IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウエスト ファーマスーティカル サービシーズ インコーポレイテッドの特許一覧

特許7554271流路と一体化されている一次容器アセンブリ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】流路と一体化されている一次容器アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/145 20060101AFI20240911BHJP
   A61M 5/158 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
A61M5/145 500
A61M5/158 500H
A61M5/158 500Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022543449
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 US2021013017
(87)【国際公開番号】W WO2021146154
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】62/961,933
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517229774
【氏名又は名称】ウエスト ファーマスーティカル サービシーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】デイビス・トミー・ジーン
(72)【発明者】
【氏名】ボラ・ロヒト
(72)【発明者】
【氏名】ヘズキアフ・ラン
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-507746(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0082422(US,A1)
【文献】特表平03-505286(JP,A)
【文献】国際公開第2018/226515(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/145
A61M 5/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
チューブと、
中空の針と、
カップと
を備えている一次容器アセンブリであって、
前記本体は、
プランジャを収容するように構成されている開口部を形作っている近位端と、
前記近位端とは反対側にあり、出口を形作っている遠位端と、
前記近位端から前記遠位端まで伸びており、薬物を収容するように構成されているチャンバと
を有し、
前記チューブは、前記本体の遠位端と一体化している第1の端部から、前記第1の端部とは反対側にある第2の端部まで伸びており、前記第1の端部から前記第2の端部まで伸びているチャネルを形作り、前記薬物を前記本体のチャンバから前記針へ導くように構成されており、
前記針は、患者の皮膚に突き刺さるように構成されており、前記チューブの第2の端部と一体化しており、
前記カップは前記本体の遠位端に取り付けられ、前記カップの遠位端に、当該遠位端を貫通しているチャネルを形作っており
前記チューブがコイル状に巻き付けられるように構成されており、
前記チューブの第1部分は、前記本体の遠位端の一部の周りにコイル状に巻き付けられて前記カップの中に配置されており、
前記チューブの第2部分は、前記カップのチャネルの中を伸びている
ことを特徴とする一次容器アセンブリ。
【請求項2】
前記チューブが可撓性材料を含む、請求項1に記載の一次容器アセンブリ。
【請求項3】
前記チューブが、硬く可撓性のない材料を含む、請求項1又は請求項2に記載の一次容器アセンブリ。
【請求項4】
前記本体の遠位端が、
前記チューブの第1の端部と一体化しているルアー接続部
を備えている、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の一次容器アセンブリ。
【請求項5】
前記針と前記チューブとの間の接続部を構成している針ハブ
を更に備えている、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の一次容器アセンブリ。
【請求項6】
前記針の少なくとも一部の周囲に配置されており、前記針を無菌状態に維持するように前記針ハブに取り外し可能に接続されている針シールド
を更に備えている、請求項5に記載の一次容器アセンブリ。
【請求項7】
前記針シールドが前記針ハブに締まりばめで接続されている、請求項6に記載の一次容器アセンブリ。
【請求項8】
前記カップが前記本体に取り外し可能に取り付けられている、請求項1に記載の一次容器アセンブリ。
【請求項9】
前記針シールドが前記カップに取り外し可能に固定されている、請求項7に記載の一次容器アセンブリ。
