(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 5/20 20060101AFI20240912BHJP
H02K 5/24 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H02K5/20
H02K5/24 A
(21)【出願番号】P 2020036918
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2022-11-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】諸星 時男
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 雄大
(72)【発明者】
【氏名】福永 崇
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆良
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-157644(JP,A)
【文献】国際公開第2015/093138(WO,A1)
【文献】特開2017-127118(JP,A)
【文献】特開2009-303367(JP,A)
【文献】実公昭52-035453(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/20
H02K 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸方向を回転軸方向として回転可能なロータと、
前記ロータの径方向において前記ロータの外側に配置されたステータと、
冷媒が流れる冷媒流路が形成された流路部を有し、
軸方向の一方が開口して他方が閉塞されて前記ロータ及び前記ステータが収容されたハウジングと、を備えた回転電機であって、
前記流路部は、
前記ステータの外周面と接触した内周壁と、
前記内周壁の前記径方向における外側に配置され、前記内周壁との間に前記冷媒流路が形成されるように設けられた外周壁と、
前記ハウジングの軸方向における他方側の端部に設けられることで前記ロータ及び前記ステータの軸方向の他方に配置され、径方向において前記内周壁と前記外周壁とを接続する底部と、
前記軸方向及び前記径方向の両方と直交する周方向における一部に設けられ、前記径方向において前記内周壁と前記外周壁とを接続する隔壁部と、を有し、
前記冷媒流路は、前記軸方向の長さが前記周方向の全域に亘って前記ステータの前記軸方向の長さより長
く、
前記ハウジングの軸方向における一方側の端部に蓋部材が固定されることで、前記ハウジングの内部に前記ロータ及び前記ステータが収容されると共に、前記冷媒流路が密閉され、
前記ステータは、
筒状のヨーク部と、
前記周方向に並べて配置され、前記ヨーク部から前記径方向における内側へ延びた複数のティース部と、を有し、
前記ヨーク部は、
各ティース部と接続された第1部分と、
前記周方向において互いに隣接する2つの前記第1部分の間に配置された第2部分と、を含み、
前記隔壁部は、前記径方向において、前記第2部分と向かい合っていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記冷媒流路は、前記軸方向の一端部が前記ステータの前記軸方向の一端部より一方側に位置し、前記軸方向の他端部が前記ステータの前記軸方向の他端部より他方側に位置することを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記隔壁部は、前記径方向において、前記第2部分の前記周方向における中心と向かい合っていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に記載された回転電機は、ロータと、ロータの径方向外側に配置されたステータと、前記ステータが収容されたハウジングとを備える。ステータは、筒状のヨーク部と、ヨーク部から径方向内側に延びたティース部とを有する。回転電機は、ティース部に巻かれたコイルに電流を流すことにより回転磁界を生成し、回転磁界により発生する磁力によってロータを回転させるように構成されている。
【0003】
