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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ロボット用保護カバー
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B25J19/00 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021155427
(22)【出願日】2021-09-24
(65)【公開番号】P2023046697
(43)【公開日】2023-04-05
【審査請求日】2023-08-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第30条第2項適用、令和3年5月19日、取引先(株式会社日伝)への納品
(73)【特許権者】
【識別番号】593208751
【氏名又は名称】株式会社ナベル
(74)【代理人】
【識別番号】100094156
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 民安
(72)【発明者】
【氏名】永井 規夫
(72)【発明者】
【氏名】八神 祐介
(72)【発明者】
【氏名】牧 征幸
(72)【発明者】
【氏名】西島 大世
(72)【発明者】
【氏名】山下 将史
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-079191(JP,U)
【文献】特開平11-033973(JP,A)
【文献】特開2007-311592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのアームを備えたロボットに装着され可撓性樹脂シートからなるロボット用保護カバーであって、上記ロボットの特定の部位の外側面を覆い筒状に成形された第1の筒状部を備えた第1の保護カバーと、
上記特定の部位に対して基端が回動自在に取り付けられたアームの外側面を覆い筒状に成形されてなるとともに、先端側は上記第1の筒状部の先端側の内側に配置される第2の筒状部を備えた第2の保護カバーと、を有してな
上記第2の筒状部の先端側内周面には、内周面の全部又は一部が上記アームの外側面に密着する可撓性密着部材が取り付けられてなるとともに、
上記第1の筒状部の周回り方向の長さと、上記第2の筒状部の周回り方向の長さとは、該第1の筒状部の先端側内周面と第2の筒状部の先端側外周面とが互いに摺接する程度の僅かな隙間を介して重ね合わされる寸法とされてなり、上記第1の筒状部の先端側内周面と上記第2の筒状部の先端側外周面との何れか一方又は双方であって、該第1の筒状部と第2の筒状部とが互いに重なり合う部位には、摩擦抵抗を軽減する低摩擦シートが配置されてなることを特徴とするロボット用保護カバー。
【請求項2】
前記第1の筒状部の先端側中途部の内周面であって、前記第2の筒状部の先端から離間した部位には、内周面の全部又は一部が前記ロボットの特定の部位の外側面に密着する第2の可撓性密着部材が取り付けられてなることを特徴とする請求項1のロボット用保護カバー。
【請求項3】
前記第2の筒状部の先端は、前記ロボットの特定の部位とアームとの境界線まで延出されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の何れかのロボット用保護カバー。
【請求項4】
前記第2の可撓性密着部材の前記第1の筒状部側の端部には、前記ロボットの特定の部位とアームとの境界線を跨いで更に前記第1の可撓性密着部材近傍まで延出された延出部が形成されてなり、この延出部の内周面は、前記ロボットの特定の部位の外周面及び前記アームの外周面よりも僅かに離間してなることを特徴とする請求項3記載のロボット用保護カバー。
【請求項5】
前記第1の保護カバー及び第2の保護カバーは、何れも電磁波をシールドする電磁波シールド層を含んでなることを特徴とする請求項1乃至4記載の何れかのロボット用保護カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接用・塗装用・切削用或いは医療用その他のロボットに装着されるロボット用保護カバーであって、特にアームを備えたロボットに装着されるロボット用保護カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットは、製造現場や作業現場において広く活用されており、上記製造現場では、切削作業や溶接作業、塗装作業ばかりではなく、製造され搬送装置により搬送されてきた部品又は製品をピックアップする際にも使用されている。そして、こうした各種のロボットは、上方に起立した脚部又は支柱の先端に、駆動軸を介してアームが取り付けられ、このアームは駆動モータの駆動力により回動する構成を採用しているものが多く、中には、上記アームに対して更に別個のアームが回動自在に取り付けられているものも存在する。
