(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】接着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/35 20180101AFI20240912BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20240912BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20240912BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C09J7/35
C09J133/00
C09J133/14
H01L21/52 E
(21)【出願番号】P 2020103206
(22)【出願日】2020-06-15
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大西 謙司
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄大
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】高本 尚英
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-063551(JP,A)
【文献】特開2011-127073(JP,A)
【文献】特開2015-134841(JP,A)
【文献】特開2017-137453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物を備える接着シートであって、
前記樹脂組成物が、熱硬化性樹脂
と無機フィラーとを有し、
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ基を有するアクリル樹脂を含み、
前記無機フィラーの含有量が、15~50質量%であり、
前記無機フィラーのD50が、5~30nmであり、
熱硬化後の前記樹脂組成物の厚み20μmのシートの平行線透過率が、波長350nmの光において80%以上であり、
熱硬化前における25℃の引張貯蔵弾性率が10MPa~3,000MPaである、接着シート。
【請求項2】
熱硬化前における100℃のせん断貯蔵弾性率が5kPa~800kPaである、請求項1に記載の接着シート。
【請求項3】
熱硬化後の前記樹脂組成物は、120℃でのSiウエハへの接着力が0.5MPa以上である、請求項1又は2に記載の接着シート。
【請求項4】
熱硬化後における120℃の引張損失弾性率が0.1MPa~5MPaである、請求項1~3の何れか1項に記載の接着シート。
【請求項5】
熱硬化後における250℃の引張貯蔵弾性率が0.5MPa~150MPaである、請求項1~4の何れか1項に記載の接着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス部材同士の接着などに、エポキシ樹脂とアクリル樹脂とを含む接着シートが用いられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、紫外線センサーにおけるガラス部材を他の部材に接着させる際に、接着シートを用い得るが、接着シートを用いる箇所によっては、接着シートが紫外線センサーの感度に影響し得る。
従って、紫外線の透過性に優れた接着シートが求められ得る。
【0005】
そこで、本発明は、熱硬化後において紫外線の透過性に優れた接着シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る接着シートは、樹脂組成物を備える接着シートであって、
前記樹脂組成物が、熱硬化性樹脂を有し、
熱硬化後の前記樹脂組成物の厚み20μmのシートの平行線透過率が、波長350nmの光において80%以上である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、熱硬化後において紫外線の透過性に優れた接着シートを提供し得る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る接着シートの一実施形態について説明する。
【0009】
本実施形態に係る接着シートは、樹脂組成物で構成されている。
前記樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含む有機成分を備える。
また、本実施形態に係る接着シートは、無機フィラーを含む無機成分を備えてもよい。
