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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】医療用照明器具
(51)【国際特許分類】
   F21V 5/04 20060101AFI20240911BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240911BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240911BHJP
【FI】
F21V5/04 650
F21S2/00 610
F21Y115:10
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2024518301
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2022076753
(87)【国際公開番号】W WO2023052321
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2024-03-22
(31)【優先権主張番号】21199315.9
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521118145
【氏名又は名称】カボ デンタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】シューマッハ, フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】ルシュケ, エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ハッケル, アンドレ
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-134154(JP,A)
【文献】特開2007-134316(JP,A)
【文献】特開平3-32662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 5/04
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術野の口腔内照明のための医療用照明器具(100)であって、
照明手段(20)と光学手段(30)とを有する、物体平面(O)における光照射野(200)生成用の照明ユニット(10)を有し、
前記照明手段(20)は、点状のLED光源(21)によって形成され、前記光学手段(30)は、板状のコリメータ(40)とカバープレート(50)とを有し、
前記コリメータ(40)は、前記LED光源(21)とは逆側に光屈折構造(43)を備える中央領域(42)と、前記中央領域(42)を囲み、前記LED光源(21)に面する側に全反射用の構造(48)を備える外側領域(46)を有し、
前記カバープレート(50)は、複数の単一のレンズを有するレンズ構造を備え、複数の前記レンズは、前記コリメータ(40)により出射され、前記レンズに入射する光を前記物体平面に投射するように各々設計され、
前記コリメータ(40)の前記中央領域(42)の、前記LED光源(21)に面する後側は、1つの第1方向に非対称的に前記光照射野(200)を広げるように、前記コリメータ(40)の平面(E3)、ひいては前記物体平面(O)に対して傾斜を有する複数の部分表面(45、145)を備える
ことを特徴とする医療用照明器具。
【請求項2】
複数の前記部分表面(45、145)の少なくともの一部は、前記コリメータ(40)の前記平面(E3)内にある、前記第1方向に垂直な軸まわりに、各々傾斜されることを特徴とする請求項1に記載の医療用照明器具。
【請求項3】
複数の前記部分表面(145)は、帯状に形成されて、各々がそれぞれの傾斜の軸に沿って前記第1方向に垂直に延びることを特徴とする請求項2に記載の医療用照明器具。
【請求項4】
複数の前記帯状の部分表面(145)は、前記第1方向に平行な軸(I1)まわりに凹状に湾曲されている
ことを特徴とする
請求項3に記載の医療用照明器具。
【請求項5】
複数の前記部分表面(45)は、タイル状であり、前記コリメータ(40)の前記中央領域(42)の、前記LED光源(21)に面する前記後側をマトリックス状に覆う
ことを特徴とする
請求項2に記載の医療用照明器具。
【請求項6】
複数のタイル状の前記部分表面(45)の少なくとも一部は、前記第1方向に平行に延びる軸まわりに前記コリメータ(40)の前記平面(E3)に対して傾斜される
ことを特徴とする
請求項5に記載の医療用照明器具。
【請求項7】
前記コリメータ(40)の前記平面(E3)に垂直であり、且つ、前記第1方向に平行に延びる軸(I1)に沿う、平面(E1)に対して、複数のタイル状の前記部分表面(45)が対称的に配置される
ことを特徴とする
請求項6に記載の医療用照明器具。
【請求項8】
前記コリメータ(40)の前記中央領域(42)の前記光屈折構造(43)は、フレネル構造を形成する
ことを特徴とする
請求項1に記載の医療用照明器具。
【請求項9】
前記コリメータ(40)の全反射用の前記構造(48)は、前記LED光源(21)に面する更なるフレネル構造を形成する、
ことを特徴とする
請求項8に記載の医療用照明器具。
【請求項10】
前記光屈折構造(43)及び前記コリメータ(40)の全反射用の前記構造(48)は、共通の回転対称性を有する
ことを特徴とする
請求項8に記載の医療用照明器具。
【請求項11】
前記光屈折構造(43)及び前記コリメータ(40)の全反射用の前記構造(48)は、非球面領域を有する
ことを特徴とする
請求項8に記載の医療用照明器具。
