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特許7554375情報処理システム、情報処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/20 20120101AFI20240911BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
G06Q50/20 300
G09B19/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024066448
(22)【出願日】2024-04-16
【審査請求日】2024-04-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524148462
【氏名又は名称】勝又黎
(72)【発明者】
【氏名】勝又黎
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2023-535341(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0069263(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G09B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部屋の中で第二言語の会話レッスンに取り組んだ時間を推定する情報処理システムであって、
少なくとも音圧レベルと当該音圧レベルを計測した時刻情報と、を複数含む学習用の環境情報と、当該学習用の環境情報に行動情報を対応させて得られた教師情報に基づき学習済モデルを構築する学習手段と、
少なくとも音圧レベルと当該音圧レベルを計測した時刻情報と、を複数含む本番用の環境情報を取得する取得手段と、
前記学習手段により構築された学習済モデルに対し、前記取得手段により取得された前記本番用の環境情報を入力することで、前記本番用の環境情報における時刻情報に対応する時刻において会話レッスンに取り組んでいたか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段により会話レッスンに取り組んでいたと判別された時刻を積算した会話レッスン取り組み時間を所定の出力先に出力する出力手段と、
を備える情報処理システム。
【請求項2】
さらに騒音測定手段を備え、
前記取得手段は、当該騒音測定手段により前記本番用の環境情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記騒音測定手段が、情報処理端末に搭載された騒音測定アプリであることを特徴とする請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記情報処理端末が、スマートフォンであることを特徴とする請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記騒音測定アプリは、前記スマートフォンによる他のアプリ起動時に当該騒音測定手段を制限されることを特徴とする請求項4に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記出力手段は、前記判別手段により会話レッスンに取り組んでいたと判別された時刻を積算した会話レッスン取り組み時間と共に、前記スマートフォンに対応する識別情報を前記所定の出力先に出力することを特徴とする請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記学習用の環境情報と前記本番用の環境情報は、時刻情報に対応した照度情報を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の情報処理システム。
【請求項8】
情報処理システムが実行する情報処理方法であって、
少なくとも音圧レベルと当該音圧レベルを計測した時刻情報と、を複数含む本番用の環境情報を取得する取得ステップと、
少なくとも音圧レベルと当該音圧レベルを計測した時刻情報と、を複数含む学習用の環境情報と、当該学習用の環境情報に行動情報を対応させて得られた教師情報に基づき構築された学習済モデルに対し、前記取得ステップにより取得された前記本番用の環境情報を入力することで、前記本番用の環境情報における時刻情報に対応する時刻において会話レッスンに取り組んでいたか否かを判別する判別ステップと、
前記判別ステップにより会話レッスンに取り組んでいたと判別された時刻を積算した会話レッスン取り組み時間を所定の出力先に出力する出力ステップと、を含む情報処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
