(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】防雪フェンス一体型住宅及び防雪フェンス一体型住宅の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04H 9/16 20060101AFI20240912BHJP
E04H 1/02 20060101ALI20240912BHJP
E04H 17/14 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
E04H9/16 A
E04H1/02
E04H17/14 102A
E04H17/14 102Z
(21)【出願番号】P 2020039472
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】502025473
【氏名又は名称】エイチ・アール・ディー・シンガポール プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094156
【氏名又は名称】稲葉 民安
(72)【発明者】
【氏名】萩原 浩
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3087200(JP,U)
【文献】特開2001-012112(JP,A)
【文献】特開平04-203180(JP,A)
【文献】特開平11-030964(JP,A)
【文献】特開2007-107180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00- 9/16
E04H 17/00-17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ地盤から起立してなるとともに隣地との境界近傍において互いに平行に立設された複数の支柱と、上記複数の支柱の上端側に該支柱の長さ方向と直交する方向に上下並んで固定された複数の上側水平部材と、上記複数の支柱の下端側に該支柱の長さ方向と直交する方向に上下並んで固定された複数の下側水平部材と、上記
上側水平部材に対して互いに平行に固定されそれぞれ垂直方向に長さを有する複数の垂直部材からなる上側防雪ルーバーと、上記
下側水平部材に対して互いに平行に固定されそれぞれ垂直方向に長さを有する複数の垂直部材からなる下側防雪ルーバーと、を含む防雪フェンス本体と、
上記防雪フェンス本体の近傍に施工された住宅本体と、
を備え、
上記上側防雪ルーバーと下側防雪ルーバーとの間には、上記
上側水平部材、上記下側水平部材及び上記垂直部材を有しない開放空間が形成されてなるとともに、
上記防雪フェンス本体と前記住宅本体とは、一端は上記防雪フェンス本体に固定され他端は上記住宅本体の外壁に固定された複数の固定部材とにより固定されてなるとともに、上記それぞれの支柱の上端側と上記住宅本体を構成する屋根との間は、該屋根からの落雪が通過する落雪空間が形成されてなることを特徴とする防雪フェンス一体型住宅。
【請求項2】
前記それぞれの支柱及び/又は前記それぞれの固定部材は、木質素材からなる支柱本体又は固定部材本体と、この支柱本体又は固定部材本体の外側を覆う樹脂製カバーと、を備えてなることを特徴とする請求項1記載の防雪フェンス一体型住宅。
【請求項3】
請求項1又は2記載の何れかの防雪フェンス一体型住宅の施工方法であって、前記防雪フェンス本体を据え付ける工程と前記住宅本体の上棟する工程とは、それぞれ1~5週間以内の同時期に行われ、
次いで、前記複数の固定部材を介して該住宅本体と防雪フェンス本体とを互いに一体化する工程が行われることを特徴とする防雪フェンス一体型住宅の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅と防雪フェンスとが一体的に構成なされた防雪フェンス一体型住宅及び防雪フェンス一体型住宅の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで降雪地帯又は豪雪地帯には風雪から道路や住宅を守るために各種の防雪フェンス又は防雪柵(以下、これらを防雪フェンスと総称する。)が施工されている。特に、住宅の周囲に施工される防雪フェンスは、個々の住宅の周囲における積雪を抑制したり該住宅の壁面に雪が付着したりすることを防止することを1つの目的としている。例えば、特開2016-156201号公報(特許文献1)は、住宅の壁面に対して平行とされた防雪板を配置したものであり、実開昭59-6158号公報(特許文献2)は、屋根の端部から地面に亘って傾斜した状態で軒下防雪柵を架設したもの(第7図参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】2016-156201号公報