【請求項12】
前記光学手段(30)は、前記医療用照明器具(100)の光軸(A)に垂直な前記物体平面(O)に投射される前記光照射野(200)が、前記第1方向に平行に延びる軸(O1)に沿うよりも、前記第1方向に垂直に延びる軸(O2)に沿う方が大きな広がりを有するように構築される
ことを特徴とする
請求項1に記載の医療用照明器具。
【請求項13】
前記レンズ構造を形成する複数の前記レンズ(53、58)の少なくとも一部は、前記コリメータの前記平面(E3)に平行で前記第1方向に垂直な軸まわりに前記コリメータの前記平面(E3)に対して傾斜される
ことを特徴とする
請求項1に記載の医療用照明器具。
【請求項14】
前記レンズ(53、58)は、前記カバープレート(50)の、前記LED光源(21)に面する側に配置され
ことを特徴とする
請求項1に記載の医療用照明器具。
【請求項15】
前記カバープレート(50)の前記レンズ構造は、内側領域(52)と第2外側領域(56)とを有し、
・前記内側領域(52)の複数の前記レンズ(53)は、前記コリメータ(40)の前記中央領域(42)により出射される前記光を、中央の光照射野の形で前記物体平面(O)に投射するように設計され、
・前記第2外側領域(56)の複数の前記レンズ(58)は、前記コリメータ(40)の前記外側領域(46)により出射された前記光を、外側の光照射野の形で前記物体平面(O)に投射するように設計され、
前記中央の光照射野と前記外側の光照射野とは完全に重ねられ
ことを特徴とする
請求項1に記載の医療用照明器具。
【請求項16】
前記内側領域(52)の前記レンズ(53)は、正方形であり、前記第2外側領域(56)の前記レンズ(58)は、前記第1方向に平行に延びる前記コリメータ(40)の軸(I1)よりも、前記第1方向に垂直に延びる前記コリメータ(40)の軸(I2)の方向に、より大きな広がりを有する
ことを特徴とする
請求項15に記載の医療用照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術野の口腔内照明を行うのを支援する、医療用照明器具(訳注:原文ではMedizinische Leuchte。日本では「無影灯」と称されることが多い。)、特に歯科治療用照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
医学的治療の質を確保するためには、検査箇所又は治療箇所が適切に照らされることが不可欠である。従って、医療用照明器具は、検査及び/又は治療を支援する最適化された光照射野を用いて検査又は治療の対象箇所を照らすように設計されている。
【0003】
歯科用照明器具の場合、この光照射野の特性は、様々な規格により定義される。これらのうちの1つは、EN ISO 9680であり、それによれば、例えば、演色評価数(CRI:color rendering index)は85を超え、15000ルクスの最低照度が存在し、光照射野は3600~6400ケルビンの色温度を有する。更に、患者への刺激又は眼の損傷を回避するために、エッジ領域においては光照射野が十分に大きく減じられる。その結果、治療箇所のまわりの厳密な境界のある空間が物体平面において照らされる。
【0004】
上記の要件を満たす照明器具は、例えば、出願人による特許文献1から知られている。この照明器具は、各々が個別の光源と個別の光学ユニットとを有する複数の照明ユニットを有する。複数のLEDを用いて実装される照明ユニットの光源の光は、光学ユニットを介して影響を受け、いわゆる物体平面における所定の領域を照らす。当該領域は、通常はほぼ六角形になっており、照明器具の前方の特定の距離にある。この既知の照明器具の複数の照明ユニットは、物体平面における対応する領域をすべて一緒に照らすように構築されて配置され、その結果、全体として均質に照らされた光照射野が得られる。この場合に個別の照明ユニットの光が、例えば医師の腕部又は別の方法によって影になっても、光照射野は、影になっていない照明ユニットによってそれまで通りに照明される。このように、検査対象領域への照明が、実質的に影になることなく実現されることが確保される。
【0005】
上記の既知の照明器具は、実際に繰り返し実証されてきた。但し、均質に照らされた光照射野を実現するためには個々の照明ユニットを互いに正確に位置合わせする必要があるので、この照明器具の製造は、個々の構成要素の比較的複雑な組み立てを伴う。そこからの逸脱は、光照射野のエッジ領域において明るさ又は色の望ましくない変化が発生するという結果となる。
【0006】
更なる課題は、個々の照明ユニットの位置合わせによって、対応する光束を正確に重ね合わせることができるのは、照明器具から固定的に定められた距離においてのみ、ということである。従って、光照射野の所望の均質の照明は、主として光の前方の特定の平面において取得される。対照的に、この理想的な距離から逸脱すると、光照射野の質は低下する。
【0007】
一般に、検査対象領域から予め定義された一定の距離に照明器具を設置することが実際に行われている。但し、これが常に可能であるとは限らない。従って、光照射野の質は、照明対象領域から照明器具までの距離にあまり依存しないことが望ましいであろう。
【0008】
更に、光源の光を光照射野の均一な照明に用いる一般照明を目的とする照明器具は、特許文献2から知られている。ここで用いられる光学系は、板状のコリメータと、レンズ状の構造を備えたコリメータの下流に配置された板とから構成され、全体として比較的単純な構造が実現され、それを用いることで、対称的に照明される光照射野が実現される。
【0009】