少なくとも音圧レベルと当該音圧レベルを計測した時刻情報と、を複数含む本番用の環境情報を取得する取得ステップと、
少なくとも音圧レベルと当該音圧レベルを計測した時刻情報と、を複数含む学習用の環境情報と、当該学習用の環境情報に行動情報を対応させて得られた教師情報に基づき構築された学習済モデルに対し、前記取得ステップにより取得された前記本番用の環境情報を入力することで、前記本番用の環境情報における時刻情報に対応する時刻において会話レッスンに取り組んでいたか否かを判別する判別ステップと、
前記判別ステップにより会話レッスンに取り組んでいたと判別された時刻を積算した会話レッスン取り組み時間を所定の出力先に出力する出力ステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理システム、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、共働きの夫婦が増えており、子供が一人家の中で過ごす時間が長くなっている。そのような中、子供が家で一人過ごす間、子供が課題に取り組んでいるかどうかについては、放任主義とするか、何かしらの支援ツールにより確認する必要がある。
【0003】
特許文献1には、家庭内における子供の勉強を見守るためのシステムとして、部屋に設置された端末装置を通じて子供から入力を受け付けた勉強開始時の感情又は集中度に係る情報を取得し、部屋に設置された勉強机に前記子供が向かっているか否かを検知するセンサから検知結果を取得し、子供の勉強時間を管理する方法が開示されている。
【0004】
しかしこのシステムの場合、端末が子供に対し指示を出すところ、オンライン英会話のレッスン受講等、端末を別の用途に使用しなければならない条件下では、端末が複数必要となる等、勉強机のスペースを狭めてしまう。
【0005】
そのような場合、手狭になった勉強机ではなく別のスペースに移動するのが好ましいものの、上記の端末の目の前で学習しなければ正しい勉強時間をシステム上に反映させることができない。また、あらゆる勉強スタイルの時間を記録しようとすると、多種多様なセンサを部屋の内部に設置せざるを得ず、コストも大きい。そしてこのような場合、もはや勉強時間の把握ではなく「監視」に近い状況となってしまい、必要以上の個人情報をシステムに提供することとなってしまうことから、学習者にも無視できないストレスがかかることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2021-26328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
グローバル化が進む中、親は子に第二言語の習得を強く求めており、そのようなニーズにより、近年オンライン英会話に代表される外国語オンライン会話レッスンを受講する子供が増えている。しかし、共働きの親の場合、子供が果たして予定通り、まじめに会話レッスンに取り組んでいるか確認するのは難しい。その結果、親は子供の自己申告により会話レッスンへの取り組み時間を確認せざるを得ない。
【0008】
しかしながら、精神的に未熟な側面のある子どもを相手にする親の立場では、子供が自己申告した取り組み時間を無条件に信じることができない。一方、子供の立場では、信用されない自己申告ではなく、客観的に取り組み時間を提示可能となるツールを求めていた。
【0009】
本開示は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、子が親に対し客観的に会話レッスンへの取り組み時間を提示可能であり、かつ親としてもその取り組み時間を信頼できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる情報処理システムは、部屋の中で第二言語の会話レッスンに取り組んだ時間を推定する情報処理システムであって、少なくとも音圧レベルと当該音圧レベルを計測した時刻情報と、を複数含む学習用の環境情報と、当該学習用の環境情報に行動情報を対応させて得られた教師情報に基づき学習済モデルを構築する学習手段と、少なくとも音圧レベルと当該音圧レベルを計測した時刻情報と、を複数含む本番用の環境情報を取得する取得手段と、前記学習手段により構築された学習済モデルに対し、前記取得手段により取得された前記本番用の環境情報を入力することで、前記本番用の環境情報における時刻情報に対応する時刻において会話レッスンに取り組んでいたか否かを判別する判別手段と、前記判別手段により会話レッスンに取り組んでいたと判別された時刻を積算した会話レッスン取り組み時間を所定の出力先に出力する出力手段と、を備えるように構築される。
【0011】