【請求項10】
前記チューブは、前記針シールドが前記カップから取り外されるときに、前記コイル状から巻きの取れた形状へ変化するように構成されており、
前記巻きの取れた形状のチューブは前記本体の遠位端の一部の周りからほどけている、
請求項9に記載の一次容器アセンブリ。
【請求項11】
前記カップが第1のカップであり、
前記一次容器アセンブリが、
前記第1のカップに取り外し可能に取り付けられている第2のカップ
を更に備え、
前記針シールドが実質上前記第2のカップの中に収容されて、前記チューブの形状を同心に維持し、
前記第2のカップが、充填機と接続されるように構成されている、
請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の一次容器アセンブリ。
【請求項12】
前記針が第1の針であり、
前記一次容器アセンブリが、
前記本体の遠位端と前記チューブの第1の端部との間の接続部を形作っている第2の針
を更に備えている、
請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の一次容器アセンブリ。
【請求項13】
前記本体及び前記チューブが一体である、請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載の一次容器アセンブリ。
【請求項14】
前記チューブの第1の端部から第2の端部まで前記チューブの本体の軸に沿って測られた長さが第1の長さであり、前記針の長さである第2の長さよりも長い、請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載の一次容器アセンブリ。
【請求項15】
前記針と前記チューブとの間の接続部を形作っている針ハブを更に備えている、請求項1から請求項14までのいずれか一項に記載の一次容器アセンブリと、
前記針ハブと結合して前記チューブと連通するように構成されている入力部と
を備えている投薬器。
【請求項16】
プランジャを収容するように構成されている開口部を形作っている近位端と、
前記近位端とは反対側にあり、出口を形作っている遠位端と、
前記近位端から前記遠位端まで伸びており、薬物を収容するように構成されているチャンバと
を有する本体を準備するステップと、
チューブの第1の端部を前記本体の遠位端に取り付けて、前記チューブを前記出口と連通させるステップと、
中空の針を前記チューブの第2の端部に取り付けるステップと、
前記チューブの第1部分を前記本体の遠位端の一部の周りにコイル状に巻き付けるステップと、
前記本体の遠位端にカップを取り付け、前記カップの中には前記チューブの第1部分を配置し、前記カップが形作っている、前記カップの遠位端を貫通しているチャネルの中には前記チューブの第2部分を配置するステップと
を備えている一次容器アセンブリの組み立て方法。
【請求項17】
前記チューブの第1の端部を前記本体の遠位端に取り付けるステップが、前記本体の遠位端を前記チューブの第1の端部の周囲に型で成形するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記チューブの第1の端部を前記本体の遠位端に取り付けるステップが、前記チューブ及び前記本体を一体に形成するステップを含む、請求項16または請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記本体のチャンバに前記薬物を充填するステップを更に備えている、請求項16から請求項18までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2020年1月16日を出願日とする米国仮特許出願第62/961,933号に関する優先権の主張を伴うものであり、その内容の全体が参照により、この明細書に記載されているかのように、この明細書に組み込まれる。
【0002】
この出願は薬物の保管用及び投与用の一次容器アセンブリを対象とする。具体的には、この出願が関する一次容器アセンブリは、製造の段階から、中に薬物が導入される段階を経て、エンドユーザに届けられる段階まで、流路の無菌性を保証するためのものである。
【背景技術】
【0003】
患者の皮下組織、筋肉組織、又は静脈に薬物を投与するには、その薬物を保管している一次容器から針を通してその薬物を流出させることのできる流路が必要である。したがって、一次容器、流路、及び針の間に接続部が必要である。そのような接続部を従来の一次容器が形成するには、適応する端部(隔壁、ルアーロック)又は他の接続具を備えていればよい。しかし、一次容器が投薬システムの流路、針、又は他の構成要素と接続される際に、一次容器アセンブリの無菌性が損なわれかねない。例えば、一次容器、流路、及び針が互いに接続される場合、これらの構成要素の間の接続点の各々で接続中又は接続後に無菌性が損なわれ、システムの無菌性を損なわせる危険がある。この危険を軽減させ、又は最小化させるには、接続の前に様々な継手をアルコールの付いた布で消毒すればよいが、手間の増大につながる。更に、そのような接続の作業には、多くの場合、他にはない、特別に設計された接続具をいくつか配置する必要がある。これにより、無菌性を損なわせかねない構成要素が更に増える。また、投薬器の組み立てに関し、接続される端同士の無菌性の保証を目的とする費用及び手間も増える。
