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特許7554551神経新生を促進し、老化を緩和するために使用される医薬組成物及び神経新生を促進し、老化を緩和する医薬組成物の製造のための、オニノヤガラ抽出物またはアデノシン類似物を利用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】神経新生を促進し、老化を緩和するために使用される医薬組成物及び神経新生を促進し、老化を緩和する医薬組成物の製造のための、オニノヤガラ抽出物またはアデノシン類似物を利用する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7034 20060101AFI20240912BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 31/7076 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 31/11 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 36/8988 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61K31/7034
A61K31/05
A61K31/7076
A61K31/11
A61P25/00
A61K36/8988
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61P43/00 105
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019150744
(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公開番号】P2020029457
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】107128950
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】509248615
【氏名又は名称】中国▲医▼薬大学
【氏名又は名称原語表記】CHINA MEDICAL UNIVERSITY
(73)【特許権者】
【識別番号】519192784
【氏名又は名称】安益藥業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【弁理士】
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】林 雲蓮
(72)【発明者】
【氏名】許 偉祥
(72)【発明者】
【氏名】簫 永基
【審査官】清野 千秋
(56)【参考文献】
【文献】Journal of Ethnopharmacology,2018年,215,pp.132-139
【文献】Behavioural Brain Research,2014年,266,pp.153-160
【文献】Current Pharmacology Reports,2018年,4,pp.220-237
【文献】J Mol Neurosci,2016年,60,pp.21-32
【文献】Molecular Medicine Reports,2016年,13,pp.2949-2956
【文献】Mol. Cells,2011年,31,pp.209-215
【文献】Oxidative Medicine and Cellular Longevity,2018年,Article ID 7642158 (16 pages)
【文献】Molecules,2017年,22,1137(pp.1-18)
【文献】Molecules,2018年,23,270(pp.1-11)
【文献】PLoS ONE,2011年,6(6),e20934(13pages)
【文献】ChemMedChem,2011年,6,pp.1390-1400
【文献】Brain Research,2018年,1686,pp.65-71
【文献】Frontiers in Pharmacology,2018年,9,Article 506(10 pages)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/7034
A61K 31/05
A61K 31/7076
A61K 31/11
A61P 25/00
A61K 36/8988
A61P 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経新生を促進し、老化を緩和するために使用される医薬組成物であり、ガストロジン(gastrodin)、ガストロジゲニン(gastrodigenin)、パリシン化合物(parishins)-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)及び4-ヒドロキシベンズアルデヒド(4-hydroxybenzaldehyde)を含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項2】
