(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】情報処理方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/18 20120101AFI20240912BHJP
【FI】
G06Q50/18 320
(21)【出願番号】P 2023088903
(22)【出願日】2023-05-30
【審査請求日】2024-01-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515334289
【氏名又は名称】メディカルリサーチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】圓井 順子
【審査官】藤原 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-126384(JP,A)
【文献】国際公開第2021/020198(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3230897(JP,U)
【文献】特表2015-513157(JP,A)
【文献】特開2023-56670(JP,A)
【文献】国際公開第2023/021692(WO,A1)
【文献】特開2019-67329(JP,A)
【文献】野俣智裕,"認知症で遺言書を作ると無効?有効に作成するポイントを弁護士が解説",[online],2023年02月05日,[2024年7月30日 検索],インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20230205162818/https://souzoku.darwin-law.jp/cat-souzoku/780/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
依頼者の端末装置及び意思能力鑑定者の端末装置との間で通信を行う通信部と、
遺言書の作成者に係る情報を記憶するデータベースと、
前記データベースに対する情報の記憶及び情報の取得を制御する処理部と
を備え、
前記通信部が、前記依頼者の端末装置との通信を行うことにより、遺言書の作成者の意思能力に係る鑑定の依頼を受け付け、
前記通信部が、前記依頼者の端末装置との通信を行うことにより、依頼を受け付けた鑑定の対象者の認知能力に関する診断情報、前記対象者の頭部画像情報、前記対象者に対する薬剤の処方情報、前記対象者の介護情報、前記対象者の入院時の看護記録情報、前記対象者の映像情報、又は、前記対象者の音声情報
を取得し、
前記通信部が、前記依頼者の端末装置との通信を行うことにより、前記依頼者が前記対象者の意思能力が有効又は無効のいずれの鑑定結果を望むかに係る選択を受け付け、
前記処理部が、取得した前記対象者に関する情報
と、受け付けた選択に関する情報とを、当該対象者の識別情報に対応付けて
前記データベースに記憶し、
前記処理部が、前記データベースに記憶した情報から、前記対象者が遺言書を作成した時点を含む所定期間内の情報を抽出し、
前記通信部が、前記意思能力鑑定者の端末装置との通信を行うことにより、前記データベースから抽出した情報と、受け付けた選択に関する情報とを、前記意思能力鑑定者の端末装置へ送信し、
前記通信部が、前記意思能力鑑定者の端末装置との通信を行うことにより、前記遺言書を作成した時点における前記対象者の意思能力の
前記意思能力鑑定者による鑑定結果を取得し、
前記処理部が、取得した前記鑑定結果を前記対象者の識別情報に対応付けて前記データベースに記憶し、
前記通信部が、前記依頼者の端末装置との通信を行うことにより、前記鑑定結果を前記依頼者の端末装置へ
通知する、
情報処理
装置。
【請求項2】
前記通信部が、前記依頼者の端末装置との通信を行うことにより、前記対象者が生前者又は没後者のいずれであるかの選択を受け付け、
前記処理部が、
前記生前者の選択を受け付けた場合に、前記対象者と前記意思能力鑑定者との面談を設定し、
前記面談の映像情報又は音声情報を取得し、
取得した前記映像情報又は前記音声情報を前記対象者の識別情報に対応付けて前記データベースに記憶する、
請求項1に記載の情報処理
装置。
【請求項3】
前記処理部が、
対象者に関する情報を入力として受け付けて前記対象者の意思能力の鑑定結果を出力するよう機械学習がなされた学習モデルへ、前記データベースに記憶した前記対象者に関する情報を入力し、
前記学習モデルが出力する鑑定結果を取得し、
取得した前記鑑定結果を前記対象者の識別情報に対応付けて前記データベースに記憶する、
請求項1に記載の情報処理
装置。
【請求項4】
前記処理部が、前記依頼者の端末装置から取得した情報に前記対象者の頭部画像情報を含む
か否かを判定し、
前記対象者の頭部画像情報を含む場合、
前記通信部が、画像鑑定者の端末装置へ前記頭部画像情報を送信し、
前記通信部が、前記画像鑑定者の端末装置
との通信をおこなうことにより、
前記画像鑑定者による前記頭部画像情報に関する鑑定結果を取得し、
前記処理部が、取得した前記鑑定結果を前記対象者の識別情報に対応付けて前記データベースに記憶し、
前記通信部が、記憶した前記鑑定結果を前記意思能力鑑定者の端末装置へ送信する、
請求項1に記載の情報処理
装置。
【請求項5】
前記通信部が、前記診断情報と、前記頭部画像情報と、前記処方情報と、前記介護情報と、前記看護記録情報と、前記映像情報又は前記音声情報とを前記依頼者の端末装置から取得し
、
前記処理部が、取得した情報を前記データベースに記憶する、
請求項1に記載の情報処理
装置。
【請求項6】
前記処理部が、
前記診断情報と前記頭部画像情報と前記処方情報と前記介護情報と前記看護記録情報と前記映像情報又は前記音声情報とを入力として受け付けて前記対象者の意思能力の鑑定結果を出力するよう機械学習がなされた学習モデルへ、前記データベースに記憶した前記診断情報と前記頭部画像情報と前記処方情報と前記介護情報と前記看護記録情報と前記映像情報又は前記音声情報とを入力し、
前記学習モデルが出力する鑑定結果を取得し、
取得した前記鑑定結果を前記対象者の識別情報に対応付けて前記データベースに記憶する、
請求項
5に記載の情報処理
装置。
【請求項7】
依頼者の端末装置及び意思能力鑑定者の端末装置との間で通信を行う通信部と、遺言書の作成者に係る情報を記憶するデータベースと、前記データベースに対する情報の記憶及び情報の取得を制御する処理部とを備えるコンピュータに、
前記通信部が、前記依頼者の端末装置との通信を行うことにより、遺言書の作成者の意思能力に係る鑑定の依頼を受け付け、
前記通信部が、前記依頼者の端末装置との通信を行うことにより、依頼を受け付けた鑑定の対象者の認知能力に関する診断情報、前記対象者の頭部画像情報、前記対象者に対する薬剤の処方情報、前記対象者の介護情報、前記対象者の入院時の看護記録情報、前記対象者の映像情報、又は、前記対象者の音声情報
を取得し、
前記通信部が、前記依頼者の端末装置との通信を行うことにより、前記依頼者が前記対象者の意思能力が有効又は無効のいずれの鑑定結果を望むかに係る選択を受け付け、
前記処理部が、取得した前記対象者に関する情報
と、受け付けた選択に関する情報とを、当該対象者の識別情報に対応付けて
前記データベースに記憶し、
前記処理部が、前記データベースに記憶した情報から、前記対象者が遺言書を作成した時点を含む所定期間内の情報を抽出し、
前記通信部が、前記意思能力鑑定者の端末装置との通信を行うことにより、前記データベースから抽出した情報と、受け付けた選択に関する情報とを、前記意思能力鑑定者の端末装置へ送信し、
前記通信部が、前記意思能力鑑定者の端末装置との通信を行うことにより、前記遺言書を作成した時点における前記対象者の意思能力の
前記意思能力鑑定者による鑑定結果を取得し、
前記処理部が、取得した前記鑑定結果を前記対象者の識別情報に対応付けて前記データベースに記憶し、
前記通信部が、前記依頼者の端末装置との通信を行うことにより、前記鑑定結果を前記依頼者の端末装置へ
通知する
処理を実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項8】
依頼者の端末装置及び意思能力鑑定者の端末装置との間で通信を行う通信部と、遺言書の作成者に係る情報を記憶するデータベースと、前記データベースに対する情報の記憶及び情報の取得を制御する処理部とを備える情報処理装置が、
