(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
H01R13/52 301E
(21)【出願番号】P 2020062182
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-09-30
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄太
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】中屋 裕一郎
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-152190(JP,A)
【文献】特開2011-86509(JP,A)
【文献】特開2002-110289(JP,A)
【文献】特開2000-299161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌合可能な雌側コネクタおよび雄側コネクタを備え、
前記雄側コネクタは、筒状のフード部と、前記フード部の外面に突設されたロック部と、を有し、
前記雌側コネクタは、前記フード部内に嵌合されるハウジングと、前記ハウジングの外面に撓み変形可能に突設されたロックアームと、を有し、
前記ロックアームは、前記フード部の開口端側の外面に接した状態で、前記ロック部を係止し、前記雌側コネクタおよび前記雄側コネクタを嵌合状態に保持するようになっており、
前記フード部の外面には、前記ロックアームの先端部に当接または近接して対向する先側規制部が設けられ、
前記フード部の開口端側の内面には、シール部材が密着しており、
前記シール部材は、貫通部材が液密に挿通される複数のシール孔を有し、
前記貫通部材には、前記ハウジングに突出して設けられた柱状の位置決め部が含まれ、
前記位置決め部は、前記ロックアームの撓み方向で前記ロックアームと対向する位置に配置され
るコネクタ。
【請求項2】
前記フード部の外面には、前記ロックアームの幅方向両側の側縁部に当接または近接して対向する側方規制部が設けられている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ロックアームが前記フード部の開口端側の外面に接した状態で、内外方向の高さに関し、前記ロックアームの先端部の高さは、前記先側規制部の高さと同じかまたは低くなっている請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、カバーとハウジングのロック構造を開示している。ハウジングは、左右両側壁に、突部を有している。カバーは、突部と対応する位置に弾性撓み片を有している。カバーがハウジングに押し込まれることにより、弾性撓み片が突部を係止し、カバーがハウジングに抜け止め状態に保持される。カバーとハウジングのロック構造は、特許文献2および特許文献3にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-350342号公報
【文献】特開2008-10340号公報
【文献】特開2017-73300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記カバーとハウジングのロック構造を、雌雄両ハウジングを嵌合状態に保持するロック構造に適用することが考えられる。例えば、雄ハウジングのフード部の開口端側の外面にロック部を設け、ロック部に雌ハウジングのロックアームを係止させる構造を採用することが考えられる。しかし、フード部の開口端側は内側に変形する懸念がある。このため、フード部の開口端側が隙間の範囲で内側に変形し、ロックアームの先端部がフード部の外面から浮き上がる懸念がある。その結果、ロックアームの先端部が指等で容易に触れ得る状態になり、ロックアームとロック部との係止が意図せず解除されるおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、ロックアームとロック部との係止が解除されるのを回避したコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、互いに嵌合可能な雌側コネクタおよび雄側コネクタを備え、前記雄側コネクタは、筒状のフード部と、前記フード部の外面に突設されたロック部と、を有し、前記雌側コネクタは、前記フード部内に嵌合されるハウジングと、前記ハウジングの外面に撓み変形可能に突設されたロックアームと、を有し、前記ロックアームは、前記フード部の開口端側の外面に接した状態で、前記ロック部を係止し、前記雌側コネクタおよび前記雄側コネクタを嵌合状態に保持するようになっており、前記フード部の外面には、前記ロックアームの先端部に当接または近接して対向する先側規制部が設けられ、前記フード部の開口端側の内面には、シール部材が密着している。