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特許75542793’-O-アミノ-2’-デオキシリボヌクレオシド-5’-三リン酸を調製する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】3’-O-アミノ-2’-デオキシリボヌクレオシド-5’-三リン酸を調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/10 20060101AFI20240911BHJP
   C07H 19/20 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
C07H19/10
C07H19/20
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022559341
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2021057835
(87)【国際公開番号】W WO2021198040
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】20166719.3
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516304610
【氏名又は名称】ディーエヌエー スクリプト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウォジェハウスキー, フィリプ
(72)【発明者】
【氏名】イブェー, トーマス
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/110775(WO,A1)
【文献】米国特許第08034923(US,B1)
【文献】国際公開第2019/097233(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0265537(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)2’-デオキシリボヌクレオシドの5’-ヒドロキシ基を保護する工程;
(b)工程(a)で得られた化合物の(S)-3’-ヒドロキシ基を(R)-3’-ヒドロキシ基に変換する工程;
(c)工程(b)の生成物をN-ヒドロキシフタルイミドと反応させて5’-O-保護-3’-O-フタルイミド-2’-デオキシヌクレオシドを生成する工程;
(d)工程(c)の生成物の5’-ヒドロキシ基を脱保護する工程;
(e)工程(d)の生成物を3’-O-(N-アセトン-オキシム)-2’-デオキシヌクレオシドに変換する工程;
(f)工程(e)の生成物の5’-ヒドロキシ基を三リン酸化して3’-O-(N-アセトン-オキシム)-2’-デオキシヌクレオシド三リン酸を生じさせる工程;および
(g)工程(f)の生成物をアリールオキシアミンで処理することによって工程(f)の生成物を3’-O-アミン-2’-デオキシヌクレオシド三リン酸に変換する工程
を含む3’-O-アミノ-2’-デオキシリボヌクレオシド-5’-三リン酸を調製する方法であって、前記アリールオキシアミンは、置換もしくは無置換O-ベンジルヒドロキシルアミン、置換もしくは無置換O-フェニルヒドロキシルアミン、置換もしくは無置換O-ベンジルオキシエチルヒドロキシルアミン、または置換もしくは無置換O-フェノキシエチルヒドロキシルアミンであり、置換基は、ハロ、メトキシおよびニトロから選択されるものであるかO-[4-(トリフルオロメチル)ベンジル]ヒドロキシルアミン、O-(2-メチルベンジル)ヒドロキシルアミン、またはO-[2-(トリフルオロメチル)フェニル]ヒドロキシルアミンである、方法。
【請求項2】
前記アリールオキシアミンは、O-ベンジルヒドロキシルアミン、O-フェニルヒドロキシルアミン、O-[(2-メトキシフェニル)メチル]ヒドロキシルアミン、O-[(3,5-ジクロロフェニル)メチル]ヒドロキシルアミン、O-(3-クロロベンジル)ヒドロキシルアミン、O-(4-ニトロベンジル)ヒドロキシルアミン、O-(4-メトキシベンジル)ヒドロキシルアミン、O-[(3,4-ジクロロフェニル)メチル]ヒドロキシルアミン、O-(2-クロロベンジル)ヒドロキシルアミン、O-[(2,5-ジクロロフェニル)メチル]ヒドロキシルアミン、O-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジル)ヒドロキシルアミン、O-(4-ニトロベンジル)ヒドロキシルアミン、O-(2-(ベンジルオキシ)エチル)ヒドロキシルアミン、O-(4-ブロモフェニル)ヒドロキシルアミン、およびO-(2-フェノキシエチル)ヒドロキシルアミンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アリールオキシアミンは、O-ベンジルヒドロキシルアミンまたはO-フェニルヒドロキシルアミンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