前記通信部にて、前記依頼者の端末装置との通信を行うことにより、遺言書の作成者の意思能力に係る鑑定の依頼を受け付け、
前記通信部にて、前記依頼者の端末装置との通信を行うことにより、依頼を受け付けた鑑定の対象者の認知能力に関する診断情報、前記対象者の頭部画像情報、前記対象者に対する薬剤の処方情報、前記対象者の介護情報、前記対象者の入院時の看護記録情報、前記対象者の映像情報、又は、前記対象者の音声情報
を取得し、
前記通信部にて、前記依頼者の端末装置との通信を行うことにより、前記依頼者が前記対象者の意思能力が有効又は無効のいずれの鑑定結果を望むかに係る選択を受け付け、
前記処理部にて、取得した前記対象者に関する情報
と、受け付けた選択に関する情報とを、当該対象者の識別情報に対応付けて
前記データベースに記憶し、
前記処理部にて、前記データベースに記憶した情報から、前記対象者が遺言書を作成した時点を含む所定期間内の情報を抽出し、
前記通信部にて、前記意思能力鑑定者の端末装置との通信を行うことにより、前記データベースから抽出した情報と、受け付けた選択に関する情報とを、前記意思能力鑑定者の端末装置へ送信し、
前記通信部にて、前記意思能力鑑定者の端末装置との通信を行うことにより、前記遺言書を作成した時点における前記対象者の意思能力の
前記意思能力鑑定者による鑑定結果を取得し、
前記処理部にて、取得した前記鑑定結果を前記対象者の識別情報に対応付けて前記データベースに記憶し、
前記通信部にて、前記依頼者の端末装置との通信を行うことにより、前記鑑定結果を前記依頼者の端末装置へ
通知する
情報処理
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者の意思能力の鑑定に係る処理を行う情報処理方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1においては、遺言書署名及び印鑑印影資料を作成し、遺言者より筆跡及び印影サンプル資料の作成し、身分証明書、謄本、実印及び印鑑証明等を確認し、遺言書署名及び印鑑印影部分鑑定証明書を作成し、重要書類預かり書を発行し、遺言者死亡の公的書面を確認し、遺言書署名及び印鑑印影部分鑑定証明書を送付する、遺言書署名及び印鑑印影部分生前認証鑑定証明書を発行する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方法では、遺言書の署名を証明することができるのみであり、例えば遺言書の作成者の意思能力が有効であったか否かを推測することはできない。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、対象者の意思能力の鑑定を支援することが期待できる情報処理方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る情報処理方法は、情報処理装置が、対象者の認知能力に関する診断情報、前記対象者の頭部画像情報、前記対象者に対する薬剤の処方情報、前記対象者の介護情報、前記対象者の入院時の看護記録情報、前記対象者の映像情報、又は、前記対象者の音声情報を、前記対象者の鑑定を依頼する依頼者の端末装置から取得し、取得した前記対象者に関する情報を、当該対象者の識別情報に対応付けてデータベースに記憶し、記憶した前記対象者に関する情報を、意思能力を鑑定する意思能力鑑定者の端末装置へ送信し、前記意思能力鑑定者の端末装置から、前記対象者の意思能力の鑑定結果を取得し、取得した前記鑑定結果を前記対象者の識別情報に対応付けて前記データベースに記憶し、前記鑑定結果を前記依頼者の端末装置へ送信する。
【発明の効果】
【0007】
一実施形態による場合は、対象者の意思能力の鑑定を支援することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態に係る情報処理システムの概要を説明するための模式図である。
【
図2】本実施の形態に係るサーバ装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】本実施の形態に係るサーバ装置が行う鑑定支援処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】本実施の形態に係るサーバ装置が行う鑑定支援処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】学習モデルの他の構成例を示す模式図である。
【
図8】本実施の形態に係るサーバ装置が行う面談支援処理の手順を示すフローチャートである。
【
図9】本実施の形態に係るサーバ装置が行う面談支援処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る情報処理システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0010】
<システム概要>
図1は、本実施の形態に係る情報処理システムの概要を説明するための模式図である。本実施の形態に係る情報処理システムは、遺言状を作成した対象者に関して、この遺言作成の際に対象者が十分な意思能力(思考能力又は判断能力等)を有していたか否かを鑑定するサービスを提供する。本実施の形態に係る情報処理システムは、意思能力の鑑定に関する情報を管理するサーバ装置1、鑑定を依頼する依頼者が利用する端末装置2、及び、鑑定を行う鑑定者が利用する端末装置3等を含んで構成されている。
【0011】
本実施の形態において意思能力の鑑定の対象者は、遺言書を作成した又は作成しようとする者であり、生前者又は没後者のいずれであってもよい。対象者の意思能力の鑑定を依頼する依頼者は、例えば対象者の家族、親族又はその代理人等であってよく、また例えば対象者本人であってもよく、これら以外の様々な者であってよい。依頼者が利用する端末装置2には、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン又はタブレット型端末装置等の汎用の情報処理装置が用いられ得る。依頼者は、端末装置2にインストールされた本サービスのためのアプリケーションプログラム又は汎用のブラウザプログラム等を利用してサーバ装置1へアクセスすることにより、本サービスを利用することができる。
【0012】
依頼者は、端末装置2を利用してサーバ装置1にアクセスし、例えば依頼者の氏名及び連絡先等の情報、対象者の氏名等の情報、依頼者と対象者との関係に関する情報、並びに、遺言書が作成された日時及び遺言書の内容等の情報等の種々の情報の入力を行って、対象者の意思能力の鑑定を依頼する。このときに本実施の形態に係るサーバ装置1は、対象者が生前者又は没後者のいずれであるかの選択、及び、依頼者が対象者の意思能力が有効又は無効のいずれの鑑定結果を望んでいるかの選択を受け付ける。端末装置2を介して依頼者からのこれらの情報入力及び選択を受け付けたサーバ装置1は、対象者の意思能力の鑑定に必要な情報の提供を依頼者に要求する。
【0013】
本実施の形態に係る情報処理システムにおいては、意思能力の鑑定の対象者に関する例えば以下の情報の提供を依頼者に要求する。ただしこれらの情報は一例であって、意思能力の鑑定には下記の情報以外のどのような情報が用いられてもよく、下記の情報が用いられなくてもよい。
・対象者が通院していた病院等の医療機関において作成されたカルテ等の診断情報
・対象者の頭部をCT(Computed Tomography)又はMRI(Magnetic Resonance Imaging)等で撮影した頭部画像
・対象者に対して処方された薬剤に関する処方情報
・対象者が受けた介護の記録等の介護情報
・対象者が入院した際の看護記録情報
・対象者をビデオカメラ等で撮影した映像情報
・対象者の発話等を録音した音声情報
【0014】
サーバ装置1から鑑定に必要な上記の情報を要求された依頼者は、これらの情報を出来るだけ多く集め、集めた情報を端末装置3からサーバ装置1へアップロードする。なお本実施の形態においては、上記の複数の情報の全てを依頼者が提供することが求められるのではなく、依頼者は少なくとも1つの情報をサーバ装置1へ提供すればよい。ただし依頼者がより多くの情報を提供することで鑑定精度の向上が期待できる。
【0015】
依頼者の端末装置2から上記の情報を取得したサーバ装置1は、対象者に対して一意に付したID等の識別情報に対応付けて、取得したこれの情報を鑑定DB(データベース)5に記憶して蓄積する。なお対象者の識別情報は、例えばサーバ装置1により適宜に決定されてもよく、依頼者により決定されてもよい。なお鑑定DB5に記憶されたこれらの情報は、端末装置2を利用してサーバ装置1へアクセスすることによって依頼者が閲覧することが可能である。
