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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/20 20060101AFI20240912BHJP
   H02K 5/24 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H02K5/20
H02K5/24 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020036916
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2021141686
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-11-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】諸星 時男
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 雄大
(72)【発明者】
【氏名】福永 崇
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆良
(72)【発明者】
【氏名】川端 俊亮
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直道
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-127118(JP,A)
【文献】特開2018-157644(JP,A)
【文献】実開昭64-030663(JP,U)
【文献】国際公開第2015/093138(WO,A1)
【文献】特開2009-303367(JP,A)
【文献】実公昭52-035453(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/20
H02K 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸方向を回転軸方向として回転可能なロータと、
前記ロータの径方向において前記ロータの外側に配置されたステータと、
冷媒が流れる冷媒流路が形成された流路部を有し、軸方向の一方が開口して他方が閉塞されて前記ロータ及び前記ステータが収容されたハウジングと、を備えた回転電機であって、
前記流路部は、
前記ステータの外周面と接触した内周壁と、
前記内周壁の前記径方向における外側に配置され、前記内周壁との間に前記冷媒流路が形成されるように設けられた外周壁と、
前記ハウジングの軸方向における他方側の端部に設けられることで前記ロータ及び前記ステータの軸方向の他方に配置され、径方向において前記内周壁と前記外周壁とを接続する底部と、
前記軸方向及び前記径方向の両方と直交する周方向における所定位置に前記冷媒流路の入口が形成された入口部と、
前記周方向において前記所定位置とは異なる位置に前記冷媒流路の出口が形成された出口部と、を有し、
前記冷媒流路は、
前記入口から前記出口までの前記周方向における長さが所定長さである第1流路と、
前記入口から前記出口までの前記周方向における長さが前記第1流路よりも短い第2流路と、を含み、
前記第2流路には、前記径方向において前記内周壁と前記外周壁との間に隔壁部が設けられ、
前記隔壁部には、前記周方向に貫通したスリットが形成され、
前記スリットの幅は、前記第1流路の幅よりも狭く、前記冷媒流路および前記スリットの前記軸方向の長さは、前記ステータの前記軸方向の長さより長く、
前記ハウジングの軸方向における一方側の端部に蓋部材が固定されることで、前記ハウジングの内部に前記ロータ及び前記ステータが収容されると共に、前記入口部及び前記出口部を除く前記冷媒流路が密閉される、
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記冷媒流路および前記スリットは、前記軸方向の一端部が前記ステータの前記軸方向の一端部より一方側に位置し、前記軸方向の他端部が前記ステータの前記軸方向の他端部より他方側に位置することを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記スリットは、
前記軸方向において、少なくとも、前記ステータの前記外周面の一方側の端の位置から他方側の端の位置に亘って延びていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記入口部には、前記冷媒流路と接続された供給流路が形成され、
前記軸方向から見たときに、
