(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】移送装置用ハンド及び移送装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B25J15/06 D
(21)【出願番号】P 2020213802
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000162238
【氏名又は名称】共和機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸川 舜
(72)【発明者】
【氏名】杉本 浩一
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-054887(JP,A)
【文献】特開2003-262661(JP,A)
【文献】特開2006-049485(JP,A)
【文献】特開平08-277084(JP,A)
【文献】中国実用新案第208841438(CN,U)
【文献】特開2011-093707(JP,A)
【文献】特開平11-019838(JP,A)
【文献】特開平11-068387(JP,A)
【文献】特開2000-141268(JP,A)
【文献】特開2008-119758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/06-17/02
B65G 49/06-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンド本体と、
ハンド本体の下面に取り付けられる吸着部であって、開口部を有する
一定厚みの平坦な平部材を複数
、厚み方向と直交する方向において互いに重ならないように積層して形成される
、上下方向の長さ(厚み)は、30mm未満である前記吸着部と、
ハンド本体に取り付けられるアーム接続部と、を備え、
前記積層され隣りあう平部材の開口部同士で、開口部の少なくとも一部が、前記ハンド本体の上下方向で重なり、
前記吸着部は、
前記上下方向に関し、下端に位置する下端平部材と、
前記下端平部材よりも上側に位置し、前記下端平部材を構成する材料の硬度よりも小さい硬度を有する材料によって構成される緩衝平部材と、を少なくとも含む、移送装置用ハンド。
【請求項2】
前記吸着部は、前記上下方向で、上端に位置する上端平部材をさらに含み、
前記緩衝平部材を構成する材料の硬度は、前記上端平部材を構成する材料の硬度よりも小さい、請求項1に記載の移送装置用ハンド。
【請求項3】
前記緩衝平部材は、前記下端平部材の上面に設置され、
前記上端平部材は、前記緩衝平部材の上面に設置され、
前記緩衝平部材の外形サイズは、前記上端平部材の外形サイズ及び前記下端平部材の外形サイズよりも小さい、請求項2に記載の移送装置用ハンド。
【請求項4】
前記緩衝平部材は、前記上下方向で、前記吸着部の上端に位置し、
前記下端平部材は、前記緩衝平部材の下面に設置される、請求項1に記載の移送装置用ハンド。
【請求項5】
前記緩衝平部材の外形サイズは、前記下端平部材の外形サイズよりも小さい、請求項4に記載の移送装置用ハンド。
【請求項6】
前記下端平部材の厚みは、上端に位置する前記平部材の厚みに比べて小さい、請求項1~5のいずれか一項に記載の移送装置用ハンド。
【請求項7】
ハンド本体と、
ハンド本体の下面に取り付けられる吸着部であって、開口部を有する
一定厚みの平坦な平部材を複数
、厚み方向と直交する方向において互いに重ならないように積層して形成される
、上下方向の長さ(厚み)は、30mm未満である前記吸着部と、
ハンド本体の上面に取り付けられるアーム接続部と、を備え、
前記積層され隣りあう平部材の開口部同士で、開口部の少なくとも一部が、前記ハンド本体の上下方向で重なり、
前記吸着部は、
中間平部材と、
前記中間平部材の上面に設置される第一サイド平部材と、
前記中間平部材の下面に設置される第二サイド平部材と、が積層される第一平板ユニットを少なくとも含み、
前記中間平部材の前記開口部の開口面積は、前記第一サイド平部材の前記開口部の開口面積および前記第二サイド平部材の前記開口部の開口面積よりも大きい、移送装置用ハンド。
【請求項8】
前記吸着部は、
上下方向で、吸着部の上端に位置する上端平部材と、
前記第一平板ユニットを構成する前記第一サイド平部材の上面と前記上端平部材の下面との間に配置される、第一サイド上面平部材と、
上下方向で、吸着部の下端に位置する下端平部材と、
前記第一平板ユニットを構成する前記第二サイド平部材の下面と前記下端平部材の上面との間に配置される、第二サイド下面平部材と、を含む、請求項7に記載の移送装置用ハンド。
【請求項9】
前記吸着部の下端に位置する下端平部材の厚みは、前記吸着部の上端に位置する上端平部材の厚みに比べて小さい、請求項7または8に記載の移送装置用ハンド。
【請求項10】
前記吸着部の上端に位置する上端平部材と、前記吸着部の下端に位置する下端平部材との間に位置する少なくとも一部の前記平部材の厚みが、前記上端平部材の厚みに比べて小さい、請求項7~9のいずれか一項に記載の移送装置用ハンド。
【請求項11】
前記ハンド本体は、薄板部と、薄板部の上面側に設けられ、吸引機構接続部が取り付けられる吸引取付部と、を備え、
前記アーム接続部は、前記吸引取付部と干渉しない位置で、前記薄板部の上面の一部箇所または側面部に取り付けられ、
前記アーム接続部と前記吸引機構接続部とが配置されていない薄板部及び/または吸引取付部の上面の領域が、前記ハンド本体の幅方向に延伸する前記ハンド本体の端部から少なくとも所定の距離存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載の移送装置用ハンド。
【請求項12】
前記ハンド本体は、薄板部と、薄板部の上面側に設けられ、吸引機構接続部が取り付けられる吸引取付部と、を備え、
前記アーム接続部は、前記吸引取付部と干渉しない位置で、前記薄板部の上面の一部箇所または側面部に取り付けられ、
前記アーム接続部と前記吸引機構接続部とが配置されていない薄板部及び/または吸引取付部の上面の領域が、前記ハンド本体の奥行方向に延伸する前記ハンド本体の端部から少なくとも所定の距離存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載の移送装置用ハンド。
【請求項13】
ロボットアームと、
前記ロボットアームの先端に設けられる請求項1~12のいずれか一項に記載の移送装置用ハンドと、を備える移送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移送装置用ハンド及び移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の蛇腹状の吸着パッドを有し、内容物が入れられた容器を輸送用ラックや箱体などの容器収容体に移送する移送装置が知られている。
例えば、特許文献1には、卵容器1つに対し6つの蛇腹状の吸着パッドを有する吸着部を備える卵容器移送装置が開示されている。この卵容器移送装置では、吸着パッドの上部がチューブにより真空ポンプに接続され、真空ポンプによってエアが吸引されると卵容器が吸着パッドに吸着し、エアが排気されると卵容器が吸着パッドから脱離する。そして、蛇腹状の吸着パッドは長手方向に例えば30mm~80mmの長さ(L)を有することが記載されている。
【0003】
また、特許文献2に示されるように、複数段の棚を有し、各棚が中央で折り畳み可能となっており、奥行方向でコンパクトに収納可能な輸送用ラックが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-177325号公報
【文献】実用新案登録第3209255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
移送装置が上記のような長手方向に比較的長い吸着パッドを用いて容器を輸送用ラックに移送する場合、移送装置の吸着部やロボットアームハンドが輸送用ラックのフレームや棚に接触し、容器を所望の場所に載置できないという問題があった。
これに対し、移送装置が容器を載置する棚よりも上側に存在する棚を折り畳むことによって持上方向(上下方向)に自由に動作可能な空間を形成し、載置作業に必要な空間を確保することが考えられる。
しかしながら、上記のような空間を確保したとしても、移送装置が棚の奥まで容器を載置しようとすると、やはり移送装置の吸着部やロボットアームハンドが直上の折り畳まれた棚に接触することが懸念され、その結果、棚の奥まで容器を載置することができないということも想定される。
