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特許7554438体調変化検知装置、体調変化管理プログラム及び体調変化管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】体調変化検知装置、体調変化管理プログラム及び体調変化管理システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/08 20060101AFI20240912BHJP
   A61B 5/113 20060101ALI20240912BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240912BHJP
   A61B 7/04 20060101ALI20240912BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61B5/08
A61B5/113
A61B5/11 100
A61B7/04 B
A61B5/00 101R
A61B5/00 102A
A61B10/00 L
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022526998
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(86)【国際出願番号】 JP2021019421
(87)【国際公開番号】W WO2021241453
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2020091416
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513158081
【氏名又は名称】島崎 拓則
(73)【特許権者】
【識別番号】595151501
【氏名又は名称】株式会社メッツ
(73)【特許権者】
【識別番号】520173196
【氏名又は名称】有限会社エムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】島崎 拓則
(72)【発明者】
【氏名】福田 充宏
(72)【発明者】
【氏名】青木 大和
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0177432(US,A1)
【文献】国際公開第2012/014691(WO,A1)
【文献】特開2003-038460(JP,A)
【文献】特表2016-529966(JP,A)
【文献】特開平08-117199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
A61B 5/00 - 5/03
A61B 7/00 - 7/04
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の体調変化を検知する体調変化検知装置において、
裏面が前記対象者の体表面に当接するように装着可能なケーシングと、
前記対象者の前記体表面に当接するように前記ケーシングの前記裏面に設けられ、前記対象者の体表面に伝わる組織の振動の音を検知することによって、前記対象者の気道の変動を検知する気道変動検知部と、を備え、
前記気道変動検知部は、前記対象者の前記体表面から前記組織の振動の音として前記対象者の筋肉組織の振動の音を検知するマイクロフォンであり、
前記マイクロフォンは、前記体表面と当接する外装部を有し、前記外装部に設けた集音口が前記ケーシングの前記裏面側に配置されることにより、前記体表面と当接しており、前記筋肉組織の振動の音を介して前記対象者の気道の変動を検知す
体調変化検知装置。
【請求項2】
記集音口には、薄膜が設けられている
請求項1に記載の体調変化検知装置。
【請求項3】
前記気道変動検知部で検知された前記組織の振動の音の周波数、振幅又は位相の少なくとも何れかを用いて、前記対象者の気道の変動を解析する解析部を更に備える
請求項1又は2に記載の体調変化検知装置。
【請求項4】
前記薄膜は、前記外装部の内部に設けられる集音機能部に密着する
請求項に記載の体調変化検知装置。
【請求項5】
前記マイクロフォンは、前記ケーシングに複数設けられている
請求項1~4の何れか1項に記載の体調変化検知装置。
【請求項6】
前記マイクロフォンは、前記組織の振動の音を介して前記対象者の咳の回数を計測する
請求項1~5の何れか1項に記載の体調変化検知装置。
【請求項7】
前記体調変化検知装置を装着した前記対象者の位置を検知する位置センサを更に備える
請求項1~6の何れか1項に記載の体調変化検知装置。
【請求項8】
前記対象者の前記体表面に対向して設けられ、前記対象者の前記体表面から得られる生体情報の変動を検知する体表面側生体情報検知部と、
前記体表面側生体情報検知部と反対側に向けて設けられ、前記対象者の前記体表面から離れた外部の熱変動を検知する外部熱変動検知部と、を更に備える
請求項1~7の何れか1項に記載の体調変化検知装置。
【請求項9】
ベルトを介して前記ケーシングを前記対象者にウェアラブルに取り付け可能に構成されている
請求項1~8の何れか1項に記載の体調変化検知装置。
【請求項10】
少なくとも1つのプロセッサを、少なくとも受信部、判定部として機能させて対象者の体調変化を管理する体調変化管理プログラムであって、
前記受信部は、請求項1~9の何れか1項に記載の体調変化検知装置が検知した前記対象者の体表面から得られる組織の振動による気道の変動を示す測定データを取得可能に構成され、
前記判定部は、少なくとも前記測定データに基づいて、前記対象者の前記体調変化の発生リスクの有無を判定可能に構成される
体調変化管理プログラム。
【請求項11】
さらに前記体調変化管理プログラムは、前記プロセッサを送信部として機能させるものであり、
前記送信部は、前記判定部の判定結果を少なくとも外部機器に送信可能に構成される
請求項10に記載の体調変化管理プログラム。
【請求項12】
前記受信部は、前記対象者が体感した体調に関する主観的データを取得可能に構成されており、
前記判定部は、前記測定データと前記主観的データとに基づいて、前記発生リスクの有無を判定可能に構成される
請求項10又は11に記載の体調変化管理プログラム。
【請求項13】
前記送信部は、前記判定部が前記対象者の前記体調変化の発生リスクがあると判定した場合に、前記外部機器に前記発生リスクがある旨の警報を送信可能に構成される
請求項11に記載の体調変化管理プログラム。
【請求項14】
前記送信部は、前記判定部が前記対象者の前記体調変化の発生リスクがあると判定した場合に、前記外部機器に前記対象者の自宅待機を推奨する通知を送信可能に構成される
請求項11に記載の体調変化管理プログラム。
【請求項15】
前記主観的データは、前記対象者の前記体調変化に関するアンケートの回答データを含む
請求項12に記載の体調変化管理プログラム。
【請求項16】
前記判定部は、前記対象者ごとに、前記回答データに基づいて、前記測定データに対して体調変化を識別するためのアノテーション処理を実行し、前記対象者ごとに固有の体調変化の発生リスクの有無比較判定するためのラベル付き客観的データを生成する
請求項1に記載の体調変化管理プログラム。
【請求項17】
さらに前記体調変化管理プログラムは、前記プロセッサを生成部として機能させるものであり、
前記生成部は、前記測定データを含む表示用データを生成可能に構成される
請求項10~1の何れか1項に記載の体調変化管理プログラム。
【請求項18】
前記表示用データは、咳の回数、心拍数、運動量、輻射熱の客観的データ、前記客観的データの推移グラフ、前記客観的データの表の何れかを含む
請求項17に記載の体調変化管理プログラム。
【請求項19】
請求項10~18の何れか1項に記載の体調変化管理プログラムを格納した非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
少なくとも1つのプロセッサと、
前記プロセッサを少なくとも受信部、判定部として機能させて対象者の体調変化を管理する体調変化管理プログラムと、を備える体調変化管理システムであって、
前記受信部は、請求項1~9の何れか1項に記載の体調変化検知装置が検知した前記対象者の体表面から得られる組織の振動による気道の変動を示す測定データを取得可能に構成され、
前記判定部は、少なくとも前記測定データに基づいて、前記対象者の体調変化の発生リスクの有無を判定可能に構成される
体調変化管理システム。
【請求項21】
前記体調変化管理システムは、
前記プロセッサを備えるサーバ装置と、
複数の前記対象者が使用する対象者端末及び前記体調変化検知装置と、
複数の前記対象者を管理する管理者が使用する管理者端末と、を含み、
前記サーバ装置は、前記判定部として特定の前記対象者についての体調変化の発生リスクの有無を判定した結果を、当該特定の前記対象者が使用する前記対象者端末、前記体調変化検知装置、前記管理者端末の少なくとも何れかに送信可能に構成される
請求項20に記載の体調変化管理システム。
【請求項22】
