(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】オゾン発生装置およびエキシマランプの点灯制御方法
(51)【国際特許分類】
C01B 13/11 20060101AFI20240912BHJP
A61L 9/015 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C01B13/11 K
A61L9/015
(21)【出願番号】P 2020140851
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悠太
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-015361(JP,A)
【文献】特開2019-043786(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1754578(CN,A)
【文献】特開平03-279201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 13/10 - 13/11
A61L 9/00 - 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキシマランプと、
前記エキシマランプの周囲を流れる酸素を含むガスである流体の流路に沿って配置される送風機と、
前記エキシマランプの点灯と前記送風機の運転とを制御する制御部とを備え、
前記制御部が、前記エキシマランプの点灯開始後の前記流路の流出口または流出口付近におけるオゾン濃度の最大値が、所定濃度を越えない範囲で収まるように、前記エキシマランプの点灯開始を、オゾン発生動作ON状態になったことに伴う前記送風機の運転開始から遅らせるとともに、前記送風機の運転開始後の前記流路の流量が略一定となるまでの間に、前記エキシマランプを点灯開始させることを特徴とするオゾン発生装置。
【請求項2】
前記エキシマランプが配置され、前記流体の流路を形成する流路管
をさらに備え、
前記エキシマランプの両端部が前記流路管の流入口および流出口と対向するように、前記エキシマランプが前記流路管内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のオゾン発生装置。
【請求項3】
前記エキシマランプは、前記送風機の開口部に対向する位置に配置され、
前記制御部が、前記送風機の運転開始から風量略一定となるまでの動作遷移期間の途中で、前記エキシマランプを点灯開始させることを特徴とする請求項1に記載のオゾン発生装置。
【請求項4】
前記制御部が、前記動作遷移期間内におけるオゾン濃度の最大値が、所定濃度を越えない範囲で収まるように、前記エキシマランプの点灯開始を、前記送風機の運転開始から遅らせることを特徴とする請求項3に記載のオゾン発生装置。
【請求項5】
前記エキシマランプの軸に沿った前記エキシマランプの一方の端部と前記流出口との距離が、前記エキシマランプの軸に沿った前記エキシマランプの他方の端部と前記流入口との距離よりも短いことを特徴とする請求項2に記載のオゾン発生装置。
【請求項6】
オゾン発生時間を設定するために操作されるタイマーダイヤルと、
装置電源ON/OFF設定するために操作される電源スイッチボタンとをさらに備え、
前記タイマーダイヤル操作の後に前記電源スイッチボタンが操作されると、オゾン発生動作ON状態となることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のオゾン発生装置。
【請求項7】
オゾン発生時間を設定するために操作されるタイマーダイヤルと、
装置電源ON/OFF設定するために操作される電源スイッチボタンとをさらに備え、
前記電源スイッチボタン操作の後に前記タイマーダイヤルが操作されると、オゾン発生動作ON状態となることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のオゾン発生装置。
【請求項8】
前記流路において、前記エキシマランプから放射される紫外線よりも長波長の光を透過する窓が、前記エキシマランプの放電発生領域を作業者が操作する側から視認可能な位置に形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のオゾン生成装置。