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ロックアームとロック部との係止が解除されるのを回避したコネクタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態にかかるコネクタにおいて、雌側コネクタおよび雄側コネクタが互いに正規嵌合された状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)互いに嵌合可能な雌側コネクタおよび雄側コネクタを備え、前記雄側コネクタは、筒状のフード部と、前記フード部の外面に突設されたロック部と、を有し、前記雌側コネクタは、前記フード部内に嵌合されるハウジングと、前記ハウジングの外面に撓み変形可能に突設されたロックアームと、を有し、前記ロックアームは、前記フード部の開口端側の外面に接した状態で、前記ロック部を係止し、前記雌側コネクタおよび前記雄側コネクタを嵌合状態に保持するようになっており、前記フード部の外面には、前記ロックアームの先端部に当接または近接して対向する先側規制部が設けられ、前記フード部の開口端側の内面には、シール部材が密着している。
【0010】
上記構成によれば、ロックアームがロック部を係止した状態で、先側規制部がロックアームの先端部に当接または近接して対向するため、ロックアームの先端部と先側規制部との間に指等が入り込むのを防止することができる。また、フード部の開口端側の内面にシール部材が密着していて隙間を無くしているから、フード部の開口端側が内側に変形するのを抑えることができる。よって、ロックアームの先端部がフード部の外面から浮き上がるのを抑えることができる。その結果、ロックアームとロック部との係止が指等で解除される事態を確実に防止することができる。
【0011】
(2)前記フード部の外面には、前記ロックアームの幅方向両側の側縁部に当接または近接して対向する側方規制部が設けられていることが好ましい。この構成によれば、ロックアームと側方規制部との間に指等が入り込むのを防止することもできる。その結果、ロックアームとロック部との係止が解除される事態をより確実に防止することができる。
【0012】
(3)前記シール部材は、貫通部材が液密に挿通される複数のシール孔を有していると良い。この構成によれば、シール孔に挿通される貫通部材によってシール部材が内側に変形するのが抑えられ、フード部の開口端側の内面に圧力をかけることができる。その結果、フード部の開口端側が内側に変形するのをより確実に防止することができる。なお、貫通部材としては、電線、ホルダロック部および位置決め部等がある。
【0013】
(4)前記ロックアームが前記フード部の開口端側の外面に接した状態で、内外方向の高さに関し、前記ロックアームの先端部の高さは、前記先側規制部の高さと同じかまたは低くなっていると良い。この構成によれば、仮に、ロックアームの先端部と先側規制部との間に指等がこじ入れられても、ロックアームの先端部を引き上げ難い構造になるから、ロックアームとロック部との係止が解除される事態をいっそう確実に防止することができる。
【0014】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0015】
実施形態にかかるコネクタは、
図2に示すように、互いに嵌合可能な雌側コネクタ60および雄側コネクタ10を備える。雄側コネクタ10は、自動車のオートマチックトランスミッション等の機器のケース100に固定される。なお、以下の説明において、前後方向については、雌側コネクタ60および雄側コネクタ10が嵌合開始時に互いに向き合う面側を前側とする。上下方向は、
図1を除く各図の上下方向を基準とする。
【0016】
<雄側コネクタ>
雄側コネクタ10は、