ハウジングには、ステータ等を冷却するための冷媒が流れる冷媒流路が形成されている。ハウジングは、冷媒流路を形成する構成要素として、ステータの外周面に接触している内周壁と、内周壁の径方向外側に配置された外周壁と、径方向において内周壁と外周壁との間に配置された隔壁部とを有する。隔壁部は、ハウジングの周方向における一部に設けられ、内周壁と外周壁とを接続している。隔壁部の近傍には冷媒流路の入口が形成され、隔壁部を挟んで入口の反対側には冷媒流路の出口が形成されている。入口を通って冷媒流路に流入した冷媒は、冷媒流路をほぼ一周するように流れた後、出口を通って流出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-46853号公報
【文献】特開2014-236613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した回転電機においては、ロータの回転時に、ロータとティース部との間に磁力が断続的に作用し、これによりステータが振動する。このような振動が、ステータから内周壁に伝わり、さらに、例えば隔壁部を介して内周壁から外周壁に伝わると、外周壁が振動することにより騒音が発生しうる。騒音の対策の一つとして、隔壁部を設けず、内周壁から外周壁に振動が伝わることを抑制することが考えられる、しかしながら、この場合、入口から出口にかけて短絡経路が形成され、短絡経路に冷媒が多く流れ込みやすくなるおそれがある。このため、本来の冷媒流路に流れる冷媒の量が大きく減少し、冷却機能が大きく損なわれるという問題が生じうる。
【0006】
本発明の目的は、ハウジングの内周壁と外周壁とが隔壁部によって接続されている場合でも、ステータの振動が外周壁まで伝わることを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の回転電機は、所定の軸方向を回転軸方向として回転可能なロータと、前記ロータの径方向において前記ロータの外側に配置されたステータと、冷媒が流れる冷媒流路が形成された流路部を有し、前記ロータ及び前記ステータが収容されたハウジングと、を備えた回転電機であって、前記流路部は、前記ステータの外周面と接触した内周壁と、前記内周壁の前記径方向における外側に配置され、前記内周壁との間に前記冷媒流路が形成されるように設けられた外周壁と、前記軸方向及び前記径方向の両方と直交する周方向における一部に設けられ、前記径方向において前記内周壁と前記外周壁とを接続する隔壁部と、を有し、前記ステータは、筒状のヨーク部と、前記周方向に並べて配置され、前記ヨーク部から前記径方向における内側へ延びた複数のティース部と、を有し、前記ヨーク部は、各ティース部と接続された第1部分と、前記周方向において互いに隣接する2つの前記第1部分の間に配置された第2部分と、を含み、前記隔壁部は、前記径方向において、前記第2部分と向かい合っていることを特徴とするものである。
【0008】
ヨーク部の第2部分は、周方向において互いに隣接する第1部分の間に配置された部分である。言い換えると、第2部分は、ステータのうち、ティース部と第1部分とが接続された部分よりも径方向において薄い部分である。つまり、第2部分においては曲げ剛性が小さい。本発明では、隔壁部が径方向において第2部分と向かい合っている。言い換えると、ティース部と隔壁部との間に第2部分が介在している。このような構成においては、回転電機の動作に伴いステータが振動したときに、第2部分が変形することで弱いバネ要素として機能することにより、ステータの振動がハウジングの内周壁に伝わることを抑制できる。これにより、振動が隔壁部を介してハウジングの外周壁まで伝わることを抑制できる。したがって、ハウジングの内周壁と外周壁とが隔壁部によって接続されている場合でも、ステータの振動が外周壁まで伝わることを抑制できる。
【0009】
第2の発明の回転電機は、前記第1の発明において、前記隔壁部は、前記径方向において、前記第2部分の前記周方向における中心と向かい合っていることを特徴とするものである。
【0010】
第2部分のうち周方向における中心部は、ティース部が設けられた位置から最も離れているため、最も剛性が低く、最も変形しやすい。このため、特に、隔壁部が径方向において上記中心部と向かい合っている場合に、第2部分による防振機能を最も効果的に発揮させることができる。したがって、振動が隔壁部を介して外周壁まで伝わることを効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の実施例1に係る回転電機の平面図である。
【
図2】(a)は、
図1のII(a)-II(a)線断面図であり、(b)は、
図1のII(b)矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について説明する。なお、
図1の紙面垂直方向(
図2(a)、(b)の紙面上下方向)を軸方向とする。軸方向と直交する方向である、ロータ11(後述)の径方向を、以下、単に径方向と呼ぶ。軸方向及び径方向の両方と直交する方向を周方向と呼ぶ。