前記供給流路の中心線と前記内周壁の外縁との交点を通る前記外縁の接線のうち、前記交点から前記第1流路側へ延びる直線を第1直線とし、前記交点から前記第2流路側へ延びる直線を第2直線としたとき、
前記中心線と前記第1直線とのなす角が鈍角であり、前記中心線と前記第2直線とのなす角が鋭角であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に記載された回転電機は、ロータと、ロータの径方向外側に配置されたステータと、前記ステータが収容されたハウジングとを備える。ステータは、筒状のヨーク部と、ヨーク部から径方向内側に延びたティース部とを有する。回転電機は、ティース部に巻かれたコイルに電流を流すことにより回転磁界を生成し、回転磁界により発生する磁力によってロータを回転させるように構成されている。
【0003】
ハウジングには、ステータ等を冷却するための冷媒が流れる冷媒流路が形成されている。ハウジングは、冷媒流路を形成する構成要素として、ステータの外周面に接触している内周壁と、内周壁の径方向外側に配置された外周壁と、径方向において内周壁と外周壁との間に配置された隔壁部とを有する。隔壁部は、ハウジングの周方向における一部に設けられ、内周壁と外周壁とを接続している。隔壁部の近傍には冷媒流路の入口が形成され、隔壁部を挟んで入口の反対側には冷媒流路の出口が形成されている。入口を通って冷媒流路に流入した冷媒は、冷媒流路をほぼ一周するように流れた後、出口を通って流出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-46853号公報
【文献】特開2014-236613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した回転電機においては、ロータの回転時に、ロータとティース部との間に磁力が断続的に作用し、これによりステータが振動する。このような振動が、ステータから内周壁に伝わり、さらに、例えば隔壁部を介して内周壁から外周壁に伝わると、外周壁が振動することにより騒音が発生しうる。騒音の対策の一つとして、隔壁部を設けず、内周壁から外周壁に振動が伝わることを抑制することが考えられる、しかしながら、この場合、入口から出口にかけて短絡経路が形成され、短絡経路に冷媒が多く流れ込みやすくなるおそれがある。このため、本来の冷媒流路に流れる冷媒の量が大きく減少し、冷却機能が大きく損なわれるという問題が生じうる。
【0006】
本発明の目的は、冷却機能の低下を抑制しつつ、ステータの振動がハウジングの外周壁まで伝わることを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の回転電機は、所定の軸方向を回転軸方向として回転可能なロータと、前記ロータの径方向において前記ロータの外側に配置されたステータと、冷媒が流れる冷媒流路が形成された流路部を有し、前記ロータ及び前記ステータが収容されたハウジングと、を備えた回転電機であって、前記流路部は、前記ステータの外周面と接触した内周壁と、前記内周壁の前記径方向における外側に配置され、前記内周壁との間に前記冷媒流路が形成されるように設けられた外周壁と、前記軸方向及び前記径方向の両方と直交する周方向における所定位置に前記冷媒流路の入口が形成された入口部と、前記周方向において前記所定位置とは異なる位置に前記冷媒流路の出口が形成された出口部と、を有し、前記冷媒流路は、前記入口から前記出口までの前記周方向における長さが所定長さである第1流路と、前記入口から前記出口までの前記周方向における長さが前記第1流路よりも短い第2流路と、を含み、前記第2流路には、前記径方向において前記内周壁と前記外周壁との間に隔壁部が設けられ、前記隔壁部には、前記周方向に貫通したスリットが形成され、前記スリットの幅は、前記第1流路の幅よりも狭いことを特徴とするものである。
【0008】
本発明では、周方向に貫通したスリットが隔壁部に形成されており、スリットによって隔壁部の径方向における外側部分と内側部分との間に隙間が形成されている。これにより、ロータの回転に伴うステータの振動が内周壁から外周壁に伝わることを抑制できる。但し、当該スリットによって入口から出口にかけて短絡経路が形成されるので、これによって第2流路に流れ込む冷媒が増えて第1流路を流れる冷媒が減り、冷却機能が低下する懸念がある。この点、本発明では、スリットの幅が第1流路の幅よりも狭いため、第2流路の流路抵抗を大きくすることができ、第2流路への冷媒の流れ込みを極力抑制できる。したがって、冷却機能の低下を抑制しつつ、ステータの振動がハウジングの外周壁に伝わることを抑制できる。
【0009】
