(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】3次元造形物製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/236 20170101AFI20240911BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20240911BHJP
B29C 64/379 20170101ALI20240911BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20240911BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240911BHJP
B29C 64/245 20170101ALI20240911BHJP
B22F 12/86 20210101ALI20240911BHJP
B22F 12/20 20210101ALI20240911BHJP
B22F 10/20 20210101ALI20240911BHJP
【FI】
B29C64/236
B29C64/112
B29C64/379
B29C64/295
B33Y30/00
B29C64/245
B22F12/86
B22F12/20
B22F10/20
(21)【出願番号】P 2022564899
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2020043933
(87)【国際公開番号】W WO2022113224
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】川尻 明宏
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-517413(JP,A)
【文献】特開2015-205512(JP,A)
【文献】特開2017-047681(JP,A)
【文献】国際公開第2017/191567(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/236
B29C 64/112
B29C 64/379
B29C 64/295
B33Y 30/00
B29C 64/245
B22F 12/86
B22F 12/20
B22F 10/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元造形物を3次元積層造形によりパレット上に製造する3次元造形物製造装置であって、
搬入出位置、移載位置、及び加熱位置が所定方向に並ぶベースと、
前記ベース上の前記搬入出位置に前記パレットを搬入し、又は前記ベース上の前記搬入出位置から前記パレットを搬出するコンベアと、
前記ベース上の前記移載位置と、前記3次元造形物の3次元積層造形が行われる前記ベース上の造形領域との間を、前記パレットを載せた状態で移動可能なステージと、
前記ベース上の前記加熱位置に配設され、前記パレット上に3次元積層造形された前記3次元造形物を前記パレットごと加熱する加熱ユニットと、
前記コンベア、前記ステージ、及び前記加熱ユニットの間で前記パレットを移動させる移動ユニットと、を備え、
前記移動ユニットは、
前記搬入出位置、前記移載位置、及び前記加熱位置が並ぶ前記所定方向に沿って配設されるガイドレールと、
前記ガイドレールに案内されて移動可能なスライダーと、
前記スライダーに配設され、前記パレットを把持又は離脱する把持具と、
前記スライダーに配設され、前記把持具に把持される前記パレットの放熱を促進する冷却部と、
を備え
、前記スライダーを前記加熱ユニットの上まで移動させた状態で、前記冷却部により前記加熱ユニットの放熱を促進する3次元造形物製造装置。
【請求項2】
前記ベース上の前記搬入出位置は、搬入位置及び搬出位置を備え、
前記コンベアは、
前記ベース上の前記搬入位置に前記パレットを搬入する第1コンベアと、
前記ベース上の前記搬出位置から前記パレットを搬出する第2コンベアと、を備える請求項1に記載の3次元造形物製造装置。
【請求項3】