前記パリシン化合物は、パリシンA、パリシンB、パリシンC及びパリシンEを含むことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記N-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)の重量比は、0.5-4%であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ガストロジンの重量比は、25%より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記パリシン化合物の総重量比は、50%より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
神経新生を促進し、老化を緩和する医薬組成物の製造のための、オニノヤガラ抽出物を利用する方法であり、前記オニノヤガラ抽出物は、ガストロジン(gastrodin)、ガストロジゲニン(gastrodigenin)、パリシン化合物(parishins)-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)及び4-ヒドロキシベンズアルデヒド(4-hydroxybenzaldehyde)を含むことを特徴とする、方法。
【請求項7】
新生するニューロンは、脳ニューロンであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記N-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)の重量比は0.5-4%であり、前記ガストロジンの重量比は25%より大きく、前記パリシン化合物の総重量比は50%より大きいことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
神経新生を促進するための、分離されたN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)または医薬品として認められるその塩を含むことを特徴とする、医薬組成物
【請求項10】
新生するニューロンは、脳ニューロンであることを特徴とする、請求項9に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経新生を促進するための医薬組成物及びオニノヤガラ抽出物またはアデノシン類似物を利用して神経新生を促進する方法に関するものであり、前記オニノヤガラ抽出物は、ガストロジン(gastrodin)、ガストロジゲニン(gastrodigenin)、パリシン化合物(parishins)、N-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)及び4-ヒドロキシベンズアルデヒド(4-hydroxybenzaldehyde)を含む。本発明のオニノヤガラ抽出物は、神経細胞に対してアンチエイジング活性を有し、且つマウス海馬において神経新生を誘導する。
【背景技術】
【0002】
Gastrodiae Rhizoma(Tianma)は、ラン科の多年生寄生薬草であるオニノヤガラの根茎から得られる常用漢方であり、臨床分野では頭痛や眩暈、手足身体の痺れ、てんかん、破傷風による痙攣、神経衰弱、神経血管性頭痛等の治療に用いられる。オニノヤガラの臨床分野の医療用途に関しては、神経障害の予防について研究した文献が多くみられる。例えば、オニノヤガラの主成分であるガストロジンは、アレチネズミの海馬においてγ-アミノ酪酸(gamma amino butyric acid(GABA))の代謝を変化させることが分かっている。更に、オニノヤガラのメタノール抽出物のジエチルエーテル分画層は、アレチネズミにおける虚血誘導障害やマウス海馬におけるカイニン酸誘導神経細胞死から神経細胞を保護する(Kim,et al.(2001);Kim,et al.(2003))。また、オニノヤガラのメタノール抽出物のジエチルエーテル分画層は、β-アミロイド誘導神経細胞死を顕著に抑制することができる。Hsiehらは同様に、ラットのカイニン酸誘導てんかん発作において、オニノヤガラ抽出物の投与が、発作回数を顕著に減少させるだけでなく、てんかんの発症時間を遅らせることを示している(Hsieh,et al(2001))。このようなオニノヤガラの抗てんかん効果は、それがフリーラジカル除去活性調節することによる(Hsieh,et al.(2000))。これ以外に、オニノヤガラのメタノール抽出物は、c-Jun N末端キナーゼ(JNK)活性の抑制を通じて、PC12細胞の血清枯渇によるアポトーシスを抑制することができる(Huang,et al.(2004))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】An,et al.(2003)
【文献】Kim,et al.(2001)
【文献】Kim,et al.(2003)
【文献】Hsieh,et al(2001)
【文献】Hsieh,et al.(2000)
【文献】Huang,et al.(2004)
【文献】Deacon R(2012)
【文献】Deacon RM(2006)
【文献】Vorhees CV,et al.(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、オニノヤガラ抽出物またはアデノシン類似物による神経新生促進効果における有効成分または構成について調査することである。
【0005】
本発明は、オニノヤガラ抽出物またはアデノシン類似物を有する医薬組成物を提供し、前記オニノヤガラ抽出物またはアデノシン類似物が、神経新生を促進することを証明する。
【0006】
