(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】エアロゾル生成装置の電源ユニット
(51)【国際特許分類】
A24F 40/53 20200101AFI20240911BHJP
A24F 40/90 20200101ALI20240911BHJP
【FI】
A24F40/53
A24F40/90
(21)【出願番号】P 2023520810
(86)(22)【出願日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2022008329
(87)【国際公開番号】W WO2022239378
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2021079744
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 達也
(72)【発明者】
【氏名】川中子 拓嗣
(72)【発明者】
【氏名】長浜 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤木 貴司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亮
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特許第6864140(JP,B1)
【文献】国際公開第2019/077710(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
電源と、
前記電源から供給される電力を消費してエアロゾル源を加熱するヒータが接続されるヒータコネクタと、
前記電源から前記ヒータへの電力の供給を制御する制御回路と、
前記電源の状態を監視する電源監視回路と、
第1制御端子を有し、前記第1制御端子への入力に基づいて前記電源への充電を遮断する充電遮断スイッチと、
第2制御端子を有し、前記第2制御端子への入力に基づいて前記電源からの放電を遮断する放電遮断スイッチと、
前記電源の状態に基づいて前記第1制御端子及び前記第2制御端子の少なくとも一方に制御信号を供給する保護回路と、を備え、
前記電源監視回路は、前記電源の状態が第1条件集合の何れかの条件を満たす場合に、前記電源の充電と、前記電源から前記ヒータへの電力の供給との少なくとも一方を、少なくとも一時的に制限するための動作を行い、
前記保護回路は、前記電源の状態が第2条件集合の何れかの条件を満たす場合に、前記充電遮断スイッチ及び前記放電遮断スイッチの少なくとも一方をオフし、
前記第1条件集合は、前記電源の第1物理量に関する条件を含み、
前記第2条件集合は、前記電源の前記第1物理量に関する条件を含む、電源ユニット。
【請求項2】
前記第1条件集合に含まれる前記第1物理量に関する条件は、前記第2条件集合に含まれる前記第1物理量に関する条件よりも厳しい、請求項1に記載の電源ユニット。
【請求項3】
前記第1条件集合に含まれる前記第1物理量に関する条件は、前記第2条件集合に含まれる前記第1物理量に関する条件よりも先に満たされる、請求項1に記載の電源ユニット。
【請求項4】
前記第1条件集合は、
前記第1物理量と第1閾値との比較に関する条件と、
前記第1物理量と、前記第1閾値とは異なる第2閾値との比較に関する条件と、を含み、
前記第2条件集合は、前記第1物理量と第3閾値との比較に関する条件を含み、
前記第1閾値と前記第2閾値との差は、前記第1閾値と前記第3閾値との差よりも小さく、前記第2閾値と前記第3閾値との差よりも小さい、請求項1乃至3の何れか1項に記載の電源ユニット。
【請求項5】
前記第3閾値は、前記第2閾値よりも大きく、
前記第2閾値は、前記第1閾値よりも大きい、請求項4に記載の電源ユニット。
【請求項6】
前記電源監視回路は、第1出力端子と、第2出力端子とを有し、
前記電源の状態が、前記第1物理量と前記第1閾値との比較に関する条件を満たす場合に、前記第1出力端子から第1エラー信号を出力し、
前記電源の状態が、前記第1物理量と前記第2閾値との比較に関する条件を満たす場合に、前記第2出力端子から第2エラー信号を出力する、請求項4又は5に記載の電源ユニット。
【請求項7】
前記電源監視回路は、前記電源の状態が前記電源の第1物理量に関する条件を満たす場合に、前記電源の充放電を永久に禁止する故障状態に前記電源ユニットを遷移しない、請求項1乃至6の何れか1項に記載の電源ユニット。
【請求項8】
前記電源監視回路は、前記電源の残量が第1下限値未満であると判定した場合に、前記電源からの放電を制限するための動作を行い、
前記保護回路は、前記電源の残量が、前記第1下限値よりも低い第2下限値未満であると判定した場合に、前記放電遮断スイッチをオフにし、
前記制御回路は、前記電源の残量が、前記第2下限値よりも低い第3下限値未満であると判定した場合に、前記電源の充放電を永久に禁止する故障状態に前記電源ユニットを遷移するための動作を行う、請求項1乃至5の何れか1項に記載の電源ユニット。
【請求項9】
前記制御回路は、前記電源監視回路から取得される情報を使用せずに、前記電源の残量が前記第3下限値未満かどうかを判定可能である、請求項8に記載の電源ユニット。
【請求項10】
前記電源の残量が前記第2下限値未満であると判定することによってオフにした前記放電遮断スイッチをオンに戻すための条件は、前記電源の残量が前記第3下限値よりも大きいと前記制御回路が判定することを含む、請求項8又は9に記載の電源ユニット。
【請求項11】
前記第1条件集合は、前記電源の前記第1物理量とは異なる前記電源の第2物理量に関する条件を含み、
前記第2条件集合は、前記電源の前記第2物理量に関する条件を含まない、請求項1乃至10の何れか1項に記載の電源ユニット。
【請求項12】
前記第1条件集合に含まれる前記第2物理量に関する条件は、前記電源の充放電を永久に禁止する故障状態に前記電源ユニットを遷移するための条件を含む、請求項11に記載の電源ユニット。
【請求項13】
前記第1条件集合は、前記電源の温度が上限温度よりも高いことに関する条件を含み、
前記第2条件集合は、前記電源の温度に関する条件を含まず、
前記制御回路は、前記電源の温度が上限温度よりも高いことに関する条件を満たす場合に、前記電源の充放電を永久に禁止する故障状態に前記電源ユニットを遷移する、請求項11又は12に記載の電源ユニット。
【請求項14】
前記第1条件集合に含まれる前記第2物理量に関する条件は、前記電源の充電又は前記電源から前記ヒータへの電力の供給の制限を解消するためにユーザによる動作を必要としない状態に前記電源ユニットを遷移するための条件を含む、請求項11乃至13の何れか1項に記載の電源ユニット。
【請求項15】
前記第1条件集合は、前記電源の温度が下限温度よりも低いことに関する条件を含み、
前記第2条件集合は、前記電源の温度に関する条件を含まず、
前記制御回路は、前記電源の温度が下限温度よりも低いことに関する条件を満たす場合に、前記電源の放電又は充電の制限を解消するためにユーザによる動作を必要としない状態に前記電源ユニットを遷移する、請求項14に記載の電源ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル生成装置の電源ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電子たばこ等のエアロゾル生成装置はエアロゾルを形成するための液体を加熱するための構成を有している。特許文献1に記載された電池式加熱デバイスは、様々な電池特性を監視する燃料ゲージ回路を搭載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、電源の様々な特性を監視する電源監視回路を使用することによってエアロゾル生成装置の電源ユニットを保護するものの、この保護には改善の余地がある。本発明の一部の側面は、エアロゾル生成装置の電源ユニットの安全性を向上するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様によれば、エアロゾル生成装置の電源ユニットであって、
電源と、
前記電源から供給される電力を消費してエアロゾル源を加熱するヒータが接続されるヒータコネクタと、
前記電源から前記ヒータへの電力の供給を制御する制御回路と、
前記電源の状態を監視する電源監視回路と、
第1制御端子を有し、前記第1制御端子への入力に基づいて前記電源への充電を遮断する充電遮断スイッチと、
第2制御端子を有し、前記第2制御端子への入力に基づいて前記電源からの放電を遮断する放電遮断スイッチと、
前記電源の状態に基づいて前記第1制御端子及び前記第2制御端子の少なくとも一方に制御信号を供給する保護回路と、を備え、
前記電源監視回路は、前記電源の状態が第1条件集合の何れかの条件を満たす場合に、前記電源の充電と、前記電源から前記ヒータへの電力の供給との少なくとも一方を、少なくとも一時的に制限するための動作を行い、
前記保護回路は、前記電源の状態が第2条件集合の何れかの条件を満たす場合に、前記充電遮断スイッチ及び前記放電遮断スイッチの少なくとも一方をオフし、
前記第1条件集合は、前記電源の第1物理量に関する条件を含み、
前記第2条件集合は、前記電源の前記第1物理量に関する条件を含む、電源ユニットが提供される。
【0006】
この実施形態によれば、電源の特定の物理量について電源監視回路と保護回路との両方で監視をすることによって、どちらか一方が正常に動作しない場合であっても、電源ユニットを保護できる。
【0007】
第2態様によれば、前記第1条件集合に含まれる前記第1物理量に関する条件は、前記第2条件集合に含まれる前記第1物理量に関する条件よりも厳しい、第1態様に記載の電源ユニットが提供される。
【0008】
保護回路による保護が行われると制御回路が停止するため、当該保護が行われた状態からの復旧は容易ではない。一方、電源監視回路による保護が行われても制御回路は停止しないため、当該保護が行われた状態からの復旧は比較的容易である。この実施形態によれば、保護回路による保護の前に、電源監視回路による保護を実現できる。すなわち、電源監視回路に異常が生じていなければ、保護回路ではなく電源監視回路による保護が行われる。これにより、保護が行われた状態からの復旧を容易にできる。
【0009】
第3態様によれば、前記第1条件集合に含まれる前記第1物理量に関する条件は、前記第2条件集合に含まれる前記第1物理量に関する条件よりも先に満たされる、第1態様に記載の電源ユニットが提供される。
【0010】
保護回路による保護が行われると制御回路が停止するため、当該保護が行われた状態からの復旧は容易ではない。一方、電源監視回路による保護が行われても制御回路は停止しないため、当該保護が行われた状態からの復旧は比較的容易である。この実施形態によれば、保護回路による保護の前に、電源監視回路による保護を実現できる。すなわち、電源監視回路に異常が生じていなければ、保護回路ではなく電源監視回路による保護が行われる。これにより、保護が行われた状態からの復旧を容易にできる。
【0011】
第4態様によれば、前記第1条件集合は、
前記第1物理量と第1閾値との比較に関する条件と、
前記第1物理量と、前記第1閾値とは異なる第2閾値との比較に関する条件と、を含み、
前記第2条件集合は、前記第1物理量と第3閾値との比較に関する条件を含み、
前記第1閾値と前記第2閾値との差は、前記第1閾値と前記第3閾値との差よりも小さく、前記第2閾値と前記第3閾値との差よりも小さい、第1態様乃至第3態様の何れか1つに記載の電源ユニットが提供される。
【0012】
この実施形態によれば、電源監視回路による保護動作と、保護回路による保護動作とが同時に機能することを抑制しやすくなる。
【0013】
第5態様によれば、前記第3閾値は、前記第2閾値よりも大きく、
前記第2閾値は、前記第1閾値よりも大きい、第4態様に記載の電源ユニットが提供される。
【0014】
この実施形態によれば、保護回路による保護の前に、電源監視回路による保護を実現できる。すなわち、電源監視回路に異常が生じていなければ、保護回路ではなく電源監視回路による保護が行われる。これにより、保護が行われた状態からの復旧を容易にできる。
【0015】
第6態様によれば、前記電源監視回路は、第1出力端子と、第2出力端子とを有し、
前記電源の状態が、前記第1物理量と前記第1閾値との比較に関する条件を満たす場合に、前記第1出力端子から第1エラー信号を出力し、
前記電源の状態が、前記第1物理量と前記第2閾値との比較に関する条件を満たす場合に、前記第2出力端子から第2エラー信号を出力する、第4態様又は第5態様に記載の電源ユニットが提供される。
【0016】
この実施形態によれば、電源の状態に応じて別個のエラー処理が可能になるため、電源ユニットをより適切に保護できる。
【0017】
第7態様によれば、前記電源監視回路は、前記電源の状態が前記電源の第1物理量に関する条件を満たす場合に、前記電源の充放電を永久に禁止する故障状態に前記電源ユニットを遷移しない、第1態様乃至第6態様の何れか1つに記載の電源ユニットが提供される。
【0018】
この実施形態によれば、電源管理回路と保護回路との両方で監視される物理量について電源ユニットを故障状態にしないことによって、電源ユニットを過度に故障状態にすることを抑制できる。つまり、電源の異常が解消した後にエアロゾル生成装置を再び使用できるので、ユーザの利便性が高まる。
【0019】
第8態様によれば、前記電源監視回路は、前記電源の残量が第1下限値未満であると判定した場合に、前記電源からの放電を制限するための動作を行い、
前記保護回路は、前記電源の残量が、前記第1下限値よりも低い第2下限値未満であると判定した場合に、前記放電遮断スイッチをオフにし、
前記制御回路は、前記電源の残量が、前記第2下限値よりも低い第3下限値未満であると判定した場合に、前記電源の充放電を永久に禁止する故障状態に前記電源ユニットを遷移するための動作を行う、第1態様乃至第5態様の何れか1つに記載の電源ユニットが提供される。
【0020】
この実施形態によれば、電源の残量に応じた段階的な保護動作を実行できる。
【0021】
第9態様によれば、前記制御回路は、前記電源監視回路から取得される情報を使用せずに、前記電源の残量が前記第3下限値未満かどうかを判定可能である、第8態様に記載の電源ユニットが提供される。
【0022】
電源監視回路は、過放電状態や深放電状態といった電源が過剰に放電した状態において、電源の状態を取得することが困難である。この実施形態によれば、電源監視回路が電源の状態を正常に取得できない場合であっても、電源ユニットは、制御回路によって電源の状態を正しく判定できる。
【0023】
第10態様によれば、前記電源の残量が前記第2下限値未満であると判定することによってオフにした前記放電遮断スイッチをオンに戻すための条件は、前記電源の残量が前記第3下限値よりも大きいと前記制御回路が判定することを含む、第8態様又は第9態様に記載の電源ユニットが提供される。
【0024】
この実施形態によれば、深放電状態にあると判定された電源が充電されることを抑制できる。
【0025】
第11態様によれば、前記第1条件集合は、前記電源の前記第1物理量とは異なる前記電源の第2物理量に関する条件を含み、
前記第2条件集合は、前記電源の前記第2物理量に関する条件を含まない、第1態様乃至第10態様の何れか1つに記載の電源ユニットが提供される。
【0026】
この実施形態によれば、一部の物理量を保護回路が監視しないため、保護回路のサイズやコストを低減できる。
【0027】
第12態様によれば、前記第1条件集合に含まれる前記第2物理量に関する条件は、前記電源の充放電を永久に禁止する故障状態に前記電源ユニットを遷移するための条件を含む、第11態様に記載の電源ユニットが提供される。
【0028】
この実施形態によれば、保護回路によって保護されない物理量に関するエラーに応じて電源ユニットを故障状態に遷移することによって、電源ユニットの安全性がいっそう向上する。
【0029】
第13態様によれば、前記第1条件集合は、前記電源の温度が上限温度よりも高いことに関する条件を含み、
前記第2条件集合は、前記電源の温度に関する条件を含まず、
前記制御回路は、前記電源の温度が上限温度よりも高いことに関する条件を満たす場合に、前記電源の充放電を永久に禁止する故障状態に前記電源ユニットを遷移する、第11態様又は第12態様に記載の電源ユニットが提供される。
【0030】
この実施形態によれば、保護回路によって保護されない電源の温度に関するエラーに応じて電源ユニットを故障状態に遷移することによって、電源ユニットの安全性がいっそう向上する。
【0031】
第14態様によれば、前記第1条件集合に含まれる前記第2物理量に関する条件は、前記電源の充電又は前記電源から前記ヒータへの電力の供給の制限を解消するためにユーザによる動作を必要としない状態に前記電源ユニットを遷移するための条件を含む、第11態様乃至第13態様の何れか1つに記載の電源ユニットが提供される。
【0032】
この実施形態によれば、自然に解消されることが見込まれるエラーに関してユーザによる動作を必要としないことによって、ユーザの利便性が高まる。
【0033】
第15態様によれば、前記第1条件集合は、前記電源の温度が下限温度よりも低いことに関する条件を含み、
前記第2条件集合は、前記電源の温度に関する条件を含まず、
前記制御回路は、前記電源の温度が下限温度よりも低いことに関する条件を満たす場合に、前記電源の放電又は充電の制限を解消するためにユーザによる動作を必要としない状態に前記電源ユニットを遷移する、第14態様に記載の電源ユニットが提供される。
【0034】
この実施形態によれば、自然に解消されることが見込まれる電源の低温状態に関してユーザによる動作を必要としないことによって、ユーザの利便性が高まる。
【発明の効果】
【0035】
第1形態によれば、エアロゾル生成装置の電源ユニットの安全性が向上する。
