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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】情報処理装置及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0207 20230101AFI20240911BHJP
【FI】
G06Q30/0207 350
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024062627
(22)【出願日】2024-04-09
(62)【分割の表示】P 2023166768の分割
【原出願日】2023-09-28
【審査請求日】2024-04-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 高志
(72)【発明者】
【氏名】竹内 創
(72)【発明者】
【氏名】梶岡 ゆき
(72)【発明者】
【氏名】武 恒宏
(72)【発明者】
【氏名】西分 嗣美
【審査官】阿部 潤
(56)【参考文献】
【文献】特許第7276495(JP,B2)
【文献】特許第7189386(JP,B1)
【文献】特表2022-514768(JP,A)
【文献】特開2023-66919(JP,A)
【文献】特開2022-10537(JP,A)
【文献】特開2019-125201(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0332256(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ブロックチェーンから、ユーザの前記第1ブロックチェーン上の取引額を示す第1取引履歴を取得するとともに、前記第1ブロックチェーンとは異なる第2ブロックチェーンから、前記ユーザの前記第2ブロックチェーン上の取引額を示す第2取引履歴を取得する取得部と、
前記第1取引履歴と前記第2取引履歴との少なくとも一方が示す取引額を所定の資産に換算し、前記第1取引履歴が示す取引額と前記第2取引履歴が示す取引額との前記資産における合計額を算出する算出部と、
を有する、情報処理装置。
【請求項2】
前記第1取引履歴は、第1資産を用いた取引額を示し、
前記第2取引履歴は、前記第1資産とは異なる第2資産を用いた取引額を示し、
前記算出部は、前記第1取引履歴の取引額と、前記第2取引履歴の取引額を前記第1資産に換算した額と、の前記合計額を算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記合計額が、前記第1取引履歴が示す取引を行った第1店舗又は前記第2取引履歴が示す取引を行った第2店舗が特典を付与するための付与条件を満たすか否かを判定する判定部と、
前記付与条件が満たされたと前記判定部が判定したことを条件として、前記第1店舗又は前記第2店舗から前記ユーザに前記特典を付与するための付与指示を出力する出力部と、
をさらに有する、請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記合計額が、前記第1取引履歴が示す取引を行った第1店舗又は前記第2取引履歴が示す取引を行った第2店舗が特典を付与するための付与条件を満たすか否かを判定する判定部と、
前記付与条件が満たされていないと前記判定部が判定したことを条件として、前記付与条件を満たすために必要な前記第1資産の額と、前記付与条件を満たすために必要な前記第2資産の額と、を示す情報を、前記ユーザが利用する情報端末に送信する出力部と、
をさらに有する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記第1取引履歴の取引額が前記付与条件を満たすか否かを判定し、
前記判定部は、前記第1取引履歴の取引額が前記付与条件を満たさないと判定したことを条件として、前記合計額が前記付与条件を満たすか否かを判定する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記特典は、前記第1ブロックチェーン上又は前記第2ブロックチェーン上で管理される情報であり、
