(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】アルミニウム電解コンデンサ用セパレータ及びアルミニウム電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/02 20060101AFI20240912BHJP
H01G 9/028 20060101ALI20240912BHJP
H01G 9/145 20060101ALI20240912BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01G9/02
H01G9/028 E
H01G9/145
H01G9/15 100
(21)【出願番号】P 2020139532
(22)【出願日】2020-08-20
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390032230
【氏名又は名称】ニッポン高度紙工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石ケ休 正樹
(72)【発明者】
【氏名】村岡 拓也
(72)【発明者】
【氏名】越智 貴史
(72)【発明者】
【氏名】熊岡 弘倫
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-183235(JP,A)
【文献】特開2019-149457(JP,A)
【文献】特開2006-019094(JP,A)
【文献】米国特許第06980076(US,B1)
【文献】特開2018-181733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/02
H01G 9/028
H01G 9/145
H01G 9/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極の間に介在し、陰極材料として導電性高分子を有するアルミニウム電解コンデンサに用いる、アルミニウム電解コンデンサ用セパレータであって、
該セパレータは、合成繊維とバインダーとからなり、
前記合成繊維は、フィブリル化合成繊維と非フィブリル化合成繊維とからなり、
前記セパレータは、前記合成繊維を70~95質量%、前記バインダーを5~30質量%含有し、かつ、前記セパレータの全体質量のうち、前記フィブリル化合成繊維を20~70質量%、前記非フィブリル化合成繊維を10~75質量%含有し、
厚さが20~100μm、密度が0.2~0.6g/cm
3
であり、
前記フィブリル化合成繊維は、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維のいずれか1種以上から選択される繊維のみを含有し、
前記非フィブリル化合成繊維は、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維のいずれか1種以上から選択される繊維のみを含有し、
破裂強さが40~180kPa、比破裂強さが3.5~7.5kPa/(g/m
2)
、引張弾性率が500~1710MPaである
ことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用セパレータ。
【請求項2】
陰極材料として導電性高分子を用いたアルミニウム電解コンデンサであって、
請求項1に記載のセパレータを用いたことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム電解コンデンサ用セパレータ及び該セパレータを用いたアルミニウム電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器や自動車電装機器の高機能化が進んでいる。そのため、これらの機器に用いられるコンピュータの高速化が求められている。コンピュータの高速化の鍵となるのがCPUの処理速度の高速化である。CPUの処理速度の高速化により、動作周波数が一段と高くなっている。そのため、電源回路に使用されるコンデンサには、高周波での特性向上が求められている。
【0003】
陰極材料に電解液を用いたアルミニウム電解コンデンサ(以下、「非固体電解コンデンサ」と称す)では、高周波特性の向上が難しい。そのため、陰極材料に導電性高分子を用いたアルミニウム電解コンデンサ(以下、「固体電解コンデンサ」と称す)が上市されている。固体電解コンデンサは、非固体電解コンデンサに比べて、ESR(等価直列抵抗)が低く、また高周波特性に優れる、という特徴がある。
また近年、陰極材料に導電性高分子と電解液とを共に使用したアルミニウム電解コンデンサ(以下、「ハイブリッド電解コンデンサ」と称す)が上市されている。ハイブリッド電解コンデンサは、非固体電解コンデンサと固体電解コンデンサの両方の特徴を備えている。つまり、非固体電解コンデンサ並の容量特性でありながら、固体電解コンデンサ並の低ESRであることが特徴である。
【0004】
導電性高分子の伝導機構は電子伝導であり、伝導機構がイオン伝導である電解液と比べ高伝導度を示す。そのため、陰極材料に導電性高分子を用いた固体電解コンデンサ及びハイブリッド電解コンデンサ(以下、固体電解コンデンサ及びハイブリッド電解コンデンサを総称して「導電性高分子コンデンサ」とする)は、非固体電解コンデンサよりも低ESRとすることができる。
【0005】
固体電解コンデンサは、非固体電解コンデンサと異なり、陰極材料に電解液を使用しておらず、電解液が封口部より蒸散することがないため、長寿命とすることができる。固体電解コンデンサは特に、メンテナンスの頻度を少なくすることが求められる、無線通信基地局やデータセンター向けサーバー等の用途での採用が広がっている。
また、ハイブリッド電解コンデンサは、部品点数の削減、省スペース化、軽量化の観点から、様々な用途に使用されている。なかでも、電動パワーステアリングや先進運転支援システム等の自動車用途では、使用する部品に対して、安全性や信頼性が重視されている。そのため、装填部品には、故障した場合に安全に寿命を迎えることが求められる。ハイブリッド電解コンデンサは、故障モードがオープンであることから、自動車用途での採用が拡大している。
【0006】
導電性高分子コンデンサの導電性高分子層の形成方法には、二つの手法がある。一つは、電極箔とセパレータとを共に巻回した素子に、導電性高分子の重合液(モノマーと酸化剤溶液)を含浸させた後、素子中で重合し、導電性高分子層を形成する手法(以下、「重合液タイプ」と称す)である。もう一つは、巻回した素子に、導電性高分子の分散液(導電性高分子を分散質とした分散液)を含浸させた後、乾燥させ、分散媒を除去することで、導電性高分子層を形成する手法(以下、「分散液タイプ」と称す)である。
分散液タイプの導電性高分子コンデンサは、重合液タイプの導電性高分子コンデンサに比べ、耐電圧特性が良好といわれており、50~60V程度の定格電圧が求められる用途に使用されている。しかし、重合液タイプ、分散液タイプともに、耐電圧が不足するために適用できない回路があり、従来よりも定格電圧の高い導電性高分子コンデンサが求められている。
これらのことから、導電性高分子コンデンサには、非固体電解コンデンサと比べたときの特徴である低ESRを維持しながら、耐電圧特性の向上、つまり、ショート不良の発生を抑制することが求められている。そして、使用されるセパレータには、導電性高分子の重合液や分散液の含浸性、保持性が良好でありながら、耐ショート性を向上することが求められている。
【0007】