3’-O-アミノ-2’-デオキシリボヌクレオシド-5’-三リン酸およびアリールオキシアミンを2体積%未満の濃度で含有する水溶液を含む組成物であって、前記アリールオキシアミンは、置換もしくは無置換O-ベンジルヒドロキシルアミン、置換もしくは無置換O-フェニルヒドロキシルアミン、置換もしくは無置換O-ベンジルオキシエチルヒドロキシルアミン、または置換もしくは無置換O-フェノキシエチルヒドロキシルアミンであり、置換基は、ハロ、メトキシおよびニトロから選択されるものであるかO-[4-(トリフルオロメチル)ベンジル]ヒドロキシルアミン、O-(2-メチルベンジル)ヒドロキシルアミン、またはO-[2-(トリフルオロメチル)フェニル]ヒドロキシルアミンである、組成物。
【請求項5】
前記アリールオキシアミンは、O-ベンジルヒドロキシルアミンまたはO-フェニルヒドロキシルアミンである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記3’-O-アミノ-2’-デオキシリボヌクレオシド-5’-三リン酸は、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシル、イノシン、キサンチン、またはヒポキサンチンからなる群から選択される塩基を有する、請求項4または5に記載の組成物。
【請求項7】
前記3’-O-アミノ-2’-デオキシリボヌクレオシド-5’-三リン酸は、
からなる群から選択される塩基を有し、Zは、2’-デオキシリボース-5’-三リン酸の1’炭素、RはH、CH、または結合基のいずれかであり、XはNまたはC-Rのいずれかである、請求項4から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記結合基は、アルキルリンカー、アルケニルリンカー、チオエーテルリンカー、アミノアルキル、アミノアリル、アジドアルキル、アジドアリルプロパルギルアミン、ビスプロパルギル、またはビスプロパルギル-PEGである、請求項7に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
合成生物学、遺伝子組み換え、ハイスループットシーケンシング、および分子診断といった多くの分野における合成ポリヌクレオチドに対する需要の高まりのためだけでなく、例えば生成物の長さの上限、ならびに有機溶媒の使用および廃棄の必要性など、ポリヌクレオチドを合成するための化学的手法における制約のため、ポリヌクレオチドを合成するための酵素的手法に対する関心が近年高まっている(Jensenら、Biochemistry、57:1821~1832(2018))。酵素合成の魅力は、その特異性と効率の高さ、および危険な廃棄物を取り扱う必要がない穏やかな水性反応条件での使用である。
【0002】
現在、多くの酵素的手法は、テンプレート不要のポリメラーゼを使用して、支持体に付着した一本鎖イニシエーターまたは延長された鎖に3’-O-ブロックヌクレオシド三リン酸を付加し、続いて脱ブロックすることを所望の配列のポリヌクレオチドが得られるまで繰り返す(例えば、先に挙げたJensenら)。様々な3’-O-ブロック基が使用可能であるが、特に関心を集めるのは、その大きさが小さく、かつ切断条件が容易であるため、3’-アミノブロック基の使用である(例えば、US特許7544794および8212020)。3’-O-アミノ-2’デオキシリボヌクレオシド-5’-三リン酸の合成は、対応する2’-デオキシリボヌクレオシドから出発する図1に示されるスキームのとおりである。5’ヒドロキシ基の保護の後、O-アミノ部分は、続く光延条件下での2回のヒドロキシ反転を通して3’位に挿入されるN-ヒドロキシフタルイミド部分として「マスクされた」(または保護された)形態で供給される(Swamyら、Chem.Rev.109:2551~2651(2009))。次いで、ヌクレオシドの3’-O-アミノ基および5’-ヒドロキシ基は、何れも脱保護される。しかし、5’-ヒドロキシ基の三リン酸化は、3’-O-アミノ基が再度保護されることを必要とし、これは、3’-O-アミノ基をオキシムに変換することによって達成され、次いでオキシムは、三リン酸化反応後にアルコキシルアミンを用いる処理によって最終的に脱保護される。しかし、この従来の脱保護手法は、3’-O-アミンをさらに切断してしまう。ポリヌクレオチド合成における酵素カップリング反応で3’-ヒドロキシル-2’-デオキシヌクレオシド三リン酸が存在すると、成長する鎖への二重付加を起こし、ポリヌクレオチド生成物中に除去困難な「n+1」失敗配列(failure sequence)が生成される。