【文献】実開昭59-6158号公報
【0004】
ところで、住宅の周囲に施工される防雪フェンスは、上記住宅の保護と言う目的以外に、屋根からの落雪による隣地とのトラブルを解消することを目的として施工されている場合が少なくない。すなわち、住宅と住宅とが隣接している場合において、一方の住宅の屋根からの落雪が他方の住宅の敷地に及ぶことがあり、こうした落雪を巡って隣接する住民とのトラブルを防止する目的で、隣地との境界(土地の境界)近傍に防雪フェンスを設置する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記各特許文献に開示された防雪板又は軒下防雪柵では、上述した屋根からの落雪により隣地とのトラブルを防止することはできない。なお、住宅と防雪フェンスとがそれぞれ独立して施工される場合には、防雪フェンスが強い風雪にも耐え得るように、支柱の下端側を高い深度で掘削しコンクリート等により強固に固定する等、基礎工事等も相当程度大がかりなものとなる。また、上記目的により上記防雪フェンスを施工する場合、互いに隣接する住宅同士の間(スペース)が狭小である場合、すなわち住宅の建設が終了した後における防雪フェンスの施工工事は、改めて足場を設けなければならない。
【0006】
そこで、本発明は、上述した各特許文献に開示された防雪板又は軒下防雪柵が有する課題を解決するために提案されたものであって、屋根からの落雪による隣地とのトラブルを有効に解決するとともに、防雪フェンスを住宅と一体型とすることにより、比較的簡易な工事により強い風雪にも耐え得ることができる新規な防雪フェンス一体型住宅や、防雪フェンスの施工工事も容易となる新規な防雪フェンス一体型住宅の施工方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであり、第1の発明(請求項1記載の発明)は、防雪フェンス一体型住宅に係るものであって、それぞれ地盤から起立してなるとともに隣地との境界近傍において互いに平行に立設された複数の支柱と、上記複数の支柱の上端側に該支柱の長さ方向と直交する方向に上下並んで固定された複数の上側水平部材と、上記複数の支柱の下端側に該支柱の長さ方向と直交する方向に上下並んで固定された複数の下側水平部材と、上記上側水平部材に対して互いに平行に固定されそれぞれ垂直方向に長さを有する複数の垂直部材からなる上側防雪ルーバーと、上記下側水平部材に対して互いに平行に固定されそれぞれ垂直方向に長さを有する複数の垂直部材からなる下側防雪ルーバーと、を含む防雪フェンス本体と、上記防雪フェンス本体の近傍に施工された住宅本体と、を備え、上記上側防雪ルーバーと下側防雪ルーバーとの間には、上記上側水平部材、上記下側水平部材及び上記垂直部材を有しない開放空間が形成されてなるとともに、上記防雪フェンス本体と前記住宅本体とは、一端は上記防雪フェンス本体に固定され他端は上記住宅本体の外壁に固定された複数の固定部材とにより固定されてなるとともに、上記それぞれの支柱の上端側と上記住宅本体を構成する屋根との間は、該屋根からの落雪が通過する落雪空間が形成されてなることを特徴とする
ものである。
【0008】
