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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】シート供給装置及び積層体の作製方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 35/06 20060101AFI20240912BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20240912BHJP
   B65H 29/52 20060101ALI20240912BHJP
   B65H 3/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B65H35/06
B65H5/06 F
B65H29/52
B65H3/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021043789
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143331
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】平川 清伸
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-500282(JP,A)
【文献】特開2018-100119(JP,A)
【文献】特開2001-310848(JP,A)
【文献】特開昭60-49350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 35/06
B65H 5/06
B65H 29/52
B65H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレット上でガラス板と保護シートとを重ね合わせて積層体を作製するために、前記パレットに前記保護シートを供給するシート供給装置であって、
帯状保護シートを長手方向に送給するための送給経路と、
前記送給経路上に設けられた切断地点にて前記帯状保護シートを幅方向に切断することで、前記帯状保護シートから前記保護シートを得るための切出機構と、
を備え、
前記切出機構が、
前期切断地点よりも上流側に配置され、前記帯状保護シートを下流側に送り出すことで、前記帯状保護シートの先頭部を前記切断地点よりも下流側に進出させる送り手段と、
前記切断地点にて、前記帯状保護シートを一方面側から切断するカッターと、
前記切断地点よりも下流側に配置され、前記帯状保護シートを前記一方面側から押える押え部材と、
を備え
前記送給経路を間に挟んで前記押え部材と対向して配置され、且つ、前記帯状保護シートの送りを、前記一方面の裏面となる他方面側から案内するガイド部材を備え、
前記ガイド部材が、前記帯状保護シートに面する平坦な案内面を備えた板状部材であり、
前記押え部材が、相対的に上流側に配置された上流側部位と、相対的に下流側に配置された下流側部位と、前記上流側部位と前記下流側部位との間に位置する中間部位と、を有すると共に、
前記上流側部位および前記下流側部位は、下流側に移行するに連れて前記ガイド部材に接近するように前記ガイド部材に対して傾いており、
前記中間部位は、前記上流側部位および前記下流側部位よりも前記ガイド部材に対する傾きが小さいことを特徴とするシート供給装置。
【請求項2】
前記押え部材が、前記帯状保護シートの送り方向に沿って延びた複数の棒状部材であり、
前記複数の棒状部材が、前記帯状保護シートの幅方向に沿って相互に間隔を空けて並べられていることを特徴とする請求項1に記載のシート供給装置。
【請求項3】
前記ガイド部材と前記押え部材との相互間距離が、前記押え部材の上流端に対応する位置で最長となることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート供給装置。
【請求項4】
前記ガイド部材と前記押え部材との相互間距離が、前記押え部材の下流端に対応する位置で最短となることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のシート供給装置。
【請求項5】
前記切出機構が前記パレットの前後方向に沿って動作可能であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のシート供給装置。
【請求項6】
パレット上にガラス板と保護シートとを重ね合わせて積層体を作製する方法であって、