【0003】
上記を鑑み、3’-ヒドロキシル-2’-デオキシヌクレオシド三リン酸夾雑物を存在させることなく、3’-O-アミノ-2’-デオキシヌクレオシド三リン酸の合成に方法を使用することができれば、テンプレート不要のポリメラーゼを使用するポリヌクレオチドの酵素合成は進展するだろう。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、3’-ヒドロキシ-2’-デオキシリボヌクレオシド-5’-三リン酸夾雑物が低減された3’-O-アミノ-2’-デオキシリボヌクレオシド-5’-三リン酸を調製する方法に関する。本発明は、本発明の方法によって製造される組成物も含む。
【0005】
一部の実施形態において、そのような本発明の方法は、以下の工程を含む:
(a)2’-デオキシリボヌクレオシドの5’-ヒドロキシ基を保護する工程;(b)工程(a)で得られた化合物の(S)-3’-ヒドロキシ基を(R)-3’-ヒドロキシ基に変換する工程;(c)工程(b)の生成物をN-ヒドロキシフタルイミドと反応させて5’-O-保護-3’-O-フタルイミド-2’-デオキシヌクレオシドを生成する工程;(d)工程(c)の生成物の5’-ヒドロキシ基を脱保護する工程;(e)工程(d)の生成物を3’-O-(N-アセトン-オキシム)-2’-デオキシヌクレオシドに変換する工程;(f)工程(e)の生成物の5’-ヒドロキシ基を三リン酸化して3’-O-(N-アセトン-オキシム)-2’-デオキシヌクレオシド三リン酸を生じさせる工程;および(g)工程(f)の生成物をアリールオキシアミンで処理することによって工程(f)の生成物を3’-O-アミン-2’-デオキシヌクレオシド三リン酸に変換する工程。
【0006】
一部の実施形態において、そのような組成物は、3’-O-アミノ-2’-デオキシリボヌクレオシド-5’-三リン酸およびアリールオキシアミンを2体積%未満の濃度で含有する水溶液を含む。
【0007】
本発明の前述したこれらの特徴的な態様、および他の態様を、その一部が図で示され、かつ続く特許請求の範囲の節において特徴付けられる、説明される多数の実装形態および用途において例示する。しかし、上記の発明の概要は、本発明の説明される各実施形態または全ての実装形態を記載することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】3’-O-アミン-2’-デオキシヌクレオシド三リン酸単量体を製造するための従来の合成スキームを説明する図である。
図2】ベンジルヒドロキシルアミンを使用して3’-アセトン-オキシム-ヌクレオシド-三リン酸を3’-ONH2-ヌクレオシド三リン酸へ変換または脱保護するための本発明の実施形態を説明する図である。
図3A】実施例1に記載されるクルード反応生成物のクロマトグラムである。
図3B】実施例1の所望される3’-O-アミノ-2’-デオキシグアノシン-5’-三リン酸生成物のクロマトグラムである。
図4-1】本発明にかかる3’-O-アミノ-2’-デオキシリボヌクレオシド-5’-三リン酸用の塩基の例を説明する図であり、Zは2’-デオキシリボース-5’-三リン酸の1’炭素、RはH、CH、または結合基のいずれかであり、XはNまたはC-Rのいずれかである。
図4-2】本発明にかかる3’-O-アミノ-2’-デオキシリボヌクレオシド-5’-三リン酸用の塩基の例を説明する図であり、Zは2’-デオキシリボース-5’-三リン酸の1’炭素、RはH、CH、または結合基のいずれかであり、XはNまたはC-Rのいずれかである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一般的原理は、特に、図面に示され、かつ詳細に説明されるような例として本明細書により詳細に開示される。しかし、記載される特定の実施形態に本発明を限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。本発明は、いくつかの実施形態についてその詳細が示される、様々な変形例および代替形態を受け入れる。本発明の原理および範囲に含まれる全ての変形例、均等物、および代替例を包含するよう意図される。
【0010】
本発明は、共通の工程:
(a)2’-デオキシリボヌクレオシドの5’-ヒドロキシ基を保護する工程;
(b)工程(a)で得られた化合物の(S)-3’-ヒドロキシ基を(R)-3’-ヒドロキシ基に変換する工程;
(c)工程(b)の生成物をN-ヒドロキシフタルイミドと反応させて5’-O-保護-3’-O-フタルイミド-2’-デオキシヌクレオシドを生成する工程;