【0004】
したがって、薬物を充填して投与する操作において、接続される端同士の無菌性を保証する手間を軽減させる一次容器アセンブリが必要である。
【発明の概要】
【0005】
この明細書で開示される1つの実施形態は一次容器アセンブリであり、本体を形作っている一次容器を含む。本体は、プランジャを収容するように構成されている開口部を形作っている近位端と、近位端とは反対側にあり、出口を形作っている遠位端と、近位端から遠位端まで伸びており、薬物を収容するように構成されているチャンバとを有する。一次容器アセンブリは更にチューブを備えている。チューブは、一次容器の遠位端と一体化している第1の端部から、第1の端部の反対側にある第2の端部まで伸びており、第1の端部から第2の端部まで伸びているチャネルを形作っている。一次容器アセンブリはまた、患者の皮膚に突き刺さるように構成されている中空の針も備えている。中空の針はチューブの第2の端部と一体化している。チューブは、薬物を一次容器のチャンバから針へ導くように構成されている。
【0006】
この明細書で開示される別の実施形態は一次容器アセンブリの組み立て方法である。この方法は、本体を形作る一次容器を準備するステップを含む。本体は、プランジャを収容するように構成されている開口部を形作っている近位端と、近位端とは反対側にあり、出口を形作っている遠位端と、近位端から遠位端まで伸びており、薬物を収容するように構成されているチャンバとを有する。この方法は更に、チューブの第1の端部を一次容器の遠位端に取り付けて、チューブを出口と連通させるステップと、中空の針をチューブの第2の端部に取り付けるステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
前述の概要、並びに以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、より良好に理解されるであろう。図面は、この明細書で開示される例示的な実施形態を示す。しかし、その適用例は、図示される配置及び手段に正確に一致するものには限定されないということは理解されるべきである。
図1】この明細書で開示される1つの実施形態による一次容器アセンブリの分解図である。
図2図1が示す一次容器アセンブリの一次容器とチューブとの側面図である。チューブは一次容器に直に取り付けられている。
図3図1が示す一次容器アセンブリの一次容器とチューブとの側面図である。チューブは針を介して一次容器に取り付けられている。
図4図1が示す一次容器アセンブリのチューブの巻きの取れた形状の斜視図である。
図5A】この明細書で開示される1つの実施形態による一次容器アセンブリの針ハブと針との斜視図である。
図5B】この明細書で開示される別の実施形態による一次容器アセンブリの針ハブと針シールドとの斜視図である。
図6A図5Aが示す針ハブと針との断面図である。
図6B図5Aが示す針ハブと針との断面図であり、それらには針シールドが取り付けられている。
図7A図1が示す一次容器アセンブリの断面図である。カップが1つだけ一次容器に取り付けられている。
図7B図1が示す一次容器アセンブリの断面図である。カップが2つ、一次容器に取り付けられている。
図8】この明細書に開示される発明による一次容器アセンブリの構成要素の模式図である。これらの構成要素は投薬器の中に配置されている。
図9】この明細書で開示される1つの実施形態による一次容器アセンブリの組み立て方法の流れ図である。
図10A図7Bが示す一次容器アセンブリの斜視図である。一次容器アセンブリは、適合性のあるネストアセンブリと組み合わされている。
図10B図10Aが示す一次容器アセンブリとネストアセンブリとの縦断面図である。一次容器アセンブリは充填位置に支持されている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、供給対象の薬物の保管用及び投与用の一次容器アセンブリ10、10’について説明する。以下の説明では、特定の用語が一次容器アセンブリ10、10’の説明に使用されるが、これらは便宜上のものでしかなく、発明を限定するものではない。「右」、「左」、「下」、及び「上」という単語は、参照される図面内での方向を示す。一次容器アセンブリ10、10’、及びそれらの関連する部分についての説明において、「内側」という単語は幾何学的中心へ向かう方向を指し、「外側」という単語は幾何学的中心から離れる方向を指す。「前方」、「後方」、「近位」、及び「遠位」という単語は、参照される一次容器アセンブリ10、10’の構成要素の本体の近位端若しくは遠位端へ向かう方向、又は近位端若しくは遠位端から離れる方向を指す。上記の用語は、以上に列挙された単語、それらの派生語、及び類義語を含む。
【0009】