【0013】
(回転電機)
まず、本実施形態に係る回転電機1の構成について、
図1、
図2(a)、(b)を参照しつつ説明する。
図1は、回転電機1の平面図である。
図2(a)は、
図1のII(a)-II(a)線断面図である。
図2(b)は、
図1のII(b)矢視図である。
【0014】
図1に示すように、回転電機1は、モータ2と、ハウジング3とを有する。モータ2は、例えば公知の交流モータである。モータ2は、上述した軸方向を回転軸方向として回転可能なロータ11と、ロータ11の径方向における外側に配置されたステータ12とを有する。モータ2は、ステータ12に巻かれた不図示のコイルに交流電流が流れているときに生成される回転磁界によって、ロータ11が回転するように構成されている。
【0015】
ロータ11は、例えば不図示の永久磁石を有する略円筒状の部材である。ロータ11は、ステータ12の径方向における内側に配置されている。ロータ11には回転軸13が嵌装されている。なお、ロータ11の構成はこれに限られない。例えば、ロータ11は、回転軸方向と直交する方向に突出した複数の突極を有していても良い(つまり、モータ2は、例えばスイッチトリラクタンスモータであっても良い)。ステータ12は、例えば炭素鋼等の磁性部材からなる概ね筒状の部材である。ステータ12は、ロータ11の径方向における外側に配置されている。ステータ12は、ハウジング3に嵌装されている。ステータ12は、周方向において全周に亘って形成された略円筒状のヨーク部21と、ヨーク部21の周方向における一部からそれぞれ径方向における内側へ延びた複数のティース部22とを有する。言い換えると、ヨーク部21とティース部22とは一体的に設けられ、ヨーク部21の周方向における一部がティース部22と接続されている。本実施形態では、6個のティース部22が周方向において略等間隔に配置されている。ヨーク部21は、各ティース部22と接続された部分(第1部分21a)と、周方向において互いに隣接する第1部分21aの間に配置された部分(第2部分21b)とを含む。第2部分21bは、ステータ12のうち、第1部分21aとティース部22とが接続された部分よりも径方向において薄い部分である。本実施形態では、6つの第2部分21bが形成されている。本実施形態では、全ての第2部分21bの周方向におけるサイズ及び径方向におけるサイズは略等しい。
【0016】
各ティース部22の周囲には、不図示のコイルが巻かれている。コイルは、不図示の電源装置と電気的に接続されている。電源装置は、交流電流をコイルに流すための電力をモータ2に供給する。より具体的には、電源装置は、6個のティース部22のうちロータ11を挟んで互いに反対側に位置している1対のティース部22に巻かれた1対のコイルに同位相の交流電流が流れるように電力を供給する。本実施形態では、電源装置は、位相が互いに120度異なる3種類の交流電流が3対のコイルにそれぞれ流れるように電力を供給する(一般的な三相交流)。
【0017】
このようなモータ2において、上述したような電力がコイルに供給されると、所定の周期で周方向に回転する回転磁界が生成され、回転磁界の磁極とロータ11との間に磁力が発生する。これにより、ロータ11は、回転磁界に追随するように回転軸13とともに回転する。
【0018】
ハウジング3は、軸方向における一方側に開口した、モータ2を収容するケース部材である。ハウジング3は、例えば、一般的なダイキャスト法によって形成された、アルミ合金のダイキャストからなる。なお、ハウジング3の材質は必ずしもアルミ合金でなくても良い。例えば、ハウジング3は鉄等の金属により形成されていても良く、或いは金属以外の部材によって形成されていても良い。また、ハウジング3は、必ずしもダイキャスト法によって形成されたものでなくても良く、他の公知の鋳造法等によって形成されていても良い。ハウジング3は、モータ2を冷却するための冷媒が流れる冷媒流路31が形成された流路部30を有する。
図1及び
図2(a)、(b)に示すように、流路部30は、内周壁32と、外周壁33と、底部34と、入口部35と、出口部36と、隔壁部37とを有する。
【0019】
内周壁32は、軸方向に延び、且つ、周方向において全周に亘って形成されている。内周壁32の内周面32aは、ステータ12の外周面12aに接触している。このようにして、ステータ12がハウジング3の内周壁32に嵌装されている。外周壁33は、内周壁32と同様に軸方向に延び、且つ、周方向において全周に亘って形成されている。外周壁33は、内周壁32の径方向における外側に配置され、径方向において内周壁32と並べて配置されている。外周壁33は、径方向において内周壁32との間に所定の大きさの隙間を空けるように設けられている。上記隙間の大きさは、例えば、周方向において略一定である。底部34は、ハウジング3の軸方向における他方側の端部に設けられ、径方向において内周壁32と外周壁33とを接続している。内周壁32と外周壁33と底部34とによって、断面略U字形(