前記ベース上では、前記所定方向において、前記搬入位置に隣接して前記移載位置を配し、前記移載位置に隣接して前記加熱位置を配し、前記加熱位置に隣接して前記搬出位置を配する請求項2に記載の3次元造形物製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3次元造形物を3次元積層造形により製造する3次元造形物製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記3次元造形物製造装置に関し、種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載の技術では、3次元積層電子デバイスの製造装置において、絶縁層の上に、導電性粒子、紫外線硬化樹脂、及び有機溶剤が混ぜ合わされた導電性ペーストを吐出することによって、回路配線単層を形成する形成処理と、前記回路配線単層に紫外線を照射して前記回路配線単層を硬化させる硬化処理とを有し、前記形成処理と前記硬化処理で前記絶縁層に前記回路配線単層を積層することによって、少なくとも1層の前記回路配線単層が含まれる3次元積層造形物を造形する積層造形工程と、前記積層造形工程が終了した後で前記3次元積層造形物を加熱することによって3次元積層電子デバイスを製造する加熱工程とを備え、前記導電性ペーストの導電性は、前記硬化処理における紫外線の照射によって発現し、前記加熱工程における加熱によって向上する3次元積層電子デバイスの製造方法が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加熱工程では、基板が、その上面に3次元積層造形物が造形された状態のままで、加熱部で加熱される。そのため、製造装置には、加熱部に対して基板の入出を行うための移動ユニットが設けられる場合がある。それに加えて、製造装置には、その外部と、基板の上面に3次元積層造形物が造形される積層造形工程のエリアとの間において、基板の入出を行うための移動ユニットが設けられる場合もある。
【0006】
もっとも、加熱部は、3次元積層造形における加熱工程の特殊性より、上記のエリアから離れた位置に設けられる。これにより、上述した2つの移動ユニットは、各工程の専用品として、一つ一つ別々に設けられていた。
【0007】
本開示は、上述した点に鑑みてなされたものであり、コンベア、ステージ、及び加熱ユニットの間において、3次元積層造形により3次元造形物が製造されるパレットの移動を一つの移動ユニットで行うことを可能にして、サイズダウン及びコスト削減を図る3次元造形物製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、3次元造形物を3次元積層造形によりパレット上に製造する3次元造形物製造装置であって、搬入出位置、移載位置、及び加熱位置が所定方向に並ぶベースと、ベース上の搬入出位置にパレットを搬入し、又はベース上の搬入出位置からパレットを搬出するコンベアと、ベース上の移載位置と、3次元造形物の3次元積層造形が行われるベース上の造形領域との間を、パレットを載せた状態で移動可能なステージと、ベース上の加熱位置に配設され、パレット上に3次元積層造形された3次元造形物をパレットごと加熱する加熱ユニットと、コンベア、ステージ、及び加熱ユニットの間でパレットを移動させる移動ユニットと、を備え、移動ユニットは、搬入出位置、移載位置、及び加熱位置が並ぶ所定方向に沿って配設されるガイドレールと、ガイドレールに案内されて移動可能なスライダーと、スライダーに配設され、パレットを把持又は離脱する把持具と、スライダーに配設され、把持具に把持されるパレットの放熱を促進する冷却部と、を備え、スライダーを加熱ユニットの上まで移動させた状態で、冷却部により加熱ユニットの放熱を促進する3次元造形物製造装置を開示する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、3次元造形物製造装置は、コンベア、ステージ、及び加熱ユニットの間において、3次元積層造形により3次元造形物が製造されるパレットの移動を一つの移動ユニットで行うことを可能にして、サイズダウン及びコスト削減を図る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】3次元造形物製造装置を示すブロック図である。
【
図10】3次元造形物製造装置を示す平面図である。
【
図11】3次元造形物製造装置を示す平面図である。
【
図12】3次元造形物製造装置を示す側面図である。
【
図13】3次元造形物製造装置を示す側面図である。
【
図14】3次元造形物製造装置を示す平面図である。
【
図15】3次元造形物製造装置を示す側面図である。
【
図16】3次元造形物製造装置を示す側面図である。
【
図17】3次元造形物製造装置を示す側面図である。
【
図18】3次元造形物製造装置を示す側面図である。
【
図19】3次元造形物製造装置を示す平面図である。
【
図20】3次元造形物製造装置を示す側面図である。
【
図21】3次元造形物製造装置を示す平面図である。
【
図22】3次元造形物製造装置を示す側面図である。
【
図23】3次元造形物製造装置の変更例を示す平面図である。
【
図24】3次元造形物製造装置の変更例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の好適な実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1及び
