(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ヒートシール剤用水分散組成物、及びヒートシール材料
(51)【国際特許分類】
C09J 125/10 20060101AFI20240912BHJP
C09J 123/02 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C09J125/10
C09J123/02
(21)【出願番号】P 2020148635
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2019164753
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399034220
【氏名又は名称】日本エイアンドエル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中森 弘
(72)【発明者】
【氏名】寺西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】松山 貴志
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-302895(JP,A)
【文献】特開2010-018671(JP,A)
【文献】特開2006-282723(JP,A)
【文献】特開2009-144104(JP,A)
【文献】特開平10-204218(JP,A)
【文献】特開2007-091994(JP,A)
【文献】特開2013-203808(JP,A)
【文献】特許第7098686(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルエンに対する不溶分が60質量%以下、ガラス転移温度が10℃以上である脂肪族共役ジエン系共重合体ラテックス、及びJIS K-7210にて測定したMFR(メルトマスフローレート)(190℃/2.16kg)が30~150g/10分であるポリオレフィン系パウダーを含有する、
ヒートシール剤用水分散組成物であって、
脂肪族共役ジエン系共重合体ラテックスが、脂肪族共役ジエン系単量体に由来する構造単位を5~32質量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位を0.1~5質量%、アルケニル芳香族単量体に由来する構造単位を55~85質量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体、アルケニル芳香族単量体以外の共重合可能なその他単量体に由来する構造単位を0~40質量%含有し、
脂肪族共役ジエン系共重合体ラテックス100重量部(固形分換算)に対して、ポリオレフィン系パウダー10~100重量部を含有し、
ヒートシール剤用水分散組成物100重量部(固形分換算)に対して、脂肪族共役ジエン系共重合体ラテックス44重量部以上(固形分換算)を含有する、ヒートシール剤用水分散組成物。
【請求項2】
脂肪族共役ジエン系共重合体ラテックスが、脂肪族共役ジエン系単量体に由来する構造単位を15~32質量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位を0.1~5質量%、アルケニル芳香族単量体に由来する構造単位を55~75質量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体、アルケニル芳香族単量体以外の共重合可能なその他単量体に由来する構造単位を0~40質量%含有する、請求項1に記載のヒートシール剤用水分散組成物。
【請求項3】
ヒートシール剤用水分散組成物100重量部(固形分換算)に対して、ポリオレフィン系パウダー20重量部以上を含有する、請求項1または2に記載のヒートシール剤用水分散組成物。
【請求項4】
ポリオレフィン系パウダーがポリエチレンパウダーである、請求項1~3のいずれか
1項に記載のヒートシール剤用水分散組成物。
【請求項5】
基材に、請求項1~4のいずれか
1項に記載のヒートシール剤用水分散組成物を塗布乾燥して得られるヒートシール層を設ける、ヒートシール材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシール剤用水分散組成物、及びヒートシール材料に関する。
【背景技術】
【0002】
紙やフィルム等を重ね合わせて加熱加圧することにより、両者を接着(すなわちヒートシール)する方法は、包装材料をはじめ様々な用途に利用されている。紙やフィルム等にヒートシール性を形成させる手段としては、例えば、ポリオレフィン樹脂をラミネート加工したいわゆるラミネート紙、あるいは塩化ビニルや塩化ビニリデン等を含有したコポリマー等の高分子化合物を紙やフィルム等基材に塗工、ラミネートまたは内部添加してヒートシール性を発現させる方法が、製造の容易さ、安価な製造価格のため広く使用されている。
【0003】
しかしながら、近年の世界的な脱プラスチックの流れや省資源化などのために古紙の再利用が図られるようになり、前記ラミネート紙等の場合には、生分解性の観点や再生紙化の工程において、ラミネート加工部分が生態系に残存したり、リサイクルに於いて離解しないまま残存し、残り滓の除去処理が問題となる。よって、回収再生等リサイクルが可能でラミネートに代わる技術の開発が望まれてきた。
【0004】