【請求項9】
送風機の送風方向に沿って酸素を含むガスである流体の流れる流路に配置されたエキシマランプを備えたオゾン発生装置において、
作業者によるオゾンを発生させる操作に従い、前記エキシマランプ点灯開始してからの前記流路の流出口または流出口付近におけるオゾン濃度の最大値が、所定濃度を越えない範囲で収まるように、前記エキシマランプの点灯開始を、前記操作に伴う前記送風機の運転開始から遅らせるとともに、前記送風機の運転開始後の前記流路の流量が略一定となるまでの間に、前記エキシマランプを点灯開始させることを特徴とするエキシマランプの点灯制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシマランプを用いたオゾン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エキシマランプを備えたオゾン発生装置では、エキシマランプによる紫外線照射によってオゾンを発生させ、送風ファンなどによってオゾンを外部へ放出させる。オゾン発生装置には、ユーザによって操作される電源ボタン、タイマーボタンなどが設けられ、ユーザの電源ボタン、タイマー設定操作に応じて、送風ファンが動作し、エキシマランプが点灯する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
高濃度オゾンのガスが放出される場合、人体に影響の恐れがあるため、オゾン発生装置の動作中に作業者が装置傍に所在することは好ましくない。そのため、送風ファンを先に作動させ、作業者の室外への退出を考慮した時間経過後にランプを点灯開始させるオゾン発生装置が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-43786号公報
【文献】特開2014-15361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オゾン発生装置は、病院の病床、娯楽施設の共有スペース、ホテルの客室などその使用環境は様々であり、その設置箇所、動作環境も様々である。例えば、持ち運び可能なコンパクトタイプのオゾン発生装置の場合、オゾン発生ONにして運転開始したとき、作業者が装置の異常によりランプが不点灯でないか確認する必要もあり、ランプの遅延点灯が作業に支障をきたす場合もある。
【0006】
しかしながら、エキシマランプを使用する紫外線照射方式のオゾン発生装置の場合、放電方式のオゾン発生装置とは違い、ランプ点灯と同時に高濃度のオゾンを含むガスが発生する。そのため、装置動作ON直後に高濃度のオゾンを含むガスが放出される恐れがある。
【0007】
したがって、エキシマランプを使用するオゾン発生装置において、高濃度のオゾンを含むガスの放出を抑えたランプ点灯制御が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のオゾン発生装置は、エキシマランプと、エキシマランプの周囲を流れる酸素を含む流体の流路に沿って配置される送風機と、エキシマランプの点灯と送風機の運転とを制御する制御部とを備える。例えば、エキシマランプは、送風機の開口部に対向する位置に配置可能であり、また、流路管内において、送風機とは反対側の流出側開口部付近に配置することが可能である。
【0009】
本発明では、制御部が、エキシマランプの点灯開始後の流路の流出口におけるオゾン濃度の最大値が、所定濃度を越えない範囲で収まるように、エキシマランプの点灯開始を、送風機の運転開始から遅らせる。ここで、「所定濃度」は、オゾン濃度の最大値の上限値を表し、規格などに準じて定めることが可能である。
【0010】
例えば、流路の流れが十分でなく、エキシマランプ冷却が不十分な状態では、点灯開始の瞬間(直後)に最もオゾン濃度が高くなる。したがって、行政や規格団体などにおいて定められた、送風機の定格出力(風量一定)時の長時間作業における人体影響等を考慮した上限あるいは基準となる濃度値よりも高い濃度値を、点灯開始の瞬間(直後)における短時間での人体影響等を考慮した「所定濃度」として設定することができる。オゾン濃度が検出される「流路の流出口」は、例えばオゾン発生装置のオゾン放出口、流路管の流出口などを含み、流出口付近のオゾン濃度でもよい。
【0011】