【0016】
また対象者が生前者である場合、本実施の形態に係る情報処理システムでは、この対象者と意思能力の鑑定を行う鑑定者との面談が行われ得る。サーバ装置1は、対象者が生前者である場合、鑑定者との面談を希望するか否かの選択を依頼者から受け付ける。面談を希望する選択がなされた場合、サーバ装置1は、例えば既存のオンライン会議等のシステムを利用して対象者と鑑定者とのオンライン面談を設定する。このときにサーバ装置1は、例えばオンライン面談を行う日時等を決定し、オンライン面談を行う鑑定者を決定し、対象者又は依頼者と鑑定者とに対してオンライン面談に参加するためのリンク情報等を含む電子メールを送信する。またオンライン面談が実施された際、サーバ装置1は、オンライン面談の映像を録画し、録画した映像情報を鑑定DB5に記憶する。
【0017】
なお対象者と鑑定者との面談は、オンラインではなく、対面で行われてもよい。この場合、例えば鑑定者が面談の様子をビデオカメラ等の機器にて撮影し、撮影した映像情報をサーバ装置1へアップロードする。サーバ装置1は、鑑定者が撮影した映像情報を対象者の識別情報に対応付けて鑑定DB5に記憶する。また面談に関する情報として鑑定DB5に記憶する情報は、映像情報でなくてよく、例えば面談の会話を録音した音声データであってもよく、また例えば面談を行った鑑定者による報告書等の情報であってもよい。また対象者が生前者である場合、鑑定者との面談のみでなく、例えば所定の検査又はCT等による撮影等を対象者に対して行ってもよい。
【0018】
本実施の形態に係る情報処理システムでは、サーバ装置1が鑑定に必要な対象者に関する情報を取得した後、この情報を基に一又は複数の鑑定者により対象者の意思能力の鑑定が行われる。鑑定を行う鑑定者は、例えば種々の専門分野の医師又は専門家等であり得る。サーバ装置1は、依頼者から提供された情報の種類等に応じて適した専門分野の鑑定者を選択し、この鑑定者が利用する端末装置3へ対象者に関する情報を送信して鑑定を依頼する。1人の対象者を鑑定する鑑定者は1人であってもよく複数人であってもよい。
【0019】
サーバ装置1は、例えば対象者に関する情報としてCT又はMRI等の頭部画像を鑑定DB5に記憶している場合、この頭部画像を例えば放射線科医師等の画像鑑定者の端末装置3へ送信し、頭部画像の鑑定を依頼する。画像鑑定者は、端末装置3を利用して鑑定の対象者の頭部画像を閲覧し、例えば海馬の萎縮の有無を含めて総合的に判断してアルツハイマー型認知症又は軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)等の可能性等を検討する。画像鑑定者はこれらの検討結果を端末装置3に鑑定結果として入力し、端末装置3は入力された鑑定結果をサーバ装置1へ送信する。サーバ装置1は、画像鑑定者による鑑定結果を端末装置3から取得し、取得した鑑定結果を対象者の識別情報に対応付けて鑑定DB5に記憶する。
【0020】
この頭部画像のように個別に専門家の鑑定が必要な情報について、サーバ装置1は、予め定められた鑑定者へ鑑定を依頼し、鑑定結果を取得して鑑定DB5に記憶する。個別の鑑定は、頭部画像に限らず、対象者に関する種々の情報について行われ得る。このような個別の情報についての鑑定結果が揃った後、サーバ装置1は、対象者の意思能力について最終的な判断を行う鑑定者の端末装置3へ、この対象者に関して鑑定DB5に記憶された情報及び個別の鑑定結果等を送信し、鑑定者へ意思能力の鑑定を依頼する。最終的な判断を行う鑑定者は、例えば予め定められた者であってよく、また例えば個別の鑑定結果に応じてサーバ装置1により選択された者であってよく、また例えば依頼者により選択された者であってよい。サーバ装置1から対象者に関する情報等を取得した鑑定者は、端末装置3にてこれらの情報を閲覧して対象者の意思能力の有無を鑑定し、鑑定結果をまとめた所定の書式の鑑定書を作成する。端末装置3は、鑑定者が作成した鑑定書を鑑定結果としてサーバ装置1へ送信する。サーバ装置1は、端末装置3から鑑定者による鑑定結果を取得し、取得した鑑定結果を対象者の識別情報に対応付けて鑑定DB5に記憶する。またサーバ装置1は、この鑑定結果を依頼者の端末装置2へ送信する。
【0021】
サーバ装置1から鑑定結果を受信した端末装置2は、受信した鑑定結果をディスプレイ等に表示して依頼者に提示する。依頼者は、例えば鑑定結果を印刷した書面を遺言書と共に保管し、この遺言書の有効性を示す資料として鑑定結果を利用することができる。また依頼者は、端末装置2を利用してサーバ装置1にアクセスすることにより、鑑定DB5に記憶された鑑定結果の閲覧及び取得等を行うことができる。
【0022】
<装置構成>
図2は、本実施の形態に係るサーバ装置1の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係るサーバ装置1は、処理部11、記憶部(ストレージ)12及び通信部(トランシーバ)13等を備えて構成されている。なお本実施の形態においては、1つのサーバ装置1にて処理が行われるものとして説明を行うが、複数のサーバ装置が分散して処理を行ってもよい。
【0023】
処理部11は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)又は量子プロセッサ等の演算処理装置、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を用いて構成されている。処理部11は、記憶部12に記憶されたサーバプログラム12aを読み出して実行することにより、依頼者から鑑定の対象者に関する情報を取得する処理、鑑定者に鑑定を依頼する処理、及び、鑑定結果を依頼者に通知する処理等の種々の処理を行う。
【0024】
記憶部12は、例えばハードディスク又はSSD(Solid State Drive)等の大容量の記憶装置を用いて構成されている。記憶部12は、処理部11が実行する各種のプログラム、及び、処理部11の処理に必要な各種のデータを記憶する。本実施の形態において記憶部12は、処理部11が実行するサーバプログラム12aを記憶する。また記憶部12には、鑑定の対象者に関する情報及び鑑定者による鑑定結果等を記憶して蓄積する鑑定DB5が設けられている。
【0025】
本実施の形態においてサーバプログラム(コンピュータプログラム、プログラム製品)12aは、メモリカード又は光ディスク等の記録媒体99に記録された態様で提供され、サーバ装置1は記録媒体99からサーバプログラム12aを読み出して記憶部12に記憶する。ただし、サーバプログラム12aは、例えばサーバ装置1の製造段階において記憶部12に書き込まれてもよい。また例えばサーバプログラム12aは、遠隔の他のサーバ装置等が配信するものをサーバ装置1が通信にて取得してもよい。例えばサーバプログラム12aは、記録媒体99に記録されたものを書込装置が読み出してサーバ装置1の記憶部12に書き込んでもよい。サーバプログラム12aは、ネットワークを介した配信の態様で提供されてもよく、記録媒体99に記録された態様で提供されてもよい。
【0026】
図3は、鑑定DB5の一構成例を示す模式図である。本実施の形態に係る鑑定DB5は、例えば「対象者情報」、「遺言書情報」、「診断情報」、「頭部画像情報」、「処方情報」、「介護情報」、「看護記録情報」、「映像情報」、「音声情報」、「依頼者情報」及び「鑑定結果」等の情報が対応付けて記憶されたデータベースである。「対象者情報」は、意思能力の有無を鑑定する対象者に関する情報であり、例えば「対象者ID」及び「生前者/没後者」等の情報が含まれ得る。「対象者ID」は、対象者に対して一意に付される識別情報であり、例えばサーバ装置1が生成した文字列又は依頼者が入力した文字列等が用いられ得る。「対象者ID」は、対象者の氏名であってもよい。「生前者/没後者」は、対象者が生前者であるか又は没後者であるかを示すフラグ等の情報である。また「対象者情報」には、例えば対象者の氏名、年齢、没後者であれば死亡した年月日等の情報が含まれてよい。
【0027】
「遺言書情報」は、対象者が作成した遺言書に関する情報であり、例えば「遺言書」及び「作成日」等の情報が含まれ得る。「遺言書」は、対象者が作成した遺言書であり、遺言書の文書データ、テキストデータ又は画像データ等が記憶される。「作成日」は、対象者が遺言書を作成した年月日の情報であり、例えば依頼者により入力され得る。また「遺言書情報」には、「遺言書」及び「作成日」以外の種々の情報が記憶されてよい。