本実施形態に係る接着シートは、樹脂組成物で構成された単層構造となっている。
【0010】
前記有機成分は、熱硬化性樹脂を有する。
また、前記有機成分は、酸化防止剤を含有してもよい。
さらに、前記有機成分は、シランカップリング剤を含有してもよい。
【0011】
本実施形態に係る接着シートは、熱硬化後の前記樹脂組成物の厚み20μmのシートの平行線透過率が、波長350nmの光において、80%以上であることが重要であり、91%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましい。
前記平行線透過率は、全光線透過率と拡散透過率とを測定して以下の式にて算出することができる。
平行線透過率(%) = 全光線透過率(%)-拡散透過率(%)
なお、全光線透過率及び拡散透過率は、JIS K7105(旧;現在廃止)(ISO 13468-2:1999)に基づいて、硬化後の前記樹脂組成物の厚み20μmのシートたる試料に対して測定した値であり、次のようにして測定することができる。
即ち、積分球に光を通過する入口開口と出口開口を設け、入口開口部に試料を設置し、出口開口部に反射板を取り付けることにより、試料に試料の厚み方向で光を入射して、試料から出射された光をすべて積分球で検知することを可能とした装置を用意する。
次に、出口開口部の反射板を取り除いて、試料に試料の厚み方向で光を入射して、試料から出射された全光線のうち光の進行方向以外の光を検知する。そして、試料に入射する光の強度(入射光強度)に対する、この検知された光強度の比(検知された光強度/入射光強度)を求める。この比(検知された光強度/入射光強度)を拡散透過率とする。
また、出口開口部の反射板を取り除くことなく、試料に試料の厚み方向で光を入射して、試料から出射された全光線を検知する。そして、試料に入射する光の強度(入射光強度)に対する、この検知された光強度の比(検知された光強度/入射光強度)を求める。この比(検知された光強度/入射光強度)を全光線透過率とする。
例えば、全光線透過率と拡散透過率とは、V-670DS(JASCO社製)によって測定することができる。
【0012】
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ基を有するアクリル樹脂を含むことが好ましい。
前記有機成分は、前記アクリル樹脂を、90~100質量%含むことが好ましく、95~100質量%含むことがより好ましい。
本実施形態に係る接着シートは、前記有機成分が前記アクリル樹脂を90質量%以上含むことにより、熱硬化後において紫外線の透過性に優れたものとなる。
また、本実施形態に係る接着シートは、前記アクリル樹脂がエポキシ基を有することから、該アクリル樹脂どうしが加熱によりエポキシ基で硬化反応することができ、その結果、接着シートとして機能することができる。
【0013】
また、本実施形態に係る接着シートは、前記アクリル樹脂がエポキシ基を有することで、芳香環を有する硬化剤(例えば、フェノール樹脂、芳香環を有するエポキシ樹脂など)を実質的に備えなくても、接着シートとして機能することができる。
芳香環は、紫外線の透過性を低下させるものである。よって、このことからも、本実施形態に係る接着シートは、熱硬化後において紫外線の透過性に優れたものとなる。
本実施形態に係る接着シートは、芳香環を有する硬化剤を実質的に備えないことが好ましい。
【0014】
前記アクリル樹脂は、構成単位として、エポキシ基を有するモノマーを有することが好ましい。
エポキシ基を有するモノマーとしては、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0015】
前記アクリル樹脂におけるエポキシ当量は、好ましくは300~1500、より好ましくは300~1100である。
本実施形態に係る接着シートは、前記アクリル樹脂におけるエポキシ当量が1500以下であることにより、接着力を高め得る。
また、本実施形態に係る接着シートは、前記アクリル樹脂におけるエポキシ当量が300以上であることにより、硬化前での保存性が良好となる。具体的には、本実施形態に係る接着シートは、前記アクリル樹脂におけるエポキシ当量が300以上であることにより、硬化前にエポキシ基が反応して特性が変化することを抑制し得る。
ここで、樹脂組成物は硬化により固くなりすぎると、高温高湿下で接着シートに局所的に応力がかかってしまって、接着シートが被着体から剥離されてしまうおそれがある。
しかし、本実施形態に係る接着シートは、前記アクリル樹脂におけるエポキシ当量が300以上であることにより、樹脂組成物が硬化により固くなりすぎるのが抑制され、その結果、被着体から剥離されるのを抑制し得る。