この明細書で開示される1つの実施形態は一次容器アセンブリ10を備えている。一次容器アセンブリ10は、供給対象の薬物を保管して投与するように構成されており、一次容器20、プランジャ50、チューブ60、針72、針ハブ80、針100、針シールド110、カップ130、及び/又は第2のカップ160を含んでもよい。これらの各々の詳細については後述する。図1図3を参照すると、一次容器20は本体24を形作っていてもよい。本体24は近位端24aから、近位端24aとは反対側にある遠位端24bまで伸びている。本体24は、環状オレフィン若しくは他の医療用プラスチック等のプラスチック、又はガラスで構成されていてもよい。本体24は実質的に細長い円筒形状であってもよいが、他の形状も考えられる。1つの実施形態では一次容器20が、国際出願PCT/US2015/049588号(ペンシルバニア州エクストンのウエスト ファーマスーティカル サービシーズ インコーポレイテッドに譲渡されている。)に記載されている注射筒として構成されている。しかし、この明細書による開示はそのような限定を目的とはしていない。一次容器20の本体24は更にチャンバ26を形作っている。チャンバ26は近位端24aから遠位端24bまで伸びており、供給対象の薬物を収容して保管するように構成されている。後述されるように、薬物は最終的にはチャンバ26から投与される。
【0010】
一次容器20の近位端24aはフランジを形作っていてもよい。これにより、投薬器の中に一次容器20をより容易に保持すること、すなわち適正な場所に確実に置くことができる。近位端24aは開口部28も形作っていてもよい。開口部28は、チャンバ26への通路を与えるように構成されている。同様に、遠位端24bが出口32を形作っていてもよい。出口32は、チャンバ26への別の通路を与えるように構成されている。開口部28の直径が出口32の直径よりも大きくてもよい。これにより、開口部28は、プランジャ50を収容するように構成される。一次容器アセンブリが使用される際、チャンバ26には薬物がその供給源(図示せず。)から開口部28を通って充填可能である。チャンバ26に薬物が充填された後、チャンバ26の中にプランジャ50が配置されるので、薬物がチャンバ26から開口部28を通して漏れることが防止される。更に、一次容器アセンブリが使用される際にプランジャ50は、本体24の内面に密着して流体の漏れを防ぎながら、チャンバ26の中を遠位方向へ並進可能であるので、一次容器20のシールを維持したまま、薬物をチャンバ26から出口32を通して押し出すことができる。プランジャ50が従来のゴム製又はプラスチック製のプランジャを含んでもよいが、他の実施形態も考えられる。プランジャ50が駆動機構(図示せず。)に操作可能に取り付けられ、この駆動機構によってチャンバ26の中を選択的に並進させられてもよい。この場合、駆動機構は、モータ、ばね、空気圧装置、伸縮可能な機構、又はその他、直線運動を生じさせることができる手段を備えていてもよい。1つの実施形態では一次容器20の遠位端24bがルアー接続部を備えている。しかし、遠位端24bが、ある長さのチューブ60と接続可能であれば、どのような構造を含んでいてもよい。これについては、後で更に説明する。
【0011】
図1図5Bを参照しながら、一次容器アセンブリ10のチューブ60について更に詳細に説明する。チューブ60には本体64があってもよい。本体64は第1の端部64aから、第1の端部64aとは反対側にある第2の端部64bまで伸びており、チャネル68を形作っている。チャネル68が本体64の中を第1の端部64aから第2の端部64bまで伸びていることにより、本体64が実質上中空の管として構成されている。本体64は医療用プラスチック、又は、鋼若しくはニチノールなどの金属で構成されていてもよい。しかし、そのように限定されることを、この明細書の開示は目的としていない。1つの実施形態では本体64が実質上変形しない結果、一定の形を保つ。別の実施形態では本体64が柔軟である結果、本体64を製造元又はユーザが望むとおりに再構成して成形し直すことができる。チューブ60は例えば、最初に梱包されたときにはコイル状であってもよく、最終的に使用されるときにほどかれてもよい。チューブ60をコイル状にするには、チューブ60を一次容器20の延長部36の周りに連続して巻き付ければよい。これにより、チューブ60の少なくとも一部が、軸方向に連なる複数巻きのコイル状になる。後述のように、コイル状を成すチューブ60の部分にはカップ130が被され、チューブ60をコイル状に固定してもよい。しかし、他の実施形態では、カップ130が一次容器20の本体24の一部も(一緒に型で成形された部分、又は取り付けられた部分として)含んでもよい。
【0012】