ランプ点灯開始の遅延時間は、エキシマランプのオゾン生成量、送風機の動作特性、エキシマランプの流路内における配置などに従って定めることができる。例えば、制御部は、エキシマランプのオゾン生成量と、送風機の動作特性とに基づいて定められる遅延時間に従い、エキシマランプの点灯開始を、送風機の運転開始から遅らせることができる。さらに、遅延時間を、エキシマランプと流路の流出口との距離間隔に基づいて定めてもよい。
【0012】
オゾン発生動作開始に合わせて速やかにエキシマランプを点灯開始させることを考慮すれば、制御部は、送風機の運転開始後の流路の流量が略一定となるまでの間に、エキシマランプを点灯開始させればよい。例えば、エキシマランプが、送風機の開口部に対向する位置に配置される場合、制御部は、送風機の運転開始から風量略一定となるまでの動作遷移期間の途中で、エキシマランプを点灯開始させればよい。紫外線照度が最大となるタイミングが、送風機の初動から定格出力になるまでの動作遷移期間に生じることを考慮すれば、動作遷移期間内において、オゾン濃度の最大値が所定濃度を超えない範囲に収まるように、エキシマランプの点灯開始遅延を行えばよい。
【0013】
オゾン発生時間を設定するために操作されるタイマーダイヤルと、装置電源ON/OFF設定するために操作される電源スイッチボタンとを設けることが可能である。この場合、タイマーダイヤル操作の後に電源スイッチボタンが操作されると、オゾン発生動作ON状態となるように構成すればよい。また、電源スイッチボタン操作の後にタイマーダイヤルが操作されると、オゾン発生動作ON状態となるように構成することも可能である。
【0014】
流路において、エキシマランプから放射される紫外線よりも長波長の光を透過する窓を、エキシマランプの放電発生領域を作業者が操作する側から視認可能な位置に形成してもよい。
【0015】
本発明の他の態様であるエキシマランプの点灯制御方法は、送風機の送風方向に沿って流体の流れる流路に配置されたエキシマランプを備えたオゾン発生装置において、作業者によるオゾンを発生させる操作に従い、エキシマランプ点灯開始してからの流路の流出口におけるオゾン濃度の最大値が、所定濃度を越えない範囲で収まるように、エキシマランプの点灯開始を、送風機の運転開始から遅らせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エキシマランプを使用するオゾン発生装置において、高濃度のオゾンを含むガスの放出を抑えたランプ点灯制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態であるオゾン発生装置の概略的内部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本実施形態であるオゾン発生装置の概略的内部構成図である。
【0020】
オゾン発生装置10は、流路管20、エキシマランプ30、送風機40、ランプ電源50、制御部60とを備え、放出されたオゾンによる殺菌、脱臭などの用途に使用可能である。ここでは、ホテルの客室、娯楽施設の共有スペース、病院の病床など様々な場所へ持ち運んで使用できように把持部(図示せず)を設け、縦置き(直上設置)、横置き両方可能なコンパクト型オゾン発生装置として構成されている。
【0021】
オゾン発生装置10を直上に設置した場合、流路管20は上下方向に沿って配置され、エキシマランプ30から放射される紫外線よりも長波長の光を透過する窓20Wが、エキシマランプ30の放電が発生する領域を作業者が操作する側から視認可能な位置に設けられている。エキシマランプ30は、流路管20の流路FPに同軸的に配置され、また、送風機40も、流路管20の底面側開口部(以下、流入口という)20A傍で同軸配置されている。
【0022】
オゾン発生装置10の筐体(図示せず)前面側には、装置電源をON/OFF設定するために操作される電源スイッチボタン22と、オゾン発生時間(期間)の設定などのために操作されるタイマーダイヤル24が設けられている。タイマーダイヤル24は、モータ駆動可変抵抗器23の回転軸に差し込まれている。
【0023】
作業者は、所定時間(例えば12時間)を最大時間としてオゾン発生動作ON時間を設定可能であり、モータ駆動によってタイマーダイヤル24が動作OFF設定位置まで回転するとオゾン発生動作OFFとなる。また、作業者は、タイマーダイヤル24を回転限度位置(動作OFF設定位置)まで手で回すことで強制的にオゾン発生動作OFFにすることもできる。
【0024】
