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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】撮像システム及び車両
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20240912BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240912BHJP
   H04N 23/698 20230101ALI20240912BHJP
【FI】
H04N23/60
G03B15/00 F
G03B15/00 V
H04N23/60 500
H04N23/698
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020036758
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2021141405
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】505246789
【氏名又は名称】学校法人自治医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 智
【審査官】吉川 康男
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-042114(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0052259(US,A1)
【文献】特開2012-052926(JP,A)
【文献】特開2002-206992(JP,A)
【文献】特開2006-327368(JP,A)
【文献】特開2019-073079(JP,A)
【文献】特開2013-108901(JP,A)
【文献】特開2016-176733(JP,A)
【文献】特開2009-085621(JP,A)
【文献】特開平08-233558(JP,A)
【文献】特開平03-063506(JP,A)
【文献】特開2005-170182(JP,A)
【文献】特開2006-232064(JP,A)
【文献】特開2003-240681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/60
G03B 15/00
H04N 23/698
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の外囲に嵌められたタイヤの表面を含む撮像対象を撮像する撮像システムであって、
前記撮像対象の像を結像可能な撮像光学系と、
前記撮像光学系により結像された前記像を電気信号に変換する撮像素子と、
前記車輪の回転角度に関する情報を生成する生成部と、
前記生成部により生成された前記車輪の回転角度に関する情報に基づき、前記撮像素子の露光のタイミングを制御する制御部と、を備え、
前記撮像素子により変換された電気信号に基づいて画像を生成する画像生成部を更に備え、
前記画像生成部は、接地部近傍の前記タイヤの表面が映る画像と、前記撮像素子により所定の撮像角度で連続的に撮像された前記タイヤの表面の同一箇所の画像が撮像時間の順に繋がるように展開された画像と、を生成する、
撮像システム。
【請求項2】
車輪の外囲に嵌められたタイヤの表面を含む撮像対象を撮像する撮像システムであって、
前記撮像対象の像を結像可能な撮像光学系と、前記撮像光学系により結像された前記像を電気信号に変換する撮像素子と、を有し、前記タイヤの周方向に配置された複数のカメラと、
前記車輪の回転角度に関する情報を生成する生成部と、
前記生成部により生成された前記車輪の回転角度に関する情報に基づき、前記撮像素子の露光のタイミングを制御する制御部と、を備え、
前記撮像素子により変換された電気信号に基づいて画像を生成する画像生成部を更に備え、
前記画像生成部は、前記タイヤの同一部分が前記複数のカメラの各々の近傍に到達した際に撮像された複数の画像を並べて表示する、撮像システム。
【請求項3】
前記生成部により生成される前記車輪の回転角度に関する情報は、前記車輪の回転角度
に応じて所定の周期で大きさが変化する第2の電気信号を含む、
請求項1または2に記載の撮像システム。
【請求項4】
前記生成部は、前記車輪を有する車両に装備されているアンチロックブレーキシステムから発せられた情報に基づいて前記車輪の回転角度に関する情報を生成する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の撮像システム。
【請求項5】
前記アンチロックブレーキシステムから発せられた情報は、前記車輪の回転角度に応じて大きさが変化する電圧を含み、
前記生成部は、前記電圧の振幅の大きさを所定値以上に増幅させる増幅器を含む、
請求項4に記載の撮像システム。
【請求項6】
前記撮像光学系は、前記車輪を覆うフェンダーに設けられる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の撮像システム。
【請求項7】
前記画像生成部は、前記タイヤの表面の領域ごとに生じた応力の大きさを表す指標が前記タイヤの表面に重ねて表示された画像を生成する、
請求項1に記載の撮像システム。
【請求項8】
車輪の外囲に嵌められたタイヤの表面を含む撮像対象の像を結像可能な位置に設けられる撮像光学系と、