冒頭で述べたように、例えば検査対象の患者の眩惑を回避するために、光照射野は比較的厳密に制限されるべきである。これは、照明が実際に特定の所定領域の範囲内でのみ行なわれるべきであり、対照的に、周辺の領域は照明されるべきではない、ということを意味している。但し、過度の輝度差は、人間の目の順応機能を過度に緊張させるので、観察者を疲労させるという影響を与え得る、ということが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許第2 469 159号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0147041号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の側面に関して最適化される医療用照明器具を提供するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本目的は、請求項1の特徴を有する医療用照明器具、特に歯科治療用照明器具により実現される。本発明の有利な改良は、従属請求項の主題である。
【0013】
特許文献1が開示している解決策と比較した、本発明による照明器具の1つの本質的な違いは、本照明器具が、単一の本質的に点状のLED光源を有する単一の照明ユニットを有する、ということである。本件において、これは単一のLED又はコンパクトなLEDクラスタとすることができる。但し、光照射野の効率的で且つ均一な照明を実現するために、上記で説明したような、複雑な組み立てと位置合わせが必要となり得るような複数の照明ユニットは提供されない。代わりに、単一の点状のLED光源により発せられた光は、光学的方法を用いることで、光照射野の均質で且つ均一な照明を実現するために特定の方式において影響を受けるが、照明器具から照明対象領域までの距離にあまり依存しない。本件では、光学手段は、コリメータとカバープレートとを有し、両方の構成要素は、導光の構造及び要素を特定の方式で備える。これにより、コンパクトな構造でありながら、光照射野の最適化された照明を実現できる。
【0014】
更に、特許文献1又は特許文献2の解決策とは異なり、光照射野(既に述べたように通常は均質に照らされる)のエッジ領域における輝度勾配が追加的に影響を受ける。この目的のために、光学手段は、光照射野が1つの方角に非対称的に広がるように構築される。
【0015】
従って、本発明によれば、物体平面に光照射野を生成するための照明手段と光学手段とを有する照明ユニットを有する、手術野の口腔内照明のための医療用照明器具、特に歯科治療用照明器具が提案される。本件では、照明手段は、本質的に点状のLED光源により形成され、光学手段は、板状のコリメータとカバープレートとを有し、
・コリメータは、LED光源とは逆側に光屈折構造を備える中央領域と、中央領域を囲み、LED光源に面する側に全反射用の構造を備える外側領域とを有し、
・カバープレートは、複数の単一レンズを有するレンズ構造を備える。各レンズは、コリメータにより出射され、レンズに入射する光を物体平面上に投射する。
コリメータの中央領域の、LED光源に面する後側は、1つの方角に非対称的に光照射野を広げるように、コリメータの平面(ひいては物体平面)に対して傾斜を有する部分表面を備える。
【0016】
従って、光学系の両方の構成要素は、LED光源により出射される光に最適な影響を及ぼすように特別の方式で設計される。本発明によるコリメータの設計は、白色光LED光源により出射される光の特別の組成が、光が出射される角度に依存する、ということを考慮に入れる。白色光LEDの既知の現象は、LEDの表面に対して本質的に垂直に出射される光は、概して高い色温度、それ故に、わずかな青みを帯びた成分を有し、横方向に強く出射される光は、低い色温度を持ち、従って、わずかに黄色がかったように見える、ということである。本発明によるコリメータの設計は、この効果を考慮し、一方では、LED光源から本質的に垂直に出射される光に起因する中央の光照射野が形成され、他方では、LED光源から横方向に出射される光により外側の光照射野が形成されることを確保する。結局、カバープレートの設計により実現される中央及び外側の光照射野の対応する重ね合わせにより、最終的な光照射野が実際に均一且つ均質に照明され、色変化又は色変化がエッジ領域において発生しない、ということが確保される。同時に、本発明によって設計された光学系との組み合わせで単一の光源を使用することで、光照射野の均一な照明が光までの距離にそれほど強く依存しないということが確保され、そのため、従来技術で知られている上記課題が回避される。
【0017】
本発明による光照射野の非対称的な広がりは、更に、例えば、光照射野の上部及び下部エッジにおける輝度勾配に影響を与える。エッジ領域における輝度低下は、特に下部領域においてあまり強く現れず、従って、反対側のエッジ領域よりも強い輝度コントラストが生じることが少なくなる。従って、周囲に対する照明領域のはっきりとした境界が存在するので、光照射野の上部エッジ領域において、患者の望ましくない眩惑は、依然として回避される。同時に、反対側のエッジ領域では過度に強いコントラストが回避され、それにより、観察者、例えば主治医の疲労感が軽減される。
【0018】
コリメータの中央領域の、LED光源に面する後側が、コリメータの平面(ひいては物体平面)と比較して傾斜を有する複数の部分表面を備えることにより、光照射野の非対称的な広がりが取得される。
【0019】
特に、複数の部分表面の少なくともの一部、好ましくはそれらのすべてが、ある軸まわりに各々傾斜されるように提供されることができる。上記軸は、コリメータ(40)の平面(E3)内にあり、非対称的な広がりの方向に本質的に垂直である。光照射野の非対称的な広がりを実現するための代替的な又は追加的なオプションは、更に、レンズ構造を形成する複数のレンズの少なくとも一部が、非対称的な広がりの方向に本質的に垂直な軸まわりにコリメータの平面に対して傾斜される、とすることができる。