導電性高分子コンデンサに用いられるセパレータとして、セルロース製セパレータがある。一般に、セルロース製セパレータは、素子作製後に炭化処理を施して使用される。これには、主に二つの目的がある。一つは、セルロース製セパレータに炭化処理を施すことで、セルロースの水酸基と酸化剤との反応を抑制することである。もう一つは、炭化処理によりセパレータを構成する繊維間の空隙が増加するため、導電性高分子の重合液や分散液の含浸性、保持性を向上させることである。
【0008】
セルロース製セパレータの炭化処理には、上記の効果がある一方で、炭化処理でかかる熱によりセルロースの熱分解が起こり、この熱分解によってセパレータの機械的強度が低下してしまう。さらに、セルロース分子は酸性条件下で徐々に分解されるため、酸性である導電性高分子の重合液や分散液を素子に含浸することによっても、セパレータの機械的強度の低下が顕著となる。
【0009】
このようなセルロース製セパレータの問題点を回避するために、合成繊維を配合したセパレータが使用されており、例えば、特許文献1乃至4の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2004-235293号公報
【文献】特開2018-73895号公報
【文献】特開2019-176074号公報
【文献】特開2004-146137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1には、合成繊維として、非フィブリル化有機繊維、融点または熱分解温度が250℃以上のフィブリル化高分子を含有し、吸水速度5mm/min以上であるセパレータが開示されている。このセパレータを用いることで、固体電解コンデンサ内の導電性高分子の形成が均一になり、固体電解コンデンサのESRを低減することができるとされている。
【0012】
特許文献1のセパレータは、非常に細く且つアスペクト比の大きいフィブリル化高分子を用いている。そのため、セパレータ中の繊維本数を大幅に増加させ、フィブリル化高分子同士や他の繊維との絡み合う頻度を高めることで、セパレータを緻密にすることができる。
【0013】
しかしながら、特許文献1のような緻密なセパレータであっても、引張強さや引裂強さ等の機械的強度が弱く、ショート不良の発生を抑制できない場合があった。特許文献1のセパレータの耐ショート性を向上するために、フィブリル化高分子の含有率を高めると、セパレータの緻密性が過度に高くなり、導電性高分子の重合液や分散液の含浸性が悪化し、ESRを低減することができない。
【0014】
特許文献2には、平均孔径が0.5~15μmの範囲であり、かつ、70℃のイオン交換水に30分間浸漬した後の湿潤引張強さが0.30kN/m以上である合成繊維からなる湿式不織布が開示されている。平均孔径を0.5~15μmの範囲内に制御し、かつ、70℃のイオン交換水に30分間浸漬した後の湿潤引張強さを0.3kN/m以上とすることで、セパレータの緻密性が担保され、再化成工程でのセパレータの形状が維持できるとされている。そのため、アルミニウム電解コンデンサのショート不良の発生を抑制することができる。
【0015】
特許文献3には、ポリエステル主体繊維、ポリエステルバインダー、ポリビニルアルコールバインダーを含有し、かつ、平均孔径が5.0~20.0μm、5.0~15.0μmの範囲の孔径頻度が全孔径の70%以上、20.0μm以上の孔径頻度が10%以下の湿式不織布が開示されている。この構成により、セパレータを構成する繊維同士の間隙を均質化できるため、セパレータの耐ショート性を高めつつ、導電性高分子の重合液や分散液の含浸性を高めることができるとされている。そのため、このセパレータを用いたアルミニウム電解コンデンサでは、静電容量の向上とショート不良率の低減とを同時に達成できるとある。
【0016】
特許文献2及び特許文献3に記載されたセパレータは、セパレータの平均孔径の制御によって、ショート不良の発生を抑制することが可能である。しかし、これらのセパレータであっても、ESRの悪化を抑えながら、ショート不良の発生を抑制することが困難であった。
【0017】
特許文献2及び特許文献3に記載されたセパレータは、緻密性や均質性が高く、コンデンサのショート不良の低減に寄与できるとあるが、セパレータの引張強さや引裂強さ等の機械的強度が弱い場合や、導電性高分子の重合液や分散液を含浸、保持するための空隙が狭い場合があった。そのため、セパレータの平均孔径を制御するだけでは、導電性高分子の重合液や分散液の含浸性、保持性と、耐ショート性とを両立させることができないことが判明した。
【0018】
特許文献4には、融点または熱分解温度が250℃以上で、少なくとも一部が繊維径1μm以下、且つ、重量平均繊維長が0.2~2mmの範囲にあるフィブリル化高分子、繊度3.3dtex以下の有機繊維を含有する不織布であり、体積抵抗率が1×1011Ω・cm以上である電気化学素子用セパレータが開示されている。この構成により、緻密で体積抵抗率の高いセパレータが得られるとある。そして、このセパレータを用いたアルミニウム電解コンデンサは、内部抵抗が低く、高速充放電特性に優れると記載されている。
【0019】
しかしながら、特許文献4に記載されたセパレータのように、緻密で、コンデンサの内部抵抗を低減できるセパレータであっても、引張強さや引裂強さ等の機械的強度が弱く、低ESRとしながら、ショート不良の発生を抑制することができない。
【0020】
導電性高分子コンデンサを含むアルミニウム電解コンデンサの素子巻回時、及び巻回後の素子巻内部では、セパレータに様々な方向の、種々の力が加わっている。例えば、セパレータの縦方向(MD方向:抄紙機で抄造する場合、進行方向に並行なセパレータの方向)にかかる力、巻回物である素子の中心部から外縁部に向かって広がろうとする力、タブや電極箔のバリ等の凹凸から圧迫される力、などがある。ここで、アルミニウム電解コンデンサの耐電圧を高める手段として、陽極箔表面に形成する酸化皮膜の厚さを厚くすることが知られている。酸化皮膜が厚くなると、陽極箔自体の厚さが厚くなるため、セパレータにかかる上記のような力はより大きくなる。
【0021】
従来のセパレータでは、これらの様々な方向の、種々の力が加わることで、セパレータを構成する繊維間の結合が切れる場合や、繊維が動くことで粗密のムラができ、本来繊維があった箇所に繊維がなくなる等の部分的な欠損が生じる問題があった。この欠損により、部分的に陽極箔と陰極箔との隔離が不十分となり、ショート不良が発生することがわかった。
【0022】
上記のようなセパレータの部分的な欠損の発生を抑制するために、セパレータを緻密にする、または、繊維同士の結合面積を大きくすると、セパレータを構成する繊維間の空隙が狭くなる。そのため、コンデンサのショート不良の発生を抑制することができても、導電性高分子の重合液や分散液の含浸性、保持性が悪化し、ESRの悪化を抑制することができなかった。
【0023】
本発明の発明者らが鋭意検討した結果、導電性高分子の重合液や分散液の含浸性、保持性の維持と、セパレータの耐ショート性の向上とを両立するためには、素子巻回時、及び巻回後の素子巻内部でセパレータにかかる様々な方向の、種々の力に対する安定性を高めることが重要であることを見出した。つまり、様々な方向の、種々の力に対する安定性を高めることで、部分的な欠損の発生を抑制することができる。
【0024】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、導電性高分子の重合液や分散液の含浸性、保持性を維持しながら、素子巻回時、及び巻回後の素子巻内部でセパレータにかかる様々な方向の、種々の力に対する安定性を向上することで、セパレータに生じる部分的な欠損を抑制し、セパレータの耐ショート性を向上させることを目的とする。また、このセパレータを用いた導電性高分子コンデンサのESRを従来の導電性高分子コンデンサより悪化させずに、ショート不良の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明に係るセパレータは、上記課題を解決することを目的としてなされたものであり、例えば、以下の構成を備える。
