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特許7554484細胞の高張液に由来する細胞外物質に関連する方法及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】細胞の高張液に由来する細胞外物質に関連する方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/28 20150101AFI20240912BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240912BHJP
   C12N 5/074 20100101ALI20240912BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20240912BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20240912BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240912BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240912BHJP
【FI】
A61K35/28
A61K9/08
C12N5/074
C12N5/078
C12N5/071
C12N5/10
A61L27/36 100
A61P17/02
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61K47/02
A61K47/28
A61K47/24
A61K9/70 401
A61K38/18
A61K38/17
A61K47/46
A61K35/12
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021514293
(86)(22)【出願日】2019-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 US2019032155
(87)【国際公開番号】W WO2019222170
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】62/671,074
(32)【優先日】2018-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520446964
【氏名又は名称】ルースターバイオ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ROOSTERBIO, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(72)【発明者】
【氏名】ング,ケルヴィン・エス.
(72)【発明者】
【氏名】ロウリー,ジョナサン・エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ロック,ライ・テン
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィシャンカル,プラタナ
【審査官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-539960(JP,A)
【文献】特表2017-515510(JP,A)
【文献】特表2016-534122(JP,A)
【文献】特表2013-535485(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0107036(US,A1)
【文献】Anal. Chem.,2012年,Vol.84,p.8650-8655
【文献】Int. J. Mol. Sci.,2017年,Vol.18, No.956,p.1-20
【文献】THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY ,1998年,Vol. 273, No. 32, ,p. 20121-20127
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間葉系幹細胞に由来する濃縮された細胞外小胞の集団を含む、細胞外小胞を収集または抽出するための組成物であって、前記細胞外小胞が、382と855mOsm/kgの間の浸透圧を含む、溶液に浸漬されている、前記組成物。
【請求項2】
前記溶液が、1と20Osm/kgの間の浸透圧を含む濃縮物から調製される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記溶液が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、塩化物、リン酸塩、酢酸塩、重炭酸塩、及び/またはクエン酸塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記細胞が不死化された初代細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記濃縮された細胞外小胞の集団がカーゴを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記カーゴが内因性または外因性である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記カーゴが、CD9、CD63、CD81、コレステロール、ホスファチジルセリン、またはそれらの組み合わせである、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
前記細胞外小胞またはそのカーゴが、血管新生、創傷治癒、分化、免疫調節、増殖、壊死/アポトーシス、因子の分泌、または新血管形成を促進する、請求項5~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記カーゴが、アンジオポエチン(Ang-1)である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記濃縮された細胞外小胞の集団またはその画分が、液体またはコロイド系に懸濁され、凍結、乾燥、凍結乾燥され、別の材料の表面に固定化され、または別の材料にカプセル化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
記組成物が、小分子、造影剤、防腐剤、安定剤、タンパク質、脂質、核酸、炭水化物、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせを含み、前記濃縮された細胞外小胞の集団もしくはその画分の物理化学的特徴、生体内分布、薬物動態、薬力学、もしくは生物学的機能の永続的または一時的な変化に影響を及ぼす、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記細胞外小胞もしくはその画分に融合される、他の細胞外小胞、細胞、膜結合集合体、または脂質含有集合体を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記細胞外小胞が、50と1000nmの間の平均粒径または平均流体力学直径を有する、請求項1~12に記載の組成物。
【請求項14】
前記細胞外小胞が、負の表面電荷または負のゼータ電位を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記カーゴが、核酸分子、ポリペプチド、脂質、ホルモン、ビタミン、ミネラル、小分子、及び医薬品、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項16】
記組成物が、パッチ形態である、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
間葉系幹細胞において、細胞外小胞を濃縮する方法であって、前記方法が、
a.浸透圧が382と855mOsm/kgの間の溶液に間葉系幹細胞を浸漬することと、
b.浸透圧が382と855mOsm/kgの間の前記溶液中の間葉系幹細胞をインキュベートすることと、
c.前記間葉系幹細胞によって放出された細胞外小胞を収集及び精製することと