前記出力部は、前記特典を管理する前記第1ブロックチェーン又は前記第2ブロックチェーンに対して前記付与指示を出力する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第1店舗及び前記第2店舗は、前記特典の原資を負担する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記出力部は、前記付与指示を出力したことを条件として、前記特典の原資のうち前記第1取引履歴の取引額に応じた額を示す情報を前記第1店舗と関連付けて出力するとともに、前記特典の原資のうち前記第2取引履歴の取引額に応じた額を示す情報を前記第2店舗と関連付けて出力する、
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記情報処理装置を利用する前記ユーザを識別するためのユーザ識別情報と、前記第1ブロックチェーン上で前記ユーザを識別するための第1識別情報と、前記第2ブロックチェーン上で前記ユーザを識別するための第2識別情報と、を関連付けた関連情報を記憶する記憶部をさらに有し、
前記取得部は、前記第1ブロックチェーンから、前記関連情報において前記ユーザ識別情報に関連付けられた前記第1識別情報に対応する前記ユーザの取引額を前記第1取引履歴として取得し、
前記取得部は、前記第2ブロックチェーンから、前記関連情報において前記ユーザ識別情報に関連付けられた前記第2識別情報に対応する前記ユーザの取引額を前記第2取引履歴として取得する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項10】
プロセッサが実行する、
第1ブロックチェーンから、ユーザの前記第1ブロックチェーン上の取引額を示す第1取引履歴を取得するステップと、
前記第1ブロックチェーンとは異なる第2ブロックチェーンから、前記ユーザの前記第2ブロックチェーン上の取引額を示す第2取引履歴を取得するステップと、
前記第1取引履歴と前記第2取引履歴との少なくとも一方が示す取引額を所定の種類の資産に換算し、前記第1取引履歴が示す取引額と前記第2取引履歴が示す取引額との前記種類の資産における合計額を算出するステップと、
を有する、情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックチェーン上で管理される情報に関する情報を処理するための情報処理装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ユーザがブロックチェーン上で管理されるトークンを取引した履歴に基づいて、ユーザが所有している又は過去に所有していた複数のトークンの組み合わせが所定の条件を満たす場合に、ユーザに特典を付与する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-122856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のブロックチェーンが存在する状況において、複数の店舗が互いに異なるブロックチェーン上で商品の取引履歴を管理する場合がある。このような場合に、店舗は他の店舗におけるユーザの取引履歴を容易に参照することができないため、複数の店舗が共同で取引履歴に応じた特典をユーザに付与することは難しかった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、互いに異なるブロックチェーン上で取引履歴を管理する複数の店舗が共同でユーザに特典を付与しやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の情報処理装置は、第1ブロックチェーンから、ユーザの前記第1ブロックチェーン上の取引額を示す第1取引履歴を取得するとともに、前記第1ブロックチェーンとは異なる第2ブロックチェーンから、前記ユーザの前記第2ブロックチェーン上の取引額を示す第2取引履歴を取得する取得部と、前記第1取引履歴と前記第2取引履歴との少なくとも一方が示す取引額を所定の資産に換算し、前記第1取引履歴が示す取引額と前記第2取引履歴が示す取引額との前記資産における合計額を算出する算出部と、を有する。
【0007】
前記第1取引履歴は、第1資産を用いた取引額を示し、前記第2取引履歴は、前記第1資産とは異なる第2資産を用いた取引額を示し、前記算出部は、前記第1取引履歴の取引額と、前記第2取引履歴の取引額を前記第1資産に換算した額と、の前記合計額を算出してもよい。
【0008】
前記情報処理装置は、前記合計額が、前記第1取引履歴が示す取引を行った第1店舗又は前記第2取引履歴が示す取引を行った第2店舗が特典を付与するための付与条件を満たすか否かを判定する判定部と、前記付与条件が満たされたと前記判定部が判定したことを条件として、前記第1店舗又は前記第2店舗から前記ユーザに前記特典を付与するための付与指示を出力する出力部と、をさらに有してもよい。