【0020】
好ましくは、複数の部分表面は、複数の帯状の表面領域により形成される。各表面領域は、各々の傾斜の軸に沿って、非対称的な広がりの方向に本質的に垂直に延びる。帯状の表面領域は、更に、非対称的な広がりの方向に対して凹状に湾曲されることができる。複数の帯状の表面領域は、各々、特に好ましくは、ある平面に対して対称的に形成される。上記平面は、コリメータの平面に垂直であり、且つ、非対称的な広がりの方向に平行に延びる軸に沿う。この対策により、幅の観点において、光照射野の、対称的な、一定の広がりが実現される。
【0021】
帯状の部分表面の代替えとして、タイル状の部分表面も考えられる。このタイル状の部分表面は、コリメータの中央領域の、LED光源に面する後側をマトリックス状に覆う。複数のタイル状(訳注:帯状とすべき誤記)の部分表面の上記の凹状の設計と同様に、複数のタイル状の部分表面の少なくとも一部は、非対称的な広がりの方向に平行に延びる軸まわりに、コリメータの平面に対して傾斜されることができる。特に、複数のタイル状の部分表面の大部分は、ある平面に対して対称的に配置される。上記平面は、コリメータの平面に垂直であり、且つ、非対称的な広がりの方向に平行に延びる軸に沿う。この対策により、幅の観点では、光照射野の一定の広がりが実現される。
【0022】
コリメータの中央領域の光屈折構造は、好ましくは、いわゆるフレネル構造を形成する。更に、好ましくは、全反射用に設計されたコリメータの構造は、コリメータの平面に垂直な投射において環状に中央領域を包囲する、LED光源に面する更なるフレネル構造を形成する。コリメータの構造のこの設計は、原理的にはディスクのようにそれを設計することを可能にし、それにも関わらず、LED光源の光に効率的に影響を及ぼすことができる。このように、照明ユニット全体のコンパクトな構築が可能になる。本件では、コリメータの中央領域の光屈折構造及び外側領域の全反射用の構造は、好ましくは、共通の回転対称性を有することができる。好ましくは、これらの構造が非球面領域を形成するように提供される。
【0023】
本発明によって使用されるカバープレートのレンズは、また、カバープレートのLED光源に面する側に好ましくは配置される。特に、カバープレートが照明器具の外側表面を形成する場合、カバープレートのLED光源とは逆側を平滑に構築することができる。これは、特に、照明器具の表面上への汚れの粒子の堆積を防ぎ、清掃を容易にする。
【0024】
コリメータと同様に、カバープレートのレンズ構造も、また、内側領域と外側領域とを有することができ、
・内側領域の複数のレンズは、コリメータの中央領域により出射される光を中央の光照射野の形で物体平面に投射するように設計され、
・外側領域の複数のレンズは、コリメータの外側領域により出射される光を外側の光照射野の形で物体平面に投射するように設計され、中央の光照射野と外側の光照射野とは、好ましくは、本質的に完全に重ねられる。
本件では、特に、内側領域又は外側領域の単一レンズが、各々対応する中央の光照射野又は外側の光照射野をそれぞれ完全に投射するように提供されることができる。この対策により、照明器具のカバープレートを介して出射される光の一部が、例えば主治医の腕部又は頭部によって遮られる場合でも、所望の領域を、完全に、依然として本質的に均質に、照明できる。
【0025】
本件では、内側領域のレンズは、本質的に正方形とすることができるが、外側領域のレンズは、非対称的な広がりの方向に平行に延びる軸よりも、非対称的な広がりの方向に垂直に延びるコリメータの軸の方向に、より大きな広がりを有する。
【0026】
従って、結局のところ、本発明を用いることで、治療領域の最適化された照明を可能にする照明器具が提供されるが、照明器具の発光ユニットは、比較的少数の構成要素を有し、その結果、照明器具全体の製造及び組み立てが簡略化される。それでいて、特に、光照射野の照明の質は、照明器具までの距離にあまり強く依存しない、という利点が得られる。
【0027】
本発明は、添付の図面に基づいて、以下に、より詳細に説明される。
図面は以下の如く。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明により設計された照明ユニットが用いられる、医療用照明器具の透視図を示す。
図2】本発明による照明器具を用いることで実現可能な光照射野を概略的に示す。
図3】第1の好ましい実施形態による照明ユニットの様々な構成要素の実例を示す。
図4図3のコリメータの部分領域の拡大図を示す。
図5】コリメータの部分領域を再度拡大した更なる図解を示す。
図6】コリメータの、LED光源とは逆側に面している前側を示す。
図7】コリメータの、LED光源に面している後側を示す。
図8】第2の好ましい実施形態による照明ユニットの様々な構成要素の図解を示す。
図9図8のコリメータの部分領域の拡大図を示す。
図10】第2の好ましい実施形態によるコリメータの更なる断面図を示す。
図11】第2の好ましい実施形態によるコリメータの更なる断面図を示す。
図12】第2の好ましい実施形態による、コリメータの、LED光源とは逆側に面している前側を示す。
図13】第2の好ましい実施形態による、コリメータの、LED光源に面している後側を示す。
図14】レンズ構造を備えるカバープレートの図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、概して参照符号100が与えられた医療用照明器具、特にそれを用いることで歯科作業空間の手術野が照明される歯科治療用照明器具の透視図を示す。ここでの照明器具100は、本発明により設計されており、従って、以下に詳細に説明される照明ユニットを装備する。但し、当然ながら、照明器具の外形は、異なるように設計されても良い。ここでは、図1における図解は、本発明による照明ユニットの光学部品の後の説明で参照される平面及び方向を図解するために主として用いられる。
