(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ねじ接続部のための締付け装置
(51)【国際特許分類】
B25B 29/02 20060101AFI20240912BHJP
B25B 23/157 20060101ALI20240912BHJP
B23P 19/06 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B25B29/02
B25B23/157 B
B23P19/06 P
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020078950
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】10 2019 111 185.4
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507335012
【氏名又は名称】ヨルク ホーマン
【氏名又は名称原語表記】Joerg Hohmann
【住所又は居所原語表記】Uhlandstrasse 6a, D-59872 Meschede, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】507335023
【氏名又は名称】フランク ホーマン
【氏名又は名称原語表記】Frank Hohmann
【住所又は居所原語表記】Josef-Menke-Strasse 25, D-59581 Warstein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨルク ホーマン
(72)【発明者】
【氏名】フランク ホーマン
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-511452(JP,A)
【文献】実開平04-115575(JP,U)
【文献】特開昭62-096795(JP,A)
【文献】特開平08-071933(JP,A)
【文献】国際公開第2020/126099(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 29/02
B25B 23/157
B23P 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ山付きボルトとねじ山付きナットとから成るねじ接続部のための締付け装置であって、前記ねじ山付きナットを取り囲む支持管(8)と、該支持管(8)の延長上にあるシリンダハウジング(7)と、該シリンダハウジング(7)内で油圧によって可動なピストン(25)と、該ピストン(25)によって軸方向で連行可能であり、前記ねじ山付きボルト
に交換ブシュ(12)をねじ込むための雌ねじ山(13)を備えた交換ブシュ(12)と、前記支持管(8)の内側に配置され、前記ねじ山付きナットに形状接続によらず、または形状接続によって接続可能な連行エレメント(16)と、前記支持管(8)の外側に回転可能に取り付けられており手持ち式工具(10)を装着するための工具面(38)を備えた駆動エレメント(35)と前記連行エレメント(16)との間の歯車装置(15)と、を有している、ねじ接続部のための締付け装置であって、
トルクの作用として動作するクラッチ(30)が、前記歯車装置(15)の構成要素であ
り、トルクの作用として動作する前記クラッチ(30)の構成要素は、圧縮応力下で互いに支持されるクラッチパートナであって、第1のクラッチパートナ(33,43)は、前記駆動エレメント(35)と間接的にまたは直接的に回転接続されて回転し、第2のクラッチパートナ(31,32,44)は、前記連行エレメント(16)と間接的または直接的に回転接続されて回転することを特徴とする、ねじ接続部のための締付け装置。
【請求項2】
トルクの作用として動作する前記クラッチ(30)は、過負荷クラッチ、好適には滑りクラッチである、請求項1記載の締付け装置。
【請求項3】
前記クラッチパートナ(33,43,31,32,44)間の前記圧縮応力の程度を調節するための手段(36,48)を有している、請求項
1または2記載の締付け装置。
【請求項4】
前記クラッチパートナ(43,44)は、少なくとも1つのばねエレメント(48)による圧縮応力下で互いに支持されている、請求項
