(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】食用カラメル着色料組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 5/41 20160101AFI20240912BHJP
【FI】
A23L5/41
(21)【出願番号】P 2019515493
(86)(22)【出願日】2017-09-20
(86)【国際出願番号】 US2017052444
(87)【国際公開番号】W WO2018057587
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-08-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-02
(32)【優先日】2016-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391026058
【氏名又は名称】ザ コカ・コーラ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Coca‐Cola Company
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ルシック,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ホン,サンピョ
【合議体】
【審判長】植前 充司
【審判官】天野 宏樹
【審判官】松本 陶子
(56)【参考文献】
【文献】特公昭38-12727(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第105925011(CN,A)
【文献】特開昭52-148665(JP,A)
【文献】特公昭49-24230(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用カラメル着色料組成物を製造する方法であって、
苛性化合物の非存在下及びアンモニウム化合物の非存在下において、反応混合物を約70psi~約100psiの圧力下で約120℃~160℃の温度に加熱してカラメル着色料組成物を形成するステップを含み、
前記反応混合物が、
フルクトース、グルコース、転化糖、糖蜜、乳糖、麦芽シロップ、又はそれらの組み合わせ、及び
二酸化硫黄又は亜硫酸
を含み、
前記食用カラメル着色料組成物が約3.8~約4.5の色相を有し、
前記食用カラメル着色料組成物が約1.0~2.5のpHで安定している、
方法。
【請求項2】
前記食用カラメル着色料組成物が約1.5のpHで安定している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加圧下で反応混合物を加熱して食用カラメル着色料組成物を形成するステップが、前記反応混合物を約1~約10時間にわたり加熱することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記反応混合物を加圧下で加熱して食用カラメル着色料組成物を形成するステップが、前記反応混合物を加圧下で約140℃の温度に加熱することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記食用カラメル着色料組成物が約0.1~約3のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記食用カラメル着色料組成物を冷却するステップと;
前記食用カラメル着色料組成物のpHを調節するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記食用カラメル着色料組成物のpHが、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素塩、又はリン酸ナトリウムの添加によって調節される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(i)前記食用カラメル着色料組成物を濾過し、次に、(ii)濾過された前記食用カラメル着色料組成物を噴霧乾燥するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
苛性化合物の非存在下及びアンモニウム化合物の非存在下において、約70psi~約100psiの圧力下で約140℃の温度に反応混合物を加熱して食用カラメル着色料組成物を形成するステップを含むプロセスによって調製される、食用カラメル着色料組成物であって、前記反応混合物が、
フルクトース、グルコース、転化糖、糖蜜、乳糖、麦芽シロップ、又はそれらの組み合わせ、及び