この第1の発明に係る防雪フェンス一体型住宅では、防雪フェンス本体と住宅本体とが上記複数の固定部材を介して固定され一体化されており、住宅本体の屋根から落下した雪又は雪塊は、上記落雪空間を通過して、上記防雪フェンス本体と住宅本体との間に落下する。また、落雪により雪塊が砕けて跳ねるなどした場合であっても、この跳ねた雪が隣地に及ぶこともない。したがって、この第1の発明に係る防雪フェンス一体型住宅によれば、屋根からの落雪を巡って隣地とのトラブルを有効に防止することができる。また、上記防雪フェンス本体は、上記固定部材を介して上記住宅本体と一体とされていることから、該防雪フェンス本体に風雪による高い抵抗が発生した場合であっても倒壊する等の危険性はないため、自立したこれまでの強靭な防雪フェンスに比べた場合、支柱等を地盤に対して強固に固定する必要性はなく、また、防雪フェンス本体を構成する上記支柱や水平部材等の断面サイズを小さくすることができ、このことが建設コストの削減に大きく寄与するばかりか、全体の外観上のデザインを向上させることができる。換言すれば、この第1の発明に係る防雪フェンス一体型住宅によれば、住宅本体と防雪フェンス本体とを上記複数の固定部材を介して一体構造とする事によって、該防雪フェンス本体の荷重負担を住宅本体側にも負担させる事が可能となり、従来の自立型の防雪フェンスよりも軽量かつ低コストで施工することができる。
【0009】
また、上記防雪フェンス本体には、上側防雪ルーバーと下側防雪ルーバーとがそれぞれ配置されており、これら上側防雪ルーバーと下側防雪ルーバーとは、それぞれ前記複数の垂直部材から構成されている。そして、上記上側防雪ルーバーと下側防雪ルーバーとの間には、上記上側水平部材、上記下側水平部材及び複数の垂直部材を有しない開放空間が形成されている。上記上側防雪ルーバーは、住宅本体の屋根から落下する雪又は雪塊が遮蔽され隣地に及ばないことを目的に形成されたものであり、上記下側防雪ルーバーは、地上付近に落下し割れた雪塊が跳ねる等して隣地に及ぶことを防止するために形成されたものである。したがって、この第1の発明によれば、屋根からの落雪が隣地に及ばず、また地上付近に落下し割れた雪塊が跳ねる等して隣地に及ぶことを防止することができ、落雪に伴う隣地とのトラブルを有効に回避することができる。また、この第1の発明では、上記上側防雪ルーバーと下側防雪ルーバーとの間には、上記複数の垂直部材を有しない開放空間が形成されていることから、上記防雪フェンス本体が、住宅本体に形成された窓に対向する位置に設置される場合には、住宅本体に暮らす住人に対する大きな圧迫感を有効に緩和することができる。
【0010】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記それぞれの支柱及び/又は前記それぞれの固定部材は、木質素材からなる支柱本体又は固定部材本体と、この支柱本体又は固定部材本体の外側を覆う樹脂製カバーと、を備えてなることを特徴とするものである。
【0011】
上記第2の発明に係る防雪フェンス一体型住宅では、上記支柱及び/又は固定部材は、木質素材からなる支柱本体又は固定部材本体と、この支柱本体又は固定部材本体の外側を覆う樹脂製カバーとを備えている。例えば、上記支柱について説明すれば、支柱本体は木材からなり、この支柱本体の外側を覆う上記樹脂製カバーは、樹脂素材からなるものである。なお、上記支柱本体を木材により構成する場合には、内部に薬液を加圧注入すること等により防蟻処理がなされたものを使用しても良い。また、上記木質素材とは、材木単体からなるもの以外に、複数の木質板材を積層した所謂集成材も含まれる。また、上記樹脂製カバーの素材である樹脂は、少なくとも上記支柱本体の外側を覆うものであれば、その素材は特に限定さない。なお、上記樹脂製カバーは、内部に上記支柱本体が挿通される挿通空間が形成された筒状に成形されたもの以外に、板状に成形された樹脂板が上記支柱本体に接着されたものであっても良い。
【0012】
したがって、上記第2の発明に係る防雪フェンス一体型住宅によれば、支柱本体又は固定部材本体の素材として木質素材からなる場合であっても、上記樹脂製カバーにより、上記支柱本体又は固定部材本体の耐腐食性や防蟻性を確保することができ、長期間に亘って安定的に使用することができる。
【0013】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、上記第1又は第2の何れかの発明(請求項1又は2記載の何れか発明)に係る防雪フェンス一体型住宅の施工方法であって、前記防雪フェンス本体を据え付ける工程と前記住宅本体の上棟する工程とは、それぞれ1~5週間以内の同時期に行われ、次いで、前記複数の固定部材を介して該住宅本体と防雪フェンス本体とを互いに一体化する工程が行われることを特徴とするものである。