【0036】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。なお、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】一部の実施形態のエアロゾル生成装置の電源ユニットの外観例を示す図。
【
図2】一部の実施形態の電源ユニットの内部構成例を示す斜視図。
【
図3】一部の実施形態の電源ユニットの全体的な回路構成例を示す図。
【
図4】一部の実施形態の保護制御部の構成例を説明する図。
【
図5】一部の実施形態のバッテリの監視条件集合の例を説明する図。
【
図6A】一部の実施形態のMCUによるバッテリ監視動作の例を説明するフロー図。
【
図6B】一部の実施形態のMCUによるバッテリ監視動作の例を説明するフロー図。
【
図7A】一部の実施形態のバッテリ監視回路によるバッテリ監視動作の例を説明するフロー図。
【
図7B】一部の実施形態のバッテリ監視回路によるバッテリ監視動作の例を説明するフロー図。
【
図8】一部の実施形態のMCUによる割り込み動作の例を説明するフロー図。
【
図9】一部の実施形態の保護回路によるバッテリ監視動作の例を説明するフロー図。
【
図10】一部の実施形態のバッテリの深放電判定動作の例を説明するフロー図。
【
図11】一部の実施形態のバッテリの温度の正常範囲の例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0039】
図1には、本発明の一実施形態に係るエアロゾル生成装置の電源ユニット1の構成例を模式的に示した外観斜視図である。電源ユニット1は、角が丸められた略直方体形状のケース2を有する。ケース2は、電源ユニット1の表面を構成する。ここでは便宜上、
図1(a)に示す面を正面、
図1(b)に示す面を背面とする。また、
図1(c)に示す面を底面、
図1(d)に示す面を天面とする。
【0040】
電源ユニット1は、ケース(筐体)2と、ケース2に着脱可能なフロントパネル11とを有する。
図1(f)は、
図1(a)の状態からフロントパネル11を外した状態を示している。また、
図1(g)は、フロントパネル11を内側から見た状態を示している。フロントパネル11は、ケース2の正面カバーとして機能し、ユーザが自由に交換して外観をカスタマイズすることを可能にする。
【0041】
フロントパネル11の内面と、ケース2の正面とのそれぞれには、対向する位置に2対のマグネット14A及び14Bと、マグネット15A及び15Bとが設けられている。マグネット14Aと15Aとが引き合い、マグネット14Bと15Bとが引き合うことにより、磁力によってフロントパネル11がケース2の正面に保持される。
【0042】
また、ケース2の正面には押下可能なスイッチSWと、発光部NUとが設けられている。フロントパネル11の内面には、スイッチSWと対向する位置に凸部16が設けられている。フロントパネル11を装着した状態でフロントパネル11の中央付近12を押下することにより、凸部16を通じてスイッチSWを間接的に押下することができる。なお、フロントパネル11を外した状態でスイッチSWを直接的に押下することもできる。発光部NUには複数の発光素子(例えばLED)が一列に配置される。発光部NUの状態はフロントパネル11に設けられた窓19を通じて観察することができる。
【0043】
ケース2の天面には開閉可能なスライダ13が設けられている。スライダ13を矢印方向に移動させると、
図1(e)に示すようにヒータチャンバ17が現れる。
図1(e)では便宜上スライダ13を図示していない。ヒータチャンバ17は水平断面が楕円形(長丸長方形)を有する筒状の空間であり、ヒータチャンバ17に挿入されるスティック又はカートリッジを加熱する。スティックは円筒形状であり、水平断面の直径をヒータチャンバ17の水平断面の短径よりも大きくする。これにより、ヒータチャンバ17に挿入される際にスティックが径方向に圧縮されるため、スティックの外表面とヒータチャンバ17との接触性が高まる上、接触面積が増大する。したがって、スティックを効率良く加熱することができる。これにより、スティックから生成されるエアロゾルの量や香味を向上させることができる。
【0044】
電源ユニット1は、フロントパネル11が装着された状態でスライダ13がヒータチャンバ17を露出する位置に移動され、スイッチSWが所定時間(例えば数秒)連続して押下されたことが検出されると、加熱開始指示と見なして加熱動作を開始する。
【0045】
なお、ヒータチャンバ17によって加熱されるスティックは、エアロゾル源のみを含んでもよいし、エアロゾル源と香味物質とを含んでもよい。エアロゾル源は、例えば、グリセリン又はプロピレングリコール等の多価アルコール等の液体を含みうる。具体的一例として、エアロゾル源は、グリセリン及びプロピレングリコールの混合溶液を含みうる。あるいは、エアロゾル源は、薬剤や漢方を含んでもよい。あるいは、エアロゾル源は、メンソールなどの香料を含んでもよい。あるいは、エアロゾル源は、液相のニコチンを含んでもよい。エアロゾル源は、液体であってもよいし、固体であってもよいし、液体及び固体の混合物であってもよい。エアロゾル源に代えて、又はエアロゾル源に加えて、水等の蒸気源が用いられてもよい。スティックはエアロゾル源を担持させるための担持体を含んでもよい。この担持体自身が、固体のエアロゾル源であってもよい。この担持体は、タバコ葉由来の原料を成形したシートを含んでもよい。
【0046】
ケース2の底面には外部機器を接続するためのコネクタUSBCが設けられている。ここではコネクタUSBCがUSB Type-C規格に準拠したレセプタクルであるものとする。電源ユニット1を充電する場合、コネクタUSBCに例えばUSB PD規格に従って電力を供給可能な外部機器(USB充電器、モバイルバッテリ、パーソナルコンピュータなど)が接続される。なお、コネクタUSBCは、USB Type-C規格以外の規格に準拠してもよい。なお、コネクタUSBCに代えて、又はコネクタUSBCに加えて、非接触充電用の受電コイルを電源ユニット1に設けてもよい。
【0047】
図2は、電源ユニット1からケース2を取り除いた状態を模式的に示す斜視図である。
図1と同じ構成要素については同じ参照符号を付してある。ヒータユニットHT(以下、単にヒータHTという)は、ヒータチャンバ17の外周に設けられ、電源から供給される電力を消費してヒータチャンバ17を加熱することによってエアロゾル源を加熱する負荷である。
図2では図示していないが、ヒータHTは断熱材で覆われている。ヒータHTの断熱材又はヒータHTそのものに取り付けられているヒータサーミスタTHは、ヒータHTの温度を間接的に計測する温度センサである。なお、ヒータHTを誘導加熱方式としてもよい。この場合、ヒータHTには電磁誘導用のコイルが少なくても含まれる。電磁誘導用のコイルから送られる磁場を受け取るサセプタ(金属片)は、ヒータHTに含まれていてもよいし、スティックに内蔵されていてもよい。
【0048】
パフサーミスタTPは、ヒータチャンバ17の上端部に配置された吸引センサである。エアロゾルが吸引されるとパフサーミスタTPで検出される温度が変動することを利用して、吸引を検出することができる。
【0049】
ケースサーミスタTCは、ケース2の正面の内面近傍に設けられ、ケース温度を検出する。
【0050】
バッテリBTは充電可能であり、例えばリチウムイオン二次電池である。バッテリBTは電源ユニット1の基本的な電力を供給する電源である。バッテリBTは製造時に装着され、電源ユニット1はヒータやサーミスタなどを除く大部分の構成要素に電力が供給されている状態(スリープ状態)で出荷される。
【0051】
検出器170は、スライダ13の開閉を検知する開閉センサであり、ホール素子を用いた集積回路(ホールIC)であってよい。
【0052】
電源ユニット1の回路は、4つの回路基板PCB1~PCB4に分散配置されている。これにかえて、電源ユニット1の回路は、1つの回路基板に配置されてもよいし、2つ又は3つ以上の回路基板に分散配置されてもよい。
【0053】
上述の構成では、電源ユニット1がヒータHTを有する。これに代えて、エアロゾル源を含むカートリッジがヒータを有してもよい。この場合に、電源ユニット1はヒータコネクタを有し、このヒータコネクタは、カートリッジが電源ユニット1に取り付けられることによってヒータ側のコネクタに接続される。電源ユニット1は、ヒータコネクタを通じてカートリッジ内のヒータに電力を供給する。
【0054】
図3を参照して、電源ユニット1を構成する各部品の動作について説明する。バッテリBTの正極は、第1電源コネクタBC+に電気的に接続され、バッテリBTの負極は、第2電源コネクタBC-に電気的に接続される。バッテリBTの正極の電位は、保護回路90のVBAT端子、バッテリ監視回路100のVBAT端子、変圧回路120のVIN端子、充電回路20のBAT端子、及び、スイッチ回路80の電位入力端子に供給されうる。
【0055】
保護回路90は、バッテリBTから出力される電流が流れる経路に配置された抵抗R2を使って該経路を流れる電流を計測し、その電流に応じてバッテリBTを保護する。保護回路90は、VBAT端子への入力を使ってバッテリBTの出力電圧を計測し、計測された出力電圧に応じてバッテリBTを保護する。バッテリ監視回路100(電源監視回路ともいう)は、バッテリBTから出力される電流が流れる経路に配置された抵抗R1を使って、バッテリBTの状態を計測しうる。
【0056】
過電圧保護回路110は、給電コネクタとしてのコネクタUSBCから供給される電圧VBUSを受けてVUSBラインに電圧VUSBを出力する。過電圧保護回路110は、コネクタUSBCから供給される電圧VBUSが規定電圧値を超える電圧であっても、それを規定電圧値まで降下させて過電圧保護回路110の出力側に供給する保護回路として機能しうる。この規定電圧値は、OVLo端子へ入力される電圧値に基づいて設定されてもよい。
【0057】
変圧回路120は、バッテリBTから供給される電源電圧VBATを変圧してヒータHTを駆動するためのヒータ電圧VBOOSTを生成するDC/DCコンバータである。変圧回路120は、昇圧回路、又は、昇降圧回路、又は、降圧回路でありうる。ヒータHTは、エアロゾル源を加熱するように配置される。ヒータHTの正側端子は、第1ヒータコネクタHC+に電気的に接続され、ヒータHTの負側端子は、第2ヒータコネクタHC-に電気的に接続されうる。
【0058】
ヒータHTは、電源ユニット1に対して、破壊しなければ取り外し外すことができない形態(例えば、半田付け)で取り付けられてもよいし、破壊しなくても取り外すことができる形態で取り付けられてもよい。なお、本明細書において、「コネクタ」による電気的接続は、特に断らない限り、破壊しなければ相互に分離することができない形態と、破壊しなくても相互に分離することができる形態とのいずれでもよいものとして説明される。
【0059】
MCU(Micro Controller Unit)130は、プログラムを実行可能なプロセッサ、メモリ、インタフェースなどを備えたプロセッサベースの制御回路であり、電源ユニット1の動作を制御する。MCU130が実行するプログラムは、内蔵メモリ、不揮発性メモリ70、又はその両方に存在しうる。
【0060】
MCU130は、バッテリBTから供給される電力を使ってエアロゾル源を加熱するためのヒータHTへの電力の供給を制御する。他の観点において、MCU130は、バッテリBTから供給される電力を使ってエアロゾル源を加熱するためのヒータHTの発熱を制御する。更に他の観点において、MCU130は、ヒータHTへの電力の供給及びバッテリBTの充電動作を制御する。
【0061】
ヒータHTを発熱させるとき、MCU130はスイッチSH及びスイッチSSをオンし、スイッチSMをオフする。これにより、ヒータ電圧VBOOSTが変圧回路120からスイッチSHを通してヒータHTに供給されうる。また、ヒータHTの温度あるいは抵抗を計測するとき、MCU130はスイッチSHをオフし、スイッチSM及びスイッチSSをオンする。これにより、ヒータ電圧VBOOSTは、変圧回路120からスイッチSMを通してヒータHTに供給されうる。
【0062】
ヒータHTの温度あるいは抵抗値を計測するとき、オペアンプA1は、ヒータHTの正側端子と負側端子との間の電圧、換言すると、第1ヒータコネクタHC+と第2ヒータコネクタHC-との間の電圧に応じた出力をMCU130のPA7端子に供給する。オペアンプA1は、ヒータHTの抵抗値あるいは温度を計測する計測回路として理解されてもよい。
【0063】
スイッチSMと第1ヒータコネクタHC+とを電気的に接続する経路には、シャント抵抗RSが配置されうる。シャント抵抗RSの抵抗値は、ヒータHTを加熱する期間はスイッチSRがオンし、ヒータHTの温度あるいは抵抗値を計測する期間はスイッチSRがオフするように決定されうる。スイッチSRがNチャネル型のMOSFETで構成される場合、スイッチSRのドレイン端子はオペアンプA1の出力端子へ接続され、スイッチSRのゲート端子はシャント抵抗RSと第1ヒータコネクタHC+の間へ接続され、スイッチSRのソース端子はグランド電位へ接続される。スイッチSRのゲート端子には、ヒータ電圧VBOOSTを主にシャント抵抗RSとヒータHTで分圧した値の電圧が入力される。シャント抵抗RSの抵抗値は、この分圧した値がスイッチSRの閾値電圧以上になるように決定されうる。また、シャント抵抗RSにより、スイッチSHがオフし、且つスイッチSM及びスイッチSSがオンの場合にヒータHTを流れる電流は、スイッチSH及びスイッチSSがオンし、且つスイッチSMがオフの場合にヒータHTを流れる電流よりも小さくなる。これにより、ヒータHTの温度あるいは抵抗を計測するときにヒータHTを流れる電流によってヒータHTの温度が変化することを抑制できる。
【0064】
ロードスイッチ10は、ON端子にローレベルが入力されているときは、VIN端子とVOUT端子とを電気的に切断し、ON端子にハイレベルが入力されているときは、VIN端子とVOUT端子とを電気的に接続し、VOUT端子からVCC5ラインに電圧VCC5を出力する。電圧VCC5の電圧値は、例えば5.0[V]である。VCC5ラインは、後述する充電回路20のVBUS端子及びVAC端子と、発光部NUとへ接続される。なお、ロードスイッチ10のON端子には、npn型のバイポーラトランジスタのコレクタ端子が接続される。このバイポーラトランジスタのエミッタ端子はグランド電位へ接続され、ベース端子はMCU130のPC9端子へ接続される。つまり、MCU130は、PC9端子の電位を調整することで、バイポーラトランジスタを介してロードスイッチ10の開閉を制御できる。
【0065】
充電回路20は、充電モードを有する。充電モードにおいて充電回路20は、SYS端子とBAT端子とを内部で電気的に接続する。これにより、VCC5ラインを介してVBUS端子へ供給される電圧VCC5を使って、BAT端子から第1導電路PT1を介してバッテリBTに充電電圧を供給しうる。充電回路20は、電圧VCC5を降圧することで適切な充電電圧を生成することが好ましい。充電モードは、/CE端子にローレベルが供給されることによってイネーブルあるいは起動されうる。VCCラインは、後述する変圧回路30のVIN端子とEN端子へ接続される。
【0066】
充電回路20は、パワーパス機能を有しうる。パワーパス機能が有効に設定されている場合、充電回路20は、VCC5ラインを介してVBUS端子に供給される電圧VCC5を使って、又は、バッテリBTから第1導電路PT1を介してBAT端子に供給される電源電圧VBATを使って、VCCラインに電圧VCCを供給する。具体的には、充電回路20は、電圧VUSBが利用可能な状態においてパワーパス機能が有効に設定されている場合、VBUS端子とSW端子とを内部で電気的に接続し、VCC5ラインを介して供給される電圧VCC5を使って、VCCラインに電圧VCCを供給する。また、充電回路20は、電圧VUSBが利用不能な状態においてパワーパス機能が有効に設定されている場合、BAT端子とSW端子とを内部で電気的に接続し、バッテリBTから第1導電路PT1を介してBAT端子に供給される電源電圧VBATを使って、VCCラインに電圧VCCを供給する。
【0067】
充電回路20は、OTG(On-The-GO)機能を有する。OTG機能が有効に設定されている場合、充電回路20は、バッテリBTから第1導電路PT1を介してBAT端子に供給される電源電圧VBATを使って、VBUS端子からVCC5ラインに電圧VCC5を供給する。電源電圧VBATから電圧VCC5を生成する場合、発光部NUへ供給される電圧が、電圧VUSBから電圧VCC5を生成する場合と同程度又は同じになるように、充電回路20は、電源電圧VBATを昇圧して電圧VCC5を供給することが好ましい。このような構成とすることで、発光部NUの動作が安定する。/CE端子にハイレベルが供給されると、充電回路20は、パワーパス機能及びOTG機能のうちデフォルトで設定されている機能、又は、MCU130によって有効に設定された一方の機能を用いて動作しうる。
【0068】
変圧回路30は昇圧回路、又は、昇降圧回路、又は、降圧回路でありうるDC/DCコンバータであり、VCCラインに電圧VCCが供給されることによってイネーブルされる。具体的には、変圧回路30は、EN端子へハイレベルの信号が入力されることによってイネーブルされる。VIN端子及びEN端子はVCCラインへ接続されていることから、変圧回路30は、VCCラインに電圧VCCが供給されることによってイネーブルされる。変圧回路30は、VOUT端子からVCC33_0ラインに電圧VCC33_0を供給する。電圧VCC33_0の電圧値は、例えば、3.3[V]である。VCC33_0ラインは、後述するロードスイッチ40のVIN端子、後述するリブートコントローラ50のVIN端子及びRSTB端子、FF2のVCC端子及びD端子へ接続される。
【0069】