【0009】
前記情報処理装置は、前記合計額が、前記第1取引履歴が示す取引を行った第1店舗又は前記第2取引履歴が示す取引を行った第2店舗が特典を付与するための付与条件を満たすか否かを判定する判定部と、前記付与条件が満たされていないと前記判定部が判定したことを条件として、前記付与条件を満たすために必要な前記第1資産の額と、前記付与条件を満たすために必要な前記第2資産の額と、を示す情報を、前記ユーザが利用する情報端末に送信する出力部と、をさらに有してもよい。
【0010】
前記判定部は、前記第1取引履歴の取引額が前記付与条件を満たすか否かを判定し、前記判定部は、前記第1取引履歴の取引額が前記付与条件を満たさないと判定したことを条件として、前記合計額が前記付与条件を満たすか否かを判定してもよい。
【0011】
前記特典は、前記第1ブロックチェーン上又は前記第2ブロックチェーン上で管理される情報であり、前記出力部は、前記特典を管理する前記第1ブロックチェーン又は前記第2ブロックチェーンに対して前記付与指示を出力してもよい。
【0012】
前記第1店舗及び前記第2店舗は、前記特典の原資を負担してもよい。
【0013】
前記出力部は、前記付与指示を出力したことを条件として、前記特典の原資のうち前記第1取引履歴の取引額に応じた額を示す情報を前記第1店舗と関連付けて出力するとともに、前記特典の原資のうち前記第2取引履歴の取引額に応じた額を示す情報を前記第2店舗と関連付けて出力してもよい。
【0014】
前記情報処理装置は、前記情報処理装置を利用する前記ユーザを識別するためのユーザ識別情報と、前記第1ブロックチェーン上で前記ユーザを識別するための第1識別情報と、前記第2ブロックチェーン上で前記ユーザを識別するための第2識別情報と、を関連付けた関連情報を記憶する記憶部をさらに有し、前記取得部は、前記第1ブロックチェーンから、前記関連情報において前記ユーザ識別情報に関連付けられた前記第1識別情報に対応する前記ユーザの取引額を前記第1取引履歴として取得し、前記取得部は、前記第2ブロックチェーンから、前記関連情報において前記ユーザ識別情報に関連付けられた前記第2識別情報に対応する前記ユーザの取引額を前記第2取引履歴として取得してもよい。
【0015】
本発明の第2の態様の情報処理方法は、プロセッサが実行する、第1ブロックチェーンから、ユーザの前記第1ブロックチェーン上の取引額を示す第1取引履歴を取得するステップと、前記第1ブロックチェーンとは異なる第2ブロックチェーンから、前記ユーザの前記第2ブロックチェーン上の取引額を示す第2取引履歴を取得するステップと、前記第1取引履歴と前記第2取引履歴との少なくとも一方が示す取引額を所定の種類の資産に換算し、前記第1取引履歴が示す取引額と前記第2取引履歴が示す取引額との前記種類の資産における合計額を算出するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、互いに異なるブロックチェーン上で取引履歴を管理する複数の店舗が共同でユーザに特典を付与しやすくすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る情報処理システムの模式図である。
図2】実施形態に係る情報処理システムのブロック図である。
図3】情報処理装置が取引履歴を取得する処理を説明するための模式図である。
図4】第1取引履歴及び第2取引履歴が付与条件を満たすか否かを情報処理装置が判定する処理を説明するための模式図である。
図5】情報処理装置がユーザに特典を付与するための付与指示を出力する処理を説明するための模式図である。
図6】付与条件を満たすために必要な額を表示しているユーザ端末の模式図である。
図7】実施形態に係る情報処理装置が実行する例示的な情報処理方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[情報処理システムSの概要]
図1は、本実施形態に係る情報処理システムSの模式図である。情報処理システムSは、情報処理装置1と、ユーザ端末2と、店舗端末3と、を含む。情報処理システムSは、その他のサーバ、端末等の機器を含んでもよい。
【0019】
情報処理装置1は、ブロックチェーン上で管理される情報に関する処理を行うコンピュータである。ブロックチェーン上で管理される情報は、例えば、店舗によって記録された取引履歴である。取引履歴は、店舗とユーザとの取引の履歴を示す情報である。取引は、例えば、ユーザが店舗から商品を購入したことである。店舗は、現実空間上の店舗、ウェブサイト上の店舗、仮想空間上の店舗等である。商品は、物品、サービス、デジタルデータ等である。
