(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】フグ内臓由来の高純度テトロドトキシンの効率的な抽出、分離、調製の方法
(51)【国際特許分類】
C07D 491/22 20060101AFI20240911BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
C07D491/22
G01N30/88 E
(21)【出願番号】P 2023523323
(86)(22)【出願日】2022-05-05
(86)【国際出願番号】 CN2022090917
(87)【国際公開番号】W WO2022233298
(87)【国際公開日】2022-11-10
【審査請求日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】202110487094.X
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522504558
【氏名又は名称】中洋生物科技(上海)股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】リ,ハイハン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,リンリン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ウェンロン
(72)【発明者】
【氏名】ゼン,ジュンメイ
(72)【発明者】
【氏名】チュー,ジヨン
(72)【発明者】
【氏名】イエ,チエホア
(72)【発明者】
【氏名】チン,シャオミン
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0060188(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111117917(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101891751(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101317846(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フグ内臓由来のテトロドトキシンの効率的な抽出、分離、調製の方法であって、
(1)新鮮なフグまたは解凍したフグの内臓組織を小さく切り分け、所定体積の酸性アルコールを加えて、ホモジナイザーでホモジネーションを行い、
(2)前記(1)で得られたホモジネート液に所定量の流動助剤またはろ過助剤を加えて、撹拌して均一に混合した後、カラムクロマトグラフィーのカラムの充填方法に従ってカラムに充填し、所定時間静置後、前記酸性アルコールと同じ酸性アルコールを用いてカラムクロマトグラフィーの溶出方法に従って材料からTTXを完全に溶出させ、溶出液におけるTTX含有量をHPLCで測定し、溶出液にTTXが含まれなくなるまで繰り返し、抽出液としてTTXを含有する溶出液を回収し、
(3)前記(2)によるTTXの抽出液を真空濃縮機により減圧して水相に濃縮し、再利用のためにエタノールを回収し、脂溶性物質を除去するため水相を有機溶媒で抽出し、得られた水相がTTXの抽出濃縮液であり、
(4)前記(3)で得られたTTXの抽出濃縮液を、前処理したイオン交換樹脂カラムでクロマトグラフィーにより分離し、試料をロードしたら、中性アンモニウム塩および純水で不純物を溶出し、次に酸性水溶液でTTXを溶出し、TTX含有量の高い溶出液を収集し、ナノろ過濃縮または減圧濃縮で濃縮乾固し、TTXの粗製品を得、
(5)TTXの粗製品を、水溶液または有機溶媒で酸塩基沈殿法または結晶化を繰り返し、HPLCで分析した純度が98%以上になる高純度のTTXを得る
ステップを含むことを特徴とするフグ内臓由来のテトロドトキシンの効率的な抽出、分離、調製の方法。
【請求項2】
ステップ(1)では、前記フグ内臓は、テトロドトキシンを含有するフグの卵巣
または肝
臓である
ことを特徴とする請求項1に記載のフグ内臓由来のテトロドトキシンの効率的な抽出、分離、調製の方法。
【請求項3】
ステップ(2)では、流動助剤または濾過助剤は、珪藻
土であり、その添加量はフグ内臓の重量の0.5~
1.0倍である
ことを特徴とする請求項1に記載のフグ内臓由来のテトロドトキシンの効率的な抽出、分離、調製の方法。
