘍試料における少なくとも25%のFOLR1の膜発現は、卵巣癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性があることを特定する。一部の実施形態では、少なくとも2の強度を伴うNSCLC試料における少なくとも25%のFOLR1の膜発現は、NSCLCが抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性があることを特定する。一部の実施形態では、少なくとも2の強度を伴う子宮内膜腫瘍試料における少なくとも25%のFOLR1の膜発現は、子宮内膜癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性があることを特定する。一実施形態では、発現スコアはFOLR1-2.1抗体を用いて決定される。
【0054】
一部の実施形態では、少なくとも1のスコアは、FOLR1の増加した発現と、患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうこととを示す。一部の実施形態では、少なくとも2、少なくとも2ホモ(75%超の均一性)または少なくとも2ヘテロ(25~75%の均一性)のスコアは、患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す。一部の実施形態では、癌は肺癌または子宮内膜癌である。一部の実施形態では、少なくとも3、少なくとも3ホモ(75%超の均一性)または少なくとも3ヘテロ(25~75%の均一性)のスコアは、患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す。一部の実施形態では、癌は、肺癌、子宮内膜癌、または卵巣癌である。
【0055】
一部の実施形態では、少なくとも50のHスコアは、患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す。一部の実施形態では、少なくとも75のHスコアは、卵巣癌の患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す。一部の実施形態では、少なくとも50のHスコアは、NSCLCの患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す。一部の実施形態では、少なくとも50のHスコアは、子宮内膜癌の患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す。一実施形態では、HスコアはFOLR1-2.1抗体を用いて決定される。
【0056】
一部の実施形態では、少なくとも3の強度を伴う卵巣腫瘍試料における少なくとも25%のFOLR1の膜発現は、患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す。一部の実施形態では、少なくとも2の強度を伴うNSCLC試料における少なくとも25%のFOLR1の膜発現は、患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す。一部の実施形態では、少なくとも2の強度を伴う子宮内膜腫瘍試料における少なくとも25%のFOLR1の膜発現は、患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す。一実施形態では、発現スコアはFOLR1-2.1抗体を用いて決定される。
【0057】
一部の実施形態では、少なくとも1のスコアはFOLR1の増加した発現を示す。一部の実施形態では、少なくとも2、少なくとも2ホモ(75%超の均一性)または少なくとも2ヘテロ(25~75%の均一性)のスコアは、低下させた用量の活性作用物質が投与されるべきであることを示す。一部の実施形態では、癌は肺癌または子宮内膜癌である。一部の実施形態では、少なくとも3、少なくとも3ホモ(75%超の均一性)または少なくとも3ヘテロ(25~75%の均一性)のスコアは、低下させた用量の活性作用物質が投与されるべきであることを示す。一部の実施形態では、癌は肺癌、子宮内膜癌、または卵巣癌である。
【0058】
一部の実施形態では、少なくとも1のスコアはFOLR1の増加した発現を示す。一部の実施形態では、少なくとも2、少なくとも2ホモ(75%超の均一性)または少なくとも2ヘテロ(25~75%の均一性)のスコアは、癌が低い用量の抗FOLR1治療に応答する可能性があることを特定する。一部の実施形態では、癌は肺癌または子宮内膜癌である。一部の実施形態では、少なくとも3、少なくとも3ホモ(75%超の均一性)または少なくとも3ヘテロ(25~75%の均一性)のスコアは、癌が低い用量の抗FOLR1治療に応答する可能性があることを特定する。一部の実施形態では、癌は肺癌、子宮内膜癌、または卵巣癌である。
【0059】
一部の実施形態では、少なくとも2、少なくとも2ホモ(75%超の均一性)または少なくとも2ヘテロ(25~75%の均一性)のスコアは、癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性であることを特定する。一部の実施形態では、癌は肺癌または子宮内膜癌である。一部の実施形態では、少なくとも3、少なくとも3ホモ(75%超の均一性)または少なくとも3ヘテロ(25~75%の均一性)のスコアは、癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性であることを特定する。一部の実施形態では、癌は肺癌、子宮内膜癌、または卵巣癌である。
【0060】
一部の実施形態では、少なくとも50のHスコアは、癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性であることを特定する。一部の実施形態では、少なくとも75のHスコアは、卵巣癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性であることを特定する。一部の実施形態では、少なくとも50のHスコアは、NSCLCが抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性であることを特定する。一部の実施形態では、少なくとも50のHスコアは、子宮内膜癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性であることを特定する。一実施形態では、H-スコアはFOLR1-2.1抗体を用いて決定される。
【0061】
一部の実施形態では、少なくとも3の強度を伴う卵巣腫瘍試料における少なくとも25%のFOLR1の膜発現は、癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性であることを特定する。一部の実施形態では、少なくとも2の強度を伴うNSCLC試料における少なくとも25%のFOLR1の膜発現は、癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性であることを特定する。一部の実施形態では、少なくとも2の強度を伴う子宮内膜腫瘍試料における少なくとも25%のFOLR1の膜発現は、癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性であることを特定する。一実施形態では、発現スコアはFOLR1-2.1抗体を用いて決定される。
【0062】
一部の実施形態では、参照試料は陽性の参照試料または陰性の参照試料である。一部の実施形態では、参照試料は細胞、細胞のペレットまたは組織を含む。
【0063】
一部の実施形態では、抗体、その抗原結合断片、またはポリペプチドは、酵素、蛍光団、放射性標識及び発光団から成る群から選択される検出試薬を含む。一部の実施形態では、検出試薬は、ビオチン、ジゴキシゲニン、フルオレセイン、トリチウム及びローダミンから成る群から選択される。
【0064】
一部の実施形態では、癌はFOLR1陽性の癌である。一部の実施形態では、癌は、卵巣癌、脳腫瘍、乳癌、子宮癌、子宮内膜癌、膵臓癌、腎臓癌及び肺癌から成る群から選択される。一部の実施形態では、肺癌は非小細胞肺癌または細気管支肺胞上皮癌である。一部の実施形態では、卵巣癌は上皮性卵巣癌である。一部の実施形態では、卵巣癌は、白金耐性、再発性または難治性である。
【0065】
一部の実施形態では、FOLR1の発現は少なくとも1つの追加の抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を用いて検出される。一部の実施形態では、FOLR1の発現は、2つの抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を用いて測定される。一部の実施形態では、少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片が固相支持体に結合される。一部の実施形態では、少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片がマイクロタイタープレートに結合される。
【0066】
一部の実施形態では、少なくとも1つの追加の抗体またはその抗原結合断片は検出試薬を含む。一部の実施形態では、検出試薬は、発色性検出試薬、蛍光性検出試薬、酵素検出試薬または電気化学発光検出試薬である。一部の実施形態では、検出試薬は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)である。
【0067】
一部の実施形態では、ELISAはサンドイッチELISAである。
【0068】
一部の実施形態では、活性作用物質はFOLR1抗体huMov19を含む。一部の実施形態では、活性作用物質は、FOLR1抗体huMov19(配列番号45の重鎖可変領域と配列番号47の軽鎖可変領域を含む)と、メイタンシノイドDM4と、切断可能なスルホ-SPDBリンカーを含む抗体メイタンシノイド複合体(IMGN853)である。
【0069】
一部の実施形態では、FOLR1抗体huMov19とメイタンシノイドDM4とスルホ-SPDBリンカーとを含む抗体メイタンシノイド複合体(IMGN853)による治療に癌が応答する可能性があることを特定する方法は、IHCアッセイにて配列番号27のアミノ酸を含む重鎖と配列番号28のアミノ酸を含む軽鎖を含む抗体を用いてFOLR1を測定することを含み、その際、少なくとも2ヘテロのスコアは癌が治療に応答する可能性があることを示す。
【0070】
一部の実施形態では、癌がFOLR1抗体huMov19とメイタンシノイドDM4とスルホ-SPDBリンカーとを含む抗体メイタンシノイド複合体(IMGN853)による治療に応答することが可能であることを特定する方法は、IHCアッセイにて配列番号27のアミノ酸を含む重鎖と配列番号28のアミノ酸を含む軽鎖を含む抗体を用いてFOLR1を測定することを含み、その際、少なくとも1のスコアは癌が治療に応答する可能性があることを示す。
【0071】
一部の実施形態では、本明細書で提供される製造物品は、本明細書で記載される抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む治療用活性作用物質と、容器と、FOLR1の増加した発現を特徴とする癌を治療するのに該活性作用物質を使用することができることを示す添付文書またはラベルとを含む。本明細書で提供される製造物品は、本明細書で記載される抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む治療用活性作用物質と、容器と、本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチド、または組成物を用いて測定される2または3のレベルでのFOLR1の発現を特徴とする癌を治療するのに該活性作用物質を使用することができることを示す添付文書またはラベルとを含む。一部の実施形態では、活性作用物質の抗FOLR1抗体は細胞毒素に結合される。一部の実施形態では、添付文書またはラベルは、少なくとも1のレベルでのFOLR1の発現を特徴とする癌を治療するのに活性作用物質を使用することができることを示す。一部の実施形態では、添付文書またはラベルは、少なくとも2、少なくとも2ホモ(75%超の均一性)または少なくとも2ヘテロ(25~75%の均一性)のレベルでのFOLR1の発現を特徴とする癌を治療するのに活性作用物質を使用することができることを示す。一部の実施形態では、癌は肺癌または子宮内膜癌である。一部の実施形態では、添付文書またはラベルは、少なくとも3、少なくとも3ホモ(75%超の均一性)または少なくとも3ヘテロ(25~75%の均一性)のレベルでのFOLR1の発現を特徴とする癌を治療するのに活性作用物質を使用することができることを示す。一部の実施形態では、癌は肺癌、子宮内膜癌または卵巣癌である。
【0072】
一部の実施形態では、本明細書で提供される併用診断医薬キットは、診断で使用するための本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチド、または組成物と、治療で使用するための抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質とを含む。一部の実施形態では、検出抗体はIHCによってFOLR1の発現を検出することができる。一部の実施形態では、検出抗体はELISAによってFOLR1の発現を検出することができる。一部の実施形態では、活性作用物質における抗FOLR1抗体は細胞毒素に結合される。
【0073】
一部の実施形態では、本明細書で提供される診断用キットは、本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片またはポリペプチドと、免疫組織化学法(IHC)のための試薬と、1以上の標準化された参照試料とを含み、その際、標準化された参照試料は、細胞、細胞ペレットまたはホルマリン固定され、パラフィン包埋された組織試料を含み、1以上の標準化された参照試料は、FOLR1を発現しない、低いFOLR1を発現するまたは高いFOLR1を発現する細胞、細胞ペレットまたは組織に由来する。
【0074】
一部の実施形態では、試料にて脱落したFOLR1を検出するための免疫アッセイキットは、(a)本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物と、(b)検出試薬とを含む。一部の実施形態では、キットはさらに捕捉試薬のための固相支持体を含む。一部の実施形態では、捕捉試薬は固相支持体に不動化される。一部の実施形態では、捕捉試薬はマイクロタイタープレートに被覆される。一部の実施形態では、検出試薬は第2のFOLR1抗体である。一部の実施形態では、検出試薬は、種特異的な抗体を用いて検出される。一部の実施形態では、キットはさらに検出試薬のための検出手段を含む。一部の実施形態では、検出手段は比色分析である。一部の実施形態では、キットはさらに抗原標準としてのFOLR1ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、FOLR1ポリペプチドは、FOLR1-Fcである。
【0075】
活性作用物質も本明細書で提供される。一部の実施形態では、活性作用物質は、癌を治療する方法で使用するための抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含み、その際、前記活性作用物質は癌を有する対象に投与され、FOLR1の増加した発現は、本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて、前記対象から得られた癌性試料にて検出されている。
【0076】
一部の実施形態では、活性作用物質は、(a)患者から得られた癌性試料におけるFOLR1発現の検出からFOLR1の発現スコアを決定し、その際、検出は本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて実施されることと、(b)該スコアが患者は活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示すのであれば、抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質を患者に投与することとを含む、癌を治療する方法において使用するための抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0077】
一部の実施形態では、活性作用物質は、(a)患者から得られた癌性試料におけるFOLR1発現の検出からFOLR1の発現スコアを決定し、検出は本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて実施されることと、(b)該スコアが患者は活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示すのであれば、抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質を患者に投与するようにヘルスケア提供者を指導することとを含む、癌を治療する方法において使用するための抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0078】
一部の実施形態では、活性作用物質は、(a)本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いてFOLR1の発現の検出からFOLR1の発現スコアを決定するために癌を有する患者から得られた癌性試料を提出することと、(b)該スコアが患者は活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示すのであれば、抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質を患者に投与することとを含む、癌を治療する方法において使用するための抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0079】
一部の実施形態では、活性作用物質は、(a)前記患者から得られた癌性試料にてFOLR1の発現を検出し、検出は本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて実施されることと、(b)前記癌性試料についてFOLR1の発現スコアを決定することと、(c)該スコアが患者は活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示すのであれば、抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質を患者に投与することとを含む、癌を治療する方法において使用するための抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0080】
一部の実施形態では、活性作用物質は、(a)抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む、固定用量の活性作用物質を患者に投与することと、(b)参照試料におけるFOLR1のレベルに比べた患者から得られた癌性試料におけるFOLR1の発現レベルを検出し、その際、検出は本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて実施されることと、(c)患者のFOLR1のレベルが上昇しているのであれば、その後の固定用量の量または回数を増やすこととを含む、癌を治療する方法において使用するための抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0081】
一部の実施形態では、活性作用物質は、(a)癌を有する対象に由来する癌性試料におけるFOLR1の増加した発現が本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて検出されている前記対象に抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む、高い用量の活性作用物質を投与すること、または(b)癌を有する対象に由来する癌性試料におけるFOLR1の低下した発現が検出されている前記対象に、低下させた用量の活性作用物質を投与することを含む、前記活性作用物質の治療計画を最適化するステップを含む、癌を治療する方法において使用するための抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0082】
一部の実施形態では、活性作用物質は、(a)本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて前記対象に由来する癌性試料におけるFOLR1発現のレベルを検出することと、(b)前記癌性試料についてFOLR1発現のスコアを決定することと、(c)スコアが低ければ、抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む、高い用量の活性作用物質を対象に投与し、またはスコアが高ければ低下させた用量の活性作用物質を投与することとを含む、前記活性作用物質の治療計画を最適化するステップを含む、癌を治療する方法において使用するための抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0083】
一部の実施形態では、活性作用物質は癌を治療する方法において使用するための抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含み、その際、癌患者におけるFOLR1を発現する癌細胞は減少し、(a)患者から得られた癌性試料におけるFOLR1のレベルは、本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて参照試料におけるFOLR1のレベルとそれを比較することによって検出され、且つ(b)患者のFOLR1のレベルが上昇しているのであれば、固定用量の活性作用物質が患者に投与され、活性作用物質の投与は患者におけるFOLR1発現癌細胞の数を低下させる。
【0084】
一部の実施形態では、活性作用物質は癌を治療する方法において使用するための抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含み、その際、癌患者におけるFOLR1を発現する癌細胞は減少し、(a)固定用量の活性作用物質が癌を有する患者に投与され、(b)患者から得られた癌性試料におけるFOLR1のレベルは、本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて、参照試料におけるFOLR1のレベルに比べて検出され、(c)参照試料に比べて患者のFOLR1のレベルが上昇しているのであれば、その後の固定用量の量または回数を増やし、活性作用物質の投与は患者におけるFOLR1発現癌細胞の数を低下させる。
【0085】
モニタリング方法及び診断方法で使用するための抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片も本明細書で提供される。一部の実施形態では、患者における活性作用物質の固定用量の治療有効性のモニタリング方法で使用するための抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片は、(a)癌を有する患者に由来する生体試料にて本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて、第1のFOLR1のレベルを検出することと、(b)固定用量の活性作用物質を患者に投与することと、(c)活性作用物質の投与に続いて患者に由来する生体試料にて第2のFOLR1のレベルを検出し、その際、検出は本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いて実施されることと、(d)第2のFOLR1のレベルを第1のFOLR1のレベルと比べることとを含み、その際、第1のFOLR1のレベルと第2のFOLR1のレベルとの間での低下は治療有効性を示す。
【0086】
一部の実施形態では、癌を有する対象が低用量の抗FOLR1治療計画に応答する可能性があるかどうかを診断する方法で使用するための抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片は、(a)前記癌に由来する細胞を含む生体試料を本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物に接触させることと、(b)(a)の生体試料への前記抗体、抗原結合断片またはポリペプチドの結合を検出することと、(c)ステップ(b)の前記結合に対してスコアを割り当て、その際、前記スコアが1以上の参照試料との比較に基づいて割り当てられることと、(d)ステップ(c)の前記スコアを参照組織または参照細胞のスコアと比較することとを含み、その際、正常な若しくは低いFOLR1を発現する参照試料についてのスコアよりも大きい前記癌のFOLR1レベルについてのスコア、または高いFOLR1を発現する参照試料についてのスコアと等しい若しくはそれよりも大きい前記癌のFOLR1レベルについてのスコアは、癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む低い用量の活性作用物質に応答する可能性のあることを特定する。
【0087】
一部の実施形態では、癌が抗FOLR1療法による治療に感受性であるかどうかを診断する方法で使用するための抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片は、(a)前記癌に由来する癌性試料にて、本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いてFOLR1の発現のレベルを検出し、その際、前記検出は、1以上の参照試料における染色強度または染色均一性と比べてFOLR1を発現する癌性試料における染色強度または染色均一性の間を区別する方法の使用を含むことと、(b)前記癌性試料についてFOLR1の染色強度または染色均一性のスコアを決定することと、(c)少なくとも1つの参照試料にてFOLR1タンパク質発現を測定することによって決定された相対値に対してステップ(b)で決定されたFOLR1の染色強度または染色均一性のスコアを比較することとを含み、その際、少なくとも1つの参照試料は抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性ではない組織、細胞、細胞ペレットの試料であり、前記相対値よりも高い、ステップ(b)で決定された前記癌性試料についてのFOLR1の染色強度スコアは、前記癌が活性作用物質による治療に感受性であることを特定する。
【0088】
一部の実施形態では、(a)前記癌に由来する癌性試料にて、本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物を用いてFOLR1の発現のレベルを検出し、その際、前記検出は、1以上の参照試料における染色強度または染色均一性と比べてFOLR1を発現する癌性試料における染色強度または染色均一性の間を区別する方法の使用を含むことと、(b)前記癌性試料についてFOLR1の染色強度または染色均一性のスコアを決定することと、(c)少なくとも1つの参照試料にてFOLR1タンパク質発現を測定することによって決定された相対値に対してステップ(b)で決定されたFOLR1の染色強度または染色均一性のスコアを比較することとを含み、その際、少なくとも1つの参照試料は抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性である組織、細胞、細胞ペレットの試料であり、前記相対値よりも高い、ステップ(b)で決定された前記癌性試料についてのFOLR1の染色強度スコアは、前記癌が活性作用物質による治療に感受性であることを特定する、癌が抗FOLR1療法による治療に感受性であるかどうかを診断する方法で使用するための抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片。
【0089】
一部の実施形態では、活性作用物質または抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片の使用はさらに、癌性試料または生体試料が得られた対象に抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質を投与することを含む。
【0090】
一部の実施形態では、癌性試料または生体試料は体液、細胞または組織の試料である。一部の実施形態では、細胞は循環している腫瘍細胞である。一部の実施形態では、体液は血液、腹水、尿、血漿、血清または末梢血である。
【0091】
活性作用物質または抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片の一部の実施形態では、検出は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)による及び/または免疫組織化学法(IHC)による。一部の実施形態では、IHCは異なるレベルのFOLR1の発現を区別することができる較正IHCである。一部の実施形態では、IHCは低いFOLR1の細胞表面発現、中程度のFOLR1の細胞表面発現または高いFOLR1の細胞表面発現を有する試料について様々な染色強度を生じる。一部の実施形態では、IHCは、参照試料と比べてFOLR1を発現している癌性試料または生体試料にて染色強度と染色均一性の間を区別する。一部の実施形態では、IHCは手動で実施される。一部の実施形態では、IHCは自動化されたシステムを用いて実施される。一部の実施形態では、FOLR1のスコアはIHCから決定される。一部の実施形態では、本明細書で記載される抗体またはその抗原結合断片によるIHCは高いFOLR1の発現を有する細胞、特に2以上の染色のレベルの範囲内であるものについて様々な染色を生じる。
【0092】
一部の実施形態では、少なくとも2のスコアは、患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す。一部の実施形態では、少なくとも2ホモ(75%超の均一性)または少なくとも2ヘテロ(25~75%の均一性)のスコアは、患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す。一部の実施形態では、癌は肺癌または子宮内膜癌である。
【0093】
一部の実施形態では、少なくとも3のスコアは、患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す。一部の実施形態では、少なくとも3ホモ(75%超の均一性)または少なくとも3ヘテロ(25~75%の均一性)のスコアは、患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す。一部の実施形態では、癌は肺癌、子宮内膜癌または卵巣癌である。
【0094】
一部の実施形態では、少なくとも2のスコアは、患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す。一部の実施形態では、少なくとも2ホモ(75%超の均一性)または少なくとも2ヘテロ(25~75%の均一性)のスコアは、患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質を投与から利益を得るであろうことを示す。一部の実施形態では、癌は肺癌、子宮内膜癌または卵巣癌である。
【0095】
一部の実施形態では、少なくとも2のスコアは、低下させた用量の活性作用物質が投与されるべきであることを示す。一部の実施形態では、少なくとも2ホモ(75%超の均一性)または少なくとも2ヘテロ(25~75%の均一性)のスコアは低下させた用量の活性作用物質が投与されるべきであることを示す。一部の実施形態では、癌は肺癌、子宮内膜癌または卵巣癌である。
【0096】
一部の実施形態では、少なくとも2のスコアは、癌が低用量の抗FOLR1治療に応答する可能性があることを特定する。一部の実施形態では、少なくとも2ホモ(75%超の均一性)または少なくとも2ヘテロ(25~75%の均一性)のスコアは、癌が低用量の抗FOLR1治療に応答する可能性があることを特定する。一部の実施形態では、癌は肺癌または子宮内膜癌である。
【0097】
一部の実施形態では、少なくとも3のスコアは、癌が低用量の抗FOLR1治療に応答する可能性があることを特定する。一部の実施形態では、少なくとも3ホモ(75%超の均一性)または少なくとも3ヘテロ(25~75%の均一性)のスコアは、癌が低用量の抗FOLR1治療に応答する可能性があることを特定する。一部の実施形態では、癌は肺癌、子宮内膜癌または卵巣癌である。
【0098】
一部の実施形態では、少なくとも2のスコアは、癌が低用量の抗FOLR1治療に応答する可能性があることを特定する。一部の実施形態では、少なくとも2ホモ(75%超の均一性)または少なくとも2ヘテロ(25~75%の均一性)のスコアは、癌が低用量の抗FOLR1治療に応答する可能性があることを特定する。一部の実施形態では、癌は肺癌、子宮内膜癌または卵巣癌である。
【0099】
一部の実施形態では、少なくとも2のスコアは、癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性であることを特定する。一部の実施形態では、少なくとも2ホモ(75%超の均一性)または少なくとも2ヘテロ(25~75%の均一性)のスコアは、癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性であることを特定する。一部の実施形態では、癌は肺癌、または子宮内膜癌である。
【0100】
一部の実施形態では、少なくとも3のスコアは、癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性であることを特定する。一部の実施形態では、少なくとも3ホモ(75%超の均一性)または少なくとも3ヘテロ(25~75%の均一性)のスコアは、癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性であることを特定する。一部の実施形態では、癌は肺癌、子宮内膜癌または卵巣癌である。
【0101】
一部の実施形態では、少なくとも2のスコアは、癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性であることを特定する。一部の実施形態では、少なくとも2ホモ(75%超の均一性)または少なくとも2ヘテロ(25~75%の均一性)のスコアは、癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性であることを特定する。一部の実施形態では、癌は肺癌、子宮内膜癌または卵巣癌である。
【0102】
一部の実施形態では、参照試料は陽性の参照試料または陰性の参照試料である。一部の実施形態では、参照試料は細胞、細胞ペレットまたは組織を含む。
【0103】
本明細書で提供される使用のための活性作用物質または抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片の一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体、抗原結合断片またはポリペプチドはさらに酵素、蛍光団、放射性標識及び発光団から成る群から選択される検出試薬を含む。一部の実施形態では、検出試薬はビオチン、ジゴキシゲニン、フルオレセイン、トリチウム及びローダミンから成る群から選択される。
【0104】
本明細書で提供される使用のための活性作用物質または抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片の一部の実施形態では、癌はFOLR1陽性の癌である。一部の実施形態では、癌は、卵巣癌、脳腫瘍、乳癌、子宮癌、子宮内膜癌、膵臓癌、腎臓癌及び肺癌から成る群から選択される。一部の実施形態では、肺癌は非小細胞肺癌または細気管支肺胞上皮癌である。一部の実施形態では、卵巣癌は上皮性卵巣癌である。一部の実施形態では、卵巣癌は、白金耐性、再発性または難治性である。
【0105】