【0003】
ところで、上記ロボットは各種の用途で使用されることから、その用途や使用環境から、該ロボットの全部又は一部を覆うロボット用保護カバーが提案され使用されている。こうしたロボット用保護カバーは、例えば、塗装用のロボットであれば、塗装の際に飛散した塗料がロボット(アーム)に付着することを防止することを主目的とし、溶接用のロボットであれば、溶接の際に飛散したスパッタがロボットに付着することを防止することを主目的としているが、こうした主目的以外にも、このロボット用保護カバーは、作業現場における塵埃やスパッタ等の異物が、上記アームの駆動軸に付着することにより、該アームの高精度な動作に悪影響を与え、或いは駆動軸に塗布された潤滑油が外部に漏出したりすることを防止することも目的としている。例えば、特開2010-274373号公報(特許文献1)に開示されたロボット用保護カバーは、複雑な形状からなるロボット全体を覆い、また該ロボットに対して容易に着脱可能とするために、ロボットを覆うカバーを複数に分割したものである。具体的には、第一モータ部、第一アーム、第二モータ部、第二アーム、軸部材を主な構成要素とするロボットに対して、カバーを、上記第一モータ部を覆う第一カバー、上記第一アームを覆う第二カバー、上記第二モータ部を覆う第三カバー、上記第二アームと軸部材とを覆う第四カバーに分割したものである。そして、上記第一カバーないし第四カバーには、それぞれスリーブを設け、特定のスリーブの外側又は内側に他のスリーブが挿入された状態で上記第一モータ部や第一アーム部等に取り付けられている。したがって、上記従来のロボット用保護カバーによれば、例えば、上記第一アームの駆動に伴って第二カバーが回転した場合であっても、上記第一モータ部を覆う第一カバーは第一アームを覆う第二カバーとは別体であることから、その影響は受けないこととなるばかりか、互いに重なり合う特定のスリーブと他のスリーブとにより第一アームの回転軸も外部に露出することがない。
【0004】
しかし、上述した従来のロボット用保護カバーでは、上記回転軸は、互いに重なり合う特定のスリーブと他のスリーブとにより覆われているものの、該特定のスリーブと他のスリーブとの間は密着しているものではなく、所定の空間が形成されていることから、こうした空間から塵埃等の異物がカバー内に侵入する可能性が大きく、また、ロボットの駆動軸に塗布された潤滑油が外部に漏出する危険性も危惧される。
【0005】
そこで、本願出願人は、こうした課題を解決するために、ロボットの特定の部位に装着され筒状に成形された第1の筒状部を備えた第1のカバーと、上記特定の部位に対して基端が回動自在に取り付けられたアームに装着されるとともに筒状に成形された第2の筒状部を備えた第2のカバーとを有し、上記第1の筒状部の内周又は外周と、上記第2の筒状部の外周又は内周とには、それぞれ互いに摺接する摺接面をそれぞれ備えた摺接部材が各々相対的に固定手段を介して固定されたロボット用保護カバーを提案した(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-274373号公報
【文献】特許第6850007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2にて提案したロボット用保護カバーでは、例えば第2の保護カバーを第1の保護カバーから取り外した場合のように、上記それぞれの摺接部材が互いに離間した場合には、再び装着することは困難となる。特に、第1のカバーに固定された摺接部材を構成する摺接面と、前記第2のカバーに固定された摺接部材を構成する摺接面とが、該第1のカバーと第2のカバーとを互いに離間させる力が作用した際には、互いに密着し係合し合う位置関係とされてなる場合には、この離間した第2の保護カバーを元の状態に復帰させる作業は極めて困難となる場合が多い。