前記保護シートは、請求項1~のいずれかに記載のシート供給装置により供給されることを特徴とする積層体の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パレット上でガラス板と保護シートとを重ね合わせて積層体を作製するために、パレットに保護シートを供給するシート供給装置、及び積層体の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ用のガラス基板や、太陽電池用のガラス基板をはじめとする各種ガラス板を輸送・保管するための形態として、パレット上でガラス板と保護シートとを縦姿勢で重ね合わせて積層体を作製し、積層体の状態で梱包する形態が知られている。
【0003】
積層体を作製するにあたり、パレットへの保護シートの供給には、たとえば特許文献1に開示されるようなシート供給装置が使用される。ここで、図4に基づいてシート供給装置の一例について説明する。
【0004】
図4に示すように、シート供給装置100は、保護シートSaの元となる帯状保護シートSを送給するための送給経路200と、送給経路200上の切断地点200xで帯状保護シートSを切断して保護シートSaを切り出すための切出機構300と、切り出した保護シートSaをパレット400に移送してガラス板Gと重ね合わせる移送機構500とを備えている。
【0005】
送給経路200の上流端には、帯状保護シートSがロール状に巻かれたシートロールSRが配置されている。このシートロールSRから順次に引き出された帯状保護シートSが、送給経路200に沿って下流側に送給される。送給経路200には、シートロールSRから帯状保護シートSを引き出すためのニップロール201や、帯状保護シートSの引き出し量を調整するためのダンサーロール202や、帯状保護シートSを経路に沿わせるためのガイドロール203が配置されている。
【0006】
切出機構300は、切断地点200xよりも上流側に配置されて帯状保護シートSを下流側に送り出すニップロール301と、切断地点200xに配置されて帯状保護シートSを切断するカッター302とを備えている。移送機構500は、保護シートSaの四隅をそれぞれ把持する四体のチャック500aを備えている。
【0007】
ニップロール301は、帯状保護シートSから保護シートSaを切り出すための準備として、保護シートSaの長さ分だけ帯状保護シートSを切断地点200xよりも下流側に送り出した状態にする。なお、帯状保護シートSの送り出された部位(後に保護シートSaとして切り出される部位)は、ニップロール301による送り出しが開始されてから保護シートSaの切り出しが開始されるまでの間に、順次に四体のチャック500aによって把持される。そして、送り出された部位を四体のチャック500aが把持した状態の下、カッター302が帯状保護シートSの全幅を切断して保護シートSaを切り出す。
【0008】
保護シートSaの切り出し後には、移送機構500がパレット400に向けて保護シートSaを移送すると共に、積層体Lの前面に位置したガラス板Gに保護シートSaを重ね合わせる。ここで、保護シートSaが切り出された後のニップロール301は、次回の保護シートSaの切り出しに備えて、同図に示すように、切り出し後の帯状保護シートSの先頭部S1を切断地点200xよりも下流側に進出させてから停止する。その後、次回の切り出しが開始されると、ニップロール301は、再び保護シートSaの長さ分だけ帯状保護シートSを切断地点200xよりも下流側に送り出した状態にする。この操作が所定の枚数のガラス板Gが積層されるまで繰り返される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2014-223965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のシート供給装置100では、ニップロール301よりも下流側に存在する帯状保護シートSの部位が、ニップロール301による吊り下げのみで支持された状態になっている時点がある。保護シートSaが切り出された後のニップロール301が、次回の保護シートSaの切り出しに備えて、帯状保護シートSの先頭部S1を切断地点200xよりも下流側に進出させる時点(図4に示した時点)では、ニップロール301による吊り下げのみで支持された状態にある。
【0011】
上述のごとくニップロール301に吊り下げられた部位は、何ら拘束された状態にないことから、容易に浮き上がったり、揺動したりする。その結果、当該部位が不当にカッター302と接触してしまい、本来切断を意図していない箇所で帯状保護シートSが切断されてしまうという問題があった。
【0012】