前記サーバ装置は、前記体調変化の発生リスクがある旨の警報を送信する
請求項21に記載の体調変化管理システム。
【請求項23】
前記体調変化管理システムは、
前記プロセッサを備えるサーバ装置を備えており、
前記サーバ装置は、
前記受信部として、複数の前記対象者が使用する前記体調変化検知装置の測定データと位置データとを取得し、
前記判定部として、前記位置データから体調変化があると判定した前記対象者の位置を特定可能に構成される
請求項20に記載の体調変化管理システム。
【請求項24】
前記サーバ装置は、前記判定部として、体調変化があると判定した前記対象者の前記位置データを用い、当該対象者と接触した可能性がある他の前記対象者を特定可能に構成される
請求項23に記載の体調変化管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体調変化を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザや新型コロナウィルス等の各種ウィルスによる飛沫感染を防ぐために、咳やくしゃみの発生源や回数等を客観的に検知する必要がある。対象者の咳やくしゃみの回数を検知する関連技術として、例えば、特許文献1~5には、マイクロフォンを用いて発生した咳の回数を検知する装置やシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開1995-000376号公報
【文献】特開2016-529966号公報
【文献】特開2018-028882号公報
【文献】特開2018-153241号公報
【文献】特開2019-509094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、対象者の口から出た空気を伝播した咳をマイクロフォンで検知する際には、咳やくしゃみ以外の口から発せられるしゃっくり、いびき、歯ぎしり等の他の生体音や、空気中を伝播するその他の雑音も検知されることがある。このため、対象者の体調を正確に把握して管理するには、体調不良や疾患の指標となり得る咳等の必要な生体音のみを確実に検知できることが望ましい。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、対象者の体調変化を検知可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、対象者の体調変化を検知する体調変化検知装置において、ケーシングと、前記ケーシングに設けられ、前記対象者の体表面に伝わる組織の振動の音を検知することによって、前記対象者の気道の変動を検知する気道変動検知部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様によれば、気道変動検知部が対象者の筋肉等の振動音を介して気道の変動を検知するので、気道変動に起因する体調変化を検知できるようになる。
【0008】
本発明の他の態様は、少なくとも1つのプロセッサを、少なくとも受信部、判定部として機能させて対象者の体調変化を管理する体調変化管理プログラムであって、前記受信部は、前述した体調変化検知装置が検知した前記対象者の体表面から得られる組織の振動による気道の変動を示す測定データを取得可能に構成され、前記判定部は、少なくとも前記測定データに基づいて、前記対象者の前記体調変化の発生リスクの有無を判定可能に構成される。これによれば、対象者の体調変化を管理できる。
【0009】
本発明の更に他の態様は、少なくとも1つのプロセッサと、前記プロセッサを少なくとも受信部、判定部として機能させて対象者の体調変化を管理する体調変化管理プログラムと、を備える体調変化管理システムであって、前記受信部は、前述した体調変化検知装置が検知した前記対象者の体表面から得られる組織の振動による気道の変動を示す測定データを取得可能に構成され、前記判定部は、少なくとも前記測定データに基づいて、前記対象者の体調変化の発生リスクの有無を判定可能に構成される。これによれば、対象者の体調変化を管理できる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明によれば、気道変動に起因する体調変化を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(A)は、本発明の一実施形態に係る体調変化検知装置を裏面側から見た斜視図であり、(B)は、図1(A)のA-A線断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る体調変化検知装置を対象者に装着した状態を示す説明図である。
図3】本発明の一実施形態に係る体調変化検知装置の機能の概略構成を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る体調変化検知装置の変形例の機能の概略構成を示すブロック図である。
図5】本発明の一実施形態に係る体調変化管理システムの概略構成を示すブロック図である。
図6】本発明の一実施形態に係る体調変化管理システムの要部の詳細な構成を示すブロック図である。
図7】本発明の一実施形態に係る体調変化管理システムの変形例の要部の詳細な構成を示すブロック図である。
図8】(A)及び(B)は、本発明の一実施形態に係る体調変化管理システムを使用する対象者に送信されるアンケートの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0013】
体調変化検知装置100の概略構成:
【0014】
まず、本発明の一実施形態に係る体調変化検知装置の概略構成について、図面を使用しながら説明する。図1(A)は、本発明の一実施形態に係る体調変化検知装置の裏面側から見た斜視図であり、図1(B)は、図1(A)のA-A線断面図であり、図2は、本発明の一実施形態に係る体調変化検知装置を対象者に装着した状態を示す説明図である。なお、図1(B)では、主にケーシング内の基板とマイクロフォンの位置関係を説明するために、ケーシング内の構成要素として、マイクロフォンと基板のみを図示して説明した図となっている。
【0015】
体調変化検知装置100は、気道変動に起因する体調が変化し得る環境にいる人を「対象者」として、咳の発生回数等の上気道や下気道を含む気道変動に起因する体調変化を検知する際に用いることができる。検知対象となる体調変化としては、咽頭や咽喉等の上気道と、気管や気管支等の下気道を含む気道の少なくとも何れかにウィルス等の異物の付着や、上気道や下気道で発生した炎症に起因する咳等の疾患等が挙げられる。また、本明細書中において、「対象者」とは、病院や医院等の医療機関に入院、通院する患者、職場や学校、住宅等の等における老若男女を問わず気道変動に起因する体調が変化し得る人全般を含めて、気道変動に起因する体調変化の発生リスクの有無の検知が必要となる検知対象者をいう。
【0016】
体調変化検知装置100は、図1(A)に示すように、硬質樹脂や軟質樹脂の成型体で形成されている樹脂等からなるケーシング110の裏面110b側にマイクロフォン120が設けられている。ケーシング110内には、その他バッテリ(図示せず)や、通信部113、操作部114、表示部115、ROM116、RAM117、及び制御部130(図3参照)が設けられている。
【0017】
マイクロフォン120は、図1(B)に示すように、ケーシング110内に設けられている基板110cの対象者の体表面に対向する面となるケーシング110の裏面側に取り付けられている。マイクロフォン120は、対象者の上気道や下気道を含む気道の変動を検知する「気道変動検知部」として機能する。本実施形態では、マイクロフォン120は、体表面に伝わる筋肉組織、結合組織(血液を含む)、内皮組織、及び上皮組織等の対象者の人体を構成する組織の少なくとも何れかの振動の音を検知することによって、対象者の気道の変動を検知する。具体的には、マイクロフォン120は、対象者の気道の変動から検知する対象者の体調変化として、体表面側の筋肉組織の振動の音を介して対象者の咳の回数を筋伝導方式で計測する。また、マイクロフォン120は、その他咽頭や咽喉等の上気道と、気管や気管支等の下気道を含む気道の炎症等により生じる異常音や異常振動を検知する。
【0018】
マイクロフォン120は、図2(B)に示すように、ケーシング110の裏面110bに形成されている開口部110b1に外装部120dが嵌合されて設けられており、対象者の体表面と当接するように設けられている。マイクロフォン120は、対象者の体表面と当接する外装部120dの内面側には、集音口120aが設けられている。また、マイクロフォン120は、外装部120dの内部に集音機能部120bが設けられている。集音口120aには、集音機能部120bに汗等の水分や埃等の異物の付着を未然に防止した上で集音した音の振動を伝達し易くするために、ゴムや樹脂等からなるフィルム状の薄膜120cが設けられている。
【0019】
マイクロフォン120をこのように構成することによって、対象者が体調変化検知装置100を装着すると、対象者の体表面に対してマイクロフォン120の集音口120aに有する薄膜120cと、内部に有する集音機能部120bとが密着するようになっている。これによって、薄膜120cに伝わった体表面側の筋肉組織の振動の音がそのまま集音機能部120bに伝わるので、確実に集音できるようになる。
