(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】熱転写シート、及び印画物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/382 20060101AFI20240912BHJP
B41M 5/385 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B41M5/382 330
B41M5/385 300
(21)【出願番号】P 2020144904
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】大家 明仁
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-127379(JP,A)
【文献】特開平11-138980(JP,A)
【文献】特開2004-243747(JP,A)
【文献】特開2001-232954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/382-5/395
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に剥離可能に設けられた転写層とを備える熱転写シートであって、
前記転写層が、前記転写層における表面層を構成している保護層を備え、
前記保護層が、ポリエステル
A、ポリエステルB
及びシリカ粒子を含有し、
前記ポリエステルAは、ガラス転移温度が-35℃以上-15℃以下の結晶性ポリエステルであり、
前記ポリエステルBは、ガラス転移温度が58℃以上65℃以下の非晶性ポリエステルであり、
前記保護層の、前記保護層側から測定した100℃における弾性率が、0.060MPa以上0.140MPa以下である、
熱転写シート。
【請求項2】
前記ポリエステルAのガラス転移温度が、-25℃以上-15℃以下である、請求項1に記載の熱転写シート。
【請求項3】
前記100℃における弾性率が、0.070MPa以上0.140MPa以下である、請求項1
又は2に記載の熱転写シート。
【請求項4】
前記転写層が、前記保護層における基材側の面上に第2の保護層をさらに備え、前記第2の保護層が、ガラス転移温度が60℃以上70℃以下の樹脂材料を含有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【請求項5】
前記樹脂材料が、ガラス転移温度が60℃以上70℃以下のポリエステルである、請求項
4に記載の熱転写シート。
【請求項6】
前記転写層が、基材の最も近くに位置する層として剥離層をさらに備える、請求項1~
5のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【請求項7】
前記基材上に、前記転写層と面順次に、色材層をさらに備える、請求項1~
6のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【請求項8】
前記色材層が、白色顔料及び樹脂材料を含有する白色層である、請求項
7に記載の熱転写シート。
【請求項9】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の熱転写シートを用いて、表面に画像を備える被転写体における前記画像を少なくとも被覆するように、前記画像上に前記転写層を転写する工程を含む、印画物の製造方法。
【請求項10】
被転写体上に、請求項
7又は
8に記載の熱転写シートが備える色材層を転写して画像を形成し、続いて前記画像を少なくとも被覆するように、前記画像上に、前記熱転写シートが備える転写層を転写する工程を含む、印画物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱転写シート、及び印画物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂フィルム等の基材と、基材上に設けられた色材層とを備える熱転写シートに対して、例えばサーマルヘッドを用いてエネルギーを印加し、被転写体上に色材層を転写して画像を形成することにより、印画物を製造する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、形成される画像の色(例えば白色)によっては、高い画像濃度とすることが困難な場合がある。この場合、例えば、被転写体上に厚みのある画像(例えば白色層)を形成することで、高い画像濃度が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像上には、通常、その耐久性向上を目的として、保護層を備える熱転写シートを用いて保護層を転写している。しかしながら、基体と、基体上の厚みのある画像とを備える印画物に対して、画像を被覆するように保護層を転写した場合、基体と画像との段差部分に保護層が充分に追従できず、保護層と基体との間に空気が内包されることがある。この場合、保護層の一部が基体表面に密着せずに浮いた状態となる。このため、保護層の外観に曇りが見られる等、転写不良が生じやい。また、段差部分に対する保護層の追従性を向上させるために、例えば、柔軟な保護層を用いると、耐ブロッキング性が充分ではないことがある。
【0006】
本開示の一つの課題は、保護層を備える熱転写シートであって、表面に段差を有する被転写体に保護層を転写した場合において、外観及び耐ブロッキング性に優れる保護層を形成できる熱転写シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の実施形態の熱転写シートは、
基材と、基材上に剥離可能に設けられた転写層とを備える熱転写シートであって、
転写層が、転写層における表面層を構成している保護層を備え、保護層側から測定した100℃における弾性率が、0.060MPa以上0.140MPa以下である。
本開示の第2の実施形態の熱転写シートは、
基材と、基材上に剥離可能に設けられた転写層とを備える熱転写シートであって、
転写層が、転写層における表面層を構成している保護層を備え、
保護層が、ポリエステルAと、ポリエステルBとを含有し、
ポリエステルAのガラス転移温度が、-35℃以上-15℃以下であり、
ポリエステルBのガラス転移温度が、58℃以上65℃以下である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、保護層を備える熱転写シートであって、表面に段差を有する被転写体に保護層を転写した場合において、外観及び耐ブロッキング性に優れる保護層を形成できる熱転写シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の熱転写シートの一実施形態を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の熱転写シートの一実施形態を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の熱転写シートの一実施形態を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、本開示の熱転写シートの一実施形態を示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、本開示の熱転写シートの一実施形態を示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、本開示の熱転写シートの一実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[熱転写シート]
本開示の第1の実施形態の熱転写シートは、基材と、基材上に剥離可能に設けられた転写層とを備える。転写層は、転写層における表面層を構成している保護層を備える。保護層側から測定した100℃における弾性率は、0.060MPa以上0.140MPa以下である。
【0011】