第2の発明の回転電機は、前記第1の発明において、前記スリットは、前記軸方向において、少なくとも、前記ステータの前記外周面の一方側の端の位置から他方側の端の位置に亘って延びていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明では、スリットが、軸方向において、少なくともステータの外周面の一方側の端の位置から他方側の端の位置に亘って延びている。つまり、軸方向と直交するいずれの断面においても、内周壁のステータとの隣接部分と、外周壁とがスリットによって分断されている。したがって、ステータの振動が隔壁部を介して内周壁から外周壁に伝わることを効果的に抑制できる。
【0011】
第3の発明の回転電機は、前記第1又は第2の発明において、前記入口部には、前記冷媒流路と接続された供給流路が形成され、前記軸方向から見たときに、前記供給流路の中心線と前記内周壁の外縁との交点を通る前記外縁の接線のうち、前記交点から前記第1流路側へ延びる直線を第1直線とし、前記交点から前記第2流路側へ延びる直線を第2直線としたとき、前記中心線と前記第1直線とのなす角が鈍角であり、前記中心線と前記第2直線とのなす角が鋭角であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明では、中心線と第1直線とのなす角が鈍角であり、中心線と第2直線とのなす角が鋭角である。これにより、供給流路を通って冷媒流路に流れ込んだ冷媒は、内周壁の外縁に当たったときに、第1流路側へ流れやすくなり、且つ、第2流路側へ流れ込むことが抑制される。したがって、冷却機能の低下をいっそう効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る回転電機の平面図である。
図2】(a)は、図1のII(a)-II(a)線断面図であり、(b)は、図1のII(b)矢視図である。
図3】回転電機の軸方向と直交する断面図である。
図4】変形例に係る回転電機の平面図である。
図5】別の変形例に係る回転電機の平面図である。
図6】(a)、(b)は、冷媒流路の入口近傍の構成を示す説明図である。
図7】さらに別の変形例に係る回転電機の、軸方向と直交する断面図である。
図8】参考例に係る回転電機の平面図である。
図9】参考例に係る回転電機の、軸方向と直交する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について説明する。なお、図1の紙面垂直方向(図2(a)、(b)の紙面上下方向)を軸方向とする。図2(a)、(b)の紙面上側を軸方向における一方側とする。図2(a)、(b)の紙面下側を軸方向における他方側とする。軸方向と直交する方向である、ロータ11(後述)の径方向を、以下、単に径方向と呼ぶ。軸方向及び径方向の両方と直交する方向を周方向と呼ぶ。
【0015】
(回転電機)
まず、本実施形態に係る回転電機1の構成について、図1図3を参照しつつ説明する。図1は、回転電機1の平面図である。図2(a)は、図1のII(a)-II(a)線断面図である。図2(b)は、図1のII(b)矢視図である。図3は、回転電機1の軸方向と直交する断面図である。
【0016】
図1に示すように、回転電機1は、モータ2と、ハウジング3とを有する。モータ2は、例えば公知の交流モータである。モータ2は、上述した軸方向を回転軸方向として回転可能なロータ11と、ロータ11の径方向における外側に配置されたステータ12とを有する。モータ2は、ステータ12に巻かれた不図示のコイルに交流電流が流れているときに生成される回転磁界によって、ロータ11が回転するように構成されている。
【0017】
ロータ11は、例えば不図示の永久磁石を有する略円筒状の部材である。ロータ11は、ステータ12の径方向における内側に配置されている。ロータ11には回転軸13が嵌装されている。なお、ロータ11の構成はこれに限られない。例えば、ロータ11は、回転軸方向と直交する方向に突出した複数の突極を有していても良い(つまり、モータ2は、例えばスイッチトリラクタンスモータであっても良い)。ステータ12は、例えば炭素鋼等の磁性部材からなる概ね筒状の部材である。ステータ12は、ロータ11の径方向における外側に配置されている。ステータ12は、ハウジング3に嵌装されている。ステータ12は、周方向において全周に亘って形成された略円筒状のヨーク部21と、ヨーク部21の周方向における一部からそれぞれ径方向における内側へ延びた複数のティース部22とを有する。本実施形態では、6個のティース部22が周方向において略等間隔に配置されている。
【0018】