即ち、一対の電極の間に介在し、陰極材料として導電性高分子を有するアルミニウム電解コンデンサに用いる、アルミニウム電解コンデンサ用セパレータであって、該セパレータは、合成繊維とバインダーとからなり、合成繊維は、フィブリル化合成繊維と非フィブリル化合成繊維とからなり、セパレータは、合成繊維を70~95質量%、バインダーを5~30質量%含有し、かつ、セパレータの全体質量のうち、フィブリル化合成繊維を20~70質量%、非フィブリル化合成繊維を10~75質量%含有し、厚さが20~100μm、密度が0.2~0.6g/cm
3
であり、フィブリル化合成繊維は、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維のいずれか1種以上から選択される繊維のみを含有し、非フィブリル化合成繊維は、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維のいずれか1種以上から選択される繊維のみを含有し、破裂強さが40~180kPa、比破裂強さが3.5~7.5kPa/(g/m2)、引張弾性率が500~1710MPaであることを特徴とする。
【0027】
また、本発明のアルミニウム電解コンデンサは、陰極材料として導電性高分子を用い、セパレータとして上記本発明のセパレータを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、上記した課題を解決する構成を備えることにより、導電性高分子の重合液や分散液の含浸性、保持性を維持しながら、素子巻回時、及び巻回後の素子巻内部でセパレータにかかる様々な方向の、種々の力に対する安定性を有したセパレータが得られる。
本発明のセパレータを用いた導電性高分子コンデンサは、低ESRでありながらショート不良の発生を抑制できる。さらに、導電性高分子コンデンサの高耐電圧化に寄与できる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
本発明では、素子巻回時、及び巻回後の素子巻内部で生じる、セパレータの部分的な欠損に注目し、合成繊維とバインダーとを用いて、素子巻回時、及び巻回後の素子巻内部でセパレータにかかる様々な方向の、種々の力に対する安定性を向上した。
【0030】
セパレータの緻密性や均質性を向上させることで耐ショート性を高めてきた、従来のセパレータでは、低ESRとショート不良の発生を抑制することとの両立に限界があった。本発明のセパレータは、セパレータにかかる様々な方向の、種々の力に対する安定性を向上することで、導電性高分子の重合液や分散液の含浸性、保持性を阻害することなく、耐ショート性の向上を達成することができる。
【0031】
本発明の発明者らが鋭意検討した結果、セパレータの破裂強さ及び比破裂強さを一定の範囲に制御することで、導電性高分子の重合液や分散液の含浸性、保持性を維持しながら、部分的な欠損が発生することなく、耐ショート性を高めることが可能であることがわかった。また、本発明のセパレータを用いた導電性高分子コンデンサは、低ESRとショート不良の発生を抑制することとを同時に達成できることを見出し、本発明に至った。
【0032】
本発明を実施するための形態では、素子巻回時、及び巻回後の素子巻内部でセパレータにかかる様々な方向の、種々の力に対する安定性の指標として、破裂強さ、及び破裂強さをセパレータの坪量で除した比破裂強さ、を用いた。
【0033】
破裂強さは、引張強さや引裂強さのように、一定方向の力をかけた場合の機械的強度とは異なり、同時に複数方向から力をかけた場合の耐性を測ることができる。引張強さや引裂強さのような一定方向の機械的強度が強いセパレータであっても、破裂強さが強いとは限らず、他の方向から力が加わった場合に、セパレータを構成する繊維同士の結合が切れる、本来繊維があるべき箇所から繊維が移動する、等により、部分的な欠損が生じる場合がある。
【0034】
また、破裂強さに加えて、比破裂強さを用いることで、セパレータを構成する繊維同士の結合の強さの指標とすることができる。比破裂強さは坪量当りの破裂強さを表すため、比破裂強さを比較することで、セパレータを構成する繊維同士の絡みの程度や結合面積の大小を比較することができる。比破裂強さが一定の範囲内であれば、セパレータを構成する繊維同士の絡みの程度や結合面積が制御されていることがわかる。
繊維同士の絡みが少ないほど、または、結合面積が小さいほど、セパレータを構成する繊維同士の結合が切れやすくなり、本来繊維があるべき箇所から繊維が移動する等により部分的な欠損が生じる場合がある。反対に、繊維同士の絡みが多くなるほど、または、結合面積が大きくなるほど、導電性高分子の重合液や分散液がセパレータ内部に浸透しにくくなる。
【0035】
上記のことから、破裂強さと、比破裂強さとを一定の範囲に制御することで、導電性高分子の重合液や分散液の含浸性、保持性を維持しながら、素子巻回時、及び巻回後の素子巻内部でセパレータにかかる様々な方向の、種々の力への安定性を向上したセパレータを提供できる。
【0036】
本発明を実施するための形態のセパレータは、例えば一対の電極の間に介在し、陰極材料として導電性高分子を有するアルミニウム電解コンデンサに用いる、アルミニウム電解コンデンサ用セパレータであって、該セパレータは、破裂強さが40~180kPa、比破裂強さが3.5~7.5kPa/(g/m2)とする。好ましくは破裂強さ50~160kPa、比破裂強さ4.0~7.0kPa/(g/m2)とする。
【0037】
本発明を実施するための形態のセパレータでは、破裂強さを40~180kPa、比破裂強さを3.5~7.5kPa/(g/m2)とすることで、素子巻回時、及び巻回後の素子巻内部でセパレータにかかる様々な方向の、種々の力に対する安定性を向上することができる。また、導電性高分子の重合液や分散液を含浸、保持するために必要な、セパレータを構成する繊維間の空隙を有することができる。
これにより、セパレータの部分的な欠損が生じることなく、導電性高分子の重合液や分散液の含浸性、保持性の維持と、耐ショート性の向上とを両立することができる。
【0038】
破裂強さが40kPa未満の場合、素子巻回時、及び巻回後の素子巻内部でセパレータにかかる様々な方向の、種々の力に耐えることができず、セパレータを構成する繊維同士の結合が切れる、繊維が動き粗密のムラができる、等によって、セパレータに部分的な欠損が生じる。そのため、陽極箔と陰極箔との隔離が不十分となり、例えば、電極箔のバリがセパレータを貫通することや、タブがセパレータを圧縮し、破損することにより、ショート不良が発生する。
導電性高分子コンデンサに適用可能なセパレータの厚さ、密度から判断すると、破裂強さは180kPaが上限となる。破裂強さが180kPaを超えると、ESRが高くなる傾向がある。
【0039】
比破裂強さが3.5kPa/(g/m2)未満の場合、比破裂強さが3.5kPa/(g/m2)以上のセパレータと比べて、セパレータを構成する繊維同士の結合が弱い。このことから、繊維同士の絡みが少ない、または、繊維同士の結合面積が小さいことがわかる。そのため、素子巻回時、及び巻回後の素子巻内部でセパレータにかかる様々な方向の、種々の力に耐えることができず、セパレータを構成する繊維が動き、本来繊維があった箇所から繊維がなくなり、セパレータに部分的な欠損が生じる。これにより、陽極箔と陰極箔との隔離が不十分となり、ショート不良が発生する。
【0040】