二酸化硫黄
を含み、
前記食用カラメル着色料組成物が約3.8~約4.5の色相を有し、
前記食用カラメル着色料組成物が約1.0~2.5のpHで安定している、
食用カラメル着色料組成物。
【請求項10】
前記反応混合物を加圧下で加熱して食用カラメル着色料組成物を形成するステップが、
反応混合物を約1~約10時間にわたり加熱すること
をさらに含む、請求項9に記載の食用カラメル着色料組成物。
【請求項11】
前記食用カラメル着色料組成物が約0.1~約3のpHを有する、請求項9に記載の食用カラメル着色料組成物。
【請求項12】
前記食用カラメル着色料組成物が、約1~約8のpHにおいて約5nm~約60μmの平均粒度を有する、請求項9に記載の食用カラメル着色料組成物。
【請求項13】
前記食用カラメル着色料組成物を冷却するステップと;
前記食用カラメル着色料組成物のpHを調節するステップと
をさらに含む、請求項9に記載のプロセスによって調製される食用カラメル着色料組成物。
【請求項14】
前記食用カラメル着色料組成物のpHが、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素塩、又はリン酸ナトリウムの添加によって調節される、請求項13に記載のプロセスによって調製される食用カラメル着色料組成物。
【請求項15】
前記食用カラメル着色料組成物を濾過し、前記食用カラメル着色料組成物を噴霧乾燥又は凍結乾燥するステップをさらに含む、請求項13に記載のプロセスによって調製される食用カラメル着色料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその内容全体が本明細書に援用される、2016年9月に出願された「Edible Caramel Color Composition」と題された米国仮特許出願第62/396,994号の優先権の利益を主張する。
【0002】
開示の分野
本開示は、一般に、食用カラメル着色料組成物及びそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
カラメル着色料組成物は、食品及び飲料製品に所望の色を付与するために、広く使用されている。これらの組成物は、典型的には化合物の複雑な混合物を含有し、一般に、炭水化物を単独で又はその他の成分の存在下で、加熱することによって製造される。これらのプロセスを使用して製造されたカラメル着色料は、赤色から赤褐色、暗褐色又は黒色にさえ至る範囲の色を有し得る。
【0004】
カラメル着色料組成物によって広範囲の色相が達成され得るが、全ての食品及び飲料製品にわたって全ての組成物が使用できるとは限らない。例えば、一部のカラメル着色料組成物は、炭酸清涼飲料などの低いpHの食品及び飲料製品での使用に適するのに対し、その他のカラメル着色料組成物は、安定性のためにより高いpHの食品及び飲料製品を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特定タイプ又はカラメル着色料組成物を製造するコストもまた、多くの製品にとって重要な考察事項である。したがって、特定の食品及び飲料製品に適した、費用対効果が高いカラメル着色料組成物を製造する実質的な難題が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本開示は、一般に、清涼飲料などの低pHの食品及び飲料製品で使用するのに適した、食用クラスIIカラメル着色料組成物を提供する。食用カラメル着色料組成物を製造する方法もまた、提供される。
【0007】
一態様によれば、本開示は、
a)苛性化合物の非存在下及びアンモニウム化合物の非存在下において、炭水化物及び亜硫酸塩化合物を含む反応混合物をカラメル着色料組成物を形成するのに十分な時間にわたり加熱するステップ
を含む食用カラメル着色料組成物を製造する方法を提供し、食用カラメル着色料組成物は、約3.8~約4.5の色相を有する。
【0008】
本開示はまた、
b)任意選択的に、カラメル組成物を冷却するステップと、
c)苛性アルカリを添加してカラメル着色料組成物のpHを調節するステップと
をさらに提供する。
【0009】
本開示の別の態様は、すぐ上に記載されるステップを含むプロセスによって調製される、食用カラメル着色料組成物に関する。具体的には苛性アルカリの不在下における加熱と、それに続く苛性アルカリによるpH調節によってカラメル着色料を製造する、食用カラメル着色料組成物を製造するためのこのプロセスは、カラメル着色料組成物を提供し、それは低いpH範囲で安定しており、(本明細書に記載されるような)市販の「クラスIV」カラメル着色料組成物と同様の色相を有し、したがって炭酸飲料及びその他の低pH食品及び飲料製品での使用に特に有用であることが発見された。
