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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】空気分離装置
(51)【国際特許分類】
   F25J 3/04 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
F25J3/04 102
F25J3/04 104
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024019946
(22)【出願日】2024-02-14
【審査請求日】2024-02-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100229851
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 亜季
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ ホァチン
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 献児
(72)【発明者】
【氏名】富田 伸二
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101619917(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第00694745(EP,A1)
【文献】特許第7355978(JP,B2)
【文献】特開平11-173753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 3/00 - 3/08
C01B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料空気を熱交換する熱交換器と、
前記熱交換器を通過した原料空気が導入される第一精留塔であって、酸素富化液が溜まる第一底部と、前記原料空気を精留する第一精留部と、前記第一精留部の上部に配置され第一蒸発ガスが溜まる第一塔頂部とを有する第一精留塔と、
前記第一塔頂部の上方に配置され、前記第一塔頂部の第一蒸発ガスを凝縮する窒素凝縮器と、
第二精留部と、低圧の窒素ガスが導出される第二塔頂部を有する第二精留塔と、
アルゴンを精留するための第三精留塔であって、前記第二精留塔の第二精留部の中間部から導出される粗アルゴンフィードガスが導入される第三底部と、前記粗アルゴンフィー
ドガスを精留する第三精留部と、アルゴンが溜まる第三塔頂部とを有する第三精留塔と、
前記第三塔頂部の上方に配置され、前記第三塔頂部のアルゴンを凝縮する粗アルゴン凝縮器と、
高純度酸素を精留するための高純度酸素精留塔であって、高純度酸素リボイラーをその下方に配置する酸素塔底部と、前記第三精留塔の第三精留部の中間部から導出される酸素富化液が導入される酸素精留部の上部と、前記第三精留塔の第三精留部の中間部へ戻すために酸素蒸発ガスが導出される酸素塔頂部とを有する高純度酸素精留塔と、
前記原料空気を前記主熱交換器を通過させて、前記第一精留塔の第一底部あるいは第一精留部の下方へ導入するため原料空気導入ラインと、を備え、
前記原料空気の一部が前記高純度酸素リボイラーの熱源で使用される、
空気分離装置。
【請求項2】
前記粗アルゴン凝縮器の上方に配置される上部精留部をさらに備え、
前記第一精留塔の第一底部から導入される酸素富化液の一部が、前記上部精留部の上部に導入され、前記酸素富化液中の酸素を精留する、
請求項1に記載の空気分離装置。
【請求項3】
前記原料空気導入ラインから分岐し、前記高純度酸素リボイラーの熱源で使用され前記第二精留塔の精留部へ導入する第一熱源導入ラインを備え、
前記高純度酸素リボイラーの熱源で使用された原料空気が、前記第二精留塔の第二精留部の中間部へ導入される、