前記撮像光学系により結像された前記像を電気信号に変換する撮像素子と、
前記撮像素子の露光のタイミングを制御するための前記車輪の回転角度に関する情報を生成する生成部と、
前記生成部により生成された前記車輪の回転角度に関する情報に基づき、前記撮像素子の露光のタイミングを制御する制御部と、を備え、
前記撮像素子により変換された電気信号に基づいて画像を生成する画像生成部を更に備え、
前記画像生成部は、接地部近傍の前記タイヤの表面が映る画像と、前記撮像素子により所定の撮像角度で連続的に撮像された前記タイヤの表面の同一箇所の画像が撮像時間の順に繋がるように展開された画像と、を生成する、
車両。
【請求項9】
撮像対象の像を結像可能な撮像光学系と、前記撮像光学系により結像された前記像を電気信号に変換する撮像素子と、を有し、タイヤの周方向に配置された複数のカメラと、
車輪の回転角度に関する情報を生成する生成部と、
前記生成部により生成された前記車輪の回転角度に関する情報に基づき、前記撮像素子の露光のタイミングを制御する制御部と、を備え、
前記撮像素子により変換された電気信号に基づいて画像を生成する画像生成部を更に備え、
前記画像生成部は、前記タイヤの同一部分が前記複数のカメラの各々の近傍に到達した際に撮像された複数の画像を並べて表示する、
車両。
【請求項10】
前記生成部により生成される前記車輪の回転角度に関する情報は、前記車輪の回転角度に応じて所定の周期で大きさが変化する第2の電気信号を含む、
請求項8または9に記載の車両。
【請求項11】
前記生成部は、前記車両に装備されているアンチロックブレーキシステムから発せられた情報に基づいて前記車輪の回転角度に関する情報を生成する、
請求項8から10のいずれか一項に記載の車両。
【請求項12】
前記アンチロックブレーキシステムから発せられた情報は、前記車輪の回転角度に応じて大きさが変化する電圧を含み、
前記生成部は、前記電圧の振幅の大きさを所定値以上に増幅させる増幅器を含む、
請求項11に記載の車両。
【請求項13】
前記撮像光学系は、前記車輪を覆うフェンダーに設けられる、
請求項8から12のいずれか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像システム及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの状態又はタイヤが接地する路面の状況を解析するために、車両に撮像装置又は各種センサが設置されることが開示されている(例えば特許文献1-9)。また、撮像装置により撮像されたタイヤの表面を評価する手法が開発されている(例えば特許文献10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2011-506989号公報
【文献】特開2002-206992号公報
【文献】特開2001-180239号公報
【文献】特開2004-224227号公報
【文献】特開2010-163131号公報
【文献】特開2011-220929号公報
【文献】特開2013-15489号公報
【文献】特開2006-137284号公報
【文献】特開2005-164254号公報
【文献】特許第3464678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1-7に示される撮像装置は、車両の所定位置に固定されている。よって、回転しているタイヤの表面における特定の部分を追跡して撮像し続けることは困難であると考えられる。従って、回転するタイヤ表面の特定の部分の時間的な変化を解析することは困難であった。
【0005】
本開示は、一側面では、このような実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、回転するタイヤ表面の特定の部分の時間的な変化を解析することのできる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0007】
すなわち、本開示の一側面に係る撮像システムは、車輪の外囲に嵌められたタイヤの表面を含む撮像対象を撮像する撮像システムであって、前記撮像対象の像を結像可能な撮像光学系と、前記撮像光学系により結像された前記像を電気信号に変換する撮像素子と、前記車輪の回転角度に関する情報を生成する生成部と、前記生成部により生成された前記車輪の回転角度に関する情報に基づき、前記撮像素子の露光のタイミングを制御する制御部と、を備える。
【0008】
当該構成によれば、走行中の車輪の回転角度が所定角度となったタイミングで撮像素子を露光させることができる。つまり、タイヤが回転し、タイヤの表面の特定の部分が撮像素子の近傍を通過する度に、撮像素子を露光させることができる。よって、回転するタイヤの表面のうち、特定の部分が選択的に撮像された画像を多数枚取得ることができる。そして、取得した画像からタイヤの表面の特定の部分を識別し、特定の部分の時間的変化を
解析することができる。
【0009】
上記一側面に係る撮像システムにおいて、前記生成部により生成される前記車輪の回転角度に関する情報は、前記車輪の回転角度に応じて所定の周期で大きさが変化する第2の電気信号を含んでもよい。
【0010】
当該構成によれば、タイヤが回転し、タイヤの表面の特定の部分が撮像素子の近傍を通過する度に、撮像素子に露光させることができる。よって、回転するタイヤの表面のうち、特定の部分が映る一連の画像を得ることができる。そして、取得した画像からタイヤ表面の特定の部分を識別し、特定の部分の時間的な変形を解析することができる。
