(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】草本抽出物を調製するための担体システム
(51)【国際特許分類】
A61K 8/97 20170101AFI20240912BHJP
A61K 36/287 20060101ALI20240912BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20240912BHJP
C07C 37/88 20060101ALI20240912BHJP
C07C 39/00 20060101ALI20240912BHJP
C07C 7/20 20060101ALI20240912BHJP
C07C 11/00 20060101ALI20240912BHJP
A01N 43/16 20060101ALI20240912BHJP
A01N 59/00 20060101ALI20240912BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61K8/97
A61K36/287
A61K31/352
C07C37/88
C07C39/00
C07C7/20
C07C11/00
A01N43/16 A
A01N59/00 Z
A01P21/00
(21)【出願番号】P 2021557826
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(86)【国際出願番号】 GB2020050851
(87)【国際公開番号】W WO2020193997
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-23
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512021597
【氏名又は名称】エスアイエスエイエフ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SISAF LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】サフィー-シーベルト,ローハイ スザンナ
(72)【発明者】
【氏名】ステラ,フラヴィア マリア
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-504158(JP,A)
【文献】特開2005-65629(JP,A)
【文献】特開2013-213001(JP,A)
【文献】特表2009-502157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
C07C
A01N
A01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
10nm~1000nmの間の平均直径を有するシリコン
ナノ粒子を含む組成物中の生理活性草本抽出物を安定化するための方法であって、
トレハロースの存在下で、前記生理活性草本抽出物を前記シリコン
ナノ粒子と接触させることを含む、方法。
【請求項2】
前記トレハロースはシリコンに対して少なくとも1:10の重量比で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリコン
ナノ粒子を、少なくとも1つのアミノ酸の存在下で前記生理活性草本抽出物と追加的に接触させ、任意に、アミノ酸とケイ素の比率が0.05:1~2:1である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのアミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸、チロシン、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、ヒスチジン、スレオニン、アスパラギン及びグルタミンから選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記シリコン
ナノ粒子
は多孔性である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記生
理活性草本抽出物は、フェノール、ジフェノール、ポリフェノール、テルペン、ヘミテルペン、モノテルペン、イリドイド、セスキテルペン、ジテルペン、セスタテルペン、トリテルペン、ステロイド、テトラテルペン、ノリソプレノイド、フラボノイド、フラバノール又はフラバノンから選択される、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記生
理活性草本抽出物は、親水性化合物である、及び/又はスファランサス・インディクス抽出物、アサ植物抽出物、オリーブの木抽出物及びシトラスの木抽出物から選択され、任意に、前記生
理活性草本抽出物はケルセチンである、請求項1~
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
生理活性草本抽出物を安定化させるための組成物であって、
10nm~1000nmの間の平均直径を有するシリコン
ナノ粒子及び
トレハロースを含み、前記
トレハロースがシリコンに対して少なくとも1:10の重量比で存在する組成物。
【請求項9】
少なくとも1つのアミノ酸をさらに含み、任意に、アミノ酸とケイ素の比率は、0.1:1~2:1である、請求
項8に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1つのアミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸、チロシン、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、ヒスチジン、スレオニン、アスパラギン又はグルタミンから選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記シリコン
ナノ粒子は多孔性であ
る、請求項
8~
10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
生理活性草本抽出物をさらに含み、任意に、前記生理活性草本抽出物は、アニオン性分子又はカチオン性分子である、請求項
8~
11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
水性組成
物、又は、水に分散させるための粉
末である、請求項
8~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項
8~13のいずれか1項に記載の組成物を植物に投与することを含む、植物を害虫被害から保護する方法、又は該植物の真菌、細菌若しくは寄生虫感染を予防又は治療する方法、又は前記植物を酸化ストレスから保護する方法。
【請求項15】
前記植物はアサ植物である
、及び/又は前記生
理活性草本抽出物はケルセチンを含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草本抽出物を含有するための送達剤に関するものである。より詳細には、排他的ではないが、本発明は、安定化剤、送達剤、及び放出制御剤としてのシリコンナノ粒子の使用に関する。また、本発明は、関連する組成物及び方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
草本抽出物は、多くの用途に役立つ。例えば、伝統医学と現代医学の両方において、栄養補給の目的で、また植物を病原体から守るため等の治療に有用である。
【0003】
ゲノミクスやプロテオミクス分野の発展により、植物の代謝物や関連する抽出物をより詳細に分析する新たな機会が提供され、個々の成分の機能の理解が向上しているため、ヒトや動物の疾患の治療、及び微生物に対する植物の防御力を高めるための使用に新たな展望が開かれている。(Lundstromら、Medicines、2017、4、12)
【0004】
草本抽出物には、保存及び使用時に不安定な化学物質が含まれていることが多く、特に水性環境に配合して投与する場合には問題となる場合が多い。このため、有用な化合物の有効量を確保することが難しく、また、有毒な分解生成物が生成されることもある。
【0005】
例えば、スファランサス・インディクスの標本から抽出された、天然フラボノイド化合物のケルセチン(3,3’,4’,5,7-ペンタヒドロキシフラボン)及びルテオリン(3’,4’,5,7-テトラヒドロキシフラボン)は、いずれも抗酸化作用、抗アレルギー作用、抗炎症作用を示す重要な生理活性分子である。しかしながら、両者とも酸素や他の酸化剤に曝されると不安定になり、その化学部分が分解されてしまう。(Ramesovaら、Anal.Bioanal.Chem.、2016、402、975)
【0006】
ポリフェノールの酸化のメカニズム及び水性環境での安定性は、ヒドロキシ化合物の酸化経路と溶液中の様々な解離形態の分布に支配されている。
【0007】
フラボノイド化合物及びポリフェノールを含む草本抽出物、特に水性組成物を安定化させることが求められている。植物界には、昆虫、菌類、ウイルス及びバクテリアに対する防御機能等、様々な機能を持つ何千もの化合物が存在し、非常に貴重な資源となっているが、化合物の安定性が低いため、その可能性が十分に活かされていない。
【0008】
本発明は、草本抽出物を安定化させるために、及び/又は草本抽出物の担体として、シリコン含有粒子を使用することに基づいている。シリコン含有粒子は、親水性化合物を安定化し得る親水性環境を提供でき、それにより、親水性化合物が結合し得る環境を提供するため、水性組成物に配合した場合よりも長い半減期を有し得るため、特に有用である。しかし、これは、疎水性脂質とも関連している可能性があり、マイクロスフィアカプセル化技術を親水性草本化合物の安定化に拡張することができる。
【0009】
また、シリコン含有材料は無害であるという点でも利点がある。シリコン含有材料は、マイクロ粒子やナノ粒子として製造され得、人体にも自然環境にも無害であると一般的に考えられている安定化剤として使用され得る。
【0010】
ケイ素
ケイ素は、動植物にとって必須の微量元素である。ケイ素は、哺乳類の結合組織マトリックスに含まれるタンパク質-グリコサミノグリカン複合体の構成要素として構造的な役割を果たしているほか、成長及び骨形成における代謝的な役割も担っている(ケイ素は骨のミネラル化のプロセスに関与している)。したがって、ケイ素は骨や結合組織の正常な発達に不可欠である。また、ケイ素は皮膚の健康にも重要な役割を果たしていることが知られており、コラーゲン及びエラスチンの生成を促進し、体内の抗酸化プロセスにも関与している。また、グリコサミノグリカンの生成にも関与しており、ケイ素に依存した酵素は、自然な組織構築プロセスの利点を高めている。
【0011】
ケイ素の表面を操作するには検討が必要である。なぜなら、ケイ素の表面への薬物分子の結合は、表面エネルギーに大きく依存するからである。表面を水酸化させると、表面接触角が小さくなり、極性分子の結合が有利になる。また、表面の酸化物が成長すると、表面の接触角が大きくなり、疎水性分子の結合が促進される。したがって、活性剤の充填量及び放出速度を制御するためには、粒子径と表面化学の両方を考慮に入れる必要がある。
