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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】目地部構造および間仕切壁
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/74 20060101AFI20240912BHJP
   E04C 2/288 20060101ALI20240912BHJP
   E04C 2/292 20060101ALI20240912BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
E04B2/74 501F
E04C2/288
E04C2/292
E04B1/94 K
E04B2/74 551E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020026570
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021130963
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 強
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-104365(JP,A)
【文献】特開平06-212716(JP,A)
【文献】特開2012-072601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/74
E04C 2/288
E04C 2/292
E04B 1/94
E04B 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の間仕切用パネルが隣接されて配置される間仕切用パネル間の目地部構造であって、
前記複数枚の間仕切用パネルの各々は、金属材からなる表面材および裏面材と、前記表面材と前記裏面材との間に配置された芯材とを有し、
前記表面材および前記裏面材は、前記間仕切用パネルの幅方向の端部に当該間仕切用パネルの内部方向に向かった第1の折り曲げ部を有し、さらに第1の折り曲げ部の先端には隣接する間仕切用パネルの方向に向かった第2の折り曲げ部を有し、
隣接する間仕切用パネルのうちの少なくとも一方において、前記表面材と前記裏面材との間に配置された芯材は、隣接する間仕切用パネルの目地部において、前記表面材および前記裏面材の第1の折り曲げ部および第2の折り曲げ部を収容する第1の凹部を備え、
隣接する間仕切用パネルの表面材の第2の折り曲げ部同士および裏面材の第2の折り曲げ部同士が固定具により接合されており、
下記の特徴1、特徴2および特徴3、すなわち、
特徴1:隣接する2枚の間仕切用パネルのうちの一方の間仕切用パネルの表面材の第2の折り曲げ部が、他方の間仕切用パネルの表面材の第2の折り曲げ部よりも表面側に配置されており、かつ、前記他方の間仕切用パネルの裏面材の第2の折り曲げ部が前記一方の間仕切用パネルの裏面材の第2の折り曲げ部よりも裏面側に配置されている、
特徴2:隣接する2枚の間仕切用パネルの表面材の積層された第2の折り曲げ部のうち、裏面側の第2の折り曲げ部の間仕切用パネルが隣接する方向の長さが、表面側の第2の折り曲げ部の前記間仕切用パネルが隣接する方向の長さよりも長く、隣接する2枚の間仕切用パネルの裏面材の積層された第2の折り曲げ部のうち、表面側の第2の折り曲げ部の前記間仕切用パネルが隣接する方向の長さが、裏面側の第2の折り曲げ部の前記間仕切用パネルが隣接する方向の長さよりも長い、
特徴3:隣接する2枚の間仕切用パネルの表面材の第2の折り曲げ部同士を接合する前記固定具は、表面側に配置された第2の折り曲げ部を有する表面材の第1の折り曲げ部側に寄せて配置され、かつ、隣接する2枚の間仕切用パネルの裏面材の第2の折り曲げ部同士を接合する前記固定具は、裏面側に配置された第2の折り曲げ部を有する裏面材の第1の折り曲げ部側に寄せて配置されている、
のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする目地部構造。
【請求項2】
前記芯材は無機ボード層を有し、
前記隣接する2枚の間仕切用パネルの一方の無機ボード層の端面に第2の凹部が設けられており、熱膨張材が前記第2の凹部に収容されている、請求項に記載の目地部構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の目地部構造を備えた複数枚の間仕切用パネルの上下端が、建物の階間に架け渡されて固定されている間仕切壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目地部構造および間仕切壁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物においては、所定の面積毎(面積区画)に、あるいは倉庫と荷捌き室との境界といった用途の異なる部屋の境界(異種用途区画)に防火区画が設けられ、火災時の内部延焼の防止が図られている。建築物を構成する壁のうち、防火区画壁を構成する間仕切壁については、建築基準法により1時間の耐火性能が必要とされている。
【0003】
ところで、昨今の物流需要の拡大により、冷凍冷蔵倉庫が大型化してきているが、これらの建築物も防火区画の対象となるため、間仕切壁によって区画する必要がある。しかし、耐火性、断熱性を併せ持った上で、さらに当該間仕切壁は耐火性のある床から耐火性のある屋根まで連続させるために長尺である必要があることも、材料の選定をますます困難なものとしていた。従って、従来は一旦耐火性のある軽量気泡コンクリート等の間仕切壁で区画した上で、当該壁の両側に各々金属サンドイッチパネル等の断熱パネルを用いて冷凍冷蔵倉庫となる部屋を構成していた。
【0004】
しかし、この場合、断熱パネルと防火区画となる間仕切壁との間は空調温度が異なる空間となるため、断熱パネルの表面において結露が生じやすく、さらにこれらの空間は狭く清掃が困難なことから、カビや虫の害が生じやすい問題がある。よって、こうした害を抑制するために、耐火性と高い断熱性とを併せ持ち、さらに長尺で使用可能な間仕切壁が求められてきた。
【0005】
従来、建築用パネルとして、ロックウールからなる芯材を金属板で挟んで接着したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、ロックウールを芯材とする建築用パネルは、高い耐火性を有しているものの、冷凍冷蔵倉庫の間仕切壁としては断熱性能が不十分である。
【0006】
ロックウールを芯材とする間仕切壁を冷凍冷蔵倉庫として用いるためには、ロックウールの有する断熱性では壁厚が極端に厚いものとなるばかりか、ロックウールは水蒸気や気体の透過性が高く、さらに大きな吸湿性と吸水性を有する。そのため、内部結露が生じやすく、一旦壁体内に入った水蒸気や水分が壁体内を自由に移動してしまい、被害が大きくさらに修復を困難なものとしていた。
【0007】
また、特許文献2には、無機材が添加されたフェノール樹脂フォームからなる芯材を金属材からなる表面材と裏面材とで挟み込んだ耐火パネルが提案されている。しかしながら、当該耐火パネルは細かなピッチで配置された軽量鉄骨等の下地に留め付ける必要があり、長尺の間仕切壁として用いることは構造的にも耐火性能的にも困難であった。
【0008】
そこで、特許文献3には、金属材からなる表面材と裏面材との間に、有機断熱ボード層および無機ボード層を積層接着した断熱耐火サンドイッチパネルが提案されているが、依然として特許文献2と同様の問題を抱えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第3657692号公報
【文献】特許第3306439号公報
【文献】特開2007-132102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
間仕切壁の耐火性を高める上で、間仕切壁を構成するパネル自体の耐火性を高める必要があることは勿論のこと、パネル間の目地部構造の耐火性を高めることも重要である。すなわち、一般に、間仕切壁は、複数枚の長尺の間仕切用パネルを短尺方向に隣接して配置されて構成されているが、パネル自体の耐火性が高くても、パネル間の目地部構造の耐火性が低い場合には、間仕切壁としての耐火性は低くなってしまう。