1から3までのいずれか1項記載の締付け装置。
【請求項5】
前記ばねエレメント(48)は、第1の端部で第1のスプリングシートに支持され、第2の端部で第2のスプリングシートに支持されており、前記スプリングシートの互いに対する間隔は調節可能である、請求項
4記載の締付け装置。
【請求項6】
いずれの場合も、互いに平坦に支持されている摩擦面が、クラッチパートナに構成されている、請求項
1から
5までのいずれか1項記載の締付け装置。
【請求項7】
前記歯車装置(15)を少なくとも部分的に収容する駆動ハウジング(18)が設けられており、前記駆動ハウジングは、前記支持管(8)の周辺領域に外部から固定されており、前記支持管(8)には開口(28)が設けられており、前記歯車装置(15)の歯車エレメント(17)が、前記開口(28)内へと延在している、請求項1から
6までのいずれか1項記載の締付け装置。
【請求項8】
前記歯車エレメント(17)は、前記連行エレメント(16)と係合している、請求項
7記載の締付け装置。
【請求項9】
前記駆動エレメント(35)と、トルクの作用として動作する前記クラッチ(30)とは、前記駆動ハウジング(18)内に配置されている、請求項
7または
8記載の締付け装置。
【請求項10】
前記駆動エレメント(35)と、トルクの作用として動作する前記クラッチ(30)とは、前記駆動ハウジング(18)に取り外し可能に装着されるクラッチモジュール(41)の構成要素である、請求項
7または
8記載の締付け装置。
【請求項11】
前記駆動ハウジング(18)内に取り付けられた歯車エレメント(37)に取り外し可能に係合する形状接続的な接続エレメント(42)も、前記クラッチモジュール(41)の構成要素であり、トルクの作用として動作する前記クラッチ(30)は、前記駆動エレメント(35)と、前記形状接続的な接続エレメント(42)との間に配置されている、請求項
10記載の締付け装置。
【請求項12】
前記連行エレメント(16)は、前記支持管(8)内に回転可能に配置された回転スリーブであり、前記回転スリーブの内面には、前記ねじ山付きナットに接続するために、形状接続的な接続構造が設けられている、請求項1から
11までのいずれか1項記載の締付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ山付きボルトとねじ山付きナットとから成るねじ接続部のための締付け装置であって、ねじ山付きナットを取り囲む支持管と、支持管の延長上にあるシリンダハウジングと、シリンダハウジング内で油圧によって可動なピストンと、ピストンによって軸方向で連行可能であり、ねじ山付きボルトに交換ブシュをねじ込むための雌ねじ山を備えた交換ブシュと、支持管の内側に配置され、ねじ山付きナットに形状接続によらず、または形状接続によって接続可能な連行エレメントと、支持管の外側に回転可能に取り付けられ手持ち式工具を装着するための工具面を備えた駆動エレメントと連行エレメントとの間の歯車装置と、を有している、ねじ接続部のための締付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これらの特徴を有した、ねじ接続部を締め付けるための締付け装置は、独国特許第102004043145号明細書または国際公開第2008/092768号に開示されている。締付け装置は、油圧式締付けシリンダを有しており、この締付けシリンダには外部から歯車機構が設けられている。油圧が締付けシリンダ内へと供給されている間に、ねじ山付きナットがねじ込まれる。この目的で、ねじ山付きナットを形状接続的に取り囲む回転スリーブの形態の連行エレメントが、締付けシリンダの下方部分を形成する支持管内に位置している。回転スリーブは、工具面に装着されたトルクレンチによって手動で駆動され、歯車装置が、トルクレンチのための工具面と回転スリーブとの間の駆動経路を形成している。歯車装置の個々の歯車エレメントを収容し、回転可能に取り付けるために、駆動ハウジングが締付け装置に外部から固定されている。ナットをねじ込むための手動工具としてトルクレンチを使用することにより、トリガ値を予め調節することができ、これにより正確な操作によって、ねじ山付きナットの過剰な締付けおよび/またはねじ込みが阻止される。