図2(a)参照)の冷媒流路31が、周方向に延びるように形成されている。言い換えると、内周壁32と外周壁33との間に冷媒流路31が形成されている。
【0020】
入口部35は、冷媒を冷媒流路31に供給するための入口41が形成された部分である。
図1に示すように、入口41は、周方向における所定位置において、外周壁33の内周面33aに開口している。また、外周壁33には、径方向における外側へ突出した供給管部42が設けられている。供給管部42の先端から外周壁33の内周面33aに亘って、入口41を含む貫通孔(供給流路43)が形成されている。供給流路43は、入口41を介して冷媒流路31と接続されている。本実施形態では、供給流路43は、軸方向と略直交する方向に延びているが、これには限られない。
【0021】
出口部36は、冷媒を冷媒流路31から排出するための出口44が形成された部分である。出口44は、入口41と同様に、外周壁33の内周面33aに開口している。出口44の周方向における位置は、入口41の周方向における位置(上述した所定位置)と異なる。また、外周壁33には、径方向における外側へ突出した排出管部45が設けられている。外周壁33の内周面33aから排出管部45の先端に亘って、出口44を含む貫通孔(排出流路46)が形成されている。排出流路46は、出口44を介して冷媒流路31と接続されている。本実施形態では、軸方向から見たときに、入口部35と出口部36とは、隔壁部37を挟んで概ね線対称となるように配置されている(
図1参照)。また、供給流路43と排出流路46とが略平行に配置されているが、これには限られない。
【0022】
図1に示すように、冷媒流路31は、例えば、径方向に延び且つ入口41の中心を通る仮想的な直線L1と、径方向に延び且つ出口44の中心を通る仮想的な直線L2とによって、大きく2つに分けられる。すなわち、冷媒流路31は、入口41から出口44までの周方向における長さが所定長さである第1流路51と、入口41から出口44までの周方向における長さが所定長さよりも短い第2流路52とに分けられる。第1流路51は、冷媒流路31の概ね全周を占めている。本実施形態では、第1流路51の径方向における幅は、周方向において略一定である。第2流路52は、冷媒流路31のうち第1流路51を除いた残りの部分である。
【0023】
隔壁部37は、入口41を通って冷媒流路31に流入した冷媒が、短い第2流路52を介して出口44から流出してしまうことを抑制するためのものである。
図1に示すように、隔壁部37は、周方向における一部(第2流路52の途中部)に設けられ、径方向において内周壁32と外周壁33との間に配置されている。隔壁部37は、内周壁32及び外周壁33と一体的に形成され、軸方向に延びている(
図2(a)参照)。隔壁部37は、内周壁32と外周壁33とを接続している。つまり、隔壁部37によって、第2流路52が2つに分割されている。これにより、入口41を通って冷媒流路31に流入した冷媒が第2流路52側に流れたときに、冷媒がそのまま出口44に到達することを隔壁部37によって妨げることができる。なお、隔壁部37は、内周壁32及び外周壁33とは別の部材として設けられていても良い。
【0024】
また、ハウジング3の、軸方向における一方側の端部には、例えば略円板状の蓋部材38が、不図示の固定具によって固定されている。これにより、冷媒流路31が、入口41及び出口44を除いて密閉されている。
【0025】
以上のような冷媒流路31において、入口41を通って流入した冷媒は、そのほとんどが第1流路51側に流れ込み、第1流路51内を周方向において概ね全周に亘って流れ、出口44を通って流出する。このように冷媒が流れることで、ハウジング3が冷媒によって冷却され、さらに、ハウジング3に接触しているモータ2が熱伝導によって冷却される。
【0026】
ここで、ロータ11が回転しているとき、ステータ12のティース部22とロータ11との間には磁力が断続的に作用する。これにより、ティース部22が振動してステータ12全体に振動が伝わる。このような振動が、ステータ12から内周壁32に伝わり、さらに、例えば隔壁部37を介して内周壁32から外周壁33に伝わると、外周壁33が振動して騒音が発生しうる。騒音の対策の一つとして、隔壁部37を設けず、内周壁32から外周壁33に振動が伝わることを抑制することが考えられる、しかしながら、この場合、第2流路52が入口41から出口44との間で短絡し、第2流路52側に冷媒が多く流れ込みやすくなるおそれがある。このため、第1流路51に流れる冷媒の量が大きく減少し、冷却機能が大きく損なわれるという問題が生じうる。