本明細書で提供される使用のための活性作用物質または抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片の一部の実施形態では、FOLR1の発現は少なくとも1つの追加の抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を用いて検出される。一部の実施形態では、FOLR1の発現は2つの抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を用いて測定される。一部の実施形態では、少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片が固相支持体に結合される。一部の実施形態では、少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片がマイクロタイタープレートに結合される。一部の実施形態では、少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片が検出試薬を含む。一部の実施形態では、検出試薬は、発色性検出試薬、蛍光性検出試薬、酵素性検出試薬、または電気化学発光検出試薬である。一部の実施形態では、検出試薬は西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)である。一部の実施形態では、ELISAはサンドイッチELISAである。
【0106】
本明細書で提供される使用のための活性作用物質または抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片の一部の実施形態では、活性作用物質はFOLR1抗体huMov19を含むまたはFOLR1抗体huMov19である。一部の実施形態では、活性作用物質はさらにメイタンシノイドDM4と切断可能なスルホ-SPDBリンカーを含む抗体メイタンシノイド複合体(IMGN853)として投与される。
【0107】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体、抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物は診断剤として使用するためのものである。
【0108】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体、抗原結合断片、ポリペプチドまたは組成物は、癌を患う患者にてそれを診断する方法において使用するためのものである。一部の実施形態では、癌は上昇したレベルのFOLR1に関連する。
【0109】
一部の実施形態では、抗体、抗原結合断片、またはポリペプチドの結合親和性は実施例3で得られる及び/または
図4、5及び/または6で示される結合親和性である。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
FOLR1のエピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、前記エピトープが少なくとも1つの、少なくとも2つのまたは3つのN-グリコシル化されたアミノ酸を含む、前記抗体またはその抗原結合断片。
(項目2)
抗体またはその抗原結合断片であって、
(a)配列番号27のポリペプチドと配列番号28のポリペプチドを含む抗体;
(b)配列番号29のポリペプチドと配列番号30のポリペプチドを含む抗体;
(c)配列番号31のポリペプチドと配列番号32のポリペプチドを含む抗体;
(d)配列番号62のポリペプチドと配列番号63または配列番号64のポリペプチドを含む抗体;及び
(e)配列番号65のポリペプチドと配列番号66または配列番号67のポリペプチドを含む抗体から成る群から選択される抗体として同一のFOLR1エピトープに特異的に結合する、前記抗体またはその抗原結合断片。
(項目3)
前記エピトープがN-グリコシル化されたアミノ酸を含む項目2に記載の前記抗体または抗原結合断片。
(項目4)
FOLR1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体またはその抗原結合断片が
(a)配列番号27のポリペプチドと配列番号28のポリペプチドを含む抗体;
(b)配列番号29のポリペプチドと配列番号30のポリペプチドを含む抗体;
(c)配列番号31のポリペプチドと配列番号32のポリペプチドを含む抗体;
(d)配列番号62のポリペプチドと配列番号63または配列番号64のポリペプチドを含む抗体;及び
(e)配列番号65のポリペプチドと配列番号66または配列番号67のポリペプチドを含む抗体から成る群から選択される抗体のFOLR1への結合を競合して阻害する、前記抗体またはその抗原結合断片。
(項目5)
前記抗体またはその断片が、
(a)それぞれ配列番号3~8;
(b)それぞれ配列番号9~14;
(c)それぞれ配列番号15~20;
(d)それぞれ配列番号21~26;
(e)それぞれ配列番号3~5と配列番号59、7、及び8;
(f)それぞれ配列番号3、60、及び5と配列番号6~8;
(g)それぞれ配列番号3、61、及び5と配列番号6~8;
(h)それぞれ配列番号3、60、及び5と配列番号59、7、及び8;並びに
(i)それぞれ配列番号3、61、及び5と配列番号:59、7、及び8から成る群から選択されるVHのCDR1~3及びVLのCDR1~3のポリペプチド配列を含む項目1~4のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
(項目6)
前記抗体またはその断片が、
(a)配列番号27及び配列番号28;
(b)配列番号29及び配列番号30;
(c)配列番号31及び配列番号32;
(d)配列番号62及び配列番号63または配列番号64;
(e)配列番号65及び配列番号66または配列番号67;
(f)配列番号68及び配列番号69から成る群から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも90%同一である、少なくとも95%同一である、または少なくとも99%同一であるポリペプチド配列を含む項目1~5のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
(項目7)
前記ポリペプチド配列が
(a)配列番号27及び配列番号28;
(b)配列番号29及び配列番号30;
(c)配列番号31及び配列番号32;
(d)配列番号62及び配列番号63または配列番号64;
(e)配列番号65及び配列番号66または配列番号67;
(f)配列番号68及び配列番号69から成る群から選択される配列のアミノ酸を含む項目6に記載の抗体またはその抗原結合断片。
(項目8)
FOLR1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体またはその断片が、
それぞれ配列番号51、配列番号52または53及び配列番号54のアミノ酸を含むCDR1、CDR2及びCDR3の領域を含むヒト化重鎖可変領域と
それぞれ配列番号48、配列番号49及び配列番号50のアミノ酸を含むCDR1、CDR2及びCDR3の領域を含むヒト化軽鎖可変領域と
マウスの定常領域とを含む、前記抗体またはその抗原結合断片。
(項目9)
前記ヒト化重鎖可変領域が配列番号45のアミノ酸を含み、前記ヒト化軽鎖可変領域が配列番号47のアミノ酸を含む項目8に記載の抗体またはその抗原結合断片。
(項目10)
前記抗体が組換えで作出される項目1~9のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
(項目11)
前記抗体またはその抗原結合断片がマウス、非ヒト、ヒト化、キメラ、表面再構成、またはヒトのものである項目1~10のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
(項目12)
前記抗体またはその抗原結合断片が、ヒトのFOLR1に結合するが、FOLR2またはFOLR3には結合しない項目1~11のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
(項目13)
完全長の抗体である項目1~12のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
(項目14)
抗原結合断片である項目1~13のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
(項目15)
FOLR1に特異的に結合するポリペプチドであって、前記ポリペプチドが
(a)それぞれ配列番号3~8;
(b)それぞれ配列番号9~14;
(c)それぞれ配列番号15~20;
(d)それぞれ配列番号21~26;
(e)それぞれ配列番号3~5と配列番号59、7、及び8;
(f)それぞれ配列番号3、60、及び5と配列番号6~8;
(g)それぞれ配列番号3、61、及び5と配列番号6~8;
(h)それぞれ配列番号3、60、及び5と配列番号59、7、及び8;
(i)それぞれ配列番号3、61、及び5と配列番号:59、7、及び8;並びに
(j)1、2、3、または4の保存的アミノ酸置換を含む(a)~(i)の変異体から成る群から選択される配列を含む、前記ポリペプチド。
(項目16)
前記ポリペプチドが、
(a)配列番号27及び配列番号28;
(b)配列番号29及び配列番号30;
(c)配列番号31及び配列番号32;
(d)配列番号62及び配列番号63または配列番号64;
(e)配列番号65及び配列番号66または配列番号67;及び
(f)配列番号68及び配列番号69から成る群から選択される配列に対して少なくとも90%同一である、少なくとも95%同一である、または少なくとも99%同一である配列を含む項目20に記載のポリペプチド。
(項目17)
前記配列が、
(a)配列番号27及び配列番号28;
(b)配列番号29及び配列番号30;
(c)配列番号31及び配列番号32;
(d)配列番号62及び配列番号63または配列番号64;
(e)配列番号65及び配列番号66または配列番号67;及び
(f)配列番号68及び配列番号69から成る群から選択される配列のアミノ酸を含む項目16に記載のポリペプチド。
(項目18)
約0.5~約10nMのKdでヒト葉酸受容体1に結合する項目1~17のいずれか1項に記載の抗体、その抗原結合断片またはポリペプチド。
(項目19)
約1.0nMまたはそれより良好なKdでヒト葉酸受容体1に結合する項目1~18のいずれか1項に記載の抗体、その抗原結合断片またはポリペプチド。
(項目20)
前記抗体、断片またはポリペプチドがN-グリコシル化されるアミノ酸を含むFOLR1のエピトープに結合する項目4~7または10~19のいずれか1項に記載の抗体またはその断片またはポリペプチド。
(項目21)
前記抗原、その抗原結合断片またはポリペプチドが検出可能に標識される項目1~20のいずれか1項に記載の抗体、その抗原結合断片またはポリペプチド。
(項目22)
項目1~21のいずれか1項に記載の抗体、その抗原結合断片またはポリペプチドを産生する細胞。
(項目23)
項目1~21のいずれか1項に記載の抗体、その抗原結合断片またはポリペプチドを作製する方法であって、(a)項目22に記載の細胞を培養することと、(b)前記培養された細胞から前記抗体、その抗原結合断片またはポリペプチドを単離することとを含む、前記方法。
(項目24)
項目1~21のいずれか1項に記載の抗体、その抗原結合断片またはポリペプチドとFACS緩衝液、IHC緩衝液及びELISA緩衝液から成る群から選択される緩衝液とを含む組成物。
(項目25)
試料におけるFOLR1の発現の検出方法であって、項目1~21のいずれか1項に記載の抗体、その抗原結合断片またはポリペプチドまたは項目24に記載の組成物に前記試料を接触させることを含む、前記検出方法。
(項目26)
前記抗体またはその抗原結合断片が検出可能に標識される項目25に記載の方法。
(項目27)
前記標識が、免疫蛍光標識、化学発光標識、リン発光標識、酵素標識、放射性標識、アビジン/ビオチン、コロイド状金粒子、着色粒子及び磁気粒子から成る群から選択される項目26に記載の方法。
(項目28)
FOLR1の発現が、放射性免疫アッセイ、ウエスタンブロットアッセイ、サイトメトリー、免疫蛍光アッセイ、酵素免疫アッセイ、免疫沈降アッセイ、化学発光アッセイ、または免疫組織化学アッセイによって測定される項目25~27のいずれか1項に記載の方法。
(項目29)
前記サイトメトリーがフローサイトメトリーである項目28に記載の方法。
(項目30)
FOLR1の発現がIHCによって測定される項目28に記載の方法。
(項目31)
抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による癌療法の有効性を高める方法であって、前記方法が癌を有する対象に前記活性作用物質を投与することを含み、項目1~21のいずれか1項に記載の抗体、その抗原結合断片またはポリペプチドまたは項目24に記載の組成物を用いて前記対象に由来する癌性試料にてFOLR1の増加した発現が検出されている、前記方法。
(項目32)
癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性があることを特定する方法であって、前記方法が
(a)項目1~21のいずれか1項に記載の抗体、その抗原結合断片またはポリペプチドまたは項目24に記載の組成物に前記癌に由来する細胞を含む生体試料を接触させることと、
(b)(a)の前記生体試料にてFOLR1への前記抗体、抗体断片またはポリペプチドの結合を検出することと、
(c)ステップ(b)の前記結合にスコアを割り当て、前記スコアが1以上の参照試料との比較に基づいて割り当てられることと、
(d)ステップ(c)における前記スコアを参照組織または参照細胞のスコアと比較することとを含み、その際、正常なまたは低いFOLR1を発現している参照試料についてのスコアよりも大きい前記癌のFOLR1レベルについてのスコアまたは高いFOLR1を発現している参照試料についてのスコアと同等またはそれより大きい前記癌のFOLR1レベルについてのスコアは、前記癌が抗FOLR1抗体に応答する可能性があることを特定する、前記方法。
(項目33)
癌を有する患者を治療する方法であって、前記方法が
(a)前記患者から得た癌性試料におけるFOLR1発現の検出からFOLR1発現のスコアを決定し、前記検出が項目1~21のいずれか1項に記載の抗体、その抗原結合断片またはポリペプチドまたは項目24に記載の組成物を用いて行われることと、
(b)前記スコアが前記患者は抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示すのであれば、前記患者に前記活性作用物質を投与することとを含む、前記方法。
(項目34)
癌を有する患者を治療する方法であって、前記方法が
(a)項目1~21のいずれか1項に記載の抗体、その抗原結合断片またはポリペプチドまたは項目24に記載の組成物を用いたFOLR1発現の検出からFOLR1発現のスコアを決定するために癌を有する患者から採取した癌性試料を提出することと、
(b)前記スコアが前記患者は抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示すのであれば、前記患者に前記活性作用物質を投与することとを含む、前記方法。
(項目35)
癌を有する患者を治療する方法であって、前記方法が
(a)前記患者から得られた癌性試料にてFOLR1の発現を検出し、その際、前記検出は項目1~21のいずれか1項に記載の抗体、その抗原結合断片またはポリペプチドまたは項目24に記載の組成物を用いて実施されることと、
(b)前記癌性試料についてのFOLR1発現のスコアを決定することと、
(c)前記スコアが前記患者は抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示すのであれば、患者に前記活性作用物質を投与することとを含む、前記方法。
(項目36)
癌患者にてFOLR1を発現している癌細胞を減らす方法であって、
(a)項目1~21のいずれか1項に記載の抗体、その抗原結合断片またはポリペプチドまたは項目24に記載の組成物を用い、参照試料におけるFOLR1のレベルと比べて、患者から採取した癌性試料におけるFOLR1のレベルを検出することと、
(b)前記患者のFOLR1のレベルが前記参照試料に比べて上昇しているのであれば、固定用量の抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質を前記患者に投与することとを含み、前記活性作用物質の前記投与は前記患者においてFOLR1を発現している癌細胞を減らす、前記方法。
(項目37)
癌が抗FOLR1活性作用物質による治療に感受性であることを特定する方法であって、前記方法が
(a)項目1~21のいずれか1項に記載の抗体、その抗原結合断片またはポリペプチドまたは項目24に記載の組成物を用いて、前記癌に由来する癌性試料にてFOLR1発現のレベルを検出し、その際、前記検出は、1以上の参照試料における染色強度または染色均一性と比べてFOLR1を発現している癌性試料における染色強度または染色均一性の間を区別する方法の使用を含むことと、
(b)前記癌性試料についてFOLR1の染色強度または染色均一性のスコアを決定することと、
(c)ステップ(b)で決定された前記FOLR1の染色強度または染色均一性のスコアを少なくとも1つの参照試料にてFOLR1タンパク質の発現を測定することによって決定される相対値と比較することとを含み、その際、前記少なくとも1つの参照試料は抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性ではない組織、細胞または細胞ペレットの試料であり、前記相対値よりも高い、ステップ(b)で決定された前記癌性試料についてのFOLR1の染色強度のスコアが前記癌が前記活性作用物質による治療に感受性であることを特定する、前記方法。
(項目38)
癌が抗FOLR1活性作用物質による治療に感受性であることを特定する方法であって、前記方法が
(a)1以上の参照試料における膜FOLR1に比べて、項目1~21のいずれか1項に記載の抗体、その抗原結合断片またはポリペプチドまたは項目24に記載の組成物を用いて、前記癌に由来する癌性試料にて膜FOLR1発現のレベルを検出することと、
(b)前記癌性試料についてFOLR1のスコアを決定することと、
(c)少なくとも1つの参照試料にて膜FOLR1を測定することによって決定される相対値とステップ(b)で決定された前記FOLR1のスコアを比較することとを含み、その際、前記少なくとも1つの参照試料は抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性ではない組織、細胞または細胞ペレットの試料であり、前記相対値よりも高い、ステップ(b)で決定された前記癌性試料についてのFOLR1のスコアが前記癌が前記活性作用物質による治療に感受性であることを特定する、前記方法。
(項目39)
癌が抗FOLR1活性作用物質による治療に感受性であることを特定する方法であって、前記方法が
(a)項目1~21のいずれか1項に記載の抗体、その抗原結合断片またはポリペプチドまたは項目24に記載の組成物を用いて、前記癌に由来する癌性試料にてFOLR1発現のレベルを検出し、その際、前記検出は、1以上の参照試料における染色強度または染色均一性と比べてFOLR1を発現している癌性試料における染色強度または染色均一性の間を区別する方法の使用を含むことと、
(b)前記癌性試料についてFOLR1の染色強度または染色均一性のスコアを決定することと、
(c)ステップ(b)で決定された前記FOLR1の染色強度または染色均一性のスコアを少なくとも1つの参照試料にてFOLR1タンパク質の発現を測定することによって決定される相対値と比較することとを含み、その際、前記少なくとも1つの参照試料は抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性である組織、細胞または細胞ペレットの試料であり、前記相対値よりも大きいまたはそれと同等である、ステップ(b)で決定された前記癌性試料についてのFOLR1の染色強度のスコアは前記癌が前記活性作用物質による治療に感受性であることを特定する、前記方法。
(項目40)
癌が抗FOLR1活性作用物質による治療に感受性であることを特定する方法であって、前記方法が
(a)1以上の参照試料における膜FOLR1に比べて、項目1~21のいずれか1項に記載の抗体、その抗原結合断片またはポリペプチドまたは項目24に記載の組成物を用いて、前記癌に由来する癌性試料にて膜FOLR1の発現のレベルを検出することと、
(b)前記癌性試料についてFOLR1のスコアを決定することと、
(c)少なくとも1つの参照試料にて膜FOLR1を測定することによって決定される相対値とステップ(b)で決定された前記FOLR1のスコアを比較することとを含み、その際、前記少なくとも1つの参照試料は抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質による治療に感受性である組織、細胞または細胞ペレットの試料であり、前記相対値よりも大きいまたはそれと同等である、ステップ(b)で決定された前記癌性試料についてのFOLR1のスコアは前記癌が前記活性作用物質による治療に感受性であることを特定する、前記方法。
(項目41)
前記癌性試料または生体試料が得られた前記対象に抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質を投与することをさらに含む項目32または37~40のいずれか1項に記載の方法。
(項目42)
前記癌性試料または生体試料が体液、細胞または組織の試料である項目31または33~41のいずれか1項に記載の方法。
(項目43)
前記細胞が循環している腫瘍細胞である項目42に記載の方法。
(項目44)
前記体液が血液、腹水、尿、血漿、血清、または末梢血である項目42に記載の方法。(項目45)
前記FOLR1が膜FOLR1である項目25~37、39及び41~44のいずれか1項に記載の方法。
(項目46)
前記FOLR1が脱落FOLR1である項目25~36、41、42または44のいずれか1項に記載の方法。
(項目47)
前記検出が酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)による項目25~28、31~36または41~46のいずれか1項に記載の方法。
(項目48)
前記検出が免疫組織化学法(IHC)による項目25~28または30~42または45のいずれか1項に記載の方法。
(項目49)
前記IHCがFOLR1発現の異なるレベルを区別することができる較正IHCである項目48に記載の方法。
(項目50)
前記IHCが、低いFOLR1の細胞表面発現、中程度のFOLR1の細胞表面発現または高いFOLR1の細胞表面発現を有する試料について様々な染色強度を生じる項目48または49に記載の方法。
(項目51)
前記IHCが参照試料と比べて、FOLR1を発現している癌性試料または生体試料における染色強度及び染色均一性の間を区別する項目48~50のいずれか1項に記載の方法。
(項目52)
前記IHCが手動で実施される項目48~51のいずれか1項に記載の方法。
(項目53)
前記IHCが自動化されたシステムを用いて実施される項目48~51のいずれか1項に記載の方法。
(項目54)
FOLR1のスコアが前記IHCから決定される項目48~53のいずれか1項に記載の方法。
(項目55)
少なくとも2のスコアが、前記癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性があることを特定し、または前記患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す項目54に記載の方法。
(項目56)
少なくとも2ホモのスコアが、前記癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性があることを特定し、または前記患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す項目54に記載の方法。
(項目57)
少なくとも2ヘテロのスコアが、前記癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性があることを特定し、または前記患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す項目54に記載の方法。
(項目58)
前記癌が肺癌または子宮内膜癌である項目55~57のいずれか1項に記載の方法。
(項目59)
少なくとも3のスコアが、前記癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性があることを特定し、または前記患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す項目54に記載の方法。
(項目60)
少なくとも3ホモのスコアが、前記癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性があることを特定し、または前記患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す項目54に記載の方法。
(項目61)
少なくとも3ヘテロのスコアが、前記癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性があることを特定し、または前記患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す項目54に記載の方法。
(項目62)
前記癌が肺癌、子宮内膜癌または卵巣癌である項目59~61のいずれか1項に記載の方法。
(項目63)
少なくとも50のHスコアが、前記癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性があることを特定し、または前記患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す項目54に記載の方法。
(項目64)
前記癌が卵巣癌であり、少なくとも75のHスコアが、前記卵巣癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性があることを特定し、または前記患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す項目63に記載の方法。
(項目65)
前記癌がNSCLCまたは子宮内膜癌であり、少なくとも50のHスコアが、前記NSCLCまたは子宮内膜癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性があることを特定し、または前記患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す項目63に記載の方法。
(項目66)
前記癌が卵巣癌であり、少なくとも3の強度での少なくとも25%のFOLR1の膜発現が、前記卵巣癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性があることを特定し、または前記患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す項目54に記載の方法。
(項目67)
前記癌がNSCLCまたは子宮内膜癌であり、少なくとも2の強度での少なくとも25%のFOLR1の膜発現が、前記NSCLCまたは子宮内膜癌が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質に応答する可能性があることを特定し、または前記患者が抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を含む活性作用物質の投与から利益を得るであろうことを示す項目54に記載の方法。
(項目68)
前記参照試料が陽性の参照試料または陰性の参照試料である項目32及び36~67のいずれか1項に記載の方法。
(項目69)
前記参照試料が細胞、細胞ペレットまたは組織を含む項目32及び36~68のいずれか1項に記載の方法。
(項目70)
項目1~21のいずれか1項に記載の抗体、その抗原結合断片またはポリペプチドがさらに、酵素、蛍光団、放射性標識及び発光団から成る群から選択される検出試薬を含む項目31~69のいずれか1項に記載の方法。
(項目71)
前記検出試薬が、ビオチン、ジゴキシゲニン、フルオレセイン、トリチウム及びローダミンから成る群から選択される項目70に記載の方法。
(項目72)
前記癌がFOLR1陽性の癌である項目31~71のいずれか1項に記載の方法。
(項目73)
前記癌が、卵巣癌、脳腫瘍、乳癌、子宮癌、子宮内膜癌、膵臓癌、腎臓癌及び肺癌から成る群から選択される項目31~72のいずれか1項に記載の方法。
(項目74)
前記肺癌が、非小細胞肺癌または細気管支肺胞上皮癌である項目73に記載の方法。
(項目75)
前記卵巣癌が上皮性卵巣癌である項目73に記載の方法。
(項目76)
前記癌が、白金耐性である、再発性であるまたは難治性である項目75に記載の方法。(項目77)
少なくとも1つの追加の抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を用いて前記FOLR1の発現が検出される項目31~76のいずれか1項に記載の方法。
(項目78)
2つの抗FOLR1抗体またはその抗原結合断片を用いて前記FOLR1の発現が検出される項目77に記載の方法。
(項目79)
少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片が固相支持体に結合される項目77または78に記載の方法。
(項目80)
少なくとも1つの抗体またはその抗原結合断片がマイクロタイタープレートに結合される項目77または78に記載の方法。
(項目81)
少なくとも1つの追加の抗体またはその抗原結合断片が検出剤を含む項目77~80のいずれか1項に記載の方法。
(項目82)
前記検出剤が、発色性検出剤、蛍光性検出剤、酵素性検出剤、または電気化学発光性検出剤である項目81に記載の方法。
(項目83)
前記検出剤が、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)である項目81または82に記載の方法。
(項目84)
前記ELISAがサンドイッチELISAである項目47に記載の方法。
(項目85)
前記活性作用物質がFOLR1抗体huMov19を含む項目31~84のいずれか1項に記載の方法。
(項目86)
前記活性作用物質が、FOLR1抗体huMov19と、メイタンシノイドDM4と、切断可能なスルホ-SPDBリンカーとを含む抗体メイタンシノイド複合体(IMGN853)である項目85に記載の方法。
(項目87)
癌がFOLR1抗体huMov19と、メイタンシノイドDM4と、スルホ-SPDBリンカーとを含む抗体メイタンシノイド複合体(IMGN853)による治療に応答する可能性があることを特定する方法であって、前記方法がIHCアッセイにて配列番号27のアミノ酸を含む重鎖と配列番号28のアミノ酸を含む軽鎖とを含む抗体を用いてFOLR1を測定することを含み、少なくとも2ヘテロのスコアが前記癌は前記治療に応答する可能性があることを示す、前記方法。
(項目88)
癌がFOLR1抗体huMov19と、メイタンシノイドDM4と、スルホ-SPDBリンカーとを含む抗体メイタンシノイド複合体(IMGN853)による治療に応答する可能性があることを特定する方法であって、前記方法がIHCアッセイにて配列番号27のアミノ酸を含む重鎖と配列番号28のアミノ酸を含む軽鎖とを含む抗体を用いてFOLR1を測定することを含み、少なくとも50のHスコアが前記癌は前記治療に応答する可能性があることを示す、前記方法。
(項目89)
癌がFOLR1抗体huMov19と、メイタンシノイドDM4と、スルホ-SPDBリンカーとを含む抗体メイタンシノイド複合体(IMGN853)による治療に応答する可能性があることを特定する方法であって、前記方法がIHCアッセイにて配列番号27のアミノ酸を含む重鎖と配列番号28のアミノ酸を含む軽鎖とを含む抗体を用いてFOLR1を測定することを含み、少なくとも2の強度での少なくとも25%のFOLR1の膜発現が前記癌は前記治療に応答する可能性があることを示す、前記方法。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【
図1】353.2-1抗体及び353.9-20抗体を用いたNSCLC及び卵巣類内膜腺癌の試料のIHC染色の画像である。
【
図2】353.2-1抗体及び353.9-20抗体を用いた正常な唾液腺及び膵臓の試料のIHC染色の画像である。
【
図3】353.9-21、353.2-1、353.3-8及び353.5-7の抗体を用いた細胞溶解物のウエスタンブロットの画像である。
【
図4A】
図4は、蛍光活性化細胞選別器(FACS)を用いた変性KB細胞(A)及び非変性T47D細胞(B)への353.2-1、353.3-1、353.5-7及び353.9-21の抗体の結合を示すグラフである。
【
図4B】
図4は、蛍光活性化細胞選別器(FACS)を用いた変性KB細胞(A)及び非変性T47D細胞(B)への353.2-1、353.3-1、353.5-7及び353.9-21の抗体の結合を示すグラフである。
【
図5】ELISAを用いた組換えヒトFOLR1への353.2-1、353.3-1、353.5-7及び353.9-21の抗体の結合を示すグラフである。
【
図6A】
図6は、ELISAによるFOLR2への抗FOLR2抗体及び353.2-1、353.3-1、353.5-7及び353.9-21の抗体の結合(A)及びFOLR3への抗FOLR3抗体及び353.2-1、353.3-1、353.5-7及び353.9-21の抗体の結合(B)を示すグラフである。
【
図6B】
図6は、ELISAによるFOLR2への抗FOLR2抗体及び353.2-1、353.3-1、353.5-7及び353.9-21の抗体の結合(A)及びFOLR3への抗FOLR3抗体及び353.2-1、353.3-1、353.5-7及び353.9-21の抗体の結合(B)を示すグラフである。
【
図7】ELISAによる、脱グリコシル化し、未処理の組換えヒトFOLR1への抗FOLR1抗体2.1及びhuMov19の結合を示すグラフである。
【
図8】ウエスタンブロット解析による、KB細胞及びIgrov-1細胞の脱グリコシル化し、未処理の溶解物への抗FOLR1抗体2.1、huMov19及びBN3.2の結合を示す図である。
【
図9】抗FOLR1FRIHC2-1抗体の表面再構成のための関連するアミノ酸及び各残基に相当するカバット位置を示す表である。
【
図10】表面再構成のためのマウスの及びヒト化されたFRIHC2-1抗体の配列の配列比較を示す図である。マウスの重鎖及び軽鎖の配列はそれぞれ配列番号27及び配列番号28に相当する。表面再構成されたヒト化重鎖配列は配列番号62に相当し、表面再構成されたヒト軽鎖バージョン1.0及びバージョン1.1の配列はそれぞれ配列番号63及び配列番号64に相当する。軽鎖配列におけるリーダー「S」(フレームワーク位置-1)はヒト化には考慮されず、ヒト化抗体配列では使用されないので図には示されない。
【
図11】抗FOLR1FRIHC2-1抗体のCDR移植のための関連するアミノ酸及び各残基に相当するカバット位置を示す表である。
【
図12】CDR移植のためのマウスの及びヒト化されたFRIHC2-1の配列の配列比較を示す図である。マウスの重鎖及び軽鎖の配列はそれぞれ配列番号27及び配列番号28に相当する。移植されたヒト化重鎖配列は配列番号65に相当し、移植されたヒト軽鎖バージョン1.0及びバージョン1.1の配列はそれぞれ配列番号66及び配列番号67に相当する。軽鎖配列におけるリーダー「S」(フレームワーク位置-1)はヒト化には考慮されず、ヒト化抗体配列では使用されないので図には示されない。
【
図13】種々の希釈でのFOLR-2.1(353-2.1)抗体を用いた肺腺癌組織のIHC染色の画像である。
【
図14A】
図14は、FOLR-2.1(353-2.1)抗体を用いた陽性の正常の組織(卵管)(A)及び細胞(FOLR1を形質移入した細胞(B))及び陰性の細胞(形質移入しなかった細胞(C))のIHC染色の画像である。
【
図14B】
図14は、FOLR-2.1(353-2.1)抗体を用いた陽性の正常の組織(卵管)(A)及び細胞(FOLR1を形質移入した細胞(B))及び陰性の細胞(形質移入しなかった細胞(C))のIHC染色の画像である。
【
図14C】
図14は、FOLR-2.1(353-2.1)抗体を用いた陽性の正常の組織(卵管)(A)及び細胞(FOLR1を形質移入した細胞(B))及び陰性の細胞(形質移入しなかった細胞(C))のIHC染色の画像である。
【
図15A】