請求項1または2に記載の空気分離装置。
【請求項4】
前記原料空気導入ラインから分岐し、前記高純度酸素リボイラーの熱源で使用され前記上部精留部の上方へ導入する第二熱源導入ラインを備え、
前記高純度酸素リボイラーの熱源で使用された原料空気が前記上部精留部へ導入される、
請求項2に記載の空気分離装置。
【請求項5】
アルゴンおよび超高純度酸素製造方法であって、原料空気を熱交換する主熱交換器、前記主熱交換器を通過した原料空気が導入され、酸素富化液が溜まる第一底部と、前記原料空気を精留する第一精留部と、前記第一精留部の上部に配置され第一蒸発ガスが溜まる第一塔頂部とを有する第一精留塔、前記第一塔頂部の上方に配置され、前記第一塔頂部の第一蒸発ガスを凝縮する窒素凝縮器、第二精留部と、低圧の窒素ガスが導出される第二塔頂部を有する第二精留塔、前記第一精留塔の第一底部から導出される酸素富化液を、前記第二精留部の中間部へ導入するための第一酸素富化液導入ライン、アルゴンを精留するための第三精留塔であって、前記第二精留塔の第二精留部の中間部から導出される粗アルゴンフィードガスが導入される第三底部と、前記粗アルゴンフィードガスを精留する第三精留部と、アルゴンが溜まる第三塔頂部とを有する第三精留塔、前記第三塔頂部の上方に配置され、前記第三塔頂部のアルゴンを凝縮する粗アルゴン凝縮器、酸素富化液と前記粗アルゴン凝縮器の上方から導出される蒸発ガスが導入される上部精留部、前記粗アルゴン凝縮器の上方あるいは前記上部精留部から導出される第二凝縮器蒸発ガスを、前記第二精留部の中間部へ導入するため、あるいは前記第一酸素富化液導入ラインへ合流してから中間部へ導入するための第二凝縮器蒸発ガス導入ライン、および高純度酸素を精留するための高純度酸素精留塔であって、高純度酸素リボイラーと、前記高純度酸素リボイラーをその下方に配置する酸素塔底部と、前記第三精留塔の第三精留部の中間部から導出される酸素富化液が導入される酸素精留部の上部と、前記第三精留塔の第三精留部の中間部へ戻すために酸素蒸発ガスが導出される酸素塔頂部とを有する高純度酸素精留塔とを備える、空気分離装置を用いて、アルゴンおよび高純度酸素を製造し、
前記主熱交換器を通過した原料空気の一部が前記高純度酸素リボイラーの熱源に使用された後で、前記第二凝縮器蒸発ガス導入ラインから第二凝縮器蒸発ガスが導入される前記第二精留塔の中間部よりも上に位置する第二精留部の中間段もしくは上部、または前記粗アルゴン凝縮器の上部精留部に導入される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度酸素およびアルゴンを製造するための空気分離装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業向けなどに炭化水素などの高沸点成分を含まない高純度酸素およびアルゴンの需要が高い。この高純度酸素およびアルゴンを製造するために、例えば、特許文献1に開示されているように、窒素、酸素、アルゴンを製造する、中圧塔、低圧塔、粗アルゴン塔の3つの精留塔を含む深冷空気分離装置がある。特許文献1では、粗アルゴン塔の中間から得られる、高沸点成分が除去された酸素富化液を、中圧窒素ガスをリボイル源として濃縮する方法が記載されている。しかしながら、特許文献1のプロセスでは、中圧窒素ガスを、高純度酸素をリボイルするために使用すると、その分だけ低圧塔底部に供給される中圧窒素ガスが減少する。これは、低圧塔における蒸気流減少を招き、特に分離が困難なアルゴンの回収を著しく減少させ、例えば、アルゴン回収率(20~30%)の低下が懸念されている。
【0003】
特許文献2は、第一精留塔と第二精留塔とアルゴンを精留するための第三精留塔と超高純度酸素を精留するための高純度酸素精留塔とを備える深冷空気分離装置を開示している。高純度酸素用のリボイラー源にリサイクル窒素を使用する。リサイクル窒素を使用すると、主熱交換器の設計が複雑になり、また、窒素圧縮機も必要となる。リサイクル窒素の使用により余分なエネルギーが高純度酸素精留塔に投入されることになるが、一方でアルゴン回収が増加されることはない。