上記の懸念点は、輸送用ラックに限らず、蓋を有する箱体など、持上方向(上下方向)に空間の制限がある(即ち、自由に動作できない)容器収容体に容器を移送する場合にも起こりうる。
【0006】
そこで、本発明は、従来の持上方向(上下方向)が長い吸着パッドよりも短くできる吸着部と、持上方向(上下方向)に空間の制限がある容器収容体にも容器を移送し、載置することができる、薄型構造の移送装置用ハンド、及びそれらを備える移送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(緩衝平部材の構成)
本発明の移送装置用ハンドは、
ハンド本体と、
ハンド本体の下面に取り付けられる吸着部であって、開口部を有する平部材を複数積層して形成される前記吸着部と、
ハンド本体に取り付けられるアーム接続部と、を備え、
前記積層され隣りあう平部材の開口部同士で、開口部の少なくとも一部が、前記ハンド本体の上下方向で重なり、
前記吸着部は、
前記上下方向に関し、下端に位置する下端平部材と、
前記下端平部材よりも上側に位置し、前記下端平部材を構成する材料の硬度よりも小さい硬度を有する材料によって構成される緩衝平部材と、を少なくとも含む。
前記吸着部の前記上下方向の長さ(厚み)は、30mm未満、好ましくは20mm未満、より好ましくは10mm未満である。
前記積層される平部材の開口部のそれぞれの開口中心位置が前記上下方向の直線上(開口部面に垂直な線上)で重なることが好ましい。
前記緩衝平部材は、ハンド本体の下面に取り付けられてもよい。
【0008】
上記構成によれば、吸着部は複数の平部材を積層して形成される。これにより、従来の蛇腹状の吸着パッド(30mm以上の厚み)よりも、上下方向における長さが短い吸着部を実現できる。
また、平部材の開口部は、ハンド本体の上下方向に関し、少なくとも一部が他の平部材の開口部と重なるように形成される。そして、吸着部は、硬度が小さい緩衝平部材を下端平部材よりも上側に含む。これにより、吸着部が容器を吸着する際や容器を移送する際に起こる衝撃を緩衝平部材によって吸収できる。
以上のように、上記構成によれば、上下方向に空間の制限がある容器収容体にも所望の数だけ容器を載置することができる。
【0009】
(3積層構成)
前記吸着部は、前記上下方向で、上端に位置する上端平部材をさらに含み、
前記緩衝平部材を構成する材料の硬度は、前記上端平部材を構成する材料の硬度よりも小さくても構わない。
前記上端平部材は、ハンド本体の下面に取り付けられてもよい。
【0010】
前記緩衝平部材は、前記下端平部材の上面に設置され、前記上端平部材は、前記緩衝平部材の上面に設置される。
前記緩衝平部材の外形サイズは、前記上端平部材の外形サイズ及び前記下端平部材の外形サイズよりも小さくても構わない。
前記上端平部材の外形サイズと前記下端平部材の外形サイズが同じでもよく、異なっていてもよい。
前記緩衝平部材の開口部の開口サイズは、前記上端平部材の開口部の開口サイズ及び前記下端平部材の開口部の開口サイズと同じでもよく、小さくてもよく、大きくてもよい。
【0011】
上記構成によれば、外形サイズ及び硬度が異なる上端平部材と緩衝平部材とが積層され、さらに、外形サイズ及び硬度が異なる緩衝平部材と下端平部材とが積層されるため、吸着部が容器を吸着する際や容器を移送する際に起こる衝撃をより吸収できる。
【0012】
前記上端平部材及び前記下端平部材は、ニトリルゴム(NBR)によって構成されても構わない。同じ硬度のニトリルゴム(NBR)で構成してもよく、上端平部材の硬度>下端平部材の硬度となるようにニトリルゴム(NBR)の硬度を調整してもよい。
前記上端平部材は、ニトリルゴム(NBR)によって構成され、
前記下端平部材は、シリコンゴムによって構成されても構わない。
前記緩衝平部材は、クロロプレンゴムスポンジ、EPDM(Ethylene-Propylene-Diene Methylene linkage)の発泡体のうちの一方または双方によって構成されても構わない。
各平部材の硬度の大小関係は以下が好ましい。
(1)上端平部材の硬度>下端平部材の硬度
(2)ニトリルゴムの硬度>シリコンゴムの硬度
(3)上端平部材の硬度>緩衝平部材の硬度
(4)下端平部材の硬度>緩衝平部材の硬度
(5)上端平部材の硬度>下端平部材の硬度>緩衝平部材の硬度
【0013】
前記上端平部材及び前記下端平部材は、シリコンゴムによって構成されても構わない。同じ硬度のシリコンゴムで構成されてもよく、上端平部材の硬度>下端平部材の硬度となるようにシリコンゴムの硬度を調整してもよい。
【0014】
前記緩衝平部材は、前記上下方向で、前記吸着部の上端に位置し、
前記下端平部材は、前記緩衝平部材の下面に設置されても構わない。
上記構成によれば、吸着部は、上端の緩衝平部材と、下端平部材との2層によって構成される。これにより、より薄型の吸着部を実現できる。
前記上端の緩衝平部材の外形サイズは、前記下端平部材の外形サイズよりも小さくても構わない。
上記構成によれば、外形サイズ及び硬度が異なる2つの平部材(緩衝平部材と下端平部材)が積層されるため、吸着部が容器を吸着する際や容器を移送する際に起こる衝撃をより吸収できる。
【0015】
前記下端平部材は、ニトリルゴム(NBR)によって構成されても構わない。
【0016】
各平部材の厚みの大小関係は以下である。
(1)上端平部材>下端平部材
(2)上端平部材=下端平部材
(3)上端平部材=緩衝平部材=下端平部材
(4)上端平部材=緩衝平部材>下端平部材
(5)緩衝平部材>上端平部材>下端平部材
上記(1)、(4)、(5)の構成によれば前記下端平部材の厚みは、上端に位置する前記平部材の厚みに比べて小さい。これにより、厚みが小さい下端の平部材を容器に接触させて容器を移送することができる。これにより、容器の上面に凹凸が存在する場合であっても、下端の平部材が容器の凹凸に貼り付いて容器を移送することができる。
【0017】
(開口パターンで規定されるユニットの構成)
他の本発明の移送装置用ハンドは、
ハンド本体と、
ハンド本体の下面に取り付けられる吸着部であって、開口部を有する平部材を複数積層して形成される前記吸着部と、
ハンド本体の上面に取り付けられるアーム接続部と、を備え、
前記積層され隣りあう平部材の開口部同士で、開口部の少なくとも一部が、前記ハンド本体の上下方向で重なり、
前記吸着部は、
中間平部材(55d)と、
前記中間平部材の上面に設置される第一サイド平部材(55c)と、
前記中間平部材の下面に設置される第二サイド平部材(55e)と、が積層される第一平板ユニットを含み、
前記中間平部材(55d)の前記開口部(551d)の開口面積は、前記第一サイド平部材(55c)の前記開口部(551c)の開口面積および前記第二サイド平部材(55e)の前記開口部(551e)の開口面積よりも大きい。
前記吸着部の前記上下方向の長さ(厚み)は、30mm未満、好ましくは20mm未満、より好ましくは10mm未満である。
前記積層される中間平部材、第一サイド平部材、第二サイド平部材のそれぞれの開口部の開口中心位置が前記上下方向の直線上(開口部面に垂直な線上)で重なることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、吸着部は複数の平部材を積層して形成される。これにより、従来の蛇腹状の吸着パッド(30mm以上の厚み)よりも、上下方向における長さが短い吸着部を実現できる。
また、平部材の開口部は、ハンド本体の上下方向に関し、少なくとも一部が他の平部材の開口部と重なるように形成される。そして、中間平部材が第一サイド平部材と第二サイド平部材とに挟まれ、中間平部材の開口部の開口面積は、第一サイド平部材および第二サイド平部材それぞれの開口部の開口面積よりも大きい。これにより、第一サイド平部材および第二サイド平部材の開口部の周りにある周囲部が、中間平部材の開口部の方向へ押されやすくなり、上下方向(厚み)又は上下方向と直交する左右方向における適度な応力変形が生じやすくなり、小さな凹凸面のある容器に対する吸着性が向上し、吸着部が容器を吸着する際や容器を移送する際に起こる衝撃を吸収できる。
以上のように、上記構成によれば、上下方向に空間の制限がある容器収容体にも所望の数だけ容器を載置することができる。
【0019】
前記吸着部は、上下方向で、吸着部の上端に位置する上端平部材(55a)を有し、該上端平部材(55a)が前記第一平板ユニットを構成する第一サイド平部材(55c)の上面に配置されてもよい。