【0011】
上記一側面に係る撮像システムにおいて、前記生成部は、前記車輪を有する車両に装備されているアンチロックブレーキシステムから発せられた情報に基づいて前記車輪の回転角度に関する情報を生成してもよい。
【0012】
当該構成によれば、車両に従来より備えられている装置を用いて当該撮像システムを形成することができるため、新たに追加する部品の数を低減することができ、製造コストは低減される。
【0013】
上記一側面に係る撮像システムにおいて、前記アンチロックブレーキシステムから発せられた情報は、前記車輪の回転角度に応じて大きさが変化する電圧を含み、前記生成部は、前記電圧の振幅の大きさを所定値以上に増幅させる増幅器を含んでもよい。
【0014】
当該構成によれば、ノイズにより電圧の振幅情報が不明確となることは抑制される。よって、撮像素子の露光のタイミングがノイズにより乱されることは低減される。
【0015】
上記一側面に係る撮像システムにおいて、前記撮像光学系は、前記車輪を覆うフェンダーに設けられてもよい。
【0016】
当該構成によれば、降雨や降雪時に走行中のタイヤの表面を撮像する場合、タイヤに刻まれた溝と路面との間に存在する水分であって、タイヤにより巻き上げられた水分が撮像光学系に降りかかることになる。よって、撮像光学系の汚れは水分により落とされる。従って、撮像画像が不鮮明となることは抑制される。よって、撮像画像に写るタイヤを識別する場合に、識別の精度の低下は抑制される。よって、識別されたタイヤの形状を解析する場合に、解析精度の低下は抑制される。
【0017】
上記一側面に係る撮像システムにおいて、前記撮像素子により変換された電気信号に基づいて画像を生成する画像生成部を更に備え、前記画像生成部は、接地部近傍の前記タイヤの表面が映る画像と、前記撮像素子により所定の撮像角度で連続的に撮像された前記タイヤの表面の同一箇所の画像が撮像時間の順に繋がるように展開された画像と、を生成してもよい。
【0018】
当該構成によれば、タイヤの表面に周方向に沿って複数の溝が形成されている場合、撮像素子により所定の撮像角度で連続的に撮像されたタイヤの表面がタイヤの周方向に繋がるように映る画像により、周方向に沿って形成されている溝同士の間の距離の変化を確認することができる。また、タイヤの溝同士の間の距離の変化が確認された場合、接地部近傍のタイヤが映る画像により、タイヤの溝同士の間の距離の変化が接地部近傍の路面の状態に起因して生じたものか否かを確認することができる。
【0019】
上記一側面に係る撮像システムにおいて、前記画像生成部は、前記タイヤの表面の領域
ごとに生じた応力の大きさを表す指標が前記タイヤの表面に重ねて表示された画像を生成してもよい。
【0020】
ここで、応力の大きさを表す指標は、矢印を含む。
【0021】
当該構成によれば、走行時のタイヤ表面において領域ごとの応力の大きさや方向を容易に把握することができる。よって、タイヤが変形した場合に、変形した理由を微視的に解析することができる。
【0022】
また、本開示の一側面に係る車両は、車輪の外囲に嵌められたタイヤの表面を含む撮像対象の像を結像可能な位置に設けられる撮像光学系と、前記撮像光学系により結像された前記像を電気信号に変換する撮像素子と、前記撮像素子の露光のタイミングを制御するための前記車輪の回転角度に関する情報を生成する生成部と、を備える。
【0023】
当該構成によれば、走行中の車輪の回転角度が所定角度となったタイミングで撮像素子を露光させることができる。つまり、タイヤが回転し、タイヤの表面の特定の部分が撮像素子の近傍を通過する度に、撮像素子を露光させることができる。よって、回転するタイヤの表面のうち、特定の部分が選択的に撮像された画像を多数枚取得することができる。そして、取得した画像からタイヤの表面の所定部分を識別し、特定の部分の時間的な変化を解析することができる。
【0024】
上記一側面に係る車両において、前記生成部により生成される前記車輪の回転角度に関する情報は、前記車輪の回転角度に応じて所定の周期で大きさが変化する第2の電気信号を含んでもよい。
【0025】
当該構成によれば、タイヤが回転し、タイヤの表面の所定部分が撮像素子の近傍を通過する度に、撮像素子を露光させることができる。よって、回転するタイヤの表面のうち、所定部分が映る一連の画像を得ることができる。そして、取得した画像からタイヤの表面の所定部分を識別し、所定部分の経時変化を解析することができる。
【0026】
上記一側面に係る車両において、前記生成部は、前記車両に装備されているアンチロックブレーキシステムから発せられた情報に基づいて前記車輪の回転角度に関する情報を生成してもよい。
【0027】
当該構成によれば、車両に従来より備えられている装置を用いてタイヤの表面の特定の部分の時間的変形を解析できる。よって、解析のために新たな装置を製作するコストは低減される。
【0028】
上記一側面に係る車両において、前記アンチロックブレーキシステムから発せられた情報は、前記車輪の回転角度に応じて大きさが変化する電圧を含み、前記生成部は、前記電圧の振幅の大きさを所定値以上に増幅させる増幅器を含んでもよい。
【0029】
当該構成によれば、ノイズにより電圧の振幅情報が不明確となることは抑制される。よって、撮像素子の露光のタイミングがノイズにより乱されることは低減される。