本開示の第2の実施形態の熱転写シートは、基材と、基材上に剥離可能に設けられた転写層とを備える。転写層は、転写層における表面層を構成している保護層を備える。保護層は、ポリエステルAと、ポリエステルBとを含有する。ポリエステルAのガラス転移温度は、-35℃以上-15℃以下である。ポリエステルBのガラス転移温度は、58℃以上65℃以下である。
【0012】
第1及び第2の実施形態の熱転写シートは、一実施形態において、基材上に、上記転写層と面順次に、色材層をさらに備える。
【0013】
本開示の熱転写シートの実施形態について、以下、図面を参照しながら説明する。
図1~
図6は、本開示の熱転写シートの一実施形態を示す概略断面図である。
【0014】
熱転写シート10は、
図1に示すように、基材11と、基材11上に剥離可能に設けられた転写層12(保護層13)とを備える。一実施形態において、
図2に示すように、転写層12は、保護層13及び剥離層15を備える。一実施形態において、
図3に示すように、転写層12は、保護層13、第2の保護層14及び剥離層15を備える。一実施形態において、熱転写シート10は、
図1~3に示すように、基材11における転写層12が設けられた面とは反対側の面上に、背面層16をさらに備える。
【0015】
熱転写シート20は、
図4に示すように、基材21と、基材21上に剥離可能に設けられた転写層22(保護層23)とを備え、転写層22と面順次に、色材層28を基材21上にさらに備える。一実施形態において、
図5に示すように、転写層22は、保護層23と基材21との間に剥離層25を備える。一実施形態において、
図6に示すように、転写層22は、保護層23と基材21との間に第2の保護層24及び剥離層25を備える。一実施形態において、熱転写シート20は、
図4~6に示すように、基材21における転写層22が設けられた面とは反対側の面上に、背面層26をさらに備える。
【0016】
以下、単に「熱転写シート」と記載する場合は、本開示の第1又は第2の実施形態のいずれかの熱転写シートを指す。また、第1の実施形態の熱転写シート及び第2の実施形態の熱転写シートを、それぞれ第1の熱転写シート及び第2の熱転写シートともいう。
以下、第1及び第2の熱転写シートが備える各層について説明する。
【0017】
<基材>
熱転写シートは、基材を備える。
基材は、熱転写時に加えられる熱エネルギー(例えば、サーマルヘッドによる熱)に耐え得る耐熱性を有し、基材上に設けられる転写層を支持できる機械的強度を有することが好ましい。
【0018】
基材としては、例えば、樹脂から構成されるフィルム(以下「樹脂フィルム」ともいう)が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、1,4-ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート及びテレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体等のポリエステル;ナイロン6及びナイロン6,6等のポリアミド;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール及びポリビニルピロリドン(PVP)等のビニル樹脂;ポリアクリレート、ポリメタクリレート及びポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル樹脂;ポリイミド及びポリエーテルイミド等のイミド樹脂;セロファン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)及びセルロースアセテートブチレート(CAB)等のセルロース樹脂;ポリスチレン(PS)等のスチレン樹脂;ポリカーボネート;並びにアイオノマー樹脂が挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び機械的強度という観点から、ポリエステルが好ましく、PETがより好ましい。
【0019】
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する。また、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する。
【0020】
樹脂フィルムは、単層であっても、多層であってもよい。多層の樹脂フィルムは、例えば、ドライラミネーション法、ウェットラミネーション法及びエクストリュージョン法等の方法により製造できる。
【0021】
樹脂フィルムは、延伸フィルムであっても、未延伸フィルムであってもよい。樹脂フィルムとしては、強度という観点から、延伸フィルムが好ましく、一軸延伸フィルム又は二軸延伸フィルムがより好ましい。
【0022】
基材と転写層との間に、後述する離型層等の他の層を設ける場合は、基材と他の層との密着性を高めるために、基材における転写層側の面に表面処理を行ってもよい。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、プライマー塗布処理が挙げられる。
【0023】
基材の厚さは、好ましくは0.5μm以上40μm以下、より好ましくは1μm以上30μm以下、さらに好ましくは2μm以上25μm以下である。これにより、基材の機械的強度及び熱転写時の熱エネルギーの伝達が良好になる傾向にある。
【0024】
<転写層>
転写層は、基材上に設けられた層であって、基材から剥離可能な層である。転写層は、熱エネルギーの印加によって転写層と接する層から剥離されて被転写体上に移行する。転写層と接する層は、例えば基材又は離型層である。転写層は、基材上に直接設けられてもよく、離型層等の他の層を介して基材上に設けられてもよい。
【0025】
転写層は、保護層を備える。保護層は、転写層における表面層を構成し、通常、熱転写シートにおける最外層を構成している。
【0026】
転写層は、表面層としての保護層のみからなる単層構造であってもよく、保護層と、後述する第2の保護層及び剥離層等の他の層とを備える積層構造であってもよい。第2の保護層について言及する場合、上記保護層を「第1の保護層」と記載することがある。
【0027】
(第1の熱転写シートにおける保護層)
第1の熱転写シートにおいて、保護層側から測定した100℃における弾性率は、0.060MPa以上0.140MPa以下であり、好ましくは0.070MPa以上0.140MPa以下、より好ましくは0.100MPa以上0.140MPa以下である。以下、単に「弾性率」と記載する場合は、保護層側から測定した100℃における弾性率を指す。
【0028】
保護層は、例えば、表面に画像を備える被転写体上に熱転写シートの転写層を転写した場合において、少なくとも画像を被覆及び保護する層である。保護層は、被転写体に対する接着層としても機能する。
【0029】
表面に画像を備える被転写体は、画像と、画像が形成されていない部分とに起因する、段差部分を有する。上記弾性率を示す保護層は、高温での柔軟性が高いことから、熱転写時において、段差部分に対する形状追従性に優れる。具体的には、被転写体の段差部分に保護層が浮かずに密着できる。
上記弾性率を示す保護層は、段差部分に対する形状追従性に加えて、耐ブロッキング性にも優れる。したがって、熱転写シートを巻き取り、保管する際に、保護層と基材又は背面層との間におけるブロッキング発生が抑制される。弾性率が0.100MPa以上0.140MPa以下であると、熱転写シートは形状追従性及び耐ブロッキング性のバランスにより優れる。
【0030】
弾性率は、ISO 14577-1のナノインデーション法に準拠し、100℃の加温下において、対面角が90°の四角錘型圧子を用いて、押込み荷重を変化させながら荷重時間10秒で押し込み、押込み深さが1μmに到達した後、5秒間保持してから、60秒かけて押込み荷重を除去するという条件で測定する。なお、熱転写シートが備える基材上に形成した保護層表面に対して、押込み荷重を付加して、弾性率を測定する。
【0031】