ランプ電源50は、商用周波数電圧から高周波電圧に変換するスイッチング電源と、高周波電圧を昇圧してエキシマランプ30に電源供給する昇圧トランスを備える。制御部60は、オゾン発生装置10の動作を制御し、エキシマランプ30の点灯制御、送風機40を含むオゾン発生動作の制御を行う。
【0025】
作業者が電源スイッチボタン22、タイマーダイヤル24を操作することによって、オゾン発生動作ONになると、送風機40が動作し、エキシマランプ30が点灯する。エキシマランプ30は、送風機40によって流路管20に流入する酸素を含むガス(流体)に対して紫外線を照射し、これによってオゾンが発生する。作業者は、操作する側に設けた窓部20Wを介してエキシマランプ30から放射される紫外線よりも長波長の光(可視光)を視認することで、エキシマランプ30が点灯してオゾン発生が開始したと認識する。発生したオゾンを含むガスが流路管20の上面側開口部(以下、流出口という)20Bから流出し、装置開口部10Aを通じて外部へ放出される。
【0026】
オゾン発生装置10は、紫外線照射式のオゾン発生装置であり、放電方式と比べ、ランプ点灯の瞬間に高濃度のオゾンが発生しやすい。一般的に、エキシマランプ30から放射される紫外線照度は、エキシマランプ30の表面温度が上昇すると低下する(特に、172nm)傾向にある。
【0027】
したがって、エキシマランプ点灯開始時に流路管20内におけるガスの流れが生じていない、あるいは低流量である場合、ランプ点灯開始時におけるエキシマランプの冷却が不十分であって過熱状態であると、エキシマランプ30の点灯開始直後が紫外線照度最大となってオゾン発生量が最大となり、その後、紫外線照度が低下する。
【0028】
一方、送風機40は、その慣性によって、回転開始から一定回転速度になるまでの期間(以下、ここでは動作遷移期間という)が存在し、送風機40の初動瞬間において、その定格出力に基づく風量でガスを送風できるわけではない。したがって、流路管20におけるガスの流れがほとんど生じていない、あるいは不十分な動作遷移期間内に、紫外線照度最大タイミングがあり、そのときにオゾン濃度が最大となる。
【0029】
流路管20内における流入口20Aから流出口20Bへ流れるガスの流量(風量)は、送風機40の動作に依存するため、送風機40の動作遷移期間を経た後、送風機40の定格出力に基づく風量によるガスの流れ、すなわち定格運転における所望するオゾン濃度のガスの流れが生じる。したがって、送風機40の運転開始と同時にエキシマランプ30を点灯開始させた場合、高濃度のオゾンを含むガスが運転開始直後に放出されてしまう。
【0030】
特に、ここではオゾン発生装置10がコンパクトタイプの装置として構成されているため、流路管20の流出口20Bは装置開口部10Aの傍に位置し、また、エキシマランプ30が流入口20A(送風機40の開口部)と流出口20Bの近くに対向して配置される。すなわち、流入口20Aと流出口20Bは、エキシマランプ30との間での絶縁破壊を防止できる状態で収納するための最小限の距離間隔で向かい合って配置されている。ここでは、エキシマランプ30の一端と流出口20Bとの流路管20の軸Eに沿った距離間隔L2は、流入口20Aからその一端までの距離間隔L1より短い。そのため、エキシマランプ30の点灯開始時に高濃度のオゾンを含むガスが装置外部へ放出されやすい。
【0031】
本実施形態では、作業者によってオゾン発生動作ONに設定されると、流路管20内のガスの流量を考慮したエキシマランプ30の遅延点灯を行う。ただし、ここでの遅延点灯は、作業者を部屋等から退出させる猶予期間を与えるようなものではなく、オゾン発生動作ON設定に合わせてオゾン発生動作を実行する一方で、運転開始と同時に高濃度のオゾンを含むガスがオゾン発生装置10から放出されるのを抑えることを目的とした遅延時間を設定する。
【0032】
具体的には、流路管20内におけるガスの流量が略一定となる定格運転までの過程において、装置開口部10Aにおけるオゾン濃度の最大値が、所定濃度を超えない範囲で収まるように、エキシマランプ30の点灯開始タイミングを送風機40の運転開始タイミングから遅らせる。
【0033】