これにより、部屋の中で第二言語の会話レッスンに取り組んだ時間について、当該会話レッスンを行った当事者の恣意的な加工の入り込む余地なく推定することができる。本発明は、音圧レベルを中心とした少数のセンサで構成された情報処理システムとすることで、個人情報の保護の観点でも配慮した。
【0012】
また、さらに騒音測定手段を備え、前記取得手段は、当該騒音測定手段により前記本番用の環境情報を取得することが好ましい。
【0013】
これにより、会話レッスンに取り組んだ時間について、より精度良く推測することができる。
【0014】
また、前記騒音測定手段が、情報処理端末に搭載された騒音測定アプリであることが好ましい。
【0015】
これにより、既存のハードウェアを利用して、省スペース化と共にコストパフォーマンス改善が可能となる。
【0016】
また、前記情報処理端末が、スマートフォンであることが好ましい。
【0017】
スマートフォンによる騒音測定を行うことで、スマートフォンから手を放し所定の場所に載置する必要が生じる。載置するスマートフォンに手を触れると測定結果が乱れることから、少なくとも会話レッスンに取り組む間、スマートフォンの操作を制限することができる。学習中にスマートフォンに触れることで、学習に対しての集中力の低下が懸念されるため、スマートフォンに接触させづらい環境とすることで、結果として会話レッスンに取り組む時間の増加が期待される。
【0018】
さらにまた、前記騒音測定アプリは、前記スマートフォンによる他のアプリ起動時に当該騒音測定手段を制限されることが好ましい。
【0019】
これにより、会話レッスンに取り組む間、完全にスマートフォンの操作から離れることとなり、学習に集中することができる。
【0020】
また、前記学習用の環境情報と前記本番用の環境情報は、時刻情報に対応した照度情報を含むことが好ましい。
【0021】
複数の異なる環境情報を組み合わせることで、より精度の高い学習済モデルが構築され、その結果、より精度の高い会話レッスン時間の推測が可能となる。
【0022】
また、前記出力手段は、前記判別手段により会話レッスンに取り組んでいたと判別された時刻を積算した会話レッスン取り組み時間と共に、前記スマートフォンに対応する識別情報を前記所定の出力先に出力することが好ましい。
【0023】
後述するとおり、どのようなときもスマートフォンを携帯する人が大半であり、かつ、他人がスマートフォンを使用するのを拒む人が多い。学習ツールの一部として活用するスマートフォン毎の識別情報を出力先に出力することで、「学習者がその場にいて、他者に代わってもらうことなく学習した」と、出力先で報告を受けた方(学習者が子供の場合、父親や母親)が信用できる情報となる。
【0024】
本発明にかかる情報処理方法は、情報処理システムが実行する情報処理方法であって、少なくとも音圧レベルと当該音圧レベルを計測した時刻情報と、を複数含む本番用の環境情報を取得する取得ステップと、少なくとも音圧レベルと当該音圧レベルを計測した時刻情報と、を複数含む学習用の環境情報と、当該学習用の環境情報に行動情報を対応させて得られた教師情報に基づき構築された学習済モデルに対し、前記取得手段により取得された前記本番用の環境情報を入力することで、前記本番用の環境情報における時刻情報に対応する時刻において会話レッスンに取り組んでいたか否かを判別する判別ステップと、前記判別ステップにより会話レッスンに取り組んでいたと判別された時刻を積算した会話レッスン取り組み時間を所定の出力先に出力する出力ステップと、を含む。
【0025】
本発明にかかるプログラムは、少なくとも音圧レベルと当該音圧レベルを計測した時刻情報と、を複数含む本番用の環境情報を取得する取得ステップと、少なくとも音圧レベルと当該音圧レベルを計測した時刻情報と、を複数含む学習用の環境情報と、当該学習用の環境情報に行動情報を対応させて得られた教師情報に基づき構築された学習済モデルに対し、前記取得手段により取得された前記本番用の環境情報を入力することで、前記本番用の環境情報における時刻情報に対応する時刻において会話レッスンに取り組んでいたか否かを判別する判別ステップと、前記判別ステップにより会話レッスンに取り組んでいたと判別された時刻を積算した会話レッスン取り組み時間を所定の出力先に出力する出力ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、オンライン会話レッスンへ取り組んだ当事者が、取り組み時間を客観的に提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】情報処理システムのシステム構成の一例を示した図である。
図2】情報処理システムのハードウェア構成の一例を示した図である。
図3】情報処理システムの機能構成の一例を示したブロック図である。