【0028】
「診断情報」は、生前の対象者が医療機関において医師の診断を受けた結果に関する情報であり、例えば「カルテ」及び「検査結果」等の情報が含まれ得る。「カルテ」は、医療機関において医師が作成したカルテであり、カルテの文書データ、テキストデータ又は画像データ等が記憶される。「検査結果」は、対象者について医療機関が行った種々の検査の結果に関する情報であり、例えば長谷川式認知症スケール、MMSE(ミニメンタルステート検査)及びABC認知症スケール等の検査結果が記憶され得る。また「診断情報」には、「カルテ」及び「検査結果」以外の種々の情報が記憶されてよい。
【0029】
「頭部画像情報」は、対象者の頭部の内部を撮影した「CT画像」及び「MRI画像」等の画像データと、この画像を基に画像鑑定者が鑑定した「画像鑑定結果」とが含まれ得る。サーバ装置1は、鑑定DB5に「CT画像」及び「MRI画像」として画像データそのものを記憶してもよく、これらの画像データは別のデータベースに記憶しておき、画像データの記憶場所を示す情報を鑑定DB5に「CT画像」及び「MRI画像」として記憶してもよい。「画像鑑定結果」は、対象者の頭部画像を基に、画像鑑定者が例えば対象者の海馬の萎縮の有無を含めて総合的に判断し、対象者がアルツハイマー型認知症又は軽度認知障害等であるか否かを鑑定した結果等の情報である。なお「画像鑑定結果」は、アルツハイマー型認知症又は軽度認知障害に関する鑑定結果に限るものではなく、これ以外の種々の症状に関する鑑定結果であってよい。
【0030】
「処方情報」は、対象者に対して処方された薬剤に関する情報であり、例えば「薬剤」及び「処方期間」等の情報が含まれ得る。「薬剤」は、対象者に対して処方された薬剤の名称又は識別情報等である。「処方期間」は、対象者に対して薬剤が処方された期間であり、例えば処方の開始年月日及び終了年月日等の情報が記憶され得る。なお「処方情報」には、「薬剤」及び「処方期間」の他に、例えば薬剤の処方量等の種々の情報が記憶されてよい。また対象者に対した複数種類の薬剤が処方されている場合、「処方情報」にはこれら複数の薬剤についての情報がそれぞれ記憶され得る。
【0031】
「介護情報」は、対象者が受けていた介護に関する情報であり、例えば「要介護認定」及び「介護内容」等の情報が含まれ得る。「要介護認定」は、対象者が介護をどの程度必要とするかを行政機関等が認定したものであり、例えば要支援1,2及び要介護1~5の7段階で認定が行われ得る。「介護内容」は、対象者が受けていた介護の内容の詳細であり、例えば介護記録及び介護者が作成したケアプラン等の情報が含まれ得る。なお「介護情報」には、「要介護認定」及び「介護内容」以外の種々の情報が記憶されてよい。
【0032】
「看護記録情報」は、対象者が入院した際の看護に関する情報であり、例えば「入院期間」及び「看護内容」等の情報が含まれ得る。「入院期間」は、対象者が入院していた期間であり、例えば入院の開始年月日及び終了年月日等の情報が記憶され得る。「看護内容」は、対象者に対して入院中に行われた看護の詳細な内容であり、例えば看護師が記載した看護記録等の情報が含まれ得る。なお「看護記録情報」には、「入院期間」及び「看護内容」以外の種々の情報が記憶されてよい。
【0033】
「映像情報」は、生前の対象者を撮影した映像のデータであり、例えば対象者の家族又は対象者自身等がビデオカメラ等の撮影装置を用いて撮影した映像である。サーバ装置1は、鑑定DB5に「映像情報」として映像データそのものを記憶してもよく、これらの映像データを別のデータベースに記憶しておき、映像データの記憶場所を示す情報を鑑定DB5に「映像情報」として記憶してもよい。同様に、「音声情報」は、生前の対象者の発話を録音した音声データであり、例えば対象者の家族又は対象者自身等がボイスレコーダ等の録音装置を用いて録音した音声である。サーバ装置1は、鑑定DB5に「音声情報」として音声データそのものを記憶してもよく、これらの音声データを別のデータベースに記憶しておき、音声データの記憶場所を示す情報を鑑定DB5に「音声情報」として記憶してもよい。また「映像情報」及び「音声情報」には、鑑定者と対象者との面談が行われた際に録画及び録音された映像データ及び音声データが記憶されてよい。
【0034】
「依頼者情報」は、対象者の意思能力の鑑定を依頼した依頼者に関する情報であり、例えば「依頼者ID」及び「鑑定希望」等の情報が含まれ得る。「依頼者ID」は、依頼者に対して一意に付された識別情報であり、例えば依頼者が決定した文字列又は依頼者のメールアドレス等が用いられ得る。「鑑定希望」は、依頼者が対象者の意思能力について、有効であるとの鑑定結果を望んでいるか、又は、無効であるとの鑑定結果を望んでいるかを示す情報であり、例えばサーバ装置1が依頼を受け付ける際に依頼者からの入力を受け付けた情報である。なお「依頼者情報」には、「依頼者ID」及び「鑑定希望」の他に、例えば対象者との関係又は依頼者の連絡先等の種々の情報が記憶されてよい。
【0035】
「鑑定結果」は、鑑定DB5に記憶された上述の種々の情報に基づいて対象者の意思能力を鑑定した結果に関する情報であり、例えば「鑑定者ID」及び「鑑定書」等の情報が含まれ得る。「鑑定者ID」は、鑑定者に対して一意に付された識別情報であり、例えば鑑定者が決定した文字列又は鑑定者のメールアドレス等であってよく、また例えば鑑定者の氏名であってもよい。「鑑定書」は、鑑定者が鑑定結果を文書としてまとめたものであり、この文書の文書データ又は画像データ等が記憶され得る。
【0036】
なお鑑定DB5の「遺言書情報」、「診断情報」、「頭部画像情報」、「処方情報」、「介護情報」、「看護記録情報」、「映像情報」及び「音声情報」等は、依頼者から提供される情報であり、必ずしも全ての情報が揃っていなくてよい。
【0037】
サーバ装置1の通信部13は、例えばインターネット、LAN(Local Area Network)又は携帯電話通信網等を含むネットワークNを介して、種々の装置との間で通信を行う。本実施の形態において通信部13は、ネットワークNを介して、依頼者が利用する端末装置2及び鑑定者が利用する端末装置3等との間で通信を行う。通信部13は、処理部11から与えられたデータを他の装置へ送信すると共に、他の装置から受信したデータを処理部11へ与える。
【0038】
なお記憶部12は、サーバ装置1に接続された外部記憶装置であってよい。またサーバ装置1は、複数のコンピュータを含んで構成されるマルチコンピュータであってよく、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。またサーバ装置1は、上記の構成に限定されず、例えば可搬型の記憶媒体に記憶された情報を読み取る読取部、操作入力を受け付ける入力部、又は、画像を表示する表示部等を含んでもよい。
【0039】
また本実施の形態に係るサーバ装置1では、記憶部12に記憶されたサーバプログラム12aを処理部11が読み出して実行することにより、対象者情報取得部11a、鑑定依頼部11b、鑑定結果取得部11c及び鑑定結果通知部11d等が、ソフトウェア的な機能部として処理部11に実現される。なお本図においては、処理部11の機能部として、意思能力の鑑定に関連する機能部を図示し、これ以外の処理に関する機能部は図示を省略している。
【0040】
対象者情報取得部11aは、通信部13にて依頼者の端末装置2との間で通信を行うことにより、意思能力の鑑定に必要な対象者の情報を取得する処理を行う。対象者情報取得部11aは、例えば依頼者からの鑑定依頼を受け付けた後、鑑定に用いる情報の種類等を一覧表示して依頼者にこれらの情報のアップロードを要求する。依頼者は、例えば対象者が通院していた病院又は対象者が介護サービスを受けていた介護施設等からこれらの情報を適宜に取得し、取得した情報を端末装置2に読み込ませ、端末装置2からサーバ装置1へこれらの情報をアップロードする。サーバ装置1の対象者情報取得部11aは、端末装置2からアップロードされたこれらの情報を取得し、取得した情報を対象者の識別情報に対応付けて鑑定DB5に記憶する。
【0041】