特許文献1では、ヒートシール性と回収再生等リサイクル性、さらには耐水性と耐油性を付与できる発明として、アクリル系分散体とスチレン・ブタジエン系分散体を特定比率で配合した塗料を用いることで、ヒートシール性を改善できるとの記載がある。
【0005】
特許文献2では、ヒートシール性を有するアクリル系エマルションを主成分とする塗液を用いることでヒートシール性を改善できることが開示されている。
【0006】
特許文献3では、ガラス転移温度と粒子径を規定した樹脂粒子A及び樹脂粒子Bを含む水性樹脂分散体を用いることにより低温ヒートシール性と耐水性を改善できることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-13095号公報
【文献】特開2015-155582号公報
【文献】特開2016-216533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記に挙げた特許公報に記載されている手段はリサイクル性には有効であるものの、ヒートシール性とヒートシール層の耐ブロッキング性の両方の特性を満たすにはいまだ不十分であった。
【0009】
本発明の目的は、ラミネート加工を用いることなく、ヒートシール性とヒートシール層の耐ブロッキング性を向上させることができる、ヒートシール剤用水分散組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、トルエンに対する不溶分が60質量%以下、ガラス転移温度が10℃以上である脂肪族共役ジエン系共重合体ラテックス、及びJIS K-7210にて測定したMFR(メルトマスフローレート)(190℃/2.16kg)が30~150g/10分であるポリオレフィン系パウダーを含有する、ヒートシール剤用水分散組成物を提供する。
【0011】
また、基材に、本発明のヒートシール剤用水分散組成物を塗布乾燥して得られるヒートシール層を設ける、ヒートシール材料を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ヒートシール性とヒートシール層の耐ブロッキング性を向上させることができる、ヒートシール剤用水分散組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態に係るヒートシール剤用水分散組成物は、トルエンに対する不溶分が60質量%以下、ガラス転移温度が10℃以上である脂肪族共役ジエン系共重合体ラテックス、及びJIS K-7210にて測定したMFR(メルトマスフローレート)(190℃/2.16kg)が30~150g/10分であるポリオレフィン系パウダーを含有する。
【0014】
脂肪族共役ジエン系共重合体ラテックスは、脂肪族共役ジエン系単量体に由来する構造単位、及び共重合可能なその他単量体に由来する構造単位を有する共重合体ラテックスである。例えば、脂肪族共役ジエン系単量体、及び共重合可能なその他単量体を乳化重合することにより得られる。
【0015】
脂肪族共役ジエン系単量体としては、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、並びに、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などの単量体が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。本実施形態においては、工業的に容易に製造され、入手の容易性及びコストの観点から、1,3-ブタジエンを用いることが好ましい。
【0016】
共重合可能なその他単量体としては、ヒートシール性、ヒートシール層の耐ブロッキング性の観点から、エチレン系不飽和カルボン酸単量体、アルケニル芳香族単量体が好ましい。
【0017】
エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸及びクロトン酸などのモノカルボン酸単量体、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸などのジカルボン酸単量体並びにこれらの無水物が挙げられる。これらの単量体は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
アルケニル芳香族単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチル-α-メチルスチレン、ビニルトルエン及びジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。本実施形態においては、工業的に容易に製造され、入手の容易性及びコストの観点から、スチレンを用いることが好ましい。
【0019】
エチレン系不飽和カルボン酸単量体、アルケニル芳香族単量体以外の共重合可能なその他単量体としては、シアン化ビニル系単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体などの単量体が挙げられる。これらの単量体は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリル、α-エチルアクリロニトリルなどが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。本実施形態においては、工業的に容易に製造され、入手の容易性及びコストの観点から、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルを用いることが好ましい。