【請求項4】
ステップ(2)では、ホモジネート液中に流動助剤を加え、撹拌して均一に混合した後、カラムへのロードと、不純物の溶出と、TTXの溶出との方法およびプロセスは、完全にカラムクロマトグラフィーの方法に従って実行する
ことを特徴とする請求項1に記載のフグ内臓由来のテトロドトキシンの効率的な抽出、分離、調製の方法。
【請求項5】
ステップ(3)では、脂溶性物質を除去するため水相を有機溶媒で抽出し、使用される有機溶媒
は酢酸エチ
ルであり、抽出して得られる水相がTTXの抽出濃縮液である
ことを特徴とする請求項1に記載のフグ内臓由来のテトロドトキシンの効率的な抽出、分離、調製の方法。
【請求項6】
ステップ(4)では、
前記イオン交換樹脂カラム
は陽イオン交換樹脂カラムである
ことを特徴とする請求項1に記載のフグ内臓由来のテトロドトキシンの効率的な抽出、分離、調製の方法。
【請求項7】
ステップ(4)では、陽イオン交換樹脂カラムからクロマトグラフィーにより分離され得られたTTXの溶出液をナノろ過膜で小量まで濃縮し、前記ナノろ過濃縮膜は、分画分子量が
100~300ダルト
ンのナノろ過膜である
ことを特徴とする請求項
6に記載のフグ内臓由来のテトロドトキシンの効率的な抽出、分離、調製の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動物体内の生理活性物質の抽出、分離、精製の技術分野に属し、特にフグ内臓由来のフグ毒の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関係出願の相互参照
本開示は、2021年05月04日に中国専利局に提出された出願番号が「CN202110487094.X」であり、名称が「フグ内臓由来の高純度テトロドトキシンの効率的な抽出、分離、調製の方法」である中国出願に基づいて優先権を主張し、その全ての内容は、参照として本開示に取り込まれる。
【0003】
テトロドトキシン(Tetrodotoxin,TTX)は、最初、フグ(pufferfish,Lagocephalus sceleratus)から抽出された、小分子の非タンパク質性のアルカロイド系神経毒素である。1909年、日本の学者Tawaraによりテトロドトキシンの粗毒素がフグの卵巣から初めて抽出され、命名された(Bane et al.,2014)。1950年、Yokooにより初めてトラフグの卵巣由来の、精製したTTX結晶が得られた(Yokoo,1950)。1964年、TTXの化学式(C11H17N3O8)およびその化学構造が特定された(Buchwald et al.,1964、Woodward and Gougoutas,1964、Tsuda and Ikuma et al.,1964)。長い間、テトロドトキシンがフグの体内の特有の毒性物質と考えられていたが、1964年にアメリカの科学者Mosherらがカリフォルニアイモリ(Taricha torosa)からTTXを単離したことから(Mosher et al.,1964)、この説が変わった。これまでの研究から、TTXは、多種のフグの体内だけでなく、脊椎動物と無脊椎動物を含む140種近くの動物に広く存在することが明らかになり(Lorentz et al.,1016)、例えば、ハゼ(朱国萍ら、2015)、イモリ(Yotsu-Yamashita et al.,2012)、二枚貝と腹足類(Laura et al.,2019)、ヒョウモンダコ(Whitelaw et al.,2019)、ヒモムシ(Vlasenko et al.,2018)、線形動物(毛▲しょう▼ら、2020)などが挙げられる。そして、多くの微生物がTTXを産生できることが分かった(Chau et al.、2011;Magarlamov et al.2017)。
【0004】
TTXは、既知の毒性の最も強い神経毒素の一つであり、ヒトに対してシアン化物の1200倍ぐらいの毒性を持ち、しかも既知の解毒剤が存在しない(Lago et al.、2015)。TTXのマウスに対するLD50値は、10μg/kg(腹膜内)、16μg/kg(皮下)と332μg/kg(経口)である(Kao、1966)。ヒトがTTXを摂取した後の中毒症状は、摂取量によって変わる(Homaira et al.、2010)。症状は、最初に口唇および舌に痺れが起こり(異常感覚)、次に頭痛や嘔吐が現れ、さらに筋無力や運動失調に至る可能性がある。重症の場合には、呼吸困難や心不全で死亡することがある(Noguchi and Eebesu、2001)。TTXのヒトに対する致死量は1.33μg/kgである(Kasteel and westerink、2017)。生物連鎖によるTTXの伝播や大量の海水および淡水の養殖動物にTTXが含まれているなどの問題から、人々は環境安全に対する懸念が高まり、重視している。
