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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】車輪駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/02 20060101AFI20240912BHJP
   F16H 7/02 20060101ALI20240912BHJP
   F16H 7/06 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B60K1/02
F16H7/02 Z
F16H7/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023217147
(22)【出願日】2023-12-22
【審査請求日】2024-03-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515086621
【氏名又は名称】株式会社計数技研
(73)【特許権者】
【識別番号】523484286
【氏名又は名称】合同会社玉中技研
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】玉中 勇
(72)【発明者】
【氏名】竹内 宏佑
(72)【発明者】
【氏名】早石 直広
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-211381(JP,A)
【文献】中国実用新案第208263953(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/02
F16H 7/02
F16H 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸を回転させるモータと、
前記モータ軸に平行な入力軸及び出力軸を有し、入力軸の回転を減速する減速機と、
前記モータ軸に平行であって、前記減速機の出力軸の回転に伴って回転する車軸と、
前記モータ軸に対して垂直な第一方向において前記モータ、前記減速機及び前記車軸が並ぶように、前記モータ、前記減速機及び前記車軸を保持するフレームと
前記モータ軸から前記入力軸に、無端可撓性部材により回転力を伝達する第一伝達構造と、
前記出力軸から前記車軸に、無端可撓性部材により回転力を伝達する第二伝達構造とを備え
前記入力軸は、前記減速機の本体から、前記モータ軸に平行な第二方向に向けて突出し、
前記出力軸は、前記減速機の本体から、第二方向において前記入力軸が突出する方向とは反対の方向に向けて突出している、車輪駆動装置。
【請求項2】
モータ軸を回転させるモータと、
前記モータ軸に平行な入力軸及び出力軸を有し、入力軸の回転を減速する減速機と、
前記モータ軸に平行であって、前記減速機の出力軸の回転に伴って回転する車軸と、
前記モータ軸に対して垂直な第一方向において前記モータ、前記減速機及び前記車軸が並ぶように、前記モータ、前記減速機及び前記車軸を保持するフレームと、
第一方向において前記車軸よりも前記モータから遠い位置にある基台部と、
第一方向において前記フレームに対して前記基台部を支持するように構成された懸架装置とを備え、
前記懸架装置は、第一方向において前記車軸よりも前記基台部から遠い位置に配置されたばねを有する、車輪駆動装置。
【請求項3】
前記懸架装置は、2以上設けられており、
第一方向から見て、2以上の前記懸架装置のうち少なくとも1つの前記懸架装置と他の少なくとも1つの前記懸架装置との間に前記車軸が配置されている、請求項に記載の車輪駆動装置。
【請求項4】
前記フレームと前記基台部とが互いに第一方向において近づいたり離れたりするように案内する直動案内構造を備える、請求項に記載の車輪駆動装置。
【請求項5】
前記懸架装置は、
前記基台部に対して固定され、第一方向において前記基台部から離れた位置にある第一当接部と、
前記フレームに設けられ、第一方向において前記第一当接部よりも前記基台部に近い位置にある第二当接部とを有し、