【0011】
そこで、本発明の目的は、間仕切壁の耐火性を高めつつ容易に施工が可能な間仕切壁における目地部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1]複数枚の間仕切用パネルが隣接されて配置される間仕切用パネル間の目地部構造であって、
前記複数枚の間仕切用パネルの各々は、金属材からなる表面材および裏面材と、前記表面材と前記裏面材との間に配置された芯材とを有し、
前記表面材および前記裏面材は、前記間仕切用パネルの幅方向の端部に当該間仕切用パネルの内部方向に向かった第1の折り曲げ部を有し、さらに第1の折り曲げ部の先端には隣接する間仕切用パネルの方向に向かった第2の折り曲げ部を有し、
隣接する間仕切用パネルのうちの少なくとも一方において、前記表面材と前記裏面材との間に配置された芯材は、隣接する間仕切用パネルの目地部において、前記表面材および前記裏面材の第1の折り曲げ部および第2の折り曲げ部を収容する第1の凹部を備え、
隣接する間仕切用パネルの表面材の第2の折り曲げ部同士および裏面材の第2の折り曲げ部同士が固定具により接合されていることを特徴とする目地部構造。
【0013】
[2]隣接する2枚の間仕切用パネルのうちの一方の間仕切用パネルの表面材の第2の折り曲げ部が、他方の間仕切用パネルの表面材の第2の折り曲げ部よりも表面側に配置されており、かつ、
前記他方の間仕切用パネルの裏面材の第2の折り曲げ部が前記一方の間仕切用パネルの裏面材の第2の折り曲げ部よりも裏面側に配置されている、前記[1]に記載の目地部構造。
【0014】
[3]隣接する2枚の間仕切用パネルの表面材の積層された第2の折り曲げ部のうち、裏面側の第2の折り曲げ部の間仕切用パネルが隣接する方向の長さが、表面側の第2の折り曲げ部の前記間仕切用パネルが隣接する方向の長さよりも長く、隣接する2枚の間仕切用パネルの裏面材の積層された第2の折り曲げ部のうち、表面側の第2の折り曲げ部の前記間仕切用パネルが隣接する方向の長さが、裏面側の第2の折り曲げ部の前記間仕切用パネルが隣接する方向の長さよりも長い、前記[1]または[2]に記載の目地部構造。
【0015】
[4]隣接する2枚の間仕切用パネルの表面材の第2の折り曲げ部同士を接合する前記固定具は、表面側に配置された第2の折り曲げ部を有する表面材の第1の折り曲げ部側に寄せて配置され、かつ、隣接する2枚の間仕切用パネルの裏面材の第2の折り曲げ部同士を接合する前記固定具は、裏面側に配置された第2の折り曲げ部を有する裏面材の第1の折り曲げ部側に寄せて配置されている、前記[1]~[3]のいずれか一項に記載の目地部構造。
【0016】
[5]前記芯材は無機ボード層を有し、
前記隣接する2枚の間仕切用パネルの一方の無機ボード層の端面に第2の凹部が設けられており、熱膨張材が前記第2の凹部に収容されている、前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の目地部構造。
【0017】
[6]前記[1]~[5]のいずれか一項に記載の目地部構造を備えた複数枚の間仕切用パネルの上下端が、建物の階間に架け渡されて固定されている間仕切壁。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、間仕切壁の耐火性を高めつつ容易に施工が可能な間仕切壁における目地部構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】本発明による目地部構造を有する間仕切壁の一例の全体図である。
図1B図1Aに示した間仕切壁の目地部の鉛直方向断面図である。
図1C図1Aに示した間仕切壁の幅方向断面図である。
図2A】間仕切用パネルの一例の全体図である。
図2B】間仕切用パネル1の一例の幅方向側の端部の断面図である。
図3】本発明による目地部構造の一例を示す図である。
図4】本発明による目地部構造の好適な一例を示す図である。
図5】間仕切用パネルを幅方向に連続して建て込む際に施工を容易とする表面材・裏面材の仕様を示す図である。
図6】本発明による目地部構造の好適な別の例を示す図である。
図7A】複数のボードで構成された有機断熱ボード層を示す図である。
図7B】隣接する有機断熱ボード層を接着する好適な方法を説明する図である。
図7C】複数のボードで構成された無機ボード層を示す図である。
図7D】有機断熱ボード層の横目地および無機ボード層における横目地の好適な配置関係を示す図である。
図8A】有機断熱ボード層が二層構造を有する場合に、アンカー材を用いて有機断熱ボード層と無機ボード層とを機械固定する方法を説明する図である。
図8B】有機断熱ボード層が二層構造を有する場合に、ビスを用いて有機断熱ボード層と無機ボード層とを機械固定する方法を説明する図である。
図8C】有機断熱ボード層が一層構造を有する場合に、ビスを用いて有機断熱ボード層と無機ボード層とを機械固定する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明による目地部構造について説明する。本発明による目地部構造は、複数枚の間仕切用パネルが隣接されて配置される間仕切壁における隣接する2枚の間仕切用パネル間の目地部構造である。複数枚の間仕切用パネルの各々は、金属材からなる表面材および裏面材と、表面材と裏面材との間に配置された芯材とを有する。
【0021】
上記表面材および上記裏面材は、間仕切用パネルの幅方向の端部に当該間仕切用パネルの内部方向に向かった第1の折り曲げ部を有し、さらに第1の折り曲げ部の先端には隣接する間仕切用パネルの方向に向かった第2の折り曲げ部を有し、隣接する間仕切用パネルのうちの少なくとも一方において、上記表面材と上記裏面材との間に配置された芯材は、隣接する間仕切用パネルの目地部において、上記表面材および上記裏面材の第1の折り曲げ部および第2の折り曲げ部を収容する第1の凹部を備え、隣接する間仕切用パネルの表面材の第2の折り曲げ部同士および裏面材の第2の折り曲げ部同士が固定具により接合されていることが肝要である。
【0022】
図1Aは、本発明による目地部構造を有する間仕切壁の一例の全体図を示している。また、図1Bは、図1Aに示した間仕切壁の目地部の鉛直方向断面図を示しており、図1Cは、図1Aに示した間仕切壁の幅方向(短尺方向)断面図を示している。
【0023】
図1A~1Cに示した間仕切壁2は、複数枚の長尺の間仕切用パネル1が短尺方向(幅方向、間仕切用パネルが隣接して配置される方向)に隣接されて配置されてなる間仕切壁であり、建物の階間、すなわち床スラブ22、23の間に架け渡され、その上下端で固定されている。間仕切壁2は、床スラブの他に、天井や床に配される耐火被覆された鉄骨梁などに固定されてもよい。また、床面にも断熱材を配置する必要のある用途の場合には、該間仕切壁の両面に床スラブ面から断熱材を積み上げた後、該断熱材上にコンクリートを打設して床面として仕上げることも多い。
【0024】
間仕切壁2の下部は、下部留付材25aおよび下部アンカー材25bにより下部取付材25cを介して床スラブ23に固定されている。図示されていないが、間仕切壁2の上部も同様に、上部留付材24aおよび上部アンカー材24bにより上部取付材24cを介して床スラブ22に固定されている。また、間仕切壁2と床スラブ22との間の目地には上部目地材26が充填されており、間仕切壁2と床スラブ23との間の目地には、下部目地材27が充填されている。
【0025】
上部アンカー材24bおよび下部アンカー材25bは、通常の間仕切壁の設計荷重である、地震時に働く1G程度の慣性力に耐えるものを選択するが、一般的には径がM8~10程度、埋め込み長さが30~70mm程度のコンクリート用アンカー材を、負担できる耐力に応じて必要本数配置されている。
【0026】
また、上部目地材26および下部目地材27は、火災時に壁材に変位や回転が生じた場合に火炎や熱を貫通させる隙間を生じさせず、また壁材のファイヤーストップ材としての機能を損なう欠損や脱落を生じさせず、さらに平常時には熱貫流を小さくするための材料である。上部目地材26および下部目地材27としては、セラミックファイバー、アルカリアースシリケートブランケット(生体溶解性繊維)などを用いることができる。
【0027】
上記間仕切壁2を構成する複数枚の長尺の間仕切用パネル1の各々は、金属材からなる表面材および裏面材と、表面材と前記裏面材との間に配置された芯材とを有する。芯材は、例えば、有機断熱ボードおよび無機ボードを用いて構成することができる。