【0030】
上記一側面に係る車両において、前記撮像光学系は、前記車輪を覆うフェンダーに設けられてもよい。
【0031】
当該構成によれば、降雨や降雪時に走行中のタイヤの表面を撮像する場合、タイヤに刻まれた溝と路面との間に存在する水分であって、タイヤにより巻き上げられた水分が撮像
光学系に降りかかることになる。よって、撮像光学系の汚れは水分により落とされる。従って、撮像画像が不鮮明となることは抑制される。よって、撮像画像に写るタイヤを識別する場合に、識別の精度の低下は抑制される。よって、識別されたタイヤの形状を解析する場合に、解析精度の低下は抑制される。
【発明の効果】
【0032】
本開示によれば、回転するタイヤ表面の特定の部分の時間的な変化を解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、実施形態に係る撮像システムの概要を示している。
図2図2は、撮像システムの機能構成の概要の一例を示している。
図3図3は、ギアパルサーの凹凸とトリガ信号との対応関係を説明した図である。
図4図4は、撮像システムの全体が実現する処理フローの概要を示している。
図5図5は、画像合成部により合成された合成画像の第1例を示している。
図6図6は、画像合成部により合成された合成画像の第2例を示している。
図7図7は、画像合成部により合成された合成画像の第3例を示している。
図8図8は、画像合成部により合成された合成画像の第4例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本開示の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本開示の例示に過ぎない。本開示の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本開示の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。なお、実施形態においては、車両の進行方向を前方とする。
【0035】
図1は、本実施形態に係る撮像システム100の概要を示している。図1に示されるよ
うに、撮像システム100は車両1に設けられる。そして、撮像システム100は、車両1の夫々のタイヤ2を撮像するためのカメラ3を備える。なお、図1においては、右前輪のタイヤ2を撮像する例を示すが、左前輪、及び後輪にも同様にカメラ3が設けられてもよい。このようなカメラ3は、タイヤ2の接地部近傍を撮像可能な位置(カメラ31)と、カメラ31と並んで設置され、主にタイヤ2の表面を撮像可能な位置(カメラ32)と、右前輪の垂直方向の中心軸に対してカメラ32と対称な位置(カメラ33)と、車両1の前方を撮像可能な位置(カメラ34)と、に夫々設けられる。なお、カメラ(31、32、33)が設けられる位置は、例えば車輪を覆うフェンダー4の部分である。
【0036】
カメラ3は、CPU(Central Processing Unit)及びDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、RAM(Random Access Memory)、ROM(ReadOnly Memory)等の主記憶装置、EPROM(Erasable Programmable Read
Only Memory)、ハードディスクドライブ、リムーバブルメディア等の補助記憶装置、及び所定の通信規格で外部装置と通信可能な通信モジュールを有する。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、あるいはディスク記録媒体であってもよい。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納され、そこに格納されたプログラムを主記憶装置の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部等が制御されることによって、後述するような様々な目的に合致した各機能を実現することができる。
【0037】
また、カメラ3は、図示しないが、タイヤ2の表面へ向けて光を照射するLEDと、タイヤ2の表面において反射した光を集光するレンズと、レンズにより結像されたタイヤ2の表面の光学像を電気信号に変換する撮像素子と、を備える。なお、撮像素子の例としては、例えばCMOS(Complementary metal-oxide-semiconductor)が示されるが、CCD(Charged-coupled devices)であってもよい。
【0038】
また、カメラ3が設置される車両1は、ABS(Anti-lock Braking
System)5を備える。そして、ABS5は、例えばギアパルサー6を有する。ギアパルサー6は、車輪の回転数の変化に応じた磁界をコイル8(後述する)との間に生じさせる。ギアパルサー6は、強磁性体材料により形成される。ギアパルサー6は、輪状であり、車輪の外囲に嵌められていてもよい。また、ギアパルサー6の外周部は、周方向に周期的な凹凸形状を有する。凹凸形状の数は、例えば10個である。
【0039】