【0020】
なお、本実施形態では、マイクロフォン120は、ケーシング110の裏面110bの中心側に1つ設けられているが、マイクロフォン120の設置箇所は、ケーシング110の裏面110b側であれば、他の部位としてもよい。また、マイクロフォン120は、より広範囲に集音機能を確保したり、より高性能な検知機能を確保するために、所定の間隔で複数設けてもよい。さらに、マイクロフォン120の集音口120aは、ケーシング110の裏面110bに直接設けられる構成としてもよい。また、マイクロフォン120は、一般的なダイナミックマイクのみならず、コンデンサマイクやシリコンマイク等の他の態様のマイクロフォンとしてもよい。
【0021】
ケーシング110の両端側には、ベルト112を装着可能なスリット111が設けられており、図2に示すように、ケーシング110がベルト112を介して対象者P1の上腕にウェアラブルに取り付け可能に構成されている。なお、体調変化検知装置100の装着箇所は、対象者P1の上腕以外の他の部位でも良い。
【0022】
体調変化検知装置100の機能構成:
【0023】
次に、本発明の一実施形態に係る体調変化検知装置の機能について、図面を使用しながら説明する。図3は、体調変化検知装置の機能の概略構成を示すブロック図である。なお、図3では、体調変化検知装置に備わる各構成要素の機能を詳細に説明している。
【0024】
体調変化検知装置100は、前述したマイクロフォン120に加えて、図3に示すように、通信部113と、操作部114と、表示部115と、制御部130と、ROM116と、RAM117と、位置センサ140とを備え、これらがケーシング110内に設けられている。なお、ケーシング110内には、マイクロフォン120以外にも、例えば、温湿度センサ、加速度センサ、サーモパイルセンサ、脈波センサ等のその他対象者の生体情報を検知する各検知用センサが設けられていてもよい。
【0025】
通信部113は、ネットワーク2(図4参照)を介して外部とのデータの送受信をする際のインターフェースとしての機能を有する。通信部113の通信方式は、例えば、LTE(long term evolution)、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の無線通信を用いることができる。操作部114は、体調変化検知装置100を動作させる際に、データの入力装置となるキーボードやマウス、タッチパネル等の制御部130に所定の指令を入力して適宜操作する機能を有する。操作部114は、対象者の体調変化に関するアンケートの回答データや性別、年齢、BMI等の個人情報等を集計した主観的データを入力操作する機能も有する。
【0026】
表示部115は、制御部130による演算結果や操作部114の入力結果等を画面表示で出力する機能を有し、例えば、液晶画面等から構成される。位置センサ140は、体調変化検知装置100を装着した対象者の位置を検知するセンサとしての機能を有する。位置センサ140は、例えば、Bluetooth(登録商標)等の電磁波により位置をセンシング可能にするものや、超音波等の音波により位置をセンシング可能にするもの、GPS(Global Positioning System)を使用して位置をセンシング可能にするもの等が適用可能である。
【0027】
制御部130は、ケーシング110内の基板110cに設けられており、ROM116に記憶されている各種プログラムを実行することによって、体調変化検知装置100に備わる各構成要素の動作を制御する機能を有する。また、制御部130は、これら各種処理を実行する際に、必要なデータ等を一時的に記憶するRAM117に適宜記憶させる機能を有する。このため、制御部130による制御動作によって、ROM116、RAM117へのアクセス、表示部115に対するデータの画面表示動作、操作部114に対する操作動作、外部と通信する際に通信部113をインターフェースとしてネットワーク2を介した各種情報の送受信動作等を行えるようになる。
【0028】
さらに、制御部130は、マイクロフォン120からの検知データを受信して、その検知データに基づいて、対象者の体調変化の発生リスクの有無等を判定して、その判定結果を外部に送信する機能を有するようにしてもよい。このため、制御部130は、図3に示すように、受信部131と、解析部132と、送信部133とを備える。
【0029】
受信部131は、マイクロフォン120からの検知データの受信を制御する機能を有する。また、受信部131は、通信部113を介した対象者を管理する管理者が保有する管理者端末30(図4参照)等の外部機器からの各種データの受信を制御する機能を有する。さらに、受信部131は、管理者端末30(図4参照)から体調変化検知装置100に送信される対象者の体調変化に関するアンケートデータの受信を制御する機能も有する。
【0030】
解析部132は、体調変化検知装置100の各種動作を実行する際に必要となる判定動作をする機能を有する。具体的には、解析部132は、体調変化検知装置100の通信部113を介して外部機器との各種データの送受信の有無を判定する機能を有する。また、解析部132は、マイクロフォン120からの検知データに基づいて、対象者の体調変化の発生リスクの有無等を判定する機能を有する。なお、本実施形態では、制御部130が気道の変動に起因する対象者の体調変化の発生リスクの有無等を判定する解析部132の機能を有する例を示したが、サーバ装置10の判定部14bが解析部132と同様の機能を有してもよい。
【0031】
解析部132は、気道変動検知部となるマイクロフォン120で検知された対象者の人体を構成する組織の少なくとも何れかの組織の振動の音の周波数、振幅又は位相の少なくとも何れかを用いて、対象者の気道の変動を解析する機能を有する。対象者の気道の変動の解析対象となる人体の組織としては、筋肉組織、結合組織(血液を含む)、内皮組織、及び上皮組織等が挙げられる。
【0032】
解析部132は、例えば、筋肉組織等の振動の音の周波数や振幅に基づいて、その変動を解析して、咳を検出することができる。特に、解析部132は、咳の回数を計測することができる。解析部132は、対象者の人体を構成する組織の振動音の周波数、振動、及び位相差に基づいて、当該組織の振動音の変動を解析することができる。これによって、解析部132は、精度よく対象者の気道の変動を解析して、咳の回数を計測できるようになっている。
【0033】
また、解析部132は、周波数解析や人工知能等を用いて、マイクロフォン120で検知された組織の振動音等の検知データから咳の種類を判定する機能を有する。例えば、解析部132は、マイクロフォン120の検知データから咳の種類を判定する。咳の種類としては、例えば、乾性咳嗽と湿性咳嗽とを挙げられる。乾性咳嗽は、痰を伴わない咳嗽であり、急性のものだと刺激物の吸入、過敏性肺炎、マイコプラズマ肺炎、新型コロナウィルス肺炎、胸膜炎、気胸等が原因で発症し、慢性のものだと間質性肺炎、咳喘息、百日咳、気管支結核、逆流性食道炎、ACE阻害薬、非結核性抗酸菌症等が原因で発症する。一方、湿性咳嗽は、痰を伴う咳嗽であり、急性のものだと大半のウィルス感染症、細菌感染症、肺炎、肺水腫、心不全等が原因で発症し、慢性のものだと気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症等が原因で発症する。解析部132は、マイクロフォン120の検知データを解析して、咳の種類を判定することによって、対象者が発症した疾患の種類の予測に活用できるようにしている。
【0034】
送信部133は、外部機器への各種データの送信を制御する機能を有する。送信部133は、マイクロフォン120からの検知データをそのまま管理者端末30(図5参照)やサーバ装置10(図5参照)、対象者端末40(図5参照)等の外部機器に送信するか、解析部132の解析結果を管理者端末30等の外部機器に送信するように制御している。すなわち、送信部133は、解析部132が対象者の気道の変動を解析して咳の回数を計測する機能を有する場合には、解析部132の解析結果を外部機器に送信する。一方、送信部133は、解析部132が対象者の気道の変動を解析して咳の回数を計測する機能を有さない場合には、マイクロフォン120の検知データをそのままサーバ装置10等の外部機器に送信する。
【0035】
また、送信部133は、管理者端末30から送信された対象者の体調変化に関するアンケートに対する回答データを管理者端末30やサーバ装置10(図5参照)、対象者端末40に送信するように制御する機能も有する。なお、送信部133が各種データを送る送信先は、送信部133の機能や通信環境によって異なる。すなわち、送信部133がデータを管理者端末30又はサーバ装置10に送信する構成としても、送信部133が対象者端末40にデータを送信してから、対象者端末40がデータを管理者端末30又はサーバ装置10に送信する構成としてもよい。
【0036】