を含み、前記細胞外小胞が、測定可能なバイオマーカーまたは測定可能な標的を有する方法。
【請求項18】
前記細胞外小胞が、アッセイの測定可能な標的またはバイオマーカーを有する、請求項17に記載の方法を含む、分析アッセイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年5月14日出願の米国仮特許出願第62/671,074号の利益を主張し、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0002】
細胞外小胞(EV)などの細胞外物質(EM)は、他の治療法とは異なる、新種の治療法として台頭しつつある。1つの用途は、EMを使用して、治療やイメージングなどのために外因性カーゴを保持して送達することである。この用途で、EMは、任意の細胞型から採取できるが、最も一般的には、成長しやすいまたは遺伝子組み換えした細胞株から採取できる。別の用途は、EMが通常、治療特性を継承する、治療用細胞からのEMを使用することである。自然の治療特性を備えたEMは、特に再生医療で有望である。これらは、細胞ベースの治療法(生きている治療製品)の生きていない代替手段であり、臨床投与を大幅に簡素化し、再生医療製品の安全性プロファイルを改善できる。
【0003】
EMの製造での重大な障害は、細胞の収量が少ないことである。動物実験から推定すると、1人のヒトへのEMの投与量は、作製のために何十億もの細胞を必要とするだろう。当技術分野で求められているのは、培養中の生細胞からのEM収量を高めるための方法及び組成物である。このような方法及び組成物が、本明細書で開示されている。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に開示されるのは、細胞外物質の産生を増加させるために高張液を使用する、細胞に関連する組成物及び方法である。
【0005】
具体的には、本明細書に開示されるのは、320と1000mOsm/kgの間の浸透圧を含む、溶液に浸漬された濃縮された細胞外物質の集団を含む、医薬組成物である。
【0006】
キットも本明細書に開示されている。キットは、例えば、細胞、細胞培地、及び浸透圧が320mOsm/kgと20Osm/kgの間の溶液を含むことができる。
【0007】
本明細書で更に開示されるのは、細胞外物質の蓄積または産生を増加させるための方法であり、それは、浸透圧が320と1000mOsm/kgの間の溶液中に細胞を浸漬させることと、浸透圧が320と1000mOsm/kgの間の前記溶液中で細胞をインキュベートすることと、前記細胞によって放出された細胞外物質を収集及び精製することと、を含む。
【0008】
本明細書に開示されるのは、必要とする対象を治療する方法であり、この方法は、本明細書に開示されるように、細胞によって放出される細胞外物質を対象に投与することを含む。
【0009】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細が、添付の図面及び以下の記述で説明される。本発明の他の特性、目的及び利点が、記述及び図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】260~310mOsm/kgの等張濃度の範囲を示す、既存の既製の基本培地の評価を示す。
図2】培地の浸透圧を調整するための溶質として使用される、NaClの例を示す。
図3】高張培地が長期(2日間)の細胞生存に影響を及ぼす可能性があり、したがって、浸透圧の調整は細胞の生存率のバランスをとるために重要であることを示す。
図4】増殖培地から切り替えてから2日後の、収集培地での細胞外小胞の収量を示す。3つの異なるBM-MSCドナーと2つの培地配合物をEV収量について評価した。収集培地(すなわち、高張性)の浸透圧を増やす(+0、+200及び+600)と、EVの収量が増加する。
図5】収集培地中の細胞外ヒト肝細胞増殖因子を示す。3つの異なるBM-MSCドナーと2つの培地配合物を、EV収量について評価した。収集培地の浸透圧の調整(+0、+200及び+600)により、細胞外HGFの分泌レベルを制御できる。
図6】培地の浸透圧に応じた、細胞外小胞の産出量を示す。等張培地(RoosterBasal)を使用した48時間の収集と比較して、高張培地は、30分以内に同じ収量を達成できる、または同じ期間で収量を5倍超に増やすことができる。
図7】A~Dは、培地中の粒子のサイズ分布を示している。すべてのヒストグラムは、浸透圧が変化する条件培地に、細胞外小胞に予想されるサイズ範囲の粒子が含まれていることを示す。Aは、すべての時点でのドナー1を示す。Bは、すべての時点でのドナー2を示す。Cは、48時間でのドナー1を示す。Dは、48時間でのドナー2を示す。
図8】+600mOsm/kg(収穫中)と+0mOsm/kgの間の溶液を交互に使用する、2つの収穫から、粒子が収集されたことを示す。類似の粒子レベルは、複数の収穫が培地間で交互に行われ、同じ細胞培養を複数の収穫に使用して、細胞の生産性を増加させる可能性を示している。
図9】異なる浸透圧の条件培地から分離された粒子に、条件培地からの重要な生成物であるタンパク質が含まれていることを示す。
図10】A~Cは、細胞外小胞の分離後に収集された粒子のRNA分析を示す。培地の異なる浸透圧(A~Cそれぞれ0、+200、+600mOsm/kg)は、Bioanalyzerで実行された、条件培地から分離した粒子の異なるRNAプロファイルになった。条件培地からの一生成物である細胞外小胞は、RNAを含むことが知られている。浸透圧が+200mOsm/kg増加すると、追加の粒子が生成されて、RNAプロファイルが維持され、細胞外小胞の生産性上昇が示される。+600mOsm/kgに増加すると、更に多くの粒子数が生成されるが、RNAプロファイルは異なり、存在するRNAは少なくなる。異なるEV集団は、様々な治療用途で利用できる。更に、これらの粒子はより少ないRNAカーゴを含み、ペイロードが充填される、薬物送達ビヒクルとして利用できる。
図11A】ドナー1(A)及びドナー2(B)のin vitro創傷治癒モデルで、正常な+200mOsm/kg及び+600mOsm/kgの浸透圧の条件培地の閉鎖率が、対照と比較して高いことを示している。これは、条件培地が、創傷治癒及び他の用途で、生物活性及び有用性を有することを示している。
図11B】ドナー1(A)及びドナー2(B)のin vitro創傷治癒モデルで、正常な+200mOsm/kg及び+600mOsm/kgの浸透圧の条件培地の閉鎖率が、対照と比較して高いことを示している。これは、条件培地が、創傷治癒及び他の用途で、生物活性及び有用性を有することを示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して、以下の用語は、文脈が別段に明らかに指示しない限り、本明細書で明示的に関連付けられる意味を持つ。
【0012】
本明細書で使用する場合、「一実施形態にて」という語句は、必ずしも同一の実施形態を指さないが、そうである場合もある。更に、本明細書で使用する場合、「別の実施形態にて」という語句は、必ずしも異なる実施形態を指さないが、そうである場合もある。したがって、下記のように、本発明の様々な実施形態は、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、容易に組み合わされることができる。
【0013】
本明細書で使用する場合、「または」という用語は、文脈が別段に明確に指示しない限り、包括的な「または」という機能語であり、「及び/または」という用語に等しい。
【0014】
「a」「an」及び「the」という用語には、複数形も含まれる。したがって、「a」または「an」または「the」は、1つまたは複数を意味することができる。例えば、「a」細胞及び/または細胞外小胞は、1つの細胞及び/または細胞外小胞、あるいは複数の細胞及び/または細胞外小胞を意味し得る。
【0015】
本明細書で使用する場合、「幹細胞」は、(1つまたは複数の特定の機能を実行する)他の様々な細胞型に分化する可能性があり、自己再生する能力を有し得る、多能性細胞を指す。
【0016】
本明細書で使用する場合、「成体幹細胞」は、胚性幹細胞ではない幹細胞を指し、新生児の幹細胞を含む。例えば、成体幹細胞は、間葉系間質細胞またはMSCとも呼ばれる、間葉系幹細胞を含む。
【0017】