【0010】
これらの及びその他の態様と実施形態は、詳細な説明及び添付の特許請求の範囲において提供され、特定の実施形態は図面に示される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の簡単な説明
【
図1】市販のクラスII及びクラスIVカラメル着色料と比較した、本発明の一実施形態による食用カラメル着色料組成物の可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【
図2】市販のクラスII及びクラスIVカラメル着色料と比較した、本発明の一実施形態による食用カラメル着色料組成物のUV吸収スペクトルを示すグラフである。
【
図3】様々なpH値における、本発明の一実施形態による食用カラメル着色料組成物のZ平均粒度及びゼータ電位を示すグラフである。
【
図4】様々なpH値における、本発明の一実施形態による市販のクラスIIカラメル着色料のZ平均粒度及びゼータ電位を示すグラフである。
【
図5】市販のクラスIIカラメル着色料と比較した、本発明の一実施形態による食用カラメル着色料組成物のIRスペクトルを示すグラフである。
【
図6】市販のクラスIIカラメル着色料と比較した、本発明の一実施形態による食用カラメル着色料組成物のプロトンNMRスペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
本開示の1つ又は複数の特定の実施形態及び/又は態様が、本明細書に記載される。一般に、食用カラメル着色料組成物は、市販の食品等級栄養甘味料からなる炭水化物を単独で、又は食品等級酸、アルカリ又は塩類の存在下で加熱することによって製造される。酸、アルカリ、及び/又は塩類は、カラメル特有の色及び機能的特性を与える触媒として使用される。酸、アルカリ性、及び/又は塩類を使用せずに製造された食用カラメル着色料組成物は、一般に「焦がした砂糖」と標識され、厳密な着色剤としてよりも、むしろ偶発的に色を有するフレーバーとして使用される。これらの食用カラメル組成物は、下に記載される4つの一般的なクラスに分類される。
【0013】
プレーンカラメル又は苛性カラメルとも称されるクラスIは、炭水化物を酸又はアルカリと共に加熱することによって調製されるが、アンモニウム又は亜硫酸塩化合物は使用されない。
【0014】
苛性アルカリ亜硫酸塩カラメルとも称されるクラスIIは、亜硫酸化合物の存在下で、炭水化物を酸又はアルカリと共に加熱することによって調製されるが、アンモニウム化合物は使用されない。典型的には、クラスIIカラメル化合物は、炭水化物及び亜硫酸塩(すなわちカリウム又はナトリウムの亜硫酸塩)を使用して合成される。これらの化学物質の反応は、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムなどの苛性物質の添加によって触媒される。一般に、クラスIIカラメルは赤味がかった色合いを有し、pHが約2.5~3を超える酸の中で安定している。
【0015】
アンモニアカラメル、アンモニア加工カラメル、密閉式アンモニア加工カラメル、開放式アンモニア加工カラメル、製パン用カラメル、菓子用カラメル、又はビールカラメルとも称されるクラスIIIは、アンモニウム化合物の存在下で、炭水化物を酸又はアルカリと共に加熱することによって調製されるが、亜硫酸塩化合物は使用されない。
【0016】
亜硫酸塩アンモニアカラメルとも称されるクラスIVは、亜硫酸塩及びアンモニウム化合物の双方の存在下で、炭水化物を酸又はアルカリと共に加熱することによって調製される。一般に、クラスIVカラメルは褐色又は黒色の色合いを有し、一般に、pHが約1.5を超える酸の中で安定している。
【0017】
カラメル着色料組成物が使用されるコーラタイプ飲料などの炭酸清涼飲料は、典型的には約1.5~約2.5のpHを有する。クラスIIカラメル着色料組成物が典型的に不安定であるこれらの飲料の低pHのために、クラスIIカラメル着色料組成物は、一般に炭酸清涼飲料で使用するのに不適当である。むしろ、低pHで安定であるクラスIVカラメル着色料組成物が、典型的には炭酸清涼飲料及びその他の酸性飲料中で使用される。さらに、典型的なクラスIIカラメル着色料組成物は、クラスIVカラメル着色料組成物と比較して赤みがかった色合いを有し、色相は、クラスIIカラメル着色料組成物では約4.9~7.0、クラスIVカラメル着色料組成物では約3.0~4.5の範囲である。この赤みがかった色合のために、典型的なクラスIIカラメル着色料は、コーラなどの多くの炭酸清涼飲料、及びより暗い(より黒い)色が必要でクラスIVカラメル着色料組成物が使用できないその他の食材における使用に一般に適さない。