このように、体調変化検知装置100は、マイクロフォン120の検知データに基づいて、体調変化検知装置100を装着した対象者の体調変化の発生リスクの有無を判定できるようになっている。また、体調変化検知装置100は、位置センサ140を備えるので、体調変化検知装置100を装着した対象者をトラッキングしながら、位置を検出できるようになる。なお、体調変化検知装置100を用いた体調変化に関する検知データに基づいた対象者の体調変化の発生リスクの有無の判定や、対象者のトラッキング、体調変化を管理する動作の詳細については、後述する。
【0037】
体調変化検知装置100の変形例の機能構成:
【0038】
前述したように、体調変化検知装置100は、ケーシング110内にマイクロフォン120以外に、例えば、温湿度センサ、加速度センサ、サーモパイルセンサ、脈波センサ等のその他の対象者の生体情報を検知する各検知用センサ等が設けられていてもよい。本実施形態の一変形例について、図面を使用しながら説明する。図4は、本実施形態に係る体調変化検知装置の変形例の機能の概略構成を示すブロック図である。
【0039】
本変形例では、体調変化検知装置100aは、図4に示すように、対象者の生体情報等を検知するセンサとして、マイクロフォン120、位置センサ140に加えて、更に加速度センサ150、温湿度センサ160、サーモパイルセンサ170、及び脈波センサ180を備える。加速度センサ150は、体調変化検知装置100aを装着する対象者の運動量を検知する機能を有する。温湿度センサ160は、基板110cの外側、すなわち、体調変化検知装置100aを装着した対象者の体表面から離れた外部の熱変動を検知する「外部熱変動検知部」として機能する。
【0040】
サーモパイルセンサ170は、対象者の体表面から得られる生体情報の変動を検知する「体表面側生体情報検知部」として、輻射熱の変動を検知する機能を有する。本変形例では、サーモパイルセンサ170は、基板110cの裏面側に設けられており、対象者の体表面に対向するように、体表面から離隔して設けられている。脈波センサ180は、対象者の体表面から得られる生体情報の変動を検知する「体表面側生体情報検知部」として、体調変化検知装置100aを装着する対象者の心拍数を計測する機能を有する。
【0041】
また、体調変化検知装置100aは、音や振動によって対象者に体調変化の発生リスクのアラートを報知する機能を有する警報部118を備える。警報部118は、例えば、熱中症の発生リスクを示すアラート表示を表示部115に表示したり、アラートを音声でアナウンスしたり、アラームを鳴らしたり、バイブレーションを発動することによって、熱中症等の体調変化や体調不良を発症するリスクが高い旨を知らせるアラートを報知するようになっている。
【0042】
さらに、体調変化検知装置100aは、制御部130に更に判定部134を備える。判定部134は、体調変化検知装置100aの各種動作を実行する際に必要となる判定動作をする機能を有する。また、判定部134は、温湿度センサ160、加速度センサ150、サーモパイルセンサ170、脈波センサ180の各検知用のセンサからの検知データに基づいて、対象者の体調変化の発生リスクの有無等を判定する機能を有するようにしてもよい。
【0043】
具体的には、判定部134は、温湿度センサ160から受信したケーシング110の外側の温度データと湿度データ、サーモパイルセンサ170から受信した対象者の体表面からの輻射熱の検知データに基づいて、その差分結果から、対象者の熱中症を患うリスクの有無を判定する。その際に、加速度センサ150で検知された対象者の運動量や、脈波センサ180で検知された対象者の心拍数も含めて判定することによって、対象者の体格、体質、体調、及び置かれた環境や状況等により、変動し得る体調変化の発生要因に応じて、より確実に体調変化の発生リスクの有無を検知できるようになっている。
【0044】
このように、本変形例の体調変化検知装置100aは、マイクロフォン120に加えて、対象者の生体情報等を検知可能な加速度センサ150、温湿度センサ160、サーモパイルセンサ170、及び脈波センサ180を備える。このため、咳の回数のカウントに加えて、熱中症等の体調変化や体調不良の発生リスクの有無も検知できるようになるので、対象者の隠れた体調不良も含めて、より多面的に対象者の体調変化や体調不良の発生リスクの有無を検知できるようになる。なお、マイクロフォン120や位置センサ140等の他の構成要素は、前述した本実施形態の体調変化検知装置100と同じ動作機能を有するので、その説明は、省略する。
【0045】
体調変化管理システム1の概要構成:
【0046】
次に、本発明の一実施形態に係る体調変化管理システムの構成について、図面を使用しながら説明する。図5は、体調変化管理システムの概略構成を示すブロック図である。
【0047】
体調変化管理システム1は、咽頭や喉頭等の上気道と、気管や気管支等の下気道を含む気道の炎症や疾患等の変動に起因する体調が変化し得る環境にいる人全般の咳の回数の計測等を行って体調変化の発生リスクを検知する対象者とする。そして、体調変化管理システム1は、前述した体調変化検知装置100を用いて当該対象者の体調変化の発生リスクの有無や蓋然性等を判定して、対象者の体調を管理する際に用いることができる。
【0048】
体調変化管理システム1は、図5に示すように、サーバ装置10と、データ記憶部20と、管理者端末30と、対象者端末40と、及び体調変化検知装置100とを備えており、それらがインターネット等のネットワーク2を介して接続されている。データ記憶部20は、サーバ装置10の「外部記憶装置」であって、サーバ装置10のみがアクセス可能となるように構成されている。体調変化検知装置100は、サーバ装置10、対象者端末40、管理者端末30の少なくとも何れかに対して接続可能に構成される。管理者端末30と対象者端末40は、ネットワーク2を介して外部機器と通信可能な「端末装置」である。なお、ネットワーク2は、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等の有線又は無線のネットワークであり、また、インターネット等の公衆回線でなくても、専用回線であってもよい。
【0049】
サーバ装置10は、複数の対象者P1、P2、P3から受信した咳の回数等の生体情報や体調変化検知装置100の検知データをコンピュータ管理して、対象者P1、P2、P3の体調変化の発生リスクの有無や蓋然性を含めて、対象者P1、P2、P3の体調を管理する機能を有する。すなわち、サーバ装置10は、「体調変化管理サーバ」としての機能を有するコンピュータ装置である。
【0050】
サーバ装置10は、体調変化の発生リスクの有無の検知が必要となる対象者の体調管理をする管理者が使用することによって、管理されている。体調変化管理システム1による体調変化の管理の対象者は、例えば、病院や医院等の医療機関に入院、通院する患者等の老若男女を問わず体調が変化し得る環境にいる体調変化の発生リスクの有無の検知が必要となる人全般である。サーバ装置10として、例えば、スーパーコンピュータ、汎用コンピュータ、オフィスコンピュータ、制御用コンピュータ、パーソナルコンピュータ等の各種のコンピュータ装置が使用される。なお、サーバ装置10の詳細については、後述する。
【0051】
データ記憶部20は、対象者P1、P2、P3ごとに「客観的データ」と「主観的データ」とを記憶するデータベースとして機能する。「客観的データ」は、各対象者P1、P2、P3が使用する体調変化検知装置100のマイクロフォン120や位置センサ140が検知して得られた測定データを含む。「主観的データ」は、各対象者P1、P2、P3が活動前(体調変化の検知開始前)に行った体調に関するアンケートの回答データ、各対象者P1、P2、P3が活動中(体調変化の検知中)に行ったアンケートの回答データ、各対象者P1、P2、P3が活動後(体調変化の検知終了後)に行ったアンケートの回答データを含む。また、「主観的データ」には、性別、年齢、BMI等の各対象者P1、P2、P3の身体情報、個人情報等を含む。このように、データ記憶部20は、各対象者P1、P2、P3の体調変化の発生リスクの有無や、体調変化が発生する蓋然性を判断するための判断材料となる体調管理に必要な客観的データと主観的データを記憶している。
【0052】
データ記憶部20は、ネットワーク2を経由してデータファイルを外部サーバ等のディスクスペースに保管するクラウド型のストレージデバイスで構成される。なお、データ記憶部20は、ネットワーク2を介さずサーバ装置10に直接接続した外部記憶装置により構成してもよい。
【0053】
管理者端末30は、体調変化検知の各対象者P1、P2、P3を管理する管理者が各対象者P1、P2、P3の体調変化の発生リスクの有無等の体調管理をする際に使用する端末装置である。管理者端末30は、例えば、デスクトップ型やノート型のパーソナルコンピュータ、タッチパッド及びスマートフォン等の携帯情報端末を含めた各種演算処理が可能なコンピュータ装置である。管理者端末30は、ネットワーク2を介してサーバ装置10、対象者端末40及びデータ記憶部20にアクセス可能になっている。
【0054】