ただし、トリガ値を予め選択することにより、ねじ接続部のために規定されたトルク値を正確に調節することが前提条件である。実際には、同じトルクレンチが他の目的でも、すなわちねじ山付きボルトの自由端部上に、締付けシリンダ内に配置されている交換ブシュをねじ込むためにも、使用されているため、この前提条件は常に保証されているわけではない。したがって、トルクレンチで現在調整されているトリガ値が、一方または他方のどちらの目的のために較正されているかを付加的にチェックしなければならない。さらに、手動のトルクレンチは、特定のトルクに達したことを示すことはできるが、この特定のトルクを超過したトルクを阻止することはできない。
【0003】
国際公開第2010/054959号によるねじ締付け装置も、前述の問題の関連を図で示している。この先行技術では、最大トルクの特定の表示装置を、ねじ山付きナットを締め直すための歯車機構を収容する駆動ハウジングに外部から取り付けることが提案されている。
【0004】
米国特許第5452629号明細書に開示されたねじ締付け装置では、ねじ山付きナットは手動で締め直しかつ/またはねじ込みされず、そのために特別な駆動装置を使用して行われる。この駆動装置としては電気モータが使用され、その電力は、電気抵抗をモニタすることによって制御される。駆動負荷と共に増加する電気抵抗は、電気モータへのさらなる電力供給を遮断するために利用され、これにより、ねじ山付きナットへの過剰な締付けモーメントが阻止される。米国特許第5452629号で提案された解決手段は、ねじ山付きナットを締め直すかつ/またはねじ込むために、ならびに駆動装置の電源装置を制御するために、別個の電気駆動装置を必要とするので、装置技術の点で複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、油圧締付けシリンダにより動作するねじ締付け装置の場合に、装置技術という意味で単純な機械的手段により、ねじ山付きナットの締め直しおよび/またはねじ込みの際の過剰な力を確実に阻止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、請求項1の特徴を有したねじ接続部のための締付け装置が提案される。
【0007】
この締付け装置では、トルクの作用として動作するクラッチが、ねじ山付きナットをねじ込む歯車装置の構成要素である。このクラッチは、例えば特定のトルク閾値以上ではスリップする摩擦滑りクラッチであってよい。このようにして、油圧締付けシリンダの作動中にねじ山付きナットを締め直すかつ/またはねじ込むトルクは、作動不良の場合でも、乗り越えることのできない有効な制限を受ける。この制限は、実質的に、使用者による操作とは無関係である。それは、例えば手動のトルクレンチを使用する場合における正確なトリガ値の調整のように、使用者が最初に正確に調整するかどうかに依存するものではない。トルクの作用として動作するクラッチは、最大値が超過され得ないことを確実に保証する。
【0008】
特別なトルクレンチの使用は必要ではない。その代わりに、存在している工具面に装着するのに適した工具であれば、より単純な手動工具であっても確実に使用することができる。
【0009】
締付け装置の好適な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0010】
一実施形態によれば、トルクの作用として動作するクラッチは、過負荷クラッチ、好適には滑りクラッチとして構成されている。このクラッチは、特定のトルク値に達するまでは力の流れを許容するが、このトルク値を超過すると、クラッチは力の流れを遮断する。
【0011】
別の実施形態によれば、トルクの作用として動作するクラッチの構成要素は、圧縮応力下で互いに支持されるクラッチパートナである。第1のクラッチパートナは、駆動エレメントと間接的にまたは直接的に回転接続される。第2のクラッチパートナは、連行エレメントと間接的にまたは直接的に回転接続される。
【0012】
さらなる実施形態は、クラッチパートナ間の圧縮応力のレベルを調節するための手段を特徴とする。
【0013】