図2に示すように、ケース100に取り付けられる取付部11と、取付部11から前方に突出する筒状のフード部12と、取付部11から後方に突出する筒状の第2フード部13と、取付部11にインサート成形して装着される複数の雄端子金具20と、を有している。取付部11、フード部12および第2フード部13は、合成樹脂製であって、雄側コネクタ10のハウジング部分を構成する。雄端子金具20は、導電金属製であって、前後方向に延びるバスバーとして構成される。雄端子金具20の前部は、フード部12内に突出して配置される。雄端子金具20の後部は、第2フード部13内に突出して配置される。フード部12は、ケース100の内側に配置され、雌側コネクタ60に嵌合される。第2フード部13は、ケース100の外側に配置され、図示しない外部コネクタに嵌合される。雄側コネクタ10は、中継コネクタとして構成される。
【0017】
取付部11は、円柱状をなしている。取付部11の外面には、ゴム製のシールリング25が装着されている。シールリング25は、取付部11とケース100との間を液密にシールする。取付部11には、
図4に示すように、一側(
図4の左側)に張り出す形態の取付片14が連設されている。取付片14は、前後方向に板厚を向けた板片状をなしている。取付片14には、円形のボルト孔15が前後方向に貫通して設けられている。雄側コネクタ10は、ボルト孔15に挿通される図示しないボルトを介してケース100に固定される。
【0018】
フード部12は、
図3および
図4に示すように、四隅部に丸みが付いた筒状をなし、幅方向(
図3および
図4の左右方向)に沿って平坦な上下壁16を有している。上下壁16には、一対ずつのガイド部17が設けられている。各ガイド部17は、
図1に示すように、上下壁16の外面の幅方向中央を挟んだ両側において、前後方向に延びるリブ状をなし、互いに平行に配置される。各ガイド部17は、フード部12の前端(開口端)から取付部11に連なる段付部18にかけて設けられている。
【0019】
上下壁16には、
図3および
図4に示すように、各ガイド部17(幅方向に対をなすガイド部17)の間に、一対のロック部19が設けられている。各ロック部19は、爪状をなし、上下壁16の外面の幅方向中央部に突設されている。
図2に示すように、各ロック部19の前面は、後方へ向けて傾斜している。各ロック部19の後面は、上下方向に沿って配置されている。
【0020】
上下壁16の外面には、各ロック部19より後方に、一対の先側規制部31が突設されている。
図1に示すように、先側規制部31は、各ガイド部17(幅方向で対をなすガイド部17)と直角に連なり、各ガイド部17間において幅方向に延びるリブ状をなしている。雄側コネクタ10を平面視および底面視した場合に、各ガイド部17と先側規制部31はH字形状をなしている。先側規制部31の外面とガイド部17の外面は段差無く連続している。
【0021】
各ガイド部17のうち、先側規制部31と交差する位置から上下壁16の前端(開口端)にわたる部分は、側方規制部32として構成される。
【0022】
上下壁16の前端には、各ロック部19より前方に、一対の切欠部33が凹設されている。
図4に示すように、切欠部33は、各側方規制部32(幅方向で対をなす側方規制部32)の間に設けられている。切欠部33の幅方向両端は、各側方規制部32の立ち上がり端によって閉塞されている。
【0023】
図2に示すように、フード部12の内径は、フード部12の開口端側から奥端側にかけて3段階に小さくなっている。フード部12の開口端側は、先端開口部34と、先端開口部34より奥側の中間開口部35とを有している。フード部12の奥端側は、奥端部36を有している。ロック部19は、先端開口部34の上下壁16に設けられている。先側規制部31は、中間開口部35の上下壁16に設けられている。フード部12における先端開口部34と中間開口部35との間には、段差37が全周に形成されて
いる。フード部12における中間開口部35と奥端部36との間には、上部に大きな段差38が形成されている。フード部12の厚みは、奥端部36、中間開口部35および先端開口部34の順に
小さくなっている。
【0024】
<雌側コネクタ>
雌側コネクタ60は、
図2に示すように、ハウジング61と、ハウジング61に収容される雌端子金具80と、シール部材90と、を備えている。ハウジング61は合成樹脂製であって、互いに分離合体可能なハウジング本体62およびホルダ63を有している。ハウジング本体62およびホルダ63は、シール部材90を間に挟んで合体状態に保持される。雌端子金具80は導電金属製であって、後部において電線85の端末部に接続される。雌端子金具80の前部には、筒状の接続部81が設けられている。接続部81には雄端子金具20の前部が挿入されて接続される。