対象者端末40は、体調変化が検知される各対象者P1、P2、P3が管理者端末30とデータの送受信をする際に利用する端末装置である。対象者端末40は、例えば、デスクトップ型やノート型のパーソナルコンピュータ、タッチパッド及びスマートフォン等の携帯情報端末を含めた各種演算処理が可能なコンピュータ装置である。対象者端末40は、各対象者P1、P2、P3の体調に関するアンケート結果や性別、年齢、BMI等の個人情報等を集計した主観的データを送信したり、管理者端末30から咳や肺炎等の体調変化のため休暇を取るように通知するために、管理者端末30とネットワーク2を介して通信可能になっている。
【0055】
体調変化管理システム1の詳細構成:
【0056】
次に、体調変化管理システムの要部の詳細について、図面を使用しながら説明する。図6は、体調変化管理システムの要部の詳細な構成を示すブロック図である。なお、図6では、体調変化管理システムに備わるサーバ装置、データ記憶部、管理者端末、及び一の対象者P1が使用、装着している対象者端末40と体調変化検知装置100のみを取り上げて、各構成要素の機能を詳細に説明している。
【0057】
体調変化管理システム1では、サーバ装置10がネットワーク2を介してデータ記憶部20、管理者端末30、対象者端末40、及び体調変化検知装置100と接続されている。これによって、サーバ装置10が対象者P1から受信した客観的データと主観的データをデータベース化してデータ記憶部20で管理しながら、管理者端末30を使用する管理者に対しては、各対象者の体調を把握できるようにしている。
【0058】
サーバ装置10は、図6に示すように、通信部11と、操作部12と、表示部13と、制御部14と、ROM15と、RAM16とを備える。サーバ装置10は、制御部14が「体調変化管理プログラム」を実行することで複数の機能部を有する「体調変化管理サーバ」を構成し、複数の機能部によって情報処理を行う。通信部11は、ネットワーク2を介して外部とのデータの送受信をする際のインターフェースとしての機能を有する。操作部12は、サーバ装置10を動作させる際に、データの入力装置となるキーボードやマウス、タッチパネル等の制御部14に所定の指令を入力して適宜操作する機能を有する。表示部13は、制御部14による演算結果やデータベースとなるデータ記憶部20の情報等を画面表示で出力する機能を有し、例えば、液晶画面等から構成される。
【0059】
制御部14は、1又は複数のプロセッサがROM15に記憶されている各種プログラムを実行することによって、サーバ装置10に備わる各構成要素の動作を制御する機能を有する。また、制御部14は、これら各種処理を実行する際に、必要なデータ等を一時的に記憶するRAM16に適宜記憶させる機能を有する。このため、制御部14による制御動作によって、ROM15、RAM16、データ記憶部20へのアクセス、表示部13に対するデータの画面表示動作、操作部12に対する操作動作、外部と通信する際に通信部11をインターフェースとしてネットワーク2を介した各種情報の送受信動作等を行えるようになる。
【0060】
制御部14は、図6に示すように、受信部14aと、判定部14bと、送信部14cとを備える。受信部14aは、通信部11を介したデータ記憶部20、管理者端末30、対象者端末40、及び体調変化検知装置100からの各種データの受信を制御する機能を有する。
【0061】
判定部14bは、サーバ装置10の各種動作を実行する際に必要となる判定動作をする機能を有する。例えば、判定部14bは、サーバ装置10の通信部11を介して管理者端末30、対象者端末40、及び体調変化検知装置100との各種データの送受信の有無を判定する。
【0062】
判定部14bは、少なくとも体調変化検知装置100で検知された対象者P1から計測した咳の回数を含む気道の変動に基づいて、対象者P1の体調変化の発生リスクの有無を判定する機能を有する。また、判定部14bは、体調変化検知装置100の解析部132と同様に、受信部14aから受信したマイクロフォン120の検知データを解析して、咳を検出できるようにしてもよい。この場合には、判定部14bは、マイクロフォン120の検知データを解析して、咳の回数を計測する機能を有することができる。また、判定部14bは、周波数解析や人工知能等を用いて、マイクロフォン120で検知された組織の振動音等の計測データ(検知データ)から咳の種類を判定する機能も有することができる。
【0063】
なお、体調変化検知装置100の解析部132で咳を検出する場合には、サーバ装置10の判定部14bは、解析部132と同様に咳を検出する機能を持たないようにしてもよい。他方、サーバ装置10の判定部14bで咳を検出する場合には、体調変化検知装置100の解析部132は、咳を検出する機能を持たないようにしてもよい。さらに、体調変化管理システム1では、体調変化検知装置100のバッテリー残量等の使用状態に応じて、体調変化検知装置100の解析部132とサーバ装置10の判定部14bとで選択的に咳の検出機能を使用してもよい。
【0064】
また、判定部14bは、咳の回数に基づいて対象者P1の体調変化があると判定した場合に、対象者P1をトラッキングするために、位置センサ140から検知される対象者P1の位置情報を判定する機能を有する。例えば、判定部14bにより対象者P1がウィルス感染等の感染リスクがある者であると判定されると、対象者P1の位置情報を検出して、対象者P1が「何時、何処で、誰と、何回会った。」かを判定する。そして、その判定結果によって、対象者P1との接触者(対象者P2、P3)が特定されるようになる。これによって、対象者P1との接触状況に応じて、対象者P2、P3に対して感染対策として必要な措置(例えば、早期隔離、利用施設の衛生措置等)を講じることができる。
【0065】
送信部14cは、通信部11を介したデータ記憶部20、管理者端末30、対象者端末40、及び体調変化検知装置100への各種データの送信を制御する機能を有する。また、送信部14cは、判定部14bでの判定結果を対象者端末40、管理者端末30、及び体調変化検知装置100の少なくとも何れかに送信する機能を有する。さらに、送信部14cは、判定部14bが体調変化の発生リスク(感染症の発生リスク)があると判定した場合には、外部機器に警報となるアラートを送信する機能を有する。この場合、送信部14cは、対象者端末40、管理者端末30、体調変化検知装置100の少なくとも何れかに対して、例えば、アラートや自宅待機を推奨するメール等を送信することができる。
【0066】
データ記憶部20は、各種データを記憶可能な外部記憶装置である。データ記憶部20は、対象者P1の体調変化検知装置100のマイクロフォン120が検知して得られた客観的データと、対象者P1から勤務の前後に行った体調に関するアンケート結果や性別、年齢、BMI等の個人情報を事前に集計した主観的データとを記憶するデータベースとして機能する。また、本実施形態のデータ記憶部20は、これらの客観的データと主観的データがアップデートする度に更新されるようになっている。
【0067】
管理者端末30は、管理者が使用する端末装置であり、各種情報の送受信や演算処理等の必要動作が行えるように、図6に示すように、通信部31と、操作部32と、表示部33と、制御部34と、記憶部35と、を備える。管理者端末30は、サーバ装置10にアクセスすることによって、体調変化検知装置100を装着した対象者の咳の回数等の客観的データや客観的データの推移グラフ、客観的データの表等の客観的データに関する表示用のデータを表示部33に表示できるようになっている。
【0068】
対象者端末40は、対象者P1が利用する端末装置であり、各種情報の送受信や演算処理等の必要動作が行えるように、図6に示すように、通信部41と、操作部42と、表示部43と、制御部44と、記憶部45と、を備える。対象者端末40は、例えば、サーバ装置10が提供する専用WEBサイトにアクセスすることによって、体調変化検知装置100を装着した対象者の咳の回数等の客観的データや客観的データの推移グラフ、客観的データの表等を含む客観的データに関する表示用のデータを表示部43に表示できるようになっている。
【0069】
このように、体調変化管理システム1は、サーバ装置10がネットワーク2を介してデータ記憶部20と、管理者端末30と、対象者端末40と、及び体調変化検知装置100と接続されて、複数の対象者から受信した客観的データと主観的データに基づいて、各対象者の体調変化の発生リスクの有無を判定する。そして、体調変化管理システム1は、各対象者に対して体調変化の発生リスクがある旨の警告の通知等をコンピュータ管理する体調管理アプリケーションサービスの実行を制御している。このため、サーバ装置10では、体調管理の対象となる全ての対象者P1、P2、P3の体調を総括的に管理できるようになる。
【0070】
なお、体調変化管理システム1のサーバ装置10は、ソフトウェアによって実現してもよく、ハードウェアによって実現してもよい。ソフトウェアによって実現する場合、CPUとなる制御部14が体調変化管理システム1を作動させるプログラムを実行することによって各種機能を実現することができる。このプログラムは、サーバ装置10に内蔵のROM15に格納してもよく、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に格納してもよい。