【0020】
取引履歴は、例えば、情報処理装置1の記憶部又は情報処理装置1とは異なる装置の記憶部に構築されたブロックチェーンによって、ユーザと商品を取引した店舗を保有者として記憶される。ブロックチェーンは複数のデータのブロックを含み、各ブロックは取引履歴の保有者を示す一又は複数のトランザクションを含む。ブロックチェーン内の各ブロックには所定の規則で生成されたハッシュ値が含まれており、ブロック間のハッシュ値の整合性を確認することによりブロックチェーン全体の正しさが担保される。本実施形態では、第1ブロックチェーン及び第2ブロックチェーンを含む複数のブロックチェーンが存在する。
【0021】
ユーザ端末2は、ユーザが利用する情報端末である。ユーザは、例えば、店舗と商品を取引する人間又は組織である。ユーザ端末2には、情報処理装置1を利用するユーザを識別するための識別情報(ID:Identifier)であるユーザIDが設定されている。店舗端末3は、事業者(店舗の従業者等)が利用する情報端末である。事業者は、例えば、店舗を運営する人間又は組織である。本実施形態では、第1店舗及び第2店舗を含む複数の店舗が存在する。
【0022】
ユーザ端末2及び店舗端末3は、例えば、スマートフォン、タブレット端末又はパーソナルコンピュータ等のコンピュータである。ユーザ端末2及び店舗端末3は、操作を受け付けるためのタッチパネル又はキーボード等の操作部と、情報を表示するための液晶ディスプレイ等の表示部と、を有する。ユーザ端末2及び店舗端末3は、ネットワークを介して情報処理装置1と通信可能である。
【0023】
本実施形態に係る情報処理システムSが実行する処理の概要を以下に説明する。第1店舗は、ユーザとの取引の履歴を示す取引履歴を、第1ブロックチェーンに記憶させる。第2店舗は、ユーザとの取引の履歴を示す取引履歴を、第1ブロックチェーンとは異なる第2ブロックチェーンに記憶させる。
【0024】
情報処理装置1は、所定のタイミングで、第1ブロックチェーンに記憶されたユーザの取引履歴を第1取引履歴として取得するとともに、第2ブロックチェーンに記憶されたユーザの取引履歴を第2取引履歴として取得する。情報処理装置1は、取得した第1取引履歴及び第2取引履歴が、第1店舗又は第2店舗が特典を付与するための付与条件を満たすか否かを判定する。付与条件は、例えば、店舗とユーザとの取引額が所定の閾値以上であることである。
【0025】
情報処理装置1は、付与条件が満たされたと判定したことを条件として、第1店舗又は第2店舗からユーザに特典を付与するための付与指示を出力する。特典は、例えば、第1ブロックチェーン又は第2ブロックチェーン上で管理される情報(暗号資産、ポイント、トークン等)である。
【0026】
このように、情報処理システムSは、第1ブロックチェーン及び第2ブロックチェーン上に記憶されている2つの店舗の取引履歴を取得し、2つの店舗の取引履歴に基づいてユーザに対する特典の付与条件を判定する。これにより、情報処理システムSは、互いに異なるブロックチェーン上で取引履歴を管理する複数の店舗が共同でユーザに特典を付与しやすくすることができる。
【0027】
[情報処理システムSの構成]
図2は、本実施形態に係る情報処理システムSのブロック図である。図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、図2に示したもの以外のデータの流れがあってもよい。図2において、各ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、図2に示すブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0028】
情報処理装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を有する。情報処理装置1は、2つ以上の物理的に分離した装置が有線又は無線で接続されることにより構成されてもよい。また、情報処理装置1は、コンピュータ資源の集合であるクラウドによって構成されてもよい。
【0029】
通信部11は、ネットワークを介してユーザ端末2及び店舗端末3との間でデータを送受信するための通信コントローラを有する。通信部11は、ユーザ端末2及び店舗端末3からネットワークを介して受信したデータを制御部13に通知する。また、通信部11は、ネットワークを介して、制御部13から出力されたデータをユーザ端末2及び店舗端末3に送信する。