【0027】
そこで、内周壁32と外周壁33とが隔壁部37によって接続されている場合でも、ステータ12の振動がハウジング3の外周壁33まで伝わることを抑制するために、本願発明者は、ステータ12と隔壁部37との位置関係に着目した。具体的には、本願発明者は、ステータ12のヨーク部21のうち、第2部分21bの周方向における位置と、隔壁部37の周方向における位置との関係に着目した。第2部分21bは、上述したように、ヨーク部21のうち、周方向において互いに隣接する2つの第1部分21a(例えば、
図1のティース部61、62とそれぞれ接続された第1部分63、64を参照)の間に配置された部分である。より詳細には、例えば、軸方向から見たときに、ティース部61の外縁のうち概ね径方向に延び且つ周方向においてティース部62に近い側の部分を外縁61aとする。また、軸方向から見たときに、ティース部62の外縁のうち概ね径方向に延び且つ周方向においてティース部61に近い側の部分を外縁62aとする。第2部分21bは、例えば、ヨーク部21のうち、外縁61aの延長線L3とティース部62の外縁62aの延長線L4との間に挟まれた部分である。以下、後述の実施例1、2及び比較例における、第2部分21bと隔壁部37との位置関係について説明する。
【0028】
(実施例1)
実施例1の回転電機1における、ステータ12の第2部分21bと隔壁部37との周方向における位置関係について、
図1を参照しつつ説明する。実施例1では、周方向において、隔壁部37が、第2部分21bの内側に収まっている。言い換えると、隔壁部37が径方向において第2部分21bと互いに向かい合っている。さらに言い換えると、隔壁部37と、モータ2の動作時に断続的な磁力により振動させられるティース部22との間に、第2部分21bが介在している。
【0029】
より詳しくは、隔壁部37が、径方向において、第2部分21bの周方向における中心(
図1の直線L5を参照)と向かい合っている。言い換えると、第2部分21bの周方向における中心が、周方向において隔壁部37の内側に収まっている。さらに厳密には、第2部分21bの周方向における中心の位置と、隔壁部37の周方向における中心(
図1の直線L6を参照)の位置とが一致している。
【0030】
このような構成にすることで、以下の原理により、ステータ12の振動がハウジング3の外周壁33まで伝わることを抑制できると本願発明者は考えた。すなわち、ステータ12が振動したときに、径方向において薄い第2部分21bが変形することで弱いバネ要素として機能することにより、ステータ12の振動がハウジング3の内周壁32に伝わることが抑制される。これにより、振動が隔壁部37を介してハウジング3の外周壁33まで伝わることが抑制される。このようにして、第2部分21bによって防振機能が発揮される。さらに、第2部分21bのうち周方向における中心部は、ティース部22が設けられた位置から最も離れているため、最も剛性が低く、最も変形しやすい。このため、隔壁部37が径方向において上記中心部と向かい合っている場合に、第2部分21bによる防振機能が最も効果的に発揮される。
【0031】
(実施例2)
実施例2の回転電機1aにおける、ステータ12の第2部分21bと隔壁部37との周方向における位置関係について、
図3を参照しつつ説明する。実施例1との共通点として、隔壁部37は、径方向において第2部分21bと向かい合っている。一方、実施例1との相違点として、隔壁部37は、第2部分21bの周方向における中心(
図3の直線L5を参照)とは向かい合っていない。具体的には、実施例2においては、第2部分21bの周方向における中心と隔壁部37の周方向における中心とが15度ずれている。このような構成においても、ステータ12の振動時に第2部分21bが変形することにより、振動がハウジング3の内周壁32に伝わることがある程度抑制されると本願発明者は考えた。
【0032】
(比較例)
比較例の回転電機1bにおける、ステータ12の第2部分21bと隔壁部37との周方向における位置関係について、
図4を参照しつつ説明する。比較例では、隔壁部37は、径方向において第2部分21bと向かい合っていない。隔壁部37は、ヨーク部21の第1部分21aと径方向において向かい合っている。このような構成では、ティース部22の振動が第2部分21bを介さず内壁部32に伝わり、さらに隔壁部37を介して外周壁33にも伝わるため、外周壁33が大きく振動すると本願発明者は考えた。