本発明は、神経新生を促進し、老化を緩和するために使用される医薬組成物を提供する。前記医薬組成物は、ガストロジン(gastrodin)、ガストロジゲニン(gastrodigenin)、パリシン化合物(parishins)-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)及び4-ヒドロキシベンズアルデヒド(4-hydroxybenzaldehyde)を含む。
【0007】
実施例においてパリシン化合物は、パリシンA、パリシンB、パリシンC及びパリシンEから構成される。
【0008】
実施例において前記オニノヤガラ抽出物中の重量比は、N-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)が0.5-4%であり、ガストロジンは25%より大きい。そして、パリシン化合物は50%より大きい。
【0009】
本発明は更に、神経新生を促進し、老化を緩和する医薬組成物の製造のための、オニノヤガラ抽出物を利用する方法を提供する。前記オニノヤガラ抽出物は、ガストロジン(gastrodin)、ガストロジゲニン(gastrodigenin)、パリシン化合物(parishins)-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)及び4-ヒドロキシベンズアルデヒド(4-hydroxybenzaldehyde)を含む。本発明において、新生ニューロンとは脳ニューロンのことを言う。
【0010】
この他、本発明は、神経新生を促進するための、分離されたN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)やその塩を含む医薬組成物を提供する。新生ニューロンは、海馬ニューロンである。
【0011】
以上より、本発明のオニノヤガラ抽出物またはN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)は、神経細胞に対してアンチエイジング活性を有し、且つマウス海馬において神経新生を誘導することができる。以上の本発明の目的は、以下の各種の図表で示される好適実施例の詳細を理解することで、対象分野の一般的な知識を有する者にとっては疑いようのないものになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明における神経新生を促進する医薬組成物のオニノヤガラ抽出物(TM1-2)に対する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析の化学プロファイル。数字は、1:ガストロジン、2:ガストロジゲニン、3:パリシンE、4:p-ヒドロキシベンジルアルデヒド、5:パリシンB、6:T1-11、7:パリシンC、8:ビス(4-ヒドロキシベンジル)硫化物(T1-C)、9:パリシンAを指す。
図2図2Aは、本発明における神経新生を促進する医薬組成物のオニノヤガラ粗抽出物(TM1)による、SH-SY5Y細胞の細胞老化マーカーβガラクトシダーゼ(SA-β-gal)活性への影響を示す図。データは、少なくとも4つの独立した実験からの平均(Mean)±標準誤差(SEMである。ブランクコントロールグループと薬剤処理グループとの間の有意差は、コントロールとの比較でp<0.05、**p<0.01で示される。図2Bは、本発明における神経新生を促進する医薬組成物のオニノヤガラ粗抽出物(TM1)による、SH-SY5Y細胞における細胞老化関連分子への影響を示す図。
図3図3Aは、本発明における神経新生を促進する医薬組成物のオニノヤガラ抽出物(TM1-1、TM1-2及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11))による、SH-SY5Y細胞のアンチエイジング活性への影響を示す図。データは、少なくとも4つの独立した実験からの平均(Mean)±標準誤差(SEMである。ブランクコントロールグループと薬剤処理グループとの間の有意差は、コントロールとの比較で**p<0.01で示される。図3Bは、本発明における神経新生を促進する医薬組成物のオニノヤガラ抽出物(TM1-1、TM1-2)による、SH-SY5Y細胞における細胞老化関連分子、リン酸化RB、p16、p53及びp21への影響を示す図。
図4図4Aは、本発明における神経新生を促進する医薬組成物のオニノヤガラ抽出物(TM1-2)、N-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)、ガストロジン(TG)及びその他オニノヤガラ成分(ビス(4-ヒドロキシベンジル)硫化物(T1-C))及びガストロジゲニン(4-HBA)による、SH-SY5Y細胞の細胞老化マーカーβガラクトシダーゼ活性への影響を示す図。データは、少なくとも4つの独立した実験からの平均(Mean)±標準誤差(SEMである。ブランクコントロールグループと薬剤処理グループとの間の有意差は、コントロールとの比較でp<0.05、**p<0.01で示される。図4Bは、本発明における神経新生を促進する医薬組成物のN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)、ガストロジン(TG)及びその他オニノヤガラ成分(ビス(4-ヒドロキシベンジル)硫化物(T1-C))及びガストロジゲニン(4-HBA)による、SH-SY5Y細胞における細胞老化関連分子、リン酸化RB、p16、p53及びp21への影響を示す図。