前記吸着部は、上下方向で、吸着部の下端に位置する下端平部材(55g)を有し、該下端平部材(55g)が前記第一平板ユニットを構成する第二サイド平部材(55e)の下面に配置されてもよい。
【0020】
前記吸着部は、
前記第一平板ユニットを構成する第一サイド平部材(55c)の上面と前記上端平部材(55a)の下面との間に配置される、第一サイド上面平部材(55b)と、
前記第一平板ユニットを構成する第二サイド平部材(55e)の下面と前記下端平部材(55g)の上面との間に配置される、第二サイド下面平部材(55f)と、を有してもよい。
各平部材の開口部と外形サイズの関係は以下が好ましい。
(1)第一サイド上面平部材(55b)の開口部(551b)の開口面積=第二サイド下面平部材(55f)の開口部(551f)の開口面積
(2)中間平部材(55d)の開口部(551d)の開口面積≧第一サイド上面平部材(55b)の外形サイズ(552b)
(3)中間平部材(55d)の開口部(551d)の開口面積≧第二サイド下面平部材(55f)の外形サイズ(552f)
(4)第一サイド平部材(55c)の外形サイズ>第一サイド上面平部材(55b)の外形サイズ(552b)
(5)第一サイド平部材(55c)の外形サイズ>第二サイド下面平部材(55f)の外形サイズ(552f)
(6)上記(2)、(3)、および第二サイド下面平部材(55f)の外形サイズ(552f)=第一サイド上面平部材(55b)の外形サイズ(552b)
(7)上記(4)、(5)、および第二サイド下面平部材(55f)の外形サイズ(552f)=第一サイド上面平部材(55b)の外形サイズ(552b)
(8)第一サイド平部材(55c)の開口部(551c)の開口面積≦第一サイド上面平部材(55b)の開口部(551b)の開口面積
(9)第二サイド平部材(55e)の開口部(551e)の開口面積≦第二サイド下面平部材(55f)の開口部(551f)の開口面積
【0021】
各平部材の外形は、矩形に限定されず、円形、楕円形、異形でもよい。
各平部材の開口部の形状は、矩形に限定されず、円形、楕円形、異形でもよい。
【0022】
各平部材の厚みの大小関係は以下である。
(1)上端平部材>下端平部材
(2)上端平部材>上端平部材と下端平部材との間に位置する任意の平部材
(3)上端平部材と下端平部材との間に位置する任意の平部材>下端平部材
(4)上端平部材と下端平部材との間に位置する任意の平部材=下端平部材
(5)上端平部材と下端平部材との間に位置する任意の平部材=上端平部材
上記構成(1)の構成によれば、吸着部の下端に位置する下端平部材の厚みは、前記吸着部の上端に位置する上端平部材の厚みに比べて小さい。上記(3)の構成によれば、吸着部の下端に位置する下端平部材の厚みは、上端平部材と下端平部材との間に位置する任意の平部材に比べて小さい。これにより、容器の上面に凹凸が存在する場合であっても、下端の平部材が容器の凹凸に貼り付いて容器を移送することができる。
【0023】
上記構成(2)の構成によれば、前記吸着部の上端に位置する上端平部材と、前記吸着部の下端に位置する下端平部材との間に位置する少なくとも一部の前記平部材の厚みが、前記上端平部材の厚みに比べて小さくなるため、薄型の吸着部を実現できる。
【0024】
複数の前記平部材のそれぞれは、ニトリルゴム(NBR)によって形成されても構わない。各平部材を、同じ硬度のニトリルゴム(NBR)で構成してもよく、下端平部材の硬度が最も小さくなるようにニトリルゴム(NBR)の硬度を調整してもよい。
【0025】
前記吸着部の下端に位置する下端平部材は、シリコンゴムによって形成され、
前記下端平部材以外の他の前記平部材は、ニトリルゴム(NBR)によって形成されても構わない。硬度の大小関係について、ニトリルゴムの硬度>シリコンゴムの硬度が好ましい。
【0026】
前記ハンド本体は、薄板部と、薄板部の上面側に設けられ、吸引機構接続部が取り付けられる吸引取付部と、を備える。
前記薄板部は、例えば、厚みが2mmから30mmの範囲であることが好ましく、10mm以下が好ましい。
前記アーム接続部は、
吸引取付部と干渉しない位置で、前記薄板部の上面の一部箇所または側面部(一側面または2つの側面)に取り付けられ、前記アーム接続部と前記吸引機構接続部とが配置されていない薄板部及び/または吸引取付部の上面の(矩形)領域が、前記ハンド本体の幅方向に延伸する前記ハンド本体の端部から少なくとも所定の距離存在する。前記所定の距離は、前記ハンド本体の奥行方向の長さの1/4の長さであっても構わない。
前記アーム接続部と前記吸引機構接続部とが配置されていない薄板部及び/または吸引取付部の上面の(矩形)領域が、前記ハンド本体の奥行方向に延伸する前記ハンド本体の端部から少なくとも所定の距離存在する。前記所定の距離は、前記ハンド本体の幅方向の長さの1/4の長さであっても構わない。
上記構成によれば、アーム接続部及び吸引機構接続部は、ハンド本体の端部を起点として所定の距離、例えば、少なくともハンド本体の幅方向(あるいは奥行方向)の長さの1/4までの領域に配置されない。前記アーム接続部と前記吸引機構接続部とが配置されていない薄板部及び/または吸引取付部は、従来のハンド本体よりも薄く構成できるため(上下方向の占有空間を小さくできるため)、折り畳み棚や容器収容体に接触することを抑制して、上下方向の狭い空間に、ハンド本体(アーム接続部と吸引取付部が配置されていない薄板部)を挿入でき、容器を積載できる。
【0027】
本発明の移送装置は、
ロボットアームと、
前記ロボットアームの先端に設けられる上記の移送装置用ハンドと、を備える。
【発明の効果】
【0028】
持上方向(上下方向)に空間の制限がある容器収容体にも容器を移送し、載置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第一実施形態に係る移送装置用ハンドを示す模式的な斜視図である。
【
図2】第一実施形態に係る移送装置用ハンドの模式的な平面図である。
【
図3】第一実施形態に係る吸着部の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図4A】第一実施形態に係るハンド本体及び吸着部をy方向に見たときの模式図である。
【
図4B】第一実施形態に係るハンド本体及び吸着部を-x方向に見たときの模式図である。
【
図6】第二実施形態に係る吸着部の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図7】第三実施形態に係る吸着部の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図8】第四実施形態に係る吸着部の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図9】第五実施形態に係る吸着部の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図10A】第五実施形態に係るハンド本体及び吸着部をy方向に見たときの模式図である。
【
図10B】第五実施形態に係るハンド本体及び吸着部を-x方向に見たときの模式図である。
【
図12】第六実施形態に係る吸着部の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図13】第七実施形態に係る吸着部の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図14】第八実施形態に係る吸着部の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図15】第九実施形態に係る吸着部の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図16】第十実施形態に係る吸着部の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図17】比較例に係る吸着部の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図18】実施例1a~1d、2a~2d、3、4の検証結果を示す表である。
【
図19】実施例5a~5b、6の検証結果を示す表である。
【
図20】実施例7~10及び比較例の検証結果を示す表である。
【
図21】移送装置が容器を輸送用ラックに載置する状態を示す模式的な斜視図である。
【