図2に示されるように、3次元造形物製造装置1は、ベース10、ステージ12、第1インクジェットヘッド14、及び第2インクジェットヘッド16を備えている。ベース10は、概して長方形状をなしている。以下の説明では、ベース10の短手方向をX方向、ベース10の長手方向をY方向、X方向及びY方向の両方に直交する方向をZ方向と称して説明する。尚、Z方向は、上下方向である。
【0013】
ステージ12は、基台13を有している。基台13は、平板状に形成され、その上面において、パレットPが載せられる。パレットPには、鉄やステンレス等の金属で作られたものが使用される。基台13に載せられたパレットPは、そのX方向の両縁部が保持装置(図示省略)によって挟まれることで、基台13に固定的に保持される。また、昇降装置(図示省略)が、基台13の下方に配設されており、基台13をZ方向で昇降させる。
【0014】
第1インクジェットヘッド14は、基台13に載せられたパレットPの上に紫外線硬化樹脂を吐出するものである。紫外線硬化樹脂は、紫外線の照射により硬化する樹脂である。尚、第1インクジェットヘッド14は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式でもよく、紫外線硬化樹脂を加熱して気泡を発生させ複数のノズルから吐出するサーマル方式でもよい。
【0015】
第2インクジェットヘッド16は、基台13に載せられたパレットPの上に、金属インクを線状に吐出するものである。金属インクは、金属の微粒子が溶剤中に分散されたものである。尚、第2インクジェットヘッド16は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式によって複数のノズルから金属インクを吐出する。
【0016】
3次元造形物製造装置1は、更に、ステージ用ガイドレール18、第1ガイドレール20、及び第2ガイドレール22を備えている。ステージ用ガイドレール18は、ベース10の上において、Y方向に沿って設けられている。これに対して、第1,第2ガイドレール20,22は、ベース10の上において、Y方向で一定距離を空けながらX方向に沿って設けられており、ステージ用ガイドレール18とはその上方において立体交差することによって、ステージ用ガイドレール18と直交している。
【0017】
ステージ用ガイドレール18では、ステージ12がY方向に移動可能にされている。第1,第2ガイドレール20,22では、第1,第2インクジェットヘッド14,16がX方向に移動可能にされている。これらにより、ステージ12及び第1,第2インクジェットヘッド14,16が、ステージ用ガイドレール18と第1,第2ガイドレール20,22とが立体交差する付近にまで移動すると、第1,第2インクジェットヘッド14,16から、ステージ12の基台13に載せられたパレットPの上に、紫外線硬化樹脂及び金属インクを吐出させることが可能な状態になる。
【0018】
3次元造形物製造装置1は、更に、平坦化装置24、UV照射装置26、及び熱線照射装置28を備えている。平坦化装置24、UV照射装置26、及び熱線照射装置28は、第1,第2ガイドレール20,22の間において、ステージ用ガイドレール18の上方に並んで設けられている。これにより、ステージ12及びその基台13に載せられたパレットPは、平坦化装置24、UV照射装置26、及び熱線照射装置28の下方に移動することが可能である。
【0019】
平坦化装置24は、第1インクジェットヘッド14によってパレットPの上に吐出された紫外線硬化樹脂の上面を平坦化するものであり、例えば、紫外線硬化樹脂の表面を均しながら余剰分の樹脂を、ローラ又はブレードによって掻き取ることで、紫外線硬化樹脂の厚みを均一にさせる。また、UV照射装置26は、光源として水銀ランプ又はLEDを備えており、パレットPの上に吐出された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、パレットPの上に吐出された紫外線硬化樹脂が硬化し、樹脂層が形成される。
【0020】
熱線照射装置28は、パレットPの上に吐出された金属インクに赤外線又はレーザを照射する装置であり、赤外線又はレーザが照射された金属インクは焼成し、回路配線が形成される。尚、金属インクの焼成とは、エネルギーを付与することによって、溶媒の気化や金属微粒子保護膜の分解等が行われ、金属微粒子が接触または融着をすることで、導電率が高くなる現象である。そして、金属インクが焼成することで、金属製の回路配線が形成される。
【0021】