【0030】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等を含む記憶媒体である。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを予め記憶している。記憶部12は、情報処理装置1の外部に設けられてもよく、その場合にネットワークを介して制御部13との間でデータの授受を行ってもよい。
【0031】
制御部13は、取得部131と、判定部132と、出力部133と、を有する。制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部131、判定部132及び出力部133として機能する。
【0032】
以下、情報処理システムSが実行する処理について詳細に説明する。まず、情報処理装置1が取引履歴を取得する処理について説明する。図3は、情報処理装置1が取引履歴を取得する処理を説明するための模式図である。
【0033】
第1店舗の店舗端末3は、例えば、ユーザに商品を販売したことに応じて、ユーザとの取引の内容を示す取引履歴を、第1ブロックチェーンに記憶させる。第2店舗の店舗端末3は、例えば、ユーザに商品を販売したことに応じて、ユーザとの取引の内容を示す取引履歴を、第2ブロックチェーンに記憶させる。第1店舗及び第2店舗は、ユーザと取引する度に取引履歴をブロックチェーンに記憶させ、又は所定期間内の取引履歴をまとめてブロックチェーンに記憶させる。
【0034】
取引履歴は、例えば、ユーザを識別するための識別情報(ID:Identifier)と、ユーザが購入した商品と、ユーザが商品を購入した日時と、ユーザが商品を購入するために支払った取引額と、を関連付けた情報である。第1ブロックチェーン上でユーザを識別するための識別情報を第1IDといい、第2ブロックチェーン上でユーザを識別するための識別情報を第2IDという。取引額は、ブロックチェーン上で管理される暗号資産の額、又は日本円、アメリカドル等の法定資産の額である。
【0035】
第1ブロックチェーン及び第2ブロックチェーンが互いに異なる種類の資産(暗号資産又は法定資産)を用いて取引を管理している状況において、当該互いに異なる種類の資産をブロックチェーン間で移転させることができず、又はブロックチェーン間の移転に所定の手数料が掛かる場合がある。このような場合に、第1ブロックチェーンに記憶された取引履歴は第1資産を用いた取引の履歴を示し、第2ブロックチェーンに記憶された取引履歴は第1資産とは異なる第2資産を用いた取引の履歴を示す。第1ブロックチェーンに記憶された取引履歴が含む取引額は第1資産の単位で表され、第2ブロックチェーンに記憶された取引履歴が含む取引額は第2資産の単位で表される。
【0036】
情報処理装置1は、複数のユーザが存在する場合に、複数のユーザそれぞれを対象として、又は特典の付与に関する要求を行ったいずれかのユーザを対象として、以降の処理を行う。情報処理装置1において、取得部131は、所定のタイミングで、第1ブロックチェーンに記憶されたユーザの取引履歴を第1取引履歴として取得するとともに、第2ブロックチェーンに記憶されたユーザの取引履歴を第2取引履歴として取得する。取得部131は、例えば、所定の時間間隔(1分、1時間等)で第1取引履歴及び第2取引履歴を取得し、又はユーザが利用するユーザ端末2から特典の付与に関する要求を受け付けたことに応じて第1取引履歴及び第2取引履歴を取得する。
【0037】
記憶部12は、例えば、情報処理装置1を利用するユーザを識別するためのユーザID(ユーザ端末2に設定されたユーザID)と、第1ブロックチェーン上でユーザを識別するための第1IDと、第2ブロックチェーン上でユーザを識別するための第2IDと、を関連付けた関連情報を予め記憶している。取得部131は、記憶部12から関連情報を取得する。
【0038】
取得部131は、第1ブロックチェーンから、関連情報においてユーザIDに関連付けられた第1IDに対応するユーザの取引の履歴を第1取引履歴として取得する。取得部131は、第2ブロックチェーンから、関連情報においてユーザIDに関連付けられた第2IDに対応するユーザの取引の履歴を第2取引履歴として取得する。これにより、情報処理システムSは、第1ブロックチェーン及び第2ブロックチェーンにおいて異なる識別情報を用いてユーザが識別される場合であっても、第1ブロックチェーン及び第2ブロックチェーンから同じユーザの取引履歴を取得することができる。
【0039】
取得部131は、記憶部12に予め記憶された、第1店舗又は第2店舗が特典を付与するための付与条件を取得する。付与条件は、例えば、店舗とユーザとの取引額が所定の閾値以上であることである。付与条件である閾値は、第1資産、第2資産又は法定資産の値である。