【0018】
したがって、低pH食品及び飲料ではクラスIVカラメル着色料組成物が理想的なようである一方で、クラスIVカラメル着色料組成物は、市販のクラスIIカラメル着色料組成物よりも製造するのが高価で時間がかかる。例えば、クラスIVカラメル着色料組成物は、アンモニアをはじめとする追加的な試薬を必要とし、しばしば追加的な反応ステップ及び装置を必要としてもよい。さらに、アンモニア又はアンモニウム塩を使用して商業的に製造されたカラメル(クラスIVカラメル着色料組成物)と、調理された食品中に又はショ糖が加熱された際に形成されたカラメルとの毒物学的区別が正当であるかどうかに関して、産業界でかなり大きい論議がある。クラスIVカラメル着色料組成物の使用を取り巻く不確実性を排除するために、低pHで安定しており、市販のクラスIVカラメル着色料組成物と同様の色相を有するクラスIIカラメル着色料組成物を形成することが望ましい。
【0019】
本開示の実施形態は、市販のクラスIVカラメル着色料組成物と同様の色相を有する、食用クラスIIカラメル着色料組成物を製造する方法に関する。さらに本開示の実施形態は、市販のクラスIVカラメル着色料組成物と同様の色相を有して、約1.0を超えるpH、例えば、約1.0~約2.5のpHで安定している食用クラスIIカラメル着色料組成物に関する。いくつかの実施形態では、食用クラスIIカラメル着色料組成物は、約1.0~約2.5のpH、例えば、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5のpH、又はそれらの間の任意の範囲のpHで安定していてもよい。その他の本開示の実施形態は、市販のクラスIVカラメル着色料組成物と同様の色相を有して、約0.1を超えるpH、例えば、約0.1~約2.5のpHで安定している食用クラスIIカラメル着色料組成物に関する。いくつかの実施形態では、食用クラスIIカラメル着色料組成物は、約0.1~約2.5のpH、例えば、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5のpH、又はそれらの間の任意の範囲のpHで安定していてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、食用カラメル着色料組成物を製造する方法は、苛性化合物の非存在下及びアンモニウム化合物の非存在下において、炭水化物及び亜硫酸塩化合物を含む反応混合物をカラメル着色料組成物を形成するのに十分な時間にわたり加熱するステップを含み得て、食用カラメル着色料組成物は、約3.8~約4.5の色相を有する。いくつかの実施形態では、食用カラメル着色料組成物は、約3.8~約4.5、例えば、約3.8、約3.9、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、又はそれらの間の任意の範囲の色相を有してもよい。いくつかの実施形態では、食用カラメル着色料組成物を製造する方法は、苛性化合物の非存在下及びアンモニウム化合物の非存在下において、炭水化物及び亜硫酸塩化合物を含む反応混合物をカラメル着色料組成物を形成するのに十分な時間にわたり加熱するステップを含み得て、食用カラメル着色料組成物は、約3.8未満の色相を有する。これらのより暗色の食用カラメル組成物は、飲料産業では一般的には有用ではないものの、それらは食品産業全体にわたって有用であってもよい。
【0021】
その他の実施形態では、食用カラメル着色料組成物は、すぐ上に記載されるステップを含むプロセスによって調製され得る。得られたカラメル着色料組成物は、低いpH範囲で安定しており、市販の「クラスIV」カラメル着色料組成物と同様の色相を有し、したがって炭酸飲料並びにその他の低pH食品及び飲料製品で使用するのに特に有用である。
【0022】
いくつかの実施形態では、食用カラメル着色料組成物を製造する方法が提供される。亜硫酸塩溶液を炭水化物の溶液に添加して約1~約2のpH、例えば、約1のpH、約1.1のpH、約1.2のpH、約1.3のpH、約1.4のpH、約1.5のpH、約1.6のpH、約1.7のpH、約1.8のpH、約1.9のpH又は約2.0のpH、及びそれらの間の任意の範囲のpHを有する反応混合物が生成され得る。亜硫酸塩溶液は、二酸化硫黄、亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、及び亜硫酸水素塩などの任意の適切な硫黄含有化合物の液体又は気体溶液であってもよい。当業者には一般的に理解されるように、二酸化硫黄の水溶液は一般に亜硫酸と称され、多数の硫黄酸化物種を含有してもよい。