図22】移送装置が容器を輸送用ラックに載置する状態を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、移送装置用ハンド及び移送装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0031】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態に係る移送装置用ハンドを示す模式的な斜視図である。移送装置用ハンド1は、ハンド本体3、吸着部5、アーム接続部7、及び吸引機構接続部10を含む。
ハンド本体3は、薄板部35及び吸引取付部36を有する。吸引取付部36は、薄板部35の上面の一部分に設置される。一例として、
図1では、薄板部35に4個の吸引取付部が設置されているが、これに限定されない。吸引取付部36の上面に、吸引機構接続部10が設置される。薄板部35の上面のうち吸引取付部36が設置されない部分に、アーム接続部7が設置される。薄板部35の下面に、吸着部5が設置される。
なお、
図1では、矩形形状を有する一対のハンド本体(3、3)が示されているが、これに限定されない。例えば、ハンド本体3は、吸着部5、アーム接続部7及び吸引機構接続部10を取り付け可能であれば任意の形状であっても構わない。
【0032】
吸着部5は、内容物(一例として卵)が入れられた容器を吸着する。
図1では容器Pを破線で示し、一例として、1個の吸着部5が1個の容器Pを吸着した状態を示す。本実施形態では、容器Pは蓋を有し、一例としてプラスチック製、紙製、パルプ製である。また、容器Pの上面の少なくとも一部は平坦である。なお、容器Pの上面の一部に凹凸が生じていても構わない。また、容器Pの上面に例えば内容物を説明するシール等が貼られることにより、上面が平坦になっていても構わない。
吸着部5の構成について、詳細は後述する。なお、
図1では吸着部5の個数は6個であるが、これに限定されず、任意の個数であっても構わない。
【0033】
アーム接続部7は、ロボットアーム(図示略)が接続される接続部71及び接続部71を支持する支持台72を含む。
図2は、移送装置用ハンド1の模式的な平面図である。
図2に示されるように、支持台72の奥行方向(y方向)の長さd1と距離d2との和は、ハンド本体3の奥行方向(y方向)の長さと等しい。また、支持台72の幅方向(x方向)の長さd3と距離d4と距離d5との和は、ハンド本体3の幅方向(x方向)の長さと等しい。このように、アーム接続部7は、ハンド本体3の第一の辺(31、31)との間に間隔を設けないように(即ち、ハンド本体3の第一の辺(31、31)寄りに)設置され、かつ、幅方向(x方向)において、ハンド本体3の両端から間隔(d4、d5)を設けて設置される。
各吸引機構接続部10は、ハンド本体3の左端から距離d4離間するまでの領域に配置されず、また、ハンド本体3の右端から距離d5離間するまでの領域に配置されず、アーム接続部7の幅領域内に収まるように配置される。また、各吸引機構接続部10は、ハンド本体3の第二の辺32から距離d6離間するまでの領域に配置されず、ハンド本体3の第一の辺31から距離d7離間するまでの領域に配置される。
即ち、アーム接続部7と吸引機構接続部10とが配置されていない薄板部35及び/または吸引取付部36の上面の矩形領域は、ハンド本体3の幅方向に延伸する端部(第二の辺32)から始まり、ハンド本体3の奥行方向に距離d6だけ連続する。また、当該矩形領域は、ハンド本体3の左端から始まり、ハンド本体3の幅方向に距離d4だけ連続する。また、当該矩形領域は、ハンド本体3の右端から始まり、ハンド本体3の幅方向に距離d5だけ連続する。
一例として、距離d4及びd5のそれぞれは、ハンド本体3の幅方向の長さの1/4~1/2の長さであってもよく、距離d6は、ハンド本体3の奥行方向の長さの1/4~1/2であってもよいが、これに限定されない。例えば、1/4の長さよりも短くても構わないし、1/2の長さよりも長くても構わない。より一般的には、距離d4、d5、及びd6は、ハンド本体3の形状やサイズ、輸送用ラック等の容器収容体の形状やサイズ等に応じて適宜設定可能な値であって構わない。
【0034】
吸引機構接続部10は、一例として真空ポンプ、真空ブロワ、真空エジェクタ等の吸引機構(図示略)にチューブ等を介して接続される。吸引機構(図示略)がエアを吸引すると、容器は吸着部5に吸着され、吸引機構(図示略)がエアを排気すると、容器は吸着部5から脱離する。なお、
図1では、吸引機構接続部10は吸着部5と同数(即ち6個)設けられているが、これに限定されず、任意の個数であっても構わない。
【0035】
続いて、吸着部5の構成について説明する。
図3は、第一実施形態に係る吸着部5の構成を示す模式的な斜視図である。
図3では、説明の便宜上、吸着部5の各構成が分離した状態を示している。
図3に示されるように、吸着部5は、上端平部材51a、緩衝平部材51b、下端平部材51cが積層されて成る。各平部材(51a、51b、51c)は、中央に矩形形状の開口部(511a、511b、511c)を有し、開口部(511a、511b、511c)の周りに周囲部(512a、512b、512c)を有する。
また、緩衝平部材51bを構成する材料の硬度は、上端平部材51a及び下端平部材51bを構成する材料の硬度に比べて小さい。即ち、緩衝平部材51bは、上端平部材51a及び下端平部材51bに比べて柔らかい。なお、
図3では、各平部材(51a、51b、51c)および各開口部(511a、511b、511c)は矩形形状を有するが、これに限らず、円形、楕円形、多角形などの任意の形状であっても構わない。
【0036】
図4Aは、ハンド本体3及び吸着部5をy方向に見たときの模式図であり、
図4Bは、ハンド本体3及び吸着部5を-x方向に見たときの模式図である。なお、
図4A及び
図4Bでは、6個の吸着部5のうち、一対のハンド本体(3、3)のそれぞれの中央に位置する吸着部5を示している。
図4A及び
図4Bに示されるように、上端平部材51aは、ハンド本体3の下面に設置され、緩衝平部材51bは、上端平部材51aの下面に設置され、下端平部材51cは、緩衝平部材51bの下面に設置される。
図4Aに示されるように、上端平部材51a及び下端平部材51cの幅方向(x方向)における長さは等しく(即ち、L1=L1)、緩衝平部材51bの幅方向(x方向)における長さよりも長い(即ち、L1>L2)。
図4Bに示されるように、上端平部材51a及び下端平部材51cの奥行方向(y方向)における長さは等しく(即ち、L3=L3)、緩衝平部材51bの奥行方向(y方向)における長さよりも長い(即ち、L3>L4)。このように、上端平部材51a及び下端平部材51cの外形サイズは等しく、緩衝平部材51bの外形サイズは、上端平部材51a及び下端平部材51cの外形サイズよりも小さい。
図4A及び
図4Bに示されるように、各平部材(51a、51b、51c)の厚み(T1、T2、T3)は、T2>T1>T3である。
【0037】
図5Aは、
図4Aの模式的なA-A線断面図であり、
図5Bは、
図4Bの模式的なB-B線断面図である。
図5A及び
図5Bに示されるように、各平部材(51a、51b、51c)の開口部(511a、511b、511c)は、上下方向(z方向)に関し、少なくとも一部が他の開口部と重なるように形成され、各平部材の開口部のそれぞれの開口中心位置は、上下方向(z方向)の直線上で重なる。開口部(511a、511b、511c)は、吸引機構(図示略)に吸引または排気されるエアの吸着路を形成する。
図5Aに示されるように、開口部(511a、511c)の奥行方向(y方向)における長さは等しく(即ち、L5=L5)、開口部511bの奥行方向(y方向)における長さよりも短い(即ち、L6>L5)。
図5Bに示されるように、開口部(511a、511c)の幅方向(x方向)における長さは等しく(即ち、L7=L7)、開口部511bの幅方向(x方向)における長さよりも短い(即ち、L8>L7)。このように、開口部(511a、511c)のサイズは等しく、開口部511bのサイズは、開口部(511a、511c)のサイズよりも大きい。
【0038】
(第二実施形態)
移送装置用ハンドの第二実施形態について説明する。第二実施形態は、吸着部の各平部材の開口部のサイズが同じである点のみ第一実施形態と相違し、その他の構成は第一実施形態と同様である。以下、第二実施形態の吸着部について説明する。
図6は、第二実施形態に係る吸着部52の構成を示す模式的な斜視図である。
図6では、
図3と同様、吸着部52の各構成が分離した状態を示している(