なお、上述のような問題は、例えば、気流の影響によって発生したり、切出機構に前後動作(パレットの前後方向に沿った動作)を行わせるような場合に、動作の影響によって上記の吊り下げられた部位が浮き上がったり、揺動したりすることで発生しうる。
【0013】
上述の事情に鑑みて解決すべき技術的課題は、帯状保護シートから保護シートを切り出したのちパレットに供給するシート供給装置において、意図していない箇所での帯状保護シートの切断を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するためのシート供給装置は、パレット上でガラス板と保護シートとを重ね合わせて積層体を作製するために、パレットに保護シートを供給する装置であって、帯状保護シートを長手方向に送給するための送給経路と、送給経路上に設けられた切断地点にて帯状保護シートを幅方向に切断することで、帯状保護シートから保護シートを得るための切出機構と、を備え、切出機構が、切断地点よりも上流側に配置され、帯状保護シートを下流側に送り出すことで、帯状保護シートの先頭部を切断地点よりも下流側に進出させる送り手段と、切断地点にて、帯状保護シートを一方面側から切断するカッターと、切断地点よりも下流側に配置され、帯状保護シートを一方面側から押える押え部材と、を備えることを特徴とする。
【0015】
本シート供給装置では、帯状保護シートの送給経路上に設けられた切断地点よりも下流側において、押え部材により帯状保護シートを一方面側から押えることができる。これにより、送り手段が帯状保護シートを下流側に送り出し、帯状保護シートの先頭部を切断地点よりも下流側に進出させた際に、以下のような作用が得られる。すなわち、この際に送り手段よりも下流側に存在する帯状保護シートの部位(以下、送り手段下部位と表記)について、送り手段下部位が一方面側に浮き上がったり、一方面側に揺動したりすることを押え部材により規制することが可能となる。従って、送り手段下部位の一方面側に存在するカッターに対し、送り手段下部位が意図せず接触してしまう事態を回避できる。その結果、意図していない箇所での帯状保護シートの切断を防止することが可能となる。
【0016】
上記の構成において、押え部材が、帯状保護シートの送り方向に沿って延びた複数の棒状部材であり、複数の棒状部材が、帯状保護シートの幅方向に沿って相互に間隔を空けて並べられていることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、帯状保護シートにおいて押え部材(複数の棒状部材)と接触する部分の面積を可及的に低減できる。従って、押え部材との接触に起因した帯状保護シートの汚染を防止することが可能となる。これにより、帯状保護シートから切り出した保護シートと重ね合わされるガラス板の汚染についても回避できる。
【0018】
上記の構成において、送給経路を間に挟んで押さ部材と対向して配置され、且つ、帯状保護シートの送りを、一方面の裏面となる他方面側から案内するガイド部材を備え、ガイド部材が、帯状保護シートに面する平坦な案内面を備えた板状部材であることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、ガイド部材によって送りを案内される帯状保護シートが幅方向に沿って湾曲変形したり、波打つように変形したりすることを防止できる。これにより、カッターによる保護シートの切り出しを正確に行うことが可能となる。さらに、帯状保護シートの湾曲変形や波打ち変形を防止できることで、以下のような効果も得られる。すなわち、カッターにより保護シートを切り出す際には、カッターよりも下流側に存在する帯状保護シートの部位(以下、カッター下部位と表記)について、カッター下部位の幅方向両端をそれぞれチャックに把持させ、切り出しの補助をさせる場合が多い。このとき、帯状保護シート(カッター下部位)が幅方向に沿って湾曲変形したり、波打つように変形したりしていると、チャックによる把持が失敗するおそれがある。しかしながら、本構成によれば、帯状保護シートの湾曲変形や波打ち変形を防止できることから、上述の失敗を確実に回避することが可能となる。加えて、ガイド部材が板状部材であることで、帯状保護シート(送り手段下部位)に向かう気流をガイド部材により遮ることができる。そのため、送り手段下部位が意図せずカッターに接触してしまう事態を更に回避しやすくなる。
【0020】
上記の構成において、ガイド部材と押え部材との相互間距離が、押え部材の上流端に対応する位置で最長となることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、ガイド部材と押え部材との両者間を帯状保護シートに通過させるにあたり、両者間において帯状保護シートが詰まるのを抑制することが可能となる。