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来のロボット用保護カバーが有する課題を解決するために提案されたものであり、外部からの異物が内部に侵入することを更に防止するのみならず、上記第1の保護カバー又は第2のカバーの何れかをロボットから取り外しても、再び容易に該ロボットに装着することができる新規なロボット用保護カバーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであり、第1の発明(請求項1記載の発明)は、少なくとも1つのアームを備えたロボットに装着され可撓性樹脂シートからなるロボット用保護カバーであって、上記ロボットの特定の部位の外側面を覆い筒状に成形された第1の筒状部を備えた第1の保護カバーと、上記特定の部位に対して基端が回動自在に取り付けられたアームの外側面を覆い筒状に成形されてなるとともに、先端側は上記第1の筒状部の先端側の内側に配置される第2の筒状部を備えた第2の保護カバーと、を有してな、上記第2の筒状部の先端側内周面には、内周面の全部又は一部が上記アームの外側面に密着する可撓性密着部材が取り付けられてなるとともに、上記第1の筒状部の周回り方向の長さと、上記第2の筒状部の周回り方向の長さとは、該第1の筒状部の先端側内周面と第2の筒状部の先端側外周面とが互いに摺接する程度の僅かな隙間を介して重ね合わされる寸法とされてなり、上記第1の筒状部の先端側内周面と上記第2の筒状部の先端側外周面との何れか一方又は双方であって、該第1の筒状部と第2の筒状部とが互いに重なり合う部位には、摩擦抵抗を軽減する低摩擦シートが配置されてなることを特徴とするものである。
【0010】
上記第1の発明に係るロボット用保護カバーでは、第1の保護カバーを構成する第1の筒状部の先端側の内側に上記第2の保護カバーを構成する第2の筒状部の先端側が位置する。したがって、上記第1の筒状部の先端側と第2の筒状部の先端側は互いに重なり合って状態でロボットに装着される。なお、上記第1の筒状部の周回り方向の長さと、第2の筒状部の周回り方向の長さは、該第1の筒状部の先端側内周面と第2の筒状部の先端側外周面とが互いに摺接する程度の僅かな隙間を介して重ね合わされる寸法とされている。そして、この発明では、上記第2の筒状部の先端側内周面には、内周面の全部又は一部が上記アームの外側面に密着する可撓性密着部材が取り付けられている。この可撓性密着部材の素材は、上記アームの外側面に特別な接着剤や粘着剤を用いることなく密着できる素材であれば、各種の素材を使用することができるが、例えばCR(ネオプレン)ゴム、NBR(アクロニトリル・ブタジエン)ゴム、HNBR(水素化ニトリルゴム)ゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム等を使用することができ、また、該可撓性密着部材は、シート状又は発砲状(スポンジ状)であっても良い。また、上記可撓性密着部材は、内周面の全部又は一部が上記アームの外側面に密着するものであれば良い。換言すれば、上記可撓性密着部材は、それ全体が特定の素材により一体成形され、その内周面全体が上記アームの外側面に密着するものであっても良いばかりではなく、例えば可撓性を有する長方形の基材の一面(アーム側の面)全体に上記密着する素材を密着層として形成したものや、該基材の長さ方向と同じ方向であってその幅方向の中央に上記密着層として形成したもの、或いは、該基材の長さ方向と同じ方向であってその幅方向に対して互いに並び合う複数の密着層を形成したものであっても良い。さらに、この可撓性密着部材は、電磁波シールド性を有した導電性ゴム又は導電性ポリエチレンフォーム等を使用することも可能であり、こうした素材を使用することにより、ロボットのアーム近傍に電磁波シールド性能を持たせることが可能となる。
【0011】
したがって、この第1の発明に係るロボット用保護カバーによれば、先ず、塵埃やスパッタ等の異物が外部から、上記第1及び第2の保護カバーの内側に侵入することを有効に防止することができ、次に、上記第1の保護カバー又は第2のカバーの何れかをロボットから取り外しても、これらの保護カバーを再びロボットに容易に装着することができ、これらの保護カバーの双方又は一方をロボットから取り外して新たな保護カバーを装着したり該保護カバーを洗浄する等したりすることも可能となる。
【0012】
また、この第1の発明では、上記第1の筒状部の先端側内周面と上記第2の筒状部の先端側外周面との何れか一方又は双方であって、該第1の筒状部と第2の筒状部とが互いに重なり合う部位には、摩擦抵抗を軽減する低摩擦シートが配置されてる。
【0013】
のロボット用保護カバーでは、上記第1の筒状部の先端側内周面と前記第2の筒状部の先端側外周面との何れか一方又は双方であって、該第1の筒状部と第2の筒状部とが互いに重なり合う部位には摩擦抵抗を軽減する低摩擦シートが配置されている。この低摩擦シートは、基材はアラミド繊維又はポリエステル樹脂若しくは超高分子量ポリエチレン等からなる基材の内側面にテフロン樹脂(テフロンは登録商標である)がコーティングされてなるシート状のものを使用することが望ましい。また、上記低摩擦シートは、上述したように、上記第1の筒状部の先端側内周面又は第2の筒状部の先端側外周面の何れか一方に配置されているのみならず、該第1の筒状部の先端側内周面と第2の筒状部の先端側外周面との双方に配置され、それぞれの低摩擦抵抗の低摩擦抵抗面が互いに摺接するように構成されたものであっても良い。
