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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】小片物の吸着移送装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20240912BHJP
   B65G 49/07 20060101ALI20240912BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B25J15/06 D
B25J15/06 C
B25J15/06 Z
B65G49/07 H
H01L21/68 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021009935
(22)【出願日】2021-01-25
(65)【公開番号】P2022113601
(43)【公開日】2022-08-04
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】511087372
【氏名又は名称】アルトリスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144509
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋三
(72)【発明者】
【氏名】天野 光明
(72)【発明者】
【氏名】金森 哉吏
(72)【発明者】
【氏名】清水 康平
(72)【発明者】
【氏名】池谷 友佑
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-35350(JP,A)
【文献】特開2020-150131(JP,A)
【文献】特開2004-43173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/06
B65G 49/07
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部ユニットと上部ユニットを備えて構成される吸着移送装置であって、
上記下部ユニットが、
筒状形態を有しその内部を所定容積の吸着部とした吸着部構成体と、
上面が開放された略皿状の環状凹部と該環状凹部の底面を貫通して設けられた底面開口を備えるとともに、該底面開口の周囲にはシート座面を設けた下部本体と、
上記吸着部構成体の上記吸着部と上記下部本体の底面開口の間に、これら両者を区画するようにして設けられた多孔体を備え、
上記上部ユニットが、
短柱状形体を有し且つ外部から供給される流体をその下面側から旋回流又は放射流として噴出させるとともに、その底面にはシート面が設けられた流体流形成体と、
上記上部ユニット側の支持フレームに固定され、上記流体流形成体を昇降駆動し、その上昇位置では該流体流形成体の上記シート面を上記下部本体の上記シート座面から離間させてこれらの間に流体流排出路を形成する一方、その降下位置では上記流体流形成体の上記シート面を上記下部本体の上記シート座面に着座させて上記流体流排出路を閉塞する昇降手段を備えた、
ことを特徴とする小片物の吸着移送装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記流体流形成体が、旋回流を形成する構成とされる一方、
上記多孔体が、上記吸着部構成体の上記吸着部と上記下部本体の底面開口の間において遊回動可能に取り付けられていることを特徴とする小片物の吸着移送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えば、惣菜材料等の小片物を吸着して移送するようにした吸着移送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような惣菜材料等の小片物を吸着移送する吸着移送装置としては、例えば、特許文献1とか特許文献2に示されるものが知られている。
【0003】
特許文献1に示されるものは、一度に複数個の粒状物を定量的に持ち運びすることができるようにした吸着移送装置であって、所定容積をもつ吸着パット2を備え、該吸着パッド2内の空気を第1連結用配管8、第1真空圧流通管7、真空圧通路6の順に吸引することで、該吸着パッド2内を負圧にして、該吸着パッド2内に一定量の粒状物を吸着保持して移送することができるようにしたものである。