【0005】
TTXは、神経と筋肉麻痺を引き起こす電位依存性ナトリウムチャネルの遮断剤であり、がんや外科手術などのさまざまな患者への局所麻酔や、依存性のない鎮痛剤などとして医療に用いられる。TTXは、局所麻酔薬として(Ogura and Mori、1968)、顕著な心血管系の副作用(Butterworth、2010;Stoetzer et al.、2016)や筋毒性(Padera et al.、2006)を有しない。また、TTXは、臨床でよく使用されている局所麻酔薬とは異なり、その結合部位が膜の外にあり、他の局所麻酔薬と併用することで相乗効果を生み出すことができる(Kohane et al.、1998;Berde et al.、2011;McAlvin et al.、2015)。研究者たちもTTXの麻酔特性を利用して、例えば、深刻ながん性疼痛(Hagen et al.、2008;2017)やオピオイドの離脱症候群の緩和(陳素青ら、2001;Kohane et al.、2003;Shi et al.、2009)などさまざまな種類の痛みの治療に取り組んでいる。また、研究により、TTX処理した担がんマウスにおいて、腫瘍の成長が著しく抑制されたことが明らかになった(El-Dayem et al.,2013)。また、TTXは、腫瘍細胞の移動性や浸潤性を抑制し、高転移性腫瘍および白血病の転移を防ぐことができる(Shan et al.、2014;Stock and Schwab、2015)。TTXは、多くの分野で臨床応用が期待されている。
【0006】
TTXは複雑な構造を持ち、化学的に合成することが困難である。2003年にTTXの全合成が完了したが(Ohyabu et al.、2003)、人工合成は、ステップ数が多すぎて平均23~67のステップを必要とし、得られた収率はわずか0.34%~1.82%(Chau and Cuyfikub、2011;Makarova et al.、2019)である。また、合成過程において、一連の精製方法を開発する必要もある。したがって、TTXおよびその類縁体の実験室での合成方法による大量生産は実現困難である(Chau and Cuyfikub、2011;Bane et al.、2014;Makarova et al.、2019)。多くの微生物がTTXを産生することができるが、収量が非常に低く(Lago et al.、2015)、その生産メカニズムがまだ不明であるため、収量の増加や精製方法の開発が解決すべき課題となる(劉燕▲てい▼ら、2008)。そのため、現在では、動物組織由来のTTXの抽出、調製が、TTXの主な供給源となっている。
【0007】
式1に示すように、TTXは、化学式C11H17N3O8、分子量319.27、190-200nmにおいて強い吸収を持つアミノペルヒドロキナゾリン化合物(pKa 8.76)であり、一つのかご型オルトエステル構造を含む(Moczydlowski、2013)。TTXは、分子におけるほぼすべての炭素原子が不斉置換基を持ち、1,2,3-アミノグアニジンとその近傍のC-4、C-9、C-10のヒドロキシ基が官能基である。TTXの結晶は白色で無臭、特定の融点はなく、220℃以上で漸次に炭化するが(崔建洲ら、2005)、300℃でも融解しない(Tsuda and Kawamura、1952)。純粋なTTXは、水、およびメタノール、エタノール、ジメチルスルホキシドなどの大部分の有機溶媒に溶けないが、希酢酸溶液に溶けやすく、その活性は強酸や強塩基溶液では失活しやすい(Moczydlowski、2013)。TTXは、中性の溶液中で正電荷を持ち、弱酸性条件下で、オルトエステルと、ラクトンと、4-epiTTXと、4、9-anhydroTTXとが共存する(Nishikawa and Isobe、2013)。
【0008】
【0009】