【0012】
本発明者らは、シリコン含有ナノ粒子を含む組成物において、生理活性草本抽出物を安定化させる方法を開発した。
【発明の概要】
【0013】
本発明の第1の様態によれば、シリコン粒子を含む組成物中の生理活性草本抽出物を安定化させる方法であって、少なくとも1つの非還元性二糖類の存在下で、生理活性草本抽出物をシリコン粒子と接触させることを含む方法が提供される。
【0014】
生理活性草本抽出物とシリコン粒子の結合は、任意に、1つ以上の追加の化合物、例えばアミノ酸及び/又は脂質化合物の存在下で行われてもよい。
【0015】
本発明の第2の様態によれば、本発明の第1の様態による調製されたシリコン粒子と、任意に1つ以上のさらなる成分とを含む組成物が提供される。
【0016】
本発明の第3の様態によれば、医薬品として使用するための、本発明の第1の様態による調製されたシリコン粒子又は本発明の第2の様態による組成物が提供される。
【0017】
本発明の第4の様態によれば、1つ以上の生理活性草本抽出物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む病状を治療する方法であって、1つ以上の生理活性草本抽出物が、本発明における第2の様態の実施形態による組成物として投与されることを特徴とする方法が提供される。
【0018】
本発明の第5の様態によれば、本発明における第2の様態の実施形態による組成物を対象に投与することを含む、該対象に化粧品の利点を提供する方法が提供される。
【0019】
本発明の第6の様態によれば、生理活性草本抽出物が1つ以上の植物保護化合物を含む、本発明における第2の様態の実施形態による組成物を植物に投与することを含む、該植物を保護する方法が提供される。
【0020】
当然ながら、本発明の一様態に関連して説明された特徴は、本発明の他の様態に組み込まれてもよいことが理解される。例えば、本発明の方法は、本発明の組成物及び他の製品に関連して記載された特徴のいずれかを組み込んでもよく、その逆もまた同様である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】スファランサス・インディクスの草本抽出物をそれぞれエタノール、蒸留水、メタノール及びクロロホルムに分散させた、最初の4つのチューブを示す写真である。チューブの底部を見ると、草本抽出物を溶媒に分散させた後に、不溶性の沈殿物が見られることがわかる。チューブ5~8にはそれぞれ、スファランサス・インディクスの草本抽出物を蒸留H
2Oに分散させた後に濾過したもの、H
2Oで冷間抽出した後に1:10に希釈して得た溶液、H
2O(75℃)で熱間抽出した後に1:10に希釈して得た溶液、H
2O(75℃)で熱間抽出した後に得た溶液が示されている。
【
図2】熱水(75℃)抽出後のスファランサス・インディクスの濾過液、スファランサス・インディクスのハーブパウダー、及び濾過後の濾紙の外観を示す写真である。
【
図3】スファランサス・インディクスを濾過した熱水のUV-Vis吸収分析の経時変化を示す。グラフは、24時間にわたる検出可能な最大吸光度の変化を示している。個々のラベルは見ることができないが、322nm、263nm及び195nmにピークがある。下の線は、上の線よりも遅い時点で記録されている。
【
図4】UV-Vis吸光スペクトルは、線A(原文ではオレンジ色)が0時間後の水中のスファランサス・インディクスの草本抽出物、線B(原文では赤色)が24時間後の水中のスファランサス・インディクスの草本抽出物、線C(原文では緑色)が0時間後の水中のシリコン粒子及びトレハロースで安定化させたスファランサス・インディクスの草本抽出物、線D(原文では青色)が24時間後の水中のシリコン粒子及びトレハロースで安定化させたスファランサス・インディクスの草本抽出物を示す。
【
図5】スファランサス・インディクス抽出物の24時間にわたる吸光度の変化を示す。グラフの偏差は、0時間から24時間までの吸光度の変化を表す。スファランサス・インディクスの水性抽出物のみが、分解に対して有意な感受性を示した(丸印)。同じ抽出液をトレハロースのみ(四角)、ケイ素のみ(直立三角形)で処理したものは、同じ分析期間で一定の安定性を示した。また、トレハロースとシリコン粒子の相乗効果による水中での抽出物の安定化も見られる(逆三角形)。
【
図6】トレハロースで安定化させたスファランサス・インディクスの24時間後(A)、96時間後(B)、254時間後(C)、350時間後(D)のUV-Vis吸光スペクトルを示す。
【
図7】活性化されたシリコン粒子で安定化させたスファランサス・インディクスの24時間後(A)、96時間後(B)、254時間後(C)、350時間後(D)のUV-Vis吸光スペクトルを示す。
【
図8】活性化されたシリコン粒子及びトレハロースで安定化させたスファランサス・インディクスの24時間後(A)、96時間後(B)、254時間後(C)、350時間後(D)のUV-Vis吸光スペクトルを示す。
【
図9】安定化方法の違いによるスファランサス・インディクス抽出物の350時間後の吸光スペクトルの変化をグラフ化したものを示す。
【
図10】緩衝液(Buffer NaClと表示)を噴霧して塩に曝露したアサ植物、本発明の送達システムのみ(Platform NaClと表示)を噴霧して塩に曝露したアサ植物、及びケルセチンを担持する送達システム(2つの製剤、それぞれSiSaf1 NaCl及びSiSaf2 NaClと表示)を噴霧したアサ植物を示す写真である。各処理を施した植物は、Control NaClと表示された対照塩害アサ植物(処理を施さなかったもの)の隣に置かれている。カラー写真では、緩衝剤のみで処理した葉と対照葉が、送達システムで処理した葉と比較して、特にケルセチンを含む送達システムで処理した葉と比較して、目に見える褐色化を示している。緩衝剤のみで処理した葉と対照葉を、送達システムで処理した葉、特にケルセチンを含む送達システムで処理した葉と比較して、目に見える枯れを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第1の様態によれば、生理活性草本抽出物(例えば、ケルセチンを含む抽出物等のスファランサス・インディクス抽出物、1つ以上のカンナビノイドを含む抽出物等のアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物又は柑橘類の木抽出物等のうちの1つ以上)を、シリコン粒子を含む組成物中で安定化させる方法が提供され、その方法は、少なくとも1つの非還元性二糖類(例えば、トレハロース又はトレハロースを含む混合物)の存在下で、生理活性草本抽出物をシリコン粒子と接触させることを含む。
【0023】
シリコン粒子
本発明のすべての態様によれば、組成物はシリコン粒子を含む。いくつかの実施形態(例えば、生物活性草本抽出物が、ケルセチンを含む抽出物などのスファランサス・インディクス抽出物、1つ以上のカンナビノイドを含む抽出物などのアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物、又は柑橘類の木抽出物である場合;及び/又は非還元性二糖類はトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合)では、20~400nm、例えば50~350nm、例えば80~310nm、例えば100~250nm、例えば120~240nm、例えば150~220nm、例えば約200nmの公称径を有するシリコンナノ粒子である。他の実施形態(例えば、生物活性草本抽出物が、ケルセチンを含む抽出物などのスパーランサス・インディカス抽出物、1つ以上のカンナビノイドを含む抽出物などのアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物、又は柑橘類の木抽出物である場合;及び/又は非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合)では、それらは0.2~40mmの公称径を有するシリコン微粒子である。例えば、0.5mm~35mm、0.8mm~31mm、1mm~25mm、1.2mm~22mm、2mm~15mm、5mm~10mmなどである。前述の公称径は、平均直径を指していてもよく、シリコンナノ粒子のサンプル中の全粒子の少なくとも90%が、指定されたサイズ範囲内に収まっていてもよい。粒子は多孔質であることが好ましい。それらは、純粋なシリコン又は加水分解可能なシリコン含有材料のいずれかでできている。シリコン粒子は、フッ化水素酸(HF)/エタノール混合液に粒子を接触させて電流を流す等の標準的な手法によって多孔質にし得る。HFの濃度や電流密度、照射時間を変化させることで、孔の密度及び大きさを制御し得、走査型電子顕微鏡写真及び/又は窒素吸着脱離体積等温線測定によってモニターし得る。
【0024】
シリコン粒子は、純粋なケイ素又は別のシリコン含有材料であってもよい。いくつかの実施形態(例えば、生理活性草本抽出物が、ケルセチンを含む抽出物等のスファランサス・インディクス抽出物、1つ以上のカンナビノイドを含む抽出物等のアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物、又は柑橘類の木抽出物である場合、及び/又は非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合)では、純粋なケイ素でない場合、それらは好ましくは少なくとも50、60、70、80、90又は95%のケイ素を含み、好ましくは同じ寸法の純粋なシリコン粒子の加水分解率の少なくとも10%の加水分解率(例えば、室温でPBS緩衝液中)を示している。シリコン含有材料の加水分解のアッセイは、当技術分野で広く知られており、例えば、国際公開第2011/001456号に記載されている。
【0025】
本発明のすべての様態による粒子は、好ましくは多孔質である。例えば、それらの多孔性は、同等の大きさの非多孔性材料の表面積に比べて、少なくとも1.5、2、2.5、3、3.5又は4倍の表面積に増加させてもよい。いくつかの実施形態(例えば、生理活性草本抽出物が、ケルセチンを含む抽出物等のスファランサス・インディクス抽出物、1つ以上のカンナビノイドを含む抽出物等のアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物、又は柑橘類の木抽出物である場合、及び/又は非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合)では、それらの総表面積は、多孔性によって、対応する非多孔性粒子の表面積よりも少なくとも50%又は少なくとも100%増加することが好ましい。多くの場合、多孔質シリコン粒子は、実際には、その多孔質性によって総表面積がはるかに大きく増加する。
【0026】