【0040】
次に、第1取引履歴及び第2取引履歴が付与条件を満たすか否かを情報処理装置1が判定する処理について説明する。図4(a)、図4(b)は、第1取引履歴及び第2取引履歴が付与条件を満たすか否かを情報処理装置1が判定する処理を説明するための模式図である。
【0041】
判定部132は、図4(a)のように、取得部131が取得した第1取引履歴の取引額が、取得部131が取得した付与条件を満たすか否かを判定する。判定部132は、例えば、第1取引履歴の取引額が付与条件である閾値以上である場合に、付与条件が満たされたと判定し、第1取引履歴の取引額が付与条件である閾値未満である場合に、付与条件が満たされていないと判定する。これにより、情報処理システムSは、第1取引履歴のみで付与条件を満たせる場合には第2取引履歴を参照しないで済むため、計算負荷を削減できる。
【0042】
取得部131は、第1取引履歴の取引額が付与条件を満たすか否かを判定部132が判定する前に、第2取引履歴を取得することなく第1取引履歴を取得してもよい。この場合に、取得部131は、例えば、第1ブロックチェーンから第1取引履歴を取得した後、第1取引履歴の取引額が付与条件を満たすと判定部132が判定したことを条件として、第2ブロックチェーンから第2取引履歴を取得する。これにより、情報処理システムSは、第1取引履歴のみでは付与条件を満たせない場合のみ第2のブロックチェーンから第2取引履歴を取得するため、第2ブロックチェーンに掛かる負荷を削減することができる。
【0043】
判定部132は、第1取引履歴の取引額が付与条件を満たさないと判定部132が判定したことを条件として、図4(b)のように、取得部131が取得した第1取引履歴及び第2取引履歴が、取得部131が取得した付与条件を満たすか否かを判定する。判定部132は、例えば、第1取引履歴の取引額と、第2取引履歴の取引額と、の合計値である合計額を算出する。
【0044】
第1取引履歴と第2取引履歴とが異なる種類の資産の取引額を示す場合に、判定部132は、第1取引履歴と第2取引履歴との少なくとも一方の取引額を所定の資産(第1資産、第2資産又は法定資産)に換算した上で合計額を算出してもよい。例えば、特典が第1ブロックチェーン上で管理される情報である場合に、判定部132は、第1取引履歴の取引額と、第2取引履歴の取引額を第1資産に換算した額と、の合計額を算出する。これにより、情報処理システムSは、第1ブロックチェーン及び第2ブロックチェーンが互いに異なる種類の資産を用いている場合であっても、第1取引履歴の取引額及び第2取引履歴の取引額をあわせて付与条件を判定することができる。
【0045】
判定部132は、例えば、算出した合計額が付与条件である閾値以上である場合に、付与条件が満たされたと判定し、算出した合計額が付与条件である閾値未満である場合に、付与条件が満たされていないと判定する。これにより、情報処理システムSは、各店舗が他の店舗におけるユーザの取引履歴を参照することなく複数の店舗の取引履歴をあわせて特典付与の可否を判定できる。
【0046】
なお、判定部132は、図4(a)の第1取引履歴の取引額のみを用いた判定を行うことなく、図4(b)の第1取引履歴及び第2取引履歴の取引額の合計額を用いた判定を行ってもよい。
【0047】
次に、情報処理装置1がユーザに特典を付与するための付与指示を出力する処理について説明する。図5は、情報処理装置1がユーザに特典を付与するための付与指示を出力する処理を説明するための模式図である。
【0048】
出力部133は、付与条件が満たされたと判定部132が判定したことを条件として、第1店舗又は第2店舗からユーザに特典を付与するための付与指示を出力する。特典が第1ブロックチェーン上又は第2ブロックチェーン上で管理される情報(暗号資産、ポイント、トークン等)である場合に、出力部133は、特典を管理する第1ブロックチェーン又は第2ブロックチェーンに対して付与指示を出力する。
【0049】
出力部133は、例えば、特典を付与するユーザの第1ID又は第2IDと、特典の内容と、を関連付けた付与指示を、第1ブロックチェーン又は第2ブロックチェーンに送信する。第1ブロックチェーン又は第2ブロックチェーンは、情報処理装置1が送信した付与指示に従って、特典を示す情報を第1ID又は第2IDと関連付けて記憶する。これにより、情報処理システムSは、第1ブロックチェーン及び第2ブロックチェーンにおいて管理されているユーザの取引履歴が付与条件を満たしたことに応じて、ユーザに対して自動的に特典を付与することができる。