また、ABS5は、例えば磁石7とコイル8とを備える。磁石7は、ギアパルサー6と対向する車両1の本体部に設けられる。そして、コイル8は、ギアパルサー6と磁石7との間に設けられる。ここで、車輪が回転すると、ギアパルサー6が車輪と共に回転し、ギアパルサー6と磁石7との距離がギアパルサー6の凹凸形状に起因して周期的に変化する。よって、ギアパルサー6と磁石7との間に生じる磁界も周期的に変化する。コイル8には、このような周期的な磁界の変化に応じて大きさが周期的に変化する電流が流れることになる。ABS5では、このような電流の大きさの変化の周期を検知し、当該周期の変化率が所定値以上である場合に、タイヤのロックを抑制するためにタイヤへ作用するブレーキの制動力を制御する。
【0040】
撮像システム100は、上記のようなABS5のコイル8に生じた電流から変換された電圧の振幅を増幅させるアンプ9(本開示の「生成部」及び「増幅器」の一例)を備える。なお、ABS5の構成は、上記のギアパルサー6、磁石7、及びコイル8を備える例に限定されず、スピードセンサあるいはABSセンサなどの呼称で速度フィードバックのために用いられるセンサを備えてもよい。これらのセンサによっても、車輪の回転に応じた交流電圧が発生する。そして、発生した交流電圧がアンプ9に入力されてもよい。
【0041】
また、撮像システム100は、情報処理装置10を備える。情報処理装置10は、アンプ9によって増幅された電圧を受信し、当該受信した電圧をデジタル信号へと変換する。そして、変換したデジタル信号を利用してカメラ3の撮像のタイミングを制御する(詳細は後述する)。なお、情報処理装置10は、CPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROM、ハードディスクドライブ、リムーバブルメディア等の補助記憶装置、及びNIC(Network Interface Card)や無線回路等の通信モジュールを有するコンピュータである。また、リムーバブルメディアは、例えば、USBメモリ、あるいは、CDやDVDのようなディスク記録媒体であってもよい。そして、補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル形式の情報等が格納され、そこに格納されたプログラムを主記憶装置の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部等が制御されることによって、後述するような所定の目的に合致した各機能を実現することができる。
【0042】
(機能構成)
図2は、撮像システム100を形成するカメラ3、及び情報処理装置10の夫々の機能構成の概要の一例を示している。
【0043】
カメラ3は、露光制御部37を備える。露光制御部37は、シャッターの開放時間を制
御することで撮像素子における露光状態を調整する。すなわち、露光制御部37は、露光の開始のタイミングを情報処理装置10のトリガ信号供給部101(後述する)から供給されるトリガ信号(本開示の「第2の電気信号」の一例)の入力タイミングに基づいて決定する。また、露光制御部37は、露光の開始から所定時間経過後に露光を終了させる。なお、カメラ3は、静止画撮像モードあるいは動画撮像モードの何れかの撮像モードに設定されており、露光の終了のタイミングを示す所定時間は、設定された撮像モードに応じて調節される。
【0044】
一方、情報処理装置10は、トリガ信号供給部101を備える。トリガ信号供給部101は、アンプ9から車輪の回転に応じて周期的に大きさが変化する電圧を受信する。なお、受信した電圧は、アンプ9によりその大きさが増幅されている。そして、トリガ信号供給部101は、受信した電圧をデジタル信号に変換する(詳細は後述する)。そして、トリガ信号供給部101は、当該デジタル信号を使用して、カメラ3の露光制御部37に送信するトリガ信号を生成する。
【0045】
図3は、ギアパルサー6の凹凸とトリガ信号との対応関係を説明した図である。すなわち、図3(A)は、コイル8と最接近するギアパルサー6の凸番号、及びコイル8に生じる電流の時間的変化を示している。そして、図3(B)は、トリガ信号供給部101により生成されるトリガ信号の一例を示す。
【0046】
トリガ信号供給部101は、アンプ9から受信した電圧信号から特定の周波数領域を取り出すことで電圧の波形整形を行う。そして、トリガ信号供給部101は、整形された電圧をコンパレータに入力することでパルス信号を生成する。ここで、ギアパルサー6の凸の数は、10個であるため、パルス信号のパルスの数は、タイヤ2が1周するごとに10
個生成される。トリガ信号供給部101は、このように生成されたパルス信号をカウンタに入力することでパルス数の除算処理を行う。そして、このような除算処理が行われたパルス信号はトリガ信号としてカメラ31へ送信される。
【0047】
図3(B)に示される例では、番号が1であるギアパルサー6の凸がコイル8と最接近するたびに、1を示すトリガ信号がトリガ信号供給部101により生成されている。このようなトリガ信号がカメラ31へ送信される場合、1番目の凸部がコイル8に最接近した時にカメラ31の近傍に位置するタイヤ2の特定の表面が、該カメラ31により撮像されることになる。また、タイヤ2が1回転し、1番目の凸部がコイル8に再度最接近すると、タイヤ2の特定の表面が再度カメラ31により撮像されることになる。つまり、図3(B)に示されるようなトリガ信号が生成される場合、タイヤ2の特定の表面が定期的に撮像され続けることになる。また、カメラ32、33においても同様の撮像が行えることは勿論のことである。なお、図3(B)のようなトリガ信号をトリガ信号供給部101が生成するのは、撮像モードが静止画撮像モードであり、タイヤの回転に同期撮影されるモードに設定されている場合である。ちなみに、撮像モードが動画撮像モードに設定されている場合、トリガ信号供給部101は、タイヤの回転周期に比較して充分に高い周波数でトリガ信号を生成する。