図2及び図3に示されているように、チューブ60の第1の端部64aが一次容器20の遠位端24bと一体化していてもよい。具体的には、一次容器20の遠位端24bが延長部36を含んでもよい。延長部36は遠位端24bから遠位方向へ伸びており、同心に配置されている円筒状の首を1以上備えていてもよい。例えば、図示されている実施形態では延長部36が、内側の首36aと、内側の首36aの周りに同心に配置されている外側の首36bとを備えているが、他の実施形態も考えられる。延長部36の内側の首36aが遠位端24bのうち、出口32を成す部分を形作っていてもよい。1つの実施形態(図2参照。)では一次容器20の延長部36がチューブ60の第1の端部64aの周囲に型で成形されてもよい。別の実施形態ではチューブ60の第1の端部64aが一次容器20のルアー接続部(図示せず。)と一体化していてもよい。必要であれば、一次容器20の延長部36が針72の一部の周囲に型で成形されてもよい(図3参照)。この場合はチューブ60の第1の端部64aが、針72の別の部分に結合するように構成されている。その結果、針72が一次容器20とチューブ60との間の接続部を形作っていてもよい。この場合、チューブ60が一次容器20に除去不能に取り付けられると考えられる。その他に、一次容器20及びチューブ60が、同時に行われる射出成形等により、一体構造の単一部品を形作るように作製されてもよいことも考えられる。別の実施形態ではチューブ60の第1の端部64aに接続部品(図示せず。)が取り付けられてもよい。この接続部品は、一次容器20の遠位端24bにスナップフィットで、又は締まりばめで結合するように構成されている。
【0013】
チューブ60の第2の端部64bが針ハブ80と一体化していてもよい。針ハブ80は中空の針100とチューブ60との間の接続部を形作っている。針100は中空の針として示されているが、他の実施形態では硬質又は軟質のカニューレに置き換え可能であることも考えられる。針100は細長い中空の金属針で構成されていてもよいが、他の構成も考えられる。実施形態の中には、例えば針100の本体が90度に、又は望みであれば他のどのような角度に曲がっているものがあってもよい。針100が本体104を形作っていてもよい。本体104は第1の端部104aから、第1の端部104aとは反対側にある第2の端部104bまで伸びている。中空の針100の第2の端部104bは、患者の皮膚に突き刺さるように、すなわち、一次容器20のチャンバ26から患者へ薬物を送り込むように構成されていてもよい。そういう意味で、第2の端部104bが鋭い先端を形作っていてもよい。一次容器20がチューブ60の第1の端部64aに取り付けられる一方で、針100の第1の端部104aがチューブ60の第2の端部64bに取り付けられる。この構成では、チューブ60が含まれることにより、流路の形成に用いられる部材の数が最小限に抑えられるので、接着剤による接合部が複数除去される。更に、この設計により、針100を投薬器のいずれの部位にも、一次容器20に関連する構造上の制限を何ら受けることなく、配置することができる。
【0014】
一次容器アセンブリ10が含む針ハブ80が更に、針100に取り付けられていてもよい。針ハブ80には、外面82aを形作っている本体82と、その中を伸びているチャネル84とがあってもよい。チューブ60の第2の端部64bは、少なくとも一部が針ハブ80のチャネル84の中に固定されるように構成されている。更に、中空の針100は、少なくとも一部がチャネル84の中に固定されるように構成されている。実施形態の中には、針100の少なくとも一部がチューブ60のチャネル68の中に収容可能であるものがあることも考えられる。
【0015】
図5A図6A、及び図6Bには針ハブの第1の実施形態80が示されており、図5Bには針ハブの第2の実施形態80’が示されている。針ハブ80の本体82が実質上、単一の軸のみに沿って伸びていてもよい。更に、本体82の一部の形が円錐台であってもよい。その機能については後述する。例えば、針ハブ80の本体82がその近位端に第1の部分83aを形作っており、第1の部分83aから遠位方向へ第2の部分83bを伸ばしていてもよい。第1の部分83aが実質的に細長い管を形作っていてもよく、第2の部分83bが円錐台形状であってもよい。それとは異なり、針ハブ80’には、別の部分に対して実質上90度に曲がっている部分があってもよい。針ハブ80、80’がチューブ60に除去不能に取り付けられてもよいと考えられる。針ハブ80、80’が別の形状であり、一次容器アセンブリ10、10’の構成要素と、又は、投薬器のうち内部に一次容器アセンブリ10、10’が収容されるべき部品と、特別な干渉状態を生じさせるように構成されていてもよい。
【0016】
図4に示されているように、チューブ60の第1の端部64aから第2の端部64bまで、チューブ60の本体64の軸に沿って測定される長さが第1の長さL1であってもよい。同様に、針100の基端から、患者の皮膚に刺さる先端までの長さが第2の長さL2であってもよい。第1の長さL1は第2の長さL2よりも長い。必要に応じ、第1の長さL1が第2の長さL2の2倍、3倍、4倍などであってもよい。
【0017】