炭水化物の溶液は、約80ブリックス~約90ブリックス、例えば、約80ブリックス、約82ブリックス、約84ブリックス、約86ブリックス、約88ブリックス、約90ブリックス、及びそれらの間の任意の範囲の密度を有する、フルクトース、グルコース、転化糖、糖蜜、乳糖、麦芽シロップ、又はそれらの組み合わせなどの当業者に知られている任意の適切な炭水化物であってもよい。いくつかの実施形態では、亜硫酸塩溶液は亜硫酸溶液であってもよく、亜硫酸溶液は、二酸化硫黄が約1重量%~約20重量%、例えば、約1重量%、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、又はそれらの間の任意の範囲であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、亜硫酸溶液は、二酸化硫黄が約6重量%の市販の溶液であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、亜硫酸塩溶液は亜硫酸溶液であってもよく、亜硫酸溶液の形態で反応混合物に添加される二酸化硫黄の量は、炭水化物の約1重量%~約25重量%の範囲、例えば約1重量%、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、及びそれらの間の任意の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、亜硫酸溶液は、例えば、約50~約120psi、例えば、約50psi、約60psi、約70psi、約80psi、約90psi、約100psi、約110psi、約120psi、及びそれらの間の任意の範囲の加圧下において、閉鎖反応器内で炭水化物の溶液に添加される。いくつかの実施形態では、亜硫酸は、反応中に少なくとも2つの部分で少なくとも2つの時間間隔で添加され得て、例えば、亜硫酸溶液の半量が反応開始時に反応混合物に添加され、亜硫酸溶液の半量が反応開始の1時間後に反応混合物に添加されてもよい。いくつかの実施形態では、亜硫酸溶液は、高圧ポンプを介して反応混合物に添加されてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、得られた反応混合物は、約1.0~約2.0のpH、例えば、約1.0、約1.2、約1.4、約1.6、約1.8、約2.0のpH、又はそれらの間の任意の範囲のpHを有し得る。次に反応混合物は、所望のカラメル着色料を形成するのに必要な時間及び温度で加熱される。当業者には理解されるように、より高い温度及びより長い時間は、より暗色でより濃いカラメル着色料組成物を提供し、したがって加熱時間及び温度は、カラメル着色料最終製品の所望の特性に従って変化させ得る。例えば、得られた反応混合物は、約120℃~約160℃、例えば、約120℃、約130℃、約140℃、約150℃、約160℃、及びそれらの間の任意の範囲に加熱され得る。得られた反応混合物は加圧下に保持され、約2~約6時間、例えば、約2時間、約2.5時間、約3時間、約3.5時間、約4時間、約4.5時間、約5時間、約5.5時間、約6時間、及びそれらの間の任意の範囲にわたり加熱される。例えば、いくつかの実施形態では、反応混合物は、約70psi~約100psiの圧力下において、140℃で1時間、4時間、又は4.5時間加熱される。
【0025】
いくつかの実施形態において、ひとたび熱が反応器から除去されると、反応器の通気口が開かれ、あらゆる残留二酸化硫黄が放出される。次に、反応混合物は、一般にほぼ室温に放冷され、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムなどの苛性剤でpHが調節されてもよい。いくつかの実施形態では、pHは、約pH2~4、例えば、約pH2に、約pH2.5に、約pH3に、約pH3.5に、約pH4に、及びそれらの間の任意の範囲に調節される。次に、得られた食用カラメル着色料組成物は、膜濾過などを通して濾過され、噴霧乾燥されてもよい。得られた食用カラメル着色料組成物はクラスIIカラメル着色料組成物であるが、pH1.5~pH2などの低pHで安定していてもよく、例えば、約3.8~4.5、例えば、3.8、3.85、3.9、3.95、4.0、4.05、4.1、4.15、4.2、4.25、4.3、4.35、4.4、4.45、4.5の値、及びそれらの間の全ての範囲など、市販のクラスIVカラメル着色料組成物と同様の色相を有してもよい。いくつかの実施形態では、このプロセスによって調製された食用カラメル組成物が提供される。
【0026】