各ティース部22の周囲には、不図示のコイルが巻かれている。コイルは、不図示の電源装置と電気的に接続されている。電源装置は、交流電流をコイルに流すための電力をモータ2に供給する。より具体的には、電源装置は、6個のティース部22のうちロータ11を挟んで互いに反対側に位置している1対のティース部22に巻かれた1対のコイルに同位相の交流電流が流れるように電力を供給する。本実施形態では、電源装置は、位相が互いに120度異なる3種類の交流電流が3対のコイルにそれぞれ流れるように電力を供給する(一般的な三相交流)。
【0019】
このようなモータ2において、上述したような電力がコイルに供給されると、所定の周期で周方向に回転する回転磁界が生成され、回転磁界の磁極とロータ11との間に磁力が発生する。これにより、ロータ11は、回転磁界に追随するように回転軸13とともに回転する。
【0020】
ハウジング3は、軸方向における一方側に開口した、モータ2を収容するケース部材である。ハウジング3は、例えば、一般的なダイキャスト法によって形成された、アルミ合金のダイキャストからなる。なお、ハウジング3の材質は必ずしもアルミ合金でなくても良い。例えば、ハウジング3は鉄等の金属により形成されていても良く、或いは金属以外の部材によって形成されていても良い。また、ハウジング3は、必ずしもダイキャスト法によって形成されたものでなくても良く、他の公知の鋳造法等によって形成されていても良い。ハウジング3は、モータ2を冷却するための冷媒が流れる冷媒流路31が形成された流路部30を有する。図1及び図2(a)、(b)に示すように、流路部30は、内周壁32と、外周壁33と、底部34と、入口部35と、出口部36と、隔壁部37とを有する。
【0021】
内周壁32は、軸方向に延び、且つ、周方向において全周に亘って形成されている。内周壁32の内周面32aは、ステータ12の外周面12aに接触している。このようにして、ステータ12がハウジング3の内周壁32に嵌装されている。外周壁33は、内周壁32と同様に軸方向に延び、且つ、周方向において全周に亘って形成されている。外周壁33は、内周壁32の径方向における外側に配置され、径方向において内周壁32と並べて配置されている。外周壁33は、径方向において内周壁32との間に所定の大きさの隙間を空けるように設けられている。内周壁32と外周壁33との間に形成された上記隙間の大きさは、例えば、周方向において略一定である(図3参照)。底部34は、ハウジング3の軸方向における他方側の端部に設けられ、径方向において内周壁32と外周壁33とを接続している。内周壁32と外周壁33と底部34とによって、断面略U字形(図2(a)参照)の冷媒流路31が、周方向に延びるように形成されている。言い換えると、内周壁32と外周壁33との間に冷媒流路31が形成されている。
【0022】
入口部35は、冷媒を冷媒流路31に供給するための入口41が形成された部分である。図1に示すように、入口41は、周方向における所定位置において、外周壁33の内周面33aに開口している。また、外周壁33には、径方向における外側へ突出した供給管部42が設けられている。供給管部42の先端から外周壁33の内周面33aに亘って、入口41を含む貫通孔(供給流路43)が形成されている。供給流路43は、入口41を介して冷媒流路31と接続されている。本実施形態では、供給流路43は、軸方向と略直交する方向に延びているが、これには限られない。
【0023】
出口部36は、冷媒を冷媒流路31から排出するための出口44が形成された部分である。出口44は、入口41と同様に、外周壁33の内周面33aに開口している。出口44の周方向における位置は、入口41の周方向における位置(上述した所定位置)と異なる。また、外周壁33には、径方向における外側へ突出した排出管部45が設けられている。外周壁33の内周面33aから排出管部45の先端に亘って、出口44を含む貫通孔(排出流路46)が形成されている。排出流路46は、出口44を介して冷媒流路31と接続されている。本実施形態では、軸方向から見たときに、入口部35と出口部36とは、隔壁部37を挟んで概ね線対称となるように配置されている(図1参照)。また、供給流路43と排出流路46とが略平行に配置されているが、これには限られない。
【0024】
図1に示すように、冷媒流路31は、例えば、径方向に延び且つ入口41の中心を通る仮想的な直線L1と、径方向に延び且つ出口44の中心を通る仮想的な直線L2とによって、大きく2つに分けられる。すなわち、冷媒流路31は、入口41から出口44までの周方向における長さが所定長さである第1流路51と、入口41から出口44までの周方向における長さが第1流路51よりも短い第2流路52とに分けられる。第1流路51は、冷媒流路31の概ね全周を占めている。本実施形態では、第1流路51の径方向における幅は、周方向において略一定である(図3参照)。第2流路52は、冷媒流路31のうち第1流路51を除いた残りの部分である。