【0028】
図2Aは、間仕切用パネル1の一例の全体図を示しており、図2Bは、図2Aに示した間仕切用パネル1の幅方向側の端部の断面図を示している。図2Aに示した間仕切用パネル1は、金属材からなる表面材11および裏面材12と、表面材11と裏面材12との間に配置された、2枚の有機断熱ボード層13、14と該2枚の有機断熱ボード層13、14との間に挟まれた無機ボード層15とを有する。
【0029】
図2Bに示すように、上記間仕切用パネル1において、芯材である有機断熱ボード層13、14の角部には、側壁Dsと底面Dbとで区画された凹部(第1の凹部)D1が設けられている。そして、間仕切用パネル1の表面材11(裏面材12)の幅方向側の端部は、上記第1の凹部D1において、間仕切用パネル1の内部に向かった第1の折り曲げ部11a(12a)と、該第1の折り曲げ部11a(12a)の端部11ae(12ae)から延在する第2の折り曲げ部11b(12b)とを有する。
【0030】
一方、間仕切用パネル1において、床スラブ22、23に取り付けられる長尺方向側の端部は、第2の折り曲げ部11b、12bを有さずに第1の折り曲げ部11a、12aのみを有し、有機断熱ボード層13、14の側壁Ds側に折り曲げられて第1の凹部D1に係合するように構成されている。そして、表面材11(裏面材12)と有機断熱ボード層13(14)との間には、接着剤で構成された接着剤層16(17)が形成されており、側壁Dsと第1の折り曲げ部11a(12a)の内面(側壁Ds側の表面)に隙間を設けて接着剤を塗布後プレスする際に端部に接着剤が溜まることがないようにして、表面材11(裏面材12)と有機断熱ボード層13(14)との間に均一に接着剤が拡がるようにしている。
【0031】
間仕切用パネル1は、図2Aおよび図2Bに示したものに限定されず、表面材11と裏面材12との間に複数枚の無機ボード層が挟まれて配置された構成を有するパネルや、表面材11と裏面材12との間に、複数枚の無機ボード層と該複数枚の無機ボード層の間に有機断熱ボード層が挟まれて配置された構成を有するパネルなどを用いることもできる。
【0032】
以下、間仕切用パネル1が、図2Aおよび図2Bに示した構成を有する場合を例に、本発明による目地部構造を説明するが、間仕切用パネル1の構成はこれに限定されない。なお、間仕切用パネル1を構成する表面材11、裏面材12、有機断熱ボード層13、14および無機ボード層15の詳細については後述する。
【0033】
図3は、本発明による目地部構造の一例を示している。図3に示した目地部構造の目地部50においては、図2Bに示したように、隣接する間仕切用パネル1a、1bの各々の表面材11および裏面材12に隣接する芯材、すなわち、有機断熱ボード層13、14の表面材11側および裏面材12側の角部に、側壁Dsと底面Dbとで区画された第1の凹部D1が長尺方向に沿って設けられている。そして、隣接する間仕切用パネル1間の有機断熱ボード層13(14)の表面側(裏面側)において、隣接する2つの第1の凹部D1で構成された凹部13a、14aが形成されている。
【0034】
隣接する間仕切用パネル1a、1bの一方の間仕切用パネル(例えば、1a)の表面材11の端部および裏面材12の端部の各々は、上記第1の凹部D1において、間仕切用パネル1の内部方向に向かって延在する第1の折り曲げ部11a(12a)と、該第1の折り曲げ部11a(12a)の端部11ae(12ae)から底面Dbに沿って他方(例えば、1b)における芯材、すなわち、有機断熱ボード層13、14の第1の凹部D1内に延在する第2の折り曲げ部11b(12b)とを有する。
【0035】
同様に、他方の間仕切用パネル(例えば、1b)の表面材11の端部および裏面材12の端部の各々は、第1の凹部D1において、間仕切用パネル1の内部方向に向かって延在する第1の折り曲げ部11a(12a)と、該第1の折り曲げ部11a(12a)の端部から底面Dbに沿って上記一方の間仕切用パネル(例えば、1a)における芯材、すなわち、有機断熱ボード層13、14の第1の凹部D1内に延在する第2の折り曲げ部11b(12b)とを有する。
【0036】
ここで、隣接する間仕切用パネル1a、1bにおける一方の表面材11(裏面材12)の第2の折り曲げ部11b(12b)は、他方の第2の折り曲げ部11b(12b)と固定具(図示例では、ビスV)により接合されている。これにより、隣接する間仕切用パネル1a、1b相互が一体化されて強固な間仕切壁2とすることができ、間仕切壁2の一部に荷崩れや火災等による局所的な負荷が加わった際の抵抗力が優れたものとなる。図3に示すように、隣接する間仕切用パネル1a、1bにおける一方の表面材11(裏面材12)の第2の折り曲げ部11b(12b)は、他方の第2の折り曲げ部11b(12b)と積層されて固定具により接合されていることが好ましい。
【0037】
なお、第1の折り曲げ部11a(12a)は表面材11(裏面材12)を補強するものであり、長尺方向に容易に座屈が生じないようにするものである。表面材11および裏面材12に第1の折り曲げ部11a(12a)を設けると、長尺方向に補強される反面、幅方向に湾曲などの変形や座屈が生じやすくなるため、第2の折り曲げ部11b(12b)を設け、隣接する間仕切用パネル1a、1bの第2の折り曲げ部11b(12b)の相互を固定具により接合することにより幅方向の座屈や変形を抑止している。
【0038】
表面材11(火災時に加熱側となる面)は、火災による加熱中、耐火性を有する芯材に入る熱量を軽減する役割を担う。本発明では、隣接する表面材11相互を固定具で接合するため、表面材11の継ぎ目より侵入する熱量を軽減することができる。さらに、加熱終了後は、温度低下に伴い、パネル1を構成する各材料は収縮しようとするため、パネル1の目地部50に隙間が生じやすくなるが、本発明では裏面材相互を固定具で接合しているため、目地部50に隙間が生じずに目地部50の熱量の移動を防ぐことができる。
【0039】
さらに、パネル1間の目地部50には、シーリング材28が打設されている。これにより、隣接する間仕切用パネル1a、1bがより強固に一体化するため、目地部50に隙間が生じにくくなる。また、芯材の裏面側に有機系断熱材を用いるような場合は、温度が低下しても酸素濃度が上昇することにより発火することがあり、特に裏面側からの酸素の流入を防ぐ必要がある。このような現象に対し、隣接する間仕切用パネル1a、1bの裏面材12相互を接合し、さらにシーリング材28を打設することが極めて有用である。
【0040】
また、表面材11は加熱中に大きく膨張するため、芯材にALCやケイカル板等の割れやすい無機材料を用いている場合は、表面材11と芯材を早期に剥離させ、これらの材料が表面材11の変形に追随して損傷を受けるのを防ぐことが肝要である。本発明では芯材の表面材11側に第1の凹部D1を設け、加熱側の第1の折り曲げ部11aと芯材とを縁切りしているため、表面材11と芯材表面の接着さえ剥離すれば、両者を分離させることができ、好ましい。特に、加熱直後は表面材11の平面部分は急激に温度上昇するが、第1の折り曲げ部11aなどパネル1の内部に入った部分では、シーリング材28の燃焼の影響等も相まって、温度の上昇が遅れ気味である。
【0041】
また、営業倉庫の場合、間仕切壁には荷崩れ荷重に対する耐力を要求される。荷崩れした直後より全ての壁部分に等しく荷重が加わるわけでなく、まず、壁面の一部に大きな荷重が加わることもあり、その後荷重が加わる面積が拡がるのが一般的であり、特に長尺の間仕切壁の場合、この問題への対応が重要である。本発明による目地部構造であれば、隣接するパネル1a、1bが一体化しているため、局所的に加わった大きな荷重を隣接したパネル1a、1bに分散して負担させることができるため、好ましい。
【0042】
なお、図3においては、積層された表面材11(裏面材12)の第2の折り曲げ部11b(12b)のうち、表面側(裏面側)のものを11bo(12bo)、裏面側(表面側)のものを11bi(12bi)で示している。
【0043】
第2の折り曲げ部11b(12b)は、パネル1の全長に亘って形成されている必要はなく、例えば第1の折り曲げ部11a(12a)に300~1500mm程度の間隔でリベットにより固着されていてもよい。そして、表面材11(裏面材12)の互いに積層する部分がビスVで300~1500mm程度の間隔で連結されている。
【0044】