【0021】
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート及び2-エチルヘキシルアクリレートなどが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。本実施形態においては、工業的に容易に製造され、入手の容易性及びコストの観点から、メチルメタクリレートを用いることが好ましい。
【0022】
ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体としては、β-ヒドロキシエチルアクリレート、β-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ-(エチレングリコール)マレエート、ジ-(エチレングリコール)イタコネート、2-ヒドロキシエチルマレエート、ビス(2-ヒドロキシエチル)マレエート及び2-ヒドロキシエチルメチルフマレートなどが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
不飽和カルボン酸アミド単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド及びN,N-ジメチルアクリルアミドなどが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
さらに、上記単量体の他に、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等、通常の乳化重合において使用される単量体を使用することができる。
【0025】
脂肪族共役ジエン系単量体に由来する構造単位の含有量は、共重合体中に、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましい。また、32質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、28質量%以下であることがさらに好ましい。上記範囲とすることにより、ヒートシール剤用水分散組成物の成膜性と、ヒートシール層の耐ブロッキング性が優れる傾向にある。
【0026】
エチレン系不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位の含有量は、共重合体中に、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2.5質量%以下であることがさらに好ましい。上記範囲とすることにより、ヒートシール性、及びヒートシール材料の離解性が優れる傾向にある。また、共重合体ラテックスの分散安定性の観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。
【0027】
アルケニル芳香族単量体に由来する構造単位の含有量は、共重合体中に、55質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることがさらに好ましい。また、95質量%以下であることが好ましく。85質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましい。上記範囲とすることにより、ヒートシール層の耐ブロッキング性が優れる傾向にある。
【0028】
エチレン系不飽和カルボン酸単量体、アルケニル芳香族単量体以外の共重合可能なその他単量体に由来する構造単位の含有量は、共重合体中に、0質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0029】
本実施形態に係る乳化重合の反応系には、上記共重合体を構成する単量体成分以外に、乳化剤(界面活性剤)、重合開始剤、更に必要に応じて、連鎖移動剤、還元剤などを配合することができる。
【0030】
乳化剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホ
ン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カル
ボン酸塩、デヒドロアビエチン酸塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、非イオ
ン性界面活性剤の硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、ポリエチレングリコールの
アルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、及びアルキルエーテル型等のノニオ
ン性界面活性剤などが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて
使用することができる。
【0031】
連鎖移動剤としては、例えば、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、t-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物;アリルアルコール等のアリル化合物;ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物;α-ベンジルオキシスチレン、α-ベンジルオキシアクリロニトリル、α-ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル;トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2-エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノレン、α-メチルスチレンダイマーなどの連鎖移動剤が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。連鎖移動剤の配合量は、他の添加剤などの組み合わせを考慮して適宜調整することができる。