なお依頼者は、これらの情報を端末装置2からサーバ装置1へ直接的にアップロードするのではなく、例えばこれらの情報に係るファイル等を添付した電子メールを所定のメールアドレス宛に送信してもよい。サーバ装置1は、依頼者からの電子メールを受信し、この電子メールに添付されたファイル等を鑑定DB5に記憶することができる。また依頼者の端末装置2及びサーバ装置1の間のこれらの情報の授受は、チャットシステムを介して行われてもよい。
【0042】
鑑定依頼部11bは、通信部13にて鑑定者の端末装置3との間で通信を行うことにより、対象者の意思能力の鑑定を鑑定者に依頼する処理を行う。鑑定依頼部11bは、対象者情報取得部11aが対象者に関する情報を依頼者から取得して鑑定DB5に記憶した後、これらの情報を鑑定者の端末装置3へ送信して鑑定者に鑑定を依頼する。このときに鑑定依頼部11bは、例えば対象者の10年以上に亘る介護記録が依頼者から提供された場合など、鑑定DB5に記憶された対象者に関する情報が所定の基準よりも多い場合、例えば対象者が遺言書を作成した時点の前後1年分等のように、遺言書を作成した時点を含む所定期間の情報を鑑定DB5から抽出して鑑定者へ送信してもよい。
【0043】
また本実施の形態において鑑定依頼部11bは、鑑定DB5に記憶された対象者の情報に頭部画像が含まれている場合、まず頭部画像の鑑定を担当する画像鑑定者の端末装置3へ頭部画像を送信して鑑定を依頼する。鑑定依頼部11bは、画像鑑定者から頭部画像に関する鑑定結果が得られた後、個の鑑定結果と共に対象者に関する他の情報を、最終的な鑑定を行う鑑定者へ送信して対象者の意思能力の鑑定を依頼する。
【0044】
鑑定結果取得部11cは、通信部13にて鑑定者の端末装置3との間で通信を行うことにより、鑑定依頼部11bによる依頼に応じて鑑定者が行った対象者の意思能力の鑑定結果を取得する処理を行う。本実施の形態において鑑定の依頼を受けた鑑定者は、サーバ装置1から送信された対象者に関する各種の情報を端末装置3に表示させて閲覧し、遺言書を作成した際に対象者が十分な意思能力を有していたか否かを鑑定する。鑑定者は、自身の鑑定結果をまとめた鑑定書を端末装置3にて作成し、作成した鑑定書を鑑定結果としてサーバ装置1へアップロードする。鑑定結果取得部11cは、端末装置3からアップロードされた鑑定結果を取得し、取得した鑑定結果を対象者の識別情報に対応付けて鑑定DB5に記憶する。
【0045】
なお鑑定者は、これらの鑑定結果を端末装置3からサーバ装置1へ直接的にアップロードするのではなく、例えば鑑定結果に係るファイル等を添付した電子メールを所定のメールアドレス宛に送信してもよい。サーバ装置1は、鑑定者からの電子メールを受信し、この電子メールに添付されたファイル等を鑑定DB5に記憶することができる。また鑑定者の端末装置3及びサーバ装置1の間のこれらの情報の授受は、チャットシステムを介して行われてもよい。
【0046】
また鑑定依頼部11bが対象者の頭部画像に関して画像鑑定者に鑑定を依頼した場合、本実施の形態においては画像鑑定者が対象者の頭部画像を基にアルツハイマー型認知症又は軽度認知障害等の有無等を鑑定する。画像鑑定者は鑑定結果を端末装置3にて入力し、端末装置3は入力された鑑定結果をサーバ装置1へ送信する。このときに画像鑑定者が入力する鑑定結果は、例えば鑑定書のような文書データであってもよく、また例えば画像鑑定者の所見等を短文にまとめたテキストデータであってもよく、また例えばアルツハイマー型認知症もしくは軽度認知障害等の有無を示す2値情報又はアルツハイマー型認知症もしくは軽度認知障害等である可能性を示す割合(百分率)の数値情報であってもよく、これら以外のどのような情報形態であってもよい。また鑑定結果は、アルツハイマー型認知症又は軽度認知障害とは別の症状、例えば変性性認知症等の症状に関するものであってよい。鑑定結果取得部11cは、端末装置3から送信される画像鑑定者の鑑定結果を取得して、鑑定DB5の「画像鑑定結果」に記憶する。
【0047】
なお画像鑑定者は、これらの画像に関する鑑定結果を端末装置3からサーバ装置1へ直接的にアップロードするのではなく、例えば鑑定結果に係るファイル等を添付した電子メールを所定のメールアドレス宛に送信してもよい。サーバ装置1は、画像鑑定者からの電子メールを受信し、この電子メールに添付されたファイル等を鑑定DB5に記憶することができる。また画像鑑定者の端末装置3及びサーバ装置1の間のこれらの情報の授受は、チャットシステムを介して行われてもよい。
【0048】
鑑定結果通知部11dは、通信部13にて依頼者の端末装置2との間で通信を行うことにより、鑑定者による鑑定結果を依頼者へ通知する処理を行う。鑑定結果通知部11dは、鑑定結果取得部11cが対象者に関する最終的な鑑定結果を鑑定者から取得した後、鑑定DB5に記憶された鑑定結果を読み出し、この対象者の鑑定を依頼した依頼者の端末装置2へ鑑定結果を送信することにより、依頼者への通知を行う。このときに鑑定結果通知部11dは、例えば鑑定者が作成した鑑定書の文書データを鑑定結果として依頼者の端末装置2へ送信してもよく、また例えば鑑定が完了したことを依頼者へ通知して、端末装置2を利用してサーバ装置1にアクセスして鑑定書を閲覧又は取得するよう依頼者に促してもよい。鑑定結果通知部11dによる鑑定結果の通知方法は、どのような方法が採用されてもよい。
【0049】
<鑑定支援処理>
図4及び
図5は、本実施の形態に係るサーバ装置1が行う鑑定支援処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る情報処理システムでは、例えば鑑定を依頼する依頼者は、端末装置2にてWebブラウザ等のプログラムを利用して、本情報処理システムが提供する鑑定サービスに関するWebページにアクセスすることにより、サーバ装置1に対するアクセスを行うことができる。サーバ装置1は依頼者及び鑑定の対象者に関する情報等を入力するWebページを端末装置2のWebブラウザに表示させ、これらの情報の入力と共に、対象者の意思能力の鑑定依頼を受け付ける。
【0050】
本実施の形態に係るサーバ装置1の処理部11は、依頼者の端末装置2にて所定の情報入力及び操作が行われたか否かに基づき、依頼者から意思能力の鑑定の依頼を受け付けたか否かを判定する(ステップS1)。鑑定の依頼を受け付けていない場合(S1:NO)、処理部11は、鑑定の依頼を受け付けるまで待機する。鑑定の依頼を受け付けた場合(S1:YES)、処理部11は、鑑定依頼と共に入力された依頼者情報及び対象者情報等を取得する(ステップS2)。なおこのときに取得される依頼者情報は依頼者の締め及び鑑定希望等の情報であり、対象者情報は対象者が生前者又は没後者のいずれであるか等の情報である。処理部11は、ステップS2にて取得した依頼者情報及び対象者情報等を、鑑定DB5に「依頼者情報」及び「対象者情報」として記憶する(ステップS3)。
【0051】
次いで処理部11の対象者情報取得部11aは、対象者の意思能力の鑑定に必要な情報の一覧を端末装置2に表示して(ステップS4)、これらの情報のアップロードを依頼者に促す。このときに一覧表示される鑑定に必要な情報には、例えば対象者が通院していた病院等の医療機関において作成されたカルテ等の診断情報、対象者の頭部をCT又はMRI等で撮影した頭部画像、対象者に対して処方された薬剤に関する処方情報、対象者が受けた介護の記録等の介護情報、対象者が入院した際の看護記録情報、対象者をビデオカメラ等で撮影した映像情報、及び、対象者の発話等を録音した音声情報等が含まれ得る。
【0052】
依頼者は、ステップS4にて表示された一覧に基づいて必要な情報を集め、集めた情報を端末装置2に読み込ませ、端末装置2からサーバ装置1へ情報のアップロードを行う。このため、ステップS4にて一覧の表示が行われてから依頼者が情報をアップロードするまでには、例えば数日程度の間隔が生じ得る。本実施の形態においてサーバ装置1が行う本フローチャートの処理は、任意の時点で中断することができ、その後に中断した時点から再開することが可能である。
【0053】
なお本実施の形態においては、依頼者がこれらの情報を端末装置2からサーバ装置1へ直接的にアップロードするものとするが、情報の授受の方法は直接的なアップロードに限らない。例えば依頼者はこれらの情報に係るファイル等を添付した電子メールを端末装置2から所定のメールアドレス宛に送信し、サーバ装置1は依頼者からの電子メールを受信して添付されたファイル等を取得することができる。また例えば依頼者の端末装置2及びサーバ装置1の間のこれらの情報の授受は、チャットシステムを介して行われてもよい。
【0054】