第1の熱転写シートにおける保護層は、通常、熱可塑性樹脂を含有する。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、エチレン-酢酸ビニル共重合体及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、セルロース樹脂及びスチレン樹脂、並びにこれらの塩素化樹脂が挙げられる。保護層は、1種又は2種以上の熱可塑性樹脂を含有できる。これらの中でも、保護層の熱転写性に優れるという観点から、ポリエステルが好ましい。
【0032】
本明細書において、ポリエステルとは、エステル結合によって高分子化された重合体を意味する。このようなポリエステルは、例えば、少なくともジカルボン酸化合物とジオール化合物とを重縮合することにより得られる。
【0033】
ジカルボン酸化合物としては、例えば、ジカルボン酸及びジカルボン酸の誘導体が挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、エイコサンジオン酸、メチルマロン酸及びエチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸;アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸及びデカリンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸及び9,9’-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。ジカルボン酸の誘導体としては、例えば、ジカルボン酸無水物、ジカルボン酸エステル及びジカルボン酸の酸ハライドが挙げられる。
ジカルボン酸化合物は1種又は2種以上用いることができる。
【0034】
ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、デカヒドロナフタレンジメタノール、デカヒドロナフタレンジエタノール、ノルボルナンジメタノール、ノルボルナンジエタノール、トリシクロデカンジメタノール、トリシクロデカンエタノール、テトラシクロドデカンジメタノール、テトラシクロドデカンジエタノール、デカリンジメタノール、デカリンジエタノール、5-メチロール-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジオキサン、シクロヘキサンジオール、ビシクロヘキシル-4,4’-ジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシルプロパン)、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル)プロパン、シクロペンタンジオール、3-メチル-1,2-シクロペンタジオール、4-シクロペンテン-1,3-ジオール、アダマンジオール、パラキシレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS及びスチレングリコールが挙げられる。
ジオール化合物は1種又は2種以上用いることができる。
【0035】
ポリエステルを形成する重合成分は、ジカルボン酸化合物及びジオール化合物以外の他の重合成分を含んでもよい。他の重合成分としては、例えば、ピロメリット酸及びトリメリット酸等の3官能以上のポリカルボン酸化合物;トリメチロールプロパン、グリセリン及びペンタエリスリトール等の3官能以上のポリオール化合物が挙げられる。
他の重合成分の割合は、ポリエステルを形成する全重合成分中、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0036】
ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンナフタレートが挙げられる。
【0037】
ポリエステルは、ジカルボン酸化合物とジオール化合物とを重縮合して得られた重合体の変性物であってもよい。変性物としては、例えば、ウレタン変性ポリエステルが挙げられる。
後述するポリエステルA、B及びCにおいても、以上の具体例が挙げられる。
【0038】
保護層における熱可塑性樹脂の含有割合、一実施形態ではポリエステルの含有割合は、保護層の熱転写性及び耐久性をより向上できるという観点から、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
【0039】
上記弾性率は、例えば、保護層を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)により、調整できる。例えば、保護層にTgの低いポリエステルを含有させると、100℃において保護層が軟化しやすくなることから、上記弾性率を低減できる。具体的には、上記弾性率は、Tgの低いポリエステルの含有割合が大きいほど、低減できる傾向にある。また、上記弾性率は、ポリエステルのTgが低いほど、低減できる傾向にある。
【0040】
第1の熱転写シートにおける保護層は、一実施形態において、Tgの低いポリエステルとして、Tgが-35℃以上-15℃以下のポリエステルAを含有する。
【0041】
ポリエステルAのTgは、-35℃以上-15℃以下であり、好ましくは-25℃以上-15℃以下である。上記範囲のTgを有するポリエステルAを保護層に含有させることにより、上記弾性率を調整でき、柔軟性、したがって形状追従性に優れる保護層が得られる。
ポリエステルAのTgが-15℃以下であると、上記弾性率が高くなりすぎず、形状追従性及び密着性が充分高くなる傾向にある。ポリエステルAのTgが-25℃以上であると、シート巻取り時のブロッキングの発生をより抑制できる傾向にある。
【0042】
本明細書において、ポリエステルA等のポリエステルのTgは、JIS K 7121に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により、昇温速度10℃/分の条件で得られる。ポリエステルのTgは、例えば、ポリエステルを形成する重合成分の種類及び割合、並びにポリエステルの平均分子量により調整できる。測定法は、後述する他のポリエステル(例えば、ポリエステルB及びC)においても同様である。
【0043】
ポリエステルAとしては、熱転写性、及び保護層と被転写体との密着性をより向上できるという観点から、結晶性ポリエステルが好ましい。結晶性ポリエステルの融点(Tm)は、好ましくは90℃以上120℃以下、より好ましくは90℃以上100℃以下である。
【0044】
本明細書において、ポリエステルA等のポリエステルの融点(Tm)は、JIS K 7121に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により、昇温速度10℃/分の条件で得られる。
【0045】
ポリエステルAの数平均分子量(Mn)は、保護層の形状追従性、耐久性及び製膜性という観点から、好ましくは1,000以上100,000以下、より好ましくは2,000以上50,000以下、さらに好ましくは3,000以上40,000以下である。
【0046】
本明細書において、ポリエステルA等のポリエステルのMnは、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した値を意味し、JIS K 7252-3(2016年発行)に準拠した方法で測定する。測定法は、後述する他のポリエステル(例えば、ポリエステルB及びC)においても同様である。
【0047】
第1の熱転写シートにおいて、保護層を構成する熱可塑性樹脂中のポリエステルAの含有割合は、上記弾性率の調整、形状追従性及び耐ブロッキング性という観点から、好ましくは1質量%以上40質量%以下、より好ましくは5質量%以上35質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上30質量%以下である。
【0048】
第1の熱転写シートにおける保護層は、一実施形態において、Tgの高いポリエステル、特にTgが58℃以上65℃以下のポリエステルBをさらに含有する。ポリエステルBを含有する保護層は、被転写体に対する熱転写性及び耐久性に優れる。
【0049】