【0025】
隔壁部37は、入口41を通って冷媒流路31に流入した冷媒が、短い第2流路52を介して出口44から流出してしまうことを抑制するためのものである。図1に示すように、隔壁部37は、周方向における一部(第2流路52の途中部)に設けられ、径方向において内周壁32と外周壁33との間に配置されている。隔壁部37は、内周壁32及び外周壁33と一体的に形成され、軸方向に延びている(図2(a)参照)。なお、隔壁部37は、内周壁32及び外周壁33とは別の部材として設けられていても良い。隔壁部37のより詳細については後述する。
【0026】
また、ハウジング3の、軸方向における一方側の端部には、例えば略円板状の蓋部材38が、不図示の固定具によって固定されている。これにより、冷媒流路31が、入口41及び出口44を除いて密閉されている。
【0027】
以上のような冷媒流路31において、入口41を通って流入した冷媒は、そのほとんどが第1流路51側に流れ込み、第1流路51内を周方向において概ね全周に亘って流れ、出口44を通って流出する。このように冷媒が流れることで、ハウジング3が冷媒によって冷却され、さらに、ハウジング3に接触しているモータ2が熱伝導によって冷却される。
【0028】
ここで、ロータ11が回転しているとき、ステータ12のティース部22とロータ11との間には磁力が断続的に作用する。これにより、ティース部22が振動してステータ12全体に振動が伝わる。このような振動が、ステータ12から内周壁32に伝わり、さらに、例えば隔壁部37を介して内周壁32から外周壁33に伝わると、外周壁33が振動して騒音が発生しうる。騒音の対策の一つとして、隔壁部37を設けず、内周壁32から外周壁33に振動が伝わることを抑制することが考えられる、しかしながら、この場合、第2流路52が入口41から出口44との間で短絡し、第2流路52側に冷媒が多く流れ込みやすくなるおそれがある。このため、第1流路51に流れる冷媒の量が大きく減少し、冷却機能が大きく損なわれるという問題が生じうる。そこで、冷却機能の低下を抑制しつつ、ステータの振動がハウジング3の外周壁33まで伝わることを抑制するために、ハウジング3の隔壁部37は以下のように構成されている。
【0029】
(隔壁部)
隔壁部37の構成について、引き続き図1図3を参照しつつ説明する。図1図3に示すように、隔壁部37にはスリット53が形成されている。軸方向から見たときに、スリット53は、例えば直線状に延びている。スリット53は、隔壁部61の周方向における両側の空間を連通させている。言い換えると、スリット53は、周方向において隔壁部37を貫通している(図1参照)。さらに言い換えると、スリット53によって、隔壁部37の径方向における外側部分と内側部分との間に隙間が形成されている。このような隙間により、ロータ11の回転に伴うステータ12の振動が隔壁部37を介して内周壁32から外周壁33に伝わることが抑制される。
【0030】
また、スリット53は軸方向に延びている(図2参照)。軸方向において、スリット53は、ステータ12の一方側の端面12bよりも一方側に延び、ステータ12の他方側の端面12cよりも他方側に延びている。別の言い方をすれば、軸方向において、スリット53は、ステータ12の外周面12aの一方側の端よりも一方側に延び、外周面12aの他方側の端よりも他方側に延びている。さらに言い換えると、スリット53は、軸方向において、少なくともステータ12の外周面12aの一方側の端の位置から他方側の端の位置に亘って延びている。つまり、軸方向と直交するいずれの断面においても(例えば図3参照)、内周壁32のステータ12との接触部分と、外周壁33とがスリット53によって分断されている。したがって、ステータ12の振動が隔壁部37を介して内周壁32から外周壁33に伝わることが効果的に抑制される。
【0031】
但し、スリット53によって、第2流路52において入口41から出口44に至る短絡経路が形成されているため、第2流路52に流れ込む冷媒が増えて第1流路51を流れる冷媒が減り、冷却機能が低下する懸念がある。そこで、図3に示すように、スリット53の径方向における幅W1は、第1流路51の径方向における幅W2(径方向における内周壁32と外周壁33との隙間)よりも狭くなっている。このため、第2流路52の流路抵抗が大きくなるので、第2流路52への冷媒の流れ込みが抑制される。
【0032】