【0025】
ハウジング本体62は、複数のキャビティ64を有している。各キャビティ64は、前後方向に延びてハウジング本体62の前後面に開口している。雌端子金具80は、後方からキャビティ64に挿入される。ハウジング本体62には各キャビティ64に連通するリテーナ装着孔65が設けられている。リテーナ装着孔65には、下方からリテーナ86が挿入される。リテーナ86は、各キャビティ64に挿入された雌端子金具80を係止する。これにより、雌端子金具80のキャビティ64からの抜け出しが規制される。
【0026】
ハウジング本体62の後端部には、
図5および
図6に示すように、背壁部66が設けられている。背壁部66は、リテーナ装着孔65の後面を閉塞している。背壁部66は、ハウジング本体62の前部の上面よりも上方に突出する立壁部67を有している。立壁部67は、幅方向に長い矩形の壁状をなしている。
図5に示すように、立壁部67の幅方向中央部には、円形の貫通孔68が前後方向に貫通して設けられている。立壁部67の幅方向両側部には、矩形の一対の係止孔69が前後方向に貫通して設けられている。
図6に示すように、係止孔69の内壁には、爪状の係止突起71が設けられている。
【0027】
図5に示すように、ハウジング本体62の前部下側は、前部上側よりも幅狭になっている。背壁部66の下側の幅方向両端部は、ハウジング本体62の前部下側の幅狭化によってハウジング61の前面側に露出している。背壁部66の下側の幅方向両端部にも、上記同様の係止突起71を有する係止孔69が設けられている。係止孔69の上方には、ハウジング本体62の前部上側における幅方向両端部のキャビティ64が位置している。
【0028】
シール部材90は、シリコンゴム等のゴム製であって、
図2および
図6に示すように、前後方向に一定厚みを有するマット状をなしている。シール部材90の前面は、ハウジング本体62の後面に密着する。シール部材90は、各キャビティ64と連通する位置に、
図3に示すように、円形の複数の第1シール孔91を有している。シール部材90は、一括ゴム栓として構成される。
【0029】
シール部材90は、各係止孔69と連通する位置に、断面円形の複数の第2シール孔92を有している。シール部材90は、貫通孔68と連通する位置に、断面円形の第3シール孔93を有している。
図3に示すように、第2シール孔92および第3シール孔93は、互いに同じ孔径であって、第1シール孔91の孔径よりも大きい孔径を有している。シール部材90の外周形状は、フード部12の内周形状と同様であって、四隅部に丸みが付いた矩形状をなし、上下面が幅方向に沿って配置されている。シール部材90の外面には、
図6に示すように、複数の外周リップ94が周回して設けられている。各外周リップ94は、シール部材90の外面に前後方向に並んで設けられている。
図5に示すように、シール部材90の外周リップ94は、雌側コネクタ60の正面視において、ハウジング本体62より外側にはみ出している。
【0030】
ホルダ63は、合成樹脂製であって、
図6に示すように、前後方向に一定厚みのホルダ本体72を有している。
図7に示すように、ホルダ本体72の外周形状は、シール部材90の外周形状およびフード部12の内周形状と同様である。ホルダ本体72は、
図7に示すように、各キャビティ64および各第1シール孔91と連通する位置に、複数の挿通孔73を有している。各挿通孔73は、雌端子金具80の接続部81と対応する矩形の開口形状をなしている。ホルダ本体72の前面には、各係止孔69および各第2シール孔92と対応する位置に、複数のホルダロック部74が突出して設けられている。各ホルダロック部74は、ホルダ本体72の前面側に連なる円柱状の付け根部分と、前端に爪状のホルダ突起75を突設させた先端部分と、を有している。ホルダ本体72の前面の上側に配置された2つのホルダロック部74は、ホルダ突起75を下向きに突設させている。ホルダ本体72の前面の下側に配置された2つのホルダロック部74は、ホルダ突起75を上向きに突設させている。
【0031】
ホルダ本体72の前面には、貫通孔68および第3シール孔93と対応する位置に、位置決め部76が突出して設けられている。位置決め部76は、全体として円柱状をなしている。位置決め部76の直径は、ホルダロック部74の付け根部分の直径と同じである。
【0032】
ホルダ本体72は、
図7に示すように、上下面から突出する一対のロックアーム77を有している。各ロックアーム77は、幅方向に沿った板片状をなしている。また、