比破裂強さが7.5kPa/(g/m2)を超える場合、比破裂強さが7.5kPa/(g/m2)以下のセパレータと比べて、セパレータを構成する繊維同士の結合が過度に強い。このことから、繊維同士の絡みが多く過度に緻密になる、または、繊維同士の結合面積が大きいことがわかる。そのため、導電性高分子の重合液や分散液の含浸が不均一となり、ESRが悪化する。
【0041】
本発明の実施の形態のセパレータは、化学的安定性の観点から合成繊維を含有し、また、機械的強度の観点からバインダーを含有する。
【0042】
本発明の実施の形態の合成繊維は、破裂強さ、及び比破裂強さを満足できれば、任意の合成繊維を選択することができる。耐酸性、耐酸化性、及び導電性高分子の重合液や分散液の含浸性の観点から、使用する合成繊維として、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維等が挙げられる。
【0043】
また、本発明の実施の形態の合成繊維は、セパレータの緻密性及び機械的強度を高めるため、さらに、導電性高分子の重合液や分散液の含浸性、保持性を高めるため、フィブリル化合成繊維と非フィブリル化合成繊維とからなることが好ましい。
【0044】
フィブリル化合成繊維とは、叩解等の処理により、主体となる部分から枝葉状に微細なフィブリルを発生させたものや、パルプのように枝葉状のフィブリルを有した状態で製造された合成繊維のことである。
フィブリル化合成繊維は、耐熱性、耐薬品性の観点から、フィブリル化ポリアミド繊維が好ましい。具体的には、フィブリル化アラミド繊維が好ましい。
【0045】
非フィブリル化合成繊維とは、枝葉状のフィブリルの無い合成繊維のことである。非フィブリル化合成繊維は、単一成分からなる繊維であっても、複数成分からなる繊維であってもよく、また、複合繊維のような構造であってもよい。非フィブリル化合成繊維は、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維等を使用することができる。耐薬品性や導電性高分子の重合液や分散液の含浸性の観点から、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維が好ましい。
【0046】
本発明の実施の形態のバインダーは、セパレータを構成する繊維間の結合に用いるものである。破裂強さ、及び比破裂強さを満足できれば、任意のバインダーを選択することができる。さらに、バインダーが皮膜を形成することにより、電極箔のバリがセパレータを貫通することや、タブがセパレータを圧縮し、破損すること、等が起こり難くなり、セパレータの耐ショート性を向上することができる。ここでの皮膜とは、湿熱条件下でバインダーによって形成された、セパレータを構成する繊維の交絡点や繊維間に存在する膜状物のことである。
機械的強度を向上し、かつ、容易に皮膜を形成できることから、バインダーとしては、ポリビニルアルコールまたはビニルアルコール共重合体を用いることが好ましい。
【0047】
また、本発明の実施の形態のセパレータの構成として、合成繊維を70~95質量%、バインダーを5~30質量%含有し、かつ、セパレータの全体質量のうち、フィブリル化合成繊維を20~70質量%、非フィブリル化合成繊維を10~75質量%含有することが好ましい。
【0048】
合成繊維が70質量%未満、バインダーが30質量%を超える場合、導電性高分子コンデンサのESRが悪化する場合がある。これは、バインダーが増えることで、形成される皮膜の面積が増え、セパレータを構成する繊維間の空隙が過度に埋まってしまい、導電性高分子の重合液や分散液の含浸性、保持性が悪化することが原因として考えられる。
合成繊維が95質量%を超え、バインダーが5質量%未満の場合は、セパレータの機械的強度が低く、耐ショート性を高めることができず、導電性高分子コンデンサのショート不良の発生を抑制できない場合がある。
【0049】
フィブリル化合成繊維が20質量%未満、非フィブリル化合成繊維が75質量%を超える場合、セパレータの緻密性が低い傾向となり、セパレータのショート不良の発生を抑制する効果を得難い。また、緻密性が低いため、導電性高分子の保持量も少なくなる傾向となり、ESRを低減しにくくなる。
一方、フィブリル化合成繊維が70質量%を超え、非フィブリル化合成繊維が10質量%未満の場合は、セパレータの緻密性が高い傾向となり、導電性高分子の重合液や分散液の含浸が不均一になりやすく、ESR特性がばらつく傾向がある。
【0050】
例えば、長さ荷重平均繊維長が0.3~2.0mmの範囲のフィブリル化合成繊維を20~70質量%、繊維長1.5~6.5mmの範囲の非フィブリル化合成繊維を10~75質量%、バインダーを5~30質量%含有することで、破裂強さ及び比破裂強さを一定の範囲とすることができ、本願発明のセパレータとすることができる。
繊維長が上記の値より短い場合、引張強さの不足が懸念される。繊維長が上記の値より長い場合、セパレータの地合等の均質性が損なわれるという懸念がある。
【0051】
本発明では、引張弾性率をセパレータの伸縮性の指標として用いた。引張弾性率は、弾性変形領域における変形しやすさを示すことができ、引張弾性率が低いほど、弱い力で伸縮し、変形しやすくなる。また、引張弾性率が高いほど、変形に至るまでに強い力が必要となる。
【0052】
本発明のセパレータの引張弾性率は、500~2000MPaであることが好ましい。引張弾性率が500~2000MPaの範囲内であれば、セパレータが適度な伸縮性を持ち、素子巻回時、及び巻回後の素子巻内部でセパレータにかかる様々な方向の、種々の力に対して柔軟な応答性を示すことが可能になる。これにより、電極箔への追従性が良好となり、電極箔への密着性が高いセパレータとすることができる。その結果、電極箔とセパレータとの界面で、形成した導電性高分子の連続性を維持でき、導電性高分子コンデンサのESRを低減することが可能になる。
【0053】
引張弾性率が500MPa未満の場合、素子巻回時、及び巻回後の素子巻内部でセパレータにかかる様々な方向の、種々の力により、セパレータが変形しやすい。そのため、電極箔とセパレータとが過度に密着した状態となり、セパレータがシール材のような働きをすることで、導電性高分子の重合液や分散液の含浸が不均一となり、導電性高分子コンデンサのESR低減効果が得られない場合がある。
引張弾性率が2000MPaを超える場合は、セパレータの伸縮性が低く、電極箔への密着性が悪化する。これにより、電極箔とセパレータとの界面で、導電性高分子の連続性が損なわれ、導電性高分子コンデンサのESR低減効果が得られない場合がある。
【0054】
本発明を実施するための形態に係るセパレータの厚さ及び密度は、所望の導電性高分子コンデンサの特性を満足するものを、特に限定なく採用できる。一般的に、導電性高分子コンデンサ用セパレータは、厚さ20~100μm、密度0.20~0.60g/cm3程度の厚さ及び密度のセパレータが使用されているが、この範囲に限定されるものではない。
【0055】
セパレータの作製方法に特に限定はないが、水中に分散させた繊維をワイヤー上に堆積させ、脱水、乾燥して抄き上げる抄紙法が、セパレータの地合等の均質性の観点から好ましい。
本発明を実施するための形態では、セパレータは抄紙法を用いて形成した湿式不織布を採用した。セパレータの抄紙形式は、破裂強さや比破裂強さを満足することができれば、特に限定はなく、長網抄紙や短網抄紙、円網抄紙といった抄紙形式が採用でき、またこれらの抄紙法によって形成された層を複数合わせたものであってもよい。また、抄紙に際しては、導電性高分子コンデンサ用セパレータに影響を与えない程度の不純物含有量であれば、分散剤や消泡剤、紙力増強剤などの添加剤を加えてもよく、紙層形成後に紙力増強加工、親液加工、カレンダ加工、エンボス加工等の後加工を施してもよい。