【0004】
特許文献3は、主凝縮器(高圧塔の頂部)、高純度酸素用のリボイラーにリサイクル窒素を導入することを開示している。また、高純度酸素用のリボイラーは、高圧精留塔から導出されたリサイクル窒素または高圧窒素ガスを受け取ることもできる。凝縮後、高純度酸素用のリボイラーの出口内の液化リサイクルガスは、還流液体として高圧精留塔または低圧精留塔のいずれかに送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許公報第5049173号公報
【文献】特許第7355978号公報
【文献】国際特許公開WO2022/058043号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記実情に鑑みて、本開示は、アルゴンの製造量を従来技術よりも低下させることなく高純度酸素を高い収率で回収できる空気分離装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
また、従来よりも装置構成を複雑にすることなく、装置点数も増加させずに、従来技術よりも効果的にアルゴンおよび高純度酸素の高回収を維持することができる空気分離装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のアルゴンおよび超高純度酸素製造方法は、主熱交換器(1)、第一精留塔(中圧精留塔)(2)、窒素凝縮器(3)、第二精留塔(低圧精留塔)(4)、第三精留塔(粗アルゴン塔)(5)、粗アルゴン凝縮器(6)、上部精留部(7)、高純度酸素精留塔(8)、高純度酸素リボイラー(9)を備える、空気分離装置(A1,A2)を用いて、アルゴンおよび高純度酸素を製造し、
前記原料空気の一部を高純度酸素リボイラー(9)の熱源に使用する。
前記熱源に使用された原料空気は、第二精留塔(4)の精留部(43、44)へ導入する、あるいは、前記上部精留部(7)へ導入されてよい。
【0008】
前記空気分離装置(A1,A2)は、
原料空気(Feed air)を熱交換する熱交換器(1)と、
前記熱交換器(1)を通過した原料空気が導入される第一精留塔(中圧塔)(2)であって、酸素富化液が溜まる第一底部(21)と、前記原料空気を精留する第一精留部(22)と、前記第一精留部(22)の上部に配置され第一蒸発ガスが溜まる第一塔頂部(23)とを有する第一精留塔(中圧塔)(2)と、
前記第一塔頂部(23)の上方に配置され、前記第一塔頂部(23)の第一蒸発ガスを凝縮する窒素凝縮器(3)と、
第二精留部(41、42、43)と、低圧の窒素ガスが導出される第二塔頂部(44)を有する第二精留塔(4)と、
アルゴンを精留するための第三精留塔(粗アルゴン塔)(5)であって、前記第二精留塔(4)の第二精留部(40)の中間部(41)から導出される粗アルゴンフィードガスが導入される第三底部(51)と、前記粗アルゴンフィードガスを精留する第三精留部(52)と、アルゴンが溜まる第三塔頂部(53)とを有する第三精留塔(5)と、
前記第三塔頂部(53)の上方に配置され、前記第三塔頂部(53)のアルゴンを凝縮する粗アルゴン凝縮器(6)と、
前記粗アルゴン凝縮器(6)の上方に配置される上部精留部(7)と、
高純度酸素を精留するための高純度酸素精留塔(8)であって、高純度酸素リボイラー(9)をその下方に配置する酸素塔底部(81)と、前記第三精留塔(5)の第三精留部(52)の中間部から導出される酸素富化液(中間部導出液)が導入される酸素精留部(82)の上部(823)と、前記第三精留塔(5)の第三精留部(52)の中間部へ戻すために酸素蒸発ガスが導出される酸素塔頂部(83)とを有する高純度酸素精留塔(8)と、
原料空気を前記主熱交換器(1)を通過させて、前記第一精留塔(2)の第一底部(21)あるいは第一精留部(22)の下方へ導入するため原料空気導入ライン(L1)と、を備え、