【0048】
また、情報処理装置10は、画像合成部102(本開示の「画像生成部」の一例)を備える。画像合成部102は、カメラ3により撮像された画像を合成する。より詳細には、画像合成部102は、複数のカメラ(31、32、33、34)において同時刻に撮像された画像を一つの画像に集約する。又は、画像合成部102は、カメラ(31、32、33、34)のうちの少なくとも何れかのカメラにおいて撮像された画像と、過去に撮像された画像とを一つの画像に集約する。
【0049】
また、情報処理装置10は、画像解析部103(本開示の「画像生成部」の一例)を備
える。画像解析部103は、画像合成部102において合成された画像からタイヤ2の表面を識別する。識別方法は、公知の方法であってもよいし、独自に開発したアルゴリズムに従う方法でもよい。そして、識別されたタイヤ2の表面形状と、基準となるタイヤ2の表面形状との差分を算出する。なお、基準となるタイヤ2の表面形状は、予め記憶装置に格納されていてもよいし、解析対象の画像と同じカメラで撮像された画像であって、解析対象の画像が撮像された時点と異なる時点で撮像された画像から識別されたタイヤ2の表面形状であってもよい。また、画像解析部103は、解析対象のタイヤ2の表面形状と、基準となるタイヤ2の表面形状との差分から解析対象のタイヤ2に生じている応力を算出してもよい。また、画像解析部103は、解析された結果に関する情報を、解析対象の画像に重ねて表示してもよい。
【0050】
(動作例)
次に、撮像システム100の動作例について説明する。図4は、撮像システム100の全体が実現する処理フローの概要を示している。なお、動作例では、車両1が走行中であって、タイヤ2が回転しているものとする。また、カメラ3は静止画撮像モードで撮像するものとする。
【0051】
(S101)
ステップS101では、ABS5のコイル8において、ギアパルサー6の回転に応じて大きさが変化する電流が生じる。そして、当該電流の一部は電圧に変換され、アンプ9において電圧の大きさが増幅される。そして、大きさが増幅された電圧は情報処理装置10のトリガ信号供給部101へ入力される。
【0052】
(S102)
ステップS102では、トリガ信号供給部101が、ステップS101において入力された電圧を使用して、例えば図3(B)に示されるようなトリガ信号を生成する。そして、生成されたトリガ信号は、夫々のカメラ(31、32、33)へ送信される。ここで、夫々のカメラ(31、32、33)へ送信されるトリガ信号は、同じであっても異なっていてもよい。
【0053】
(S103)
ステップS103では、カメラ(31、32、33、34)の夫々の通信モジュールが、ステップS102において情報処理装置10から送信されたトリガ信号を受信する。すると、受信したトリガ信号がONした(0または1のうち1を示す)タイミングで、夫々のカメラ(31、32、33、34)のLEDからタイヤ2の表面へ向けて光が照射される。また、露光制御部37が撮像モードに応じてシャッターの開放時間を制御することで、撮像素子の露光を調整する。
【0054】
(S104)
ステップS104では、各カメラ(31、32、33、34)において撮像された画像が夫々のカメラの通信モジュールにより情報処理装置10へ送信される。そして、情報処理装置10においては、撮像画像が通信モジュールにより受信される。そして、受信した撮像画像は記憶装置に記憶される。そして、画像合成部102が、記憶装置に記憶される画像を合成する。
【0055】
(S105)
ステップS105では、ステップS104において合成された合成画像に写る物体からタイヤ2の表面を画像解析部103が識別する。そして、識別されたタイヤ2の表面形状と、基準となるタイヤ2の表面形状との差分が算出される。また、算出された差分から解析対象のタイヤ2に生じる応力が算出される。
【0056】
なお、カメラ3が動画撮影モードでタイヤ2を撮像する場合、トリガ信号供給部101はアンプ9からの電圧の入力に関わらず、タイヤ2の回転周期に比較して充分に高い周波数でトリガ信号をカメラ3へ送信する。そして、カメラ3では、受信したトリガ信号が1を示すタイミングで、カメラ3のLEDからタイヤ2の表面へ向けて光が照射される。また、露光制御部37が撮像素子における露光を開始する。そして、所定時間経過後に露光制御部37が撮像素子における露光を終了する。
【0057】
(解析例1)
図5は、画像合成部102により合成された合成画像の一例を示している。図5(A)は、所定時点においてカメラ31により撮像された画像の概要である。一方、図5(B)は、所定時点とは異なる時点においてカメラ31により撮像された画像の概要である。ここで、カメラ31に送信されるトリガ信号は、図3(B)に示されるような信号である。よって、図5(A)及び図5(B)に写るタイヤ2の表面部分は、同一部分を表している。
【0058】
図5(A)に示される画像では、タイヤ2が路面に存在する石53に乗り上げていることが分かる。そして、図5(A)と図5(B)とを比較することで、石53に乗り上げた場合のタイヤ2の表面形状と、石53がない路面を走行する場合のタイヤ2の表面形状との差分を確認することができる。また、画像解析部103がタイヤ2の表面形状の差分を算出し、石53に乗り上げた場合のタイヤ2に生じる応力と、石53がない路面を走行する場合のタイヤ2に生じる応力との差分を算出することができる。