前記ばねは、前記第一当接部と前記第二当接部との間に挟まれて配置されており、第一方向において前記基台部が前記フレームから離れるのに伴って圧縮されるように構成されている、請求項に記載の車輪駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動体等に用いられる車輪駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
路面上を走行する移動体等において、モータと減速機とをユニット化した車輪駆動装置が用いられることがある(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-014168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車輪駆動装置が取り付けられる移動体等の対象物においては、例えば対象物を全体として小型化したいというニーズや、車輪駆動装置を特定の限られたスペースに配置したいというニーズなど、多様なニーズがある。このような多様なニーズに対応するために、各構成要素のレイアウトが工夫された様々な車輪駆動装置が必要とされている。
【0005】
この発明は、小型に構成可能な車輪駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第一の発明の車輪駆動装置は、モータ軸を回転させるモータと、モータ軸に平行な入力軸及び出力軸を有し、入力軸の回転を減速する減速機と、モータ軸に平行であって、減速機の出力軸の回転に伴って回転する車軸と、モータ軸に対して垂直な第一方向においてモータ、減速機及び車軸が並ぶように、モータ、減速機及び車軸を保持するフレームとを備える、車輪駆動装置である。
【0007】
かかる構成により、車輪駆動装置を小型に構成することができる。
【0008】
また、本第二の発明の車輪駆動装置は、第一の発明に対して、モータ軸から入力軸に、無端可撓性部材により回転力を伝達する第一伝達構造と、出力軸から車軸に、無端可撓性部材により回転力を伝達する第二伝達構造とを備える、車輪駆動装置である。
【0009】
かかる構成により、出力軸に垂直な方向における耐荷重が比較的小さい減速機を用いることができ、耐荷重が大きい車輪駆動装置を小型に構成することができる。
【0010】
また、本第三の発明の車輪駆動装置は、第二の発明に対して、入力軸は、減速機の本体から、モータ軸に平行な第二方向に向けて突出し、出力軸は、減速機の本体から、第二方向において入力軸が突出する方向とは反対の方向に向けて突出している、車輪駆動装置である。
【0011】
かかる構成により、車輪駆動装置の整備性を高めることができる。
【0012】
また、本第四の発明の車輪駆動装置は、第一から三のいずれか1つの発明に対して、第一方向において車軸よりもモータから遠い位置にある基台部と、第一方向においてフレームに対して基台部を支持するように構成された懸架装置とを備え、懸架装置は、第一方向において車軸よりも基台部から遠い位置に配置されたばねを有する、車輪駆動装置である。
【0013】
かかる構成により、車輪駆動装置が用いられる対象物の重心を比較的低くし、かつ、路面からの振動が基台部側に直接に伝わらないように緩衝することができる。
【0014】
また、本第五の発明の車輪駆動装置は、第四の発明に対して、懸架装置は、2以上設けられており、第一方向から見て、2以上の懸架装置のうち少なくとも1つの懸架装置と他の少なくとも1つの懸架装置との間に車軸が配置されている、車輪駆動装置である。
【0015】
かかる構成により、フレームに対して基台部側をバランス良く支持することができる。
【0016】
また、本第六の発明の車輪駆動装置は、第四又は五の発明に対して、フレームと基台部とが互いに第一方向において近づいたり離れたりするように案内する直動案内構造を備える、車輪駆動装置である。
【0017】
かかる構成により、フレームに対して基台部側をしっかりと支持することができる。
【0018】
また、本第七の発明の車輪駆動装置は、第四から六のいずれか1つの発明に対して、懸架装置は、基台部に対して固定され、第一方向において基台部から離れた位置にある第一当接部と、フレームに設けられ、第一方向において第一当接部よりも基台部に近い位置にある第二当接部とを有し、ばねは、第一当接部と第二当接部との間に挟まれて配置されており、第一方向において基台部がフレームから離れるのに伴って圧縮されるように構成されている、車輪駆動装置である。
【0019】