前記原料空気の一部を高純度酸素リボイラー(9)の熱源に使用する。
前記空気分離装置(A1、A2)は、
前記原料空気導入ライン(L1)から分岐し、前記高純度酸素リボイラー(9)の熱源で使用され第二精留塔(4)の精留部(43、44)へ導入する第一熱源導入ライン(L11)、あるいは、前記上部精留部(7)へ導入する第二熱源導入ライン(L12)と、を備えていてもよい。
【0009】
前記空気分離装置(A1,A2)は、
前記窒素凝縮器(3)の冷媒相(31)から導出され前記熱交換器(1)を通過し、製品酸素として取り出すための酸素導出ライン(L3)と、
前記酸素導出ライン(L3)に配置され、液体酸素を液送するための送液ポンプ(11)と、
前記第三塔頂部(53)から(製品となりうる)アルゴン(ガス状および/または液状)を取り出すためのアルゴンガス導出ライン(L53)と、
前記第三底部(51)から導出されるアルゴン含有液を、前記第二精留塔(4)の第二精留部(40)の第一中間段(41)へ導入するためのアルゴン含有液導出ライン(L51)と、
前記粗アルゴン凝縮器(6)の上方から導出される蒸発ガスを、前記第二精留部(40)の第二中間段(42)へ導入するための蒸発ガス導入ライン(L71)と、
前記酸素塔底部(81)から(製品となる)高純度液体酸素を取り出すための高純度液体酸素導出ライン(L81)と、
を備えてもいてよい。
【0010】
前記空気分離装置は、
前記第二精留塔(4)の第二塔頂部(44)から導出される低圧窒素ガスを前記熱交換器(1)へ導入するための製品窒素ガスライン(L44)と、
前記第二精留塔(4)の下方の精留部(41)から導出され、主熱交換器(1)へ導入し、途中から導出させたガスを膨張する膨張タービン(10)と、
前記第二精留塔(4)の下方の精留部(41)から導出されるガスを熱交換器(1)へ導入し、途中段から導出して前記膨張タービン(10)で仕事させた後で、再び主熱交換器(1)を通過させて、廃ガスとして取り出す廃ガスライン(L41)と、を備えてもよい。
【0011】
上記構成によれば、第三精留塔(粗アルゴン塔)(5)の精留部下部から、炭化水素等の酸素より高沸点の成分が除去された酸素富化液が高純度酸素精留塔(8)に供給され、精留され、再沸騰されて、蒸気は第三精留塔へ戻り、底部(81)から超高純度酸素(UPOX)が回収される。
超高純度酸素を精留するための超高純度酸素リボイラー(9)の熱源として、主熱交換器(1)で冷却された原料空気の一部が利用される。
需要ポイントの要求に応じ、一定純度のアルゴンおよび高純度酸素を製造するために原料空気の供給量が制御される。
これにより、窒素コンプレッサ、追加の凝縮器を備える必要がなく、装置点数を減少できるとともに、アルゴン製造量を減少させることなく高純度酸素を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1の空気分離装置を示す図である。
図2】実施形態2の空気分離装置を示す図である。
図3】実施例と参考例の空気分離装置を示す図である。
図4】実施例の高純度酸素生産量とアルゴン回収率の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0014】
(実施形態1)
実施形態1の深冷空気分離装置A1について図1を用いて説明する。
空気分離装置A1は、熱交換器1、第一精留塔(中圧塔)2、窒素凝縮器3、第二精留塔(低圧塔)4、第三精留塔(粗アルゴン塔)5、粗アルゴン凝縮器6、上部精留部7、高純度酸素精留塔8、高純度酸素リボイラー9などを基本構成として備える。
【0015】
原料空気(Feed air)は、原料空気導入ラインL1を介して、熱交換器1を通過し、第一精留塔2の第一底部21または第一精留部22へ供給される。
第一精留塔2は、酸素富化液が溜まる第一底部21と、原料空気を精留する第一精留部22と、第一精留部22の上部に配置され第一蒸発ガスが溜まる第一塔頂部23を有する。