本明細書で使用する場合、「投与」「導入」「送達」「配置」及び「移植」という用語は、区別なく使用され、所望の部位での細胞及び/または細胞外小胞の少なくとも部分的な局在化をもたらす、方法または経路による対象内への本技術の細胞外小胞の配置を指す。細胞及び/または細胞外小胞は、細胞及び/または細胞外小胞の少なくとも一部がそれらの治療能力を保持する、対象の所望の場所への送達をもたらす、任意の適切な経路によって投与することができる。例えば、投与方法は、静脈内投与(i.v.)を含む。
【0018】
本明細書で使用する場合、「治療する」という用語は、本技術の治療用組成物を対象の体内または体上に何らかの方法で導入することにより、疾患もしくは障害の少なくとも1つの有害作用または症状を軽減する、または緩和することを含む。
【0019】
本明細書で使用する場合、「治療有効量」とは、(例えば、有益なまたは所望の臨床効果をもたらすのに十分な)治療薬の量を指す。用量は、1回または複数回の投与(例えば、2、3、4回など)で投与することができる。しかし、有効量と見なされるものを正確に決定することは、患者の年齢、サイズ、疾患の種類または程度、疾患の病期、投与経路、使用される追加の療法の種類または程度、進行中の疾患の経過、及び積極的治療対従来の治療のための所望の治療の種類(例えば、薬学的に許容される調製物としての細胞及び/または細胞外小胞)を含む、各患者に固有の要因に基づくことができるが、これらに限定されない。
【0020】
本明細書で使用する場合「有効量」という用語は、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な組成物の量を指す。有効量は、1回以上の投与、適用または用量で投与することができ、特定の配合または投与経路に限定されることを意図しない。
【0021】
本明細書で使用する場合、「医薬組成物」という用語は、活性薬剤、細胞外小胞、所望により本組成物をin vitro、in vivoもしくはex vivoで診断用途もしくは治療用途に特に好適にする、不活性または活性な担体との組み合わせを指す。「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という用語は、本明細書で使用される場合、対象に投与されたときに、有害反応(例えば、毒性、アレルギー性、または免疫学的反応)を実質的に引き起こさない組成物を指す。例えば、薬学的に許容される担体液は、生理食塩水である。
【0022】
本明細書に使用される場合、「宿主」「患者」または「対象」という用語は、本技術の調製物及び/または方法によって処置される生物、または本技術によって提供される様々な試験の対象となる生物を指す。
【0023】
「対象」という用語は、動物、好ましくは、ヒトを含む哺乳動物を含む。いくつかの実施形態で、対象は霊長類である。他の好ましい実施形態で、対象はヒトである。以下の実施例は、本技術の特定の好ましい実施形態及び態様を実証し、更に例示するために提供されるのであって、本技術の範囲を限定すると捉えられるべきではない。
【0024】
本明細書で使用する場合、「細胞」という用語は更に、個々の細胞、細胞株、初代培養、または特に示されない限り、そのような細胞に由来する培養物を指す。「培養物」は、同じまたは異なる型の単離された細胞を含む、組成物を指す。生細胞は、細胞培養で見つけることができる。
【0025】
「細胞外物質」(「EM」とも呼ばれる)という用語は、血液、リンパ液、尿、唾液、及び細胞培養の条件培地を含む、真核生物液中に存在する細胞外小胞(EV)を含む、細胞由来物質を指す。この細胞外物質は、細胞のエンドソーム及び形質膜に由来することができ、分泌成分を含むことができる。これらの成分の例には、DNA、RNA(miRNAを含む)、タンパク質、ポリペプチド、炭水化物、脂質、及び小分子などの核酸が含まれるが、これらに限定されない。細胞外物質は、細胞由来の小さな小胞であり得て、エクソソーム、微小胞、エクトソーム、脱落小胞、膜小胞、形質膜小胞または他の膜結合集合体、ならびにアポトーシス小体、ウイルス、及び細胞を含むことができる。特定の実施形態で、細胞外物質は、細胞外小胞を含む、それからなる、または本質的にそれからなることができる。
【0026】
概要
本発明以前の培養細胞から細胞外物質を産生するための最先端のやり方は、細胞を集密度になるまで培養し、すすいで、既存の培地を除去し、更にEM収集の前に等張培地で24~72時間インキュベートすることであった。
【0027】
本明細書に開示されるのは、EMの産生を増加させるために、生細胞を伴う高張液(320mOsm/kg超)を利用する方法及び組成物である。このような高張液の例には、追加の塩化ナトリウムを添加したものが含まれる。高張液は、用量依存的にEM産出の速度を急激に高めることができる。本明細書に開示される組成物及び方法を使用すると、等張培地を使用する場合と比較して、EM産生を任意の時点で高めることができ、目標収量をより短い時間で収穫することができる(図6)。この現象は、複数の供給源/ドナーからの細胞上で、及び異なる培地配合物上で観察された。複数の収穫も実行することができ、この場合、溶液は異なる浸透圧の間で交互に使用する(図8)。本明細書に開示されるのは、高張液中の細胞がより大量の細胞外物質を分泌/排出するという驚くべき発見を利用する方法、キット、装置、及び医薬組成物である。
【0028】
具体的には、本明細書に開示されるのは、320と1000mOsm/kgの間の浸透圧を含む、溶液に浸漬された濃縮された細胞外物質の集団を含む、医薬組成物である。これは、本明細書では「高張」液と呼ばれる。浸透圧は、例えば、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、または1000mOsm/kg以上である。本明細書で使用される場合、「等張」液とは、溶液が250と320mOsm/kgの間の浸透圧を有することを意味する。「低張」とは、250mOsm/kg未満の溶液を意味する。
【0029】
溶液は、濃縮物から調製されることができる。この場合、濃縮物の浸透圧は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20Osm/kg以上であり得る。
【0030】
更に開示されるのは、液体またはコロイド系に懸濁され、凍結、乾燥、凍結乾燥され、別の材料の表面に固定化され、または別の材料にカプセル化された細胞外物質またはその画分の濃縮された集団である。医薬組成物の単離または精製された画分も開示される。
【0031】
細胞外物質は、生きている細胞、または生細胞に由来することができる。これらの細胞は、例えば培養で見つけることができる。細胞の例には、幹細胞、初代細胞、免疫細胞、それらの娘細胞、またはそれらの分化した派生物が含まれるが、これらに限定されない。細胞は、例えば、不死化された初代細胞であり得る。本発明で使用する細胞は、以下でより詳細に記載される。
【0032】
本明細書では、キットも開示する。キットは、例えば、細胞、細胞培地、及び浸透圧が320mOsm/kgと20Osm/kgの間の溶液を含むことができる。使用できる細胞培地の例は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、DMEM/F12、最小必須培地イーグルアルファ(MEMα)、(ロズウェルパーク記念研究所)RPMI、及びイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)である。細胞培地には、培養細胞の生存率を維持するために不可欠な栄養素とミネラルが含まれている。細胞培地と溶液は、同じ配合にすることも、一緒に調製することもできる。
【0033】
細胞は、懸濁液中、固体基材(例えば、フラスコ、プレート、マイクロキャリア、フィルム、ファブリックまたはファイバー)上、軟性基材(例えば、ヒドロゲル、凝集体、単細胞溶液またはこれらの組み合わせ)上またはその内部にあり得る。いくつかの実施形態で、キットの細胞は、等張液などの高張液なしで3日以上培養されている。例えば、そのような培養は、高張液への曝露する前の3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15日間以上であり得る。高張液は、添加したタンパク質のない、DMEM、DMEM/F12、MEMα、RPMI、またはIMDMなどの細胞培地を含有することができる。
【0034】