【0014】
この第3の発明に係る防雪フェンス一体型住宅の施工方法では、前記防雪フェンス本体を据え付ける工程と前記住宅本体の上棟する工程とは、それぞれ1~5週間以内の同時期に行われ、次いで、前記複数の固定部材を介して該住宅本体と防雪フェンス本体とを互いに一体化する工程が行われることから、住宅本体1の施工が完了した後に、上記防雪フェンス本体の施工を行う場合と比較すると、該住宅本体1の上棟の際に使用される足場を防雪フェンス本体の立設工事又は据え付け工事においても共用することができ、工期を有効に短縮することができるばかりではなく、工事費用も安価とすることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
上記第1の発明(請求項1記載の発明)に係る防雪フェンス一体型住宅によれば、屋根からの落雪を巡って隣地とのトラブルを有効に防止することができる。また、上記防雪フェンス本体は、上記固定部材を介して上記住宅本体と一体とされていることから、該防雪フェンス本体に風雪による高い抵抗が発生した場合であっても倒壊する等の危険性はないため、自立したこれまでの強靭な防雪フェンスに比べた場合、支柱等を地盤に対して強固に固定する必要性はなく、また、防雪フェンス本体を構成する上記支柱や水平部材等の断面サイズを小さくすることができ、このことが建設コストの削減に大きく寄与するばかりか、全体の外観上のデザインを向上させることができる。
【0016】
また、上記第1の発明によれば、屋根からの落雪が隣地に及ばず、また地上付近に落下し割れた雪塊が跳ねる等して隣地に及ぶことを防止することができ、落雪に伴う隣地とのトラブルを有効に回避することができる。また、この第1の発明では、上記上側防雪ルーバーと下側防雪ルーバーとの間には、上記複数の垂直部材を有しない開放空間が形成されていることから、上記防雪フェンス本体が、住宅本体に形成された窓に対向する位置に設置される場合には、住宅本体に暮らす住人に対する大きな圧迫感を有効に緩和することができる。
【0017】
また、上記第2の発明(請求項2記載の発明)に係る防雪フェンス一体型住宅によれば、支柱本体又は固定部材本体の素材として木質素材からなる場合であっても、上記樹脂製カバーにより、上記支柱本体又は固定部材本体の耐腐食性や防蟻性を確保することができ、長期間に亘って安定的に使用することができる。
【0018】
また、上記第3の発明(請求項3記載の発明)に係る防雪フェンス一体型住宅の施工方法によれば、住宅本体の施工が完了した後に、上記防雪フェンス本体の施工を行う場合と比較すると、該住宅本体の上棟の際に使用される足場を防雪フェンス本体の立設工事又は据え付け工事においても共用することができ、工期を有効に短縮することができるばかりではなく、工事費用も安価とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】防雪フェンス一体型住宅を示す側面図である。
【
図5】第1の支柱と第1の水平部材と上側垂直部材との接続構造を示す分解側面図である。
【
図6】上側アングル材と複数の上側垂直部材とを示す背面図である。
【
図7】支柱と固定部材との固定構造及び固定部材と住宅本体の外壁との固定構造を示す分解側面図である。
【
図8】一方の係止固定金具を示すものであり、(A)はその平面図、(B)はその側面図、(C)はその正面図である。
【
図9】支柱側係止固定金具を示すものであり、(A)はその平面図、(B)はその側面図、(C)はその正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態に係る防雪フェンス一体型住宅を、図面を参照しながら詳細且つ具体的に説明する。
【0021】
この実施の形態に係る防雪フェンス一体型住宅は、
図1に示すように、同図中右側に示す住宅本体1と、同図中左側に示す防雪フェンス本体2と、を備えてなるとともに、上記住宅本体1と上記防雪フェンス本体2とは、後述する複数の固定部材により互いに固定されている。
【0022】
上記住宅本体1は、(本実施の形態においては)二階建ての木造住宅であり、屋根11には、所定の傾斜角度となされた太陽光パネル12が配置されている。また、この住宅本体1の一階部分1aと二階部分1bとの間には、外壁材13が配置され、この外壁材13の外側面には、後述する各固定部材の端部を連結・固定する(後述する)固定金具が固定されている。