また、図3に示すように、間仕切壁2を構成する複数枚の長尺の間仕切用パネル1a、1bの小口間には、熱膨張材21が充填されていることが好ましい。熱膨張材21は、パネル1a、1b間の全厚に装填するのではなく、加熱時間中および加熱後に強度を有しつつ、残存する無機ボード層15の部分のみに装填するのが最も効率がよい。さらに、熱膨張材21は、必ずしも無機ボード層15の全厚に装填する必要はなく、想定する無機ボード層15間の隙間と熱膨張材21の膨張率などを考慮して決めればよく、厚さは1~3mm、幅は15~50mm程度のものが好ましい。また、パネル1間の目地部50には、シーリング材28が打設されている。
【0045】
熱膨張材21としては、シート状や紐状の熱膨張材、耐火塗料などを使用できる。熱膨張性シート材としては、150~200℃程度で膨張を開始し、300℃で5~15倍程度、600℃で10~30倍程度に膨張し、加熱温度である900℃程度でも消失しない無機材料を半分程度以上含むシート状に成形されたものを、所定寸法に加工して用いることができる。組成としては、例えば膨張層を形成するホウ酸等の無機充填材に膨張材である膨張黒鉛を加え、さらに鉱油、カーボンブラック等の添加剤とブチルゴム等のバインダーを加えて、シート状に成形したものなどを用いることができる。また、無機充填材としてホウ酸を用いる場合には、酸化アルミニウムをホウ酸に対して重量比で0.45以上1.5以下加え、かつケイ酸化合物、マグネシウム塩およびカルシウム塩の合計含有量をホウ酸に対して重量比で10%未満とすることにより、膨張後の熱膨張性シート材の形状保持能力を高めることができ、好ましい。
【0046】
上記接合により、目地部50の動きが低減され、シーリングを高寿命化させることもできる。また、幅方向の最外部が金属材からなる表面材11または裏面材12によって構成されることになるため、芯材である有機断熱ボード層13、14および無機ボード層15の小口の損傷を防止することができる。さらに、間仕切壁2としての建込時に、金属材からなる表面材11および裏面材12の出入り調節が容易になる。
【0047】
また、第2の折り曲げ部11b(12b)のパネル表面側(裏面側)11bo(12bo)には、シーリング材28の三面接着を防止するためのボンドブレーカー29が敷設されている。なお、ボンドブレーカー29の代わりに発泡樹脂製のバックアップ材を用いることも可能であるが、これらの材料は、耐火試験における裏面温度の規定値である180+雰囲気温度付近で、収縮する性状を有するものが多く、加熱反対側でのシーリングの底面側からの付着切れを招き、耐火性を低下させるおそれがあるため、注意を要する。
【0048】
図4は、図3に示した目地部構造の好適な態様を示している。図3に示した目地部構造の目地部50においては、隣接する間仕切用パネル1a、1bのうちの一方(図3においては、間仕切用パネル1a)における表面材11(裏面材12)の第2の折り曲げ部11bi(12bi)の双方が、裏面側(表面側)に配置されている。
【0049】
これに対して、図4に示した目地部構造の目地部60においては、隣接する2枚の間仕切用パネル1a、1bのうちの一方の間仕切用パネル(図4では、間仕切用パネル1b)の表面材11の第2の折り曲げ部11boが、他方の間仕切用パネル(図4では、間仕切用パネル1a)の表面材11の第2の折り曲げ部11biよりも表面側に配置されており、かつ、他方の間仕切用パネル(図4では、間仕切用パネル1a)の裏面材12の第2の折り曲げ部12boが一方の間仕切用パネル1bの裏面材12の第2の折り曲げ部12biよりも裏面側に配置されている。
【0050】
このように構成することにより、隣接する間仕切用パネル1a、1bの一方1aの第2の折り曲げ部11biと12boの間隔と、他方1bの第2の折り曲げ部11boと12biの間隔に誤差がある場合や隣接するパネル1a、1bの4枚の第2の折り曲げ部11bi、11bo、12bi、12boが平行でない場合にも、容易に現場で建て込むことができる。このような配慮は、特に長尺の間仕切用パネル1a、1bの場合に肝要である。すなわち、予め所定の位置に施工された間仕切用パネル1aに続いて次の間仕切用パネル1bを施工する際に、図5に示すように、各々の間仕切用パネル1a、1bの第2の折り曲げ部11biと11boおよび12boと12biを厚み方向に少しずらした状態で幅方向を所定寸法になるように引き寄せた後に、厚み方向に所定位置まで押し込むことにより、第2の折り曲げ部11bi、11bo(12bi、12bo)同士が衝突することなく、容易に施工することができる。
【0051】
積層する第2の折り曲げ部11bi、11bo(12bi、12bo)のうち、有機断熱ボード層13、14に隣接する第2の折り曲げ部11bi(12bi)の幅方向(短尺方向)の長さを長くして、さらに、図4に示すように、固定具(図4では、ビスV)の位置が、第1の折り曲げ部11a(12a)側に寄せて配置されていることが好ましい。これにより、固定具の第2の折り曲げ部11bo、11bi、12boおよび12biにねじ込んだ固定具のへり空きを大きくすることができ、隣接する間仕切用パネル1a、1b同士の連結強度を高めることができる。
【0052】
すなわち、様々な要因により施工現場において設計値よりも目地部の幅を広げて施工する際、第2の折り曲げ部11biのへり空きは11boのへり空きより大きく余裕があるため、第2の折り曲げ部11bo上の固定具を打つ位置を変えずに施工することにより、11bi、11boともにへり空きを確保することができる。
【0053】
また、第2の折り曲げ部11bo、11bi、12bo、12biは、積層される両者の直線性等の誤差を吸収できるように隙間をもって設計され、それらが固定具により接合される際に隙間が小さくなるものであるが、必ずしも密着する必要はない。
【0054】
第1の折り曲げ部11a、12aは、表面材11および長さ方向の座屈を防止するとともに、固定具を収容できる深さが必要であり、第1の折り曲げ部11a、12aの長さは5~20mmが好ましく、7~15mmがさらに好ましい。第2の折り曲げ部11bo、11bi、12bo、12biは固定具を収容するとともにその接合強度を確保するためのへり空き距離を確保する必要があり、第2の折り曲げ部11bo、11bi、12bo、12biの長さは7~20mmが好ましく、8~15mmがさらに好ましい。
【0055】
また、隣接する2枚の間仕切用パネル1a、1bの一方(図4においては、間仕切用パネル1b)の無機ボード層15の端面15bに第2の凹部D2が設けられており、熱膨張材21が凹部(第2の凹部)D2に収容され、寄せて配置されていることが好ましい。これにより、互いに隣接する間仕切用パネル1a、1bの間に熱膨張材21を配置する際に、設けた第2の凹部D2に熱膨張材21を充填すればよいため、施工性を大きく向上させることができる。なお、図4に示すように、無機ボード層15と熱膨張材21との間には、隙間(例えば、幅方向に1mm程度)が空いていてもよい。
【0056】
図6は、図3に示した目地部構造の好適な別の態様を示している。図6に示した目地部構造70においては、表面材11に隣接する有機断熱ボード層13のうち、間仕切用パネル1aの有機断熱ボード層13のみに第1の凹部D1が設けられており、この第1の凹部D1が凹部13aを構成している。そして、無機ボード層15間の目地部の位置と、有機断熱ボード層13間の目地部の位置とが、間仕切用パネル1の幅方向にずらして配置されており、相決り構造が構成されている。
【0057】
また、裏面材12に隣接する有機断熱ボード層14のうち、間仕切用パネル1bの有機断熱ボード層14のみに第1の凹部D1が設けられており、この第1の凹部D1が凹部14aを構成している。無機ボード層15間の目地部の位置と、有機断熱ボード層14間の目地部の位置とは、間仕切用パネル1の幅方向に同じ位置に配置されている。図4に示した目地部構造60と同様に、熱膨張材21は、間仕切用パネル1aの無機ボード層15の端面15cに設けた第2の凹部に収容され、寄せて配置されている。
【0058】
図6に示した目地部構造とすることにより、各層の材料の多少の寸法誤差や間仕切壁の施工誤差があっても表面材側から裏面材側に貫通する隙間が生じにくいため、火災の際、目地部70において加熱側から非加熱側に流れる熱が低減され耐火性が向上するとともに、平常時の断熱性・透湿抵抗および遮音性等を向上させることができる。
【0059】