かかる構成により、振動の緩衝効果を確実に得ながら、車輪駆動装置が用いられる対象物の重心を比較的低くすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、小型に構成可能な車輪駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態の1つに係る車輪駆動装置を有する移動体の概略構成を示す斜視図
図2】同車輪駆動装置の斜視図
図3】同車輪駆動装置の正面図
図4】同車輪駆動装置の右側面図
図5】同車輪駆動装置の左側面図
図6】同車輪駆動装置の平面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、車輪駆動装置の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、図面において示される座標は、各図同士で共通している。座標のZ方向は、水平面に対して垂直な方向である。X方向は、Z方向に対して垂直な方向であり、後述する各回転軸に垂直な方向である。Y方向は、Z方向に垂直な方向であって、X方向に垂直な方向である。すなわち、Y方向は、後述する各回転軸に垂直な方向である。なお、Z方向を「上下方向」(原点から見てZ軸で正となる方向が上)又は第一方向ということがあり、X方向を「前後方向」(原点から見てX軸で正となる方向が後)ということがあり、Y方向を「左右方向」(原点から見てY軸で正となる方向が左)又は第二方向ということがある。また、各回転軸について、回転軸に沿う方向を「軸方向」、回転軸に直交する方向を「径方向」とそれぞれ称することがある。以下において、このように各方向を示して各部の形状や位置関係を説明することがあるが、これらはあくまで説明の便宜のために定義したものであって、本発明に係る車輪駆動装置の使用時における向きや姿勢などを限定するものではない。また、方向を示す表現や、水平、垂直、直交などの状態を示す表現は、大まかにそのように理解できることを示しているだけであり、必ずしも厳密にその表現の通りであると解されるべきであるとは限らない。
【0023】
(実施の形態)
【0024】
まず、本実施の形態に係る車輪駆動装置10が用いられる対象物の一例である移動体1について説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態の1つに係る車輪駆動装置10を有する移動体1の概略構成を示す斜視図である。
【0026】
図1において、車輪駆動装置10やその他の構成要素について、詳細な形状の図示は省略されている。
【0027】
移動体1は、例えば、床上を走行可能であって、搬送対象物を搬送する用途に用いられるものである。移動体1が搬送対象物を搬送するとは、例えば、移動体1そのものに積載された搬送対象物を搬送することであってもよく、移動体1が、搬送対象物の積載された搬送台車を牽引することであってもよい。移動体1は、追従対象に追従して移動するものであってもよい。なお、移動体1は、他の用途のために用いられてもよい。移動体1は、例えば、案内や警護、監視、エンターテインメントなどのための移動体であってもよい。すなわち、移動体1は、搬送ロボット、案内ロボット、警護ロボット、監視ロボット、エンターテインメントロボットなどであってもよい。移動体1は、例えば、屋内を移動するものであってもよく、屋外を移動するものであってもよく、その両方であってもよい。
【0028】
図に示されるように、移動体1は、例えば、車台2と、4つの車輪5と、2つの操舵装置8と、2つの車輪駆動装置10とを備えている。車台2は、例えば平面視で略矩形である。車台2の前側の左右に2つの操舵装置8が配置されている。車台2の後側の左右に2つの車輪駆動装置10が配置されている。操舵装置8と車輪駆動装置10にはそれぞれ車輪5が取り付けられており、4つの車輪5が接地して、移動体1が接地面上を走行可能となっている。車輪駆動装置10が2つの車輪5を回転させることにより移動体1が前後に移動可能である。また、操舵装置8が2つの車輪5の向きを変更することにより、移動体1の移動方向が変更可能である。なお、駆動される車輪5の回転差を生じさせて移動体1が旋回するように構成されていてもよい。また、車輪5の数、配置、操舵の可否、駆動の有無等はこれに限られない。3輪以上が車輪駆動装置10により駆動可能であってもよい。
【0029】