【0022】
上記の構成において、ガイド部材と押え部材との相互間距離が、押え部材の下流端に対応する位置で最短となることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、送り手段下部位の表面側への浮き上がりや揺動を、押え部材により一層的確に規制することが可能となる。その結果、送り手段下部位が意図せずカッターに接触してしまう事態を一層回避しやすくなる。
【0024】
上記の構成において、押え部材が、相対的に上流側に配置された上流側部位と、相対的に下流側に配置された下流側部位と、上流側部位と下流側部位との間に位置する中間部位と、を有すると共に、上流側部位および下流側部位は、下流側に移行するに連れてガイド部材に接近するようにガイド部材に対して傾いており、中間部位は、上流側部位および下流側部位よりもガイド部材に対する傾きが小さいことが好ましい。
【0025】
このようにすれば、上述した帯状保護シートの詰まりを防止する効果と、送り手段下部位の一方面側への浮き上がりや揺動を規制する効果とを、好適に両立させることができる。
【0026】
上記の構成において、切出機構がパレットの前後方向に沿って動作可能であってもよい。
【0027】
本シート供給装置によれば、上述のように送り手段下部位の一方面側への浮き上がりや揺動を規制できる。そのため、切出機構の前後動作に起因した浮き上がりや揺動についても当然に規制することが可能である。従って、切出機構が前後動作をする場合には、本装置による作用・効果をより好適に享受することが可能となる。
【0028】
上記の課題を解決するための積層体の作製方法は、パレット上にガラス板と保護シートとを重ね合わせて積層体を作製する方法であって、保護シートは、上記のいずれかのシート供給装置により供給されることを特徴とする。
【0029】
これにより、上記のシート供給装置に係る説明で既述の作用・効果と同様の作用・効果が得られる。
【発明の効果】
【0030】
本開示に係るシート供給装置及び積層体の作製方法によれば、意図していない箇所での帯状保護シートの切断を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】シート供給装置を示す側面図である。
図2】シート供給装置における切出機構の周辺を示す側面図である。
図3】シート供給装置を示す正面図である。
図4】従来における課題を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施形態に係るシート供給装置及び積層体の作製方法について添付の図面を参照しながら説明する。ここで、実施形態の説明で参照する各図面に表したX方向、Y方向、及びZ方向は互いに直交する方向である。
【0033】
本実施形態に係る積層体の作製方法の実行には、図1に示すシート供給装置1を用いる。図1に示すように、シート供給装置1は、パレット2上でガラス板Gと保護シートSaとを縦姿勢で交互に重ね合わせて積層体Lを作製するために、パレット2に対して繰り返し保護シートSaを供給する装置である。なお、保護シートSaとしては、たとえば発泡樹脂シートやガラス合紙等が使用される。
【0034】
シート供給装置1は、保護シートSaの元となる帯状保護シートSをその長手方向に沿って送るための送給経路3と、帯状保護シートSから保護シートSaを切り出すための切出機構4と、切り出した保護シートSaをパレット2に移送してガラス板Gと重ね合わせるための移送機構5とを備えている。
【0035】
送給経路3の上流端には、帯状保護シートSがロール状に巻かれたシートロール(図示省略)が配置されている。このシートロールから順次に引き出された帯状保護シートSが、ガイドロール6等に案内されながら送給経路3に沿って下流側に送られる。一方、送給経路3上の下流端付近には、切出機構4により帯状保護シートSを幅方向(Z方向)に切断する地点である切断地点3xが設けられている。
【0036】
切出機構4は、ニップロール7と、カッター8と、切断補助部材9と、ガイド部材10と、押え部材11とを備えている。ここで、図1及び後に参照する図2,3には、切出機構4が帯状保護シートSを切断するための動作を開始する前の初期状態を示している。
【0037】
ニップロール7は、切断地点3xよりも上流側に配置されている。このニップロール7は、帯状保護シートSを表裏両側から挟みながら回転して下流側に送り出すことで、帯状保護シートSの先頭部S1を切断地点3xよりも下流側に進出させる送り手段として機能する。図1に示した初期状態では、ニップロール7よりも下流側に存在する帯状保護シートSの部位が、ニップロール7により吊り下げられた状態にある。ニップロール7による帯状保護シートSの送り出しは、制御手段(図示省略)により制御されており、帯状保護シートSの切断に際し、送り出しおよび送り出しの停止を繰り返す。