条件培地は、本明細書に開示される細胞と共に使用することができ、所望であり、細胞外物質の産生を増強するもしくは収集を容易にする、様々な特定の属性または特徴を提供することができる。条件培地組成物は、通常、必須アミノ酸、塩、ビタミン、ミネラル、微量金属、糖、脂質、及びヌクレオシドを含む。細胞培地は、制御された環境で細胞を増殖させるために必要な栄養必要量を満たすために、必要な成分も供給することができる。栄養素の配合、pH、及び他の要因は、パラメーター(例えば、細胞型、細胞密度、使用する培養系)に応じて変化できる。「条件培地」は、培地中で最初の細胞集団を培養し、次に培地を収穫することによって調製される。次に、条件培地(細胞によって培地に分泌されるものと共に)を使用して、細胞の第2集団の増殖を促進する、または反応を誘発することができる。
【0035】
条件培地は、培地の元の成分の多く、ならびに例えば、生物学的に活性な増殖因子、炎症性メディエーター及び他の細胞外タンパク質を含む、様々な細胞代謝産物及び分泌タンパク質を含む。例えば、図9は、条件培地からの重要な生成物であるタンパク質を含有する、異なる浸透圧の条件培地から分離された粒子を示す。
【0036】
本明細書で更に開示されるのは、細胞外物質の蓄積または産生を増加させるための方法であり、それは、浸透圧が320と1000mOsm/kgの間の溶液中に細胞を浸漬させることと、浸透圧が320と1000mOsm/kgの間の前記溶液中で細胞をインキュベートすることと、前記細胞によって放出された細胞外物質を収集及び精製することと、を含む。
【0037】
細胞外物質の蓄積または産生の増加は、インキュベートの時間が同じとき、浸透圧が250と320mOsm/kgの間の溶液よりも、浸透圧が320と1000mOsm/kgの間の前記溶液の方がより高い。「より高い」とは、等張液と比較した高張液からの産生の増加が、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%以上であることを意味する。等張液中の細胞からのEMの産生と比較したとき、1、2、4、8、12、24、28、または72時間以内で、高張液中の細胞に由来する細胞外物質の増加が、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%以上である場合、産生の増加は時間の関数としても測定できる。一例にて、細胞外物質をカスタマイズして、特定の所望の結果を生じさせることができる。
【0038】
高張液に曝露する前またはその後に、細胞は、浸透圧が320mOsm/kgの溶液(等張液)に浸漬され得る。一例にて、細胞は、高張液と等張液に交互に曝露することができる。この高張液と等張液の間を交互に使用することは、2、3、4、5回以上行われ得る。この溶液は、ポンプ、重力、毛管現象、または対流によって動かされる流体の流れによって導入され得る。溶液を交互に使用する結果は、例えば図8で見ることができる。
【0039】
本明細書に開示される方法は、低酸素環境で行うことができる。「低酸素環境」とは、大気中の酸素が0%と20%の間で測定される、または溶存酸素が0%と80%の間で測定されることを意味する。細胞と溶液は、4と45℃の間の温度でインキュベートされ得る。前記細胞の有無にかかわらず、前記溶液のpHは、6.5と8.0の間で測定できる。細胞生存率は、50、60、70、80、90もしくは100%、またはその間の任意の量であり得る。
【0040】
更に本明細書に開示されるのは、必要とする対象を治療する方法であり、前記方法は、本明細書に開示されるように、細胞によって放出される細胞外物質を対象に投与することを含む。本明細書に記載の方法は、移植片対宿主疾患、肺性高血圧症、関節炎、眼の外傷、及び腎不全を含むがこれらに限定されない、様々な疾患及び障害を治療するために使用することができる。本明細書に開示される組成物は、血管新生、創傷治癒及び皮膚再生を促進するために使用できる。例えば、本明細書に開示される組成物は、ヒドロゲルパッチなどのパッチ上に配置することができる。パッチは、細胞外小胞を生成する生細胞を含むことができ、生細胞は、高張液中に配置することができる。パッチは、それを必要としている対象に使用できる。創傷治癒に役立つ組成物を使用する例を、図11に見ることができる。
【0041】
「定義」のセクションで説明したように、細胞外物質は、分泌または排出のいずれかによって細胞から出された任意の物質であり得る。この細胞外物質は、治療や診断の目的を含む、様々な目的で使用できる。本発明によって企図される望ましい細胞外物質の例には、CD9、CD63、CD81、主要組織適合遺伝子複合体もしくはヒト白血球抗原、インテグリン、テトラスパニン、セレクチン、マトリックスメタロプロテイナーゼ、熱ショックタンパク質、ヒストン、アミロイドタンパク質、ウイルス成分、コレステロール、ホスファチジルセリン、核酸(RNA、DNA、及びマイクロRNAを含む)、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。細胞外物質はバイオマーカーまたは標的として使用できるため、検出に適した任意の物質を使用できる。例えば、細胞外物質は、アッセイまたは診断試験を使用して検出できる。そのようなアッセイ及び診断試験は、本明細書で企図されている。
【0042】
医薬組成物は、他の細胞外物質、細胞、膜結合集合体、または脂質含有集合体も含み得て、これらは、前記細胞外物質またはその画分に融合される。細胞外物質は、50と1000nmの間の、もしくはそれを超える、それより下のもしくはその間の任意の量の、平均粒径または平均流体力学直径を有することができる。例には、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000nmが含まれる。一例にて、細胞外物質は、負の表面電荷、または負のゼータ電位を帯びることができる。
【0043】
医薬組成物は、in vitro細胞生存率を維持するために必要な他の成分を含むことができる。そのような成分の例には、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、塩化物、リン酸塩、酢酸塩、重炭酸塩、及び/またはクエン酸塩が含まれるが、これらに限定されない。医薬組成物は、血管新生または新血管形成を促進する化学物質(例えば、アンジオポエチン(Ang-1)、血管内皮増殖因子(VEGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、及びメタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP))も含み得る。医薬組成物は、小分子、造影剤、防腐剤、安定剤、タンパク質、脂質、核酸、炭水化物、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせも含み得て、前記濃縮された細胞外物質の集団もしくはその画分の物理化学的特徴、生体内分布、薬物動態、薬力学、もしくは生物学的機能の永続的または一時的な変化に影響を及ぼすことができる。
【0044】
本明細書に開示されるEMは、それを必要とする対象に送達するためのカーゴを含むことができる。カーゴは、EMに結合する、EM内に埋め込む、EM内にカプセル化する、または細胞外小胞などのEMによって運ぶことができる。あるいは、EM自体をカーゴにすることもできる。したがって、本明細書で使用する場合、EM中に「存在する」カーゴへの言及は、カーゴを運ぶ前述の手段のいずれかを含むと理解される。
【0045】
いくつかの実施形態で、EM(例えば、細胞外小胞)には、2~5つの分子、または単一のカーゴもしくは2つ(または、それ以上)の異なるカーゴのコピーがロードされる。いくつかの実施形態にて、エクソソームまたはその医薬組成物は、1~4,000、10~4,000、50~3,500、100~3,000、200~2500、300~1,500、500~1,200、750~1,000、1~2,000、1~1,000、1~500、10~400、50~300、1~250、1~100、2~50、2~25、2~15、2~10、3~50、3~25、3~25、3~10、4~50、4~25、4~15、4~10、5~50、5~25、5~15、もしくは5~10分子、または1つのカーゴまたは2つ(または、それ以上)の異なるカーゴのコピーがロードされる。カーゴは内因性または外因性であり、2つ以上のカーゴが存在する場合、各カーゴはそれぞれ独立して内因性または外因性である。