【0032】
また、本実施形態に係る反応系には、共重合体の分子量及び架橋構造を制御する目的で、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素;ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、4-メチルシクロヘキセン、1-メチルシクロヘキセン等の不飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素化合物を配合することができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、シクロヘキセン、トルエンを用いることが好ましい。
【0033】
更に、本実施形態に係る反応系には、必要に応じて、電解質、酸素補足剤、キレート剤、分散剤、消泡剤、老化防止剤、防腐剤、抗菌剤、難燃剤、紫外線吸収剤等の添加剤を配合してもよい。これらの添加剤は、種類及び使用量ともに適宜適量使用することができる。
【0034】
脂肪族共役ジエン系共重合体ラテックスの平均粒子径は、250nm以下であることが好ましく、220nm以下であることがより好ましい。250nmを超えると、ヒートシール剤用水分散組成物の成膜性が低下する傾向にある。また、70nm以上であることが好ましく、80nm以上であることがより好ましい。70nm未満であると、共重合体ラテックスの分散安定性が低下する、または粘度が高くなる傾向にある。平均粒子径は、例えば、共重合体ラテックスを作製する際の水や乳化剤の量を変えることで調整することができる。平均粒子径は、JIS Z8826に準拠し、光子相関法による平均粒子径を動的光散乱法により測定する。
【0035】
脂肪族共役ジエン系共重合体ラテックスのトルエンに対する不溶分は60質量%以下であり、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。60質量%を超えるとヒートシール性が低下する。また、ヒートシール層の表面強度の観点から、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。トルエンに対する不溶分は、例えば、連鎖移動剤の量を変えることで調整することができる。トルエンに対する不溶分は実施例に記載の方法で測定する。
【0036】
脂肪族共役ジエン系共重合体ラテックスのガラス転移温度(Tg)は10℃以上であり、20℃以上であることが好ましく、25℃以上であることがさらに好ましい。10℃未満であると、ヒートシール層の耐ブロッキング性が低下する。また、ヒートシール剤用水分散組成物の成膜性の観点から、80℃以下であることが好ましく、70℃以下であることがさらに好ましい。ガラス転移温度は実施例に記載の方法で測定する。
【0037】
脂肪族共役ジエン系共重合体ラテックスには、必要に応じて、分散剤、防腐剤、老化防止剤、印刷適性向上剤、界面活性剤、粘度調整剤などの機能性添加剤を配合してもよい。これらの添加剤は、種類及び使用量ともに適宜適量使用することができる。
【0038】
ポリオレフィン系パウダーとしては、例えば、ポリプロピレンパウダー、ポリエチレンパウダーなどが挙げられ、これらを1種もしくは2種以上使用することができる。中でも、ポリエチレンパウダーが好ましい。
【0039】
ポリオレフィン系パウダーの中心粒子径は5~150μmが好ましく、10~120μmがより好ましく、15~100μmがさらに好ましい。150μmを超えると、ヒートシール剤用水分散組成物の塗工性が低下する傾向にあり、5μm未満であると取り扱いが困難になる傾向にある。
【0040】
ポリオレフィン系パウダーのJIS K-7210に記載の方法で測定したMFR(メルトマスフローレート)(190℃/2.16kg)は、30~150g/10分であり、50~120g/10分以下であることが好ましい。30g/10分未満であると、ヒートシール性が低下する。150g/10分を超えると、ポリオレフィン系パウダーの歩留まりが低下する。
【0041】
本実施形態に係るヒートシール剤用水分散組成物は、共重合体ラテックスとポリオレフィン系パウダーを含有するが、脂肪族共役ジエン系共重合体ラテックス100重量部(固形分換算)に対して、ポリオレフィン系パウダー10~100重量部を含有することが好ましく、15~80重量部含有することがより好ましく、20~60重量部含有することがさらに好ましい。ポリオレフィン系パウダーが10重量部を下回るとヒートシール性が低下する傾向にあり、100重量部を超えるとヒートシール剤用水分散組成物の塗工性が低下する傾向にある。
【0042】
ヒートシール剤用水分散組成物には、必要に応じて、分散剤、防腐剤、老化防止剤、印刷適性向上剤、界面活性剤、粘度調整剤などの機能性添加剤を配合してもよい。これらの添加剤は、種類及び使用量ともに適宜適量使用することができる。
【0043】