【0016】
前記アクリル樹脂におけるエポキシ当量は、「1当量のエポキシ基を含むアクリル樹脂の質量」を意味する。
前記アクリル樹脂におけるエポキシ当量は、前記アクリル樹脂に含まれる、エポキシ基を有するモノマーごとの含有割合から求めることができる。
例えば、アクリル樹脂を構成するモノマーのうち、エポキシ基を有するモノマーが、グリシジルメタクリレート(GMA)(分子量:142、1分子中のエポキシ基の数:1)のみであり、アクリル樹脂におけるグリシジルメタクリレート(GMA)の含有割合が42質量%である場合は、前記アクリル樹脂におけるエポキシ当量以下のようにして求めることができる。
142/1/(42質量%÷100質量%) = 338
【0017】
前記アクリル樹脂は、エポキシ基を有するモノマーを、好ましくは10~50質量%、より好ましくは16~40質量%含有する。
本実施形態に係る接着シートは、前記アクリル樹脂が、エポキシ基を有するモノマーを10質量%以上含有することにより、接着力を高め得る。
また、本実施形態に係る接着シートは、前記アクリル樹脂が、エポキシ基を有するモノマーを50質量%以下含有することにより、硬化前での保存性が良好となる。具体的には、本実施形態に係る接着シートは、前記アクリル樹脂が、エポキシ基を有するモノマーを50質量%以下含有することにより、硬化前にエポキシ基が反応して特性が変化することを抑制し得る。
ここで、樹脂組成物は硬化により固くなりすぎると、高温高湿下で接着シートに局所的に応力がかかってしまって、接着シートが被着体から剥離されてしまうおそれがある。
しかし、本実施形態に係る接着シートは、前記アクリル樹脂が、エポキシ基を有するモノマーを50質量%以下含有することにより、樹脂組成物が硬化により固くなりすぎるのが抑制され、その結果、被着体から剥離されるのを抑制し得る。
【0018】
前記アクリル樹脂に含まれる、エポキシ基を有するモノマー以外の構成単位としては、炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー等が挙げられる。また、その他にも、アクリルアミド、アクリロニトリル等も挙げられる。
【0019】
上記炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおける「アルキル」としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、イソオクチル、ノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル(ラウリル)、トリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルにおける「シクロアルキル」としては、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸アリールエステルにおける「アリール」としては、例えば、フェニル、ベンジルが挙げられる。
【0020】
上記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。
【0021】
上記酸無水物モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0022】
上記ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
上記スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
【0024】
上記リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等が挙げられる。
【0025】
前記アクリル樹脂に含まれる、上記エポキシ基を有するモノマー以外の構成単位は、一種のみであってもよいし、二種以上であってもよい。
【0026】
前記アクリル樹脂に含まれる、エポキシ基を有するモノマー以外の構成単位としては、接着シートのタック性を調整しやすいという観点、及び、熱硬化後において接着シートが紫外線の透過性に優れるという観点から、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0027】
前記アクリル樹脂は、脂肪族系樹脂であることが好ましい。
【0028】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸を含む概念である。
また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートを含む概念である。