【0030】
基本的に、照明器具100は、照明ヘッド110を有する。照明ヘッド110は、関節アーム105(詳細に図示せず)上に調節可能に配置されて操作領域上で所望の方式で位置合わせできるようになっている。本件では、照明ヘッド110のハウジング111は、その調整性のための2つの横方向ハンドル112を有しており、それにより、照明器具100の手動の位置合わせが可能になっている。
【0031】
図1による図解においては、照明ヘッド110の向きは、照明器具100の光学系の主軸に対応する軸Aに沿って本質的に水平に、照明器具100の前方に位置する領域に向けられるようなものである、と仮定する。この図解において、図1に示す平面E2は、水平に配置されており、平面E1が、それに垂直で且つ光学系Aの主軸を通って延びることが示されている。平面E1及びE2内に延びる2つの光軸I1及びI2と、光軸Aとは、それぞれ互いに直交する。既に述べたように、当然ながら、照明ヘッド110は、使用中に旋回されて、平面E2が水平に整列せず、斜め下方に延び、又は傾斜する場合がある。これは、特に、横たわった姿勢にある患者の上方に照明器具100が位置する場合に当てはまるだろう。但し、以下の説明では、平面E2が水平に位置合わせされているものと仮定される。
【0032】
従って、本発明による照明器具100を用いることで、図1及び図2に概略的に示す光照射野200が、いわゆる物体平面O(図1及び図3を参照)における照明器具100の前の特定の領域において実現されることになる。本件において、物体平面Oは、以下でより詳細に説明するコリメータの平面E3と平行であり、それ故に、それとともに、光軸Aに対して垂直である。コリメータE3(訳注:E3は誤記)の平面E3と物体平面Oとの距離(ひいては、照明器具100と光照射野200との距離)が、図に示すよりも実際には大きくなる、ということに留意するべきである。既に述べたように、以下の照明器具100の光学部品の設計の説明では、光軸Aが水平に延びており、従って、物体平面Oと平面E3とは垂直に配置されているものと仮定される。但し、光軸Aは、照明器具100の実際の使用中における照明ヘッド110の向きに応じて、傾斜し、極端なケースでは垂直下方になることもあり、その場合には、様々な平面の向きも、対応するように変化する。
【0033】
ここでは、光照射野200は、わずかに丸みを帯びているが、本質的には矩形の形状を有している。光照射野200は、軸O1に沿う垂直方向よりも軸O2に沿う水平方向に延びる。本件において、本発明による1つの特別な特徴は、より詳細に以下に説明するように、光学手段の特別な設計により、照明器具100の発光が、1つの方向(図解した例では垂直方向)に、わずかに非対称的に広がる、ということである。図2において光照射野200を概略的に示す線によって示すように、光照射野200は、その上部エッジ領域201において、周囲から明確に区別されており、これにより、光照射野200から照明されていない周囲への遷移において高い輝度勾配が存在する。既に述べたように、この明確な境界は、検査対象の患者の眩惑を回避するために用いられ、特に歯科の検査又は治療において本質的な役割を果たす。対照的に、反対側の下側202では、好ましくは、光の放出はわずかに広がり、その結果、小さい輝度勾配が存在する。従って、光照射野200は、下側に向かってより緩やかに広がっていき、例えば、医師の全体的な視野において、高い輝度コントラストの割合を低減させる。このような強い輝度コントラストは、最終的に人間の目に疲労する順応を強いるので、この対策により、歯科医は、より快適に作業ができる。但し、これらのエッジ領域はさておき、光照射野200は、その全体の広がりに渡ってできるだけ均質に且つ均一に照明されることが意図されている。これは照明器具100までの距離とは本質的に無関係に行なわれるべきである。より詳細に以下に説明するように、この効果は、本発明による照明ユニットの設計を用いることで実現される。
【0034】
第1の実施形態による照明器具100の内部に設けられる照明ユニット10の光学構造は、図3に示される。本質的な複数の構成要素は、まず、1つの点状のLED光源21(訳注:原文ではLED-Lichtquelle 21)として形成された複数の照明手段20である。これらは、1つの対応する回路基板22上に配置される。LED照明手段21(訳注:原文ではLED-Leuchtmittel 21であり、LED-Lichtquelle 21と同様に、LED光源と訳すことも可能。)は、1つの本質的に点状の単一光源を形成する。従って、それは、単一の高性能LED、又は複数のLEDから構成される比較的コンパクトに設計されたLEDクラスタのいずれかである。いずれの場合においても、LED光源21は、所望の色温度を有する白色光を出射するように設計される。
【0035】
比較的広い角度範囲で照明手段20によって出射される光に影響を及ぼす光学系30は、2つの構成要素から構成される。一方は、コリメータ40である。他方は、光の出射方向の観点においてコリメータ40の下流に位置するカバープレート50である。このプレートは、図解した好ましい実施形態においては、わずかに湾曲して、特にわずかに凹状に湾曲して、構築されるが、平面的又はその他の設計とされることもあり得る。コリメータ40とカバープレート50とは両方とも、光透過性材料、特にプラスチック材料から構成されており、良好な光影響特性を有し、外部の影響、特に湿気及び同様のものに耐性がある。
【0036】