窒素凝縮器3は、第一塔頂部23の上方に配置される。窒素凝縮器3は、第一塔頂部23の第一蒸発ガスを凝縮する。
【0016】
第二精留塔4は、窒素凝縮器3の上方に配置される。第二精留塔4は、第二精留部40(41、42、43)と、低圧窒素ガスが導出される第二塔頂部44を有する。
第三精留塔5は、アルゴンを精留する。第三精留塔5は、第二精留塔4の第二精留部40の中間部41、好ましくは、第二精留部40の中央位置よりも下段から導出される粗アルゴンフィードガスが導入される第三塔底部51と、粗アルゴンフィードガスを精留する第三精留部52と、アルゴン(ガス状および/または液状)が溜まる第三塔頂部53を有する。
粗アルゴン凝縮器6は、第三塔頂部53の上方に配置される。粗アルゴン凝縮器6は、第三塔頂部53のアルゴン(ガス状および/または液状)を凝縮する。
【0017】
高純度酸素精留塔8は、超高純度酸素を精留する。高純度酸素精留塔8は、高純度酸素リボイラー9をその下方に配置する酸素塔底部81と、第三精留塔5の第三精留部52の中間部から導出される酸素富化液(中間部導出液)が導入される酸素精留部82と、第三精留塔5の第三精留部52の中間部へ戻すために酸素蒸発ガスが導出される酸素塔頂部83を有する。
【0018】
第一酸素富化液導入ラインL21は、第一精留塔2の第一底部21から導出される酸素富化液を、第二精留部40の中間部42(好ましくは、第二精留部40の中央位置よりも上段)へ導入するためラインである。
第一酸素富化液導入ラインL21から分岐した第一分岐ラインL212は、酸素富化液を上部精留部7へ導入するためのラインである。
第一蒸発ガス導入ラインL23は、第一精留塔2の第一塔頂部23から導出される第一蒸発ガスを、第二精留塔4の第二塔頂部44へ導入するためのラインである。
第一蒸発ガス導入ラインL23から分岐した分岐ラインL231を通じて、第一蒸発ガスの一部は、窒素凝縮器3の熱源として導入され、放熱し冷却されて第一塔頂部23に戻る。
【0019】
酸素導出ラインL3は、窒素凝縮器3の冷媒相31から導出される酸素(ガス状および/または液状)を、熱交換器1を通過させて、酸素を製品酸素として取り出すためのラインである。送液ポンプ11は、酸素導出ラインL3に配置され、液体酸素を送る。
中間部導出ラインL42は、第二精留部40の中間部42、好ましくは、第二精留部40の中央位置よりも下段から導出される粗アルゴンフィードガスを、第三精留塔5の第三塔底部51へ導入するためラインである。
【0020】
製品窒素ガスラインL44は、第二精留塔4の第二塔頂部44から導出される低圧窒素ガスを熱交換器1へ導入し、製品として取り出すためのラインである。
膨張タービン10は、第二精留塔4の下方の精留部41から導出され、主熱交換器1へ導入し、途中から導出させたガスを膨張する。膨張タービン10でガスを膨張させ、寒冷を発生させることで、プロセスガスを使用しながら装置の寒冷バランスを維持することができる。
廃ガスラインL41は、第二精留塔4の下方の精留部41から導出されるガスを熱交換器1へ導入し、途中段から導出して膨張タービン10で仕事させた後で、再び主熱交換器1を通過させて、廃ガスとして取り出すラインである。
【0021】
アルゴン含有液導出ラインL51は、第三塔底部51から導出されるアルゴン含有液を、第二精留塔4の第二精留部40の中間部41、好ましくは第二精留部40の中央位置よりも下段へ導入するためのラインである。
中間部導出ラインL52は、第三精留部52の中間部、好ましくは、第三精留部52の中央位置よりも下段から導出される酸素富化液(中間部導出液)を、酸素精留部82の上部、好ましくは、酸素精留部82の中央位置よりも上段へ導入するためのラインである。
アルゴンガス導出ラインL53は、第三塔頂部53からアルゴン(ガス状および/または液状)を取り出すためのラインである。
アルゴン(ガス状および/または液状)は、アルゴンガス導出ラインL53から分岐した分岐循環ラインL531を通じて、粗アルゴン凝縮器6の熱源として導入され、放熱し冷却されて液化され第三塔頂部53に戻る。