いくつかの実施形態(例えば、生理活性草本抽出物が、ケルセチンを含む抽出物等のスファランサス・インディクス抽出物、1つ以上のカンナビノイドを含む抽出物等のアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物、又は柑橘類の木抽出物である場合、及び/又は非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合)では、シリコン粒子は、20~300nm、例えば20~290nm、20~280nm、20~270nm、20~260nm、20~250nm、20~240nm、20~230nm、20~220nm、20~210nm、特に20~200nmの平均直径を有している。皮膚塗布に関連するいくつかの適用では、シリコンナノ粒子が小さすぎて毛包脂腺又は汗管(毛穴)を塞ぐことができないが、単に生理活性草本抽出物の表面リザーバとして機能するのではなく、積極的に毛包の底に浸透することができるようなサイズであることが有利である。
【0027】
非還元性二糖類
本発明のすべての様態(例えば、生理活性草本抽出物が、ケルセチンを含む抽出物等のスファランサス・インディクス抽出物、1つ以上のカンナビノイドを含む抽出物等のアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物、又は柑橘類の木抽出物である場合)によれば、関連する製品又は方法には、少なくとも1つの非還元性二糖類が含まれる。非還元性二糖類は、任意に、スクロース、トレハロース、ラフィノース、スタキオース及びベルバスコース、又はそれらのいずれかの混合物から選択されてもよく、最も好ましくは、非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である。
【0028】
非還元性二糖類とケイ素の比率
好ましくは、非還元性二糖類(例えば、トレハロース又はトレハロースを含む混合物)は、ケイ素に対する重量比で、少なくとも1:1000、少なくとも1:100、少なくとも1:50、少なくとも1:10、少なくとも1:1、又は少なくとも1:0.5で存在する。好ましくは、非還元性二糖類は、任意にそのような重量比で存在するトレハロースである。
【0029】
アミノ酸
本発明におけるすべての様態の特定の実施形態(例えば、生理活性草本抽出物が、ケルセチンを含む抽出物等のスファランサス・インディクス抽出物、1つ以上のカンナビノイドを含む抽出物等のアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物、又は柑橘類の木抽出物である場合、及び/又は非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合)によれば、シリコン粒子は、さらにアミノ酸(例えば、アルギニンとグリシンの一方又は両方)と接触させられる。最も広い意味で、「アミノ酸」という用語は、アミン(-NH2)及びカルボキシル(-COOH)官能基を含む人工又は天然の有機化合物を包含している。α、β、γ、δのアミノ酸も含む。任意のキラル配置のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態によれば、天然に存在するα-アミノ酸であることが好ましい。タンパク質生成アミノ酸であってもよく、非タンパク質生成(カルニチン、レボチロキシン、ヒドロキシプロリン、オルニチン又はシトルリン等)の天然に存在するアミノ酸であってもよい。特に、アルギニン、ヒスチジン、又はグリシン、又はアルギニン及びグリシンの混合物からなることが好ましい。
【0030】
したがって、本発明の医療的又は化粧料的に適合する組成物は、表面に接触した粒子が、活性のある医薬的又は化粧料的な薬剤である生理活性草本抽出物(例えば、スファランサス・インディクス抽出物、ケルセチンを含む抽出物、1つ以上のカンナビノイドを含む抽出物等のアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物、又は柑橘類の木抽出物)と、アミノ酸(好ましくは、アルギニン、グリシン、ヒスチジン及びそれらの混合物から選択され、最も好ましくは、アルギニン及びグリシンの両方)とを含む。
【0031】
好ましい実施形態(例えば、非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合)によれば、本発明のすべての様態の製品に存在する生理活性草本抽出物(例えば、ケルセチンを含む抽出物等のスファランサス・インディクス抽出物、1つ以上のカンナビノイドを含む抽出物等のアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物、又は柑橘類の木抽出物)の少なくとも80重量%、例えば少なくとも90重量%が、シリコン粒子に関連している。任意で、例えばアルギニンとグリシンの一方又は両方等のアミノ酸が提供される。
【0032】
生理活性の草本類抽出物(例えば、ケルセチンを含むスファランサス・インディクス抽出物、1つ以上のカンナビノイドを含むアサの抽出物、オリーブの木抽出物、柑橘類の木抽出物等)とシリコン粒子が分子的に結合することで、生理活性のある草本類の抽出物が生物学的に利用可能になり、制御された方法で放出されるようになる。放出速度は、過量放出を回避するため、及び/又は粒子が目的の場所に到達したときにのみ放出するために制御され得る。
【0033】
アミノ酸(例えば、アルギニンとグリシンの一方又は両方)及び二糖類(例えば、トレハロース又はトレハロースを含む混合物)を用いると、シリコン粒子に担持された生理活性草本抽出物(ケルセチンを含む抽出物等のスファランサス・インディクス抽出物、カンナビノイドを含む抽出物等のアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物、柑橘類抽出物等)を有益に安定化させる効果があることがわかっている。特に、アミノ酸及び二糖類の使用は、体液又は屋外環境で、生理活性草本抽出物を安定化させることがわかっている。
【0034】
本発明のすべての様態の特定の実施形態によれば、二糖類を接触させたシリコン粒子(例えば、トレハロース又はトレハロースを含む混合物を接触させたシリコン粒子)をさらにアルギニンと接触させる。シリコン粒子をアルギニンで表面処理した後、生理活性草本抽出物(例えば、ケルセチンを含むスファランサス・インディクス抽出物、1種類以上のカンナビノイドを含むアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物、柑橘類の木抽出物等)を担持させると、アルギニン前処理をしていない粒子に比べて、抽出物の生体液中での安定性が向上することが確認された。
【0035】
アミノ酸とケイ素の比率
好ましくは、アミノ酸(例えば、アルギニンとグリシンの一方又は両方)とケイ素の重量比は、0.05:1~2:1、例えば、0.05:1~1.8:1、0.05:1~1.6:1、0.05:1~1.4:1、0.05:1~1.2:1、0.05:1~1:1、0.05:1~0.9:1、0.05:1~0.8:1、0.05:1~0.6:1、0.05:1~0.5:1、0.05:1~0.4:1、0.05:1~0.3:1、0.05:1~0.2:1、好ましくは0.2:1~0.8:1、特に0.3:1~0.7:1であることが好ましい。有利なことに、アミノ酸とケイ素の比率は、シリコン粒子によって運ばれる生理活性草本抽出物(例えば、ケルセチンからなる抽出物等のスファランサス・インディクス抽出物、1つ以上のカンナビノイドからなる抽出物等のアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物、又は柑橘類の木抽出物)の放出速度にさらに影響を与え、安定化させる。
【0036】
本発明のすべての態様(例えば、生理活性草本抽出物が、ケルセチンを含む抽出物等のスファランサス・インディクス抽出物、1つ以上のカンナビノイドを含む抽出物等のアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物、又は柑橘類の木抽出物である場合、及び/又は非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合)によれば、アミノ酸は任意のアミノ酸であってもよい。好ましくは、アミノ酸は、アルギニン若しくはグリシン、又はグリシンとアルギニンの組み合わせである。いくつかの実施形態では、アミノ酸はアルギニンとグリシンの組み合わせであり、Arg:Glyの比率は、質量比で1:0.6~3:1、例えば1:0.8~2.5:1、例えば1:1~2:1である。
【0037】
本発明のすべての様態のいくつかの実施形態によると(例えば、生理活性草本抽出物が、ケルセチンを含む抽出物等のスファランサス・インディクス抽出物、1つ以上のカンナビノイドを含む抽出物等のアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物、又は柑橘類の木抽出物である場合、及び/又は非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合)、二糖類に接触したシリコン粒子は、アルギニンにも接触する。好ましくは、アルギニンとケイ素の比率は、質量比で0.05:1~0.4:1、例えば0.08:1~0.35:1、特に0.09:1~0.32:1である。有利なことに、このような比率は、生理活性草木抽出物の高い放出速度を提供することがわかっている。
【0038】
アルギニンが0.2:1(Arg:Si)以下の比率で存在しても、生理活性草本抽出物の放出を促進する効果がない。しかしながら、このような低量であっても、アルギニンは生理活性草本抽出物(例えば、生理活性草本抽出物が、ケルセチンを含む抽出物等のスファランサス・インディクス抽出物、1種類以上のカンナビノイドを含む抽出物等のアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物、柑橘類の木抽出物等の場合)の安定性に寄与する。
【0039】
本発明のすべての様態の特定の実施形態(例えば、生理活性草本抽出物が、ケルセチンを含む抽出物等のスファランサス・インディクス抽出物、1つ以上のカンナビノイドを含む抽出物等のアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物、又は柑橘類の木抽出物である場合、及び/又は非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合)によれば、二糖類と接触した粒子は、さらにヒスチジンと接触される。有利なことに、非還元性二糖類(例えば、トレハロース又はトレハロースを含む混合物)と組み合わせて使用した場合、ヒスチジンの生理活性草本抽出物の安定性が向上することが認められた。これは、pH5.12~pH7.12の範囲で、組成物の緩衝効果が向上するためと考えられる。好ましくは、ヒスチジンとケイ素の比率は、質量比で0.05:1~0.4:1、例えば0.08:1~0.5:1、特に0.35:1~0.45:1の範囲である。ヒスチジンは、アルギニン及び/又はグリシンの非存在下で存在してもよく、ヒスチジンがアルギニン又はグリシン又はそれらの混合物に加えて存在してもよい。
【0040】