本発明によれば、コリメータ40は、上記の平面E3を画定する一体型の本質的に板状の構成要素によって形成され、2つの領域に分割される。最初の、光屈折領域42は、本件では、コリメータ40の幾何中心に設けられており、また、LED光源21とは逆側に光屈折構造43を有する。この中央領域42の役割は、対応する光束を中央の光照射野に変換し、その後、カバー50を介して出射させることである。
【0037】
外側領域46は、中央領域42を囲んでいる。ここでは、全反射によって光の向きが変えられる。本件では、対応する構造48は、LED光源21に面する側に配置され、第2の外側の光照射野を生成する。これもカバー50を介して出射される。そして、最終的に所望の均一の光照射野200は、中央の光照射野と外側の光照射野の重ね合わせによって実現される。この重ね合わせは、以下において詳細に説明する拡張構造によって実現される。拡張構造は、カバープレート50の、LED光源21に面する側に配置される。光学系30の照明手段20及び関連する構成要素40及び50によって、実質的に均一に広がる発光面が光源として実現される。その結果、最適な結像距離を離れたときに、対象とする光照射野の焦点をぼかす効果が有利に得られる。言い換えれば、光学系30は、原則としては、中央の光照射野と外側の光照射野との間の正確な重ね合わせが例えば700mmの所定の距離において実現されるような方法で構築され、これにより、対象とする光照射野は、特に均一且つ均質に照明される。但し、この理想的な距離を逸脱した場合、本件において均一な照明に関して生じる変化は、従来技術における照明器具と比較して顕著ではない。光照射野200の最適な均質の照明は、本質的には、500mmと800mmとの間の距離の範囲でも実現することができる。
【0038】
コリメータ40の設計は、図4図7において見てとることができる。既に述べたように、それは本質的に板状のプラスチック部品であり、図6及び図7に示すように、本質的に正方形の形状を有しており、大きな角度範囲に渡って出射されるLED光源21の光束を本質的に平行な光束に変換するために用いられる。この目的のために、コリメータ40の表面は、より詳細に以下に説明する特定の光影響構造を有する。
【0039】
まず、コリメータ40の、LED光源21とは逆側には、中央領域42にフレネル型構造43が設けられている。これは、コリメータ40から出る複数の光線がシステムの光学主軸Aと本質的に平行に揃うように、それらの向きを光の屈折によって曲げる。このようなフレネル構造は、既にそれ自体知られており、古典的な凸レンズと比較して、対応する光学部品の厚さを低減することができる。最終的には、特に図4及び図5において見てとれる鋸歯状構造を用いることで対応する光の極めて効率的な集束を実現することができる。鋸歯状構造は、図6において見てとれるように中心又は軸Aのまわりで回転対称性を有する。
【0040】
コリメータ40は、外側領域46を更に有する。これも、フレネル型構造48を備える。フレネル型構造48は、中央領域42を環状に囲み、照明手段20の側に設けられている。これらも、図7に示すように光学主軸Aに対して回転対称に作成され、また、より横方向に出射される複数の光線が光軸Aと平行に整列するように、複数の光線に影響を及ぼすように用いられる。但し、中央領域42のフレネル構造43が屈折によって光線に影響を及ぼすのに対し、外側領域46のフレネル構造48は、全反射によって光線に影響を及ぼす。すなわち、これらの鋸歯状構造は、光線が最初はリブ状の突起に入射することができるように構成されているものの、光線は、コリメータ40と周囲の空気との間の光学密度の差によって全反射されて、コリメータ40から照明手段20の逆側へ再び出ることを意味する。全反射構造48の側面の対応する傾斜によって、システムの光軸Aに平行に光の位置合わせが行なわれる、ということがここでも確保される。
【0041】
そして、コリメータ40によってこのように影響を受けた光は、カバープレート50によって実際の光照射野200上に投射される。この目的のために、カバープレート50は、後に詳述するレンズ構造を有する。これにより、中央の光照射野と外側の光照射野とが重ね合わされ、最終的に均質で且つ均一な照明が実現される。
【0042】
コンパクトに設計されたLED光源20(訳注:21とすべき誤記)、光屈折構造及び全反射構造を有するコリメータ40、及びカバープレート50から構成されるこれらの構成要素の協働によって、まず、最終的に得られる光照射野200は、エッジ領域において大きな輝度勾配を有することになり、周囲に対して明確に境界が定められる。これは、眩惑を回避するために、特にその上側で、すなわち、検査対象の患者の目の方向において望ましい。対照的に、反対側では、既に述べたように、治療を行う人の疲労の発生を低減するために、光照射野200のかなり曖昧な境界が存在するべきである。すなわち、光照射野200は、理想的には、下側に向かって緩やかに薄くなるような、1つの方向における非対称性を有するべきである。
【0043】
この効果を実現するために、追加的な構造が、中央領域42の、光屈折構造43とは反対側である後側に、すなわち、コリメータ40の、照明手段20の側に設けられる。この構造は、図3図7に示す第1の好ましい実施形態において、切片状の単一タイル45を複数備えている。図7で見てとれるように、これらは、マトリックス状に、中央領域42全体を外側構造46まで満たしている。これらの小平面状のタイル45は、上記の光照射野の片側の広がりを実現できるように、わずかな傾斜又は傾きを有する。特に、この目的のために、タイル45は、水平軸まわりに(又は概して、コリメータ40の平面内にあり且つ非対称的な広がりの方向に対して本質的に垂直である軸まわりに)傾斜している。すなわち、それらは、本件では、垂直軸I1又はO1に対して小さな角度をなし(図4を参照)、その結果、コリメータ40に入射する光束は下側に向かってわずかに広がる。図4及び図5で見てとれるように、ここでは、タイル45の傾斜が小さくても、光照射野200の下部エッジ領域における輝度勾配が幾分減少する。