【0022】
第二凝縮器蒸発ガス導入ラインL71は、粗アルゴン凝縮器6の上方あるいは上部精留部7から導出される第二凝縮器蒸発ガスを、第二精留部40の中間部42へ導入するためのライン、あるいは第一酸素富化液導入ラインL21へ合流してから中間部42へ導入するためのラインである。
【0023】
高純度液体酸素導出ラインL81は、酸素塔底部81から高純度液体酸素を取り出すためのラインである。
酸素蒸発ガス導出ラインL83は、酸素塔頂部83から導出される酸素蒸発ガスを、第三精留塔5の精留部52の中間部導出ラインL52の導出位置より上段へ送るためのラインである。
【0024】
高純度酸素リボイラー9は、高純度酸素精留塔8の下方の酸素塔底部81に配置される。高純度酸素リボイラー9の熱源に、主熱交換器1を通過した原料空気の一部が利用される。
第一熱源導入ラインL11は、原料空気の導入ラインL1から分岐し、高純度酸素リボイラー9の熱源で使用され第二精留塔4の精留部の中間段あるいは上部(43または44)へ導入するためのラインである。
【0025】
(実施形態2)
実施形態2の空気分離装置A2を図2を用いて説明する。実施形態1の図1と異なる構成について説明し、同じ構成については説明を省略または簡単にする。
第二熱源導入ラインL12は、原料空気の導入ラインL1から分岐し、高純度酸素リボイラー9の熱源で使用され上部精留部7へ導入するためのラインである。
【0026】
(実施例)
図3に実施例(実施形態1)と、参考例1、2を示す。実施形態1と代わり、参考例1では、第一蒸発ガス導入ラインL23から分岐した分岐ラインL232を通じて、第一蒸発ガスの一部が、高純度酸素リボイラー9の熱源として導入される。参考例2では、第一酸素富化液導入ラインL21から分岐した第二分岐ラインL213を通じて、酸素富化液の一部が、高純度酸素リボイラー9の熱源として導入される。
同量(1mol)の高純度酸素を生成するために、高純度酸素リボイラー(9)の熱源として供給する量は以下の通りであった。つまり、原料空気を熱源に使用することは他よりも効率が高い。
実施例(原料空気の一部) 1:10
参考例1(窒素ガスの一部) 1:140
参考例2(酸素富化液の一部) 1:375
【0027】
実施形態1の窒素発生装置は65kNm/hの能力で設計した。高純度酸素の生産量を増やすと、アルゴンの生産量は減少する。本実施形態1では、アルゴン生成量の減少を抑制しつつ、高純度酸素の生成量も維持することができる。表1および図4に高純度酸素生産量およびアルゴン回収率の関係を示す。例えば、300~400Nm/hの範囲の一定量の高純度酸素(生成酸素含有純度99.0%以上)を生産する場合、アルゴンの回収率は、約88、58%から約82~85%へ減少した。本実施例では、参考例1、2と比較して、アルゴン回収ロスは5%程度に抑えることができる。
【0028】
【表1】
【0029】
(別実施形態)
特に明示していないが、各ラインに圧力調整装置、流量制御装置などが設置され、圧力調整または流量調整が行われていてもよい。
【図面の符号の説明】
【0030】
1 主熱交換器
2 第一精留塔
3 窒素凝縮器
4 第二精留塔
5 第三精留塔
6 粗アルゴン凝縮器
7 上部精留部
8 高純度酸素凝縮器
9 超高純度酸素リボイラー
10 膨張タービン
11 液送ポンプ
【要約】
【課題】アルゴンの製造量を低下させることなく高純度酸素を高い収率で回収できる空気分離装置を提供する。
【解決手段】空気分離装置は、主熱交換器1、第一精留塔2、窒素凝縮器3、第二精留塔4、第三精留塔5、粗アルゴン凝縮器6、高純度酸素精留塔8、高純度酸素リボイラー9を備える。空気分離装置は、主熱交換器1を通過した原料空気の一部を、高純度酸素リボイラー9の熱源に使用する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4