【0046】
カーゴは、内因性カーゴ、外因性カーゴ、またはそれらの組み合わせであり得る。本明細書に記載の細胞外小胞と結合できる、その中に埋め込まれる、その中にカプセル化される、またはそれよって運ばれることができるカーゴの例として、核酸分子(例えば、DNA、cDNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、mRNA、干渉RNA(例えば、アンチセンスRNA、miRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、及びagomiR)、アンタゴミル、初期miRNA(pri-miRNA)、長鎖非コードRNA(lncRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)、微生物RNA)、ポリペプチド(例えば、酵素、抗体)、脂質、ホルモン、ビタミン、ミネラル、小分子、及び医薬品、またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書に記載の細胞外小胞などのEMは、1つまたは複数のカーゴを含むことができ、カーゴ(複数可)は治療用分子である。例示の小分子には、抗生物質、ステロイド、ステロール、ペプチド、天然物、アルカロイド、テルペン、及び合成分子が含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
カーゴは、事実上、診断用または治療用のいずれかであり得る。診断目的で使用される場合、カーゴは、例えば、イメージング剤を含むことができる。本明細書で使用する場合、イメージング剤は、直接または間接的に信号を発して、それによってその検出を可能にする薬剤である。核医学スキャン及び磁気共鳴画像法(MRI)などの医療画像技術を使用して検出することができる、造影剤及び放射性剤などのイメージング剤が、本明細書に開示されている。蛍光色素または色素結合ナノ粒子などの蛍光イメージング用のイメージング剤も開示されている。他の実施形態で、送達される薬剤は、イメージング剤と結合、または融合、または混合、または組み合わされる。
【0049】
治療用分子は、細胞外小胞に結合させる、細胞外小胞内に埋め込む、細胞外小胞内にカプセル化する、もしくは細胞外小胞によって運ばれる、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。治療薬の例には、mRNA及び/またはmRNAによってコードされるポリペプチド(例えば、Creリコンビナーゼ、インスリン、ペプチドホルモン、及び酵素)、治療的価値のあるmiRNA、siRNAまたはmiRNAアンタゴニスト、不安定であり得る、または生物学的利用能が低い可能性がある、栄養素(例、ビタミンB1及びB12、多価不飽和脂肪酸)、医薬品(例えば、抗生物質(例えば、プロマイシン、ゲンタマイシン、及びネオマイシン)、抗癌剤(例えば、化学療法、免疫療法、ホルモン療法、及び標的療法)、Toll様受容体の活性化因子)、及びマクロファージに送達される分子(例えば、アテローム性動脈硬化プラークの除去もしくは予防、またはマクロファージ関連癌の治療のために)、ならびに本明細書で提供される他の治療用カーゴ分子のいずれかが含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
いくつかの実施形態で、治療薬は生物製剤である。いくつかの実施形態で、生物製剤は、ホルモン、アレルゲン、アジュバント、抗原、免疫原、ワクチン、インターフェロン、インターロイキン、増殖因子、モノクローナル抗体(mAb)から選択される。いくつかの実施形態で、生物製剤は、ポリペプチドまたはペプチドである。
【0051】
いくつかの実施形態で、EMは、カーゴのすべてまたは選択された成分を部分的または完全に枯渇させるように設計されて、特にまたはカーゴ積載の追加手段の調製にて所望のペイロードを変更することができる。EM(例えば、細胞外小胞)を設計する方法は、先行技術で知られており、Dhruvitkumarら(2017)に記載されている。設計された細胞外小胞へのカーゴの低い能動充填は、非効率的なmiRNA模倣送達をもたらす(Journal of Extracellular Vesicles,6:1)。EM及びカーゴに関する、その教示に関して、その全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0052】
本明細書に記載の、本明細書に開示される組成物と共に使用するための細胞は、培養可能な任意の細胞であり得て、生きている生存可能な細胞を含み得る。細胞は改変できる。例えば、細胞は、前記細胞外物質の物理化学的特徴、生体内分布、薬物動態、薬力学、もしくは生物学的機能の永続的または一時的な変化に影響を及ぼすように遺伝子改変することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、開示された組成物は、幹細胞または前駆細胞を含む。多分化能性幹細胞、成体幹細胞、胚盤胞由来幹細胞、性腺隆起由来幹細胞、奇形腫由来幹細胞、全能性幹細胞、多能性幹細胞、オンコスタチン非依存性幹細胞(OISC)、胚性幹細胞(ES)、胚性生殖細胞(EG)、及び胚性癌腫細胞(EC)は、すべて幹細胞の例である。幹細胞は、様々な異なる特性、及びこれらの特性のカテゴリーを持つことができる。例えば、いくつかの形態では、幹細胞は、未分化状態で、少なくとも10、15、20、30、またはそれ以上の継代で増殖することができる。いくつかの形態では、幹細胞は、分化せず、1年以上増殖することができる。幹細胞は、増殖及び/または分化している間、正常な核型を維持することもできる。幹細胞は、胚細胞、卵子、及び精子を含む、中胚葉、内胚葉、ならびに外胚葉の組織に分化する能力を保持することもできる。一部の幹細胞は、未分化状態でin vitroで無期限に増殖できる細胞でもある。一部の幹細胞は、長期培養によって正常な核型を維持することもできる。一部の幹細胞は、長期間培養した後でも、3つすべての胚葉(内胚葉、中胚葉、外胚葉)の派生物に分化する可能性を維持できる。一部の幹細胞は、生体内で任意の細胞型を形成できる。一部の幹細胞は、特定の条件下で(例えば、未分化の成長を維持しない培地での成長)、胚様体を形成できる。一部の幹細胞は、例えば、胚盤胞との融合によってキメラを形成できる。一部の幹細胞は、遺伝的または化学的手段によって非幹細胞から誘導または形質転換することができる。
【0054】
一部の幹細胞は、様々なマーカーで画定できる。例えば、一部の幹細胞は、アルカリホスファターゼを発現する。一部の幹細胞は、SSEA-1、SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、及び/またはTRA-1-81を発現する。一部の幹細胞は、SSEA-1、SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、及び/またはTRA-1-81を発現しない。一部の幹細胞は、Oct4、Sox2、及びNanogを発現する。一部の幹細胞はこれらをmRNAレベルで発現し、更に他の幹細胞も、タンパク質レベルで、例えば細胞表面または細胞内でそれらを発現することは理解されている。
【0055】
いくつかの実施形態では、開示された組成物は、幹細胞以外の細胞を含む。成人の人体は、多くの異なる細胞型を生成する。これらの異なる細胞型には、角質化上皮細胞、湿潤層状バリア上皮細胞、外分泌分泌上皮細胞、ホルモン分泌細胞、上皮吸収細胞(腸、外分泌腺、及び泌尿生殖器)、代謝及び貯蔵細胞、バリア機能細胞(肺、腸、外分泌腺、及び泌尿生殖器)、閉じた内部体腔を裏打ちする上皮細胞、推進機能を有する線毛細胞、細胞外マトリックス分泌細胞、収縮性細胞、血液及び免疫系細胞、感覚伝達細胞、自律神経細胞、感覚器官及び末梢ニューロン支持細胞、中枢神経系ニューロン及びグリア細胞、レンズ細胞、色素細胞、生殖細胞、及びナース細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