図15は、FOLR-2.1(353-2.1)抗体を用いた卵巣癌組織(A)及び肺腺癌組織(B)の試料のIHC染色の画像である。
【
図15B】
図15は、FOLR-2.1(353-2.1)抗体を用いた卵巣癌組織(A)及び肺腺癌組織(B)の試料のIHC染色の画像である。
【
図16】FOLR1-2.1アッセイによる子宮内膜癌試料における腫瘍細胞の膜染色を示す画像である。間質細胞は染色されない。
【
図17】(A)FOLR1-2.1アッセイと(B)BN3.2アッセイの間での染色及びスコア化の差異の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0111】
本開示は、膜FOLR1、脱落したFOLR1及び循環する腫瘍細胞上のFOLR1を含むヒト葉酸受容体1(FOLR1)を検出する方法、並びにFOLR1の過剰発現を特徴とする癌の治療に応答する有効性または可能性を改善する方法を提供する。検出方法は臨床的に関連するダイナミック・レンジのFOLR1を検出することができるので、患者の階層化に使用してFOLR1の過剰発現を特徴とする癌の治療に応答する治療上の有効性または可能性をモニターするまたは決定することができる。FOLR1の検出方法(たとえば、膜結合の及び細胞に会合したFOLR1のためのIHC)にて有用である抗体のような新規のFOLR1結合ポリペプチドも開示される。FOLR1結合作用物質を含む関連するポリペプチド及びポリヌクレオチド、組成物、並びにFOLR1結合作用物質を作製する方法も提供される。
【0112】
I.定義
本発明の理解を円滑にするために多数の用語及び語句を以下で定義する。
【0113】
用語「ヒト葉酸受容体1」、「FOLR1」または「葉酸受容体α(FR-α)」は本明細書で使用されるとき、特に指示されない限り、いずれのネイティブのヒトFOLR1をも指す。従って、これらの用語すべては本明細書で指示されるようなタンパク質または核酸の配列を指すことができる。用語「FOLR1」は「完全長の」処理されていないFOLR1ならびに細胞内でのプロセシングから生じるFOLR1の任意の形態を包含する。その用語はまた、FOLR1タンパク質または核酸の天然に存在する変異体、たとえば、スプライス変異体、対立遺伝子変異体及びアイソフォームも包含する。本明細書で記載されるFOLR1ポリペプチド及びポリヌクレオチドは、種々の供給源から、たとえば、ヒトの組織型からまたは別の供給源から単離することができ、または組換え法若しくは合成法によって調製される。FOLR1配列の例にはNCBI参照番号P15328、NP_001092242.1、AAX29268.1、AAX37119.1、NP_057937.1、及びNP_057936.1が挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
用語「脱落した抗原」及び「脱落したFOLR1」は本明細書では相互交換可能に使用される。これらの用語は可溶性であり、細胞に会合していないFOLR1タンパク質を指す。一部の実施形態では、それには、細胞外ドメイン(ECD)及びグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)リンカーが含まれる。一実施形態では、脱落したFOLR1にはECDのみが含まれる。FOLR1タンパク質には、シグナルペプチド(アミノ酸1~24)、FOLR1タンパク質鎖(アミノ酸25~233または234)及び切断することができるプロペプチド(アミノ酸235~257)が含まれる。成熟FOLR1タンパク質はシグナルペプチドを欠く。脱落したFOLR1は、アミノ酸1~257、1~233、1~234、25~233、25~234、またはそれらのいかなる他の断片をも含むことができる。一部の実施形態では、シグナル配列は切断される。他の実施形態では、ECD及びGPIのタンパク質は膜に埋め込まれることができる(たとえば、可溶性の脂質ラフト)。一実施形態では、脱落したFOLR1はアミノ酸1~233またはその断片を含むことができる。
【0115】
用語「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも1つの抗原認識部位を介して、たとえば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質または前述の組み合わせのような標的を認識し、それに特異的に結合する免疫グロブリン分子を意味する。本明細書で使用されるとき、用語「抗体」は、インタクトなポリクローナル抗体、インタクトなモノクローナル抗体、抗体断片(たとえば、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片)、単鎖Fv(scFv)変異体、多重特異性抗体、たとえば、二重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体の抗原決定部位を含む融合タンパク質、抗体が所望の生物活性を示す限り、抗原認識部位を含むいかなる他の修飾された免疫グロブリン分子をも包含する。抗体は、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる重鎖定常領域の固有性に基づいて免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、またはそのサブクラス(アイソタイプ)(たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)のいずれかであることができる。異なるクラスの免疫グロブリンは異なる周知のサブユニット構造及び三次元構造を有する。抗体はネイキッドであることができ、または毒素、放射性同位元素等のような他の分子に結合され得る。
【0116】
一部の実施形態では、抗体は天然に存在しない抗体である。一部の実施形態では、抗体は天然成分から精製される。一部の実施形態では、抗体は組換えで作出される。一部の実施形態では、抗体はハイブリドーマによって産生される。
【0117】
「ブロッキング」抗体または「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原、たとえば、FOLR1の生物活性を阻害するまたは低下させるものである。ある特定の実施形態では、ブロッキング抗体またはアンタゴニスト抗体は抗原の生物活性を実質的にまたは完全に阻害する。望ましくは、生物活性は、10%、20%、30%、50%、70%、80%、90%、95%、または100%さえも低下させられる。
【0118】
用語「抗FOLR1抗体」または「FOLR1に結合する抗体」は、抗体がFOLR1を標的とすることにおいて診断剤及び/または治療剤として有用であるように十分な親和性でFOLR1に結合することが可能である抗体を指す。別段特定されない限り、無関係の非FOLR1タンパク質への抗FOLR1抗体の結合の程度は、たとえば、放射性免疫アッセイ(RIA)によって測定するとき、FOLR1への抗体の結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、FOLR1に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nMまたは≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。一実施形態では、抗FOLR1抗体はFOLR2、FOLR3、FOLR4または葉酸に結合しない。FOLR1抗体の例は当該技術で周知であり、それぞれ参照によって本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2012/0009181号及び同第2012/0282175号及び米国仮特許出願第61/695,791号及び同第61/756,254号及びPCT公開WO2011/106528にて開示されている。抗FOLR1抗体及びその抗原結合断片の配列は表1~8にて提供される。
【0119】
用語「抗体断片」はインタクトな抗体の一部を指し、インタクトな抗体の抗原決定可変領域を指す。抗体断片の例にはFab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、線形抗体、単鎖抗体、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。用語、抗体の「抗原結合断片」には、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1以上の断片が挙げられる。抗体の抗原結合機能は完全長抗体のある特定の断片によって実施することができることが示されている。抗体の用語「抗原結合断片」の範囲内に包含される結合断片の例には、(限定しないで)(i)VL、VH、CL及びCH1のドメインから成るFab断片、一価の断片(たとえば、パパインによって消化された抗体は3つの断片:2つの抗原結合Fab断片と抗原に結合しない1つのFc断片を生じる);(ii)ヒンジ領域にてジスルフィド結合によって連結される2つのFab断片を含む二価の断片であるF(ab’)2断片(たとえば、ペプシンによって消化された抗体は2つの断片:二価の抗原結合F(ab’)2断片と抗原に結合しないpFc’断片を生じる)及びその関連するF(ab’)一価単位;(iii)VHドメインとCH1ドメインとから成るFd断片(すなわち、Fabに含まれる重鎖のその部分);(iv)抗体の単一アームのVL及びVHのドメインから成るFv断片、及び関連するジスルフィド結合したFv;(v)VHドメインから成るdAb(ドメイン抗体)またはsdAb(単一ドメイン抗体)の断片(Wardら,Nature,341:544-546,1989);並びに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。
【0120】
「モノクローナル抗体」は、単一の抗原決定基またはエピトープの高度に特異的な認識と結合に関与する均質な抗体集団を指す。これは、通常様々な抗原決定基に向けられた様々な抗体を含むポリクローナル抗体とは対照的である。用語「モノクローナル抗体」は、インタクトなモノクローナル抗体と完全長のモノクローナル抗体の双方ならびに抗体断片(たとえば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、単鎖(scFv)変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、及び抗原認識部位を含む任意の他の修飾された免疫グロブリン分子を包含する。さらに「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現及びトランスジェニック動物を含むが、これらに限定されない幾つもの方法で作製されるような抗体を指す。
【0121】
用語「ヒト化抗体」は、最少限の非ヒト(たとえば、マウス)の配列を含有する特異的な免疫グロブリン鎖、キメラ免疫グロブリンまたはその断片である非ヒト(たとえば、マウス)抗体の形態を指す。通常、ヒト化抗体は、相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(たとえば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター)のCDRに由来する残基で置き換えられるヒト免疫グロブリンである(Jonesら,1986,Nature,321:522-525;Riechmannら,1988,Nature,332:323-327;Verhoeyenら,1988,Science,239:1534-1536)。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種に由来する抗体の相当する残基によって置き換えられる。ヒト化抗体は、Fvフレームワーク領域にて及び/または置き換えられた非ヒト残基の範囲内で追加の残基の置換を行うことによってさらに修飾されて抗体の特異性、親和性及び/または能力を改良し、最適化することができる。一般に、ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに相当するCDR領域のすべてまたは実質的にすべてを含有する少なくとも1つ、通常、2または3の可変ドメインの実質的にすべてを含むであろうのに対して、FR領域のすべてまたは実質的にすべてはヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体はまた、通常ヒト免疫グロブリンのものである免疫グロブリンの定常領域または定常ドメイン(Fc)の少なくとも一部を含むことができる。ヒト化抗体を生成するのに使用される方法の例は、米国特許第5,225,539号及び同第5,639,641号、Roguskaら,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,91(3):969-973(1994),及びRoguskaら,Protein Eng.9(10):895-904(1996)にて記載されている。一部の実施形態では、「ヒト化抗体」は表面再構成抗体である。一部の実施形態では、「ヒト化抗体」はCDR移植抗体である。
【0122】
抗体の「可変領域」は、単独でまたは組み合わせで、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を指す。重鎖及び軽鎖の可変領域はそれぞれ、超可変領域としても知られる3つの相補性決定領域(CDR)によって接続される4つのフレームワーク領域から成る。各鎖におけるCDRは、FRと非常に接近して一緒に保持され、他の鎖に由来するCDRと共に抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを決定するための少なくとも2つの技法:(1)異種間配列の多様性に基づくアプローチ(すなわち、Kabatら Sequences of Proteins of Immunological Interest,(第5版,1991,National Institutes of Health,Bethesda,Md.))及び(2)抗原/抗体複合体の結晶学的な研究に基づくアプローチ(Al-lazikaniら(1997),J.Molec.Biol.273:927-948))がある。加えて、当該技術ではこれら2つのアプローチの組み合わせを用いてCDRを決定することもある。
【0123】
可変ドメインの残基(近似的には軽鎖の残基1~107及び重鎖の残基1~113)を参照する場合、一般にKabatの番号付け方式が使用される(Kabatら,Sequences of Immunological Interest.第5版.Public Health Service,National Institutes of
Health,Bethesda,Md.(1991))。
【0124】
Kabatにおけるようなアミノ酸の位置の番号付けは、Kabatら,Sequences of Proteins ofImmunological Interest.第5版.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)における抗体を整理する際の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインのために使用される番号付け方式を指す。この番号付け方式を用いて、実際の線形アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはCDRを縮めることまたはそれに挿入することに相当するより少ないまたは追加のアミノ酸を含有することができる。たとえば、重鎖可変ドメインはH2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入物(Kabatに従って残基52a)を含むことができ、重鎖FRの残基82の後に残基を挿入することができる(Kabatに従って残基82a、82b及び82c等)。「標準の」Kabat番号付け配列との抗体の配列の相同性の領域での配列比較によって所与の抗体について残基のKabat番号付けを決定することができる。Chothiaは代わりに構造上のループの位置を参照する(Chothia及びLesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。Kabatの番号付け変換を用いて番号付けする場合、ChothiaのCDR-H1ループの末端はループの長さに応じてH32~H34の間で変化する(これは、Kabatの番号付けスキームがH35AとH35Bにて挿入を配置するためであり、35Aも35Bも存在しなければループは32で終了し、35Aだけが存在するのであればループは33で終了し、35Aと35Bの双方が存在するのであればループは34で終了する)。AbMの超可変領域はKabatのCDRとChothiaの構造ループの間での妥協を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデル化ソフトウエアによって使用される
【表18】
【0125】
用語「ヒト抗体」はヒトによって産生される抗体またはヒトによって産生される抗体に相当するアミノ酸配列を有し、当該技術で既知の技法を用いて作製される抗体を意味する。ヒト抗体のこの定義には、インタクトなまたは完全長の抗体、その断片、及び/または少なくとも1つのヒト重鎖及び/または軽鎖のポリペプチドを含む抗体、たとえば、マウス軽鎖とヒト重鎖のポリペプチドを含む抗体が含まれる。
【0126】
用語「キメラ抗体」は、免疫グロブリン分子のアミノ酸配列が2以上の種に由来する抗体を指す。通常、軽鎖及び重鎖双方の可変領域は所望の特異性、親和性及び能力を持つ哺乳類の種の1つ(たとえば、マウス、ラット、ウサギ等)に由来する抗体の可変領域に相当する一方で、定常領域は別の種(普通、ヒト)に由来する抗体の配列に相同であってその種において免疫応答を引き出すのを回避する。
【0127】
用語「エピトープ」または「抗原決定基」は本明細書では相互交換可能に使用され、特定の抗体によって認識され、特異的に結合されることが可能である抗原の部分を指す。抗原がポリペプチドである場合、エピトープはタンパク質の三次折り畳みによって並置される隣接するアミノ酸及び隣接しないアミノ酸の双方から形成されることができる。隣接するアミノ酸から形成されるエピトープは通常タンパク質の変性の際に保持されるのに対して、三次折り畳みによって形成されるエピトープはタンパク質の変性の際に失われる。エピトープは通常、独特の空間構成の中で少なくとも3、さらに普通では少なくとも5または8~10のアミノ酸を含む。
【0128】
「結合親和性」は一般に、分子(たとえば、抗体)の単一の結合部位とその結合相手(たとえば、抗原)との間の非共有結合の相互作用の合計の強さを指す。特に指示されない限り、本明細書で使用されるとき、「結合親和性」は、結合対のメンバー(たとえば、抗体と抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。その相手Yに対する分子Xの親和性は一般に解離定数(Kd)または50%効果濃度(EC50)によって表すことができる。親和性は本明細書で記載されているものを含めて当該技術で既知の一般的な方法によって測定することができる。親和性の低い抗体は一般にゆっくり抗原に結合し、迅速に解離する傾向があるのに対して親和性が高い抗体は一般に速く抗原に結合し、長く結合したままでいる傾向がある。結合親和性を測定する種々の方法が当該技術で既知であり、そのいずれかを本発明の目的に使用することができる。特定の説明に役立つ実施形態が本明細書で記載される。
【0129】
結合親和性を指すのに本明細書で使用されるときの「それより良好な」は分子とその結合相手との間のさらに強い結合を指す。本明細書で使用されるときの「それより良好な」はさらに小さいKd数値によって表されるさらに強い結合を指す。たとえば、「0.6nMより良好な」抗原に対する親和性を有する抗体では、抗原に対する抗体の親和性は0.6nM未満、すなわち、0.59nM、0.58nM、0.57nM等、または0.6nM未満の任意の値である。一実施形態では、Kdによって決定されるような抗体の親和性は約10-3~約10-12Mの間、約10-6~約10-11Mの間、約10-6~約10-10Mの間、約10-6~約10-9Mの間、約10-6~約10-8Mの間、または約10-6~約10-7Mの間であるであろう。
【0130】
語句「実質的に類似する」または「実質的に同一である」は本明細書で使用されるとき、2つの数値(一般に一方が本発明の抗体に関連し、他方が参照/比較抗体に関連する)によって測定される生物学的特徴の文脈の範囲内で当業者がこの2つの値の間の差異に生物学的な及び/または統計的な有意性がほとんどないまたはないと見なすことになるような前記の値(たとえば、Kd値)の間での有意に高い程度の類似性を意味する。前記2つの値の間の差異は、参照/比較抗体の値の関数として約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、または約10%未満である。
【0131】
用語「免疫複合体」または「複合体」は本明細書で使用されるとき、細胞結合作用物質(すなわち、抗FOLR1抗体はその断片)に連結される化合物またはその誘導体を指し、一般式:A-L-Cによって定義され、式中、C=細胞毒素、L=リンカー及びA=細胞結合作用物質または抗FOLR1抗体または抗体断片である。免疫複合体は逆順の一般式:C-L-Aによっても定義することができる。
【0132】
「リンカー」は、安定した共有結合で化合物、普通メイタンシノイドのような薬剤を抗FOLR1抗体またはその断片のような細胞結合作用物質に連結することが可能である任意の化学部分である。リンカーは、化合物または抗体の活性があるままの条件下で酸が誘導する切断、光が誘導する切断、ペプチダーゼが誘導する切断、エステラーゼが誘導する切断、及びジスルフィド結合の切断に感受性であることができ、または実質的に耐性であることができる。好適なリンカーは当該技術で周知であり、それには、たとえば、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定基、光不安定基、ペプチダーゼ不安定基、及びエステラーゼ不安定基が挙げられる。リンカーにはまた、本明細書で記載され、当該技術で既知であるような荷電リンカー及びその親水性形態も含まれる。
【0133】
「単離される」ポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または組成物は、自然界では見いだされない形態であるポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または組成物である。単離されたポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または組成物には、それらがもはや自然界で存在する形態ではない程度に精製されているものが挙げられる。一部の実施形態では、単離されている抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または組成物は実質的に純粋である。
【0134】
本明細書で使用されるとき、「実質的に純粋」は少なくとも50%純粋(すなわち、混入物を含まない)、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも98%純粋または少なくとも99%純粋である物質を指す。
【0135】
用語「上昇した」FOLR1、FOLR1の「増加した発現」及びFOLR1の「過剰発現」は上昇したレベルのFOLR1発現を含有する試料を指す。FOLR1は、対照の値(たとえば、癌ではない対象に由来する生体試料、組織または細胞、FOLR1を発現しないまたは低く発現することが知られている試料または癌、正常な試料、または上昇したFOLR1値を有さない癌における発現レベル)に比べて上昇する、増加するまたは過剰発現することができる。たとえば、増加した発現の試料は、対照の値に比べて少なくとも2倍、少なくとも3倍または少なくとも5倍の増加を含有することができる。
【0136】
FOLR1の発現は免疫組織化学法によって測定することができ、定義された値(たとえば、3の強度スコアは強度がレベル3の較正された対照に匹敵するのであれば試験試料に与えられ、2の強度は強度がレベル2の較正された対照に匹敵するのであれば試験試料に与えられる)を示す較正された対照との比較によって染色強度スコアまたは染色均一性スコアが与えられ得る。たとえば、免疫組織化学法による1、2、または3(3+)のスコア、好ましくは2または3(3+)のスコアはFOLR1の増加した発現を示す。非均質であるまたは均質である染色均一性もFOLR1の発現を示す。染色強度と染色均一性のスコアは単独でまたは組み合わせで(たとえば、2ホモ、2ヘテロ、3ホモ、3ヘテロ等)使用することができる。表11を参照のこと。別の例では、FOLR1の発現における上昇は、対照の値(たとえば、上昇したFOLR1の値を有さない癌ではない対象または癌の対象に由来する組織または細胞における発現レベル)に比べて少なくとも2倍、少なくとも3倍、または少なくとも5倍の上昇の検出によって測定することができる。
【0137】
「参照試料」は本発明の方法にて試験試料から得られた結果を相互に関係付け、比較するのに使用することができる。参照試料は細胞(たとえば、細胞株または細胞ペレット)または組織であることができる。「参照試料」におけるFOLR1のレベルは、FOLR1の絶対量または相対量、量の範囲、最小量及び/または最大量、平均量及び/または中央値の量であることができる。「参照試料」は試験試料が比較されるFOLR1の発現のベースラインとしても役立つことができる。「参照試料」には、同一患者に由来する以前の試料またはベースライン試料、既知のレベルのFOLR1の発現を伴った正常参照、または既知のレベルのFOLR1の発現を伴った関連する患者集団に由来する参照を挙げることができる。FOLR1のレベルは検量線における値として表すこともできる。検量線はアッセイデータをプロットして試料におけるFOLR1の濃度を決定する定量法である。一実施形態では、参照試料は精製されたFOLR1またはFOLR1-Fcを含む抗原標準である。本発明の診断法には、試験試料におけるFOLR1の発現レベルと「参照値」との間での比較が関与し得る。一部の実施形態では、参照値は参照試料におけるFOLR1の発現レベルである。参照値は所定の値であることができ、試験試料と並行して調べられる参照試料(たとえば、対照の生体試料または参照試料)から決定することもできる。参照値は、中央値若しくは平均値のような単一のカットオフ値、または信頼区間のような値の範囲であることができる。参照値は、たとえば、癌にかかりやすい人々、早期または後期の癌を有する人々、男性及び/または女性の人々、または癌療法を受けている人々のような人々の種々の亜群について確立することができる。正常な参照試料または参照値及び陽性の参照試料または参照値の例は本明細書で記載され、参照によって本明細書に組み入れられるWO2012/135675の実施例1及び実施例8~10にも記載されている。
【0138】
一部の実施形態では、参照試料は、健常な組織、特に、癌に冒されていない相当する組織またはFOLR1を過剰発現する癌に冒されていない相当する組織または検出可能なレベルのFOLRを発現しないことが知られる相当する健常な組織に由来する試料である。これらの種類の参照試料は陰性対照試料または「正常」参照試料と呼ばれる。他の実施形態では、参照試料は、検出可能なFOLR1を発現している腫瘍または健常組織に由来する試料である。これらの種類の参照試料は陽性対照試料または陽性参照試料と呼ばれる。陽性の対照試料もFOLR1発現のレベルと相関する種類(ヘテロ対ホモ)及び/または染色強度の指標(0、1、2、3)の比較指標としても使用することができる。陽性対照比較試料は較正参照試料とも呼ばれる。低いFOLR1を発現するまたはFOLR1を発現しない参照物が実施例にて本明細書で記載され、それには、食道、膵臓の腺房細胞/島細胞、肺の肺胞間結合組織及び唾液腺の腺房細胞の構造すべても含まれる。細胞株については、例となる非発現株にはBxPC3、Panc-1及びASPC1が挙げられる。陽性のFOLR1の参照物は本明細書で、たとえば、実施例にて記載され、それには、膵管、正常な肺の呼吸上皮、及び唾液腺の介在導管が挙げられる。一部の実施形態では、陽性のFOLR1の参照物には膵管及び唾液腺の介在導管が挙げられる。細胞株については、例となるFOLR1の高い発現株は本明細書で、たとえば、実施例にて記載され、それには、KB、HeLa、FOLR1で形質移入した300.19細胞、Igrov-1及びWishも挙げられ、例となるFOLR1の低い発現株には、Ovcar-3、Caov-3、SW620、T47D及びSkov-3が挙げられる。別の陽性のFOLR1が高い参照物は、FOLR1で安定してまたは一時的に形質移入した細胞である。FOLR1についての追加の陽性及び陰性の試料は表13にて記載されている。特定の癌についてのFOLR1の適当な陽性及び陰性の参照のレベルは、1以上の適当な対象にてFOLR1のレベルを測定することによって決定することができ、そのような参照レベルを対象の特定の集団に対して誂えることができる(たとえば、ある特定の年齢の対象に由来する試料におけるFOLR1のレベルとある特定の年齢群における特定の疾患の状態、表現型またはその欠如についての参照レベルとの間で比較を行うことができるように参照レベルを年齢で一致させることができる)。生体試料にてFOLR1のレベルを測定する(たとえば、免疫アッセイ等)のに使用される技法に対してそのような参照レベルを誂えることもできる。
【0139】
本明細書で使用されるとき、「免疫組織化学法」は、たとえば、細胞または組織を分析するのに使用される組織化学的な且つ免疫的な方法である。従って、用語「免疫組織化学法」、「免疫細胞化学法」及び「免疫化学法」は相互交換可能に使用される。
【0140】
用語「一次抗体」は本明細書では試料にて標的タンパク質抗原に特異的に結合する抗体を指す。一次抗体は一般にELISAアッセイまたはIHC手順で使用される最初の抗体である。一実施形態では、一次抗体はIHC手順で使用される唯一の抗体である。用語「二次抗体」は本明細書では一次抗体に特異的に結合する抗体を指し、それによって一次抗体と、もしあれば、その後の試薬との間の架橋または連結を形成する。二次抗体は一般に免疫組織化学法で使用される2番目の抗体である。
【0141】
本発明の「試料」または「生体試料」は生物起源の、特定の実施形態では、たとえば、真核生物に由来するものである。一部の実施形態では、試料はヒトの試料であるが、動物の試料も使用されてもよい。本発明で使用するための試料の非限定の供給源には、たとえば、固形組織、生検吸引物、腹水、流体抽出物、血液、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、皮膚、呼吸器、腸管及び尿生殖管の外切片、涙液、唾液、乳、腫瘍、臓器、細胞培養物及び/または細胞培養構成物が挙げられる。「癌性試料」は癌性細胞を含有する試料である。細胞または試料の様々な種類を比較すること、様々な発生段階を比較すること、及び疾患または異常の存在及び/または種類を検出するまたは判定することを含むが、これらに限定されない方法を用いてFOLR1の発現の態様または試料の状態を調べることができる。
【0142】
本明細書の目的では、組織試料の「切片」は組織試料の単一部分または一片、たとえば、組織試料から切り出された組織または細胞の薄片と見なす。複数の組織試料切片を採取して本発明に係る分析に供してもよいことが理解される。場合によっては、組織の選択された部分または切片は細胞の均質な集団を含む。他の場合では、選択された部分は組織の領域、たとえば、非限定例としての内腔を含む。選択された部分は1個の細胞若しくは2個の細胞ほど小さくてもよく、または、たとえば、何千もの細胞を表してもよい。ほとんどの場合、細胞の採取が重要であり、本発明が細胞性成分の検出での使用のために記載されている一方で、方法は生物の非細胞性成分(たとえば、非限定例としての血液における可溶性成分)を検出するのにも使用されてもよい。
【0143】
本明細書で使用されるとき、用語「捕捉試薬」は、好適な条件下で捕捉試薬/標的分子の複合体が試料の残りから分離することができるように試料にて標的分子に結合し、それを捕捉することが可能である試薬を指す。一実施形態では、捕捉試薬は不動化される。一実施形態では、サンドイッチ免疫アッセイにおける捕捉試薬は標的抗原に対する抗体または様々な抗体の混合物である。
【0144】
本明細書で使用されるとき、用語「検出可能な抗体」は、検出手段によって増幅される標識を介して直接的に、または標識されている、たとえば、別の抗体を介して間接的に検出されることが可能である抗体を指す。直接標識については、抗体は通常、何らかの手段によって検出可能である部分に結合される。一実施形態では、検出可能な抗体はビオチン化抗体である。
【0145】
本明細書で使用されるとき、用語「検出手段」は検出可能な抗体の存在を検出するのに使用される部分または技法を指し、それにはマイクロタイタープレート上に捕捉された標識のような不動化された標識を増幅する検出試薬が含まれる。一実施形態では、検出手段はアビジンまたはストレプトアビジンのような蛍光検出剤である。
【0146】
一般に、「サンドイッチELISA」は以下のステップ:(1)マイクロタイタープレートを捕捉抗体で被覆する;(2)試料を加え、存在する任意の抗原が捕捉抗体に結合する;(3)検出抗体が加えられ、抗原に結合する;(4)酵素を連結した二次抗体が加えられ、検出抗体に結合する;(5)基質が加えられ、酵素によって検出可能な形態に変換される、を採用する。
【0147】
単語「標識」は本明細書で使用されるとき、「標識された」抗体を生成するように抗体に直接または間接的に結合される検出可能な化合物または組成物を指す。標識は、それ自体で(たとえば、放射性同位元素標識または蛍光標識)検出可能であることができ、酵素標識の場合、検出可能である基質の化合物または組成物の化学変化を触媒することができる。
【0148】
「相関する」または「相関すること」は、どんな方法であれ、第1の分析の成績及び/または結果を第2分析の成績及び/または結果と比較することを意味する。たとえば、第2の分析を行うことにおいて第1の分析の結果を使用してもよく、第1の分析の結果を用いて第2の分析を行うべきであるかどうかを決定してもよく、及び/または第1の分析の結果を第2の分析の結果と比較してもよい。一実施形態では、FOLR1の増加した発現はFOLR1を標的とする抗癌療法の有効性の上昇した可能性と相関する。
【0149】
用語「癌」及び「癌性」は細胞の集団が無秩序な細胞増殖を特徴とする、哺乳類における生理的な状態を指すまたは説明する。癌の例には癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫及び白血病が挙げられるが、これらに限定されない。そのような癌のさらに特定の例には、内皮、間葉、または表皮の起源の癌、たとえば、肺癌(たとえば、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、中皮腫、及び肺の扁平上皮癌)、腹膜の癌(たとえば、原発性腹膜癌)、肝細胞癌、消化器癌、膵臓癌、膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌(漿液性または類内膜性)、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、直腸癌、直腸結腸癌、類内膜性(たとえば、類内膜性腺癌)または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝臓癌、脳腫瘍(たとえば、膠芽細胞腫、脈絡叢の腫瘍)及び種々の型の頭頚部の癌、並びに血管及び卵管の腫瘍が挙げられる。癌はまた上昇したFOLR1の発現レベルを有する細胞を含有する癌も包含する。そのようなFOLR1が上昇した癌には、卵巣癌、非小細胞肺癌(腺癌)、子宮癌、子宮内膜癌、膵臓癌、腎臓癌、肺癌及び乳癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
「腫瘍」及び「新生物」は、前癌性病変を含む良性(非癌性)または悪性(癌性)のいずれかの過剰な細胞の成長または増殖の結果生じる組織の任意の塊を指す。
【0151】
用語「癌細胞」、「腫瘍細胞」及び文法的な同等物は、腫瘍細胞集団の大半を含む非腫瘍形成性細胞及び腫瘍形成性幹細胞(癌幹細胞)の双方を含む、腫瘍または前癌性病変に由来する細胞の全集団を指す。本明細書で使用されるとき、用語「腫瘍細胞」は、再生し、分化する能力を欠くそれら腫瘍細胞を単に指して癌幹細胞からそれら腫瘍細胞を区別する場合、用語「非腫瘍形成性」によって修飾されるであろう。