図7~9、12~16も同様)。吸着部52は、上端平部材52a、緩衝平部材52b及び下端平部材52cが積層されて成る。
第二実施形態の吸着部52では、硬度について、上端平部材52a>緩衝平部材52b、かつ、下端平部材52c>緩衝平部材52bである。外形サイズについて、上端平部材52a=下端平部材52c>緩衝平部材52bである。開口部のサイズについて、上端平部材52a=緩衝平部材52b=下端平部材52cである。厚さについて、緩衝平部材52b>上端平部材52a>下端平部材52cである。
【0039】
(第三実施形態)
移送装置用ハンドの第三実施形態について説明する。第三実施形態は、吸着部の各平部材の開口部のサイズが同じであり、上端平部材の厚さが下端平部材の厚さと同じである点のみ第一実施形態と相違し、その他の構成は第一実施形態と同様である。以下、第三実施形態の吸着部について説明する。
図7は、第三実施形態に係る吸着部53の構成を示す模式的な斜視図である。吸着部53は、上端平部材53a、緩衝平部材53b及び下端平部材53cが積層されて成る。
第三実施形態の吸着部53では、硬度について、上端平部材53a>緩衝平部材53b、かつ、下端平部材53c>緩衝平部材53bである。外形サイズについて、上端平部材53a=下端平部材53c>緩衝平部材53bである。開口部のサイズについて、上端平部材53a(531a)=緩衝平部材53b(531b)=下端平部材53c(531c)である。厚さについて、緩衝平部材53b>上端平部材53a=下端平部材53cである。
【0040】
(第四実施形態)
移送装置用ハンドの第四実施形態について説明する。第四実施形態は、吸着部が上端平部材を有さず、緩衝平部材及び下端平部材から成り、各平部材の開口部が同じサイズである点のみ第一実施形態と相違し、その他の構成は第一実施形態と同様である。以下、第四実施形態の吸着部について説明する。
図8は、第四実施形態に係る吸着部54の構成を示す模式的な斜視図である。
吸着部54は、緩衝平部材54b及び下端平部材54cが積層されて成る。即ち、吸着部54は、緩衝平部材54bを吸着部54の上端に有する。
第四実施形態の吸着部54では、硬度について、下端平部材54c>緩衝平部材54bである。外形サイズについて、下端平部材54c>緩衝平部材54bである。開口部のサイズについて、緩衝平部材54b(541b)=下端平部材54c(541c)である。厚さについて、緩衝平部材54b>下端平部材54cである。
【0041】
(第五実施形態)
移送装置用ハンドの第五実施形態について説明する。第五実施形態は、吸着部が7個の平部材から成る点のみ第一実施形態と相違し、その他の構成は第一実施形態と同様である。以下、第五実施形態の吸着部について説明する。
図9は、第五実施形態に係る吸着部55の構成を示す模式的な斜視図である。
図9に示されるように、吸着部55は、上端平部材55a、第一サイド上面平部材55b、第一サイド平部材55c、中間平部材55d、第二サイド平部材55e、第二サイド下面平部材55f、及び下端平部材55gの7個の平部材が積層されて成る。各平部材(55a~55g)は、中央に矩形形状の開口部(551a~551g)を有し、開口部(551a~551g)の周りに周囲部(552a~552g)を有する。なお、第一サイド平部材55c、中間平部材55d及び第二サイド平部材55eが「第一平板ユニット」に対応する。
【0042】
図10Aは、ハンド本体3及び吸着部55をy方向に見たときの模式図であり、
図10Bは、ハンド本体3及び吸着部55を-x方向に見たときの模式図である。なお、
図10A及び
図10Bでは、6個の吸着部55のうち、一対のハンド本体(3、3)のそれぞれの中央に位置する吸着部55を示している。
図10A及び
図10Bに示されるように、上端平部材55aはハンド本体3の下面に設置され、第一サイド上面平部材55bは上端平部材55aの下面に設置され、第一サイド平部材55cは第一サイド上面平部材55bの下面に設置され、中間平部材55dは第一サイド平部材55cの下面に設置され、第二サイド平部材55eは中間平部材55dの下面に設置され、第二サイド下面平部材55fは第二サイド平部材55eの下面に設置され、下端平部材55gは第二サイド下面平部材55fの下面に設置される。
図10Aに示されるように、上端平部材55a、第一サイド平部材55c、中間平部材55d、第二サイド平部材55e、及び下端平部材55gの幅方向(x方向)における長さは等しく(即ち、L9=・・・=L9)、第一サイド上面平部材55b及び第二サイド下面平部材55fの幅方向(x方向)における長さは等しく(即ち、L10=L10)、前者は後者よりも長い(即ち、L9>L10)。
図10Bに示されるように、上端平部材55a、第一サイド平部材55c、中間平部材55d、第二サイド平部材55e、及び下端平部材55gの奥行方向(y方向)における長さは等しく(即ち、L11=・・・=L11)、第一サイド上面平部材55b及び第二サイド下面平部材55fの奥行方向(y方向)における長さは等しく(即ち、L12=L12)、前者は後者よりも長い(即ち、L11>L12)。このように、上端平部材55a、第一サイド平部材55c、中間平部材55d、第二サイド平部材55e、及び下端平部材55gの外形サイズは等しく、第一サイド上面平部材55b及び第二サイド下面平部材55fの外形サイズは等しく、後者は、前者よりも小さい。
図10A及び
図10Bに示されるように、各平部材(55a~55g)の厚み(T4~T10)は、T4>T5=T6=T7=T8=T9=T10である。
【0043】
図11Aは、
図10Aの模式的なC-C線断面図であり、
図11Bは、
図10Bの模式的なD-D線断面図である。
図11A及び
図11Bに示されるように、各平部材(55a~55g)の開口部(551a~551g)は、上下方向(z方向)に関し、少なくとも一部が他の開口部と重なるように形成され、各平部材の開口部のそれぞれの開口中心位置は、上下方向(z方向)の直線上で重なる。開口部(551a~551g)は、吸引機構(図示略)に吸引または排気されるエアの吸着路を形成する。
図11Aに示されるように、開口部(551a~511c、551e~551g)の奥行方向(y方向)における長さは等しく(即ち、L13=・・・=L13)、開口部551dの奥行方向(y方向)における長さよりも短い(即ち、L14>L13)。第一サイド上面平部材55bの奥行方向(y方向)における長さは、中間平部材55dの開口部551dの奥行方向(y方向)における長さと等しい(即ち、L14=L14)。第二サイド下面平部材55fの奥行方向(y方向)における長さは、中間平部材55dの開口部551dの奥行方向(y方向)における長さと等しい(即ち、L14=L14)。
図11Bに示されるように、開口部(551a~511c、551e~551g)の幅方向(x方向)における長さは等しく(即ち、L15=・・・=L15)、開口部551dの幅方向(x方向)における長さよりも短い(即ち、L16>L15)。第一サイド上面平部材55bの幅方向(x方向)における長さは、中間平部材55dの開口部551dの幅方向(x方向)における長さと等しい(即ち、L16=L16)。第二サイド下面平部材55fの幅方向(x方向)における長さは、中間平部材55dの開口部551dの幅方向(x方向)における長さと等しい(即ち、L16=L16)。
このように、開口部(551a~551c、551e~551g)のサイズは等しく、開口部551dのサイズは、開口部(551a~551c、551e~551g)のサイズよりも大きい。また、第一サイド上面平部材55bの外形サイズは、中間平部材55dの開口部551dのサイズと等しく、第二サイド下面平部材55fの外形サイズは、中間平部材55dの開口部551dのサイズと等しい。
【0044】
(第六実施形態)
移送装置用ハンドの第六実施形態について説明する。第六実施形態は、吸着部の第二サイド平部材の厚さが上端平部材の厚さと同じである点のみ第五実施形態と相違し、その他の構成は第五実施形態と同様である。以下、第六実施形態の吸着部について説明する。
図12は、第六実施形態に係る吸着部56の構成を示す模式的な斜視図である。
図12に示されるように、吸着部56は、上端平部材56a、第一サイド上面平部材56b、第一サイド平部材56c、中間平部材56d、第二サイド平部材56e、第二サイド下面平部材56f、及び下端平部材56gの7個の平部材が積層されて成る。