【0056】
以上の構成を採用することにより、本発明を実施するための形態のセパレータは、良好な導電性高分子の重合液や分散液の含浸性、保持性を維持しながら、素子巻回時、及び巻回後の素子巻内部でセパレータにかかる様々な方向の、種々の力に対する安定性を有し、セパレータに部分的な欠損を生じることなく、耐ショート性を高めたものとできる。そして、このセパレータを、導電性高分子コンデンサに用いることで、低ESRでありながら、ショート不良の発生を抑制することができる。ひいては、導電性高分子コンデンサの高耐電圧化に寄与できる。
【0057】
〔セパレータ及び導電性高分子コンデンサの特性の測定方法〕
本実施の形態のセパレータ及び導電性高分子コンデンサの各特性の具体的な測定は、以下の条件及び方法で行った。
【0058】
〔厚さ〕
「JIS C 2300-2 『電気用セルロース紙-第2部:試験方法』 5.1 厚さ」に規定された、「5.1.1 測定器及び測定方法 a外側マイクロメータを用いる場合」のマイクロメータを用いて、「5.1.3 紙を折り重ねて厚さを測る場合」の10枚に折り重ねる方法で、セパレータの厚さを測定した。
【0059】
〔密度〕
「JIS C 2300-2 『電気用セルロース紙-第2部:試験方法』 7.0A 密度」のB法に規定された方法で、絶乾状態のセパレータの密度を測定した。
【0060】
〔破裂強さ〕
「JIS C 2300-2 『電気用セルロース紙-第2部:試験方法』11.破裂強さ」に規定された方法で、セパレータの破裂強さを測定した。
【0061】
〔比破裂強さ〕
比破裂強さは、上記試験方法で測定した破裂強さの値を、「JIS C 2300-2 『電気用セルロース紙-第2部:試験方法』6.坪量」に規定された方法で測定したセパレータの坪量で除すことで算出した。
【0062】
〔引張弾性率〕
「JIS P 8113 『紙及び板紙-引張特性の試験方法-第2部:定速伸張法』」に規定された方法で、セパレータの縦方向(MD方向)の引張弾性率を測定した。
【0063】
〔フィブリル化合成繊維の長さ荷重平均繊維長〕
「JIS P 8226-2『パルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法-第2部:非偏光法』」(ISO16065-2『Pulps-Determination of Fibre length by automated optical analysis-Part2:Unpolarized light method』)に記載された装置、ここではFiber Tester PLUS(Lorentzen&Wettre製)を用いて測定し、長さ荷重平均繊維長をフィブリル化合成繊維の繊維長とした。
【0064】
〔非フィブリル化合成繊維の繊維長〕
市販されている各種の非フィブリル化合成繊維を購入し、そのカット長を非フィブリル化合成繊維の繊維長とした。
【0065】
〔固体電解コンデンサの作製工程〕
以下に示す各実施例、比較例、従来例のセパレータを用い、直径10.0mm×高さ10.0mmの定格電圧35V、静電容量150μFと、定格電圧80V、静電容量22μFとの二種類の固体電解コンデンサを作製した。
具体的な作製方法は、以下の通りである。
【0066】
エッチング処理及び酸化皮膜形成処理をそれぞれ行った、厚さ115μmの陽極箔と厚さ50μmの陰極箔とが接触しないように、セパレータを介在させて巻回し、素子巻の外周をテープで固定して、コンデンサ素子を作製した。作製したコンデンサ素子は、再化成処理後、乾燥した。
【0067】
定格電圧35Vの固体電解コンデンサは、コンデンサ素子に導電性高分子の重合液を含浸後、加熱・重合させ、溶媒を乾燥させて、導電性高分子層を形成した。導電性高分子重合液は、モノマーとして3,4‐エチレンジオキシチオフェンを用い、酸化剤溶液としてパラトルエンスルホン酸鉄溶液を用いた。
定格電圧80Vの固体電解コンデンサは、コンデンサ素子に導電性高分子分散液を含浸後、加熱・乾燥させて、導電性高分子層を形成した。導電性高分子分散液として、PEDOT/PSS(ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる複合物)を分散質とした分散液を用いた。
次に、所定のケースにコンデンサ素子を入れ、開口部を封口後、エージングを行い、それぞれの固体電解コンデンサを得た。
【0068】
〔ハイブリッド電解コンデンサの作製工程〕
各実施例、比較例、従来例のセパレータを用い、直径10.0×高さ10.5mmの定格電圧35V、静電容量270μFと、定格電圧160V、静電容量6.8μFとの二種類のハイブリッド電解コンデンサを作製した。
具体的な作製方法は以下の通りである。
【0069】
エッチング処理及び酸化皮膜形成処理をそれぞれ行った、厚さ115μmの陽極箔と厚さ50μmの陰極箔とが接触しないように、セパレータを介在させて巻回し、素子巻の外周をテープで固定して、コンデンサ素子を作製した。作製したコンデンサ素子は、再化成処理後、乾燥した。
【0070】
定格電圧35Vのハイブリッド電解コンデンサは、コンデンサ素子に導電性高分子の重合液を含浸後、加熱・重合させ、溶媒を乾燥させて、導電性高分子層を形成した。導電性高分子重合液は、モノマーとして3,4‐エチレンジオキシチオフェンを用い、酸化剤溶液としてパラトルエンスルホン酸鉄溶液を用いた。
定格電圧160Vのハイブリッド電解コンデンサは、コンデンサ素子に導電性高分子分散液を含浸後、加熱・乾燥させて、導電性高分子層を形成した。導電性高分子分散液として、PEDOT/PSS(ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる複合物)を分散質とした分散液を用いた。
続けて、上記コンデンサ素子に駆動用電解液を含浸させ、所定のケースにコンデンサ素子を入れ、開口部を封口後、エージングを行い、それぞれのハイブリッド電解コンデンサを得た。
【0071】
〔導電性高分子コンデンサの評価方法〕
本実施の形態の導電性高分子コンデンサの具体的な性能評価は、以下の条件及び方法で行った。
【0072】
〔ショート不良率〕
巻回したコンデンサ素子を1000個用意し、エージング中に生じたショート不良数を計数し、ショート不良となった素子数を、エージングを実施したコンデンサ素子数で除して、百分率を持ってショート不良率とした。
【0073】
〔ESR〕
作製したコンデンサ素子のESRは、温度20℃、周波数100kHzの条件にて、LCRメータを用いて測定した。
【0074】
〔実施例〕
以下、本発明の実施の形態に係るセパレータの具体的な実施例等について説明する。
【0075】
〔実施例1〕
フィブリル化アクリル繊維(長さ荷重平均繊維長0.8mm)60質量%と、アラミド繊維(繊維長2.0mm)30質量%と、ポリビニルアルコール10質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙し、実施例1のセパレータを得た。
完成した実施例1のセパレータの厚さは50μm、密度は0.55g/cm3、破裂強さは120kPa、比破裂強さは4.4kPa/(g/m2)、引張弾性率は2030MPaであった。
【0076】
〔実施例2〕
フィブリル化ポリエステル繊維(長さ荷重平均繊維長0.5mm)45質量%と、ビニロン繊維(繊維長5.0mm)50質量%と、エチレンビニルアルコール共重合体5質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙し、実施例2のセパレータを得た。
完成した実施例2のセパレータの厚さは20μm、密度は0.45g/cm3、破裂強さは52kPa、比破裂強さは5.8kPa/(g/m2)、引張弾性率は480MPaであった。