【0014】
したがって、このロボット用保護カバーによれば、先に記載した特定の部位とアームとの一方又は双方が回動する等のロボットの動作に基づいて、上記第1の保護カバーと第2の保護カバーとが互いに相対的に回動した場合であっても、上記低摩擦抵抗部材により、該上記第1の保護カバーを構成する第1の筒状部又は第2の保護カバーを構成する第2の筒状部であって、これらが互いに重ね合わされた部位が撓んだり位置ずれしたりすることを防止することができ、ひいてはロボットを構成するアームの駆動手段又は減速機等の駆動系に不要な負荷を掛ける等の不具合を有効に解消することができる。とりわけ、この発明は、上記第2の筒状部の内周面には、上記アームの外側面に密着する可撓性密着部材が取り付けられていることから、上述したロボットの動作により(例えば、上記アームのみが回動した際)、該第2の筒状部はその取付位置が保持されることが期待されるが、該可撓性密着部材は、接着剤や粘着剤を介して配置されるものではないことから、該ロボットの急激な動作スピードによって第1の筒状部と第2の筒状部との間で急激な摩擦抵抗が生じた場合には、それまで可撓性密着部材を介して密着していた第2の筒状部が位置ずれを生じたり部分的にシワとなったりする等して空間が形成され、この空間から塵埃等が侵入し上記アームに接続された他のアーム又は駆動ヘッド等の関節部内に侵入するおそれがあるところ、上記低摩擦シートが配置されたことによってこうした不具合を有効に解消することができる。
【0015】
また、第の発明(請求項記載の発明)は、上記第1の発明において、前記第1の筒状部の先端側中途部の内周面であって、前記第2の筒状部の先端から離間した部位には、内周面の全部又は一部が前記ロボットの特定の部位の外側面に密着する第2の可撓性密着部材が取り付けられてなることを特徴とするものである。
【0016】
この第の発明では、上記第2の筒状部の内周面に取り付けられた可撓性密着部材以外に、上記第1の筒状部にも第2の可撓性密着部材が取り付けられている。この第2の可撓性密着部材の素材や形状は上記可撓性密着部材と同様であり、その内周面の全部又は一部が前記ロボットの特定の部位の外側面に密着するものである。なお、この第2の可撓性密着部材を上記第1の筒状部の内周面に取り付ける手段は、両面接着テープを用いる場合以外に、リベット等の機械的取付手段を用いても良い。そして、こうした構成に係る第の発明によれば、たとえ上記第1の筒状部と第2の筒状部との間から液体を含めた塵埃等の異物が侵入した場合であっても、該異物は上記第2の可撓性密着部材のよりそれ以上内部に(毛管現象による場合も含めて)侵入することを効果的に防止することができる。
【0017】
また、第の発明(請求項記載の発明)は、上記第1又は第2の発明の何れかにおいて、前記第2の筒状部の先端は、前記ロボットの特定の部位とアームとの境界線まで延出されてなることを特徴とするものである。
【0018】
この第の発明に係るロボット用保護カバーによれば、第1の保護カバーと第2の保護カバーとが互いに重なる部位が増大され、より塵埃等の異物がこのロボット用保護カバーの内部に侵入することを防止することができる。
【0019】
また、第の発明(請求項記載の発明)は、上記第3の発明において、前記第2の可撓性密着部材の前記第1の筒状部側の端部には、前記ロボットの特定の部位とアームとの境界線を跨いで更に前記可撓性密着部材近傍まで延出された延出部が形成されてなり、この延出部の内周面は、前記ロボットの特定の部位の外周面及び前記アームの外周面よりも僅かに離間してなることを特徴とするものである。
【0020】
この第の発明に係るロボット用保護カバーでは、上記ロボットの特定の部位とアームとの境界線の外側は、上記延出部により囲まれることとなることから、塵埃等の異物が上記境界線からロボットの内部にまで侵入することをより一層防止することができる。
【0021】
また、第の発明(請求項記載の発明)は、前記第1乃至第の発明の何れかにおいて、前記第1の保護カバー及び第2の保護カバーは、何れも電磁波をシールドする電磁波シールド層を含んでなることを特徴とするものである。
【0022】
この第の発明に係るロボット用保護カバーを構成する上記電磁波シールド層は、電磁波をシールド(遮蔽)するものであり、第1及び第2の保護カバーの厚さ方向に厚さを有するものであって、該電磁波シールド層は、銅その他の導電性材料によりシート状に成形されてなるものであり、織布又は不織布であっても良い。そして、この第6の発明に係るロボット用保護カバーによれば、上記第1及び第2の保護カバーの内側で発生した電磁波が外部に漏出され、この漏出した電磁波により、ロボットの動作を制御するコントローラその他の電子機器や該ロボット近傍に設置された他の電子機器が破損することを有効に防止することができる。また、上記ロボットの先端に配置されたヘッドによりワークを溶接する際に発生した電磁波が該ロボットの内部に配置されたモータ又は減速機等に悪影響を及ぼすことを有効に防止することも可能となる。