ポリエステルBとしては、塗膜形成時の透明性が高いという観点から、非晶性ポリエステルが好ましい。非晶性ポリエステルとは、上述したDSCにおいて、明確な融解ピークを示さないポリエステルを意味する。
【0050】
ポリエステルBの数平均分子量(Mn)は、保護層の形状追従性、耐久性及び製膜性という観点から、好ましくは1,000以上50,000以下、より好ましくは2,000以上30,000以下、さらに好ましくは3,000以上20,000以下である。
【0051】
第1の熱転写シートにおいて、保護層を構成する熱可塑性樹脂中のポリエステルBの含有割合は、保護層の耐久性及び耐ブロッキング性に優れるという観点から、好ましくは60質量%以上99質量%以下、より好ましくは65質量%以上95質量%以下、さらに好ましくは70質量%以上90質量%以下である。
【0052】
保護層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、充填剤、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、離型剤及び分散剤が挙げられる。保護層は、1種又は2種以上の添加剤を含有できる。
【0053】
保護層の厚さは、好ましくは1.5μm以上10μm以下、より好ましくは1.5μm以上5μm以下である。これにより、保護層の耐久性及び熱転写性をより向上できる。
【0054】
保護層は、例えば、以上に説明した成分を適当な溶媒に分散又は溶解させて得られた塗工液を、公知の塗工方法により、基材又は基材上に設けられる任意の層上に塗布及び乾燥することにより形成できる。塗工方法としては、例えば、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法及びロッドコート法が挙げられる。
【0055】
(第2の熱転写シートにおける保護層)
第2の熱転写シートにおける保護層は、ポリエステルAと、ポリエステルBとを含有する。
【0056】
保護層は、例えば、表面に画像を備える被転写体上に熱転写シートの転写層を転写した場合において、少なくとも画像を被覆及び保護し、段差部分に接する層である。保護層は、被転写体に対する接着層としても機能する。Tgの高いポリエステルBに加えてTgの低いポリエステルAを含有する保護層は、高温での柔軟性が高いことから、熱転写時において、段差部分に対する形状追従性に優れる。具体的には、被転写体の段差部分に保護層が浮かずに密着できる。
【0057】
ポリエステルAのTgは、-35℃以上-15℃以下であり、好ましくは-25℃以上-15℃以下である。上記範囲のTgを有するポリエステルAを保護層に含有させることにより、柔軟性、したがって形状追従性に優れる保護層が得られる。ポリエステルAのTgが-15℃以下であると、保護層の形状追従性及び密着性が充分高くなる傾向にある。ポリエステルAのTgが-25℃以上であると、シート巻取り時のブロッキングの発生をより抑制できる傾向にある。
【0058】
ポリエステルAの好適態様、並びにポリエステルAの融点(Tm)及び数平均分子量(Mn)は、第1の熱転写シートの保護層の説明において記載したとおりである。
【0059】
第2の熱転写シートにおいて、保護層におけるポリエステルAの含有割合は、保護層の形状追従性及び耐ブロッキング性という観点から、好ましくは1質量%以上40質量%以下、より好ましくは5質量%以上35質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上30質量%以下である。
【0060】
ポリエステルBのTgは、58℃以上65℃以下である。ポリエステルBを含有する保護層は、被転写体に対する熱転写性及び密着性に優れる。ポリエステルAとともに、Tgが58℃以上65℃以下のポリエステルBを保護層に含有させることにより、形状追従性に加えて耐ブロッキング性にも優れる保護層が得られる。
【0061】
ポリエステルBの好適態様、及びポリエステルBの数平均分子量(Mn)は、第1の熱転写シートの保護層の説明において記載したとおりである。
【0062】
第2の熱転写シートにおいて、保護層におけるポリエステルAとポリエステルBとの合計含有割合は、保護層の形状追従性及び耐ブロッキング性のバランスという観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上99質量%以下、さらに好ましくは80質量%以上95質量%以下である。
【0063】
保護層は、ポリエステル以外の熱可塑性樹脂をさらに含有してもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、セルロース樹脂及びスチレン樹脂、並びにこれらの塩素化樹脂が挙げられる。保護層は、1種又は2種以上の熱可塑性樹脂を含有できる。
【0064】
保護層は、粒子をさらに含有することが好ましい。ポリエステルAとともに、粒子を保護層に含有させることにより、形状追従性及び耐ブロッキング性のバランスにより優れる保護層が得られる。
【0065】
粒子としては、例えば、有機粒子、無機粒子及び有機/無機ハイブリッド型粒子が挙げられる。これらの中でも、保護層の耐ブロッキング性をより向上できるという観点から、無機粒子が好ましい。
【0066】
有機粒子としては、例えば、非架橋(メタ)アクリル樹脂粒子、架橋(メタ)アクリル樹脂粒子等の(メタ)アクリル樹脂粒子、ポリアミド粒子、ポリオレフィン粒子、フッ素樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子が挙げられる。
【0067】
無機粒子としては、例えば、タルク及びカオリン等の粘土鉱物;炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム等の炭酸塩;水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム等の水酸化物;硫酸カルシウム等の硫酸塩;シリカ、アルミナ、ジルコニア及びチタニア等の金属酸化物;グラファイト、硝石、並びに窒化ホウ素が挙げられる。無機粒子の中でも、金属酸化物が好ましく、シリカがより好ましい。
【0068】
有機/無機ハイブリッド型粒子としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂にシリカ粒子をハイブリッドして得られる粒子が挙げられる。
粒子としては、熱転写シートの耐ブロッキング性をより向上できるという観点から、シリカ粒子が好ましく、シリカナノ粒子がより好ましく、コロイダルシリカ由来のシリカナノ粒子がさらに好ましい。なお、シリカナノ粒子とは、平均粒子径が1nm以上1,000nm以下のシリカ粒子をいう。
【0069】
粒子の平均粒子径は、好ましくは1nm以上1,000nm以下、より好ましくは5nm以上500nm以下、さらに好ましくは10nm以上100nm以下である。平均粒子径は、電子顕微鏡法により測定する。具体的には、電子顕微鏡法により各粒子における長軸径と短軸径との平均値として粒子径を得て、粒子100個の粒子径の算術平均を平均粒子径とする。
【0070】
第2の熱転写シートにおいて、保護層における粒子の含有量は、100質量部のポリエステルBに対して、好ましくは1質量部以上25質量部以下、より好ましくは5質量部以上20質量部以下、さらに好ましくは8質量部以上20質量部以下である。これにより、保護層の耐ブロッキング性をより向上できる。
【0071】
保護層は、添加剤を含有してもよい。
第2の熱転写シートの保護層における添加剤の具体例、保護層の厚さ、及び保護層の形成方法としては、それぞれ、第1の熱転写シートの保護層における記載と同様である。
【0072】
第2の熱転写シートにおいて、保護層側から測定した100℃における弾性率は、好ましくは0.060MPa以上0.140MPa以下、より好ましくは0.070MPa以上0.140MPa以下、さらに好ましくは0.100MPa以上0.140MPa以下である。これにより、保護層の熱転写性、具体的には段差に対する形状追従性と、耐ブロッキング性とをより向上できる。
【0073】
(第2の保護層)