【0077】
〔実施例3〕
フィブリル化アラミド繊維(長さ荷重平均繊維長0.4mm)60質量%と、アクリル繊維(繊維長5.0mm)10質量%と、ポリビニルアルコール30質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙し、実施例3のセパレータを得た。
完成した実施例3のセパレータの厚さは50μm、密度は0.60g/cm3、破裂強さは178kPa、比破裂強さは5.9kPa/(g/m2)、引張弾性率は1320MPaであった。
【0078】
〔実施例4〕
フィブリル化アラミド繊維(長さ荷重平均繊維長0.8mm)70質量%と、ナイロン繊維(繊維長3.0mm)10質量%と、ポリビニルアルコール20質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙し、実施例4のセパレータを得た。
完成した実施例4のセパレータの厚さは40μm、密度は0.50g/cm3、破裂強さは135kPa、比破裂強さは6.8kPa/(g/m2)、引張弾性率は1710MPaであった。
【0079】
〔実施例5〕
フィブリル化アクリル繊維(長さ荷重平均繊維長1.2mm)45質量%と、ナイロン繊維(繊維長3.0mm)30質量%と、ポリビニルアルコール25質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙し、実施例5のセパレータを得た。
完成した実施例5のセパレータの厚さは80μm、密度は0.40g/cm3、破裂強さは155kPa、比破裂強さは4.8kPa/(g/m2)、引張弾性率は1620MPaであった。
【0080】
〔実施例6〕
フィブリル化アラミド繊維(長さ荷重平均繊維長1.8mm)30質量%と、ポリエステル繊維(繊維長3.0mm)40質量%と、ポリビニルアルコール30質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙し、実施例6のセパレータを得た。
完成した実施例6のセパレータの厚さは100μm、密度は0.45g/cm3、破裂強さは163kPa、比破裂強さは3.6kPa/(g/m2)、引張弾性率は870MPaであった。
【0081】
〔実施例7〕
フィブリル化アラミド繊維(長さ荷重平均繊維長0.6mm)45質量%と、アクリル繊維(繊維長3.0mm)40質量%と、ポリビニルアルコール15質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙し、実施例7のセパレータを得た。
完成した実施例7のセパレータの厚さは50μm、密度は0.35g/cm3、破裂強さは100kPa、比破裂強さは5.7kPa/(g/m2)、引張弾性率は1270MPaであった。
【0082】
〔実施例8〕
フィブリル化アラミド繊維(長さ荷重平均繊維長0.3mm)20質量%と、アクリル繊維(繊維長2.0mm)50質量%と、エチレンビニルアルコール共重合体30質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙し、実施例8のセパレータを得た。
完成した実施例8のセパレータの厚さは45μm、密度は0.35g/cm3、破裂強さは116kPa、比破裂強さは7.4kPa/(g/m2)、引張弾性率は1112MPaであった。
【0083】
〔実施例9〕
フィブリル化アクリル繊維(長さ荷重平均繊維長1.4mm)30質量%と、アラミド繊維(繊維長4.0mm)50質量%と、エチレンビニルアルコール共重合体20質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙し、実施例9のセパレータを得た。
完成した実施例9のセパレータの厚さは70μm、密度は0.40g/cm3、破裂強さは117kPa、比破裂強さは4.2kPa/(g/m2)、引張弾性率は1960MPaであった。
【0084】
〔実施例10〕
フィブリル化ポリエステル繊維(長さ荷重平均繊維長1.6mm)20質量%と、アクリル繊維(繊維長6.0mm)75質量%と、ポリビニルアルコール5質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙し、実施例10のセパレータを得た。
完成した実施例10のセパレータの厚さは40μm、密度は0.20g/cm3、破裂強さは41kPa、比破裂強さは5.1kPa/(g/m2)、引張弾性率は533MPaであった。
【0085】
〔比較例1〕
フィブリル化アラミド繊維(長さ荷重平均繊維長0.4mm)65質量%と、アクリル繊維(繊維長5.0mm)5質量%と、ポリビニルアルコール30質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙し、比較例1のセパレータを得た。
完成した比較例1のセパレータの厚さは40μm、密度は0.50g/cm3、破裂強さは158kPa、比破裂強さは7.9kPa/(g/m2)、引張弾性率は1420MPaであった。
【0086】
〔比較例2〕
フィブリル化アラミド繊維(長さ荷重平均繊維長0.3mm)75質量%と、ナイロン繊維(繊維長2.0mm)10質量%と、ポリビニルアルコール15質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙し、比較例2のセパレータを得た。
完成した比較例2のセパレータの厚さは60μm、密度は0.60g/cm3、破裂強さは121kPa、比破裂強さは3.4kPa/(g/m2)、引張弾性率は1750MPaであった。
【0087】
〔比較例3〕
フィブリル化アクリル繊維(長さ荷重平均繊維長1.9mm)25質量%と、ポリエステル繊維(繊維長3.0mm)40質量%と、ポリビニルアルコール35質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙し、比較例3のセパレータを得た。
完成した比較例3のセパレータの厚さは80μm、密度は0.35g/cm3、破裂強さは187kPa、比破裂強さは6.7kPa/(g/m2)、引張弾性率は570MPaであった。
【0088】
〔比較例4〕
フィブリル化アラミド繊維(長さ荷重平均繊維長0.5mm)15質量%と、アクリル繊維(繊維長2.0mm)60質量%と、エチレンビニルアルコール共重合体25質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙し、比較例4のセパレータを得た。
完成した比較例4のセパレータの厚さは35μm、密度は0.35g/cm3、破裂強さは94kPa、比破裂強さは7.7kPa/(g/m2)、引張弾性率は980MPaであった。
【0089】
〔比較例5〕
フィブリル化アクリル繊維(長さ荷重平均繊維長0.9mm)15質量%と、アクリル繊維(繊維長6.0mm)80質量%と、ポリビニルアルコール5質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙し、比較例5のセパレータを得た。
完成した比較例5のセパレータの厚さは50μm、密度は0.30g/cm3、破裂強さは43kPa、比破裂強さは2.9kPa/(g/m2)、引張弾性率は2060MPaであった。
【0090】
〔比較例6〕
フィブリル化ポリエステル繊維(長さ荷重平均繊維長0.4mm)45質量%と、ビニロン繊維(繊維長3.0mm)52質量%と、エチレンビニルアルコール共重合体3質量%とを混合した原料を用いて円網抄紙し、比較例6のセパレータを得た。
完成した比較例6のセパレータの厚さは20μm、密度は0.45g/cm3、破裂強さは35kPa、比破裂強さは3.9kPa/(g/m2)、引張弾性率は460MPaであった。