TTXの構造と性質は独特であり、従来の天然アルカロイド系物質の分離、精製方法では、生体材料からTTXを抽出分離、精製して、高純度のものを調製することは困難である(Makarova et al.,2019)。最初、Tawara(1909年)は、酢酸鉛沈殿法によりフグ卵巣の水抽出物からTTXを単離したが、その純度はわずか0.2%~4%(Moczydlowski、2013)であった。多くの試みがなされたが、1950年代の初めにYokooは粗毒素をリンタングステン酸、ピクリン酸水銀、ピクロロン酸およびフェニルヒドラジンなどで順次処理した後、さらにアルミナカラムクロマトグラフィーと再結晶を行うことで、純粋な結晶性のTTXの調製を実現した(Yokoo、1950)。その後、TsudaとKawamuraは1000kgのフグ卵巣を原料として、ポテトスターチ分配クロマトグラフィー、活性炭吸着クロマトグラフィー、ペーパークロマトグラフィーによりTTXを分離、精製した(Tsuda and Kawamura、1952)。
【0010】
現在、TTXの調製プロセスは一般的に、フグの内臓組織を原料とし、酢酸水溶液を抽出溶媒とし、超音波または/および加熱による抽出を行う。抽出物に対して、陽イオン交換カラムによりクロマト-活性炭カラムにより精製し、酸塩基沈殿法でTTXを析出させ、最後に分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による精製および再結晶を行う。TTXの抽出、精製方法について、主な報告を表2にまとめた。
【0011】
【0012】
しかし、これらの抽出および分離・調製方法には、以下の問題がある。
(1)抽出効率が低い。TTXは組織から完全に抽出することが難しく、浸漬抽出や超音波補助の抽出などの従来の抽出方法では抽出効率が低く、抽出溶媒の使用量も多い。
(2)抽出用溶媒は、酸性溶媒を使用することが多いため、抽出液にタンパク質などの水溶性物質が多く含まれ、その後のTTXの分離精製工程でタンパク質を除去することが必要になり、分離精製することが困難である。また、分離精製のステップ数が多く、収率が非常に低い。
(3)大部分の報告は、実験室での研究まで止まっており、実験方法と結果が検証されていない。再現が難しく、TTXの量産に用いることが困難である。
したがって、量産に適するTTXの抽出、分離、精製のための簡単で効率的な方法とプロセスの開発が重要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【文献】陳素青,任雷鳴,黄致強.ラットおよびマウスにおけるナロキソン刺激によるモルヒネ離脱症状に対するテトロドトキシンの影響.中国薬理学および毒理学雑誌,2001(06):434-440.
【文献】崔建洲,宮慶礼,顧謙群ら.テトロドトキシン(TTX)の効率的な調製法に関する研究.高技術通訊,2005(4):89-94.
【文献】▲でん▼興朝,黄連生,陳歓ら.テトロドトキシンの抽出精製方法:CN108586475A.2018-09-28.
【文献】黄枝梅.テトロドトキシンの抽出および分離精製プロセルに関する研究.福建農林大学,2010.
【文献】劉燕▲てい▼,雷紅涛,鐘青萍.テトロドトキシン研究の進展.食品研究および開発,2008(02):156-160.
【文献】毛▲しょう▼,沐小玲,鮑宝龍.東海区にあるシマフグに寄生したアニサキスの同定およびテトロドトキシンの検出.上海海洋大学学報,2020:1-9.
【文献】蘇捷,劉智禹,黄枝梅.テトロドトキシンの分離精製に関する研究.福建水産,2010(4):56-59.
【文献】孫博倫.オリイレヨフバイにおけるテトロドトキシンの抽出、精製および調製技術に関する研究.浙江海洋大学,2018.
【文献】譚桂莉,林国友.テトロドトキシンのHPLCによる検出方法.企業科技および発展,2011(13):26-28.
【文献】王秀菊,丁亜民,尹志勇.高純度のテトロドトキシンの抽出方法:CN102584843A.2012-07-18.
【文献】楊育暉.テトロドトキシンの抽出および初期精製の方法:CN104311569A.2015-01-28.
【文献】易瑞▲そう▼,許晨,洪専ら.テトロドトキシンの高純度単体の規模的調製方法:CN1385431.2002-12-18.
【文献】張小軍,陳思,曾軍杰ら.テトロドトキシンの効率的な抽出方法:CN107641128B.2020-03-17.
【文献】鐘馨稼,劉延東.テトロドトキシンの調製方法:WO2016061874A1.2016-04-28.
【文献】曾軍杰,張小軍,陳思ら.高純度のテトロドトキシンの調製方法:CN107880054A.2018-04-06.
【文献】趙東豪,王旭峰,王強ら.テトロドトキシンの標準生体試料の調製方法:CN109142602A.2019-01-04.