ロードスイッチ40は、ON端子にローレベルが入力されているときは、VIN端子とVOUT端子とを電気的に切断し、ON端子にハイレベルが入力されているときは、VIN端子とVOUT端子とを電気的に接続し、VOUT端子からVCC33ラインに電圧VCC33を出力する。電圧VCC33の電圧値は、例えば、3.3[V]である。VCC33ラインは、後述するロードスイッチ60のVIN端子、不揮発性メモリ70のVCC端子、後述するバッテリ監視回路100のVDD端子及びCE端子、MCU130のVDD端子、後述する検出器140のVDD端子、後述するシュミットトリガ回路150のVCC端子、後述する通信インタフェース回路160のVCC_NRF端子、後述する検出器170のVDD端子、FF1のVCC端子及びD端子、オペアンプA1の正電源端子、後述するオペアンプA2の正電源端子、後述するオペアンプA3の正電源端子とへ接続される。ロードスイッチ40のVIN端子は、変圧回路30のVOUT端子に電気的に接続され、変圧回路30から電圧VCC33_0が供給される。電源ユニット1の回路基板を複雑にしないため、電圧VCC33_0の電圧値と電圧VCC33の電圧値は、略等しいことが好ましい。
【0070】
リブートコントローラ50は、SW1端子及びSW2端子にローレベルが所定時間にわたって供給されたことに応じて、RSTB端子からローレベルを出力する。RSTB端子は、ロードスイッチ40のON端子に電気的に接続されている。したがって、リブートコントローラ50のSW1端子及びSW2端子にローレベルが所定時間にわたって供給されたことに応じて、ロードスイッチ40は、VOUT端子からの電圧VCC33の出力を停止する。ロードスイッチ40のVOUT端子からの電圧VCC33の出力が停止すると、MCU130のVDD端子(電源端子)に対する電圧VCC33の供給が絶たれるので、MCU130は、動作を停止する。
【0071】
ここで、フロントパネル11が電源ユニット1から取り外されると、検出器140からシュミットトリガ回路150を介してリブートコントローラ50のSW2端子にローレベルが供給される。また、スイッチSWが押下されると、リブートコントローラ50のSW1端子にローレベルが供給される。よって、フロントパネル11が電源ユニット1から取り外された状態(
図1(f)の状態)でスイッチSWが押下されると、リブートコントローラ50のSW1端子及びSW2端子にローレベルが供給される。リブートコントローラ50は、SW1端子及びSW2端子にローレベルが所定時間(例えば数秒間)継続して供給されると、電源ユニット1に対するリセットあるいは再起動の指令が入力されたものと認識する。リブートコントローラ50は、RSTB端子からローレベルを出力した後に、RSTB端子からローレベルを出力しないようにすることが好ましい。リブートコントローラ50がRSTB端子からローレベルを出力すると、ロードスイッチ40のON端子にローレベルが入力され、ロードスイッチ40はVIN端子とVOUT端子とを電気的に切断し、V
CC33ラインに電圧V
CC33が出力されなくなる。これにより、MCU130は動作を停止する。その後、リブートコントローラ50がRSTB端子からローレベルを出力しないようになると、ハイレベルの電圧V
CC33_0がロードスイッチ40のON端子へ入力されるため、ロードスイッチ40はVIN端子とVOUT端子とを電気的に接続し、VOUT端子からV
CC33ラインに電圧V
CC33を再び出力する。これにより、動作を停止したMCU130が再起動できる。
【0072】
ロードスイッチ60は、ON端子にローレベルが入力されているときは、VIN端子とVOUT端子とを電気的に切断し、ON端子にハイレベルが入力されているときは、VIN端子とVOUT端子とを電気的に接続し、VOUT端子からVCC33_SLPラインに電圧VCC33_SLPを出力する。電圧VCC33_SLPの電圧値は、例えば、3.3[V]である。VCC33_SLPラインは、後述するパフサーミスタTP、後述するヒータサーミスタTH、後述するケースサーミスタTCへ接続される。ロードスイッチ60のON端子は、MCU130のPC11端子に電気的に接続されている。MCU130は、電源ユニット1をスリープモードに移行する際にPC11端子の論理レベルをハイレベルからローレベルに遷移させ、電源ユニット1をスリープモードからアクティブモードに移行する際にPC11端子の論理レベルをローレベルからハイレベルに遷移させる。換言すれば、電圧VCC33_SLPはスリープモードでは利用できず、スリープモードからアクティブモードに移行する際に利用できるようになる。電源ユニット1の回路基板を複雑にしないため、電圧VCC33_SLPの電圧値と電圧VCC33の電圧値は、略等しいことが好ましい。
【0073】
電源ユニット1は、ユーザによるパフ(吸引)動作を検出するためのパフセンサを構成するパフサーミスタTP(例えば、NTCサーミスタ又はPTCサーミスタ)を備えることができる。パフサーミスタTPは、例えば、パフに伴う空気流路の温度変化を検出するように配置されうる。なお、パフサーミスタTPは、パフセンサの具体的一例に過ぎない点に留意されたい。パフサーミスタTPに代えて、マイクロフォンコンデンサ、圧力センサ、流量センサ、流速センサなどをパフセンサに用いてもよい。電源ユニット1は、バイブレータMを備えてもよい。バイブレータMは、例えば、スイッチSNをオンさせることによって起動されうる。スイッチSNは、トランジスタで構成されてよく、トランジスタのベース又はゲートには、MCU130のPH0端子から制御信号が供給されうる。なお、電源ユニット1は、バイブレータMを制御するためのドライバを有していてもよい。
【0074】
電源ユニット1は、ヒータHTの温度を検出するためのヒータサーミスタTH(例えば、NTCサーミスタ又はPTCサーミスタ)を備えうる。ヒータHTの温度は、ヒータHTの近傍の温度を検出することによって間接的に検出されてもよい。オペアンプA2は、サーミスタTHの抵抗値に応じた電圧、換言すると、ヒータHTの温度に応じた電圧を出力しうる。
【0075】
電源ユニット1は、電源ユニットの筐体(ケース)2の温度を検出するためのケースサーミスタTC(例えば、NTCサーミスタ又はPTCサーミスタ)を備えうる。ケース2の温度は、ケース2近傍の温度を検出することによって間接的に検出されてもよい。オペアンプA3は、サーミスタTCの抵抗値に応じた電圧、換言すると、ケース2の温度に応じた電圧を出力する。
【0076】
検出器140は、フロントパネル11が電源ユニット1から取り外されたことを検出するように構成されうる。検出器140の出力は、シュミットトリガ回路150を介してリブートコントローラ50のSW2端子及びMCU130のPD2端子に供給されうる。スイッチSWの一端は、VCC33ライン、リブートコントローラ50のSW1端子、及びMCU130のPC10端子へ接続されうる。スイッチSWの他端はグランド電位へ接続されうる。これにより、スイッチSWが押下されるとリブートコントローラ50のSW1端子及びMCU130のPC10端子にローレベルが供給され、スイッチSWが押下されないとリブートコントローラ50のSW1端子及びMCU130のPC10端子にハイレベルが供給されうる。
【0077】
検出器170は、スライダ13の開閉を検出するように構成されうる。検出器170の出力は、MCU130のPC13端子に供給されうる。検出器140及び170は、例えば、ホール素子を用いた集積回路(ホールIC)で構成されうる。
【0078】
通信インタフェース回路160は、スマートフォン、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の外部機器と無線通信する機能をMCU130に提供する。通信インタフェース回路160は、例えば、Bluetooth(登録商標)など、任意の無線通信規格の1つ以上に準拠した通信インタフェース回路であってよい。
【0079】
FF1及びFF2は、異常が検出されたか否かを示す1ビットの情報(0又は1)をローレベル又はハイレベルとして保持する保持回路である。FFは、フリップフロップの略語である。FF2は、保持している情報の値を反転した値を、/Q端子から出力する。また、FF1は、保持している情報の値を、Q端子から出力する。FF1及びFF2は、D型のフリップフロップICであることが好ましい。
【0080】
FF1及びFF2は、/CLR端子を有し、/CLR端子の入力レベルがハイレベルからローレベルに変化すると、保持している情報の値を0(ローレベル)に初期化する。なお、/CLR端子の入力レベルのローレベルからハイレベルへの変化は、保持している情報の値に影響を与えない。
【0081】
本実施形態において、FF1とFF2とには、異なる電源ラインによって電力が供給される。すなわち、FF1のVCC端子(電源端子)には電圧VCC33が供給され、FF2のVCC端子(電源端子)には電圧VCC33_0が供給される。MCU130の電源である電圧VCC33がリセット動作において一時的に供給されなくなる間も、電圧VCC33_0は継続して供給される。そのため、FF2が保持する情報(Q及び/Q端子の出力)は電源ユニット1のリセット動作が実行されても消えることなく保持される。一方、FF1にはMCU130に電力を供給する電源ラインによって電力が供給されるため、FF1が保持する情報はリセット動作時に消去される。
【0082】
FF1及びFF2において、VCC端子への入力はD端子にも入力されている。そのため、FF1及びFF2が動作している間、D端子には常にハイレベルが入力されている。FF1及びFF2は図示しない同期端子を有し、同期端子の入力がローレベルからハイレベルに変化すると、D端子の入力レベルを保持する。電源ユニット1が正常に動作している場合、FF1及びFF2はハイレベルを保持する。
【0083】
オペアンプA2の反転入力にはヒータサーミスタTHの抵抗値に応じて変化する電圧が供給され、非反転入力には基準電圧が供給される。この基準電圧は、ヒータHTが過加熱していない状態では非反転入力の電圧が反転入力の電圧よりも高くなり、ヒータHTが過加熱している状態では反転入力の電圧が非反転入力の電圧よりも高くなるように設計されている。したがって、オペアンプA2の出力は、ヒータHTが過加熱していない状態(正常状態)ではハイレベルとなり、ヒータHTが過加熱している状態(異常状態)ではローレベルとなる。
【0084】
オペアンプA2の出力は、FF2の/CLR端子に接続されている。また、オペアンプA2の出力は、逆方向のダイオードを介してFF1のD端子及び/CLR端子にも接続されている。換言すれば、当該ダイオードのカソードへオペアンプA2の出力が接続され、当該ダイオードのアノードへFF1のD端子及び/CLR端子が接続されている。ヒータHTの温度が正常状態であれば、FF2の/CLR端子の入力はハイレベルとなる。/CLR端子の入力がハイレベルの場合、FF2のQ端子の出力は初期状態を維持する。つまり、DD2のQ端子は、ハイレベルを出力する。FF2のD端子には電圧VCC33_0が入力されており、起動時に異常がなければFF2は初期状態でD端子の入力レベルを保持する。したがって、ヒータHTの温度が正常状態であれば、FF2のQ端子出力はハイレベルであり、/Q端子出力はローレベルである。
【0085】
ヒータHTが過加熱の状態になると、オペアンプA2の出力がローレベルに変化する。これにより、FF2の/CLR端子の入力がローレベルに変化する。/CLR端子がローレベルになると、FF2は強制的に初期化され、Q端子の出力がローレベル、/Q端子の出力がハイレベルとなる。FF2の/Q端子の出力はMCU130のPB14端子に供給される。そのため、MCU130は、PB14端子に入力される信号がローレベルからハイレベルに切り替わったことに応じて、ヒータHTが過加熱の状態であることを検知できる。
【0086】
ケースサーミスタTCは、ケース2の内面に近接する位置に配置される。又は、ケースサーミスタTCは、ケース2の内面に接する位置に配置される。ケース2の実温度とケースサーミスタTCの抵抗値との関係を事前に計測しておくことにより、ケースサーミスタTCの抵抗値をケース2の温度として用いることができる。
【0087】
オペアンプA3の反転入力には、ケースサーミスタTCの抵抗値に応じて変化する電圧が供給され、非反転入力には基準電圧が供給される。この基準電圧は、電源ユニット1のケース2が高温ではない状態では非反転入力の電圧が反転入力の電圧よりも高くなり、ケース2が高温である状態では反転入力の電圧が非反転入力の電圧よりも高くなるように設計されている。したがって、オペアンプA3の出力は、ケース2が高温ではない状態(正常状態)ではハイレベルとなり、ケース2が高温である状態(異常状態)ではローレベルとなる。
【0088】
オペアンプA3の出力は、FF1の/CLR端子及びD端子に接続されている。ケース2の温度が正常状態であれば、FF1の/CLR端子の入力はハイレベルとなる。/CLR端子の入力がハイレベルの場合、FF1のQ端子の出力は初期状態を維持する。FF1のD端子には電圧VCC33が入力されており、起動時に異常がなければFF1は初期状態でD端子の入力レベルを保持する。したがって、ケース2の温度が正常状態であれば、FF1のQ端子からの出力はハイレベルである。ケース2が高温になると、オペアンプA3の出力がローレベルに変化する。これにより、FF1の/CLR端子の入力がローレベルに変化する。/CLR端子がローレベルになると、FF1は強制的に初期化され、Q端子の出力がローレベルとなる。FF1のQ端子からの出力は、MCU130のPA10端子と、スイッチSLのベースとに供給される。そのため、MCU130は、PA10端子に入力される信号がハイレベルからローレベルに切り替わったことに応じて、ケース2が高温であることを検知できる。また、FF1のQ端子からの出力はハイレベルからローレベルに切り替わると、スイッチSLがオンする。スイッチSLのコレクタは充電回路20の/CE端子へ接続され、スイッチSLのエミッタはVCC33ラインへ接続されている。スイッチSLがオンすると、充電回路20の/CE端子には電圧VCC33が入力される。これによって、充電回路20の/CE端子に供給される信号がハイレベルに切り替わり、充電回路20は動作を停止する。
【0089】
図4は、
図3を用いて説明した構成要素のうち、バッテリBTに関する情報に基づいて電源ユニット1を保護するための動作に係わる構成を抜き出して記載した回路図である。以下、電源ユニット1を保護するための動作を、単に保護動作と表す。保護動作は、例えばバッテリBTに流れる電流を停止するような直接的な動作と、他の回路に対してこのような直接的な動作を実行するように要求する信号を送信する間接的な動作との両方を含んでもよい。保護動作は、以下に詳細に説明するように、バッテリBTの充電と、バッテリBTからヒータHTへの電力供給との少なくとも一方を、少なくとも一時的に制限することを含んでもよい。これらのバッテリBTに関する動作の制限とは、この動作を完全に行えなくすること(例えば、充電量又は供給量をゼロにすること)を含んでもよく、この動作を部分的に行えなくすること(例えば、充電量又は供給量を減少すること)を含んでもよい。保護動作によって保護される電源ユニット1の構成要素は、バッテリBT、MCU130など、任意の構成要素であってもよい。以下に説明する実施形態では、MCU130、バッテリ監視回路100、保護回路90、FF1、及び充電回路20のそれぞれが個別の保護動作を実行する。これらの保護動作のための構成要素をまとめて、保護制御部200と表す。保護制御部200に含まれるMCU130、バッテリ監視回路100、保護回路90、FF1、及び充電回路20は、互いに別個の回路で構成される。
【0090】
保護回路90は、バッテリBTに流れる電流と、バッテリBTの電圧とを測定する。具体的に、保護回路90のCS端子は抵抗R2の一端に接続されており、保護回路90のVSS端子は抵抗R2の他端に接続されている。抵抗R2の抵抗値は保護回路90に事前に記憶されている。保護回路90は、VSS端子とCS端子との間の電圧を抵抗R2の抵抗値で除算することによって、抵抗R2を流れる電流を測定する。抵抗R2は、バッテリBTの負極が接続される第2電源コネクタBC-に接続されている。そのため、抵抗R2を流れる電流は、バッテリBTを流れる電流に相関を有する。保護回路90は、VSS端子の電位とCS端子の電位との大小を比較することによって、抵抗R2を流れる電流の方向を判定できる。これによって、保護回路90は、バッテリBTが充電中であるか放電中であるかを判定できる。
【0091】
保護回路90のVBAT端子は、バッテリBTの正極が接続される第1電源コネクタBC+に接続されており、保護回路90のVSS端子は、バッテリBTの負極が接続される第2電源コネクタBCーに接続されている。そのため、保護回路90のVBAT端子とVSS端子との間の電圧は、バッテリBTの電圧(電源電圧VBAT)に等しい。そこで、保護回路90は、VBAT端子の電圧を測定することによって、バッテリBTの電圧を測定可能である。
【0092】
保護回路90は、DOUT端子からの出力をハイレベルからローレベルに切り替えることによって、スイッチSDをオフできる。スイッチSDのゲートは、保護回路のDOUT端子に電気的に接続されている。スイッチSDのゲートはスイッチSDの制御端子として機能する。スイッチSDは、ゲートへの入力に基づいて、自身の導通状態を切り替える。スイッチSDがオフになると、バッテリBTが放電するための電流経路が遮断されるため、バッテリBTからの放電が制限される。このように、スイッチSDは、放電遮断スイッチとして機能する。
【0093】