有利には、この比率により、生理活性草本抽出物の放出速度を高くすることができる(例えば、生理活性草本抽出物が、ケルセチンを含む抽出物等のスファランサス・インディクス抽出物、1つ以上のカンナビノイドを含む抽出物等のアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物、柑橘類の木抽出物である場合)。
【0041】
本発明のすべての様態の特定の実施形態(例えば、生理活性草本抽出物が、ケルセチンを含む抽出物等のスファランサス・インディクス抽出物、1つ以上のカンナビノイドを含む抽出物等のアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物、又は柑橘類の木抽出物である場合、及び/又は非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合)によれば、二糖類と接触した粒子は、さらにグリシンと接触される。有利には、グリシンは、動物又はヒトの細胞内でのシリコン粒子の細胞質への浸透を促進する。ケイ素に対するグリシンの比率が高いと、生理活性草本抽出物の放出速度が速くなる。
【0042】
本発明のすべての様態の他の実施形態(例えば、生理活性草本抽出物が、ケルセチンを含む抽出物等のスファランサス・インディクス抽出物、1つ以上のカンナビノイドを含む抽出物等のアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物、又は柑橘類の木抽出物である場合、及び/又は非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合)によれば、シリコン粒子はグリシンとさらに接触させられる。有利なことに、このような組成物は、生理活性草本抽出物の放出が時間の経過とともにプラトーに達することを可能にする。特に、生理活性草本抽出物の制御された放出が、12時間にわたって提供されてもよい。
【0043】
本発明の第2の様態のいくつかの実施形態では、経時的に薬物を徐放するための送達システムとして使用するために、少なくとも1つの非還元性二糖類(例えば、トレハロース又はトレハロースを含む混合物)及び任意に少なくとも1つのアミノ酸(例えば、アルギニンとグリシンの一方又は両方)と接触させたシリコン粒子を含む組成物が提供される。組成物は、好ましくは水性組成物又は水/油エマルジョン又は水性ゲルである。組成物は、例えば、水性クリーム、注射用懸濁液、ヒドロゲル又はパッチであってもよい。
【0044】
オイル
本発明のすべての様態の特定の実施形態(例えば、生理活性草本抽出物が、ケルセチンを含む抽出物等のスファランサス・インディクス抽出物、1つ以上のカンナビノイドを含む抽出物等のアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物、又は柑橘類の木抽出物である場合、及び/又は非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合)では、組成物はさらに少なくとも1つの油を含む。有利なことに、本発明の組成物にオイルを含めることで、臭気マスキング、生理活性草本抽出物の観察された浸透/浸透速度の向上(例えば、皮膚全体又は植物組織への浸透)、及び油/水界面での難溶性による沈殿を克服することができる両親媒性界面の形成という有益な効果が得られる。
【0045】
好ましい実施形態では、オイルは、リモネン、ココナッツオイル、オレガノオイル、ゴマ油、亜麻仁油又はそれらの組み合わせから選択される。
【0046】
特定の実施形態では、オイルは、リモネン、ココナッツオイル又はそれらの組み合わせから選択される。有利なことに、このようなオイルの使用は、魚油(例えば、オメガ3魚油)等のにおいをマスキングするのに有効であることが実証されている。
【0047】
特定の実施形態では、油は、リモネン、オレガノオイル、ゴマ油、又はそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、本組成物はオレガノオイルとゴマ油を含む。有利には、これらの油は、生理活性草本抽出物(例えば、疎水性生理活性草本抽出物)の充填、ビヒクル化、及び送達を容易にすることが実証されている。特定の実施形態では、シリコン粒子:オレガノオイル:ゴマ油の質量比は、1.6:4.5:3.8である。
【0048】
本発明のすべての様態の別の実施形態では、オイルはリモネンである。有利なことに、組成物にリモネンを含めることは、追加の油成分を含まないシリコン粒子と比較して、シリコン粒子に担持された生理活性草本抽出物(例えば、疎水性生理活性草本抽出物)の皮膚浸透速度が高めることが示されている。特に、油分をさらに含む本発明の第2の様態の実施形態では、担持したシリコン粒子の油中水分布の悪さを克服するために、粒子の両親媒性を向上させることがわかった。これは、生理活性草本抽出物が疎水性ペプチドである場合に特に当てはまる。
【0049】
本発明の特定の実施形態(例えば、草本抽出物が疎水性草本抽出物である場合)によれば、少なくとも1つのオイルは、組成物中に少なくとも1、5、10、20、30若しくは40重量%、又は最大で1、5、10、20、30若しくは40重量%のレベルで存在する。
【0050】
生理活性草本抽出物
本発明のすべての様態の好ましい実施形態(例えば、非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合;任意にそのような例では、グリシン及びアルギニンのうちの1つ以上等の1つ以上のアミノ酸が提供される場合)によれば、生理活性草本抽出物は、例えば根、茎、樹皮、葉、種子、果実又は花等の植物材料から抽出された1つ以上の化合物である。それは生の抽出物であってもよく、適当な程度に精製したものであってもよい。それは、特定の好ましい実施形態による1つ以上の有機化合物である。それらの有機化合物の少なくとも1つ(好ましくは、モル換算で優勢な有機化合物)は、フェノール、ジフェノール又はポリフェノールである化合物から選択される。それらは、好ましくは、フラボノイド、フラボノール、イソフラボノイド、ネオフラボノイド、フラボンであってもよい。
【0051】
特定の実施形態(例えば、非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合;任意にそのような例では、グリシン及びアルギニンのうちの1つ以上等の1つ以上のアミノ酸が提供される場合)によれば、本発明のすべての様態に従った生理活性草本抽出物は、好ましくは、フェノール、ジフェノール又はポリフェノールから選択される化合物を含む。
【0052】
特定の実施形態(例えば、非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合;任意にそのような例では、グリシン及びアルギニンのうちの1つ以上等の1つ以上のアミノ酸が提供される場合)によれば、フェノールは、カンナビノイド、カプサイシン、カバシオール、フィトエステルゲン、オイゲノール、没食子酸、グアラコール、サリチル酸メチル、4-(4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オン(ラズベリーケトン)、カリシル酸、アスピリン、チモール又はセサモールであってもよい。
【0053】
あるいは、いくつかの実施形態において(例えば、非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合;任意にそのような例では、グリシン及びアルギニンのうちの1つ以上等の1つ以上のアミノ酸が提供される場合)、生理活性草本抽出物は、テルペン(例えば、プレノール又は3-メチルブタン酸等のヘミテルペン);ゲラニオール、テルピネオール、リモネン、ミルセン、リナロール又はピネン等のモノテルペン;アウクビン又はカタルポール等のイリドイド;フムレン、ファルネソール、ファルネセン、カジネン、カリオフィレン、ベチバズレン、グアイアズレン、リンギフォレン、コパネン又はパッチロール等のセスキテルペン;ゲラニルゲラニルピロリン酸、カフェストール、カフエオール、センブレン、タキサジエン、タキソール、レチノール、レチナール又はフィトール等のジテルペン;セスタテルペン;トリテルペン;ステロイド、リコペン等のテトラテルペン又はカロテン;3-オキソ-オキソール、7,8-ジヒドロイオノン、メガスチグマン-3,9-ジオール又は3-オキソ-7,8-ジヒドロ-α-イオノール等のノルイソプレノイド等であってもよい。
【0054】
あるいは、いくつかの実施形態(例えば、非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合;任意にそのような例では、グリシン及びアルギニンのうちの1つ以上等の1つ以上のアミノ酸が提供される場合)では、生理活性草本抽出物は、フラボノイド(例えば、アピゲニン、ルテオリン、タンゲレチン、クリシン、6-ヒドロキシフラボン、7,8-ジヒドロキシフラボン、バイカレイン、スクテラレイン又はオウゴニン等のフラボン);ケルセチン、ケンペロール、ミリセチン、イソラムネチン等のフラボノール及びその配糖体;エリオジクチオール、ヘスペレチン、ヘスペリジン、ポンシリン、サクラネチン、サクラニン、ステルビン、ピノストロビン、ホミオエリオジクチオール、イソサクラネチン、ナリンゲニン、ナリンジン、ピノセムブリン等のフラバノン配糖体;カテキン、エピカテキンガレート、エピゴロカテキン、エピカロカテキンガレート等のフラバノール;プロアントシアニジン;テアフラビン;テアルビジン;アランチニジン、シアニジン、ペオニジン、ペツニジン、デルフィニジン等のアントシアニン類であってもよい。
【0055】
いくつかの実施形態(例えば、非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合;任意にそのような例では、グリシン及びアルギニンのうちの1つ以上等、1つ以上アミノ酸が提供される場合)では、生理活性草本抽出物は、オリーブの木抽出物、柑橘類の木抽出物、スファランサス・インディクス植物抽出物、又はアサ植物抽出物等の草本抽出物であってもよい。生理活性草本類抽出物は、ケルセチンであってもよく、ケルセチンを含んでいてもよい。例えば、生理活性草本抽出物は、ケルセチンを含むスファランサス・インディクス植物抽出物であってもよい。
【0056】
いくつかの実施形態(例えば、非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合;任意にそのような例では、グリシン及びアルギニンのうちの1つ以上等の1つ以上のアミノ酸が提供される場合)では、生理活性草本抽出物は、カンナビジオール、テトラヒドロカンナビノール及びカンナビゲロールのうちの1つ以上等、1つ以上のカンナビノイドを含んでいてもよい。生理活性草本抽出物は、テトラヒドロカンナビノール、テトラヒドロカンナビノール酸、カンナビジオール、カンナビジオール酸、カンナビノール、カンナビゲロール、カンナビクロメン、カンナビシクロール、カンナビバリン、テトラヒドロカンナビバリン、カンナビジバリン、カンナビクロメバリン、カンナビゲロバリン、カンナビゲロバリン、カンナビゲロールモノメチルエーテル、カンナビエルソイン及びカンナビシトラン等の1つ以上等、1つ以上のカンナビノイドを含んでいてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態(例えば、非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合;任意にそのような例では、グリシン及びアルギニンのうちの1つ以上等の1つ以上のアミノ酸が提供される場合)では、生理活性草本抽出物は、タキソール、クルクミン、アロエエモジン、グリチルリチン、コウジ酸、シロバナルーピン抽出物、又はレベリン、モルヒネ、キニン、エフェドリン、ホモハリントニン、ガランタミン、ビンカミン、キニジン、ケレリスリン又はピペリン等の植物であってもよい。具体的な化合物としては、以下のものが考えられる。