上述のように、間仕切壁2は、その上下端で躯体に固定されるため、間仕切壁2の表面材11(裏面材12)が加熱された際に、表面材11(裏面材12)が膨張して、表面材11(裏面材12)と有機断熱ボード層13(14)とを剥離させることができ、ボード層13、14、15が変形して破損することなく、間仕切壁2の耐火性を保持できる。このように、本発明による目地部構造により、高い耐火性と断熱性とを兼ね備えた間仕切壁2を実現することができる。
【0060】
なお、図3図6に示した目地部構造において、第1の折り返し部11aと側壁Dsとの間に隙間を設けることが好ましい。これにより、有機断熱ボード層13、14の表面に接着剤を塗布し、表面材11および裏面材12を配置してプレスした際に、接着剤が有機断熱ボード層13、14の端部に溜まることがなく、接着面全体に均等に塗布させて、全面に亘って確実な接着効果を得ることができる。
【0061】
また、表面材11(裏面材12)の第2の折り返し部11b(12b)の裏面側(表面側)の表面と底面Dbとの間の距離は、2mm以上20mm以下であることが好ましく、3mm以上5mm以下であることがより好ましい。上記距離が大きければ大きいほど、施工時の作業効率は上がるが、耐火性が悪化する。上記距離が2mm以上20mm以下であれば、施工性と耐火性とを両立させることができる。
【0062】
なお、図3図6においては、第1の凹部D1のパネル厚み方向の断面の形状は矩形であるが、これに限定されず、加工の都合等により曲面で構成された形状、例えば円形や楕円形とすることもできる。
【0063】
次に、図2Aおよび図2Bに示した間仕切用パネル1を構成する表面材11、裏面材12、有機断熱ボード層13、14および無機ボード層15の構成について説明するが、これに限定されない。
【0064】
-表面材および裏面材-
表面材11および裏面材12は、金属材で構成されており、加熱された際に有機断熱ボード層13、14から剥離して、加熱側に大きく膨張して変形するように構成することができる。表面材11および裏面材12は、金属材をプレス成形、押出成形、ロール成形等によって所定の断面形状に形成したものを使用することができる。
【0065】
金属材としては、例えば、溶融55%アルミニウム-亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、塗装溶融55%アルミニウム-亜鉛めっき鋼板(塗装:ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、アミノ・アルキド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂)、塗装溶融亜鉛めっき鋼板(塗装:ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、アミノ・アルキド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂)、塗装ステンレス鋼板(塗装:ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、アミノ・アルキド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂)、塩化ビニル樹脂フィルム張/金属板、高耐候性圧延鋼材(塗装:エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂)、両面ポリエステル樹脂系塗装/溶融アルミニウムめっき鋼板、フェライト系ステンレス鋼板、両面アクリル樹脂系塗装/亜鉛合金板などを用いることができる。なお、前記の金属板の塗装は表面だけでなく有機断熱ボードと接着される面にも施されることが一般的であり、この場合には接着剤の常温時の接着性と加熱時の初期の燃焼性の点から樹脂を選択し、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂などを用いることが好ましい。
【0066】
表面材11および裏面材12の寸法は、設計に応じて適切に設定することができ、例えば、長さは0.6~12m、幅は300~1000mmとすることができる。また、表面材11および裏面材12の厚みは、強度や重量、経済性の点で、0.3~1.6mmとすることが可能であるが、より好ましくは0.4~1.0mmである。
【0067】
-有機断熱ボード層-
有機断熱ボード層13、14は間仕切壁に断熱性を持たせるための層である。有機断熱ボード層13、14は、無機ボード層15の裏面側の有機断熱ボード層14の温度が上昇した場合に燃焼しない耐熱性の高いものであれば、材料は限定されない。
【0068】
こうした有機断熱ボード層13、14を構成する樹脂としては、ポリウレタン樹脂、イソシアヌレート樹脂、フェノール樹脂などの発泡体のほかポリイミド発泡体やPET樹脂発泡体などを用いることができる。ただし、無機ボード層15を極力薄くして軽量化を図る場合には、加熱側の無機ボード層15の被覆効果、非加熱側有機断熱ボード層14の耐熱性の点から、有機断熱ボード層13、14としては、構成する樹脂が熱硬化性樹脂からなる有機断熱ボード層を用いることが好ましい。これにより、表面材11(裏面材12)が加熱された際に、表面材11(裏面材12)と有機断熱ボード層13(14)とが剥離した後、有機断熱ボード層13(14)を無機ボード層15の表面に留めておくことができる。
【0069】
なお、図2Aおよび図2Bにおいては、有機断熱ボード層を2枚で構成し、これらの間に無機ボード層15が挟まれているが、有機断熱ボード層は3枚以上で構成することができる。例えば、有機断熱ボード層を4枚で構成し、2枚目と3枚目の間に無機ボード層15を挟み込むことができる。
【0070】
--熱硬化性樹脂--
上記熱硬化性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、イソシアヌレート樹脂、フェノール樹脂などを用いることができる。中でも、高い難燃性を有することから、熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂を用いることが好ましく、さらに加熱されて炭化する際に膨張性を有するものを選択するとなお好ましい。
【0071】
有機断熱ボード層13、14は、熱硬化性樹脂や硬化剤、発泡剤などを一緒に混合して発泡して硬化し、得られた樹脂フォームをボード状にしたものを用いることができる。また、有機断熱ボード層13、14は、成形上の都合や表面材11(裏面材12)や無機ボード層15との接着性などの点で、表裏面に面材を有するものを用いてもよい。
【0072】
こうした樹脂フォームおよび面材を有する有機断熱ボード層13、14は、面材上に熱硬化性樹脂、硬化剤、発泡剤などを混合した混合物を一定速度で走行する面材上に混合物を吐き出させた後、硬化炉内のコンベア間でボード状に成形して形成することができる。また、有機断熱ボード層13、14は、予め表面材11、裏面材12および無機ボード層15を所定間隔の隙間をもって設置した後、当該隙間に有機樹脂材料を注入する方法で構成してもよい。この場合、上記有機樹脂材料を適切に選定すれば、その自己接着力により接着剤を兼用することができる。
【0073】
上記面材としては、ポリエステル不織布、ポリプロピレン不織布、アルミニウム箔、不燃性の加工紙、およびこれらの材料を組み合わせたものなどを用いることができる。当該面材を介して有機断熱ボード層13、14を無機ボード層15に接着する場合には、耐火試験時に有機断熱ボード層13、14が無機ボード層15の表面から長時間脱落しないようにすることが肝要である。よって、不燃性の面材や耐熱性接着剤を用いることが耐火性能上最も有利であるが、これらはいずれも高価であるため、耐火性を損なわない範囲で有機系の面材を使ってもよい。また、耐火試験時に無機ボード層15から発生する水蒸気が面材と無機ボード層15との間に集積された際に生じる接着剥離等への対策も重要であり、透湿性を有する面材を使うことも好ましい。これらの点から、有機系の面材の中ではポリエステル不織布が価格、耐熱性、透湿性を総合した性能を有しており、好ましい。
【0074】
有機断熱ボード層13、14の寸法は、間仕切用パネル1の設計に応じて適切に設定することができる。有機断熱ボード層13、14は、図7Aに示すように、長さ方向に複数枚の有機断熱ボード13b(14b)を並べて構成することができ、パネル1の長さを超える分については切断して長さを合わせることができる。また、有機断熱ボード層13、14は、幅方向に複数枚の有機断熱ボード13b(14b)を並べて構成することができ、パネル1の幅を超える分については切断して幅を合わせることができる。このように、有機断熱ボード層13、14は、その面内方向に隣接する複数枚の有機断熱ボード13b(14b)で構成することができる。