詳細は後述するが、本実施の形態において、車輪駆動装置10は、懸架装置80(図2に示す)を有している。車輪駆動装置10は、懸架装置80を境に、車台2に取り付けられる側の基台部11と、車輪5が取り付けられる側のばね下部12とに分かれているということができる。基台部11は、懸架装置80を介して、ばね下部12に吊り下げられている。すなわち、車台2は、移動体1の後方部において、2つの車輪駆動装置10に対して吊り下げられている状態で走行可能である。なお、懸架装置80は設けられていなくてもよい。
【0030】
後述するように、車輪駆動装置10は、上下方向(第一方向)において主な構成要素が並んだ縦長形状に構成されている。したがって、平面視で、移動体1のうち車輪駆動装置10が占める領域は比較的小さくなっている。換言すると、平面視で、車台2のうち車輪駆動装置10が配置されない領域を広く確保することができる。
【0031】
次に、車輪駆動装置10の詳細について説明する。以下の説明においては、上述の移動体1において左右に設けられている車輪駆動装置10のうち一方の構成について説明する。他方の車輪駆動装置10として、左右対称の構成を持つものが用いられてもよいし、同一の構成のものが向きを変えて用いられるようにしてもよい。
【0032】
図2は、同車輪駆動装置10の斜視図である。図3は、同車輪駆動装置10の正面図である。図4は、同車輪駆動装置10の右側面図である。図5は、同車輪駆動装置10の左側面図である。図6は、同車輪駆動装置10の平面図である。
【0033】
車輪駆動装置10は、基台部11と、ばね下部12と、懸架装置80とを有している。基台部11と、ばね下部12とは、懸架装置80を介して接続されている。ばね下部12は、車台2を支持する支持部であると言ってもよい。なお、本実施の形態において、基台部11とばね下部12との間には、直動案内構造90が設けられている。
【0034】
本実施の形態において、ばね下部12には、フレーム20、モータ30、減速機40、車軸部50、第一伝達構造60、及び第二伝達構造70が含まれる。
【0035】
モータ30は、例えばインナーロータ型のサーボモータであるが、例えばブラシレスDCモータなど、他種のモータであってもよい。モータ30は、例えば駆動回路(図示せず)により駆動され、モータ軸31を回転させる。モータ30は、車軸52を回転させる動力源として用いられる。
【0036】
減速機40は、モータ30の後段に設けられており、モータ30の回転を減速して後段に出力する。減速機40の種類は問わない。減速機40の減速比は、適宜設定することができる。減速機40は、減速比を変更して変速可能であってもよい。
【0037】
減速機40は、入力軸41と、出力軸42とを有している。入力軸41と出力軸42とは互いに平行である。入力軸41と、出力軸42とは、減速機構を内蔵する減速機本体45から突出するように設けられている。本実施の形態において、入力軸41の先端部と出力軸42の先端部とは、減速機本体45から見て、軸方向において互いに反対側の位置にある。換言すると、軸方向において入力軸41の先端部と出力軸42の先端部との間に減速機本体45が位置している。入力軸41と出力軸42とは、減速機本体45から互いに異なる方向に向けて突出していると言ってもよい。
【0038】
なお、本実施の形態においては、入力軸41と出力軸42とは同軸に配置されている。減速機40としては、例えば、遊星減速機を用いることができる。
【0039】
車軸部50は、減速機40の後段に設けられている。車軸部50は、車軸52と、車軸52を保持する軸受部55とを有している。車軸52は、後述するようにして減速機40の出力軸42から伝達される回転力により回転する。すなわち、車軸52は、減速機40の出力軸42の回転に伴って回転する。
【0040】
車軸52には、車輪5が取り付けられる。車輪5は、通常、接地面に接地するタイヤを有するものであるが、これに限られない。例えば、無限軌道を回転させるスプロケットが車輪5として車軸52に取り付けられてもよい。
【0041】
フレーム20は、モータ30、減速機40及び車軸52を保持する。本実施の形態において、モータ軸31、入力軸41、出力軸42及び車軸52が互いに平行になっている。各回転軸31,41,42,52は、左右方向(第二方向)に平行である。
【0042】