第六実施形態の吸着部56では、外形サイズについて、上端平部材56a=第一サイド平部材56c=中間平部材56d=第二サイド平部材56e=下端平部材56g>第一サイド上面平部材56b=第二サイド下面平部材56fである。開口部のサイズについて、中間平部材56d>上端平部材56a=第一サイド上面平部材56b=第一サイド平部材56c=第二サイド平部材56e=第二サイド下面平部材56f=下端平部材56gである。厚さについて、上端平部材56a=第二サイド平部材56e>第一サイド上面平部材56b=第一サイド平部材56c=中間平部材56d=第二サイド下面平部材56f=下端平部材56gである。
【0045】
(第七~第十実施形態)
移送装置用ハンドの第七~第十実施形態について説明する。第七~第十実施形態は、吸着部の下端平部材のみ第五実施形態と相違し、その他の構成は第五実施形態と同様である。以下、第七~第十実施形態の吸着部について説明する。
図13~
図16は、第七~第十実施形態に係る吸着部(57~60)の構成を示す模式的な斜視図である。
図13に示すように、第七実施形態の吸着部57は、下端平部材57gを有し、下端平部材57gは、2個の丸穴形状の開口部(571g、571g)を有する。
図14に示すように、第八実施形態の吸着部58は、下端平部材58gを有し、下端平部材58gは、1個の長穴形状の開口部581gを有する。
図15に示すように、第九実施形態の吸着部59は、下端平部材59gを有し、下端平部材59gは、15個の小さな丸穴形状の開口部591gを有する。
図16に示すように、第十実施形態の吸着部60は、下端平部材60gを有し、下端平部材60gは、4個の小さな矩形形状の開口部601gを有する。
【0046】
以下、第一~第十実施形態の実施例、比較例、及び検証結果を説明する。なお、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
初めに、第一実施形態の実施例1a~1dを説明する。なお、x方向にX(mm)でありy方向にY(mm)である場合、「X×Y(mm)」と表記する。
(実施例1a)
上端平部材51a:外形サイズを75×130mm、開口部のサイズを35×90mm、厚さを2.0mmとし、硬度をショアA60~65のニトリルゴム(NBR)により構成した。
緩衝平部材51b:外形サイズを62×120mm、開口部のサイズを42×100mm、厚さを5.0mmとし、硬度を25%圧縮荷重5.3N/cm2のクロロプレンゴムスポンジにより構成した。
下端平部材51c:外形サイズを75×130mm、開口部のサイズを35×90mm、厚さを0.5mmとし、硬度をショアA60~65のニトリルゴム(NBR)(により構成した。
(実施例1b)
上端平部材51a:実施例1aと同様にして構成した。
緩衝平部材51b:実施例1aと同様にして構成した。
下端平部材51c:外形サイズ、開口部のサイズ、及び厚さを実施例1aと同様にし、硬度をショアA50のシリコンゴムにより構成した。
(実施例1c)
上端平部材51a:外形サイズ、開口部のサイズ、及び厚さを実施例1aと同様にし、硬度をショアA50のシリコンゴムにより構成した。
緩衝平部材51b:実施例1aと同様にして構成した。
下端平部材51c:外形サイズ、開口部のサイズ、及び厚さを実施例1aと同様にし、硬度をショアA50のシリコンゴムにより構成した。
(実施例1d)
上端平部材51a:実施例1aと同様にして構成した。
緩衝平部材51b:外形サイズ、開口部のサイズ、及び厚さを実施例1aと同様にし、硬度を25%圧縮荷重2.16N/cm2のEPDM(Ethylene-Propylene-Diene Methylene linkage)の発泡体により構成した。
下端平部材51c:実施例1aと同様にして構成した。
【0047】
第二実施形態の実施例2a~2dを説明する。
(実施例2a)
上端平部材52a:実施例1aと同様にして構成した。
緩衝平部材52b:厚さを実施例1aと同様にし、外形サイズを55×110mmにし、開口部のサイズを35×90mmにし、硬度を25%圧縮荷重2.16N/cm2のEPDM(Ethylene-Propylene-Diene Methylene linkage)の発泡体により構成した。
下端平部材52c:実施例1aと同様にして構成した。
(実施例2b)
上端平部材52a:実施例1aと同様にして構成した。
緩衝平部材52b:厚さを実施例1aと同様にし、外形サイズを55×110mmにし、開口部のサイズを35×90mmにし、硬度を25%圧縮荷重0.39N/cm2のEPDM(Ethylene-Propylene-Diene Methylene linkage)の発泡体により構成した。
下端平部材52c:実施例1aと同様にして構成した。
(実施例2c)
上端平部材52a:外形サイズ、開口部のサイズ、及び厚さを実施例1aと同様にし、硬度をショアA50のシリコンゴムにより構成した。
緩衝平部材52b:厚さを実施例1aと同様にし、外形サイズを55×110mmにし、開口部のサイズを35×90mmにし、硬度を25%圧縮荷重2.16N/cm2のEPDM(Ethylene-Propylene-Diene Methylene linkage)の発泡体により構成した。
下端平部材52c:外形サイズ、開口部のサイズ、及び厚さを実施例1aと同様にし、硬度をショアA50のシリコンゴムにより構成した。
(実施例2d)
上端平部材52a:外形サイズ、厚さ、及び材料を実施例1aと同様にし、開口部のサイズを42×100mmにして構成した。
緩衝平部材52b:実施例1aと同様にして構成した。
下端平部材52c:外形サイズ、厚さ、及び材料を実施例1aと同様にし、開口部のサイズを42×100mmにして構成した。
【0048】
第三実施形態の実施例3を説明する。
(実施例3)
上端平部材53a:外形サイズ、開口部のサイズ、及び材料を実施例1aと同様にし、厚さを0.5mmにして構成した。
緩衝平部材53b:厚さを実施例1aと同様にし、外形サイズを55×110mmにし、開口部のサイズを35×90mmにし、硬度を25%圧縮荷重2.16N/cm2のEPDM(Ethylene-Propylene-Diene Methylene linkage)の発泡体により構成した。
下端平部材53c:実施例1aと同様にして構成した。
【0049】
第四実施形態の実施例4を説明する。
(実施例4)
緩衝平部材54b:厚さを実施例1aと同様にし、外形サイズを55×110mmにし、開口部のサイズを35×90mmにし、硬度を25%圧縮荷重2.16N/cm2のEPDM(Ethylene-Propylene-Diene Methylene linkage)の発泡体により構成した。
下端平部材54c:実施例1aと同様にして構成した。
【0050】
第五実施形態の実施例5a~5bを説明する。
(実施例5a)
第一サイド上面平部材55b及び第二サイド下面平部材55fの外形サイズを55×110mmとし、第一サイド上面平部材55b及び第二サイド下面平部材55f以外の各平部材(55a、55c~55e、55g)の外形サイズを75×130mmとした。
中間平部材55dの開口部のサイズを55×110mmとし、中間平部材55d以外の各平部材(55a~55c、55e~55g)の開口部のサイズを35×90mmとした。
上端平部材55aの厚さを2.0mmとし、上端平部材55a以外の各平部材(55b~55g)の厚さを0.5mmとした。
全ての平部材(55a~55g)を硬度がショアA60~65のニトリルゴム(NBR)により構成した。
(実施例5b)
下端平部材55gを硬度がショアA50のシリコンゴムにより構成し、下端平部材55g以外の各平部材(55a~55f)を硬度がショアA60~65のニトリルゴム(NBR)により構成し、その他の点は、実施例5aと同様にして構成した。
【0051】
第六実施形態の実施例6を説明する。
(実施例6)
第二サイド平部材55eの厚さを上端平部材55aの厚さと同じ2.0mmとし、その他の点は、実施例5aと同様にして構成した。
【0052】
第七~第十実施形態の実施例7~10を説明する。
(実施例7)
下端平部材57gの開口部571gを直径38mmの2個の円とし、各円の中心を60mmだけ離間した。その他の点は実施例5aと同様にして構成した。
(実施例8)
下端平部材58gの開口部581gを36×96mm(36mmは右端から左端までの長さ、96mmは上端から下端までの長さ)の長穴形状とし、その他の点は実施例5aと同様にして構成した。
(実施例9)
下端平部材59gの開口部591gを直径10mmの15個の円とし、隣り合う2つ円の中心間の距離を、x方向に20mm、y方向に22mmだけ離間した。その他の点は実施例5aと同様にして構成した。
(実施例10)