図5図5Aは、本発明における神経新生を促進する医薬組成物のオニノヤガラ抽出物(TM1-2)及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)による、巣造りへの影響を示す図。巣造りは、処理の後に行われた。1:ブランクコントロールグループ、2:D-ガラクトース(200mg/kg)単独で処理されたグループ、3:D-ガラクトース(200mg/kg)+ビタミンE(100mg/kg)(ポジティブコントロール)、4:D-ガラクトース(200mg/kg)+TM1-2(5mg/kg)、5:D-ガラクトース(200mg/kg)+TM1-2(20mg/kg)、6:D-ガラクトース(200mg/kg)+TM1-2(50mg/kg)、7:D-ガラクトース(200mg/kg)+T1-11(1mg/kg)、8:D-ガラクトース(200mg/kg)+T1-11(10mg/kg)、9:T1-11(10mg/kg)。データは、平均(Mean)±標準誤差(SEM(n=6)である。ブランクコントロールグループとD-ガラクトース単独で処理されたグループとの間の有意差は、コントロールグループとの比較で**p<0.01で示される。D-ガラクトース単独で処理されグループとTM1-2またはT1-11の薬剤処理グループとの間の有意差は、D-ガラクトース単独で処理されたグループとの比較でp<0.05で示される。図5Bは、本発明における神経新生を促進する医薬組成物のオニノヤガラ抽出物(TM1-2)及びN6-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)による、巣中に残った未破壊綿片の重量への影響を示す図。巣造りは、処理の後に行われた。グループ1-9は、それぞれ図5Aに示したものである。データは、平均(Mean)±標準誤差(SEM(n=6)である。ブランクコントロールグループとD-ガラクトース単独で処理されたグループとの間の有意差は、コントロールグループとの比較で**p<0.01で示される。D-ガラクトース単独で処理されグループとTM1-2またはT1-11の薬剤処理グループとの間の有意差は、D-ガラクトース単独で処理されたグループとの比較で##p<0.01で示される。
図6】本発明における神経新生を促進する医薬組成物のオニノヤガラ抽出物(TM1-2)及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)による、D-ガラクトースにより老化を誘導されたマウスでの障害された穴掘り行動の改善を示す図。穴掘りは、処理の後に行われた。グループ1-9は、それぞれ図5Aに示したものである。データは、平均(Mean)±標準誤差(SEM(n=6)である。ブランクコントロールグループとD-ガラクトース単独で処理されたグループとの間の有意差は、コントロールグループとの比較で**p<0.01で示される。D-ガラクトース単独で処理されグループとビタミンE、TM1-2またはT1-11の薬剤処理グループとの間の有意差は、D-ガラクトース単独で処理されたグループとの比較でp<0.05、##p<0.01で示される。
図7図7Aは、本発明における神経新生を促進する医薬組成物のオニノヤガラ抽出物(TM1-2)及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)による、D-ガラクトースにより老化を誘導された動物での空間学習及び記憶障害の改善への影響を示す図。6つのグループのマウスを用いて、行動についての研究、すなわちモリス水迷路試験を行った。記憶及び学習に障害を持つマウスは、定められたプラットフォームに到達するまでに長く周遊し、プラットフォームを見つけるのに長い時間を要する。6日間のトレーニングの後、プローブトライアルを行った。結果データは、マウスがプローブトライアル試験で、当初のプラットフォームにおける標的クワドラントに到達するまでにかかった時間(秒)を示す。グループ1-9は、それぞれ図5Aに示したものである。データは、平均(Mean)±標準誤差(SEM(n=6)である。ブランクコントロールグループとD-ガラクトース単独で処理されたグループとの間の有意差は、コントロールグループとの比較でp<0.05で示される。D-ガラクトース単独で処理されグループとビタミンE、TM1-2またはT1-11の薬剤処理グループとの間の有意差は、D-ガラクトース単独で処理されたグループとの比較でp<0.05、##p<0.01で示される。図7Bは、本発明における神経新生を促進する医薬組成物のオニノヤガラ抽出物(TM1-2)及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)による、D-ガラクトースにより老化を誘導されたマウスのプローブテストにおける以前のプラットフォーム位置を通り越した回数への影響を示す図。グループ1-9は、上記のものである。データは、平均(Mean)±標準誤差(SEM(n=6)である。ブランクコントロールグループとD-ガラクトース単独で処理されたグループとの間の有意差は、コントロールグループとの比較でp<0.05で示される。D-ガラクトース単独で処理されグループとビタミンE、TM1-2またはT1-11の薬剤処理グループとの間の有意差は、D-ガラクトース単独で処理されたグループとの比較でp<0.05 ## p<0.01で示される。