図4】音圧レベルと人の感じる騒音レベルの関係を示す図である。
図5】誰もいない部屋における所定時間の音圧レベル分布を示す図である。
図6】部屋において所定時間オンライン英会話を継続した際の音圧レベル分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0029】
<システム構成>
図1を参照して、本実施形態に係る情報処理システムのシステム構成の一例について説明する。本実施形態に係る情報処理システムは、ネットワークを介して接続された騒音測定装置(例えば、タブレット端末やスマートフォン等)を利用して、第二言語学習者(例えば、中学生の子供)の状態を把握可能とする仕組みを提供する。例えば、図1は、本実施形態に係る情報処理システム1は、部屋600(中学生の子供の場合、例えば子供部屋)の状態を、騒音測定装置300により得られた環境情報に基づき把握する場合の構成の一例を示している。具体的には、情報処理システム1は、騒音測定装置300と、情報処理装置100及び200と、端末装置400および500とを含む。なお、以降では、端末装置400~500のそれぞれを特に区別しない場合には、「撮像装置400」と称する場合がある。また、騒音測定装置300と、情報処理装置100及び200のそれぞれと、端末装置400及び500とは、ネットワークN1を介して各種情報やデータを送受信可能に構成されている。
【0030】
情報処理システム1を構成する各装置間を接続するネットワークN1の種別は特に限定されない。具体的な一例として、ネットワークN1は、LAN(Local Area Network)、インターネット、専用線、または、WAN(Wide Area Network)等により構成されていてもよい。また、ネットワークN1は、有線のネットワークにより構成されていてもよいし、無線のネットワークにより構成されていてもよい。また、ネットワークN1は、複数のネットワークを含んでもよく、一部のネットワークとして、他のネットワークとは異なる種別のネットワークが含まれてもよい。また、各装置間の通信が論理的に確立されていればよく、ネットワークN1の物理的な構成は特に限定されない。具体的な一例として、各装置間の通信が他の通信装置等により中継されてもよい。加えて、情報処理システム1を構成する一連の装置が、必ずしも共通のネットワークに接続されていなくてもよい。すなわち、情報やデータの送受信が行われる装置間の通信を確立することが可能であれば、一部の2以上の装置間と、他の2以上の装置間と、のそれぞれが互いに異なるネットワークにより接続されてもよい。
【0031】
騒音測定装置300は、例えば、所謂騒音測定計の測定結果をデジタル化し数値情報として出力可能に構成された騒音測定装置により実現され得る。騒音測定装置300は、測定結果に応じた環境情報(以降では、「環境データ」とも称する)を、ネットワークN1を介して他の装置(例えば、情報処理装置100及び200等)に送信する。
【0032】
情報処理装置100及び200は、騒音測定装置300から送信される当該騒音測定装置300による部屋600の測定結果に応じた環境データに基づき、当該部屋600の状態を把握可能とする仕組みを提供する。
【0033】
具体的には、情報処理装置200は、騒音測定装置300から送信される環境データに対して所定の解析処理を施すことで、部屋600にいる第二言語学習者が、第二言語の会話レッスンに取り組んでいるか否かを判別する。この際に、情報処理装置200は、当該判別の結果に応じた報知情報を、所定の出力先(例えば、後述する端末装置400や500)に出力する。これにより部屋600の状態を、ユーザ(例えば、父親や母親)に報告することが可能となる。
【0034】
情報処理装置100は、情報処理装置200が上記解析処理に利用する学習済モデルを機械学習に基づき構築する。規格学習の手法はどのような手法であってもかまわず、具体的な一例として、所定のプログラム言語のライブラリとして公開されているツールや、Googleの提供するスプレッドシート上に機械学習を導入できるアドオン「Simple ML for Sheets」等が挙げられる。
【0035】
なお、本発明における情報処理システム1は、部屋600の環境が第二言語学習者毎に異なること、また、学習者毎に発する学習時の音圧レベルが異なることから、上述の学習済モデルは、学習用の環境情報に行動情報を対応させて得られた教師情報(教師データともいう)に基づき構築されることが好ましい。
これにより、情報処理システム1は、個人個人に合わせより正確な判別(「第二言語の会話レッスンに取り組んでいる」場合に「第二言語の会話レッスンに取り組んでいる」と正しく判断する)を行うことができる。
【0036】
<ハードウェア構成>