【0152】
用語「対象」は、特定の治療のレシピエントとなるヒト、非ヒト霊長類、齧歯類等を含むが、これらに限定されない任意の動物(たとえば、哺乳類)を指す。通常、用語「対象」及び「患者」は、ヒト対象を参照して本明細書では相互交換可能に使用される。
【0153】
用語「医薬製剤」は、有効成分の生物活性を有効にするような形態であり、製剤が投与される対象にとって許容できない毒性である追加成分を含有しない調製物を指す。そのような製剤は無菌であることができる。
【0154】
本明細書で開示されるような抗体または免疫複合体の「有効量」は、具体的に言及される目的を実施するのに十分な量である。「有効量」は言及される方法に関して日常的な方法で経験的に決定することができる。
【0155】
用語「治療上の有効な量」は、対象または哺乳類における疾患または障害を「治療する」のに有効な抗体または他の薬剤の量を指す。癌の場合、治療上の有効な量の薬剤は、癌細胞の数を減らすことができ;腫瘍のサイズを小さくすることができ;癌細胞の末梢臓器への浸潤を抑制する(すなわち、ある程度遅らせ、ある特定の実施形態では、停止させる)ことができ;腫瘍の転移を抑制する(すなわち、ある程度遅らせ、ある特定の実施形態では、停止させる)ことができ;腫瘍の増殖をある程度抑制することができ;癌に関連する症状の1以上を緩和することができ;及び/または上昇した無増悪生存率(PFS)、無病生存率(DFS)または全生存率(OS)、完全応答(CR)、部分応答(PR)または場合によっては安定疾患(SD)、進行性疾患(PD)の低下、低下した無増悪期間(TTP)、卵巣癌の場合CA125の低下、またはそれらの任意の組み合わせを生じることができる。「治療すること」の本明細書での定義を参照のこと。薬剤が増殖を妨げ及び/または存在する癌細胞を殺傷する程度まで、薬剤は細胞増殖抑制性であり、及び/または細胞毒性であることができる。ある特定の実施形態では、増加したFOLR1のレベルを特定することによって、少ない量のFOLR1を標的とする治療剤を投与して高い投与量で見られるのと同じ治療効果を達成することが可能になる。「予防上有効な量」は、必要な投与量と時間で所望の予防成績を達成するのに有効な量を指す。通常、しかし、必然的ではなく、予防上の用量は疾患に先立ってまたは疾患の早期に対象にて使用されるので、予防上有効な量は治療上有効な量よりも少ないであろう。
【0156】
用語「有利に応答する」は一般に対象にて有益な状態を生じることを指す。癌の治療に関してその用語は対象に対して治療効果を提供することを指す。癌における好ましい治療効果は多数の方法によって測定することができる(W.A.Weber,J.Nucl.Med.50:1S-10S(2009)を参照のこと)。たとえば、腫瘍増殖の抑制、分子マーカーの発現、血清マーカーの発現及び分子画像化法をすべて用いて抗癌療法の治療効果を評価することができる。腫瘍増殖の抑制に関して、NCI基準によれば、T/C≦42%が抗腫瘍活性の最小レベルである。T/C10%未満は高い抗腫瘍活性レベルと見なされ、T/C(%)=治療した場合の腫瘍容積中央値/対照の腫瘍容積中央値×100である。有利な応答は、たとえば、増加した無増悪生存率(PFS)、無病生存率(DFS)または全生存率(OS)、完全応答(CR)、部分応答(PR)または場合によっては安定疾患(SD)、進行性疾患(PD)の低下、低下した無増悪期間(TTP)、卵巣癌の場合CA125の低下、またはそれらの組み合わせによって評価することができる。
【0157】
PFS、DFS及びOSは、新薬の認可について国立癌研究所及び米国食品医薬品局によって設定された基準によって測定することができる。Johnsonら,(2003)J.Clin.Oncol.21(7):1404-1411を参照のこと。
【0158】
無増悪生存率(PFS)は登録から疾患の進行または死亡までの時間を指す。PFSは一般にKaplan-Meier法及び固形腫瘍における応答評価基準(RECIST)1.1標準を用いて測定される。一般に、無増悪生存率は癌が悪化することなく患者が生き続ける状況を指す。
【0159】
無増悪期間(TTP)は登録から疾患の進行までの時間として定義される。TTPは一般にRECIST1.1基準を用いて測定される。
【0160】
「完全応答」または「完全寛解」または「CR」は治療に応答して腫瘍または癌の兆候すべてが消失することを示す。このことは癌が治癒していることを必ずしも意味するものではない。
【0161】
「部分応答」または「PR」は治療に応答して1以上の腫瘍若しくは病変のサイズ若しくは容積が低下すること、または体内での癌の程度が低下することを指す。
【0162】
「安定疾患」は進行または再発のない疾患を指す。安定な疾患では、部分応答と見なすほど十分な腫瘍の委縮もなければ、進行性疾患とみなすほど十分な腫瘍の増大もない。
【0163】
「進行性疾患」は、もう1つの新しい病変若しくは腫瘍の出現及び/または既存の非標的病変の明確な進行を指す。進行性疾患は、塊の増大または腫瘍の広がりの増大のいずれかによる、治療が始まって以来20%を超える腫瘍の増殖も指すことができる。
【0164】
「無病生存率(DFS)」は、患者が無病のままでいる治療中及び治療後の時間の長さを指す。
【0165】
「全生存率(OS)」は、患者の登録から死亡または判明している最後の生存の日に打ち切られたときまでの時間を指す。OSには投薬を受けていないまたは未治療の人または患者と比べた平均余命の延長が含まれる。全生存率は、患者が、たとえば、診断または治療のときから、たとえば、1年、5年等のような規定された時間、生き続ける状況を指す。
【0166】
「CA125レベルの低下」は、Gynecologic Cancer Intergroup(GCIG)の指針に従って評価することができる。たとえば、治療に先立ってCA125レベルを測定してベースラインCA125レベルを確立することができる。治療中または治療後1以上の回数、CA125レベルを測定することができ、ベースラインのレベルに比べて経時的なCA125レベルの低下はCA125レベルの減少と見なされる。
【0167】
「治療すること(treating)」または「治療」または「治療すること(to treat)」または「緩和すること(alleviating)」または「緩和すること(to alleviate)」のような用語は、診断された病態または疾病の症状を治癒させる、減速する、減らす、及び/または進行を停止させる治療手段を指す。従って治療を必要とする者にはすでに疾病があると診断された者または疾病を有すると疑われた者が含まれる。ある特定の実施形態では、患者が、以下:癌細胞の数の減少または癌細胞の完全な非存在;腫瘍サイズの低下;たとえば、癌の軟組織及び骨への拡散を含む末梢臓器への癌細胞の浸潤の阻害または非存在;腫瘍転移の阻害または非存在;腫瘍増殖の阻害または非存在;特定の癌に関連する1以上の症状の緩和;有病率及び死亡率の低下;生活の質の改善;腫瘍の腫瘍形成性、腫瘍形成性頻度または腫瘍形成性能力の低下;腫瘍における癌幹細胞の数または頻度の低下;腫瘍形成性細胞の非腫瘍形成性状態への分化;増加した無増悪生存率(PFS)、無病生存率(DFS)または全生存率(OS)、完全応答(CR)、部分応答(PR)、安定疾患(SD)、進行性疾患(PD)の低下、低下した無増悪期間(TTP)、卵巣癌の場合CA125の低下、またはそれらの組み合わせの1以上を示すのであれば、本発明の方法に従って癌について対象は上手く「治療されている」。
【0168】
予防的手段または予防手段は、標的とされる病態または疾病の発症を防ぐ及び/または遅らせる治療手段を指す。従って、予防的手段または予防手段を必要とする者には、疾病を有する傾向のある者及び疾病が防がれるべきである者が含まれる。
【0169】
本明細書で使用されるとき、用語「ヘルスケア提供者」は、生きている対象、たとえば、ヒト患者と直接交流し、それに投与する個人または機関を指す。ヘルスケア提供者の非限定例には、医師、看護師、技師、セラピスト、薬剤師、カウンセラー、代替医療医師、医療施設、診療所、病院、救急室、クリニック、緊急処置センター、代替医療のクリニック/施設、及び、一般医療、特殊医療、外科及び/または他の種類の治療、評価、維持、治療法、投薬及び/または助言を含むが、これらに限定されない、患者の健康状態のすべてまたは一部に関する一般的な及び/または特殊化した治療、評価、維持、治療法、投薬及び/または助言を提供する任意の他の実体が挙げられる。
【0170】
一部の態様では、ヘルスケア提供者は、癌を治療するための療法を施すことができ、またはそれを施すように別のヘルスケア提供者を指導することができる。療法の「施行」には本明細書で使用されるとき、対象に療法を処方することならびに対象に療法を送達する、適用するまたは与えることが含まれる。ヘルスケア提供者は、以下の行動:試料を入手する、試料を処理する、試料を提出する、試料を受け取る、試料を輸送する、試料を分析するまたは測定する、試料を定量する、試料を分析し/測定し/定量した後得られる結果を提供する、試料を分析し/測定し/定量した後得られる結果を受け取る、1以上の試料を分析し/測定し/定量した後得られる結果を比較し/スコア化する、1以上の試料に由来する比較/スコアを提供する、1以上の試料に由来する比較/スコアを入手する、療法または治療剤(たとえば、FOLR1結合作用物質)を投与する、療法の施行を開始する、療法の施行を中止する、療法の施行を継続する、療法の施行を一時的に中断する、投与される治療剤の量を増やす、投与される治療剤の量を減らす、ある量の治療剤の投与を継続する、治療剤の投与の回数を増やす、治療剤の投与の回数を減らす、治療剤の同じ投与回数を維持する、療法または治療剤を少なくとももう1つの療法または治療剤で置き換える、療法または治療剤を少なくとももう1つの療法または追加の治療剤と組み合わせるように実施する、を行うまたはそのようにするように別のヘルスケア提供者または患者を指導することができる。これらの行動は、コンピュータが実施する方法(たとえば、ウェブサービスを介してまたは単独型のコンピュータシステムを介して)を用いて自動的にヘルスケア提供者によって実施され得る。
【0171】
「ポリヌクレオチド」または「核酸」は本明細書で相互交換可能に使用されるとき、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチドまたは塩基、及び/またはその類似体、またはDNAポリメラーゼ若しくはRNAポリメラーゼによってポリマーの中に取り込むことができる任意の基質であることができる。ポリヌクレオチドは、たとえば、メチル化ヌクレオチド及びその類似体のような修飾されたヌクレオチドを含むことができる。存在するならば、ヌクレオチド構造に対する修飾はポリマーのアセンブリの前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分によって中断することができる。ポリヌクレオチドは、たとえば、標識成分による結合によって重合の後さらに修飾することができる。修飾の他の型には、たとえば、「キャップ」、天然に存在するヌクレオチドの1以上の類似体による置換、荷電しない結合(たとえば、メチルホスホネート、ホスホロトリエステル、ホスホロアミデート、カバメート等)を伴う及び荷電した結合(たとえば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)を伴うもの、たとえば、タンパク質(たとえば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジン等)のようなペンダント部分を含有するもの、挿入剤(たとえば、アクリジン、プソラレン等)を伴うもの、キレート剤(たとえば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属等)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合(たとえば、αアノマー核酸等)を伴うものなどのヌクレオチド間修飾ならびにポリヌクレオチドの未修飾の形態が挙げられる。さらに、普通、糖に存在するヒドロキシル基のいずれかを、たとえば、ホスホネート基、リン酸基によって置き換えることができ、標準の保護基によって保護することができ、または活性化して追加のヌクレオチドへの追加の結合を調製することができ、または固相支持体に結合することができる。5’及び3’末端のOHは、リン酸化することができ、またはアミン若しくは1~20の炭素原子の有機キャッピング基部分で置換することができる。他のヒドロキシルも標準の保護基に誘導体化することもできる。ポリヌクレオチドは、たとえば、2’-O-メチル、2’-O-アリル、2’-フルオロまたは2’-アジド-リボース、カルボン酸糖類似体、αアノマー糖、エピマー糖、たとえば、アラビノース、キシロースまたはリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体及び、たとえば、メチルリボシドのような脱塩基ヌクレオシド類似体を含む、当該技術で一般に既知であるリボース糖またはデオキシリボース糖の類似の形態も含有することができる。1以上のホスホジエステル結合を代替の結合基によって置き換えることができる。これらの代替の結合基には、リン酸がP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCH2(「ホルマセタル」)によって置き換えられる実施形態が挙げられるが、これらに限定されず、式中、RまたはR’は独立してHまたは置換されたまたは非置換の、任意でエーテル結合(-O-)を含有するアルキル(1~20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルまたはアラルジルである。ポリヌクレオチドにおける結合のすべてが同一である必要があるわけではない。先行する記載は、RNA及びDNAを含む本明細書で言及されるポリヌクレオチドすべてに適用される。
【0172】
用語「ベクター」は、宿主細胞にて1以上の当該遺伝子または配列を送達し、且つ発現させることが可能である構築物を意味する。ベクターの例には、ウイルスベクター、ネイキッドのDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、カチオン性縮合剤に会合したDNAまたはRNA発現ベクター、リポソーム及び産生細胞のようなある特定の真核細胞に被包されたDNAまたはRNA発現ベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0173】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は本明細書では相互交換可能に使用されて任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは直鎖であることができ、または分岐することができ、それは、修飾されたアミノ酸を含むことができ、非アミノ酸によって中断することができる。その用語はまた、天然に修飾されている、または介入、たとえば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作または修飾、たとえば、標識成分による結合によって修飾されているアミノ酸ポリマーも包含する。定義の中に含められるのはまた、たとえば、アミノ酸の1以上の類似体(たとえば、非天然のアミノ酸等を含む)ならびに当該技術で既知の他の修飾を含有するポリペプチドである。本発明のポリペプチドは抗体に基づくので、ある特定の実施形態では、ポリペプチドは単鎖または会合した鎖として存在し得ることが理解される。一部の実施形態では、ポリペプチド、ペプチドまたはタンパク質は天然に存在しない。一部の実施形態では、ポリペプチド、ペプチドまたはタンパク質は他の天然に存在する成分から精製される。一部の実施形態では、ポリペプチド、ペプチドまたはタンパク質は組換えで作出される。
【0174】
2以上の核酸またはポリペプチドの文脈での用語「同一の」またはパーセント「同一性」は、配列同一性の一部として保存的なアミノ酸置換を考慮せずに最大の一致について比較し、(必要に応じてギャップを導入して)並べた場合、同じである2以上の配列若しくは部分配列、または同じであるヌクレオチド若しくはアミノ酸残基の特定された比率を有する2以上の配列若しくは部分配列を指す。パーセント同一性は、配列比較ソフトウエアまたはアルゴリズムを用いて、または目視検査によって測定することができる。アミノ酸またはヌクレオチドの配列の配列比較を得るのに使用することができる種々のアルゴリズム及びソフトウエアが当該技術で既知である。配列比較アルゴリズムのそのような非限定例の1つは、Karlinら,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.,87:2264-2268にて記載されており、Karlinら,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.,90:5873-5877にて修正され、NBLAST及びXBLASTプログラム(Altschulら,1991,Nucleic Acids Res.,25:3389-3402)に組み入れられている。ある特定の実施形態では、ギャップのあるBLASTはAltschulら,1997,Nucleic Acids Res.25:3389-3402にて記載されたように使用することができる。BLAST-2、WU-BLAST-2(Altschulら,1996,Methods in Enzymology,266:460-480)、ALIGN、ALIGN-2(Genentech,South San Francisco,California)またはMegalign(DNASTAR)は、配列を並べるのに使用することができる追加の公的に利用可能なソフトウエアのプログラムである。ある特定の実施形態では、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウエア(たとえば、NWSgapdna.CMPマトリクス及び40、50、60、70、または90のギャップ加重及び1、2、3、4、5、または6の長さ加重を用いた)におけるGAPプログラムを用いて測定される。ある特定の代替実施形態では、Needleman及びWunsch(J.Mol.Biol.(48):444-453(1970))のアルゴリズムを組み入れるGCGソフトウエアパッケージにおけるGAPプログラムを用いて2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性を測定することができる(Blossum62マトリクスまたはPAM250マトリクス及び16、14、12、10、8、6、または4のギャップ加重及び1、2、3、4、5の長さ加重を用いて)。或いは、ある特定の実施形態では、ヌクレオチドまたはアミノ酸の配列間でのパーセント同一性は、Myers及びMiller(CABIOS,4:11-17(1989))のアルゴリズムを用いて決定される。たとえば、ALIGNプログラム(バージョン2.0)を用いて、且つ、残基表、12のギャップ長さペナルティ及び4のギャップペナルティと共にPAM120を用いてパーセント同一性を決定することができる。特定の配列比較ソフトウエアによる最大配列比較のための適当なパラメータは当業者によって決定され得る。ある特定の実施形態では、配列比較ソフトウエアの初期設定パラメータが使用される。ある特定の実施形態では、第1のアミノ酸配列の第2の配列アミノ酸に対するパーセント同一性「X」は、100×(Y/Z)として算出され、その際、Yは第1と第2の配列の配列比較(目視検査または特定の配列比較プログラムによって並べられた)において同一の一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Zは第2の配列における残基の総数である。第1の配列の長さが第2の配列よりも長いのであれば、第1の配列の第2の配列に対するパーセント同一性は、第2の配列の第1の配列に対するパーセント同一性よりも長いであろう。
【0175】
非限定例として、任意の特定のポリヌクレオチドが参照配列に対してある特定の比率の配列同一性を有する(たとえば、少なくとも80%同一である、少なくとも85%同一である、少なくとも90%同一である、及び一部の実施形態では、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一である)かどうかは、ある実施形態において、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Unix(登録商標)用バージョン8,Genetics Computer Group,University Research Park,575 Science Drive,Madison,WI53711)を用いて決定することができる。Bestfitは、Smith及びWaterman,Advances in Applied Mathematics,2:482,489(1981)のローカル相同性アルゴリズムを用いて2つの配列間の相同性の最良なセグメントを見いだす。Bestfitまたは任意の他の配列比較プログラムを用いて特定の配列が本発明に係る参照配列に対して、たとえば、95%同一性であるかどうかを決定する場合、パラメータは、同一性の比率が参照ヌクレオチド配列の完全長にわたって算出され、且つ参照配列におけるヌクレオチドの総数の5%までの相同性におけるギャップが許容されるように設定される。
【0176】
一部の実施形態では、本発明の2つの核酸またはポリヌクレオチドが実質的に同一であり、これは、配列比較アルゴリズムを用いて、または目視検査によって測定するとき、最大の一致について比較し、並べた場合、それらが、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、及び一部の実施形態では、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の同一性を有することを意味する。ある特定の実施形態では、同一性は、長さ少なくとも約10、約20、約40~60の残基またはその間の整数値である配列の領域にわたって、または60~80残基、少なくとも約90~100残基より長い領域にわたって存在し、または配列は、たとえば、ヌクレオチド配列のコーディング領域のような、比較される配列の完全長にわたって実質的に同一である。
【0177】
「保存的なアミノ酸置換」は、アミノ酸残基1つが類似する側鎖を有するもう1つのアミノ酸残基で置き換えられるものである。塩基性側鎖(たとえば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(たとえば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(たとえば、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(たとえば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(たとえば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(たとえば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該技術で定義されている。たとえば、フェニルアラニンのチロシンへの置換は保存的置換である。ある特定の実施形態では、本発明のポリペプチド及び抗体の配列における保存的な置換は、アミノ酸配列を含有するポリペプチドまたは抗体の抗原への、すなわち、ポリペプチドまたは抗体が結合するFOLR1への結合を無効にしない。抗原結合を排除しないヌクレオチド及びアミノ酸の保存的置換を特定する方法は当該技術で周知である(たとえば、Brummellら,Biochem.32:1180-1,187(1993);Kobayashiら.Protein Eng.12(10):879-884(1999);及びBurksら.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:.412-417(1997)を参照のこと)。
【0178】
本開示及びクレームで使用されるとき、単数形態「a」、「an」及び「the」は文脈が明瞭に指示しない限り、複数形態を含む。
【0179】
実施形態が言語「comprising(含む)」と共に本明細書にて記載される箇所はどこでも、「consisting of(から成る)」及び/または「consisiting essentially of(から本質的に成る)」という点で記載された別の類似の実施形態も提供されることが理解される。
【0180】
本明細書にて「A及び/またはB」のような語句で使用されるとき、用語「及び/または」は「A及びB」、「AまたはB」、「A」及び「B」の双方を含むように意図される。同様に、用語「及び/または」は「A、B及び/またはC」のような語句で使用されるとき、以下の実施形態:A、B及びC;A、BまたはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);C(単独)のそれぞれを包含するように意図される。
【0181】
II.FOLR1結合作用物質
本発明はヒトのFOLR1に特異的に結合する作用物質を提供する。これらの作用物質は本明細書では「FOLR1結合作用物質」と呼ばれる。ある特定の実施形態では、FOLR1結合作用物質は抗体、免疫複合体またはポリペプチドである。ヒトFOLR1のアミノ酸及びヌクレオチドの配列は当該技術で既知であり、配列番号1及び配列番号2によって表されるように本明細書でも提供される。
ヒトの葉酸受容体1:
MAQRMTTQLLLLLVWVAVVGEAQTRIAWARTELLNVCMNAKHHKEKPGPEDKLHEQCRPWRKNACCSTNTSQEAHKDVSYLYRFNWNHCGEMAPACKRHFIQDTCLYECSPNLGPWIQQVDQSWRKERVLNVPLCKEDCEQWWEDCRTSYTCKSNWHKGWNWTSGFNKCAVGAACQPFHFYFPTPTVLCNEIWTHSYKVSNYSRGSGRCIQMWFDPAQGNPNEEVARFYAAAMSGAGPWAAWPFLLSLALMLLWLLS(配列番号1)
ヒトの葉酸受容体1核酸配列
atggctcagcggatgacaacacagctgctgctccttctagtgtgggtggctgtagtaggggaggctcagacaaggattgcatgggccaggactgagcttctcaatgtctgcatgaacgccaagcaccacaaggaaaagccaggccccgaggacaagttgcatgagcagtgtcgaccctggaggaagaatgcctgctgttctaccaacaccagccaggaagcccataaggatgtttcctacctatatagattcaactggaaccactgtggagagatggcacctgcctgcaaacggcatttcatccaggacacctgcctctacgagtgctcccccaacttggggccctggatccagcaggtggatcagagctggcgcaaagagcgggtactgaacgtgcccctgtgcaaagaggactgtgagcaatggtgggaagattgtcgcacctcctacacctgcaagagcaactggcacaagggctggaactggacttcagggtttaacaagtgcgcagtgggagctgcctgccaacctttccatttctacttccccacacccactgttctgtgcaatgaaatctggactcactcctacaaggtcagcaactacagccgagggagtggccgctgcatccagatgtggttcgacccagcccagggcaaccccaatgaggaggtggcgaggttctatgctgcagccatgagtggggctgggccctgggcagcctggcctttcctgcttagcctggccctaatgctgctgtggctgctcagc(配列番号2)
【0182】
従って、一部の実施形態では、FOLR1結合作用物質は配列番号1のエピトープに結合することができる。
【0183】
一部の実施形態では、抗FOLR1抗体はFOLR1(配列番号1)のエピトープに特異的に結合することができ、その際、エピトープはN-グリコシル化されたアミノ酸を含む。従って、そのような抗体はそれがグリコシル化される場合FOLR1に結合し、それがグリコシル化されない場合FOLR1に結合しないであろう。言い換えれば、これらの抗体の結合はグリコール依存性である。これらの抗体は、それらがFOLR1のグリコシル化形態と非グリコシル化形態を区別するのに使用され得るという点で有利である。グリコシル化が膜の局在化に必要とされることを考えると、該抗体は膜特異的な染色に有利に使用することができる。
【0184】
一部の実施形態では、抗FOLR1抗体はFOLR1のN-グリコシル化されたアミノ酸69を含むFOLR1のエピトープに特異的に結合することができる。一部の実施形態では、抗FOLR1抗体はFOLR1のN-グリコシル化されたアミノ酸161を含むFOLR1のエピトープに特異的に結合することができる。一部の実施形態では、抗FOLR1抗体はFOLR1のN-グリコシル化されたアミノ酸201を含むFOLR1のエピトープに特異的に結合することができる。
【0185】
ある特定の実施形態では、抗FOLR1抗体は、ブダペスト条約の条項のもとで2013年4月16日に10801 University Boulevard、 Manassas、 VA20110に位置するAmerican Type Culture Collection(ATCC)に寄託され、ATCC寄託番号PTA-120196(「IMGN353.9-20」、「353.9-20」、または「9.20」とも呼ばれる「FOLR1-9.20」)を有するハイブリドーマによって産生される抗体である。ある特定の実施形態では、抗FOLR1抗体は、2013年4月16日にATCCに寄託され、ATCC寄託番号PTA-120197(「IMGN353.2-1」、「353.2-1」、「2.1」または「muFRIHC2-1」とも呼ばれる「FOLR1-2.1」)を有するハイブリドーマによって産生される抗体である。
【0186】
FOLR1結合作用物質には、以下の表1及び表2で提供される(i)「FOLR1-2.1」、「IMGN353.2-1」、「353.2-1」、または「2.1」としても知られるmuFRIHC2-1、(ii)「IMGN353.5-7」、「353.5-7」または「5.7」としても知られるmuFRIHC5-7、(iii)「FOLR1-9.20」、「IMGN353.9-20」、「353.9-20」または「9.20」としても知られる「muFRIHC9-20」、(iv)表面再構成したhuFRIHC2-1バージョン1.0若しくは1.01、または(v)CDR移植したhuFRIHC2-1バージョン1.0若しくは1.01の重鎖及び軽鎖のCDR配列を含むFOLR1結合作用物質が挙げられる。FOLR1結合作用物質には、以下の表1及び表2で提供される複合CDRの重鎖及び軽鎖のCDR配列を含むFOLR1結合作用物質も挙げられる。
【表1】
【表2】
【0187】
FOLR1結合分子は、CDR当たり4までの(すなわち、0、1、2、3または4)保存的アミノ酸置換と共に、抗体2.1(すなわち、配列番号3~8)、5.7(すなわち、配列番号9~14)または9.20(すなわち、配列番号15~20)のCDRを含む、FOLR1に特異的に結合する抗体または抗原結合断片であることができる。FOLR1結合分子は、CDR当たり4までの(すなわち、0、1、2、3または4)保存的アミノ酸置換と共に、上記で示した複合配列(配列番号21~26)のCDRを含む、FOLR1に特異的に結合する抗体または抗原結合断片であることができる。
【0188】
FOLR1結合分子は、ATCC寄託番号PTA-120196またはPTA-120197のハイブリドーマによって産生される抗体のCDRを含む、FOLR1に特異的に結合する抗体または抗原結合断片であることができる。
【0189】
ポリペプチドは、本明細書で記載される個々の可変軽鎖及び可変重鎖の1つを含むことができる。抗体及びポリペプチドは可変軽鎖及び可変重鎖の双方を含むこともできる。マウス抗体2.1、5.7及び9.20並びにヒト化2.1の可変軽鎖及び可変重鎖の配列は以下の表3及び表4にて提供される。
【表3】
【表4】
【0190】
提供されるのはまた、(a)配列番号27、29、31、62または65に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するポリペプチド及び/または(b)配列番号28、30、32、63、64、66または67に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するポリペプチドを含むポリペプチドである。ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号27~32または62~67に対して少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。従って、ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、(a)配列番号27、29、31、62または65に対して少なくとも約95%の配列同一性を有するポリペプチド及び/または(b)配列番号28、30、32、63、64、66または67に対して少なくとも約95%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、(a)配列番号27、29、31、62または65のアミノ酸配列を有するポリペプチド及び/または(b)配列番号28、30、32、63、64、66または67のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ポリペプチドは抗体であり、及び/またはポリペプチドはFOLR1に特異的に結合する。ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、FOLR1に特異的に結合するマウス抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体である。ある特定の実施形態では、配列番号27~32または62~67に対してある特定の比率の配列同一性を有するポリペプチドは、保存的なアミノ酸置換によってのみ配列番号27~32または62~67とは異なる。
【0191】
提供されるのはまた、ATCC寄託番号PTA-120196またはPTA-120197を有するハイブリドーマによって産生される抗体の可変軽鎖の配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%同一であるまたは同一である可変軽鎖を含むポリペプチドである。
【0192】
提供されるのはまた、ATCC寄託番号PTA-120196またはPTA-120197を有するハイブリドーマによって産生される抗体の可変重鎖の配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%同一であるまたは同一である可変重鎖を含むポリペプチドである。
【0193】
提供されるのはまた、ATCC寄託番号PTA-120196またはPTA-120197を有するハイブリドーマによって産生される抗体の可変重鎖及び可変軽鎖の配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%同一であるまたは同一である可変重鎖及び可変軽鎖の配列を含む抗体及びその抗原結合断片である。
【0194】
ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、ATCC寄託番号PTA-120196を有するハイブリドーマによって産生される抗体またはその抗原結合断片である。
【0195】
ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、ATCC寄託番号PTA-120197を有するハイブリドーマによって産生される抗体またはその抗原結合断片である。
【0196】
ポリペプチドは、本明細書で記載される個々の軽鎖及び重鎖の1つを含むことができる。抗体及びポリペプチドは軽鎖及び重鎖の双方を含むこともできる。抗体2.1、5.7及び9.20の軽鎖及び重鎖の配列を以下の表5及び表6にて提供する。
【表5】
【表6】
【0197】