【0050】
特典が第1店舗又は第2店舗においてユーザに提供される情報(代金の値引き、サービスの提供等)である場合に、出力部133は、第1店舗の店舗端末3又は第2店舗の店舗端末3に対して付与指示を送信してもよい。第1店舗又は第2店舗の店舗端末3は、情報処理装置1が送信した付与指示を示す情報を、表示部上に表示する。これにより、情報処理システムSは、第1ブロックチェーン及び第2ブロックチェーンにおいて管理されているユーザの取引履歴が付与条件を満たしたことに応じて、第1店舗又は第2店舗からユーザに特典を提供させることができる。
【0051】
第1店舗及び第2店舗がユーザに付与される特典の原資を負担する場合に、出力部133は、付与指示を出力したことを条件として、特典の原資のうち第1店舗及び第2店舗それぞれが負担する額を出力してもよい。
【0052】
出力部133は、例えば、特典の原資のうち第1取引履歴の取引額に応じた額を第1店舗の負担額として算出するとともに、特典の原資のうち第2取引履歴の取引額に応じた額を第2店舗の負担額として算出する。出力部133は、例えば、第1取引履歴の取引額と第2取引履歴の取引額との比に対応する第1店舗の負担額及び第2店舗の負担額を算出する。
【0053】
出力部133は、算出した第1店舗の負担額を示す情報を第1店舗と関連付けて出力するとともに、算出した第2店舗の負担額を示す情報を第2店舗と関連付けて出力する。出力部133は、例えば、第1店舗の負担額の請求情報を第1店舗の店舗端末3に送信し、第2店舗の負担額の請求情報を第2店舗の店舗端末3に送信する。これにより、情報処理システムSは、各店舗の貢献に応じて、特典の原資を各店舗に自動的に負担させることができる。
【0054】
次に、情報処理装置1がユーザに特典を付与するために必要な額を出力する処理について説明する。出力部133は、付与条件が満たされていないと判定部132が判定したことを条件として、付与条件を満たすために必要な額を算出する。出力部133は、例えば、付与条件の閾値から、第1取引履歴及び第2取引履歴の取引額の合計額を減算することにより、付与条件を満たすために必要な額を算出する。
【0055】
第1取引履歴と第2取引履歴とが異なる種類の資産の取引額を示す場合に、出力部133は、付与条件を満たすために必要な額を第1資産及び第2資産に換算することにより、付与条件を満たすために必要な第1資産の額と、付与条件を満たすために必要な第2資産の額と、を算出する。
【0056】
出力部133は、付与条件を満たすために必要な額を示す情報を出力する。出力部133は、例えば、第1資産の額及び第2資産の額を示す情報を、ユーザが利用するユーザ端末2に送信する。
【0057】
図6は、付与条件を満たすために必要な額を表示しているユーザ端末2の模式図である。ユーザ端末2は、情報処理装置1が送信した情報に基づいて、第1店舗との取引において付与条件を満たすために必要な第1資産の額と、第2店舗との取引において付与条件を満たすために必要な第2資産の額と、を表示部上に表示する。これにより、情報処理システムSは、特典の付与に必要な取引額を店舗ごとにユーザに通知し、ユーザが複数の店舗のうちいずれかの店舗でさらに取引することを促進することができる。
【0058】
また、出力部133は、複数の店舗が存在する場合に、複数の店舗のうち一部の店舗において付与条件を満たすために必要な額を示す情報を出力してもよい。この場合に、取得部131は、例えば、ユーザ端末2から、ユーザ端末2が位置する位置を示す位置情報を取得する。出力部133は、取得部131が取得した位置情報に基づいて、複数の店舗のうちユーザ端末2の位置に近い順に所定数の一又は複数の店舗を選択する。
【0059】
出力部133は、選択した一又は複数の店舗における取引に用いられる種類の資産の額であって、付与条件を満たすために必要な額(例えば、第1資産又は第2資産の額)を示す情報を、ユーザが利用するユーザ端末2に送信する。これにより、情報処理システムSは、複数の店舗のうちユーザが利用しやすい店舗(ユーザの位置に近い店舗等)において特典の付与に必要な取引額をユーザに通知し、ユーザが当該店舗で取引することを促進することができる。
【0060】
また、出力部133は、店舗端末3に、付与条件を満たすために必要な額を示す情報を出力してもよい。この場合に、店舗の店舗端末3は、例えば、当該店舗と取引を行うユーザのユーザ端末2の表示部に表示された情報(文字列、2次元コード等)を読み取ることにより、当該ユーザのユーザIDを取得する。取得部131は、店舗端末3からユーザIDを取得する。
【0061】