図2を参照して、本実施形態に係る情報処理システム1における情報処理装置100及び200のそれぞれや端末装置400や500として適用可能な情報処理装置900のハードウェア構成の一例について説明する。図2に示すように、本実施形態に係る情報処理装置900は、CPU(Central Processing Unit)910と、ROM(Read Only Memory)920と、RAM(Random Access Memory)930とを含む。また、情報処理装置900は、補助記憶装置940と、ネットワークI/F970とを含む。また、情報処理装置900は、出力装置950と、入力装置960とのうち少なくともいずれかを含んでもよい。CPU910と、ROM920と、RAM930と、補助記憶装置940と、出力装置950と、入力装置960と、ネットワークI/F970とは、バス980を介して相互に接続されている。
【0037】
CPU910は、情報処理装置900の各種動作を制御する中央演算装置である。例えば、CPU910は、情報処理装置900全体の動作を制御してもよい。ROM920は、CPU910で実行可能な制御プログラムやブートプログラムなどを記憶する。RAM930は、CPU910の主記憶メモリであり、ワークエリア又は各種プログラムを展開するための一時記憶領域として用いられる。
【0038】
補助記憶装置940は、各種データや各種プログラムを記憶する。補助記憶装置940は、HDD(Hard Disk Drive)や、SSD(Solid State Drive)に代表される不揮発性メモリ等のような、各種データを一時的または持続的に記憶可能な記憶デバイスにより実現される。
【0039】
出力装置950は、各種情報を出力する装置であり、ユーザに対する各種情報の提示に利用される。本実施形態では、出力装置950は、ディスプレイ等の表示デバイスにより実現される。出力装置950は、各種表示情報を表示させることで、ユーザに対して情報を提示する。ただし、他の例として、出力装置950は、音声や電子音等の音を出力する音響出力デバイスにより実現されてもよい。この場合には、出力装置950は、音声や電信等の音を出力することで、ユーザに対して情報(例えば「2024年4月1日の第二言語学習時間は35分です」等)を提示する。また、出力装置950として適用されるデバイスは、ユーザに対して情報を提示するために利用する媒体に応じて適宜変更されてもよい。
【0040】
入力装置960は、ユーザからの各種指示の受け付けに利用される。本実施形態では、入力装置960は、マウス、キーボード、タッチパネル等の入力デバイスを含む。ただし、他の例として、入力装置960は、マイクロフォン等の集音デバイスを含み、ユーザが発話した音声を集音してもよい。また、入力装置960として複数種類のデバイスが適用されてもよい。
【0041】
ネットワークI/F970は、外部の装置とのネットワークを介した通信に利用される。なお、ネットワークI/F970として適用されるデバイスは、通信経路の種別や適用される通信方式に応じて適宜変更されてもよい。
【0042】
CPU910は、ROM920又は補助記憶装置940に記憶されたプログラムをRAM930に展開し、このプログラムを実行することで、図3に示す情報処理装置100及び200それぞれの機能構成や、情報処理装置100及び200それぞれの処理が実現される。
【0043】
<機能構成>
図3を参照して、本実施形態に係る情報処理システム1の機能構成の一例について説明する。
【0044】
まず、情報処理装置100の機能構成の一例について説明する。前述したように、情報処理装置100は、後述する情報処理装置200が、騒音測定装置300から送信される本番用の環境情報に対して所定の解析処理を施すために利用する学習済モデルを、機械学習に基づき構築する。学習処理部110は、当該学習済モデルの構築に係る各種処理を実行する構成要素を模式的に示している。すなわち、学習処理部110が、学習済モデルの構築に係る「学習手段」を担う構成の一例である。
【0045】
本明細書において、「環境情報」とは、少なくとも音圧レベルと当該音圧レベルを計測した時刻情報とを含むものである。環境情報としては、音圧レベルと時刻情報の他に、照度やその他の物理量を含んでも良い。照度を環境情報として取得し、学習済モデルを学習するために使い、また、後述のとおり判別させることにより、第二言語の会話レッスン中か否かについて、より正確な判別が可能となる。なお、「音圧レベル」とは、音源によって観測点で生じる空気の圧力変動の強さをレベル表示した量であり、単位はdB(デシベル)であらわされる。音圧の2条と基準音圧の2条の比の常用対数によって表現した量であり、音圧の2乗を、基準音圧の2乗で除した値の常用対数の10倍で与えられる。
【0046】