また、本実施の形態において、フレーム20は、上下方向においてモータ30、減速機40及び車軸52が並ぶように、モータ30、減速機40及び車軸52を保持するように構成されている。具体的には、例えば、上方から下方に、モータ30、減速機40及び車軸52がこの順に並んでいる。モータ30の下に減速機40が位置しており、減速機40の下に車軸52が位置している。
【0043】
本実施の形態においては、モータ軸31の先端部と入力軸41の先端部とが、左側面側に位置しており、出力軸42の先端部及び車軸52の先端部とが、右側面側に位置している。
【0044】
フレーム20は、例えば、下側の第一フレーム21と、上側の第二フレーム22と、第一フレーム21と第二フレーム22とを接続する柱部23とが組み合わされて構成されている。なお、フレーム20の構成はこれに限られず、例えばモノコック構造の筐体をフレームと呼んでもよい。
【0045】
本実施の形態において、第一フレーム21は、例えば、水平面に対して略平行な板状の部材である。第一フレーム21の下側には、軸受部55が固定されている。すなわち、車軸52は、第一フレーム21に保持されている。
【0046】
また、第二フレーム22は、例えば板状の部材である。第二フレーム22は、第一フレーム21に立設された柱部23により、第一フレーム21の上方に保持されている。第二フレーム22の上部には、モータ30が固定されている。また、第二フレーム22の下側の面には、減速機40が固定されている。
【0047】
このような二層構造を有するフレーム20により、モータ30、減速機40及び車軸52が、上下方向において互いに離れて並んで、配置されている。
【0048】
第一伝達構造60は、モータ軸31から入力軸41に回転力を伝達する。本実施の形態において、第一伝達構造60は、第一スプロケット61、第二スプロケット62、及び無端可撓性部材65を有している。
【0049】
本実施の形態において、第一伝達構造60は、無端可撓性部材65としてチェーンを用いて構成されている。すなわち、第一スプロケット61はモータ軸31に固定されている。第二スプロケット62は入力軸41に固定されている。無端可撓性部材65は、第一スプロケット61及び第二スプロケット62に掛けられている。これにより、モータ30の回転力が入力軸41に伝達されるようになっている。第一伝達構造60は、左側面側に配置されている。
【0050】
なお、第一伝達構造60は、第一アイドラ63を有している。第一アイドラ63は、無端可撓性部材65の張りを保つために配置されている。第一アイドラ63はばね等により付勢されたテンショナであってもよいし、通常時は調整された位置において固定されていてもよい。第一アイドラ63は設けられていなくてもよい。
【0051】
第二伝達構造70は、出力軸42から車軸52に回転力を伝達する。本実施の形態において、第二伝達構造70は、第三スプロケット71、第四スプロケット72、及び無端可撓性部材75を有している。
【0052】
本実施の形態において、第二伝達構造70は、無端可撓性部材75としてチェーンを用いて構成されている。すなわち、第三スプロケット71は出力軸42に固定されている。第四スプロケット72は車軸52に固定されている。無端可撓性部材75は、第三スプロケット71及び第四スプロケット72に掛けられている。これにより、出力軸42の回転力が車軸52に伝達されるようになっている。第二伝達構造70は、右側面側に配置されている。
【0053】
なお、第二伝達構造70は、第二アイドラ73を有している。第二アイドラ73は、無端可撓性部材75の張りを保つために配置されている。第二アイドラ73はばね等により付勢されたテンショナであってもよいし、通常時は調整された位置において固定されていてもよい。第二アイドラ73は設けられていなくてもよい。
【0054】
なお、伝達構造60,70は、回転する軸に固定されたスプロケット61,62,71,72と、チェーンである無端可撓性部材65,75とを含むものに限られない。例えば、無端可撓性部材65,75として、ゴムや合成樹脂製のベルトが用いられてもよい。この場合、各回転軸にはベルトが掛けられるプーリが取り付けられるようにすればよい。
【0055】
基台部11は、以上のようにフレーム20により保持された各部を含むばね下部12の下方に配置されている。基台部11は、例えば板状の部材であり、水平面に対して略平行に配置されている。基台部11は、車軸52よりも下方に配置されている。すなわち、基台部11は、上下方向において車軸52よりもモータ30から遠い位置にある。なお、基台部11の形状や構成はこれに限られない。例えば、ばね下部12と基台部11との相対的位置の変化によって車軸52等のばね下部12の一部分が位置しうる部位が、欠けたり凹んだりしている形状の基台部11が用いられるようにしてもよい。