出力部133は、ユーザIDを取得した店舗端末3に対応する店舗における取引に用いられる種類の資産の額であって、当該ユーザIDに対応するユーザが付与条件を満たすために必要な額(例えば、第1資産又は第2資産の額)を示す情報を、当該店舗端末3に送信する。これにより、情報処理システムSは、店舗の従業者が当該店舗において特典を付与するために必要な商品をユーザに提案しやすくすることができる。
【0062】
[情報処理方法のフロー]
図7は、本実施形態に係る情報処理装置1が実行する例示的な情報処理方法のフローチャートを示す図である。取得部131は、所定のタイミングで、第1ブロックチェーンに記憶されたユーザの取引履歴を第1取引履歴として取得するとともに、第2ブロックチェーンに記憶されたユーザの取引履歴を第2取引履歴として取得する(S11)。取得部131は、記憶部12に予め記憶された、第1店舗又は第2店舗が特典を付与するための付与条件を取得する(S12)。
【0063】
判定部132は、取得部131が取得した第1取引履歴及び第2取引履歴が、取得部131が取得した付与条件を満たすか否かを判定する(S13)。判定部132は、例えば、第1取引履歴の取引額と、第2取引履歴の取引額と、の合計値である合計額を算出する。判定部132は、第1取引履歴の取引額と第2取引履歴の取引額との合計額が付与条件である閾値以上である場合に、付与条件が満たされたと判定し、当該合計額が付与条件である閾値未満である場合に、付与条件が満たされていないと判定する。
【0064】
付与条件が満たされたと判定部132が判定した場合に(S14のYES)、出力部133は、第1店舗又は第2店舗からユーザに特典を付与するための付与指示を出力する(S15)。特典が第1ブロックチェーン上又は第2ブロックチェーン上で管理される情報である場合に、出力部133は、特典を管理する第1ブロックチェーン又は第2ブロックチェーンに対して付与指示を出力する。特典が第1店舗又は第2店舗においてユーザに提供される情報である場合に、出力部133は、第1店舗の店舗端末3又は第2店舗の店舗端末3に対して付与指示を出力する。
【0065】
付与条件が満たされていないと判定部132が判定した場合に(S14のNO)、出力部133は、付与条件を満たすために必要な額を示す情報を出力する(S16)。
【0066】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る情報処理システムSによれば、情報処理装置1は、第1ブロックチェーン及び第2ブロックチェーン上に記憶されている2つの店舗の取引履歴を取得し、2つの店舗の取引履歴に基づいてユーザに対する特典の付与条件を判定する。これにより、各店舗が他の店舗におけるユーザの取引履歴を参照することなく複数の店舗の取引履歴をあわせて特典付与の可否を判定できるため、情報処理システムSは、互いに異なるブロックチェーン上で取引履歴を管理する複数の店舗が共同でユーザに特典を付与しやすくすることができる。
【0067】
なお、本発明により、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献することが可能となる。
【0068】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0069】
S 情報処理システム
1 情報処理装置
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
131 取得部
132 判定部
133 出力部
2 ユーザ端末
3 店舗端末

【要約】
【課題】互いに異なるブロックチェーン上で取引履歴を管理する複数の店舗が共同でユーザに特典を付与しやすくする。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る情報処理装置1は、第1ブロックチェーンから、第1店舗とユーザとの取引の履歴を示す第1取引履歴を取得するとともに、第1ブロックチェーンとは異なる第2ブロックチェーンから、第1店舗とは異なる第2店舗とユーザとの取引の履歴を示す第2取引履歴を取得する取得部131と、第1取引履歴及び第2取引履歴が、第1店舗又は第2店舗が特典を付与するための付与条件を満たすか否かを判定する判定部132と、付与条件が満たされたと判定部が判定したことを条件として、第1店舗又は第2店舗からユーザに特典を付与するための付与指示を出力する出力部133と、有する。
【選択図】図2

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7