熱転写シートにおける転写層は、一実施形態において、保護層(第1の保護層)における基材側の面上に、第2の保護層をさらに備える。第2の保護層は、ガラス転移温度(Tg)が60℃以上70℃以下の樹脂材料を含有する。樹脂材料のTgは、JIS K 7121に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により、昇温速度10℃/分の条件で得られる。
【0074】
上記Tgを有する樹脂材料を含有する第2の保護層を設けることにより、熱転写シートの転写層を被転写体に転写した場合において、形状追従性に加えて、印画物の耐久性をより向上できる。耐久性とは、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)等の可塑剤に対する耐久性(耐可塑剤性)である。
【0075】
上記樹脂材料としては、例えば、上記Tgを有する熱可塑性樹脂が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、エチレン-酢酸ビニル共重合体及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、セルロース樹脂及びスチレン樹脂、並びにこれらの塩素化樹脂であって、Tgが60℃以上70℃以下の樹脂が挙げられる。第2の保護層は、1種又は2種以上の樹脂材料を含有できる。
【0076】
第2の保護層は、好ましくは、Tgが60℃以上70℃以下のポリエステル(以下「ポリエステルC」ともいう)を含有する。ポリエステルCのTgは、好ましくは65℃以上70℃以下である。
ポリエステルCとしては、非晶性ポリエステルが好ましい。
【0077】
ポリエステルC等の60℃以上70℃以下のTgを有する樹脂材料の数平均分子量(Mn)は、第2の保護層の耐可塑剤性、耐久性及び製膜性という観点から、好ましくは1,000以上100,000以下、より好ましくは2,000以上50,000以下、さらに好ましくは3,000以上30,000以下である。樹脂材料のMnは、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した値を意味し、JIS K 7252-3(2016年発行)に準拠した方法で測定する。
【0078】
第2の保護層におけるポリエステルC等の60℃以上70℃以下のTgを有する樹脂材料の含有割合は、耐可塑剤性という観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは92質量%以上である。
第2の保護層は、耐可塑剤性という観点から、上述したポリエステルAの含有割合は、好ましくは1質量%未満である。
【0079】
第2の保護層は、粒子をさらに含有してもよい。粒子としては、例えば、上記保護層の欄に記載した粒子が挙げられ、無機粒子が好ましく、シリカ粒子がより好ましく、シリカナノ粒子がさらに好ましく、コロイダルシリカ由来のシリカナノ粒子が特に好ましい。
第2の保護層における粒子の含有量は、100質量部の樹脂材料に対して、好ましくは1質量部以上25質量部以下、より好ましくは5質量部以上20質量部以下、さらに好ましくは8質量部以上20質量部以下である。
【0080】
第2の保護層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、離型剤及び分散剤が挙げられる。第2の保護層は、1種又は2種以上の添加剤を含有できる。
【0081】
第2の保護層の厚さは、好ましくは0.5μm以上5μm以下、より好ましくは1μm以上3μm以下である。これにより、印画物の耐擦過性をより向上できる。
【0082】
(剥離層)
熱転写シートにおける転写層は、一実施形態において、転写層を構成する層のうち、基材の最も近くに位置する層として剥離層を備える。剥離層を設けることにより、保護層の熱転写性をより向上できる。
剥離層における含有成分としては、例えば、樹脂材料及びワックスが挙げられる。
【0083】
剥離層は、一実施形態において、樹脂材料を含有する。これにより、転写層による被覆対象である印画物の耐擦過性をより向上できる。樹脂材料としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、セルロース樹脂、ビニル樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂が挙げられる。これらの中でも、保護層の熱転写性という観点から、(メタ)アクリル樹脂が好ましい。剥離層は、1種又は2種以上の樹脂材料を含有できる。
【0084】
剥離層における樹脂材料の含有割合は、一実施形態において、好ましくは70質量%以上100質量%以下、より好ましくは80質量%以上100質量%以下である。これにより、保護層の熱転写性を維持しつつ、印画物の耐擦過性をより向上できる。
【0085】
剥離層は、一実施形態において、ワックスを含有する。
ワックスとしては、例えば、蜜蝋、鯨蝋、木蝋、米ぬか蝋、カルナバワックス、キャンデリラワックス及びモンタンワックス等の天然ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化ワックス、オゾケライト、セレシン、エステルワックス及びポリエチレンワックス等の合成ワックス;マルガリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、フロイン酸及びベヘニン酸等の高級飽和脂肪酸;ステアリルアルコール及びベヘニルアルコール等の高級飽和一価アルコール;ソルビタンの脂肪酸エステル等の高級エステル;ステアリン酸アミド及びオレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミドが挙げられる。これらの中でも、保護層の熱転写性という観点から、ポリエチレンワックスが好ましい。
剥離層は、1種又は2種以上のワックスを含有できる。
【0086】
剥離層におけるワックスの含有割合は、一実施形態において、好ましくは70質量%以上100質量%以下、より好ましくは80質量%以上100質量%以下である。これにより、保護層の熱転写性をより向上できる。
【0087】
剥離層は、一実施形態において、樹脂材料及びワックスを含有する。この場合、剥離層における樹脂材料及びワックスの合計含有割合は、好ましくは70質量%以上100質量%以下、より好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
【0088】
剥離層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、充填剤、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤及び分散剤が挙げられる。剥離層は、1種又は2種以上の添加剤を含有できる。
【0089】
剥離層の厚さは、好ましくは0.1μm以上3μm以下、より好ましくは0.2μm以上2μm以下である。これにより、保護層の熱転写性をより向上できる。
【0090】
剥離層は、例えば、以上に説明した成分を適当な溶媒に分散又は溶解させて得られた塗工液を、上述した公知の塗工方法により、基材又は基材上に設けられる任意の層上に塗布及び乾燥することにより形成できる。
【0091】
(色材層)
熱転写シートは、一実施形態において、基材上に、転写層と面順次に、色材層をさらに備える。色材層は、好ましくは溶融転写型色材層である。
【0092】
色材層は、色材を含有する。色材は、顔料であっても、染料であってもよい。
色材としては、例えば、白色顔料、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、黒煙、鉄黒、アニリンブラック、カドミウムレッド、カドモポンレッド、クロムレッド、バーミリオン、ベンガラ、アゾ系顔料、アリザリンレーキ、キナクリドン、コチニールレーキペリレン、イエローオーカー、オーレオリン、カドミウムイエロー、カドミウムオレンジ、クロムイエロー、ジンクイエロー、ネイプルスイエロー、ニッケルイエロー、アゾ系顔料、グリニッシュイエロー、ウルトラマリン、岩群青、コバルト、フタロシアニン、アントラキノン、インジコイド、シナバーグリーン、カドミウムグリーン、クロムグリーン、フタロシアニン、アゾメチン、ペリレン、アルミニウム顔料が挙げられる。