トルクの作用として動作するクラッチの特にシンプルな設計のために、クラッチパートナが、少なくとも1つのばねエレメントによって圧縮応力下で互いに支持されているならば有利である。この場合、ばねエレメントは好適には、第1の端部で第1のスプリングシートに支持され、第2の端部で第2のスプリングシートに支持されている。この場合、トルクの作用として動作するクラッチが力の流れを遮断する、伝達可能な最大トルクを、このような方式で事前に選択するために、両スプリングシートの互いに対する間隔は調整可能であってよい。
【0014】
さらなる実施形態によれば、いずれの場合も、互いに平坦に支持されている摩擦面が、クラッチパートナに構成されている。
【0015】
さらなる実施形態によれば、歯車装置を少なくとも部分的に収容する駆動ハウジングが設けられている。この駆動ハウジングは、支持管の周辺領域に外部から固定されており、この支持管には開口が設けられている。歯車装置の歯車エレメントが、この開口内へと延在している。この歯車エレメントは好適には、連行エレメントに係合している。
【0016】
一態様によれば、駆動エレメントと、トルクの作用として動作するクラッチとは、駆動ハウジング内に配置されている。
【0017】
代替的な態様によれば、駆動エレメントと、トルクの作用として動作するクラッチとは、駆動ハウジングに取り外し可能に装着されるクラッチモジュールの構成要素である。
【0018】
この代替的な態様では、駆動ハウジング内に取り付けられた歯車エレメントに取り外し可能に係合する形状接続的な接続エレメントも、クラッチモジュールの構成要素であり、トルクの作用として動作するクラッチは、駆動エレメントと、形状接続的な接続エレメントとの間に配置されている。
【0019】
最後に、連行エレメントは、支持管内に回転可能に配置された回転スリーブであり、回転スリーブの内面には、ねじ山付きナットに接続するために、形状接続的な接続構造が設けられていることが提案される。
【0020】
図示した本発明の例示的な実施形態を、以下により詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】ねじ山付きボルトとねじ山付きナットとから成るねじ接続部を示す図である。
【
図2】締付け装置の締付けシリンダの主要な構造を示す縦断面図である。
【
図3】外部から取り付けられた駆動ハウジングを備え、ねじ接続部上に配置された締付け装置と、ねじ接続部のねじ山付きナットを締め直すかつ/またはねじ込むために、駆動ハウジングに装着される手持ち式工具とを示す斜視図である。
【
図4】締付け装置の駆動ハウジングを示す断面図である。
【
図6】ねじ接続部上に配置された締付け装置の別の態様と、ねじ接続部のねじ山付きナットを締め直すかつ/またはねじ込むために締付け装置に装着される手持ち式工具とを示す斜視図である。
【
図7】
図6により使用されるクラッチモジュールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1によるねじ接続部は、例えば、幅広のボルトヘッドとシャンク部分とねじ山付き部分とから成るねじ山付きボルト2と、ねじ山付きボルト2のねじ山付き部分上にねじ込まれるねじ山付きナット3とを備える。ねじ接続部は、この場合、例えば2つのフランジである2つの機械部品5,6を互いに対して締結している。
【0023】
ねじ山付きボルト2と、このねじ山付きボルト上にねじ込まれるねじ山付きナット3に付加的に、別のエレメントも、ねじ接続部の構成部分であってよく、例えば、締結されるべき機械部品5,6の、ねじ山付きナット3から離れた側に、別のナットがあってもよい。付加的にはワッシャも、ねじ接続部の構成部品であってよい。
【0024】
ねじ接続部は、油圧式締付けシリンダとして設計された締付け装置11によって専ら軸方向の張力を加えることによって、長手方向で伸長する。この場合、ねじ山付きボルト2は、ねじ山付きナット3を越えて突出するねじ山付きボルト2のねじ山付き部分2Aへの軸方向の張力によって長手方向で伸長し、主にねじ山付きボルト2のシャンク部分とねじ山付き部分とが伸長する。この場合に加えられた締付け力および/または油圧システムによって加えられた締付け圧は、評価ユニットを使用して自動的にドキュメンテーションモジュール内に格納することができ、したがって、後続のモニタリング目的のために利用することができる。
【0025】