保護回路90は、COUT端子からの出力をハイレベルからローレベルに切り替えることによって、スイッチSCをオフできる。スイッチSCのゲートは、保護回路のCOUT端子に電気的に接続されている。スイッチSCのゲートはスイッチSCの制御端子として機能する。スイッチSCは、ゲートへの入力に基づいて、自身の導通状態を切り替える。スイッチSCがオフになると、バッテリBTを充電するための電流経路が遮断されるため、バッテリBTへの充電が制限される。このように、スイッチSCは、充電遮断スイッチとして機能する。保護回路90は、動作中に、DOUT端子からの出力及びCOUT端子からの出力をハイレベルに維持し、バッテリBTの状態が後述する所定の条件を満たした場合に、これらの出力からスイッチSC及びSDへ供給する制御信号をローレベルに切り替える。
【0094】
充電回路20は、
図3を参照して上述したように、バッテリBTを充電する機能を有する。充電回路20のBAT端子は、バッテリBTの正極が接続される第1電源コネクタBC+に接続されている。充電回路20は、BAT端子からバッテリBTへ電力を供給することによってバッテリBTを充電する。充電回路20は、BAT端子の電位を監視し、この電位が所定の条件を満たした場合に、バッテリBTへの電力の供給を制限する。
【0095】
充電回路20のSCL端子はMCU130のPB8端子に接続されており、充電回路20のSDA端子はMCU130のPB9端子に接続されている。充電回路20は、SCL端子及びSDA端子を通じて、MCU130とI2C通信を行う。具体的に、充電回路20のSCL端子を通じてクロックが通信され、充電回路20のSDA端子を通じてデータが通信される。データの送信はMCU130と充電回路20との双方が可能であるから、充電回路20とMCU130との間で、双方向にデータを通信可能である。
【0096】
充電回路20の/CE端子には、イネーブル信号が供給される。充電回路20は、/CE端子にローレベルが供給されている場合に充電動作を行い、/CE端子にハイレベルが供給されている場合に充電動作を行わない。
【0097】
バッテリ監視回路100は、バッテリBTの様々な物理量に関する状態を監視する。一部の実施形態で、バッテリ監視回路100は、バッテリBTの温度と、バッテリBTの電圧と、バッテリBTを流れる電流とを監視する。これにかえて、バッテリ監視回路100は、これらの物理量のうちの一部のみを監視してもよいし、他の物理量を監視してもよい。
【0098】
バッテリ監視回路100のTREG端子と、バッテリBTとの負極が接続されるグランド電位との間に、抵抗R3とバッテリサーミスタTBとが直列に接続されている。さらに、バッテリ監視回路100のTHM端子は、抵抗R3とバッテリサーミスタTBとの間のノードに接続されている。バッテリサーミスタTBは、バッテリBTの温度を測定するためのサーミスタ(温度センサ)であり、バッテリBTの近傍に配置されている。バッテリサーミスタTBの抵抗値は、所定の温度特性に従って変化する。バッテリBTの実温度とバッテリサーミスタTBの抵抗値との関係は、事前に計測され、バッテリ監視回路100に事前に記憶されている。また、抵抗R3の抵抗値もバッテリ監視回路100に事前に記憶されている。バッテリ監視回路100は、TREG端子とTHM端子との間の電圧又はTHM端子とVSS端子との間電圧を測定することによって、バッテリBTの温度を測定可能である。
【0099】
バッテリ監視回路100のVRSM端子は抵抗R1の一端に接続されており、バッテリ監視回路100のVRSP端子は抵抗R1の他端に接続されている。抵抗R1の抵抗値はバッテリ監視回路100に事前に記憶されている。バッテリ監視回路100は、VRSM端子とVRSP端子との間の電圧を抵抗R1の抵抗値で除算することによって、抵抗R1を流れる電流を測定する。抵抗R2は、バッテリBTの負極が接続される第2電源コネクタBC-に直列に接続されている。そのため、抵抗R2を流れる電流は、バッテリBTを流れる電流に相関を有する。バッテリ監視回路100は、VRSM端子の電位とVRSP端子の電位との大小を比較することによって、抵抗R1を流れる電流の方向を判定できる。これによって、バッテリ監視回路100は、バッテリBTが充電中であるか放電中であるかを判定できる。
【0100】
バッテリ監視回路100のVBAT端子は、バッテリBTの正極が接続される第1電源コネクタBC+に接続されており、バッテリ監視回路100のVSS端子は、スイッチSD及びSCならびに抵抗R2を介して、第2電源コネクタBCーに接続されている。バッテリ監視回路100のVSS端子は、グランド電位にも接続されている。そのため、バッテリ監視回路100のVBAT端子とVSS端子との間の電圧は、バッテリBTの電圧に略等しい。そこで、バッテリ監視回路100は、VBAT端子の電圧を測定することによって、バッテリBTの電圧を測定可能である。
【0101】
バッテリ監視回路100のSCL端子はMCU130のPC0端子に接続されており、バッテリ監視回路100のSDA端子はMCU130のPC1端子に接続されている。バッテリ監視回路100は、SCL端子及びSDA端子を通じて、MCU130とI2C通信を行う。具体的に、バッテリ監視回路100のSCL端子を通じてクロックが通信され、バッテリ監視回路100のSDA端子を通じてデータが通信される。データの送信はMCU130とバッテリ監視回路100との双方が可能であるから、バッテリ監視回路100とMCU130との間で、双方向にデータを通信可能である。
【0102】
バッテリ監視回路100のVDD端子及びCE端子はそれぞれVCC33ラインに接続されている。バッテリ監視回路100のVDD端子には、バッテリ監視回路100の動作電力が供給される。バッテリ監視回路100のCE端子には、イネーブル信号が供給される。バッテリ監視回路100は、CE端子にハイレベルが供給されている場合に動作を行い、CE端子にローレベルが供給されている場合に動作を行わない。そのため、バッテリ監視回路100は、VCC33ラインに電圧VCC33が供給されている間、動作を行う。
【0103】
バッテリ監視回路100のIO5端子は、MCU130のPB12端子に接続されている。バッテリ監視回路100は、IO5端子を通じて、MCU130に、nGAUGE_INT2信号を出力する。この信号は、バッテリ監視回路100からMCU130へ一方向に通信される。バッテリ監視回路100は、バッテリBTに関する測定結果が正常である間に、nGAUGE_INT2信号をハイレベルに維持する。バッテリ監視回路100は、バッテリBTに異常が発生すると、nGAUGE_INT2信号をローレベルに切り替える。そのため、ローレベルのnGAUGE_INT2信号は、エラーを通知するエラー信号とみなされてもよい。バッテリ監視回路100がMCU130へエラー信号を送信するための具体的な条件については後述する。
【0104】
バッテリ監視回路100のALERT端子は、逆方向のダイオードD1を介してFF1の/CLR端子及びD端子に接続されている。換言すれば、ダイオードD1のカソードはバッテリ監視回路100のALERT端子へ接続され、ダイオードD1のアノードはFF1の/CLR端子及びD端子へ接続されている。バッテリ監視回路100は、ALERT端子を通じて、FF1に、nGAUGE_INT1信号を出力する。この信号は、バッテリ監視回路100からFF1へ一方向に通信される。バッテリ監視回路100は、バッテリBTに関する測定結果が正常である間に、nGAUGE_INT1信号をハイレベルに維持する。バッテリ監視回路100は、バッテリBTに異常が発生すると、nGAUGE_INT1信号をローレベルに切り替える。そのため、ローレベルのnGAUGE_INT1信号は、エラーを通知するエラー信号とみなされてもよい。バッテリ監視回路100がFF1へエラー信号を送信するための具体的な条件については後述する。
【0105】
nGAUGE_INT1信号がハイレベルからローレベルに切り替わると、FF1の/CLR端子及びD端子の入力もローレベルとなる。これによって、上述のように、FF1のQ端子からの出力もローレベルとなる。
【0106】
FF1のQ端子は、逆方向のダイオードD2を介して、スイッチSSのゲートに接続されている。換言すれば、ダイオードD2のカソードはFF1のQ端子へ接続され、ダイオードD1のアノードはスイッチSSのゲートへ接続されている。FF1のQ端子からの出力がローレベルとなると、スイッチSSがオフする。スイッチSSがオフになると、ヒータHTのマイナス端子HC-がグランド電位から切り離されるため、ヒータHTへの通電が遮断される。
【0107】
FF1のQ端子は、スイッチSLのベースにも接続されている。FF1のQ端子からの出力がローレベルとなると、スイッチSLがオンする。スイッチSLがオンになると、抵抗R6が抵抗R7との電圧VCC33の分圧に寄与しなくなり、充電回路20の/CE端子の入力が電圧VCC33と同じハイレベルになるため充電が禁止される。このように、FF1の出力をローレベルとすることにより、MCU130を介さずにバッテリBTの充放電ならびにヒータHTへの通電を禁止し、回路を保護することができる。
【0108】
FF1のQ端子は、MCU130のPA10端子にも接続されている。MCU130は、PA10端子の入力がハイレベルからローレベルに切り替わったことに応じて、FF1がエラーを通知したことを検知できる。これに応じて、MCU130は、発光部NUやバイブレータMによりユーザにリセット動作を行うように促してもよい。
【0109】
MCU130は、上述のように、I2C通信によってバッテリ監視回路100と通信可能である。MCU130は、バッテリ監視回路100からバッテリBTに関する情報を取得し、この情報に基づいて保護動作を実行する。
【0110】
MCU130のPC2端子は、抵抗R4を介してスイッチ回路80に接続されている。スイッチ回路80は、MCU130のPB4端子からの入力がハイレベルとなると導通状態となり、MCU130のPC2端子とバッテリBTの正極との間が導通状態となる。これによって、MCU130のPC2端子に、抵抗R4及びR5によって分圧された電源電圧VBATが供給される。以降の説明では、抵抗R4及びR5によって分圧された電源電圧VBATを、電圧ADCB+とも記載する。したがって、MCU130は、PB4端子の出力をハイレベルに切り替えることによって、バッテリ監視回路100を介さずにバッテリBTの電圧を取得できる。
【0111】
図5を参照して、保護制御部200が保護動作を開始するための条件について説明する。以下に説明するように、保護制御部200のそれぞれの構成要素、すなわちバッテリ監視回路100、保護回路90、及び充電回路20は、それぞれ個別の条件に従って個別の保護動作を実行する。
【0112】
図5のカラム501は、保護制御部200によって監視されるバッテリBTの物理量を示す。保護制御部200は、バッテリBTの電流、温度、及び電圧を監視する。カラム502は、保護制御部200による監視内容を示す。保護制御部200は、バッテリBTの電流について、過電流を監視し、バッテリBTの温度について、過加熱及び低温を監視し、バッテリBTの電圧について、過充電、過放電及び深放電を監視する。深放電とは過放電よりもバッテリBTの放電が進行した状態を指すものとする。過放電とは、バッテリBTの出力電圧が放電終止電圧を下回った状態を指すものとする。
【0113】
図5のカラム503は、カラム501の物理量を監視するタイミングを示す。「充電」と記載されている行では、充電回路20によってバッテリBTの充電が行われている間のみ、バッテリBTの物理量が条件を満たすかどうかが判定される。「放電」と記載されている行では、充電回路20によってバッテリBTの充電が行われていない間のみ、バッテリBTの物理量が条件を満たすかどうかが判定される。特に、バッテリBTからヒータHTに電力が供給されている間(例えば、ヒータ電圧V
BOOSTがヒータHTに印加されている間)に、条件を満たすかどうかが判定されてもよい。「常時」と記載されている行では、充電回路20によってバッテリBTの充電が行われているか否かによらず、バッテリBTの物理量が条件を満たすかどうかが判定される。
【0114】
カラム504は、MCU130がバッテリBTの物理量を周期的に監視し、この監視結果に基づいて保護動作を実行するための条件を表す。後述するように、MCU130は、I2C通信を介してバッテリ監視回路100からバッテリBTの物理量を周期的に取得し、この取得したバッテリBTの物理量に基づいて保護動作を実行する。カラム505は、バッテリ監視回路100がバッテリBTの物理量を監視し、この監視結果に基づいてFF1に保護動作の実行を要求するための条件を表す。カラム506は、バッテリ監視回路100がバッテリBTの物理量を監視し、この監視結果に基づいてMCU130に保護動作の実行を要求するための条件を表す。後述するように、バッテリ監視回路100によるMCU130への保護動作の実行の要求は、割り込み信号によって行われる。割り込み信号を受信したMCU130は、バッテリBTの物理量の監視を開始する。カラム507は、充電回路20がバッテリBTの物理量を監視し、この監視結果に基づいて保護動作を実行するための条件を表す。カラム508は、保護回路90がバッテリBTの物理量を監視し、この監視結果に基づいて保護動作を実行するための条件を表す。
【0115】
カラム503のタイミングと、カラム504~508のそれぞれの条件との組み合わせによって、保護動作を開始するための条件が規定される。例えば、カラム505の一番上の項目は、放電時にバッテリBTの電流が10[A]以上の場合に保護動作が開始されるという条件を規定する。
図5には、保護制御部200が保護動作を開始するための複数の条件が記載されている。これらの条件で構成される集合を、以下では監視条件集合と表し、この集合の各要素を監視条件と表す。保護制御部200は、監視条件集合に含まれる何れかの監視条件が満たされた場合に、保護動作を実行する。実行される保護動作の内容は、どの監視条件が満たされるかによって異なる。
図5に記載された各監視条件における数値が一例であり、他の数値が使用されてもよい。また、保護制御部200は、監視条件として、
図5に示されるものの条件の一部を使用しなくてもよいし、
図5に示されない条件を使用してもよい。
【0116】
図5における太線の枠は、保護制御部200が保護動作を実行することによる電源ユニット1の状態の遷移先を示す。実線の枠は、電源ユニット1を故障状態に遷移するための条件を示す。破線の枠は、電源ユニット1をリセット待機状態に遷移するための条件を示す。一点鎖線の枠は、電源ユニット1を接続待機状態に遷移するための条件を示す。
【0117】
故障状態とは、電源ユニット1の動作によっても、電源ユニット1を搭載するエアロゾル生成装置のユーザ(以下、単にユーザと表す)による動作によっても、電源ユニット1を正常状態に遷移できない状態のことである。故障状態とは、バッテリBTの充放電を永久に禁止する状態のことでもある。正常状態とは、ユーザの動作によって、電源ユニット1によるヒータHTの加熱が可能な状態を指してもよい。故障状態は、例えば電源ユニット1を工場で修理することによって解消されうる。故障状態は、永久故障状態と呼ばれてもよい。リセット待機状態とは、ユーザによるリセット動作によって正常状態に遷移可能な状態のことである。リセット動作の具体例については後述する。接続待機状態とは、ユーザがコネクタUSBCにUSBプラグを介して外部機器を接続する動作によって正常状態に遷移可能な状態のことである。リセット待機状態及び接続待機状態は、ユーザによるエラー解消動作を必要とする状態である。そのため、リセット待機状態及び接続待機状態は、ユーザ動作待機状態と総称しうる。ユーザ動作待機状態とは、電源ユニット1の動作によっては正常状態に遷移できないが、ユーザによる動作によって正常状態に遷移可能な状態のことである。すなわち、ユーザ動作滝状態において制限されている電源の放電又は充電の制限を解除するためには、ユーザによる動作を必要とする。
【0118】
保護制御部200が電源ユニット1をリセット待機状態に遷移するための動作と、その解消方法について説明する。保護制御部200のうち、MCU130とFF1とがそれぞれ、電源ユニット1をリセット待機状態に遷移できる。また、保護制御部200の他の回路は、MCU130又はFF1に、リセット待機状態への遷移を要求してもよい。
【0119】
MCU130が電源ユニット1をリセット待機状態に遷移するための動作について説明する。MCU130は、MCU130のPC12端子の出力をハイレベルからローレベルに切り替える。これによって、スイッチSSがオフし、ヒータHTのマイナス端子HC-がグランド電位から切り離される。MCU130のPC12端子は、変圧回路120のEN端子にも接続されている。そのため、MCU130のPC12端子の出力がハイレベルからローレベルに切り替わると、変圧回路120の動作を停止し、ヒータHTへのヒータ電圧VBOOSTの印加も禁止される。以上の動作によって、バッテリBTからヒータHTへの電力供給が制限される。さらに、MCU130は、MCU130のPB3端子の出力をローレベルからハイレベルに切り替える。これにより、充電回路20の/CE端子がハイレベルとなるため、充電回路20は充電を禁止する。
【0120】
続いて、FF1が電源ユニット1をリセット待機状態に遷移するための動作について説明する。FF1は、FF1のQ端子の出力をハイレベルからローレベルに切り替える。これによって、スイッチSSがオフし、ヒータHTのマイナス端子HC-がグランド電位から切り離される。FF1のQ端子は、逆方向のダイオードD2を介して、変圧回路120のEN端子にも接続されている。そのため、FF1のD端子の出力がハイレベルからローレベルに切り替わると、変圧回路120の動作を停止し、ヒータHTへのヒータ電圧VBOOSTの印加も禁止される。以上の動作によって、バッテリBTからヒータHTへの電力供給が制限される。さらに、FF1のD端子の出力がハイレベルからローレベルに切り替わると、上述したように、充電回路20の/CE端子がハイレベルとなるため、充電回路20は充電を禁止する。
充電回路20が電源ユニット1をリセット待機状態に遷移するための動作について説明する。充電回路20は、バッテリBTの電圧VBATが監視条件を満たした場合に、I2C通信を通じて、MCU130に、電源ユニット1をリセット待機状態に遷移するように要求する。この要求に応じて、MCU130は、上述の動作を実行することによって、電源ユニット1をリセット待機状態に遷移する。