【0044】
非対称的な光照射野の分布に係る所望の有利な効果を生じさせるために、上述した、非対称的な広がりの方向に垂直な軸のまわりにタイル45を傾けることに代えて、又は加えて、これと同様に、カバープレート50上のレンズ構造を傾斜させる、ということも考えられる。これについては、後でより詳細に説明される。
【0045】
但し、それに加えて、タイル45は、また、垂直軸I1又はO1において(又は概して光照射野の非対称的な広がりの方向に平行に延びる軸まわりに)傾斜させることもできる。それらは、好ましくは、平面E1に対して対称的に配置される。平面E1は、コリメータ40の平面E3に垂直であり、非対称的な広がりの方向に平行に延びる軸I1に沿う。これは、中央の光照射野200の水平方向の広がりに影響を及ぼし、最終的に光照射野200の均質な照明に追加的に寄与する。
【0046】
タイル45を、垂直軸まわりに(又は非対称的な広がりの方向に平行に延びる軸まわりに)更に傾け、垂直平面E1に対して対称的にしていることから、全体として、コリメータ40の中央領域42の、照明手段20に面する後側の表面は、ほぼ凹型になる。これにより、光照射野200において、より幾分均質な照明の効果が得られる。この効果は、同じ高さに位置する複数の単一のタイルを一体化して、対応する湾曲又は膨らみを有するより大きな表面を形成することによっても実現できる。それに対応する好ましい実施形態は、図8図13に示されており、以下に説明されることになるが、同等の要素には同等の参照符号が与えられる。
【0047】
本発明による照明器具100の光学系は、この第2の好ましい実施形態においても、板状のコリメータ40と、コリメータ40の下流にレンズ構造を有するカバープレート50とから構成される。コリメータ40は、ここでも中央領域42を有し、中央領域42は、LED光源21とは逆側に光屈折構造43を備えており、中央領域42を囲む外側領域46が更に設けられ、外側領域46は、LED光源21に面する側に全反射用の構造48を備える。本件では、中央領域42の構造43と環状の外側領域46の構造48とは両方とも、それらの設計及びそれらの機能に関して、図3及び図7の好ましい実施形態の構造に対応する。従って、これらの特徴に関して、第1の好ましい実施形態との差異は生じない。
【0048】
図3図7の第1の好ましい実施形態と図8図13の第2の好ましい実施形態との間の決定的な差異は、中央領域42の光屈折構造43とは反対側のコリメータ40の後側の設計である。この後側は、第1の好ましい実施形態では、上記のタイル45によりマトリック状に覆われる。
【0049】
第2の好ましい実施形態においては、複数の部分表面145が再び設けられるが、ここでは、複数の帯状の表面領域145の形態で設けられる。図1に示すように照明器具が配置されると、部分表面145それぞれは、中央領域42の左端から右端まで水平に(又は概して非対称的な広がりの方向に垂直に)延びる。ここでも、これらの帯状の表面領域145は、好ましくは中央領域42の後側を完全に覆うように配置される。
【0050】
ここでの帯状の部分表面145の本質的な機能は、タイル45と同様に、まず、本発明による光照射野200の非対称的な広がりを実現し、光照射野200の下側又は患者の目の反対側で、その反対側のエッジ領域よりも、輝度コントラストが低くなるようにすることである。この目的のために、本件でも、帯状の部分表面145それぞれは、ある軸まわりに傾斜している。この軸は、コリメータ40の平面E3内にあり、光照射野200の非対称的な広がりの方向に本質的に垂直である。第1の好ましい実施形態の図4の図解に対応する図9の断面図は、部分表面145の類似の傾斜を示している。この傾斜は、図3図7に関連して先に説明された方法と同様に、光線が影響を受ける。このコリメータ40の表面領域は、全体として、鋸歯状構造をなし、これは、図10及び図11の部分断面の2つの透視図においても見てとれる。
【0051】
さらに、帯状の表面領域145は、光照射野200の非対称的な広がりの方向に関して凹状に湾曲されている。湾曲の方向は、図11において非常に強調された両側矢印によって概略的に示されている。帯状の表面領域145の凹状の設計は、ここでも、平面E1に対して対称的な構成が生じるようなものであることが好適である。平面E1は、コリメータ40の平面E3に垂直であり且つ非対称的な広がりの方向に平行に延びる軸I1に沿う。図9の断面図では、この凹状の湾曲によって、帯状の表面領域145の奥の端部領域を見てとれる。
【0052】
上記の結果、コリメータ40の中央領域42の後側の表面設計は、全体として、図3図7の好ましい実施形態のものに対応している。但し、ここでは、同じ高さに位置する複数の単一タイルは、連続的且つ一様に延びる表面領域145(訳注:原文においては、ここでは、Oberflachenbereiche 145。他の箇所では、Flachenbereiche 145)に置き換えられる。
【0053】
図3図7の第1の好ましい実施形態との比較において、図8図13の第2の好ましい実施形態は、2つの隣接するタイル45の境界におけるエッジが無くされるので、好ましい実施形態を示す。このようなエッジは、基本的に望ましくない制御不能な光散乱の危険性を伴う。従って、第2の好ましい実施形態に従って表面を設計することによって、コリメータ40による光を、ある程度適切に制御できる。
【0054】