先に説明されたとおり、一次容器アセンブリ10は、プランジャ50によって加えられる力で薬物を一次容器20のチャンバ26から、チューブ60、針ハブ80、及び針100を通して患者の体内へ流し込むように構成されている。一次容器20、チューブ60、及び針100が一体に組み合わされている構成により、薬物を取り巻く環境の無菌性が一次容器アセンブリ10の輸送と最終的な使用の場所での初期設定との全体を通して保証される。これに対して従来の一次容器では、一次容器を最終的な使用の場所で投薬システムの他の部品に連通させるのに、手間も時間もかかる作業が欠かせないので、流路の無菌性が損なわれかねない。一次容器アセンブリ10には、無菌性が損なわれる危険性が大幅に高まる流路がただ1本しかない。
【0018】
一次容器アセンブリ10が、流路の無菌性を更に確実に保ち、かつ針100との接触に伴う意図しない負傷を防止することを目的として、針シールド110を含んでもよい。針シールド110は針100の少なくとも一部の周囲に配置され、針ハブ80に取り外し可能に接続されている。図6Bを参照すると、針シールド110には本体114があってもよい。本体114は第1の端部114aから、第1の端部114aとは反対側にある第2の端部114bまで伸びている。針シールド110は軟質の材料で構成されているとも、硬質の材料で構成されているとも考えられる。例えば、針シールド110の本体114はゴムで構成されていてもよい。なお、他の種類の材料も考えられる。針シールド110が空洞118を形作っていてもよい。空洞118は第1の端部114aから本体114の中へ広がっており、軸方向における第1の端部114aと第2の端部114bとの中間に終端がある。針シールド100が使用される際、空洞118が針100の一部と、針ハブ80のうち少なくとも、針100を覆うための部分とを収容するように、空洞118の寸法が決められている。これにより、針100の無菌性が保証されると共に、人が針100の第2の端部104bとの接触によって負傷することが防止される。
【0019】
針ハブ80が空洞118の中に配置される際、その一部が針シールド110と締まりばめで結合して針ハブ80を針シールド110に固定してもよい。例えば、第2の部分83b(円錐台形状の部分)が締まりばめで針ハブ80を結合させてもよい。針ハブ80が空洞118の中へ挿入される際、針シールド110と接触する針ハブ80の第2の部分83bの直径が徐々に増大するので、最終的には針ハブ80が針シールド110と、締まりばめによって結合可能である。更に、一次容器アセンブリ10の輸送中、針100の露出部分の長さが所定値に確実に維持されるように、空洞118が設計されてもよい。一次容器アセンブリ10は輸送中、針100の所定長の部分に針シールド110との接触を維持させることにより、針100の無菌性を確実に維持すると共に、針100に針シールド110との衝突を確実に繰り返させない(そうしなければ、材料の破片が生じるかも知れないからである。)ことができる。
【0020】
図7Aを参照すると、一次容器アセンブリ10は更にカップ130を含んでもよい。カップ130は一次容器20の遠位端24bに取り付けられている。カップ130には実質的に中空の本体134があり、開いている近位端134aから実質的に閉じている遠位端134bまで伸びている。具体的には、近位端134aが開口部138を形作っていてもよく、本体134が、開口部138から本体134の中へ広がっている空洞142を形作っている。近位端134aが、一次容器20の遠位端24bに取り外し可能に取り付けられるように構成されていてもよい。1つの実施形態ではカップ130が一次容器20に締まりばめで取り付けられてもよい。しかし、カップ130を一次容器20に取り付けるのに、スナップフィット、ねじ、又は、一次容器20とカップ130とに貼られ、若しくは収縮包装されたラベルなどが利用可能であるとも考えられる。チューブ60がコイル状である場合、カップ130が一次容器20に取り付けられると、カップ130の少なくとも一部がチューブ60を覆ってもよい。その結果、チューブ60がコイル状に置かれている場合、チューブ60が実質上、カップ130の空洞142の中に収容されてもよい。これは、一次容器アセンブリ10の輸送中、薬物の充填又は使用を目的として一次容器アセンブリ10の梱包が解かれるまで、チューブ60をコイル状に保つように機能し得る。
【0021】
針シールド110が針ハブ80に取り付けられた後は、針シールド110を一次容器20に固定するのにカップ130が利用可能である。図7Aに示されているように、カップ130が延長部146を含んでもよい。延長部146はカップ130の遠位端134bから伸びており、その中を伸びているチャネル150を形作っている。カップ130がチューブ60のコイル状の部分に被されて一次容器20に取り外し可能に取り付けられると、針ハブ80と、それに取り付けられたチューブ60の少なくとも一部とが、延長部146のチャネル150の中に送り込まれてもよい。このとき、針シールド110が針ハブ80と針100とを覆ってもよい。針シールド110が更にカップ130に、特にカップ130の延長部146に、取り外し可能に固定されてもよい。針シールド110がカップ130に、スナップフィット、ねじ、又は、針シールド110とカップ130とに貼られ、若しくは収縮包装されたラベルなどで、取り外し可能に取り付けられてもよい。