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【発明の概要】
【0014】
本開示は、抽出効率が高い、設備投資が低い、操作が簡単である、フグ内臓由来の高純度テトロドトキシンの抽出、分離、調製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の技術的目的を達成するために、本開示は、以下の技術案を用いる。
フグ内臓由来の高純度のテトロドトキシンの抽出、調製方法は、下記のステップを含む。
(1)新鮮なフグまたは解凍したフグの内臓組織を小さく切り分け、所定体積の酸性アルコールを加えて、ホモジナイザーでホモジネーションを行い、
(2)(1)で得られたホモジネート液に所定量の流動助剤または濾過助剤を加えて、撹拌して均一に混合した後、カラムクロマトグラフィーのカラムの充填方法に従って抽出物をカラムに充填し、所定時間静置後、上述の酸性アルコールと同じ酸性アルコールを用いてカラムクロマトグラフィーの溶出方法に従って材料から不純物とTTXを順次に溶出させ、溶出液におけるTTX含有量をHPLCで測定し、溶出液にTTXが含まれなくなるまで繰り返し、TTXの抽出液としてTTXを含有する溶出液を回収し、
(3)(2)によるTTXの抽出液を真空濃縮機により減圧して水相に濃縮し、再利用のためにエタノールを回収し、脂溶性物質を除去するため水相を有機溶媒で抽出し、得られた水相がTTXの抽出濃縮液であり、
(4)(3)で得られたTTXの抽出濃縮液を、前処理したイオン交換樹脂カラムでクロマトグラフィーにより分離し、試料をロードしたら、中性アンモニウム塩および水で不純物を順次溶出し、次に酸性アルコールでTTXを溶出し、TTX含有の溶出液を収集し、ナノろ過濃縮装置で小量まで濃縮し、そして真空濃縮機で濃縮乾固し、TTXの粗製品を得、
(5)(4)で得られたTTXの粗製品を、水および有機溶媒で酸塩基沈殿法または結晶化を繰り返し、HPLCで分析した純度が98%以上になる高純度のTTXを得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、ステップ(1)において、フグ内臓はフグの卵巣または肝臓である。卵巣または肝臓を小さく切り分けた後、2.0倍体積の95%酸性アルコールを加え、ホモジナイザーでフグの内臓組織に対してホモジネーションを行う。
【0017】
いくつかの実施形態では、ステップ(2)において、ホモジネート液に加える流動助剤または濾過助剤は、珪藻土である。フグの内臓組織のホモジネート液に内臓重量の0.5~1.0倍の珪藻土を加え、撹拌して均一に混合した後、混合物をカラムにゆっくりと流し込む。1時間静置して材料中のTTXが全部溶解した後、95%酸性アルコールで溶出液にTTXがなくなるまでTTXを溶出する。
【0018】
いくつかの実施形態では、ステップ(3)において、TTX抽出液を真空濃縮機により減圧して水相に濃縮し、再利用のためにエタノールを回収する。脂溶性物質を除去するため水相を有機溶媒で抽出し、得られた水相がTTX水溶液である。
【0019】
いくつかの実施形態では、ステップ(4)において、TTX水溶液を、前処理されたまたは再生されたD-152弱酸性陽イオン交換樹脂カラムでクロマトグラフィーにより分離する。試料をロードしたら、順次、中性アンモニウム塩、純水、低濃度酢酸(0.1~1.0%)溶液および高濃度酢酸溶液で不純物を溶出し、そして3~5%酢酸溶液でTTXを溶出する。
【0020】
いくつかの実施形態において、ステップ(5)では、TTXの溶出液を分画分子量100~300のナノろ過膜濃縮装置で小量まで濃縮し、そして真空濃縮機で濃縮乾固する。得られた濃縮物はアルカリ性アルコールおよびアルカリ性水溶液で不純物を溶出し、酸性水溶液で不溶物を溶出して除去する。溶液をアルカリ性(pH8~9)に調整し、4℃の冷蔵庫に入れて結晶化させ、高純度のTTXを得る。
【発明の効果】