本実施形態のヒートシール材料は、基材に、本実施形態のヒートシール剤用水分散組成物を塗布乾燥して得られるヒートシール層を設ける。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、特段の断りが無い限り、%や部は質量を基準とする。
【0045】
<脂肪族共役ジエン系共重合体ラテックスのトルエンに対する不溶分の測定>
温度40℃、湿度85%の雰囲気にて共重合体ラテックスのフィルムを作成する。その後ラテックスフィルムを約1g秤量しXgとする。これを400mlのトルエンに入れ48時間膨潤溶解させる。その後、これを秤量済みの300メッシュのステンレス金網で濾過し、その後トルエンを蒸発乾燥させ、その乾燥後重量からメッシュ重量を減じて、試料の乾燥後重量を秤量しYgとする。
トルエンに対する不溶分(質量%)=Y/X×100
【0046】
<脂肪族共役ジエン系共重合体ラテックスのガラス転移温度(Tg)の測定>
共重合体ラテックスをガラス板上に流延し70℃で4時間乾燥してフィルムを作製し、このフィルムをアルミパンに詰め、示差走査熱量計(DSC6200:セイコーインスツルメンツ社製)にセットする。あらかじめ、予想されるTgより約50℃低い温度まで装置を冷却した後、加熱速度10℃/minで昇温し、DSC曲線を描かせる。
【0047】
本発明におけるガラス転移温度とは、DSC測定チャートの微分曲線において、(a)ピークがひとつの場合にはそのピークトップの温度のことを、(b)ピークがふたつ以上の場合には、面積の一番大きなもののピークトップの温度のことを、(c)ピークトップを持つが形状がブロードの場合には、そのピークトップの温度のことを、(d)ピークトップを持たないブロード(台形)状の場合には、その中心部分の温度のことを、(e)ピークが2つ以上あり、そのうち面積の一番大きな部分の形状が(c)、(d)に該当する場合には、それぞれ(c)、(d)の基準にもとづいて得られる温度のことを指す。
【0048】
<脂肪族共役ジエン系共重合体ラテックスの平均粒子径の測定>
各共重合体ラテックスの平均粒子径は、JIS Z8826に準拠し、光子相関法による平均粒子径を動的光散乱法により測定したものである。測定に際しては、FPAR-1000(大塚電子製)を使用した。
【0049】
<ポリオレフィン系パウダーのMFR(メルトマスフローレート)の測定>
JIS K7210に記載された方法(190℃/2.16kg)に準拠した。
【0050】
<脂肪族共役ジエン系共重合体ラテックスの製造>
表1に示す材料を同表に示す配合量(単位:質量部)で配合して反応を行い、共重合体ラテックスA1~A3を合成した。具体的な合成手順を以下に示す。
【0051】
表1に示す各単量体の10質量%および乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤、重合水を耐圧性の重合反応器に仕込み、十分に攪拌した後、反応器内温度が65℃となった時点から、表1に示す各単量体の残りの成分を360分かけて連続的に添加した。その後、重合反応器内を80℃に昇温し、重合転化率が95%を超えた時点で重合を終了した。次いで、得られた共重合体ラテックスについて、NaOHでpHを9.0に調整することで、共重合体ラテックスA1~A3を得た。
【0052】
表1中の各成分は下記の略語にて示す。
BDE:1,3-ブタジエン
STY:スチレン
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
FA:フマル酸
AA:アクリル酸
EML:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(花王株式会社製、ネオペレックスG-15)(アニオン性乳化剤)
TDM:t-ドデシルメルカプタン(連鎖移動剤)
【0053】
【0054】
<ヒートシール剤用水分散組成物の作製>
表1に示す脂肪族共役ジエン系共重合体ラテックス、及び表2に示すポリエチレンパウダーを、表3に示す配合処方に従って配合し、増粘剤及び水を用いて、固形分50重量%、粘度1000±500mPa・sに調整し、実施例1~5、比較例1~5のヒートシール剤用水分散組成物を得た。
【0055】
【0056】
【0057】
<塗工性の評価方法>
ヒートシール剤用水分散組成物を市販上質紙(坪量65g/m2)にワイヤーバー(#20)で塗工し、130℃―1分間乾燥後、塗工面のストリーク(塗工スジ)の有無を目視で評価した。
(優) 〇 > △ > × (劣)
【0058】
<ヒートシール性の評価方法>
合成紙ユポ(株式会社ユポ・コーポレーション)にヒートシール剤用水分散組成物を片面塗布量20g/m2を塗布し、塗布面同士を重ねて、テスター産業(株)製ヒートシールテスターTP-701Aを用い、ヒートシール幅10mm、シール温度120℃×シール圧1.3MPa×10secでヒートシールを行った後、T字剥離試験にて接着強度を測定した。
【0059】
<耐ブロッキング性の評価方法>
PETフィルムにヒートシール剤用水分散組成物をワイヤーバー(#20)で塗工し、130℃-1分間乾燥後、1cm幅の短冊状に切り、台紙に並べて貼り付ける。その上に黒ケント紙を重ねてラボ試験用熱カレンダーを用い100℃の熱ロール間を通して圧着し、黒ケント紙を剥がした後の繊維の付着状態を目視評価した。繊維の付着が少ないものは耐ブロッキング性に優れる。繊維の付着が多いものは耐ブロッキング性が劣るとして下記の通り相対的に評価した。
(優) ◎ > 〇 > △ > ×(劣)