図6に示すように、各ロックアーム77は、側面視L字形をなし、ホルダ本体72の上下面の幅方向中央部から起立する起立部78と、起立部78の起立方向の先端から前方に突出する突出部79と、を有している。各ロックアーム77は、起立部78から突出部79にまたがって開口するロック孔87を有している。各ロックアーム77の突出部79は、
図1に示すように、門型をなし、幅方向に沿った先端部88を有している。先端部88は、ロック孔87の前面を閉塞(区画)する。各ロックアーム77の突出部79における上下方向の厚み(高さ)は、全体として一定であり、各ロック部19の上下方向の厚みよりも大きく、先側規制部31および側方規制部32のそれぞれの上下方向の厚みよりも小さくされている。
【0033】
<雌側コネクタの組み付け構造、雌側コネクタおよび雄側コネクタの嵌合構造>
雌側コネクタ60の組み付けに際し、ホルダ63がハウジング本体62に対してシール部材90を間に挟んで後方から装着される。位置決め部76は、シール部材90の第3シール孔93から背壁部66の貫通孔68にかけて挿入される(
図2を参照)。位置決め部76の付け根部分は、第3シール孔93に液密に挿入される。位置決め部76の先端部分は、貫通孔68に隙間なく嵌合される。ホルダロック部74は、シール部材90の第2シール孔92から背壁部66の係止孔69にかけて挿入される(
図6を参照)。ホルダロック部74の付け根部分は、第2シール孔92に液密に挿入される。係止孔69には、ホルダロック部74の先端部分の撓み変形を許容するスペースが確保されている。ホルダロック部74のホルダ突起75は各係止孔69の係止突起71に掛け止められる。これにより、ホルダ63がハウジング61に係止して固定される。シール部材90はハウジング61とホルダ63との間に挟まれて抜け止め状態に保持される。
【0034】
続いて、雌端子金具80がハウジング61の後方から挿通孔73から第1シール孔91を経てキャビティ64に挿入される。雌端子金具80がキャビティ64に正規に挿入されると、電線85が第1シール孔91に液密に挿入される。その後、リテーナ86がリテーナ装着孔65に正規深さで挿入され、雌端子金具80がキャビティ64に抜け止めされる(
図2を参照)。
【0035】
雌側コネクタ60および雄側コネクタ10の嵌合動作を開始するに際し、雌側コネクタ60および雄側コネクタ10が互いに正対される。その状態で、ハウジング61がフード部12内に嵌合される。ハウジング61の嵌合過程において、ロックアーム77の先端部88がロック部19を摺動し、ロックアーム77の突出部79が起立部78を支点として外側に撓み変形(傾動変形)させられる。ハウジング61がフード部12内に正規に嵌合されると、ロックアーム77が弾性復帰し、突出部79がフード部12の上下壁16の外面に当接する。ロックアーム77が弾性復帰するに伴い、ロック孔87にロック部19が嵌まり込む。これにより、ハウジング61がフード部12に離脱規制された状態に保持される。
【0036】
ハウジング61がフード部12内に正規に嵌合された状態において、
図2に示すように、ハウジング本体62の前部は、フード部12の奥端部36内に嵌合される。背壁部66は、フード部12の中間開口部35内に嵌合される。立壁部67は、段差38に当接可能に配置される。シール部材90は、フード部12の先端開口部34内に嵌合される。シール部材90の前面の外周縁部は、段差37に当接可能に配置される。シール部材90の各外周リップ94は、フード部12の先端開口部34の内面に全周にわたって密着する。これにより、ハウジング61とフード部12との間が液密にシールされる。
【0037】
ハウジング61がフード部12内に正規に嵌合され、ロックアーム77がロック部19を係止した状態において、ロックアーム77の起立部78がフード部12の切欠部33に入り込む。
図1に示すように、ロックアーム77の先端部88と先側規制部31とは前後方向に当たるように配置される。ロックアーム77の先端部88と先側規制部31との間には隙間が形成されない。また、ロックアーム77の幅方向両側の側縁部89と側方規制部32とは幅方向に当たるように配置される。ロックアーム77の側縁部89と側方規制部32との間には隙間が形成されない。つまり、ロックアーム77の突出部79の外周は、全体にわたって先側規制部31と側方規制部32とに当接可能に対向して配置される。
【0038】