このようにして、3次元造形物製造装置1では、ステージ12の基台13に載せられたパレットPの上において、3次元造形物の3次元積層造形が行われる。つまり、ベース10の上では、ステージ用ガイドレール18と第1ガイドレール20とが立体交差する付近と、ステージ用ガイドレール18と第2ガイドレール22とが立体交差する付近との間を占める造形領域30において、3次元造形物の3次元積層造形が行われる。
【0022】
3次元造形物製造装置1は、更に、第1メンテナンス装置32及び第2メンテナンス装置34を備えている。ベース10の上では、第1,第2メンテナンス装置32,34が、造形領域30よりもX方向の外側において、第1,第2ガイドレール20,22の下方に位置するように設けられている。第1,第2メンテナンス装置32,34では、第1,第2インクジェットヘッド14,16に対して、例えば、ワイピング、キャッピング、フラッシング、又はパージ等のメンテナンスが行われる。尚、第1,第2メンテナンス装置32,34は、公知技術のため、その詳細な説明は省略する。
【0023】
3次元造形物製造装置1は、更に、加熱ユニット40、第1コンベア42、第2コンベア44、及び移動ユニット46等を備えている。更に、ベース10の上では、造形領域30よりもY方向の外側において、搬入位置200、移載位置202、加熱位置204、及び搬出位置206が、それらの記載順で、X方向に並んで設けられている。
【0024】
加熱ユニット40は、ベース10の加熱位置204に設けられている。加熱ユニット40は、所謂ホットプレート型の電気ヒータであって、電熱線又はセラミックヒータ等を備えており、加熱位置204の上方において、パレットPが載せられると、パレットPごと加熱して、パレットPの上の3次元造形物をその下面側から加熱する。尚、加熱ユニット40は、赤外線ランプ、赤外線ヒータ、又は電気炉で構成されてもよい。
【0025】
よって、例えば、パレットPの上の3次元造形物に対して、転写装置(図示省略)で導電性接着剤が転写される場合には、その導電性接着剤が加熱ユニット40の加熱により硬化する。また、第1インクジェットヘッド14から、上記の紫外線硬化樹脂に代えて、熱硬化性樹脂が吐出される場合には、その熱硬化性樹脂が加熱ユニット40の加熱により硬化する。尚、上記の転写装置は、公知技術のため、その詳細な説明は省略する。
【0026】
第1コンベア42は、X方向に沿った直線搬送型のコンベアであって、一端側が3次元造形物製造装置1の外部に配置されると共に、他端側がベース10の搬入位置200に配置されている。これにより、第1コンベア42は、パレットPを、3次元造形物製造装置1の外部から、平面視でベース10の搬入位置200に搬入することが可能である。
【0027】
ベース10の上では、第1コンベア42と加熱ユニット40との間において、移載位置202が配されている。移載位置202には、ステージ用ガイドレール18が延在している。これにより、ステージ12は、平面視でベース10の移載位置202と造形領域30との間を移動することが可能である。
【0028】
第2コンベア44は、X方向に沿った直線搬送型のコンベアであって、一端側がベース10の搬出位置206に配置されると共に、他端側が3次元造形物製造装置1の外部に配置されている。これにより、第2コンベア44は、パレットPを、平面視でベース10の搬出位置206から、3次元造形物製造装置1の外部に搬出することが可能である。
【0029】
このようにして、ベース10の上では、X方向において、搬入位置200に隣接して移載位置202が配され、移載位置202に隣接して加熱位置204が配され、加熱位置204に隣接して搬出位置206が配されている。
【0030】
移動ユニット46は、ガイドレール48及びスライダー50等を備えている。ガイドレール48は、ベース10の上において、搬入位置200、移載位置202、加熱位置204、及び搬出位置206(つまり、各位置200,202,204,206が並ぶX方向)に沿って設けられている。ガイドレール48では、スライダー50がX方向に移動可能にされている。尚、ガイドレール48は、側面視において、ステージ用ガイドレール18とはその上方において立体交差することによって、ステージ用ガイドレール18と直交している。
【0031】
移動ユニット46では、スライダー50の下面において、一対の係止爪52,52及び冷却口54等が設けられている。一対の係止爪52,52は、パレットPを把持又は離脱するものであって、スライダー50のX方向の両縁部から下方へ突出している。冷却口54は、冷風が吹き出すものであって、スライダー50のX方向の中央に配されている。
【0032】
図3に示されるように、3次元造形物製造装置1は、制御装置60を備えている。制御装置60は、コントローラ62及び複数の駆動回路64を有している。コントローラ62は、コンピュータを主体とするものであって、CPU,ROM,RAM等を備えており、複数の駆動回路64に接続されている。