【0058】
【0059】
いくつかの実施形態(例えば、非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合;任意にそのような例では、グリシン及びアルギニンのうちの1つ以上等の1つ以上のアミノ酸が提供される場合)では、生理活性草本抽出物は、昆虫及び病原体に対する植物の防御に役割を持つことが知られている二次代謝産物であってもよい。他の実施形態では、生理活性草本抽出物は、ヒト又は動物の健康に有用な栄養素であってもよい。いくつかの実施形態では、生理活性草本抽出物は、例えばケルセチンのようなスファランサス・インディクスからの抽出物である。
【0060】
いくつかの実施形態(例えば、非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合;任意にそのような例では、グリシン及びアルギニンの1つ以上等の1つ以上のアミノ酸が提供される場合)では、生理活性草本抽出物は、通常、水溶液中で不安定な、例えば生理的食塩水中で10、20又は30時間未満の半減期を有する、本明細書に記載の化合物である。
【0061】
シリコン粒子が少なくとも1つの非還元性二糖類、例えば、スクロース、トレハロース、ラフィノース、スタキオース及びベルバスコースから選択される非還元性二糖類、特にトレハロース、又はトレハロースを含む混合物等と接触すると、生理活性草本抽出物(例えば、ケルセチンを含む抽出物等のスファランサス・インディクス抽出物、1つ以上のカンナビノイドを含む抽出物等のアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物等又は柑橘類の木抽出物)が特によく安定することがわかっている。
【0062】
その他の構成要素
本発明のすべての様態の特定の実施形態(例えば、非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である場合;任意にそのような例では、グリシン及びアルギニンのうちの1つ以上等の1つ以上のアミノ酸が提供される場合)では、組成物は、シリコン粒子に帯電した生理活性草本抽出物を担持することをさらに含む。本発明のすべての様態の特定の実施形態では、シリコン粒子は、カチオン性生理活性草本抽出物を担持している。本発明のすべての実施形態の別の態様では、シリコン粒子は、アニオン性生理活性草本抽出物を担持している。
【0063】
本発明の組成物(例えば、非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である組成物;任意にそのような例では、例えばグリシン及びアルギニンのうちの1つ以上等の1つ以上のアミノ酸が組成物中に提供される)は、好ましくは、1つ以上の生理活性草本抽出物の医薬品有効成分(API)をさらに含み、例えば、各APIは、組成物全体の重量に対して、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、4%、6%、8%、10%、15%、20%又は25%まで存在してもよい。
【0064】
生理活性草本抽出物(例えば、ケルセチンを含む抽出物等のスファランサス・インディクス抽出物、1種類以上のカンナビノイドを含む抽出物等のアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物、柑橘類の木抽出物等)は、シリコン粒子と関連して配置されていることが好ましい。
【0065】
本発明の第2の様態は、本発明の組成物(例えば、非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である組成物;任意にそのような組成物では、アルギニン及びグリシンの1つ以上等のアミノ酸が提供されてもよい)及び1つ以上のさらなる成分を提供する。これらの成分は、通常、1つ以上の賦形剤を含むが、任意に1つ以上の生理活性剤をさらに含んでもよい。
【0066】
最も適した投与経路は、例えば、投与対象の状態や疾患によって異なるが、本発明による組成物は、経口、非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内及び関節内を含む)、吸入(様々なタイプの定量加圧エアロゾル、噴霧器又は注入器によって生成される微粒子ダスト又はミストを含む)、直腸及び局所(皮膚、経皮、経粘膜、頬、舌下及び眼内を含む)投与に適したものを含む。
【0067】
本組成物は、便宜上、単位投与量の形態で提供されてもよく、製剤分野でよく知られている方法のいずれかによって調製されてもよい。すべての方法は、活性成分を、1つ以上の付属成分を構成する担体と関連付けるステップを含む。一般に、組成物は、シリコンナノ粒子を液体担体若しくは細かく分割された固体担体又はその両方と均一且つ密接に結合させ、必要に応じて生成物を所望の配合物に成形することによって調製される。
【0068】
経口投与に適した本発明の組成物は、所定の量の活性成分を含むカプセル、オブラート又は錠剤等の個別のユニットとして;粉末又は顆粒として;水性液体又は非水性液体中の溶液又は懸濁液として;又は水中油型液体エマルジョン又は油中水型液体エマルジョンとして提示されてもよい。活性成分は、ボーラス、舐剤又はペーストとして提示されてもよい。医薬的に許容される様々な担体とその処方は、標準的な処方の専門書、例えばE.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。また、Wang,Y.J.及びHanson,M.A.によるJournal of Parenteral Science and Technology、Technical Report No.10、Supp.42:2S、1988も参照する。
【0069】
錠剤は、圧縮又は成形によって、任意に1つ以上の付属成分を加えて製造されてもよい。圧縮錠剤は、粉末又は顆粒等の流動性のある形態の活性成分を、バインダー、潤滑剤、不活性希釈剤、潤滑剤、界面活性剤又は分散剤等と任意に混合して、適切な機械で圧縮することによって調製されてもよい。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械で成形することによって製造されてもよい。錠剤は、任意にコーティング又はスコアリングされていてもよく、中の活性成分をゆっくりと又は制御して放出するように処方されていてもよい。
【0070】
経口投与用の例示的な組成物として、例えば、嵩高性を付与するための微結晶セルロース、懸濁化剤としてのアルギン酸又はアルギン酸ナトリウム、粘度増強剤としてのメチルセルロース、及び当技術分野で知られているような甘味料又は香味料を含み得る懸濁液;及び例えば、微結晶性セルロース、リン酸二カルシウム、デンプン、ステアリン酸マグネシウム並びに/若しくはラクトース、及び/又は当技術分野で知られているような他の賦形剤、バインダー、増量剤、崩壊剤、希釈剤及び潤滑剤等を含み得る即放性錠剤を含む。成形錠剤、圧縮錠剤又は凍結乾燥した錠剤は、使用されてもよい例示的な形態である。例示的な組成物として、マンニトール、ラクトース、スクロース及び/又はシクロデキストリン等の速溶性希釈剤と本発明の化合物を配合したものを含む。また、セルロース(アビセル)又はポリエチレングリコール(PEG)等の高分子量の賦形剤を配合してもよい。このような製剤には、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(SCMC)、無水マレイン酸コポリマー(例えば、Gantrez(登録商標))等の粘膜付着を助ける賦形剤、及びポリアクリルコポリマー(例えば、Carbopol(登録商標)934)等の放出制御剤も含み得る。また、製造及び使用を容易にするために、潤滑剤、滑剤、香料、着色剤及び安定剤等を加えてもよい。
【0071】
非経口投与用の組成物として、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤及び組成物を目的のレシピエント血液と等張にする溶質を含む水性及び非水性の無菌注射液と、懸濁剤や増粘剤を含む水性及び非水性無菌懸濁液とを含む。組成物は、例えば密封されたアンプルやバイアル等の単位用量又は複数用量の容器で提示されてもよく、使用直前に生理食塩水や注射用水等の無菌液体担体を添加することのみを必要とする凍結乾燥(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。
【0072】
非経口投与用の例示的な組成物として、例えば、マンニトール、1,3-ブタンジオール、水、リンガー溶液、生理食塩液等の適切な非毒性で非経口的に許容される希釈剤若しくは溶媒、又は合成モノ又はジグリセリド、及びオレイン酸を含む脂肪酸若しくはCremophor(登録商標)を含む他の適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤をさらに含み得る本発明の組成物の注射用懸濁液を含む。水性担体は、例えば、pH約3.0~pH約8.0好ましくはpH約3.5~pH約7.4、例えばpH3.5~pH6.0、例えばpH3.5~pH約5.0の等張性緩衝液であってもよい。有用な緩衝剤として、クエン酸ナトリウム-クエン酸、リン酸ナトリウム-リン酸、酢酸ナトリウム/酢酸緩衝剤を含む。この組成物は、好ましくは、酸化剤及び任意の活性成分に悪影響を及ぼすことが知られている他の化合物を含まない。含み得る賦形剤は、例えば、ヒト血清アルブミン又は血漿製剤等のタンパク質である。また、必要に応じて、組成物は、湿潤剤若しくは乳化剤、防腐剤、pH緩衝剤等の非毒性補助物質、例えば酢酸ナトリウム又はモノラウリン酸ソルビタン等を少量含んでもよい。
【0073】
鼻腔エアロゾル又は吸入投与用の例示的な組成物として、例えば、ベンジルアルコール又は他の適切な防腐剤、生物学的利用能を高めるための吸収促進剤、及び/又は当技術分野で知られているような他の可溶化剤又は分散剤を含み得る生理食塩水中の溶液を含む。鼻腔エアロゾル又は吸入投与用の組成物において、本発明の組成物は、適切な粉末吸入器で伝達されてもよい。このような吸入器で使用するための、例えばゼラチン等のカプセル及びカートリッジは、化合物の粉末混合物、及び例えばラクトース又はデンプン等の適切な粉末ベースを含むように処方され得る。
【0074】
直腸投与用の組成物は、ココアバター、合成グリセリドエステル又はポリエチレングリコール等の通常の担体を用いて、保持浣腸剤や坐薬として提示されてもよい。このような担体は、通常、常温では固体であるが、直腸腔内で液化及び/又は溶解して薬剤を放出する。