【0075】
これら隣接する有機断熱ボード13b(14b)の小口間は接着してもよいが、特に炭化時に膨張する特性のある樹脂を用いる場合には省略しても耐火性が低下することはなく、パネルとしての曲げ強度、せん断強度および製造上の都合で決めればよい。また、隣接する有機断熱ボード13b(14b)の小口間に隙間を設けて配置してもよい。この場合、有機断熱ボード13b(14b)と表面材11(裏面材12)とを接着剤を用いて接着する際に表面材11と裏面材12とをプレスすると、接着剤が上記隙間に入り込み、隣接する有機断熱ボード13b(14と)が連結され、パネル1の強度性能を向上させることができる。このような効果は、有機断熱ボード13b(14b)が薄い場合に特に大きい。
【0076】
なお、有機断熱ボード13b(14b)を上述した樹脂フォームと面材とで構成し、隣接する有機断熱ボード13b(14b)の小口間を接着する場合、小口面に接着剤を塗布して有機断熱ボード13b(14b)同士を押しつける。その際、樹脂フォーム部分は弾性を有しているため圧縮されるのに対して、面材は弾性を有していないため、小口面付近の面材が余剰となり、小口面の密着性が低下して有機断熱ボード13b(14b)間の接着性が低下する。
【0077】
そこで、図7Bに示すように、有機断熱ボード13b(14b)の小口面付近の角部を除去して凹部を設けることが好ましい。これにより、小口面付近の面材13c(14c)が除去されるため、隣接する有機断熱ボード13b(14b)同士を押しつけた際に、小口面付近の面材13c(14c)が余剰にならず、さらに小口面同士を押し付けた際に余って小口面の下方に集まった接着剤の溜まり部を形成することにより、小口面の密着性を向上させることができる。こうして、有機断熱ボード13b(14b)間の接着強度を向上させることができる。
【0078】
上記角部の除去の断面範囲は、接着剤の塗布量、粘性および小口面を押し付ける圧力などを考慮して適宜設定するが、一般的には半径が1mm~5mmの1/4円状や1辺が1mm~5mmの三角形状の部分について行えばよい。さらに、長さ方向には全長に亘って設けるのが一般的であるが、辺の端部など接着剤が溜まりやすい部分を大き目に除去するのも好ましい。
【0079】
なお、上述のように、樹脂フォーム13d(14d)は弾性を有しているため、有機断熱ボード13b(14b)同士の押しつけによって、小口面そのものの平坦度や上記角部の除去による寸法の誤差を吸収させることができる。
【0080】
また、断熱性や強度、経済性の点で、有機断熱ボード層13、14の厚みは20~150mm、より好ましくは30~100mmとし、密度は20~80、より好ましくは25~50kg/mとする。
【0081】
上記表面材11(裏面材12)と有機断熱ボード層13(14)とを接着する接着剤は、特に限定されず、有機系接着剤や無機系接着剤、両面テープ等を用いることができる。
【0082】
-有機系接着剤-
上記接着剤として有機系接着剤を用いると、表面材11(裏面材12)が加熱された際に、250~400℃程度で有機系接着剤が燃焼して接着性が失われ、表面材11(裏面材12)と有機断熱ボード層13(14)とを良好に剥離させることができる。その結果、有機断熱ボード層13、14、無機ボード層15および裏面材12が表面材11の変形に追随することなく、これらに大きな変形、亀裂が入ったり、材料間もしくは材料内部の剥離が生じたりすることを防ぎ、これらの材料の一体性と平面性が維持され、耐火性を発揮することができる。
【0083】
有機系接着剤としては、ウレタン樹脂系(主成分:ウレタン樹脂、溶剤:エステル類、ケトン類)、エポキシ樹脂系(主成分:(主剤)エポキシ樹脂、(硬化剤)変性ポリアミン、変性ポリチオール、溶剤:エステル類、ケトン類、アルコール類)、酢酸ビニル樹脂系(主成分:酢酸ビニル樹脂、溶剤:アルコール類、エステル類、ケトン類)、変性シリコン系のものを用いることができる。中でも、低温下での使用に適することから、有機系接着剤としてウレタン樹脂系やエポキシ樹脂系のものを用いることが好ましい。
【0084】
また、無機系接着剤としては、ケイ酸ナトリウムを主成分とし、シリカ、カオリン、タルク、粘土鉱物などの無機成分を加えたものや、さらにスチレン・ブタジエン共重合体などの有機系の添加剤を加えて作業性を改善させたものを用いることができる。ただし、これらの接着剤は耐熱性が高いため、表面材11が加熱された際に接着剤層では剥がれにくくなる。芯材の表面側に有機系の断熱材や面材を使ったりする場合を除いて、芯材の表面側も全て無機系材料を用いる場合には、表面材11と芯材とが容易に剥がれないために、そのような前提での設計が必要となる。
【0085】
-無機ボード層-
無機ボード層15は、パネルとしての耐火性を発揮するために重要な層であり、軽量気泡コンクリート、石膏ボード、ケイカル板などで構成することができる。中でも、無機ボード層15は、軽量気泡コンクリートで構成することが好ましい。軽量気泡コンクリートとしては、高温高圧養生され、内部を特殊防錆処理を施した鉄筋マットやメタルラス(スチール製の金網)で補強した比重0.5程度のものが好ましく、比重0.35程度のものが断熱性および軽量性がさらに優れ好ましい。また、軽量気泡コンクリートは、その製造方法の特徴から内部に容易にメタルラスや鉄筋マットを配置できる。
【0086】
無機ボード層15を石膏ボードやケイカル板で構成する場合、これらの材料は結晶水が多く、従来防耐火の用途に多用されてきたが、結晶水が放出された後は反りや亀裂が大量に発生するため、厚みを大きくしたり、内部に不燃性の補強材を装填したりする必要がある。現在の成型方法では内部に補強材を装填することは困難なため、複数枚重ねてその間に挟むなどの方法を用いる必要がある。上記石膏ボード、ケイカル板の接着は、有機系接着剤を用いることもできるが、水ガラスやコロイダルシリカなどをバインダーとし、アルミナ等の酸化物をフィラーとする無機系接着剤を用いると、加熱時間中や加熱終了後も長く接着性を維持できるため好ましい。
【0087】
また、上記不燃性の補強材としては、ガラスファイバーネットやメタルラスなどを用いることができる。
【0088】
無機ボード層15の寸法は、間仕切用パネル1の設計に応じて適切に設定することができる。無機ボード層15は、図7Cに示すように、長さ方向に複数枚の無機ボード15aを並べて構成することができ、パネル1の長さを超える分については切断して長さを合わせることができる。また、無機ボード層15は、幅方向に複数枚の無機ボード15aを並べて構成することができ、パネル1の幅を超える分については切断して幅を合わせることができる。このように、無機ボード層15は、その面内方向に隣接する複数枚の無機ボード15aで構成することができる。
【0089】
なお、図7Cに示した無機ボード層15を構成する複数枚の無機ボード15aは、縦目地がずれるように配置されているが、縦目地が一直線に並ぶように配置してもよい。
【0090】
無機ボード層15を複数枚の無機ボード15aで構成する場合、複数枚の無機ボード15aの小口面を互いに耐火接着剤により接着するか、複数枚の無機ボード15aの小口面間に熱膨張材を装填するか、複数枚の無機ボード15aを連結金具によって面外方向、面内方向、または面外方向および面内方向の動きに対して互いに固定するか、これらの手段を併用することが好ましい。
【0091】
耐火接着剤としては、ケイ酸ナトリウムを主成分とし、シリカ、カオリン、タルク、粘土鉱物などの無機成分を加えたものや、さらにスチレン・ブタジエン共重合体などの有機系の添加剤を加えて作業性を改善させたものを用いることができる。他には、セメント系材料に適宜バインダーを加えたものも用いることができる。
【0092】
また、熱膨張材としては、上述した隣接する間仕切用パネル1a、1b間に配置される熱膨張材と同様のものを使用することができる。
【0093】
2枚の有機断熱ボード層13、14の間に無機ボード層15を配置する際に、図7Dに示すように、有機断熱ボード層13、14における横目地および無機ボード層15における横目地が、長さ方向にずれていることが好ましい。これにより、間仕切用パネル1の強度を向上させることができる。このずれは、有機断熱ボード層13、14の厚みの1~3倍程度とすることが好ましい。また、耐火性・断熱性・気密性・遮音性および防湿性の点からも同程度のずれを設けることが好ましい。