【発明の効果】
【0023】
上記第1の発明(請求項1記載の発明)によれば、塵埃やスパッタ等の異物が外部から、上記第1及び第2の保護カバーの内側に侵入することを有効に防止することができるばかりではなく、上記第1の保護カバー又は第2のカバーの何れかをロボットから取り外しても、これらの保護カバーを再びロボットに容易に装着することができ、これらの保護カバーの双方又は一方をロボットから取り外して新たな保護カバーを装着したり該保護カバーを洗浄する等したりすることも可能となる。
【0024】
また、上記第の発明によれば、先に記載した特定の部位とアームとの一方又は双方が回動する等のロボットの動作に基づいて、上記第1の保護カバーと第2の保護カバーとが互いに相対的に回動した場合であっても、上記低摩擦抵抗部材により、該上記第1の保護カバーを構成する第1の筒状部又は第2の保護カバーを構成する第2の筒状部であって、これらが互いに重ね合わされた部位が撓んだり位置ずれしたりすることを防止することができ、ひいてはロボットを構成するアームの駆動手段又は減速機等の駆動系に不要な負荷を掛ける等の不具合を有効に解消することができる。とりわけ、この第2の発明は、上記第2の筒状部の内周面には、上記アームの外側面に密着する可撓性密着部材が取り付けられていることから、上述したロボットの動作により(例えば、上記アームのみが回動した際)、該第2の筒状部はその取付位置が保持されることが期待されるが、該可撓性密着部材は、接着剤や粘着剤を介して配置されるものではないことから、該ロボットの急激な動作スピードによって第1の筒状部と第2の筒状部との間で急激な摩擦抵抗が生じた場合には、それまで可撓性密着部材を介して密着していた第2の筒状部が位置ずれを生じたり部分的にシワとなったりする等して空間が形成され、この空間から塵埃等が侵入し上記アームに接続された他のアーム又は駆動ヘッド等の関節部内に侵入するおそれがあるところ、上記低摩擦シートが配置されたことによってこうした不具合を有効に解消することができる。
【0025】
また、上記第の発明(請求項記載の発明)によれば、たとえ上記第1の筒状部と第2の筒状部との間から液体を含めた塵埃等の異物が侵入した場合であっても、該異物は上記第2の可撓性密着部材によりそれ以上内部に(毛管現象による場合も含めて)侵入することを効果的に防止することができる。
【0026】
また、上記第の発明(請求項3記載の発明)に係るロボット用保護カバーによれば、第1の保護カバーと第2の保護カバーとが互いに重なる部位が増大され、より塵埃等の異物がこのロボット用保護カバーの内部に侵入することを防止することができる。
【0027】
また、上記第の発明(請求項4記載の発明)に係るロボット用保護カバーによれば、上記延出部により、塵埃等の異物が上記境界線からロボットの内部にまで侵入することをより一層防止することができる。
【0028】
また、第の発明(請求項記載の発明)によれば、上記第1及び第2の保護カバーの内側で発生した電磁波が外部に漏出され、この漏出した電磁波により、ロボットの動作を制御するコントローラその他の電子機器や該ロボット近傍に設置された他の電子機器が破損することを有効に防止することができる。また、上記ロボットの先端に配置されたヘッドによりワークを溶接する際に発生した電磁波が該ロボットの内部に配置されたモータ又は減速機等に悪影響を及ぼすことを有効に防止することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るロボット用保護カバーの要部を模式的に示す断面図である。
図2】第1の保護カバーの断面を拡大して示す断面図である。
図3】本発明の第2の実施の形態に係るロボット用保護カバーの要部を模式的に示す断面図である。
図4】本発明の第3の発明の実施の形態に係るロボット用保護カバーの要部を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の第4の発明の実施の形態に係るロボット用保護カバーの要部を模式的に示す断面図である。
図6】本発明の第5の実施の形態に係るロボット用保護カバーの要部を模式的に示す断面図である。
図7】本発明の第6の発明の実施の形態に係るロボット用保護カバーの要部を模式的に示す断面図である。
図8】第2の可撓性粘着部材の取付状態の他の例を模式的に示す断面図である。