【0071】
また、サーバ装置10は、外部の記憶装置となるストレージデバイスに格納されたプログラムを読み出し、いわゆるクラウドコンピューティングにより実現してもよい。その際に、体調変化検知装置100で得られた各検知センサによる客観的データと、対象者端末40から事前に得られた個々の主観的データをクラウド上のサーバ装置10に蓄積し、時系列分析、クラスタ分析、人工知能等によりデータ解析が行われるようにしてもよい。
【0072】
体調変化管理システム1の変形例の詳細構成:
【0073】
体調変化管理システム1の変形例として、前述した体調変化検知装置100aの変形例を使用した態様の要部の詳細を説明する。図7は、本変形例の体調変化管理システム1aの要部の詳細な構成を示すブロック図である。なお、図7では、体調変化管理システム1aに備わるサーバ装置10、データ記憶部20、管理者端末30、及び一の対象者P1が使用、装着している対象者端末40と体調変化検知装置100aのみを取り上げ、各構成要素の機能を詳細に説明している。
【0074】
体調変化管理システム1aでは、サーバ装置10がネットワーク2を介してデータ記憶部20、管理者端末30、対象者端末40、及び体調変化検知装置100aと接続されている。これによって、サーバ装置10が対象者P1から受信した客観的データと主観的データをデータベース化してデータ記憶部20で管理しながら、管理者端末30を使用する管理者に対しては、各対象者の体調を把握できるようにしている。
【0075】
特に、体調変化管理システム1aでは、体調変化検知装置100aが咳の回数を含む体調変化に加えて、熱中症等の体調変化や体調不良の発生リスクの有無も検知されるので、より多面的に対象者の体調変化や体調不良の発生リスクの有無を検知できるようになっている。以下では、体調変化検知装置100aを使用することによって、体調変化管理システム1aに追加された機能の内容について説明し、前述した体調変化管理システム1の詳細構成で取り上げた内容については、説明を省略する。
【0076】
サーバ装置10は、図7に示すように、制御部14が受信部14aと、判定部14bと、送信部14cと、生成部14dとを備える。受信部14aは、通信部11を介したデータ記憶部20、管理者端末30、対象者端末40、及び体調変化検知装置100aからの各種データの受信を制御する機能を有する。受信部14aは、体調変化検知装置100aから所定時間毎にサーバ装置10に送信される対象者P1の検知された心拍数や体温等の客観的データ(実測データや処理済みデータ)を受信するように制御されている。
【0077】
判定部14bは、更に少なくとも体調変化検知装置100aで検知された対象者P1の体表面からの輻射熱を含む生体情報の変動と、体調変化検知装置100aのケーシング内に設けられている基板の外部の熱変動に基づいて、対象者P1の体調変化が発生するリスクの有無を判定する機能を有する。また、判定部14bは、管理者端末30から対象者端末40と体調変化検知装置100aに送信した対象者P1の体調に関するアンケートの回答結果も踏まえて、熱中症になる蓋然性が高い前段階の体調変化の発生リスクの有無を判定できる機能も有する。
【0078】
さらに、判定部14bは、体調変化検知装置100aが検知した対象者の咳の回数と体表温のデータを踏まえて、インフルエンザや新型コロナウィルス等の各種ウィルスによる感染症の発生リスクの有無を判定する機能を有する。すなわち、判定部14bは、体調変化検知装置100aが検知した咳の回数から対象者の過剰な空咳の有無を判定して、体調変化検知装置100aが検知した体表温のデータから対象者の発熱の有無を判定する。例えば、判定部14bは、対象者の咳の回数の増加と体表温の上昇に相関性がある場合に、対象者が各種ウィルスによる感染症を患った蓋然性が高いと判定する。これによって、各種ウィルスによる感染症の発生リスクの早期発見が可能になり、感染症を患った蓋然性が高い対象者を早期に隔離するように進めることができる。
【0079】
また、判定部14bは、対象者P1からのアンケートの回答データに基づいて、客観的データに対して体調変化を識別するためのラベル付け(アノテーション処理)を実行することで、ラベル付き客観的データ(教師データ)を生成する機能を有する。その一例として、例えば、対象者P1からの業務前アンケート(図8(A))の回答と業務後アンケート(図8(B))の「熱中症」の回答が「1」「2」の場合は、熱中症や感染症を発生するリスクが低いと判定する。従って、判定部14bは、そのアンケートで回答した活動日の客観的データに対して「非熱中症予備群」のラベル付けをする。これに対して、業務前アンケート(図8(A))の回答と業務後アンケート(図8(B))の「熱中症」の回答が「3」「4」「5」の場合は、熱中症が発生するリスクがあると判定する。従って、判定部14bは、アンケートで回答した活動日の客観的データに対して「熱中症予備群」のラベル付けをする。このように判定部14bは、分類器として機能し、ラベル付き客観的データを「教師データ」として蓄積し、これを繰り返し機械学習することによって、対象者ごとに体調不良が発生するリスク(対象者ごとに感じる暑さの違いによる熱中症の発生するリスク)を判定する精度を高めることができる。そして、判定部14bは、受信した客観的データを、機械学習したラベル付き客観的データと比較して、対象者の体調変化の発生リスクの有無(熱中症の発生リスクの有無)を判定する。これによって、体調変化検知装置100aの各検知用のセンサによって測定された「客観的データ」だけで体調変化の発生リスクの有無を判定するよりも、対象者P1ごとに適した判定結果を得ることが可能になる。
【0080】
なお、判定部14bが行う体調変化の発生リスクの有無の判定は、教師あり機械学習によって生成されたラベル付き客観的データに限定されない。つまり、客観的データとして測定された生体情報(バイタルサイン)が、対象者の体調変化の発生リスクを表すデータに該当するか否かを判定するには、対象者の身体的特性等に応じて固有に設定された判定基準(特徴量とその閾値)によって判定できればよい。従って、判定基準は、教師なし機械学習によって特定の生体情報(及びその所定値)を特徴量として得たデータを用いてもよい。また判定基準は、生体情報を深層学習することによって生成したデータでもよい。また、判定部14bによる対象者P1の体調変化の発生リスクの有無の判定は、機械学習を利用しなくてもよい。判定部14bは、体調変化検知装置100aで検知した客観的データ(測定データ)について、対象者の主観又は主観的データ(アンケートの回答データ)に応じて体調変化が発生するリスクがあると想定される閾値を設定し、それをリスクの有無を判定する比較用客観的データとして用いることによって、体調変化の発生リスクの有無を判定することもできる。
【0081】
前述の業務後アンケート(図8(B))の「肉体疲労」に関するアンケートの回答データは、例えば、次のように利用できる。肉体疲労があって体が疲れやすい状態にあるほど体力が弱っており、体調変化の発生リスクに対する注意が必要となる。そのため、回答データがアンケート項目の「3」「4」「5」のように、注意すべき疲労があるとみなすことができる場合には、その翌日に体調変化検知装置100aや対象者端末40に対して、体調変化の発生リスクについて注意喚起するメールや通知を送信することができる。また、回答データが「3」「4」「5」のように、疲労が大きいとみなすことができる場合は、より体調変化の発生リスクが高まると捉えて、客観的データに対する体調変化の発生リスクの有無の判定基準を厳しく設定するように、ラベル付き客観データを調整するために用いることができる。
【0082】
また、判定部14bは、体調変化検知装置100aの解析部132と同様に、対象者の気道の変動を解析して、咳を検出できるようにしてもよい。この場合には、判定部14bは、受信部14aから受信したマイクロフォン120の検知データを解析して、咳の回数を計測する機能を有することができる。また、判定部14bは、周波数解析や人工知能等を用いて、マイクロフォン120で検知された組織の振動音等の計測データ(検知データ)から咳の種類を判定する機能も有することができる。その際に、判定部14bは、マイクロフォン120の検知データに加えて、体調変化検知装置100aで検知された体表温や心拍数、外部の熱変動等の測定データも踏まえて、咳の種類を判定するようにしてよい。
【0083】
なお、体調変化検知装置100aの解析部132で咳を検出する場合には、サーバ装置10の判定部14bは、解析部132と同様に咳を検出する機能を持たないようにしてもよい。他方、サーバ装置10の判定部14bで咳を検出する場合には、体調変化検知装置100aの解析部132は、咳を検出する機能を持たないようにしてもよい。さらに、体調変化管理システム1aでは、体調変化検知装置100aのバッテリー残量等の使用状態に応じて、体調変化検知装置100aの解析部132とサーバ装置10の判定部14bとで選択的に咳の検出機能を使用してもよい。
【0084】