【0094】
無機ボード層15と有機断熱ボード層13、14との接着については、耐火試験時に炭化した有機断熱ボードをできるだけ脱落させないように材料を選択する事が肝要である。無機系接着剤を用いることにより、耐火性は向上するが、パネル1としての製作に手間を要する。有機系接着剤を用いる場合、耐火試験時には無機ボードの加熱側表面温度が無機ボード層15の結晶水が蒸発する間長く100℃に留まることを考慮し、少なくとも100℃で十分な接着力を維持し、さらに噴出する水蒸気により接着力の低下を招かない材料を選択する必要がある。このような性質を持つ材料として、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を用いることが好ましい。また、表面材11(裏面材12)と有機断熱ボード層13(14)との接着剤と同じものを用いると製作効率に優れ、好ましい。
【0095】
また、接着剤の塗布量は概ね一層当たり100~500g/mが好ましく、各々の接着剤層の母材の種類・表面の平坦さ、塗布後のプレスの圧力・時間および間仕切用パネルとしての目標性能に応じて決定する。
【0096】
間仕切用パネル1として大きな曲げ荷重が求められる場合には、各々の接着剤層で母材破壊が生じるまで強固に接着されるように設計されることがあり、接着剤の塗布量としては、表面材11(12)と有機断熱ボード層13(14)との間は100~300g/mが好ましく、有機断熱ボード層13、14相互間は100~300g/mが好ましく、有機断熱ボード層13(14)と無機ボード層15との間は200~500g/mが好ましい。
【0097】
表面材11(裏面材12)と有機断熱ボード層13(14)との間の塗布量が多すぎると、火災時に加熱された場合に剥離するまでの間の時間が長くなるため、好ましくない。を考慮すると100~500g/mが好ましい。各層ともプレスにより接着剤が全体に万遍なく広がるのが好ましく、接着剤の粘度と接着される材料の平坦さ・接着剤の拡がり易さに応じて、接着剤の塗布量とプレス圧を決定する。有機断熱ボード層13(14)相互間および有機断熱ボード層13(14)と無機ボード層15との間は塗布量が多すぎると、プレス時の層間からの接着剤はみ出しが生じるため、好ましくない。
【0098】
なお、接着剤を用いて無機ボード層15と有機断熱ボード層13、14とを接着させる際に、接着剤を塗布する前に、無機ボード層15の表面にプライマーを予め塗布しておくことが好ましい。これにより、プライマーを無機ボード層15に含浸させて、無機ボード層15と有機断熱ボード層13、14との接着強度を向上させることができる。
【0099】
プライマーを塗布することにより、接着剤の塗布量をその分減じても同等の接着強度を得ることができるばかりでなく、無機ボード層15の表面の粉じん等の清掃の手間を省いたり、無機ボード層15の含水状態の影響を受けにくくしたり、接着強度のバラツキを小さくすることができる。さらに接着に関する材料費全体を圧縮することもできる。
【0100】
上記プライマーとしては、エポキシ系、ウレタン系およびフェノール系などの熱硬化性樹脂を用いることにより、耐熱性を向上させることができる。一方、アクリル系のプライマーは熱可塑性ではあるが、比較的耐熱性は良好であり、作業性や価格面で特に優れるため、これらの性能を総合的に考慮して用いるのもよい。
【0101】
また、無機ボード層15の厚みが比較的小さい場合、上述のように接着剤を用いて無機ボード層15と有機断熱ボード層13、14とを接着すると、火災などによって高温環境に置かれた際に接着が維持できないおそれがある。このような場合には、非加熱側の有機断熱ボード層14と無機ボード層15とを機械固定すれば、非加熱側の有機断熱ボード層14と無機ボード層15との接着が切れた後にも、無機ボード層15がすぐに脱落することなく耐火性を維持することができる。なお、上述の説明では有機断熱ボード層13を加熱側としているが、火災が間仕切壁の反対側で発生する場合には加熱側が非加熱側になるため、有機断熱ボード層13と無機ボード層15も機械固定する必要がある。
【0102】
具体的には、図8Aに示すようなアンカー材Aや、図8Bに示すようなビスVなどを用いて、有機断熱ボード層13、14と無機ボード層15とを機械固定することができる。これにより、高温環境に置かれた際に非加熱側の耐火性を維持することができる。
【0103】
アンカー材Aとしては、先端拡張型のアンカーや、先端拡張型の釘を用いることができる。これらは、無機ボード層15を有機断熱ボード層13(14)に固定するためのものである。無機ボード層15が積み上げられており、その自重は下段に伝えられ、最終的には下部目地材を介して床スラブに伝えられるため、一体化のために所要の引抜耐力があればよいが、安全のために、無機ボード層15を構成する一枚一枚の無機ボード15aの自重を各々のアンカー材Aで負担できるようにすると、より好ましい。引抜耐力を確保するためには、アンカー材Aの頭部の軸方向に直交する断面の面積が重要であるが、鉛直方向に働く自重を支持するためには、アンカー材Aの軸方向断面が有機断熱ボード層13(14)と接触する面積が重要である。その場合、軸部が径5~8φ程度のものを用いることが好ましい。
【0104】
また、ビスVの場合にも、上記アンカー材Aと同様に考えればよいが、有機断熱ボード層13(14)に配置される部分は、ネジを設けずに線状のままにすると、鉛直方向の荷重負担のための接触状態がより好ましい。また、ビスVの頭部の形状も、軸方向に直交する面積だけでなく、サラ頭やなべ形状にして、軸方向の断面積を大きくするのが好ましい。
【0105】
さらに、有機断熱ボード層13(14)として、表面に不織布等の面材がついたものを用いた場合には、面材を極力残した状態でビスVを装着すると、引抜方向の頭部陥没強度ばかりでなく、鉛直方向の耐力も向上するため、好ましい。
【0106】
図8Aおよび図8Bに示したように、有機断熱ボード層13(14)が2層構造を有する場合、すなわち、有機断熱ボード層13(14)を無機ボード層15の片側に2枚重ねで用いる場合には、無機ボード層15側の有機断熱ボード層13(14)の裏面側の表面に頭部の裏側形状が平坦ななべ形状のものを用いることが好ましい。
【0107】
一方、図8Cに示すように、有機断熱ボード層13(14)が1層構造を有する場合、すなわち、有機断熱ボード層13(14)を無機ボード層15の片側に1枚だけ用いる場合は、裏面材12と接触しないように頭部全体を少し沈ませる必要があるが、その場合には、ビスVは、サラ頭として面材ごと沈み込ませると、より好ましい。なお、図7Cにおいては、無機ボード層15の小口面間に熱膨張材21が充填されている。
【0108】
また、特に有機断熱ボード層13(14)を1枚だけ用いる場合で、ビス頭を沈み込ませて施工する場合、ビス頭と裏面材12とが接着剤により接着されるようにすると、ビス頭の鉛直方向のズレや回転が生じにくくなり、鉛直方向の耐力が向上する。この場合、ビス頭は1~5mm程度の沈み込みとするのが、裏面材12と有機断熱ボード層14とを接着剤で貼り合せる場合に、接着剤が行きわたり易いため好ましい。しかし、裏面材12と有機断熱ボード層14との貼り合せの際のプレスにより、有機断熱ボード層14にプレス圧による変形が生じるため、この分を考慮して、ビス頭を沈み込ませる量を決めるのが好ましい。
【0109】
また、ビス頭が過剰に沈み込んだ場合には、有機断熱ボード層14に裏面材12を接着する前に、ビス頭が沈んだ部分に予め接着剤を充填しておくとよい。また、万が一、裏面材12とビス頭の接着が剥がれた際にも、せん断抵抗として作用させるために、ビス頭を緩やかな曲面状にしたり、大きめの溝をつけたりすることが好ましい。また、ビス頭表面を裏面材12より粗面にすることによっても、ビス頭側に接着剤が残り、せん断抵抗として働くため有効である。
【0110】
一方、表面材11および裏面材12が薄い場合は、ビス頭の細かな挙動により、表面材11および裏面材12にゆがみが出にくくするために、あえてビス頭と表面材11および裏面材12とが接着されないように設計することもある。
【0111】
引抜方向の頭部陥没強度を過度に大きくせずに、鉛直方向の耐力を向上させるためには、ビス頭の径を過度に大きくせずに厚くすることが肝要である。