【0029】
前記アクリル樹脂の質量平均分子量は、好ましくは2.0×103~2.9×105、より好ましくは1.0×104~2.0×105である。
本実施形態に係る接着シートは、前記質量平均分子量が2.0×103~2.9×105であることにより、濡れ性、及び、接着性に優れるという利点を有する。
また、本実施形態に係る接着シートは、前記質量平均分子量が2.0×103~2.9×105であることにより、被着体に埋め込むようにして接着させる場合(例えば、表面に凹部を有する被着体の凹部に埋め込むようにして接着させる場合等)に、被着体に十分に埋め込むことができる(以下、「埋め込み性に優れる」ともいう。)という利点を有する。
なお、質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算したものを意味する。
例えば、質量平均分子量は、装置として東ソー社製のGPC「HLC-8320GPC」を用い、カラムとして東ソー社製のカラム「TSK guardcolumn HHR(S)」と、東ソー社製のカラム「TSK GMHHR-H(S)」と、東ソー社製のカラム「TSK GMHHR-H(S)」との合計3本のカラムを直列に繋いだものを用い、リファレンスカラムとして「TSK gel SuperH-RC」を用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、カラム温度40℃、流量0.5ml/分にてGPC測定を行なった結果から計算して、ポリスチレン換算の値として求めることができる。
【0030】
前記熱硬化性樹脂は、保存性の観点や、熱硬化後の紫外線の透過性の観点から、質量平均分子量が2×103以下のものを実質的に含有しないことが好ましい。
前記熱硬化性樹脂は、質量平均分子量が2×103以下のものを実質的に含有しないか否かは、質量平均分子量の測定方法と同じ測定方法で確認することができる。
【0031】
前記樹脂組成物は、無機フィラーを含有する場合、無機フィラーの濡れ性が高まり、その結果、接着性が高まるという観点から、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
【0032】
前記シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ基を有するシランカップリング剤などが挙げられる。
前記シランカップリング剤としては、エポキシ基を有するアクリル樹脂との親和性に優れるという観点から、エポキシ基を有するシランカップリング剤が好ましい。
前記エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(例えば、信越シリコーン社製の「KBM-303」)、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(例えば、信越シリコーン社製の「KBM-402」)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(例えば、信越シリコーン社製の「KBM-403」)、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(例えば、信越シリコーン社製の「KBE-402」)、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(例えば、信越シリコーン社製の「KBE-403」)などが挙げられる。
【0033】
前記樹脂組成物は、無機フィラーを含有する場合、シランカップリング剤を、好ましくは0.1~5.0質量%、より好ましくは0.2~4.0質量%含有する。
前記樹脂組成物は、シランカップリング剤を、0.1質量%以上含有することにより、無機フィラーの濡れ性が高まり、その結果、接着性が高まる。
また、前記樹脂組成物は、シランカップリング剤を、5.0質量%以下含有することにより、アクリル樹脂を多く含むことができ、その結果、熱硬化後における紫外線の透過性がより一層優れたものとなる。
【0034】
前記アクリル樹脂が酸化することで本実施形態に係る接着シートの熱硬化後における紫外線の透過性が低下するのを抑制するという観点から、本実施形態に係る接着シートは、酸化防止剤を含有することが好ましい。
【0035】
前記酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0036】
前記樹脂組成物は、酸化防止剤を、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.1~2質量%含有する。