人体の細胞は、角質化上皮細胞、表皮角化細胞(表皮細胞を分化する)、表皮基底細胞(幹細胞)、指の爪及び足の爪の角化細胞、爪床基底細胞(幹細胞)、髄性毛幹細胞、皮質性毛幹細胞、角質毛幹細胞、角質毛根鞘細胞、ハクスリ層の毛根鞘細胞、ヘンレ層の毛根鞘細胞、毛根外鞘細胞、毛母細胞(幹細胞)、湿潤層状バリア上皮細胞、角膜、舌、口腔、食道、肛門管、遠位尿道及び膣の重層扁平上皮の表面上皮細胞、角膜、舌、口腔、食道、肛門管、遠位尿道及び膣の上皮の基底細胞(幹細胞)、尿路上皮細胞(膀胱と尿管を裏打ちする)、外分泌分泌上皮細胞、唾液腺粘液細胞(多糖類リッチ分泌)、唾液腺漿液細胞(糖タンパク質リッチ分泌)、舌のフォンエブネル腺細胞(味蕾を洗浄)、乳腺細胞(乳汁分泌)、涙腺細胞(涙分泌)、耳の耳道腺細胞(ワックス分泌)、エクリン汗腺暗細胞(糖タンパク質分泌)、エクリン汗腺明細胞(小分子分泌)、アポクリン汗腺細胞(芳香性分泌、性ホルモン感受性)、眼瞼のモル腺細胞(特殊な汗腺)、皮脂腺細胞(脂質リッチな皮脂分泌)、鼻のボーマン腺細胞(嗅上皮を洗浄)、十二指腸のブルンナー腺細胞(酵素及びアルカリ粘液)、精嚢細胞(精子遊泳のためのフルクトースを含む、精液成分を分泌)、前立腺細胞(精液成分を分泌)、尿道球腺細胞(粘液分泌)、バルトリン腺細胞(膣液分泌)、リトル腺細胞(粘液分泌)、子宮内膜細胞(炭水化物分泌)、気道及び消化管の単離したゴブレット細胞(粘液分泌)、胃壁粘膜細胞(粘液分泌)、胃腺酵素原細胞(ペプシノーゲン分泌)、胃腺酸分泌細胞(HCl分泌)、膵腺房細胞(重炭酸塩と消化酵素を分泌)、小腸のパネート細胞(リゾチーム分泌)、II型肺胞細胞(サーファクタント分泌)、肺のクララ細胞、ホルモン分泌細胞、成長ホルモンを分泌する下垂体前葉細胞、卵胞刺激ホルモンを分泌する下垂体前葉細胞、黄体ホルモンを分泌する下垂体前葉細胞、プロラクチンを分泌する下垂体前葉細胞、副腎皮質刺激ホルモンを分泌する下垂体前葉細胞、甲状腺刺激ホルモンを分泌する下垂体前葉細胞、メラニン細胞刺激ホルモンを分泌する脳下垂体中葉細胞、オキシトシンを分泌する下垂体後葉細胞、バソプレシンを分泌する下垂体後葉細胞、セロトニンを分泌する腸及び気道細胞、エンドルフィンを分泌する腸及び気道細胞、ソマトスタチンを分泌する腸及び気道細胞、ガストリンを分泌する腸及び気道細胞、セクレチンを分泌する腸及び気道細胞、コレシストキニンを分泌する腸及び気道細胞、インスリンを分泌する腸及び気道細胞、グルカゴンを分泌する腸及び気道細胞、ボンベシンを分泌する腸及び気道細胞、甲状腺ホルモンを分泌する甲状腺細胞、カルシトニンを分泌する甲状腺細胞、副甲状腺ホルモンを分泌する副甲状腺細胞、副甲状腺好酸性細胞、エピネフリンを分泌する副腎細胞、ノルエピネフリンを分泌する副腎細胞、ステロイドホルモンを分泌する副腎細胞(ミネラルコルチコイド及びグルココルチコイド)、テストステロンを分泌する精巣のライディッヒ細胞、エストロゲンを分泌する卵胞の内卵胞膜細胞、プロゲステロンを分泌する卵胞破裂部位の黄体細胞、腎臓傍糸球体装置細胞(レニン分泌)、腎臓の緻密斑細胞、腎臓の周極細胞、腎臓のメサンギウム細胞、吸収上皮細胞(腸、外分泌腺及び泌尿生殖器)、腸管刷子縁細胞(微絨毛を有する)、外分泌腺線条部細胞、胆嚢上皮細胞、腎臓近位尿細管刷子縁細胞、腎臓遠位尿細管細胞、精巣輸出無線毛細胞、精巣主細胞、精巣基底細胞、代謝及び貯蔵細胞、肝細胞(肝臓細胞)、白色脂肪細胞、褐色脂肪細胞、肝臓脂肪細胞、バリア機能細胞(肺、腸、外分泌腺及び泌尿生殖器)、I型肺胞上皮細胞(肺の気腔を裏打ちする)、膵管細胞(腺房中心細胞)、導管細胞(汗腺、唾液腺、乳腺などの)、腎臓糸球体壁細胞、腎臓糸球体上皮細胞、ヘレン係蹄の薄い部分の細胞(腎臓の)、腎臓集合管細胞、管細胞(精嚢、前立腺などの)、閉じた体内腔を裏打ちする上皮細胞、血管及びリンパ管の内皮の窓あき細胞、血管及びリンパ管の内皮の連続細胞、血管及びリンパ管の内皮の脾細胞、滑膜細胞(節腔を裏打ちする、ヒアルロン酸分泌)、漿膜細胞(腹腔、胸腔及び囲心腔を裏打ちする)、扁平細胞(耳の外リンパ腔を裏打ちする)、扁平細胞(耳の内リンパ腔を裏打ちする)、微絨毛を有する内リンパ嚢の円柱細胞(耳の内リンパ腔を裏打ちする)、微絨毛のない内リンパ嚢の円柱細胞(耳の内リンパ腔を裏打ちする)、暗細胞(耳の内リンパ腔を裏打ちする)、前庭膜細胞(耳の内リンパ空間を裏打ちする)、血管条基底細胞(耳の内リンパ腔を裏打ちする)、血管条周辺細胞(耳の内リンパ腔を裏打ちする)、クラウディウス細胞(耳の内リンパ腔を裏打ちする)、ベッチェル細胞(耳の内リンパ腔を裏打ちする)、脈絡叢細胞(脳脊髄液を分泌)、軟膜クモ膜扁平上皮細胞、眼の毛様体色素上皮細胞、眼の毛様体無色素上皮細胞、角膜内皮細胞、推進機能を有する線毛細胞、気道の線毛細胞、卵管の線毛細胞(女性の)、子宮体の線毛細胞(女性の)、精巣網の線毛細胞(男性の)、精巣輸出管の線毛細胞(男性の)、中枢神経系の線毛上衣細胞(脳腔を裏打ちする)、細胞外基質分泌細胞、エナメル芽上皮細胞(歯エナメル質を分泌)、耳の前庭器の半月面上皮細胞(プロテオグリカンを分泌)、コルチ器の歯間上皮細胞(毛細胞を覆う蓋膜を分泌)、疎性結合組織線維芽細胞、角膜線維芽細胞、腱線維芽細胞、骨髄網様線維芽細胞、他の(非上皮)線維芽細胞、血管周囲細胞、椎間板の髄核細胞、セメント芽細胞/セメント細胞(歯根骨様セメント質を分泌)、象牙芽細胞/オドントサイト(歯の象牙質を分泌)、硝子軟骨の軟骨細胞、線維軟骨の軟骨細胞、弾性軟骨の軟骨細胞、骨芽細胞/骨細胞、前骨芽細胞(骨芽細胞の幹細胞)、眼の硝子体の硝子体細胞、耳の外リンパ腔の星細胞、収縮性細胞、赤色骨格筋細胞(遅)、白色骨格筋細胞(速)、中間骨格筋細胞、筋紡錘-核嚢細胞、筋紡錘-核鎖細胞、衛星細胞(幹細胞)、固有心筋細胞、結節心筋細胞、プルキンエ線維細胞、平滑筋細胞(種々の種類)、虹彩の筋上皮細胞、外分泌腺の筋上皮細胞、血液及び免疫系の細胞(種々の種類)、赤血球(赤血球細胞)、巨大球、単球、結合組織内マクロファージ(種々の種類)、上皮ランゲルハンス細胞、破骨細胞(骨の)、樹状細胞(リンパ組織の)、ミクログリア細胞(中枢神経系の)、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、ヘルパーTリンパ球細胞、抑制Tリンパ球細胞、キラーTリンパ球細胞、IgM Bリンパ球細胞、IgG Bリンパ球細胞、IgA Bリンパ球細胞、IgE Bリンパ球細胞、キラー細胞、血液及び免疫系の幹細胞ならびに関与する前駆細胞(種々の種類)、感覚変換器細胞、眼の光受容器杆体細胞、眼の光受容器青色感受性錐体細胞、眼の光受容器緑色感受性錐体細胞、眼の光受容器赤色感受性錐体細胞、コルチ器の聴覚性内有毛細胞、コルチ器の聴覚性外有毛細胞、耳の前庭器のI型有毛細胞(加速及び重力)、耳の前庭器のII型有毛細胞(加速及び重力)、I型味蕾細胞、嗅神経細胞、嗅上皮の基底細胞(嗅神経細胞の幹細胞)、I型頚動脈小体細胞(血液pHセンサー)、II型頚動脈小体細胞(血液pHセンサー)、表皮のメルケル細胞(触センサー)、触感受性一次感覚神経(種々の種類)、低温感受性一次感覚神経、高温感受性一次感覚神経、痛み感受性一次感覚神経(種々の種類)、自己受容性一次感覚神経(種々の種類)、自律神経細胞、コリン作動性神経細胞(種々の種類)、アドレナリン作動性神経細胞(種々の種類)、ペプチド作動性神経細胞(種々の種類)、感覚器及び末梢神経支持細胞、コルチ器の内柱細胞、コルチ器の外柱細胞、コルチ器の内指節細胞、コルチ器の外指節細胞、コルチ器の境界細胞、コルチ器のヘンゼン細胞、前庭器支持細胞、I型味蕾支持細胞、嗅上皮支持細胞、シュワン細胞、衛星細胞(末梢神経細胞体を封入する)、腸内グリア細胞、中枢神経系神経細胞及びグリア細胞、神経細胞(多種多様な種類が、まだほとんど分類されていない)、アストロサイトグリア細胞(種々の種類)、オリゴデンドロサイトグリア細胞、水晶体細胞、前水晶体上皮細胞、クリスタリン含有水晶体線維細胞、色素細胞、メラニン細胞、網膜色素上皮細胞、生殖細胞、卵原細胞/卵母細胞、精母細胞、精祖細胞(精母細胞の幹細胞)、ナース細胞、卵胞細胞、セルトリ細胞(精巣の)、及び胸腺上皮細胞を含む。
【0057】