【0121】
続いて、リセット待機状態を解消するための方法について説明する。本実施形態の電源ユニット1は、(1)フロントパネル11が外されていること、(2)スイッチSWが、加熱開始指示より長い一定時間押下されること、の両方が検出された場合に、ユーザによるリセット動作が行われたものと認識する。
【0122】
具体的には、これらの条件はリブートコントローラ50が検出する。リブートコントローラ50のSW1端子はスイッチSWに接続されており、SW2端子はフロントパネル11の着脱を示す信号を出力するシュミットトリガ回路150に接続されている。フロントパネル11が外された状態でスイッチSWが押下されると、SW1端子及びSW2端子の入力が両方ともローレベルになる。この状態が一定時間継続することにより、リブートコントローラ50は、リセット動作を開始する。
【0123】
リブートコントローラ50は、SW1端子及びSW2端子の両方がローレベルになった状態が、ユーザ設定可能なリブート遅延時間(例えば1~20秒)が経過するまで継続するか否かを監視する。リブート遅延時間の間に、MCU130は、発光部NUとバイブレータMを用いてリセットをユーザに報知する。
【0124】
リブートコントローラ50は、SW1端子及びSW2端子の両方がローレベルになった状態がリブート遅延時間だけ継続すると、RSTB端子の出力をローレベルにする。これにより、ロードスイッチ40のON端子がローレベルになり、ロードスイッチ40のVOUT端子からの電圧VCC33と、ロードスイッチ60のVOUT端子からの電圧VCC33_SLPの供給が停止する。これにより、MCU130への電力供給が断たれ、MCU130は動作を停止する。
【0125】
リブートコントローラ50は、RSTB端子をローレベルにしてから所定時間(例えば0.4秒)経過すると、自動的にRSTB端子をローレベルにしなくなる。これにより、電圧VCC33_0が、VCC33_0ラインを介してロードスイッチ40のON端子へ入力される。ロードスイッチ40からの電圧VCC33の供給が再開され、MCU130が起動する。つまり、MCU130は、VDD端子へ電力が供給されない状態から供給される状態になると起動する。電源ユニット1は、MCU130が起動するとスリープ状態もしくは充電状態となる。この時点では電圧VCC33_SLPは供給されない。このようにMCU130が再起動すると、MCU130に生じていたフリーズなどの不具合が解消することがある。
【0126】
保護制御部200が電源ユニット1を接続待機状態に遷移するための動作と、その解消方法について説明する。保護制御部200のうち、保護回路90が、電源ユニット1を接続待機状態に遷移できる。また、保護制御部200の他の回路は、保護回路90に、接続待機状態への遷移を要求してもよい。
【0127】
保護回路90が電源ユニット1を接続待機状態に遷移するための動作について説明する。保護回路90は、電源ユニット1が正常状態である間、DOUT端子の出力及びCOUT端子の出力をハイレベルに維持する。保護回路90は、電源ユニット1を接続待機状態に遷移するために、DOUT端子の出力及びCOUT端子の出力をローレベルに切り替える。これによって、スイッチSD及びSCがオフするため、コネクタUSBCにUSBプラグを介して外部機器が接続されていない状態では、電源ユニット1のうち、保護回路90以外のすべての回路への電力供給が停止される。
【0128】
続いて、接続待機状態を解消するための方法について説明する。コネクタUSBCにUSBプラグを介して外部機器が接続されると、過電圧保護回路110によって、電圧V
USBが生成される。これによって、ロードスイッチ10のON端子の電位がハイレベルとなり、ロードスイッチ10のVOUT端子からV
CC5ラインに電圧V
CC5が出力される。この時点で、充電回路20の/CE端子の入力はハイレベルであるので、充電回路20は、パワーパス機能によって、電圧V
CCを生成する。その後、
図3について上述したのと同様にして、電圧V
CC33_0及び電圧V
CC33が生成され、MCU130が起動する。MCU130は、起動後、後述する動作によって、バッテリBTが深充電しているかどうかを判定する。バッテリBTが深充電している場合に、電源ユニット1を故障状態に遷移する。それ以外の場合に、MCU130は、MCU130のPB3の出力をローレベルに維持する。これによって、充電回路20の/CE端子の入力がローレベルに維持され、充電回路20のBAT端子から保護回路90のVBAT端子に電力が供給される。バッテリBTの残量が回復すると、保護回路90はDOUT端子及びCOUT端子からの出力をハイレベルに切り替える。これによって、電源ユニット1は正常状態に遷移する。
【0129】
上述の例では、保護回路90は、電源ユニット1を接続待機状態へ遷移するために、スイッチSCとスイッチSDとの両方をオフにした。これにかえて、保護回路90は、スイッチSCとスイッチSDとの一方のみをオフにしてもよい。例えば、保護回路90は、バッテリBTの過充電を検出した場合に、充電遮断スイッチとして機能するスイッチSCをオフにし、放電遮断スイッチとして機能するスイッチSDをオンのままにしてもよい。一方、保護回路90は、バッテリBTの過放電を検出した場合に、放電遮断スイッチとして機能するスイッチSDをオフにし、充電遮断スイッチとして機能するスイッチSCをオンのままにしてもよい。
【0130】
続いて、保護制御部200が電源ユニット1を故障状態に遷移するための動作について説明する。MCU130は、充電回路20とのI2C通信を通じて、充電回路20のパワーパス機能(VBUS端子及びBAT端子に入力される電力をSYS端子から出力する機能)を停止させる。これにより、充電回路20から電圧VCCが供給されなくなり、電圧VCCから派生する電圧VCC33_0、VCC33、VCC33_SLPの供給が停止する。したがって、MCU130を始めとしてほとんどの回路に電力が供給されず、電源ユニット1は実質的に動作を停止する。リブートコントローラ50への電力も供給されないため、リセット動作も受け付けなくなる。充電回路20のパワーパス機能を停止させることでバッテリBTからの放電及びバッテリBTの充電も実行できなくなる。また、コネクタUSBCにUSBプラグを介して外部機器を接続したとしても、電圧VCCが生成されないため、MCU130は起動しない。電源ユニット1の安全性をさらに向上させるため、充電回路20のパワーパス機能を停止させる前に、MCU130は、上述した方法によってバッテリBTからの放電及びバッテリBTの充電を禁止してもよい。
【0131】
続いて、
図5を参照して説明した監視条件について詳細に説明する。まず、
図6A及び
図6Bのフローチャートを参照して、
図5のカラム504に規定される監視条件集合について説明する。この監視条件集合は、上述のように、MCU130がバッテリBTの物理量を周期的に監視し、この監視結果に基づいて保護動作を実行するための条件の集合である。
図6A及び
図6Bの動作の開始時点で、電源ユニット1はスリープ状態であるとする。スリープ状態とは、ユーザが電源ユニット1を使用可能な状態であり、かつユーザが電源ユニット1を使用していない(具体的に、スイッチSWが所定時間押下されておらず、コネクタUSBCにUSBプラグを介して外部機器が接続されていない)状態のことである。スリープ状態は、ユーザが電源ユニット1を使用していない時にバッテリBTの消費電力を削減する状態である。電源ユニット1がスリープ状態である間に、MCU130は、
図3を参照して説明した電圧V
CC33_SLPを生成しない(すなわち、PC11端子の出力をローレベルとする)。また、電源ユニット1がスリープ状態である間に、MCU130は、他の回路からの信号を監視する。例えば、MCU130は、スリープ状態である間に、スイッチSWの押下に応じて値が変化するPC10端子の入力、スライダ13が開いたことに応じて値が変化するPC13端子の入力、バッテリ監視回路のIO5端子からのnGAUGE_INT2信号が供給されるPB12端子の入力、FF1のQ端子からの信号が供給されるPA10端子からの入力、コネクタUSBCにUSBプラグを介して外部機器が接続されたことに応じて値が変化するPA9端子の入力などを監視する。
【0132】
ステップS601で、MCU130は、スライダ13が開かれたかどうかを判定する。MCU130は、スライダ13が開かれた場合(ステップS601で「YES」)に処理をステップS602に遷移し、それ以外の場合(ステップS601で「NO」)に処理をステップS612に遷移する。スライダ13が開かれたことは、検出器170のOUT端子からMCU130のPC13端子に供給される信号がハイレベルに切り替わったことによって検出可能である。
【0133】
ステップS602で、MCU130は、バッテリBTの温度が51℃以上であるかどうかを判定する。MCU130は、バッテリBTの温度が51℃以上である場合(ステップS602で「YES」)に処理をステップS610に遷移し、それ以外の場合(ステップS602で「NO」)に処理をステップS603に遷移する。MCU130は、バッテリBTの温度を、バッテリ監視回路100からI
2C通信を通じて取得可能である。
図6A及び
図6Bの他のステップにおけるバッテリBTの温度の判定についても、MCU130は同様にバッテリBTの温度を取得可能である。ステップS602の判定では、条件が等式を満たす場合(バッテリBTの温度が51℃ちょうどである場合)にYESとしているが、この場合をNOとしてもよい。以下に説明する他の条件についても同様である。
【0134】
S602でNOと判定された場合(すなわち、バッテリBTの温度が51℃未満である場合)、MCU130は、バッテリBTが正常であると判定し、ステップS603で、電源ユニット1を加熱待機状態に遷移する。加熱待機状態とは、ユーザの指示に応じてエアロゾル源の加熱が可能な状態のことである。加熱待機状態に遷移するために、MCU130は、PC11端子の出力をハイレベルとすることによって、電圧VCC33_SLPを生成する。
【0135】
一方、S602でYESと判定された場合(すなわち、バッテリBTの温度が51℃以上である場合)、MCU130は、バッテリBTの温度が加熱待機状態への遷移に適さないと判定する。この場合に、MCU130は、電源ユニット1をスリープ状態に維持したまま、ステップS610で、バッテリBTの温度が45℃以下になるまで待機する。具体的に、ステップS610で、MCU130は、バッテリBTの温度が45℃以下であるかどうかを判定する。MCU130は、バッテリBTの温度が45℃以下である場合(ステップS610で「YES」)に処理をステップS601に遷移し、それ以外の場合(ステップS610で「NO」)にステップS610を繰り返す。これによって、バッテリBTの温度が51℃以上であると判定された電源ユニット1は、バッテリBTの温度が45℃以下になったことに応じて、スリープ状態以外の状態に遷移可能になる。
【0136】
ステップS603で電源ユニット1を加熱待機状態に遷移した後、ステップS604で、MCU130は、ユーザにより加熱指示が行われたかどうかを判定する。MCU130は、ユーザにより加熱指示が行われた場合(ステップS604で「YES」)に処理をステップS605に遷移し、それ以外の場合(ステップS604で「NO」)にステップS604に遷移する。加熱指示は、スイッチSWが押下されたことによってMCU130のPC10端子の入力がローレベルに切り替わったことによって検出可能である。なお、加熱指示が所定時間行われない場合、MCU130は処理をステップS611に進めてもよい。
【0137】
ステップS605で、MCU130は、バッテリBTの温度が51℃以上であるかどうかを判定する。MCU130は、バッテリBTの温度が51℃以上である場合(ステップS605で「YES」)に処理をステップS609に遷移し、それ以外の場合(ステップS605で「NO」)に処理をステップS606に遷移する。
【0138】
S605でNOと判定された場合(すなわち、バッテリBTの温度が51℃未満である場合)、MCU130は、バッテリBTが正常であると判定し、ステップS606で、電源ユニット1を加熱状態に遷移する。加熱状態とは、エアロゾル源が加熱されている状態のことである。加熱状態に遷移するために、MCU130は、PC12端子の出力をハイレベルとすることによって、変圧回路120を起動し、且つスイッチSSをオンする。その後、MCU130は、PA2端子の出力をローレベルにすることによって、スイッチSHをオンする。これにより、バッテリBTとヒータHTの間に閉回路が形成される。さらに、MCU130は、電源ユニット1が加熱状態である間に、ヒータHTの温度制御を行ってもよい。ヒータHTの温度制御は、スイッチSSをオンしている間のオペアンプA1の出力や、ヒータサーミスタTHが接続されるPA6端子の入力に基づくフィードバック制御であってもよい。このフィードバック制御は、PID制御によって実現されてもよい。PID制御の少なくとも1つの成分のゲイン(利得)は、ゼロでもよい。PID制御の操作量として算出されるスイッチSHのデューティ比は、PWM制御で実現されてもよいし、PFM制御によって実現されてもよい。
【0139】
一方、S605でYESと判定された場合(すなわち、バッテリBTの温度が51℃以上である場合)、MCU130は、バッテリBTの温度が加熱状態への遷移に適さないと判定する。この場合に、MCU130は、ステップS609で電源ユニット1をスリープ状態に遷移し、ステップS610で、バッテリBTの温度が45℃以下になるまで待機する。
【0140】
電源ユニット1が加熱状態である間に、ステップS607で、MCU130は、バッテリBTの温度が55℃以上であるかどうかを判定する。MCU130は、バッテリBTの温度が55℃以上である場合(ステップS607で「YES」)に処理をステップS618に遷移し、それ以外の場合(ステップS607で「NO」)に処理をステップS608に遷移する。
【0141】
S607でNOと判定された場合(すなわち、バッテリBTの温度が55℃未満である場合)、MCU130は、バッテリBTが正常であると判定し、電源ユニット1を加熱状態に維持する。一方、S607でYESと判定された場合(すなわち、バッテリBTの温度が55℃以上である場合)、MCU130は、バッテリBTにエラーが発生したと判定し、ステップS618で、電源ユニット1をリセット待機状態に遷移する。
【0142】
ステップS608で、MCU130は、加熱状態を終了するかどうかを判定する。MCU130は、加熱状態を終了する場合(ステップS608で「YES」)に処理をステップS611に遷移し、それ以外の場合(ステップS608で「NO」)に処理をステップS607に遷移する。例えば、MCU130は、スライダ13が閉じられた場合、ユーザによるパフ回数が上限に到達した場合、加熱状態に遷移してから所定の時間が経過した場合などに、加熱状態を終了すると判定する。加熱状態を終了すると、ステップS611で、MCU130は、電源ユニット1をスリープ状態に遷移する。
【0143】
ステップS601でスライダ13が開かれていないと判定した場合に、ステップS612で、MCU130は、コネクタUSBCにUSBプラグを介して外部機器が接続されたかどうかを判定する。MCU130は、コネクタUSBCにUSBプラグを介して外部機器が接続された場合(ステップS612で「YES」)に処理をステップS613に遷移し、それ以外の場合(ステップS612で「NO」)に処理をステップS601に遷移する。コネクタUSBCにUSBプラグを介して外部機器が接続されたことは、PA9端子がハイレベルに切り替わったことによって検出可能である。なお、MCU130は、ステップS602以降もステップS612の処理を実行し続け、「YES」と判断された場合には、ステップS602以降の処理を停止し、処理をステップS613に進めてもよい。
【0144】
ステップS613で、MCU130は、後述する深放電判定処理を実行することによって、バッテリBTが深放電状態でないかどうかを判定する。後述するように、バッテリBTが正常でない場合に、電源ユニット1はリセット待機状態又は故障状態に遷移し、処理が終了される。バッテリBTが正常である場合に、ステップS614で、MCU130は、バッテリBTへの普通充電を開始する。具体的に、MCU130は、PB3端子の出力をローレベルに維持することによって、充電回路20からバッテリBTへの給電を維持する。普通充電では、まずは2000mA程度の電流でバッテリBTの充電が開始される。具体的な電流値は、I2C通信を通じてMCU130から充電回路20へ伝えられてもよい。
【0145】
ステップS615で、MCU130は、バッテリBTに流れる電流が設定値の1.1倍以上であるかどうかを判定する。MCU130は、バッテリBTに流れる電流が設定値の1.1倍以上である場合(ステップS615で「YES」)に処理をステップS618に遷移し、それ以外の場合(ステップS615で「NO」)に処理をステップS616に遷移する。MCU130は、バッテリBTに流れる電流を、バッテリ監視回路100からI2C通信を通じて取得可能である。設定値とは、充電回路20によって実行されるCCCV充電のうち、CC(Constant-Current、定電流)充電を行うために予め定められた電流値のことである。
【0146】
S615でNOと判定された場合(すなわち、バッテリBTを流れる電流が設定値の1.1倍未満である場合)、MCU130は、バッテリBTが正常であると判定し、バッテリBTの充電を継続する。一方、S615でYESと判定された場合(すなわち、バッテリBTを流れる電流が設定値の1.1倍以上である場合)、MCU130は、バッテリBTにエラーが発生したと判定し、ステップS618で、電源ユニット1をリセット待機状態に遷移する。