色材層は、1種又は2種以上の色材を含有できる。
【0093】
色材層としては、白色顔料及び樹脂材料を含有する白色層が好ましい。
白色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムが挙げられる。これらの中でも、白色度という観点から、酸化チタンが好ましい。
白色層は、1種又は2種以上の白色顔料を含有できる。
【0094】
白色層における白色顔料の含有割合は、好ましくは65質量%以上90質量%以下、より好ましくは75質量%以上90質量%以下である。これにより、画像の白色度をより向上できる。
【0095】
樹脂材料としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン、スチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のビニル樹脂、ポリエステル、ポリアミド、イミド樹脂、セルロース樹脂、ポリオール樹脂、ポリカーボネート及びアイオノマー樹脂が挙げられる。
白色層は、1種又は2種以上の樹脂材料を含有できる。
【0096】
白色層は、主たる樹脂材料として、(メタ)アクリル樹脂及びポリオール樹脂のいずれか一方又は双方を含むことが好ましい。これにより、白色層形成用塗工液における白色顔料の分散安定性を向上でき、塗工不良等の発生を抑制できる。主たる樹脂材料とは、白色層に含まれる樹脂材料の総量100質量部に対し、70質量部以上を占める樹脂材料をいう。
【0097】
被転写体への密着性向上という観点から、白色層は、ビニル樹脂を含有することが好ましく、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含有することがより好ましい。白色層におけるビニル樹脂の含有割合は、好ましくは0.3質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。これにより、白色層の熱転写性を維持しつつ、被転写体への白色層の密着性をより向上できる。
【0098】
白色層は、基材との密着性向上の観点から、ポリエステルを含有することが好ましい。白色層におけるポリエステルの含有割合は、好ましくは0.03質量%以上1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上1質量%以下である。これにより、白色層の熱転写性を維持しつつ、基材との密着性をより向上できる。
【0099】
白色層における樹脂材料の含有割合は、好ましくは10質量%以上35質量%以下、より好ましくは10質量%以上25質量%以下である。これにより、白色顔料の再凝集を防ぐことができ、高い隠蔽性が得られる。
【0100】
白色層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、充填剤、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、離型剤及び分散剤が挙げられる。白色層は、1種又は2種以上の添加剤を含有できる。
【0101】
色材層の厚さは、好ましくは0.5μm以上5μm以下、より好ましくは1μm以上4μm以下、さらに好ましくは2μm以上3.5μm以下である。これにより、形成される画像濃度を向上できる。
【0102】
色材層は、例えば、以上に説明した成分を適当な溶媒に分散又は溶解させて得られた塗工液を、上述した公知の塗工方法により、基材又は基材上に設けられる任意の層上に塗布及び乾燥することにより形成できる。
【0103】
(接着層)
熱転写シートは、一実施形態において、色材層における基材とは反対側の面上に、接着層を備える。この場合、被転写体に色材層を転写したときの、被転写体と色材層との密着性をより良好にできる。
【0104】
接着層は、樹脂材料を含有することが好ましい。樹脂材料としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂及びフェノール樹脂が挙げられる。接着層は、1種又は2種以上の樹脂材料を含有できる。
【0105】
接着層における樹脂材料の含有割合は、好ましくは70質量%以上100質量%以下、より好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
【0106】
接着層は、樹脂材料を硬化剤によって硬化させた層でもよい。硬化剤としては、例えば、イソシアネート化合物、脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、芳香族アミン、酸無水物が挙げられる。
【0107】
接着層の厚さは、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは0.5μm以上2μm以下である。
接着層は、例えば、以上に説明した成分を適当な溶媒に分散又は溶解させて得られた塗工液を、上述した公知の塗工方法により、色材層上に塗布及び乾燥することにより形成できる。
【0108】
<離型層>
熱転写シートは、一実施形態において、基材と転写層との間に離型層を備える。離型層は、転写層を構成しない層であって、被転写体上に転写層を転写した際に、基材側に残存する層である。離型層を設けることにより、保護層を備える転写層の熱転写性をより向上できる。
【0109】
離型層は、樹脂材料を含有することが好ましい。樹脂材料としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリオール樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、アセタール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド及びポリエステルが挙げられる。離型層は、1種又は2種以上の樹脂材料を含有できる。
【0110】
離型層における樹脂材料の含有割合は、好ましくは70質量%以上99質量%以下、より好ましくは80質量%以上98質量%以下である。
【0111】
離型層は、離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、例えば、シリコーンオイル、ワックス、フッ素化合物、リン酸エステル化合物、高級脂肪酸アミド化合物及び金属石けんが挙げられる。離型層は、1種又は2種以上の離型剤を含有できる。
【0112】
離型層における離型剤の含有割合は、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。これにより、転写層の熱転写性をより向上できる。
【0113】
離型層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、充填剤、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤及び分散剤が挙げられる。離型層は、1種又は2種以上の添加剤を含有できる。
離型層の厚さは、好ましくは0.1μm以上5μm以下である。
【0114】
離型層は、例えば、以上に説明した成分を適当な溶媒に分散又は溶解させて得られた塗工液を、上述した公知の塗工方法により、基材上に設けられる任意の層上に塗布及び乾燥することにより形成できる。
【0115】
<背面層>
熱転写シートは、一実施形態において、基材における転写層が設けられた面とは反対側の面上に、背面層を備える。これにより、熱転写時の加熱によるスティッキング及びシワの発生を抑制できる。
【0116】
背面層は、樹脂材料を含有することが好ましい。樹脂材料としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアセタール、シリコーン変性ポリウレタン及びフッ素変性ポリウレタンが挙げられる。背面層は、1種又は2種以上の樹脂材料を含有できる。
【0117】