【0075】
腔内、例えば頬側や舌下への局所投与用組成物として、スクロース及びアカシア又はトラガント等のフレーバーベースに有効成分を含むトローチ剤と、ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシア等のベースに有効成分を含むパステル剤とを含む。局所投与用の例示的な組成物として、Plastibase(登録商標)(ポリエチレンでゲル化した鉱油)等の局所用担体を含む。
【0076】
いくつかの実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、生理活性草本抽出物の単一の有効量又はその適切な分量を含む単位用量組成物である。
【0077】
本発明の組成物は、上述した成分に加えて、当該組成物の種類に応じて従来の薬剤を含んでいてもよく、例えば、経口投与に適した組成物は香料を含んでいてもよいことを理解すべきである。
【0078】
また、本発明の組成物は、徐放性システムとして好適に投与されてもよい。本発明の徐放性システムの適切な例として、例えば成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセル等の形態の半透過性ポリマーマトリックス等の適切なポリマー材料;例えば許容可能な油中のエマルジョン等の適切な疎水性材料;又はイオン交換樹脂;及び例えば疎水性塩等の本発明の化合物の疎水性誘導体を含む。徐放性システムは、経口投与、直腸投与、非経口投与、膀胱内投与、膣内投与、腹腔内投与、例えば、粉末、軟膏、ゲル、ドロップ又は経皮パッチ等の局所投与、頬投与、舌下投与又は口腔内若しくは鼻腔内スプレーとして投与されてもよい。
【0079】
治療上有効な量の生理活性草本抽出物又は化粧品上有効な量の生理活性草本抽出物は、1回のパルス投与、ボーラス投与、又は例えば1日、1週間若しくは1ヶ月等の長期にわたって投与されるパルス投与として投与されてもよい。
【0080】
多くの好ましい実施形態では、本発明の組成物は、局所用クリーム又はゲルであり、例えば、本発明の組成物が懸濁されたクリームベースを含む、皮膚又は別の体表面への局所的な適用に適した、医薬的に適合する又は化粧料的に適合するクリーム又はゲルを含んでいてもよい。
【0081】
医薬的又は化粧料的に適合するクリームは、クリームベースを含んでいる。クリームベースは、通常、油中水又は水中油のエマルジョンである。好ましくは、油相が脂質、ステロール及び軟化剤の混合物を含む水中油型のエマルジョンである。
【0082】
医薬的又は化粧料的に適合するゲルは、ゲルの液相中に分散させた本発明の組成物を含む。ゲルは、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド又はアガロース、メチルセルロース、ヒアルロン酸、エラスチン様ポリペプチド、カルボマー(ポリアクリル酸)、ゼラチン又はコラーゲン等の架橋ポリマーを含むハイドロゲル(コロイドゲル)であることが好ましい。
【0083】
本発明の組成物は、バッキング層と粘着フィルムを含む粘着パッチの形態であってもよく、当該粘着フィルムは本発明による組成物又は本発明による組成物を含むクリーム若しくはゲルを含む。
【0084】
本発明によるパッチは、典型的には経皮パッチであり、繊維、ポリマー又は紙であってパッチを外部環境から保護するバッキング層、任意に膜、例えばバッキング層を介したフルオロウラシルの移動を防止するポリマー膜、及び接着剤から構成されている。本発明の組成物は、接着剤層又はパッチのリザーバに提供されてもよく、ゲルがパッチ製品(いわゆる「モノリシック」デバイス)内のリザーバとして機能してもよい。
【0085】
パッチは、最終使用者による不注意又は不適切な使用の可能性を減少させることにより、対象物の正しい投与量を確保するのに有用であり得る。さらに、パッチは治療部位を限定することで、他の部位への不用意な拡散を防ぐ。
【0086】
本発明の第3の様態によれば、医薬品として使用するための本発明の組成物(例えば、非還元性二糖類がトレハロースである組成物、又はトレハロースを含む混合物;任意にアルギニン及びグリシンの1つ以上等のアミノ酸をそのような組成物で提供してもよい)が提供される。
【0087】
任意に、その医薬品は、本発明の組成物に含まれる生理活性草本抽出物を必要とする対象の治療に使用されてもよい。
【0088】
例えば、本発明の組成物が抗炎症剤を含む場合、その医薬品は、炎症、損傷又は痛みの治療又は予防するのに使用されてもよい。
【0089】
本発明の組成物が免疫抑制剤を含む場合、その医薬品は、過敏症、アレルギー、移植臓器の拒絶反応、花粉症、ペットアレルギー、アレルギー性鼻炎又は蕁麻疹の治療又は予防するのに使用されてもよい。
【0090】
本発明の組成物が鎮痛剤又は解熱剤を含む場合、その医薬品は、痛みや発熱の治療又は予防するのに使用されてもよい。
【0091】
本発明の組成物が抗真菌剤を含む場合、その医薬品は、真菌感染症、例えばカンジダ症、クリプトコックス髄膜炎、水虫、いんきんたむし又は真菌性爪感染症等の治療又は予防するのに使用されてもよい。
【0092】
本発明の組成物が抗ウイルス化合物を含む場合、その医薬品は、ウイルス感染症の治療又は予防するのに使用されてもよい。
【0093】
本発明の組成物が抗寄生虫化合物を含む場合、その医薬品は、寄生虫の感染又は侵入の治療又は予防するのに使用されてもよい。
【0094】
本発明の組成物が抗生物質等の抗菌性化合物を含む場合、その医薬品は、細菌感染症の治療又は予防するのに使用されてもよい。
【0095】
本発明の組成物が抗腫瘍性化合物を含む場合、その医薬品は、癌等の腫瘍性状態を治療又は予防するのに使用されてもよく、特に、本発明の製品を局所的に適用する皮膚又は他の体表面の癌を治療するのに使用されてもよい。
【0096】
本発明の組成物が麻酔薬を含む場合、その医薬品は、対象の麻酔状態を誘発又は持続させるのに使用されてもよい。
【0097】
本発明の組成物が筋弛緩剤を含む場合、その医薬品は、例えば、痙攣を特徴とする状態の治療として、又は手術前の前投薬として、対象に筋弛緩を与えるために使用されてもよい。
【0098】
本発明の組成物が抗高血圧剤を含む場合、その医薬品は、高血圧の治療又は予防するのに使用されてもよい。
【0099】
本発明の組成物が抗不安剤を含む場合、その医薬品は、不安の治療又は予防するのに使用されてもよい。
【0100】
本発明の組成物がホルモンを含む場合、その医薬品は、更年期障害、又は糖尿病、成長障害、性腺機能低下症、甲状腺疾患又は骨粗鬆症等のホルモンの欠乏によって引き起こされる状態を治療又は予防するのに使用されてもよい。
【0101】
本発明の組成物が避妊剤を含む場合、その医薬品は、妊娠を防ぐために使用されてもよい。
【0102】
本発明の組成物が抗うつ剤を含む場合、その医薬品は、うつ病の治療又は予防するのに使用されてもよい。
【0103】
本発明の組成物が抗てんかん剤を含む場合、その医薬品は、てんかんの治療又は予防するのに使用されてもよい。
【0104】
本発明の組成物が傾眠剤を含む場合、その医薬品は、不眠症の治療又は予防するのに使用されてもよい。
【0105】
本発明の組成物が制吐剤を含む場合、その医薬品は、吐き気及び/又は嘔吐を治療又は予防するのに使用されてもよい。
【0106】
本発明の組成物が抗精神病化合物を含む場合、その医薬品は、精神病の治療又は予防するのに使用されてもよい。
【0107】
本発明の組成物が殺精子性化合物を含む場合、その医薬品は殺精子剤として、任意にバリア避妊具と組み合わせて使用されてもよい。
【0108】
本発明の組成物が勃起不全(ED)薬を含む場合、その医薬品は、勃起不全を治療又は予防するのに使用されてもよい。
【0109】
本発明の組成物が眼潤滑剤を含む場合、その医薬品は、ドライアイの状態を治療又は予防するのに使用されてもよい。
【0110】
本発明の組成物が下剤を含む場合、その医薬品は、便秘の治療又は予防するのに使用されてもよい。
【0111】
本発明の組成物が胆汁酸封鎖剤、腸内増量剤又はセロトニンアゴニストを含む場合、その医薬品は、下痢の治療又は予防するのに使用されてもよい。
【0112】
本発明の組成物が食欲抑制剤を含む場合、その医薬品は、肥満の治療又は予防するのに使用されてもよい。
【0113】
本発明の第4の様態によれば、1つ以上の生理活性草本抽出物(例えば、ケルセチンを含む抽出物等のスファランサス・インディクス抽出物、1つ以上のカンナビノイドを含む抽出物等のアサ植物抽出物、オリーブの木抽出物又は柑橘類の木抽出物のうちの1つ以上)の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、病状を治療する方法が提供される。生理活性草本抽出物は、本発明の第2の様態の実施形態による医薬組成物(例えば、非還元性二糖類がトレハロース又はトレハロースを含む混合物である組成物;任意にこのような組成物では、アルギニン及びグリシンのうちの1つ以上等のアミノ酸が提供される)として投与される。
【0114】
本発明の第4の様態の特定の好ましい実施形態によれば、病状は本発明の第3の様態に関して上述した病状の1つであり、生理活性草本抽出物は、特定の状態を治療又は予防するという文脈において、任意に上述した薬学的活性剤の1つである。
【0115】
本発明の第5の様態によれば、本発明の第1の様態に従って調製された組成物又は本発明の第2の様態に従って調製された組成物を対象に投与することを含む、対象に化粧品の利点を提供する方法が提供される。
【0116】
本発明の第5の様態による方法は、任意に、皮膚の保湿、皮膚の軟化、皮膚の老化の外観の減少、加齢に伴う皮膚のシミの外観の減少、皮膚の色むらの減少、皮膚の美白、傷跡の目立ちの減少、皮膚の赤みの減少、又は皮膚表面の毛細血管の外観の減少から選択される美容上の利点を提供することができる。このような方法は、好ましくは、本発明の外用組成物を皮膚に投与することである。
【0117】
本発明の第5の様態による方法は、髪、爪及びまつ毛に美容上の利点を与える方法も含む。このような方法は、任意に、それぞれ、シャンプー又はヘアコンディショナー又は強壮剤;マニキュア又はクリーム;又はマスカラである組成物を対象に投与することを含んでもよい。
【0118】
本発明の第6の様態によれば、本発明の第2の様態の実施形態による組成物を植物(例えば、アサ植物)に投与することを含む、該植物を保護する方法が提供され、ここで、生理活性草本抽出物は、植物保護化合物、例えば、殺虫剤、昆虫忌避剤又は植物栄養剤(例えば、スファランサス・インディクス抽出物;生理活性草本抽出物は、ケルセチンを含んでもよい)を含む。このような方法は、植物をウイルス性、真菌性又は細菌性の病気から守る方法、又は植物を酸化ストレスから守る方法を含む。
【0119】
自然界では、フェノール化合物は、例えば感染時等、植物の防御に関与している。それは、例えば抗真菌性ファイトアレキシン、イソフラボノイド、プテロカルパン、フロクマリン、フラバン、スチルベン又はフェナントレン化合物等であってもよい。
【0120】