提供されるのはまた、(a)配列番号33、35または37に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するポリペプチド及び/または(b)配列番号34、36または38に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するポリペプチドを含むポリペプチドである。ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号33~38に対して少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。従って、ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、(a)配列番号33、35または37に対して少なくとも約95%の配列同一性を有するポリペプチド及び/または(b)配列番号34、36または38に対して少なくとも約95%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、(a)配列番号33、35または37のアミノ酸配列を有するポリペプチド及び/または(b)配列番号34、36または38のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。ある特定の実施形態では、ポリペプチドは抗体であり、及び/またはポリペプチドはFOLR1に特異的に結合する。ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、FOLR1に特異的に結合するマウス抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体である。ある特定の実施形態では、配列番号33~38に対してある特定の比率の配列同一性を有するポリペプチドは、保存的なアミノ酸置換によってのみ配列番号33~38とは異なる。
【0198】
提供されるのはまた、ATCC寄託番号PTA-120196またはPTA-120197を有するハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖の配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%同一であるまたは同一である軽鎖を含むポリペプチドである。
【0199】
提供されるのはまた、ATCC寄託番号PTA-120196またはPTA-120197を有するハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖の配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%同一であるまたは同一である重鎖を含むポリペプチドである。
【0200】
提供されるのはまた、ATCC寄託番号PTA-120196またはPTA-120197を有するハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖及び軽鎖の配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%同一であるまたは同一である重鎖及び軽鎖の配列を含む抗体及びその抗原結合断片である。
【0201】
抗原に対する抗体の親和性または結合活性は、当該技術で周知の好適な方法、たとえば、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または放射性免疫アッセイ(RIA)または速度論(たとえば、BIACORE(商標)分析)を用いて実験的に測定することができる。直接結合アッセイならびに競合結合アッセイ方式を容易に採用することができる(たとえば、Berzofskyら,”Antibody-Antigen Interactions,”In Fundamental Immunology,Paul,W.E.編,Raven Press:New York,N.Y.(1984);Kuby,Janis Immunology,W.H.Freeman
and Company:New York,N.Y.(1992);及び本明細書で記載される方法を参照のこと)。特定の抗体/抗原の相互作用の測定された親和性は、異なる条件下(たとえば、塩濃度、pH、温度)で測定されれば変化し得る。従って、親和性及び他の抗原結合パラメータ(たとえば、KDまたはKd、Kon、Koff)の測定は、抗体及び抗原の標準化した溶液及び本明細書で記載される緩衝液のような当該技術で既知であるような標準化した緩衝液で行う。
【0202】
態様の1つでは、結合アッセイは、表面にFOLR1抗原を発現している細胞にてフローサイトメトリーを用いて行うことができる。たとえば、100μLのFACS緩衝液(2%正常ヤギ血清で補完したRPMI-1640培地)にて試料当たり1×105個の細胞を用いて抗FOLR1抗体の濃度を変化させてFOLR1陽性細胞、たとえば、SKOV3をインキュベートすることができる。次いで、細胞をペレットにし、洗浄し、100μLのFITC結合のヤギ抗マウスまたはヤギ抗ヒトのIgG(たとえば、Jackson Laboratoryから入手可能である、FACS緩衝液中で6μg/mL)と共に1時間インキュベートすることができる。次いで、細胞を再びペレットにし、FACS緩衝液で洗浄し、1%ホルムアミドを含有する200μLのPBSに再懸濁させる。たとえば、HTSマルチウェルサンプラーを伴ったFACSCaliburフローサイトメータを用いて試料を捕捉することができ、CellQuest Pro(すべてBD Biosciences,San Diego,USからの)を用いて分析することができる。各試料について、FL1の平均蛍光強度(MFI)を取り出し、半対数プロットにて抗体濃度に対してプロットして結合曲線を生成することができる。S字用量反応曲線を結合曲線に当てはめ、たとえば、初期設定パラメータのGraphPad Prism v4(GraphPad software,San Diego,CA)のようなプログラムを用いてEC50値を算出する。各抗体についての見かけの解離定数「Kd」または「KD」についての評価基準としてEC50値を使用することができる。
【0203】
Kohler及びMilstein(1975),Nature,256:495によって記載されたもののようなハイブリドーマ法を用いてモノクローナル抗体を調製することができる。ハイブリドーマ法を用いて、マウス、ハムスターまたは他の適当な宿主動物を免疫して、免疫抗原に特異的に結合する抗体のリンパ球による産生を引き出す。リンパ球も試験管内で免疫することができる。免疫に続いて、リンパ球を単離し、たとえば、ポリエチレングリコールを用いて好適な骨髄腫細胞株と融合させてハイブリドーマ細胞を形成し、その後、それを融合しなかったリンパ球及び骨髄腫細胞から選別することができる。免疫沈降、免疫ブロットによって、または試験管内の結合アッセイ(たとえば、放射性免疫アッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA))によって決定されるような選択された抗原に対して特異的に向けられたモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを次いで、常法(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,1986)を用いた試験管内の培養にて、または動物における腹水腫瘍として生体内で増殖させることができる。次いでポリクローナル抗体について記載されたように、モノクローナル抗体を培養培地または腹水液から精製することができる。
【0204】
或いは、米国特許第4,816,567号にて記載されたような組換えDNA法を用いてモノクローナル抗体を作製することができる。たとえば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子を特異的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマーを用いたRT-PCRによって、モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドを成熟B細胞またはハイブリドーマ細胞から単離し、従来の手順を用いてその配列を決定する。次いで、重鎖及び軽鎖をコードする単離されたポリヌクレオチドを好適な発現ベクターにクローニングし、別様であれば免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または骨髄腫細胞にそれを形質移入すると、宿主細胞によってモノクローナル抗体が産生される。また、所望の種の組換えモノクローナル抗体またはその断片は、記載された(McCaffertyら,1990,Nature,348:552-554;Clacksonら,1991,Nature,352:624-628;及びMarksら,1991,J.Mol.Biol.,222:581-597)ように所望の種のCDRを発現するファージディスプレライブラリから単離することができる。
【0205】
組換えDNA法を用いた多数の異なる方法にて、モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドをさらに修飾して代替抗体を生成することができる。一部の実施形態では、たとえば、マウスのモノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖の定常ドメインを、(1)たとえば、ヒト抗体のその領域に置換してキメラ抗体を生成することができ、または(2)非免疫グロブリンタンパク質に置換して融合抗体を生成することができる。一部の実施形態では、定常領域を切り詰め、または取り除いてモノクローナル抗体の所望の抗体断片を生成する。可変領域の部位特異的なまたは高密度の変異誘発を用いてモノクローナル抗体の特異性、親和性等を最適化することができる。
【0206】
一部の実施形態では、ヒトFOLR1に対するモノクローナル抗体はヒト化抗体である。ある特定の実施形態では、そのような抗体を治療上用いて、ヒト対象に投与した場合抗原性及びHAHA(ヒト抗マウス抗体)反応を軽減する。
【0207】
非ヒト抗体またはヒト抗体を操作する、ヒト化するまたは表面再構成する方法を使用することができ、それらは当該技術で周知である。ヒト化された、表面再構成した、または同様に操作された抗体は、非ヒトであるが、たとえば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類または他の哺乳類に限定されない供給源に由来する1以上のアミノ酸残基を有することができる。これらの非ヒトのアミノ酸残基は「移入」残基と呼ばれることが多い残基によって置き換えられ、それは通常、既知のヒト配列の「移入」の可変、定常または他のドメインから選び取られる。
【0208】
そのような移入された配列を用いて免疫原性を減らすことができ、または当該技術で知られるように結合、親和性、オン速度、オフ速度、結合活性、特異性、半減期、または任意の他の好適な特性を軽減する、向上させるまたは修飾することができる。一般に、CDR残基が直接、且つ最も実質的にFOLR1結合に影響を及ぼすことに関与する。従って、非ヒトまたはヒトのCDR配列の一部またはすべてが維持される一方で、可変領域及び定常領域の非ヒト配列はヒトのアミノ酸または他のアミノ酸で置き換えることができる。
【0209】
抗原FOLR1に対する高い親和性及び他の好都合な生物特性を保持しながら、抗体は任意でヒト化され、表面再構成され、操作されることもでき、またはヒト抗体が操作されることもできる。この目標を達成するために、親配列、操作された配列、及びヒト化された配列の三次元モデルを用いた親配列及び種々の概念的なヒト化産物及び操作した産物の解析プロセスによって、ヒト化した(ヒトの)または操作した抗FOLR1抗体及び表面再構成した抗体を任意で調製することができる。三次元の免疫グロブリンモデルは市販されており、当業者に精通している。選択された候補免疫グロブリン配列の考えられる三次元立体構造を説明し、表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示の調査によって候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性の高い役割の分析が可能になり、すなわち、候補免疫グロブリンのFOLR1のような抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このように、フレームワーク(FR)残基を選択し、所望の抗体の特徴、たとえば、標的抗原に対する増加した親和性が達成されるようにコンセンサス配列及び移入配列と組み合わせることができる。
【0210】
本発明の抗体のヒト化、表面再構成または操作は、たとえば、そのそれぞれが参照によって本明細書に組み入れられ、その中で引用された参考文献を含む、Winter(Jonesら,Nature,321:522(1986);Riechmannら,Nature,332:323(1988);Verhoeyenら,Science,239:1534(1988))、Simsら,J.Immunol.151:2296(1993);Chothia及びLesk,J.Mol.Biol.196:901(1987)、Carterら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:4285(1992);Prestaら,J.Immunol.151:2623(1993)、米国特許第5,639,641号;同第5,723,323号;同第5,976,862号;同第5,824,514号;同第5,817,483号;同第5,814,476号;同第5,763,192号;同第5,723,323号;同第5,766,886号;同第5,714,352号;同第6,204,023号;同第6,180,370号;同第5,693,762号;同第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,225,539号;同第4,816,567号;PCT/US98/16280;US96/18978;US91/09630;US91/05939;US94/01234;GB89/01334;GB91/01134;GB92/01755;WO90/14443;WO90/14424;WO90/14430;EP229246;7,557,189;7,538,195;及び7,342,110にて記載されたもののような、しかし、これらに限定されない既知の方法を用いて実施することができる。
【0211】
ある特定の代替の実施形態では、FOLR1に対する抗体はヒト抗体である。ヒト抗体は当該技術で既知の種々の技法を用いて直接調製することができる。試験管内で免疫された、または標的抗原に対して向けられた抗体を産生する免疫された個体から単離された不死化したヒトBリンパ球を生成することができる(たとえば、Coleら,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boemerら,1991,J.Immunol.,147(1):86-95;及び米国特許第5,750,373号を参照のこと)。また、ヒト抗体はファージライブラリから選択することができ、その際、ファージライブラリは、たとえば、Vaughanら,1996,Nat.Biotech.,14:309-314、Sheetsら,1998,Proc.Nat’l.Acad.Sci.,95:6157-6162、Hoogenboom及びWinter,1991,J.Mol.Biol.,227:381、並びにMarksら,1991,J.Mol.Biol.,222:581にて記載されたようにヒト抗体を発現する。抗体ファージライブラリの生成及び使用は、米国特許第5,969,108号;同第6,172,197号;同第5,885,793号;同第6,521,404号;同第6,544,731号;同第6,555,313号;同第6,582,915号;同第6,593,081号;同第6,300,064号;同第6,653,068号;同第6,706,484号;及び同第7,264,963号;並びにRotheら,2007,J.Mol.Bio.,doi:10.1016/j.jmb.2007.12.018(そのそれぞれはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる)においても記載されている。親和性成熟戦略及び鎖シャッフリング戦略(その全体が参照によって組み入れられるMarksら,1992,Bio/Technology,10:779-783)は当該技術で既知であり、それらを採用して高親和性のヒト抗体を生成することができる。
【0212】
内在性の免疫グロブリン産生の非存在下で免疫の際にヒト抗体の完全なレパトアを産生することが可能であるヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有するトランスジェニックマウスにおいてもヒト化抗体を作製することができる。このアプローチは米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;及び同第5,661,016号にて記載されている。
【0213】
ある特定の実施形態では、提供されるのは、たとえば、腫瘍浸潤を高める抗体断片である。抗体断片の作製について種々の技法が知られている。従来、これらの断片はインタクトな抗体のタンパク分解消化を介して導き出される(たとえば、Morimotoら,1993,Journal of Biochemical and Biophysical Methods,24:107-117;Brennanら,1985,Science,229:81)。ある特定の実施形態では、抗体断片は組換えで作製される。Fab、Fv及びscFv抗体断片はすべて大腸菌または他の宿主細胞にて発現され、それから分泌されるので、これらの断片の大量生産が可能になる。そのような抗体断片は抗体ファージライブラリからも単離することができる。抗体断片は、たとえば、米国特許第5,641,870号にて記載された線状抗体であることもでき、単一特異性または二重特異性であることができる。抗体断片の作製についての他の技法は技量のある実践者には明らかであろう。
【0214】
本発明の目的で、修飾された抗体は抗体のヒトFOLR1のポリペプチドとの会合を提供する任意の型の可変領域を含むことができることが十分に理解されるべきである。この点で、可変領域は、所望の腫瘍関連抗原に対する液性免疫を備え、免疫グロブリンを生成するように誘導することができる任意の種類の哺乳類を備えることができ、またはそれに由来することができる。したがって、修飾された抗体の可変領域は、たとえば、ヒト、マウス、非ヒト霊長類(たとえば、カニクイザル、マカク等)またはオオカミの起源のものであることができる。一部の実施形態では、修飾された免疫グロブリンの可変領域及び定常領域の双方がヒトのものである。他の実施形態では、適合する抗体(普通、非ヒト供給源に由来する)の可変領域が結合特性を改善し、分子の免疫原性を減らすように操作され、または特に誂えられ得る。この点で、本発明で有用な可変領域はヒト化することができ、またはさもなければ、移入されるアミノ酸配列の包含を介して変えることができる。
【0215】
ある特定の実施形態では、重鎖及び軽鎖双方における可変ドメインは、1以上のCDRの少なくとも部分的な置き換えによって、必要に応じて部分的なフレームワーク領域の置き換え及び配列変化によって変えられる。CDRは、フレームワーク領域が由来する抗体と同じクラスまたはさらにサブクラスの抗体に由来することができるが、CDRは異なるクラスに由来し、ある特定の実施形態では、異なる種の抗体に由来することが想定される。ドナーの可変領域に由来する完全なCDRでCDRのすべてを置き換えて1つの可変ドメインの抗原結合能を別に移すことが必要でなくてもよい。むしろ、抗原結合部位の活性を維持するのに必要である残基を移すことが必要であるに過ぎない可能性がある。米国特許第5,585,089号;同第5,693,761号及び同第5,693,762号にて言及された説明を考えると、日常の実験を行うことによって、または試行錯誤の試験を行うことによって、低下した免疫原性を持つ機能的な抗体を得ることは、十分に当業者の力量の範囲内であろう。
【0216】
可変領域に対する変化にもかかわらず、当業者は、ネイティブのまたは未変化の定常領域を含むほぼ同じ免疫原性の抗体と比べた場合、たとえば、より高い腫瘍の局在化または低下した血清半減期のような所望の生化学的特徴を提供するように、定常領域ドメインの1以上の少なくとも一部が欠失している、またはさもなければ変化している抗体(たとえば、完全長の抗体またはその免疫反応性の断片)を本発明の修飾された抗体が含むことを十分に理解するであろう。一部の実施形態では、修飾された抗体の定常領域はヒトの定常領域を含むであろう。本発明に適合する定常領域に対する修飾は1以上のドメインにて1以上のアミノ酸の付加、欠失または置換を含む。すなわち、本明細書で開示される修飾された抗体は3つの重鎖定常ドメイン(CH1、CH2またはCH3)の1以上及び/または軽鎖定常ドメイン(CL)に対する変化または修飾を含むことができる。一部の実施形態では、1以上のドメインを部分的にまたは全体的に欠失させる修飾された定常領域が熟考される。一部の実施形態では、修飾された抗体はCH2ドメイン全体が取り除かれているドメイン欠失の構築物または変異体(ΔCH2構築物)を含むであろう。一部の実施形態では、省略された定常領域ドメインは、存在しない定常領域によって通常付与される分子柔軟性の一部を提供する短いアミノ酸スペーサー(たとえば、10残基)によって置き換えられるであろう。
【0217】
ある特定の実施形態では、修飾された抗体は各修飾された抗体のヒンジ領域にCH3ドメインを直接融合させるように操作することができることが言及されるであろう。他の構築物では、ヒンジ領域と修飾されたCH2及び/またはCH3領域との間にペプチドスペーサーを提供することが望ましい可能性がある。たとえば、CH2ドメインが欠失しており、残りのCH3ドメイン(修飾されたまたは未修飾の)が5~20アミノ酸のスペーサーを伴ってヒンジ領域に連結される適合性の構築物が発現され得る。そのようなスペーサーを付加して、たとえば、定常ドメインの調節要素が自由でアクセス可能なままであり、またはヒンジ領域が柔軟なままであることを保証することができる。しかしながら、アミノ酸スペーサーは場合によっては、免疫原性であり、構築物に対する望ましくない免疫応答を引き出すことを明確に示し得ることが言及されるべきである。従って、ある特定の実施形態では、構築物に付加されるスペーサーは、修飾された抗体の所望の生化学的な質を維持するように相対的に非免疫原性であり、またはさらに完全に省かれるであろう。
【0218】
定常領域ドメイン全体の欠失に加えて、本発明の抗体は2、3のまたはさらには単一のアミノ酸の部分的な欠失または置換によって提供され得ることが十分に理解されるであろう。たとえば、CH2ドメインの選択された領域における単一アミノ酸の変異はFc結合を実質的に減らすのに十分であり得、それによって腫瘍の局在化を増やし得る。同様に、調節されるエフェクター機能(たとえば、補体C1Qの結合)を制御する1以上の定常領域ドメインのその部分を単に欠失させることが望ましい可能性がある。定常領域のそのような部分的な欠失は抗体の選択された特徴(血清の半減期)を改善し得る一方で、対象の定常領域に関連する他の望ましい機能はインタクトのままである。さらに、上記について暗に示されるように、開示される抗体の定常領域は、得られる構築物のプロファイルを向上させる1以上のアミノ酸の変異または置換を介して修飾することができる。この点で、保存された結合部位(たとえば、Fc結合)によって提供される活性を崩壊させることが可能である一方で修飾された抗体の立体構造及び免疫原性プロファイルは維持される。ある特定の実施形態は、定常領域への1以上のアミノ酸の付加を含み得、たとえば、エフェクター機能の増減のような望ましい特徴を向上させ、またはさらなる細胞毒素若しくは炭水化物の連結を提供することができる。そのような実施形態では、選択された定常領域ドメインに由来する特定の配列を挿入するまたは反復することが望ましいことであり得る。
【0219】
本発明はさらに、本明細書で言及されるキメラ抗体、ヒト化抗体及びヒト抗体またはそれらの抗体断片に対して実質的に相同である変異体及び等価体を含む。これらは、たとえば、保存的な置換変異、すなわち、類似のアミノ酸による1以上のアミノ酸の置換を含有することができる。たとえば、保存的な置換は、たとえば、別の酸性アミノ酸による酸性アミノ酸1つ、別の塩基性アミノ酸による塩基性アミノ酸1つ、または別の中性アミノ酸による中性アミノ酸1つのような同一一般クラスの範囲内での別のアミノ酸によるアミノ酸の置換を指す。保存的なアミノ酸置換によって意図されるものは当該技術で周知である。
【0220】
本発明のポリペプチドは、ヒトのFOLR1に対する抗体を含む組換えポリペプチド、天然のポリペプチド、または合成のポリペプチド、またはその断片であることができる。本発明の一部のアミノ酸配列はタンパク質の構造または機能に有意に影響することなく変化し得ることが当該技術で認識されるであろう。従って、本発明はさらに、ヒトの葉酸受容体タンパク質に対する抗体の実質的な活性を示す、または抗体の領域を含むポリペプチドの変異、またはその断片を含む。そのような変異体には、欠失、挿入、逆位、反復及び類型置換が含まれる。
【0221】
ポリペプチド及び類似体は、正常ではタンパク質の一部ではない追加の化学部分を含有するようにさらに修飾することができる。これらの誘導体化された部分はタンパク質の溶解性、生物学的半減期または吸収を改善することができる。その部分はタンパク質等の在るべき副作用を軽減するまたは排除することができる。これらの部分の概観はREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,第20版,Mack
Publishing Co.,Easton,PA(2000)にて見いだすことができる。
【0222】
本明細書で記載される単離されたポリペプチドは当該技術で既知の好適な方法によって作出することができる。そのような方法は直接的なタンパク質の合成法から、単離されたポリペプチド配列をコードするDNA配列を構築し、好適な形質転換宿主にてそれらの配列を発現させることまで及ぶ。一部の実施形態では、DNA配列は野生型の当該タンパク質をコードするDNA配列を単離することまたは合成することによる組換え法を用いて構築される。任意で、配列を部位特異的な変異誘発によって変異させ、その機能的類似体を提供することができる。たとえば、Zoellerら,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,81:5662-5066(1984)及び米国特許第4,588,585号を参照のこと。
【0223】
一部の実施形態では、当該ポリペプチドをコードするDNA配列はオリゴヌクレオチド合成機を用いた化学合成によって構築されることになる。そのようなオリゴヌクレオチドは、所望のポリペプチドのアミノ酸配列及び組換えの当該ポリペプチドが産生される宿主細胞にて好まれるそれらのコドンを選択することに基づいて設計することができる。標準の方法を適用して単離された当該ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド配列を合成することができる。たとえば、完全なアミノ酸配列を用いて逆翻訳した遺伝子を構築することができる。さらに、特定の単離されたポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有するDNAオリゴマーを合成することができる。たとえば、所望のポリペプチドの一部をコードする幾つかの小さなオリゴヌクレオチドを合成し、次いで連結することができる。個々のオリゴヌクレオチドは通常、相補性のアセンブリに対して5’または3’のオーバーハングを含有する。
【0224】
(合成、部位特異的な変異誘発または別の方法によって)いったん組み立てられると、特定の単離された当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は発現ベクターに挿入され、所望の宿主におけるタンパク質の発現に適する発現制御配列に操作可能に連結される。適切なアセンブリはヌクレオチドの配列決定、制限マッピング、好適な宿主における生物活性のあるポリペプチドの発現によって確認することができる。当該技術で周知のように、宿主にて形質移入された遺伝子の高レベルの発現を得るために、遺伝子は、選択された発現宿主にて機能的である転写及び翻訳の発現制御配列に操作可能に連結されなければならない。
【0225】
ある特定の実施形態では、組換え発現ベクターを用いて、ヒトのFOLR1に対する抗体またはその断片をコードするDNAを増幅し、発現させる。組換え発現ベクターは、抗FOLR1抗体またはその断片のポリペプチド鎖をコードする合成のまたはcDNAに由来するDNA断片を有し、哺乳類、微生物、ウイルスまたは昆虫の遺伝子に由来する好適な転写または翻訳の調節要素に操作可能に連結される複製可能なDNA構築物である。転写単位は一般に(1)遺伝子発現にて調節の役割を有する遺伝要素(単数)または要素(複数)、たとえば、転写プロモータまたはエンハンサと、(2)mRNAに転写され、タンパク質に翻訳される構造配列またはコーディング配列と、(3)適当な転写及び翻訳の開始及び終結の配列とのアセンブリを含む。そのような調節要素には転写を制御するオペレータ配列を挙げることができる。宿主において複製する能力は普通、複製開始点によって付与され、形質転換体の認識を円滑にする選抜遺伝子をさらに組み込むことができる。DNA領域はそれらが互いに機能的に関連する場合、操作可能に連結される。たとえば、シグナルペプチド(分泌リーダー)のためのDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与する前駆体として発現されるのであればDNAに操作可能に連結され;プロモータは、それが配列の転写を制御するのであればコーディング配列に操作可能に連結され;または、リボソーム結合部位は、それが翻訳を許容するように位置づけられるのであればコーディング配列に操作可能に連結される。酵母発現系での使用が意図される構造要素には、翻訳されたタンパク質の宿主細胞による細胞外分泌を可能にするリーダー配列が含まれる。或いは、リーダー配列または輸送配列なしで組換えタンパク質を発現させる場合、それにはN末端メチオニンが含まれ得る。その後、この残基は発現された組換えタンパク質から任意で切断されて最終産物を提供する。
【0226】
発現制御配列及び発現ベクターの選択は宿主の選択に左右されるであろう。多種多様な発現宿主/ベクターの組み合わせを採用することができる。真核細胞宿主にとって有用な発現ベクターには、たとえば、SV40、ウシパピローマウイルス、アデノウイルス及びサイトメガロウイルスに由来する発現制御配列を含むベクターが挙げられる。細菌宿主にとって有用な発現ベクターには、pCR1、pBR322、pMB9またはそれらの誘導体を含む大腸菌に由来するプラスミド、M13及びフィラメント状一本鎖DNAファージのような広い宿主範囲のプラスミドのような既知の細菌プラスミドが挙げられる。
【0227】
FOLR1結合ポリペプチドまたは抗体(または抗原として使用するFOLR1タンパク質)の発現にとって好適な宿主には、適当なプロモータの制御下での原核細胞、酵母細胞、昆虫細胞または高等真核細胞が挙げられる。原核細胞にはグラム陰性またはグラム陽性の生物、たとえば、大腸菌または桿菌が挙げられる。高等真核細胞には哺乳類起源の樹立された細胞株が挙げられる。無細胞翻訳系も採用され得る。細菌、真菌、酵母及び哺乳類の細胞宿主と共に使用するのに適したクローニングベクター及び発現ベクターは、Pouwelsら(Cloning Vectors:A Laboratory Manual,Elsevier,N.Y.,1985)によって記載されており、その関連する開示は参照によって本明細書に組み入れられる。抗体産生を含むタンパク質産生の方法に関する追加の情報は、そのそれぞれが全体として参照によって本明細書に組み入れられる、たとえば、米国特許出願公開第2008/0187954号、米国特許第6,413,746号及び同第6,660,501号及びWO04009823にて見いだすことができる。
【0228】
種々の哺乳類または昆虫の培養系も有利に用いて組換えタンパク質を発現させる。哺乳類細胞における組換えタンパク質の発現を、そのようなタンパク質が一般に正しく折り畳まれ、適宜修飾され、完全に機能的であるので、実施することができる。好適な哺乳類の宿主細胞株の例には、HEK-293及びHEK-293T、Gluzman(Cell、23:175、1981)によって記載されたサルの腎臓細胞のCOS-7株、及び、たとえば、L細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa及びBHKの細胞株を含む他の細胞株が挙げられる。哺乳類の発現ベクターは、複製開始点のような非転写要素、発現される遺伝子に連結された好適なプロモータとエンハンサ、及び他の5’または3’隣接非転写配列及び5’または3’非翻訳配列、たとえば、必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスのドナーとアクセプターの部位及び転写終結配列を含むことができる。昆虫細胞における非相同のタンパク質の産生用のバキュロウイルス系はLuckow及びSummers,Bio/Technology,6:47(1988)によって概説されている。
【0229】
形質転換された細胞によって産生されたタンパク質を好適な方法に従って精製することができる。そのような標準的な方法には、クロマトグラフィ(たとえば、イオン交換、アフィニティ、及びサイズ決定カラムクロマトグラフィ)、遠心分離、示差溶解性、またはタンパク質精製用の他の常法が挙げられる。たとえば、ヘキサヒスチジン、マルトース結合ドメイン、インフルエンザコート配列及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼのような親和性タグをタンパク質に連結させて適当なアフィニティカラムの通過による容易な精製を可能にすることができる。タンパク質分解、核磁気共鳴及びX線結晶学のような技法を用いて、単離されたタンパク質を物理的に特徴付けることもできる。
【0230】
たとえば、市販のタンパク質濃縮フィルター、たとえば、AmiconまたはMillipore Pelliconの限外濾過ユニットを用いて、培養培地に組換えタンパク質を分泌する系に由来する上清を先ず濃縮することができる。濃縮ステップに続いて、濃縮物を好適な精製マトリクスに適用することができる。或いは、アニオン交換樹脂、たとえば、ペンダントジエチルアミノエチル(DEAE)基を有するマトリクスまたは基質を採用することができる。マトリクスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロースまたはタンパク質精製に一般に採用される他の種類であることができる。或いは、カチオン交換ステップを採用することができる。好適なカチオン交換体にはスルホプロピル基またはカルボキシメチル基を含む種々の不溶性のマトリクスが挙げられる。最終的には、疎水性のRP-HPLC媒体、たとえば、ペンダントメチル基または他の脂肪族基を有するシリカゲルを採用する1以上の逆相高速液体クロマトグラフィ(RP-HPLC)を採用してFOLR1結合作用物質をさらに精製することができる。種々の実施形態では、前述の精製ステップの一部または全部を採用して均質な組換えタンパク質を提供することもできる。
【0231】
たとえば、細胞ペレットからの当初の抽出、その後の1以上の濃縮、塩析、水性イオン交換またはサイズ排除クロマトグラフィのステップによって、細菌培養にて産生された組換えタンパク質を単離することができる。最終精製ステップには高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を採用することができる。凍結融解の繰り返し、超音波処理、機械的粉砕、または細胞溶解剤の使用を含む従来の方法によって、組換えタンパク質の発現に採用された微生物細胞を粉砕することもできる。
【0232】
抗体または他のタンパク質を精製するための当該技術で既知の方法には、たとえば、そのそれぞれが全体として参照によって本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2008/0312425号、同第2008/0177048号及び同第2009/0187005号にて記載されたものも挙げられる。
【0233】
III.ポリヌクレオチド