背面層は、シリコーンオイル、ワックス、フッ素化合物、リン酸エステル化合物、高級脂肪酸アミド化合物及び金属石けん等の離型剤;イソシアネート化合物等の硬化剤;フッ素樹脂等の有機粒子;シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム等の無機粒子;などの添加剤を含有してもよい。これにより、背面層のスリップ性を向上できる。背面層は、1種又は2種以上の添加剤を含有できる。
【0118】
背面層の厚さは、好ましくは0.01μm以上5μm以下、より好ましくは0.03μm以上2μm以下である。これにより、熱転写時の熱エネルギーの伝達性を維持しつつ、スティッキング及びシワの発生をより抑制できる。
【0119】
背面層は、例えば、以上に説明した成分を適当な溶媒に分散又は溶解させて得られた塗工液を、上述した公知の塗工方法により、基材上に塗布及び乾燥することにより形成できる。
【0120】
[印画物の製造方法]
本開示の一実施形態による印画物の製造方法は、本開示の熱転写シートを用いて、表面に画像を備える被転写体における画像を少なくとも被覆するように、画像上に転写層を転写する工程を含む。
画像としては、上述した白色層から構成される画像が好ましい。
【0121】
本開示の他の実施形態による印画物の製造方法は、被転写体上に、本開示の、色材層及び転写層を面順次に基材上に備える熱転写シートにおける色材層を転写して画像を形成し、続いて画像を少なくとも被覆するように、画像上に、当該熱転写シートにおける転写層を転写する工程を含む。
色材層としては、上述した白色層が好ましい。
【0122】
本開示の熱転写シートにおける、保護層を備える転写層が転写される被転写体としては、表面に画像を備える被転写体であれば特に限定されない。表面に画像を備える被転写体は、通常、画像の形成部分と非形成部分との段差を有する。
【0123】
上記画像における段差の高さは、好ましくは0.5μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上8μm以下、さらに好ましくは2μm以上6μm以下である。段差の高さは、通常、被転写体の基体表面に形成された画像の厚さであり、一実施形態において被転写体の基体表面に形成された白色層の厚さである。接着層が存在する場合は、上記高さは接着層の厚さも含む。
【0124】
被転写体における基体としては、例えば、普通紙、上質紙、天然繊維紙、コート紙、トレーシングペーパー等の紙基材;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、イミド樹脂、スチレン樹脂、セルロース樹脂、ポリカーボネート等の樹脂材料から構成される、プラスチックカード又はプラスチックフィルム;ガラス板、金属板、セラミックス板、木材、布が挙げられる。
【0125】
本開示において、転写方法としては、例えば、サーマルヘッドによるサーマルプリンタ(熱転写プリンタ)を用いる方法、ホットスタンプを用いる方法、及びヒートロールを用いる方法が挙げられる。転写層を転写する工程において、転写温度は、好ましくは90℃以上150℃以下、より好ましくは100℃以上140℃以下である。
【0126】
本開示は、例えば以下の[1]~[13]に関する。
[1]基材と、基材上に剥離可能に設けられた転写層とを備える熱転写シートであって、転写層が、転写層における表面層を構成している保護層を備え、保護層側から測定した100℃における弾性率が、0.060MPa以上0.140MPa以下である、熱転写シート。
[2]100℃における弾性率が、0.070MPa以上0.140MPa以下である、上記[1]に記載の熱転写シート。
[3]基材と、基材上に剥離可能に設けられた転写層とを備える熱転写シートであって、転写層が、転写層における表面層を構成している保護層を備え、保護層が、ポリエステルAと、ポリエステルBとを含有し、ポリエステルAのガラス転移温度が、-35℃以上-15℃以下であり、ポリエステルBのガラス転移温度が、58℃以上65℃以下である、熱転写シート。
[4]ポリエステルAのガラス転移温度が、-25℃以上-15℃以下である、上記[3]に記載の熱転写シート。
[5]保護層が、粒子をさらに含有する、上記[3]又は[4]に記載の熱転写シート。
[6]粒子が、シリカ粒子である、上記[5]に記載の熱転写シート。
[7]転写層が、保護層における基材側の面上に第2の保護層をさらに備え、第2の保護層が、ガラス転移温度が60℃以上70℃以下の樹脂材料を含有する、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の熱転写シート。
[8]樹脂材料が、ガラス転移温度が60℃以上70℃以下のポリエステルである、上記[7]に記載の熱転写シート。
[9]転写層が、基材の最も近くに位置する層として剥離層をさらに備える、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の熱転写シート。
[10]基材上に、転写層と面順次に、色材層をさらに備える、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の熱転写シート。
[11]色材層が、白色顔料及び樹脂材料を含有する白色層である、上記[10]に記載の熱転写シート。
[12]上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の熱転写シートを用いて、表面に画像を備える被転写体における画像を少なくとも被覆するように、画像上に転写層を転写する工程を含む、印画物の製造方法。
[13]被転写体上に、上記[10]又は[11]に記載の熱転写シートが備える色材層を転写して画像を形成し、続いて画像を少なくとも被覆するように、画像上に、熱転写シートが備える転写層を転写する工程を含む、印画物の製造方法。
【実施例】
【0127】
本開示の熱転写シートを、実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本開示の熱転写シートは実施例に限定されない。以下の説明において、「部」は「質量部」を意味する。
【0128】
[実施例1]
<白色層を備える熱転写シート>
厚さ4.5μmのPETフィルムを準備した。PETフィルムの一方の面に、下記組成の白色層形成用塗工液を塗布及び乾燥し、厚さ2μmの白色層を形成した。白色層上に、下記組成の接着層形成用塗工液を塗布及び乾燥し、厚さ0.5μmの接着層を形成した。PETフィルムの他方の面に、下記組成の背面層形成用塗工液を塗布及び乾燥し、厚さ0.1μmの背面層を形成した。このようにして、白色層を備える熱転写シートを得た。
【0129】
(白色層形成用塗工液)
・酸化チタン 260部
(石原産業(株)製、R-780)
・(メタ)アクリル樹脂 36.8部
(三菱ケミカル(株)製、ダイヤナール(登録商標)BR-87、
Tg:105℃、Mn:25,000)
・(メタ)アクリル樹脂 4.2部
(三菱ケミカル(株)製、ダイヤナール(登録商標)BR-85、
Tg:105℃、Mn:280,000)
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体 2.2部
(日信化学工業(株)製、ソルバイン(登録商標)CNL、
Tg:76℃、Mn:16,000)
・ポリエステル 2.5部
(東洋紡(株)製、バイロン(登録商標)200、
Tg:67℃、Mn:17,000)
・メチルエチルケトン(MEK) 100部
・トルエン 100部
【0130】
(接着層形成用塗工液)
・(メタ)アクリル樹脂 40部
(JSR(株)製、AE866)
・ポリエステル 34部
(東洋紡(株)製、バイロナール(登録商標)MD-1200、
Tg:67℃、Mn:15,000)
・イソプロピルアルコール(IPA) 100部
・水 100部
【0131】
(背面層形成用塗工液)
・ポリビニルブチラール 2.0部
(積水化学工業(株)製、エスレック(登録商標)BX-1)
・ポリイソシアネート 9.2部
(DIC(株)製、バーノック(登録商標)D750)