図8図8Aは、本発明における神経新生を促進する医薬組成物のオニノヤガラ抽出物(TM1-2)及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)による、D-ガラクトースにより老化を誘導されたマウスの血清、大脳皮質及び海馬におけるカタラーゼ(CAT)活性への影響を示す図。データは、平均(Mean)±標準偏差(SD(n=6)である。ブランクコントロールグループとD-ガラクトース単独で処理されたグループとの間の有意差は、コントロールグループとの比較で**p<0.01で示される。D-ガラクトース単独で処理されグループとビタミンE、TM1-2またはT1-11の薬剤処理グループとの間の有意差は、D-ガラクトース単独で処理されたグループとの比較でp<0.05、##p<0.01で示される。図8Bは、本発明における神経新生を促進する医薬組成物のオニノヤガラ抽出物(TM1-2)及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)による、D-ガラクトースにより老化を誘導されたマウスの血清、大脳皮質及び海馬におけるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性への影響を示す図。グループ1-9は、それぞれ図5Aに示したものである。データは、平均(Mean)±標準偏差(SD(n=6)である。ブランクコントロールグループとD-ガラクトース単独で処理されたグループとの間の有意差は、コントロールグループとの比較で**p<0.01で示される。D-ガラクトース単独で処理されグループとビタミンE、TM1-2またはT1-11の薬剤処理グループとの間の有意差は、D-ガラクトース単独で処理されたグループとの比較でp<0.05、##p<0.01で示される。
図9】本発明における神経新生を促進する医薬組成物のオニノヤガラ抽出物(TM1-2)及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)による、D-ガラクトースにより老化を誘導されたマウスの血清、大脳皮質及び海馬における脂質過酸化(マロンジアルデヒド、MDA)への影響を示す図。グループ1-9は、それぞれ図5Aに示したものである。データは、平均(Mean)±標準偏差(SD(n=6)である。ブランクコントロールグループとD-ガラクトース単独で処理されたグループとの間の有意差は、コントロールグループとの比較でp<0.05、**p<0.01で示される。D-ガラクトース単独で処理されグループとビタミンE、TM1-2またはT1-11の薬剤処理グループとの間の有意差は、D-ガラクトース単独で処理されたグループとの比較でp<0.05、##p<0.01で示される。
図10図10Aは、本発明における神経新生を促進する医薬組成物のオニノヤガラ抽出物(TM1-2)及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)による、D-ガラクトースにより老化を誘導されたマウスの大脳皮質及び海馬におけるグルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)活性への影響を示す図。グループ1-9は、それぞれ図5Aに示したものである。データは、平均(Mean)±標準偏差(SD(n=6)である。ブランクコントロールグループとD-ガラクトース単独で処理されたグループとの間の有意差は、コントロールグループとの比較でp<0.05で示される。D-ガラクトース単独で処理されグループとビタミンE、TM1-2またはT1-11の薬剤処理グループとの間の有意差は、D-ガラクトース単独で処理されたグループとの比較でp<0.05で示される。図10Bは、本発明における神経新生を促進する医薬組成物のオニノヤガラ抽出物(TM1-2)及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)による、D-ガラクトースにより老化を誘導されたマウスの大脳皮質及び海馬におけるグルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)活性への影響を示す図。グループ1-9は、それぞれ図5Aに示したものである。データは、平均(Mean)±標準偏差(SD(n=6)である。ブランクコントロールグループとD-ガラクトース単独で処理されたグループとの間の有意差は、コントロールグループとの比較でp<0.05で示される。D-ガラクトース単独で処理されグループ薬剤処理グループとの間の有意差は、D-ガラクトース単独で処理されたグループとの比較でp<0.05で示される。
図11図11Aは、本発明における神経新生を促進する医薬組成物のオニノヤガラ抽出物(TM1-2)及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)により処理した後の歯状回における、神経新生マーカーである5-ブロモ-2’-デオキシウリジン(BrdU)及びダブルコルチン(doublecortin,DCX)の免疫染色像を示す図。図11Bは、図11Aにおける免疫染色像を定量化した図。データは、平均(Mean)±標準偏差(SD)である。ブランクコントロールグループとD-ガラクトース単独で処理されたグループとの間の有意差は、コントロールグループとの比較でp<0.05で示される。D-ガラクトース単独で処理されグループ薬剤処理グループとの間の有意差は、D-ガラクトース単独で処理されたグループとの比較でp<0.05で示される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の詳細な説明及び技術内容を、付属の図面と合わせて以下に説明する。
【0014】