前記樹脂組成物は、酸化防止剤を0.1質量%以上含有することにより、アクリル樹脂の酸化でアクリル樹脂に炭素-炭素二重結合が生じるのを抑制することができ、その結果、紫外線の透過性が低下するのを抑制することができる。
また、前記樹脂組成物は、酸化防止剤を5質量%以下含有することにより、アクリル樹脂を多く含むことができ、その結果、熱硬化後における紫外線の透過性がより一層優れたものとなり、また、酸化防止剤自体による紫外線の透過性の低下を抑制することができる。
【0037】
本実施形態に係る接着シートは、無機フィラーが有する官能基によって、アクリル樹脂のエポキシ基の反応性を高めることができるという観点から、無機フィラーを含有することが好ましい。
【0038】
前記無機フィラーとしては、シリカ粒子、窒化ホウ素粒子、アルミナ粒子等が挙げられる。
【0039】
前記樹脂組成物は、作業性、接着性、及び、信頼性の観点から、無機フィラーを、好ましくは15~60質量%、より好ましくは20~50質量%含有する。
【0040】
前記樹脂組成物では、作業性、接着性、及び、信頼性の観点から、前記無機フィラーのD50が、好ましくは5~30nm、より好ましくは5~20nmである。
無機フィラーのD50は、横軸を粒子径、縦軸を気泡の体積として描いた体積基準の粒子径の累積頻度分布曲線にて気泡の体積の累積値が50%となる粒子径(D50)を意味する。
なお、無機フィラーのD50は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定することができる。
【0041】
本実施形態に係る接着シートは、厚みが、好ましくは5~200μm、より好ましくは5~180μmである。
【0042】
本実施形態に係る接着シートは、粘着性を抑制して、被着体に当接しやすくするという観点(作業性の観点)から、熱硬化前における25℃の引張貯蔵弾性率が、好ましくは10MPa~3,000MPa、より好ましくは20MPa~2,000MPa、さらに好ましくは30MPa~1,500MPaである。
【0043】
本実施形態に係る接着シートは、熱硬化後の接着性を高めるという観点から、熱硬化後における120℃の引張損失弾性率が、好ましくは0.1MPa~5MPa、より好ましくは0.2MPa~4MPa、さらに好ましくは0.3MPa~3MPaである。
【0044】
本実施形態に係る接着シートは、熱硬化後の接着性を高めるという観点から、熱硬化後における250℃の引張貯蔵弾性率が好ましくは0.5MPa~150MPa、より好ましくは1MPa~100MPa、さらに好ましくは10MPa~90MPaである。
【0045】
引張貯蔵弾性率、及び、引張損失弾性率は、以下のようにして求めることができる。
すなわち、接着シートを熱硬化させ、熱硬化後の接着シートから試験片(長さ:40mm、幅:10mm)を切り出す。
そして、動的粘弾性測定装置(商品名「RSA-III、TA Instruments製)を使用して、測定対象物に対して引張試験を行い、引張貯蔵弾性率、及び、引張損失弾性率を測定する。
この引張試験の条件は、以下の通りである。
測定モード:引張モード
初期チャック間距離:22.5mm
測定温度範囲:0℃から150℃
昇温速度:10℃/分
動的ひずみ:±0.5μm
周波数:10Hz
また、本実施形態における「熱硬化後」とは、「接着シートが十分に硬化するまで加熱した後」を意味する。加熱温度としては、例えば175℃である。
【0046】
本実施形態に係る接着シートは、熱硬化前における100℃のせん断貯蔵弾性率が、好ましくは5kPa~800kPa、より好ましくは6kPa~600kPa、さらに好ましくは7kPa~400kPaである。
本実施形態に係る接着シートは、熱硬化前における100℃のせん断貯蔵弾性率が上記範囲にあることで、濡れ性及び埋め込み性に優れるという利点を有する。
【0047】
せん断貯蔵弾性率は、以下のようにして求めることができる。
すなわち、接着シートを打ち抜いて、円柱状の試料(Φ7.5mm×1mm)を作製する。
そして、前記試料の一方の円形の面に、温度120℃において、周波数1Hzのせん断振動を与えて、他方の円形の面に伝わるせん断振動を測定し、解析することにより、せん断貯蔵弾性率を求める。
せん断振動の測定及び測定値の解析は、例えば、粘弾性測定装置(HAAKE社製、型式:Marsシリーズ)を用いることができる。
【0048】
本実施形態に係る接着シートは、熱硬化後の接着性を高めるという観点から、熱硬化後における120℃のSiウエハへの接着力が、好ましくは0.5MPa以上、より好ましくは0.8MPa以上である。
【0049】
前記接着力は以下のようにして求めることができる。