締付けシリンダが所定の時間作動されることにより予め規定された予張力がねじ山付きボルト2に加えられている間に、ねじ山付きナット3を回転により締め付けることができ、かつ/または締め直すことができる。ナットのこのようないわゆるねじ込みは、手持ち式工具10、例えば組み込まれたラチェット機構を備えたまたは備えていないマルチエッジソケットレンチによって手動で実施される。ナット3のねじ込みのために実際に加えられる締付けモーメントも、自動的にドキュメンテーションモジュールに格納されてよい。
【0026】
締付け装置のシリンダハウジング7内中央に長手方向可動に配置された交換ブシュ12には、その一方の端部に雌ねじ山13が設けられている。締付けプロセス前に、交換ブシュ12の雌ねじ山13は、ナット3を越えて突出しているねじ山付き端部2Aにねじ込まれる。このねじ込みプロセスも手持ち式工具10によって行われ、この目的で、交換ブシュ12は他方の端部に多角形駆動機構14を有しており、この多角形駆動機構上に手持ち式工具10を装着することができる。
【0027】
締付けプロセスの間、ねじ山付きボルト2にねじ込まれる交換ブシュ12は、油圧により軸方向の張力下に置かれ、これによりねじ山付きボルト2は、長手方向で伸長する。その結果として、ナット3の下端面は支持部5Aから離される。この状態で、ナット3は、比較的小さい抵抗で回転することができ、支持部5Aに再び隙間なく支持されるまで、ねじ込むことができる。このねじ込みは、手持ち式工具10によって実施される。手持ち式工具の回転運動または枢動運動は、介挿された歯車装置15を介してねじ山付きナット3の回転運動へと伝達される。
【0028】
ナット3の直接的な回転は、支持管8内に取り付けられた連行エレメント16によって行われる。ここに記載した実施形態では、連行エレメント16は、ナット3を取り囲む回転スリーブであって、回転スリーブには、その内面に形状接続的な接続構造が、特に六角形体が設けられており、この六角形体は、ナット3上に一体成形された六角形体を形状接続的に取り囲む。連行エレメントおよび/または回転スリーブ16は、ピニオンとして構成された歯車装置15の歯車エレメント17によって駆動される。歯車装置15は、主として駆動ハウジング18内に位置しており、この駆動ハウジングは、1つのモジュールとして、締付け装置の締付けシリンダ上に外部から固定される。
【0029】
油圧締付け機構は、耐圧シリンダハウジング7によって収容されている。シリンダハウジングの下方への剛性的な延長部は、ねじ山付きナット3を取り囲む支持管8を形成する。支持管8は、シリンダハウジング7と一体であってよく、またはシリンダハウジング7とは別個であって、例えばシリンダハウジングに装着される構成要素であってよい。支持管8の下端面は開いており、この下端面で、固定されている支持部5A上に支持されており、ナット3もその下端面で支持部上に支持されている。
【0030】
シリンダハウジング7の側面に油圧接続部20が配置されており、これにより油圧作動室21が、外部の油圧供給源に、例えば油圧ポンプにバルブ制御されて接続されている。
【0031】
長手方向で可動な、シリンダ内壁に対してシールされているピストン25が、シリンダハウジング7内に配置されている。締付けシリンダの油圧作動室21内に油圧を供給することにより、ピストン25は上昇する。これは、例えばピストン25に上方から作用するばねの力に抗して行われる。このばねは、ピストン戻しばねとして機能し、油圧作動室21が最小であるピストンの基準位置にピストン25を保持しようとする。
【0032】
ピストン25は、交換ブシュ12を環状に取り囲む。ピストンには、支持部5Aから離れているその内縁に、肩部または段部27が設けられており、この肩部または段部は連行エレメント面を形成し、この連行エレメント面上に交換ブシュ12が支持される。油圧ポンプが油圧流体を作動室21内に圧送すると、ピストン25は上昇し、交換ブシュ12を軸方向で連行する。その結果、ねじ山付きボルト2が長手方向で伸長する。
【0033】
交換ブシュ12には、そのボルト側の端部に、ねじ山付きボルト2にねじ込むための雌ねじ山13が設けられている。交換ブシュ12の他方の端部には多角形駆動エレメント14が設けられており、この駆動エレメントには、締付けプロセスのセットアップ中に、交換ブシュ12を手持ち式工具10で回転させて交換ブシュをねじ山付きボルト2にねじ込むために、手持ち式工具10を装着することができる。
【0034】