【0056】
懸架装置80は、少なくとも一部分が上下方向において基台部11とばね下部12との間に位置するように配置されている。懸架装置80は、上下方向において、フレーム20に対して基台部11を支持するように構成されている。本実施の形態において、懸架装置80は、上下方向において基台部11がフレーム20から離れ過ぎないように、フレームに20に対して基台部11を吊り下げた状態で保持する。
【0057】
懸架装置80は、2つ設けられている。上から見て、2つの懸架装置80の間に車軸52が配置されている。2つのばね81の間に車軸52が配置されていると言ってもよい。これにより、接地する車輪5が取り付けられる車軸52に対してバランス良く基台部11からの荷重を支持することができる。なお、懸架装置80は3以上設けられていてもよく、この場合、少なくとも1つの懸架装置80と他の懸架装置80との間に車軸52が配置されていればよい。なお、懸架装置80が1つのみ設けられていてもよい。
【0058】
本実施の形態において、懸架装置80は、例えば、圧縮コイルばねであるばね81を用いて構成されている。すなわち、懸架装置80は、ばね81と、第一当接部82及び第二当接部86を備える。
【0059】
第一当接部82は、基台部11に対して固定されている。第一当接部82は、基台部11から上に離れた位置にある。本実施の形態において、第一当接部82は、第一フレーム21よりも上方に位置している。第一当接部82は、車軸52よりも上方にある。第一当接部82は、例えば基台部11から上方に延びるロッド85を有し、ロッド85に固定された皿状部材によりばね81の上端部に接触可能となるように構成されている。
【0060】
第二当接部86は、フレーム20に設けられている。第二当接部86は、上下方向において第一当接部82よりも基台部11に近い位置、すなわち第一当接部82よりも下にある。第二当接部86は、本実施の形態において、第一フレーム21の上面の一部であるが、これに限られない。例えば、皿状部材が第一フレーム21に固定されて第二当接部86が構成されていてもよい。第二当接部86は、ばね81の下端部に接触可能である。
【0061】
ばね81は、上下方向において第一当接部82と第二当接部86との間に挟まれて配置されている。ばね81は、上下方向において車軸52よりも基台部11から遠い位置、すなわち車軸52よりも上方に配置されている。ばね81は、第一フレーム21の上方に配置されている。
【0062】
このように構成された懸架装置80は、上下方向において基台部11がフレーム20から離れるのに伴って、ばね81が圧縮されるように構成されている。すなわち、接地面に接地するばね下部12に対して基台部11が下方に変位するのに伴ってばね81が圧縮され、ばね81の反発力が大きくなる。したがって、ばね下部12に対して基台部11が下に変位しすぎないように、基台部11が保持される。このように懸架装置80を介して基台部11が保持されるので、ばね下部12に加わった振動が基台部11に直接的に伝わることを防止することができる。
【0063】
なお、本実施の形態において、懸架装置80は、ダンパ(衝撃吸収装置)84を有している。ダンパ84は、例えば、ロッド85が貫通するようにして第一フレーム21に対して固定されている。ロッド85にはピストンが設けられており、ダンパ84の内部においてピストンが移動する際に生じる抵抗力により衝撃を吸収し、振動を減衰させるように構成されている。すなわち、ダンパ84とロッド85とでスルーロッド式の衝撃吸収装置が構成されている。このようなダンパ84を用いた車輪駆動装置10を用いることにより、振動を減衰させてスムーズに走行することが可能になる。なお、ダンパ84が設けられていなくてもよい。
【0064】
また、懸架装置80は、ばね81として、その他の種類のばねを用いたものであってもよい。例えば、皿ばねを用いて荷重を支持する構造が用いられていてもよい。
【0065】