【0023】
また、上記防雪フェンス本体2は、
図2に示すように、複数(本実施の形態では第1ないし第3)の支柱21,22,23と、これら第1ないし第3の支柱21,22,23に水平に固定された複数(本実施の形態では第1ないし第4)の水平部材24,25,26,27と、この第1の水平部材24と第2の水平部材25にそれぞれ固定された複数の上側垂直部材28からなる上側防雪ルーバー29と、上記第3の水平部材26と第4の水平部材27にそれぞれ固定された複数の下側垂直部材30からなる下側防雪ルーバー31と、を備えている。なお、上記第1及び第2の水平部材24,25は、本発明を構成する上側水平部材であり、上記第3及ぶ第4の水平部材26,27は、本発明を構成する下側水平部材である。
【0024】
上記第1ないし第3の支柱21,22,23の上端は、
図1に示す第2の支柱22のように、それぞれ上記屋根11の下端と略同じ高さに位置しており、該屋根11と第1ないし第3の支柱21,22,23との間には、上記太陽光パネル12の上面から滑り落ちた図示しない雪塊が落下する落下空間Dとされている。また、これら第1ないし第3の支柱21,22,23の下端側は、
図2に示すように、地盤G内に埋設・成形された基礎コンクリート33,34,35内に挿入され(差し込まれ)ており、該基礎コンクリート(モルタル)33,34,35と第1ないし第3の支柱21,22,23の下端側周面との間には、打ち増しされたコンクリート(モルタル)33a,34a,35aが形成されている。また、これら第1ないし第3の支柱21,22,23は、
図3に示す第1の支柱21のように、四角柱状に成形された支柱本体21Aと、この支柱本体21Aが内嵌挿されてなる樹脂製カバー21Bとから構成されており、上記支柱本体21Aは、それぞれ所定の薬液の加圧注入による防蟻処理が施された6枚の板体21a・・・21fとから構成された集成材である。また、上記支柱本体21Aの周囲に配置された上記樹脂製カバー21Bは、押し出し成形(一体成形)された筒状体である。なお、上記樹脂製カバー21Bの素材は、ポリ塩化ビニル(PVC)その他の樹脂から構成されている。
【0025】
また、上記第1の水平部材24は、上記第1ないし第3の支柱21,22,23の上端側中途部に水平に固定され、上記第2の水平部材25は、上記第1の水平部材24からやや下方位置において水平に固定されている。また、上記第3の水平部材26は、上記第1ないし第3の支柱21,22,23の中央よりも下方位置において水平に固定され、上記第4の水平部材27は、上記第3の水平部材26からやや下方位置において水平に固定されている。なお、これら第3の水平部材26と第4の水平部材27との間隔は、上記第1の水平部材24と第2の水平部材との間隔と同一のものとされ、また、上記第2の水平部材25と第3の水平部材26との間隔は、上記第1の水平部材24と第2の水平部材との間隔及び第3の水平部材26と第4の水平部材27との間隔よりも広いものとされている。また、これら第1ないし第4の水平部材24,25,26,27は、鋼管からなるものであり、
図4に示すように、同一形状に成形された個々の鋼管の端部が長さ方向に接続されたものである。なお、上記第1ないし第4の水平部材24,25,26,27の図示しない底板部には、所定間隔を隔てて水抜き穴が設けられている。
【0026】
また、
図2に示す上側防雪ルーバー29は、上述した通り、複数の上側垂直部材28からなるものであり、上記住宅本体1を構成する屋根11(太陽光パネル12)の上面から滑り落ちた雪塊が
図1中防雪フェンス本体2の左側(隣地側)に落雪することを阻止するものであり、また、上記下側防雪ルーバー31は、上述した通り、上記第3の水平部材26と第4の水平部材27にそれぞれ固定された複数の下側垂直部材30からなるものであり、上記雪塊が地盤G上又は地盤G上の雪山上に落下した雪塊が飛散して防雪フェンス本体2の左側(隣地側)に及ぶことを阻止するものである。なお、上記それぞれの上側垂直部材28及び下側垂直部材30は、それぞれ上記WPCにより四角柱に成形されたものである。また、上記それぞれの上側垂直部材28及び下側垂直部材30はそれぞれ平行に固定されてなるものであり、それぞれの配置間隔は、30mm程度とされている。したがって、落下した雪塊が砕けて飛散した場合であっても、少なくとも上記配置間隔に満たない雪塊は隣地に及ぶことがない。