図1は、市販のクラスII及びクラスIVカラメル着色料と比較した、本発明の一実施形態による食用カラメル着色料組成物の可視吸収スペクトルを示すグラフである。「クラスIV」と標識された線は、市販のクラスIVカラメル着色料組成物について測定された可視吸収スペクトルを表す。「市販クラスII」と標識された線は、市販のクラスIIカラメル着色料組成物について測定された可視吸収スペクトルを表す。「新規クラスII」と標識された線は、本開示の一実施形態による食用カラメル着色料組成物について測定された可視吸収スペクトルを表す。この図から分かるように、本開示の一実施形態による食用カラメル着色料組成物の可視吸収は、特に、赤色光である約620~約700ナノメートルの波長において、市販のクラスIVカラメル着色料組成物の可視吸収スペクトルに非常に良く似ている。
【0027】
図2は、市販のクラスIIカラメル着色料と比較した、本発明の一実施形態による食用カラメル着色料組成物のUV吸収スペクトルを示すグラフである。「市販クラスII」と標識された線は、市販のクラスIIカラメル着色料組成物について測定されたUV吸収スペクトルを表す。「新規クラスII」と標識された線は、本開示の一実施形態による食用カラメル着色料組成物について測定されたUV吸収スペクトルを表す。この図から分かるように、本開示の一実施形態による食用カラメル着色料組成物のUV吸収は、特に285nmを超える波長で、市販のクラスIIカラメル着色料組成物と実質的に異なる。理論に拘束されることは意図しないが、285~300nmの間のUV吸収の違いは、本開示の一実施形態による食用カラメル着色料組成物と比較した、市販のクラスIIカラメル着色料の反応中間体、反応機序、及び存在する最終生成物の違いの証拠であると考えられる。これら2つのカラメル着色料組成物の間の違いは、2つの製品の色相指数及び酸安定性の違いによってさらに実証される。
【0028】
図3は、様々なpH値における、本開示の一実施形態による食用カラメル着色料組成物のZ平均粒度及びゼータ電位を示すグラフである。このグラフから分かるように、本開示の一実施形態による食用カラメル着色料組成物のz平均粒度及びゼータ電位は、どちらも約1.5~約8のpH値にわたって比較的安定しており、測定値はそれぞれ全て7nm及び5mVの範囲内であった。特に、低pH値におけるこの安定性は、この食用カラメル組成物を炭酸清涼飲料などにおいて低pHで使用できるようにする。
【0029】
図4は、様々なpH値における、市販のクラスIIカラメル着色料のZ平均粒度及びゼータ電位を示すグラフである。このグラフから分かるように、z平均粒度は、2未満のpHでは急激に減少し、pH8の粒度の約半分のz平均粒度になる。特に、低pH値でのこの不安定性は、この市販のクラスIIカラメル着色料を、炭酸清涼飲料などにおいて低pHで使用不能にする。
【0030】
図5は、市販のクラスIIカラメル着色料と比較した、本発明の一実施形態による食用カラメル着色料組成物のIRスペクトルを示すグラフである。「C2-ME」と標識された線は、市販のクラスIIカラメル着色料組成物について測定されたUV吸収スペクトルを表す。「C2-JK」と標識された線は、本開示の一実施形態による食用カラメル着色料組成物について測定されたUV吸収スペクトルを表す。このグラフから分かるように、市販のクラスIIカラメル着色料組成物の化学構造は、本開示の一実施形態による食用カラメル着色料組成物の化学構造と顕著に異なる。
【0031】
図6は、市販のクラスIIカラメル着色料と比較した、本発明の一実施形態による食用カラメル着色料組成物の
1Η NMRスペクトルを示す。「C2-ME」と標識されたスペクトルは、市販のクラスIIカラメル着色料組成物について測定された
1Η NMRスペクトルスペクトルを表す。「C2-3K」と標識されたスペクトルは、本開示の実施形態による食用カラメル着色料組成物について測定された
1Η NMRスペクトルを表す。スペクトルから分かるように、本発明の一実施形態による食用カラメル着色料組成物の組成は、市販のクラスIIカラメル着色料とは異なる。例えば、本開示の一実施形態による食用カラメル着色料組成物の
1Η NMRスペクトルは、市販の食用カラメル着色料組成物の
1Η NMRスペクトルよりもさらに離散した明確なピークを示し、本開示の一実施形態による食用カラメル着色料組成物は、市販の食用カラメル着色料組成物よりも副産物部分が少ない、単純な構造であることが示唆される。
【実施例】
【0032】
実施例1
SO2が6重量%の亜硫酸(2500グラム)溶液を、閉鎖反応器内の3000グラムの密度84.2ブリックスのグルコースシロップ溶液に、高圧ポンプを介して添加した。得られた反応混合物は、1.5のpHを有した。次に、反応混合物を100psiの圧力で4時間、140℃に加熱した後、反応物から熱を除去した。ひとたび反応物から熱が除去されたら、通気口を開いて残留SO2を除去した。次に、カラメル着色料組成物のpHを測定したところ、0.5であった。