【0022】
一次容器アセンブリ10の組み立てが完了した後は、その構成要素の梱包を以下のように解くことができる。最初に、針シールド110をカップ130及び針ハブ80から取り外すことができる。次に、カップ130を一次容器20から取り外して、コイル状のチューブ60を覆う位置から除去できる。この時点ではユーザが自由に、チューブ60をコイル状から巻きの取れた形状へ変化させることができる。これにより、チューブ60が一次容器の遠位端24b、特に一次容器20の延長部36の周りからほどかれる。
【0023】
一次容器アセンブリ10は、チューブ60をコイル状に固定することを目的としてカップ130を含むものとして図示され、説明されているが、他の実施形態では同じ目的で他の器具が利用されてもよいことが考えられる。例えば、(螺旋状のねじ等)周方向の溝が延長部36によって形作られていてもよいことが考えられる。この場合、チューブ60が溝の中に嵌まって延長部36に固定されるように、延長部36の周りに巻き付けられてもよい。この構成ではカップ130があってもなくてもよい。他の構成でも同様である。
【0024】
図7Aが示す一次容器アセンブリ10はカップ130を1つだけ含み、コイル状のチューブ60と針シールド110とを一次容器20に固定するのに利用する。しかし、図7Bに示されているように、一次容器アセンブリの別の実施形態10’は第2のカップ160を含む。一次容器アセンブリ10’には前の一次容器アセンブリ10と同様な特徴が多いので、以下の説明の簡単化を目的として、それらの特徴には同様な符号を付し、それらについては説明をしない。第2のカップ160には本体164がある。本体164は、開いている第1の端部164aと、第1の端部164aとは反対側にある実質上閉じている第2の端部164bとを形作っている。具体的には、第1の端部164aが開口部168を形作っており、本体164が、開口部168から本体164の中へ広がっている空洞172を形作っている。第1の端部164aは、第1のカップ130の遠位端134bに取り外し可能に取り付けられるように構成されていてもよい。1つの実施形態では、第2のカップ160が第1のカップ130に締まりばめで取り付けられてもよい。しかし、第2のカップ160が第1のカップ130に、スナップフィット、ねじ、又は、第1のカップ130と第2のカップ160とに貼られ、若しくは収縮包装されたラベルなどで取り付けられてもよいことは考えられる。その他に、第1のカップ130及び第2のカップ160が一体に形成されていてもよい。そのような実施形態では、第1のカップ130及び第2のカップ160の間の接続部が破壊可能な部材で形成され、第1のカップ130及び第2のカップ160を手で切り離すことができてもよい。
【0025】
チューブ60がコイル状である場合、第2のカップ160が第1のカップ130に取り付けられたときに、第2のカップ160の少なくとも一部が針シールド110を覆ってもよい。更に、針100が針シールド110の中に収容されているときには、第2のカップ160の少なくとも一部が針ハブ80及び針100を覆ってもよい。第2のカップ160には、一次容器アセンブリ10’の輸送中、針シールド110を固定する機能があってもよく、更に、一次容器アセンブリ10’の構成要素の無菌性を守る機能があってもよい。図7A及び図7Bには、第1のカップ130及び/又は第2のカップ160を含む一次容器アセンブリの実施形態10、10’が示され、それらに関する説明がされたが、一次容器アセンブリの他の実施形態ではそのようなカップが含まれていなくてもよいことも考えられる。図7Bに示されている実施形態の1つの利点は、一次容器アセンブリ10’がその中心軸周りの対称性を持つことである。一次容器20に薬物を充填し、それらを取り扱い、それらを検査する際に、ある利点が生じるからである。例えば、第2のカップ160が、既存の充填機と接続されるように構成される。
【0026】
一次容器アセンブリ10、10’は、長手方向に伸びている中心軸の周りで比較的一様な形を成すという点で有利であるかも知れない。それらに対する薬物の充填及び検査を従来の方法で行うことができるからである。例えば、中身の薬物がカメラで検査される間、一次容器アセンブリ10、10’が高速で回転させられてもよい。そのような操作は、形が長手方向に伸びている中心軸の周りで非対称であれば、特に針に対し、一次容器の中心軸から離れる方向の力が加わることを許すものであれば、困難であろう。
【0027】
図8を参照すると、薬物を投与するように構成されている投薬器200の模式図が示されている。例えば投薬器200は、装着型注入器、携帯型注入器、又は患者への薬物の注入が可能な種類の器具であってもよいが、他の種類の器具も考えられる。図8に示されているように、投薬器200が、薬物の供給源として一次容器アセンブリ10、10’を利用するように構成されていてもよい。1つの実施形態では投薬器200に一次容器アセンブリ10、10’がエンドユーザの手で(先に説明されたとおり、針シールド110、第1のカップ130、及び/又は第2のカップ160が取り外された後に)実装されてもよい。その他に、投薬器200に一次容器アセンブリ10、10’の構成要素が投薬器200の製造者によって予め実装されてもよい。