本明細書において、「環境情報」は2通りの意味を有する。第一に、学習済モデルを構築する際に用いる環境情報を「学習用の環境情報」と称す。第二に、学習済モデルに対し入力し、第二言語の会話レッスン中か否かについて判別するために用いる環境情報を「本番用の環境情報」と称す。この2つの環境情報は私用するフェーズが異なるものの、共通の騒音測定手段(本実施形態においては、騒音測定装置300を用いて騒音測定がなされる)により獲得されて良い。
【0047】
学習処理部110は、少なくとも、音圧レベルと当該音圧レベルを計測した時刻情報と、を含む学習用の環境情報に、行動情報を対応させて得られた教師情報(教師データともいう)に基づき、学習済モデルを構築する。
【0048】
本明細書において、「行動情報」とは、少なくとも、「第二言語レッスン中」か「それ以外の活動中」の2つの情報により分類されるものである。
【0049】
「第二言語」とは、母国語以外の言語をいい、母国語が日本語の場合、第二言語とは、英語、フランス語、スペイン語、中国語その他日本語以外の言語を意味する。また、「それ以外の活動中」については、例えば「就寝中」、「読書中」、「勉強中」といった実際の活動に分けて登録してもよい。このようにラベル付けされた教師情報により構築された学習済モデルであれば、入力した本番用の環境情報に対し、ラベル付けに用いられた活動情報のいずれの活動を実際に行ったのか、判断することができる。なお、「それ以外の活動中」について、どの程度まで具体的にラベル付けを行うかについては、情報処理システムとしてどの程度具体的に部屋の中での活動を把握すべきかを考慮して調整する。
【0050】
日本騒音調査(ソーチョー)のHPによれば、人が感じる騒音の割合は図4のとおりである。予備実験により、一般的な住宅の場合、部屋に誰もいない場合は20~30dB程度、空気清浄機を常時運転中であっても25~35dBであった。また、部屋に人がいる場合であっても静かに読書や勉強に集中している場合は35~40dBであった。また、就寝時は20~35dB程度であった。これに対し、部屋で第二言語の会話レッスンに取り組む場合、30~70dBの範囲で推移することが分かった。
【0051】
図5は、部屋に誰もおらず、空気清浄機を常時運転中した状態で30分騒音を計測した際の、音圧レベル分布を示したものである。一方、図6は、部屋において、30分ほどオンライン英会話を継続した際のデータである。
【0052】
この予備実験により、部屋600で第二言語の会話レッスンに取り組むとき、会話レッスンに取り組んでいないときと比較して、音圧レベルが上昇することが明らかになった。したがって、仮に人が目視で観察する場合、例えば時刻と音圧レベルを対応させたグラフを見ると、第二言語の会話レッスン中か、それ以外の活動中(読書、勉強、睡眠等)かについて、容易に判別することができる。
【0053】
このことから、適切な教師データに基づき学習させた学習済モデルに対し、音圧レベルと当該音圧レベルを計測した時刻情報とを含む本番環境の環境情報を入力することにより、第二言語の会話レッスン中か、それ以外の活動中(読書、勉強、睡眠等)かについて、判別させることができる。
【0054】
機械学習に基づき構築された上記学習済モデルは、情報処理装置200に出力される。なお、情報処理装置200が上記学習済モデルを取得することが可能であればその方法は特に限定はされない。具体的な一例として、情報処理装置100がネットワークN1を介して情報処理装置200に学習済モデルを送信してもよい。また、他の一例として、情報処理装置100は、構築した学習済モデルを所望の記憶領域に記憶させてもよい。この場合には、情報処理装置200は、当該記憶領域から学習済モデルを読み出すことで、当該学習済モデルを取得してもよい。
【0055】
次いで、情報処理装置200の機能構成の一例について説明する。情報処理装置200は、環境情報取得部201と、判別部203と、出力制御部205とを含む。
【0056】
環境情報取得部201は、把握対象の本番用の環境情報を、当該騒音測定装置300から取得する。
【0057】
判別部203は、環境情報取得部201により得られた本番用の環境情報に対し、学習済モデルを介して行動情報としてもっともらしい情報を割り当てる。と上記基準画像とが略一致するか否かを判別する。
【0058】
そして、判別部203は、上記判別の結果に応じた情報を出力制御部205に出力する。
【0059】
出力制御部205は、判別部203による上記判別の結果に応じた情報を所定の出力先に出力する。例えば、出力制御部205は、判別部203による上記判別の結果に応じた出力情報を端末装置400(500)に出力してもよい。これにより、判別部203による上記判別の結果に応じた出力情報を、端末装置400(500)を介してユーザに報告することが可能となる。また、他の一例として、出力制御部205は、判別部203による上記判別の結果に応じた情報を、所定の記憶領域に記憶させてもよい。