【0004】
そして、この吸着移送装置においては、上記吸着パッド2内に吸着保持した一定量の粒状物を該吸着パッド2内から離脱させる方法として、空気吸引を止めて該吸着パッド2内を大気圧に戻す方法(以下、第1の離脱方法)と、さらに吸着パッド2内に、第1連結用配管8、第1真空圧流通管7、真空圧通路6の順で加圧空気を供給する方法(以下、第2の離脱方法)が提案されている。
【0005】
ところが、この特許文献1に示される吸着移送装置においては、上記第1の離脱方法を採用した場合には、例えば、粒状物が豆の煮物のように粒状物の表面が濡れているようなものであるときには、該吸着パッド2の内表面に粒状物が付着してスムーズに離脱させることができないという問題がある。
【0006】
また、上記吸着パッド2内に加圧空気を供給する上記第2の離脱方法を採用した場合には、この吸着移送装置が、加圧空気の供給を空気吸引時と同じ配管で行う構造であることから、例えば、先の空気吸引時に、粒状物の破片等の異物が上記配管内に吸い込まれて配管内に付着していた場合、この異物が、加圧空気の供給とともに上記吸着パッド2内に吹き戻され、これが新たに吸着保持される付着粒に混入し、製品汚染の原因になるという問題がある。
【0007】
一方、特許文献2には、空気等の流体を小孔から噴出することで旋回流または放射流を形成して負圧を発生させる流体流形成体1と、該流体流形成体1の前面側に配置されて上記負圧の吸引作用を受けて苺等を吸着保持する邪魔板2を備え、該邪魔板2部分で吸着保持したまま苺等を移送できるようにした吸着移送装置が提案されている。
【0008】
ところで、この吸着移送装置では、流体流形成体1への流体(空気等)の供給を止めることで負圧を大気圧に戻し、邪魔板2部分に吸着保持した物品を離脱させるようにしているが、例えば、物品が豆の煮物やホウレン草のおひたしのような、小さな小片物であってかつ表面に水分が付着しているものである場合には、これが上記邪魔板2の表面に付着してスムーズに離脱させることができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平4-152087号公報
【文献】特開2018-98450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本願発明は、上述の如き従来の吸着移送装置における問題点に鑑み、小片物の定量移送と、移送後における小片物の安全かつ確実な離脱を、効率良く実行し得るようにした小片物の吸着移送装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0012】
本願の第1の発明に係る小片物の吸着移送装置では、該吸着移送装置1を下部ユニットと上部ユニットで構成するとともに、
上記下部ユニットを、筒状形態を有しその内部を所定容積の吸着部とした吸着部構成体と、上面が開放された略皿状の環状凹部と該環状凹部の底面を貫通して設けられた底面開口を備えるとともに、該底面開口の周囲にはシート座面を設けた下部本体と、上記吸着部構成体の上記吸着部と上記下部本体の底面開口の間に、これら両者を区画するようにして設けられた多孔体で構成し、
上記上部ユニットを、短柱状形体を有し且つ外部から供給される流体をその下面側から旋回流又は放射流として噴出させるとともに、その底面にはシート面が設けられた流体流形成体と、上記上部ユニット側の支持フレームに固定され、上記流体流形成体を昇降駆動し、その上昇位置では該流体流形成体の上記シート面を上記下部本体の上記シート座面から離間させてこれらの間に流体流排出路を形成する一方、その降下位置では上記流体流形成体の上記シート面を上記下部本体の上記シート座面に着座させて上記流体流排出路を閉塞する昇降手段で構成したことを特徴としている。
【0013】
本願の第2の発明に係る小片物の吸着移送装置では、上記第1の発明に係る小片物の吸着移送装置において、上記流体流形成体を、旋回流を形成する構成とする一方、上記多孔体を、上記吸着部構成体の上記吸着部と上記下部本体の底面開口の間において遊回動可能に取り付けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
(a)本願の第1の発明
本願の第1の発明に係る小片物の吸着移送装置によれば、以下のような特有の効果が得られる。
【0015】
(a-1) 小片物を吸着保持する吸着部の内容積及び流体流路面積が一定であるため、吸着部内に掛かる負圧の強さを調節する、即ち、該吸着部における負圧吸引力を調節するだけで、該吸着部に小片物を、任意に設定した所定量ずつ確実に吸着することができ、小片物の定量移送性能が担保される。