【0091】
〔従来例1〕
特許文献1の実施例1に記載の方法と同様の方法で製造したセパレータを作製し、従来例1のセパレータを得た。
従来例1のセパレータの厚さは45μm、密度は0.36g/cm3、破裂強さは46kPa、比破裂強さは2.8kPa/(g/m2)、引張弾性率は720MPaであった。
【0092】
〔従来例2〕
特許文献2の実施例1に記載の方法と同様の方法で製造したセパレータを作製し、従来例2のセパレータを得た。
従来例2のセパレータの厚さは30μm、密度は0.55g/cm3、破裂強さは54kPa、比破裂強さは3.3kPa/(g/m2)、引張弾性率は1560MPaであった。
【0093】
〔従来例3〕
特許文献3の実施例1に記載の方法と同様の方法で製造したセパレータを作製し、従来例3のセパレータを得た。
従来例3のセパレータの厚さは60μm、密度は0.20g/cm3、破裂強さは94kPa、比破裂強さは7.8kPa/(g/m2)、引張弾性率は540MPaであった。
【0094】
〔従来例4〕
特許文献4の実施例1に記載の方法と同様の方法で製造したセパレータを作製し、従来例4のセパレータを得た。
従来例4のセパレータの厚さは55μm、密度は0.33g/cm3、破裂強さは37kPa、比破裂強さは2.0kPa/(g/m2)、引張弾性率は630MPaであった。
【0095】
以上に記載した実施例1~10、比較例1~6、従来例1~4の各セパレータの原材料と配合について、表1に示す。
【0096】
【0097】
表2は、以上に説明した実施例1~10、比較例1~6、従来例1~4の各セパレータの評価結果を示す。
【0098】
【0099】
各実施例、各比較例、各従来例のセパレータを用いて作製した導電性高分子コンデンサについて説明する。各実施例、各比較例、各従来例のセパレータを用いて、定格電圧35V、静電容量150μF、定格電圧80V、静電容量22μFの固体電解コンデンサ、及び定格電圧35V、静電容量270μF、定格電圧160V、静電容量6.8μFのハイブリッド電解コンデンサを作製した。各コンデンサの性能評価結果を、表3に示す。
【0100】
【0101】
以下、各実施例、各比較例、各従来例のセパレータを用いた、導電性高分子コンデンサの評価結果を詳細に説明する。
【0102】
実施例1及び実施例2のセパレータを用いたコンデンサは、従来例1から従来例4のセパレータを用いたコンデンサと比較して、ESRは同程度であるが、ショート不良率が低い。
【0103】
また、実施例3~10のセパレータを用いたコンデンサは、実施例1及び実施例2のセパレータを用いたコンデンサに比べ、ショート不良率は同程度であるが、ESRが低い。
【0104】
実施例3~10のセパレータのESRが低くなったのは、セパレータの引張弾性率が533~1960MPaであり、電極箔への密着性が良好で、電極箔とセパレータとの界面で、導電性高分子の連続性を維持できているためと考えられる。
このことから、セパレータが適度な伸縮性を持つことで、ESRを低くできることがわかる。即ち、セパレータの引張弾性率が500~2000MPaの範囲であれば、導電性高分子コンデンサの低ESR化が実現できることが明らかになった。
【0105】
比較例1のセパレータは、厚さ、密度、破裂強さは各実施例と同レベルであるが、比破裂強さは7.9kPa/(g/m2)と、各実施例と比べて高い。比較例1のセパレータを用いたコンデンサは、各実施例と比べてESRが高い。
【0106】
比較例1のセパレータを用いたコンデンサのESRが高くなったのは、セパレータの比破裂強さが7.9kPa/(g/m2)と高く、セパレータを構成する繊維同士の結合が過度に強いことが原因と考えられる。比較例1のセパレータは、非フィブリル化合成繊維の含有量が5質量%であるため、過度に緻密になり、比破裂強さが過度に高く、導電性高分子の重合液や分散液の含浸が不均一になったと考えられる。
このことから、セパレータの比破裂強さが7.5kPa/(g/m2)以下であれば、導電性高分子コンデンサを低ESRとすることが可能であることが明らかとなった。また、非フィブリル化合成繊維の含有量を10質量%以上とすることで、導電性高分子の重合液や分散液の含浸性を維持できることがわかる。
【0107】
比較例2のセパレータは、厚さ、密度、破裂強さは各実施例と同レベルであるが、比破裂強さは3.4kPa/(g/m2)と、各実施例と比べて低い。比較例2のセパレータを用いたコンデンサは、各実施例と比べてショート不良率が高い。また、ESRが従来例と比べて若干高い。
【0108】
比較例2のセパレータを用いたコンデンサのショート不良率が高くなったのは、セパレータの比破裂強さが3.4kPa/(g/m2)と低く、セパレータを構成する繊維同士の結合が弱いことが原因と考えられる。比破裂強さが低いため、素子巻回時、及び巻回後の素子内部でセパレータにかかる様々な方向の、種々の力に耐えることができず、セパレータに部分的な欠損が生じ、ショート不良が発生したと考えられる。また、比較例2のセパレータを用いたコンデンサのESRが高くなったのは、フィブリル化アラミド繊維の含有量が75質量%であるため、と考えられる。
このことから、比破裂強さが3.5kPa/(g/m2)以上であれば、導電性高分子コンデンサのショート不良の発生を抑制することができることが明らかになった。また、フィブリル化合成繊維の含有量を70質量%以下とすることで、ESRの悪化を抑えることができることがわかる。
【0109】
比較例3のセパレータは、厚さ、密度、比破裂強さは各実施例と同レベルであるが、破裂強さは187kPaと、各実施例と比べて高い。比較例3のセパレータを用いたコンデンサは、各実施例と比べてESRが高い。
【0110】
比較例3のセパレータを用いたコンデンサのESRが高くなったのは、セパレータの破裂強さが187kPaと高いことが原因と考えられる。比較例3のセパレータは、ポリビニルアルコールの含有量が35質量%であるため、セパレータの破裂強さが過度に高く、また、セパレータを構成する繊維間の空隙を埋めたと考えられる。そのため、比較例3のセパレータは、導電性高分子の重合液や分散液の含浸性、保持性が悪くなったと考えられる。
このことから、破裂強さが180kPaを超えると、ESRが悪化することがわかる。つまり、破裂強さが180kPa以下であれば、導電性高分子コンデンサに適用可能なセパレータとすることができ、低ESRとすることが可能であることが明らかとなった。また、バインダーの含有量を30質量%以下とすることで、導電性高分子の重合液や分散液を含浸、保持するために必要な、セパレータを構成する繊維間の空隙を持たせることができ、低ESRとすることができることがわかる。
【0111】
比較例4のセパレータは、厚さ、密度、破裂強さは各実施例と同レベルであるが、比破裂強さは7.7kPa/(g/m2)と高い。比較例4のセパレータを用いたコンデンサは、各実施例と比べてESRが高い。また、定格電圧80Vの固体電解コンデンサ、定格電圧160Vのハイブリッド電解コンデンサのショート不良率が高い。
【0112】
比較例4のセパレータを用いたコンデンサのESRが高くなったのは、セパレータの比破裂強さが7.7kPa/(g/m2)と高く、セパレータを構成する繊維同士の結合が過度に強いことが原因と考えられる。比破裂強さが高いことから、セパレータを構成する繊維同士の結合面積が大きいことがわかり、導電性高分子の重合液や分散液の含浸が不均一になったことが考えられる。また、比較例4のセパレータは、フィブリル化アラミドの含有量が15質量%であるため、セパレータの緻密性が低く、定格電圧の高いコンデンサでのショート不良率が高くなったと考えられる。
【0113】