下端平部材60gの開口部601gを35×15mmの4個の矩形形状とし、隣り合う2個の矩形形状の対向する長辺の距離を10mmだけ離間した。その他の点は実施例5aと同様にして構成した。
【0053】
比較例を説明する。
(比較例)
比較例の吸着部90を
図17に示す。
図17に示されるように、比較例の吸着部90は、開口部911を有する一つの平部材91から成る。平部材91は、硬度がショアA60~65のニトリルゴム(NBR)により構成され、外形サイズは75×130mm、開口部911のサイズは35×90mm、厚さは5.0mmである。
【0054】
(硬度)
続いて、硬度について説明する。
実施例1a~1c、2dの緩衝平部材は、25%圧縮荷重で5.3N/cm2の硬度を有するクロロプレンゴムスポンジから成る。実施例1d、2a、2c、3~4の緩衝平部材は、25%圧縮荷重で2.16N/cm2の硬度を有するEPDMの発泡体(当段落において「EPDMの発泡体1」と表記する)から成る。実施例2bの緩衝平部材は、25%圧縮荷重で0.39N/cm2の硬度を有するEPDMの発泡体(当段落において「EPDMの発泡体2」と表記する)から成る。即ち、クロロプレンゴムスポンジの硬度はEPDMの発泡体1の硬度よりも大きく、EPDMの発泡体1の硬度はEPDMの発泡体2の硬度よりも大きい(クロロプレンゴムスポンジ>EPDMの発泡体1>EPDMの発泡体2)。
また、実施例1a~1c、2dの緩衝平部材のクロロプレンゴムスポンジの硬度は、ショアA10~12である。ニトリルゴム(NBR)の硬度はショアA60~65である。シリコンゴムの硬度はショアA50である。即ち、ニトリルゴム(NBR)の硬度はシリコンゴムの硬度より大きく、シリコンゴムの硬度はクロロプレンゴムスポンジの硬度より大きい(ニトリルゴム(NBR)>シリコンゴム>クロロプレンゴムスポンジ)。
よって、硬度に関し、ニトリルゴム(NBR)>シリコンゴム>クロロプレンゴムスポンジ>EPDMの発泡体1>EPDMの発泡体2である。
【0055】
(検証結果)
上記の各実施例及び比較例の検証結果について説明する。模擬卵が入った容器を各実施例及び比較例の吸着部に吸着させ、輸送用ラックへ積み込む動作を行った。移送速度はオーバーライド値「P%」を用いて1800×P(%)に設定し、P=50%から開始し(即ち、1800×50(%)=900mm/sから開始)、吸着部が容器を落とさないかを検証した。P=50%で吸着部が容器を落とさなかった場合、Pを10%上昇させ(即ち、1800×60(%)=1080mm/s)、吸着部が容器を落とさないかをさらに検証した。このように、Pを10%ずつ上昇させ、吸着部が容器を落とす速度を記録した。
吸着部が容器を落とした場合、どの速度で落とすかを、速度を変えて計4回検証した。
P=100%まで上昇させても(即ち、1800×100(%)=1800mm/s)吸着部が容器を落とさなかった場合、さらに、高さ方向(
図1のz方向)に延伸する軸を中心に移送装置用ハンド1を回転する回転運動を加えて積み込み動作を行い、上記と同様に検証した(即ち、移送速度を1800×P(%)のP=50%から開始しPを10%ずつ上昇させた)。
吸引機構(図示略)は真空ポンプを使用し、真空ポンプの圧力を-60kPaに設定した。
容器は以下の2種類を用いた。
1.模擬卵10個入り、上面にシール無し、プラスチック製、総計635gの容器
2.模擬卵12個入り、上面にシール有り、プラスチック製、総計750gの容器
容器は上面に凹凸を有し、容器の上面にシールを貼った場合、シールにより上面が平坦になったことを意味する。容器の上面にシールを貼らなかった場合、上面に凹凸が存在することを意味する。
なお、一部の実施例(具体的には、実施例2c及び5b)については、3.模擬卵10個入り、上面にシール無し、パルプ製、総計650gの容器についても検証を行った。
【0056】
図18~
図20に各実施例及び比較例の検証結果を示す。以下では、記載の簡略化のために、模擬卵の個数を「10個/12個」、上面のシールの有無を「上貼り有/無」、プラスチック製を「プラ」、パルプ製を「パルプ」、回転運動の有無を「回転有/無」と表記する。なお、図面では吸着部が容器を落とした場合、落とした速度の最小値のみを示した。
【0057】
各実施例1a~1d、2a~2d、3~4、5a~5b、6~10と比較例とを比較する。各実施例では、少なくとも900mm/sの搬送速度で容器を搬送できた。これに対し、比較例では、吸着部が容器を保持できず、測定不能だった(即ち、搬送できなかった)。これは、比較例のように単に吸着部を一体物として形成すると、吸着力が弱まり、搬送不能となるのに対し、各実施例のように吸着部を複数の平部材による積層構造とすると、吸着力が向上し、容器を搬送可能となることを意味する。
より具体的には、実施例1a~1d、2a~2d、3、4のように、吸着部が緩衝平部材を含むことにより、吸着力が向上した。これは、硬度の低い材料から成る緩衝平部材により、吸着時や移送時の衝撃を吸収できるためである。
また、緩衝平部材を含まない吸着部であっても、実施例5a~5b、6~10のように、開口部の大きい中間平部材を開口部の小さい第一サイド平部材と第二サイド平部材との間に挟むことで、吸着力が向上した。これは、第一サイド平部材および第二サイド平部材の開口部の周りにある周囲部が、中間平部材の開口部内に侵入可能となり、吸着時や移送時の衝撃を吸収できるためである。
【0058】
また、各実施例のように、外形サイズの異なる平部材を含む複数の平部材が積層されることにより、吸着力が向上した。例えば、実施例1bでは、外形サイズが同じである上端平部材51aと下端平部材51cとの間に、外形サイズが小さい緩衝平部材51bが配置される。実施例5bでは、外形サイズが同じである上端平部材55aと第一サイド平部材55cとの間に、外形サイズが小さい第一サイド上面平部材55bが配置され、外形サイズが同じである第二サイド平部材55eと下端平部材55gとの間に、外形サイズが小さい第二サイド下面平部材55fが配置される。このように、外形サイズの異なる平部材が重なることにより、比較例のような一体物に比べて吸着部の自由度が上がり、吸着時や移送時の衝撃を吸収できる。
【0059】
また、実施例3を除く各実施例のように、下端平部材の厚みを上端平部材の厚みに比べて小さくすることにより、吸着力が向上した。これは、厚みが小さい下端平部材が容器の上面に接触するため、容器の上面に凹凸が存在する場合であっても、下端平部材が凹凸に貼り付くことにより容器に密着して移送できるためである。
【0060】
実施例1aと1dとを比較する。実施例1aと1dとは、緩衝平部材の硬度のみが相違する。実施例1aの緩衝平部材の硬度は、25%圧縮荷重で5.3N/cm2であり、実施例1dの緩衝平部材の硬度は、25%圧縮荷重で2.16N/cm2であり、前者は後者に比べて大きい。実施例1aでは、「10個、上貼り無、プラ」の容器を、「回転無」でP=90%(即ち1620mm/s)で2回、P=100%(即ち1800mm/s)で2回落とした。これに対し、実施例1dでは、「10個、上貼り無、プラ」の容器を、「回転無」及び「回転有」の双方でP=100%にしても落とさなかった。これは、緩衝平部材の硬度が小さいほど緩衝平部材が衝撃を吸収しやすくなり、搬送速度を速くできることを意味する。
実施例2aと2bとを比較する。実施例2aと2bとは、緩衝平部材の硬度のみが相違する。実施例2aの緩衝平部材の硬度は、25%圧縮荷重で2.16N/cm2であり、実施例2bの緩衝平部材の硬度は、25%圧縮荷重で0.39N/cm2であり、前者は後者に比べて大きい。実施例2aでは吸着部が容器を落とすことは無かった。実施例2bでは、「10個、上貼り無、プラ」の容器を、「回転有」でP=90%(即ち1620mm/s)で4回落とし、「12個、上貼り有、プラ」の容器を、「回転無」でP=60%(即ち1080mm/s)で4回落とした。これは、緩衝平部材の硬度が小さ過ぎると、緩衝平部材が柔らかく、容器に吸着する際につぶれてしまい、衝撃を吸収しにくくなり、緩衝材としての機能が低減するためである。
即ち、緩衝平部材の硬度は、25%圧縮荷重で2.16~5.3N/cm2が好ましい。
【0061】
実施例1aと1bとを比較する。実施例1aと1bとは、下端平部材の硬度のみが相違する。実施例1aの下端平部材の硬度はショアA60~65であり、実施例1bの下端平部材の硬度はショアA50であり、前者は後者に比べて大きい。実施例1aでは、「10個、上貼り無、プラ」の容器を、「回転無」でP=90%(即ち1620mm/s)で2回、P=100%(即ち1800mm/s)で2回落とした。これに対し、実施例1bでは、「10個、上貼り無、プラ」の容器を、「回転無」及び「回転有」の双方でP=100%にしても落とさなかった。これは、実施例1bの下端平部材が実施例1aの下端平部材に比べて、硬度が小さいため容器の凹凸に馴染みやすく、吸着力が高くなったためである。実施例5aと実施例5bとを比較しても、「10個、上貼り無、プラ」の容器の搬送について同様の結果が生じている。