場合によっては、細胞は、間葉系幹細胞(MSC)または骨髄間質細胞(BMSC)である。これらの用語は、本明細書全体を通して同義語として使用される。MSCは、骨髄の小さな吸引物または他の間葉系幹細胞源から簡単に分離でき、単一細胞由来のコロニーを容易に生成するため、興味深い。骨髄細胞は、腸骨稜、大腿骨、脛骨、脊椎、肋骨、膝、または他の間葉系組織から得ることができる。MSCの他の供給源には、胚性卵黄嚢、胎盤、臍帯、皮膚、脂肪、関節の滑膜組織、及び血液が含まれる。培養コロニー中のMSCの存在は、モノクローナル抗体で同定された特定の細胞表面マーカーによって確認することができる。米国特許第5,486,359号及び同第7,153,500号を参照のこと。単一細胞由来のコロニーは、約10週間で50もの集団に倍加によって拡大して、骨芽細胞、脂肪細胞、軟骨細胞(Friedenstein et al.,1970 Cell Tissue Kinet.3:393-403;Castro-Malaspina,et al.,1980 Blood 56:289-301;Beresford et al.,1992 J.Cell Sci.102:341-351;Prockop,1997 Science 276:71-74)、筋細胞(Wakitani et al,1995 Muscle Nerve 18:1417-1426)、星状細胞、乏突起膠細胞、及び神経細胞(Azizi et al.,1998 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:3908-3913;Kopen et al 1999 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:10711-10716;Chopp et al.,2000 Neuroreport II 300 1-3005;Woodbury et al.,2000 Neuroscience Res.61:364-370)に分化できる。まれに、細胞が3つの生殖系列すべての細胞に分化する場合がある。したがって、MSCは、骨、軟骨、靭帯、腱、脂肪、筋肉、心臓組織、間質、真皮、及び他の結合組織を含む、複数の間葉系細胞系統の前駆体として機能する。米国特許第6,387,369号及び同第7,101,704号を参照のこと。これらの理由から、MSCは現在、多くのヒトの疾患の細胞及び遺伝子治療における潜在的な使用について試験されている(Horwitz et al.,1999 Nat.Med.5:309-313;Caplan,et al.2000 Clin.Orthoped.379:567-570)。
【0058】
場合によっては、MSCは様々なマーカーで画定できる。例えば、MSCは、CD73、CD90、CD166に対して陽性であり、CD14、CD34及びCD45に対して陰性であり得る。
【0059】
細胞は、ヒトまたは他の動物に由来することができる。例えば、細胞は、マウス、モルモット、ラット、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、またはヤギに由来することができる。いくつかの実施形態にて、細胞は、非ヒト霊長類に由来する。場合によっては、細胞は、自家または同種治療として使用される。
【0060】
本発明の数多くの実施形態が説明されている。しかしながら、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく様々な修正が可能である点は理解されるであろう。したがって、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲の範疇である。
【実施例
【0061】
実施例1:高張液中の間葉系幹細胞に由来する細胞外物質
本明細書で言及されるように、「高張液」は、細胞から細胞外小胞(EV)または他の細胞由来物質を収集または抽出するために使用される、総浸透圧350mOsm/kg超に調製される。本明細書で言及されるEVは、エクソソーム、微小胞、及びアポトーシス小体とは異なる他の任意のEVを含む。本明細書で言及される細胞は、ヒト間葉系幹細胞(hMSC)であり得る。
【0062】
本発明の適用は、個々の細胞型の特定の要求によって制限されない。高張液の配合は、総浸透圧が350mOsm/kgを超える限り、様々な状況に適合するように変えることができる。1つの状況は、細胞接着または生存率が所望される場所である。溶液の浸透圧が443mOsm/kgまで増加したとき、溶液の浸透圧が658Osm/kgまで増加したとき、IMDMの浸透圧(301mOsm/kg)が498mOsm/kgまで増加したとき、細胞は接着/生存したままだった。これらのシナリオで、EV収量は、等張培地と比較して、30分以内で10倍超まで増加した。更に、開示された高張液は、等張培地が48時間にわたって生成できるよりも、12時間以内で多くのEVを生成した(図6)。
【0063】
異なるドナー及び配合の細胞生存率を監視して、特定の用途について確立することができ、当業者であれば、決定した用途のための特定の溶液の適切な浸透圧を決定することができる。更に、本明細書に開示された高張液の一例は、等張培地が48時間にわたって生成できるものよりも、30分以内により多くのEVを生成した(図6)。
【0064】
どちらの状況でも、より多くのEVがより速く生成される-これは、これらの実験では予想外だった独自の特性である(図6)。特に、EVは、アポトーシス小体を除去した後に、細胞培養上清を2,000rcfで20分間遠心分離することにより定量化した。したがって、培地の高張性は、細胞接着または生存率を低下させる可能性があるが、EVの増加は、アポトーシス小体の増加によるものではない。
【0065】
特段の記載がない限り、本明細書中で用いるすべての技術用語及び科学用語は、開示された発明が属する分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を持つ。本明細書で引用される出版物及び引用される資料は、特に引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0066】
当業者は、日常的な実験のみを用いて、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識する、または確認することができるだろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。
出願時の特許請求の範囲は以下の通り。

[請求項1]
濃縮された細胞外物質の集団を含む医薬組成物であって、前記細胞外物質が、320と1000mOsm/kgの間の浸透圧を含む、溶液に浸漬されている、前記医薬組成物。
[請求項2]
前記溶液が、1と20Osm/kgの間の浸透圧を含む濃縮物から調製される、請求項1に記載の医薬組成物。
[請求項3]
前記溶液が、in vitro細胞生存率を維持することができる成分を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
[請求項4]
前記溶液が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、塩化物、リン酸塩、酢酸塩、重炭酸塩、及び/またはクエン酸塩を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
[請求項5]
前記細胞外物質が生細胞に由来する、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[請求項6]
前記生細胞が、幹細胞、初代細胞、免疫細胞、それらの娘細胞、またはそれらの分化した派生物を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
[請求項7]
前記細胞が不死化された初代細胞である、請求項5または6に記載の医薬組成物。
[請求項8]
前記濃縮された細胞外物質の集団がカーゴを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[請求項9]
前記カーゴが内因性または外因性である、請求項8に記載の医薬組成物。
[請求項10]
前記カーゴが、CD9、CD63、CD81、コレステロール、ホスファチジルセリン、またはそれらの組み合わせである、請求項8または9に記載の医薬組成物。
[請求項11]
前記EMまたはそのカーゴが、血管新生、創傷治癒、分化、免疫調節、増殖、壊死/アポトーシス、因子の分泌、または新血管形成を促進する、請求項8~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[請求項12]
前記カーゴが、アンジオポエチン(Ang-1)である、請求項11に記載の医薬組成物。
[請求項13]
請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物の単離または精製された画分。
[請求項14]