【0060】
なお、上記はあくまで一例であり、上述した情報処理システム1の各構成要素(特に、情報処理装置100及び200それぞれの構成要素)に相当する機能を実現することが可能であれば、情報処理システム1の機能構成は限定されない。例えば、情報処理装置100及び200それぞれの機能構成が、複数の装置が協同することで実現されてもよい。
具体的な一例として、情報処理装置100の一連の構成要素のうちの一部の構成要素が、当該情報処理装置100とは異なる他の装置に設けられていてもよい。また、他の一例として、情報処理装置100の一連の構成要素のうち少なくとも一部の構成要素の処理に係る負荷が、複数の装置に分散されてもよい。これらは、情報処理装置200についても同様である。
【0061】
以上、本発明の実施形態について、<ハードウェア構成>と<機能構成>の観点から説明した。これ以降は、これらの構成により実現される本発明の技術的特徴について説明する。
【0062】
<技術的特徴>
本実施形態に係る情報処理システム1は、部屋600の中で第二言語の会話レッスンに取り組んだ時間を推定することを目的としたものである。
【0063】
情報処理システム1は、取得手段と、学習済モデルを構築する学習手段と、環境情報を取得する取得手段と、判別手段と、出力手段と、を有する。なお、学習手段は、上述の学習処理部110がその機能を備える。また、取得手段は、上述の環境情報取得部201がその機能を備える。
【0064】
判別手段は、取得手段により取得された本番用の環境情報を入力することで、本番用の環境情報における時刻情報に対応する時刻において会話レッスンに取り組んでいたか否かを判別する。本実施形態においては、図1の騒音測定装置300により得られた本番の環境情報について、図3の環境情報取得部201が取得する。
【0065】
出力手段は、判別手段により会話レッスンに取り組んでいたと判別された時刻を積算した会話レッスン取り組み時間を所定の出力先に出力する。本実施形態においては、図3の出力制御部205がその機能を備える。
【0066】
本明細書における「所定の出力先」とは、クラウド上のサーバー、遠隔地の端末等、ネットワークを介してつながる場所であれば、どのような出力先であっても良い。本実施形態においては、図3の端末装置400及び500が所定の出力先に対応する。
【0067】
「時刻を積算した会話レッスン取り組み時間を出力する」とは、例えば、本番用の環境情報として取得した時刻情報が“2024年4月12日の午後3時から10時まで“を1秒ごとに計測したものであれば、判別手段により、1秒ごとに第二言語レッスン取り組み時間か否かが推定される。このとき、「第二言語レッスン中」と3600カウント分であると推定されるならば、「2024年4月12日の午後3時から10時の間に第二言語のレッスンがなされた時間は3600秒(1時間)」と出力される。
【0068】
本発明の目的は、オンライン会話レッスンへ取り組んだ当事者が、取り組み時間を客観的に提示することにある。当事者の自己申告に頼らず、また、恣意的に加工する余地がないため、当事者の勉強時間に対する信頼性が向上する。
【0069】
図1に示すように、情報処理システム1は、例えば、騒音測定装置300のような騒音測定手段を備えてもよい。本発明の趣旨からすれば、部屋の内部における本番用の環境情報はどのようなやり方で提供されても良く、ダイレクトに部屋の音圧レベルを図らずとも、別の部屋の環境情報等から類推して環境情報を得てもよい。しかし、情報処理システム1自身が騒音測定装置300のような騒音測定手段を有することで、現場の情報がリアルタイムかつ正確に取得可能となるため好ましい。これにより、会話レッスンに取り組んだ時間について、より精度良く推測することができる。
【0070】
さらに、騒音測定手段が、情報処理端末に搭載された騒音計測アプリであることが好ましい。図1にあてはめると、騒音測定装置300が、情報処理端末であり、当該情報処理端末が騒音計測アプリを搭載していることを意味する。本発明における情報処理システムの場合、騒音測定手段は特に限定されず、従来の騒音計測計を1台用意してもよい。しかし、既存のハードウェアに騒音測定手段を備える騒音計測アプリを搭載することで、少なくともアナログな騒音計測計1台分の省スペース化を実現でき、また、初期投資を減らす点でコストパフォーマンス改善が可能となる。
【0071】
情報処理端末は、ノートPC、デスクトップPC、タブレット等、どのようなものであってもよい。しかし、本発明において、情報処理端末が、スマートフォンであることが好ましい。
【0072】