【0062】
実施例1a~1dと実施例2a~2dとを比較する。実施例1a~1dのように、緩衝平部材の開口部のサイズを上端平部材及び下端平部材の開口部のサイズより大きくした場合であっても、実施例2a~2dのように、上端平部材、緩衝平部材、及び下端平部材の開口部のサイズを全て同じ大きさにした場合であっても、概ね搬送速度を速くすることができた。
【0063】
実施例2a、3、及び4を比較する。実施例2a及び3は上端平部材の厚みのみが相違し、実施例2aの上端平部材の厚みは実施例3の上端平部材の厚みより大きい。実施例4は上端平部材を有さない(即ち、上端平部材の厚みが0)。実施例2a、3、4では、吸着部が容器を落とすことは無かった(なお、実施例2aの「10個、上貼り無、プラ」の容器の「回転有」の検証は、簡略化のために実施していない)。これは、ロボットアーム側に位置する(ハンド本体3の下面に設置される)上端平部材の厚さの相違は搬送速度に影響しないことを意味する。
【0064】
(作用効果)
本実施形態によれば、従来の蛇腹状の吸着パッドよりも、上下方向における長さが短い吸着部を実現できる。例えば、吸着部の上下方向の長さは、実施例1a~1d、2a~2dでは7.5mmであり、実施例3では6.0mmであり、実施例4では5.5mmであり、実施例5a~5b、7~10では5.0mmであり、実施例6では6.5mmである。図示しないが、従来の蛇腹状の吸着パッドは、上下方向に30mm~80mmの長さを有する。本実施形態によれば、一例として、吸着部の上下方向の長さを5.0mm~7.5mmとすることができ、従来の蛇腹状の吸着パッドに比べ、22.5~75.0mm薄くすることができる。これにより、本実施形態によれば、吸着部及びハンド本体3の上下方向の長さ(より具体的には吸着部及び薄板部35の上下方向の長さ、または、吸着部、薄板部35、及び吸引取付部36の上下方向の長さ)を従来よりも薄くすることができる。一例として、従来の蛇腹状の吸着パッドの上下方向の長さ(30mm)未満とすることができる。よって、容器を輸送用ラックへ移送するときに、輸送用ラックのフレームや棚に吸着部が接触することを抑制できる。即ち、上下方向に空間の制限がある容器収容体にも所望の数だけ容器を載置することができる。
【0065】
さらに、本実施形態によれば、
図2を参照して説明したように、アーム接続部7及び吸引機構接続部10は、ハンド本体3の第二の辺32から距離d6離間するまでの矩形領域に配置されない。即ち、当該矩形領域を、上下方向(z方向)に薄く構成できる(上下方向の占有空間を小さくできる)。これにより、移送装置が容器を輸送用ラックに載置する際に、輸送用ラックのフレームや折り畳まれた棚にアーム接続部7やロボットアームが接触することを抑制できる。よって、
図21に示すように、移送装置100が輸送用ラックRの折り畳まれた棚R1の直下にも容器を載置することが可能になる。
さらに、本実施形態によれば、
図2を参照して説明したように、アーム接続部7及び吸引機構接続部10は、ハンド本体3の左端から距離d4離間するまでの矩形領域にも、ハンド本体3の右端から距離d5離間するまでの矩形領域にも配置されない。即ち、当該矩形領域を上下方向(z方向)に薄く構成できる(上下方向の占有空間を小さくできる)。これにより、
図22に示すように、移送装置用ハンド1を上下方向(z方向)に延伸する軸を回転軸として
図21の状態から90°回転させた状態で容器を積み込むことも可能となる。即ち、本実施形態によれば、容器を載置する向きも自由に設定可能である。
【0066】
(別実施形態)
〈1〉第一実施形態~第三実施形態において、吸着部は、少なくとも上端平部材、緩衝平部材、及び下端平部材の3つの平部材を含めばよく、他の平部材をさらに含んでも構わない。第四実施形態~第十実施形態も同様に、吸着部は、他の平部材をさらに含んでも構わない。
【0067】
〈2〉第五実施形態において、吸着部は、少なくとも第一サイド平部材、中間平部材、平部材、及び第二サイド平部材からなる第一平板ユニットを少なくとも含めばよく、他の平部材を含まなくても構わない。
【0068】
〈3〉第五実施形態において、各平部材の厚さについて、上端平部材の厚さ(T4)>上端平部材以外の各平部材の厚さ(T5=・・・=T10)としているが、これに限らず、例えば、下端平部材の厚さ(T10)>下端平部材以外の各平部材の厚さ(T4=・・・=T9)としても構わない。各平部材の厚さを上記のように形成し、他の構成は実施例5aと同様にして吸着部を構成したとき、850gの容器を900mm/sの搬送速度で移送できた。
【0069】
〈4〉第一実施形態~第三実施形態において、上端平部材及び下端平部材の外形サイズが緩衝平部材の外形サイズよりも大きいが、上端平部材及び下端平部材の外形サイズが緩衝平部材の外形サイズよりも小さくても構わない。また、上端平部材及び下端平部材の外形サイズは必ずしも同一である必要はなく、緩衝平部材に比べて外形サイズが大きいか、あるいは小さければよい。他の実施形態も同様である。
【0070】
〈5〉第六実施形態において、第二サイド平部材の厚さが上端平部材の厚さと同じになっているが、上端平部材と下端平部材との間の平部材のうちの任意の平部材の厚さを上端平部材の厚さと同じとしても構わないし、上端平部材の厚さより大きくしても構わない。上端平部材の厚さ未満としても構わない。
【0071】
〈6〉吸着部を上端平部材、小サイズ平部材、下端平部材の3つの平部材から構成しても構わない。この場合、上端平部材及び下端平部材の外形サイズと開口部のサイズとが同一であり、小サイズ平部材の外形サイズは、上端平部材及び下端平部材の外形サイズより小さくても構わない。以下のように上端平部材、小サイズ平部材、下端平部材を構成したとき、850gの容器を900mm/sの搬送速度で移送できた。
上端平部材:外形サイズを75×130mm、開口部のサイズを35×90mm、厚さを2.0mm、硬度をショアA60~65のニトリルゴム(NBR)により構成した。
小サイズ平部材:外形サイズを55×110mm、開口部のサイズを35×90mm、厚さを0.5mm、硬度をショアA60~65のニトリルゴム(NBR)により構成した。
下端平部材:外形サイズを75×130mm、開口部のサイズを35×90mm、厚さを0.5mm、硬度をショアA60~65のニトリルゴム(NBR)により構成した。
【0072】
〈7〉各実施形態において、アーム接続部7は、ハンド本体3の第一の辺(31、31)との間に間隔を設けないように、ハンド本体3の第一の辺(31、31)寄りに設置されているが、これに限らず、ハンド本体3の第一の辺(31、31)との間に間隔を設けて配置されても構わない。即ち、アーム接続部7及び吸引機構接続部10が、第一の辺(31、31)から所定の距離離間するまで配置されないように構成しても構わない。また、アーム接続部7及び各吸引機構接続部10は、幅方向(x方向)に関し、ハンド本体3の両側から間隔を設けて設置されているが、これに限らず、ハンド本体3の少なくとも片側から間隔を設けて設置されればよい。より一般的には、アーム接続部7及び吸引機構接続部10が配置されていない薄板部35及び/または吸引取付部36の上面の(矩形)領域が、少なくともハンド本体3の端部から所定の距離だけ存在すればよい。
【符号の説明】
【0073】
1 移送装置用ハンド
100 移送装置
3 ハンド本体
31 第一の辺
35 薄板部
36 吸引取付部
5 吸着部
51a、52a、53a、54a、55a、56a 上端平部材
51b、52b、53b、54b 緩衝平部材
51c、52c、53c、54c、55g、56g、57g、58g、59g、60g 下端平部材
55b、56b 第一サイド上面平部材
55c、56c 第一サイド平部材
55d、56d 中間平部材
55e、56e 第二サイド平部材
55f、56f 第二サイド下面平部材
511a、511b、511c 開口部
521a、521b、521c 開口部
531a、531b、531c 開口部
541b、541c 開口部
551a、551b、551c、551d、551e、551f、551g、571g、581g、591g、601g 開口部
7 アーム接続部