以上のように、スリット53によって、隔壁部37の径方向における外側部分と内側部分との間に隙間が形成されている。これにより、ロータ11の回転に伴うステータ12の振動が内周壁32から外周壁33に伝わることを抑制できる。さらに、スリット53の幅W1が第1流路51の幅W2(径方向における内周壁32と外周壁33との隙間)よりも狭いため、第2流路52の流路抵抗を大きくすることができ、第2流路52への冷媒の流れ込みを極力抑制できる。したがって、冷却機能の低下を抑制しつつ、ステータ12の振動がハウジング3の外周壁33に伝わることを抑制できる。
【0033】
また、スリット53が、軸方向において、少なくともステータ12の外周面12aの一方側の端の位置から他方側の端の位置に亘って延びている。つまり、軸方向と直交するいずれの断面においても、内周壁32のステータ12との接触部分と、外周壁33とがスリット53によって分断されている。したがって、ステータ12の振動が隔壁部37を介して内周壁32から外周壁33に伝わることを効果的に抑制できる。
【0034】
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0035】
(1)前記実施形態において、スリット53は、軸方向から見たときに直線状に延びているものとしたが、これには限られない。例えば図4に示すように、回転電機1aのハウジング3aにおいて、隔壁部61には、軸方向から見たときに概ねS字状のスリット62が形成されていても良い。スリット62は、上述したスリット53と同様に、隔壁部61の周方向における両側の空間を連通させている。言い換えると、このようなスリット62も、隔壁部61を周方向に貫通している。スリット62は、隔壁部61を周方向において貫通するように形成されており、且つ、第1流路51の幅よりも狭ければ、このように曲がりくねっていても良い。
【0036】
(2)冷却機能の低下をさらに抑制するため、回転電機1bのハウジング3b(図5参照)が、以下のように構成されていても良い。図5は、回転電機1bの平面図である。図6(a)、(b)は、冷媒流路31bの入口41b近傍の構成を示す説明図である。図5に示すように、入口41bが形成された入口部35bと、出口44bが形成された出口部36bとは、軸方向から見たときに線対称に配置されていなくても良い。より具体的には、前記までの実施形態と比べて、供給流路43bが第2流路52b側へ相対的に傾くように配置されていても良い。詳細には、供給管部42bに形成された供給流路43bと、内周壁32の外縁32b(図6(a)、(b)参照)との関係は以下のようになっている。すなわち、供給流路43bの流路幅方向における中心を通る中心線を中心線L3とする。中心線L3と内周壁32の外縁32bとの交点Pを通る、外縁32bの接線を接線L4とする。接線L4のうち、交点Pから第1流路51b側へ延びた直線を第1直線L5とする。また、接線L4のうち、交点Pから第2流路52b側へ延びた直線を第2直線L6とする。このとき、中心線L3と第1直線L5とのなす角θ1が鈍角であり、中心線L3と第2直線L6とのなす角θ2が鋭角である。これにより、供給流路43bを通って冷媒流路31bに流れ込んだ冷媒は、内周壁32の外縁32bに当たったときに、第1流路51b側へ流れやすく、且つ、第2流路52b側へ流れ込むことが抑制される。したがって、冷却機能の低下をいっそう効果的に抑制できる。一例として、図6(a)、(b)に示すように、角θ1は約150度であり、角θ2は約30度である。
【0037】
(3)前記(2)の変形例と同様に、冷却機能の低下をさらに抑制するため、回転電機1cのハウジング3c(図7参照)が、以下のように構成されていても良い。すなわち、図7に示すように、供給流路43cが排出流路46cと平行でなく、第2流路52c側に傾くように供給管部42cが設けられていても良い。これにより、供給流路43cの中心線L7と、上述した第1直線L5に相当する第1直線L8とのなす角を鈍角とすることができる。また、中心線L7と、上述した第2直線L6に相当する第2直線L9とのなす角を鋭角とすることができる。このようにして、冷媒流路31cに流れ込んだ冷媒が第1流路51c側へ流れやすくなるようにし、且つ、冷媒が第2流路52c側へ流れ込むことを抑制しても良い。
【0038】
(4)前記までの実施形態において、ステータ12のティース部22の数が6個であり、三相交流の電流をコイルに流すものとしたが、これには限られない。ティース部22の数は6個でなくても良く、三相交流以外(例えば単層交流)の電流をコイルに流しても良い。また、ティース部22は必ずしも周方向において等間隔に配置されていなくても良い。全てのティース部22の大きさが必ずしも同じでなくても良い。
【0039】
(5)前記までの実施形態において、スリット53等は、軸方向において、少なくともステータ12の外周面12aの一方側の端の位置から他方側の端の位置に亘って延びているものとしたが、これには限られない。例えば、スリットは、軸方向において、ステータ12の内側に収まるように形成されていても良い。