【0016】
(a-2) 吸着部に吸着保持された小片物を該吸着部から離脱させる時には、昇降手段によって流体流形成体を降下させて流体流排出路を閉塞すれば、該流体流形成体から噴出される流体流がそのまま上記吸着部内に噴出して該吸着部内を加圧するので、該吸着部内に吸着保持されていた小片物はその表面が濡れているような場合であっても、該吸着部内に付着残留することなく、その全量が上記吸着部から確実に離脱され、高い離脱性能が担保される。
【0017】
(a-3) 上記の小片物の吸着移送装置には、吸着部内の流体を吸引する配管が存在しないので、吸着部からの小片物の離脱時に、例えば上記配管内に付着残留している以前の吸引時に吸引された小片物の破片等の異物が、上記吸着部側に戻って来るということがなく、該吸着部での製品汚染が未然に防止され、特に該小片物が食材である場合には、食の安全性の確保という面でその効果は高いものとなる。
【0018】
(a-4) 上記吸着部に吸着保持された小片物を離脱させる際に、上記流体流形成体からの流体の噴出を止める必要はなく、該流体流形成体からの流体の噴出を継続させたまま、上記流体流形成体を降下させることで、上記流体流形成体から噴出する流体を上記吸着部に供給して該吸着部内を加圧することができる。つまり、上記吸着部内の吸引動作と加圧動作を上記流体流形成体の移動によって瞬時に切り替えることができるため、小片物の吸着と離脱を短時間で行うことが可能となり、小片物の吸着移送作業の効率化が促進される。
【0019】
(b)本願の第2の発明
本願の第2の発明に係る小片物の吸着移送装置によれば、上記流体流形成体を、旋回流を形成する構成とする一方、上記多孔体を、上記吸着部構成体の上記吸着部と上記下部本体の底面開口の間において遊回動可能に取り付けたので、上記吸着部から小片物を離脱させる際に、上記多孔体が旋回流を受けて回転し、該多孔体に接した、又はその近傍にある小片物に遠心力を生じさせることから、吸着部に付着した小片物を確実に離脱させることができ、離脱動作の迅速化が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本願発明の第1の実施形態に係る小片物の吸着移送装置の小片物吸着動作時における構造説明図である。
図2図1のA-A矢視図である。
図3】上記小片物の吸着移送装置の小片物離脱動作時における構造説明図である。
図4】本願発明の第2の実施形態に係る小片物の吸着移送装置の小片物吸着動作時における構造説明図である。
図5】上記小片物の吸着移送装置の小片物離脱動作時における構造説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
A:第1の実施形態
図1図3には、本願発明の第1の実施形態に係る小片物の吸着移送装置1を示している。そして、これら各図のうち、図1は小片物の吸着状態を示しており、図3は小片物の離脱状態を、それぞれ示している。また、図2は上記吸着移送装置1をその下方側から見上げた状態を示している。以下、これら図1図3を参照して上記吸着移送装置1の構成等を具体的に説明する。
【0022】
A-1:吸着移送装置1の構成
上記吸着移送装置1は、例えば、豆の煮物やホウレン草のおひたしのような小片物で、且つ表面が湿った物を所定量ずつ吸着保持して移送し、移送先にてこれを離脱させる作業に供されるものであって、可動部をもたない下部ユニット2と可動部をもつ上部ユニット3を備えて構成される。
【0023】
(a)下部ユニット2
上記下部ユニット2は、次述の吸着部構成体5と下部本体7及び多孔体8を備えて構成される。
【0024】
上記吸着部構成体5は、所定厚さの円板体で成るフランジ部5Aと、該フランジ部5Aの中心部分を板厚方向に貫通して形成された所定径の円筒部5Bで構成され、この円筒部5Bの内部空間を吸着部6とし、この吸着部6内に所容量の小片物Pを収納するようになっている。
【0025】
上記下部本体7は、上記吸着部構成体5と略同径の厚円材で構成され、その上面側には略皿状の環状凹部70が形成されるとともに、その底面の中心位置には、上記吸着部構成体5の上記吸着部6と略同径の底面開口71が形成されている。また、上記環状凹部70の周壁73は傾斜面とされるとともに、この周壁73の下端縁と上記底面開口71の開口縁の間の環状平面部は、後述する流体流形成体30の下面が着座するシート座面72とされている。