(d)工程(c)の生成物の5’-ヒドロキシ基を脱保護する工程;
(e)工程(d)の生成物を3’-O-(N-アセトン-オキシム)-2’-デオキシヌクレオシドに変換する工程;
(f)工程(e)の生成物の5’-ヒドロキシ基を三リン酸化して3’-O-(N-アセトン-オキシム)-2’-デオキシヌクレオシド三リン酸を生じさせる工程;および
(g)工程(f)の生成物を3’-O-アミン-2’-デオキシヌクレオシド三リン酸に変換する工程
を用いて3’-O-アミノ-2’-デオキシリボヌクレオシド-5’-三リン酸を調製する方法に関する。
【0011】
「(R)-3’-ヒドロキシ基」といったように、基または部分に先行する「(S)」または「(R)」という用語は、当該基に置換される炭素の絶対配置を意味する。炭素の位置は、「(S)」または「(R)」という用語に続く場合もある。「(R)-3’-ヒドロキシ基」において、ヒドロキシ基で置換される3’位の炭素の絶対配置はR配置である。
【0012】
アデニン、グアニン、シトシン、チミン、およびウラシルの2’-デオキシヌクレオシドは、それぞれ、2’-デオキシアデノシン、2’-デオキシグアノシン、2’-デオキシシチジン、2’-デオキシチミジン、および2’-デオキシウリジンである。
【0013】
上記の共通の工程は、数多くの具体的な実施形態と共に以下の文献に開示される:DeClercqら、欧州特許出願EP0381335;近藤ら、Symp.Nucleic Acids Chem.、16:93~96(1985);Burgessら、J.Chem.Soc.Chem.Comm.8:915~916(1994);Hutterら、Nucleosides、Nucleotides&Nucleic Acids、29(11):879~895(2010);Saracら、国際特許公開WO2020/043846;米国特許7544794;8034923;8212020;および10472383。
【0014】
本発明によると、図2に説明されるように、工程(f)の3’-O-(N-アセトン-オキシム)-2’-デオキシヌクレオシド三リン酸は、アリールオキシアミンで処理することによって3’-O-アミン-2’-デオキシヌクレオシド三リン酸に変換される。一部の実施形態において、アリールオキシアミンは、無置換もしくは置換O-ベンジルヒドロキシルアミン、または置換もしくは無置換フェニルヒドロキシルアミンである。例示的置換基として、メトキシ、ニトロ、ハロが挙げられ、ハロは、特にフルオロ、クロロ、またはブロモである。例示的置換O-ベンジルヒドロキシルアミンとして、O-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジル)ヒドロキシルアミンおよびO-(4-ニトロベンジル)ヒドロキシルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、本発明の方法で使用されるアリールオキシアミンは、O-ベンジルヒドロキシルアミンである。別の実施形態において、本発明の方法で使用されるアリールオキシアミンは、置換または無置換フェニルヒドロキシルアミンである。上記のように、例示的置換基として、メトキシ、ニトロ、ハロが挙げられ、ハロは、特にフルオロ、クロロ、またはブロモである。変換工程(g)は、アリールオキシアミンの水溶液を使用して行われてよい。一部の実施形態において、ピリミジン3’-O-(N-アセトン-オキシム)-2’-デオキシヌクレオシド三リン酸は、6.8から7.0の間のpHで変換または脱保護されて3’-O-アミン-2’-デオキシヌクレオシド三リン酸を形成する。一部の実施形態において、プリン3’-O-(N-アセトン-オキシム)-2’-デオキシヌクレオシド三リン酸は、6.0から6.8の間のpHで変換または脱保護されて3’-O-アミン-2’-デオキシヌクレオシド三リン酸を形成する。一部の実施形態において、そのような変換に使用されるアリールオキシアミンの濃度は、変換を引き起こすのに十分高いが、ポリヌクレオチド合成に使用する前に3’-O-アミン-2’-デオキシヌクレオシド三リン酸を精製する必要がないほど十分低い濃度である。一部の実施形態において、そのようなアリールオキシアミンの濃度は、1から100パーセント(v/v)までの範囲内である。一部の実施形態において、そのようなアリールオキシアミンの濃度は、1から2パーセント(v/v)までの範囲内である。他の実施形態において、そのようなアリールオキシアミンの濃度は、2パーセント(v/v)未満である。他の実施形態において、そのようなアリールオキシアミンの濃度は、1パーセント(v/v)未満である。
【0015】