上述の対策は、LED光源21から出射される光のスペクトルが放射角度に依存するという状況を考慮したものである。特に、中心又は中央で出射される光は冷たく、出射角度が増加して半径方向外側に向かうにつれて暖かくなる。これは、LEDチップによって出射される青色光の経路長が、対応する色変換材料を通じて、例えば燐(訳注:原文ではPhosphor)を通じて、増加することに起因する。従って、中央の光照射野の光と外側の光照射野の光は、最初は異なる色又は色温度を持つ。但し、全体的には、カバー50を用いることで両方の光照射野の重ね合わせが最終的に実現され、均質の照明が実現される。中央のコリメーション構造の光屈折構造43と外側のコリメーション構造46の表面48とが、非球面として構築されるという事実も、光照射野の意図的な混合又は光照射野の色の均質化に寄与する。それらの形状は、ここではコリメータ40の光軸Aの中心からの距離に依存するが、図で見てとれるように、両方の構造は全体として回転対称性を有する。
【0055】
そして、コリメータ40によってこのように影響を受けた光線は、最終的にカバープレート50によって影響を受ける。カバープレート50は、コリメータ40の好ましい実施形態の双方と同じ方法で構築される。既に述べたように、カバープレート50は、若干凹状か又は平面的なように構築することができ、LED光源21に面する側にレンズ構造を有する。対照的に、照明手段とは逆側は、構造化されていないことが好ましく、それ故に、平滑であり、従って容易な清掃が可能となり、カバー50が照明器具100の外側を同時に形成する場合に特に有利である。
【0056】
コリメータ40と同様に、カバープレート50のレンズ構造も、2つのパーツで具体化される。本件でも、図8(訳注:図14の誤記)に示すように、関連する第1のレンズ53を有する第1の中央領域52と、関連する第2のレンズ58を有する外側領域56とが設けられる。この場合、レンズ構造の両方の領域は、コリメータ40の2つの領域に対応する。言い換えれば、コリメータ40の中央領域42によって影響を受ける光線は、カバーの中央レンズ領域52によって影響を受けることになり、コリメータ40の外側領域46を介して出射される光は、外側レンズ構造によって影響を受ける。
【0057】
但し、両方のレンズ構造52及び56は、各々マイクロレンズアレイとして構築され、対応する光の部分的な光束を照明対象領域に投射するための拡張構造として用いられる。この場合の単一レンズの幅に対する高さの比は、光照射野200の水平及び垂直の拡張の値を定義する。これらの値は、中央レンズ43と外側レンズ58とで若干異なるため、両方の光照射野は若干異なるように広がる。そして、これらの対策により、最終的に、約500mm~800mmの照明用の距離の範囲内で中央の光照射野と外側の光照射野とが本質的に完全に重ねられる。それにより、全体として均質に照明された光照射野200が得られる。
【0058】
本件では、カバープレート50の複数の単一レンズそれぞれは、中央の光照射野又は外側の光照射野の全体を投射するため、カバープレート50の単一レンズ又はパーツの陰影は、光照射野200における影にはならない。これもまた、照明の最適化に寄与する。図解した好ましい実施形態においては、外側領域のレンズは、中央領域のレンズと比較して異なるサイズ及び形状を有する。特に、中央領域52のレンズ53は、ほぼ正方形として構築されるが、外側領域のレンズ58は、より長方形の形状を有する。但し、これは必ずしもそうである必要はない。重要なことは、個々の光束が、全体的に完全に重ね合わせられるようにレンズによって拡張され、その結果、照明器具までの距離と実質的に関係なく均一な照明が得られる、ということだけである。結果として、所望の特性を有する均質な目的の光照射野が得られる。
【0059】
上記で説明された非対称的な光照射野の分布を実現するために、タイル45又は帯状の部分表面145の傾斜の代替えとして又はそれに加えて、レンズ構造52及び/又はレンズ構造56の一部、又はレンズ53、58のすべてが、非対称的な広がりの方向に本質的に垂直な軸まわりに、コリメータの平面E3に対して傾斜されることが考えられる。この対策は、また、光照射野200の下側202における有利な非対称的な広がりをもたらす。このため、タイル45又は帯状の部分表面145の対応する傾斜配置を任意に省略することもできる。
【0060】
このように、全体として、本発明による照明器具を用いることで、検査又は治療の対象領域に対する高品質な照明を実現することができる。この照明器具は、少数の単一の構成要素のみを含む比較的単純な構造によって特徴づけられており、既知の解決策と比較して、複数の単一の構成要素の相互の向きや配置の調整に関する重要性が著しく低い。
【要約】
医療用照明器具(100)は、光照射野(200)を生成するために、照明手段(20)と光学手段(30)とを有する照明ユニット(10)を有する。照明手段(20)は、本質的に点状のLED光源(21)によって形成される。光学手段(30)は、板状のコリメータ(40)とカバープレート(50)とを有する。コリメータ(40)は、LED光源(21)とは逆側に光屈折構造(43)を備える中央領域(42)と、中央領域(42)を囲み、LED光源(21)に面する側に全反射用の構造(48)を備える外側領域(46)を有する。カバープレート(50)は、コリメータ(40)により出射される光を物体平面上に投射する複数の単一レンズを有するレンズ構造を備える。コリメータの中央領域のLED光源に面する後側は、1つの方向に非対称的に光照射野(200)を広げるように、コリメータ(40)の平面の(E3)に対して傾斜する複数の部分表面(45、145)を有する。
【選択図】図2
図1
図2
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図7
図8
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図10
図11
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図14