ある特定の実施形態では、本発明はヒトのFOLR1受容体を特異的に結合するポリペプチドまたはそのようなポリペプチドの断片をコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを包含する。たとえば、本発明はヒトのFOLR1に対する抗体をコードする、またはそのような抗体の断片をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。本発明のポリヌクレオチドは、RNAの形態またはDNAの形態であることができる。DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAが挙げられ、二本鎖または一本鎖であることができ、一本鎖はコーディング鎖または非コーディング(アンチセンス)鎖であることができる。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは1以上の内在性のイントロンを欠くcDNAまたはDNAである。
【0234】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは天然に存在しないポリヌクレオチドである。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは組換えで作出される。
【0235】
ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは単離される。ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは実質的に純粋である。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは天然の成分から精製される。
【0236】
本発明は、配列番号3~38及び59~67から成る群から選択される配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを提供する。提供されるのはまた、配列番号3~38及び59~67に対して少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
【0237】
本発明はさらに、以下の表7及び表8で示されるものから選択される配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【表7】
【表8-1】
【表8-2】
【0238】
提供されるのはまた、配列番号39~44のいずれか1つに対して少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
【0239】
提供されるのはまた、ATCC寄託番号PTA-120196またはPTA-120197を有するハイブリドーマによって産生される抗体の可変軽鎖の配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%同一であるまたは同一である可変軽鎖をコードするポリヌクレオチドである。
【0240】
提供されるのはまた、ATCC寄託番号PTA-120196またはPTA-120197を有するハイブリドーマによって産生される抗体の可変軽鎖をコードする可変軽鎖コード配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%同一であるまたは同一である可変軽鎖コード配列を含むポリヌクレオチドである。
【0241】
提供されるのはまた、ATCC寄託番号PTA-120196またはPTA-120197を有するハイブリドーマによって産生される抗体の可変重鎖の配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%同一であるまたは同一である可変重鎖をコードするポリヌクレオチドである。
【0242】
提供されるのはまた、ATCC寄託番号PTA-120196またはPTA-120197を有するハイブリドーマによって産生される抗体の可変重鎖をコードする可変重鎖コード配列に対して少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%同一であるまたは同一である可変重鎖コード配列を含むポリヌクレオチドである。
【0243】
ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、たとえば、宿主細胞からのポリペプチドの発現及び分泌に役立つポリヌクレオチド(たとえば、細胞からポリペプチドの輸送を制御するための分泌配列として機能するリーダー配列)に同じ読み取りフレームで融合される成熟ポリペプチドのためのコーディング配列を含む。リーダー配列を有するポリペプチドはプレタンパク質であり、宿主細胞によって切断されてポリペプチドの成熟形態を形成するリーダー配列を有することができる。ポリヌクレオチドはまた、成熟タンパク質プラス5’アミノ酸残基であるプロタンパク質もコードすることもできる。プロ配列を有する成熟タンパク質はプロタンパク質であり、タンパク質の不活性形態である。プロ配列がいったん切断されると活性のある成熟タンパク質が残る。
【0244】
ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、たとえば、コードされたポリペプチドの精製を可能にするマーカー配列に同じ読み取りフレームで融合された成熟ポリペプチドのためのコーディング配列を含む。たとえば、マーカー配列は、細菌宿主の場合、pQE-9ベクターによって供給されてマーカーに融合された成熟ポリペプチドの精製を提供するヘキサヒスチジンタグであることができ、またはマーカー配列は、哺乳類宿主(たとえば、COS-7細胞)が使用される場合、インフルエンザ血球凝集素タンパク質に由来する血球凝集素(HA)タグであることができる。
【0245】
本発明はさらに、たとえば、断片、類似体及び誘導体をコードする上述のポリヌクレオチドの変異体に関する。
【0246】
ポリヌクレオチド変異体は、コーディング領域、非コーディング領域またはその双方にて変化を含有することができる。一部の実施形態では、ポリヌクレオチド変異体は、サイレントな置換、付加または欠失を生じる変化を含有するが、コードされるポリペプチドの特性または活性を変化させることはない。一部の実施形態では、ヌクレオチド変異体は遺伝子コードの縮重によるサイレントな置換によって作出される。ポリヌクレオチド変異体は、種々の理由で作出されて、たとえば、コドン発現を特定の宿主に対して最適化することができる(ヒトmRNAにおけるコドンを大腸菌のような細菌宿主によって好まれるものに変える)。
【0247】
本明細書で記載されるポリヌクレオチドを含むベクター及び細胞も提供される。
【0248】
IV.生体試料
生体試料は固定剤で固定されることが多い。ホルマリン(ホルムアルデヒド)及びグルタールアルデヒドのようなアルデヒド固定剤が通常使用される。たとえば、アルコール浸漬(Battifora及びKopinski,J.Histochem.Cytochem.(1986)34:1095)のような他の固定法を用いて固定された組織も好適である。使用される試料はパラフィンに包埋されてもよい。一実施形態では、試料はホルマリン固定され、且つパラフィン包埋される(FFPE)。別の実施形態では、FFPEコア試料について特定の領域を選ぶために分析のための1以上の部分を選択することに先立って、FFPEブロックをヘマトキシリンとエオシンで染色する。これら粒子状物質の検体から組織ブロックを調製する方法は種々の予後因子の以前のIHC試験で使用されており、及び/または当業者に周知である(たとえば、Abbondanzoら,Am.J.Clin.Pathol.1990,May;93(5):698-702;Allredら,Arch.Surg.1990,Jan;125(1):107-13を参照のこと)。
【0249】
手短には、任意のインタクトな臓器または組織をかなり小さな小片に切断し、組織が「固定される」まで種々の時間、種々の固定剤(たとえば、ホルマリン、アルコール等)にてインキュベートしてもよい。試料は実際、生体から外科的に取り出した任意のインタクトな組織であってもよい。組織を、組織病理の研究室で日常使用される器具に適合する理に適った小片に切断してもよい。切断片の大きさは通常、数ミリメートルから数センチメートルに及ぶ。生体試料はまた流体抽出物、血液、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、及び/または脾臓調製物であることができる。
【0250】
V.FOLR1の発現と治療有効性の相関
抗体メイタンシノイド複合体(AMC)IMGN853は、切断可能なスルホ-SPDB(N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルジチオ)-2-スルホブタノエート)リンカーを介して連結されたメイタンシノイド、DM4(N(2’)-デアセチル-N2’-(4-メルカプト-4-メチル-1-オキソペンチル)-メイタンシン)に結合されたFOLR1-結合モノクローナル抗体、huMov19(M9346A)を含む。
IMGN853(huMov19)の抗体配列は配列番号45及び47として以下で提供され、IMGN853及びhuMov19は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2012/0009181号(現在は8,557,966)にて記載されている。
配列番号45-huMov19 vHC
QVQLVQSGAEVVKPGASVKISCKASGYTFTGYFMNWVKQSPGQSLEWIGRIHPYDGDTFYNQKFQGKATLTVDKSSNTAHMELLSLTSEDFAVYYCTRYDGSRAMDYWGQGTTVTVSS
配列番号46-huMov19 vLCv1.00
DIVLTQSPLSLAVSLGQPAIISCKASQSVSFAGTSLMHWYHQKPGQQPRLLIYRASNLEAGVPDRFSGSGSKTDFTLNISPVEAEDAATYYCQQSREYPYTFGGGTKLEIKR
配列番号47-huMov19 vLCv1.60
DIVLTQSPLSLAVSLGQPAIISCKASQSVSFAGTSLMHWYHQKPGQQPRLLIYRASNLEAGVPDRFSGSGSKTDFTLTISPVEAEDAATYYCQQSREYPYTFGGGTKLEIKR
配列番号48-huMov19 vLC CDR1
KASQSVSFAGTSLMH
配列番号49-huMov19 vLC CDR2
RASNLEA
配列番号50-huMov19 vLC CDR3
QQSREYPYT
配列番号51-huMov19 vHC CDR1
GYFMN
配列番号52-huMov19 vHC CDR2-Kabatで定義された
RIHPYDGDTFYNQKFQG
配列番号53-huMov19 vHC CDR2-Abmで定義された
RIHPYDGDTF
配列番号54-huMov19 vHC CDR3
YDGSRAMDY
配列番号55-huMov19 HCアミノ酸配列
QVQLVQSGAEVVKPGASVKISCKASGYTFTGYFMNWVKQSPGQSLEWIGRIHPYDGDTFYNQKFQGKATLTVDKSSNTAHMELLSLTSEDFAVYYCTRYDGSRAMDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号56-huMov19 LCv1.00
DIVLTQSPLSLAVSLGQPAIISCKASQSVSFAGTSLMHWYHQKPGQQPRLLIYRASNLEAGVPDRFSGSGSKTDFTLNISPVEAEDAATYYCQQSREYPYTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号57-huMov19 LCv1.60
DIVLTQSPLSLAVSLGQPAIISCKASQSVSFAGTSLMHWYHQKPGQQPRLLIYRASNLEAGVPDRFSGSGSKTDFTLTISPVEAEDAATYYCQQSREYPYTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号:58-muMov19 vHC CDR2-Kabatで定義された
RIHPYDGDTFYNQNFKD
【0251】
IMGN853は、FOLR1陽性の卵巣癌、非小細胞肺癌、子宮内膜癌、腎臓癌及び他の上皮性悪性腫瘍を含む種々の治療適応について現在臨床開発中である。卵巣癌は、FOLR1の最大の浸透率を示し、IMGN853による治療について主要な適応であると見なされている(Antony,AC.Ann.Rev.Nutr.16:501-21
(1996);Yuan,Yら Hum.Pathol.40(10):1453-1460(2009))。患者の血漿試料にてFOLR1のレベルを測定することはAMC治療に応答する可能性がより高い患者集団を特定するのに役立ち得る。
【0252】
ある特定の実施形態では、本発明は、特に、たとえば、IHCにおいてFOLR1の発現レベルのダイナミック・レンジを検出することができる本明細書で提供される抗体及びその抗原結合断片を用いて、対象にて発現される上昇した発現レベルのFOLR1の故にFOLR1を標的とする抗癌療法に好都合に応答する可能性がある対象を特定する方法を提供する。
【0253】
患者の試料及び異種移植モデルを用いた生体内有効性に対する相関の評価は、治療に応答する可能性がより高い対象を選択するための発現分析の力を明らかにしている。IHCは腫瘍細胞上でのFOLR1の発現に対するスコア:0(発現なし)~3(または3+)(非常に高いレベルの発現)を提供する。異種移植モデルを用いた生体内のデータは、FOLR1の発現についての2または3(または3+)のスコアの試料が、FOLR1免疫複合体の臨床的に関連する用量でFOLR1を標的とする抗癌療法に応答する増加した可能性を有することを明らかにしている(たとえば、そのすべてが全体として参照によって本明細書に組み入れられる米国仮特許出願第61/823,317号及び同第61/828,586号及び国際出願PCT/US2014/037911を参照のこと)。従って、上昇したFOLR1スコアを有する個人の特定は、臨床的に関連する投与量に応答し得る個人を特定するのに役立つことになる。さらに、一層均一なレベルのFOLR1の発現は治療上の利益とのより良好な相関を提供する。従って、均質な染色均一性または増加した染色の不均質な染色均一性との組み合わせは高いFOLR1の発現を示す。たとえば、2ヘテロを超えるスコアはFOLR1治療剤による治療についての患者の選択基準として使用され得る(たとえば、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2012/0282175号を参照のこと)。
【0254】
FOLR1の発現分析は、低いレベルのFOLR1を標的とする抗癌療法(「低用量療法」)が抗腫瘍応答を引き起こすのに有効であり得る患者も特定する。当該技術で十分に理解されているように、化合物は一般に、所望の治療応答を達成する最少の投与量で投与される。このことは臨床的な副作用を生じる治療剤には特に重要である。上昇したFOLR1の発現レベルのそれら対象を認識する能力によってFOLR1を標的とする治療剤の投与量を出来るだけ抑えることが可能になるので、考えられる副作用を減らす一方で治療有効性を維持する。
【0255】
従って、本明細書で提供される抗体及び抗原結合断片は、たとえば、IHCにおいてFOLR1の発現レベルのダイナミック・レンジを検出することが可能であるのでそのような方法での使用に特に有利である。
【0256】
VI.脱落抗原アッセイ
患者の血漿試料にて循環する抗原(脱落抗原)のレベルを測定することは、たとえば、抗体メイタンシノイド複合体(AMC)治療に応答する可能性がより高い患者集団を特定するのに役立ち得る。高いレベルの脱落抗体は治療用抗体の薬物動態に顕著に影響することが報告されている(Tolcher,A.ら 20th Symposium on Molecular Targets and Cancer Therapeutics;October,21-24,2008;Geneva,Switzerland:EORTC-NCI-AACR,p163,#514;Baselga,Jら J.Clin.Oncol.14:737-744(1996))。患者の血漿試料に由来する脱落抗原のレベルは、たとえば、抗原の標的、疾患の適応及び疾患の経過に応じて可変であると思われる。現在、抗FOLR1免疫複合体IMGN853についての疾患の適応における脱落抗原のレベルは不十分にしか調べられていない一方で、固形腫瘍での発現との相関は限定されている。FOLR1の上昇が卵巣腺癌で報告されている一方で、データは、たとえば、小細胞肺癌のような他のFOLR1+腫瘍の適応ではそれは上昇しないことを示唆している(Mantovani,LTら Eur.J.Cancer,30A(3):363-9(1994);Basal,Eら PLoS ONE,4(7):e6292(2009))。本方法は、本明細書で提供され、脱落FOLR1のダイナミック・レンジを検出することが可能である抗体及びその抗原結合断片を用いて高い葉酸の存在下でFOLR1受容体の検出を可能にする。以前のアッセイはアッセイの設計にてMov19を利用していた。IMGN853はMov19を含有し、一実施形態では、本発明の標的療法であるので、Mov19の存在下または非存在下で方法がFOLR1を検出することは必須である。Mov19を利用する以前のアッセイは競合効果を有し、IMGN853治療を受けている患者にてFOLR1を有意に少なく検出するまたはまったく検出しないであろう。
【0257】
一実施形態では、ヒトを供給源とする流体試料におけるFOLR1を検出する本方法は従来のサンドイッチELISA方式を使用する。一実施形態では、方法は固相支持体に連結されたFOLR1に対する捕捉試薬(すなわち、抗体)を使用する。一実施形態では、固相支持体はマイクロタイタープレートである。これに試料(腹水液、血漿等)を希釈せずに加え、第1の捕捉試薬の結合を妨害しない異なる検出剤(異なる抗体)によって検出する。次いで、第1の検出剤に1回を超えて結合するので検出のシグナルを増幅する二次検出剤(ビオチン/ストレプトアビジン、抗ヒト二次モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体等)の使用を介して検出剤を検出する。次いで幾つかの他の手段(たとえば、TMB/ペルオキシダーゼ、シンチレーション計数、蛍光プローブ等)の使用によって二次検出剤を定量する。さらに、アッセイはFOLR1を検出し、Mov19、IMGN853、他のFOLR1ファミリーメンバーまたは葉酸の存在によって否定的な影響を受けない。
【0258】
本発明のアッセイには、FOLR1に基づく治療法を受けるのに適格な患者を選択するアッセイ及び患者の応答をモニターするアッセイの双方が含まれる。応答予測のアッセイが治療法選択の前に実行され、FOLR1のレベルは治療法の決定に影響し得る。患者の応答をモニターすることについては、アッセイは治療法の開始時に実行されて試料におけるFOLR1のベースライン(または所定の)レベルを確立する。次いで同じ試料をアッセイしてFOLR1のレベルをベースラインまたは所定のレベルと比較する。本明細書で使用されるとき、用語「所定のレベル」は一般に、所定のレベルに対してアッセイ結果を比較することによって診断結果を評価するのに使用されるアッセイのカットオフ値を指し、所定のレベルはすでに種々の臨床パラメータと結び付けられまたは関連している(たとえば、薬剤で治療されている対象が薬剤の有効な血中レベルを達成しているかどうかをモニターすること、抗癌剤による癌の治療を受けている対象の応答をモニターすること、腫瘍の治療を受けている対象における前記腫瘍の応答をモニターすること等)。所定のレベルは絶対的な値であってもよいし、または治療の開始に先立って患者から得た値を差し引くことによって正規化された値であってもよい。使用することができる所定のレベルの例は、任意で1以上の疾患または病気を患っていてもよい1以上の対象から得られるベースラインレベルである。アッセイした生体マーカーのレベルのベースラインまたは所定のレベルとの比較(または情報解析)は、アッセイが行われる機器(たとえば、コンピュータプラットホーム)の一部であるまたはそれと互換性であるソフトウエアプログラムまたは知能システムのような自動システムによって行うことができる。或いは、比較または情報解析は医師によって行われ得る。一実施形態では、レベルが同じままであるまたは低下する場合、治療法は有効であり得、継続され得る。ベースラインレベル(または所定のレベル)を超える有意な増加が生じた場合、患者は応答していない可能性がある。別の実施形態では、脱落FOLR1レベルの増加は、細胞死の増加及び脱落FOLR1の解放の増加を示し得る。この実施形態では、脱落FOLR1の上昇は治療の有効性を示す。
【0259】
本発明のアッセイは任意のタンパク質アッセイ法によって行うことができる。本発明で有用なタンパク質アッセイ法は当該技術で周知であり、それにはFOLR1の発現されたタンパク質または断片への特異的な未標識または標識抗体またはタンパク質の結合が関与する免疫アッセイ法が挙げられる。有用な免疫アッセイ法には、Biacore、時間分解蛍光エネルギー移動(TR-FRET)、ELISA方式(サンドイッチ、順行及び逆行の競合阻害)または蛍光偏光方式のような当該技術で既知の方式を用いて実施される溶液相アッセイ、及び免疫組織化学法のような固相アッセイの双方が含まれる。本明細書で提供されるFOLR1抗体及びその抗原結合断片は、たとえば、それらがFOLR1のダイナミック・レンジを検出することができるので、これらの免疫アッセイ法には特に有用である。
【0260】
VII.循環する腫瘍細胞のアッセイ
本明細書で記載される抗FOLR1抗体は循環している腫瘍細胞のアッセイにてFOLR1を検出するのに使用することもできる。循環している腫瘍細胞(CTC)は腫瘍から血管系に脱落して血流を循環する細胞である。循環系に存在するCTCは極めてすくない数である。一般に、当該技術で既知の種々の技法によってCTCは患者の血液または血漿から濃縮される。フローサイトメトリーに基づく方法及びIHCに基づく方法を含むが、これらに限定されない当該技術で既知の方法を用いて特異的なマーカーについてCTCを染色することができる。CTCは腫瘍細胞に独特のタンパク質マーカーについて染色されてもよく、それは正常な血液細胞からのCTCの特定及び区別を可能にする。CTCはまた、2.1、5.7及び9.20を含むが、これらに限定されない本明細書で提供される抗体を用いてFOLR1について染色することもできる。CTCの解析には、CTCの数及び/またはFOLR1陽性のCTCの数の定量的解析も含まれ得る。本明細書で記載されるFOLR1抗体を用いて癌を有する対象から単離されたCTCを染色してCTCに存在するFOLR1を測定することができる。FOLR1を発現しているCTCの増加は、FOLR1に基づいた治療法に応答する可能性がある癌を有する対象を特定するのに役立ち、またはFOLR1抗体若しくは免疫複合体による治療計画の最適化を可能にすることができる。CTCFOLR1の定量は、腫瘍のステージ、治療法への応答、及び/または疾患の進行に関する情報を提供することができる。それは、予後診断、予測または薬物力学の生体マーカーとして使用することもできる。加えて、本明細書で提供される抗体を用いてFOLR1についてCTCを染色することは、単独で、または固形生検試料の追加の腫瘍マーカーの解析と組み合わせて液体生検として使用することができる。
【0261】
VIII.検出
本発明はさらに、一般的にはモノクローナル型の、少なくとも1つの作用物質に連結されて検出抗体複合体を形成する、FOLR1に対する抗体を提供する。診断剤としての抗体分子の有効性を高めるために、少なくとも1つの所望の分子または部分を連結するまたは共有結合するまたは複合体形成することが定型である。そのような分子または部分は少なくとも1つのレポーター分子であってもよいが、これらに限定されない。レポーター分子はアッセイを用いて検出され得る任意の部分として定義される。抗体に結合されているレポーター分子の非限定例には、酵素、放射性標識、ハプテン、蛍光標識、リン光性分子、化学発光分子、発光団、発光分子、光親和性分子、着色粒子、及び/またはビオチンのようなリガンドが挙げられる。
【0262】
抗体複合体のある特定の例は本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片が検出可能な標識に連結される複合体である。「検出可能な標識」はその特異的な機能特性及び/または化学的特徴ゆえに検出され得る化合物及び/または要素であり、その使用は、それらが連結される抗体または抗原結合断片が検出され、及び/または所望であればさらに定量されるのを可能にする。
【0263】
多数の適当な造影剤が、抗体へのその連結方法ならびに当該技術で既知である(たとえば、それぞれ参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第5,021,236号;同第4,938,948号;及び同第4,472,509号を参照のこと)。使用される画像化部分はたとえば、常磁性体イオン、放射性同位元素、蛍光色素、NMRで検出可能な物質及び/またはX線画像化であることができる。
【0264】
結合作用物質(たとえば、抗体)複合体として使用するために企図される例となる蛍光標識には、たとえば、Alexa350、Alexa430、Alexa488、AMCA、BODIPY630/650、BODIPY650/665、BODIPY-FL、BODIPY-R6G、BODIPY-TMR、BODIPY-TRX、スケードブルー、 Cy3、Cy5、6-FAM、Dylight488、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、HEX、6-JOE、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴングリーン514、パシフィックブルー、フィコエリスリン、REG、ローダミングリーン、ローダミンレッド、テトラメチルローダミン(TMR)、レノグラフィン、ROX、TAMRA、TET、テトラメチルローダミン、テキサスレッド、及びこれらの標識の誘導体(すなわち、ハロゲン化した類似体、結合のためにイソチオシアネートまたは他のリンカーで修飾したもの等)が挙げられる。例となる放射性標識はトリチウムである。
【0265】
本発明で企図される抗体または抗原結合断片の検出複合体には試験管内で使用するためものが挙げられ、その際、抗体または断片は、発色性基質と接触した際、着色された生成物を生成する二次結合リガンド及び/または酵素(酵素タグ)に連結される。本明細書で提供されるFOLR1抗体及びその抗原結合断片は、たとえば、それらがFOLR1のダイナミック・レンジを検出することができるので複合体の方法に特に有用である。好適な酵素の例には、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、(西洋ワサビ)水素ペルオキシダーゼ、及び/またはグルコースオキシダーゼが挙げられる。一部の実施形態では、二次結合リガンドはビオチン及び/またはアビジン及びストレプトアビジン化合物である。そのような標識の使用は当業者に周知であり、たとえば、それぞれ参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第3,817,837号;同第3,850,752号;同第3,939,350号;同第3,996,345号;同第4,277,437号;同第4,275,149号及び同第4,366,241号にて記載されている。
【0266】
アジド基を含有する分子を用いて低強度の紫外線によって生成される反応性ニトレン中間体を介してタンパク質に対する共有結合を形成してもよい(Potter及びHaley,1983)。特に、プリンヌクレオチドの2-及び8-アジド類似体を部位特異的なリンプローブとして用いて粗細胞抽出物にてヌクレオチド結合タンパク質を特定している(Owens及びHaley,1987;Athertonら,1985)。また、2-及び8-アジドヌクレオチドを用いて精製タンパク質のヌクレオチド結合ドメインをマッピングしており(Khatoonら,1989;Kingら,1989;及びDholakiaら,1989)、抗体結合作用物質として使用することができる。
【0267】
抗体を複合体部分に連結するまたは結合するための幾つかの方法が当該技術で既知である。一部の連結方法には、結合作用物質(たとえば、抗体)に連結される、たとえば、無水ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA);エチレントリアミンテトラ酢酸;N-クロロ-p-トルエンスルホンアミド;及び/またはテトラクロロ-3α-6α-ジフェニルグリコウリル-3のような有機キレート剤を採用する金属キレート錯体の使用が関与する(それぞれ参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第4,472,509号及び同第4,938,948号)。たとえば、グルタールアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩のようなカップリング剤の存在下でモノクローナル抗体を酵素と反応させてもよい。フルオレセインマーカーを伴ったタンパク質結合(たとえば、抗体)複合体は、それらのカップリング剤の存在下でまたはイソチオシアネートとの反応によって調製される。米国特許第4,938,948号では、たとえば、モノクローナル抗体を用いて乳癌の画像化が達成され、たとえば、メチル-p-ヒドロキシベンジミデートまたはN-スクシンイミジル-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートのようなリンカーを用いて検出可能な画像化部分を抗体に結合させる。
【0268】
他の実施形態では、抗体結合部位を変えない反応条件を用いて免疫グロブリンのFc領域におけるスルフヒドリル基を選択的に導入することによる免疫グロブリンの誘導体化が企図される。この方法に従って作出された抗体複合体は改善された寿命、特異性及び感受性を示すことが開示されている(参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第5,196,066号)。レポーターまたはエフェクター分子がFc領域における炭水化物残基に結合されるエフェクターまたはレポーター分子の部位特異的な連結も文献(O’Shannessyら,1987)にて開示されている。
【0269】
本発明の他の実施形態では、免疫グロブリンはトリチウムのような核種によって放射性標識される。追加の実施形態では、ナノ金粒子(たとえば、約0.5nm~40nmのサイズ)及び/または量子ドット(Hayward,Calif.)が採用される。
【0270】
サンドイッチアッセイ方式を使用する場合、捕捉抗体は標識されないであろう。検出抗体は直接標識されるであろう、または第1の抗体に向けられた第2の標識された抗体のモル過剰での添加(過剰な検出抗体を洗い流した後)によって間接的に検出されるであろう。
【0271】
検出抗体に使用される標識は、FOLR1抗体の結合を妨害しない任意の検出可能な官能基である。好適な標識の例は、直接検出され得る部分、たとえば、蛍光色素標識、化学発光標識及び放射性標識ならびに検出されるには反応させなければならない、または誘導体化されなければならない酵素のような部分を含む、免疫アッセイでの使用で知られる多数の標識である。そのような標識の例には、放射性同位元素32P、14C、125I、3H、及び131I、蛍光団、たとえば、希土類キレート剤またはフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、たとえば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖類オキシダーゼ、たとえば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸脱水素酵素、複素環オキシダーゼ、たとえば、ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ、HRPのような色素前駆体を酸化するための過酸化水素を用いる酵素を伴ったもの、ラクトペルオキシダーゼ、またはミクロペルオキシダーゼ、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、MUGを伴ったビオチン/ストレプトアビジン-β-ガラクトシダーゼ、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定な遊離のラジカル等が挙げられる。本明細書で言及されるように、蛍光分析による検出は一例である。
【0272】
これらの標識をタンパク質またはポリペプチドに共有結合する従来の方法が利用可能である。たとえば、ジアルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミド、ビス-イミデート、ビス-ジアゾ化ベンジジン等のようなカップリング剤を用いて、本明細書で記載される蛍光標識、化学発光標識及び酵素標識で抗体にタグを付けてもよい。たとえば、米国特許第3,940,475号(蛍光分析)及び同第3,645,090号(酵素);Hunterら Nature,144:945(1962);Davidら Biochemistry,13:1014-1021(1974);Painら J.Immunol.Methods,40:219-230(1981);及びNygren,J.Histochem.and Cytochem.30:407-412(1982)を参照のこと。ある特定の実施形態では、本明細書の標識は、増幅及び感度を8pg/mLまで高める蛍光、さらに好ましくはシグナルを増幅するためのストレプトアビジン-β-ガラクトシダーゼ及びMUGを伴ったビオチンである。ある特定の実施形態では、たとえば、検出抗体がビオチン化され、検出手段がアビジンまたはストレプトアビジン/ペルオキシダーゼと3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジンである比色分析標識が使用される。
【0273】
酵素を含むそのような標識の抗体への結合は免疫アッセイ法の当業者にとって標準の操作手順である。たとえば、O’Sullivanら.”Methods for the
Preparation of Enzyme-antibody Conjugates for Use in Enzyme Immunoassay,”in Methods in Enzymology,ed.J.J.Langone及びH.Van
Vunakis,Vol.73(Academic Press,New York,N.Y.,1981),pp.147-166を参照のこと。
【0274】
最後の標識抗体の添加に続いて、洗浄を介して過剰な未結合の標識抗体を取り除き、次いで標識に適した検出方法を用いて結合した標識の量を測定し、生体試料における脱落FOLR1の量によって測定された量を補正することによって、結合した抗体の量を決定する。たとえば、酵素の場合、発色し、測定した色の量が存在する脱落FOLR1の量の直接的な測定であろう。特に、HRPが標識であるならば、450nmの吸光度で基質、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジンを用いて色を検出することができる。
【0275】
IX.基質及び指示薬
FOLR1の検出について基質及び指示薬の使用が企図される。
【0276】
西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)は、過酸化水素と先ず複合体を形成し、次いでそれを分解させ、水と原子酸素を生じる酵素である。多くの他の酵素のように、HRP及び一部のHRP様の活性は過剰な基質によって阻害することができる。HRPと過剰な過酸化水素との間で形成された複合体は触媒的に不活性であり、電子供与体(たとえば、発色性基質)の非存在下で可逆的に阻害される。内在性のHRP活性のクエンチをもたらすのは、過剰な過酸化水素と電子供与体の非存在である。アッセイ系で使用されると、HRPは、定義された基質を活性化された色原体に変換するので色変化を生じるために使用することもできる。HRP酵素は、当該技術で既知である多数の方法によって抗体、ペプチド、ポリマーまたは他の分子に結合することができる。HRPと抗体の混和物を含有する溶液にグルタールアルデヒドを添加することは、酵素以外に互いに結合されるさらに多くの抗体分子を生じる。2ステップ手順では、HRPは先ず二官能性試薬と反応する。第2のステップで、活性化されたHRPのみを抗体と混和し、はるかに多くの効率的な標識を生じ、重合を生じない。HRPはまた、2ステップグルタールアルデヒド手順を用いて(ストレプト)アビジンにも結合される。この形態は、たとえば、LABとLSABが基質である手順で使用される。ビオチンとの結合も、ビオチンがHRP酵素のイプシロンアミノ基と反応し得る前に、それが先ずビオチニル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルまたはビオチンヒドラジドに誘導体化されなければならないので、2ステップが関与する。