対象者情報取得部11aは、依頼者が端末装置2にてアップロードした情報を取得することにより、鑑定に必要な対象者の情報を取得する(ステップS5)。対象者情報取得部11aは、ステップS5にて取得した情報を、対象者の識別情報に対応付けて鑑定DB5に記憶する(ステップS6)。このときに対象者情報取得部11aは、記憶する情報の種別等に応じて、鑑定DB5の「診断情報」、「頭部画像情報」、「処方情報」、「介護情報」、「看護記録情報」、「映像情報」又は「音声情報」のいずれかに情報を記憶する。
【0055】
本実施の形態において依頼者は、要求された情報を出来るだけ多く集め、集めた情報を端末装置2からサーバ装置1へアップロードした後、例えば端末装置2に表示されたアップロード画面に設けられた鑑定開始のメニュー又はボタン等を選択する操作を行うことで、鑑定の開始を要求することができる。サーバ装置1の鑑定依頼部11bは、例えばこのような依頼者による鑑定開始の要求が与えられたか否かに基づき、対象者の鑑定を開始するか否かを判定する(ステップS7)。鑑定を開始しない場合(S7:NO)、処理部11は、ステップS4へ処理を戻し、依頼者からの鑑定に必要な情報の取得を継続して行う。
【0056】
鑑定を開始すると判定した場合(S7:YES)、鑑定依頼部11bは、鑑定DB5に記憶された情報を調べることにより、依頼者から取得した情報の中に対象者の頭部画像が含まれているか否かを判定する(ステップS8)。頭部画像が含まれていない場合(S8:NO)、鑑定依頼部11bは、ステップS12へ処理を進める。頭部画像が含まれている場合(S8:YES)、鑑定依頼部11bは、この頭部画像を画像鑑定者の端末装置3へ送信し(ステップS9)、頭部画像に関する鑑定を画像鑑定者に依頼する。処理部11の鑑定結果取得部11cは、ステップS9にて送信した頭部画像に関する画像鑑定者の鑑定結果を端末装置3から取得する(ステップS10)。鑑定結果取得部11cは、ステップS10にて取得した鑑定結果を、対象者の識別情報に対応付けて鑑定DB5に記憶し(ステップS11)、ステップS12へ処理を進める。
【0057】
鑑定依頼部11bは、依頼者から取得して鑑定DB5に記憶した対象者に関する情報の中から、例えば遺言書を作成した時点を含む所定期間の情報を抽出する(ステップS12)。なお、例えば依頼者から得られた情報が少ない場合、又は、対象者が生前者であり遺言書が未作成である場合等には、鑑定依頼部11bは、ステップS12における情報の抽出を行わなくてもよい。また例えば対象者が生前者であり遺言書が未作成である場合、鑑定依頼部11bは、現時点又は遺言書作成の予定日等から所定期間前の情報を抽出してもよい。また抽出を行う所定期間は、例えば数ヶ月、1年又は数年等の期間であってよく、本実施の形態に係る情報処理システムの管理者、設計者又は鑑定者等により適宜に定められ得る。
【0058】
鑑定依頼部11bは、ステップS12にて抽出した対象者の鑑定に用いられる情報を、一又は複数の鑑定者の端末装置3へ送信し(ステップS13)、これらの情報に基づく対象者の意思能力の鑑定を鑑定者に依頼する。このときに鑑定依頼部11bは、ステップS9~S11による頭部画像に基づく鑑定結果の取得が行われている場合、鑑定DB5に記憶された頭部画像に基づく鑑定結果を鑑定者へ送信する。また鑑定依頼部11bが鑑定者へ送信する情報には、鑑定DB5に記憶された「診断情報」、「頭部画像情報」、「処方情報」、「介護情報」、「看護記録情報」、「映像情報」及び「音声情報」が含まれ得ると共に、「対象者情報」、「遺言書情報」及び「依頼者情報」が含まれてよい。鑑定結果取得部11cは、ステップS13にて送信した情報を基に鑑定者が対象者の意思能力を鑑定した鑑定結果を端末装置3から取得する(ステップS14)。鑑定結果取得部11cは、ステップS14にて取得した鑑定結果を、対象者の識別情報に対応付けて鑑定DB5に記憶する(ステップS15)。処理部11の鑑定結果通知部11dは、ステップS15にて鑑定DB5に記憶された対象者の鑑定結果を、依頼者の端末装置2へ送信することにより、鑑定結果を通知し(ステップS16)、処理を終了する。
【0059】
<AIの利用>
上述の情報処理システムでは、依頼者から取得した種々の情報をサーバ装置1が鑑定者の端末装置3へ送信することで、一又は複数の鑑定者による対象者の意思能力の鑑定が行われている。本実施の形態に係る情報処理システムは、これらの鑑定の一部又は全部を、機械学習により予め生成された学習モデル、いわゆるAI(Artificial Intelligence)を用いて行ってもよい。一例として、対象者の頭部画像に基づく鑑定を学習モデルが行う場合について説明する。
【0060】
図6は、学習モデルの一構成例を示す模式図である。本実施の形態に係る情報処理システムにおいて用いられる学習モデル7は、例えば鑑定の対象者の頭部の内部をCT又はMRI等で撮影した頭部画像を入力として受け付ける。学習モデル7は、入力された頭部画像を基に対象者が認知症であるか否かを推定し、例えば対象者が認知症である可能性を0~1の範囲の数値情報として出力する。学習モデル7が出力する数値が1に近いほど、対象者が認知症である可能性が高い。
【0061】
学習モデル7は、例えばCNN(Convolutional Neural Network)又はDNN(Deep Neural Network)等の構成が採用され得る。また本実施の形態に係る情報処理システムでは、例えば頭部画像と認知症であるか否かのフラグ値とが対応付けられた学習用データ(いわゆる教師データ)が予め収集され、これらの学習用データを用いた教師ありの機械学習を行うことによって学習モデル7が予め生成される。なお、教師ありの機械学習による学習モデルの生成は、既存の技術であるため、詳細な説明を省略する。生成された学習モデル7に関する情報(例えば学習モデル7がどのような構造であるかを示す情報、及び、機械学習により決定された内部パラメータ等)は、予めサーバ装置1の記憶部12に記憶される。
【0062】
サーバ装置1は、例えば
図4及び
図5に示したフローチャートのステップS9~S11において行われる頭部画像の鑑定を画像鑑定者に依頼して鑑定結果を取得する処理に代えて、頭部画像を学習モデル7へ入力し、学習モデル7が出力する鑑定結果を取得し、取得した鑑定結果を鑑定DB5に記憶する処理を行うことができる。
【0063】
なお、本例では頭部画像に基づく鑑定を学習モデル7が行う構成について説明したが、学習モデルを利用した鑑定は頭部画像に限らず、他の種々の情報について行ってよい。例えば学習モデルは、「診断情報」に含まれるカルテの情報を入力として受け付けて、カルテの情報を基に対象者の意思能力の鑑定結果を出力するものであってよい。また例えば学習モデルは、「介護情報」又は「看護記録情報」を入力として受け付けて、これらの情報を基に対象者の意思能力の鑑定結果を出力するものであってよい。また例えば学習モデルは、「映像情報」又は「音声情報」を入力として受け付けて、これらの情報を基に対象者の意思能力の鑑定結果を出力するものであってよい。
【0064】
図7は、学習モデルの別の構成例を示す模式図である。
図7に示す学習モデル8は、例えば対象者の「診断情報」、「頭部画像情報」、「処方情報」、「介護情報」、「看護記録情報」及び「映像情報(又は音声情報であってもよい)」を入力として受け付けて、対象者の意思能力の鑑定結果を出力する。また本例の学習モデル8は、複数の学習モデル8a~8gを備えて構成されている。これら7つの学習モデル8a~8gのうち、前段に配される6つの学習モデル8a~8fは、上記の「診断情報」、「頭部画像情報」、「処方情報」、「介護情報」、「看護記録情報」及び「映像情報」のいずれかを入力として受け付けて、入力された情報に応じた個別の鑑定結果又は特徴量等の中間情報を出力する。後段に配される1つの学習モデル8gは、前段の6つの学習モデル8a~8fが出力する6つの中間情報を入力として受け付けて、対象者の意思能力の最終的な鑑定結果を出力する。
【0065】
例えば、画像又は映像等の情報を入力として受け付ける学習モデル8b,8fは、例えばCNN又はDNN等の学習モデルが採用され得る。文章又は時系列情報等の情報を入力として受け付ける学習モデル8a,8c,8d,8eは、例えばTransformer又はRNN(Recurrent neural network)等の学習モデルが採用され得る。また学習モデル8gは、例えばDNN又はTransformer等の学習モデルが採用され得る。学習モデル8a~8gは、上記の学習モデルに限らず、どのような構成の学習モデルが採用されてもよい。また学習モデル8は、複数の学習モデル8a~8gを組み合わせた構成ではなく、1つの学習モデルとして生成されたものであってよい。