【0033】
複数の駆動回路64には、上記の第1インクジェットヘッド14、第2インクジェットヘッド16、平坦化装置24、UV照射装置26、熱線照射装置28、第1メンテナンス装置32、第2メンテナンス装置34、加熱ユニット40、第1コンベア42、及び第2コンベア44が接続される。これにより、これらの機器の作動が、コントローラ62によって制御される。尚、この点は、ステージ12が備える上記の保持装置及び昇降装置についても、同様である。
【0034】
更に、複数の駆動回路64には、ステージスライド機構66、第1ヘッドスライド機構68、第2ヘッドスライド機構70、移動スライド機構72、把持装置74、及び冷却装置76が接続される。これにより、これらの機器の作動が、コントローラ62によって制御される。
【0035】
ステージスライド機構66は、上記のステージ用ガイドレール18に加えて、電磁モータ(図示省略)等を有している。ステージスライド機構66では、その電磁モータの駆動により、ステージ12が、ステージ用ガイドレール18において、Y方向の任意の位置に移動する。
【0036】
第1,第2ヘッドスライド機構68,70は、上記の第1,第2ガイドレール20,22に加えて、電磁モータ(図示省略)等を有している。第1,第2ヘッドスライド機構68,70では、それらの電磁モータの駆動により、第1,第2インクジェットヘッド14,16が、第1,第2ガイドレール20,22において、X方向の任意の位置に移動する。
【0037】
移動スライド機構72は、上記のガイドレール48に加えて、電磁モータ(図示省略)等を有している。移動スライド機構72では、その電磁モータの駆動により、移動ユニット46のスライダー50が、ガイドレール48において、X方向の任意の位置に移動する。これにより、スライダー50は、ステージ12において、搬入位置200、移載位置202、加熱位置204、及び搬出位置206の上方に移動することが可能である。
【0038】
把持装置74は、移動ユニット46に備えられている。把持装置74は、スライダー50において、一対の係止爪52,52を、モータ駆動又は空気圧駆動等によって、Z方向で上昇又は下降させ、X方向で近接又は離隔させるものである。これにより、一対の係止爪52,52は、パレットPのX方向の両縁端を挟むことによって、パレットPを把持することが可能となり、パレットPのX方向の両縁端から離れることによって、パレットPを離脱することが可能となる。
【0039】
冷却装置76は、移動ユニット46に備えられている。冷却装置76は、スライダー50内に設けられている。冷却装置76は、冷却口54から下方へ冷風を吹き出させるものである。冷却装置76には、ボルテックスチューブに圧縮空気を供給することによって冷風を発生させる装置が使用される。尚、冷却装置76は、冷却口54から圧縮空気を吹き出させるものであってもよいし、冷却口54から下方へ送風するファンであってもよい。
【0040】
次に、3次元造形物製造装置1で3次元造形物が3次元積層造形により製造される際のパレットPの移動について、移動ユニット46及びステージ12等の作動状況を参照しながら説明する。3次元造形物製造装置1において、3次元造形物の3次元積層造形が開始されると、上記の
図1の白抜き矢印で示されるように、パレットPが、第1コンベア42によって、3次元造形物製造装置1の外部から、平面視でベース10の搬入位置200に搬入される。
【0041】
パレットPが第1コンベア42で搬入されると、
図4及び
図5に示されるように、ベース10の上では、ステージ12が、移載位置202の上方に移動する。尚、このようなステージ12の移動は、パレットPの搬入前又は搬入中に行われてもよい。また、ベース10の上では、移動ユニット46のスライダー50が、搬入位置200の上方に移動する。更に、スライダー50では、一対の係止爪52,52が、Z方向で下降すると共にX方向で近接することによって、パレットPを把持する。
【0042】
パレットPが一対の係止爪52,52で把持されると、移動ユニット46のスライダー50では、一対の係止爪52,52が、Z方向で上昇することによって、パレットPを持ち上げる。更に、
図6に示されるように、ベース10の上では、スライダー50が、パレットPを持ち上げた状態を維持しながら、搬入位置200の上方から移載位置202の上方に向かう。
【0043】
これにより、
図7に示されるように、ベース10の上では、移動ユニット46のスライダー50が、移載位置202の上方に移動する。その後、スライダー50では、一対の係止爪52,52が、Z方向で下降することによって、パレットPをステージ12に置いた状態にする。更に、スライダー50では、一対の係止爪52,52が、X方向で離隔すると共にZ方向で上昇することによって、パレットPを離脱する。これにより、パレットPが、ステージ12に載せられる。