【0147】
ステップS616で、MCU130は、バッテリBTの温度が55℃以上又は0℃以下であるかどうかを判定する。MCU130は、バッテリBTの温度が55℃以上又は0℃以下である場合(ステップS616で「YES」)に処理をステップS618に遷移し、それ以外の場合(ステップS616で「NO」)に処理をステップS617に遷移する。
【0148】
S616でNOと判定された場合(すなわち、バッテリBTの温度が0℃よりも高く55℃よりも低い場合)、MCU130は、バッテリBTが正常であると判定し、バッテリBTの充電を継続する。一方、S616でYESと判定された場合(すなわち、バッテリBTの温度が55℃以上又は0℃以下である場合)、MCU130は、バッテリBTにエラーが発生したと判定し、ステップS618で、電源ユニット1をリセット待機状態に遷移する。なお、ステップS615とS616の順序は、逆でもよい。また、MCU130は、ステップS615とS616を同時に行ってもよい。
【0149】
ステップS617で、MCU130は、充電を終了するかどうかを判定する。MCU130は、充電を終了する場合(ステップS617で「YES」)に処理をステップS611に遷移し、それ以外の場合(ステップS617で「NO」)に処理をステップS615に遷移する。例えば、MCU130は、USBプラグ及び外部機器がコネクタUSBCから抜かれた場合、バッテリBTの電圧が所定の電圧に到達した場合などに、充電を終了すると判定する。また、MCU130は、I2C通信を通じて充電回路20から充電が終了した旨の通知を受け取ることで、充電を終了すると判定してもよい。充電を終了すると、ステップS611で、MCU130は、電源ユニット1をスリープ状態に遷移する。
【0150】
以上のように、MCU130は、バッテリの物理量について複数の監視条件(S602、S605、S607、S613、S615、S616)を含む監視条件集合の何れかの条件が満たされるかどうかを判定する。これらの監視条件のうち、一部の監視条件(S607、S615、S616)の何れかが満たされた場合に、MCU130は、電源ユニット1をリセット待機状態に遷移する。これらの監視条件のうち、他の一部の監視条件(S602、S605)の何れかが満たされた場合に、MCU130は、電源ユニット1をスリープ状態に維持又は遷移し、所定の条件(S610)を満たすまでスリープ状態を維持する。S614で実行される深放電判定処理の結果に応じて、後述するように、MCU130は、電源ユニット1をエラー状態又はリセット待機状態に遷移可能である。
図6A及び
図6Bの一部の条件(S605、S607、S610、S615、S616)は、繰り返し判定される。MCU130は、これらの条件を、所定の周期(例えば、1秒ごと)に判定してもよい。
【0151】
次に、
図7A及び
図7Bのフローチャートを参照して、
図5のカラム505及び506に規定される監視条件集合について説明する。この監視条件集合は、上述のように、バッテリ監視回路100がバッテリBTの物理量を監視し、この監視結果に基づいてFF1又はMCU130が保護動作を実行するための条件の集合である。バッテリ監視回路100は、動作中に(すなわち、電圧V
CC33が生成されている間に)、
図7A及び
図7Bの動作を繰り返す。バッテリ監視回路100は、以下に説明する条件を満たさない限り、nGAUGE_INT1信号及びnGAUGE_INT2信号をハイレベルに維持する。バッテリ監視回路100は、nGAUGE_INT1信号及びnGAUGE_INT2信号をローレベルに変更した後に、バッテリ監視回路100がリセットされるまでこれらの信号をローレベルに維持する。
【0152】
ステップS701で、バッテリ監視回路100は、バッテリBTの電圧が4.235V以上又は2.8V以下であるかどうかを判定する。バッテリ監視回路100は、バッテリBTの電圧が4.235V以上又は2.8V以下である場合(ステップS701で「YES」)に処理をステップS702に遷移し、それ以外の場合(ステップS701で「NO」)に処理をステップS703に遷移する。バッテリ監視回路100は、VBAT端子の入力をバッテリBTの電圧として取得可能である。
図7A及び
図7Bの他のステップのバッテリBTの電圧の取得についても同様である。バッテリ監視回路100は、バッテリBTの電圧が4.235V以上又は2.8V以下である場合に、バッテリBTが正常でないと判定し、ステップS702でnGAUGE_INT2信号をローレベルに切り替える。バッテリ監視回路100は、ステップS702を実行した後に
図7A及び
図7Bにおける以降の処理を実行しなくてもよい。
【0153】
ステップS703で、バッテリ監視回路100は、バッテリBTが放電中であるかどうかを判定する。バッテリ監視回路100は、バッテリBTが放電中である場合(ステップS703で「YES」)に処理をステップS704に遷移し、それ以外の場合(ステップS703で「NO」)に処理をステップS714に遷移する。バッテリ監視回路100は、抵抗R1を流れる電流の方向を測定することによって、バッテリBTが放電中であるかどうかを判定できる。バッテリ監視回路100は、バッテリBTからの放電中の一部の場合のみに、ステップS703でYESと判定してもよい。例えば、バッテリ監視回路100は、電源ユニット1が加熱状態である場合にのみ、ステップS703でYESと判定してもよい。バッテリ監視回路100は、電源ユニット1が加熱状態であるかどうかを、I2C通信を通じてMCU130から提供される情報に基づいて判定してもよい。ステップS703でYESと判定された場合に、バッテリ監視回路100は、ステップS704~S713の処理を行う。
【0154】
ステップS704で、バッテリ監視回路100は、バッテリBTを流れる電流(放電電流)が9.75A以上であるかどうかを判定する。バッテリ監視回路100は、バッテリBTを流れる電流が9.75A以上であるである場合(ステップS704で「YES」)に処理をステップS705に遷移し、それ以外の場合(ステップS704で「NO」)に処理をステップS708に遷移する。バッテリ監視回路100は、VRSM端子及びVRSP端子の入力からバッテリBTを流れる電流を取得可能である。
図7A及び
図7Bの他のステップのバッテリBTを流れる電流の取得についても同様である。バッテリ監視回路100は、バッテリBTを流れる電流が9.75A以上である場合に、バッテリBTが正常でないと判定し、ステップS705でnGAUGE_INT2信号をローレベルに切り替える。
【0155】
ステップS706で、バッテリ監視回路100は、バッテリBTを流れる電流が10A以上であるかどうかを判定する。バッテリ監視回路100は、バッテリBTを流れる電流が10A以上であるである場合(ステップS706で「YES」)に処理をステップS707に遷移し、それ以外の場合(ステップS706で「NO」)に処理をステップS708に遷移する。バッテリ監視回路100は、バッテリBTを流れる電流が10A以上である場合に、バッテリBTが正常でないと判定し、ステップS707でnGAUGE_INT1信号をローレベルに切り替える。バッテリ監視回路100は、ステップS707を実行した後に
図7A及び
図7Bにおける以降の処理を実行しなくてもよい。
【0156】
ステップS708で、バッテリ監視回路100は、バッテリBTの温度が60℃以上の状態が2秒上継続したかどうかを判定する。バッテリ監視回路100は、バッテリBTの温度が60℃以上の状態が2秒以上継続した場合(ステップS708で「YES」)に処理をステップS709に遷移し、それ以外の場合(ステップS708で「NO」)に処理をステップS712に遷移する。バッテリ監視回路100は、THM端子の入力に基づいてバッテリBTの温度を取得可能である。
図7A及び
図7Bの他のステップのバッテリBTの温度の取得についても同様である。バッテリ監視回路100は、バッテリBTの温度が60℃以上の状態が2分以上継続した場合に、バッテリBTが正常でないと判定し、ステップS709でnGAUGE_INT1信号をローレベルに切り替える。バッテリ監視回路100は、ステップS709を実行した後に
図7A及び
図7Bにおける以降の処理を実行しなくてもよい。
【0157】
ステップS710で、バッテリ監視回路100は、バッテリBTの温度が85℃以上の状態が2分以上継続したかどうかを判定する。バッテリ監視回路100は、バッテリBTの温度が85℃以上の状態が2分以上継続した場合(ステップS710で「YES」)に処理をステップS711に遷移し、それ以外の場合(ステップS710で「NO」)に処理をステップS712に遷移する。バッテリ監視回路100は、バッテリBTの温度が85℃以上の状態が2分以上継続した場合に、バッテリBTが正常でないと判定し、ステップS711でnGAUGE_INT2信号をローレベルに切り替える。バッテリ監視回路100は、ステップS711を実行した後に
図7A及び
図7Bにおける以降の処理を実行しなくてもよい。
【0158】
ステップS712で、バッテリ監視回路100は、バッテリBTの温度が-5℃以下の状態が5秒以上継続したかどうかを判定する。バッテリ監視回路100は、バッテリBTの温度が-5℃以下の状態が5秒以上継続したである場合(ステップS712で「YES」)に処理をステップS713に遷移し、それ以外の場合(ステップS712で「NO」)に処理をステップS701に遷移する。バッテリ監視回路100は、バッテリBTの温度が-5℃以下の状態が5秒以上継続した場合に、バッテリBTが正常でないと判定し、ステップS713でnGAUGE_INT2信号をローレベルに切り替える。バッテリ監視回路100は、ステップS713を実行した後に
図7A及び
図7Bにおける以降の処理を実行しなくてもよい。
【0159】
ステップS714で、バッテリ監視回路100は、バッテリBTが充電中であるかどうかを判定する。バッテリ監視回路100は、バッテリBTが充電中である場合(ステップS714で「YES」)に処理をステップS715に遷移し、それ以外の場合(ステップS714で「NO」)に処理をステップS701に遷移する。バッテリ監視回路100は、抵抗R1を流れる電流の方向を測定することによって、バッテリBTが充電中であるかどうかを判定できる。バッテリ監視回路100は、バッテリBTへの充電中のみ(すなわち、充電回路のBAT端子からバッテリBTに電力が供給されている間のみ)に、ステップS714でYESと判定してもよい。これにかえて、バッテリ監視回路100は、コネクタUSBCにUSBプラグを介して外部機器が接続されている場合に、ステップS714でYESと判定してもよい。ステップS714でYESと判定された場合に、バッテリ監視回路100は、ステップS715~S720の処理を行う。
【0160】
ステップS715で、バッテリ監視回路100は、バッテリBTを流れる電流(充電電流)が2.75A以上であるかどうかを判定する。バッテリ監視回路100は、バッテリBTを流れる電流が2.75A以上であるである場合(ステップS715で「YES」)に処理をステップS716に遷移し、それ以外の場合(ステップS715で「NO」)に処理をステップS719に遷移する。バッテリ監視回路100は、バッテリBTを流れる電流が2.75A以上である場合に、バッテリBTが正常でないと判定し、ステップS716でnGAUGE_INT2信号をローレベルに切り替える。
【0161】
ステップS716で、バッテリ監視回路100は、バッテリBTを流れる電流が3.0A以上であるかどうかを判定する。バッテリ監視回路100は、バッテリBTを流れる電流が3.0A以上であるである場合(ステップS717で「YES」)に処理をステップS718に遷移し、それ以外の場合(ステップS717で「NO」)に処理をステップS719に遷移する。バッテリ監視回路100は、バッテリBTを流れる電流が3.0A以上である場合に、バッテリBTが正常でないと判定し、ステップS718でnGAUGE_INT1信号をローレベルに切り替える。バッテリ監視回路100は、ステップS718を実行した後に
図7A及び
図7Bにおける以降の処理を実行しなくてもよい。
【0162】
ステップS719で、バッテリ監視回路100は、バッテリBTの温度が85℃以上の状態が2分以上継続したかどうかを判定する。バッテリ監視回路100は、バッテリBTの温度が85℃以上の状態が2分以上継続した場合(ステップS719で「YES」)に処理をステップS720に遷移し、それ以外の場合(ステップS719で「NO」)に処理をステップS701に遷移する。バッテリ監視回路100は、バッテリBTの温度が85℃以上の状態が2分以上継続した場合に、バッテリBTが正常でないと判定し、ステップS720でnGAUGE_INT2信号をローレベルに切り替える。バッテリ監視回路100は、ステップS720を実行した後に
図7A及び
図7Bにおける以降の処理を実行しなくてもよい。
【0163】
以上のように、バッテリ監視回路100は、バッテリの物理量について複数の監視条件(S701、S704、S706、S708、S710、S712、S715、S717、S719)を含む監視条件集合の何れかの条件が満たされるかどうかを判定する。バッテリ監視回路100は、監視条件集合の何れかの条件が満たされた場合に、保護動作として、nGAUGE_INT1信号又はnGAUGE_INT2信号をローレベルに切り替える動作を行う。nGAUGE_INT1信号はFF1に供給され、nGAUGE_INT1信号がローレベルに切り替わったことに応じて、FF1は、上述のように、電源ユニット1をリセット待機状態に遷移する。nGAUGE_INT2信号はMCU130に供給され、nGAUGE_INT2信号がローレベルに切り替わったことに応じて、MCU130は、後述する保護動作を実行する。
【0164】
図7A及び
図7Bの方法において、監視条件を判定する順番は、
図7A及び
図7Bとは異なっていてもよいし、並列に実行されてもよい。バッテリ監視回路100は、これらの条件を、所定の周期(例えば、1秒ごと)に判定してもよい。さらに、バッテリ監視回路100は、監視条件ごとに異なる周期で各監視条件を判定してもよい。例えば、バッテリ監視回路100は、ステップS710の監視条件(85℃以上が2分以上継続)を1分周期で判定してもよい。
【0165】
次に、
図8のフローチャートを参照して、ローレベルのnGAUGE_INT2信号が供給された場合のMCU130の動作について説明する。MCU130は、電源ユニット1がどのような状態(例えば、スリープ状態、加熱待機状態、加熱状態など)であっても、動作可能であれば(すなわち、VDD端子に動作電力が供給されていれば)、
図8の動作を実行してもよい。
図8の動作を実行する場合に、MCU130は実行中の他の動作を中断してもよいし、並行して実行してもよい。このように、MCU130は、ローレベルのnGAUGE_INT2信号を、割り込み信号として処理する。
【0166】
ステップS801で、MCU130は、I2C通信を通じて、バッテリ監視回路100から、nGAUGE_INT2信号をローレベルに切り替えた原因を取得する。バッテリ監視回路100は、nGAUGE_INT2信号をローレベルに切り替えた際に、その原因を内部に格納しておき、MCU130からの問い合わせに応じてこの原因を応答してもよい。このかわりに、MCU130は、バッテリ監視回路100からバッテリBTの情報を新たに取得して、どの監視条件を満たしているかを判定してもよい。
【0167】
ステップS802で、MCU130は、高温が原因だったか(すなわち、S710又はS719が原因だったか)どうかを判定する。MCU130は、高温が原因だった場合(ステップS802で「YES」)に処理をステップS803に遷移し、それ以外の場合(ステップS802で「NO」)に処理をステップS805に遷移する。
【0168】
ステップS803で、MCU130は、バッテリBTの温度が85℃以上の状態が5秒以上継続したかどうかを判定する。MCU130は、バッテリBTの温度が85℃以上の状態が5秒以上継続した場合(ステップS803で「YES」)に処理をステップS804に遷移し、それ以外の場合(ステップS803で「NO」)に処理をステップS806に遷移する。MCU130は、バッテリBTの温度が85℃以上の状態が5秒以上継続した場合に、バッテリBTが正常でなく、リセットによって回復不能であると判定し、ステップS804で、電源ユニット1を故障状態に遷移する。MCU130は、バッテリBTの温度が85℃以上の状態が5秒以上継続しなかった場合に、リセットによって回復可能であると判定し、ステップS806で、電源ユニット1をリセット待機状態に遷移する。
【0169】
高温以外が原因だった場合に、ステップS805で、MCU130は、リセット待機状態への遷移が必要な監視条件が満たされたかどうかを判定する。MCU130は、リセット待機状態への遷移が必要な監視条件が満たされた場合(ステップS805で「YES」)に処理をステップS806に遷移し、それ以外の場合(ステップS805で「NO」)に処理をステップS807に遷移する。リセット待機状態への遷移が必要な監視条件とは、
図5のカラム506のうち破線で囲まれた監視条件のことであり、具体的に、S701の一部(過電圧)、S704、S715のことである。リセット待機状態への遷移が必要な条件とは、満たされた場合にMCU130が電源ユニット1をリセット待機状態へ遷移させる必要がある条件とも理解されうる。MCU130は、リセット待機状態への遷移が必要な監視条件が満たされた場合に、リセットによって回復可能であると判定し、ステップS806で、電源ユニット1をリセット待機状態に遷移する。
【0170】