・リン酸エステル系界面活性剤 1.3部
(第一工業製薬(株)製、プライサーフ(登録商標)A208N)
・タルク 0.3部
(日本タルク工業(株)製、ミクロエース(登録商標)P-3)
・トルエン 43.6部
・MEK 43.6部
【0132】
<保護層を備える熱転写シート>
厚さ4.5μmのPETフィルムを準備した。PETフィルムの一方の面に、下記組成の剥離層形成用塗工液を塗布及び乾燥し、厚さ1μmの剥離層を形成した。剥離層上に、下記組成の第2の保護層形成用塗工液を塗布及び乾燥し、厚さ1μmの第2の保護層を形成した。第2の保護層上に、下記組成の第1の保護層形成用塗工液を塗布及び乾燥し、厚さ2μmの第1の保護層を形成した。PETフィルムの他方の面に、下記組成の背面層形成用塗工液を塗布及び乾燥し、厚さ0.1μmの背面層を形成した。このようにして、保護層を備える熱転写シートを得た。上記熱転写シートは、背面層と、基材と、剥離層、第2の保護層及び第1の保護層を含む転写層とを備える。
【0133】
(剥離層形成用塗工液)
・(メタ)アクリル樹脂 20部
(綜研化学(株)製、サーモラックLP-45M-30、Tg:105℃)
・MEK 80部
【0134】
(第2の保護層形成用塗工液)
・ポリエステル 90部
(東洋紡(株)製、バイロン(登録商標)822、
Tg:68℃、Mn:15,000)
・コロイダルシリカ 10部
(日産化学(株)製、AC-2140Z)
・MEK 400部
コロイダルシリカの量は固形分量である。
【0135】
(第1の保護層形成用塗工液)
・ポリエステル 80部
(東洋紡(株)製、バイロン(登録商標)GK250、
Tg:60℃、Mn:10,000)
・ポリエステル 10部
(東洋紡(株)製、バイロン(登録商標)GA6400、
Tg:-20℃、Tm:96℃、Mn:30,000)
・コロイダルシリカ 10部
(日産化学(株)製、AC-2140Z)
・MEK 400部
コロイダルシリカの量は固形分量である。
【0136】
(背面層形成用塗工液)
・ポリビニルブチラール 2.0部
(積水化学工業(株)製、エスレック(登録商標)BX-1)
・ポリイソシアネート 9.2部
(DIC(株)製、バーノック(登録商標)D750)
・リン酸エステル系界面活性剤 1.3部
(第一工業製薬(株)製、プライサーフ(登録商標)A208N)
・タルク 0.3部
(日本タルク工業(株)製、ミクロエース(登録商標)P-3)
・トルエン 43.6部
・MEK 43.6部
【0137】
[実施例2~4及び比較例1~7]
第1の保護層及び第2の保護層におけるポリエステルの種類及び配合量の少なくともいずれかを表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、保護層を備える熱転写シートを作製した。実施例4では、第2の保護層は形成しなかった。表1中の各成分の配合比は固形分比である。
【0138】
表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
(ポリエステル)
・バイロン822 :東洋紡(株)製、バイロン822、非晶性ポリエステル
Tg:68℃、Mn:15,000
・バイロン200 :東洋紡(株)製、バイロン200、非晶性ポリエステル
Tg:67℃、Mn:17,000
・バイロンGK250 :東洋紡(株)製、バイロンGK250、非晶性ポリエステル
Tg:60℃、Mn:10,000
・バイロン660 :東洋紡(株)製、バイロン660、非晶性ポリエステル
Tg:55℃、Mn:8,000
・バイロン560 :東洋紡(株)製、バイロン560、非晶性ポリエステル
Tg:7℃、Mn:19,000
・バイロンGA6400:東洋紡(株)製、バイロンGA6400、結晶性ポリエステル
Tg:-20℃、Tm:96℃、Mn:30,000
・エリーテルXA-0653:ユニチカ(株)製、エリーテルXA-0653、
非晶性ポリエステル、Tg:56℃、Mn:4,000
・エリーテルUE-3410:ユニチカ(株)製、エリーテルUE-3410、
結晶性ポリエステル、Tg:-32℃、Mn:20,000
バイロン及びエリーテルは、いずれも登録商標である。
【0139】
(シリカナノ粒子)
・コロイダルシリカ:日産化学(株)製、AC-2140Z
【0140】
[評価]
<100℃における弾性率>
ISO 14577-1のナノインデーション法に準拠し、100℃の加温下において、対面角が90°の四角錘型圧子を用いて、熱転写シートにおける基材上の第1の保護層について、第1の保護層表面に対し、押込み荷重を変化させながら荷重時間10秒で押し込み、押込み深さが1μmに到達した後、5秒間保持してから、60秒かけて除荷するという条件で、弾性率を測定した。
【0141】
<ブリッジ>
被転写体であるポリ塩化ビニル(PVC)カード上に、上記白色層を備える熱転写シートを用いて下記の白色層の転写条件で白色層を転写し、厚さ2.5μmのベタ画像を形成した。次いで、ベタ画像を完全に覆うように、上記保護層を備える熱転写シートを用いて下記の転写層の転写条件で転写層を転写し、印画物を得た。白色層周辺部とPVCカードとの段差部分における転写層を目視により観察し、下記評価基準に基づいて評価した。
【0142】
(白色層の転写条件)
・サーマルヘッド :KEE-57-12GAN2-STA(京セラ(株)製)
・発熱体平均抵抗値 :3303Ω
・主走査方向印字密度:300dpi
・副走査方向印字密度:300dpi
・印画電圧 :18.0V
・ライン周期 :1.5msec./line
・印字開始温度 :35℃
・パルスDuty比 :85%
・印画階調値 :55/255エネルギー階調
【0143】
(転写層の転写条件)
・サーマルヘッド :KEE-57-12GAN2-STA(京セラ(株)製)
・発熱体平均抵抗値 :3303Ω
・主走査方向印字密度:300dpi
・副走査方向印字密度:300dpi
・印画電圧 :18.0V
・ライン周期 :1.5msec./line
・印字開始温度 :35℃
・パルスDuty比 :85%
・印画階調値 :50/255エネルギー階調
【0144】
(評価基準)
AA:転写された転写層において曇りは確認されなかった。
BB:転写された転写層の白色層周辺部に曇りが確認されたが、
実使用上問題のない程度であった。
CC:転写された転写層の白色層周辺部に曇りが多く確認された。
【0145】
基体上の画像を被覆するように保護層を転写した場合、基体と画像との段差部分に保護層が充分に追従できず、保護層と基体との間に空気が内包されることがある。この場合、保護層の一部が基体表面に密着せずに浮いた状態(ブリッジ)となる。上記曇りは、このブリッジに由来すると考えられる。
【0146】
<耐ブロッキング性>
上記保護層を備える熱転写シートを転写層と背面層とが接するように重ね、ブロッキングテスターにて20kg/cm2の荷重下かつ50℃環境下で、48時間保存したときの転写層の表面状態を観察することにより、ブロッキングレベルを評価した。
【0147】
(評価基準)
AA:転写層と背面層との融着、及び転写層の背面層側への移行の発生がない。
BB:転写層と背面層との融着がわずかに見られたが、
転写層の移行はなく、実用上の問題がない。
CC:転写層と背面層とが融着し、転写層の背面層側への移行が見られた。
【0148】
以上の評価結果を表1に示す。
【0149】
【0150】
<耐可塑剤性>
可塑剤入り軟質塩化ビニルシート(三菱化学(株)製、アルトロン#480、厚さ400μm)とブリッジ評価で得られた印画物の転写層転写面とを重ね合わせ、24g/cm2の荷重をかけて80℃環境下に24時間保存した。可塑剤による画像の劣化状態を目視により観察し、転写層の耐可塑剤性を評価した。その結果、実施例4に比べて、実施例1~3は、画像の外観がより良好であった。
【符号の説明】
【0151】
10:熱転写シート
11:基材
12:転写層
13:保護層(第1の保護層)
14:第2の保護層
15:剥離層
16:背面層
20:熱転写シート
21:基材
22:転写層
23:保護層(第1の保護層)
24:第2の保護層
25:剥離層
26:背面層
28:色材層