【0038】
ここで、本実施形態では、送り手段としてニップロール7を採用しているが、帯状保護シートSを下流側に送り出すことが可能なものであれば、ニップロール7以外のものを送り手段して採用してもよい。
【0039】
カッター8は、切断地点3xに配置され、帯状保護シートSを表面Sb側(一方面側)から切断する。切断補助部材9は、送給経路3を間に挟んでカッター8と対向して配置され、カッター8による切断を補助する。ガイド部材10は、切断地点3xよりも下流側に配置され、帯状保護シートSの送りを裏面Sc側(他方面側)から案内する。押え部材11は、送給経路3を間に挟んでガイド部材10と対向して配置され、帯状保護シートSを表面Sb側から押える。なお、カッター8、切断補助部材9、ガイド部材10、及び押え部材11の詳細については後述する。
【0040】
切出機構4は、パレット2の前後方向(X方向)に沿って動作が可能であり、これにより同図に実線で示す稼働位置P1と、二点鎖線で示す退避位置P2との間で、所在位置の切り換えが可能となっている。退避位置P2は、稼働位置P1を基準として後方側に位置している。
【0041】
本実施形態においては、積層体Lを構成するガラス板Gが薄く、ガラス板Gが撓みやすいことに由来して、切出機構4に前後動作する機能を設けている。以下、この点について詳述する。
【0042】
本実施形態では、ガラス板Gをパレット2に搬入して積載する搬入装置12が以下のような動作を行う。まず、縦姿勢にしたガラス板Gの上辺部Gaを把持し、ガラス板Gを吊り下げた状態の下、前方側からパレット2にガラス板Gを搬入する。その後、ガラス板Gの下辺部Gbをパレット2の積載面2aに載置した上で上辺部Gaの把持を解除する。上辺部Gaの把持を解除されたガラス板Gは、自重により積層体L側に倒れて積層体Lの前面Laにもたれ掛かる。これによりガラス板Gの積載が完了する。
【0043】
ここで、ガラス板Gが薄くて撓みやすいと、上辺部Gaの把持を解除されたガラス板Gが、撓みに起因して積層体L側(後方側)ではなく前方側に倒れてしまうおそれがある。そこで、前方側への倒れを防止するため、本実施形態では、ガラス板Gを積層体Lの前面Laに可能な限り近接させた上で、搬入装置12が上辺部Gaの把持を解除する。
【0044】
上述のごとくガラス板Gと積層体Lの前面Laとを近接させるには、切出機構4の稼働位置P1、又は、稼働位置P1よりも後方側まで、搬入装置12を移動させる必要がある。このとき、前方側から移動してくる搬入装置12が切出機構4と衝突しないように、ガラス板Gの積載時には切出機構4を一時的に稼働位置P1から退避位置P2に後退させておく。そして、搬入装置12によるガラス板Gの積載が完了すると、一旦後退させた切出機構4を再び退避位置P2から稼働位置P1まで前進させる。
【0045】
切出機構4の前後動作は、上述のとおり薄いガラス板Gの撓みに対応するための動作であることから、積層体Lを構成するガラス板Gが厚い場合には、切出機構4が前後動作する機能は省略してもよい。切出機構4が前後動作する機能は、一例としてガラス板Gの厚みが0.6mm以下の場合に設けることが好ましい。
【0046】
移送機構5は、矩形をなす保護シートSaの四隅をそれぞれ把持する四体のチャック5aを備えている。なお、図1には、保護シートSaの幅方向における一方側端部を把持する二体のみを示している。移送機構5は、保護シートSaをパレット2に移送してガラス板Gと重ね合わせるという既述の機能の他、帯状保護シートSの切断を補助する機能を有する。詳述すると、カッター8が帯状保護シートSを切断する際に、ニップロール7によって切断地点3xよりも下流側に送り出された帯状保護シートSの部位(後に保護シートSaとして切り出される部位)を四体のチャック5aがそれぞれ把持し、当該部位を支持した状態とする。このため、カッター8による帯状保護シートSの切断が完了した時点で、切り出された保護シートSaの四隅が既に各チャック5aに把持された状態となる。
【0047】
図2に示すように、カッター8は、同図に実線で示す待機位置P3と、二点鎖線で示す進出位置P4との間を移動することが可能である。待機位置P3は帯状保護シートSの送給経路3から離間した位置であり、進出位置P4は帯状保護シートSを切断するための位置である。カッター8は、帯状保護シートSを切断する際に、待機位置P3から進出位置P4に移動することで帯状保護シートSに切り込む。Z方向に沿ったカッター8の全長は、帯状保護シートSの全幅よりも長くなっている(図3を参照)。これにより、カッター8は帯状保護シートSの全幅を同時に切断することが可能である。