【0033】
次に、カラメル着色料組成物を室温に放冷し、50%KOH溶液でpHを2.9に調節した。得られたカラメル着色料組成物を、270ダルトンの分子量カットオフ(MWCO)を有する孔径の膜を通して濾過し、噴霧乾燥した。カラメル着色料組成物の色相は、4.41と測定された。特に、この色相は、市販のクラスIVカラメル着色料とほぼ同一であり、市販のクラスIIカラメル着色料を約1.5~2単位下回る。
【0034】
実施例2
SO2が6重量%の亜硫酸(1250グラム)溶液を、閉鎖反応器内の3000グラムの密度84.2ブリックスのグルコースシロップ溶液に、高圧ポンプを介して添加した。得られた反応混合物は、1.5のpHを有した。反応混合物を70psiの圧力で1時間、140℃に加熱した。次に、反応物が140℃である間に、SO2が6重量%の1250グラムの亜硫酸溶液を高圧ポンプを介して、8ml/分の流量で150分間添加し、圧力を70psiに保った。5時間後、反応物から熱を除去し、通気口を開いて残留SO2を除去した。次に、カラメル着色料組成物のpHを測定したところ、0.9であった。
【0035】
次に、カラメル着色料組成物を室温に放冷し、50%KOH溶液でpHを2.8に調節した。得られたカラメル着色料組成物を、270ダルトンの分子量カットオフ(MWCO)を有する孔径の膜を通して濾過し、噴霧乾燥した。カラメル着色料組成物の色相は、4.45と測定された。特に、この色相は、市販のクラスIVカラメル着色料とほぼ同一であり、市販のクラスIIカラメル着色料を約1.5~2単位下回る。
【0036】
実施例3
密度84.2ブリックスの3000グラムのグルコースシロップの溶液を、1000グラムの水と混合した。このグルコース溶液を閉鎖反応器に入れ、この閉鎖反応器に200グラムのSO2ガスを添加した。得られた反応混合物のpHは、1.4であった。この反応混合物を70psiの圧力で1時間、140℃に加熱した。次に、反応物から熱を除去し、通気口を開いて残留SO2を除去した。次に、カラメル着色料組成物のpHを測定したところ、0.7であった。
【0037】
次に、カラメル着色料組成物を室温に放冷し、50%KOH溶液でpHを2.9に調節した。得られたカラメル着色料組成物を、270ダルトンの分子量カットオフ(MWCO)を有する孔径の膜を通して濾過し、噴霧乾燥した。カラメル着色料組成物の色相は、4.35と測定された。特に、この色相は、市販のクラスIVカラメル着色料とほぼ同一であり、市販のクラスIIカラメル着色料を約1.5~2単位下回る。
【0038】
定義
本明細書で使用される用語をより明瞭に定義するために以下の定義が提供され、特に断りのない限り、又は文脈上必要でない限り、これらの定義が本開示を通して適用可能である。本開示において用語が使用されているが、本明細書で具体的に定義されていない場合は、その定義が、本明細書で適用されるその他の開示又は定義と矛盾しない限り、或いはその定義が適用される請求項を不確定又は無効にしない限り、IUPAC Compendium of Chemical Terminology, 2nd Ed (1997)が適用され得る。参照により本明細書に援用される任意の文献によって提供される任意の定義又は使用が、本明細書で適用される定義又は使用と矛盾する限りでは、本明細書で適用される定義又は使用が優先される。
【0039】
「亜硫酸塩化合物」という用語は、本明細書の用法では、例えば、二酸化硫黄及び亜硫酸水素などの硫黄酸化物(IV)(酸化状態+4)を含有する、又はその供給源である、分子(非イオン性)化合物又は前駆体を指す。しかし、イオン性亜硫酸塩及び亜硫酸水素塩は、この定義に包含されない。
【0040】
「亜硫酸」という用語は、本明細書の用法では、一般にSO2の水溶液を指し、いかなる特定の硫黄酸化物種の存在も必要としない。理論に拘束されることは意図しないが、SO2の水溶液はいくらかの酸化を受けて、HSO4
-及びSO4
2-などのいくつかのS(VI)種を形成すると考えられる。
【0041】