【0112】
これらを考慮すると、なべ頭のビスVは、ねじ部外径4~8φ、軸部径4~8φ、頭部径9~16φ、頭部厚さ4~9mm程度のものを用いることが好ましく、サラ頭の場合には、ねじ部外径4~8φ、軸部径4~8φ、頭部径9~16φ、サラ頭の角度が30~60°程度のものを用いると好ましい。またアンカー材AおよびビスVは、表面材11側と裏面材12側の両方から打たれるが、これらが干渉しないように、無機ボード層15の厚さの1.5倍以上離して打つのが好ましく、2倍以上離して打つとさらに好ましい。なお、ビスVを用いると、打設時の無機ボード層15に与える打撃等によるダメージが生じず、アンカー材AおよびビスVを打つ間隔を小さくしたい場合には好ましい。また、ビスVに設けられるねじ部は無機ボード層15部分のみとし、有機断熱ボード層13、14の部分ねじのない軸部とし、当該軸部をねじ部外径同等とするのが最も強度上有利であるが、このようなねじは断熱材の厚さ毎に用意する必要があり、さらに特注となるためコスト高となる。従って、全ねじのビスVを使うことも多いが、この場合、有機断熱ボード層13、14とビスVの間に若干の遊びが生じるものの、実用上は問題ない。
【0113】
ここで、本発明による目地部構造を有する間仕切壁(図1A~1Cに示した間仕切壁2参照)が1時間の加熱および3時間の後追いによる耐火試験に合格するための手段について説明する。間仕切壁2を表面材11側から加熱する場合、表面材11は加熱初期に大きく変形し、加熱側の有機断熱ボード層13は、1時間の加熱時間中に炭化した後、消失する。その後、無機ボード層15、非加熱側の有機断熱ボード層14および裏面材12の3層が最後までその位置関係を崩すことなく、火炎や熱の貫通を防ぐことが必要である。
【0114】
当該3層は、まず床スラブ22、23等の躯体に上部アンカー材24bおよび下部アンカー材25bにより上部取付材24cおよび下部取付材25c(以下、上部取付材24cおよび下部取付材25cを合わせて、単に「取付材」と呼ぶことがある。)が固定され、上部取付材24cおよび下部取付材25cで間仕切用パネル1が面外方向に拘束される。上部取付材24cおよび下部取付材25cに上部留付材24aおよび下部留付材25a(以下、上部留付材24aおよび下部留付材25aを合わせて、単に「留付材」と呼ぶことがある。)をそれぞれ用いて裏面材12に締結される。次に裏面材12に非加熱側の有機断熱ボード層14が有機系接着剤により固定される。最後に有機断熱ボード層14に無機ボード層15が有機系接着剤および機械固定手段を用いて固定される。
【0115】
上部取付材24cおよび下部取付材25cは、ステンレス鋼板や溶融亜鉛メッキ鋼板が用いられ、想定する地震力や火災時の熱による変形を考慮して設計され、上部取付材24cとしては、厚さ2~6mmで鉛直方向40~100mm、水平方向30~60mm程度の断面のもの、下部取付材25cとしては、厚さ2~6mmで鉛直方向40~100mm、水平方向30~60mm程度の断面のものがよく用いられる。上部取付材24cおよび下部取付材25cの長さは、施工方法に応じて設計されるが、施工する際の一方の側に1.8~5.4m程度のもの、他方の側に0.1~0.9m程度のものを用いると、施工する際にまず長いものに建てかけて、短いもので倒れないように押さえ込むような施工ができるため、好都合である。
【0116】
上部取付材24cおよび下部取付材25cは、アンカー材施工用の貫通穴と、留付材施工用の貫通穴とを備える。上部取付材24cおよび下部取付材25cに留付材施工用の貫通穴を予め設けることにより、表面材11および裏面材12を固定するために薄鋼板用のタッピンビスを用いることが可能となる。これらは、径が4~5φ、長さが15~30mm、ねじ山高さが0.4~1.0、ねじピッチが0.5~1.0程度であり、小型なわりに薄鋼板に施工した場合のせん断力、引抜きに関する耐力および破壊までの変形能力に優れるため、好ましい。
【0117】
火災時に前記3層が自立するために、非加熱側の上部留付材24aのみで裏面材12と裏面材12に固着された有機断熱ボード層14および無機ボード層15の重量の自重を鉛直方向に支持する。壁材は、通常時は両面より取付材により挟み込まれており倒れることはないが、火災時には壁材断面の加熱側の有機断熱ボード層13が消失し、大きく変形をする。そのため、非加熱側の上部留付材24aに裏面材12を介して裏面材12と裏面材12に固着された有機断熱ボード層14および無機ボード層15の重量に応じたせん断力と、熱による変形により発生した偏心に応じた引抜力が発生するため、これらを十分に考慮して設計する必要がある。
【0118】
当該3層は3時間の後追い試験の終盤には面外に大きく湾曲するため、湾曲時の影響を考慮して設計されなければならない。さらに上部留付材24aに鉛直方向の変位および回転が生じた場合、本発明の構造では、留付材は裏面材12および有機断熱ボード層14内に配置される。
【0119】
無機ボード層15は、小さな局部荷重でも割れが生じ易いが、上部留付材24aの変位および回転の影響を受けることがなく、ファイヤーストップ材としての機能を損なうことがない。一方、有機断熱ボード層14は柔らかい材料で構成されているため、上部留付材24aの変位および回転の影響により裏面材12に容易に熱を伝えてしまうような耐火性を損なう欠損および脱落等が生じることもない。
【0120】
上部留付材24aが前記3層の自重を支持するためには、上部留付材24aが貫通する上部取付材24cの穴は、鉛直方向に大きな遊びがあってはならず、丸穴もしくは長径が10~20mm程度の長穴とすることが好ましい。なお、下部取付材25cに設ける下部留付材25aの貫通用穴は丸穴でもよいが、前記の鉛直方向の自重により壁材に生じる変位を吸収するため、長径を20~40mm程度とすることが好ましい。
【0121】
上述のように、図8Aおよび図8Bにおいては、無機ボード層15の両面にそれぞれ2層の有機断熱ボード層13、14が配置されており、無機ボード層15に隣接する有機断熱ボード層13が無機ボード層15に機械固定されている。この場合には、アンカー材AおよびビスVの頭部は隣接する有機断熱ボード層13に埋没するため問題ない。
【0122】
一方、図8Cに示したように、無機ボード層15の両面にそれぞれ1層の有機断熱ボード層13が配置され、有機断熱ボード層13、14を無機ボード層15に固定する場合には、アンカー材AおよびビスVの頭部は金属材からなる表面材11および裏面材12に接触してしまう。そのため、アンカー材AおよびビスVの頭部を収容する凹部を有機断熱ボード層13、14の表面材11および裏面材12側の表面に設けることが好ましい。
【0123】
ただし、アンカー材AやビスVの頭部の形状を比較的薄くし、さらに頭部裏面側を打ち込み時に有機断熱ボード層13、14に埋没しやすい形状とすれば、上記凹部を予め設けておく必要はない。
【0124】
また、アンカー材AやビスVの頭部の有機断熱ボード層13、14のめり込み強度を無機ボード層15への固定強度よりも小さく設計しておくと、アンカー材やビスVに引張力が働いた時にも無機ボード層15が損傷するのを防ぐことができ、耐火性の点からより好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明によれば、間仕切壁の耐火性を向上させることができるため、建築業において有用である。
【符号の説明】
【0126】
1,1a,1b 間仕切用パネル
2 間仕切壁
11 表面材
11a,12a 第1の折り曲げ部
11ae,12ae 第1の折り曲げ部の端部
11b,12b,11bi,11bo,12bi,12bo 第2の折り曲げ部
12 裏面材
13,14 有機断熱ボード層
13a,14a 凹部
13b,14b 有機断熱ボード
13c,14c 面材
13d,14d 樹脂フォーム
15 無機ボード層
15a 無機ボード
15b 端面
16,17 接着剤層
21 熱膨張材
22,23 床スラブ
24a 上部留付材
24b 上部アンカー材
24c 上部取付材
25a 下部留付材
25b 下部アンカー材
25c 下部取付材
26 上部目地材
27 下部目地材
28 シーリング材
29 ボンドブレーカー
50,60,70 目地部
A アンカー材
D1 第1の凹部
D2 第2の凹部
Db 底面
Ds 側壁
h アンカー材用長穴
V ビス
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C