【0048】
切断補助部材9は、カッター8が帯状保護シートSを切断する際に、帯状保護シートSを裏面Sc側から支持する支持面9aを二箇所に有している。二箇所の支持面9aは、送給経路3に沿って上下に間隔を空けて配置されている。二箇所の支持面9aの各々は、上下方向(Y方向)に対して傾斜している。二箇所の支持面9aの相互間には、帯状保護シートSに面した開口を有する空間9bが形成されている。空間9bは、進出位置P4に移動したカッター8の刃先を収容することが可能である。
【0049】
ガイド部材10は、切断補助部材9の下流側(下方)に隣接して配置されている。このガイド部材10は、帯状保護シートSに面する平坦な案内面10aを備えた板状部材である。案内面10aは上下方向に対して傾斜している。なお、板状部材の材質は特に限定されるものではないが、本実施形態ではステンレス板を使用している。Z方向に沿ったガイド部材10の全長は、帯状保護シートSの全幅よりも短くなっている(図3を参照)。そのため、帯状保護シートSの幅方向両端部は、それぞれガイド部材10から食み出している。このガイド部材10から食み出した部位は、移送機構5のチャック5aにより把持することが可能である(図3では移送機構5は図示省略)。
【0050】
押え部材11は、ニップロール7よりも下流側に存在する帯状保護シートSの部位(ニップロール7により吊り下げられた状態にある部位)について、当該部位の表面Sb側への浮き上がりや揺動を規制する機能を有する。すなわち、気流や切出機構4の前後動作の影響により、図2に二点鎖線で示すように当該部位が表面Sb側に浮き上がったり、揺動したりしそうになった場合であっても、当該部位を表面Sb側から押えて浮き上がりや揺動を規制する。これにより、当該部位が待機位置P3で待機中のカッター8に対して意図せず接触してしまうことを回避する。
【0051】
図2及び図3に示すように、押え部材11は、帯状保護シートSの送り方向に沿って延びた複数の棒状部材13でなる。複数の棒状部材13は、カッター8の下流側(下方)に隣接して配置された状態の下、帯状保護シートSの幅方向に沿って相互に間隔を空けて並べられている。ここで、複数の棒状部材13との接触に起因した帯状保護シートSの汚染を防止しつつ、上述の浮き上がりや揺動を的確に規制するために、隣り合う棒状部材13同士の相互間の間隔Dは、200mm~800mmの範囲内とすることが好ましい。複数の棒状部材13のうち、並びの両端に配置された棒状部材13同士の間隔は、帯状保護シートSの全幅よりも短くなっている。なお、本実施形態における各棒状部材13は円形の断面形状を有する。勿論この限りではなく、断面形状が円形以外であってもよい。
【0052】
各棒状部材13は、相対的に上流側に配置された上流側部位13aと、相対的に下流側に配置された下流側部位13bと、上流側部位13aと下流側部位13bとの間に位置する中間部位13cとを有する。上流側部位13aと中間部位13c、及び、下流側部位13bと中間部位13cは、湾曲部により連結されている。なお、棒状部材13の構成を限定するものではないが、本実施形態においては、上流側部位13a、中間部位13c、及び下流側部位13bのうち、下流側部位13bが最も長くなっている。
【0053】
上流側部位13aおよび下流側部位13bは、その下流側に移行するに連れてガイド部材10に接近するようにガイド部材10の案内面10aに対して傾いている。本実施形態では、上流側部位13aと下流側部位13bとの比較において、上流側部位13aの方が案内面10aに対する傾きが大きくなっている。しかしながらこの限りではなく、上流側部位13aと下流側部位13bとの両者の傾きの大きさが同一であってもよいし、両者間での傾きの大小関係が本実施形態とは逆になっていてもよい。中間部位13cは、上流側部位13aおよび下流側部位13bよりも案内面10aに対する傾きが小さくなっており、本実施形態では案内面10aと平行(案内面10aに対する傾きが0°)になっている。
【0054】
ガイド部材10の案内面10aと棒状部材13との相互間距離は、棒状部材13の上流端(上流側部位13aの上流端)に対応する位置で最長となっている。ここで、ガイド部材10と棒状部材13との両者間を通過する際の帯状保護シートSの詰まりを確実に回避するため、棒状部材13の上流端に対応する位置での案内面10aと棒状部材13との相互間距離LL1は、20mm以上とすることが好ましい。なお、棒状部材13の上流端は、待機位置P3で待機中のカッター8の刃先と比較して、帯状保護シートSの送給経路3に接近した位置にある。