【0033】
(外周壁の振動振幅の解析)
本願発明者は、上述した実施例1、2及び比較例における外周壁33の振動の大きさをシミュレーションにより解析した。第2部分21bと隔壁部37との周方向における位置関係以外の解析条件(例えば、ティース部22の大きさ、隔壁部37の大きさ、コイルに流れる電流の振幅及び周波数)は、実施例1、2及び比較例において共通である。その上で、本願発明者は、実施例1、2及び比較例に関して、ステータ12の歪み及びハウジング3の歪みに関するシミュレーションを行った。さらに、当該シミュレーション結果に基づき、外周壁33の振動振幅の周波数成分を算出した。
【0034】
上記解析の結果について、
図5に示すグラフを参照しつつ説明する。当該グラフは、上述した振動振幅の周波数成分を示すグラフである。横軸は周波数を示す。縦軸は振動振幅を示す。比較例(
図5の実線参照)では、8000Hz~11000Hzの周波数領域において、他の周波数領域と比べて振動振幅が格段に大きくなるという傾向が見られた。一方、実施例1(
図5の破線参照)においては、比較例と比べて、8000Hz~11000Hzの周波数領域における振動振幅が大きく低減する(概ね半減、或いはそれ以上)という解析結果が得られた。つまり、実施例1においては、外周壁33の振動を抑制する効果が大きいことが分かった。また、実施例2(
図5の一点鎖線参照)においても、上記周波数領域における振動振幅が比較例における振動振幅よりも全体的に小さくなる(概ね2割減、或いはそれ以上)という解析結果が得られた。つまり、実施例2においても、比較例と比べて振動抑制効果が得られることが分かった。
【0035】
以上のように、ステータ12が振動したときに、第2部分21bが変形することで弱いバネ要素として機能することにより、振動がハウジング3の内周壁32に伝わることを抑制できる。これにより、振動が隔壁部37を介してハウジング3の外周壁33まで伝わることを抑制できる。したがって、ハウジング3の内周壁32と外周壁33とが隔壁部37によって接続されている場合でも、ステータ12の振動が外周壁33まで伝わることを抑制できる。
【0036】
また、第2部分21bのうち周方向における中心部は、ティース部22が設けられた位置から最も離れているため、最も剛性が低く、最も変形しやすい。このため、特に、隔壁部37が径方向において上記中心部と向かい合っている場合に、第2部分21bによる防振機能を最も効果的に発揮できる。したがって、振動が隔壁部37を介して外周壁33まで伝わることを効果的に抑制できる。
【0037】
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0038】
(1)前記実施形態において、ステータ12のティース部22の数が6個であり、三相交流の電流がコイルに流れるものとしたが、これには限られない。ティース部22の数は6個でなくても良い。また、三相交流以外(例えば単相交流)の電流をコイルに流しても良い。また、ティース部22は必ずしも周方向において等間隔に配置されていなくても良い。つまり、複数の第2部分21bの周方向におけるサイズが互いに異なっていて良い。この場合、複数の第2部分21bのうち剛性が最も低い(例えば、周方向において最も長い)第2部分21bの周方向における内側に隔壁部37が収まるように配置されていると良い。また、全てのティース部22の大きさが必ずしも同じでなくても良い。
【0039】
(2)前記までの実施形態において、モータ2は交流モータであるものとしたが、これには限られない。直流モータに本発明を適用しても良い。
【0040】
(3)前記までの実施形態において、回転電機1等が、回転軸13を回転させるためのモータ2を有するものとしたが、これには限られない。例えば、モータ2の代わりに、回転軸13が外力によって回転させられることで電磁誘導によってコイルに起電力を生じさせる発電機が設けられていても良い。或いは、モータ2を発電機として用いても良い。このような場合でも、ロータ11とティース部22との間に磁力が断続的に発生することによりステータ12が振動しうるため、隔壁部37が径方向において第2部分21bと互いに向かい合うように配置されていることは効果的である。
【符号の説明】
【0041】
1 回転電機
3 ハウジング
11 ロータ
12 ステータ
12a 外周面
21 ヨーク部
21a 第1部分
21b 第2部分
22 ティース部
30 流路部
31 冷媒流路
32 内周壁
33 外周壁
37 隔壁部