図9】第2の可撓性粘着材の構成の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良の形態に係るロボット用保護カバー(第1の実施の形態に係るロボット用保護カバー)を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
この第1の実施の形態に係るロボット用保護カバー1は、図1に示すように、ロボットを構成する特定の部位R1の外側面を覆う第1の保護カバー2と、該ロボットを構成する特定の部位R1に対して回動自在に取り付けられたアームR2の外側面を覆う第2の保護カバー3と、を備えたものである。そして、図1において、符号Bは上記特定の部位R1とアームR2とが相対的に回動する際における境界を示す部位(線)である。なお、上記ロボットを構成する特定の部位R1は、回動動作しない構造とされてなるものであっても良いし、該特定の部位R1自体も上記アームR2と同じように回動するものであっても良い。また、上記第1の保護カバー2及び第2の保護カバー3は、図2に示すように、可撓性樹脂シートからなる表層1aと、同じ可撓性樹脂シートからなる裏層1bと、上記表層1aと裏層1bとの間に形成され電磁波シールド材(導電性材料:銅)によりシート状に成形されたシールド層1cとから構成されている。なお、上記表層1aや裏層1bの素材としては、例えば、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、アラミド繊維の織布にウレタン樹脂を積層したもの、ハイパロン樹脂、シリコン樹脂等を所定の生地にコーティング又はラミネートしたものを使用することができる。
【0032】
そして、上記第1の保護カバー2は、上記ロボットの特定の部位R1の外側面を覆い筒状に成形された第1の筒状部2aを備えている。この第1の筒状部の中途部は上記境界線Bを跨ぎ、その先端は更に上記アームR2の基端側中途部に位置している。一方、上記第2の保護カバー3は、上記アームR2の外側面を覆い筒状に成形されてなる第2の筒状部3aを備えている。この第2の筒状部3aの先端側は上記第1の筒状部2aの内側に配置され、その先端は上記境界線Bよりもやや手前に位置している。すなわち、上記第1の筒状部2aと第2の筒状部3aとは、図1に示すように、所定の長さに亘って僅かの隙間を介して重ね合わされている。そして、上記第1の筒状部2aの先端側の内周面には、第1の低摩擦シート4が配置され、上記第2の筒状部3aの先端側外周面には、上記第1の低摩擦シート4の内周面と外周面が摺接する第2の低摩擦シート5が配置されている。これら第1及び第2の低摩擦シート4,5は、それぞれアラミド繊維等からなる図示しない基材の内側面又は外側面にテフロン樹脂がコーティングされてなるものである。
【0033】
そして、上記第2の筒状部3aの先端側内周には、内周面が上記アームR2の外周面に密着する可撓性密着部材6が取り付けされている。換言すれば、上記第2の筒状部3aの先端側は、外側に配置された第2の低摩擦シート5とこの可撓性密着部材6とにより挟まれた状態とされている。なお、上記可撓性密着部材6は、CR(ネオプレン)ゴム等からなるものである。
【0034】
したがって、上述した第1の実施の形態に係るロボット用保護カバー1によれば、先ず、塵埃やスパッタ等の異物が外部から、上記第1及び第2の保護カバー2,3の内側に侵入することを有効に防止することができ、次に、上記第1の保護カバー2又は第2のカバー3の何れかをロボットから取り外しても、これらを再びロボットに容易に装着することができるばかりではなく、これらの双方又は一方をロボットから取り外して新たな保護カバーを装着したり該保護カバーを洗浄する等したりすることも可能となる。
【0035】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るロボット用保護カバー11について、図3を参照しながら詳細に説明する。なお、図1と共通する部材等は、同一の符号を使用する。このロボット用保護カバー11は、上記第1の実施の形態に係るロボット用保護カバー1に対して、第2の可撓性密着部材7を構成要素としたものである。この第2の可撓性密着部材7は、上記可撓性密着部材6と同じ素材となるものであり、上記第1の筒状部2aの先端側中途部の内側面に配置されてなるものであり、その内周面は上記ロボットの特定の部位R1の外側面に密着されるものである。換言すれば、この第2の可撓性密着部材7の先端(図3中、下端)は、上記境界線Bの位置よりもやや上方とされている。また、この第2の可撓性密着部材7の肉厚は、上記可撓性密着部材6と比較した場合、やや厚いものとされている。
【0036】