送信部14cは、通信部11を介したデータ記憶部20、管理者端末30、対象者端末40、及び体調変化検知装置100aへの各種データの送信を制御する機能を有する。送信部14cは、判定部14bでの判定結果を対象者端末40及び管理者端末30の少なくとも何れかに送信する機能を有する。
【0085】
また、送信部14cは、判定部14bが体調変化の発生リスク(感染症や熱中症の発生リスク)があると判定した場合には、外部機器に警報となるアラートを送信する機能を有する。この場合、送信部14cは、対象者端末40、管理者端末30、体調変化検知装置100aの少なくとも何れかに対してアラートを送信することができる。
【0086】
送信部14cが体調変化検知装置100aにアラートを送信すると、体調変化検知装置100aの警報部118が作動する。警報部118が作動すると、例えば、熱中症の発生リスクを示すアラート表示を表示部115に表示したり、アラートを音声でアナウンスしたり、アラームを鳴らしたり、バイブレーションを発動することによって、熱中症を発症するリスクが高い旨を知らせるアラートを報知するようになっている。また、送信部14cは、体調変化検知装置100aに対して送信したアンケートの回答データが返信されていない場合に、対象者P1にアンケートの回答を催促するアラートを送信する機能も有する。さらに、送信部14cは、体調変化等を誘発する環境情報等の変化についてもアラートに含めて送信してもよい。例えば、送信部14cは、光化学スモッグ注意報、花粉やPM2.5の飛散情報等の体調変化、体調不良を誘発し易い環境情報の変化についてもアラートとして送信して、対象者に体調変化や体調不良のリスクがある旨の注意喚起を促すようにしてもよい。
【0087】
また、送信部14cは、判定部14bによって対象者P1の体調変化が発生し得ると判定されると、管理者端末30に対象者P1の感染症や熱中症等の体調変化が発生するリスクを警告するアラートメールを送信する機能を有する。すなわち、判定部14bによって対象者P1の体調変化として、対象者P1の感染症や熱中症を発生するリスクがあると判定されると、送信部14cは、管理者端末30に当該対象者P1がそれを報知するアラートメールを送信する。
【0088】
生成部14dは、各種データを演算処理して、データを生成する機能を有する。例えば生成部14dは、表示用データを生成できる。表示用データとしては、例えば、体調変化検知装置100aで検知された対象者の咳の回数や心拍数、運動量、輻射熱等の客観的データ(実測データ)と、客観データの推移グラフと、客観的データを含む表とを列挙することができる。そして、生成部14dが生成した表示用のデータは、通信部11を通じて外部機器(例えば、管理者端末30、対象者端末40等)に送信することができる。外部機器では、ディスプレイ等の表示部でその表示用データを、例えば表示画面として表示することができる。
【0089】
データ記憶部20は、各種データを記憶可能な外部記憶装置である。データ記憶部20は、対象者ごとに、体調変化検知装置100aの各検知センサが検知して得られた客観的データと、体調に関するアンケートの回答データや性別、年齢、BMI等の身体情報、個人情報を事前に集計した主観的データとを記憶するデータベースとして機能する。また、データ記憶部20は、これらの客観的データと主観的データがアップデートする度に更新されるようになっている。
【0090】
管理者端末30は、管理者が使用する端末装置であり、各種情報の送受信や演算処理等の必要動作が行えるように、図7に示すように、通信部31と、操作部32と、表示部33と、制御部34と、記憶部35と、を備える。管理者端末30は、サーバ装置10にアクセスすることによって、体調変化検知装置100aを装着した対象者の咳の回数や心拍数、運動量、輻射熱、体表温等の客観的データや客観的データの推移グラフ、客観的データの表等の客観的データに関する表示用のデータを表示部33に表示できるようになっている。
【0091】
管理者端末30は、通信部31を介して、対象者P1に対して業務前に対象者P1の体調変化に関する業務前アンケート(アンケートデータ)を、対象者P1の対象者端末40と体調変化検知装置100aの双方に送信する。業務前アンケートは、図8(A)に示すように、例えば、対象者P1の体調変化に関するアンケートとして、いつもとの体調の変化、すなわち、通常時との体調の変化について、「5.かなり違う。」、「4.違う。」、「3.少し違う。」、「2.ほぼ変化なし。」、「1.変化なし。」の5段階評価で簡素に回答できるように構成されている。このアンケートに対する回答データは、サーバ装置10に送信されてからデータ記憶部20に蓄積される。そしてサーバ装置10の判定部14bは、前述のようにラベル付き客観的データを生成するために、回答データを主観的データとして利用する。
【0092】
管理者端末30は、通信部31を介して、対象者P1に対して業務後に対象者P1の体調変化に関する業務後アンケート(アンケートデータ)を対象者P1の対象者端末40と体調変化検知装置100aの双方に送信する。業務後アンケートは、図8(B)に示すように、例えば、対象者P1の体調変化に関するアンケートとして、肉体疲労に関する体調変化と、熱中症に関する体調変化について、それぞれ5段階評価で簡素に回答できるように構成されている。その際に、肉体疲労及び熱中症の体調変化に関して、それぞれ業務中に一度でも該当した項目を選択するように注釈を記載している。このアンケートに対する回答データは、サーバ装置10に送信されてからデータ記憶部20に蓄積される。そしてサーバ装置10の判定部14bは、前述のようにラベル付き客観的データを生成するために、回答データを主観的データとして利用する。
【0093】
管理者端末30は、サーバ装置10から対象者P1の熱中症等の体調変化の発生リスクを警告するアラートメールを受信すると、WEB上で対象者P1の客観的データの推移を確認できるようになっている。そして、対象者P1の客観的データの推移をモニタリングした結果、対象者P1の感染症や熱中症等の体調変化の発生リスクがあると判定されると、管理者端末30は、通信部31を介して、対象者P1の体調変化検知装置100aにアラート信号を送信したり、対象者端末40にアラートメールを送信する。このように、体調変化管理システム1aでは、アラートを対象者P1に向けて送信することによって、対象者P1に自宅待機を要請して、感染症の拡大リスクを低減したり、休憩を促して熱中症の発生を抑制する。
【0094】
対象者端末40は、対象者P1が利用する端末装置であり、各種情報の送受信や演算処理等の必要動作が行えるように、図7に示すように、通信部41と、操作部42と、表示部43と、制御部44と、記憶部45と、を備える。対象者端末40は、例えば、サーバ装置10が提供する専用WEBサイトにアクセスすることによって、体調変化検知装置100aを装着した対象者の咳の回数や、心拍数、運動量、輻射熱等の客観的データや客観的データの推移グラフ、客観的データの表等を含む客観的データに関する表示用のデータを表示部43に表示できるようになっている。
【0095】
このように、体調変化管理システム1aは、サーバ装置10がネットワーク2を介してデータ記憶部20と、管理者端末30と、対象者端末40と、及び体調変化検知装置100aと接続されている。そして、サーバ装置10は、複数の対象者から受信した客観的データと主観的データに基づいて、各対象者の体調変化の発生リスクの有無を判定して、各対象者に対して体調変化の発生リスクがある旨の警告の通知等をコンピュータ管理する体調管理アプリケーションサービスの実行を制御している。このため、サーバ装置10では、体調管理の対象となる全ての対象者P1、P2、P3の体調を総括的に管理できるようになる。
【0096】
特に、体調変化管理システム1aでは、前述したように、体調変化検知装置100aにも管理者端末30から送信された体調変化に関するアンケートの回答データを入力する入力ボタンやタッチパネル等からなる操作部114を備える構成としている。このため、対象者P1は、現場に向かう際にも装着している体調変化検知装置100aからも体調変化に関するアンケートの回答データを簡単に入力して、サーバ装置10を介して管理者端末30に送信できるようになる。
【0097】
これによって、体調変化管理システム1aでは、対象者P1の体調を管理する管理者が対象者P1からのアンケートの回答データも踏まえて、主観的データと客観的データに基づいて、対象者P1の熱中症を発生する前段階での熱中症発生のリスクの有無を検知する。そして、体調変化管理システム1aでは、管理者が対象者P1にアラートを発して、熱中症の発生のリスクを前段階で抑制できるようになる。また、体調変化管理システム1aでは、管理者が対象者P1からのアンケートの回答データも踏まえて、主観的データと客観的データに基づいて、対象者P1による感染症が拡大する前段階で感染症拡大のリスクを検知する。そして、体調変化管理システム1aでは、管理者が対象者P1にアラートを発して、例えば、対象者P1を自宅に待機させて、感染症拡大のリスクを前段階で抑制できるようになる。
【0098】