【0277】
3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)はアルコール及び他の有機溶媒に高度に不溶
性である茶色の最終生成物を生じる、HRPのような酵素の基質である。DABの酸化は重合も引き起こし、四酸化オスミウムと反応する能力を生じるので染色強度及び電子密度を高める。重合したDABの光学密度を強化するのに使用される幾つかの金属及び方法のうちで、硫化銀と組み合わせた塩化金が最も上手く行くと思われる。
【0278】
3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)はHRPのような酵素の基質であり、酸化の際、アルコールに可溶性である深紅色の最終生成物を形成する。従って、AECで処理される検体はアルコールまたはアルコール性溶液(たとえば、Harrisのヘマトキシリン)に浸漬してはならない。代わりに、水性の対比染色及び封入剤が使用されるべきである。
【0279】
4-クロロ-1-ナフトール(CN)は、青色の最終生成物として沈殿する、HRPのような酵素の基質である。CNはアルコール及び他の有機溶媒に可溶性なので、検体は脱水してはならず、アルコール性対比染色にさらしてはならず、有機溶媒を含有する封入剤でカバーグラスをかけてはならない。DABとは異なって、CNは沈殿の部位から拡散する傾向がある。
【0280】
p-フェニレンジアミンジヒドロ塩化物/ピロカテコール(Hanker-Yates試薬)は、アルコール及び他の有機溶媒に不溶性である青黒色の反応生成物を生じる、HRPのような酵素の基質である。重合したDABのように、この反応生成物は、オスミン酸によって染色することができる。免疫ペルオキシダーゼ法におけるHanker-Yates試薬によって様々な結果が達成されている。
【0281】
仔ウシ腸管アルカリホスファターゼ(AP)(分子量100kD)はP-0結合を切断することによって有機エステルから(加水分解により)リン酸基を取り外し、移動させる;中間体酵素と基質の結合が束の間に形成される。APの主要な金属活性化因子はMg++、Mn++及びCa++である。
【0282】
APは、非標識のアルカリホスファターゼ/抗アルカリホスファターゼ(APAAP)法の公開まで免疫組織化学法ではあまり使用されていなかった。この手順で利用される可溶性の免疫複合体はおよそ560kDの分子量を有する。ペルオキシダーゼ/抗ペルオキシダーゼ(PAP)法に比べたAPAAP法の主な利点は内在性のペルオキシダーゼ活性によってもたらされる妨害の欠如である。内在性のペルオキシダーゼは過酸化水素の希釈溶液によって遮断することができる。PAP染色の際の内在性ペルオキシダーゼ活性に対する妨害の可能性のために、血液及び骨髄の塗抹標本で使用するにはAPAAP法が推奨される。骨、腎臓、肝臓及び一部の白血球に由来する内在性のアルカリホスファターゼ活性は、5mMがさらに有効であることが見いだされているが、1mMのレバミソールの基質溶液への添加によって阻害することができる。腸管アルカリホスファターゼはレバミソールによって適当には阻害されない。
【0283】
免疫アルカリホスファターゼ染色法では、酵素はリン酸ナフトールエステル(基質)をフェノール化合物とリン酸イオンに加水分解する。フェノールは無色のジアゾニウム塩(色原体)に結合して不溶性の着色したアゾ色素を生じる。基質と色原体の幾つかの異なる組み合わせが上手く使用されている。
【0284】
ナフトールAS-MXリン酸AP基質は酸の形態でまたはナトリウム塩として使用することができる。発色性基質、ファストレッドTR及びファストブルーBBはそれぞれ明るい赤色または青色の最終生成物を生じる。双方ともアルコール性溶媒及び他の有機溶媒に可溶性なので、水性の封入剤が使用されなければならない。細胞塗抹標本を染色する場合、ファストレッドTRが好まれる。
【0285】
追加の例となる基質には、ナフトールAS-BIリン酸、ナフトールAS-TRリン酸、及び5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシルリン酸(BCIP)が挙げられる。他の考えられる色原体には、たとえば、ファストレッドLB、ファストガーネットGBC、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)及びヨードニトロテトラゾリウムバイオレット(INT)が挙げられる。
【0286】
X.免疫検出法
その上さらなる実施形態では、本発明は、本発明によって企図されるようなリガンドのような生物成分を結合する、精製する、取り除く、定量する及び/またはさもなければ一般に検出するための免疫検出法に関する。本発明に従って調製される抗体が採用されてもよい。一部の免疫検出法には少し記述するだけでも、免疫組織化学法、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射性免疫アッセイ(RIA)、免疫放射測定アッセイ、蛍光免疫アッセイ、化学発光アッセイ、生物発光アッセイ、及びウエスタンブロットが挙げられる。種々の有用な免疫検出法のステップは、たとえば、それぞれ参照によって本明細書に組み入れられるDoolittle,M.H.及びBen-Zeev,O,Methods Mol.Biol.1999;109:215-37;Gulbis,B及びGaland,P,Hum.Pathol.1993,Dec;24(12):1271-85;並びにDe Jager,Rら,Semin.Nucl.Med.1993,Apr;23(2):165-79のような科学文献に記載されている。
【0287】
一般に、免疫結合法には、リガンドのタンパク質、ポリペプチド及び/またはペプチドを含むことが疑われる試料を入手することと、場合によっては免疫複合体の形成を可能にするのに有効な条件下で本発明に従って第1のリガンド結合作用物質(たとえば、抗リガンド抗体)に試料を接触させることとが含まれる。
【0288】
抗原の検出という点で、分析される生体試料は、その中でFOLR1を検出することが望ましい、たとえば、流体抽出物、血液、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、組織切片または組織検体、ホモジネートした組織抽出物、生検吸引物、細胞、分離した及び/または精製した形態のFOLR1含有組成物、または任意の生物流体のような任意の試料であってもよい。一部の実施形態では、血液、血漿またはリンパ試料または抽出物が使用される。
【0289】
免疫複合体(一次免疫複合体)の形成を可能にするのに十分な時間、有効な条件下で抗体に選択した生体試料を接触させることは一般に、試料に抗体組成物を単に加え、抗体が存在するリガンドタンパク質抗原との免疫複合体を形成する、すなわち、それに結合するのに十分な長い時間、混合物をインキュベートすることである。この時間の後、たとえば、組織切片、ELISAプレート、ドットブロットまたはウエスタンブロットのような試料/抗体の組成物を一般に洗浄して非特異的に結合した抗体種を取り除き、一次免疫複合体の中で特異的に結合した抗体だけが検出されるようにする。
【0290】
一般に、免疫複合体形成の検出は当該技術で周知であり、多数のアプローチの適用を介して達成し得る。これらの方法は一般に、たとえば、放射性の、蛍光の、生物学的な及び酵素のタグのような標識またはマーカーの検出に基づく。そのような標識の使用に関する米国特許には、それぞれ参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第3,817,837号;同第3,850,752号;同第3,939,350号;同第3,996,345号;同第4,277,437号;同第4,275,149号及び同第4,366,241号が挙げられる。当然、当該技術で既知であるように、たとえば、二次抗体及び/またはビオチン/アビジンリガンド結合のような二次リガンド結合の配置を介して追加の利点を見いだし得る。
【0291】
検出で採用される抗リガンド抗体はそれ自体、検出可能な標識に連結されてもよく、その際、この標識が単純に検出され、それによって一次免疫複合体の量を測定することが可能になる。或いは、一次免疫複合体の中で結合するようになる第1の抗体が抗体に対する結合親和性を有する第2の結合作用物質によって検出されてもよい。この場合、第2の結合作用物質は検出可能な標識に連結されてもよい。第2の結合作用物質はそれ自体抗体であることが多いので、「二次抗体」と呼ばれてもよい。二次免疫複合体の形成を可能にするのに十分な時間、有効な条件下で一次免疫複合体を標識された二次の結合作用物質または抗体と接触させる。次いで二次免疫複合体を一般に洗浄して非特異的に結合した標識された二次抗体または二次リガンドを取り除き、次いで二次免疫複合体における残りの標識を検出する。
【0292】
さらなる方法には、2ステップアプローチによる一次免疫複合体の検出が含まれる。抗体に対する結合親和性を有する抗体のような第2の結合作用物質を用いて本明細書で記載されるような二次免疫複合体を形成する。洗浄した後、再び免疫複合体(三次免疫複合体)の形成を可能にするのに十分な時間、有効な条件下で第2の抗体に対する結合親和性を有する第3の結合作用物質または抗体に二次免疫複合体を接触させる。第3のリガンドまたは抗体を検出可能な標識に連結させて、こうして形成される三次免疫複合体の検出を可能にする。これが所望であるならば、この系はシグナル増幅を提供し得る。
【0293】
別の実施形態では、ビオチン化されたモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を用いて標的抗原を検出し、次いで第2ステップの抗体を用いて複合体化されたビオチンに連結されたビオチンを検出する。その方法では、調べられる試料は先ず第1ステップの抗体を含む溶液にてインキュベートされる。標的抗原が存在するならば、抗体の一部は抗原に結合してビオチン化された抗体/抗原の複合体を形成する。次いでストレプトアビジン(またはアビジン)、ビオチン化DNA及び/または相補性のビオチン化DNAの連続溶液におけるインキュベートによって抗体/抗原の複合体を増幅し、各ステップは抗体/抗原の複合体に追加のビオチン部位を付加する。好適なレベルの増幅が達成されるまで増幅ステップを繰り返し、その時点でビオチンに対する第2ステップの抗体を含む溶液にて試料をインキュベートする。発色性基質を用いた組織酵素学により抗体/抗原の複合体の存在を検出するのに使用することができる、たとえば、酵素によって第2ステップの抗体を標識する。好適な増幅に伴って、肉眼的に眼に見える複合体を作出することができる。
【0294】
一実施形態では、免疫学的な検出には免疫組織化学法(IHC)が使用される。IHCを用いて、プローブ、たとえば、抗FOLR1抗体により試料を標的とすることによって試料におけるFOLR1の検出を達成することができる。プローブは検出可能な標識に直接または間接的に連結することができ、または検出可能な標識に直接または間接的に連結される別のプローブによって検出することができる。
【0295】
一部の実施形態では、IHC、たとえば、較正IHCはタンパク質発現の異なるレベル間を区別することができる。一部の実施形態では、IHCは、低いFOLR1発現、中程度のFOLR1発現または高いFOLR1発現を有する試料について染色強度を区別することができる。
【0296】
一実施形態では、FOLR1の免疫学的な検出(免疫組織化学法による)は強度及び均一性(染色された細胞の比率-膜だけ)の双方についてスコア化される。強度についてのFOLR1発現の相対的スコアは、0:陰性、0~1:非常に弱い、1:弱い、1~2:弱い~中程度、2:中程度、2~3:中程度~強い、3:強い、3+:非常に強いとして相互に関連する。定量的にスコア0は膜染色が認められないことを表す。スコア1はかすかな/どうにか知覚できる膜染色が検出されることを表す。スコア2については、弱い~中程度の完全な膜染色が認められる。最後に、スコア3(または3+)は、中程度~完全な膜染色が認められることを表す。FOLR1発現についての0または1のスコアのそれら試料は上昇したFOLR1発現を有さないことを特徴とし得るのに対して2または3のスコアを持つ試料はFOLR1を過剰発現するまたは上昇したFOLR1を有することを特徴とし得る。別の実施形態では、本明細書で提供される抗体、その抗原結合断片またはポリペプチドを用いて、FOLR1発現について0のスコアを持つ試料は上昇したFOLR1発現を有さないことを特徴とすることができ、1のスコアを持つ試料はFOLR1の増加した発現を有することを特徴とすることができ、2または3のスコアを持つ試料はFOLR1を過剰発現するまたは上昇したFOLR1を有することを特徴とすることができる。
【0297】
FOLR1を過剰発現している試料は、細胞当たり発現されるFOLR1分子のコピーの数または細胞当たり結合する抗体(ABC)の数に相当する免疫組織化学的スコアによっても格付けすることができ、生化学的に測定することができる。FOLR1の均一性(パーセント細胞膜染色)についての相対的なスコアは以下のとおりである:陰性=0%、巣状≦25%、不均質(ヘテロ)=25~75%及び均質(ホモ)≧75%。
【0298】
一実施形態では、FOLR1の免疫学的な検出(免疫組織化学法による)はHスコアを用いてスコア化される。Hスコアは、染色強度のスコア(0が染色なしを表し、3が強い染色を表す0~3)を膜染色について陽性である(すなわち、均一性)細胞の比率と組み合わせる。Hスコアは以下のように算出することができる。
Hスコア=[0*(強度0での細胞染色の比率]+[1*(強度1での細胞染色の比率]+[2*(強度2での細胞染色の比率]+[3*(強度3での細胞染色の比率]。従って、Hスコアは0(細胞膜染色なし)から300(強度3にてすべての細胞膜が染色)までに及ぶことができる。
【0299】
一実施形態では、癌を有する対象は、対象に由来する腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも50である場合、抗FOLR1治療計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。一実施形態では、癌を有する対象は、対象に由来する腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも75である場合、抗FOLR1治療計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。一実施形態では、癌を有する対象は、対象に由来する腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも100である場合、抗FOLR1治療計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。一実施形態では、癌を有する対象は、対象に由来する腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも125である場合、抗FOLR1治療計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。一実施形態では、癌を有する対象は、対象に由来する腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも150である場合、抗FOLR1治療計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。一実施形態では、癌を有する対象は、対象に由来する腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも175である場合、抗FOLR1治療計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。一実施形態では、癌を有する対象は、対象に由来する腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも200である場合、抗FOLR1治療計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、癌を有する対象は、対象に由来する腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも225である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、癌を有する対象は、対象に由来する腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも250である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、癌を有する対象は、対象に由来する腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも275である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、癌を有する対象は、対象に由来する腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも300である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。
【0300】
別の実施形態では、卵巣癌を有する対象は、対象に由来する卵巣腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが75~300である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、卵巣癌を有する対象は、対象に由来する卵巣腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも75である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、卵巣癌を有する対象は、対象に由来する卵巣腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも100である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、卵巣癌を有する対象は、対象に由来する卵巣腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも125である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、卵巣癌を有する対象は、対象に由来する卵巣腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも150である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、卵巣癌を有する対象は、対象に由来する卵巣腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも175である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、卵巣癌を有する対象は、対象に由来する卵巣腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも200である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、卵巣癌を有する対象は、対象に由来する卵巣腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも225である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、卵巣癌を有する対象は、対象に由来する卵巣腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも250である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、卵巣癌を有する対象は、対象に由来する卵巣腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも275である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、卵巣癌を有する対象は、対象に由来する卵巣腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも300である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。
【0301】
別の実施形態では、NSCLCを有する対象は、対象に由来するNSCLC腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが50~300である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、NSCLCを有する対象は、対象に由来するNSCLC腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも50である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、NSCLCを有する対象は、対象に由来するNSCLC腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも75である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、NSCLCを有する対象は、対象に由来するNSCLC腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも100である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、NSCLCを有する対象は、対象に由来するNSCLC腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも125である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、NSCLCを有する対象は、対象に由来するNSCLC腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも150である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、NSCLCを有する対象は、対象に由来するNSCLC腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも175である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、NSCLCを有する対象は、対象に由来するNSCLC腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも200である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、NSCLCを有する対象は、対象に由来するNSCLC腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも225である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、NSCLCを有する対象は、対象に由来するNSCLC腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも250である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、NSCLCを有する対象は、対象に由来するNSCLC腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも275である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、NSCLCを有する対象は、対象に由来するNSCLC腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも300である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。
【0302】
別の実施形態では、子宮内膜癌を有する対象は、対象に由来する子宮内膜腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが50~300である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、子宮内膜癌を有する対象は、対象に由来する子宮内膜腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも50である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、子宮内膜癌を有する対象は、対象に由来する子宮内膜腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも75である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、子宮内膜癌を有する対象は、対象に由来する子宮内膜腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも100である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、子宮内膜癌を有する対象は、対象に由来する子宮内膜腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも125である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、子宮内膜癌を有する対象は、対象に由来する子宮内膜腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも150である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、子宮内膜癌を有する対象は、対象に由来する子宮内膜腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも175である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、子宮内膜癌を有する対象は、対象に由来する子宮内膜腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも200である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、子宮内膜癌を有する対象は、対象に由来する子宮内膜腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも225である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、子宮内膜癌を有する対象は、対象に由来する子宮内膜腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも250である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、子宮内膜癌を有する対象は、対象に由来する子宮内膜腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも275である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。別の実施形態では、子宮内膜癌を有する対象は、対象に由来する子宮内膜腫瘍試料におけるFOLR発現についてのHスコアが少なくとも300である場合、抗FOLR1投薬計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。
【0303】
例として、卵巣癌を有する対象におけるHスコアは以下のとおり:
Hスコア=(強度0にて75%)+(強度1にて0%)+(強度2にて0%)+(強度3にて25%)=75;または
Hスコア=(強度0にて0%)+(強度1にて75%)+(強度2にて0%)+(強度3にて25%)=150であってもよい。
別の例では、子宮内膜癌を有する対象におけるHスコアは以下のとおり:
Hスコア=(強度0にて75%)+(強度1にて0%)+(強度2にて25%)+(強度3にて0%)=50;または
Hスコア=(強度0にて0%)+(強度1にて75%)+(強度2にて25%)+(強度3にて0%)=125であってもよい。
上記4つの例すべてにおいて、対象は抗FOLR1治療計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定され得る。
【0304】
一実施形態では、FOLR1の免疫学的な検出(免疫組織化学法による)は試料全体にわたるパーセント陽性と強度を用いてスコア化される。この実施形態では、抗FOLR1治療計画による治療のための選択は、染色強度(たとえば、1、2または3)及び染色均一性(たとえば、均質または不均質(表11を参照))の双方を反映する特定されたレベルで膜FOLR1を発現することが見いだされる試料における細胞の比率に基づく。たとえば、少なくとも25%(すなわち、25~75%または75%超)の3でFOLR1陽性に染まる細胞を有する試料は、「3ヘテロ」及び「3ホモ」またはまとめて「3で少なくとも25%陽性」として特徴付けられ得る。
【0305】
一実施形態では、卵巣癌を有する対象は、対象に由来する腫瘍試料におけるFOLR1膜発現の少なくとも25%がIHCによる3の強度スコアを有する場合、抗FOLR1治療計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。一実施形態では、IHCはFOLR1-2.1抗体を用いて実施される。
【0306】
別の実施形態では、子宮内膜癌を有する対象は、対象に由来する腫瘍試料におけるFOLR膜発現の少なくとも25%がIHCによる少なくとも2の強度スコアを有する場合、抗FOLR1治療計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。一実施形態では、IHCはFOLR1-2.1抗体を用いて実施される。
【0307】
別の実施形態では、NSCLCを有する対象は、対象に由来する腫瘍試料におけるFOLR膜発現の少なくとも25%がIHCによる少なくとも2の強度スコアを有する場合、抗FOLR1治療計画(たとえば、IMGN853)による治療の候補として特定される。一例では、IHCはIHC用のFOLR1-2.1抗体を用いて実施される。
【0308】
IHCは手動でまたは自動化されたシステムを用いて(たとえば、自動染色器を用いて)実施することができる。IHCは細胞、細胞ペレット、組織、血液からの調製物、血漿、血清、またはリンパ液等で実施することができる。一部の実施形態では、試料は固定された試料である。一部の実施形態では、試料はパラフィン包埋された試料である。一部の実施形態では、試料はホルマリン固定し、パラフィン包埋された試料である。
【0309】
一実施形態では、免疫学的な検出にフローサイトメトリーが使用される。従って、たとえば、フローサイトメトリーを用いて細胞当たりの結合した抗体(ABC)の数を評価することができる。細胞当たりの結合した抗FOLR1抗体の高い数は高いFOLR1の発現及び抗FOLR1抗体またはその免疫複合体による治療に感受性である高い可能性を示し得る。
【0310】
XI.組成物及びキット
本発明によって提供されるのはまた、本明細書で開示されるような本発明の実践で使用するための組成物及びキットである。そのようなキットは、たとえば、すでにマーカーに連結されたまたは抗体(ならびにマーカー自体)に結合作用物質を結合させるための試薬を伴った1以上の結合作用物質(抗体)、緩衝液及び/または試薬及び本発明の実践を支援する単離(任意で微細切開によって)のための器具類を含む、方法で利用される種々の試薬(通常濃縮された形態で)の1以上をそれぞれ伴った容器を含んでもよい。本発明のリガンド検出方法におけるキット成分を記載するラベル若しくは指針、またはその使用のための一揃いの指示書も通常含まれ、その際、指示書はキットまたはその成分の添付文書及び/または包装に関連してもよい。
【0311】
その上さらなる実施形態では、本発明は本明細書で記載される免疫検出法と共に使用するための免疫検出キットに関する。抗体は一般にFOLR1を検出するのに使用されるので、抗体は一般にキットに含まれるであろう。従って、免疫検出キットは好適な容器手段にて、FOLR1に結合する第1の抗体及び/または任意で免疫検出試薬及び/またはさらに任意でFOLR1タンパク質またはFOLR1を含有する細胞試料を含むであろう。
【0312】
キットの免疫検出試薬は、所与の抗体に会合する及び/または連結される検出可能な標識を含む種々の形態の任意の1つを取ってもよい。二次結合リガンドに会合する及び/または連結される検出可能な標識も企図される。例となる二次リガンドは第1の抗体に対して結合親和性を有する二次抗体である。
【0313】
本キットで使用するためのさらなる好適な免疫検出試薬には、第2の抗体に対して結合親和性を有する第3の抗体と共に第1の抗体に対して結合親和性を有する第2の抗体を含む2成分試薬が挙げられ、第3の抗体は検出可能な標識に連結される。本明細書で言及されるように、多数の例となる標識が当該技術で既知であり、及び/またはそのような標識はすべて本発明との関連で好適に採用され得る。
【0314】
キットはさらに、たとえば、抗FOLR1免疫複合体のような、癌を治療するための治療剤を含んでもよい。
【0315】
キットはさらに、FOLR1検出試薬を含む対象にてFOLR1の発現を測定するのに使用されるFOLR1検出試薬、及び使用のための指示書を含んでもよい。一実施形態では、FOLR1検出試薬はFOLR1結合ペプチドまたは抗FOLR1抗体を含む。別の実施形態では、キットはさらに抗FOLR1抗体に結合する二次抗体を含む。
【0316】
一実施形態では、FOLR1に特異的な抗体は、約0.1~約20μg/mL、約0.1~約15μg/mL、約0.1~約10μg/mL、約0.5~約20μg/mL、約0.5~約15μg/mL、約0.5~約10μg/mL、約1~約20μg/mL、約1~約15μg/mL、約1~約10μg/mL、約2~約20μg/mL、約2~約15μg/mL、または約2~約10μg/mLの濃度で含まれる。別の実施形態では、FOLR1に特異的な抗体は、約1.5μg/mL、約2μg/mL、約3μg/mL、約4μg/mL、約5μg/mL、約6μg/mL、約7μg/mL、約8μg/mL、約9μg/mL、または約10μg/mLの濃度で含まれる。別の実施形態では、FOLR1に特異的な抗体は、約2μg/mLの濃度で含まれる。別の実施形態では、FOLR1に特異的な抗体は、約10μg/mLの濃度で含まれる。
【0317】
別の実施形態では、抗体は、約1~約20μg/mL、約1~約15μg/mL、約1~約10μg/mL、約2~約20μg/mL、約2~約15μg/mL、または約2~約10μg/mLの最終濃度を達成するための希釈の指示書を伴う濃縮された溶液に含まれる。別の実施形態では、抗体は、約1.5μg/mL、約2μg/mL、約3μg/mL、約4μg/mL、約5μg/mL、約6μg/mL、約7μg/mL、約8μg/mL、約9μg/mL、または約10μg/mLの最終濃度を達成するための希釈の指示書を伴う濃縮された溶液に含まれる。別の実施形態では、抗体は、約2μg/mLの最終濃度を達成するための希釈の指示書を伴う濃縮された溶液に含まれる。別の実施形態では、抗体は、約10μg/mLの最終濃度を達成するための希釈の指示書を伴う濃縮された溶液に含まれる。
【0318】