上記第2の実施の形態に係るロボット用保護カバー11によれば、たとえ上記第1の筒状部2と第2の筒状部3との間から液体を含めた塵埃等の異物が侵入した場合であっても、該異物は上記第2の可撓性密着部材7のよりそれ以上内部に(毛管現象による場合も含めて)侵入することを効果的に防止することができる。
【0037】
次に、本発明の第3の実施の形態に係るロボット用保護カバー21について、図4を参照しながら詳細に説明する。このロボット用保護カバー21は、上記第2の実施の形態に係るロボット用保護カバー21を構成する第2の筒状部3aの先端を、上記境界線Bの位置に対応する位置まで延出させるとともに、上記第2の低摩擦シート5の幅も長尺としたものである。
【0038】
こうした構成に係る第2の実施の形態に係るロボット用保護カバー21によれば、第2の筒状部3aの先端を延出させることにより、上記第1の筒状部2aとの重なり代が増大され、更に異物が内部に侵入することを防止することができる。
【0039】
次に、本発明の第4の実施の形態に係るロボット用保護カバー31について、図5を参照しながら詳細に説明する。このロボット用保護カバー31は、上記第2の実施の形態に係るロボット用保護カバー21を構成する第2の可撓性密着部材7を、図5に示す第2の可撓性密着部材17に代えたものである。この第2の可撓性密着部材17は、所定の肉厚とされ断面略長方形状に成形された肉厚部17aと、この肉厚部17aの先端面(図5中、下端面)から上記可撓性密着部材6の先端面方向に延出された延出部17bが形成されたものである。そして、この延出部17bは、上記ロボットの特定の部位R1とアームR2との境界線Bを跨いで更に前記可撓性密着部材6の近傍まで延出されてなるものであり、該延出部17aの内周面は、上記ロボットの特定の部位R1の外周面及び前記アームR2の外周面よりも僅かに離間している。
【0040】
こうした構成に係る第4の実施の形態に係るロボット用保護カバー31によれば、上記第2の可撓性延出部17aにより上記境界線R(ロボットの関節部)を保護することができ、この部位から内部に塵埃等の異物が侵入することを有効に防止することができ、ひいてはロボットの動作に悪影響を与えることを回避することができる。
【0041】
次に、本発明の第5の実施の形態に係るロボット用保護カバー41について、図6を参照しながら詳細に説明する。このロボット用保護カバー41は、上記第2の筒状部3aの先端を上記第2の可撓性密着部材7側にさらに延出させ、この延出された部位を含めた該第2の筒状部3aの内周面に上記可撓性密着部材6を配置するとともに、この第2の筒状部3aの外側面の中途部には、外側筒状部材8を配置したものである。なお、上記可撓性密着部材6の一端(図6中、上端)は、上記境界線BからややアームR2側に位置してなり、他端はアームR2の基端側中途部に位置している。そして、上記外側筒状部材8は、上記第2の筒状部3aの中途部の外周面に固定された筒状部8aと、この筒状部8aの先端(図6中、上端)から徐々に拡径されてなる逆テーパ部8bとから構成されてなるものであり、この逆テーパ部8bの内側に上記第1の筒状部2aの先端が位置している。
【0042】
したがって、この第5の実施の形態に係るロボット用保護カバー41によれば、ロボット周辺で発生した塵埃その他の異物の侵入は、上記逆テーパ部8bにより阻止されるばかりではなく、図6に示すような上下方向に配置された場合には、該逆テーパ部8bに付着した液体等は、その自重で落下し、また、上記異物が第1の筒状部2aの外側面に当接したり付着したりした場合には、上記逆テーパ部8bの内側と第2の筒状部3aの外側との間に収容され、第1の筒状部2aと第2の筒状部3aとの間を通過し上記境界線Bにまでも到達する危険性も有効に解消することができる。また、このロボット用保護カバー41では、上記可撓性密着部材6の一端は、上記境界線BからややアームR2側に位置してなることから、よりアームR2の外周面に密着され(密着面積が増大され)ることから、この点からも塵埃等の異物によりロボットの動作に悪影響を与える危険性を回避することができる。
【0043】
次に、本発明の第6の実施の形態に係るロボット用保護カバー51について、図7を参照しながら詳細に説明する。このロボット用保護カバー51は、先に図示した第1の筒状部2aの内径を拡径し、これを第1の筒状部12aとするとともに、この第1の筒状部12aの先端(図7中、下端)から更に先端側にかけて徐々にロボットの特定の部位R1やアームR2側に接近するテーパ部12bを形成するとともに、上記第2の筒状部3aの先端には、上記テーパ部12bの内周に面対向する逆テーパ部3bを形成したものである。なお、上記第2の可撓性密着部材7の厚みは、先に説明したものより肉厚されている。また、互いに面対向する上記テーパ部12bと逆テーパ部3bとの双方の対向面には、先に説明した第1の低摩擦シート4や第2の低摩擦シート5が配置されている。