リセット待機状態への遷移が必要な監視条件が満たされなかった場合(具体的に、S701の一部(過放電)、S712)に、ステップS807で、MCU130は、電源ユニット1がスリープ状態以外の状態であるかどうかを判定する。本実施形態において、リセット待機状態への遷移が必要な監視条件が満たされなかった場合とは、監視条件のうち、高温が原因である条件ではなく、リセット待機状態への遷移が必要な監視条件でもない条件が満たされた場合とも理解されうる。MCU130は、電源ユニット1がスリープ状態以外の状態である場合(ステップS807で「YES」)に処理をステップS808に遷移し、それ以外の場合(ステップS807で「NO」)に処理をステップS809に遷移する。ステップS808で、MCU130は、電源ユニット1をスリープ状態に遷移する。なお、MCU130は、処理をステップS808に進める前、又はステップS808において、発光部NUやバイブレータMを介してユーザにエラーを通知してもよい。
【0171】
ステップS809で、MCU130は、低温が原因だったか(すなわち、S712が原因だったか)どうかを判定する。MCU130は、低温が原因だった場合(ステップS809で「YES」)に処理をステップS810に遷移し、それ以外の場合(ステップS809で「NO」)に処理を終了する。低温が原因だった場合に、MCU130は、この状態でのバッテリBTの使用は適さないと判定し、電源ユニット1をスリープ状態に維持したまま、ステップS810で、バッテリBTの温度が0℃以上になるまで待機する。これは、後述する電析の進行を抑制するためである。具体的に、ステップS810で、MCU130は、バッテリBTの温度が0℃以上であるかどうかを判定する。MCU130は、バッテリBTの温度が0℃以上である場合(ステップS810で「YES」)に処理を終了し、それ以外の場合(ステップS810で「NO」)にステップS810を繰り返す。これによって、バッテリBTの温度が-5℃以下であると判定された電源ユニット1は、バッテリBTの温度が0℃以上になったことに応じて、スリープ状態以外の状態に遷移可能になる。換言すれば、バッテリBTの温度が0℃以上にならない限り(ステップS810で「YES」とならない限り)、電源ユニット1はスリープ状態に強制的に維持される。
【0172】
図8の一部の条件(S803、S810)は、繰り返し判定される。MCU130は、これらの条件を、所定の周期(例えば、1秒ごと)に判定してもよい。
【0173】
図9のフローチャートを参照して、
図5のカラム508に規定される監視条件集合について説明する。この監視条件集合は、上述のように、保護回路90がバッテリBTの物理量を監視し、この監視結果に基づいて保護動作を実行するための条件の集合である。保護回路90は、動作中に(すなわち、電源電圧V
BATが存在する間に)、
図9の動作を繰り返す。保護回路90は、以下に説明する条件を満たさない限り、DOUT信号及びCOUT信号をハイレベルに維持する。
【0174】
ステップS901で、保護回路90は、バッテリBTの電圧が4.28V以上又は2.5V以下であるかどうかを判定する。保護回路90は、バッテリBTの電圧が4.8V以上又は2.5V以下である場合(ステップS901で「YES」)に処理をステップS904に遷移し、それ以外の場合(ステップS901で「NO」)に処理をステップS902に遷移する。保護回路90は、VBAT端子の入力をバッテリBTの電圧として取得可能である。保護回路90は、バッテリBTの電圧が4.8V以上又は2.5V以下である場合に、バッテリBTが正常でないと判定し、ステップS904で、電源ユニット1を接続待機状態に遷移する。なお、保護回路90は、バッテリBTの電圧が4.28V以上であるためにステップS904に遷移した場合、DOUT信号及びCOUT信号のうちCOUT信号のみをハイレベルに遷移させてもよい。換言すれば、このような場合、保護回路90は、スイッチSCとスイッチSDとのうちスイッチSCのみオフにしてもよい。また、保護回路90は、バッテリBTの電圧が2.5V以下であるためにステップS904に遷移した場合、DOUT信号及びCOUT信号のうちDOUT信号のみをハイレベルに遷移させてもよい。換言すれば、このような場合、保護回路90は、スイッチSCとスイッチSDとのうちスイッチSDのみオフにしてもよい。
【0175】
ステップS902で、保護回路90は、バッテリBTが放電中であるかどうかを判定する。保護回路90は、バッテリBTが放電中である場合(ステップS902で「YES」)に処理をステップS903に遷移し、それ以外の場合(ステップS902で「NO」)に処理をステップS901に遷移する。保護回路90は、抵抗R2を流れる電流の方向を測定することによって、バッテリBTが放電中であるかどうかを判定できる。
【0176】
ステップS903で、保護回路90は、バッテリBTを流れる電流(放電電流)が12.67A以上であるかどうかを判定する。保護回路90は、バッテリBTを流れる電流が12.67A以上であるである場合(ステップS903で「YES」)に処理をステップS904に遷移し、それ以外の場合(ステップS903で「NO」)に処理をステップS901に遷移する。保護回路90は、CS端子及びVSS端子の入力からバッテリBTを流れる電流を取得可能である。保護回路90は、バッテリBTを流れる電流が12.67A以上である場合に、バッテリBTが正常でないと判定し、ステップS904で、電源ユニット1を接続待機状態に遷移する。なお、保護回路90は、バッテリBTを流れる電流(放電電流)が12.67A以上であるためにステップS904に遷移した場合、DOUT信号及びCOUT信号のうちDOUT信号のみをハイレベルに遷移させてもよい。換言すれば、このような場合、保護回路90は、スイッチSCとスイッチSDとのうちスイッチSDのみオフにしてもよい。
【0177】
上述の
図7A、
図7B及び
図8で説明したように、バッテリ監視回路100は、バッテリBTの温度が85℃以上の状態が2分以上継続した場合に、エラー信号をMCU130へ送信する(ステップS710からステップS711)。MCU130は、エラー信号の受信後に、バッテリBTの温度を新たに取得し、この温度が85℃以上の状態が5秒以上継続した場合に、電源ユニット1を故障状態に遷移する(ステップS803からステップS804)。このように、別個の回路による判定結果によって電源ユニット1を故障状態に遷移できるため、電源ユニット1を適切に保護できる。換言すれば、電源ユニット1の故障状態への遷移は不可逆的な遷移であるため、当該遷移が誤って行われることを抑制できる。
【0178】
バッテリ監視回路100は、バッテリBTの温度が85℃以上の状態が2分以上継続したかどうかを所定の周期で判定してもよい。例えば、バッテリ監視回路100は、バッテリBTの温度が85℃以上の状態が2分以上継続したかどうかを、1分周期で判定してもよい。この場合に、バッテリ監視回路100は、バッテリBTの温度が85℃以上の状態に2回連続して検出された場合に、エラー信号をMCU130に供給してもよい。なお、バッテリ監視回路100がバッテリBTの温度を取得する周期は1分よりも短くてもよい。MCU130は、バッテリBTの温度が85℃以上の状態が5秒以上継続したかどうかを所定の周期で判定してもよい。例えば、MCU130は、バッテリBTの温度が85℃以上の状態が5秒以上継続したかどうかを、1秒周期で判定してもよい。この場合に、MCU130は、バッテリBTの温度が85℃以上の状態に5回連続して検出された場合に、電源ユニット1を故障状態に遷移する。周期及び回数は、この例に限られない。一般に、バッテリ監視回路100は、バッテリBTの温度が85℃以上かどうかを第1周期(例えば、1分)で監視し、n回(例えば、2回)連続してこの状態となった場合に、エラー信号をMCU130に供給する。換言すれば、ローレベルのnGAUGE_INT2信号をMCU130へ供給する。MCU130は、バッテリBTの温度が85℃以上かどうかを第2周期(例えば、1秒)で監視し、m回(例えば、5回)連続してこの状態となった場合に、電源ユニット1を故障状態に遷移する。第1周期は第2周期よりも長く、mはnよりも大きい。第2周期×mの値は、第1周期×nの値よりも短い。つまり、MCU130が電源ユニット1を故障状態に遷移させるか否かの判断に要する時間は、バッテリ監視回路100がローレベルのnGAUGE_INT2信号をMCU130へ供給するか否かの判断に要する時間より短い。これによって、MCU130は、バッテリ監視回路100による高温の判定よりも短時間で高温を判定できる。
【0179】
MCU130は、バッテリBTの温度(具体的には、その高温状態)に関する条件以外について、エラー信号の受信後に、バッテリBTの情報を新たに取得せずに、バッテリ監視回路100の判定結果に従って、保護動作を実行してもよい。これによって、電源ユニット1の消費電力を低減できる。
【0180】
図10を参照して、
図6Bの深放電判定処理(S613)の具体例について説明する。
図10は、深放電を判定するための処理の一例であり、他の処理によって深放電が判定されてもよい。
図10の動作は、コネクタUSBCにUSBプラグを介して外部機器が接続された状態で実行される。
【0181】
ステップS1001で、MCU130は、電圧ADCB+が0.1V以下又は電源電圧VBATが1.5V以下であるかどうかを判定する。MCU130は、電圧ADCB+が0.1V以下又は電源電圧VBATが1.5V以下である場合(ステップS1001で「YES」)に処理をステップS1002に遷移し、それ以外の場合(ステップS1001で「NO」)に処理をステップS1011に遷移する。電圧ADCB+は、スイッチ回路80がオンの状態でPC2端子に現れる電圧である。MCU130は、電源電圧VBATを、バッテリ監視回路100からI2C通信を介して取得できる。この条件を満たさない場合に、MCU130は、ステップS1011で、バッテリBTが正常であると判定する。この条件を満たさない場合に、MCU130は、バッテリBTが深放電している可能性があると判定し、後続の処理を実行する。電圧ADCB+は、電源電圧VBATを抵抗R4及びR5によって分圧した電圧であり、分圧回路のうち低電位側の抵抗R5の一端は、グランド電位へ接続される。このため、スイッチ回路80をオンできないほどにバッテリBTの放電が進行した場合、電圧ADCB+は、グランド電位と略等しくなる。このため、ステップS1001において、電圧ADCB+に対する閾値は、0.1Vになっている。
【0182】
S1002で、MCU130は、540mAで充電を開始し、充電を継続した状態で1秒間待機した後、ステップS1003に遷移する。なお、本ステップにおける充電は深放電している可能性があるバッテリBTに対して行われるため、本ステップにおける充電電流の値は、前述したステップS614における充電電流の値よりも小さいことが好ましい。また、以降のステップS1003~S1011において、この充電は継続されている点に留意されたい。
【0183】
ステップS1003で、MCU130は、電圧ADCB+が3.5V以上であるかどうかを判定する。MCU130は、電圧ADCB+が3.5V以上である場合(ステップS1003で「YES」)に処理をステップS1004に遷移し、それ以外の場合(ステップS1003で「NO」)に処理をステップS1008遷移する。
【0184】
ステップS1004で、MCU130は、電流IBATがー20mAより大きく20mA未満であるかどうかを判定する。MCU130は、電流IBATがー20mAより大きく20mA未満である場合(ステップS1004で「YES」)に処理をステップS1005に遷移し、それ以外の場合(ステップS1004で「NO」)に処理をステップS1007に遷移する。電流IBATは、バッテリBTに流れる電流であり、MCU130は、バッテリ監視回路100からI2C通信を介して取得できる。なお、本ステップでは、+(プラス)の符号を持つ電流IBATは充電電流を意味し、-(マイナス)の符号を持つ電流IBATは放電電流を意味するものとする。この条件を満たさない場合に、MCU130は、バッテリBTが深放電状態ではないと判定し、電源ユニット1をスリープ状態に遷移する。
【0185】
ステップS1005で、MCU130は、S1003及びS1004を所定の回数繰り返したかどうかを判定する。MCU130は、S1003及びS1004を所定の回数繰り返した場合(ステップS1005で「YES」)に処理をステップS1006に遷移し、それ以外の場合(ステップS1005で「NO」)に処理をステップS1003に遷移する。所定の回数繰り返してもS1003及びS1004を満たす場合に、MCU130は、バッテリBTが深放電状態であると判定し、電源ユニット1を故障状態に遷移する。ステップS1005で「YES」と判定される場合は、540mAの充電電流で数秒ほどの短期間しかバッテリBTを充電していないにも関わらず、電圧ADCB+が大きな値を示している場合である。これは、バッテリBTが深放電することでその内部構造に不可逆的な変化が生じ、バッテリBTの内部抵抗(インピーダンス)が大幅に増加(悪化)しているためであると考えられる。なお、ステップS1004は、電圧ADCB+にバッテリBTの内部抵抗分の電圧降下が含まれているか否かを確認するためのものである。
【0186】
ステップS1008で、MCU130は、電圧ADCB+が3.35V未満であるかどうかを判定する。MCU130は、電圧ADCB+が3.35V未満である場合(ステップS1008で「YES」)に処理をステップS1009に遷移し、それ以外の場合(ステップS1008で「NO」)に処理をステップS1011に遷移する。この条件を満たさない場合に、MCU130は、ステップS1011で、バッテリBTが正常であると判定する。
【0187】
ステップS1009で、MCU130は、バッテリ監視回路100からI2C通信を介して取得される電源電圧VBATが2.35V未満又は2.65Vよりも高いかどうかを判定する。MCU130は、電源電圧VBATが2.35V未満又は2.65Vよりも高い場合(ステップS1009で「YES」)に処理をステップS1010に遷移し、それ以外の場合(ステップS1009で「NO」)に処理をステップS1008に遷移する。
【0188】
ステップS1010で、MCU130は、ステップS1002で充電を開始してから所定の時間が経過したかどうかを判定する。MCU130は、ステップS1002で充電を開始してから所定の時間が経過した場合(ステップS1010で「YES」)に処理をステップS1007に遷移し、それ以外の場合(ステップS1010で「NO」)に処理をステップS1008に遷移する。所定の時間繰り返してもS1008及びS1009を満たす場合に、MCU130は、充電回路20によるバッテリBTの充電において何らかのエラーが生じたと判定し、ステップS1007で、電源ユニット1をスリープ状態に遷移する。
【0189】
S1001、S1003及びS1008において、MCU130は、ADCB+の値を条件とする。ADCB+に関する条件は、バッテリ監視回路100から取得される情報を使用せずに判定可能であるため、バッテリ監視回路100がバッテリBTの状態を正常に取得できない場合であっても、深放電を正しく判定できる。一般的に、バッテリ監視回路100は、バッテリBTの電圧が正常な状態において、バッテリBTの状態を正確に監視するために最適化されている。換言すれば、バッテリBTの電圧が正常ではない状態において、バッテリ監視回路100が取得するバッテリBTの状態には、誤差などが生じやすい。なお、ここでいうバッテリBTの電圧が正常な状態とは、電源電圧VBATがバッテリBTの満充電電圧以下且つ放電終止電圧以上の状態を指すものとする。
【0190】
再び
図5を参照して、上述の監視条件の相互関係について説明する。バッテリ監視回路100は、カラム505に規定される監視条件集合の何れかの条件を満たす場合に、エラー信号(ローレベルのnGAUGE_INT1信号)をFF1に供給し、カラム506に規定される監視条件集合の何れかの条件を満たす場合に、別のエラー信号(ローレベルのnGAUGE_INT2信号)をMCU130に供給する。そのため、カラム505に規定される監視条件集合のそれぞれの条件及びカラム506に規定される監視条件集合のそれぞれの条件は、エラー信号を供給するためのエラー通知条件と呼ばれてもよい。FF1に供給されるエラー信号そのものは、MCU130には供給されない。MCU130に供給されるエラー信号は、FF1には供給されない。FF1にエラー信号が供給されると、FF1は、上述したように、ハードウェア的に保護動作を実行する。このように、FF1は、エラー処理回路として機能する。一方、MCU130にエラー信号が供給されると、MCU130は、上述したように、ソフトウェア的に保護動作を実行する。このように、バッテリ監視回路100からFF1とMCU130との両方に個別にエラー信号を供給することによって、FF1とMCU130との一方が正常に動作しなかった場合であっても、電源ユニット1が適切に保護される。
【0191】
さらに、カラム505に規定される監視条件集合の何れの監視条件も、電源ユニット1をリセット待機状態に遷移する。上述のように、リセット待機状態は、バッテリBTの放電又は充電の制限を解除するために、ユーザによる動作を必要とする状態である。そのため、バッテリBTの放電又は充電の制限を、ユーザの動作によらず、自動的に解除することによって、さらなるエラーが発生することを抑制できる。また、カラム505に規定される監視条件集合の何れかが満たされた場合に、FF1によってハードウェア的にバッテリBTの放電又は充電が制限される。この制限は、精度に優れるMCU130による判断を経ていないため、電源ユニット1を故障状態にはしない。それにより、ユーザの利便性が高まる。換言すれば、MCU130はFF1に比べて静電気などの外来ノイズやグリッチノイズなどの内部ノイズに対して強い耐性を有する。このため、MCU130による判断は、精度において優れる。
【0192】
一方、カラム506に規定される監視条件集合の一部の条件を満たす場合に、MCU130は、電源ユニット1を故障状態に遷移する。特定の条件を満たす場合に電源ユニット1を故障状態に遷移するため、電源ユニット1の安全性が一層向上する。また、MCU130による判断によって電源ユニット1を故障状態に遷移するため、精度よくこの遷移の可否を判定できる。