回転スリーブ16の回転のために、支持管8は、駆動ハウジング18が歯車装置15と共に位置している周辺領域に開口28を有している。したがって、回転スリーブ16は、開口28を介して駆動される。歯車装置15は、したがって、回転スリーブ16と共に、ナット3をねじ込むための装置を成す。もちろん、ナット3は、ピストン25が油圧下にある期間だけ適切にねじ込むことができる。
【0035】
例えば、ラチェットレンチとして構成された手持ち式工具10を前後に動かすことによってねじ込むために必要な力は、トルクリミッタがそれ以上の増加を遮断するまで、かけられる。この目的のために、歯車装置15の構成要素は、トルクの作用として動作する、過負荷クラッチとして設計されたクラッチ30である。
【0036】
図3、
図4および
図5を参照すると、歯車装置15の詳細が、第1の実施形態で示されている。
【0037】
外側から支持管8に固定されている駆動ハウジング18内には、歯車エレメント17と別の歯車エレメント37とが、互いに平行な2つの回転軸に取り付けられている。歯車エレメント17,37は互いに噛み合う歯車ピニオンである。歯車エレメント17はさらに、回転スリーブ16の外面に構成された歯列に噛み合っている。このために、歯車エレメント17は、この周辺位置で支持管8に設けられている開口28(
図2)内へと突入している。
【0038】
歯車エレメント37は、マルチピース構造であって、とりわけ、歯車エレメント37は、手持ち式工具10の対応する形状の工具面を装着することができる工具面38を有している。
【0039】
歯車装置15内部の駆動経路は、工具面38上に装着された手持ち式工具10によって歯車エレメント37が回転され、次いでこの動きが、介挿された歯車エレメント17を介して、支持管8内に取り付けられた回転スリーブ16に伝達される、というものである。中間ピニオンとしての歯車エレメント17により、工具面38における回転方向が、ねじ込まれる際のねじ山付きナット3の回転方向と同じ方向に向けられることが保証されている。
【0040】
図3、
図4および
図5に示した実施形態では、トルクの作用として動作するクラッチ30は、この目的のために、マルチピース歯車エレメントである歯車エレメント37に組み込まれている。マルチピース歯車エレメント37の構成要素は、その外周に歯列を備えた第1のディスク31と、この第1のディスク31と回転に関して固定的に連結された第2のディスク32と、ディスク31,32の間に配置された第3のディスク33と、である。
【0041】
その摩擦面が互いに対して平坦に支持されている3つのディスク31,32,33は、過負荷クラッチのクラッチパートナである。中央のディスク33は、2つの摩擦面で、第1のクラッチパートナを形成する。さらに、中央のディスク33に支持されているディスク31の平坦な面は、摩擦面であり、中央のディスク33に支持されているディスク32の平坦な面も摩擦面である。したがって、回転に関して互いに関連するように固定されたディスク31,32は共に、第2のクラッチパートナを形成し、この第2のクラッチパートナは、介挿された歯車エレメント17を介して回転スリーブ16に間接的に回転接続されている。
【0042】
図4によれば、ディスク31は、第2のクラッチパートナであるだけでなく、同時にその歯列によって、介挿された歯車エレメント17を介して回転スリーブ16と回転接続を生成するピニオンでもある。
【0043】
クラッチの中央のディスク33は、駆動ハウジング18内に回転可能に取り付けられた駆動エレメント35の一体の構成要素である。その上に手持ち式工具10を装着することができる工具面38は、この場合、歯車機構ハウジング18の外側で駆動エレメント35上に構成されている。
【0044】
クラッチ回転軸線に対して平行なねじ軸線を有するねじ36が、外側のディスク31,32を、中央のディスク33に接触することなく、互いに接続する。ねじ36を締め付けることで、ディスク31,32はより緊密に互いに引っ張られ、これにより中央のディスク33へのそれらのディスクからの圧力は上昇する。この圧力、したがってディスク31,32,33の間の摩擦が、トルクの作用として動作するクラッチ30により伝達することのできる、すなわち滑りが発生するまでの、最大トルクを決定する。
【0045】