【0027】
なお、上記第1ないし第3の支柱21,22,23と、上記第1ないし第4の水平部材24・・・27と、上記上側垂直部材28及び下側垂直部材30との接続構造は、以下の通りである。
図5は、上記第1の支柱21と第1の水平部材24と上側垂直部材28との接続構造を示すものであり、該第1の支柱21の内側面(住宅本体1側の面)には、複数のボルト又はネジ36により固定プレート37が固定され、この固定プレート37の内側面には上記第1の水平部材24が固定されている。上記固定プレート37は、鉄又はアルミニウム等の金属素材により平板状に成形されてなるものであり、該固定プレート37には、上記複数のボルト又はネジ36が挿通される透孔(符号は省略する。)が穿設されている。また、上記複数の上側垂直部材28の上端側中途部には、上側アングル材38が複数のネジ39により水平に固定され、該複数の上側垂直部材28の下端側中途部には、この上側アングル材38と平行とされた図示しない下側アングル材が複数のネジにより水平に固定されている。すなわち、上記複数の上側垂直部材28は、上記上側アングル材38と図示しない下側アングル材とにより一体化されている。上記上側アングル材38及び下側アングル材は、それぞれ
図5に示すように、外側面(第1の支柱21側の面)に固定された固定板部38aと、この固定板部38aの上端から水平に起立された水平板部38bとから構成されており、この水平板部38bの下面は上記第1の水平部材24の上面に支持される部位である。そして、
図6に示すように、上記上側アングル材38及び図示しない下側アングル材であって、上記複数の上側垂直部材28が固定された位置との間には、
図5に示すタッピングビス40が挿通されるビズ挿通穴38cが形成されている。なお、上記水平部材24の内側面(住宅本体1側の面)には、上記タッピングビス40が螺着されるネジ穴24aが形成されている。また、上記図示しない下側アングル材にも、上記タッピングビス40が挿通されるビズ挿通穴が形成されている。すなわち、上側アングル材38と図示しない下側アングル材に一体化され上記複数の上側垂直部材28は、該上側アングル材38及び図示しない下側アングル材が上記タッピングビス40により複数の水平部材24に固定されている。したがって、こうした第1の水平部材24と上側垂直部材28との固定構造によれば、落雪の際に該上側垂直部材28に対して垂直方向(鉛直方向)及び水平方向に大きな抵抗が作用した場合であっても、機械的強度は十分に図られ、変形する等の恐れはない。
【0028】
そして、上述した防雪フェンス本体2と上記住宅本体1とは、
図1又は
図4に示すように、それぞれ水平に配置された複数の(第1ないし第3の)固定部材41,42,43により連結されている。すなわち、これら第1ないし第3の固定部材41,42,43は、一端は上記防雪フェンス本体2を構成する第1、第2又は第3の支柱21,22,23に固定され、他端は上記住宅本体1の外壁材13に固定されている。
図7は、一端が上記第1の支柱21に固定され、他端は上記外壁材13に固定された第1の固定部材41の固定構造を示すものである。この第1の固定部材41は、
図3に示す第1の支柱21と同じように、図示しない集成材からなる固定部材本体と、この固定部材本体が内嵌挿された図示しない樹脂カバーとから構成されている。また、この第1の固定部材41の一端には、
図7に示すように、一方の係止固定金具45が固定され、他端には他方の係止固定金具46が固定されている。なお、上記一方の係止固定金具45と他方の係止固定金具46は、何れも同一の構成からなるものである。
図8は、上記一方の係止固定金具45を示すものであり、上記第1の固定部材41の端面に固定される平板状の固定板部45aと、この固定板部45aの中央から起立してなる起立板部45bとから構成されている。そして、上記固定板部45aは、金属材料により方形状に成形されてなるものであり、各角部の近傍には、