なお、体調変化管理システム1aのサーバ装置10は、ソフトウェアによって実現してもよく、ハードウェアによって実現してもよい。ソフトウェアによって実現する場合、CPUとなる制御部14が体調変化管理システム1aを作動させるプログラムを実行することによって各種機能を実現することができる。このプログラムは、サーバ装置10に内蔵のROM15に格納してもよく、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に格納してもよい。
【0099】
また、体調変化管理システム1aのサーバ装置10は、外部の記憶装置となるストレージデバイスに格納されたプログラムを読み出し、いわゆるクラウドコンピューティングにより実現してもよい。その際に、体調変化検知装置100aで得られた各検知センサによる客観的データと、対象者端末40や体調変化検知装置100aから事前に又は事後に得られた個々の主観的データをクラウド上のサーバ装置10に蓄積し、時系列分析、クラスタ分析、人工知能等によりデータ解析が行われるようにしてもよい。
【0100】
実施形態及び変形例の作用及び効果
【0101】
次に、体調変化検知装置100及び体調変化管理システム1、体調変化検知装置100a及び体調変化管理システム1aの作用・効果について説明する。
【0102】
体調変化検知装置100は、ケーシング110の裏面110b側にマイクロフォン120が対象者の体表面に当接するように設けられている。体調変化検知装置100を装着した対象者に咽頭や喉頭等の上気道と、気管や気管支等の下気道を含む気道の炎症や疾患等の変動に起因する咳等の体調変化が発生すると、筋肉組織、結合組織、内皮組織、及び上皮組織等の対象者の人体を構成する組織に気道の変動が伝達する。これらの人体を構成する組織は、血液、組織内液、組織外液等の液体と細胞膜やフィラメント等の固体で構成されているので、空気等の気体と比べて、音の伝搬速度が大きく、音の振動が減衰することなく、より確実に伝播し易くなる。
【0103】
このため、咳等により咽頭や喉頭を始めとする気道の炎症や疾患等の変動が発生すると、気道の変動が筋肉組織等の対象者の人体を構成する組織に伝播される。そして、当該組織に伝播された音は、殆ど減衰することなく、当該組織で発生した振動の音がマイクロフォン120で検知されるようになる。このようにして、マイクロフォン120で検知された筋肉組織等の組織の振動音に基づいて、マイクロフォン120から離隔した上気道に有する咽頭や喉頭、下気道に有する気管、気管支等の気道の変動を検知できるようになる。すなわち、マイクロフォン120が「気道変動検知部」として機能して、対象者P1の筋肉組織等の振動の音を介して気道の変動を検知するので、咳等の気道変動に起因する体調変化を確実に検知できるようになる。
【0104】
例えば、体調変化検知装置100(体調変化検知装置100a)を装着して体調変化を検知する対象者を病院等の医療機関に入院、通院する患者とした場合には、マイクロフォン120が対象者P1の気道の変動として、筋肉組織等の振動の音から咳の回数を検知する。このため、マイクロフォン120が検知した筋肉組織等の振動の音から咳の回数を計測することによって、対象者P1の咳の回数等の体調変化の発生リスクの有無を正確に検知できるようになっている。
【0105】
特に、体調変化検知装置100(体調変化検知装置100a)は、対象者P1の体表面に密着させたマイクロフォン120が対象者P1の体表面側から筋肉組織等の振動の音を集音することによって、咳の回数を筋伝導方式で計測して気道の変動を検知する気道変動検知部として機能している。このように、マイクロフォン120は、筋肉組織等の振動の音を介して、咽頭や喉頭等の上気道と、気管や気管支等の下気道を含む気道で生じた変動のみを検知する。このため、咳や咽頭等の気道の病気で生じる気道の異常以外の他の生体音がマイクロフォン120の検知音に含まれることなく、精度よく必要な生体音を検知できるようになっている。
【0106】
また、体調変化検知装置100(体調変化検知装置100a)は、その内周面側に設けられているマイクロフォン120が対象者P1の体表面に当接するように設けられている。このため、当該対象者P1の体表面側から筋肉組織等の振動の音のみを集音して、咳の発生回数等の気道の変動に起因する体調変化を検知している。特に、体調変化検知装置100(体調変化検知装置100a)は、マイクロフォン120の対象者P1の体表面と当接する内面に有する集音口120aに薄膜120cが設けられている。このため、対象者P1の体表面側から筋肉組織等の振動が薄膜120cを介してマイクロフォン120の集音機能部120bに直接伝わるので、筋肉組織等の振動音を筋伝導方式で集音し易くなる。
【0107】
さらに、体調変化検知装置100(体調変化検知装置100a)は、空気を伝播した咳を集音する場合と比べて、マイクロフォン120で集音した筋肉組織等の振動音に他の生体音等の雑音が含まれるリスクを低減できる。一方、聴診器による集音と比べて、体調変化検知装置100(体調変化検知装置100a)は、マイクロフォン120で集音した気道の変動に連動する筋肉組織等の振動音に呼吸音が含まれることがないので、必要な咳による気道の変動のみを確実に検知して、体調変化の発生リスクの有無の検知精度が向上するようになる。
【0108】
また、体調変化検知装置100を適用して、体調変化管理システム1を構築することによって、管理者は、複数の対象者から受信した体調変化検知装置100が検知した客観的データと、対象者端末40から入手した対象者ごとの主観的データに基づいて、各対象者の体調変化の発生リスクの有無を判定できるようになる。このため、管理者は、自分が管理する各対象者P1、P2、P3の体調を総括的に管理した上で、体調変化の発生リスクがある対象者に対しては、事前に警告をすることによって、咳等の気道の変動に起因する疾患や疾病等の体調変化を抑制できる。すなわち、体調変化検知装置100を適用して、体調変化管理システム1を構築することによって、インフルエンザや新型コロナウィルス等の各種ウィルスの感染者の早期発見や、各種ウィルスの飛沫感染による感染拡大の抑制が可能となり、対象者の健康管理に有効に活用できるようになる。
【0109】
さらに、体調変化検知装置100aを適用して、体調変化管理システム1aを構築することによって、管理者は、体調変化検知装置100aが検知した客観的データとして、咳の回数に加えて、心拍数や運動量、体表温等の測定データを各対象者から受信できる。このため、対象者端末40や体調変化検知装置100aから入手した対象者ごとの客観的データ(測定データ)と主観的データに基づいて、各対象者の感染症や熱中症の発生リスク等の体調変化や体調不良の発生リスクの有無を予測できる。
【0110】
特に、体調変化管理システム1aでは、体調変化検知装置100aが対象者の咳の回数と体表温を検知するので、対象者の空咳の回数や発熱の変動データに基づいて、各種ウィルスの感染リスクを予測できるようになる。このため、各種ウィルスの感染の蓋然性が高い対象者を早期発見して、当該各種ウィルス感染が拡大する前の段階で当該対象者の自宅待機や早期隔離等のウィルス感染の拡大防止策を早急に行えるようになる。また、体調変化管理システム1aでは、体調変化検知装置100aに位置センサ140が設けられているので、管理者は、体調変化検知装置100aを装着した対象者の位置情報をトラッキングしながら、当該対象者の位置情報を把握できるようになる。このため、感染症発症の疑いのある対象者に対して、外出を控えて自宅待機をするように要請できるので、感染症の拡大の抑制に貢献するようになる。
【0111】
なお、上記のように本発明の各実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0112】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、体調変化検知装置、及び体調変化管理システムの構成、動作も本発明の各実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 体調変化管理システム
2 ネットワーク
10 サーバ装置
11、31、41 通信部
12、32、42 操作部
13、33、43 表示部
14、34、44 制御部
14a 受信部
14b 判定部
14c 送信部
15 ROM
16 RAM
20 データ記憶部
30 管理者端末
35、45 記憶部
40 対象者端末
100 体調変化検知装置
110 ケーシング
110a 表面
110b 裏面
110b1 開口部
110c 基板
111 スリット
112 ベルト
113 通信部
114 操作部
115 表示部
116 ROM
117 RAM
118 警報部
120 マイクロフォン(気道変動検知部)
120a 集音口
120b 集音機能部
120c 薄膜
120d 外装部
130 制御部
131 受信部
132 解析部
133 送信部
134 判定部
140 位置センサ
150 加速度センサ
160 温湿度センサ
170 サーモパイルセンサ
180 脈波センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8