請求項の移行用語又は句に関して、「含む(including)」又は「含む(containing)」又は「によって特徴付けられる」と同義である、移行用語「含む(comprising)」は、包括的又は非限定であり、列挙されていない追加的な要素又は方法ステップを除外しない。移行句「からなる」は、請求項で規定されていないあらゆる要素、ステップ、又は成分を除外する。移行句「から本質的になる」は、特許請求の範囲を、規定される材料又はステップに、且つ特許請求される発明の基本的及び新規特性に、実質的に影響を及ぼさないものに限定する。「から本質的になる」請求項は、「からなる」形式で書かれた閉鎖型の請求項と、「含む」形式で起草された完全に開放型の請求項との中間を占める。反対の指示がない限り、化合物又は組成物を記載するとき、「から本質的になる」は、「含む」と解釈されるべきではなく、用語が適用される組成又は方法を著しく変えない材料を含む、列挙された構成要素を記載することが意図される。例えば、本質的に材料Aからなる原材料は、列挙された化合物又は組成物の商業的に製造された又は商業的に入手可能なサンプル中に、典型的に存在する不純物を含み得る。請求項が異なる特徴及び/又は特徴クラス(例えば、特に、方法ステップ、原材料の特徴、及び/又は製品の特徴など)を含む場合、含む、から本質的になる、からなるという移行用語は、それがそれに対して使用される特徴クラスのみに適用され、請求項内で様々な移行用語又は句を様々な特徴と共に使用することが可能である。例えば、方法は、いくつかの列挙されたステップ(及び他の列挙されていないステップ)を含み得るが、特定のステップからなる触媒系調製物を利用するが、列挙された構成要素及びその他の列挙されない構成要素を含む触媒系を利用する。組成物及び方法が、様々な構成要素又はステップを「含む」という用語で記述される一方で、組成物及び方法はまた、様々な構成要素又はステップ「から本質的になる」又は「からなる」こともできる。
【0042】
「a」、「an」、及び「the」という用語は、特に別段の指示がない限り、又は文脈上必要でない限り、例えば、少なくとも1つなどの複数形代替物を含むことが意図される。
【0043】
色相、pHなどの測定の範囲を記載するとき、例えば、その範囲の開示された終点におけるよりも少なくとももう1つの有意な数字を有するあらゆる個々の数値など、このような範囲が合理的に包含し得る全ての個々の数値を開示することが出願人の意図である。一例として、約3.8~約4.5の色相に言及するとき、この範囲の開示は、約3.8、約3.85、約3.9など、約4.5以下もまた開示し、それと同等であることが出願人の意図である。範囲を記載するこれらの2つの方法が置き替え可能であることが、出願人の意図である。さらに、一連の値が開示され又は請求される場合、出願人はまた、その中に包含されるあらゆる全ての部分的範囲及び部分的範囲の組み合わせを反映し、それらと置き替え可能である、範囲の開示を意図する。したがって、例えば、出願人らが出願時点では気づいていない可能性がある参考文献を考慮するために、何らかの理由で、出願人らが開示の全てに満たない特許請求をすることを選択した場合、出願人らは、範囲に応じて、又は同様の方法で特許請求され得る、グループ内の任意の部分的範囲又は部分的範囲の組み合わせをはじめとする、このようなグループの個々のメンバーを排除又は除外する権利を留保する。
【0044】
値又は範囲は、本明細書で「約」、「約」1つの特定値から、及び/又は「約」もう1つの特定値まで、として表されてもよい。このような値又は範囲が表される場合、開示されたその他の実施形態は、1つの特定値からの、及び/又はもう1つの特定値までの、列挙された特定値を含む。同様に、先行する「約」の使用によって、値が近似値として表される場合、特定値は、別の実施形態を形成するものと理解される。いくつかの値が本明細書中で開示され、各値はまた、値それ自体に加えてその特定の値について「約」として開示されることもさらに理解されよう。態様において、「約」は、列挙された値の10%以内、列挙された値の5%以内、列挙された値の2%以内、又は列挙された値の1%以内を意味するために用いられ得る。
【0045】
本明細書で使用されるいかなる見出しも、請求項の範囲を解釈するために、又は本明細書で開示された主題の範囲を限定するために使用されることは意図されない。推定的又は予想的と示されている実施例を記載するための過去時制の使用が、推定的又は予想的な実施例が実際に実行されたことを反映することは意図されない。
【0046】
本明細書で言及される全ての刊行物及び特許は、例えば、現在記載されている発明に関連して使用されるかもしれない、刊行物に記載される構築物及び方法論を記載し開示する目的で、参照により本明細書に援用される。本文を通して論じられる刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示についてのみ提供されている。本明細書中のいかなるものも、本発明者らが先行発明のためにそのような開示に先行する権利がないことの承認として解釈されるべきでない。
【0047】
出願人らは、出願人らが気づいていない可能性がある先行開示を考慮に入れるために、任意の特許請求の範囲を限定する、例えば、任意の選択、特徴、範囲、要素又は態様を但し書きで排除する権利を留保する。