所定濃度は、例えば短時間でも人体に影響を与えるオゾン濃度などを考慮し、規格団体などで推奨される数値、あるいはその数値に準じた値に設定することが可能である。ここでは、送風機40が動作遷移期間を超え、風量一定となっている流れの状態(定格運転)で定められる上限濃度値、あるいは基準となるオゾン濃度値よりも高い値に定められる。紫外線照射照度が最大となるときは動作遷移期間内であることから、動作遷移期間におけるオゾン濃度値の最大値が所定濃度を超えないように、エキシマランプ30の出力、流路管20の径の大きさ、流路長さ、送風機40の風量などが定められている。
【0034】
送風機40は、停止状態から一定回転速度に至るまで加速しながら回転する。回転速度が上昇している動作遷移期間では、流路管20内でのガスの流量はまだ略一定とならず、流量が上昇し続ける。この状態でエキシマランプ30を点灯開始させると、流路管20内にガスの流れが生じている状態でのオゾン発生のため、流路管20から流出するガスのオゾン濃度は急激に増加せず、オゾン濃度の最大値を所定濃度以下に抑えることができる。
【0035】
その後、送風機40の回転速度の上昇に伴って、風量が大きくなってオゾン濃度は低下し、エキシマランプ30によるオゾン発生量と送風機40の風量とのバランスが図られるようになり、定格運転状態でオゾン濃度一定となる。
【0036】
上述したように、送風機40の回転開始と同時に(回転開始より前に)エキシマランプ30を点灯開始させると、流路管20内にガスの流れがほとんど生じていない状態で、エキシマランプ30から放射される紫外線照射が最大となることで、オゾンが大量に発生し、高濃度のオゾンを含むガスが装置外へ放出されて、動作遷移期間のオゾン濃度の最大値が所定濃度を超えてしまう。
【0037】
しかしながら、流路管20内のガスの流量が一定となるまでの遷移期間にエキシマランプ30を点灯開始させることで、そのような高濃度のオゾンを含むガスが装置外へ放出されるのを抑えることができる。そして、装置外へ放出されるガスのオゾン濃度は、エキシマランプ30点灯開始から一貫して、作業者退出期間を考慮したような十分な時間経過後にエキシマランプ30の点灯開始と同様、所定濃度を超えないガスの流れとなる。送風機40の運転開始から比較的短時間だけエキシマランプ30の点灯開始をタイムシフトさせることによって、適切なオゾン発生動作を可能にする。
【0038】
ここでのオゾン発生装置10は、流路管20の流出口20Bは装置開口部10Aと隣接している。したがって、送風機40の回転速度が一定、すなわち風量が略一定となった時点で、流路管20には流量が略一定に近い状態にあるとみなせる。よって、送風機40の風量が略一定となったタイミングでエキシマランプ30を点灯させることが可能である。
【0039】
また、エキシマランプ30の点灯遅延時間は、オゾン濃度上昇特性によって定めればよい。オゾン濃度上昇特性は、エキシマランプ30のオゾン生成量、送風機40の風量などによって定められ、実験的に得ることができる。例えば、オゾン生成量が3(mg/h)、送風機40の流量が1(m3/min)以上の場合、遅延時間を0.5秒と定めることが可能である。また、送風機40の風量が略一定となるまでの動作遷移期間であれば、0.5秒より長い遅延時間を設定してもよい。
【0040】
一方、エキシマランプ30の一端と流出口20Bとの距離間隔L2が短いほど、高濃度のオゾンを含むガスが装置外部へ放出される可能性が高いことから、距離間隔L2もさらに考慮して遅延時間を定めることができる。
【0041】
なお、高周波高電圧によって瞬間的にエキシマランプ30を点灯開始させるときの短絡電流と、送風機40の運転開始時の突入電流とが同時に流れると、装置によっては誤動作を発生させるおそれがある。このような電気特性は、エキシマランプ30のオゾン生成量と、送風機40の風量の大きさと相関関係がある。そのため、電気特性を含めた遅延時間の設定も可能である。
【0042】
図2は、オゾン発生動作のフローを示した図である。作業者による電源スイッチボタン22の操作によって装置電源がON状態になると、運転が開始される。
【0043】
制御部60は、作業者がタイマーダイヤル24を操作しているか否かを判断する(S101)。タイマーダイヤル24が操作されて抵抗値が所定閾値を超えるなどによって、所定の回転位置を超えたと判断されると、オゾン発生動作ON状態に設定される(S102)。タイマーダイヤル24の操作については、タイマーダイヤル24が操作されて所定の回転位置で停止され、所定時間(例えば数秒)一定の抵抗値となることで、制御部60がタイマーダイヤル24の位置が定められたと判断し、オゾン発生動作ON状態に設定してもよい。