実際には、圧力、したがって過負荷クラッチのクラッチパートナ31,32,33間の摩擦の変更は、殆ど求められず、または全く所望されない。したがって、クラッチ力を変更するために、駆動ハウジング18の構成要素であるカバー39が、初期に取り外される場合にのみねじ36を操作することができる。カバー39は、ねじ40によって固定されている。
【0046】
歯車装置15の第2の実施形態を、以下に、
図6および
図7を参照して説明する。
【0047】
この実施形態では、手持ち式工具10を装着するための工具面38が設けられた駆動エレメント35と、トルクの作用として動作するクラッチ30とは、クラッチモジュール41の構成要素である。クラッチモジュール41は、駆動ハウジング18に取り外し可能に装着される。歯車装置15の個々の部品は、部分的には、支持管8に固定されている駆動ハウジング18内に部分的に位置しており、また部分的には、別個のクラッチモジュール41内に位置している。
【0048】
クラッチモジュール41の1つの構成要素は、ワンピースのまたはマルチピースのハウジング45である。ハウジング45には、その内部で回転可能な駆動エレメント35から離れたところに形状接続的な接続エレメント42が設けられており、これは、ハウジング45側面に堅固に構成された例えば四角形の部材である。
図6によれば、クラッチモジュール41が駆動ハウジング18に装着される場合に、形状接続的な接続エレメント42は、ピニオン(
図4)として構成された歯車エレメント37上の対応する嵌合構造に係合する。
【0049】
トルクの作用として動作するクラッチ30は、第2の実施形態では、2つの円錐摩擦面によって動作する。工具面38が設けられている駆動エレメント35は、第1の円錐を有している。この円錐は、過負荷クラッチの第1のクラッチパートナ43を形成する。ワンピースのまたはマルチピースのハウジング45の対応する円錐は、第2のクラッチパートナ44を形成し、この第2のクラッチパートナは、介挿された歯車エレメント37,17を介して回転スリーブ16に間接的に回転接続されている。
【0050】
伝達可能なトルクは調節可能であって、そのために、ばねエレメント48が、第1の端部で駆動エレメント35に支持され、第2の端部でハウジング45におけるスプリングシートに支持されている。ばねエレメント48のねじれを防止するために、ハウジング側面におけるばねエレメント48は、ハウジング45に対して直接支持されているのではなく、ハウジング45に支持されている軸方向の支持部49に対して支持されている。
【0051】
スプリングシートの間隔、したがってばねエレメント48の長さは調節可能である。このために、ハウジング45は2つに分割されており、ねじ47によって互いにねじ固定されるハウジング部品45A,45Bから成っている。
【0052】
記載した2つの実施形態では、歯車装置15の歯車エレメントには、回転角度センサを設けることができる。この回転角度センサは、ナット3を締付ける過程で、最大トルク値に達するまでに動いた合計の回転角度を検出する。検出される回転角度は、回転スリーブ16の、すなわちナット3自体の回転角度であってよく、または歯車装置15の回転歯車エレメントの1つが動いた回転角度であってもよい。このようにして検出された角度値を、ドキュメンテーションモジュールに格納することもできる。
【符号の説明】
【0053】
2 ねじ山付きボルト
2A ねじ山付き端部
3 ナット、ねじ山付きナット
5 機械部品
5A 支持部
6 機械部品
7 シリンダハウジング
8 支持管
10 手持ち式工具
11 締付け装置
12 交換ブシュ
13 雌ねじ山
14 多角形駆動エレメント
15 歯車装置
16 連行エレメント、回転スリーブ
17 歯車エレメント
18 駆動ハウジング
20 油圧接続部
21 作動室
25 ピストン
27 段部
28 開口
30 トルクの作用として動作するクラッチ
31 ディスク、第2のクラッチパートナ
32 ディスク、第2のクラッチパートナ
33 ディスク、第1のクラッチパートナ
35 駆動エレメント
36 ねじ
37 歯車エレメント
38 工具面
39 カバー
40 ねじ
41 クラッチモジュール
42 形状接続的な接続エレメント
43 円錐、第1のクラッチパートナ
44 円錐、第2のクラッチパートナ
45 ハウジング
45A ハウジング部品
45B ハウジング部品
47 ねじ
48 ばねエレメント
49 軸方向の支持部