直動案内構造90は、フレーム20と基台部11とが互いに上下方向において近づいたり離れたりするように案内する。直動案内構造90は、例えば、基台部11に固定されたシャフト91と、フレーム20に固定された直動軸受92を備える。本実施の形態において、直動軸受92は、例えばリニアブシュ又は無給油ブシュであり、第一フレーム21に固定されている。シャフト91は、長手方向が上下方向となるように配置されている。直動軸受92は、シャフト91を保持した状態でシャフト91に沿って移動可能である。このような直動案内構造90が、例えば2組設けられていることにより、基台部11がフレーム20に対して上下方向にのみ変位可能となっている。
【0066】
このような直動案内構造90が懸架装置80と共に用いられることにより、上下方向の衝撃の伝達を確実に抑える動作を行う車輪駆動装置10を構成することができる。
【0067】
なお、シャフト91がフレーム20に取り付けられており、直動軸受92が基台部11に取り付けられていてもよい。また、直動案内構造90として、上下方向に沿って配置されるレールを有するリニアガイドを用いた構造が用いられてもよい。また、直動案内構造90が用いられていなくてもよい。
【0068】
以上説明したように、本実施の形態においては、上下方向において、モータ30、減速機40及び車軸52が並んでいるので、車輪駆動装置10は、全体として縦長に構成されている。上面視で車輪駆動装置10が占める面積は比較的小さくすることができる。
【0069】
比較的大きなスペースを必要とするかさ歯車等を用いず、入力軸41や出力軸42を中心とする径方向の寸法が小さい小型の減速機40により、必要な減速比を得ることができる。したがって、車輪駆動装置10を比較的小型に構成することができる。
【0070】
伝達構造60,70は、無端可撓性部材65,75を用いて構成されているので、容易に保守作業を行うことができる。走行時等に車軸52に衝撃が加わっても、上段の減速機40やモータ30に対して衝撃が伝達されにくいので、車輪駆動装置10の耐久性を向上させることができる。
【0071】
入力軸41は、減速機本体45から左に向けて突出し、出力軸42は、減速機本体45から、右に向けて、すなわち左右方向において入力軸41が突出する方向とは反対の方向に向けて突出している。第一伝達構造60は左側面側に、第二伝達構造70は右側面側に、それぞれ配置されているので、車輪駆動装置10の高さを低く抑えることができる。また、第一伝達構造60と第二伝達構造70とのそれぞれに独立して手を加えることができるため、保守作業時の作業性を向上させることができる。
【0072】
(その他)
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものである。
【0073】
上述の実施の形態のうち、一部の構成要素が省略されていてもよい。例えば、車輪駆動装置は、懸架装置及び基台部を有していなくてもよい。また、車輪駆動装置が取り付けられる対象物の一部が基台部として把握されてもよく、この場合、懸架装置により対象物がフレーム側により支持されるようにすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本発明にかかる車輪駆動装置は、小型に構成可能であるという効果を有し、車輪駆動装置等として有用である。
【符号の説明】
【0075】
1 移動体
5 車輪
10 車輪駆動装置
11 基台部
20 フレーム
30 モータ
31 モータ軸
40 減速機
41 入力軸
42 出力軸
45 減速機の本体
52 車軸
60 第一伝達構造
65,75 無端可撓性部材
70 第二伝達構造
80 懸架装置
81 ばね
82 第一当接部
86 第二当接部
90 直動案内構造
91 シャフト
92 直動軸受
【要約】      (修正有)
【課題】小型に構成可能な車輪駆動装置を提供する。
【解決手段】車輪駆動装置10は、モータ軸31を回転させるモータ30と、モータ軸31に平行な入力軸41及び出力軸42を有し、入力軸41の回転を減速する減速機40と、モータ軸31に平行であって、減速機40の出力軸42の回転に伴って回転する車軸52と、モータ30、減速機40及び車軸52を保持するフレーム20とを備える。モータ軸31に対して垂直な第一方向において、モータ30、減速機40及び車軸52が並んでいる。このような構成により、車輪駆動装置を小型にすることができる。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6