前述の説明の中で、整数又は要素が言及されている場合、既知の、明白な、又は予見可能な同等物がある場合、そのような同等物は、個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれている。本発明の真の範囲を決定するためには、特許請求の範囲を参照すべきであり、特許請求の範囲は、そのような同等物を包含するように解釈されるべきである。また、好ましい、有利な、便利な等と記載されている本発明の整数又は特徴は任意であり、独立請求項の範囲を限定するものではないことが理解されるであろう。さらに、そのような任意の整数又は特徴は、本発明のいくつかの実施形態では有益である可能性があるものの、他の実施形態では望ましくない可能性があり、したがって、存在しない可能性があることを理解されたい。
【0121】
シリコン粒子の調製
本発明に関連するシリコン粒子は、当技術分野における従来の技術、例えば、ミリングプロセス又は粒径を小さくするための他の既知の技術によって便利に調製されてもよい。それらは、ケイ酸ナトリウム粒子、コロイドシリカ又はシリコンウエハ材料から作られたシリコン含有粒子であってもよい。マクロ、ミクロ又はナノスケールの粒子は、ボールミル、遊星ボールミル、プラズマ若しくはレーザーアブレーション法、又は他のサイズ減少メカニズムで粉砕される。得られた粒子は、必要なサイズの粒子を回収するために空気分級されてもよい。また、プラズマ法及びレーザーアブレーションを用いて粒子を製造することも可能である。
【0122】
多孔質粒子は、本明細書に記載されている方法を含め、当技術分野で従来から行われている方法で調製されてもよい。
【0123】
クリーム及びゲルの調製
クリーム及びゲルは、本発明のシリコン粒子をクリーム又はゲルベースに分散させる(すなわち、混合させる)だけで調合されてもよい。例えば、シリコン粒子を医薬品のクリームベースに攪拌してもよい。ゲルに関しては、粉末を粉末のままゲルマトリックスに撹拌してからゲルを水和させてもよく、あらかじめ水和させたゲルに撹拌してもよい。
【0124】
パッチの調製
パッチは、任意の適切な方法で製剤化されてもよく、例えば、粘膜付着性の親水性ゲルを含むパッチが製造されてもよい。ゲルは、その中に本発明のシリコンナノ粒子を分散させて製造してもよく、ゲルは、任意に、穏やかな水の蒸発によって乾燥させて必要な接着特性を備えたフィルムにしてもよい。
【0125】
ハーブ抽出物の安定化を目的としたシリコンベースマトリックスの調製
固体シリコンメソポーラスナノ粒子の調製(米国特許出願公開第2012/0128786号明細書に既述)において、本発明によれば、様々な物質を以下の割合で使用する。
a)トレハロース等の非還元性二糖類は、最終的な乾燥粉末の総重量に対して0.1~10%、好ましくは0.5~8%の範囲で存在する。
b)ハーブエキスの量は、最終的な乾燥粉末の総重量に対して0.001~25%の範囲である。
c)微粒子を立体的に安定化させるのに適した物質の量は、乾燥粉末の総重量に対して0.01~2.5重量%の範囲である。
d)電子電荷安定剤の量は、最終的な乾燥粉末の総重量に対して0.1~2.5%の範囲である。
e)このような官能化シリコン粒子の細孔構造及び長距離細孔秩序を維持するために、草本抽出物とシリカ前駆体との間の凝縮速度の違いにより、任意の方法で組み込まれた官能基の数は、表面被覆率の25%を超えてはならない。担持の効率は、有機官能基の性質に依存する。
f)このような最終製品は、米国特許出願公開第2012/0128786号明細書に記載されているように、得られた微粒子粉末を水性及び/又は油性の最終配合物の中で混合することによって、ヒト/動物用の医薬製品及びサプリメントに使用され得る。
g)このような最終製品は、植物学的用途に使用され得る。最終製品は、植物病原体、アブラムシ及び寄生虫に対する抗生物質及び抗ウイルス活性が証明された特定の草本抽出物分子と同様に、植物サプリメントを投与するために、粉末又は水性懸濁液等の水性製剤として投与され得る。このような最終製品は、処理されるべき植物の特定の部分、すなわち葉及び/又は木部管並びに土壌に投与可能な製品として意図されている。
h)このような組成物は、特定の植物代謝産物の発現を改善するための植物学的投与に使用され得る。
本発明は、先行技術のプロセスに関して、生理活性草本抽出物又はその任意の誘導体の水性環境における生物学的利用能及び半減期の両方を、それらの投与の前後で評価的に改善しながら、選択した生理活性草本抽出物を安定した状態で維持する可能性を提供する。
【0126】
方法1
この方法では、シリコンナノ粒子を使用して、水性環境下でスファランサス・インディクス草本抽出物の安定化を図る。
1.粉末状の草本抽出物を0.1g計量し、ビーカーに入れる。
2.粉末状の草本抽出物に蒸留水(室温)75mlを加える。
3.磁力で10分間、溶液を攪拌する。木質系の残渣及び灰分が含まれているため、撹拌後に不溶性の残渣が発生する。
4.ワットマン濾紙を用いて溶液を濾過し、漏斗及びビーカーを用いて濾液を回収する。
5.得られた濾液は、透明で黄褐色を呈する。
6.この濾過された溶液に、0.0075gの活性化されたシリコンナノ粒子パウダー(100nm)(粒子はメタノールで洗浄することによって活性化され、その後蒸発によって除去される)を加える(全体積の1%w/v)。
7.濾過された溶液にトレハロース0.075gを加える(全体積の10%w/v)。
8.得られた水溶液を10分間超音波処理する。得られた水溶液は15日間安定である。
【0127】
方法2
この方法では、シリコンナノ粒子を使用して、水性環境下でスファランサス・インディクス草本抽出物を安定化させる。安定化した抽出物は、脂質のシェルでコーティングされる。
1.草本植物材料を粉砕して粉末状の材料を製造する。
2.粉末状の草本抽出物0.1gをビーカーに秤量する。
3.末状の草本抽出物に蒸留水(室温)75mlを加える。
4.磁力で10分間攪拌する。木質系の残渣及び灰分が含まれているため、撹拌後に不溶性の残渣が発生する。
5.上記溶液を、濾紙、漏斗及びビーカーを使って濾過し、濾液を回収する。
6.得られた濾液は透明で黄褐色を呈する。
7.活性化されたシリコンパウダー(活性化は方法1と同様に行われた)0.0075gを、濾過された溶液に加える(全体積の1%w/v)。
8.この濾過された溶液にトレハロース0.075gを加える(全体積の10%w/v)。
9.水溶液中の活性化されたシリコンパウダーに、アルギニン4mgとグリシン2mgを加える。
10.レシチン16mgを有機溶媒混合液[CHCl3:CH3OH、4:1]に溶かす。
11.レシチン溶液を丸底フラスコに入れ、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、レシチン皮膜を形成する。
12.生成したレシチン皮膜を、草本抽出物、活性化されたシリコンパウダー、トレハロース、アルギニン及びグリシンを含む水溶液を用いて、ボルテックスで振って、冷蔵庫で3時間放置した後、冷凍庫に移して(-25℃)4時間程度放置する。
13.一晩凍結乾燥させて、溶媒を蒸発させて乾燥した粉末にする。
14.乾燥した粉末を水で戻す。
【0128】
植物保護製品の調製
植物保護化合物は、粉末、溶液若しくは懸濁液(例えば水溶液又は懸濁液)、又は乾燥粉末として適用されてもよく、そのように便利に配合されてもよい。
【実施例】
【0129】
実施例1:シリコン粒子の調製及びその活性化
片面研磨されたP型又はN型シリコンウエハは、ドイツのSi-Mat社から購入した。洗浄剤及びエッチング剤は、すべてクリーンルームグレードのものを使用した。基板には、抵抗率0.005Vcm-1の高濃度ドープのP++型Si(100)ウエハを用いた。また、低圧化学気相成長法を用いて、200nmの窒化シリコン層を成膜した。EVG 620コンタクト露光装置を用いて、標準的なフォトリソグラフィでパターンを形成した。多孔質ナノ粒子は、フッ化水素酸(HF)とエタノール(3:7v/v)の混合液中で、80mAcm-2の電流密度を25秒間印加して形成した。また、HFとエタノールの比率が2:5(v/v)の49%混合液中で、320mAcm-2の電流密度を6秒間印加して高孔質層を形成した。小さい孔は、HF(49%)とエタノール(3:7v/v)の混合液中で、80mAcm-2の電流密度を25秒間印加することで形成され得る。具体的な事例では、HF(49%)とエタノール(1:1v/v)の混合液中で、6mAcm-2の電流密度を1.75分間印加することで孔を形成した。HFで窒化物層を除去した後、イソプロピルアルコール中で1分間超音波をかけて粒子を放出した。走査型電子顕微鏡写真(SEM)により、主に半球状の形状を決定した。細孔のサイズは、窒素吸着-脱着体積等温線によって決定され得る。エッチング後、純粋なエタノールで洗浄し、使用前に乾燥した高純度窒素の流れの下で乾燥させた。
【0130】
エッチングを施したP+又はN-のシリコンウエハをボールミル及び/又は乳棒と乳鉢を用いて粉砕した。レッチェ社のふるい径38μmとシェーカーAS200を用いて微粉末をふるい分けた。選択したサイズ(20~100μm)での均一性は、ふるいの開口サイズによって達成される。粒子径は、マルバーン社のQuantachromeシステムとPCSで測定した。サンプルは、今後使用するまで密閉容器に保管した。
【0131】
また、ナノシリコンパウダーはシグマ社及び中国のHefel Kaier社から入手した。充填及びエッチングを施す前に、PCSで粒径を測定し記録した(粒径は20~100nmの範囲)。シリコンウエハは、ボールミル又は乳鉢と乳棒を用いて粉砕した。レッチェ社のふるい径38μmとシェーカーAS200を用いて微粉末をふるい、所望のサイズの均一なナノ粒子を回収した。
【0132】
シリコンナノ粒子の活性化
エタノール250mLと直径30nmの多孔質シリコンナノ粒子500mgを混合し、30分間撹拌した。その後、この溶液を3000rpmで30分間遠心分離した。上澄み液を捨て、ナノ粒子を5mLの蒸留水で洗浄し、丸底フラスコに移した。フラスコの中身を凍結させた(-25℃で2時間)。凍結したナノ粒子を、凍結乾燥機を用いて一晩かけて凍結乾燥させた。その得られた乾燥粉末が、活性化されたシリコンナノ粒子である。
【0133】
実施例2:スファランサス・インディクス草本抽出物の特性評価
Gorakhmundiハーブとして、スファランサス・インディクス抽出物、植物全体の粉末(Dr Wakde’s Natural Health Care、London)を購入した。記載の組成は、総灰分28%、酸不溶性灰分7%、アルコール可溶性抽出物3%、水溶性抽出物12%であった。薄茶色の粉末で、特徴的なにおいがある。
【0134】
実施例3:スファランサス・インディクス草本抽出物の溶解度
上述の粉末を秤量し、異なる溶媒に分散させて、草本抽出物の最大溶解度を調べた。試験は20℃で行い、各溶媒における粉末の初期濃度は1mg/mlとした。使用した溶媒は、蒸留水、メタノール、エタノール及びクロロホルムである。
【0135】
結果
1mg/mlの濃度では、草本抽出物はすべての溶媒に不完全に溶解した。これは、草本抽出物に含まれる酸不溶性灰分及び/又は木質残渣によるものと考えられる。
【0136】
実施例4:スファランサス・インディクス粉末の水抽出