【0026】
そして、上記吸着部構成体5と上記下部本体7は、上下方向に積層状態で、着脱自在に締結一体化される。この場合、これらの衝合部には、図2に示すように多孔体8(この実施形態ではステンレス製多孔体で構成しているが、さらに他の実施形態ではステンレス網体で構成することもできる)が、遊回動可能に取り付けられており、この多孔体8によって、上記環状凹部70と吸着部6は上下方向に通気可能に区画された状態となっている。
【0027】
このように上記多孔体8を遊回動可能に取り付けたのは、後述するように、上記流体流形成体30から噴出される旋回流(空気流)によって該多孔体8を回転させるためであるが、該多孔体8を回転させるためには、例えば、該多孔体8が直径50mm、厚さ1mmのステンレス板で構成された場合には、上記吸着部構成体5と上記下部本体7の間への配置状態において、その厚さ方向に0.1~0.2mm程度のクリアランスが必要である。また、この多孔体8に接触する部分には、摩耗し難いPEEK(Poly Ether Ether Keton)樹脂等の耐摩耗材を採用することが望ましく、また定期的に交換することも必要である。
【0028】
(b)上部ユニット3
上記上部ユニット3は、次述の流体流形成体30と昇降手段32及び支持フレーム10を備えて構成される。
【0029】
上記流体流形成体30は、短円柱状形体をもち、流体導入路34に供給される流体(この実施形態では加圧空気)を受けて、旋回流を形成してこれを上記流体流形成体30の下面側に設けた流体流噴出口36から噴出させ(図1の流線f1参照)、上記下部ユニット2の下部本体7との間にベルヌーイ効果によって負圧領域76を発生させるものであって、この実施形態では該流体流形成体30として市販品を採用している。
【0030】
また、この実施形態では、上記流体流形成体30の下面の周縁部(即ち、上記下部本体7のシート座面72に対向する部分)をシート面75としている。
【0031】
上記昇降手段32は、エアシリンダとかソレノイドシリンダ等で構成されるものであって、この実施形態ではエアシリンダを採用しており、制御流体供給路41及び42を介して適宜に供給される制御流体(この実施形態では加圧空気)によって伸縮駆動される。
【0032】
そして、この昇降手段32は、上記下部本体7に立設固定された支持柱12と該支持柱12の先端に取り付けられた天板材11とからなる支持フレーム10の上記天板材11にその後端が垂下固定される一方、その先端は上記流体流形成体30に立設固定されたフレーム体31の天板材33に固定されている。
【0033】
したがって、上記流体流形成体30は、上記昇降手段32の伸縮動によって、図1に示すように上記流体流形成体30のシート面75が上記下部本体7のシート座面72から離間した上昇位置と、図3に示すように上記流体流形成体30のシート面75が上記下部本体7のシート座面72に当接して着座した降下位置の間で昇降駆動される。
【0034】
そして、図1に示すように、上記流体流形成体30の上昇位置においては、該流体流形成体30の下面と上記下部本体7の周壁73の間に、該流体流形成体30の下面側から該流体流形成体30の周縁部を迂回してその上面側に開口する環状の流体流排出路74が形成される。したがって、この流体流排出路74を旋回流(空気流)が流れることで、ベルヌーイ効果により上記流体流形成体30の下面側に負圧領域76が形成される。
【0035】
これに対して、図3に示すように、上記流体流形成体30の降下位置においては、上記流体流排出路74が閉塞され、該流体流形成体30側から噴出する旋回流はそのまま上記吸着部6側に流入して該吸着部6内を加圧する。
【0036】
なお、上記吸着移送装置1は、上記支持フレーム10の天板材11をロボットアーム13の先端部に取り付けることで、該ロボットアーム13によって自動的に移動されるが、この他に、上記ロボットアーム13に取り付けることなく、該吸着移送装置1を作業者が手で掴んで移動させることもでき、これら何れの移動方式を採るかは、作業内容に応じて決定すれば良い。
【0037】
(c) 作動説明等
c-1:小片物の吸着保持動作
小片物の吸着保持に際しては、図1に示すように、上記昇降手段32によって上記流体流形成体30を上昇位置に設定し、流体流形成体30の底面側から周縁側に延びる流体流排出路74を確保する。この状態で、上記流体流形成体30に加圧空気を供給すると、該流体流形成体30の底面側に設けた流体流噴出口36から旋回流(空気流)が上記流体流排出路74側に噴出される(図1の流線f1参照)。