本発明は、ガストロジン(gastrodin)、ガストロジゲニン(gastrodigenin)、パリシン化合物(parishins)、N-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(N-(4-hydroxybenzyl)adenine riboside,T1-11)及び4-ヒドロキシベンズアルデヒド(4-hydroxybenzaldehyde)を含み神経新生を促進する医薬組成物に関する。前記パリシン化合物は、パリシンA、パリシンB、パリシンC及びパリシンEを含む。本発明において、前記N-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)の重量比は0.5-4%であり、前記ガストロジンの重量比は25%より大きく、複数の前記パリシン化合物の総重量比は50%より大きい。
【0015】
本発明は更に、オニノヤガラ抽出物を利用して神経新生を促進する方法を提供し、前記オニノヤガラ抽出物は、ガストロジン(gastrodin)、ガストロジゲニン(gastrodigenin)、パリシン化合物(parishins)、N-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)及び4-ヒドロキシベンズアルデヒド(4-hydroxybenzaldehyde)を含む。本発明の方法を通じて新生するニューロンは、脳ニューロンである。実施例では、前記N-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)の重量比は0.5-4%であり、前記ガストロジンの重量比は25%より大きく、複数の前記パリシン化合物の総重量比は50%より大きい。
【0016】
本発明はまた、分離されたN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)または医薬品として認められるその塩を利用して、神経新生を促進する方法を提供する。前記方法を通じて新生するニューロンは、脳ニューロンである。
【0017】
(実施例1 オニノヤガラ抽出物の調製)
市販のオニノヤガラ(Gastrodia elata B1.)根茎の切断片から、水性エタノール溶液(70%エタノール、50℃)を使用して一晩抽出を行う。粗抽出液を減圧濃縮して、オニノヤガラ粗抽出物TM1を得る。濃縮乾燥したサンプルをマクロ孔質樹脂(ダイヤイオンHP20)カラムに導入し、カラムから水でTM1-1を溶出させ、更に50%エタノールでTM1-2を溶出させる。
【0018】
(実施例2 高速液体クロマトグラフィーによる分析)
実施例1で得られたオニノヤガラ抽出物(TM1-2)に対し、高速液体クロマトグラフィー(Waters 2695,HPLC)によりその化学組成を分析する。分析の条件は、Cosmosil 5C-18 AR-II,4.6x250mmカラム、UV 270nm検出器、流速1.0 mL/min、移動相A0.01%リン酸、移動相Bアセトニトリル、分析フロー0-15分,95-88%A;15-30分,88%A;30-40分,88-60%Aである。
【0019】
図1に示すように、前記高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の図には主な8つの化合物が出現し、前記8つの化合物は、それぞれガストロジン(gastrodin)、ガストロジゲニン(gastrodigenin)、パリシンE(parishin E)、パリシンB(parishin B)、パリシンC(parishin C)、N-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)、パリシンA(parishin A)及び4-ヒドロキシベンズアルデヒド(4-hydroxybenzaldehyde)である。その内、N-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)の重量比は0.5-4%で、複数の前記パリシン化合物(パリシンA(parishin A)、パリシンB(parishin B)、パリシンC(parishin C)、パリシンE(parishin E)を含む)の総重量比は50%より大きく、ガストロジンの重量比は25%より大きい。
【0020】
(実施例3 老化細胞の培養)
SH-SY5Y細胞(台湾生物資源保存及研究中心(Bioresource Collection and Research center,BCRC)から購入、08C0066)を、二酸化炭素インキュベータ中で10%ウシ胎児血清、100U/mlペニシリン、100μ/mlストレプトマイシンを含むDMEM-F12により培養した。SH-SY5Y細胞が100mm培養ディッシュで80%コンフルエントまで生長した時点で継代培養を行った。およそ20回の継代培養の後、SH-SY5Y細胞は細胞老化の兆候を呈し始め、老化関連βガラクトシダーゼのレベルが大幅に増加した。そこで、細胞内のβガラクトシダーゼの量を細胞老化の指標とした。次に、これら老化細胞を用いて、老化に関連した以下の細胞実験を行った。
【0021】
(実施例4 オニノヤガラ粗抽出物TM1、部分的に精製したオニノヤガラ抽出物TM1-2及び純化合物N-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)による細胞老化阻害の試験)