前記濃縮された細胞外物質の集団またはその画分が、液体またはコロイド系に懸濁され、凍結、乾燥、凍結乾燥され、別の材料の表面に固定化され、または別の材料にカプセル化される、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[請求項15]
前記医薬組成物が、小分子、造影剤、防腐剤、安定剤、タンパク質、脂質、核酸、炭水化物、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせを含み、前記濃縮された細胞外物質の集団もしくはその画分の物理化学的特徴、生体内分布、薬物動態、薬力学、もしくは生物学的機能の永続的または一時的な変化に影響を及ぼす、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[請求項16]
前記細胞外物質もしくはその画分に融合される、他の細胞外物質、細胞、膜結合集合体、または脂質含有集合体を更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[請求項17]
前記細胞外物質が、50と1000nmの間の平均粒径または平均流体力学直径を有する、請求項1~16に記載の医薬組成物。
[請求項18]
前記細胞外物質が、負の表面電荷または負のゼータ電位を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[請求項19]
前記カーゴが、核酸分子、ポリペプチド、脂質、ホルモン、ビタミン、ミネラル、小分子、及び医薬品、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項8または9に記載の医薬組成物。
[請求項20]
前記医薬組成物が、パッチ形態である、請求項1~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[請求項21]
a.生細胞と、
b.細胞培地と、
c. 320mOsm/kgと20Osm/kgの間の浸透圧を持つ溶液と、を備える、キット。
[請求項22]
前記細胞が、幹細胞、初代細胞、不死化細胞、または遺伝子改変細胞を含む、請求項21に記載のキット。
[請求項23]
前記細胞が高張液なしで3日以上培養されている、請求項22に記載のキット。
[請求項24]
前記溶液が、タンパク質を含まない基本培地中にある、請求項23に記載のキット。
[請求項25]
前記細胞が、前記細胞外物質の物理化学的特徴、生体内分布、薬物動態、薬力学、もしくは生物学的機能の永続的または一時的な変化に影響を及ぼすように、遺伝子改変されている、請求項21~24のいずれか一項に記載のキット。
[請求項26]
前記細胞が細胞外物質を含む、請求項21~25のいずれか一項に記載のキット。
[請求項27]
前記細胞外物質が、前記細胞外物質からカーゴを変更、追加、または除去するように改変されている、請求項26に記載のキット。
[請求項28]
前記細胞外物質のために細胞を濃縮する方法であって、前記方法が、
a.浸透圧が320と1000mOsm/kgの間の溶液に細胞を浸漬することと、
b. 浸透圧が320と1000mOsm/kgの間の前記溶液中の細胞をインキュベートすることと、
c.前記細胞によって放出された細胞外物質を収集及び精製することと、含む、前記方法。
[請求項29]
前記細胞が、320と1000mOsm/kgの間の浸透圧を有する溶液中に浸漬またはインキュベートされていない細胞と比較して、細胞外物質の蓄積または産生の増加をもたらす、請求項28に記載の方法。
[請求項30]
前記細胞外物質の蓄積または産生の増加が、インキュベートする時間が同じとき、浸透圧が250と320mOsm/kgの間の溶液よりも、浸透圧が320と1000mOsm/kgの間の前記溶液の方が高い、請求項28または29に記載の方法。
[請求項31]
前記インキュベートする時間が、0.5~72時間の間のインキュベート時間である、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
[請求項32]
前記細胞が、前記細胞外物質の物理化学的特徴、生体内分布、薬物動態、薬力学、もしくは生物学的機能の永続的または一時的な変化に影響を及ぼすように、遺伝子改変されている、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
[請求項33]
前記細胞が、懸濁液中、固体基材(例えば、マイクロキャリア、フィルム、またはファイバー)上、軟性基材(例えば、ヒドロゲル、凝集体、単細胞溶液またはこれらの組み合わせ)上またはその内部にある、請求項28~32のいずれか一項に記載の方法。
[請求項34]
前記細胞が、工程a)の前に、浸透圧が250と320mOsm/kgの間の溶液に浸漬されている、請求項29~33のいずれか一項に記載の方法。
[請求項35]
工程b)の後、工程c)に進む前に、浸透圧が250と320mOsm/kgの間の溶液中に細胞を浸漬させることを更に含む、請求項28~34のいずれか一項に記載の方法。
[請求項36]
工程c)に進む前に、細胞を、浸透圧が250と320mOsm/kgの間の溶液と、浸透圧が320と1000mOsm/kgの間の溶液とに交互に浸漬させる、請求項35に記載の方法。
[請求項37]
前記溶液(複数可)が、ポンプ、重力、毛管現象、または対流によって動かされる流体の流れによって導入される、請求項28~36のいずれか一項に記載の方法。
[請求項38]
大気中の酸素が0%と20%の間で測定される、または溶存酸素が0%と80%の間で測定される、低酸素環境を更に含む、請求項28~37のいずれか一項に記載の方法。
[請求項39]
前記細胞及び前記溶液が、4と45℃の間の温度でインキュベートされる、請求項28~38のいずれか一項に記載の方法。
[請求項40]
前記細胞の有無にかかわらず、前記溶液のpHが6.5と8.0の間で測定される、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
[請求項41]
収集した細胞の少なくとも50%が、所望の機能を有する細胞外物質を含む、請求項28~40のいずれか一項に記載の方法。
[請求項42]
前記細胞外物質が、測定可能なバイオマーカーまたは測定可能な標的を有する、請求項28~41のいずれか一項に記載の方法。
[請求項43]
前記細胞外物質が、前記アッセイの測定可能な標的またはバイオマーカーを有する、請求項42に記載の方法を含む、分析アッセイ。
[請求項44]
必要としている対象を治療する方法であって、前記方法が、請求項28に記載の工程c)の細胞によって放出された前記細胞外物質を対象に投与することを含む、前記方法。
[請求項45]
請求項28~42のいずれか一項に記載の方法によって生成された細胞外物質。
[請求項46]
懸濁液または流体の流れの下で生細胞から生成される細胞外物質であって、前記細胞が、320と1000mOsm/kgの間の浸透圧を含む溶液に浸漬される、前記細胞外物質。
[請求項47]
前記溶液が、1と20Osm/kgの間の浸透圧を含む濃縮物から調製される、請求項46に記載の細胞外物質。
[請求項48]
前記溶液が、in vitro細胞生存率を維持することができる成分を含む、請求項46または47に記載の細胞外物質。
[請求項49]
前記生細胞が、幹細胞、初代細胞、免疫細胞、それらの娘細胞、またはそれらの分化した派生物を含む、請求項46~48のいずれか一項に記載の細胞外物質。
[請求項50]
前記細胞が不死化された初代細胞である、請求項46~49のいずれか一項に記載の細胞外物質。
[請求項51]
前記濃縮された細胞外物質の集団がカーゴを含む、請求項46~50のいずれか一項に記載の細胞外物質。
[請求項52]
細胞外物質を産生することができる生細胞を含むキットであって、前記細胞が、320と1000mOsm/kgの間の浸透圧を含む溶液に浸漬される、キット。
[請求項53]
前記細胞外物質が、前記細胞に天然に存在しない、請求項52に記載のキット。
[請求項54]
前記生細胞が、流体の流れの中または懸濁液中にある、請求項52または53に記載のキット。
[請求項55]
前記細胞が、マイクロキャリアに結合されている、請求項52~54のいずれか一項に記載のキット。
[請求項56]
前記細胞が、懸濁液または流体の流れでの培養を促進するように改変されている、請求項52~55のいずれか一項に記載のキット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B