図8の(A)又は(B)に示すように、該固定板部45aを第1の固定部材41に固定する図示しないネジがそれぞれ挿通される挿通穴45cが穿設されている。また、上記起立板部45bは、
図8の(B)に示すように、
図7に示す上部固定ボルト51の軸部が挿通されるボルト穴45dが穿設され、下端には、円弧状の係止溝45eが形成されている。なお、
図8中、斜線を付した部位は、溶接された部位である。
【0029】
また、上記第1の支柱21の中途部の内側面(住宅本体1側の面)には、支柱側係止固定金具47が固定され、上記外壁材13には、外壁側係止固定金具48が固定されている。上記支柱側係止固定金具47と外壁側係止固定金具48とは、何れも同一の構成からなるものである。
図9は、上記支柱側係止固定金具47を示すものであり、上記第1の支柱21の内側面(住宅本体1側の面)に固定される固定板部47aと、この固定板部47aの中央よりもやや一側側から起立してなる一方の起立板部47bと、上記固定板部47aの中央よりもやや他側側から起立してなり上記一方の起立板部47bと面対向してなる他方の起立板部47cとから構成されている。そして、上記固定板部47aは、金属材料により方形状に成形されてなるものであり、各角部の近傍には、
図9の(A)に示すように、該固定板部47aを第1の支柱21に固定する図示しないネジがそれぞれ挿通される挿通穴47dが穿設されている。また、上記一方の起立板部47bには、
図7に示す上部固定ボルト51の軸部が挿通される上部ボルト穴47eと、
図7に示す下部固定ボルト52の軸部が挿通される下部ボルト穴47fとが上下に並んで穿設されている。また、上記他方の起立板部47cには、
図7に示す上部固定ボルト51の軸部が挿通される上部ボルト穴47gと、
図7に示す下部固定ボルト52の軸部が挿通される下部ボルト穴47hとが上下に並んで穿設されている。なお、
図9中、斜線を付した部位は、溶接された部位である。
【0030】
そして、上記第1の固定部材41の一端を上記第1の支柱21に固定する場合には、以下の工程により行う。先ず、上記一方の起立板部47bに形成された下部ボルト穴47f及び他方の起立板部47cに形成された下部ボルト穴47h内に、上記下部固定ボルト52の軸部を予め挿通するとともに図示しないナットを該下部固定ボルト52の軸部に螺着させておく。次いで、上記第1の固定部材41の一端に固定された一方の係止固定金具45を構成する起立板部45bを、上記一方の起立板部47bと他方の起立板部47cとの間に上方から挿入すると、該起立板部45bに形成された円弧状の係止溝45eに上記下部固定ボルト52の軸部に当接・係止される。この際、上記上部ボルト穴47e,47gと、上記一方の係止固定金具45の起立板部45bに形成された上記ボルト穴45dとは、互いに連通した状態となり、これら上部ボルト穴47e,47g及びボルト穴45dに、上記上部固定ボルト51の軸部を挿通するとともに図示しないナットを該上部固定ボルト51の軸部に螺着させる。こうした一連の操作により、上記第1の固定部材41の一端は上記第1の支柱21に固定される。なお、上記第1の固定部材41の他端を上記外壁材13に固定する作業も、上述した要領・工程により行い、さらに、上記第2の固定部材42や第3の固定部材43のそれぞれ一端を上記第2の支柱22又は第3の支柱23に固定する場合及び該第2の固定部材42や第3の固定部材43のそれぞれ他端を上記外壁材13に固定する場合も同様であり、こうした第1ないし第3の固定部材41,42,43がそれぞれ固定されることにより、上記防雪フェンス本体2は、安定した施工状態が確保される。
【0031】
なお、上述した構成に係る防雪フェンス一体型住宅を施工する場合には、例えば、上記住宅本体1の施工を完了した後に、上記防雪フェンス本体2の施工を行い、最後に、上記第1ないし第3の固定部材41,42,43により両者を連結すると言う工程を経ると言うように、何れか一方を先に施工し、次いで他方の施工を完了させるのではなく、上記住宅本体1の基礎1cを施工する基礎工事と同時期(後述する所定の期間内)に、上記防雪フェンス本体2を構成する第1ないし第3の支柱21,22,23を立設するため前段階で行われる地盤Gの掘削工事と、この掘削工事により形成された穴に所定の型枠を使用してコンクリート(モルタル)を打設するフェンス側基礎工事を並行して行う。