まず、粘着層と基材層とが積層したダイシングテープを粘着層が上になるように載置する。
次に、ダイシングテープの粘着層の上に接着シートを積層させ、さらに、該接着シートの上にSiウエハ(該Siウエハとしては、例えば、ベアウエハを用いることができる。)(厚み:500μm)の載置し、接着シート及びSiウエハを60℃で加熱することでラミネート加工して、接着シート付のSiウエハを得る。
そして、ダイシング装置を用いて、接着シート付のSiウエハから、5mm×5mmの接着シート付のSiチップを得る。
次に、接着シート付のSiチップを接着シート側でSiウエハ(該Siウエハとしては、例えば、ベアウエハを用いることができる。)(厚み:500μm)に150℃の温度で、接着シート500g当たり2秒の時間(例えば、接着シートが1000gであれば4秒)でボンディングし、加熱(150℃、1時間)により接着シートを十分に硬化させて、測定試料を得る。
そして、120℃でのせん断による接合強度試験により、接着力を測定する。接合強度試験では、例えばDega4000を用いることができる。
【0050】
前記樹脂組成物は、フーリエ変換赤外線吸収分析法(FT-IR)による測定でのカルボニル基に起因する吸光度AbCOに対する芳香環に起因する吸光度AbC6H6の比(AbC6H6/AbCO)は、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.04以下、さらに好ましくは0.03以下である。
芳香環は、紫外線の透過性を低下させるものである。本実施形態に係る接着シートは、前記樹脂組成物がAbC6H6/AbCOが0.05以下であることにより、熱硬化後において紫外線の透過性に優れたものとなる。
また、AbC6H6/AbCOは、通常は、0.01以上である。
【0051】
前記AbC6H6/AbCOは以下のようにして求めることができる。
まず、フーリエ変換赤外線吸収分析法(FT-IR)により前記樹脂組成物の赤外吸収スペクトルを測定する。
測定条件としては以下の通りである。
反射法(ATR法)
波数:500~4000cm-1
積算回数:32回
測定装置としては、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製の「NICOLET380 FT-R」を用いることができる。
そして、得られた赤外吸収スペクトルから、1506cm-1における測定点と、1522cm-1における測定点とを結んだ直線をベースラインとした際の、1506~1522cm-1の波数範囲のピークの最高点における吸光度を読み取り、この吸光度をAbC6H6とする。
また、得られた赤外吸収スペクトルから、1650cm-1における測定点と、1800cm-1における測定点とを結んだ直線をベースラインとした際の、1650~1800cm-1の波数範囲のピークの最高点における吸光度を読み取り、この吸光度をAbCOとする。
【0052】
本実施形態に係る接着シートは、被着体の材質がガラスやSiである場合に特に好適に用いられる。
【0053】
本実施形態の接着シートは、紫外線センサーの構成部材として用いられ得る。
本実施形態の接着シートが用いられ得る紫外線センサーの一例を挙げると次のようなものが挙げられる。
本実施形態の紫外線センサーは、紫外線(UV)を受光する受光面を備えた受光部と、該受光部を直接的又は間接的に覆うカバーシートとを備える。
該カバーシートは、ガラス板などで構成されたカバーシート本体と、本実施形態の接着シートで構成された接着層との少なくとも2層の積層構造を備える。
本実施形態の紫外線センサーは、前記接着層を通じて前記受光部に紫外線を到達させて紫外線を検知し得るように構成されている。
前記接着層は、前記受光面に前記カバーシート本体を接着したり、前記受光部よりも外側の領域に接着したりして前記カバーシートが前記受光部を直接覆うように用いられても、前記カバーシートを前記受光面から離れた状態で支持する支持部材に接着して前記カバーシートが間に空間を設けて間接的に前記受光部を覆うように用いられてもよい。
【0054】
本明細書によって開示される事項は、以下のものを含む。
【0055】
(1)
樹脂組成物を備える接着シートであって、
前記樹脂組成物が、熱硬化性樹脂を有し、
熱硬化後の前記樹脂組成物の厚み20μmのシートの平行線透過率が、波長350nmの光において80%以上である、接着シート。
【0056】
(2)
熱硬化前における25℃の引張貯蔵弾性率が10MPa~3,000MPaである、上記(1)に記載の接着シート。
【0057】
(3)
熱硬化前における100℃のせん断貯蔵弾性率が5kPa~800kPaである、上記(1)又は(2)に記載の接着シート。