【0044】
したがって、この第6の実施の形態に係るロボット用保護カバー51によれば、上記第1の低摩擦シート4と第2の低摩擦シート5との間に異物が侵入する場合には、上記テーパ部12bと逆テーパ部3bとの僅かな間を通過する必要があるところ、この部位は先に説明したように、互いに摺接する部位であることから、より一層異物が内部に侵入することを防止することができる。特に、上記テーパ部12bと逆テーパ部3bが、図7に示す上下の方向に位置する場合には、より確実に液体を含めた異物が内部に侵入することを防止することができる。
【0045】
なお、上記各実施の形態に係るロボット用保護カバー11,21,31,41,51では、上記第2の可撓性密着部材7が構成要素とされているが、この第2の可撓性密着部材7を上記第1の筒状部2aの内側面に配置・固定する方法は、図示しない両面接着テープを用いることができるばかりではなく、図8に示すように、リベット9を使用して機械的に固定することも可能である。このリベット9は、一方のフランジ部9aが一端に形成された大径円筒部9bと、この大径円筒部9bの先端側から該大径円筒部9b内に所定の器具により圧入される小径円筒部9cと、この小径円筒部9cの基端に形成された他方のフランジ部9dとから構成されてなるものである。なお、上記可撓性密着部材7には、上記大径円筒部9bが挿通される透孔(符号は省略する。)が形成され、また、上記第1の筒状部2aにも上記大径円筒部9bが挿通される透孔(符号は省略する。)が形成されている。すなわち、上記一方のフランジ部9aと他方のフランジ部9dとにより第1の筒状部2aと上記第2の可撓性密着部材7とを挟持することにより、該第2の可撓性密着部材7を第1の筒状部2aに固定しても良い。
【0046】
また、上記図8に示す第2の可撓性密着部材7に代えて、図9に示す第2の可撓性密着部材27を使用し、この第2の可撓性密着材27を上記リベット9により第1の筒状部2aに固定しても良い。この第2の可撓性密着部材27は、外周面が上記第1の筒状部2aの内周面に接合される外側密着部材27aと、内周面が上記ロボットの特定の部位R1の外周面に密着されるとともに該外側密着部材27aと同じ幅に成形された内側密着部材27bと、上記外側密着部材27aと内側密着部材27bとの間に配置され、先端面が上記第1及び第2の密着部材27a,27bよりも前記可撓性密着部材6の先端面側にまで延長された幅広密着部材27cとから構成されている。なお、上記内側密着部材27bの肉厚は、上記外側密着部材27aの肉厚よりも薄いものとされている。また、上記幅広密着部材27cの一部の内周面と、上記ロボットの特定の部位R1の外周面との間には僅かな隙間が形成され、また、上記境界線Bを跨いでその先端は上記アームR2側に至り、幅広密着部材27cの内周面とアームR2の外周面との間には僅かな隙間が形成されている。なお、上記外側密着部材27a、幅広密着部材27c及び内側密着部材27bには、上記リベット9の大径円筒部9bが挿通される透孔(符号は省略する。)が形成されている。
【0047】
このように第2の可撓性密着部材7,27は上記リベット9により機械的に固定した場合には、長期間使用された場合であっても第1の筒状部2aから脱落することを防止することができ、また、こうしたリベット9を用いて図9に示す第2の可撓性密着部材27を構成要素とすれば、図5に示した第6の実施の形態に係るロボット用保護カバー31と同じ作用効果を奏することができる。
【0048】
また、上記各実施の形態に係るロボット用保護カバー1,11,21,31,41,51を構成する第1及び第2の保護カバー2,3は、冒頭で説明したように、電磁波シールド材によりシート状に成形されたシールド層1cを備えてなることから、上記第1及び第2の保護カバー2,3の内側で発生した電磁波が外部に漏出され、この漏出した電磁波により、ロボットの動作を制御する図示しないコントローラその他の電子機器や該ロボット近傍に設置された他の電子機器が破損することを有効に防止することができる。また、上記ロボットの先端に配置されたヘッドによりワークを溶接する際に発生した電磁波が該ロボットの内部に配置されたモータ又は減速機等に悪影響を及ぼすことを有効に防止することも可能となる
【符号の説明】
【0049】
1 ロボット用保護カバー
1c シールド層
2 第1の保護カバー
2a 第1の筒状部
3 第2の保護カバー
3a 第2の筒状部
4 第1の低摩擦シート
5 第2の低摩擦シート
6 可撓性密着部材
7 第2の可撓性密着部材
17 第2の可撓性密着部材
17a 延出部
27 第2の可撓性密着材
R1 ロボットの特定の部位
R2 アーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9