比較例1のセパレータを用いたコンデンサの評価に加え、比較例4のセパレータを用いたコンデンサの評価からも、セパレータの比破裂強さが7.5kPa/(g/m2)以下であれば、導電性高分子コンデンサを低ESRとすることが可能であることが明らかとなった。また、フィブリル化合成繊維の含有量が20質量%以上であれば、セパレータの緻密性を高めることができ、ショート不良の発生を抑制できることがわかる。
【0114】
比較例5のセパレータは、厚さ、密度、破裂強さは各実施例と同レベルであるが、比破裂強さは2.9kPa/(g/m2)と低い。比較例5のセパレータを用いたコンデンサは、各実施例と比べて、ショート不良率、ESRが高い。
【0115】
比較例5のセパレータを用いたコンデンサのショート不良率が高くなったのは、セパレータの比破裂強さが2.9kPa/(g/m2)と低く、セパレータを構成する繊維同士の結合が弱いことが原因と考えられる。また、比較例5のセパレータは、フィブリル化アラミドの含有量が15質量%、アクリルの含有量が80質量%であるため、セパレータの緻密性が過度に低く、ショート不良率が高くなったと考えられる。さらに、セパレータの緻密性が低いため、導電性高分子の保持量が少なくなり、ESRが高くなったと考えられる。
【0116】
比較例2のセパレータを用いたコンデンサの評価に加え、比較例5のセパレータを用いたコンデンサの評価からも、セパレータの比破裂強さが3.5kPa/(g/m2)以上であれば、導電性高分子コンデンサのショート不良の発生を抑制できることが明らかとなった。また、フィブリル化合成繊維の含有量が20質量%以上、非フィブリル化合成繊維の含有量が75質量%以下であれば、セパレータの緻密性を高めることができ、コンデンサのESRを悪化させずに、ショート不良の発生を抑制できることがわかる。
【0117】
比較例6のセパレータは、厚さ、密度、比破裂強さは各実施例と同レベルであるが、破裂強さは35kPaと低い。比較例6のセパレータを用いたコンデンサは、各実施例と比べてショート不良率が高い。
【0118】
比較例6のセパレータを用いたコンデンサのショート不良率が高くなったのは、セパレータの破裂強さが35kPaと低く、素子巻回時、及び素子巻内部でセパレータにかかる様々な方向の、種々の力に耐えることができず、セパレータに部分的な欠損が生じ、陽極箔と陰極箔との隔離が不十分となったためと考える。また、比較例6のセパレータは、エチレンビニルアルコール共重合体の含有量が3質量%であるため、セパレータの破裂強さが低くなったと考える。
このことから、セパレータの破裂強さが40kPa以上であれば、導電性高分子コンデンサのショート不良の発生を抑制することが可能であることが明らかとなった。また、バインダーの含有量が5質量%以上であれば、セパレータの破裂強さを高めることができ、セパレータの耐ショート性を高めることができることがわかる。
【0119】
従来例1のセパレータは、特許文献1の実施例1に記載のセパレータと同様である。従来例1のセパレータは、比破裂強さが2.8kPa/(g/m2)と低い。このため、コンデンサの評価結果でも、ショート不良率が高い。
【0120】
従来例2のセパレータは、特許文献2の実施例1に記載のセパレータと同様である。従来例2のセパレータは、比破裂強さが3.3kPa/(g/m2)と低い。このため、コンデンサの評価結果でもショート不良率が高い。
【0121】
従来例1、従来例2のセパレータを用いたコンデンサの評価結果と、各実施例との比較から、セパレータにフィブリル化合成繊維を20~70質量%、非フィブリル化合成繊維を10~75質量%含有しているだけでは、ショート不良の発生を抑制することができず、バインダーを含有する必要があることがわかる。また、セパレータの比破裂強さが3.5kPa/(g/m2)以上であれば、ショート不良の発生を抑制できることが明らかとなった。
【0122】
さらに、従来例2のセパレータは、湿潤引張強さを制御したセパレータであり、一方向からの力に対しての耐性はあるが、様々な方向の、種々の力に対する耐性が弱く、ショート不良の発生を抑制できなかったと考える。このことから、破裂強さ、比破裂強さを一定の範囲とすることで、様々な方向の、種々の力に対する安定性を高めることができ、ショート不良の発生を抑制できることがわかる。
【0123】
従来例3のセパレータは、特許文献3の実施例1に記載のセパレータと同様である。従来例3のセパレータは、比破裂強さが7.8kPa/(g/m2)と高い。従来例3のセパレータを用いたコンデンサの評価結果では、ショート不良率が高く、ESRも高い。
【0124】
従来例3のセパレータは、非フィブリル化合成繊維とポリビニルアルコールから構成されているため、セパレータの緻密性が低く、コンデンサのショート不良率が高くなったと考えられる。また、従来例3のセパレータを用いた各コンデンサのESRが高くなったのは、比破裂強さが7.8kPa/(g/m2)と高いことが原因と考えられる。
【0125】
従来例2及び従来例3のコンデンサ評価結果と、各実施例との比較から、セパレータの平均孔径を制御するだけでは、導電性高分子コンデンサのショート不良の発生を抑制することができず、素子巻回時、及び素子巻内部でセパレータにかかる様々な方向の、種々の力に対する安定性を高める必要がある。つまり、セパレータの破裂強さ、比破裂強さを一定の範囲とすることが必要であることが明らかとなった。
【0126】
従来例4のセパレータは、特許文献4の実施例1に記載のセパレータと同様である。従来例4のセパレータを用いたコンデンサの評価結果では、ショート不良率が高く、ESRも高い。
【0127】
従来例4のセパレータを用いたコンデンサのショート不良率が高くなったのは、従来例4のセパレータの破裂強さが37kPa、比破裂強さが2.0kPa/(g/m2)と低く、素子巻回時、及び素子巻内部でセパレータにかかる様々な方向の、種々の力に耐えることができなかったことが原因と考えられる。また、従来例4のセパレータは、セルロース含有量が15質量%であるため、導電性高分子の重合液や分散液を含浸、保持させることにより、セパレータの破裂強さが低下し、ショート不良率が一段と高くなったと考える。さらに、セルロースを含有しているため、導電性高分子の重合液や分散液の含浸性、保持性が低くなり、ESRが高くなったと考える。
【0128】
従来例4のコンデンサ評価結果と各実施例との比較から、セルロースを含有したセパレータでは、導電性高分子の重合液や分散液の含浸性、保持性を維持しながら、耐ショート性を高めることができず、合成繊維とバインダーのみで構成する必要があることがわかる。
【0129】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、合成繊維とバインダーとからなるセパレータの破裂強さを40~180kPa、比破裂強さを3.5~7.5kPa/(g/m2)に制御することで、導電性高分子の重合液や分散液の含浸性、保持性を維持しながら、素子巻回時、及び巻回後の素子巻内部でセパレータにかかる様々な方向の、種々の力に対する安定性を高めることができる。そのため、セパレータの部分的な欠損の発生を抑制することができる。そして、本発明のセパレータを用いた導電性高分子コンデンサのESRを悪化させずに、ショート不良の発生を抑制できる。
【0130】
また、セパレータの引張弾性率を500~2000MPaの範囲とすることで、電極箔とセパレータとの密着性を制御することができ、導電性高分子コンデンサの低ESR化を実現することが可能になる。
【0131】
以上記載したように、本実施の形態のセパレータを用いた導電性高分子コンデンサは、ESRを悪化させずに、ショート不良の発生を抑制することができる。さらには、導電性高分子コンデンサの高耐電圧化にも寄与できる。