【0044】
そして、
図9に示されるように、ステージ12は、パレットPが載せられた状態を維持しながら、ステージ用ガイドレール18と第1ガイドレール20とが立体交差する付近にまで移動する。更に、その付近において、第1インクジェットヘッド14が、ステージ12、つまりパレットPの上方に移動する。これにより、パレットPの上には、第1インクジェットヘッド14から吐出された紫外線硬化樹脂が積層される。その後、ステージ12は、平坦化装置24及びUV照射装置26の下方に移動する。これにより、パレットPの上に吐出された紫外線硬化樹脂が硬化して、3次元造形物100の樹脂層が形成される。
【0045】
また、
図10に示されるように、ステージ12は、パレットPが載せられた状態を維持しながら、ステージ用ガイドレール18と第2ガイドレール22とが立体交差する付近にまで移動する。更に、その付近において、第2インクジェットヘッド16が、ステージ12、つまりパレットPの上方に移動する。これにより、パレットPの上には、第2インクジェットヘッド16から吐出された金属インクが積層される。その後、ステージ12は、熱線照射装置28の下方に移動する。これにより、パレットPの上に吐出された金属インクが焼成され、3次元造形物100の回路配線が形成される。
【0046】
このようにして、ステージ12が平面視でベース10の造形領域30内を移動し、3次元造形物100の樹脂層及び回路配線の形成が繰り返し行われることによって、パレットPの上には、3次元造形物100が3次元積層造形される。
【0047】
3次元造形物100が3次元積層造形されると、
図11及び
図12に示されるように、ベース10の上において、ステージ12が、パレットPが載せられた状態を維持しながら、移載位置202の上方に移動する。その後、移動ユニット46のスライダー50では、一対の係止爪52,52が、Z方向で下降すると共にX方向で近接することによって、ステージ12の上のパレットPを把持する。
【0048】
パレットPが一対の係止爪52,52で把持されると、移動ユニット46のスライダー50では、一対の係止爪52,52が、Z方向で上昇することによって、パレットPを持ち上げる。更に、
図13に示されるように、ベース10の上において、スライダー50が、パレットPを持ち上げた状態を維持しながら、移載位置202の上方から加熱位置204の上方に向かう。
【0049】
これにより、
図14に示されるように、ベース10の上では、移動ユニット46のスライダー50が、加熱位置204の上方に移動する。その後、
図15に示されるように、スライダー50では、一対の係止爪52,52が、Z方向で下降することによって、パレットPを加熱ユニット40に置いた状態にする。更に、スライダー50では、一対の係止爪52,52が、X方向で離隔すると共にZ方向で上昇することによって、パレットPを離脱する。これにより、パレットPが、加熱ユニット40に載せられる。
【0050】
その後、加熱ユニット40では、パレットP上に3次元積層造形された3次元造形物100がパレットPごと加熱される。その際、ベース10の上では、移動ユニット46のスライダー50が、加熱ユニット40から受ける熱から逃れるため、例えば、
図16に示されるように、加熱位置204の上方から移載位置202の上方に移動する。もっとも、スライダー50は、加熱ユニット40から熱を受けても悪影響が生じない場合には、加熱位置204の上方に止まっていてもよい。
【0051】
加熱ユニット40による加熱が終了すると、ベース10の上では、移動ユニット46のスライダー50が、加熱位置204の上方に移動する。その後、
図17に示されるように、スライダー50では、一対の係止爪52,52が、Z方向で下降すると共にX方向で近接することによって、パレットPを把持する。その際、スライダー50では、3つの矢印で示されるように、冷却口54から冷風が下方へ吹き出す。これにより、冷却口54からの冷風がパレットP及び3次元造形物100に吹き当たるので、パレットPの放熱(つまり、冷却)が促進される。
【0052】
パレットPが一対の係止爪52,52で把持されると、移動ユニット46のスライダー50では、一対の係止爪52,52が、Z方向で上昇することによって、パレットPを持ち上げる。更に、
図18に示されるように、ベース10の上では、スライダー50が、パレットPを持ち上げた状態と冷却口54から冷風が下方へ吹き出した状態とを維持しながら、加熱位置204の上方から搬出位置206の上方に向かう。
【0053】
これにより、ベース10の上では、パレットPが、移動ユニット46のスライダー50によって、加熱位置204の上方から搬出位置206の上方に移動している最中であっても、パレットPの放熱(つまり、冷却)が促進される。
【0054】