【0038】
この旋回流の噴出に伴って上記流体流形成体30の下側部分にベルヌーイ効果によって負圧領域76が形成され、上記吸着部6部分には、図1に示すように外方から上記負圧領域76に向かう空気流f2が生じる。
【0039】
したがって、上記吸着移送装置1をロボットアーム13によって、あるいは作業者が手で掴んで移動させ、上記吸着部6の開口側を、例えば、豆の煮物やホウレン草のおひたしのような小片物Pがストックされた場所へ移動させると、小片物Pは該吸着部6に作用する吸引力によって吸引され、該吸着部6内に収容され、上記多孔体8に当接した状態で吸着保持される。この状態が図1に示す状態である。
【0040】
この場合、上記吸着部6はその容積及び流体流路面積が一定とされているので、上記吸着部6内に掛かる負圧の強さを調節する、即ち、該吸着部6における負圧吸引力を調節することによって、該吸着部6に小片物Pを、任意に設定した所定量ずつ確実に吸着して保持することができ、小片物Pの定量移送という面での信頼性が担保される。
【0041】
c-2:小片物の離脱動作
上記小片物Pを上記吸着部6に吸着保持した上記吸着移送装置1は、所定の離脱位置まで移送された後、ここで上記吸着部6に保持した小片物Pを離脱させる。この小片物Pの離脱動作は、図3に示すように、上記昇降手段32によって上記流体流形成体30を上昇位置から降下させて降下位置に設定して行われる。
【0042】
このように上記流体流形成体30を降下位置に設定すると、ベルヌーイ効果により形成されていた負圧吸引作用が消滅し、上記吸着部6内に保持されていた小片物Pが順次落下排出されるが、それと同時に、上記流体流形成体30から噴出される旋回流がそのまま上記吸着部6内に噴出して該吸着部6内を加圧するので(図3の流線f2参照)、該小片物Pは該吸着部6内に付着残留することなく、上記吸着部6から確実に離脱される(加圧による離脱促進作用)。
【0043】
さらに、上記旋回流が上記多孔体8を通過する際、多孔体8を回転させ、該多孔体8に接触し、あるいはその近傍にある小片物Pに遠心力が付与されることから、例え上記小片物Pの表面が濡れていても、上記吸着部6の表面あるいは上記多孔体8に付着し易いものであったとしても、該吸着部6の表面あるいは上記多孔体8から強制的に落下排出される(遠心力による離脱促進作用)。
【0044】
これら各作用の相乗効果によって、上記小片物の上記吸着部6からの離脱が容易且つ迅速に行われ、高い離脱性能が確保される。
【0045】
また、この実施形態の吸着移送装置1においては、上記吸着部6内の空気を吸引する配管が存在しないので、配管内に吸引されて付着残存していた異物が、上記吸着部6からの小片物Pの離脱動作時に吸着部6側に戻って来るということがなく、該吸着部6での製品汚染が未然に防止され、特に該小片物Pが食材であるような場合には、食の安全性が担保される。
【0046】
さらに、この実施形態の吸着移送装置1においては、上記吸着部6に吸着保持された小片物Pを離脱させる際は、上記流体流形成体30からの流体の噴出を止める必要はなく、該流体流形成体30からの流体の噴出を継続させたまま、単に、上記流体流形成体30を降下させることで、流体流排出路74を閉じて上記流体流形成体30からの旋回流(空気流)を上記吸着部6に噴出させて該吸着部6内を加圧することができるように構成されている。
【0047】
したがって、上記吸着部6内の吸引動作と加圧動作を上記流体流形成体30の移動によって瞬時に切り替えることができるため、小片物Pの吸着と離脱をより短時間で効率よく行うことができ、小片物Pの吸着移送作業の効率化が促進される。
【0048】
B:第2の実施形態
図4及び図5には、本願発明の第2の実施形態に係る小片物の吸着移送装置1を示している。そして、これらのうち、図4は小片物の吸着状態を示した図であり、図5は小片物の離脱状態を示した図である。
【0049】
この第2の実施形態の吸着移送装置1は、その基本構成を上記第1の実施形態の吸着移送装置1と同じとし、これと異なる点は、上記流体流形成体30の構成、及びこれに伴う特有な構造である。即ち、第1の実施形態の吸着移送装置1では、上記流体流形成体30は旋回流を形成する構成としていたのに対して、この第2の実施形態の吸着移送装置1では上記流体流形成体30を、放射流を形成する構成とした点である。
【0050】