前述の実施例3における老化SH-SY5Y細胞を、オニノヤガラ粗抽出物TM1、オニノヤガラ抽出物TM1-2及び純化合物N-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)により24時間処理した後、4%ホルムアルデヒドで固定して、細胞老化の指標であるβガラクトシダーゼの染色を行った。その結果(図2A参照)、オニノヤガラ粗抽出物TM1は、SH-SY5Y細胞における細胞内βガラクトシダーゼの産生を抑制することができ、且つβガラクトシダーゼは、加えたTM1の濃度上昇に伴い顕著に減少した。そして、オニノヤガラ抽出物TM1-2(図3A参照)及び純化合物N-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)(図3A及び図4A参照)も、SH-SY5Y細胞における細胞内βガラクトシダーゼの産生を顕著に減少させることができた。更に、細胞老化は、p53-p21経路及びp16-Rb経路という2つの独立した経路により引き起こされることが分かっている。p21とp16は、いずれもサイクリン依存性キナーゼ阻害因子(Cyclin-dependent kinase inhibitors,CDKI)であり、Rbのリン酸化を阻害してRb活性化を抑制する。結果として、E2F転写因子の活性が阻害され、細胞周期の進行もブロックされる。p53、p63及びp73は、いずれも直接にp21タンパク質の活性化を誘導することで細胞周期の停滞や細胞老化を引き起こす。実験の結果、部分的に精製したオニノヤガラ抽出物TM1-2及び純化合物N-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)によるp53、p16、p21タンパク質発現の阻害は、効果的に細胞老化を緩和することができた(図2B図3B図4B参照)。
【0022】
(実施例5 オニノヤガラ抽出物TM1-2及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)による、ガラクトース動物モデルの行動パターンへの影響評価)
この実施例においては、オニノヤガラ抽出物TM1-2及び純化合物N-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)による、ガラクトース誘導老化動物モデルの行動への影響を試験した。
【0023】
9組の動物に対して実験を行うにあたって、以下のようにグループ分けを行った。1:対照グループ、2:D-ガラクトース(200mg/kg)、3:D-ガラクトース(200mg/kg)+ビタミンE(100mg/kg)、4:D-ガラクトース(200mg/kg)+TM1-2低剤量グループ(5mg/kg)、5:D-ガラクトース(200mg/kg)+TM1-2中剤量グループ(20mg/kg)、6:D-ガラクトース(200mg/kg)+TM1-2高剤量グループ(50mg/kg)、7:D-ガラクトース(200mg/kg)+T1-11低剤量グループ(1mg/kg)、8:D-ガラクトース(200mg/kg)+T1-11高剤量グループ(10mg/kg)、9:T1-11(10mg/kg)。D-ガラクトースは頸背部皮下より注射し(200mg/kg体重)、オニノヤガラ抽出物TM1-2、T1-11及びビタミンEはいずれも経口投与(胃管を用いる方法による)とし、それぞれ1日1回、6週間連続して処理した。薬品処理を行うと同時に、前記対照グループを含む各グループには継続してD-ガラクトース200mg/kg体重を頸背部皮下より注射し、前記対照グループには生理食塩水を皮下より注射した。ビタミンEグループは、ポジティブコントロールとした。
【0024】
結果として、オニノヤガラ抽出物TM1-2及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)のいずれもが、ガラクトースにより老化を誘導された動物の巣造りや床材の穴掘りといった行動を含む認知行動様式を効果的に改善させた。老化したマウスは、これらの行動特性を徐々に失っていくことから、本発明ではこれらの行動様式を利用してマウスの老化レベルを試験することができた。
【0025】
巣造り試験(Deacon R (2012),Deacon RM (2006))においては、マウスに巣造り用材料を与えると、マウスはケージの角に巣を構えて巣の中に滞在する。マウスが巣造りを行う習性を利用するにあたって、巣材である綿片を与えることでマウスによる巣造りの完成度レベルの得点計算及びマウスが未使用の綿片巣材の重量の計測を行い、マウスの老化レベルを評定した(図5A及び図5B参照)。
【0026】
また、マウスが穴掘りを行う習性を利用して、水パイプ掘削実験(Deacon R (2012))を行うことで、マウスの穴掘り行動の減退レベルを検出した(図6参照)。
【0027】
更に、モリス水迷路試験(Vorhees CV,et al.(2006))を通じて、マウスの記憶力及び学習能力を評定した(図7A及び図7B参照)。
【0028】
前述の実験の結果が示すように、オニノヤガラ抽出物TM1-2及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)は、ガラクトースにより老化を誘導されたことによる行動能力の喪失を効果的に改善させ、且つオニノヤガラ抽出物TM1-2及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)の使用剤量の増加に伴い、改善レベルも向上した。
【0029】