上記によって雌側コネクタ60および雄側コネクタ10が嵌合状態にあるときに、仮に、ロックアーム77が不用意に引き上げられると、ロック部19がロック孔87から抜け出て、ロックアーム77とロック部19との係止状態を維持することできなくなる。しかるに本実施形態によれば、ロックアーム77の先端部88と先側規制部31との間に隙間が形成されていないから、ロックアーム77の先端部88と先側規制部31との間に指等が入り込む余地がない。また、ロックアーム77の側縁部89と側方規制部32との間にも隙間が形成されていないから、ロックアーム77の側縁部89と側方規制部32との間に指等が入り込む余地もない。さらに、ロックアーム77の先端部88を含む突出部79の高さは、先側規制部31および側方規制部32のそれぞれの高さより低くなっている。このため、仮に、ロックアーム77の先端部88に指等が触れても、ロックアーム77を引き上がることができず、ロックアーム77とロック部19との係止を良好に維持することができる。
【0039】
フード部12の開口端側が薄肉に形成され、特に、フード部12の先端開口部34が最も薄肉になっているものの、フードの先端開口部34の内面にはシール部材90が密着し、フード部12の先端開口部34の内部がシール部材90で隙間なく埋まっているため、フード部12がロックアーム77の係止力を受けても内側に変形するのを抑えることができる。そして、各第1シール孔91に電線85が液密に挿通され、各第2シール孔92に各ホルダロック部74が液密に挿通され、第3シール孔93に位置決め部76が液密に挿通されることにより、シール部材90の内側への弾性変位が抑えられ、ひいてはフード部12の内側への変形も効果的に抑えられる。その結果、フード部12の内側への変形に伴ってロックアーム77がフード部12の外面から浮き上がることもなく、ロックアーム77が不用意に引き上げられるのをより確実に防止することができる。
【0040】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態の場合、ロックアームがホルダに設けられていたが、他の実施形態としては、ロックアームがハウジング本体(雌端子金具を収容可能なキャビティを有する部分)に設けられていても良い。
上記実施形態の場合、ロックアームがハウジングの上下面に対をなして設けられていたが、他の実施形態としては、ロックアームがハウジングの上下いずれかの面に設けられるだけでも良い。
上記実施形態の場合、シール部材が複数のシール孔を有する一括ゴム栓であったが、他の実施形態としては、シール部材がハウジング本体の外面に装着されるシールリングであっても良い。
上記実施形態の場合、雄側コネクタが中継コネクタとして構成されていたが、他の実施形態としては、雄側コネクタが1つのフード部を有し、雄端子金具の後端部が回路基板または電線に接続されるものであっても良い。
上記実施形態の場合、ロックアームの先端部と先側規制部とが当接して配置されていたが、他の実施形態としては、ロックアームの先端部と先側規制部とが間隔を置いて近接して配置されていても良い。この場合、ロックアームの先端部と先側規制部とは、指等が入り込まない程度に近接していれば良い。
上記実施形態の場合、ロックアームの側縁部と側方規制部とが当接して配置されていたが、他の実施形態としては、ロックアームの側縁部と側方規制部とが間隔を置いて近接して配置されていても良い。この場合、ロックアームの側縁部と側方規制部とは、指等が入り込まない程度に近接していれば良い。
【符号の説明】
【0041】
10…雄側コネクタ
11…取付部
12…フード部
13…第2フード部
14…取付片
15…ボルト孔
16…上下壁
17…ガイド部
18…段付部
19…ロック部
20…雄端子金具
25…シールリング
31…先側規制部
32…側方規制部
33…切欠部
34…先端開口部
35…中間開口部
36…奥端部
37、38…段差
60…雌側コネクタ
61…ハウジング
62…ハウジング本体
63…ホルダ
64…キャビティ
65…リテーナ装着孔
66…背壁部
67…立壁部
68…貫通孔
69…係止孔
71…係止突起
72…ホルダ本体
73…挿通孔
74…ホルダロック部
75…ホルダ突起
76…位置決め部
77…ロックアーム
78…起立部
79…突出部
80…雌端子金具
81…接続部
85…電線
86…リテーナ
87…ロック孔
88…先端部
89…側縁部
90…シール部材
91…第1シール孔
92…第2シール孔
93…第3シール孔
94…外周リップ
100…ケース