【0055】
ガイド部材10の案内面10aと棒状部材13との相互間距離は、棒状部材13の下流端(下流側部位13bの下流端)に対応する位置で最短となっている。ここで、上述の浮き上がりや揺動を効果的に規制するために、棒状部材13の下流端に対応する位置での案内面10aと棒状部材13との相互間距離LL2は、15mm以下とすることが好ましい。なお、上述した初期状態においては、帯状保護シートSの先頭部S1が、案内面10aの下端および棒状部材13の下流端と略同一の高さ位置にある。
【0056】
以下、パレット2に対して繰り返し保護シートSaを供給することで積層体Lを作製する際に、上記のシート供給装置1が行う一連の動作について説明する。なお、ここでは切出機構4が上述した初期状態にある時点をシート供給装置1の一連の動作の起点として説明する。
【0057】
シート供給装置1が保護シートSaを供給するための動作を開始すると、まず、帯状保護シートSから保護シートSaを切り出すための準備として、ニップロール7が、保護シートSaの長さ分だけ帯状保護シートSを切断地点3xよりも下流側に送り出した状態にする。
【0058】
なお、帯状保護シートSの送り出された部位(後に保護シートSaとして切り出される部位)は、ニップロール7による送り出しが開始されてから、保護シートSaの切り出しが開始されるまで(カッター8が帯状保護シートSに切り込むまで)の間に、順次に移送機構5の四体のチャック5aによって把持される。
【0059】
次に、帯状保護シートSの送り出された部位を四体のチャック5aに把持させた状態の下、カッター8が待機位置P3から進出位置P4に移動して帯状保護シートSに切り込む。これにより、帯状保護シートSから保護シートSaが切り出されると共に、四体のチャック5aが切り出された保護シートSaの四隅を把持した状態となる。
【0060】
次に、切り出した保護シートSaを移送機構5がパレット2に移送すると共に、積層体Lの前面Laに位置したガラス板Gに保護シートSaを重ね合わせる。このとき、ニップロール7は、保護シートSaの切り出し直後の状態から、次回の切り出しに備えて、初期状態と同じ態様となるまで帯状保護シートSの先頭部S1を切断地点3xよりも下流側に進出させてから停止する。
【0061】
その後、パレット2にガラス板Gを積載するにあたり、搬入装置12がガラス板Gを吊り下げた状態で前方側から切出機構4に接近してくると、衝突を回避するべく切出機構4が稼働位置P1から退避位置P2に後退する。さらに、搬入装置12によるパレット2へのガラス板Gの積載が完了した後には、再び切出機構4が退避位置P2から稼働位置P1まで前進する。
【0062】
その後、次回の保護シートSaの切り出しが開始されると、ニップロール7が、再び保護シートSaの長さ分だけ帯状保護シートSを切断地点3xよりも下流側に送り出した状態にする。以下、上述した一連の動作が繰り返されることで、パレット2上で積層体Lが作製されていく。
【0063】
上記のシート供給装置1によれば、ニップロール7よりも下流側に存在する帯状保護シートSの部位が表面Sb側に浮き上がったり、揺動したりしそうになった場合でも、押え部材11が当該部位を押えて浮き上がりや揺動を規制する。これにより、当該部位が待機位置P3で待機中のカッター8に対して意図せず接触してしまうことを回避できる。その結果、意図していない箇所での帯状保護シートSの切断を防止することが可能となる。
【0064】
ここで、上記の実施形態に対しては、以下のような変形例を適用することも可能である。上記の実施形態においては、棒状部材13が、湾曲部を介して連結された上流側部位13a、下流側部位13b、及び中間部位13cにより構成されていたが、この限りではない。変形例として、棒状部材13の全長が直線的に延びる構成であってもよい。ただし、この場合においても、棒状部材13をガイド部材10の案内面10aに対して傾けることが好ましい。
【0065】
また、その他の変形例としては、ガイド部材10を省略してもよいし、ガイド部材10が平坦でない案内面を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 シート供給装置
2 パレット
3 送給経路
3x 切断地点
4 切出機構
7 ニップロール
8 カッター
10 ガイド部材
10a 案内面
11 押え部材
13 棒状部材
13a 上流側部位
13b 下流側部位
13c 中間部位
G ガラス板
L 積層体
LL1 相互間距離
LL2 相互間距離
S 帯状保護シート
S1 先頭部
Sa 保護シート
Sb 表面
Sc 裏面
図1
図2
図3
図4