図2に示す基礎コンクリート33,34,35は、このフェンス側基礎工事により形成されたものである。このフェンス側基礎工事により成形された基礎コンクリート33,34,35の中央には、上記第1ないし第3の支柱21,22,23の下端側が挿入される(差し込まれる)図示しない凹部が形成されている。なお、上記住宅本体1の基礎工事と、上記掘削工事及びフェンス側基礎工事とが並行して行われる時期は、必ずしも同日に行われる必要はなく、施工現場の状況、住宅本体1の床面積、該住宅本体1の構造材の搬入状況或いは天候等の諸条件により、例えば1~5週間以内の時期に施工されれば良い。そして、こうした住宅本体1の基礎1cを施工する基礎工事と、上記掘削工事及びフェンス側基礎工事とが所定期間内に並行して行われると、次いで、上記住宅本体1の上棟と、上記防雪フェンス本体2の据え付け工事とを、例えば1~5週間以内の同時期に行い、上記第1ないし第3の固定部材41,42,43を介して該住宅本体1と防雪フェンス本体2とを互いに固定(緊結)する。次いで、上記第1ないし第3の支柱21,22,23の下端側が差し込まれた基礎コンクリート33,34,35の凹部と該第1ないし第3の支柱21,22,23の下端側の周囲との間の隙間にコンクリート(モルタル)33a,34a,35aを打ち増しする打ち増し工事を行い、該コンクリート(モルタル)33a,34a,35aを硬化させる。なお、こうしたコンクリート(モルタル)33a,34a,35aの打ち増し工事は、上記防雪フェンス本体2の据え付け工事の直後に行っても良い。
【0032】
こうした施工手順を踏むことにより、住宅本体1の施工が完了した後に、上記防雪フェンス本体2の施工を行う場合と比較すると、該住宅本体1の上棟の際に使用される足場を防雪フェンス本体2の立設工事又は据え付け工事においても共用することができ、工期を有効に短縮することができるとともに、工事費用も安価とすることが可能となる。
【0033】
また、上記防雪フェンス一体型住宅によれば、先に述べたように、屋根11又は太陽光パネル12からの落雪を巡って隣地とのトラブルを有効に防止することができる。また、上記防雪フェンス本体2は、上記第1ないし第3の固定部材41,42,43を介して上記住宅本体1と一体とされていることから、該防雪フェンス本体2に風雪による高い抵抗が発生した場合であっても倒壊する等の危険性はないため、該防雪フェンスを独立して施工する場合と比較した場合、先に説明したように支柱等を地盤に対して強固に固定する必要性はなく、簡易なものとすることができる。
【0034】
特に、この実施の形態に係る防雪フェンス一体型住宅では、住宅本体1は木造住宅であるとともに、上記防雪フェンス本体2を構成する上記第1ないし第3の支柱21,22,23や上記第1ないし第3の固定部材41,42,43の主要部である支柱本体21Aや図示しない固定部材本体の主要部は、何れも該住宅本体1と同一の木質素材からなるものであり、鉄骨造からなるものではないことから、建築基準法その他の法規等に従った確認申請時の審査の簡略化が認められ、申請費用が軽減されるばかりではなく、審査期間も短縮化され、また申請時に要求される図書の増加も避けることができる。
【0035】
なお、上記実施の形態に係る防雪フェンス一体型住宅では、上記住宅本体1の屋根11上に太陽光パネル12を配置したものであるが、本発明は、必ずこの太陽光パネル12が住宅本体1の構成要素とされている必要性はない。また、上記実施の形態に係る防雪フェンス一体型住宅では、上記住宅本体1に対して1つの防雪フェンス本体2が一体化されたものであるが、該防雪フェンス本体2は、該住宅本体1の左右両側或いは背後に配置されたもの、更には該住宅本体1の左右両側及び背後の3方向に配置されたものであっても良い。
【符号の説明】
【0036】
1 住宅本体
2 防雪フェンス本体
11 屋根
13 外壁材
21 第1の支柱
21A 支柱本体
21B 樹脂製カバー
22 第2の支柱
23 第3の支柱
24 第1の水平部材
25 第2の水平部材
26 第3の水平部材
27 第4の水平部材
28 上側垂直部材
29 上側防雪ルーバー
30 下側垂直部材
31 下側防雪ルーバー
41 第1の固定部材
42 第2の固定部材
43 第3の固定部材