【0193】
カラム506に規定される監視条件集合に含まれる条件の個数は、カラム505に規定される監視条件集合に含まれる条件の個数よりも多い。これによって、重要度の高い一部の条件については、FF1によらず、MCU130によって処理されるので、電源ユニット1を一層適切に保護できる。例えば、カラム506に規定される監視条件集合で監視されるバッテリBTの物理量は、カラム505に規定される監視条件集合で監視されないバッテリBTの物理量を含む。具体的に、カラム506に規定される監視条件集合は、バッテリBTの電圧に関する条件を含むが、カラム505に規定される監視条件集合は、バッテリBTの電圧に関する条件を含まない。カラム506に規定される監視条件集合は、バッテリBTの温度の下限温度に関する条件を含むが、カラム505に規定される監視条件集合は、バッテリBTの温度の下限温度に関する条件を含まない。
【0194】
バッテリBTの過加熱に関する条件は、カラム505に規定される監視条件集合と、カラム506に規定される監視条件集合との両方に含まれる。電源の温度の上限温度について、制御回路による精度の高いエラー処理では電源ユニットを故障状態に遷移し、エラー処理回路によるハードウェア的なエラー処理では電源ユニットをリセット待機状態に遷移するため、電源ユニットを一層適切に保護できる。また、バッテリBTの過加熱に関する条件について、FF1とMCU130との両方で監視するため、どちらか一方が正常に動作しない場合であっても、電源ユニット1を保護できる。また、カラム505に規定される監視条件集合で監視される上限温度(60℃)は、カラム506に規定される監視条件集合で監視される上限温度(85℃)よりも低い。これによって、動作の速いFF1によって先に保護動作が行われるため、バッテリBTの高熱状態が維持し、バッテリBTの劣化が進行することを抑制できる。
【0195】
バッテリBTの過電流に関する条件は、カラム505に規定される監視条件集合と、カラム506に規定される監視条件集合との両方に含まれる。バッテリBTの過電流に関する条件について、FF1とMCU130との両方で監視するため、どちらか一方が正常に動作しない場合であっても、電源ユニット1を保護できる。また、カラム505に規定される監視条件集合で監視される上限電流値(放電時に10A、充電時に3.0A)は、カラム505に規定される監視条件集合で監視される上限電流値(放電時に9.75A、充電時に2.75A)よりも大きい。これによって、MCU130によって先に保護動作が行われるため、バッテリBTの高熱状態が維持し、バッテリBTの劣化が進行することを抑制できる。併せて、MCU130にフリーズなどの障害が生じている場合でも、FF1によって保護動作が行われる。
【0196】
カラム508に規定される保護回路90による監視条件集合は、バッテリBTを流れる電流(具体的に、放電時の過電流)に関する条件と、バッテリBTの電圧(具体的に、過充電及び過放電)に関する条件とを含む。電流及び電圧についてはバッテリ監視回路100によっても監視されるため、バッテリ監視回路100と保護回路90との一方が正常に動作しない場合であっても、電源ユニット1を保護できる。
【0197】
放電中にバッテリBTを流れる電流について、nGAUGE_INT2信号を切り替えるための監視条件(9.75A以上)は、nGAUGE_INT1信号を切り替えるための監視条件(10A以上)よりも厳しい条件となっている。言い換えると、放電中にバッテリBTを流れる電流が増加し続けると、nGAUGE_INT2信号を切り替えるための監視条件(S704)が先に満たされ、その後に、nGAUGE_INT1信号を切り替えるための監視条件(S706)が満たされる。条件Aが条件Bよりも厳しいとは、条件Aが条件Bの必要条件であるが十分条件ではないことを意味してもよい。その逆に、条件Aが条件Bよりも緩いとは、条件Aが条件Bの十分条件であるが必要条件ではないことを意味してもよい。同様に、充電中にバッテリBTを流れる電流について、nGAUGE_INT2信号を切り替えるための監視条件(2.75A以上)は、nGAUGE_INT1信号を切り替えるための監視条件(3.0A以上)よりも厳しい条件となっている。言い換えると、充電中にバッテリBTを流れる電流が増加し続けると、nGAUGE_INT2信号を切り替えるための監視条件(S715)が先に満たされ、その後に、nGAUGE_INT1信号を切り替えるための監視条件(S717)が満たされる。バッテリBTの過加熱について、nGAUGE_INT2信号を切り替えるための監視条件(85℃以上が2分継続)は、nGAUGE_INT1信号を切り替えるための監視条件(60℃以上が2秒継続)よりも緩い条件となっている。言い換えると、バッテリBTの温度が上昇し続けると、nGAUGE_INT1信号を切り替えるための監視条件(S709)が先に満たされ、その後に、nGAUGE_INT2信号を切り替えるための監視条件(S711)が満たされる。
【0198】
放電中にバッテリBTを流れる電流について、バッテリ監視回路100がエラー信号を生成するための監視条件(10A以上又は9.75A以上)は、保護回路90がバッテリBTの放電又は充電を制限するための監視条件(12.67A以上)よりも厳しい条件となっている。言い換えると、放電中にバッテリBTを流れる電流が増加し続けると、バッテリ監視回路100がエラー信号を生成するための監視条件が先に満たされ、その後に、保護回路90がバッテリBTの放電又は充電を制限するための監視条件が満たされる。また、バッテリBTの電圧について、バッテリ監視回路100がエラー信号を生成するための監視条件(4.235V以上又は2.8V以下)は、保護回路90がバッテリBTの放電又は充電を制限するための監視条件(4.28V以上又は2.5V以下)よりも厳しい条件となっている。言い換えると、バッテリBTの電圧が増加又は減少し続けると、バッテリ監視回路100がエラー信号を生成するための監視条件が先に満たされ、その後に、保護回路90がバッテリBTの放電又は充電を制限するための監視条件が満たされる。保護回路90による保護動作の解消は、USBプラグを介した外部機器の接続が必要であるため、バッテリ監視回路100による保護動作よりも解消に手間がかかる。バッテリ監視回路100による保護動作を先に動作することによって、ユーザの利便性が向上する。
【0199】
バッテリ監視回路100がエラー信号を生成するための監視条件集合は、バッテリBTを流れる電流が10A以上であるという条件と、これが9.75A以上であるという条件とを含む。これらの閾値の差は、0.25Aである。これらの条件の閾値(10A及び9.75A)と、保護回路90がバッテリBTの放電又は充電を制限するための条件の閾値(12.67A)との差は、それぞれ2.67A及び2.92Aである。これらはいずれも、0.25Aよりも大きい。これによって、バッテリ監視回路100による保護動作と、保護回路90による保護動作とが同時に機能することを抑制しやすくなる。また、保護回路90による保護動作の前に、バッテリ監視回路100による保護動作を実現できる。すなわち、バッテリ監視回路100に異常が生じていなければ、保護回路90ではなくバッテリ監視回路100による保護動作が行われる。これにより、保護動作が行われた状態からの復旧を容易にできる。
【0200】
カラム506に規定される監視条件集合は、バッテリBTの電圧が2.8V以下になった場合に、MCU130は、電源ユニット1をスリープ状態に遷移する。バッテリBTの残量が所定の第1下限値以下となると、バッテリBTの電圧が2.8V以下となる。さらに、カラム508に規定される監視条件集合は、バッテリBTの電圧が2.5V以下になった場合に、スイッチSC及びSDをオフにする。バッテリBTの残量が所定の第2下限値以下となると、バッテリBTの電圧が2.5V以下となる。第2下限値は、第1下限値よりも低い。さらに、
図10に示すように、バッテリBTの電圧が1.5V以下になるか、ADCB+電圧が0.1V以下になるとMCU130は、さらに所定の条件を満たす場合に、電源ユニット1を故障状態に遷移する。バッテリBTの残量が所定の第3下限値以下となると、バッテリBTの電圧が1.5V以下となるか、ADCB+電圧が0.1V以下となる。第3下限値は、第2下限値よりも低い。このように、一部の実施形態では、バッテリBTの残量に応じた段階的な保護動作が実行される。バッテリBTの残量が所定の第3下限値以下になった状態は、バッテリBTが深放電状態であることを示している。
【0201】
バッテリBTの電圧が2.8V以下になった場合に、保護回路90は、スイッチSDをオフにすることによって、電源ユニット1を接続待機状態に遷移する。バッテリBTの残量が上述の第3下限値よりも大きければ、電源ユニット1が故障状態に遷移しないため、保護回路90は、USBコネクタUSBCにUSBプラグを介して外部機器が接続され、その後バッテリBTの充電が進行することによって、スイッチSCをオンに戻す。これによって、バッテリBTが深放電状態である場合にバッテリBTへの充電が継続されることを抑制できる。
【0202】
カラム508に規定される保護回路90による監視条件集合は、バッテリBTの温度に関する条件を含まない。このように、温度を監視しないことによって、保護回路90のサイズを低減できる。バッテリBTの温度は保護回路90によって監視されないため、他の回路(バッテリ監視回路100)では、より厳密な保護を行う。具体的に、バッテリ監視回路100は、バッテリBTの温度が高温であることに関する条件を、電源ユニット1を故障状態に遷移するための条件としている。これによって、電源ユニット1の安全性がいっそう向上する。バッテリ監視回路100は、バッテリBTの温度が低温であることに関する条件を、電源ユニット1をスリープ状態に遷移するための条件としている。バッテリBTの温度が低温であることは、自然に解消されることが見込まれるため、バッテリBTの放電又は充電の制限を解消するためにユーザによる動作を必要としない。これによって、ユーザの利便性が高まる。
【0203】
図11は、電源ユニット1がエラーと判定するバッテリBTの温度について整理した図である。上述のように、保護制御部200は、バッテリBTの温度が正常範囲外にある場合に、バッテリBTの充電と、バッテリBTからヒータHTへの電力供給との少なくとも一方を、少なくとも一時的に制限する。バッテリBTの温度の正常範囲は、以下に詳細に説明するように、電源ユニット1の動作状態によって異なる。
【0204】
バッテリBTの温度の正常範囲の下限値は、バッテリBTが放電中であるか充電中であるかによって異なる。バッテリBTが放電中である場合に、バッテリBTの温度の正常範囲の下限値はー5℃である。バッテリBTの温度がー5℃以下になると、バッテリ監視回路100がエラー信号をMCU130に供給し、これに応じてMCU130が電源ユニット1をスリープ状態に遷移する。一方、バッテリBTが充電中である場合に、バッテリBTの温度の正常範囲の下限値は0℃である。バッテリBTの温度が0℃以下になると、MCU130が電源ユニット1をリセット待機状態に遷移する。コネクタUSBCにUSBプラグを介して外部機器が接続されているが、バッテリBTへの充電が行われていない間も、バッテリBTの温度の正常範囲の上限値及び下限値は、充電中と同じであってもよい。
【0205】
このように、保護制御部200は、バッテリBTの充電を開始する際に、バッテリBTの温度の正常範囲の下限値を-5℃から0℃に上昇する。バッテリBTの充電時にバッテリBTが低温であると、電析が生じやすくなる。電析とは、酸化還元反応によって活物質である金属酸化物が金属イオン化したものが、負極表面に堆積し、金属層を形成する現象である。バッテリBTの充電を開始する際にバッテリBTの温度の正常範囲の下限値を上昇することによって、電析の発生を抑制しやすくなる。バッテリBTの充電を開始する際とは、電源ユニット1のUSBコネクタUSBCにUSBプラグを介して外部機器が接続されてから、バッテリBTへ電力が安定的に供給されるまでの任意の時点であってもよい。
【0206】
バッテリBTの温度の正常範囲の下限値は、バッテリBTの充電中に最大となる。このように、バッテリBTの放電中にバッテリBTの温度の正常範囲の下限値を低くすることによって、放電中にバッテリBTの温度が正常状態から過度に外れることを抑制できる。
【0207】
バッテリBTの温度の正常範囲の上限値は、電源ユニット1の動作状態によって様々に異なる。電源ユニット1がスリープ状態である場合に、バッテリBTの温度の正常範囲の上限値は60℃である。バッテリBTの温度が60℃以上になると、バッテリ監視回路100がエラー信号をFF1に供給し、これに応じてFF1が電源ユニット1をリセット待機状態に遷移する。さらに、バッテリBTの温度が85℃以上になると、バッテリ監視回路100がエラー信号をMCU130に供給し、これに応じてMCU130が電源ユニット1を故障状態に遷移する。電源ユニット1が加熱待機状態である場合も、バッテリBTの温度の正常範囲の上限値は、電源ユニット1がスリープ状態である場合と同様である。
【0208】
電源ユニット1の起動時、すなわち電源ユニット1がスリープ状態から加熱待機状態への移行中である場合(
図6AのステップS601~S603)に、バッテリBTの温度の正常範囲の上限値は51℃である。バッテリBTの温度が51℃以上になると、MCU130が電源ユニット1をスリープ状態に遷移する。さらに、バッテリBTの温度が60℃以上になると、バッテリ監視回路100がエラー信号をFF1に供給し、これに応じてFF1が電源ユニット1をリセット待機状態に遷移する。さらに、バッテリBTの温度が85℃以上になると、バッテリ監視回路100がエラー信号をMCU130に供給し、これに応じてMCU130が電源ユニット1を故障状態に遷移する。電源ユニット1が加熱待機状態から加熱状態への移行中である場合も、バッテリBTの温度の正常範囲の上限値は、電源ユニット1がスリープ状態から加熱待機状態への移行中である場合と同様である。
【0209】
電源ユニット1が加熱状態である場合に、バッテリBTの温度の正常範囲の上限値は55℃である。バッテリBTの温度が55℃以上になると、MCU130が電源ユニット1をリセット待機状態に遷移する。さらに、バッテリBTの温度が60℃以上になると、バッテリ監視回路100がエラー信号をFF1に供給し、これに応じてFF1が電源ユニット1をリセット待機状態に遷移する。さらに、バッテリBTの温度が85℃以上になると、バッテリ監視回路100がエラー信号をMCU130に供給し、これに応じてMCU130が電源ユニット1を故障状態に遷移する。
【0210】
電源ユニット1が充電中である場合に、バッテリBTの温度の正常範囲の上限値は55℃である。バッテリBTの温度が55℃以上になると、MCU130が電源ユニット1をリセット待機状態に遷移する。さらに、バッテリBTの温度が85℃以上になると、バッテリ監視回路100がエラー信号をMCU130に供給し、これに応じてMCU130が電源ユニット1を故障状態に遷移する。
【0211】
このように、保護制御部200は、ヒータHTの加熱を開始する際に、バッテリBTの温度の正常範囲の上限値を、51℃から55℃に上昇する。ヒータHTの加熱中、すなわちバッテリBTからヒータHTへの電力の供給中は、バッテリBTの内部抵抗によってバッテリBTが発熱する。そのため、ヒータBTの加熱移行時の正常範囲の上限値を加熱中の上限値よりも低くすることによって、ヒータHTの加熱中にバッテリBTの温度が正常範囲を上回ることを抑制しやすくなる。換言すれば、ヒータHTの加熱中にバッテリBTの温度が正常範囲を上回ることが予期される場合は、ヒータHTの加熱を行わない。ヒータHTの加熱を開始する際とは、ヒータHTの加熱の指示を受けてから、ヒータHTが加熱された状態になるまでの任意の時点であってもよい。
【0212】
バッテリBTの正常範囲の上限値は、電源ユニット1がスリープ状態及び加熱待機状態である場合(すなわち、ヒータHTの加熱中以外の状態である場合)に最大(60℃)となる。上述のように、スリープ状態とは、ユーザがスライダ13を操作することに応じて発生する信号をMCU130が待機中である状態である。加熱待機状態とは、ユーザがスイッチSWを操作することに応じて発生する信号をMCU130が待機中である状態である。電源ユニット1がこれらの状態である場合に、バッテリBTの消費電力は少なく、バッテリBTの発熱量も小さい。そのため、これらの場合にバッテリBTの正常範囲の上限を加熱中と比較して高くすることによって、バッテリBTの温度に関する保護が過度に行われることを抑制できる。
【0213】
バッテリBTの充電を開始する際のバッテリBTの温度の正常範囲の下限値の上昇幅(すなわち、0℃ー(-5℃)=5℃)は、ヒータHTへの電力の供給を開始する際のバッテリBTの温度の正常範囲の上限値の上昇幅(すなわち、55℃ー51℃=4℃)よりも大きい。このように、充電時のバッテリBTの正常範囲の下限温度を厳しく設定することによって、電源ユニット1の安全性がいっそう向上する。
【0214】
保護制御部200は、バッテリBTの温度が、正常状態の上限値よりも高い温度閾値(85℃)よりも高い場合に、電源ユニット1を故障状態に遷移する。バッテリBTが正常状態の上限値を超えたことによるエラー処理によってもバッテリBTの温度が上昇し続ける場合には、電源ユニット1に何らかの故障が発生したと考えらえる。そのため、バッテリBTの温度が、正常状態の上限値よりも高い温度閾値(85℃)を超えた場合に電源ユニット1を故障状態に遷移することによって、電源ユニット1の安全性を向上できる。
【0215】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【0216】
本願は、2021年5月10提出の日本国特許出願特願2021-079744を基礎として優先権を主張するものであり、その記載内容の全てを、ここに援用する。