更に、
図19に示されるように、ベース10の上では、移動ユニット46のスライダー50が、搬出位置206の上方に移動する。その後、
図20に示されるように、スライダー50では、一対の係止爪52,52が、Z方向で下降することによって、パレットPを第2コンベア44に置いた状態にする。更に、スライダー50では、一対の係止爪52,52が、X方向で離隔すると共にZ方向で上昇することによって、パレットPを離脱する。これにより、パレットPが、第2コンベア44に載せられる。
【0055】
その後、移動ユニット46のスライダー50では、冷却口54における冷風の吹き出しが停止される。尚、このような停止は、パレットPの冷却実績から予め設定されたタイミングで行われてもよいし、パレットPの測定温度等に基づいて行われてもよい。
【0056】
パレットPが第2コンベア44に載せられると、
図21において、白抜き矢印で示されるように、パレットPは、第2コンベア44によって、平面視でベース10の搬出位置206から、3次元造形物製造装置1の外部に搬出される。また、ベース10の上では、移動ユニット46のスライダー50が、搬出位置206の上方から加熱位置204の上方に向かう。
【0057】
これにより、
図22に示されるように、ベース10の上では、移動ユニット46のスライダー50が、加熱位置204の上方に移動する。その後、スライダー50では、3つの矢印で示されるように、冷却口54から冷風が下方へ吹き出す。これにより、冷却口54からの冷風が加熱ユニット40に吹き当たるので、加熱ユニット40の放熱(つまり、冷却)が促進される。尚、スライダー50は、冷却口54から冷風が下方へ吹き出した状態を維持しながら、加熱ユニット40の上方を往復動してもよい。
【0058】
その後、移動ユニット46のスライダー50では、冷却口54における冷風の吹き出しが停止される。尚、このような停止は、加熱ユニット40の冷却実績から予め設定されたタイミングで行われてもよいし、加熱ユニット40の測定温度等に基づいて行われてもよい。
【0059】
このようにして、3次元造形物製造装置1では、移動ユニット46が、第1コンベア42、ステージ12、加熱ユニット40、及び第2コンベア44の間において、パレットPを移動させている。
【0060】
以上詳細に説明したように、本実施形態の3次元造形物製造装置1は、第1コンベア42、第2コンベア44、ステージ12、及び加熱ユニット40の間において、3次元積層造形により3次元造形物100が製造されるパレットPの移動を、一つの移動ユニット46で行うことを可能にして、サイズダウン及びコスト削減を図っている。
【0061】
ちなみに、本実施形態において、第1コンベア42及び第2コンベア44は、コンベアの一例である。一対の係止爪52,52及び把持装置74は、把持具の一例である。冷却口54及び冷却装置76は、冷却部の一例である。搬入位置200及び搬出位置206は、搬出入位置の一例である。X方向は、所定方向の一例である。
【0062】
尚、本開示は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、移動ユニット46のスライダー50においては、冷却口54における冷風の吹き出しが、間欠的に行われてもよい。
【0063】
また、
図23に示されるように、第2コンベア44は、Y方向に沿った直線搬送型のコンベアであってもよい。この点は、第1コンベア42についても、同様である。
【0064】
更に、
図24に示されるように、ベース10の上において、加熱位置204と搬出位置206とがお互いに入れ替わってもよい。このような入れ替わりは、搬入位置200、移載位置202、加熱位置204、及び搬出位置206の間において可能である。尚、このような入れ替わりに伴って、第1コンベア42、ステージ12、加熱ユニット40、及び第2コンベア44の配設箇所もお互いに入れ替わる。
【0065】
また、第1コンベア42と第2コンベア44のうち、いずれか一方を省いてもよい。例えば、第1コンベア42を省いた場合には、第2コンベア44によって、パレットPが、3次元造形物製造装置1の外部から、平面視でベース10の搬出位置206に搬入される。これに対して、第2コンベア44を省いた場合には、第1コンベア42によって、パレットPが、平面視でベース10の搬入位置200から、3次元造形物製造装置1の外部に搬出される。
【符号の説明】
【0066】
1:3次元造形物製造装置、10:ベース、12:ステージ、30:造形領域、40:加熱ユニット、42:第1コンベア、44:第2コンベア、46:移動ユニット、48:ガイドレール、50:スライダー、52:係止爪、54:冷却口、74:把持装置、76:冷却装置、100:3次元造形物、200:搬入位置、202:移載位置、204:加熱位置、206:搬出位置、P:パレット