【0066】
各学習モデル8a~8fは、例えばそれぞれに対する入力情報と、この入力情報に対応する個別の鑑定結果とを対応付けた学習用データを用いたいわゆる教師ありの機械学習により個別に生成され得る。学習モデル8gは、例えば学習モデル8a~8fが出力する複数の情報と、これらの情報に対応する意思能力の鑑定結果とを対応付けた学習用データを用いたいわゆる教師あり学習により生成され得る。また、学習モデル8a~8gを個別に生成するのではなく、例えば「診断情報」、「頭部画像情報」、「処方情報」、「介護情報」、「看護記録情報」及び「映像情報」と意思能力の鑑定結果とを対応付けた学習用データを用いた機械学習により一括して生成してもよい。
【0067】
このように、「診断情報」、「頭部画像情報」、「処方情報」、「介護情報」、「看護記録情報」及び「映像情報」を入力として受け付けて、対象者の意思能力の鑑定結果を出力する学習モデル8を用いることにより、情報処理システムは、画像鑑定者及び鑑定者等の人手を要することなく、依頼者から取得した情報に基づいてサーバ装置1が対象者の意思能力の鑑定を行い、鑑定結果を依頼者に提供することができる。
【0068】
<生前者との面談>
本実施の形態に係る情報処理システムでは、鑑定の対象者が生前者である場合に、依頼者又は対象者の希望に応じて、対象者と鑑定者との間での面談が行われ得る。サーバ装置1は、依頼者から鑑定の依頼を受け付ける際に、端末装置2を介して対象者が生前者であるか没後者であるかの選択を受け付け、対象者が生前者である場合には、対象者と鑑定者との面談を希望するか否かの選択を受け付ける。面談を希望する選択を受け付けた場合、サーバ装置1は、対面による面談を希望するか、又は、オンラインでの面談を希望するかの選択を更に受け付ける。
【0069】
対面の面談を希望する選択を受け付けた場合、サーバ装置1は、対象者と鑑定者との対面での面談を行う日時等を、依頼者との間で決定する。サーバ装置1は、例えば対面の面談を担当する鑑定者のスケジュール等の情報を管理し、鑑定者が面談可能な日時を検索し、複数の候補日を依頼者の端末装置2にて提示する。サーバ装置1は、端末装置2を介して依頼者からの選択を受け付けて面談の日時を確定し、確定した面談の日時等の情報を依頼者の端末装置2及び鑑定者の端末装置3へ通知する。なおサーバ装置1は、更に面談を実施する場所を決定する処理を行ってもよく、面談を実施する場所が例えば会議室又はミーティングルーム等のような予約が必要な場所である場合には、この場所の予約を管理するシステムにアクセスして面談場所の予約を行ってもよい。
【0070】
また、オンライン面談を希望する選択を受け付けた場合、サーバ装置1は、依頼者との間で面談を行う日時等を決定し、既存のオンライン会議等のシステムを利用して対象者と鑑定者とのオンライン面談を設定し、オンライン面談に参加するためのリンク情報等を含む案内の電子メールを依頼者の端末装置2及び鑑定者の端末装置3へ送信する。
【0071】
対象者と鑑定者との対面による面談が行われる場合、面談を行う鑑定者は、例えば
予め定められた日時の前に、映像を記録するビデオカメラ又は音声を記録するボイスレコーダ等の記録装置を準備し、対面による面談を開始から終了までの映像情報又は音声情報を記録装置にて記録する。面談の終了後、鑑定者は、記録装置にて記録した映像情報又は音声情報を、例えば端末装置3からサーバ装置1へ送信し、面談を行った対象者の識別情報に対応付けて鑑定DB5に「映像情報」又は「音声情報」として記憶する。
【0072】
対象者と鑑定者とのオンラインによる面談が行われる場合、予め定められた日時又はその前後の時刻に、例えば依頼者及び対象者は端末装置2を介して、且つ、鑑定者は端末装置3を介して、オンライン面談を実施するサーバ装置等にアクセスする。対象者と鑑定者とのオンライン面談が開始された場合、サーバ装置1は、オンライン面談を管理する他のサーバ装置等にアクセスして、オンライン会議の映像を録画する。サーバ装置1は、録画したオンライン会議の映像情報を、この対象者の識別情報に対応付けて鑑定DB5に「映像情報」として記憶する。
【0073】
図8及び
図9は、本実施の形態に係るサーバ装置1が行う面談支援処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係るサーバ装置1の処理部11は、端末装置2との間で送受信した情報に基づいて、依頼者が面談を希望しているか否か、即ち対象者と鑑定者の面談が必要であるか否かを判定する(ステップS31)。例えば依頼者が面談を希望しなかった場合など、面談を行う必要がない場合(S31:NO)、処理部11は、面談支援処理を終了する。
【0074】
面談を行う必要がある場合(S31:YES)、処理部11は、例えば端末装置2との間で送受信した情報に基づいて、対象者と鑑定者との面談をオンラインで行うか否かを判定する(ステップS32)。オンラインの面談を行うと判定した場合(S32:YES)、処理部11は、オンライン面談を行う候補日時を決定する(ステップS33)。サーバ装置1は、例えばオンライン面談を担当する鑑定者のスケジュール情報を管理しており、例えば1~2週間程度の間で鑑定者のスケジュールに空きがある日時を選択してオンライン面談の候補日時とすることができる。処理部11は、例えばステップS33にて決定した候補日時を依頼者の端末装置2に表示して、候補日の中からオンライン面談を行う日時の選択を依頼者から端末装置2を介して受け付ける(ステップS34)。
【0075】
処理部11は、選択を受け付けた面談日時にオンライン面談を行うべく、既存のオンライン会議等のシステムにアクセスしてオンライン面談の日時及び人数等の情報を登録して、オンライン面談の設定を行う(ステップS35)。なお本実施の形態においてオンライン面談の設定を行うとは、所望の日時に複数の参加者がオンライン面談を行うことが可能となるように、オンライン会議システムに対してオンライン会議のIDを取得する、及び、オンライン会議に参加するためのリンク情報を取得する等の処理を含むものである。処理部11は、ステップS35にて設定したオンライン面談に参加するためのリンク情報、及び、オンライン面談の開催日時等を含む案内情報を、依頼者の端末装置2又は対象者の端末装置と、鑑定者の端末装置3とへ送信する(ステップS36)。
【0076】
オンライン面談の開催日時に至った場合、処理部11は、例えばオンライン会議等のシステムにアクセスして、オンライン面談が開始されたか否かを判定する(ステップS37)。オンライン面談が開始されていない場合(S37:NO)、処理部11は、オンライン面談が開始されるまで待機する。オンライン面談が開始された場合(S37:YES)、処理部11は、オンライン会議等のシステムからオンライン面談の映像を取得する(ステップS38)。処理部11は、オンライン面談が終了したか否かを判定する(ステップS39)。オンライン面談が終了していない場合(S39:NO)、処理部11は、ステップS38へ処理を戻し、オンライン面談の映像の取得を継続的に行う。オンライン面談が終了した場合(S39:YES)、処理部11は、これまでに取得したオンライン面談の影像を、対象者の識別情報に対応付けて鑑定DB5に「映像情報」として記憶し(ステップS40)、処理を終了する。
【0077】
また、オンライン面談を行わないと判定した場合(S32:NO)、即ち対面での面談を行うと判定した場合、処理部11は、対面での面談を行う候補日時を決定する(ステップS41)。サーバ装置1は、例えば対面での面談を担当する鑑定者のスケジュール情報を管理しており、例えば1~2週間程度の間で鑑定者のスケジュールに空きがある日時を選択して面談の候補日時とすることができる。処理部11は、例えばステップS41にて決定した候補日時を依頼者の端末装置2に表示して、候補日の中から対面での面談を行う日時の選択を依頼者から端末装置2を介して受け付ける(ステップS42)。
【0078】
処理部11は、選択を受け付けた面談日時に対面での面談を行うべく、例えば鑑定者のスケジュールに面談の日時等を登録し、必要であれば面談場所となる会議室を予約するなどの、対面での面談に関する設定を行う(ステップS43)。処理部11は、ステップS43にて設定した対面の面談に関して、面談の開催日時及び開催場所等を通知する案内情報を、依頼者の端末装置2又は対象者の端末装置と、鑑定者の端末装置3とへ送信する(ステップS44)。