澄んだ溶液を得るために、乾燥粉末0.1gを75mlの蒸留水に75℃で溶解した。この溶液を濾紙で濾過した。固体残渣を20℃の蒸留水でさらに抽出して第2の溶液を得、その溶液を再び濾紙で濾過した。
【0137】
蒸留水をゼロイングブランクとして、波長190~800nmのUV-Vis光吸収分析を行った。装置が飽和しないように、溶液を蒸留水で1:10に希釈した。
【0138】
UV-Vis分析は、島津製作所の分光光度計UV-1800を用いて行った。コンピュータ統合装置(UV-Probeソフトウェア)と石英キュベット、Quart Suprasil Hellma(登録商標)10*2mm、ダブルビーム活性化モードを使用した。
【0139】
結果
濾過された溶液はいずれも黄色がかった透明な色を呈していた。
図1は、スファランサス・インディクスのハーブパウダー、熱水抽出液及び使用した濾紙の外観を示している。
【0140】
光吸収分析の結果を
図3に示しており、この図は抽出後30分ごとに得られたスペクトルを重ね合わせたものである。吸収のピークは、322nm、263nm及び195nmに見られる。ピークの強度は、時間の経過とともに減少した。これは、ピークの原因となる化合物の濃度が室温で24時間以内に低下するため、溶液が不安定であることを示している。
【0141】
図3では個々のスペクトルを容易に区別し得ないため、以下では0時間と24時間でのデータを表形式で示す。
【0142】
【0143】
考察
草本抽出物の乾燥粉末は、固体状態ではそれなりの安定性を示すように見えるが、溶液中ではスファランサス・インディクス抽出物中の化合物は安定性が非常に低い安定性を示している。これは、急速な酸化によるものと考えられる。同様の結果は、他の草本抽出物でも見られる。溶液中での酸化は多くの化合物で問題となるが、草本抽出物では特に問題となる。なぜならば、草本抽出物にはフェノール類等の化合物が多く含まれる傾向があり、これらの化合物は植物の損傷に対する防御機構の一部として環境中で容易に酸化するように進化してきたからである。このことは、医薬、植物保護、化粧品及び他の用途において、溶媒で運ばれた形態がしばしば必要とされたり、好まれたりするものの、分解によって急速に役に立たなくなり得るため、そのような植物化学物質の有用性を制限する。
【0144】
実施例5:スファランサス・インディクス抽出物の安定性向上
本実験では、非還元性二糖類トレハロースで処理された本発明に係るシリコン粒子を用いて、水性環境下でスファランサス・インディクス抽出物を安定化し得ることを示した。
【0145】
公称径が100nmの活性化されたシリコン粒子を、実施例5のプロトコルに従って調製した。
【0146】
スファランサス・インディクス抽出物の溶液を、方法2及び3に従って、トレハロース、活性化されたシリコン粒子、又はトレハロースと活性化されたシリコン粒子の両方で処理した。
【0147】
調整したサンプルは、蒸留水に24時間懸濁させる前と後で上記実施例に記載したようにUV-Vis分光光度計を用いて光吸収を分析した。比較として、新鮮に得られたが未処理の抽出物も分析した。
【0148】
結果
結果の概要を以下の表に示す。(THR=トレハロース、Sph ind=スファランサス・インディクス抽出物)
【0149】
【0150】
表のデータからわかるように、未処理のスファランサス・インディクス抽出物は、蒸留水で24時間後に完全に分解されている。このような安定性の低さは、これまでの実施例の結果を裏付けるものである。
【0151】
トレハロース及び/又は活性化されたシリコン粒子で処理すると、吸光度のピーク位置(λmax)又はピークの高さ(Abs)にはほとんど変化が見られず、安定性が向上した。これは、本発明に基づくトレハロース及び活性化されたシリコン粒子による抽出物中の化合物の安定化を示す証拠である。吸収スペクトルの変化が最も少ないことからもわかるように、最も完全な安定化は、活性化されたシリコン粒子とトレハロースの組み合わせで処理した抽出物で観察された。
【0152】
図4は、このデータをフルスペクトルで示したものである。200nm~400nmの間のピークは、新鮮な抽出物(線A)と、活性化されたシリコン粒子とトレハロースで安定化させた抽出物(線C=0時間、線D=24時間)に存在するが、安定化させていない抽出物では、このピークは24時間後には消失していることがわかる(線B)。
【0153】
図5は、各サンプルの0時間後と24時間後の吸光度の差(損失)をグラフ化したものである。活性化されたシリコン粒子とトレハロースは、どちらも草本抽出物を安定化させる効果があるが、両剤で安定化させたサンプルが最も安定していることがわかる。
【0154】
実施例6:15日間にわたる抽出物の安定性
実施例5を15日間にわたって繰り返し、各サンプルの吸光度を0、24、96、254及び350時間で記録した。
【0155】
結果
得られたデータの概要は、以下の表のとおりである。
【0156】
【0157】
「λ1」のピーク(約319~325nm)については、すべてのサンプルが少なくともある程度の安定性を示し、吸光度の変化が比較的小さいことがわかる。最も安定しているのは、活性化されたシリコン粒子とトレハロースの両方で処理した抽出液である。「λ2」のピーク(約287~298nm)についても、比較的良好な安定性が見られた。「λ2」の波長での時間経過に伴う吸収の増加は、オイデスマノリドとグリコシル種との間の分子平衡の変化によるものと仮定される。
【0158】
15日間の分析では、最終的な草本抽出物のUV-Vis吸光スペクトルに寄与する全体的な化学種の合計が、時間の経過とともに関心のあるピークの相互の変化を実際に発生させる傾向があることが明らかになった。これは、前述の溶液中で興味ある化学種が平衡状態にあることを示しているのかもしれない。この結果は、以前に発表されたスファランサス・インディクスの分析データと一致する。[Emani LR,Ravada SR,Garaga MR,Meka B,Golakoti T.Four new Sesquiterpenoids from Sphaeranthus indicus.Nat Prod Res.2017 Nov;31(21):2497-2504.doi:10.1080/14786419.2017.1315576.Epub 2017 Apr 17]。
【0159】
スファランサス・インディクス抽出物には、以下の注目すべき化学種、オイデスマノリド、セスキテルペノイド、セスキテルペンラクトン、セスキテルペン酸、フラボン配糖体、フラボノイドC配糖体、イソフラボン配糖体、ステロール、ステロール配糖体、アルカロイド、ペプチドアルカロイド、アミノ酸及び糖類が含まれていることが実証されている。[Ramachandran S.Review on Sphaeranthus indicus Linn.(Kottaikkarantai).Pharmacogn Rev.2013 Jul;7(14):157-69.doi:10.4103/0973-7847.120517.]。
【0160】
オイデスマノリドは、以下に示すようなグリコシル誘導体を生成し易いという点で注目されている。
【0161】
【0162】
UVピークの経時変化は、水性環境下における異なる種間の平衡に起因すると考えるのが妥当であろう。種及び関連するグリコシル誘導体の相互総量は、単一種の特異的なUV吸光度とともに、UV-Vis吸光スペクトルの経時変化に寄与するかもしれない。
【0163】
分析期間中、UV-Vis吸光スペクトルに他の大きな変化は見られず、300~550nmの吸光度範囲にも有意な吸光度は記録されなかった。これは、全体のUV-Visスペクトルの生成に寄与する化学種が大きく酸化されていないことと一致する。
【0164】
図6、7及び8は、それぞれ3つの安定化した組成物の完全なスペクトルを示しており、変化は最小限で、15日間にわたる抽出物の安定性が概して良好であることを示している。生の吸光度データは、以下の表に記載し、
図9としてグラフに示す。
【0165】
【0166】
図9に見られるように、活性化されたシリコン粒子とトレハロースの両方で安定化された抽出液では、吸光度の経時変化が最も少ない(すなわち、最も安定している)ことがわかる(プロットC)。
【0167】
トレハロースは、農作物や人間に適用する原薬の安定性を高めることが実証されているが、本発明のケイ素とトレハロースの組み合わせは、驚くほど高い安定性を示す。特に、トレハロースとシリコン粒子の組み合わせは、水性媒体中に懸濁された草本抽出物の安定性を高める環境を作り出す。
【0168】
非還元性二糖類とシリコンとの組み合わせは、トレハロースが軽度の極性物質、すなわち水分子そのものと直接相互作用することにより、シリコン表面に物理的に吸着したAPIへの水分子のアクセスを制限することで、水性環境下におけるAPIの安定性を向上させるという仮説が立てられている。このような相互作用は、シリコン、トレハロース、API及び水分子の間に関連性をもたらす可能性がある。
【0169】
実施例7:ナノ粒子で安定化させたケルセチンを用いたアサ植物の酸化的ストレスの回復
シリコンナノ粒子、(量を変えた)生理活性草本抽出物ケルセチン、非還元性二糖類トレハロース、脂質レシチン、アミノ酸アルギニン及びグリシンを含んだサンプルを調達した。本発明の送達システムは、ケルセチン(スファランサス・インディクスから抽出されたケルセチン等)を、生体内条件のような周囲条件及び/又は水性条件のような条件下で安定化させることができる。これらのサンプルは、先の実施例のサンプルと同様の方法で調整した。サンプルの組成は以下の表に示すとおりである。
【0170】
【0171】
これらのサンプルは、管理された状態のアサの葉に適用され、塩を用いて葉にストレスを与える条件が与えられた。
【0172】
本発明のシリコンナノ粒子送達システム(シリコンナノ粒子、トレハロース、及び任意にレシチン及びアミノ酸のアルギニンとグリシンの1つ以上)を含むサンプルは、送達システムを含まない対照サンプル(GS7)と比較して、塩ストレスを受けたアサの葉に対して保護効果を示した。本発明の送達システム及びケルセチンを含むサンプルも、塩ストレスを受けたアサの葉に対して保護効果を示した。この保護効果には、
図10を参照すると、対照サンプル(GS7)と比較して、アサの葉のしおれ及び褐色化が目に見えて減少したことが含まれる。
【0173】
サンプルGS1及びGS2で処理した葉は、緩衝液(GS7)又はケルセチン単独(GS5)を散布した対照植物と比較して、ストレス応答に関与するマーカー遺伝子(ERF1、Gibb REC及びHSP70-2)の発現が統計的に有意に減少した(P<0.05)。
【0174】
本発明の送達システムを単独又はケルセチンと一緒に処理した植物の葉は、緩衝剤(GS7)又はケルセチン単独(GS5)を散布した対照植物と比較して、統計的に有意に高い葉水分量を示した。
【0175】
本発明の製剤は、アサ植物などの作物を酸化ストレスから保護することができることが明らかになった。これは、オルトケイ酸と安定化した生理活性草本抽出物の両方を、制御された持続的な方法で植物細胞に供給することによって達成される。本発明のシリコンナノ粒子送達システムを用いて生理活性草本抽出物を安定化させることで、植物細胞への経時的な送達が可能となる。