【0058】
(4)
熱硬化後の前記樹脂組成物は、120℃でのSiウエハへの接着力が0.5MPa以上である、上記(1)~(3)の何れかに記載の接着シート。
【0059】
(5)
熱硬化後における120℃の引張損失弾性率が0.1MPa~5MPaである、上記(1)~(4)の何れかに記載の接着シート。
【0060】
(6)
熱硬化後における250℃の引張貯蔵弾性率が0.5MPa~150MPaである、上記(1)~(5)の何れかに記載の接着シート。
【0061】
なお、本発明に係る接着シートは、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る接着シートは、上記した作用効果によって限定されるものでもない。さらに、本発明に係る接着シートは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0062】
例えば、本実施形態に係る接着シートは、樹脂組成物で構成された単層構造となっているが、本発明に係る接着シートは、前記樹脂組成物で構成された層と、他の層との積層体となっていてもよい。
【実施例】
【0063】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
以下の実施例は、本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0064】
(実施例1)
アクリル樹脂、無機フィラー、シランカップリング剤、及び、酸化防止剤を下記表1の配合割合で溶媒に溶解して、接着組成物溶液A(固形分濃度:20質量%)を調製した。
なお、アクリル樹脂、無機フィラー、シランカップリング剤、及び、酸化防止剤としては、以下のものを用いた。
アクリル樹脂:構成単位として、グリシジルメタクリレート(GMA)を42質量%、エチルアクリレート(EA)を50質量%、ブチルメタクリレート(BMA)を8質量%含むアクリル樹脂(質量平均分子量:24万)
無機フィラー:シリカ粒子(MEK-ST-40、日産化学社製)
シランカップリング剤:2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM303、信越シリコーン社製)
酸化防止剤:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(Irganox1010、BASFジャパン社製)
溶媒:メチルエチルケトン
また、シリコーンで離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:50μm)をセパレータとして用意した。
そして、前記セパレータの表面(離型処理された側の面)に、前記接着組成物溶液Aを塗布し、130℃で2分間加熱して乾燥させることにより、セパレータ上に接着シート(厚み:20μm)を作製した。
【0065】
(実施例2)
アクリル樹脂、無機フィラー、シランカップリング剤、及び、酸化防止剤を下記表1の配合割合で溶媒に溶解して、接着組成物溶液B(固形分濃度:20質量%)を調製した。
なお、下記の材料以外は、実施例1と同じものを用いた。
アクリル樹脂:構成単位として、グリシジルメタクリレート(GMA)を14質量%、エチルアクリレート(EA)を50質量%、ブチルメタクリレート(BMA)を36質量%含むアクリル樹脂(質量平均分子量:2万)
無機フィラー:シリカ粒子(MEK-EC-2130Y、日産化学社製)
そして、接着組成物溶液Aの代わりに接着組成物溶液Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータ上に接着シート(厚み:20μm)を作製した。
【0066】
(実施例3)
アクリル樹脂、無機フィラー、シランカップリング剤、及び、酸化防止剤を下記表1の配合割合で溶媒に溶解して、接着組成物溶液C(固形分濃度:20質量%)を調製した。
なお、下記の材料以外は、実施例1と同じものを用いた。
アクリル樹脂:構成単位として、グリシジルメタクリレート(GMA)を30質量%、エチルアクリレート(EA)を42質量%、ブチルメタクリレート(BMA)を28質量%含むアクリル樹脂(質量平均分子量:10万)
無機フィラー:シリカ粒子(CHO-ST-M、日産化学社製)
そして、接着組成物溶液Aの代わりに接着組成物溶液Cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータ上に接着シート(厚み:20μm)を作製した。
【0067】
(比較例1)