【0028】
投薬器200が本体204を含んでもよい。本体204は、少なくとも一部が一次容器アセンブリ10、10’の構成要素(例えば、一次容器20、プランジャ50、チューブ60、及び針ハブ80)を収容して固定するように構成されている。この場合、本体204の少なくとも一部が中空であってもよい。投薬器200が更に入力部208を含んでもよい。入力部208は、一次容器アセンブリ10、10’の構成要素が投薬器200の本体204の中に設置される際、針ハブ80及び/又は針100に嵌め合わされるように構成されている。この嵌め合わせは、チューブ60を入力部208と連通させるものであってもよい。投薬器200は、入力部208と連通する出力部212をも含んでもよい。出力部212が、患者の皮膚に突き刺さるように構成されている針又はカニューレであってもよい。しかし、他の出力部も考えられる。その他に、投薬器200が出力部212を含まず、代わりに一次容器アセンブリ10、10’の針100が出力部として機能してもよいことが考えられる。投薬器200が使用される際、その中に一次容器アセンブリ10、10’の構成要素が収容されると、針ハブ80及び/又は針100が入力部208に、取り外し可能に結合してもよい。例えばその結合が、締まりばめ、ねじ、スナップフィットなどであってもよい。しかし、他の種類の取り付けも考えられる。投薬器200は、針ハブ80及び/又は針100が入力部208に嵌められた場合、選択に応じて一次容器20から薬物を排出してチューブ60へ通し、針ハブ80及び針100を通して入力部208へ入れ、入力部208から出力部212へ、出力部212から患者へ投与するように構成されていてもよい。投薬器200による一次容器アセンブリ10、10’の利用には、一次容器アセンブリ10、10’の取り付け前に(他の投薬器では必要とされたであろう)滅菌が必要ないという利点がある。これは、一次容器アセンブリ10、10’によって形作られる流路がアセンブリの全体で無菌状態を維持するからである。
【0029】
図9を参照すると、一次容器アセンブリ10、10’の組み立て方法300が示されている。方法300はステップ304で開始されてもよい。ステップ304は、一次容器20を準備するステップを含む。一次容器20は本体24を形作っており、本体24は近位端24aと遠位端24bとを有する。近位端24aは開口部28を形作っており、開口部28は、プランジャ50を収容するように構成されている。遠位端24bは近位端24aとは反対側にあり、出口32を形作っている。一次容器20はまたチャンバ26も形作っている。チャンバ26は近位端24aから遠位端24bまで伸びており、薬物を収容するように構成されている。ステップ308は、チューブ60が出口32と連通するようにチューブ60の第1の端部64aを一次容器20の遠位端24bに取り付けるステップを含んでもよい。ステップ308が、チューブ60の第1の端部64aの周囲に一次容器20の遠位端24bを型で成形するステップを含んでもよい。ステップ308が更に、チューブ60及び一次容器20を一体に形成するステップを含んでもよい。ステップ308の後のステップ312では、中空の針100がチューブ60の第2の端部64bに取り付けられてもよい。その後、ステップ316では一次容器20に薬物が充填されてもよい。
【0030】
図10A及び図10Bを参照すると、一次容器アセンブリ10、10’が、ネストアセンブリ400と接続されるように構成されていてもよい。具体的には、ネストアセンブリ400が複数の開口部404を形作っていてもよい。各開口部404は、一次容器アセンブリ10、10’を1つずつ収容するように構成されている。特に図10Bに示されているように、一次容器アセンブリ10、10’はネストアセンブリ400により、薬剤の充填に必要な向きの姿勢で収容されている。チューブ60、針シールド110、カップ130、又は他の関連する構成要素はいずれもネストアセンブリ400とは接触しないし、一次容器アセンブリ10、10’の向きにも一般には影響しない。
【0031】
この明細書には発明が、限られた数の実施形態を使って説明されているが、これらの特定の実施形態は、これら以外のものが特許請求の範囲には記載されているとおり、発明の範囲を限定することを目的とするものではない。この明細書に説明されている様々な要素の詳細な配置、並びに、項目及び方法のステップの順序は、それらに限定されるとみなされるべきではない。例えば方法のステップは、図面に示されている一連の参照符号及びブロックの進行を参照しながら説明されているが、望みであれば、その方法がどのような特定の順序で遂行されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B