一部の実施形態において、本発明の方法で使用されるアリールオキシアミンとして、置換または無置換O-ベンジルヒドロキシルアミン、置換または無置換O-フェニルヒドロキシルアミン、置換または無置換O-フェニルエチルジドロキシルアミン、置換または無置換O-ベンジルオキシエチルヒドロキシルアミン、および置換または無置換O-フェノキシエチルヒドロキシルアミンが挙げられ、置換基は、ハロ、メトキシ、ニトロから選択される。一部の実施形態において、ハロは、フルオロ、クロロ、またはブロモである。一部の実施形態において、本発明の方法で使用されるアリールオキシアミンとして、O-ベンジルヒドロキシルアミン、O-フェニルヒドロキシルアミン、O-[(2-メトキシフェニル)メチル]ヒドロキシルアミン、O-[(3,5-ジクロロフェニル)メチル]ヒドロキシルアミン、O-(3-クロロベンジル)ヒドロキシルアミン、O-(4-ニトロベンジル)ヒドロキシルアミン、O-(4-メトキシベンジル)ヒドロキシルアミン、O-[(3,4-ジクロロフェニル)メチル]ヒドロキシルアミン、O-(2-クロロベンジル)ヒドロキシルアミン、O-[4-(トリフルオロメチル)ベンジル]ヒドロキシルアミン、O-[(2,5-ジクロロフェニル)メチル]ヒドロキシルアミン、O-(2-メチルベンジル)ヒドロキシルアミン、O-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジル)ヒドロキシルアミン、O-(4-ニトロベンジル)ヒドロキシルアミン、O-(2-(ベンジルオキシ)エチル)ヒドロキシルアミン、O-(4-ブロモフェニル)ヒドロキシルアミン、O-[2-(トリフルオロメチル)フェニル]ヒドロキシルアミン、またはO-(2-フェノキシエチル)ヒドロキシルアミンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0016】
3’-O-アミノ-2’-デオキシリボヌクレオシド-5’-三リン酸およびアリールオキシアミンを2体積%未満の濃度で含有する水溶液を含む組成物を提供することも本発明の目的である。特定の実施形態において、前記アリールオキシアミンは、O-ベンジルヒドロキシルアミンまたはO-フェニルヒドロキシルアミンである。特に、前記3’-O-アミノ-2’-デオキシリボヌクレオシド-5’-三リン酸は、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシル、イノシン、キサンチン、またはヒポキサンチンからなる群から選択される塩基を有してよい。ある実施形態において、3’-O-アミノ-2’-デオキシリボヌクレオシド-5’-三リン酸は、図4に示される塩基からなる群から選択される塩基を有する。有利には、結合基は、アルキルリンカー、アルケニルリンカー、チオエーテルリンカー、アミノアルキル、アミノアリル、アジドアルキル、アジドアリルプロパルギルアミン、ビスプロパルギル、またはビスプロパルギル-PEGである。
【実施例
【0017】
実施例1:プリン核酸塩基(A、G)3’-O-アミノ-2’-デオキシグアノシン-5’-三リン酸の脱保護
3’-O-(N-アセトン-オキシム)-2’-デオキシグアノシン-5’-三リン酸の溶液(5.0mL、5.0mmol、100mM原液)に、水5.0mLおよびO-ベンジルヒドロキシルアミン(6.2mL、50mmol)を加え、10%w/wの含水酢酸を添加することによってpHを6.5に調整した。反応を6時間攪拌した。ジエチルエーテル(3×50mL)で水性相を抽出した。水相を凍らせ、1時間凍結乾燥した。図3Aは、2時間後の上記クルード反応混合物のクロマトグラムである。有機溶媒を用いて過剰なO-ベンジルヒドロキシルアミンを液液抽出で除去する。3’-ONH2-ヌクレオシド三リン酸の水性組成物は、少量のO-ベンジルヒドロキシルアミン、酢酸ナトリウム、および塩化ナトリウムを含有してよい。図3Bは、3’-O-アミノ-2’-デオキシグアノシン-5’-三リン酸生成物のHPLCクロマトグラムである。実施例における液液抽出溶媒は、ジエチルエーテルであるが、メチルtert-ブチルエーテル、ジクロロメタン、トルエン、ペンタンなど、およびそれらの混合物といった任意の有機溶媒でありうる。
【0018】
実施例2:ピリミジン核酸塩基(T、C)3’-O-アミノ-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸の脱保護
3’-O-(N-アセトン-オキシム)-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸の溶液(5.0mL、5.0mmol、100mM原液)に、水5.0mLおよびO-ベンジルヒドロキシルアミン(6.2mL、50mmol)を加え、10%w/wの含水酢酸を添加することによってpHを6.8に調整した。反応を6時間攪拌した。ジエチルエーテル(3×50mL)で水性相を抽出した。水相を凍らせ、1時間凍結乾燥した。
図1
図2
図3A
図3B
図4-1】
図4-2】