【0079】
その後、処理部11は、ステップS43にて設定された面談の日時に至ったか否かを判定する(ステップS45)。面談の日時に至っていない場合(S45:NO)、処理部11は、面談の日時に至るまで待機する。面談の日時に至った場合(S45:YES)、処理部11は、例えばこの日時から数時間等の所定時間が経過した後に、鑑定者の端末装置3にメッセージ等を送信することにより、対面での面談に関する映像情報又は音声情報の登録を要求する(ステップS46)。
【0080】
処理部11は、鑑定者の端末装置3から映像情報又は音声情報を受信したか否かを判定する(ステップS47)。映像情報又は音声情報を受信していない場合(S47:NO)、処理部11は、ステップS46へ処理を戻し、鑑定者に対して定期的に情報の要求を行う。映像情報又は音声情報を受信した場合(S47:YES)、処理部11は、ステップS47にて受信した映像情報又は音声情報を、対象者の識別情報に対応付けて鑑定DB5に「映像情報」又は「音声情報」として記憶し(ステップS48)、処理を終了する。
【0081】
<まとめ>
以上の構成の本実施の形態に係る情報処理システムでは、サーバ装置1が、対象者の認知能力に関する「診断情報」、対象者の「頭部画像情報」、対象者に対する薬剤の「処方情報」、対象者の「介護情報」、対象者の入院時の「看護記録情報」、対象者の「映像情報」又は対象者の「音声情報」を、対象者の鑑定を依頼する依頼者の端末装置2から取得して、対象者の識別情報に対応付けて鑑定DB5に記憶する。サーバ装置1は、鑑定DB5に記憶した対象者に関するこれらの情報を、意思能力を鑑定する鑑定者の端末装置3へ送信し、鑑定者の端末装置3から対象者の意思能力の鑑定結果を取得し、取得した鑑定結果を対象者の識別情報に対応付けて鑑定DB5に記憶すると共に、鑑定結果を依頼者の端末装置2へ通知する。これにより本実施の形態に係る情報処理システムは、対象者の鑑定に必要な情報をサーバ装置1が管理し、鑑定者による対象者の意思能力の鑑定を支援することが期待できる。
【0082】
また本実施の形態に係る情報処理システムでは、サーバ装置1が、対象者が生前者又は没後者のいずれであるかの選択を依頼者から受け付け、対象者が生前者である場合に、対象者と鑑定者とのオンライン面談又は対面での面談を設定する。サーバ装置1は、対象者及び鑑定者による面談が行われた場合、この面談の映像情報又は音声情報を取得して、対象者の識別情報に対応付けて鑑定DB5に記憶する。これにより本実施の形態に係る情報処理システムは、対象者及び鑑定者の面談の実現を容易化し、鑑定者による対象者の意思能力の鑑定を支援することが期待できる。
【0083】
また本実施の形態に係る情報処理システムは、対象者に関する情報を入力として受け付けて対象者の意思能力の鑑定結果を出力するよう機械学習がなされた学習モデル7を利用する。サーバ装置1は、鑑定DB5に記憶した対象者に関するじょうほうを学習モデル7へ入力し、学習モデル7が出力する鑑定結果を取得し、この鑑定結果を対象者の識別情報に対応付けて鑑定DB5に記憶する。本実施の形態に係る情報処理システムは、予め機械学習がなされた学習モデル7を利用することにより、鑑定者に鑑定を依頼する場合と比較して、鑑定結果を短期間で依頼者に提供することが期待できる。
【0084】
また本実施の形態に係る情報処理システムでは、サーバ装置1が、鑑定DB5に記憶した対象者の情報から、対象者が遺言書を作成した時点を含む所定期間の情報を抽出して鑑定者の端末装置3へ送信する。これにより本実施の形態に係る情報処理システムは、鑑定DB5に多くの又は長期間分の情報が対象者に関して記憶されている場合に、遺言書を作成した時点における対象者の意思能力の鑑定に適した情報を抽出して鑑定者に提供することが期待できる。
【0085】
なお本実施の形態においてサーバ装置1は、対象者が遺言書を作成した時点を基準に情報を抽出しているが、これに限るものではなく、他の時点を基準に情報を抽出してもよい。またサーバ装置1は、1つの時点ではなく、複数の時点を基準にそれぞれ情報を抽出し、意思能力の鑑定を複数の時点についてそれぞれ行ってもよい。サーバ装置1は、例えば1年前、2年前及び3年前の3つの時点についてそれぞれ情報を抽出し、各時点における意思能力の鑑定結果を依頼者に提供してもよく、これにより依頼者は対象者の意思能力の時系列的な変化を知ることができる。
【0086】
また本実施の形態に係る情報処理システムでは、サーバ装置1が、対象者の意思能力が有効又は無効のいずれの鑑定結果を望むかに係る選択を依頼者から受け付けて、受け付けた選択に関する情報を対象者の識別情報に対応付けて鑑定DB5の「依頼者情報」に「鑑定希望」として記憶する。これにより本実施の形態に係る情報処理システムでは、例えば依頼人の「鑑定希望」の情報を鑑定のための材料の一つとして鑑定者に提供することができる。
【0087】
また本実施の形態に係る情報処理システムでは、サーバ装置1が、依頼者の端末装置2から取得した対象者に関する情報の中に頭部画像を含む場合、この頭部画像を画像鑑定者の端末装置3へ送信して鑑定を依頼し、画像鑑定者による鑑定結果を取得して対象者の識別情報に対応付けて鑑定DB5に記憶する。サーバ装置1は、鑑定DB5に記憶した対象者の種々の情報と共に、画像鑑定者による鑑定結果を、例えば最終的な鑑定を行う鑑定者の端末装置3へ送信して鑑定を依頼する。これにより本実施の形態に係る情報処理システムは、専門性の高い頭部画像の鑑定を専門的な知識を有する画像鑑定者に鑑定させ、この画像鑑定者による鑑定結果を基に、対象者の意思能力について最終的な鑑定を鑑定者に行わせることが期待できる。
【0088】
なお本実施の形態に係る情報処理システムにおいては、依頼者が使用する端末装置2と、鑑定者又は画像鑑定者が使用する端末装置3とがサーバ装置1との間で情報の送受信を行っているが、端末装置は依頼者又は鑑定者等が使用するものに限らない。例えば情報処理システムの管理者、又は、情報処理システムを利用したサービスの提供者等が使用する端末装置が情報処理システムに含まれてもよい。また例えば依頼者の端末装置2又は鑑定者等の端末装置3とサーバ装置1とは電子メールを介した情報の授受を行い、システム管理者又はサービス提供者等の端末装置とサーバ装置1とはチャットを介した情報の授受を行うなど、サーバ装置1と端末装置との間の情報授受に関するインタフェースが個々に異なるものであってよい。この場合にサーバ装置1は、依頼者等から電子メールを介して授受した情報をサービス提供者等にチャットを介して授受するなど、依頼者等及びサービス提供者等の間の情報の授受に関して個々のインタフェースに適した情報への相互変換を行うことができる。
【0089】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0090】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも1つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 サーバ装置(情報処理装置、コンピュータ)
2 端末装置
3 端末装置
5 鑑定DB(データベース)
7,8,8a~8g 学習モデル
11 処理部
11a 対象者情報取得部
11b 鑑定依頼部
11c 鑑定結果取得部
11d 鑑定結果通知部
12 記憶部
12a サーバプログラム(コンピュータプログラム)
13 通信部
99 記録媒体
N ネットワーク
【要約】
【課題】対象者の意思能力の鑑定を支援することが期待できる情報処理方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置を提供する。
【解決手段】情報処理方法は、情報処理装置が、対象者の認知能力に関する診断情報、前記対象者の頭部画像情報、前記対象者に対する薬剤の処方情報、前記対象者の介護情報、前記対象者の入院時の看護記録情報、前記対象者の映像情報、又は、前記対象者の音声情報を、前記対象者の鑑定を依頼する依頼者の端末装置から取得し、取得した前記対象者に関する情報を、当該対象者の識別情報に対応付けてデータベースに記憶し、記憶した前記対象者に関する情報を、意思能力を鑑定する意思能力鑑定者の端末装置へ送信し、前記意思能力鑑定者の端末装置から、前記対象者の意思能力の鑑定結果を取得し、取得した前記鑑定結果を前記対象者の識別情報に対応付けて前記データベースに記憶し、前記鑑定結果を前記依頼者の端末装置へ送信する。
【選択図】
図1