(実施例6 オニノヤガラ抽出物TM1-2及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)による、ガラクトースにより処理された動物の血液及び脳組織の酸化ダメージの減少に対する評価)
行動観察の終了後、動物に50 mg/gの5-ブロモ-2’-デオキシウリジン(BrdU)を連続して一週間腹腔注射し、その後、動物を解剖して脳組織及び血液を取り出した。脳組織は冷凍した後、一部の組織は本実施例の実験に使用し、それ以外は組織切片として実施例7での実験に使用した。血液は、以下の実験用に遠心分離により血清を得た。
【0030】
老化と酸化ダメージは密接な関係にあることから、本実施例では更に、ケイマンの市販のキットを用いて前述の実験動物の血液及び脳組織における抗酸化酵素の活性を分析した。前記酵素は、カタラーゼ(CAT)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、過酸化脂質、グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)及びグルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)である。
【0031】
実験結果から分かるように、オニノヤガラ抽出物TM1-2及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)は、ガラクトースにより誘導された動物の血清、大脳皮質、海馬及びその他の脳組織におけるカタラーゼ(CAT)及びスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の低下を顕著に改善し(図8A及び図8B参照)、脂質過酸化(malondialdehyde、MDA)の生成を減少させた(図9参照)。図中、グループ1から9は、実施例5に示したものである。
【0032】
これ以外にも、オニノヤガラ抽出物TM1-2及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)は、ガラクトースによって低減したグルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)及びグルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)のレベルを効果的に改善させた(図10A及び図10B参照)。図中、グループ1から9は、実施例5に示したものである。
【0033】
(実施例7 オニノヤガラ抽出物TM1-2及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)による、ガラクトース動物モデルの大脳海馬組織における神経新生への影響に対する評価)
実施例6で得た脳組織の切片に対し、ダブルコルチン(doublecortin,DCX)に対する一次抗体(Abcamより購入)で免疫組織化学染色を行い、続いて蛍光標識した二次抗体(Jackson Labs Technologies,Incより購入)を用いて染色した。その後、共焦点顕微鏡を用いて観察及び写真撮影を行った。結果として、オニノヤガラ抽出物TM1-2及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)が、海馬中におけるBrdU及びDCXの発現量低下を抑制したことが明確に見られた(図11A及び図11B参照)。
【0034】
ガラクトースにより誘導された老化マウスは、脳の海馬部分においてBrdU及びDCX発現細胞の顕著な減少を呈する。この結果は、実施例5におけるモリス水迷路試験と一致するものであり、ガラクトースにより老化を誘導されたマウスは、記憶力及び学習能力が低減していた。しかし、オニノヤガラ抽出物TM1-2及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)を服用することにより、この老化現象は緩和された。
【0035】
以上の実験から分かるように、オニノヤガラ抽出物TM1-2及び純化合物N-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)は、以下の効果を達成する。
(1)細胞老化に伴って起こるβガラクトシダーゼの産生を顕著に減少させる。
(2)ガラクトースにより老化を誘導されたことで喪失する巣造りや床材の穴掘り、記憶といった認知行動能力を効果的に改善し、その改善レベルは、オニノヤガラ抽出物TM1-2及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)の使用剤量の濃度の上昇に伴い向上する。
(3)ガラクトースにより誘導された老化動物の血液及び脳組織におけるSOD及びCATの低下を顕著に改善し脂質過酸化の生成を減少させると共に、ガラクトースにより誘導された老化によるGSH-Px及びG6PDの活性低下を効果的に改善る。
(4)海馬においてガラクトースにより誘導されたBrdU及びDCX細胞の減少を緩和する。
【0036】
以上から分かるように、本発明によるオニノヤガラ抽出物TM1-2及びN-(4-ヒドロキシベンジル)アデノシン(T1-11)を含む医薬組成物は、神経新生の促進に効果的であり、老化を緩和することができる。
【0037】
当業者であれば、本発明の内容を維持しながら機器や手法に対して各種の修正や変更が可能である。従って、上記の開示内容は、いずれも添付の特許請求の保護範囲に含まれるべきである。
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