令和2年の総務省「通信利用動向調査」によれば、2019年における世帯の情報通信機器の保有状況において、「スマートフォン」は83.4%、「パソコン」は69.1%、「タブレット」は37.4%となっている。このため、スマートフォンを活用する情報処理システムであれば、他の情報処理端末を活用する場合と比較して、初期投資を減らすことができる。
【0073】
なお、騒音計測アプリについては、GooglePlay等によりダウンロードすれば、自身のスマートフォンが騒音計として機能し、取得した環境情報について、CSV形式など、情報処理システム内で扱いやすい状態で出力することができる。また、アプリから定期的にCSVファイルを出力させるのはプログラムやRPA等、任意の方法で可能である。アナログな騒音計を使用する場合はこのような自動処理は容易ではないため、騒音計測アプリを使用するのが好ましい。
【0074】
さらに、騒音測定アプリは、スマートフォンによる他のアプリ起動時に当該騒音測定手段を制限されることが好ましい。一般的に端末の不自由さが解消される方向で技術革新が進む中で、本発明においては、この不自由さが第二言語学習者の学習効率を高める点で大変重要な特徴と位置づけられる。
【0075】
スマートフォンが自由に使える状態でそばにあると、動画やSNSの閲覧等さまざまな外的誘惑を断ち切れず、第二言語のレッスンに集中するのが難しい。実際に、内閣府が2023年3月に発表した調査によると、中学生の78.9%、高校生の97.9%がスマートフォンを利用し、高校生のスマートフォンの平均利用時間は、平日のインターネット利用だけで約4時間に及ぶ。
【0076】
このため、騒音測定アプリ起動中は他のアプリが起動しない、または、他のアプリ起動中には騒音測定アプリが起動しない、という一見不便な状況を強制的に実現することで、スマートフォンによるネットサーフィンやSNSの使用を制限することができ、より多くのレッスンを受けられる仕組みが構築される。このことは、いわゆるスマートフォン漬けの中高生本人にとっても、スマートフォン漬けの中高生の扱いに悩む親にとっても好ましいことである。さらに、本発明の出力手段(一例として出力制御部205の機能)は、判別手段(一例として環境情報取得部201の機能)により会話レッスンに取り組んでいたと判別された時刻を積算した会話レッスン取り組み時間と共に、前記スマートフォンに対応する識別情報を前記所定の出力先に出力することを特徴とすることが好ましい。
【0077】
後述するとおり、どのようなときもスマートフォンを携帯する人が大半であり、かつ、他人がスマートフォンを使用するのを拒む人が多い、学習ツールの一部として活用するスマートフォン毎の識別情報を出力先に出力することで、「子供がその場にいて、確かに学習した」と、出力先で報告を受けた方(学習者が子供の場合、父親や母親)が信用できる結果となる。
【0078】
以上、本発明を上述した実施形態と共に説明したが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で種々の変更等が可能であり、上述した実施形態あるいは変形例を適時組み合わせてもよい。
また、本発明には、上述した実施形態の機能を実現するための情報処理方法と、コンピュータに上述した実施形態の機能を実行させるプログラムとが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、第二言語の学習者と、当該学習者の学習進捗状況を見守る観察者の双方に利益のある情報処理システム等として、産業利用が期待されるものである。
【符号の説明】
【0080】
1 情報処理システム
100 情報処理装置
101 環境情報取得部(学習時)
110 学習処理部
200 情報処理装置
201 環境情報取得部(判別時)
203 判別部
205 出力制御部
300 騒音測定装置
400 端末装置
500 端末装置
【要約】
【課題】子が親に対し客観的に会話レッスンへの取り組み時間を提示可能であり、かつ親としてもその取り組み時間を信頼できる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】部屋の中で第二言語の会話レッスンに取り組んだ時間を推定する情報処理システムであって、少なくとも音圧レベルと当該音圧レベルを計測した時刻情報と、を複数含む学習用の環境情報と、当該学習用の環境情報に行動情報を対応させて得られた教師情報に基づき学習済モデルを構築する学習手段と、少なくとも音圧レベルと当該音圧レベルを計測した時刻情報と、を複数含む本番用の環境情報を取得する取得手段と、前記学習手段により構築された学習済モデルに対し、前記取得手段により取得された前記本番用の環境情報を入力する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6