別の実施形態では、キットはさらに、酵素、蛍光団、放射性標識及び発光団から成る群から選択される検出試薬を含む。別の実施形態では、検出試薬はビオチン、ジゴキシゲニン、トリチウム及びローダミンから成る群から選択される。
【0319】
キットはまた、FOLR1の発現の検出及びスコア化のための指示書を含むこともできる。キットはまた、対照試料または参照試料を含むこともできる。対照試料または参照試料の非限定例には、正常(正常対照)試料または腫瘍(陽性対照)試料に由来する細胞ペレットまたは組織培養細胞株が挙げられる。例となる細胞株には、FOLR1を発現する発現ベクターで安定的にまたは一時的に形質移入した細胞株が挙げられる。追加の例には実施例にて記載される細胞ペレット及び組織試料が挙げられる。
【0320】
一部の実施形態では、キットは、(a)ヒトのFOLR1に対するモノクローナル抗体で構成される捕捉試薬と、(b)FOLR1モノクローナル抗体も含むことができる検出試薬の基本要素を含む包装された組み合わせであるが、FOLR1に結合する検出可能な(標識されたまたは非標識の)抗体も含むことができる。これらの基本要素は本明細書で定義される。
【0321】
一実施形態では、キットはさらに捕捉試薬のための固相支持体を含み、それは別個の要素として提供されることができ、またはその上に捕捉試薬がすでに不動化されている。従って、キットにおける捕捉抗体は固相支持体に不動化することができ、またはそれらはキットと共に含まれる若しくはキットとは別に提供されるそのような支持体に不動化することができる。
【0322】
一実施形態では、捕捉抗体はマイクロタイタープレートに被覆される。検出試薬は、直接検出される標識された抗体、または異なる種で作られた非標識抗体に向けられた標識された抗体によって検出される非標識抗体であることができる。標識が酵素である場合、キットは普通、酵素によって求められる基質及び補因子を含み、標識が蛍光団である場合、キットは普通、発光団を提供する色素前駆体を含む。検出試薬が非標識である場合、キットはさらに、たとえば、蛍光測定で検出する方式にて、非標識の抗体に向けられた標識された抗体のような検出可能な抗体のための検出手段を含むことができる。標識が酵素である場合、キットは普通、酵素によって求められる基質及び補因子を含み、標識が蛍光団である場合、キットは普通、発光団を提供する色素前駆体を含み、標識がビオチンである場合、キットは普通、アビジン、ストレプトアビジン、またはHRP若しくはβ-ガラクトシダーゼにMUGで結合されたストレプトアビジンのようなアビジンを含む。
【0323】
一実施形態では、捕捉抗体はFOLR1抗体2.1、5.7または9.20、または抗体2.1、5.7若しくは9.20の配列を含む抗体である。一実施形態では、検出試薬はFOLR1抗体2.1、5.7または9.20、または抗体2.1、5.7若しくは9.20の配列を含む抗体である。別の実施形態では、検出試薬、FOLR1抗体2.1、5.7または9.20、または抗体2.1、5.7若しくは9.20の配列を含む抗体はビオチン化される。
【0324】
キットはまた通常、アッセイを行うための指示書、及び/または抗原標準としてのFOLR1タンパク質またはその断片(たとえば、FOLR1細胞外ドメインまたはFOLR1細胞外ドメインとGPI結合ドメインのすべて若しくは一部)ならびに安定剤のような他の添加剤、洗浄緩衝液及びインキュベート緩衝液等も含有する。一実施形態では、FOLR1抗原標準はFOLR1-Fc免疫付着因子である。キットはまたFOLR1発現の検出及びスコア化のための指示書を含むこともできる。
【0325】
キットの成分は所定の比で提供することができ、種々の試薬の各量はアッセイの感度を実質的に最大化する試薬の溶液での濃度を提供するように好適に変化する。特に、試薬は普通、賦形剤を含む凍結乾燥された乾燥粉末として提供され、それは溶解の際、調べられる試料と組み合わせるために適当な濃度を有する試薬溶液を提供する。
【0326】
本明細書で記載される抗体または抗原結合断片を含む組成物も提供される。一実施形態では、組成物は本明細書で記載される抗FOLR1抗体または抗原結合断片と緩衝液、たとえば、FACS、IHCまたはELISAのような検出アッセイで使用することができる緩衝液とを含む。そのような緩衝液は当業者に既知であり、希釈剤を含む。例として、ある特定のFACS緩衝液が実際に使える例にて本明細書で提供される。FACS緩衝液はまた、たとえば、血清またはアルブミン(たとえば、仔ウシ血清、ヤギ血清またはBSA)及び/またはアジ化ナトリウムも含有することができる。FACS緩衝液はまた、PBS、EDTA及び/またはDNA分解酵素またはそれらの任意の組み合わせも含有することができる。IHC緩衝液も本明細書で提供され、当業者に既知である。IHC緩衝液は、たとえば、カゼイン血清またはアルブミン(たとえば、仔ウシ血清、ヤギ血清またはBSA)、TweenまたはTriton、PBS及び/またはアジ化ナトリウムまたはそれらの任意の組み合わせを含有することができる。ELISA緩衝液も本明細書で提供され、当業者に既知である。ELISA緩衝液は、たとえば、血清またはアルブミン(たとえば、仔ウシ血清、ヤギ血清またはBSA)、脱脂粉乳、カゼイン及び/またはゼラチンまたはそれらの組み合わせを含有することができる。
【0327】
本開示の実施形態は以下の非限定の実施例を参照してさらに定義することができ、それは本開示のある特定の抗体の調製及び本開示の抗体を用いる方法を詳細に記載している。本開示の範囲から逸脱することなく、材料及び方法の双方に対する多数の改変を実践することができることが当業者に明らかであろう。
【0328】
実施例
本明細書で記載される実施例及び実施形態は説明目的のみのためのものであり、その観点での種々の改変または変更が当業者に提案され、本出願の範囲及び管轄の中に含められるべきであることが理解される。
【実施例1】
【0329】
FOLR1ハイブリドーマの生成
免疫組織化学法(IHC)染色に好適である抗ヒトFOLR1モノクローナル抗体(本発明の抗体)を産生するハイブリドーマを16,000を超えるハイブリドーマから選択した。ハイブリドーマは、ヒトFOLR1、ヒトFOLR1/マウスIgG2a Fc組換えタンパク質及びヒトFOLR1組換えタンパク質を形質移入したホルマリン固定した300-19細胞を含む様々な抗原で野生型Balb/cマウスを免疫することによって作出した。固定した300-19細胞による免疫は、アジュバントの非存在下でのPBS中の形質移入した300-19細胞(5E6細胞/マウス/注射)の皮下注射によって行った。FOLR1組換えタンパク質による免疫は完全フロイントアジュバント(CFA)または追加免疫用の不完全フロイントアジュバント(Sigma)またはMagicマウスアジュバント(Creative Diagnostics)にて乳化したタンパク質の皮下注射によって行った。一般に、2週間間隔で5回マウスを免疫した後、融合の3日前に免疫源の腹腔内注射によって最後の追加免疫を行った。
【0330】
免疫した野生型のBalb/cマウスを起源とする脾臓細胞とマウス骨髄腫P3X63Ag8.653細胞(P3細胞)を用いて合計16の独立した融合(融合352、353、及び354を含む)を行った。細胞融合は、標準のプロトコールに従ってECM200電気融合器(BTX Harvard Apparatus)を用いて行った。各融合によって1,000を超えるハイブリドーマを得た。変性FOLR1陽性細胞及びFOLR1陰性細胞を用いる方法に基づくFACSによって、これらのハイブリドーマにより産生される抗体をスクリーニングし、確認した。スクリーニングした1,6000を超えるハ
イブリドーマのうち、FACSスクリーニングによって陽性である14のハイブリドーマが発見された。陽性ハイブリドーマはすべてヒトFOLR1/マウスIgG2aFc組換えタンパク質で免疫したマウスを起源とした。
【0331】
当初FACSスクリーニングによって陽性であった14ハイブリドーマのうち、10のみがさらなる解析に十分なIgG濃度を示した。
【実施例2】
【0332】
ハイブリドーマ上清の免疫組織化学的な評価
当初の14ハイブリドーマのうち10をIHCによって解析した。Leica Bond RX自動染色器及び表9に載せた試薬及び条件を用いて解析を行った。
【表9】
【0333】
ホルマリン固定し、パラフィン包埋した(FFPE)細胞、正常組織、患者の肺癌生検及び患者の卵巣癌生検を含有するスライドを60℃で乾燥させ、Bond脱ワックス溶液と100%エタノールを用いて脱ワックスした。Bondエピトープ回復2(エチレンジアミン四酢酸に基づくpH9.0の溶液)を用いて熱が誘導するエピトープ回復を20分間行い、内在性ペルオキシダーゼを過酸化物によって5分間遮断した。種々の濃度のImmunoGen,Inc.が生成した抗体またはLeica/Novocastra muIgG1対照抗体と共にスライドを15分間インキュベートした。Leica Bond Refine検出システムによるインキュベートによって結合した抗体を検出した。抗体の適用に続いて、スライドを一次後試薬(ウサギ抗マウスIgG)と共に8分間、ポリマー(ヤギ抗ウサギポリマー)と共に8分間、及びDAB(3,3-ジアミノベンジジ
ンテトラヒドロ塩化物)と共に10分間インキュベートして、茶色のシグナルを生じた。スライドをヘマトキシリンで5分間対比染色した。
【0334】
FFPE組織試料は以下で概説するようなProteogenex and the Cooperative Human Tissue Network(CHTN)から得たヒト組織のブロックに由来した。FFPE細胞試料はAmerican Tissue Culture Collectionによって供給されるKB細胞株に由来した。試料の切片を含有するスライドは5μmに設定したミクロトームを用いてFFPEブロックから調製し、正に荷電したスライドに載せた。染色に先立ってこれらのスライドを一晩風乾させた。
【表10】
【0335】
FOLR1の染色強度及び分布パターンを対照IgGの染色(非特異的)に比べてスコア化した。強度は0~3のスコアにスコア化し、その際、0=染色なし、1=弱い染色、2=中程度の染色、3=強い染色だった。染色の均一性は、陰性(陽性染色を示す細胞がない)、巣状(25%未満の染色された細胞)、不均質(25~75%の染色された細胞)及び均質(75%超の染色された細胞)としてスコア化した。染色強度及びスコア化スケールを以下に記載する。染色はすべて委員会が認証した病理学者によって評価された。
【表11】
【0336】
FFPEのFOLR1のIHCにためにハイブリドーマを特定するIHC選択法
FOLR1陽性の変性細胞上でFACSにより陽性の一次クローン(合計10クローン)をIHCによって評価した。クローン2つは融合352から得られた(クローン352.1及び352.2)。6つのクローンは融合353から得られ(クローン353.1、353.2、353.3、353.5、353.9、353.15)、2つのクローンは融合354から得られた(クローン354.1及び354.2)。培養したハイブリドーマ細胞からハイブリドーマ上清を回収し、解析に使用した。上清からマウスモノクローナル抗体を捕捉するための抗マウスL鎖特異的ポリクローナル抗体及び捕捉抗体を検出するための抗マウスFc特異的なポリクローナル抗体を用いたELISAによってハイブリドーマ上清における抗体濃度を測定し、既知の濃度のマウスモノクローナルIgG1試料をIgG濃度を算出する基準として用いた。細胞培養培地(非希釈)はIHC染色法を妨害しないことが示された(一次抗体の代わりに培地が使用された場合、バックグランド染色/非特異的染色がないことを確認した)。Leica抗体希釈液中10μg/mLまでの種々の濃度に希釈した10の上清(IMGN352.1、352.2、353.1、353.2、353.3、353.5、353.9、353.15、354.1、及び354.2)を、FOLR1の既知の陽性対照試料(ヒト正常肺、患者に由来する卵巣漿液性乳頭状腺癌及びKB細胞)を用いて染色し、評価して陽性の候補クローン(FOLR1陽性試料にて許容できる膜染色と特異性を示すクローン)を特定した。10のクローンのうち5つがFOLR1陽性試料にて許容できる膜染色及び良好な特異性を示した。5つの候補クローンのそれぞれについて好適な染色濃度が以下:353.1(0.7μg/mL)、353.2(2.3μg/mL)、353.3(2.3μg/mL)、353.5(2μg/mL及び10μg/mL)、及び353.9(2μg/mL及び10μg/mL)のように実験的に決定された。残りの5つのクローンのうち、クローン353.15(2μg/mL及び10μg/mLで染色した)はKB細胞及び正常肺組織で許容できる膜染色を示したが、細胞質の染色のみは調べた患者の卵巣癌組織にて観察された。クローン352.1、352.2及び354.1はどの試料でも目に見える染色を示さず、クローン354.2は明らかな非特異的細胞質染色しか示さず、すべて許容できないと見なされた。
【0337】
5つの候補クローンをさらにサブクローニングした。4つのクローン(353.2、353.3、353.5及び353.9)のサブクローンは上手く特定され、クローン353.1のサブクローンは生成されなかった。合計8つのサブクローンを精製した。クローン353.5から2つのサブクローンが得られた(353.5-7及び353.5-10)。クローン353.9から2つのサブクローンが得られた(353.9-20及び353.9-21)。クローン353.3から2つのサブクローンが得られ(353.3-8及び353.3-9)、クローン353.2から2つのサブクローンが得られた(353.2-1及び353.2-12)(これらのサブクローンはそれぞれ5.7、5.10,9.20、9.21、3.8、3.9、2.1及び2.12とも呼ばれることに留意のこと)。2及び10μg/mLの抗体濃度にて上述の方法(表9.IHCの試薬及びアッセ
イ条件)を用いてサブクローンのIHCによる特徴付けを行った。8つのサブクローンは以下の実施例3で記載されるように配列決定も行った。候補サブクローンを以下:[353.2-1、353.2-12]、[353.9-20、353.9-21]、[353.5-7、353.5-10]、及び[353.3-8、353.3-9]のように最適な膜染色及び特異性についてさらに特定し、ランク付けするように評価し、さらなる特徴付けのために選択した(実施例3で記載されるような配列同一性に従ってサブクローンを一緒に角括弧に入れる)。
【0338】
2つのサブクローン:353.2-1及び353.9-20をさらなるIHCアッセイの最適化のために選択した。双方の抗体を用いてヒト正常肺、ヒト正常唾液腺、ヒト正常膵臓、患者卵巣癌生検、患者非小細胞肺癌(NSCLC)生検及び患者明細胞腎細胞癌生検を染色した。最適な条件で(以下の表12及び
図13を参照のこと)、双方の抗体はヒト正常組織及び患者腫瘍組織の双方で特異的で且つ適宜感受性の染色を示した。膵臓の管、正常肺の呼吸上皮及び介在導管は陽性の膜関連染色を示した。陰性であると予想された膵臓の腺房細胞/島細胞、肺の肺胞内結合組織及び唾液腺の腺房細胞はいずれのサブクローンでも陽性染色を示さなかった。陽性であると予想された卵巣癌、NSCLC及び明細胞腎細胞癌の試料に由来する腫瘍細胞は腫瘍細胞に局在する陽性の膜関連染色を示した。陰性であると予想された腫瘍の下部構造(間質、血管及びリンパ球)は353.2-1または353.9-20による陽性染色は示さなかった。353-2.1(FOLR1-2.1)による正常組織の追加の染色を以下表13にて要約し、
図14にて示す。まとめると、IHCによる特徴付けのデータは353.2-1及び353.9-20がFFPE組織におけるFOLR1に特異的であることを示唆している(
図1及び
図2を参照のこと)。
【表12】
【表13】
【実施例3】
【0339】
選択された抗FOLR1抗体の特徴付け
実施例2にて上述したように、FACSスクリーニングによる一次確認に基づいて選択された14のハイブリドーマクローンのうち、10の一次クローンを免疫組織化学(IHC)解析によって解析した。10の一次クローン(すなわち、352.1、352.2、353.1、353.2、353.3、353.5、353.9、353.15、354.1、及び354.2)のうち、5つ(すなわち、353.1、353.2、及び353.3、353.5、及び353.9)がIHCによって陽性であり、5つすべてが同じ融合(353)に由来した。一次クローン353.2のサブクローン1つを選択して353.2-1(「2.1」)と命名した。一次クローン353.3のサブクローン1つを選択して353.3-8(「3.8」)と命名した。一次クローン353.5のサブクローン1つを選択して353.5-7(「5.7」)と命名した。一次クローン353.9のサブクローン2つを選択して353.9-20(「9.20」)及び353.9-21(「9.21」)と命名した。サブクローン9.20及び9.21を配列決定したが、予想どおり、双方は同じ配列を有した。加えて、クローンの2つ2.1及び9.20をそれぞれ2013年4月16日、それぞれPTA-120197及びPTA-120196としてATCCに寄託した。
【0340】
ウエスタンブロットによる抗FOLR1抗体の特異性
FOLR1-陽性(Igrov-1、Ovcar-3、Caov-3、Wish、及びSkov-3)及びFOLR1-陰性(BxPC3、Panc-1、及びASPC1)の細胞株から調製した細胞溶解物のパネルによるウエスタンブロットによって、生成された抗体の特異性を解析した。アッセイについては、常法によって溶解物をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動にて泳動し、ニトロセルロース膜に移した。膜を本発明の抗FOLR1抗体と共にインキュベートし、形成された抗原/抗体複合体を西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合させた抗マウス二次抗体によって検出した(
図3)。調べた抗FOLR1抗体はすべて高レベルのFOLR1発現を伴った細胞株(すなわち、Igrov-1及びWish)におけるFOLR1を認識した。低い発現の細胞株Ovcar-3、Caov-3及びSkov-3におけるFOLR1は抗FOLR1クローン2.1及び9.21によってのみ検出され、クローン3.8及び5.7はたぶん抗体の不十分な感度のためにこれらの細胞溶解物を染色しなかった。FOLR1陽性細胞株にてクローンによる追加の非特異的なバンドは検出されず、FOLR1陰性細胞株の染色も観察されなかった。
【0341】
変性させた及び変性させない細胞への抗FOLR1抗体の結合
変性させた及び変性させない(ネイティブの立体構造)FOLR1に結合する抗FOLR1抗体の能力をFOLR1陽性細胞KB及びT47Dによる間接FACSによって解析した。Versineによって細胞を回収し、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で洗浄した。変性させた細胞は、10%ホルムアルデヒドを含有するPBSにて細胞を4℃で一晩インキュベートし、その後、PBSで洗浄し、95℃で30分間インキュベートすることによって調製した。次いで変性させた及び変性させない細胞を氷上でFACS緩衝液(2%正常ヤギ血清で補完されたRPMI-1640培地)で希釈した抗FOLR1抗体と
共に2時間インキュベートした。細胞を遠心し、PBSで洗浄し、FITCを結合したヤギ抗マウスIgG抗体と共に40分間インキュベートした。細胞を再び遠心し、PBSで洗浄し、1%ホルムアルデヒドを含有する0.2mLのPBSで再懸濁させた。HTSマルチウェルと共にFACSCaliburフローサイトメトリー用いて細胞に関連する蛍光を測定し、CellQuest Pro(BD Biosciences,San Diego,US)を用いて解析した。
図4に示すように抗FOLR1抗体はすべて変性させた及び変性させない細胞双方に結合した。
【0342】
ELISAによる抗FOLR1抗体の親和性
組換えヒトFOLR1/マウスFc2aタンパク質を抗原として用いたELISAによって抗FOLR1抗体の結合親和性を調べた。組換えタンパク質をマイクロタイタープレートに不動化し、抗体を様々な濃度でプレートに加えた。プレートを室温で2時間インキュベートし、0.05%のTween20で補完したPBSで洗浄し、HRP標識したヤギ抗マウス二次抗体と共に室温で1時間インキュベートした。プレートをPBS/Tween20で再び洗浄し、結合したHRP複合抗体をHRPの基質TMB(Bio-FX)を加えることによって検出した。代表的な結果を
図5に示す。抗FOLR1抗体は0.5~0.9nMの50%効果濃度(EC50)にてヒトのFOLR1に対して類似の親和性を有した。
【0343】
FOLR2及びFOLR3との抗FOLR1抗体の交差反応性はない
FOLR1は葉酸受容体ファミリーのメンバーである。抗FOLR1抗体の他のファミリーメンバーFOLR2及びFOLR3との交差反応性をELISAによって評価した。組換えタンパク質FOLR2-HisまたはFOLR3-His(R&D Systems)をNi-NTAプレート(QIAGEN)に不動化し、抗FOLR1抗体をプレートに加え、室温で2時間インキュベートした。FOLR2及びFOLR3のELISAの陽性対照として、それぞれポリクロナール抗FOLR2及び抗FOLR3抗体(R&D Systems)を用いた。形成された抗体/抗原複合体をHRP標識したヤギ抗マウス二次抗体によって検出した。
図6に示すように、本発明の抗FOLR1抗体はFOLR2またはFOLR3に結合せず、対照抗体だけが相当する抗原を検出した。
【実施例4】
【0344】
抗原エピトープの特徴付け
ヒトのFOLR1は69位、161位及び201位(UniProt)にてN-グリコシル化の3つの可能性のある部位を有し、文献で報告されたように、3つの部位すべてがグリコシル化される。本明細書で記載される抗FOLR1抗体によって認識されるエピトープの性質を特徴付けるために、脱グリコシル化した受容体及び未処理の受容体で結合実験を行った。配列データに基づいてクローンは同じエピトープに関連し、結合すると思われるので、生成された抗FOLR1クローンのうちでクローン2.1のみを試験で使用した。クローン2.1に加えて、他の2つの抗FOLR1抗体:huMov19(WO2011/106528)及びクローンBN3.2(Leica)を含めた。FOLR1を脱グリコシル化するために、組換えヒトFOLR1またはFOLR1陽性のKB細胞若しくはIgrov-1細胞の溶解物を製造元のプロトコールに従って脱グリコシル化酵素(Enzymatic DeGlycoMX Kit,QA-bio)の混合物で処理した。次いで処理した及び未処理のFOLR1をELISA及びウエスタンブロットの解析に用いた。ELISAについては、脱グリコシル化した及び未処理のFOLR1をELISAプレート(Immulon)に不動化し、抗FOLR1抗体FRIHC2-1(「2.1」)またはhuMov19を加えた。2時間のインキュベート後、HRP標識したヤギ抗ヒト(huMov19について)または抗マウス(2.1について)二次抗体によって抗体/抗原複合体を検出した(
図7)。ウエスタンブロット解析については、脱グリコシル化した及び未処理の溶解物またはhuFOLR1組換えタンパク質の試料をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、常法によってニトロセルロース膜に移した。膜を抗FOLR1抗体2.1、huMov19またはBN3.2と共にインキュベートし、西洋ワサビペルオキシダーゼを結合させた適当な抗マウスまたは抗ヒト二次抗体によって抗原/抗体複合体を検出した(
図8)。
図7及び
図8に示すように、抗体2.1のグリコシル化したFOLR1への結合対未処理のFOLR1への結合が有意に低下したということは、抗体がグリコ依存性のエピトープに結合することを示唆している。対照的に、他の2つの抗FOLR1抗体:huMov19及びBN3.2が脱グリコシル化した受容体及び未処理の受容体に同様に結合するということは、(i)FOLR1タンパク質は脱グリコシル化手順の間に損傷されなかった及び(ii)huMov19及びBN3.2はFOLR1のタンパク質エピトープを認識することを示している。
【実施例5】
【0345】
抗ヒトFOLR1抗体のVL領域及びVH領域のクローニング及び配列決定
製造元のプロトコールに従ってRNeasyキット(QIAgen)を用いて実施例1で記載されたFOLR1ハイブリドーマの5×106個の細胞から細胞性の全RNAを調製した。その後、SuperScript II cDNA合成キット(Invitrogen)を用いて全RNAから8つのサブクローン(2.1、2.12、3.8、3.9、5.7、5.10、9.20、及び9.21)についてcDNAを合成した。
【0346】
ハイブリドーマ細胞に由来する抗体可変領域cDNAを増幅するPCR手順は、Wangら((2000),J.Immunol.Methods.233:167-77)及びCoら.((1992),J.Immunol.148:1149-54)にて記載さ
れた方法に基づいた。5’末端の変性プライマー及びそれぞれ3’末端でのマウスκまたはIgG1の定常領域に特異的なプライマーによって可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)の配列を増幅した。次いでPCR反応物を1%低融解アガロースゲル上で泳動し、その後、300~400bpのアンプリコンバンドを切り出し、続いてZymoDNAミニカラムを用いて精製した。両方向から可変領域cDNA配列を生成するためにPCR反応物の同じ5’及び3’プライマーを利用する配列決定を目的として精製したアンプリコンをBeckman Coulter Genomicsに送付した。
【0347】
VL及びVHのcDNA配列をクローニングするのに使用した変性プライマーが5’末端を変えるので、完全なcDNA配列を立証するには、追加の配列決定の試みを必要とした。予備的な配列をNCBI IgBlastサイト(www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)の検索クエリに入れ、抗体の配列が由来していたマウスの生殖系列の配列を特定した。次いで、この新しいPCR反応物がPCRプライマーによって変化させられない完全な可変領域のcDNA配列を生じることになるように、生殖細胞系列に関連したマウスの抗体のリーダー配列にアニーリングするようにPCRプライマーを設計した。PCR反応、バンドの精製及び配列決定は上述のように行った。
【0348】
配列確認のための質量決定
抗FOLR1抗体のそれぞれについて得られた可変領域cDNA配列を生殖細胞系列の定常領域配列と組み合わせて完全長の抗体cDNA配列を得た。次いで重鎖及び軽鎖の分子量をcDNA配列の翻訳から算出し、精製されたマウス抗FOLR1抗体のLC/MS解析によって得られた分子量と比較した。LC/MSは抗体を脱グリコシル化し、還元して完全な軽鎖及び重鎖ペプチドを単離することによって行った。重鎖のそれぞれについて観察された分子量は予想と一致したが、軽鎖のそれぞれはおよそ85Da違っていた。軽鎖断片のLC/MSによるその後のペプチド断片化の解析は軽鎖リーダーペプチドの最終的なセリンが成熟軽鎖に実際保持されており、予想MWに約87Daを加えたので、FOLR1抗体のそれぞれについてcDNA配列は確認された。
【0349】
抗FOLR1抗体についての複合CDR配列
8つのサブクローンについての抗体配列の配列比較は、4つの元々のハイブリドーマのうち3つが密接に関連するが、独特の抗体を産生したことを示した。予想通り、4つの姉妹サブクローン対のそれぞれは同一だった。加えて、サブクローンの2セットも同一であり、3つの独特の抗体配列(配列番号27~32)(2.1、5.7及び9.20)を生じた。これら3つの独特の抗体の軽鎖及び重鎖の可変フレームワーク配列は密接に関連するが、各抗体は体細胞アミノ酸置換の結果と思われる独特のCDRを含有する(以下の表14を参照のこと)。マウスの抗FOLR1抗体のこれらCDR変異体は機能的に同一であることが見いだされたので、それらは本発明の抗FOLR1抗体のCDRの配列の自由度に何らかの構造的な洞察を提供する。軽鎖のCDR2及び3が抗体のそれぞれにおいて同一であったということは、これらのしっかりと保存されたCDRはFOLR1結合についての一貫した構造的な基礎を提供することができることを示唆している。その一方、残っているCDR、特に重鎖CDR2及び3におけるアミノ酸置換はこれらの位置がこれら抗体の親和性及び特異性の改善に決定的であることを示唆している。これらのCDRの位置における特定の残基の置換はまたこれら抗体の操作された型の中に組み込まれ得る残基の例も提供する。表14は本発明の抗FOLR1抗体から集められた複合CDR配列のリストを提供する。本明細書で特定される複合CDRは本発明の抗FOLR1抗体の機能的な特質を保存するように期待される組換え抗体の設計に使用することができる。
【表14】
【0350】
抗体のヒト化
たとえば、参照によってその全体が本明細書に組み入れられるRoguskaら,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,91(3):969-973(1994)及びRoguskaら,Protein Eng.9(10):895-904(1996)にて以前記載された表面再構成法に従ってFRIHC2-1抗体をヒト化した。表面再構成には軽鎖及び重鎖の双方における可変領域フレームワークの表面残基の特定及びヒト同等物によるその置き換えが関与する。表面再構成された抗体ではマウスのCDRは保存される。FRIHC2-1抗体の例となるCDRは表14で示されたように定義される。CDRに入るリジンを結合する影響についての懸念をできるだけ抑えるために、マウスFRIHC2-1抗体の軽鎖CDR1におけるリジン24及びリジン27をヒト化バージョン1.0(イタリック体で示す)についてはアルギニンで置き換えるので、LCのCDR1の双方のバージョンが与えられる。表面再構成に採用されるAbM重鎖CDR2の定義に加えて、表はFRIHC2-1抗体のマウス型及びヒト型の双方についての例となるKabat定義の重鎖CDR2を提供する。下線の配列は表面再構成のためのCDRとは見なされなかったKabat重鎖CDR2の部分に印をつける。
【0351】
表面残基の位置は30%以上の相対アクセス性を持つ任意の位置として定義された(Pedersen,J.T.ら,J.Mol.Biol.1994;235:959-973)。次いで計算された表面残基をヒト生殖細胞系列の表面配列と共に並べ、最も相同性の高いヒトの表面配列を特定した。FRIHC2-1抗体のVLドメインについての置換表面として使用されるヒト生殖細胞系列の配列はIGKV2-30
*01であった一方で、FRIHC2-1抗体のVHについての置換表面としてはIHV1-69
*10を使用した。FRIHC2-1抗体に特異的なフレームワーク表面残基の変化は
図9に提供する。表面再構成された軽鎖は好まれるバージョンにてCDR1のリジン置換を含んだので、表面再構成されたバージョン(v1.01)はCDR-L1にて保持されたマウスのリジンを伴っても生成された。
図10は軽鎖及び重鎖双方のFRIHC2-1可変ドメインについての表面再構成された配列のマウスでの対応部分との配列比較を示す。
【0352】
可変ドメインの表面再構成によるヒト化に加えて、FRIHC2-1抗体は相補性決定領域(CDR)の移植法(Jonesら,Nature,321:604-608(1986)及びVerhoeyenら,Science,239:1534-1536(1988))に従ってもヒト化された。CDR移植法は、自然に進化したマウスの抗体に由来するCDRをヒト抗体のFvフレームワーク領域(FR)に移植することから成る。FRIHC2-1抗体のCDRの移植にはKabat番号付け方式及びKabatのCDR定義を使用した。CDRの移植のためのFRIHC2-1の例となるCDRを表14に提供する。マウスのFRIHC2-1抗体に対して最も高い相同性を持つヒト免疫グロブリンの生殖細胞系列の配列は、Lefranc,Nucleic Acids Res.29:207-209(2001)にて記載されたようなInternational ImMunoGeneTics information system(登録商標)(IMGT(http://imgt.cines.fr/)のインタラクティブツールV-QUESTを介して特定した。FRIHC2-1抗体のVLドメイン及びVHドメインのためのアクセプターフレームワークとして使用したヒト生殖細胞系列の配列はそれぞれIGKV2D-29
*02及びIGHV1-2
*02だった。CDRに入るリジンを結合する影響についての懸念をできるだけ抑えるために、マウスFRIHC2-1抗体の軽鎖CDR1におけるリジン24及びリジン27をCDR移植した構築物におけるアルギニンで置き換えた(表15)。FRIHC2-1抗体のCDR移植における特定のフレームワーク残基の変化ならびにCDR-L1における置換を
図11に提供し、FRIHC2-1抗体の可変ドメインについてのCDR移植配列のマウスでの対応部分との配列比較を
図12で説明する。
【表15】
【実施例6】
【0353】
ヒト腫瘍試料を用いた353-2.1(FOLR1-2.1)抗体のIHCによる評価
353-2.1抗体を用いたIHCによってFOLR1の発現について、卵巣癌(n=63)、肺腺癌(n=104)及び子宮内膜腺癌(n=58)を代表とするヒト腫瘍試料を評価した。FOLR1染色の強度及びスコアの分布を以下の表16にて要約する。
図15は353-2.1抗体による卵巣癌及び肺腺癌の組織の染色の例を示す。これらの結果は、FOLR1を標的とする作用物質(たとえば、IMGN853)による治療法の可能性がある候補としての患者を特定するIHCアッセイで使用するための特異的で且つ感度の高い抗体としての353-2.1の有用性を明らかにしている。
【表16】
【0354】
追加のIHCアッセイを用いてFOLR1-2.1(FOLR1 353-2.1)抗体の独特の特異性及び高い結合親和性をさらに明らかにした。このIHCアッセイは、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した組織試料におけるFOLR1タンパク質発現の半定量的な実証のために、Ventana BenchMark XT自動スライド染色器にてOptiView DAB検出キットを利用する。アッセイは正常組織及び腫瘍組織の対照を用いて特異性、感度及び精度に関して最適化され、検証されている。最適化された条件下で腫瘍細胞にて鮮明な膜染色が明瞭に観察されたのに対して正常な間質組織は完全に陰性だった(
図16)。加えて、このアッセイは、広いダイナミックレンジも達成し、それによって最強の染色強度(レベル3、暗茶色の染色、
図17)からの中程度の染色強度(レベル2、中程度の茶色、
図17)のさらに良好な識別を可能にした。向上したダイナミックレンジは、染色強度に基づくFOLR1陽性試料をランク付けし、最高レベルのFOLR1発現を持つ患者の亜集団のさらなる特定を可能にする能力を改善する。
【0355】
卵巣癌組織のマイクロアレイ(TMA)を用いてBN3.2(Leica)抗体とFOLR1-2.1(FOLR1 353-2.1)抗体を比較した。IHCアッセイにてBN3.2(Leica)を用いて(BN3.2アッセイ)、試料の50%近く(35のうち16)が最高のカテゴリー(少なくとも25%の腫瘍細胞でレベル3の染色強度)にスコア化された。対照的に、Ventana BenchMark XT自動スライド染色器にてOptiView DAB検出キットを利用する上記のIHCアッセイにてFOLR1-2.1(FOLR1 353-2.1)抗体を用いて(FOLR1-2.1アッセイ)、16試料を2つの異なるカテゴリー:最高カテゴリーでの6(少なくとも25%の腫瘍細胞でレベル3の染色強度、表17)と二番目に最高のカテゴリーでのその他の10(少なくとも25%の腫瘍細胞でレベル2の染色強度、表17)にさらに分離することを可能にした。従って、FOLR1-2.1アッセイにおけるFOLR1-2.1抗体によって得られたさらに慎重な染色は、BN3.2アッセイにてBN3.2抗体を用いてレベル3の発現の試料としてすべて一緒にグループ化された試料の間での識別を可能にする。
【表17】
【0356】
本明細書で引用されている出版物、特許、特許出願、インターネットサイト及び受託番号/データベース配列(ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の双方を含む)はすべて、各個々の出版物、特許、特許出願、インターネットサイトまたは受託番号/データベース配列が具体的に且つ個々に参照によってそのように組み入れられるように指示されるかのようにと同程度にあらゆる目的でその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【配列表】