【0040】
(6)前記までの実施形態において、第1流路51の幅が周方向において一定であるものとしたが、これには限られない。第1流路51の幅は周方向において一定でなくても良い。この場合、第2流路52の流路抵抗を大きくするため、少なくとも、スリット53のうち最も狭い部分の幅が、第1流路51のうち最も狭い部分の幅よりも小さく構成されていることが好ましい。
【0041】
(7)前記までの実施形態において、供給流路43及び排出流路46は軸方向と略直交するものとしたが、これには限られない。供給流路43及び排出流路46は、必ずしも軸方向と直交していなくても良い。
【0042】
(8)前記までの実施形態において、モータ2は交流モータであるものとしたが、これには限られない。直流モータに本発明を適用しても良い。
【0043】
(9)前記までの実施形態において、回転電機1等が、回転軸13を回転させるためのモータ2を有するものとしたが、これには限られない。例えば、モータ2の代わりに、回転軸13が外力によって回転させられることで電磁誘導によってコイルに起電力を生じさせる発電機が設けられていても良い。或いは、モータ2を発電機として用いても良い。このような場合においても、ロータ11とティース部22との間に磁力が断続的に発生することによりティース部22が振動しうるため、スリット53によって内周壁32と外周壁33とを断絶させることは効果的である。
【0044】
<参考例>
次に、前記(2)の変形例と類似した、冷媒が第2流路側へ流れ込むことを抑制するための参考例について、図8図9を参照しつつ説明する。但し、前記までの実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0045】
図8図9に示すように、回転電機1dのハウジング3dには、上述したハウジング3等と異なり、隔壁部が設けられていない。つまり、周方向における全体に亘って略同じ幅の冷媒流路31dが設けられ、第1流路51dと第2流路52dに分けられている。それ以外のハウジング3dの構成は、ハウジング3bと同様である。つまり、ハウジング3dは、上述した入口部35b、出口部36b、入口41b、供給管部42b、供給流路43b、及び、出口44bを有する。これにより、中心線L3と第1直線L5とのなす角を鈍角とし、中心線L3と第2直線L6とのなす角を鋭角とすることで(図9参照)、冷媒が第1流路51d側へ流れやすくなるようにし、且つ、冷媒が第2流路52d側へ流れ込むことを抑制することができる。
【0046】
すなわち、以下のような回転電機においても、冷却機能の低下を抑制しつつ、ステータ12の振動がハウジング3dの外周壁33に伝わることを抑制できる。
「所定の軸方向を回転軸方向として回転可能なロータと、
前記ロータの径方向において前記ロータの外側に配置されたステータと、
冷媒が流れる冷媒流路が形成された流路部を有し、前記ロータ及び前記ステータが収容されたハウジングと、を備えた回転電機であって、
前記流路部は、
前記ステータの外周面と接触した内周壁と、
前記内周壁の前記径方向における外側に配置され、前記内周壁との間に前記冷媒流路が形成されるように設けられた外周壁と、
前記軸方向及び前記径方向の両方と直交する周方向における所定位置に前記冷媒流路の入口が形成された入口部と、
前記周方向において前記所定位置とは異なる位置に前記冷媒流路の出口が形成された出口部と、を有し、
前記冷媒流路は、
前記入口から前記出口までの前記周方向における長さが所定長さである第1流路と、
前記入口から前記出口までの前記周方向における長さが前記第1流路よりも短い第2流路と、を含み、
前記入口部には、前記冷媒流路と接続された供給流路が形成され、
前記軸方向から見たときに、
前記供給流路の中心線と前記内周壁の外縁との交点を通る前記外縁の接線のうち、前記交点から前記第1流路側へ延びる直線を第1直線とし、前記交点から前記第2流路側へ延びる直線を第2直線としたとき、
前記中心線と前記第1直線とのなす角が鈍角であり、前記中心線と前記第2直線とのなす角が鋭角であることを特徴とする回転電機。」
【符号の説明】
【0047】
1 回転電機
3 ハウジング
11 ロータ
12 ステータ
12a 外周面
30 流路部
31 冷媒流路
32 内周壁
32b 外縁
33 外周壁
35 入口部
36 出口部
37 隔壁部
41 入口
43 供給流路
44 出口
51 第1流路
52 第2流路
53 スリット
L3 中心線
L4 接線
L5 第1直線
L6 第2直線
P 交点
W1 幅
W2 幅
θ1 角
θ2 角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9