【0021】
従来技術と比較して、本開示は、以下の利点を有する。
(1)本開示に係るTTXの抽出、分離、調製方法によれば、抽出のステップでは、カラムクロマトグラフィーによる抽出という効率的で省エネルギーの新しい方法を用いており、抽出過程がワンステップで済むので、抽出効率が高い。7倍量の抽出溶媒で原料中のTTXを完全に抽出することができる。
(2)本開示に係るTTXの抽出、分離、調製方法によれば、抽出溶媒として高濃度の酸性アルコールを用いてカラムクロマトグラフィーによる抽出を行うため、抽出液に水溶性不純物が少なく、タンパク質などの高分子の水溶性物質を含まない。よって、その後のTTXの分離、精製を大幅に簡略化することができる。また、抽出溶媒を回収して再利用することも可能である。
(3)本開示に係るTTXの抽出、分離、調製方法によれば、プロセスが簡単で、ステップ数が少なく、分離、精製の回収率が高く、TTXの純粋品の総収率が高い。また、TTXの調製にかかるコストも低い。
(4)本開示に係るTTXの抽出、分離、調製方法によれば、使用された装置は通常のカラムクロマトグラフィーおよび濃縮装置などの従来の装置であり、設備投資が低い。
(5)本開示に係るTTXの抽出、分離、調製方法によれば、抽出、分離、調製は全て室温下で行われ、有機溶媒の使用量が少なく、回収して再利用することも可能であるため、省エネルギーでエコである。
【0022】
説明を簡単にするために、以下の実施形態および図面を参照しながら本開示を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示に係るTTXの抽出、分離、調製のプロセスのフロチャートである。
【
図2】調製したTTX試料のHPLC分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示に係る、フグ内臓由来の高純度テトロドトキシンの効率的な抽出、分離、調製の方法を、下記のように実施した。
(1)15kgのフグ卵巣を水で洗浄して不純物を除去したあと、肉挽き器で粉砕し、フグ卵巣の重量の2~3倍の酸性(1%酢酸)無水エタノールおよび0.6倍の珪藻土を加えて均一に撹拌した。φ200×1500mmのカラムに均一にロードし、1時間静置後、クロマトグラフィーの溶出液にTTXが含まれなくなるまで酸性エタノールで溶出した。TTXの抽出液としてクロマトグラフィーの溶出液を収集した。TTXを1236.0mg含む抽出液が得られ、TTXの抽出率は96%であった。
(2)TTXの抽出液を減圧して水相に濃縮し、回収したエタノールを再利用することができる。濃縮液を1/2~1/10体積の酢酸エチルで抽出し、低極性不純物を除去し、TTXの抽出濃縮液を得た。TTXを1168mg含む抽出濃縮液が得られ、TTXの回収率は90.5%であった。
(3)15kgのフグ卵巣の抽出濃縮液をD-152弱酸性陽イオン交換樹脂カラムでクロマトグラフィー(φ100x1000mm)により分離し、ロードしたら0.2%リン酸アンモニウム溶液、純水および0.5%酢酸水溶液でそれぞれ3BV溶出して、不純物を除去した。その後、TTXがなくなるまで2%酢酸水溶液で溶出した。TTXの回収率は93.6%であった。TTX濃縮画分を収集し、ナノろ過で小量まで濃縮し、減圧して濃縮乾固し、TTXの粗製品が得られ、TTXの回収率は90.4%であった。TTX含有量の少ない溶出液を再びD-152弱酸性陽イオン交換樹脂カラムでクロマトグラフィーにより濃縮してTTXを回収した。
(4)TTXの粗製品をアルカリ性エタノールおよびアルカリ性水溶液で3回溶出して、沈殿物に対して、酸塩基沈殿法による処理を3回繰り返して、精製したTTXが得られ、TTXの回収率は80.7%であった。
(5)TTXをHPLCで分析し、その含有量を測定し、TTX815.6mgを得た。HPLC分析により、TTXの純度は98%以上であった(
図2を参照)。TTXの総回収率は63.3%であった。