【0059】
(解析例2)
また、図6は、画像合成部102により合成された合成画像の別例を示している。ここで、図6(B)に示される画像は、カメラ32によって撮影されたタイヤ2の表面を示している。なお、撮影は動画撮影モードで実行されており、図6(B)に示される画像は、連続的に撮像されたタイヤ表面が映る撮像画像を撮像時間の順に合成して展開したものである。一方、図6(A)は、図6(B)に示される画像が撮像され始めた時点においてカメラ31により撮像された画像である。
【0060】
図6(B)に示されるような画像が生成される場合、タイヤ2の表面に周方向に沿って形成された溝50同士の間の距離の時間的な変化を確認することができる。また、溝50同士の間の距離の変化が周期的であるか否かを判定することができる。そして、溝50同士の間の距離の変化が周期的である場合、車両1の本体部で生じている振動と共振しているか否かを判定することができる。また、タイヤ2の表面が変形により偏心しているか否かを判定することができる。また、図6(A)に示される画像を利用することにより、図6(B)に示されるタイヤ2の表面の変形が、路面に存在する石などに起因して生じている変形か否かを判定することができる。
【0061】
(解析例3)
また、図7は、画像合成部102により合成された合成画像の別例を示している。図7(A)-図7(D)に示される画像は、カメラ(31、32、33,34)の夫々により撮像された画像であって、画像解析部103により解析結果が矢印として重ねて表示された画像である。ここで、カメラ(31、32、33、34)は、動画撮影モードで撮像を実行している。
【0062】
ここで、情報処理装置10において、例えば図7(A)に示されるような矢印が画像に重ねられる手順を説明する。まず、画像解析部103は、所定時刻においてカメラ31により撮像された画像(I1とする)を記憶装置から取得する。そして、画像I1が取得さ
れた時刻から所定期間経過後において同じカメラ31により撮像された画像(I2とする)を記憶装置から取得する。そして、画像解析部103は、I1とI2とをパターンマッチングさせることにより、I2に写るタイヤ2の表面の各部分が、I1に写るタイヤ2の表面のどの部分に対応するかの対応付けを行う。そして、画像解析部103は、I2に写るタイヤ2の表面の各部分に対するI1に写るタイヤ2の表面の各部分の変形ベクトルを算出する。そして、算出された変形ベクトルから各部分の部分速度を算出し、さらに部分速度からI1に写るタイヤ2の表面の各部分に生じた応力を求める。そして応力に応じて色及び長さが変更された矢印をI1に重ねて表示する。また、カメラ32、33において撮像された画像についても同様の処理が実行されることで図7(B)及び図7(C)に示されるような画像が生成される。このように図7(A)-図7(C)に示される画像が生
成されることで、走行時のタイヤ2の表面において領域ごとの応力の度合いを容易に把握することができる。よって、タイヤ2が変形した場合に、変形した理由を微視的に解析することができる。なお、撮像画像に写る特定の線などの印を時間方向に展開することでも、このような変形ベクトルを簡易に算出することができる。
【0063】
なお、図7(A)に示される画像では、タイヤ2の表面の各部分の応力に応じた矢印が重ねて表示されているが、タイヤ2の表面の各部分の変形速度の大きさ、あるいはレイノルズ応力の大きさに応じた図形や記号などが重ねて表示されてもよい。又は複雑変形によるエネルギー分布マップが重ねて表示されてもよい。
【0064】
(解析例4)
また、図8は、画像合成部102により合成された合成画像の別例を示している。図8(A)-図8(C)に示される画像は、雨天天候時に車両1が走行している場合の、カメラ(31、32、33)の夫々により撮像された画像である。図8(A)は、カメラ31により撮像されたタイヤ2の表面の特定の部分(同一部分22とする)が映る画像である。そして、図8(B)は、カメラ31の近傍からカメラ33の近傍に到達した同一部分22の画像である。また、図8(C)は、カメラ33の近傍からカメラ32の近傍に到達した同一部分22の画像である。
【0065】
なお、カメラ(31、32、33)により撮像される画像にタイヤ2の表面の同一部分22が映るようにするため、カメラ31の近傍を同一部分22が通過するときにコイル8に最接近するギアパルサー6の凸部aと、カメラ32の近傍を同一部分22が通過すると
きにコイル8に最接近するギアパルサー6の凸部bと、カメラ33の近傍を同一部分22
が通過するときにコイル8に最接近するギアパルサー6の凸部cと、を予め特定しておく
。そして、タイヤ2の表面を実際に撮像する時に、カメラ31には、ギアパルサー6の凸部aがコイル8に最接近したときに1を示すトリガ信号が供給され、カメラ32には、ギアパルサー6の凸部bがコイル8に最接近したときに1を示すトリガ信号が供給され、カメラ33には、ギアパルサー6の凸部cがコイル8に最接近したときに1を示すトリガ信号が供給される。
【0066】
図8(A)に示されるように、カメラ31で撮像された画像には、タイヤ2の接地部が映っており、路面に存在する水分51がタイヤ2の表面により跳ね上げられる様子が確認できる。また、図8(B)に示されるカメラ33により撮像された画像と、図8(C)に示されるカメラ32により撮像された画像とを比較することにより、タイヤ2がカメラ33からカメラ32まで回転する間にタイヤ2の表面に刻まれた溝から水分52がどの程度排出又は飛散されるか確認することができる。