このため、ここでは第1の実施形態の吸着移送装置1とは異なる点を中心に説明し、それ以外の基本的な構成及び作用効果等については第1の実施形態における該当説明を援用し、ここでの説明を省略する。なお、符号は、可能な限り、第1の実施形態において使用した符号を使用する。
【0051】
図4に示すように、この実施形態の吸着移送装置1においては、上記流体流形成体30から噴出される放射流(空気流)(図4の流線f1参照)は、周回方向に拡散されることなく、上記流体流排出路74を通って排出され、その結果、上記流体流形成体30の下面側にはベルヌーイ効果によって負圧領域76が形成される。
【0052】
したがって、上記吸着移送装置1をロボットアーム13によって、または作業者の手動によって、多数の小片物Pがストックされている場所に移動させ、上記吸着部6の先端側をここに近づけることで、上記負圧領域76に作用する吸引力(図4の流線f2参照)によって、上記吸着部6内に所容量の小片物Pが順次吸い込まれ、上記多孔体8の手前側に吸着保持される。
【0053】
また、上記吸着部構成体5と下部本体7の衝合部には上記多孔体8が取り付けられるが、この多孔体8は、第1の実施形態のように回転させる必要が無いことから、該衝合部に固定的に取り付けられており(具体的には、上記吸着部構成体5側に固定される)、それ本来の機能、即ち、上記吸着部6内に保持される小片物Pの上記負圧領域76側への移動規制機能と、通気性の確保機能を持てば十分である。したがって、上記第1の実施形態における上記多孔体8よりも、構造が簡単で且つ安価なものとすることができる。
【0054】
なお、上記多孔体8が上記吸着部構成体5側に固定されていることで、該多孔体8を取り外しての清掃は、上記下部本体7から上記吸着部構成体5を取り外すことで容易に行うことができ、高いメンテナンス性が確保される。
【0055】
また、この小片物Pの吸着保持作用そのものには、上記第1実施形態の吸着移送装置1の場合と大きな差はないが、上記吸着部6に吸着保持した小片物Pの該吸着部6からの離脱動作においては、少し差がある。
【0056】
即ち、この小片物Pの該吸着部6からの離脱動作は、図5に示すように、上記流体流形成体30を降下位置に設定した状態で行われる。この場合、上記流体流排出路74が上記流体流形成体30によって閉塞されているので、上記流体流形成体30から噴出された
放射流は噴出後、そのまま上記吸着部6内に流入し、該吸着部6内の加圧作用を為す(図5の流線f2参照)。
【0057】
このため、上記吸着部6内に吸着保持されていた小片物Pは、負圧吸引作用が働かないので、該小片物Pの自重による落下作用と、上記放射流による加圧作用を受けて、上記吸着部6から離脱される。したがって、第1実施形態の場合のような上記多孔体8の回転に伴う遠心力による離脱作用が働かない分、上記第1実施形態の場合よりも離脱能力が落ちることになるが、この多孔体8の回転に基づく離脱作用は、上記放射流の加圧作用に基づく離脱作用に比して小さいことから、吸着移送装置1全体として見た場合、離脱性能上は大きな問題とならない。
【0058】
また、上記流体流形成体30からの噴出流を旋回流ではなく、放射流としたことの効果、及び上記多孔体8の取り付け構造の簡易化に伴う効果が生ずる。即ち、この実施形態の吸着移送装置1では、上記多孔体8を吸着部構成体5に固定的に取り付けたこと、及び放射流が旋回成分をもたないことから、該多孔体8の振動に伴う騒音が少なく、その分、吸着移送装置1の静粛運転が促進される。
【0059】
また、上記多孔体8を固定的に取り付けることで、この取り付け部の構造が簡略化されるとともに、耐摩耗材の採用が不要で且つその交換作業も不要になることで、コスト低減が図れる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本願発明に係る小片物の吸着移送装置は、小片物の移送工程を必須の作業工程とする、例えば、食品の製造、加工分野において広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0061】
1 ・・吸着移送装置
2 ・・下部ユニット
3 ・・上部ユニット
5 ・・吸着部構成体
6 ・・吸着部
7 ・・下部本体
8 ・・多孔体
10 ・・支持フレーム
13 ・・ロボットアーム
30 ・・流体流形成体
31 ・・ フレーム体
32 ・・昇降手段
36 ・・流体流噴出口
70 ・・環状凹部
71 ・・底面開口
72 ・・シート座面
73 ・・周壁
74 ・・流体流排出路
75 ・・シート面
P ・・ 小片物
図1
図2
図3
図4
図5