【0044】
制御部60は、送風機40へ運転開始を指令する制御信号を出力し(S103)、送風機40を運転開始させる。そして、定められた遅延時間に従ってランプ電源50へ制御信号を出力し、エキシマランプ30を点灯開始させる(S104)。タイマーダイヤル24がオゾン発生動作OFF設定位置へ回転移動するまでの間、オゾン発生動作が継続する。
【0045】
モータ駆動によってタイマーダイヤル24がオゾン発生動作OFF設定位置まで回転すると(S105)、制御部60は、オゾン発生動作OFFに設定し、制御信号を出力してエキシマランプ30を消灯させ、送風機40を停止させる(S106)。制御部60は、抵抗値が所定値を超えるなどによって、タイマーダイヤル24がオゾン発生動作OFF設定位置までモータ駆動により回転したと判断することができる。
【0046】
なお、作業者がタイマーダイヤル24をオゾン発生動作OFF設定位置まで回転させた場合、あるいは、電源スイッチボタン22がOFFに切り替えられた場合も、オゾン発生動作OFFに設定されたと判断し、オゾン発生動作を終了させればよい。この場合、作業者の手で操作によるオゾン発生動作OFF設定位置と、モータ駆動によるオゾン発生動作OFF設定位置を異なるようにしてもよい。
【0047】
図2では、電源スイッチボタン22の操作後にタイマーダイヤル24が操作される場合のオゾン発生動作を説明したが、逆に、作業者がタイマーダイヤル24を操作した後、電源スイッチボタン22をONに切り替えた操作を行い、これに伴ってオゾン発生動作ONに設定し、オゾン発生動作を行ってもよい。
【0048】
このように本実施形態によれば、作業者の電源スイッチボタン22、タイマーダイヤル24の操作によってオゾン発生動作ONとなった場合、送風機40が始動してから流路管20におけるガスの流れが流量一定となるまでの過程において、所定の遅延時間分だけタイムシフトさせてエキシマランプ30の点灯開始を行う。電源スイッチボタン22とタイマーダイヤル24の操作だけで、適切なオゾン発生による除菌、脱臭効果などを発揮でき、多様な動作条件の運転を可能にする。
【0049】
そして、送風機40とエキシマランプ30の始動開始に時間のずれを設けることにより、オゾン発生、オゾン放出を速やかに開始させることができる一方で、高濃度のオゾンを含むガスがオゾン発生動作開始直後に放出されず、人体あるいは除菌、殺菌対象などへの影響を防ぐことができる。また、オゾン発生動作ONの後、何らかの機器故障によってオゾンが発生せず異常が生じている場合、作業者はその故障を気付くことができる。作業者は流路に形成した窓を介してエキシマランプの点灯を視認した後に、退室すればよい。
【0050】
オゾン発生装置10の設置場所のスペース大きさは様々であり、人が室外へ退避するのに必要とする時間もスペースの大きさや退避経路などの事情によって異なり、あらかじめ適切な時間を設定することが困難である。本実施形態のオゾン発生装置10では、設置場所のスペースのサイズに関係なく、オゾン発生動作ON状態になったときに合わせてオゾン発生動作を開始させることができる。
【0051】
タイマーダイヤル24については、回転位置によって運転条件を変えるようにしてもよい。また、オゾン発生動作ONに切り替わる回転位置を設定し、その位置までモータ駆動によってタイマーダイヤル24が回転するのを検出してオゾン発生動作ON状態に設定してもよい。このとき、一定時間モータ駆動によりタイマーダイヤル24を停止させ、それに合わせてオゾン発生動作ON状態に設定してもよい。また、タイマーダイヤル24の回転位置に応じて運転条件を変更(送風機の風量調整など)も可能であり、遠隔操作なども可能である。
【0052】
本実施形態では、オゾン発生装置10がコンパクト型装置として構成されているが、常設されるオゾン発生装置に対しても適用可能である。この場合、流路管の長さ、流路管内におけるエキシマランプの流出口からの距離間隔、流路管の流出口と装置開口部(流出口)との距離間隔、送風機とエキシマランプとの距離間などの違いによって、送風機の始動から流路管内の流量が略一定となるまでの時間は相違する。これらの影響を踏まえてエキシマランプ30を遅延点灯させればよい。
【符号の説明】
【0053】
10 オゾン発生装置
20 流路管
20W 窓
22 電源スイッチボタン
24 タイマーダイヤル
30 エキシマランプ
40 送風機
50 ランプ電源
60 制御部