【0067】
上記のような撮像システム100によれば、図3(B)に示されるトリガ信号がカメラ3に送信されることで、図5に示されるように、タイヤ2表面の特定の部分における時間的な変形を解析することができる。また、このような解析を行う場合に、車両1に従来よ
り装備されているABS5の部品が利用されるため、新たに追加する部品点数は節減される。よって、撮像システム100の製造コストは低減される。
【0068】
また、上記のような撮像システム100によれば、アンプ9により電圧の大きさが増幅されている。よって、ノイズにより電圧の振幅情報が不明確となり、図3(B)に示されるトリガ信号が、コイル8に最接近するギアパルサー6の凸部(図3(A))と対応しないといった不具合は抑制される。よって、撮像素子の露光のタイミングがノイズにより乱されることは低減される。
【0069】
また、上記のような撮像システム100によれば、図8に示されるように降雨時に走行中のタイヤ2の表面を撮像する場合、タイヤ2に刻まれた溝と路面との間に存在する水分51であって、タイヤ2により巻き上げられた水分51がカメラ(31、32、33)に降りかかることになる。又は、タイヤ2がカメラ33からカメラ32まで回転する間にタイヤ2の表面に刻まれた溝から飛散される水分52がカメラ(31、32、33)に降りかかることになる。よって、カメラ(31、32、33)の汚れは水分により落とされる。従って、撮像画像がカメラの汚れによって不鮮明となることは抑制される。その結果、識別されたタイヤ2の形状を解析する場合に、解析精度の低下は抑制される。
【0070】
上記のような撮像システム100によれば、テストコースではなく今まで撮像が困難であった一般公道で走行する車両1のタイヤ2を撮像し、タイヤ2の状態を解析することができる。また、高速カメラではリソースの観点から長時間の動画データを記録することが難しいと考えられる。よって、長時間にわたってタイヤ2の状態を動画撮像し、タイヤ2の表面状態の時間的変化を解析することは困難であると考えられる。一方で、上記のような撮像システム100によれば、図5に示されるようなタイヤ2の表面の特定の部分における時間的な変形を解析する場合に、動画撮像ではなく図3(B)に示されるトリガ信号がカメラ3に送信されることで、タイヤ2の表面の特定の部分が映る静止画像が取得され
る。よって、タイヤ2の表面状態の時間的変化を解析する場合に、撮像データの容量は大幅に削減することができる。換言すれば、長時間にわたるタイヤ2の表面の特定の部分が
映る静止画像が取得され得る。
【0071】
また、上記のように長時間にわたって一般公道で走行する車両1のタイヤ2の表面の特
定の部分が映る静止画像が取得される場合、タイヤ2のバースト、パンク、スリップ、あるいはロックといった偶発的な状況がモニタリング可能となる。よって、モニタリング結果をタイヤ2の開発に生かし、タイヤ2の開発効率を向上させることができる。また、例えばサーキットで走行する車両1のタイヤ2の撮像にも撮像システム100を適用することができる。よって、タイヤ2の極限状態を解析することができる。よって、例えばモータースポーツ用の高性能なタイヤの開発効率を向上させることができる。
【0072】
また、上記のような撮像システム100によれば、走行時の車両1の周辺の風景を撮像すること、又は走行時の車両1に発生する振動情報及び音情報を記録することで、上記のようなタイヤ2の表面状態の解析によるユーザの乗り心地の解析と、走行中の車両1で発生する情報の記録とを合わせて行うことができる。
【0073】
加えて、上記のような撮像システム100によれば、撮像された画像からステアリング舵角、又はサスペンションのストローク量等を求めることで、タイヤ2の位置情報を推定することができる。
【0074】
<変形例>
上記の実施形態では、撮像システム100が車両1に設けられているが、撮像システム100のうち、情報処理装置10が車両1とは別の場所に設けられてもよい。また、上記
の実施形態では、ABS9により生成される周期的な信号を利用してカメラ(31、32、33、34)の撮像のタイミングが制御されているが、車両1に装備され、車輪の回転角度を検出するエンコーダ等の計測装置からの出力信号を利用して車輪の回転角度を取得してもよい。また、計測装置からの出力信号は、車輪の回転角度を取得できればよく、離散的な出力信号でなくともよい。また、車輪の回転角度を検出する機器が車両1に後付けされてもよい。また、アンプ9が使用されずにトリガ信号が生成されてもよい。また、カメラ(31、32、33)はフェンダー4に設けられていなくてもよく、タイヤ2を撮像可能な位置に設けられていればよい。
【0075】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせる事ができる。
【符号の説明】
【0076】
1 :車両
2 :タイヤ
3、31、32、33、34:カメラ
4 :フェンダー
6 :ギアパルサー
7 :磁石
8 :コイル
9 :アンプ
10 :情報処理装置
37 :露光制御部
50 :溝
51、52:水分
53 :石
100 :撮像システム
101 :トリガ信号供給部
102 :画像合成部
103 :画像解析部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8