アクリル樹脂、硬化剤たるフェノール樹脂、無機フィラー、シランカップリング剤、及び、酸化防止剤を下記表1の配合割合で溶媒に溶解して、接着組成物溶液D(固形分濃度:20質量%)を調製した。
なお、下記の材料以外は、実施例1と同じものを用いた。
アクリル樹脂::構成単位として、グリシジルメタクリレート(GMA)を12質量%、エチルアクリレート(EA)を52質量%、ブチルメタクリレート(BMA)を36質量%含むアクリル樹脂(質量平均分子量:30万)
フェノール樹脂:MEHC-7800H、明和化成社製
無機フィラー:シリカ粒子(SC25R、アドマテックス社製)
そして、接着組成物溶液Aの代わりに接着組成物溶液Dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータ上に接着シート(厚み:20μm)を作製した。
【0068】
(比較例2)
アクリル樹脂、硬化剤たるフェノール樹脂、硬化剤たるエポキシ樹脂、及び、無機フィラーを下記表1の配合割合で溶媒に溶解して、接着組成物溶液E(固形分濃度:20質量%)を調製した。
なお、下記の材料以外は、実施例1と同じものを用いた。
アクリル樹脂::構成単位として、グリシジルメタクリレート(GMA)を12質量%、エチルアクリレート(EA)を52質量%、ブチルメタクリレート(BMA)を36質量%含むアクリル樹脂(質量平均分子量:30万)
フェノール樹脂:MEHC-7800H、明和化成社製
エポキシ樹脂:HP-7200、DIC社製
無機フィラー:シリカ粒子(MEK-ST-ZL、日産化学社製)
そして、接着組成物溶液Aの代わりに接着組成物溶液Eを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータ上に接着シート(厚み:20μm)を作製した。
【0069】
アクリル樹脂の質量平均分子量は、上述した方法で求めた。
【0070】
「無機フィラーの平均粒子径」、「熱硬化後における平行線透過率(350nm)」、「熱硬化前における25℃の引張貯蔵弾性率」、「熱硬化前における100℃のせん断貯蔵弾性率」、「熱硬化後における120℃のSiウエハへの接着力」、「熱硬化後における120℃の引張損失弾性率」、「熱硬化後における250℃の引張貯蔵弾性率」、「AbCO」、「AbC6H6」、及び、「AbC6H6/AbCO」は、上述した方法で求めた。
これらの値を下記表1に示す。
【0071】
<熱硬化前における埋め込み性の試験>
接着シートをガラス板の片面に張り付けた。
次に、表面に凹部及び凸部を有する基板に、接着シート付きのガラス板をボンディングさせた。
そして、基板の凹部への接着シートの埋め込み性を確認すべく、ガラス板側から接着シートを顕微鏡で撮影し(10mm角の範囲)、画像を得た。
次に、解析ソフトでこの画像を二値化処理して、凹部の全面積に対する、凹部に接着シートが埋め込まれている部分の全面積の比率((凹部に接着シートが埋め込まれている部分の全面積/凹部の全面積)×100)(%)を求め、以下の基準で評価を行った。
〇:80%以上
×:80%未満
結果を下記表1に示す。
【0072】
<熱硬化後におけるTCTによる剥離試験>
接着シートをミラーチップ(9.5mm角)に60℃下で貼り付けた。
次に、温度120℃、圧力0.1MPa、時間2秒の条件下で、ミラーチップ付きの接着シートを接着シート側でガラス板にボンディングして、試料を得た。
そして、加圧オーブンで試料を150℃、0.7MPa下で1時間加熱処理した。
その後、TCT装置(温度サイクル試験装置)により、加熱処理した試料を、-40℃~125℃の間で加熱及び冷却を1000回繰り返した(1サイクル:30分)。
次に、接着シートがミラーチップから剥離しているか否か目視で確認した。
そして、以下の基準で評価を行った。
〇:剥離なし
×:剥離あり
結果を下記表1に示す。
【0073】
<熱硬化後におけるリフロー時の剥離試験>
接着シートをミラーチップ(9.5mm角)に60℃下で貼り付けた。
次に、温度120℃、圧力0.1MPa、時間2秒の条件下で、ミラーチップ付きの接着シートを接着シート側でガラス板にボンディングして、試料を得た。
そして、加圧オーブンで試料を150℃、0.7MPa下で1時間加熱処理した。
その後、加熱処理した試料を、温度30℃、湿度60%RH下に72時間置いて、該試料を吸湿させた。
次に、260℃以上の温度を10秒間保持できるように設定されたIRリフロー炉に、前記吸湿した試料を通した。
その後、実施例及び比較例それぞれにおいて、9個の試料に対して上記試験を実施し、各試料において、接着シートがミラーチップから剥離しているか否か目視で確認し、剥離が生じたものの個数を数えた。
結果を下記表1に示す。
【0074】